説明

生体高分子分析支援装置

【課題】サンプルDNAの配列を容易に特定できるようにする。
【解決手段】生体高分子分析支援装置70は、固体撮像デバイス10と、既知の生体高分子からなり、固体撮像デバイス10の受光面上に点在した複数種のスポット60と、固体撮像デバイス10に向けて光を照射する光源81〜84と、を備える。光源81〜84のピークの波長が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像デバイスを用いた生体高分子分析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生物種の遺伝子の発現解析を行っている。遺伝子の発現解析とは、細胞で発現している遺伝子を同定することであり、具体的には、遺伝子をコードするDNAから転写されているmRNAを同定することである。
【0003】
遺伝子の発現解析のためにDNAマイクロアレイ及びその読取装置が開発されている。DNAマイクロアレイは、プローブとなる既知の塩基配列のcDNAをスライドガラス等の固体担体上にマトリックス状に整列固定させたものである(例えば特許文献1参照)。ここで、既知の塩基配列のcDNAとしては、検体において既知のmRNAと同一、またはその一部と同一の塩基配列のcDNAが用いられる。DNAマイクロアレイ及びその読取装置を用いた遺伝子の発現解析は次のようにして行う。
【0004】
まず、複数種類の配列既知のcDNA(以下、プローブDNAという)をスライドガラス等の固体担体に整列固定させたDNAマイクロアレイを準備する。次に、検体からmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いて蛍光物質で標識したcDNA(以下、サンプルDNAという)を合成する。次に、蛍光物質で標識化したサンプルDNAをDNAマイクロアレイ上に添加すると、サンプルDNAが相補的な塩基配列のプローブDNAとハイブリダイズすることによりDNAマイクロアレイ上に固定される。サンプルDNAを標識する蛍光物質は励起されるとサンプルDNAが結合したプローブDNAの位置から蛍光を発することになる。
【0005】
次いで、DNAマイクロアレイを読取装置にセッティングし、読取装置にて分析する。読取装置は、励起光の照射点をDNAマイクロアレイに対して二次元的に移動し、それと共に集光レンズ及びフォトマルチプライヤーによってDNAマイクロアレイを二次元走査する。励起光により励起された蛍光物質から発した蛍光を集光レンズで集光させ、蛍光強度をフォトマルチプライヤーで計測することで、DNAマイクロアレイの面内の蛍光強度分布を計測し、これにより、DNAマイクロアレイ上の蛍光強度分布が二次元の画像として出力される。出力された画像内で蛍光強度が大きい部分には、プローブDNAの塩基配列と相補的な塩基配列を有したサンプルDNAが含まれていることを表している。従って、二次元画像中のどの部分の蛍光強度が大きいかによって、配列既知のmRNAのうち、どれが検体で発現しているかを同定することができる。
【特許文献1】特開2000−131237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発明者等は、固体撮像デバイスの受光面にプローブDNAをスポットした生体高分子分析チップを開発している。このような生体高分子分析チップでは、固体撮像デバイスによって取得した画像のうち明るい部分が、サンプルDNAの付着したスポットに相当する。そのため、その明るい部分を特定することで、サンプルDNAの付着したスポットを特定することができ、サンプルDNAの配列を特定することができる。かかる生体高分子分析チップではスポットが固体撮像デバイスの受光面に点在しているから、レンズ等を必要とせず、装置が小型になるという利点がある。
【0007】
ここで、標識化された蛍光物質は各種存在し、励起光の吸収ピーク波長や蛍光ピーク波長がそれぞれ異なる。このため、ハイブリダイゼーションに適用した特定の蛍光物質の励起光の吸収ピーク波長に対応した光を発する光源でないと、十分な蛍光を得られない場合があり、サンプルDNAの塩基配列を特定する障害になっていた。
そこで、本発明は、このような問題点を解決しようとしてなされたものであり、サンプルDNAの配列を容易に特定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明によれば、
固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に点在した複数種のスポットと、
前記固体撮像デバイスに向けて互いに異なるピーク波長域の光を照射する複数の光源と、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置が提供される。
好ましくは、前記生体高分子分析支援装置は、前記複数の光源を順次点灯させるとともに、前記各光源が点灯している時に前記固体撮像デバイスに撮像動作を行わせて画像データを取得する制御部を更に備える。
好ましくは、前記制御部が、前記各光源が点灯している時に取得した画像データの加算、減算等の処理をする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の光源による画像が固体撮像デバイスによって取得され、これらの画像を用いると、画像のうち明るい部分とそうでない部分との明暗の差が大きくすることができる。そのため、明るい部分のスポットを容易に特定することができ、サンプルDNAの配列の特定も容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
〔1〕生体高分子分析チップの全体構成
図1は、生体高分子分析チップ1及び4つの光源81〜84を示した斜視図である。この生体高分子分析チップ1は、固体撮像デバイス10と、固体撮像デバイス10の受光面に点着された複数のスポット60と、を有する。
【0012】
固体撮像デバイス10は、光源81〜84の下に取り付けられている。また、固体撮像デバイス10は、光源81〜84の下の位置から取り外し可能とされている。光源81〜84は固体撮像デバイス10の受光面の上に配置されている。光源81〜84は出射光のピークの波長が異なる。具体的には、光源81〜84の特性は図2に示されている。図2に示すように、光源81は、第1励起光を放射し、380nmにピークを持つ。光源82は、第2励起光を放射し、390nmにピークを持つ。光源83は、第3励起光を放射し、400nmにピークを持つ。光源84は、第4励起光を放射し、435nmにピークを持つ。なお、これらの波長は一例であり蛍光標識の種類により任意とする。蛍光標識における最適励起波長を適用することが出来ない条件下において特に有効である。これらの光源81〜84を励起光とする蛍光出力は、前記固体撮像デバイスの受光面上で、蛍光標識の励起光波長と蛍光出力強度からなる関係に基づく出力電圧の違いとして表される。蛍光出力を生じないスポット部分ではその出力電圧の違いは蛍光出力部分の変化に比して小さく、容易にスポット60の蛍光標識を識別できる。
【0013】
図3は、図1における1つのスポット60を拡大した平面図である。固体撮像デバイス10には、光電変換素子として複数のダブルゲートトランジスタでなる受光素子20が縦横に配列されている。
【0014】
〔2〕固体撮像デバイス
図3〜図5を用いて固体撮像デバイス10について説明する。図4は1つの受光素子20を示す平面図であり、図5は図4のV−V矢視断面図である。
【0015】
図5に示すように、固体撮像デバイス10では、透明基板11と、ボトムゲート絶縁膜13と、トップゲート絶縁膜21と、保護絶縁膜23と、スポット固定層24とが積層されている。また、図3に示すように、固体撮像デバイス10には、複数のボトムゲートライン12a、ソースライン18a、ドレインライン19a及びトップゲートライン22aが設けられている。
【0016】
透明基板11は、光を透過する性質(以下、光透過性という。)を有するとともに絶縁性を有し、ガラス基板(例えば、石英ガラス製の基板)、プラスチック基板(例えば、ポリカーボネート又はPMMA製の基板)その他の絶縁性透明基板である。
【0017】
ボトムゲート絶縁膜13、トップゲート絶縁膜21及び保護絶縁膜23は、保護絶縁膜23は絶縁性及び光透過性を有する。ボトムゲート絶縁膜13、トップゲート絶縁膜21及び保護絶縁膜23は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜である。
【0018】
この固体撮像デバイス10においては、受光素子20が光電変換素子として利用されている。複数の受光素子20,20,…が透明基板11上において二次元アレイ状に特にマトリクス状に配列されている。これら受光素子20,20,…が保護絶縁膜23によってまとめて被覆されている。
なお、図3では10行×10列の100個の受光素子20,20,…が示されているが行の数、列の数は任意に設定することができる。
【0019】
図4、図5に示すように、受光素子20は、ボトムゲート電極12、ボトムゲート絶縁膜13、半導体膜14、チャネル保護膜15、不純物半導体膜16、不純物半導体膜17、ソース電極18、ドレイン電極19、トップゲート絶縁膜21及びトップゲート電極22を有する。
【0020】
ボトムゲート電極12は透明基板11とボトムゲート絶縁膜13との間に形成されている。半導体膜14、チャネル保護膜15、不純物半導体膜16、不純物半導体膜17、ソース電極18及びドレイン電極19はボトムゲート絶縁膜13とトップゲート絶縁膜21との間に形成されている。トップゲート電極22はトップゲート絶縁膜21と保護絶縁膜23との間に形成されている。
【0021】
ボトムゲート電極12は、受光素子20ごとに透明基板11上に形成されている。また、透明基板11とボトムゲート絶縁膜13との間には、10本のボトムゲートライン12a,12a,…が形成され、これらボトムゲートライン12a,12a,…が互いに平行となって行方向に延在している。横方向に配列された同一の行の受光素子20,20,…のボトムゲート電極12が共通のボトムゲートライン12aと一体となって形成されている。ボトムゲート電極12及びボトムゲートライン12aは、導電性及び遮光性を有し、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0022】
半導体膜14は、ボトムゲート電極12との間にボトムゲート絶縁膜13を挟んで、ボトムゲート電極12に相対している。半導体膜14は、受光素子20ごとに独立して形成されている。半導体膜14が受光部であり、半導体膜14に入射した蛍光の光量に応じた量の電子−正孔対が半導体膜14に形成される。半導体膜14は、アモルファスシリコン等からなる。
【0023】
チャネル保護膜15は、半導体膜14の中央部上に形成されている。チャネル保護膜15は、受光素子20ごとに独立してパターニングされたものである。チャネル保護膜15は、絶縁性及び光透過性を有し、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。チャネル保護膜15は、パターニングに用いられるエッチャントから半導体膜14を保護する透明絶縁膜である。半導体膜14に光が入射すると、入射した光量に従った量で半導体膜14内に生成される電子−正孔対がチャネル保護膜15と半導体膜14との界面付近にも蓄積する。
【0024】
不純物半導体膜16は、半導体膜14の一部に重なるように形成されている。不純物半導体膜16の一部は、チャネル保護膜15に重なっている。不純物半導体膜17は、半導体膜14の別の部分に重なるように形成されている。不純物半導体膜17の一部は、チャネル保護膜15に重なっている。不純物半導体膜16,17は、受光素子20ごとに独立してパターニングされている。不純物半導体膜16,17は、n型の不純物(例えば、ホスフィン)を含むアモルファスシリコン(n+シリコン)からなる。
【0025】
ソース電極18は、不純物半導体膜16に重なっている。ドレイン電極19は、不純物半導体膜17に重なっている。ソース電極18及びドレイン電極19は受光素子20ごとに形成されている。ボトムゲート絶縁膜13とトップゲート絶縁膜21との間には、それぞれ10本のソースライン18a,18a,…及びドレインライン19a,19a,…が形成され、これらソースライン18a,18a,…及びドレインライン19a,19a,…が列方向に延在している。縦方向に配列された同一の列の受光素子20,20,…のソース電極18は共通のソースライン18aと一体となって形成されており、縦方向に配列された同一の列の受光素子20,20,…のドレイン電極19は共通のドレインライン19aと一体なって形成されている。ソース電極18、ドレイン電極19、ソースライン18a及びドレインライン19aは、導電性及び遮光性を有しており、例えばクロム、クロム合金、アルミ若しくはアルミ合金又はこれらの合金からなる。
【0026】
トップゲート電極22は、半導体膜14との間にチャネル保護膜15及びトップゲート絶縁膜21を挟んで、半導体膜14に相対している。トップゲート電極22は、受光素子20ごとにトップゲート絶縁膜21上に形成されている。また、トップゲート絶縁膜21と保護絶縁膜23との間には、複数本のトップゲートライン22a,22a,…が形成され、これらトップゲートライン22a,22a,…が互いに平行となって行方向に延在している。横方向に配列された同一の行の受光素子20,20,…のトップゲート電極22が共通のトップゲートライン22aと一体となって形成されている。トップゲート電極22及びトップゲートライン22aは、導電性及び光透過性を有し、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛若しくは酸化スズ又はこれらのうちの少なくとも一つを含む混合物(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム)で形成されている。
段ラック
【0027】
保護絶縁膜23の表面には、スポット固定層24が形成されている。スポット固定層24は、スポット60となる後述するプローブとシランカップリング剤等によって共有結合することで、スポット60を固定する。
【0028】
以上のように構成された固体撮像デバイス10はスポット固定層24の表面を受光面としており、固体撮像デバイス10が駆動されることによって受光素子20の半導体膜14において受光した光量が電気信号に変換される。
【0029】
〔3〕スポット
図1、図3に示すように、固体撮像デバイス10の受光面(スポット固定層24の表面)には複数のスポット60が形成されている。各スポット60は、プローブとなる既知の塩基配列のcDNA(プローブDNA61)や抗体等の溶液を固体撮像デバイス10の受光面に滴下し、乾燥して形成される。以下ではプローブとして既知の塩基配列のcDNAを用いた場合について説明する。
【0030】
1つのスポット60では同じ塩基配列の一本鎖のプローブDNAが多数集まった群集が固定化され、スポット60ごとにプローブDNAの塩基配列が異なっている。プローブDNAとしては、既知のmRNAの塩基配列が用いられたり、その一部と同一の又は相補的な塩基配列のDNAが用いられたりする。具体的には、例えば、蛍光標識DNAで用いるのと同じ細胞検体から作成したcDNAライブラリを用いることができる。
図3に示すように、1つのスポット60は複数の受光素子20上に重なるように形成されている。
【0031】
〔4〕生体高分子分析支援装置
生体高分子分析チップ1をセッティングする生体高分子分析支援装置70について図6を用いて説明する。図6は生体高分子分析支援装置70の構成を示すブロック図である。
【0032】
生体高分子分析支援装置70は、生体高分子分析チップ1、制御部71、記憶装置72、ドライバ74〜76、出力装置77及び光源81〜84を有する。
図1に示すように、固体撮像デバイス10が光源81〜84の下に取り付けられた場合、固体撮像デバイス10のトップゲートライン22a,22a,…がトップゲートドライバ74の端子に接続され、ボトムゲートライン12a,12a,…がボトムゲートドライバ75の端子に接続され、ドレインライン19a,19a,…がドレインドライバ76の端子に接続される。また、固体撮像デバイス10のソースライン18a,18a,…が一定電圧源に接続され、この例ではソースライン18a,18a,…が接地されるようになっている。トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76は、協同して固体撮像デバイス10を駆動するものである。
【0033】
トップゲートドライバ74は各行のトップゲートライン22a,22a,…ごとに、受光素子20の半導体膜14等に蓄積された正孔等のキャリアを排除するためのリセットパルスを順次出力するようになっている(図7参照)。リセットパルスのレベルは例えば+5〔V〕のハイレベルである。一方、トップゲートドライバ74は、リセットパルスを出力しない時に、半導体膜14に形成される電子−正孔対のうちの一方のキャリアである正孔を保持するためのローレベルの−20〔V〕の電位をそれぞれのトップゲートライン22aに印加するようになっている。トップゲートドライバ74としては、シフトレジスタを用いることができる
【0034】
ボトムゲートドライバ75は、各行のボトムゲートライン12a,12a,…に、受光素子20の半導体膜14にチャネルを形成するためのリードパルスを順次出力するようになっている(図7参照)。リードパルスのレベルは+10〔V〕のオンレベル(ハイレベル)であり、リードパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のオフレベル(ローレベル)である。ボトムゲートドライバ75としては、シフトレジスタを用いることができる。
【0035】
トップゲートドライバ74が何れかの行のトップゲートライン22aにリセットパルスを出力した後に、蛍光の入射にしたがって生成される電子−正孔対のうちの一方のキャリアである正孔を蓄積するキャリア蓄積期間を経てボトムゲートドライバ75が同じ行のボトムゲートライン12aにリードパルスを出力するように、トップゲートドライバ74及びボトムゲートドライバ75が出力信号をシフトする。つまり、各行では、リードパルスが出力されるタイミングは、リセットパルスが出力されるタイミングより遅れている。また、何れかの行のトップゲートライン22aへのリセットパルスの入力が開始してから、同じ行のボトムゲートライン12aへのリードパルスの入力が終了するまでの期間は、その行の選択期間である。リセットパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、リセットパルスが出力されていない時のレベルは−20〔V〕のローレベルである。
【0036】
ドレインドライバ76は、それぞれの行の選択期間において、リセットパルスが出力されてからリードパルスが出力されるまでの間に、全てのドレインライン19a,19a,…にプリチャージパルスを出力するようになっている。プリチャージパルスによるドレインライン19aの電位は、その後、入射される蛍光の光量にしたがって受光素子20の半導体膜14に流れる電流に応じて減衰する。プリチャージパルスのレベルは+5〔V〕のハイレベルであり、プリチャージパルスが出力されていない時のレベルは±0〔V〕のローレベルである。また、ドレインドライバ76は、蛍光の入射によって変位するドレインライン19a,19a,…の電圧を増幅して制御部71のA/Dコンバータに出力するようになっている。
【0037】
制御部71は、光源81〜84の点灯・消灯を行う機能を有する。
また、制御部71は、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に制御信号を出力することによって、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に固体撮像デバイス10の駆動動作を行わせる機能を有する。制御部71は、固体撮像デバイス10を駆動することによってドレインドライバ76から電気信号を入力し、それをA/D変換することで固体撮像デバイス10の受光面に沿った光量分布を二次元の画像データとして取得する。
また、制御部71は、画像データに従った画像を出力装置77に出力させる機能を有する。出力装置77は、例えばプロッタ、プリンタ又はディスプレイである。
また、制御部71は、画像データを記憶装置72に記録する機能を有する。
【0038】
記憶装置72は、ハードディスクドライブ又は半導体記憶装置である。
【0039】
〔5〕分析手順
〔5−1〕蛍光標識DNAの作成
上記生体高分子分析チップ1で分析する試料としては、DNAを用いることができる。試料となるDNAとしては、任意の細胞検体内で発現しているmRNAを抽出し、逆転写酵素を用いるRT−PCR反応により得られたcDNAを用いることができる。cDNAは蛍光体で標識する。蛍光体としては、例えばGEヘルスケア バイオサイエンス株式会社製のCy2(吸収ピーク波長491nm、蛍光ピーク波長509nm)、Cy3(吸収ピーク波長553nm、蛍光ピーク波長569nm)、Cy5(吸収ピーク波長645nm、蛍光ピーク波長664nm)等を用いることができる。
【0040】
cDNAを蛍光体で標識するには、例えば、蛍光体で標識されたオリゴdTプライマや、標識されたdNTPミックスを用いてRT−PCR反応を実施すればよい。以下では、この標識されたcDNAを蛍光標識DNAという。
【0041】
〔5−2〕ハイブリダイゼーション
まず、図7に示すように、蛍光標識DNAを含有した溶液(以下、蛍光標識DNA)を固体撮像デバイス10の受光面に塗布する。なお、蛍光標識DNA溶液を各スポット60,60,…に順次又は同時に滴下してもよい。このとき、DNAが一本鎖となるように蛍光標識DNA溶液は加熱されている。また、スポット60のDNAが一本鎖となるように固体撮像デバイス10の受光面も加熱されている。
【0042】
次いで、固体撮像デバイス10を冷却する。すると、蛍光標識DNA溶液内の蛍光標識DNAのうち、スポット60のプローブDNAと相補的な蛍光標識DNAは、そのプローブDNAとハイブリダイズする。一方、プローブDNAと相補的ではない蛍光標識DNAは、このスポット60には結合しない。
【0043】
その後、洗浄用バッファー溶液で蛍光標識DNA溶液を固体撮像デバイス10の受光面から洗い流し、蛍光標識DNAのうちハイブリダイズしなかったものを固体撮像デバイス10の受光面から除去する。
【0044】
〔5−3〕サンプルの検出
上記処理を行った後、生体高分子分析チップ1を、生体高分子分析支援装置70にセッティングする。これにより、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76をそれぞれトップゲートライン22a,22a,…、ボトムゲートライン12a,12a,…、ドレインライン19a,19a,…に接続する。また、ソースライン18a,18a,…を一定電圧源に接続する。その後、制御部71を起動する。
【0045】
制御部71が起動すると、制御部71が光源81を点灯させる。光源81によってスポット60,60,…に第1励起光が照射される。そうすると、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出される。一方、蛍光標識DNAがプローブDNAに結合したスポット60からは、蛍光が放出されない。
【0046】
そして、制御部71は、光源81を点灯した状態で、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76に制御信号を出力することによって固体撮像デバイス10を駆動する。これにより、制御部71は、ドレインドライバ76から画像データを取得し、その画像データを記憶装置72に記録する。
【0047】
ここで、固体撮像デバイス10の撮像動作について説明する。
トップゲートドライバ74が1行目のトップゲートライン22aから最終行目のトップゲートライン22aへと順次リセットパルスを出力し、ボトムゲートドライバ75がボトムゲートライン12a,12a,12a,…に順次リードパルスを出力する。その際、ドレインドライバ76が各行でリセットパルスが出力されているリセット期間と各行でリードパルスが出力されている期間との間に、プリチャージパルスを全てのドレインライン19a,19a,…に出力する。
【0048】
i行目の各受光素子20の動作について詳細に説明する。図7に示すように、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン22aにリセットパルスを出力すると、i行目のトップゲートライン22aがハイレベルになる。i行目のトップゲートライン22aがハイレベルになっている間(この期間をリセット期間という。)、i行目の各受光素子20では、半導体膜14内や半導体膜14とチャネル保護膜15との界面近傍に蓄積されたキャリア(ここでは、正孔である。)が、トップゲート電極22の電圧により反発して吐出される。
【0049】
次に、トップゲートドライバ74がi行目のトップゲートライン22aにリセットパルスを出力することを終了して、半導体膜14に蛍光が入射することによって半導体膜14内に生成された電子−正孔対のうちの正孔を電気的に捕捉するためのするため負電位(−20〔V〕をトップゲートライン22aに出力する。つまり、i行目のトップゲートライン22aのリセットパルスが終了してから、i行目のボトムゲートライン41にリードパルスが出力されるまでの間(この期間をキャリア蓄積期間という。)、光量に従った量の電子−正孔対が半導体膜14内で生成されるが、そのうちの正孔がトップゲート電極22の電界により半導体膜14内や半導体膜14とチャネル保護膜15との界面近傍に蓄積される。
【0050】
次に、キャリア蓄積期間中に、ドレインドライバ76が全てのドレインライン19a,19a,…にプリチャージパルスを出力する。プリチャージパルスが出力されている間(プリチャージ期間という。)では、i行目の各受光素子20においては、トップゲート電極22に印加されている電位が−20〔V〕である。そうすると、この負電界によって半導体膜14内や半導体膜14とチャネル保護膜15との界面近傍に蓄積された正孔による電界は、必然的に負電界を完全に相殺して半導体膜14のチャネル領域にnチャネルを形成する程度の正電界には成り得ない。そうすると、ボトムゲート電極12に印加されている電位が±0〔V〕であるため、ドレイン電極19とソース電極18との間にプリチャージパルスの電位差が生じても半導体膜14にはチャネルが形成されず、ドレイン電極19とソース電極18との間に電流は流れない。プリチャージ期間において、ドレイン電極19とソース電極18との間に電流が流れないため、ドレインライン19a,19a,…に出力されたプリチャージパルスによってi行目の各受光素子20のドレイン電極19に電荷がチャージされる。
【0051】
次に、ドレインドライバ76がプリチャージパルスの出力を終了するとともに、ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン12aにリードパルスを出力する。ボトムゲートドライバ75がi行目のボトムゲートライン12aにリードパルスを出力している間(この期間を、リード期間という。)では、i行目の各受光素子20のボトムゲート電極12に+10〔V〕の電位が印加されているため、i行目の各受光素子20がオン状態になる。
【0052】
リード期間においては、キャリア蓄積期間において蓄積されたキャリアがトップゲート電極22の負電界を緩和するように働くため、入射される光量が十分あってキャリアの量が十分あれば、ボトムゲート電極12の正電界とあわせて半導体膜14にnチャネルが形成されて、ドレイン電極19からソース電極18に電流が流れるようになる。従って、リード期間では、ドレインライン19a,19a,…の電圧は、ドレイン−ソース間電流によって時間の経過とともに徐々に低下する傾向を示す。
【0053】
キャリア蓄積期間において半導体膜14に入射した光量が多くなるにつれて、蓄積されるキャリアも多くなり、蓄積されるキャリアが多くなるにつれて、リード期間においてドレイン電極19からソース電極18に流れる電流のレベルも大きくなる。従って、リード期間におけるドレインライン19a,19a,…の電圧の減少傾向は、キャリア蓄積期間で半導体膜14に入射した光量に深く関連する。
【0054】
そして、i行目のリード期間から次の(i+1)行目のプリチャージ期間までの間に、リード期間が開始してから所定の時間経過後のドレインライン19a,19a,…の電圧がドレインドライバ76によって検出される。その電圧が光量を示し、その電圧が制御部71に入力されてA/D変換される。
【0055】
上述した一連の画像読み取り動作を1サイクルとして、全ての行の各受光素子20にも同等の処理手順を繰り返すことにより、固体撮像デバイス10の受光面における光量分布が画像データとして制御部71に取得される。
【0056】
以上のような固体撮像デバイス10による撮像後、制御部71が光源81を消灯して、引き続き光源82を点灯する。そして、制御部71は、光源82を点灯した状態で、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76により固体撮像デバイス10を駆動する。これにより、制御部71は、ドレインドライバ76から画像データを取得し、その画像データを記憶装置72に記録する。
【0057】
次に、制御部71は、光源82を消灯し、引き続き光源83を点灯する。そして、制御部71は、光源83を点灯した状態で、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76により固体撮像デバイス10を駆動する。これにより、制御部71は、ドレインドライバ76から画像データを取得し、その画像データを記憶装置72に記録する。
【0058】
次に、制御部71は、光源83を消灯し、引き続き光源84を点灯する。そして、制御部71は、光源84を点灯した状態で、トップゲートドライバ74、ボトムゲートドライバ75及びドレインドライバ76により固体撮像デバイス10を駆動する。これにより、制御部71は、ドレインドライバ76から画像データを取得し、その画像データを記憶装置72に記録する。その後、制御部71は、光源84を消灯する。画像データには、固体撮像デバイス10における各受光素子20の位置と、各受光素子20の出力とが含まれており、制御部71は、プローブDNAが設けられていないことによってハイブリダイゼーションが行われなかったスポット60に対応する受光素子20の出力の総和或いは平均値をバックグラウンド出力とし、プローブDNAが設けられたスポット60に対応する受光素子20の出力の総和或いは平均値が最も高い領域の出力値をハイブリダイゼーションによるシグナル出力と設定する。ここで、光源81によって取得されたバックグラウンド出力及びシグナル出力がそれぞれ100、110、光源82によって取得されたバックグラウンド出力及びシグナル出力がそれぞれ100、108、光源83によって取得されたバックグラウンド出力及びシグナル出力がそれぞれ100、115、光源84によって取得されたバックグラウンド出力及びシグナル出力がそれぞれ100、100であった。
【0059】
以上により、光源81〜84による各画像データが記憶装置72に記録される。制御部71は、これらの画像データのうち、バックグラウンド出力に対するシグナル出力の比が最も大きい画像データを選択して、画像データに従った画像を出力装置77に出力させることによって容易にハイブリダイゼーションを判断することができる。或いは、光源81〜84による各画像データの同一位置の受光素子20の出力を加算したシグナル出力の加算値からバックグラウンド出力を減算しても、その差は、単一光源のときの差よりも大きく、ハイブリダイゼーションを容易に判断することができる。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、光源81〜84による画像データを処理した後に、その処理後の画像データに従った画像が出力装置77に出力されるため、画像のうち蛍光を発した部分とそうでない部分との明暗の差(コントラスト)が大きくなる。そのため、出力された画像の中から蛍光を発した部分の特定が容易である。つまり、蛍光標識DNAと相補的なプローブDNAのスポット60を特定することが容易である。なお、光源84のように、励起されない波長域の光を照射する光源を用いれば、バックグラウンド出力及びシグナル出力がほぼ同じ値となり、バックグラウンド出力をより把握できる。
上記実施形態では、ダブルゲートトランジスタを受光素子としたが、蛍光を受光できる素子であればこれに限らない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】生体高分子分析支援装置の要部を示した斜視図である。
【図2】光源の特性を示したグラフである。
【図3】生体高分子分析チップの一部を示した平面図である。
【図4】固体撮像デバイスの画素を示した平面図である。
【図5】V−V矢視断面図である。
【図6】生体光高分子分析支援装置の構成を概略的に示したブロック図である。
【図7】固体撮像デバイスの信号の推移を示したチャートである。
【符号の説明】
【0062】
10 固体撮像デバイス
60 スポット
70 生体高分子分析支援装置
71 制御部
81〜84 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像デバイスと、
既知の生体高分子からなり、前記固体撮像デバイスの受光面上に点在した複数種のスポットと、
前記固体撮像デバイスに向けて互いに異なるピーク波長域の光を照射する複数の光源と、を備えることを特徴とする生体高分子分析支援装置。
【請求項2】
前記複数の光源を順次点灯させるとともに、前記各光源が点灯している時に前記固体撮像デバイスに撮像動作を行わせて画像データを取得する制御部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の生体高分子分析支援装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記各光源が点灯している時に取得した画像データの加算、減算等の処理をすることを特徴とする請求項2に記載の生体高分子分析支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−71928(P2010−71928A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242423(P2008−242423)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】