説明

生体認証装置

【課題】偽造された情報が入力された場合でも、その偽造を検出して、誤認証を防止可能な生体認証装置を提供する。
【解決手段】生体情報パターンを登録する登録手段と、撮影対象に照明を照射する照明手段と、前記照明手段により照明を照射された撮影対象を撮影し、映像信号を出力する撮像センサと、前記撮像センサから出力された映像信号から生体情報パターンを抽出し、前記登録手段に登録された生体情報パターンと照合する認証処理手段と、前記照明手段により照射する照明の照明強度を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記照明手段により照射する照明の照明強度を変化させ、前記撮像センサにより出力される映像信号の明るさの変化を用いて、前記撮影対象が生体であるか否かを判断することを特徴とする生体認証装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を用いて個人を特定する生体認証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、個人認証の要求される場において脅されて開錠させられる等の非常事態が発生した場合に、認証装置の誤動作の危険性と周囲に感知される危険性が共に低い緊急通報手段を提供することを目的とし、能動的に静脈パターンを崩すことや、認証開始のトリガーとなるスイッチを所定の時間より長く押すこと、あるいは指の回転動作を用いてレスキューモードを起動させ、緊急通報を行う個人認証装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−110605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指静脈認証装置は、人の指の静脈パターンを生体情報としてあらかじめ登録し、それと提示された指による静脈パターンの照合処理により個人を認証あるいは特定する生体認証装置である。指静脈認証装置は、銀行ATMの生体認証装置としても実用化されており、金融商取引での個人認証手段として要求される高いセキュリティーを実現している。そのほかの実用化例として、秘匿性の高い情報を扱う会社事務所等の入退出管理装置や、パソコン等の情報装置のユーザー認証手段がある。
【0005】
上記の製品群はビジネス用途であるが、今後、個人レベルでの製品実用化が期待されている。個人向けの製品群が製品化され、多様な場所で多数のユーザーが使用することが想定される。そこで課題となる事項は、悪意を持って認証装置をだまそうとするハッカー行為に対しての対策である。
【0006】
例えば、指静脈認証装置では指の静脈パターンの照合処理により個人を認証するため、登録する静脈パターンについて、暗号化等により盗まれないための措置が講じられている。しかしながら、何らかの手段により撮影中の画像が偽造された場合、誤って本人として認証する可能性が僅かにある。カメラ信号処理に関する技術を有するものが、市販された認証装置を購入し、分解、分析等を行えば、映像信号の処理経路を特定し、本来の撮影された映像信号の代わりに、偽造した映像信号を流し込むことは技術的に可能なことである。個人向けの認証装置が市販された場合には、上記のような試みの機会が増えることになる。
【0007】
本発明は、偽造された情報が入力された場合でも、その偽造を検出して、誤認証を防止可能な生体認証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は特許請求の範囲に記載の発明により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、偽造された情報が入力された場合でも、その偽造を検出して、誤認証を防止可能な生体認証装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】指静脈認証装置の一例を示すブロック図である。
【図2】照明制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】認証処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、指静脈認証装置の一例を示すブロック図であって、1は照明部、2は撮像センサー、3は認証処理部、4は照明制御部、5はテンプレート保存メモリ、6はホストインターフェースである。
【0012】
照明部1は指静脈の撮影に必要な照明を照射する部分であり、赤外光LED等により構成する。人体の指は赤外光を透過し、静脈の血管部分によりその光の一部が吸収され、映像に濃淡として表れる。撮像センサー2は指を透過した光を映像化する光学センサーであり、赤外光領域で感度をもつセンサーを使用する。出力として、指静脈がパターンとなって映し出された映像信号あるいは画像データを出力する。
【0013】
認証処理部3は指静脈パターンを含む映像信号を処理し、認証処理を実行する部分であり、それらの処理を実行するためのプロセッサーを内蔵する。また、認証処理部3は、上記照明部1を制御する照明制御部4に調光処理に必要な情報を送る働きをする。
【0014】
照明制御部4は照明部1での調光を制御する部分である。照明制御部4は照明レベルの設定し、照明部1を駆動する。また、照明制御部4は調光制御の動作結果を認証処理部3にフィードバックし、入力されている映像信号が偽造されているかに関する情報を与える。
【0015】
テンプレート保存メモリは、登録した指静脈パターンを保存するメモリーであり、認証処理部3が必要に応じて登録パターンの読み込み、照合処理を実行する。このように本実施例では、装置内部に指静脈パターンを保存し、これとの照合処理を行うセルフ認証方式の例である。この静脈パターンが外部に漏洩すると、個人情報のセキュリティに甚大な被害となるので、暗号化処理を施したデータとして保存する。
【0016】
ホストインターフェース6は、本装置が接続するホストシステムと通信するためのインターフェースであり、実装例としてはパソコンと周辺装置間で広く利用されるUSB(Universal Serial Bus)規格が考えられる。本装置の認証結果は、ホストインターフェース6を経由してホストに伝えられ、ホストは認証結果に応じた動作を行う。ホストインターフェース6とホスト間でデータ送受信を行う際、相互に相手側が正規の装置であることを認証し、データの一部あるいは全部を暗号化して送受信することにより、安全性を高めた実装を行う。
【0017】
本例では、照明制御部4の動作により入力されている映像信号が偽造されているかを判定し、偽造されていると判断した場合は認証失敗として動作する。照明の明るさを変化させた場合、映し出される映像の明るさも変化することに基づいている。
【0018】
図2は、照明制御部4におけるの照明制御処理の一例を説明するフローチャートであって、処理ステップS1からS5と、ステップS1を構成するステップS1-01からS1-06を示している。
【0019】
ステップS1は複数の照明レベルの設定値に対して、映像信号の明るさを求める処理である。少なくとも2つの異なる照明レベル設定値を設定する必要がある。照明制御部4が、照明部1の照明レベルを設定し、照明を実際の指に照射して撮影される映像の明るさを測定する。ここでの処理は詳細に後述する。
【0020】
ステップS2はステップS1で求めた複数の明るさのデータより、それらの差分を算出し、補間処理により最適の照明レベル設定を予測する処理である。ステップS3は求めた差分を基準値と比較し、基準値以上の変化が現れているかを判断する条件分岐である。
【0021】
基準値を超える差分がある場合は、実際の指を撮影していると判断し、判定結果を正常とする(ステップS4)。一方、基準値を下回る差分の場合には、入力の映像信号が偽造されれいる、または異常があると判断して、判定結果を異常とする(ステップS5)。
【0022】
ステップS4では、上記で求めた照明レベルの最適値を設定し、照明を点灯する。ステップS5では、異常と判断し、撮影不要として消灯する。
【0023】
上記の基準値については、外光の影響を考慮して適応的に変化させることが考えられる。生体の指に照射されている光が、照明部1以外からの光、すなわち外光を含む場合である。この場合、映像信号の明るさは一定のオフセットを持っていることが想定されるため、これを検出して基準値の変更を行う。これにより、より正確な判断が可能となる。
【0024】
ステップS1の詳細ステップS1-01からS1-06について述べる。
【0025】
ステップS1-01で繰返しカウンタiを初期化し、ステップS1-02で複数の設定値の内のひとつの照明レベルに変更、ステップS1-03で照明を点灯し、ステップS1-04で映像信号の明るさを検出し、ステップS1-05で各照明レベル設定について求めた明るさを記録する。ステップS1-06の条件分岐により、所定の複数の照明レベル設定について、ステップS1-02からS1-05の明るさを求める処理フローを繰り返す。
【0026】
ステップS1-04での映像信号の明るさの検出は、撮像センサの処理の一部として実行し、明るさに関するデータとして、認証処理部3経由で取得する方法や、認証処理部3が得られた映像信号を処理して明るさを計算し、その結果を照明制御部4に伝達するなど複数の実装方法が可能である。
【0027】
上記S1-01からS1-06の処理により、ステップS1の処理を構成する。
【0028】
上記に示した照明制御部4の処理フローにより、入力の映像信号が偽造されているかの判断結果を得ると同時に、照明部1の調光制御を行うことができる。
【0029】
次に、上記照明制御部4の処理と組み合わせた認証処理部3の処理フローについて説明する。
【0030】
図3は認証処理部3における認証処理の一例を示すフローチャートであり、処理ステップS300からS308で構成している。
【0031】
以下、順を追って各処理ステップを説明する。処理ステップS300で照明制御を実行する。この処理内容に上記照明制御部4の処理フローが含まれ、その結果としての調光制御の動作と、照明制御の判定結果が得られている。
【0032】
ステップS301の条件分岐は、照明制御の判定結果に基づく分岐処理である。照明制御が正常の判定結果であれば、ステップS3以降の撮影処理に続く。異常が判定されていれば、ステップS303以降のエラー処理が続く。
【0033】
ステップS302で撮影処理を実行し、ステップ304で登録テンプレートを読み込み、ステップ305で照合処理によるマッチング率の計算を行う。ここでマッチング率は登録テンプレートと入力映像信号から抽出する静脈パターンを画像データとして照合処理し、合致の度合いを数値化したものである。ある基準値(設定値)以上のマッチング率が得られた場合、認証成功(本人である)とする。
【0034】
ステップS306で基準値と比較し、基準値以上のマッチング率の場合は、処理ステップS307で判定結果を認証成功(受入れ)とする。一方、基準値に満たない場合は、処理ステップS308で判定結果を認証失敗(拒否)とする。
【0035】
以上の処理フローにより、認証結果が得られ、その結果をホストインターフェース6を経由して、ホストに伝達する。
【0036】
以上説明したように、本例によれば、指静脈認証装置への映像信号の入力経路を改ざんし、偽造した映像信号を入力した場合、照明制御により偽造の事実を検出し、認証失敗とすることができる。これにより、より信頼性を高めた認証装置を実現することができる。また、上記偽造を検出するための手段は、特別なセンサーを追加せずに構成することができるので、コストアップ無しに実現することができる。
【0037】
なお、生体情報として指静脈に関する情報を用いる生体認証装置を一例に説明したが、これに限定するものではなく、指以外の静脈、例えば掌の静脈を用いる場合に適用しても良いし、静脈以外の生体情報を用いる場合に適用しても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 照明部
2 撮像センサ
3 認証処理部
4 照明制御部
5 テンプレート保存メモリ
6 ホストインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報パターンを登録する登録手段と、
撮影対象に照明を照射する照明手段と、
前記照明手段により照明を照射された撮影対象を撮影し、映像信号を出力する撮像センサと、
前記撮像センサから出力された映像信号から生体情報パターンを抽出し、前記登録手段に登録された生体情報パターンと照合する認証処理手段と、
前記照明手段により照射する照明の照明強度を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記照明手段により照射する照明の照明強度を変化させ、前記撮像センサにより出力される映像信号の明るさの変化を用いて、前記撮影対象が生体であるか否かを判断することを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
赤外光の波長領域で感度を持つ撮像センサーと、該センサーで生体の一部を撮影するための照明手段と、該照明による照明強度を制御する照明制御手段と、前記撮像センサにより取得した映像信号から生体内部の静脈パターンを抽出し、登録データと照合処理をする認証処理手段により構成する生体認証装置であって、前記照明制御手段は生体の撮影に先立って、照明強度を変化させ、撮像センサーにより取得する映像信号の明るさの変化を検出し、この変化の大きさに基づいて、映像信号の偽造の有無を判断する処理を含むことを特徴とする生体認証装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生体認証装置であって、前記センサが撮影する生体の一部が指であることを特徴とする生体認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−215662(P2011−215662A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80109(P2010−80109)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】