生体組織をマルチモーダルにイメージングするための方法及び装置
本発明は、領域内の組織型の正確な同定とともに組織領域の迅速な画像化が可能な新規な多波長画像化方法及び装置を対象とする。共通偏光又は交差偏光した蛍光又は反射強度、光学密度及び/又は反射率のような、光学特性を組織領域内の複数部位においてそれぞれの波長について確認することができる。波長に関する光学特性の算出した導関数を包含している、2つの波長における当該特性を解析して、単一波長において測定された特性に基づいて得られるものよりも正確に、組織構造の画像化及び組織領域内の組織型の同定ができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年4月14日に出願した米国仮特許出願第61/169,258号の優先権を主張し、その開示は、参照により、その全てが本明細書に取り込まれている。
【0002】
(技術分野)
2つ又はそれ以上の特定波長における、異なった組織型による色素の吸収特性及び/又はその他の光学的相互作用を比較することによって、組織サンプル中の癌組織又は生体組織のその他の特定な型の正確な輪郭付けを容易にする方法及び装置を特徴としている。この方法及び装置は、とりわけ、手術中リアルタイムに、非黒色腫皮膚癌(例えば、基底細胞癌)の輪郭又は境界を提供するために用いることができる。
【背景技術】
【0003】
非黒色腫皮膚癌はヒトの癌の非常に一般的な形態である。統計的に、白人の約4人に1人が彼らの生涯の内に少なくとも1つの病班を発症することになる。基底細胞癌(BCC)は総非黒色腫癌の約80%を構成し、そしてその発生率はめざましく増大している。これらは、一般に、頭及び頸のような体の日光露出部上に現れるので、これらの腫瘍の周りの正常な皮膚を保護する必要がある。BCCは外観を損なうが殆ど死に至らない(例えば、これらは年に約3000人の死因となる)。しかしながら、その有病率により、これらの治療費は1年当たり6億ドルを超えている。
【0004】
BCCは通常手術によって治療される。これらの腫瘍はよく顔に発症してめったに転移しないので、それを切除する際にはできるだけ多くの健常組織を保護することが重要である。しかしながら、多くの場合、病変部の明暗差は乏しく、そしてこれらの腫瘍は明確な境界を有しておらず、これは目視的な腫瘍局在診断及び正確な切除を困難にしている。
【0005】
モース顕微鏡手術(MMS)は、手術中に切除縁部を完全にコントロールできる臨床技術である。この技術は、切除する病変部の詳細なマッピング及び顕微鏡的コントロールを用い、裸眼では見えない腫瘍に関わっている手術切除縁の領域を正確に示すことができる。正確で精密であるが、MMSは時間がかかり、そして通常皮膚病理学の訓練を積んでいる外科医、専用の実験室及び凍結切片を調製して評価する技術者を必要とする、人材集約的な手法である。これらの欠点のために、MMSは少数の症例でしか用いられていない。従って、手術中の縁部コントロール問題に取り組むために、新規な技術及び治療手順を導入しなければならない。
【0006】
光学的画像法の最近の進歩が、完全なBBC腫瘍境界の、精密でリアルタイムで費用効率が高い手術中検査を技術的に可能にしている。しかしながら、これらの技術は、一般に臨床の場における実用的用途に必要な要素の1つ又はそれ以上が不足している。インビボでの使用に適しているFDAに承認されている造影剤又は色素、例えばメチレンブルー(MB)は病変部によく適用されているが、正常組織及び病的組織由来の光信号の本質的な相違が希薄であることが多い。MBは、膀胱の新生腫瘍、膵臓の腫瘍、及びバレット食道異形性を大まかに境界付けるために成功裏に適用されている。MB色素は、正常細胞と比べると、癌細胞のミトコンドリアに非常に多く蓄積される傾向があるが、100%特異的ではない。毛嚢、皮脂腺及び表皮のような、健常な皮膚組織構造も幾つかの色素を保持できる。しかしながら、これらの組織の外観及び色素濃度は、癌のそれとはかなり異なっている。
【0007】
色素によって強化された反射率及び蛍光偏光画像化(RFPI)を包含する、幾つかの補完的技術は、94%を越える成功率でリアルタイムの高コントラスト画像を提供できる。このような技術は、例えば、米国特許第7,289,205号に記載されている。しかしながら、このような技術は癌組織と、類似の光学密度を示す、ある特定の組織、例えば、毛嚢等を明確に区別できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、上記の欠陥を考慮して、単純で、より正確で、そして/又は時間効率のよい方法は腫瘍の境界をマッピングするために、そして腫瘍組織と健常組織の識別を向上させるために好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の必要性を満たすこと、及び特に上で検討した欠陥並びに通常の当該技術分野における欠陥に対処することに関している。
本発明の実施態様は、健常組織構造及びその他の組織構造(例えば、BCCのような癌組織)の両方を含有する組織サンプル内の複数の地点における、ある特定の波長に依存する光学特性、及び随意に、そのような光学特性の対応する波長導関数(derivative)の分析を包含する方法及び装置を提供する。光学特性は、造影剤、例えば、メチレンブルー(MB)のような色素で処理されている組織の局所的な反射率及び光学密度を包含できる。各波長における偏光情報も用いることができる。このような方法及び装置は、例えば、色素で増強した反射率及び/又は蛍光偏光画像化方法と組合せて用いたときに、非黒色腫皮膚癌領域の輪郭付けを容易にすることができる。
【0010】
本発明の一実施態様では、本発明は、2つ又はそれ以上の特定波長において、色素のような造影剤で処理した組織領域又はサンプルを画像化することを包含する、腫瘍境界付け技術を提供する。画像化用の光は、単色光源によって、又は広帯域光源及び2つ又はそれ以上の単色フィルター(偏光フィルターであってもよい)によって提供できる。
異なった組織構造、例えば、各種の健常皮膚構造及び癌組織に関連する局所的な光学密度、反射率、又はその他の光学特性は、そのような特性の値がある特定の組織型又は構造に関して類似している場合であっても、異なった構造に対する波長に関しては異なった変化率を示しうる。従って、この技術を用いる組織の画像分析のための方法及び装置は、周囲の健常組織から、癌組織のような構造をより正確に区別するのに十分である、たった2つの監視波長で迅速な分光分析を提供することができる。
従って、本発明の実施態様は、癌組織又はその他の組織構造の手術中のリアルタイムで正確な同定及び輪郭付けを容易にする方法及び装置を提供することができる。
【0011】
本発明の別の実施態様では、このような光学特性の波長依存導関数を確認して、組織領域を画像化するために及び/又は組織内の異なった組織を区別するために用いることができる。このような導関数は、少なくとも5nm異なっている波長、例えば、約5nm〜30nm、又は約10nm〜20nm異なっている波長で得た測定値に基づいて見積ることが好ましい。
【0012】
更なる実施態様では、インビボ画像を実施する場合は、造影剤はメチレンブルーであってよい。この造影剤で用いられる少なくとも1つの波長は、約600nm〜約735nmが好ましい。例えば、約615nm及び/又は665nmの波長を用いることができる。これらの波長はメチレンブルーの吸収極大に一致するので、異なった組織型の同定及び/又は輪郭付けを容易にする大きい信号を提供できるからである。エクスビボで組織を画像化する場合は、トルイジンブルーのような造影剤を用いることができる。
【0013】
本発明の更なる実施態様では、試験する組織に基づいて別の波長を用いることができる。例えば、画像化又は区別すべき組織の血液含量のレベルが有意に異なっているならば、約410nmに近い波長を用いることができる。画像が主に散乱挙動に基づいていることが望ましいならば、約1100nm〜約1300nmの波長も用いることができる。
【0014】
また本発明の更なる実施態様では、蛍光偏光及び/又は反射率偏光情報を、2つ又はそれ以上の波長で、組織領域内の複数の地点で得ることができる。このような情報も、組織領域内の異なった組織構造及び型を画像化及び/又は輪郭付けるために用いることができる。
【0015】
本発明の更に別の実施態様では、組織領域内の2つ又はそれ以上の波長で測定された光学特性を、各種組織型に関するそのような特性の既定波長依存値と比較することができる。1つ以上の波長における局所的光学特性のこのような比較は、単一波長で得られた光学特性の測定値と比較して、組織型のより正確な同定及び輪郭付けをもたらすことができる。組織サンプルで検出又は測定された値と比較するために用いられるこのような既定光学特性は、波長に関する測定された光学特性の導関数も包含する。
【0016】
本発明の別の実施態様では、少なくとも2つの異なった波長を有する光で組織サンプルを照射するように作られている光源、それぞれの波長で組織サンプルから送られた光を検出するように作られている1つ又はそれ以上の検出器、及び本明細書に記載されているような組織サンプル中の異なった組織型又は構造を画像化、同定及び/又は輪郭付けるように作られているアナライザーを包含している装置が提供される。装置は、偏光特性を組織サンプルの画像化のために用いる場合は、偏光フィルターを包含していてもよい。
【0017】
本発明に従って提供される方法、システム及び装置は、非黒色腫皮膚癌の境界をリアルタイムに手術中に画像化及び輪郭付けるために、腫瘍切除術を加速するために、そして実施できる外科手術の数を増やすために特に有用である。例えば、本発明の実施態様を実際の腫瘍切除手術を誘導するために用いることができる。このような改善は、スペクトル解析をRFPI手法及びリアルタイム腫瘍輪郭付け手法を容易にするシステムに組み込むことによってもたらされる。
【0018】
本発明のこれらの及び別の目的、特徴及び利益は、図面を同時に用いて以下の詳細な説明からより明らかになるだろう。
【0019】
本発明に関わる当業者が、如何にこれを作成してこれを使用するかをより容易に理解するために、言及は図面を有すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、反射率及び蛍光偏光画像化を実施できるように作られている例示的な装置の略図である。
【図2】図2aは、基底細胞癌を含有している16×7mmの頭皮組織試料画像の665nmにおける例示的なグレイスケール表面反射率画像である。 図2bは、図2aに示されている組織試料の615nmで励起して、及び660nm〜750nmの範囲で記録した蛍光偏光画像である。 図2cは、有資格病理学者によって腫瘍境界が描かれている、図2aに示されている組織試料のH&E凍結組織構造の画像である。 図2dは、癌組織及び健常組織構造について得た平均化した光学密度スペクトルのグラフである。
【図3】図3a〜3eは、BCC−健常組織構造の対についての、20以上のサンプルを平均した、光学密度スペクトルのプロットである。(a)BCCと皮脂腺、(b)BCCと毛嚢、(c)BBCと表皮、(d)BBCとコラーゲン、そして(e)BBCと皮下脂肪。
【図4】図4a〜4eは、BCC−健常組織構造の対についての、20以上のサンプルを平均した、波長依存的光学密度導関数のプロットである。(a)BCCと皮脂腺、(b)BCCと毛嚢、(c)BBCと表皮、(d)BBCとコラーゲン、そして(e)BBCと皮下脂肪。
【0021】
ここで本発明を図面を参照して詳細に記載するが、これは説明的な実施態様に関連するものであって、図に例示している特定の実施態様によって限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
生物造影剤、例えば、MBのような染色剤又は色素を、異なった型の組織内に別々に分布させることができる。色素分布のこのような変化は、局所的な色素濃度の違いに部分的に依存している、スペクトル吸収及びその他の光学特性の変化をもたらす。その他の因子も、組織中の血液/ヘモグロビン又はその他の光吸収物質の局所濃度のような、観察される光学特性に影響を及ぼす。従来の組織同定技術では、広帯域光源又は単一波長を用いて測定された染色組織の光学特性を比較して、色素分布の変化に基づく組織型の相違を同定できる。しかしながら、ある特定の区別しうる組織型が、このような測定で類似の光学特性を示すかもしれず、これはサンプル中の組織型の同定又は区別化に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0023】
2つ又はそれ以上の波長におけるある特定の光学特性を、組織サンプルの領域内の複数の位置で測定できる。それぞれの波長における特性の差異を、領域内の異なった位置におけるそのような特性の差異と共に、比較又は分析できて、組織領域の画像化及びサンプル内の組織型のより正確且つ/又は信頼性のある同定を提供するために用いることができる。
【0024】
測定された光学特性は、例えば、組織サンプルの領域の反射率(例えば、絶対反射率スペクトル)、光学密度、等、又はこれらの組み合わせを包含できる。特定の光学特性を、試験する組織に基づいて選択することができる。例えば、反射率は直接測定できるが、反射率の値は通常、サンプルの厚さに部分的に依存する。対照的に、光学密度は組織の固有の特性であるが、その測定は組織自体に関するある特定の前提に基づいている。光の多種偏光、非偏光、又はこれらの組み合わせを本明細書に記載のような組織型の輪郭付けを容易にするために用いることができる。光学分析に用いる画像の型を、例えば、非偏光、又は共通偏光強度(Ico)及び交差偏光強度(Icross)の各種組み合わせを基にすることができる。このような組み合わせは、信号差(例えば、Ico−Icross)、比(例えば、Ico/Icross)、相対的差(例えば、(Ico−Icross)/(Ico+Icross))等に基づくスペクトルデータを包含できる。典型的な適用において、交差偏光に基づく信号を用いると深部組織の輪郭付けが改善されるのに対して、共通偏光及び交差偏光強度の間の差を用いるとより表面の組織がより良く輪郭付けられる。
【0025】
多種の色素又は染色剤を用いることができる。メチレンブルー(MB)は、インビボでもエクスビボの組織サンプルでも用いることができる、FDAに承認された染色剤である。その他の色素も、特にエクスビボの組織分析のために用いることができる。例えば、トルイジンブルー(TB)は、本明細書に記載されている分析のためにエクスビボの組織サンプルを染色するために用いることができる。TBは吸収スペクトルをMBと比べてスペクトルの黄色領域の方向にシフトさせることができ、これは一般に血液の吸収領域により近い。従って、血液を大量には含有していない組織の分析に好ましい。
【0026】
組織サンプルのある特定の領域の光学特性は、本明細書に記載のように、2つ又はそれ以上の波長で測定することができる。用いられる波長のうちの1つは、色素吸収スペクトル内の極大値又はピーク値、或いはその近くでよい。例えば、MB色素を用いる場合は、波長の一方は、MBについての吸収極大値にほぼ対応する、615nm又は665nm或いはその近くでよい。一般に、そのような最大値の近辺(例えば、MBに対して、約600nmと約685〜700nmの間)の波長が、差別化を促進する、より大きな信号及び対応する信号間の大きな差をもたらすので、好ましい。その他の色素を用いる場合は、特定の色素に対応する吸収ピーク値又はその近くの異なった波長を用いることができる。吸収最大値に近い少なくとも1つの波長の使用は測定する強度に対してより大きな信号を提供でき、これはサンプル内の異なった組織型及び領域に対するそのような信号間の区別化を促進できる。
【0027】
光学特性(例えば、吸収強度)はこれらの波長で又はその近辺でも得られる。従って、異なった組織領域に対して、単一の波長における吸収強度(又は広帯域光源由来の単一波長分布)を単に比較するよりむしろ、2つ又はそれ以上の波長における相対的な吸収動態を比較できる。異なった波長における組織の色素との相対的光学相互作用のこのような分析は、サンプルの異なった組織領域内の組織型の間のより詳細且つ/又は正確な差別化をもたらすことができる。
【0028】
本明細書に記載されているような波長依存的光学特性の導関数の分析も、サンプル領域内の組織型の輪郭付けを提供するか或いは改善することができる。例えば、波長に関連するある特定の光学特性の値についての導関数を、特定の波長で見積ることができる。このような特性導関数は、異なった組織型に対してそのような光学特性の絶対値が同一又類似していても、組織型又は領域間の差別化をもたらすことができる。
【0029】
光学特性に対する波長導関数情報は、通常の数学的技法を用いて算出できる。例えば、本明細書に記載されているような特定の光学特性は、組織サンプル内の特定位置において、2つの異なった波長で測定できる。導関数情報を見積るために用いられる波長間の差は約5nmより大きいこと、例えば約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm又は約5nm〜約15nm、例えば10nmであることが好ましい。本明細書に記載されているような導関数情報を算出するために用いられる波長の差は、異なった波長で測定される光学特性の区別可能な値を作成するのに十分大きくて、波長に関する特性の局所的導関数の正確な見積りをもたらすのに十分に小さいことが好ましい。
【0030】
第1導関数は通常の線形方程式を用いて、例えば、各波長における特性の測定値間の差を取って、この差を、特性を測定した波長の差で割ることによって、見積ることができる。例えば、波長bにおける導関数は、2つの波長b及びcにおける光学特性pを測定して見積ることができ、ここで、c=b+δである。好ましくは、δは少なくとも約5nm、例えば、約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm、又は約5nm〜約15nm、例えば10nmである。dP(b)/dλ(ここでλは波長を示す)で表される、波長bにおいて測定された光学特性Pの導関数の概略値は、[P(c)−P(b)]/(c−b)で表すことができる。この手法は、波長b+δ/2(これはδが小さいときにbに近い)における波長に関する光学特性値の第1導関数の見積値をもたらす。
【0031】
更なる態様では、波長に関する光学特性の第2導関数情報も組織の画像化及び/又は特定組織構造の同定に用いることができる。波長に関する光学特性の第2導関数は、通常の3点技法を用いて見積ることができる。波長bにおける導関数は、3つの波長a、b、及びc(ここでa=b−δそしてc=b+δである)における光学特性Pを測定することによって、見積ることができる。好ましくは、δは少なくとも約5nm、例えば約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm、又は約5nm〜約15nm、例えば、約10nmである。d2P(b)/dλ2として表される、波長bにおけるPの第2導関数は、[P(a)−2*P(b)+P(c)]/δ2として概算できる。この式は、波長bにおける波長に関する光学特性の第2導関数の見積をもたらす。
【0032】
組織サンプル内の組織構造を画像化及び/又は同定するために用いられる導関数情報は、第1導関数情報、第2導関数情報、又は両者を包含できる。導関数情報は、上記のようにして、異なった波長における特定の位置で実施された光学特性の測定値から算出できる。
【0033】
複数の波長において組織型のサンプルの光学特性を最初に測定し、次いで上記のようにして導関数情報を算出することによって、特定の組織構造又は組織型(例えば、毛嚢、腫瘍、皮脂腺等)に関するそのような導関数情報のデータベース又は表を作成することもできる。このような導関数情報をコンピューターで読み込み可能な媒体内に記憶でき、次に組織サンプル内の特定位置で得たこのような導関数情報と比較でき、サンプル内の組織型の正確な同定及び/又は画像化を促進することができる。このような導関数情報は、例えば、特性を測定する波長に関する光学特性の第1導関数及び第2導関数を包含できる。このような手法の更なる詳細を以下に記載する。
【0034】
偏光増強反射率及び蛍光画像化に使用できる例示的なシステムの概略図は図1に示される。MS275回析格子単色光分光器2(Oriel Instruments, Stratfold,CT)に接続している500WのXe−Arcランプ1(Spectra Physics Oriel, Stratfold,CT)を光源として用いた。この光源1からの光を光誘導管3(Oriel Instruments, Stratfold,CT)を介してサンプルステージ上の組織試料11に送達した。ホログラフィック拡散器4(15°、Edmund Optics, Barrington, NJ)及び直線偏光フィルター5(Meadowlark Optics, Frederick, Co)を入射光の通路に導入して試料への均一直線偏光照明をもたらした。
【0035】
無彩色CCDレンズ8(Linos Photonics Inc., Milford, MA)及び回転直線偏光フィルター6(Meadowlark Optics, Frederick, CO)を装着した CCD CoolSnap HQ カメラ9(Roper Scientific, Tucson, AZ)を、試料の共通及び交差偏光反射率画像を捕らえるために用いた。蛍光画像化のために、追加のロングパスフィルター7(660AELP, Omega Optical, Brattleboro, VT)をカメラレンズに取り付けた。CCDカメラ9を画像データを記憶、処理及び/又は表示できるように、さらに本明細書に記載されているように分光分析を実施できるように構成されているコンピュータ10又はその他の処理配置と連動して提供されている。
【0036】
励起及び放出偏光子の間の角度は約55°であった。システムが提供する最大視野は3.3×2.9cmであって、観察された方位分解能は25μmより優れていた。距離分解能は70〜200μmの間で変化した。組織上への光の出力密度は0.3mW/cm2を越えなかった。照明、捕捉及び画像処理を、Metamorph 6.0 rl 画像ソフトウェア(Molecular Devices Corporation, CA)を用いて開発されたコードによってコントロールした。反射率測定は両偏光について約3秒又はそれ以内に得て、蛍光画像は約5秒又はそれ以内に得た。
【0037】
図1に示した装置は、例えば、米国特許第7,289,205号に記載されているように、皮膚癌等の高コントラスト反射率及び蛍光偏光画像を得るために用いることができる。単色光分光器2を更に、Xe−Arcランプ1からの光を特定の波長で組織試料11上に提供するように構成してもよい。これらの特定の波長で反射した光をCCDカメラ9で検出してCCDカメラ9からの信号をコンピュータ10に提供することができる。コンピュータ10は、本明細書に記載されている典型的なデータ及び手法を用いて、ある特定の波長で試料11のある特定の領域から反射された光の強度を分析して、例えば組織サンプル11のこれらの領域内の癌組織から健常な組織をうまく区別)できるように構成されていてよい。
【0038】
残留非黒色腫皮膚癌を有する20の新たに切除した厚い皮膚試料を、Dermatologic Surgery Unit of Massachusetts General Hospital で実施されたモース顕微鏡手術によりIRBに承認されたプロトコルの下で、20人の患者から得た。病変の特性を表1に要約している。
【0039】
市販のMB色素(メチレンブルー注射液、1%、American Regent Inc., Shirley, NY)を本技法に用いた。MB色素をダルベッコのリン酸緩衝溶液(DPBS、1X、pH7.4、Mediatech, Herndon, VA)を用いて0.2mg/mlの濃度に希釈して、37℃の温度で保持した。試料を最大2分間希釈したMB色素に浸した。過剰な色素を除去するため、試料をpH7.4を有する生理食塩水で軽く洗浄した。次いで、各組織試料を、皮膚面を上にして、ペトリ皿内、生理食塩水で湿らせたガーゼの上に載せ、顕微鏡スライドガラスで覆って、画像化した。全ての組織試料の画像処理は室温で実施した。
【0040】
表皮反射率画像を、395nm〜735nmの範囲で10nmごとに実験的に得られた共通及び交差偏光画像の差として算出した。組織の蛍光偏光画像を:
F=(Fco−Fcross)*100/(Fco+Fcross) (1):
として算出した。ここにおいて、Fは蛍光偏光画像であり、Fco及びFcrossはそれぞれ、共通及び交差偏光蛍光エミッション画像である。画像処理はリアルタイムに行った。
【0041】
共通偏光反射率画像を得て、画像中のそれぞれの皮膚構造についての特定波長における拡散反射率及び光学密度の値を確認するために用いた。以下の構造のスペクトル応答、例えば、光学密度及び対応する波長導関数を分析してデータベースに記憶した:癌性腫瘍、毛嚢、皮脂腺、表皮、コラーゲン、及び皮下脂肪。
【0042】
35の共通偏光反射率光画像のスタックを、395nm〜735nm範囲の波長で、10nm間隔で取得した。目盛り付きのグレイ基準(395nm〜735nm範囲において約35%の反射率を有している)をカメラの視野に置いて拡散反射率の絶対的定量を促進した。それぞれの実験スペクトルを735nmで測定した拡散反射率の値で割った。この波長はMB色素の吸収バンドの外に存在するので、この正規化はバックグラウンド吸収の可能性のある影響及びスペクトル分析上の分散に対する補償をもたらす。BCCの典型的なグレイスケールでコード化した量的反射率及び蛍光偏光画像を、それぞれ図2a及び2bに示した。
【0043】
それぞれの波長で取得したそれぞれの共通偏光反射率画像について、皮膚構造の絶対拡散反射率及び光学密度を以下の式を用いて算出した:
Rλ=0.35*RλS/Rλref (2)、
及び
ODλ=log(1/Rλ) (3)、
ここで、Rλは皮膚構造の絶対拡散反射率を示し、Rλrefはグレイ基準の相対拡散反射率を示し、RλSは皮膚構造の相対拡散反射率を示し、そしてODλは皮膚構造の光学密度を示す。それぞれは特定波長におけるものである。次いで、観察した光学密度の波長導関数を算出した。
【0044】
スチューデント両側t−検定(Satistica 6.0, StatSoft, Inc, Tulsa, OK)を用いて、選択された一連の波長について、正常皮膚構造と癌組織の間の、得られた光学密度及びそれらの波長導関数の差異の有意性を評価した。健常と癌性組織の間の光学密度及び対応する波長導関数における差を、算出した有意確率(p−値)が0.05に等しいかそれ以下である場合に、統計的に有意差があると考えた。この解析の結果を表に要約して、光学密度及びそれらの波長導関数が正常と癌性組織間で有意に差があるスペクトル領域の同定を促進した。
【0045】
En face H&E染色凍結切片を、標準的なモース顕微鏡手術法を用いて、画像化した組織ブロックから加工した。Axiophoto 顕微鏡(Carl Zeiss, Thornwood, NY)と連動しているSPOT RT 顕微鏡デジタルカメラ(Diagnostic Instruments, Inc. Sterling Heights, MI)を用いて切片の高分解能画像を得た。H&E切片中の腫瘍境界を光学画像にアクセスしていない認定病理学者が確認した。次いで、定量的反射率(665nmにおける)及び蛍光偏光光画像を著明な組織構造と比較した。
【0046】
図2cに示されている、典型的なH&E病理組織を、図2a及び2bに示されている反射率及び蛍光偏光画像とそれぞれ、比較することができる。図2cの腫瘍は認定病理学者によって輪郭が描かれている。腫瘍の位置、大きさ、及び形状は、図2cの病理組織で同定された腫瘍境界とよく相関している。図2a及び2bの光学画像に示されているBCCは、図2cの同じ倍率で作成された病理組織と比較してより高いコントラストを示している。
【0047】
図2aに示されている、表面反射率画像は、ダークグレイにコード化されている最も高い光学密度部分が、腫瘍の位置に対応することを示している。しかしながら、表皮(図2a及び2bの光学画像では白色実線矢印で、図2cの病理組織画像では黒色実線矢印で示されている)、毛嚢(図2a及び2bの光学画像では白色点線矢印で、図2cの病理組織画像では黒色点線矢印で示されている)、及び皮脂腺(図2a及び2bの光学画像では白色破線矢印で、図2cの病理組織画像では黒色破線矢印で示されている)のある部分は相当量の色素を蓄積していて腫瘍と混同するかもしれない。
【0048】
光学画像(図2a及び2b)の対応する病理組織(図2c)との直接定性的比較は、表皮、毛嚢及び皮脂腺は、それらの形態学的外観によって腫瘍から区別できることを示唆している。しかしながら、組織構造が腫瘍に関連しているかもしれないので、小さい癌巣を確実に検出できて反射率偏光画像に適合している時間効率の良い方法が有益だろう。図2bの蛍光偏光画像において、腫瘍は、サンプルの正常組織と比べて、高い蛍光偏光(グレイの明るい影で示している)を示している。毛嚢、及び皮脂腺のような、皮膚付随物はこの画像で容易に区別できない。しかしながら、蛍光偏光画像においてさえも、表皮に沿って(図2bにおいて白色実線矢印で示してあり、これは図2aの同じ位置の暗いピクセルにほぼ対応する)そして毛嚢の近辺に(白色点線矢印で示してある)悪性を明示する幾つかの明るいピクセルがある。表皮に沿った明るいピクセルは図2bの白いバックグラウンドに対して容易に区別できないが、このような特徴は、同じ画像データを用いて作成できるカラーコード化画像において、より容易に識別することができる。
【0049】
従って、毛嚢、皮脂腺及び表皮のような、幾つかの通常の皮膚組織構造は、組織の光学画像化に適用できる幾つかの色素を保持することができる。これらの構造の幾つかは、カラーコード化反射率画像では赤く見えて、カラーコード化蛍光画像では緑色に見える。このような組織構造の特性化における曖昧さを解決するために、反射率画像に存在するこれら皮膚構造のスペクトル応答を特性化した。
【0050】
図2dは、腫瘍及びその他の構造を含有しているMB色素で染色した皮膚組織の光学密度の波長依存性を示し、ここではこのような密度をサンプルの間で平均している。図2dの曲線は、最も右のピーク(例えば、約680nmにおける)の上から下への順に、以下の構造に対応している:腫瘍、毛嚢、皮脂腺、表皮、コラーゲン、及び皮下脂肪。
【0051】
MB色素の濃度は腫瘍で最も高く、これはおよそ615nm及び665nmのメチレンブルーの2つの吸収極大値に対応するスペクトル領域における光学密度の増大をもたらしている。毛嚢において色素の濃度はいくらか低いように見えるが、これら2つの構造(腫瘍及び毛嚢)のスペクトル応答はかなり似ている。皮脂腺のスペクトル応答は、MB色素吸収波長の範囲570nm〜710nmにおけるこれら皮膚付随物の光学密度が、癌性腫瘍と比較すると非常に低いことを示唆している。
【0052】
表皮の光学密度スペクトルにおいて、約615nmのMB色素吸収ピークは、約665nmの第2吸収ピークよりもより明確に現れる。この特性は、癌性腫瘍組織と表皮の間の輪郭付けにおいて、前者が後者のこの2つの吸収ピーク光度と反対の相対振幅を示すので、両者の間の輪郭付けを容易にする。また、表皮と腫瘍の光学密度曲線の比較は、腫瘍がより多くの色素を蓄積して、665nmのMB吸収バンド付近で相当に高い光学密度を示すことを表示している。
【0053】
コラーゲン及び脂肪は相当量の色素を蓄積するとは見られないので、腫瘍とより容易に区別することができる。更に、皮下脂肪のスペクトルは、他の皮膚構造と比較して、395nm〜560nmの波長範囲でより高い光学密度を示す。この所見は、皮下脂肪のより高いヘモグロブリン含量と関連しているのかもしれない。
【0054】
従って、図2dに示すように、検討した皮膚構造それぞれは、一部は各種皮膚構造による色素の異なった取り込みに基づいて、MB色素の吸収バンド内で異なったスペクトル応答を示す。MB色素で染色した皮膚構造のスペクトル特徴を、良性組織から癌を確実に区別するために用いることができるということを確認するために、BCCを含有している20の新鮮な厚いサンプルから収集した癌、毛嚢、皮脂腺、表皮、コラーゲン及び脂肪の光学密度を測定して統計学的に解析した。検討した皮膚構造全てについて光学密度の波長への平均依存度を図3a〜3eに示す。
【0055】
図3a〜3eに示すデータは、MB色素の吸収バンド内で、癌組織の光学密度が他の皮膚組織より実質的により高いようであるということを示している。また、390nm〜485nmの波長に対する、表皮と癌の光学密度の差が相当あると観察された(例えば、図3cを参照されたい)。このスペクトル領域はヘモグロビンのソーレー吸収バンドにほぼ対応している。例えば、癌組織は一般に血液を含有しているのに対して、健常な表皮は一般に無血であることが観察されている。従って、観察された光学密度の差異はある程度腫瘍と表皮の血液含量の差に基づいているのだろう。
【0056】
ヘモグロビン含量の差及びコラーゲン及び脂肪の比較的低い色素取り込みによって、コラーゲン−腫瘍、及び脂肪−腫瘍の対の光学密度の差異は、図3d及び3eに示すように、実質的に検討した全てのスペクトル領域にわたって有意であった。
【0057】
癌と近接の正常皮膚組織の間には血液含量の差にかなりのばらつきがある。更に、反射率の測定は、血液の酸化によって、更には身体の病変の部位によっても影響を受けるだろう。従ってヘモグロブリン吸収のスペクトル領域において確認された差異は、組織識別に対する一般的な信頼できる基礎をもたらせない。本明細書に提示されている組織構造光学密度のスペクトル解析は、毛嚢の可能性を除いて(図3bを参照されたい)、検討した各種組織構造について、615nm〜700nmの波長に対する腫瘍と健常皮膚構造の間の光学密度の差異が有意であったことを示している。(図3a、3c、3d及び3eを参照されたい)。従って、光学画像解析に関するスペクトル変動の更なる解析は、600nm〜735nmのスペクトル領域に焦点を合わせることができる。
【0058】
腫瘍と毛嚢の間の確実な分光学的区別を達成することについての課題に対処するために、癌及び正常組織について光学密度の波長導関数を算出して解析した。例えば、メチレンブルー色素は、局所の生物化学環境に応じて、異なった吸収特性を示すことが観察されている。従って、MBで染色した癌と毛嚢の光学密度曲線の勾配において観察された僅かな偏差はこれら2つの構造の生物化学環境における差異によって引き起こされたのかもしれない。再現可能なら、このような偏差は、癌の周辺健常組織からの明確な区別を促進するために用いることができる。
【0059】
波長に対する異なった組織の光学特性の導関数は、好ましくは5nm以上離れて大きい波長で実施した測定値に基づいて算出できる。一般に、5nm未満異なっている2つの波長における組織の光学特性に有意な或いは課題解決を容易にするような変化は見られないだろう。具体的には、組織の光学特性に関する導関数情報は、少なくとも約5nm、例えば、約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm、又は約5nm〜約15nm、例えば約10nm異なっている2つ又はそれ以上の波長における光学特性を測定して得ることができる。このような導関数情報を確認するために用いられる波長は、このような導関数を算出するときに、波長依存性光学特性における局所最大値又は最小値を越えることを避けるために、約30nm未満異なっていることが好ましい。このような導関数を算出するための本明細書に記載されている実施例で用いられている約10nmの典型的な波長差は、光学特性変化の解明と局所波長依存性導関数の正確な概算の間の良好な妥協をもたらす。
【0060】
腫瘍組織と比較した各種健常組織構造に関する光学密度の波長導関数についての得られた依存性を図4a〜4eに示した。正常(健常)組織構造と癌組織との対の光学密度及び対応する波長導関数の間の差異の有意性を評価するために、非対の両側t−検定を用いた。癌組織とその他の正常皮膚型組織の間の相違領域をより良く確認するためには、標準的なANOVA分析で開始するよりむしろ、対のt−検定を利用した。従って、単独の健常皮膚型組織を個々に癌組織サンプルに対して試験した。
【0061】
比較試験の結果を表2に要約している。これらのデータは、毛嚢を除いて(図4bに示してある)、全ての癌−正常組織の対の、MB色素の吸収最大値の1つに対応する、665nmの波長における光学密度に統計的な有意差があることを示している。癌と毛嚢の間の光学密度の波長導関数における最も大きな統計学的に有意な差が615nm、705nm、及び735nm(ここで615nmはMB色素の別の局所吸収最大値にほぼ対応している)の波長で観察された(図4bを参照されたい)。
【0062】
光学密度の波長導関数の差が、試験した全ての癌−正常組織の対において705nmで有意に観察された。従って、癌及び正常皮膚組織の明確な区別に適している特定のスペクトル領域が、反射率画像のスペクトル解析を用いて確認された。これらの波長領域は、MB色素の局所最大値にほぼ対応している、615nm及び665nmの波長を包含している。
【0063】
従って、組織画像のスペクトル解析を、画像収集手法を著しく変更せず、或いは手法を実施するために必要な時間及び複雑さを増大せずに、癌検出手法に組み込むことができる。例えば、図1に示す典型的な装置を、本明細書に記載されている画像収集及び分析手法の実施に適合することができる。単色光分光器2を、癌及び正常組織の間の光学密度の波長導関数に有意な差が見出された本明細書に記載の1つ又はそれ以上の特定波長で光をXe−Arcランプ1から提供するように構成することができる。コンピュータ10を、特定の試料11から反射するこの光の強度を解析してCCDカメラ9によってこれらの波長で検出するように設定することができる。これらの波長における画像の領域の光学密度を本明細書で提供されるデータと比較することは、組織サンプル11のこれらの領域における健常組織と癌組織の間のより正確な区別を促進できる。
【0064】
全可視スペクトル領域に関する画像中の各ピクセルの完全な分光分析を実施することは可能であるが、この包括的なアプローチは本明細書に記載されている組織同定分析を実施するための最適な又は望ましいアプローチではないだろう。例えば、1100×1300ピクセルを含有している画像についてのわずか10の波長の分析には、極めて長い時間を必要とし、このアプローチを手術中の使用に不適切なものとしている。更に、反射率及び蛍光偏光画像は一般に、組織画像における大部分のピクセルについて十分正確な情報をもたらすので、そのような詳細なアプローチはかなり冗長となるであろう。それに対して、RFPI技術と、手術中に画像を精査している外科医にとって疑わしいと思われる画像の領域(例えば、数本又はそれ以上のピクセル)の2波長スペクトル分析との組み合わせは、臨床診療に適しているより現実的なアプローチを提供するだろう。
【0065】
従って、癌性組織及び健常組織構造の両方につぃての光学密度及び対応する波長依存性導関数の解析は、RFPI手法を実施する場合に、非黒色腫皮膚癌のより正確な輪郭付けを容易にできる。MB色素の吸収バンドに対応しているスペクトル領域を、癌組織、例えばBCCの正確な区別化のために用いることができる。本明細書に記載されている腫瘍輪郭付け技術は、例えば、複数の波長での画像化を包含する。例えば、2つの監視波長、例えば、約615nm及び約665nmにおける分光分析は、ある特定の正常皮膚構造の観察される光学密度及び対応する波長依存性導関数がこれら波長における癌組織のそれとは有意に異なっているので、このような区別化を有意に改善する。従って、本発明の実施態様は、リアルタイムで正確な癌の輪郭付けを容易にする、反射率及び蛍光偏光画像とこのようなスペクトル分析を組み合わせる方法及び装置を提供する。このような輪郭付けは、例えば、手術前、手術中、及び/又は手術後に実施でき、インビボ又はエクスビボでも実施できる。
【0066】
特定組織の分析に用いる波長は、様々な基準に基づいて選択できる。例えば、サンプル中に血液が存在しているならば、血液により強く吸収される410nm又はその近くの波長を使用して、血液吸収の影響を評価及び/又は除去を促進すること、及び/又はスペクトル分析手法において血液と色素の影響を区別することができる。約1100nm〜約1300nmの参照波長も、例えば、組織構造のある特定の型を区別するために用いることができる。散乱効果を優先するように、この波長領域内にあまり強くない吸収体が存在してもよい。一方、約1400nmの波長付近で水の吸収が比較的強いので、この波長領域は散乱効果を試験するためには望ましくない。
【0067】
前述は発明の本質を説明したにすぎない。記載された実施態様に対する多くの修正及び変更は、本明細書の教示を考慮すると当業者に明らかであろう。従って、当然のことながら、当業者は、本明細書に明確に記載されていないが、本発明の本質の具体化であって従って本発明の精神及び範囲の内である多くの方法を見出すことができるだろう。本明細書で引用されている全ての特許及び刊行物は、参照によりその全てが本明細書に取り込まれている。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年4月14日に出願した米国仮特許出願第61/169,258号の優先権を主張し、その開示は、参照により、その全てが本明細書に取り込まれている。
【0002】
(技術分野)
2つ又はそれ以上の特定波長における、異なった組織型による色素の吸収特性及び/又はその他の光学的相互作用を比較することによって、組織サンプル中の癌組織又は生体組織のその他の特定な型の正確な輪郭付けを容易にする方法及び装置を特徴としている。この方法及び装置は、とりわけ、手術中リアルタイムに、非黒色腫皮膚癌(例えば、基底細胞癌)の輪郭又は境界を提供するために用いることができる。
【背景技術】
【0003】
非黒色腫皮膚癌はヒトの癌の非常に一般的な形態である。統計的に、白人の約4人に1人が彼らの生涯の内に少なくとも1つの病班を発症することになる。基底細胞癌(BCC)は総非黒色腫癌の約80%を構成し、そしてその発生率はめざましく増大している。これらは、一般に、頭及び頸のような体の日光露出部上に現れるので、これらの腫瘍の周りの正常な皮膚を保護する必要がある。BCCは外観を損なうが殆ど死に至らない(例えば、これらは年に約3000人の死因となる)。しかしながら、その有病率により、これらの治療費は1年当たり6億ドルを超えている。
【0004】
BCCは通常手術によって治療される。これらの腫瘍はよく顔に発症してめったに転移しないので、それを切除する際にはできるだけ多くの健常組織を保護することが重要である。しかしながら、多くの場合、病変部の明暗差は乏しく、そしてこれらの腫瘍は明確な境界を有しておらず、これは目視的な腫瘍局在診断及び正確な切除を困難にしている。
【0005】
モース顕微鏡手術(MMS)は、手術中に切除縁部を完全にコントロールできる臨床技術である。この技術は、切除する病変部の詳細なマッピング及び顕微鏡的コントロールを用い、裸眼では見えない腫瘍に関わっている手術切除縁の領域を正確に示すことができる。正確で精密であるが、MMSは時間がかかり、そして通常皮膚病理学の訓練を積んでいる外科医、専用の実験室及び凍結切片を調製して評価する技術者を必要とする、人材集約的な手法である。これらの欠点のために、MMSは少数の症例でしか用いられていない。従って、手術中の縁部コントロール問題に取り組むために、新規な技術及び治療手順を導入しなければならない。
【0006】
光学的画像法の最近の進歩が、完全なBBC腫瘍境界の、精密でリアルタイムで費用効率が高い手術中検査を技術的に可能にしている。しかしながら、これらの技術は、一般に臨床の場における実用的用途に必要な要素の1つ又はそれ以上が不足している。インビボでの使用に適しているFDAに承認されている造影剤又は色素、例えばメチレンブルー(MB)は病変部によく適用されているが、正常組織及び病的組織由来の光信号の本質的な相違が希薄であることが多い。MBは、膀胱の新生腫瘍、膵臓の腫瘍、及びバレット食道異形性を大まかに境界付けるために成功裏に適用されている。MB色素は、正常細胞と比べると、癌細胞のミトコンドリアに非常に多く蓄積される傾向があるが、100%特異的ではない。毛嚢、皮脂腺及び表皮のような、健常な皮膚組織構造も幾つかの色素を保持できる。しかしながら、これらの組織の外観及び色素濃度は、癌のそれとはかなり異なっている。
【0007】
色素によって強化された反射率及び蛍光偏光画像化(RFPI)を包含する、幾つかの補完的技術は、94%を越える成功率でリアルタイムの高コントラスト画像を提供できる。このような技術は、例えば、米国特許第7,289,205号に記載されている。しかしながら、このような技術は癌組織と、類似の光学密度を示す、ある特定の組織、例えば、毛嚢等を明確に区別できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、上記の欠陥を考慮して、単純で、より正確で、そして/又は時間効率のよい方法は腫瘍の境界をマッピングするために、そして腫瘍組織と健常組織の識別を向上させるために好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の必要性を満たすこと、及び特に上で検討した欠陥並びに通常の当該技術分野における欠陥に対処することに関している。
本発明の実施態様は、健常組織構造及びその他の組織構造(例えば、BCCのような癌組織)の両方を含有する組織サンプル内の複数の地点における、ある特定の波長に依存する光学特性、及び随意に、そのような光学特性の対応する波長導関数(derivative)の分析を包含する方法及び装置を提供する。光学特性は、造影剤、例えば、メチレンブルー(MB)のような色素で処理されている組織の局所的な反射率及び光学密度を包含できる。各波長における偏光情報も用いることができる。このような方法及び装置は、例えば、色素で増強した反射率及び/又は蛍光偏光画像化方法と組合せて用いたときに、非黒色腫皮膚癌領域の輪郭付けを容易にすることができる。
【0010】
本発明の一実施態様では、本発明は、2つ又はそれ以上の特定波長において、色素のような造影剤で処理した組織領域又はサンプルを画像化することを包含する、腫瘍境界付け技術を提供する。画像化用の光は、単色光源によって、又は広帯域光源及び2つ又はそれ以上の単色フィルター(偏光フィルターであってもよい)によって提供できる。
異なった組織構造、例えば、各種の健常皮膚構造及び癌組織に関連する局所的な光学密度、反射率、又はその他の光学特性は、そのような特性の値がある特定の組織型又は構造に関して類似している場合であっても、異なった構造に対する波長に関しては異なった変化率を示しうる。従って、この技術を用いる組織の画像分析のための方法及び装置は、周囲の健常組織から、癌組織のような構造をより正確に区別するのに十分である、たった2つの監視波長で迅速な分光分析を提供することができる。
従って、本発明の実施態様は、癌組織又はその他の組織構造の手術中のリアルタイムで正確な同定及び輪郭付けを容易にする方法及び装置を提供することができる。
【0011】
本発明の別の実施態様では、このような光学特性の波長依存導関数を確認して、組織領域を画像化するために及び/又は組織内の異なった組織を区別するために用いることができる。このような導関数は、少なくとも5nm異なっている波長、例えば、約5nm〜30nm、又は約10nm〜20nm異なっている波長で得た測定値に基づいて見積ることが好ましい。
【0012】
更なる実施態様では、インビボ画像を実施する場合は、造影剤はメチレンブルーであってよい。この造影剤で用いられる少なくとも1つの波長は、約600nm〜約735nmが好ましい。例えば、約615nm及び/又は665nmの波長を用いることができる。これらの波長はメチレンブルーの吸収極大に一致するので、異なった組織型の同定及び/又は輪郭付けを容易にする大きい信号を提供できるからである。エクスビボで組織を画像化する場合は、トルイジンブルーのような造影剤を用いることができる。
【0013】
本発明の更なる実施態様では、試験する組織に基づいて別の波長を用いることができる。例えば、画像化又は区別すべき組織の血液含量のレベルが有意に異なっているならば、約410nmに近い波長を用いることができる。画像が主に散乱挙動に基づいていることが望ましいならば、約1100nm〜約1300nmの波長も用いることができる。
【0014】
また本発明の更なる実施態様では、蛍光偏光及び/又は反射率偏光情報を、2つ又はそれ以上の波長で、組織領域内の複数の地点で得ることができる。このような情報も、組織領域内の異なった組織構造及び型を画像化及び/又は輪郭付けるために用いることができる。
【0015】
本発明の更に別の実施態様では、組織領域内の2つ又はそれ以上の波長で測定された光学特性を、各種組織型に関するそのような特性の既定波長依存値と比較することができる。1つ以上の波長における局所的光学特性のこのような比較は、単一波長で得られた光学特性の測定値と比較して、組織型のより正確な同定及び輪郭付けをもたらすことができる。組織サンプルで検出又は測定された値と比較するために用いられるこのような既定光学特性は、波長に関する測定された光学特性の導関数も包含する。
【0016】
本発明の別の実施態様では、少なくとも2つの異なった波長を有する光で組織サンプルを照射するように作られている光源、それぞれの波長で組織サンプルから送られた光を検出するように作られている1つ又はそれ以上の検出器、及び本明細書に記載されているような組織サンプル中の異なった組織型又は構造を画像化、同定及び/又は輪郭付けるように作られているアナライザーを包含している装置が提供される。装置は、偏光特性を組織サンプルの画像化のために用いる場合は、偏光フィルターを包含していてもよい。
【0017】
本発明に従って提供される方法、システム及び装置は、非黒色腫皮膚癌の境界をリアルタイムに手術中に画像化及び輪郭付けるために、腫瘍切除術を加速するために、そして実施できる外科手術の数を増やすために特に有用である。例えば、本発明の実施態様を実際の腫瘍切除手術を誘導するために用いることができる。このような改善は、スペクトル解析をRFPI手法及びリアルタイム腫瘍輪郭付け手法を容易にするシステムに組み込むことによってもたらされる。
【0018】
本発明のこれらの及び別の目的、特徴及び利益は、図面を同時に用いて以下の詳細な説明からより明らかになるだろう。
【0019】
本発明に関わる当業者が、如何にこれを作成してこれを使用するかをより容易に理解するために、言及は図面を有すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、反射率及び蛍光偏光画像化を実施できるように作られている例示的な装置の略図である。
【図2】図2aは、基底細胞癌を含有している16×7mmの頭皮組織試料画像の665nmにおける例示的なグレイスケール表面反射率画像である。 図2bは、図2aに示されている組織試料の615nmで励起して、及び660nm〜750nmの範囲で記録した蛍光偏光画像である。 図2cは、有資格病理学者によって腫瘍境界が描かれている、図2aに示されている組織試料のH&E凍結組織構造の画像である。 図2dは、癌組織及び健常組織構造について得た平均化した光学密度スペクトルのグラフである。
【図3】図3a〜3eは、BCC−健常組織構造の対についての、20以上のサンプルを平均した、光学密度スペクトルのプロットである。(a)BCCと皮脂腺、(b)BCCと毛嚢、(c)BBCと表皮、(d)BBCとコラーゲン、そして(e)BBCと皮下脂肪。
【図4】図4a〜4eは、BCC−健常組織構造の対についての、20以上のサンプルを平均した、波長依存的光学密度導関数のプロットである。(a)BCCと皮脂腺、(b)BCCと毛嚢、(c)BBCと表皮、(d)BBCとコラーゲン、そして(e)BBCと皮下脂肪。
【0021】
ここで本発明を図面を参照して詳細に記載するが、これは説明的な実施態様に関連するものであって、図に例示している特定の実施態様によって限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
生物造影剤、例えば、MBのような染色剤又は色素を、異なった型の組織内に別々に分布させることができる。色素分布のこのような変化は、局所的な色素濃度の違いに部分的に依存している、スペクトル吸収及びその他の光学特性の変化をもたらす。その他の因子も、組織中の血液/ヘモグロビン又はその他の光吸収物質の局所濃度のような、観察される光学特性に影響を及ぼす。従来の組織同定技術では、広帯域光源又は単一波長を用いて測定された染色組織の光学特性を比較して、色素分布の変化に基づく組織型の相違を同定できる。しかしながら、ある特定の区別しうる組織型が、このような測定で類似の光学特性を示すかもしれず、これはサンプル中の組織型の同定又は区別化に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0023】
2つ又はそれ以上の波長におけるある特定の光学特性を、組織サンプルの領域内の複数の位置で測定できる。それぞれの波長における特性の差異を、領域内の異なった位置におけるそのような特性の差異と共に、比較又は分析できて、組織領域の画像化及びサンプル内の組織型のより正確且つ/又は信頼性のある同定を提供するために用いることができる。
【0024】
測定された光学特性は、例えば、組織サンプルの領域の反射率(例えば、絶対反射率スペクトル)、光学密度、等、又はこれらの組み合わせを包含できる。特定の光学特性を、試験する組織に基づいて選択することができる。例えば、反射率は直接測定できるが、反射率の値は通常、サンプルの厚さに部分的に依存する。対照的に、光学密度は組織の固有の特性であるが、その測定は組織自体に関するある特定の前提に基づいている。光の多種偏光、非偏光、又はこれらの組み合わせを本明細書に記載のような組織型の輪郭付けを容易にするために用いることができる。光学分析に用いる画像の型を、例えば、非偏光、又は共通偏光強度(Ico)及び交差偏光強度(Icross)の各種組み合わせを基にすることができる。このような組み合わせは、信号差(例えば、Ico−Icross)、比(例えば、Ico/Icross)、相対的差(例えば、(Ico−Icross)/(Ico+Icross))等に基づくスペクトルデータを包含できる。典型的な適用において、交差偏光に基づく信号を用いると深部組織の輪郭付けが改善されるのに対して、共通偏光及び交差偏光強度の間の差を用いるとより表面の組織がより良く輪郭付けられる。
【0025】
多種の色素又は染色剤を用いることができる。メチレンブルー(MB)は、インビボでもエクスビボの組織サンプルでも用いることができる、FDAに承認された染色剤である。その他の色素も、特にエクスビボの組織分析のために用いることができる。例えば、トルイジンブルー(TB)は、本明細書に記載されている分析のためにエクスビボの組織サンプルを染色するために用いることができる。TBは吸収スペクトルをMBと比べてスペクトルの黄色領域の方向にシフトさせることができ、これは一般に血液の吸収領域により近い。従って、血液を大量には含有していない組織の分析に好ましい。
【0026】
組織サンプルのある特定の領域の光学特性は、本明細書に記載のように、2つ又はそれ以上の波長で測定することができる。用いられる波長のうちの1つは、色素吸収スペクトル内の極大値又はピーク値、或いはその近くでよい。例えば、MB色素を用いる場合は、波長の一方は、MBについての吸収極大値にほぼ対応する、615nm又は665nm或いはその近くでよい。一般に、そのような最大値の近辺(例えば、MBに対して、約600nmと約685〜700nmの間)の波長が、差別化を促進する、より大きな信号及び対応する信号間の大きな差をもたらすので、好ましい。その他の色素を用いる場合は、特定の色素に対応する吸収ピーク値又はその近くの異なった波長を用いることができる。吸収最大値に近い少なくとも1つの波長の使用は測定する強度に対してより大きな信号を提供でき、これはサンプル内の異なった組織型及び領域に対するそのような信号間の区別化を促進できる。
【0027】
光学特性(例えば、吸収強度)はこれらの波長で又はその近辺でも得られる。従って、異なった組織領域に対して、単一の波長における吸収強度(又は広帯域光源由来の単一波長分布)を単に比較するよりむしろ、2つ又はそれ以上の波長における相対的な吸収動態を比較できる。異なった波長における組織の色素との相対的光学相互作用のこのような分析は、サンプルの異なった組織領域内の組織型の間のより詳細且つ/又は正確な差別化をもたらすことができる。
【0028】
本明細書に記載されているような波長依存的光学特性の導関数の分析も、サンプル領域内の組織型の輪郭付けを提供するか或いは改善することができる。例えば、波長に関連するある特定の光学特性の値についての導関数を、特定の波長で見積ることができる。このような特性導関数は、異なった組織型に対してそのような光学特性の絶対値が同一又類似していても、組織型又は領域間の差別化をもたらすことができる。
【0029】
光学特性に対する波長導関数情報は、通常の数学的技法を用いて算出できる。例えば、本明細書に記載されているような特定の光学特性は、組織サンプル内の特定位置において、2つの異なった波長で測定できる。導関数情報を見積るために用いられる波長間の差は約5nmより大きいこと、例えば約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm又は約5nm〜約15nm、例えば10nmであることが好ましい。本明細書に記載されているような導関数情報を算出するために用いられる波長の差は、異なった波長で測定される光学特性の区別可能な値を作成するのに十分大きくて、波長に関する特性の局所的導関数の正確な見積りをもたらすのに十分に小さいことが好ましい。
【0030】
第1導関数は通常の線形方程式を用いて、例えば、各波長における特性の測定値間の差を取って、この差を、特性を測定した波長の差で割ることによって、見積ることができる。例えば、波長bにおける導関数は、2つの波長b及びcにおける光学特性pを測定して見積ることができ、ここで、c=b+δである。好ましくは、δは少なくとも約5nm、例えば、約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm、又は約5nm〜約15nm、例えば10nmである。dP(b)/dλ(ここでλは波長を示す)で表される、波長bにおいて測定された光学特性Pの導関数の概略値は、[P(c)−P(b)]/(c−b)で表すことができる。この手法は、波長b+δ/2(これはδが小さいときにbに近い)における波長に関する光学特性値の第1導関数の見積値をもたらす。
【0031】
更なる態様では、波長に関する光学特性の第2導関数情報も組織の画像化及び/又は特定組織構造の同定に用いることができる。波長に関する光学特性の第2導関数は、通常の3点技法を用いて見積ることができる。波長bにおける導関数は、3つの波長a、b、及びc(ここでa=b−δそしてc=b+δである)における光学特性Pを測定することによって、見積ることができる。好ましくは、δは少なくとも約5nm、例えば約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm、又は約5nm〜約15nm、例えば、約10nmである。d2P(b)/dλ2として表される、波長bにおけるPの第2導関数は、[P(a)−2*P(b)+P(c)]/δ2として概算できる。この式は、波長bにおける波長に関する光学特性の第2導関数の見積をもたらす。
【0032】
組織サンプル内の組織構造を画像化及び/又は同定するために用いられる導関数情報は、第1導関数情報、第2導関数情報、又は両者を包含できる。導関数情報は、上記のようにして、異なった波長における特定の位置で実施された光学特性の測定値から算出できる。
【0033】
複数の波長において組織型のサンプルの光学特性を最初に測定し、次いで上記のようにして導関数情報を算出することによって、特定の組織構造又は組織型(例えば、毛嚢、腫瘍、皮脂腺等)に関するそのような導関数情報のデータベース又は表を作成することもできる。このような導関数情報をコンピューターで読み込み可能な媒体内に記憶でき、次に組織サンプル内の特定位置で得たこのような導関数情報と比較でき、サンプル内の組織型の正確な同定及び/又は画像化を促進することができる。このような導関数情報は、例えば、特性を測定する波長に関する光学特性の第1導関数及び第2導関数を包含できる。このような手法の更なる詳細を以下に記載する。
【0034】
偏光増強反射率及び蛍光画像化に使用できる例示的なシステムの概略図は図1に示される。MS275回析格子単色光分光器2(Oriel Instruments, Stratfold,CT)に接続している500WのXe−Arcランプ1(Spectra Physics Oriel, Stratfold,CT)を光源として用いた。この光源1からの光を光誘導管3(Oriel Instruments, Stratfold,CT)を介してサンプルステージ上の組織試料11に送達した。ホログラフィック拡散器4(15°、Edmund Optics, Barrington, NJ)及び直線偏光フィルター5(Meadowlark Optics, Frederick, Co)を入射光の通路に導入して試料への均一直線偏光照明をもたらした。
【0035】
無彩色CCDレンズ8(Linos Photonics Inc., Milford, MA)及び回転直線偏光フィルター6(Meadowlark Optics, Frederick, CO)を装着した CCD CoolSnap HQ カメラ9(Roper Scientific, Tucson, AZ)を、試料の共通及び交差偏光反射率画像を捕らえるために用いた。蛍光画像化のために、追加のロングパスフィルター7(660AELP, Omega Optical, Brattleboro, VT)をカメラレンズに取り付けた。CCDカメラ9を画像データを記憶、処理及び/又は表示できるように、さらに本明細書に記載されているように分光分析を実施できるように構成されているコンピュータ10又はその他の処理配置と連動して提供されている。
【0036】
励起及び放出偏光子の間の角度は約55°であった。システムが提供する最大視野は3.3×2.9cmであって、観察された方位分解能は25μmより優れていた。距離分解能は70〜200μmの間で変化した。組織上への光の出力密度は0.3mW/cm2を越えなかった。照明、捕捉及び画像処理を、Metamorph 6.0 rl 画像ソフトウェア(Molecular Devices Corporation, CA)を用いて開発されたコードによってコントロールした。反射率測定は両偏光について約3秒又はそれ以内に得て、蛍光画像は約5秒又はそれ以内に得た。
【0037】
図1に示した装置は、例えば、米国特許第7,289,205号に記載されているように、皮膚癌等の高コントラスト反射率及び蛍光偏光画像を得るために用いることができる。単色光分光器2を更に、Xe−Arcランプ1からの光を特定の波長で組織試料11上に提供するように構成してもよい。これらの特定の波長で反射した光をCCDカメラ9で検出してCCDカメラ9からの信号をコンピュータ10に提供することができる。コンピュータ10は、本明細書に記載されている典型的なデータ及び手法を用いて、ある特定の波長で試料11のある特定の領域から反射された光の強度を分析して、例えば組織サンプル11のこれらの領域内の癌組織から健常な組織をうまく区別)できるように構成されていてよい。
【0038】
残留非黒色腫皮膚癌を有する20の新たに切除した厚い皮膚試料を、Dermatologic Surgery Unit of Massachusetts General Hospital で実施されたモース顕微鏡手術によりIRBに承認されたプロトコルの下で、20人の患者から得た。病変の特性を表1に要約している。
【0039】
市販のMB色素(メチレンブルー注射液、1%、American Regent Inc., Shirley, NY)を本技法に用いた。MB色素をダルベッコのリン酸緩衝溶液(DPBS、1X、pH7.4、Mediatech, Herndon, VA)を用いて0.2mg/mlの濃度に希釈して、37℃の温度で保持した。試料を最大2分間希釈したMB色素に浸した。過剰な色素を除去するため、試料をpH7.4を有する生理食塩水で軽く洗浄した。次いで、各組織試料を、皮膚面を上にして、ペトリ皿内、生理食塩水で湿らせたガーゼの上に載せ、顕微鏡スライドガラスで覆って、画像化した。全ての組織試料の画像処理は室温で実施した。
【0040】
表皮反射率画像を、395nm〜735nmの範囲で10nmごとに実験的に得られた共通及び交差偏光画像の差として算出した。組織の蛍光偏光画像を:
F=(Fco−Fcross)*100/(Fco+Fcross) (1):
として算出した。ここにおいて、Fは蛍光偏光画像であり、Fco及びFcrossはそれぞれ、共通及び交差偏光蛍光エミッション画像である。画像処理はリアルタイムに行った。
【0041】
共通偏光反射率画像を得て、画像中のそれぞれの皮膚構造についての特定波長における拡散反射率及び光学密度の値を確認するために用いた。以下の構造のスペクトル応答、例えば、光学密度及び対応する波長導関数を分析してデータベースに記憶した:癌性腫瘍、毛嚢、皮脂腺、表皮、コラーゲン、及び皮下脂肪。
【0042】
35の共通偏光反射率光画像のスタックを、395nm〜735nm範囲の波長で、10nm間隔で取得した。目盛り付きのグレイ基準(395nm〜735nm範囲において約35%の反射率を有している)をカメラの視野に置いて拡散反射率の絶対的定量を促進した。それぞれの実験スペクトルを735nmで測定した拡散反射率の値で割った。この波長はMB色素の吸収バンドの外に存在するので、この正規化はバックグラウンド吸収の可能性のある影響及びスペクトル分析上の分散に対する補償をもたらす。BCCの典型的なグレイスケールでコード化した量的反射率及び蛍光偏光画像を、それぞれ図2a及び2bに示した。
【0043】
それぞれの波長で取得したそれぞれの共通偏光反射率画像について、皮膚構造の絶対拡散反射率及び光学密度を以下の式を用いて算出した:
Rλ=0.35*RλS/Rλref (2)、
及び
ODλ=log(1/Rλ) (3)、
ここで、Rλは皮膚構造の絶対拡散反射率を示し、Rλrefはグレイ基準の相対拡散反射率を示し、RλSは皮膚構造の相対拡散反射率を示し、そしてODλは皮膚構造の光学密度を示す。それぞれは特定波長におけるものである。次いで、観察した光学密度の波長導関数を算出した。
【0044】
スチューデント両側t−検定(Satistica 6.0, StatSoft, Inc, Tulsa, OK)を用いて、選択された一連の波長について、正常皮膚構造と癌組織の間の、得られた光学密度及びそれらの波長導関数の差異の有意性を評価した。健常と癌性組織の間の光学密度及び対応する波長導関数における差を、算出した有意確率(p−値)が0.05に等しいかそれ以下である場合に、統計的に有意差があると考えた。この解析の結果を表に要約して、光学密度及びそれらの波長導関数が正常と癌性組織間で有意に差があるスペクトル領域の同定を促進した。
【0045】
En face H&E染色凍結切片を、標準的なモース顕微鏡手術法を用いて、画像化した組織ブロックから加工した。Axiophoto 顕微鏡(Carl Zeiss, Thornwood, NY)と連動しているSPOT RT 顕微鏡デジタルカメラ(Diagnostic Instruments, Inc. Sterling Heights, MI)を用いて切片の高分解能画像を得た。H&E切片中の腫瘍境界を光学画像にアクセスしていない認定病理学者が確認した。次いで、定量的反射率(665nmにおける)及び蛍光偏光光画像を著明な組織構造と比較した。
【0046】
図2cに示されている、典型的なH&E病理組織を、図2a及び2bに示されている反射率及び蛍光偏光画像とそれぞれ、比較することができる。図2cの腫瘍は認定病理学者によって輪郭が描かれている。腫瘍の位置、大きさ、及び形状は、図2cの病理組織で同定された腫瘍境界とよく相関している。図2a及び2bの光学画像に示されているBCCは、図2cの同じ倍率で作成された病理組織と比較してより高いコントラストを示している。
【0047】
図2aに示されている、表面反射率画像は、ダークグレイにコード化されている最も高い光学密度部分が、腫瘍の位置に対応することを示している。しかしながら、表皮(図2a及び2bの光学画像では白色実線矢印で、図2cの病理組織画像では黒色実線矢印で示されている)、毛嚢(図2a及び2bの光学画像では白色点線矢印で、図2cの病理組織画像では黒色点線矢印で示されている)、及び皮脂腺(図2a及び2bの光学画像では白色破線矢印で、図2cの病理組織画像では黒色破線矢印で示されている)のある部分は相当量の色素を蓄積していて腫瘍と混同するかもしれない。
【0048】
光学画像(図2a及び2b)の対応する病理組織(図2c)との直接定性的比較は、表皮、毛嚢及び皮脂腺は、それらの形態学的外観によって腫瘍から区別できることを示唆している。しかしながら、組織構造が腫瘍に関連しているかもしれないので、小さい癌巣を確実に検出できて反射率偏光画像に適合している時間効率の良い方法が有益だろう。図2bの蛍光偏光画像において、腫瘍は、サンプルの正常組織と比べて、高い蛍光偏光(グレイの明るい影で示している)を示している。毛嚢、及び皮脂腺のような、皮膚付随物はこの画像で容易に区別できない。しかしながら、蛍光偏光画像においてさえも、表皮に沿って(図2bにおいて白色実線矢印で示してあり、これは図2aの同じ位置の暗いピクセルにほぼ対応する)そして毛嚢の近辺に(白色点線矢印で示してある)悪性を明示する幾つかの明るいピクセルがある。表皮に沿った明るいピクセルは図2bの白いバックグラウンドに対して容易に区別できないが、このような特徴は、同じ画像データを用いて作成できるカラーコード化画像において、より容易に識別することができる。
【0049】
従って、毛嚢、皮脂腺及び表皮のような、幾つかの通常の皮膚組織構造は、組織の光学画像化に適用できる幾つかの色素を保持することができる。これらの構造の幾つかは、カラーコード化反射率画像では赤く見えて、カラーコード化蛍光画像では緑色に見える。このような組織構造の特性化における曖昧さを解決するために、反射率画像に存在するこれら皮膚構造のスペクトル応答を特性化した。
【0050】
図2dは、腫瘍及びその他の構造を含有しているMB色素で染色した皮膚組織の光学密度の波長依存性を示し、ここではこのような密度をサンプルの間で平均している。図2dの曲線は、最も右のピーク(例えば、約680nmにおける)の上から下への順に、以下の構造に対応している:腫瘍、毛嚢、皮脂腺、表皮、コラーゲン、及び皮下脂肪。
【0051】
MB色素の濃度は腫瘍で最も高く、これはおよそ615nm及び665nmのメチレンブルーの2つの吸収極大値に対応するスペクトル領域における光学密度の増大をもたらしている。毛嚢において色素の濃度はいくらか低いように見えるが、これら2つの構造(腫瘍及び毛嚢)のスペクトル応答はかなり似ている。皮脂腺のスペクトル応答は、MB色素吸収波長の範囲570nm〜710nmにおけるこれら皮膚付随物の光学密度が、癌性腫瘍と比較すると非常に低いことを示唆している。
【0052】
表皮の光学密度スペクトルにおいて、約615nmのMB色素吸収ピークは、約665nmの第2吸収ピークよりもより明確に現れる。この特性は、癌性腫瘍組織と表皮の間の輪郭付けにおいて、前者が後者のこの2つの吸収ピーク光度と反対の相対振幅を示すので、両者の間の輪郭付けを容易にする。また、表皮と腫瘍の光学密度曲線の比較は、腫瘍がより多くの色素を蓄積して、665nmのMB吸収バンド付近で相当に高い光学密度を示すことを表示している。
【0053】
コラーゲン及び脂肪は相当量の色素を蓄積するとは見られないので、腫瘍とより容易に区別することができる。更に、皮下脂肪のスペクトルは、他の皮膚構造と比較して、395nm〜560nmの波長範囲でより高い光学密度を示す。この所見は、皮下脂肪のより高いヘモグロブリン含量と関連しているのかもしれない。
【0054】
従って、図2dに示すように、検討した皮膚構造それぞれは、一部は各種皮膚構造による色素の異なった取り込みに基づいて、MB色素の吸収バンド内で異なったスペクトル応答を示す。MB色素で染色した皮膚構造のスペクトル特徴を、良性組織から癌を確実に区別するために用いることができるということを確認するために、BCCを含有している20の新鮮な厚いサンプルから収集した癌、毛嚢、皮脂腺、表皮、コラーゲン及び脂肪の光学密度を測定して統計学的に解析した。検討した皮膚構造全てについて光学密度の波長への平均依存度を図3a〜3eに示す。
【0055】
図3a〜3eに示すデータは、MB色素の吸収バンド内で、癌組織の光学密度が他の皮膚組織より実質的により高いようであるということを示している。また、390nm〜485nmの波長に対する、表皮と癌の光学密度の差が相当あると観察された(例えば、図3cを参照されたい)。このスペクトル領域はヘモグロビンのソーレー吸収バンドにほぼ対応している。例えば、癌組織は一般に血液を含有しているのに対して、健常な表皮は一般に無血であることが観察されている。従って、観察された光学密度の差異はある程度腫瘍と表皮の血液含量の差に基づいているのだろう。
【0056】
ヘモグロビン含量の差及びコラーゲン及び脂肪の比較的低い色素取り込みによって、コラーゲン−腫瘍、及び脂肪−腫瘍の対の光学密度の差異は、図3d及び3eに示すように、実質的に検討した全てのスペクトル領域にわたって有意であった。
【0057】
癌と近接の正常皮膚組織の間には血液含量の差にかなりのばらつきがある。更に、反射率の測定は、血液の酸化によって、更には身体の病変の部位によっても影響を受けるだろう。従ってヘモグロブリン吸収のスペクトル領域において確認された差異は、組織識別に対する一般的な信頼できる基礎をもたらせない。本明細書に提示されている組織構造光学密度のスペクトル解析は、毛嚢の可能性を除いて(図3bを参照されたい)、検討した各種組織構造について、615nm〜700nmの波長に対する腫瘍と健常皮膚構造の間の光学密度の差異が有意であったことを示している。(図3a、3c、3d及び3eを参照されたい)。従って、光学画像解析に関するスペクトル変動の更なる解析は、600nm〜735nmのスペクトル領域に焦点を合わせることができる。
【0058】
腫瘍と毛嚢の間の確実な分光学的区別を達成することについての課題に対処するために、癌及び正常組織について光学密度の波長導関数を算出して解析した。例えば、メチレンブルー色素は、局所の生物化学環境に応じて、異なった吸収特性を示すことが観察されている。従って、MBで染色した癌と毛嚢の光学密度曲線の勾配において観察された僅かな偏差はこれら2つの構造の生物化学環境における差異によって引き起こされたのかもしれない。再現可能なら、このような偏差は、癌の周辺健常組織からの明確な区別を促進するために用いることができる。
【0059】
波長に対する異なった組織の光学特性の導関数は、好ましくは5nm以上離れて大きい波長で実施した測定値に基づいて算出できる。一般に、5nm未満異なっている2つの波長における組織の光学特性に有意な或いは課題解決を容易にするような変化は見られないだろう。具体的には、組織の光学特性に関する導関数情報は、少なくとも約5nm、例えば、約5nm〜約30nm、約5nm〜約20nm、又は約5nm〜約15nm、例えば約10nm異なっている2つ又はそれ以上の波長における光学特性を測定して得ることができる。このような導関数情報を確認するために用いられる波長は、このような導関数を算出するときに、波長依存性光学特性における局所最大値又は最小値を越えることを避けるために、約30nm未満異なっていることが好ましい。このような導関数を算出するための本明細書に記載されている実施例で用いられている約10nmの典型的な波長差は、光学特性変化の解明と局所波長依存性導関数の正確な概算の間の良好な妥協をもたらす。
【0060】
腫瘍組織と比較した各種健常組織構造に関する光学密度の波長導関数についての得られた依存性を図4a〜4eに示した。正常(健常)組織構造と癌組織との対の光学密度及び対応する波長導関数の間の差異の有意性を評価するために、非対の両側t−検定を用いた。癌組織とその他の正常皮膚型組織の間の相違領域をより良く確認するためには、標準的なANOVA分析で開始するよりむしろ、対のt−検定を利用した。従って、単独の健常皮膚型組織を個々に癌組織サンプルに対して試験した。
【0061】
比較試験の結果を表2に要約している。これらのデータは、毛嚢を除いて(図4bに示してある)、全ての癌−正常組織の対の、MB色素の吸収最大値の1つに対応する、665nmの波長における光学密度に統計的な有意差があることを示している。癌と毛嚢の間の光学密度の波長導関数における最も大きな統計学的に有意な差が615nm、705nm、及び735nm(ここで615nmはMB色素の別の局所吸収最大値にほぼ対応している)の波長で観察された(図4bを参照されたい)。
【0062】
光学密度の波長導関数の差が、試験した全ての癌−正常組織の対において705nmで有意に観察された。従って、癌及び正常皮膚組織の明確な区別に適している特定のスペクトル領域が、反射率画像のスペクトル解析を用いて確認された。これらの波長領域は、MB色素の局所最大値にほぼ対応している、615nm及び665nmの波長を包含している。
【0063】
従って、組織画像のスペクトル解析を、画像収集手法を著しく変更せず、或いは手法を実施するために必要な時間及び複雑さを増大せずに、癌検出手法に組み込むことができる。例えば、図1に示す典型的な装置を、本明細書に記載されている画像収集及び分析手法の実施に適合することができる。単色光分光器2を、癌及び正常組織の間の光学密度の波長導関数に有意な差が見出された本明細書に記載の1つ又はそれ以上の特定波長で光をXe−Arcランプ1から提供するように構成することができる。コンピュータ10を、特定の試料11から反射するこの光の強度を解析してCCDカメラ9によってこれらの波長で検出するように設定することができる。これらの波長における画像の領域の光学密度を本明細書で提供されるデータと比較することは、組織サンプル11のこれらの領域における健常組織と癌組織の間のより正確な区別を促進できる。
【0064】
全可視スペクトル領域に関する画像中の各ピクセルの完全な分光分析を実施することは可能であるが、この包括的なアプローチは本明細書に記載されている組織同定分析を実施するための最適な又は望ましいアプローチではないだろう。例えば、1100×1300ピクセルを含有している画像についてのわずか10の波長の分析には、極めて長い時間を必要とし、このアプローチを手術中の使用に不適切なものとしている。更に、反射率及び蛍光偏光画像は一般に、組織画像における大部分のピクセルについて十分正確な情報をもたらすので、そのような詳細なアプローチはかなり冗長となるであろう。それに対して、RFPI技術と、手術中に画像を精査している外科医にとって疑わしいと思われる画像の領域(例えば、数本又はそれ以上のピクセル)の2波長スペクトル分析との組み合わせは、臨床診療に適しているより現実的なアプローチを提供するだろう。
【0065】
従って、癌性組織及び健常組織構造の両方につぃての光学密度及び対応する波長依存性導関数の解析は、RFPI手法を実施する場合に、非黒色腫皮膚癌のより正確な輪郭付けを容易にできる。MB色素の吸収バンドに対応しているスペクトル領域を、癌組織、例えばBCCの正確な区別化のために用いることができる。本明細書に記載されている腫瘍輪郭付け技術は、例えば、複数の波長での画像化を包含する。例えば、2つの監視波長、例えば、約615nm及び約665nmにおける分光分析は、ある特定の正常皮膚構造の観察される光学密度及び対応する波長依存性導関数がこれら波長における癌組織のそれとは有意に異なっているので、このような区別化を有意に改善する。従って、本発明の実施態様は、リアルタイムで正確な癌の輪郭付けを容易にする、反射率及び蛍光偏光画像とこのようなスペクトル分析を組み合わせる方法及び装置を提供する。このような輪郭付けは、例えば、手術前、手術中、及び/又は手術後に実施でき、インビボ又はエクスビボでも実施できる。
【0066】
特定組織の分析に用いる波長は、様々な基準に基づいて選択できる。例えば、サンプル中に血液が存在しているならば、血液により強く吸収される410nm又はその近くの波長を使用して、血液吸収の影響を評価及び/又は除去を促進すること、及び/又はスペクトル分析手法において血液と色素の影響を区別することができる。約1100nm〜約1300nmの参照波長も、例えば、組織構造のある特定の型を区別するために用いることができる。散乱効果を優先するように、この波長領域内にあまり強くない吸収体が存在してもよい。一方、約1400nmの波長付近で水の吸収が比較的強いので、この波長領域は散乱効果を試験するためには望ましくない。
【0067】
前述は発明の本質を説明したにすぎない。記載された実施態様に対する多くの修正及び変更は、本明細書の教示を考慮すると当業者に明らかであろう。従って、当然のことながら、当業者は、本明細書に明確に記載されていないが、本発明の本質の具体化であって従って本発明の精神及び範囲の内である多くの方法を見出すことができるだろう。本明細書で引用されている全ての特許及び刊行物は、参照によりその全てが本明細書に取り込まれている。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長を有する第1の光及び第2波長を有する第2の光を組織領域に発することができる光エミッター;
第1の光に基づいて組織領域から送られる第3の光及び第2の光に基づいて組織領域から送られる第4の光を検出して、第3及び第4の光に基づいて信号を作成することができる光検出器;及び
当該光検出器によってもたらされた信号に基づいて当該組織領域内の少なくとも1つの組織構造を画像化できるアナライザー:
を含有してなる、組織領域を画像化する装置。
【請求項2】
当該第3の光及び当該第4の光が、組織領域にもたらされた色素と当該第1及び第2の光の間の相互作用に少なくとも一部分が基づいている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
色素がメチレンブルー又はトルイジンブルーのうちの少なくとも1つを含有している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
色素がメチレンブルーを含有し、そして少なくとも1つの当該第1波長又は当該第2波長が約600nm〜約735nmである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが、約615nm〜約665nmである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが、当該色素に関する局所吸収最大値にある波長とほぼ同一である、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
当該第1の光又は当該第2の光の少なくとも1つが偏光されていて、そして当該光検出器がさらに、当該組織領域内の複数の特定部位における少なくとも1つの当該第3の光及び当該第4の光の偏光方向を検出できる、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
当該アナライザーがさらに、当該第1、第2、第3、及び第4の光偏光方向に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成できる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
当該少なくとも1つの画像が、少なくとも1つの反射率偏光画像又は蛍光偏光画像である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
当該アナライザーがさらに、当該少なくとも1つの画像に基づいて、少なくとも1つの当該組織構造の型を同定できる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
当該アナライザーが、コンピュータ可読媒体を更に含有していて、そこで
複数の組織構造に関連している複数の波長依存性光学相互作用パラメータが当該コンピュータ可読媒体に提供され;そして
当該アナライザーが、当該信号を当該パラメータと比較して当該組織領域内の当該少なくとも1つの組織構造を同定するように構成されている:
請求項2に記載の装置。
【請求項12】
当該コンピュータ可読媒体が、揮発性メモリー配列、非揮発性メモリー配列、光学記憶媒体、磁気記憶媒体、又はネットワークを通じて当該アナライザーによってアクセスできる媒体の少なくとも1つを含有している、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
アナライザーがさらに、当該組織領域内の複数の特定位置における当該第1及び第2波長についての少なくとも1つの反射率又は光学密度を、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて確認できる、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
当該アナライザーがさらに、当該反射率又は当該光学密度に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成できる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
当該アナライザーがさらに、当該少なくとも1つの画像に基づいて当該少なくとも1つの組織構造を確認できる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
アナライザーがさらに、ある特定の波長におけるそして当該組織領域内の少なくとも1つの特定部位における波長に関する少なくとも1つの反射率又は光学密度に関する導関数情報を、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて確認でき、そして導関数情報に基づいて少なくとも1つの組織構造を画像化できる、請求項2に記載の装置。
【請求項17】
導関数情報が少なくとも1つの第1導関数又は第2導関数を含有している、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第1及び第2の光の波長間差異が、約10nm〜約30nmである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
当該アナライザーがさらに、組織領域内の複数部位における当該導関数情報を確認でき、そして当該導関数情報に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成できる、請求項17に記載の装置
【請求項20】
当該アナライザーがさらに、当該導関数情報に基づいて当該少なくとも1つの組織領域を確認できる、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
当該少なくとも1つの組織構造が癌組織を含有している、請求項1〜20の何れか一項に記載の装置。
【請求項22】
当該装置が実質的にリアルタイムに、少なくとも1つの当該組織構造の画像化又は同定の少なくとも1つができる、請求項1〜20の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
工程:
当該組織領域を造影剤で処理すること;
第1波長を有する第1の光を組織領域へ誘導すること;
第2波長を有する第2の光を組織領域へ誘導すること;
第1の光に基づいて組織領域から送られる第3の光及び第2の光に基づいて組織領域から送られる第4の光を検出すること;及び
当該組織領域内の少なくとも1つの組織構造の画像を、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて作成すること:
を含有してなる、組織領域を画像化する方法。
【請求項24】
当該造影剤が、メチレンブルー又はトルイジンブルーのうちの少なくとも一つを含有している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
色素がメチレンブルーを含有し、そして当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが約600nm〜約735nmである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが約615nm又は約665nmである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが、当該造影剤に関する局所吸収最大値にある波長とほぼ同一である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
当該第1の光又は当該第2の光の少なくとも1つが偏光されていて、そして当該作成工程が、当該組織領域内の複数の特定部位における当該第3の光又は当該第4の光の少なくとも1つの偏光方向に基づいて当該画像を作成することを包含している、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
当該作成工程が、当該第1、第2、第3、及び第4の光の偏光方向に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成することを含有している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
当該少なくとも1つの画像が、少なくとも1つの反射率偏光画像又は蛍光偏光画像である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの当該特定部位における組織構造の少なくとも1つの型を、当該少なくとも1つの画像に基づいて同定する工程をさらに含有している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
組織構造の当該少なくとも1つの型を、複数の組織構造に関する所定の波長依存性光学相互作用パラメータを当該第1、第2、第3、及び第4の光で比較することに基づいて同定する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
当該組織領域内の複数の特定部位における当該第1及び第2波長についての反射率又は光学密度の少なくとも1つを当該第1、第2、第3及び第4の光に基づいて測定する工程をさらに含有していて、ここで画像を当該第1及び第2波長で測定した当該反射率又は光学密度に基づいて作成する、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの特定波長における波長に関する少なくとも1つの反射率又は光学密度の導関数情報を確認する工程;
ここにおいて、当該導関数情報が、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて当該組織領域内の複数の特定部位において確認され、そして
画像が、当該導関数情報に基づいて作成される;
をさらに含有している、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
当該導関数情報が、第1導関数又は第2導関数の少なくとも1つを含有している、請求項35に記載の方法。
【請求項36】
当該方法がさらに、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて当該組織領域内の少なくとも1つの組織構造を同定することを含有している、請求項36に記載の方法。
【請求項37】
当該少なくとも1つの組織構造が癌組織を含有している、請求項23〜36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
当該画像の作成が、実質的にリアルタイムに実施される、請求項23〜37の何れか一項に記載の方法。
【請求項1】
第1波長を有する第1の光及び第2波長を有する第2の光を組織領域に発することができる光エミッター;
第1の光に基づいて組織領域から送られる第3の光及び第2の光に基づいて組織領域から送られる第4の光を検出して、第3及び第4の光に基づいて信号を作成することができる光検出器;及び
当該光検出器によってもたらされた信号に基づいて当該組織領域内の少なくとも1つの組織構造を画像化できるアナライザー:
を含有してなる、組織領域を画像化する装置。
【請求項2】
当該第3の光及び当該第4の光が、組織領域にもたらされた色素と当該第1及び第2の光の間の相互作用に少なくとも一部分が基づいている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
色素がメチレンブルー又はトルイジンブルーのうちの少なくとも1つを含有している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
色素がメチレンブルーを含有し、そして少なくとも1つの当該第1波長又は当該第2波長が約600nm〜約735nmである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが、約615nm〜約665nmである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが、当該色素に関する局所吸収最大値にある波長とほぼ同一である、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
当該第1の光又は当該第2の光の少なくとも1つが偏光されていて、そして当該光検出器がさらに、当該組織領域内の複数の特定部位における少なくとも1つの当該第3の光及び当該第4の光の偏光方向を検出できる、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
当該アナライザーがさらに、当該第1、第2、第3、及び第4の光偏光方向に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成できる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
当該少なくとも1つの画像が、少なくとも1つの反射率偏光画像又は蛍光偏光画像である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
当該アナライザーがさらに、当該少なくとも1つの画像に基づいて、少なくとも1つの当該組織構造の型を同定できる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
当該アナライザーが、コンピュータ可読媒体を更に含有していて、そこで
複数の組織構造に関連している複数の波長依存性光学相互作用パラメータが当該コンピュータ可読媒体に提供され;そして
当該アナライザーが、当該信号を当該パラメータと比較して当該組織領域内の当該少なくとも1つの組織構造を同定するように構成されている:
請求項2に記載の装置。
【請求項12】
当該コンピュータ可読媒体が、揮発性メモリー配列、非揮発性メモリー配列、光学記憶媒体、磁気記憶媒体、又はネットワークを通じて当該アナライザーによってアクセスできる媒体の少なくとも1つを含有している、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
アナライザーがさらに、当該組織領域内の複数の特定位置における当該第1及び第2波長についての少なくとも1つの反射率又は光学密度を、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて確認できる、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
当該アナライザーがさらに、当該反射率又は当該光学密度に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成できる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
当該アナライザーがさらに、当該少なくとも1つの画像に基づいて当該少なくとも1つの組織構造を確認できる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
アナライザーがさらに、ある特定の波長におけるそして当該組織領域内の少なくとも1つの特定部位における波長に関する少なくとも1つの反射率又は光学密度に関する導関数情報を、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて確認でき、そして導関数情報に基づいて少なくとも1つの組織構造を画像化できる、請求項2に記載の装置。
【請求項17】
導関数情報が少なくとも1つの第1導関数又は第2導関数を含有している、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
第1及び第2の光の波長間差異が、約10nm〜約30nmである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
当該アナライザーがさらに、組織領域内の複数部位における当該導関数情報を確認でき、そして当該導関数情報に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成できる、請求項17に記載の装置
【請求項20】
当該アナライザーがさらに、当該導関数情報に基づいて当該少なくとも1つの組織領域を確認できる、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
当該少なくとも1つの組織構造が癌組織を含有している、請求項1〜20の何れか一項に記載の装置。
【請求項22】
当該装置が実質的にリアルタイムに、少なくとも1つの当該組織構造の画像化又は同定の少なくとも1つができる、請求項1〜20の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
工程:
当該組織領域を造影剤で処理すること;
第1波長を有する第1の光を組織領域へ誘導すること;
第2波長を有する第2の光を組織領域へ誘導すること;
第1の光に基づいて組織領域から送られる第3の光及び第2の光に基づいて組織領域から送られる第4の光を検出すること;及び
当該組織領域内の少なくとも1つの組織構造の画像を、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて作成すること:
を含有してなる、組織領域を画像化する方法。
【請求項24】
当該造影剤が、メチレンブルー又はトルイジンブルーのうちの少なくとも一つを含有している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
色素がメチレンブルーを含有し、そして当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが約600nm〜約735nmである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが約615nm又は約665nmである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
当該第1波長又は当該第2波長の少なくとも1つが、当該造影剤に関する局所吸収最大値にある波長とほぼ同一である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
当該第1の光又は当該第2の光の少なくとも1つが偏光されていて、そして当該作成工程が、当該組織領域内の複数の特定部位における当該第3の光又は当該第4の光の少なくとも1つの偏光方向に基づいて当該画像を作成することを包含している、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
当該作成工程が、当該第1、第2、第3、及び第4の光の偏光方向に基づいて組織領域の少なくとも1つの画像を作成することを含有している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
当該少なくとも1つの画像が、少なくとも1つの反射率偏光画像又は蛍光偏光画像である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの当該特定部位における組織構造の少なくとも1つの型を、当該少なくとも1つの画像に基づいて同定する工程をさらに含有している、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
組織構造の当該少なくとも1つの型を、複数の組織構造に関する所定の波長依存性光学相互作用パラメータを当該第1、第2、第3、及び第4の光で比較することに基づいて同定する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
当該組織領域内の複数の特定部位における当該第1及び第2波長についての反射率又は光学密度の少なくとも1つを当該第1、第2、第3及び第4の光に基づいて測定する工程をさらに含有していて、ここで画像を当該第1及び第2波長で測定した当該反射率又は光学密度に基づいて作成する、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの特定波長における波長に関する少なくとも1つの反射率又は光学密度の導関数情報を確認する工程;
ここにおいて、当該導関数情報が、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて当該組織領域内の複数の特定部位において確認され、そして
画像が、当該導関数情報に基づいて作成される;
をさらに含有している、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
当該導関数情報が、第1導関数又は第2導関数の少なくとも1つを含有している、請求項35に記載の方法。
【請求項36】
当該方法がさらに、当該第1、第2、第3、及び第4の光に基づいて当該組織領域内の少なくとも1つの組織構造を同定することを含有している、請求項36に記載の方法。
【請求項37】
当該少なくとも1つの組織構造が癌組織を含有している、請求項23〜36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
当該画像の作成が、実質的にリアルタイムに実施される、請求項23〜37の何れか一項に記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【公表番号】特表2012−524276(P2012−524276A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506126(P2012−506126)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030880
【国際公開番号】WO2010/120769
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030880
【国際公開番号】WO2010/120769
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【Fターム(参考)】
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