説明

生体細胞との通信のための電子装置

本発明は細胞が接着する表面基板を提供する。表面基板は、少なくとも1つの、表面から突起したミクロ爪構造を具備し、ミクロ爪の少なくとも一部分は、細胞内在化促進特性を有する。本発明は、ゲート電極が表面から突起する少なくとも1つのミクロ爪と共に形成されるトランジスタ構造を有する電子装置も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的に生体分子電子工学の分野に属するものであり、生体細胞との通信のための電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の文献は、本明細書の背景技術の部分に関連するものと思われる。
1.Stett, A., Muller, B., Fromherz, P., "Two-way Neuron-Silicon Interface by Electrical Induction", "Phys. Rev. B., 55:1779-1781 (1997)
2.Fromherz, P., “Electrical interfacing of nerve cells and semiconductor chips”, Chemphyschem. 3:276-84 (2002)
3.Weis. R. and P. Fromherz, “Frequency dependent signal-transfer in neuron-transistors”, Physical Review E. 55:877-889 (1997)
4.Weis. R., B. Muller, and P. Fromherz, “Neuron adhesion on a silicon chip probed by an array of field-effect transistors”, Physical Review Letters. 76:327-330 (1996)
5.Zeck G., and P. Fromherz, “Noninvasive neuroelectronic interfacing with synaptically connected snail neurons immobilized on a semiconductor chip”, Proc Nat.l Aca.d SciU S A. 98:10457-62 (2001)
6.Indik Z. et al., 1991, “Human Fc gamma RII, in the absence of other Fcgamma receptors, mediates a phagocytic signal”, J. Clin. Invest. 88:1766-71 (1991)
7.Stahl P.D., and R.A. Ezekowitz, “The mannose receptor is a pattern recognition receptor involved in host defense”, Curr. Opin. Immunol. 10:50-5 (1998)
8.Willner, I.; Katz, E. Angew. Chem., Int. Ed., 39:1180-1218 (2000)
9.Yang, M. et al. Anal. Chem. 65:3713-3716 (1993)
10.Ulman A., Chem. Rev., 96:1533-1554 (1996)
11.Prime K. L., WhitesidesG. M., J. Am. Chem. Soc., 115 :10714-10721 (1993)
12.Spinke J. et al., J. Chem Phys., 99:7012-7019 (1993)
13.Porath J. et al., Nature, 258:598 (1975)
14.Willner I. Et al, J. Am. Chem. Soc. 1996, 118:10321-10322
15.W. C. Wildering, P. M. Hermann, A. G. M. Bulloch, J. Neurobiol. 35: 37-52, (1998)
16.国際公開第00/51191号パンフレット
17.Turyan, I., Mandler, D., J. Am. Chem. Soc., 120:10773 (1998)
【0003】
神経細胞と電子装置との間の相互作用は、数十年間複数の目的のために存在してきた。過去数十年間、これらの相互作用は通常、電圧変化を検出するために電極組立体(単一電極又は電極列)を神経細胞中に挿入する事により或いは電極組立体を神経細胞膜の近傍に設置する事により達成された。検出用電極組立体は、神経細胞刺激に用いる事もできる。
【0004】
2つの別々の感覚組織によって達成される、神経細胞のイオン性電導とトランジスタの電子性電導との間の二方向インターフェイスを利用して神経細胞とトランジスタ装置との結合を提供する試み[1]がなされてきた。
【0005】
国際公開第00/51191号パンフレット[16](発明者は本願と同一である)には、トランジスタと神経細胞との電気的接合、この接合に用いられるトランジスタ、及び化学シナプスが開示されている。「化学シナプス」は、物質を分泌する細胞とその物質の受容体を担持するトランジスタとの接合であって、この接合では、物質を受容体と結合する事によってトランジスタの電気的特性が変化する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、食作用/飲作用又は飲食作用により細胞外界の要素を細胞に内在化させるという細胞の自然な特性を活用して、細胞と表面基板(surface-substrate)との間に密接な物理的連結を形成する事ができるという発見に基づいている。この基本的特性は、「ミクロ爪」形態のナノからミクロのサイズの突起部を有する表面を形成する事により細胞と表面との間に密接な物理的連結を形成させるのに利用される。ミクロ爪はそのサイズ以上に細胞内在化促進特性を有する。これらの特性は、突起ミクロ爪を形成又は被覆する材料(例えば金属)によって表される材料の固有の特性によるものであるか、又は細胞内在化を促進する成分をミクロ爪上に固定化する事によるものである。この発見により、表面の突起部は細胞に内在化され細胞膜がそれを包装するが、これについては以下に更に詳述する。又、これにより細胞は強い物理的密接で表面上に接着される。加えて、ミクロ爪のヘッドは、爪を細胞質内へ侵入させる事のできる物質で装飾されていてもよい。例えば、この爪の侵入は、細胞膜へ又は細胞内に物質を配給する小型シリンジとしても用いる事ができる。
【0007】
この物理的密接は多目的に用いる事ができる。例えば細胞の種々の操作のために(研究目的、写真目的等)、ある表面上の細胞の移動や空間的位置の変位を最小限に抑える事が重要であるような実施の形態において、細胞の空間的変位又は移動を制限する目的のためだけに上記接着によって「不活性」表面が形成される。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態によれば、物理的密接結合は良好な電気的及び/又は化学的結合並びに電極の一部である表面への細胞の接着を提供するために利用される。この電極は、電子装置中の電極配列体(electrodes arrangement)の一部であり、細胞との二方向性電気通信(細胞を感知又は刺激する事による)、或いは細胞から分泌された又はその他の発生源から液中に溶解した種々の化学的成分の存在を感知できる電気装置との二方向性電気通信のために利用されるが、この事に関しては以下で述べる。
【0009】
かくして、本発明は、細胞が接着する表面基板を提供し、該表面基板は、少なくとも1つの、表面から突起したミクロ爪構造を具備し、該ミクロ爪の少なくとも一部分は細胞内在化促進特性を有する。
【0010】
「表面基板」なる用語は、表面を意味し、これは、細胞の移動を最小限に抑えるために用いられる独立型(stand-alone)構造体、又は構成材料及び突起物形態構造に起因する特異な固有の化学的特性を有するより精巧な構造体(電極、又は電気装置など)の一部若しくは(例えば分子の結合によって)細胞接着を促進するために化学的に修飾されたより精巧な構造体(電極又は電気装置など)の一部である。
【0011】
「ミクロ爪」なる用語は、本発明においては、表面基板の表面から突起したマイクロメーター又はナノメーターサイズの突起物を意味する。表面は、少なくとも1つのミクロ爪を有するが、典型的には複数のミクロ爪構造体を有し、ミクロ爪構造体は、化学的特性において皆互いに同一であるか又は皆互いに異なる。各電極が単一又は多数のミクロ爪のベースとしての役割を果たすように複数のミクロ爪は互いに離間配置されてよく、複数のミクロ爪は、単一又は多数の電子部品構造体上に存在する(例えば、各ミクロ爪構造体は単一のゲート電極上に存在する)。或いは、単一の細胞に内在化させる事のできる特別に構築されたクラスタとして配置される。
【0012】
「細胞内在化促進特性」なる用語は、食作用、飲作用又は飲食作用による細胞内へのミクロ爪の部分的又は全体的な内在化を誘発するミクロ爪の化学的又は化学的/構造的特性を意味する。
【0013】
細胞内在化促進特性は、ミクロ爪材料(例えば、ミクロ爪は、金属で構成又は被覆されており、金属は、例えば、金、銅、アルミニウム、白金、銀、これら金属の合金又はこれらの組み合わせから選択される)の固有の特性である。
【0014】
或いは、ミクロ爪の細胞内在化を促進するための特性は、ミクロ爪にそのような内在化を促進する生体成分を固定する事によりミクロ爪内で発揮される。
【0015】
ミクロ爪は均一な構造を有する事ができる。本発明の好ましい実施の形態によれば、ミクロ爪はヘッド部とベース部という2つの化学的に区別される領域から成る。典型的には細胞内在化促進特性はヘッド部の特性であるけれども、内在化の過程の間は度々、ヘッド部とベース部の両方が細胞により内在化される。
【0016】
「内在化」なる用語は、ミクロ爪の少なくとも一部が細胞の細胞膜を横切って細胞膜に「飲み込まれる」(ミクロ爪は依然として表面に付着している)ということを意味する。
【0017】
「促進」なる用語は、細胞内在化特性を有さないミクロ爪(非金属/欠乏分子)に比べて、該特性を有するミクロ爪(金属/生体分子の付加された)の内在化の可能性を増大する事を意味する。これは、この生物活動が上記特性に拘らず起こるか起こらないかという一定の統計的可能性を有するので、上記特性を有するミクロ爪が全て細胞内に内在化される事を意味するものではない。
【0018】
「細胞内在化促進生体成分」なる用語は、あらゆる生体分子、生体分子の錯体又は生体分子の断片を意味し、これで被覆した成分又はこれを付加した成分が細胞によって内在化される可能性を増大するものである。一般にこれらの生体成分は、次に示す群に分けられる。
1.加水分解酵素であって、細胞外基質の分解を促進し、それによって、接着すべき細胞を被覆するデブリを「掃除」し、内在化の可能性を増大させるもの、
2.細胞の細胞膜の外表面上に位置する細胞膜成分を認識する分子であって、この分子と細胞の細胞膜との密接で堅固な認識相互作用を可能とし、内在化を促進するもの、
又は両者の組み合わせ。
【0019】
ここで、内在化は比較的「自発的な」イベントであり、細胞内在化の誘発は、細胞膜とミクロ爪との間に入る細胞外基質の障害を除去する(加水分解酵素を用いて)事により、又は細胞膜と爪ヘッドとの密接な相互作用の形成を促進する事により、或いは食作用機構を召集する特定の受容体を活性化する事により、達成される事を説明しておかなければならない。
【0020】
加水分解酵素は、多糖類分解酵素、蛋白質分解酵素及び脂質分解酵素等のような少なくとも1つの細胞外成分を分解するものであればいかなる酵素でもよい。
【0021】
好ましくは、これらの加水分解酵素は、結局は本発明の表面基板に付加した細胞を損傷するので、これらの酵素は、生物分解性スペーサを介してミクロ爪に結合され、よって、酵素活性の期間は短く、しばらくすると酵素は自発的に表面基板から離脱する。
【0022】
「細胞膜成分を認識する分子」なる用語は、対を形成する基のメンバーを意味し、この基の他のメンバーは細胞膜成分であり、膜成分としては蛋白質、脂質、多糖類、糖蛋白質が挙げられる。そのような分子の例としては、細胞膜受容体の配位子(又は該配位子の受容体結合部);細胞膜成分を認識する受容体;細胞膜糖蛋白質に結合するレクチン;細胞膜成分(蛋白質又は非蛋白質)を認識する抗体又は該抗体の結合断片;細胞外基質蛋白質中の短直鎖アミノ酸を認識するインテグリン;又はこれらの内の2つ以上の組み合わせ;が挙げられる。
【0023】
本発明の表面基板への細胞の接着性を高めるために、細胞内在化を誘発する特性に加えて、表面も、細胞と表面との結合を強化する付加的な「接着分子」を含有する事が好ましい。
【0024】
接着分子は、好ましくは、ミクロ爪のベース部中に又は突起ミクロ爪のベース部を包囲する表面の領域上に存在すべきである。
【0025】
接着分子は、基板への神経細胞の接着を促進する事で知られるポリリシンの単分子層のような帯電単分子層(charge monolayer)の形態をとることができる。
【0026】
上記の説明は、細胞と表面との密接な物理的結合を形成する事を目的とする、本発明に係る表面基板に適している。
【0027】
しかしながら、表面は、電極の細胞通信成分の部分となるよう構成されてもよい。
【0028】
「細胞通信成分」なる用語は、細胞と物理的接触中及び電気通信(感知目的及び/又は刺激目的)中の電極の部分を意味する。
【0029】
好ましくは、電極は、神経細胞、筋肉細胞又は分泌腺細胞といった電気特性を有する又は電気に対する生理応答を有する細胞と通信するための電極である。電極は、普通の電極であってもよいしゲート電極であってもよい。特許請求の範囲に記載の表面基板が、電極の細胞通信成分を形成するように構成される場合、細胞が存在する電解質含有液への「分路」を減少させるために、各ミクロ爪のベース部はその周囲から電気的に絶縁されていなければならない。例えば、MOSトランジスタのゲート電極において、ミクロ爪は、ポリシリコン棒(ポリシリコンゲート電極の不可欠部分である)であって、この棒は内部酸化物層によって周囲から絶縁されている。
【0030】
本発明は、電極の細胞通信成分を形成するように構成された表面基板を含む電極、及び、ゲート電極の細胞通信成分を形成するように構成された表面基板を含むゲート電極にも関する。
【0031】
上記の普通の電極及びゲート電極は共に、細胞、好ましくは、筋肉細胞、神経細胞及び分泌腺細胞といった電気的に活性な又は電気に対する生理応答を有する細胞との電気通信のための電気装置の一部を形成する事もできる。
【0032】
「電気通信」なる用語は、次の群から選ばれる、電極と細胞との間の関係を意味する。
1. 電極による細胞中の電流の存在の検出又は電流変化の検出、
2. 細胞の細胞膜上の電位の変化又は該電位の変化の検出、
3. 細胞への電流の供給、
4. 細胞への電界の印加、
5. 上記項目の2つ以上の組み合わせ。
【0033】
このような装置を用いた電気通信は、以下に示すような種々の目的のために実行される。基礎的な研究目的のため;生物医学装置の構築のため;特に神経又は筋肉とロボット義肢との間の機能的連結が必要である人のために、肢切断者に神経細胞又は筋肉によって制御されるロボット義肢を装着するため;網膜神経又は視覚神経損傷後で視覚を回復するため、分泌腺細胞を電気的に刺激して必要な成分を分泌させるため;等々。
【0034】
代替的に、本発明の表面基板は、サンプル中の検体の存在を感知できる電極の一部を形成するのに用いられる。例えば、本発明の表面基板は、細胞分泌成分(cell secreted component)の存在下で認識分子を包囲する媒体中にイオンを放出させる反応を触媒する固定認識分子の層で更に被覆された電極の一部として用いる事ができる。該イオンの分泌によって、細胞分泌成分の存在の指標として監視できる電極中の電気的変化が生じる。
【0035】
「認識分子」なる用語は、細胞分泌成分を認識できると同時にイオン放出を引き起こす反応を触媒する事のできる分子を意味する。典型的には、そのような認識分子は、酵素又はペプチドである。
【0036】
「細胞分泌成分」なる用語は、細胞によって分泌される成分を意味し、その具体的な例としては、グルタミン酸アセチルコリン、GABA及びセロトニン等の神経刺激伝達物質を挙げる事ができる。例えば、細胞分泌成分がアセチルコリンである場合、認識分子は電極に感知されるイオンを放出する事ができるアセチルコリンエステラーゼである。
【0037】
認識分子は、典型的にはリンカー分子を介して電極上に固定されるが、このリンカー分子の例としては、表面基板の表面、認識成分又はその両方に共有結合させる事のできる少なくとも1つの官能基を有する共役又は非共役の脂肪族、芳香族又は複素環式芳香族の分子が挙げられる。
【0038】
本発明の理解のために及び本発明が実際に如何に実施されるかを理解するために、非限定的な例のみを用いて、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(発明の全般的な説明)
一態様によれば、本発明は、「不活性の」表面基板に密接な物理的結合を提供するのみである。
【0040】
他の態様によれば、本発明は、細胞(例えば神経細胞)と電子装置の部分である表面基板との間の信頼性及び耐久性を有する電気的及び化学的通信(機能的連結)を提供する。この全般的な技術は、例えば神経とロボット義肢とを機能的に連結し、それによって、脳で制御されるロボット義肢を肢切断者に提供したり、損傷した神経回路網を機能的に連結したり、網膜神経又は視覚神経損傷後の視覚を回復させたり、分泌器官を刺激したりするのに用いる事のできる生物医学装置の構成の基礎としての役割を果たす事ができる。この技術は又、医薬品検査に用いる事もでき、電子装置と細胞と分子との間の生体外複合体(ex-vivo hybrids)の開発に用いる事もできる。
【0041】
本発明は、神経細胞のような生体細胞と表面(例えば電子装置を構成する表面)との間の結合度を制御するパラメータ及び機序の分析に基づくものであると共に、神経電子複合装置の技術を進歩させ完全に実施しこれらの課題に対して技術的解決法を提供するために解決しなければならなかった重大で以前は予測不可能であった基礎科学的且つ技術的な問題の特定に基づいている。
【0042】
本発明は、細胞の基本的特性である、特定すること、選択的に接着すること、そして、食作用(「食作用」なる用語は「飲作用」又は「飲食作用」なる用語と置換して用いてもよい)により細胞外界の要素を細胞に内在化させること、を利用したものである。特異な特性を有する突起物を用いて電子装置(例えばトランジスタのゲート電極)を生成する事により、食作用がこれらの突起物の内在化を導き、これによって、表面と細胞との間に最適な結合が提供される。表面(例えば電極)の新規な設計を有し調節界面化学(tailored surface chemistry)を用いた生体細胞の基本的特性は、細胞の移動性を低減し、細胞と例えば電子装置又は化学装置の表面との間に密接な物理的連結を形成しこれによって密接な電気的及び/又は化学的結合を形成する。
【0043】
上述したように、電極表面の形態は、電極表面から突起する突起物からなる新規で頑強な形状に設計される。これらの突起物を以下「ミクロ爪」又は「爪」と呼び、それらは棒状又は茎状の「ベース」部及び「ヘッド」部を有し、爪の長さは好ましくは数10ナノメーターから数1000ナノメーターの範囲である。爪の直径はベース部で数10から数100ナノメーターの範囲である。ミクロ爪の構造、寸法及び密度は、複合要素、即ちトランジスタと生体細胞との間の電子的及び化学的結合を最大化するように最適化する事ができる。
【0044】
ミクロ爪の内在化は、3つの主な利点を提供する。細胞をトランジスタに固定する事で細胞の運動性が減少する事;結合容量の増大及び生体液の主部と結合領域との間の抵抗の増大により神経細胞のトランジスタへの電気的結合力が改良される事;及び化学的感知(即ち、人工的な「化学シナプス」の形成)が改良される事;である。ゲート電極の表面形態(ミクロ爪の突起)のこのような新規な設計及び製造は、爪の別々の部分を別々に装飾する分子修飾された表面(molecularly modified surface)によって補完される。
【0045】
化学修飾された表面(chemically modified surface)に関しては、それらは、接着接合の組織化及び膜陥入によるミクロ爪ヘッドの内在化といった主要な細胞イベントを誘発する。これは、以下の方法によって達成する事ができる。
− 爪のヘッド又は端が、細胞の細胞外基質の分解を促進しそれによりミクロ爪ヘッドの表面と細胞膜外表面上に位置する受容体分子との間の密接な物理的結合形成を可能にする酵素を担持する。これらの酵素は寿命が短いものとして設計されている。
− 爪のヘッドが、細胞膜受容体を認識し、受容体に結合し、細胞によるミクロ爪の部分内在化によってミクロ爪ヘッドの食作用又は飲食作用を促進する分子を、追加的に又は代替的に担持する。
− 爪のベースが、ミクロ爪のベース及びその周囲に対する、細胞の細胞膜の結合を安定化させる接着分子を担持する。
【0046】
本発明は、神経細胞シナプス前部の要素とシナプス後部の要素としての役割を果たす電子装置とを有する化学シナプスの形成に基づいて、神経伝達物質のような分泌成分に対する感知要素を提供する。そのようなシナプスの形成により、電気信号のみならず放出された神経伝達物質によって神経細胞を電子装置に連結することが可能となる(即ち、放出された神経伝達物質は電子的イベントを引き起こす)。そのような化学的連結は、神経系統を電子領域と連結する新規の方法を開発し、神経細胞及び筋肉が互いに通信する自然な経路を刺激する事ができるようになる。この観点から、興奮細胞間の一方向性通信は主に化学シナプスによって実行される事を強調しなければならない。このために、ミクロ爪を含むゲート電極の表面は、アセチルコリン、グルタミン酸塩、GABA、セロトニン等を認識し結合する種々の信号伝達分子及び受容体分子で被覆される。
【0047】
本発明者らは、複合体の3大要素:電子部品、界面化学及び細胞神経細胞生物学を開発した。
【0048】
電子部品は、ゲート電極が種々の型の突起ミクロ爪を含む特別な表面を有するようなトランジスタ構造(本明細書の譲受人に譲受される上記文献国際公開第00/51191号パンフレットに開示されているように、好ましくはフローティングゲートトランジスタ)に基づいている。「フローティングゲート」は、電界が印加されるMOSトランジスタの絶縁電極であり、この電界印加により、容量性結合を介してトランジスタの活性成分に対する電界が増進される。
【0049】
界面化学は、接着接合の組織化及び膜陥入によるミクロ爪ヘッドの内在化という主要な細胞のイベントのうち一方又は両方を誘発するミクロ爪及び分子に別々に連結するための進歩した技術を用いる。これらのイベントは次に示す方法によって促進される。(a)爪ヘッドは、細胞外基質の分解を促進する加水分解酵素に連結され、それにより、細胞表面を「掃除」し、ミクロ爪ヘッドの表面と細胞膜外表面上に位置する受容体分子との間の密接な物理的結合の形成を可能とする;(b)爪ヘッドは、ミクロ爪のヘッドを繋ぎその食作用又は飲食作用、即ち細胞膜によるミクロ爪の部分内在化を促進する膜の蛋白質又は受容体といった細胞膜成分を認識する分子を担持する;(c)爪ベースを包囲する領域上の爪ベースは、細胞の細胞膜と爪ベース及び/又はその周囲との結合を安定化させる接着分子を担持する。
【0050】
(発明の詳細な説明)
1. 電子部品
本発明は、生体細胞、例えば神経細胞と電界効果トランジスタ(FET)のような電子装置との間の電気的及び化学的結合を最適化するのが目的である。FETは、例えば、本明細書の譲受人に譲受される上記文献国際公開第00/51191号パンフレットに開示されているようなフローティングゲート空乏型トランジスタであってよい。「空乏型装置」は、ゲート−ソース電圧がゼロであるときに自由キャリアがチャネル(活性成分)中に存在する絶縁ゲート電界効果トランジスタを意味する。従って、チャネル電導度は、ゲートとソースとの間のゼロボルトにて存在し、ゲート電圧の強度と極性とを変化させる事により制御される。空乏型装置はノーマリ・オンである。ノーマリ・オンの空乏型装置の場合、ゼロゲート電位で電流を流す事ができ、電流はゲート電圧を変化させる事により増減できる。
【0051】
図1は、電気通信(左側)及び化学的通信(右側)の両方を提供する全体的な神経電子複合システムを例示する。
【0052】
図2を参照すると、培養神経細胞とトランジスタゲートとの間の幾何学的関係を定義する図式、及び、生体液の主部と神経細胞−トランジスタ結合領域との間の高シール抵抗Rsealが例示されている。本発明者らは、結合係数の効率を判定するパラメータを調査し、効率性、信頼性及び耐久性を有する神経電子複合体を構成するのには次に示す主要な障壁があることを認識した。
− 生体液の主部と神経細胞−トランジスタ連結領域との間の高シール抵抗(Rseal)を形成する事;及び
− 電子装置の結合電極に対する神経細胞の継続的移動性と構造的可塑性。
【0053】
1.1 シール抵抗
シール抵抗は、トランジスタのフローティングゲート表面とゲートに対向する神経細胞膜との間に形成される空間の寸法に依存する。この空間の形態と寸法が、神経細胞−ゲート接触領域の中心と非接触領域との間に形成されるシール抵抗Rsealの値を決定する。理論的考察[2〜4]及び実験的考察から、Rsealが大きければ大きいほど電気的結合がより良好である事がわかる。従って、電子装置はRsealを確実に増大させるよう設計されるべきである。
【0054】
1.2 神経細胞の継続的移動性と構造的可塑性
神経細胞の特性はその構造的可塑性である。生体内の条件下では、神経細胞は、発達期間中、損傷後、並びに学習及び記憶の過程の種々の形態との関連において、その形態と結合性とを変化させる。同様に、培養神経細胞は、装置表面上の定位置を維持しない[5]。この移動性により、細胞体、軸索及び樹状突起は、装置表面に対して継続的に転位する。その結果、記録電位の形状や大きさが不安定になる。加えて、培養神経細胞の大部分は、感知装置との適切な物理的接触をしばしば形成しておらず、従って表面電極との機能的な接触が確立されない。実験の設定において及び少数の大型神経細胞のために、この問題は、神経細胞を包囲し位置移動を防止する一組のポリマーピラー構造の機序的な「塀」を作製する事で解決すべきである。しかしながら、実施において及びマルチトランジスタアレイにおいて、個々の神経細胞を特別に「塀」の内側に配置する事はできない。それ故、電子装置は、神経細胞の転位を減少させるように設計されねばならない。
【0055】
本発明の技術は、生体細胞との通信のための電子装置(トランジスタ)の設計に食作用のような既知の現象を活用する。食作用は、細胞が外来の粒子を飲み込む過程から成り、多数の種類の細胞と生物とにとって基本的に重要な現象を表す。それは、食物(原生動物において)、細胞デブリ(大食球及び好中球)又は特定の信号伝達分子を内在化させるという意味であると知られている。食作用は、0.5μmまでの範囲の大型粒子の内在化に導く細胞の処理として定義される。
【0056】
2. 食作用
図3Aは、食作用の基礎となる細胞の機序を概略的に例示する。食作用は、作用依存過程であって、その過程においては、粒子の周りの細胞膜の伸張或いは細胞内への粒子の「沈下」によってその内在化が起こる。従ってこの過程は、アクチンフィラメントの重合原動力を妨害する毒素であるサイトカラシンによって抑制される。食作用は、受容体の活性化によって引き起こされ[6]、その受容体の例としては、Fc−受容体(免疫グロブリンで装飾された粒子の内在化を媒介する)、補体受容体、フィブロネクチンで被覆された粒子の摂取を媒介するインテグリン[7]、レクチンで被覆された粒子を内在化させるマンノース受容体[8]、その他が挙げられる。
【0057】
図3Aに示されるように、食作用による粒子の内在化をもたらす主要なステップは以下のようである。
ステップ1:食作用を引き起こす第1のステップは、受容体分子の細胞外領域と標的表面上に存在する分子との間の相互作用である。この相互作用により標的は細胞膜に繋がれる(図3A、1)。
ステップ2:付加的な受容体が標的の方へ集められ標的と細胞膜との間の接触が増強され、粒子の周りの細胞膜の伸張が開始される(図3A、2)。
ステップ3:係合した受容体の細胞質領域からの信号により、粒子の周りのアクチンフィラメントに核形成するArp2/3を含む細胞骨格の要素が集められる(図3A、3)。
ステップ4:アクチンフィラメントは、ミオシンと共に、細胞内への粒子飲み込み過程を駆動する機序的力を発生させる(図3A、4)。
ステップ5:粒子を包囲する細胞膜は元の細胞膜から摘み取られる(図3A、5)。
【0058】
粒子を含む分離細胞膜はサイトソル中で自由に移動するようになり、エンドソームと融合する。
【0059】
本発明に利用される機序は、表面基板の不可欠部分であるミクロ爪の細胞内在化を含み、よりよい固定神経細胞を表面基板に提供する。「独立型」の食作用の間、粒子は細胞に完全に飲み込まれ、過程としては、細胞が粒子を細胞膜で包囲しシール空胞(sealed vacuole)(これは粒子を含む−図3A、4、本発明では、「独立型」粒子のより大きな表面の突起部の一部が飲み込まれる)を形成する事が要求される過程である。図3Bに表されるように、食作用に基づく細胞の機序に対して、表面基板の不可欠部分であるミクロ爪の内在化には細胞がミクロ爪のヘッドを或いはミクロ爪のヘッドとベースの両方を「嚥下する」事が要求される一方、空胞形成の過程を「完了する」事は必要ではない(図3Bの1と2を比較)、即ち、飲み込んだ粒子の部分を内包して空胞自身を細胞膜から分離する事は必要でない。この違いは、「摘み取り」行為が実施されないということによって接着の分子機序が妨害されるか否かに関する一連の疑問を提起する。
【0060】
本発明者らは、食作用/飲食作用の機序を利用する事によって神経細胞の固定及び神経細胞と電子装置(トランジスタの一部を形成するゲート電極)との間の電気的結合力の改良が提供される事を発見した。細胞膜の細胞成分の細胞外領域と粒子(又はミクロ爪)を装飾する認識分子との間の認識イベントは、食作用(細胞外粒子と細胞との繋ぎ)をもたらすカスケードにおける初期の且つ不可欠なイベントである。同様な機序及び蛋白質も又、接着接合の組織化に不可欠な成分を提供する事が知られている。かくして、同様の分子構造ブロックが、基板に、そして食作用を受ける粒子への細胞の接着に参加する。共通の構成要素の中から幾つかだけ述べると、細胞骨格の分子及び信号伝達分子の両方を結合するタリン;ビンクリン並びにパキシリンがある。このアプローチは、従来の媒介食作用が十分大きな基板領域上に存在していれば、培養細胞は基板に付着して接着接合を形成できるという事を立証する多数の実験によって支持されている。
【0061】
未完了の食作用イベントの構成にも拘らず(即ち、ビクリンは「摘み取られ」ない)、細胞とミクロ爪との間に形成された接合は安定している。この接合は、電子/トランジスタと細胞(例えば、神経細胞)との間の機能的結合であって、これにより、トランジスタから細胞へ又は細胞からトランジスタへの少なくとも一方向の、容量性結合を介しての信号伝達が可能になる。
【0062】
例1:被覆されたビーズの内在化
ミクロ爪ヘッドの内在化の原理を実現するための適切なモデルはビーズの内在化である。本発明者らは、神経細胞を0.2〜0.5μmの範囲の直径を有するポリスチレンビーズに対して誘起させる最適な界面化学を開発した。このために、以下の実験を実施した。
【0063】
培養アプリシア神経細胞と、脊椎動物細胞系(これらは誘起され神経細胞に分化させる事ができる)と、活性表面を有する市販のポリスチレンビーズを用い;加水分解酵素をビーズに共有結合させ、もって細胞外基質の分解を促進しビーズ表面と細胞膜外表面上に位置する受容体分子との間に密な物理的接触を形成させ;細胞膜受容体を認識しそれを繋ぎ食作用を促進する分子を、細胞の細胞膜とピンベース及びその周囲との結合を安定化させる接着分子を用いて連結させる。食作用の成功及び細胞の生存という点に関して、その結果は、電子顕微鏡によって補完された共焦点顕微鏡撮像によって評価された。
【0064】
例2:神経細胞の断片による飲食作用の誘発
図4A〜4Dは、本発明者らが実施した他の実験結果(飲食作用/食作用のプロファイルの電子顕微鏡写真)を例示し、ここでは、細胞膜下被覆の組織化及び飲食作用は培養アプリシア神経細胞を他の神経細胞の断片に暴露する事により誘発された。図4Aは、飲食作用の誘発を表し、「1」は顕微鏡写真の右側に見える粒子の直下の細胞膜の暗化を表す第1段階を示し、「2」は細胞膜が陥入し始める状態に対応し、「3」は細胞膜の湾曲の増大を示す。図4Bは、粒子による飲食作用プロファイルの誘発を表す。それは、あたかも細胞が飲み込み過程を支援して伸張を伝達しているかのように見受けられる。図4Cは、飲食作用のプロファイルを表す。図4Dは、細胞断片を含む被覆小嚢(coated vesicle)を表す。プロファイル及び被覆小嚢の寸法は0.3〜0.5μmで、ミクロ爪の金ヘッドの寸法である。
【0065】
例3:トランジスタの製造
図5及び6は、ゲート電極表面から突起したミクロ爪と共に形成されたゲート電極(本例ではポリシリコンフローティングゲート)を利用した本発明の電子装置(トランジスタ)を例示する。図5はフローティングゲート上のミクロ爪の構成の概観を表し、図6は「爪」構造の拡大断面を表す。示されているように、多数のミクロ爪が単一ゲートから突起して装備されている。
【0066】
爪は、一般に用いられるタングステンプラグ技術を若干変更した0.18μm又は0.13μmCMOS過程によって実現する事ができる。次の表1は、これら2つの技術で実現したミクロ爪の種々の寸法の値を提示する。
【表1】

【0067】
この実験の目的のために、A型ミクロ爪のベース(茎状部)は、好ましくはタングステン製(しかし一般的には他の適切な導電性材料製である)であり、神経細胞(又は他の種類の細胞)が厚さ約20nmの窒化ケイ素層に埋め込まれた液から電気的に絶縁されている。トランジスタの平板中の爪の周りのポリシリコンの最表面は厚さ約40nmの窒化ケイ素層で液から絶縁されている。タングステンベースの頂部には、金又は例えば銅、アルミニウム、白金、銀等のその他の金属のキャップ(ヘッド部)が載っており、このキャップは完成ウェーハ上に対して施される標準的な電気メッキ又は電解メッキによって得られる。金属キャップを作製する代替的な過程としては標準的なリソグラフィを用いる方法がある。
【0068】
例4:FGDTの構成
図7は、フローティングゲート空乏型トランジスタ(FGDT)ベースのミクロ爪センサの2つの型を表す。A型装置は、細胞膜による爪の包装を促進する種々の界面化学を適用することにより神経細胞との接触を強化するよう設計されている。B型装置は、A型装置の変形であり、細胞の有無に拘わらず分子認識イベント及び化学的過程に対する感度を高めるよう調整されている。このFGDTの両方の型は、標準的なCMOS加工過程を用いて製造される。
【0069】
ミクロ爪ヘッドの神経細胞への嚥下を増進するために化学的活性分子の付加的な層を爪ヘッドの頂部に加える事ができるが、これについては更に以下に述べる。
【0070】
本発明のミクロ爪構成の大きな関心事は、フローティングゲート(図5)を短絡する事による神経細胞−トランジスタ電気的結合への爪の影響である。この事は、神経細胞によって飲み込まれないミクロ爪に結合したフローティングゲートだけに関する事である。
【0071】
一般的に2つの場合が考えられる。第1の場合では、露出した爪が単純に金ヘッドを通してフローティングゲートを生体液に短絡する。第2の場合では、金ヘッドを含む爪表面全体を覆う絶縁層(厚さ約20nm)が存在する。この絶縁層は、フローティングゲートとイオン性液との容量性結合を依然として著しく増大させ、その結果、神経細胞によって飲み込まれた他の爪により神経細胞とフローティングゲートとの電気的結合を低減させる。結合に関する問題は次に示す方法の何れかで解決する事ができる。
1.各フローティングゲート上に単一ミクロ爪を作製する方法。
2.各フローティングゲート上に密に詰め込まれたミクロ爪のクラスタを作製する方法で、このクラスタの寸法は数ミクロン未満であり、これにより、細胞膜によって包囲されない爪が1つ以上あるという可能性を減少させるものである。
【0072】
生物電子的酵素の用途の開発には、活性蛋白質の、金等の固体又はコロイド状基板への固定が必要になる。蛋白質は、その活性を変性し低減する事により清浄な金表面上に非特異的に吸着する[10]。直接吸着は、蛋白質個体群の区別をせずそれら配向、及び固定手順にとって時に望ましい特性の制御もしない。アルカンチオール自己組織化単分子層(SAM)による金表面の被覆[11]によって、蛋白質の非特異的吸着を劇的に低減し[12]、蛋白質の結合を金支持体に向け、天然蛋白質の特定の結合部に対して補われる配位子と共にSAMを用いる事によりそれらの配向を制御する事[13]ができるようになった。SAMへの蛋白質固定に対する多くの戦略は、固定された蛋白質を、帯電された疎水性又はその他の親和性の基との相互作用を介して配向したクロマトグラフィー支持体の以前の開発に基づいている[14]。SAMの他の既知の用途は、金表面上に酵素を集合させるために特定の補因子−アポ蛋白質相互作用を用いる事である[15]。蛋白質は又、単分子層上の配位子に対する親和性を有する結合部を得るために、一般的[16]又は化学的工程によって修飾されてきた。静電的または疎水的相互作用も又、チオールSAMで修飾された金電極上への蛋白質固定手順に用いられてきた。
【0073】
本発明の方法は、天然蛋白質に適用可能な2つの新しいアプローチを提供する。第1のアプローチは、生物分解性リンカーの使用を通して酵素のプログラムされた寿命を導入する事であり、第2のアプローチは、金(又は酸化物)含有フローティングゲート(下記参照)に対する分子認識イベントの電子的結合を強化する、耐久性を有する芳香族リンカーに依存する。
【0074】
A型ミクロ爪
上記のように、A型ミクロ爪は、生体適合性金属、例えばゲートの不可欠部分であるが酸化物又は窒化物によって周囲から絶縁されているタングステン棒から製造される。爪のベースは金の半球で終端されている(図7)。これら爪の分子装飾は、種々の露出表面に従って異なる:例えばヘッドには金、ベースには窒化物又は酸化物。分子修飾された金ヘッドは培養細胞の細胞膜に、食作用又は飲食作用の機序によるその物理的摂取を促進する化学的信号を提供する(図4及び5を参照して上述したように)。自己組織化した単分子層を含有する窒化物ベースの成分は、細胞接着インターフェイスとして作用する。
【0075】
B型ミクロ爪
この場合(図7)の爪は、ポリシリコン棒/ベース又はトランジスタゲートの不可欠部分である導電層の組み合わせから作製される。しかしながらそれらは、窒化物層のエッチングの後に棒の頂部に形成された絶縁薄層によって周囲から絶縁されている。A型と対照的にB型ミクロ爪では、より良好な分子感知能及び分極媒介電位感知を可能にするために、フローティングゲート熱−酸化物被覆の表面領域が最大化される。内在化を促進する成分の層が被覆(図示せず)上に存在する。
【0076】
例5:分子によるミクロ爪の機能化
ミクロ爪ヘッド内在化の促進を目的とする本発明の手法は、次の3つの機能の少なくとも1つを実行する分子によるミクロ爪の機能化に基づいている。
(a)細胞外基質(ECM)の分解を促進しミクロ爪ヘッド表面と細胞膜外表面上に位置する受容体分子との間の密な物理的接触を可能にする加水分解酵素。
(b)細胞膜受容体を認識し、それらを繋ぎ、ミクロ爪ヘッドの食作用又は飲食作用を促進する、即ち細胞膜によるミクロ爪の部分内在化をもたらす分子。
(c)細胞の細胞膜と爪ベース及びその周囲との結合を安定化させる接着分子。
【0077】
加水分解酵素
図8は、加水分解酵素を爪ヘッド表面に接着させる過程を例示し、食作用信号伝達ペプチド(PSP)及び生物分解性スペーサ(ポリ乳酸−PLA又はポリグルコン酸−PGA)を介して結合された加水分解酵素と共に組織化されたミクロ爪ヘッドを表す。これらの加水分解酵素には、多糖分解酵素(例えば、シアリダーゼ、ノイラミニダーゼ、ヒアルロニダーゼ等)、カルボキシペプチターゼ及びコラゲナーゼを含むプロテイナーゼ、並びに脂質分解酵素(例えば、リパーゼ及びホスホリパーゼ)が含まれる。
【0078】
金の半球に固定された加水分解酵素の寿命は、リンカー鎖の生物分解性(又は「自発的」加水分解)によって制限される。注入酵素は、食作用信号伝達ペプチドには影響しない。生物分解性リンカー鎖は、ここで用いられるHEに対しては非基板であるポリ乳酸(PLA)又はポリグルコン酸(PGA)から合成される。酵素による加水分解は、乳酸(又はグルコン酸)のエステル結合を攻撃しないECMの糖類、脂質及びペプチドに向けられる。食作用信号伝達ペプチドを加水分解しないためには、カルボキシペプチターゼAがペプチド消化酵素として用いられ、食作用信号伝達ペプチドは、N−末端を介して表面に固定され、酵素認識と加水分解とを防止しながらC−末端においてt−Bu基によって遮断される。
【0079】
繋ぎ及び爪ヘッド内在化の誘発
ECMの局所加水分解に続いて、ミクロ爪の金ヘッドに固定された分子による細胞膜表面分子の認識によって、標準的な食作用によって特徴付けられる最終の「摘み取り」ステップを含まないミクロ爪の内在化が予期される。このイベントは金ヘッドに固定する事で促進される。この事は、細胞外基質の分解及び細胞膜陥入による爪の部分食作用を表す図9に例示されている。
【0080】
過分極性分子変換器は、直接、爪のAu(A型)又はSiO(B型)の露出領域上に直接組織化させる事ができ、それらのヘッドの基が細胞膜表面分子を固定する。インテグリンは、典型的には、ECM蛋白質中の短直鎖アミノ酸配列を認識する。最も一般的なものの1つは、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸塩(RGD)である。そのようなペプチドは、表面移植された活性エステルへのN−末端での付着を介して金表面上に移植される。
【0081】
図10は、A型装置において、ベース、窒化物領域への及び発色層(chromophoric layer)を含む金爪ヘッドへのペプチド固定を例示する。A型装置の場合、発色団含有表面も又ペプチドで移植される。B型装置の場合、発色団含有表面は、表面を適切な結合剤(例えば、3−ブロモプロピル(トリクロロシラン))で処理する事によってSiO表面上で組織化され、それにより装置は、ステップIにおいてハロゲン化アルキル官能基を酸化物に結合し、その後過程は図10のRGD結合の例に示されるようにステップII〜IVに移行する。
【0082】
神経細胞−爪の密なる接触を形成するための本発明の第2のアプローチは、ヒアルロナン認識部位である、細胞外基質内のプロテオグリカンの多糖部分に依存している。ヒアルロナン又はシアル酸のグルコサミノグリカン繰り返し単位は、糖のヒドロキシル基のシロキサン結合を介して容易に結合される。この結合は、窒化物表面に直接的になされ、A型においては金ヘッド上に、B型においては酸化物棒上に、自己組織化された発色層を介してなされる。この事は、A型装置において糖類が窒化物領域及び発色層を含む金爪ヘッドに固定される様を示す図11に例示される。B型装置では、ステップIでハロゲン化アルキル官能基が酸化物に結合され、その後ステップII〜IVが続く。
【0083】
例6:プラス帯電単分子層の製造
本発明者らは、細胞膜をミクロ爪胴体及びトランジスタ(例えば、FGDT)の活性板に接着させるためにポリアニリンの正帯電(positively charged)単分子層2D−PANを開発した。この方法の主要なステップは図12に例示される。この方法は、モノマー(アニリニウムイオン)の単分子層の静電組織化及び後続のモノマー重合(ポリアニリン(PAN)への)に依存している。ポリアニオン(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(PSS))の析出により、小分子を含むテンプレート層よりも粗面となった。正帯電アニリニウムモノマーの静電接着後、ペルオクソニ硫酸アンモニウムを用いた化学的酸化、又は、ホースラディッシュ−ペルオキシダーゼ(HRP)を用いた酵素的酸化が続き、2D−PANが得られる。2D−PAN自己組織化にPSSテンプレート層を用いた事で、神経細胞成長のための特別なインターフェイスが形成された。正帯電(4級アミン)と粗面との組み合わせによってミクロ爪への非常に強靭な細胞接着がもたらされた。
【0084】
標準的な神経細胞層(例えば、ラミニン、ポリ−D−リシン及びフィブロネクチン)より優れたこの層の利点は、垂直寸法の低減及び電気抵抗の低減と関連している。神経細胞とMOS装置との間のより良好な容量性結合は、神経細胞が感知領域近傍に配置されているときに(2〜4nm対数100)、そして、膜電位の遮蔽がより少ない(電導性ポリマー対絶縁層)場所に、提供される。よって、神経細胞と装置の窒化物含有表面及び酸化物含有表面との結合は、両方の型の装置の感度を増大させる。
【0085】
金表面への2D−PANの組織化が開発され[18]、この組織化はミクロ爪のAuヘッドに対しまっすぐに実施する事ができる。本発明者らは、PAN単分子層によるAuナノ粒子(NP)の歪みを研究し、アプリシア神経細胞とのインターフェイスを調査した。正帯電ガラス基板に静電結合されたAu−NP上の自己組織化PAN単分子層へのアプリシア神経細胞の接着が、図13に例示される。図13は、アプリシア細胞膜とガラス基板上に2D−PAN単分子層と共に自己組織化された5nmAu粒子の単分子層との間のインターフェイスの電子顕微鏡写真像である。密接な接合(約10〜30nm)は、Rsealの減少、及びミクロ爪を含むFGDTベースの神経細胞センサの感度の強化を示している。
【0086】
例7:化学シナプス
受容体と酵素との化学固定は、短く堅固な結合剤により結合する、金爪への共有結合により実行する事ができる。図14は、受容体又は酵素の金ヘッドに対する短く堅固な分子結合の一例を示すもので、この結合は、先ずp−アミノチオフェノールを組織化し、その後シアヌール酸を縮合する事でアミン縮合を介して受容体/酵素の結合を可能にするものである。本例では、神経伝達物質の部位は、堅固で短いスペーサを介して(A型)金表面に固定される蛋白質(酵素/受容体、E/R)を含んで示されている。酸化物表面への組織化は、ステップIを除いて(B型)、本願の譲受人に譲受される本明細書に参照として含まれているPCT/IL03/100941中に開示されているものと同様に実行される。
【0087】
上記のように、神経細胞シナプス前部の要素とシナプス後部の要素として作用する電子装置とから成る化学シナプスの形成により、電気信号によるのみならず放出された神経伝達物質によって神経細胞と電子装置とを連結する事が可能になり、その場合の電子装置は該放出を検知できる。そのような化学結合は、神経細胞系を電子界と連結する新規な方法を切り開き、それによって神経細胞同士並びに神経細胞及び筋肉が互いに通信しあう自然な経路がシミュレートできるようになる。この観点から、興奮細胞間の一方向性通信は主に化学シナプスによって実行される事を強調しなければならない。
【0088】
本発明者らは、アセチルコリンに対する高感度(10−8M)のセンサを開発し実験を実施した結果、生体活性分子で被覆されたポリスチレンビーズがシナプス前部末端の超微細構造的分化を誘発する事が判った。ミクロ爪表面は、アセチルコリン、グルタミン酸塩、GABA、セロトニン等を認識し結合させる種々の信号伝達分子(上述したような)及び受容体分子で被覆する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】神経電気複合システムの略図である。
【図2】培養神経細胞とトランジスタゲートとの間の幾何学的関係及び生体液の主部と神経細胞トランジスタ結合領域との間のシール抵抗を定義する図を例示する。
【図3】図3A及び図3Bは食作用現象の主要原理を概略的に例示するもので、食作用の基礎となる細胞機序(図3A)と、ミクロ爪の飲み込み(図3B)に対する比較と、を示す。
【図4】図4A〜4Dは培養アプリシア神経細胞を他の細胞の断片に暴露する事により誘発される飲食作用/食作用のプロファイルの電子顕微鏡写真を例示し、図4Aは飲食作用の誘発に対応し、図4Bは粒子による飲食作用のプロファイルの誘発に対応し、図4Cは飲食作用のプロファイルに対応し、図4Dは細胞の断片を含む被覆された小嚢に対応する。
【図5】ゲート電極表面から突起したミクロ爪で形成されたゲート電極を利用した本発明の電子装置(トランジスタ)を例示し、フローティングゲート上のミクロ爪の構成の概要を表す。
【図6】ゲート電極表面から突起したミクロ爪で形成されたゲート電極を利用した本発明の電子装置(トランジスタ)を例示し、「爪」構造の拡大断面図を表す。
【図7】フローティングゲート空乏型トランジスタ(FGDT)ベースのミクロ爪センサの2つの型を例示する。A型装置は、細胞膜が爪を包装するのを促進する種々の界面化学を適用して神経細胞との接触を強化するよう設計されたものであり、B型装置は、A型装置の変形であって、細胞の有無に拘わらず分子認識イベント及び化学処理に対する感度を高めるよう調整されたものである。
【図8】加水分解酵素を爪表面に接着する処理を例示し、食作用信号伝達ペプチド(PSP)と生物分解性スペーサ(PLA/PGA)を介して結合された加水分解酵素(HE)と共に組織化されたミクロ爪ヘッドを表す。
【図9】細胞外基質の分解と細胞膜陥入による爪の部分食作用とを表す。
【図10】B型装置がステップIでハロゲン化アルキル官能基(alkylhalide functionality)を酸化物に結合しその後で図中のステップII〜IVが続くときに、A型装置において、窒化物領域と発色層(chromophoric layer)を含む金爪ヘッドとにペプチドを固定する方法を例示する。
【図11】B型装置がステップIでハロゲン化アルキル官能基を酸化物に結合しその後で図中のステップII〜IVが続くときの、A型装置での、窒化物領域と発色層を含む金爪ヘッドとへの糖類固定を例示する。
【図12】化学的酸化を通して得られるPSSテンプレート層(左)及び2D−PAN(右)のAFM像を含む、2D−PAN単分子層の化学的/酵素的自己組織化のために展開される合成経路を例示する。
【図13】アプリシア細胞膜と、2D−PAN単分子層と共にガラス基板上で自己組織化した5nmAu粒子の単分子層との間のインターフェイスを表す電子顕微鏡像を示す。
【図14】堅く短いスペーサを介して金表面に固定された蛋白質(酵素/受容体、E/R)を含む神経伝達物質の部位を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞接着のための表面基板であって、少なくとも1つの、表面から突起したミクロ爪構造を具備し、該ミクロ爪の少なくとも一部分は、細胞内在化促進特性を有する、表面基板。
【請求項2】
細胞内在化促進特性は、少なくとも該ミクロ爪の該一部分を細胞内在化促進成分で被覆することによって得られる、請求項1に記載の表面基板。
【請求項3】
該ミクロ爪は、ベース部とヘッド部とを有し、該ヘッド部は、細胞内在化促進特性を有する、請求項1に記載の表面基板。
【請求項4】
該ヘッド部は、細胞内在化促進成分で被覆される、請求項3に記載の表面基板。
【請求項5】
該細胞内在化促進成分は、
(a)細胞外基質の分解を促進する加水分解酵素、
(b)細胞の細胞膜の外表面上に位置する細胞膜成分を認識する分子、
(c)(a)及び(b)の組み合わせ、
から選択される、請求項2から請求項4のいずれかに記載の表面基板。
【請求項6】
該ヘッド部は、金属含有材料から成り又は金属含有材料で被覆される、請求項3に記載の表面基板。
【請求項7】
該金属は、金、銅、アルミニウム、白金、銀、これらの金属の合金又はこれらの金属の組み合わせから選択される、請求項6に記載の表面基板。
【請求項8】
該加水分解酵素は、多糖類分解酵素、蛋白質分解酵素及び脂質分解酵素から選択される、請求項5に記載の表面基板。
【請求項9】
該加水分解酵素は、生物分解性スペーサ分子を介して該ミクロ爪に結合される、請求項8に記載の表面基板。
【請求項10】
細胞膜成分を認識する該分子は、細胞膜受容体の配位子又は該配位子の受容体結合部;細胞膜成分を認識する受容体;細胞膜糖蛋白質に結合するレクチン;細胞膜成分を認識する抗体又は該抗体の結合断片;細胞外基質蛋白質中の短直鎖アミノ酸配列を認識するインテグリン;又はこれらの内の2つ以上の組み合わせ、から選択される、請求項5に記載の表面基板。
【請求項11】
細胞膜成分を認識する該分子は、細胞外基質細胞膜内のプロテオグリカンの一部分である多糖に結合する分子である、請求項5に記載の表面基板。
【請求項12】
細胞の接着を促進する分子を更に含む、請求項1に記載の表面基板。
【請求項13】
細胞の接着を促進する該分子は、該ミクロ爪の該ベース部及び該ベース部を包囲する領域のうちの少なくとも1つに存在する、請求項4及び請求項12に記載の表面基板。
【請求項14】
該接着分子は、帯電単分子層の形態である、請求項12に記載の表面基板。
【請求項15】
該帯電単分子層は、ポリリシン、ポリアニリン等の正帯電単分子層である、請求項14に記載の表面基板。
【請求項16】
ポリリシン、ポリアニリン等の該正帯電単分子層は、リンカーを介して該ミクロ爪に結合したアニオンユニットを含むポリスチレンスルフォネート層上に組織化される、請求項15に記載の表面基板。
【請求項17】
電極の細胞通信部を形成するよう構成される、請求項1から請求項16のいずれかに記載の表面基板。
【請求項18】
該電極は、ゲート電極である、請求項17に記載の表面基板。
【請求項19】
該ミクロ爪のベース部は、その周囲から電気絶縁される、請求項17又は請求項18に記載の表面基板。
【請求項20】
該ミクロ爪は、その周囲から電気絶縁される、請求項17又は請求項18に記載の表面基板。
【請求項21】
該ミクロ爪は、ポリシリコンゲート電極の不可欠部分であるポリシリコン棒のような導電性棒であり、絶縁薄層によって周囲から絶縁される、請求項18に記載の表面基板。
【請求項22】
リソグラフィ及びエッチング技術により製造された一体化構造の形態である、請求項18に記載の表面基板。
【請求項23】
該ミクロ爪の該ベース部は、タングステンから成り、その周囲から窒化ケイ素層により絶縁される、請求項19に記載の表面基板。
【請求項24】
請求項17に記載の表面基板を具備する電極。
【請求項25】
ゲート電極である、請求項24に記載の電極。
【請求項26】
単一ミクロ爪を有する、請求項25に記載の電極。
【請求項27】
ミクロ爪のクラスタを有する、請求項25に記載の電極。
【請求項28】
該クラスタのサイズは、該電極と通信する細胞のサイズより小さい、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
該認識分子を包囲する媒体中にイオンを放出させる反応を、細胞分泌成分の存在下で触媒する固定された認識分子の層で被覆された、請求項24又は請求項25に記載の電極。
【請求項30】
ゲート電極である、請求項29に記載の電極。
【請求項31】
該認識分子と被覆された該ゲートの表面との距離が15Å未満である、請求項29に記載の電極。
【請求項32】
受容体分子は、酵素又はペプチドである、請求項29又は請求項30に記載の電極。
【請求項33】
該認識分子は、アセチルコリン、グルタミン酸塩、GABA、セロトニン、神経伝達物質及び/又は神経細胞エンドクリン、成長因子、シトキンから選択される細胞分泌成分の存在下で、該反応を触媒する、請求項32に記載の電極。
【請求項34】
該認識分子は、アセチルコリンエステラーゼである、請求項33に記載の電極。
【請求項35】
該ゲート電極は、イオン感受性ゲートである、請求項30に記載の電極。
【請求項36】
イオン感受性材料は、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)、インジウムスズ酸化物(In−Sn)、酸化ケイ素(SiO)、又は酸化タンタル(Ta)である、請求項35に記載の電極。
【請求項37】
該認識分子は、該表面基板及び該認識分子のうちの少なくとも1つに共有結合されたリンカー分子を介して固定される、請求項29又は請求項30に記載の電極。
【請求項38】
該リンカー分子は、該表面に共有結合する事のできる少なくとも1つの官能基を有する共役又は非共役の脂肪族、芳香族又は複素環式芳香族の分子から選択され、該少なくとも1つの官能基は、該認識分子に共有結合する事ができる、請求項37に記載の電極。
【請求項39】
請求項29又は請求項30に記載の少なくとも1つの電極を有する電極配列体を具備する、細胞分泌成分検知のための装置。
【請求項40】
少なくとも1対のソース−ドレイン電極と、請求項31に記載の少なくとも1つのゲート電極と、を具備し、該少なくとも1つのソース−ドレイン電極と該少なくとも1つのゲート電極とは共同して少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)を形成する、細胞分泌成分検知のための装置。
【請求項41】
請求項24又は請求項25に記載の少なくとも1つの電極を有する電極配列体を具備する、細胞との電気通信のための装置。
【請求項42】
少なくとも1対のソース−ドレイン電極と、請求項25に記載の少なくとも1つのゲート電極と、を具備し、該少なくとも1つのソース−ドレイン電極と該少なくとも1つのゲート電極とは共同して少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)を形成する、細胞との電気通信のための装置。
【請求項43】
細胞との電気通信は:
(a)細胞中の電流の存在又は電流変化の検出、
(b)細胞中の電界電位又は電界電位変化の検出、
(c)細胞への電流供給、
(d)細胞への電界電位印加、
(e)(a)〜(d)のうちの2つ以上の組み合わせ、
から選択される特性によって達成される、請求項41又は請求項42に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−527380(P2006−527380A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516796(P2006−516796)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000502
【国際公開番号】WO2004/109282
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(504322105)イサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブルー ユニバーシティ オブ エルサレム (2)
【Fターム(参考)】