説明

生分解性グラフトコポリマー

本発明は、両親媒性ジブロックコポリマーでグラフトされたポリサッカリド骨格から成る生分解性コポリマー組成物ならびにこのような組成物の製造方法およびこのような組成物から成る活性成分を放出するのに適した粒子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性コポリマーの分野に関する。より詳細には、両親媒性ジブロックコポリマーでグラフトされたポリサッカリド骨格をベースとする新規コポリマー組成物に関する。本発明の組成物は、種々の適用分野、特に製薬、香料およびフレーバーの分野における使用が見いだされており、この場合、これらは、特定の環境下で、活性成分のための送達系として使用するのに適したコアシェル構造を採用するものである。さらに本発明は、このようなコポリマー組成物の製造方法に関する。
【0002】
生分解性コポリマー組成物ならびに生物学的に活性の成分のためのキャリアーとしてのその使用は、従来技術において、一般的文献および特許文献の双方において記載されている。実際に、多くの生分解性コポリマーは、医薬適用のため、さらには薬物のカプセル化のために開発されている。
【0003】
特許文献において、生分解性コポリマー組成物の分野における開示は、ジブロック、トリブロックまたはマルチブロックコポリマーの使用に関し、この場合、これらのポリマーは、連続する構造から構成されるものであって、その際、様々の性質のセグメント(たとえば、疎水性および親水性セグメント)が一緒に共有結合されている。WO 02/39979, US 5,221,534 または US 5,756,082では、このような構造の製造例が提供され、かつその薬物送達系ならびに化粧品組成物中または他の適用における使用が記載されている。
【0004】
他方では、連続的構造とは対照的に、生分解性ポリマー組成物をベースとするグラフト構造がさらに特許および特許出願の対象となっている。特に、ポリサッカリド鎖に沿っての単一ポリマーのグラフトをベースとする系が開示されている。WO01/79315では、たとえば、疎水性マクロ分子からなるコポリマー組成物、たとえば、潜在的な反応部位として作用しうる複数個のヒドロキシル官能基を有する水溶性ポリマーで架橋されたポリ乳酸が記載されている。記載された組成物は、制御された薬剤送達系として使用することができる。
【0005】
近年、US 2002/0146826では、一方ではオリゴアミンでグラフトされ、かつ疎水基および両親媒性基からなる群から選択された少なくとも1種の他の基によってグラフトされたポリサッカリド鎖をベースとする系が記載されている。オリゴアミンは、5個のサッカリド単位あたり少なくとも1種のオリゴマーで共役されるのに対し、疎水性基および両親媒性基は、50個のサッカリド単位あたり少なくとも1種の基で配置されている。刊行物は、遺伝子治療のための前記系の適用を開示している。
【0006】
したがって、本発明は、両親媒性ジブロックコポリマーでグラフトされているポリサッカリド骨格の使用をベースとする、新規生分解性ポリマーに関する。このような系は、従来開示されておらず、かつ、薬剤、フレーバー、フレグランスまたは他の活性成分のために極めて有利な送達系に寄与することが証明された。
【0007】
本発明の第1の対象は、ポリサッカリド骨格および前記ポリサッカリド骨格上にグラフトされた両親媒性ジブロックコポリマーに関し、この場合、それぞれの両親媒性ジブロックは:
a)ポリサッカリド骨格上に直接グラフトされ、かつ5〜200個の繰り返し単位を有する疎水性ポリマーセグメント;および
b)疎水性セグメントと共有結合し、かつ5〜300個の繰り返し単位を有する親水性ポリマーセグメント、を含有する。
【0008】
前記組成物は、水性媒体中に導入された場合にコア−シェル構造をとることが証明され、これによって、薬剤、フレーバーまたは香料の成分または組成物として種々の活性成分のための送達系として使用することができる粒子を形成する。これらの粒子ならびにその送達系としての使用およびこれらの送達系を含有する機能性組成物、たとえば香料、食品または医薬組成物もまた本発明の対象である。
【0009】
さらに本発明は、前記のようなコポリマーを製造するための方法に関し、この場合、この方法は、ポリサッカリドの化学的改変によってミクロ開始剤を製造するための主要な工程:前記マクロ開始剤を使用して疎水性モノマーを重合し、ポリサッカリド上にグラフトされた疎水性の第1のセグメントを提供し;得られたポリマーをミクロ開始剤として使用して、疎水性の第1のセグメントと共有結合した第2のセグメントを構成するモノマーを重合し;および場合によっては第2セグメントを化学的に改質化することを含む。
【0010】
したがって本発明は、ポリサッカリド骨格および前記ポリサッカリド骨格上にグラフトされた、両親媒性ジブロックコポリマーを含むコポリマーに関する。
【0011】
好ましい実施態様において、両親媒性ジブロックコポリマーは、ヒドロキシル官能基による30〜80%の置換率で、前記骨格上にグラフトされている。それぞれの両親媒性ジブロックは、ポリサッカリド骨格上に直接グラフトされた疎水性ポリマーセグメントを含有し、この場合、このセグメントは5〜200個の繰り返し単位を有し、かつ疎水性セグメントに共有結合された親水性ポリマーセグメントは、この場合、5〜300個の繰り返し単位を有する。本発明の好ましい実施態様において、疎水性セグメントは15〜100個の繰り返し単位および親水性ポリマーセグメントは15〜200個の繰り返し単位を有する。
【0012】
好ましくは、それぞれの両親媒性ジブロックは、疎水性ポリマーセグメントおよび親水性ポリマーセグメントから構成される。
【0013】
本発明のコポリマーは新規であり、先行技術文献には、親水性ジブロックコポリマーでのポリサッカリドのグラフトについては記載されていない。本発明の組成物は、新規であるのに加えて、その中に封入された活性成分のための送達系として極めて有用であってもよい粒子を形成することが証明された。実際には、水性媒体中で、本発明の両親媒性コポリマーは、コア−シェル構造を採用し、その物理化学的性質は、それぞれのセグメントの重合度、両親媒性ブロックの官能性およびグラフト密度を変更することによって調節することができる。最終的なパラメータに依存して、コポリマー組成物は、単離されたマクロ分子の安定な水性分散液を形成することができる。
【0014】
本発明の他の対象、態様および利点に関しては、以下の詳細な説明に示す。
【0015】
図面の簡単な説明
図1は、一方でヒドロキシプロピルセルロース/リナロール試料および他方でHPC−g−PLLA−b−ポリトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート塩(PTMAEMA)/リナロール試料に関する、25℃で得られた等温曲線を示す図である。
図2は、本発明のグラフトポリマーの存在下(5f、5g、1d)または不在下(香料、EtOH/Eau)で、時間経過上で熱重量分析によるオードトワレ(EDT)の質量損失を示す図である。質量損失は、50℃で115分に亘ってプラトーを形成し、その際、本発明によるポリマーと一緒に供給した試料(5f、5g、1d)は、コントロールよりも少ない香料損失量を示す。
【0016】
本発明の生分解性ポリマーは、両親媒性ジブロックコポリマーでグラフトされているポリサッカリド骨格をベースとし、好ましくは、ヒドロキシル官能基による30〜80%の置換率を有する。任意のポリサッカリド、好ましくは生分解性のものは、本発明に適切であってもよい。適切なポリサッカリド鎖の典型的な例は、デキストラン、アラビノガラクタン、プルラン、セルロース、セロビオース、イヌリン、キトサン、アルギネート、ヒアルロン酸およびシクロデキストリンから成る群から選択されたものを含む。好ましい実施態様によれば、本発明で使用されたポリサッカリドは、800g/モルよりも高い分子量を有する。
【0017】
好ましくは、本発明のコポリマーは生分解性コポリマーである。
【0018】
好ましくは、本発明のコポリマーは、コポリマー組成物の形で存在する。
【0019】
ポリサッカリド骨格上にグラフトされた両親媒性ジブロックコポリマーは、それぞれ、5〜200個、好ましくは15〜100個の繰り返し単位を有する疎水性ポリマーセグメント、その際、疎水性ポリマーセグメントは、直接的にポリサッカリド上にグラフトされている;および5〜300個、好ましくは15〜200個の繰り返し単位を有する親水性ポリマーセグメント、この場合、これらは、疎水性セグメントと共有結合されている、から構成される。
【0020】
両親媒性のジブロックコポリマー部分から成るセグメントの疎水性および親水性は以下のように定義される:ポリマーセグメントが水中で不溶であるか、あるいは、親水性ポリマーセグメントよりも少ない溶解性を有する場合には、疎水性とする。ポリマーセグメントが、室温(25℃)で、水中で0.01質量%またはそれ以上溶解可能である場合には親水性とし、その際、方法については、参考のために記載するUS 6,733,787,例2にしたがう。たとえば、ポリサッカリド骨格上にグラフトされたジブロック−コポリマー([A]n-[B]p)は、ポリマー[A]nが、水中で0.01質量%で溶解しない場合であって、かつ、ポリマー[B]pが、これとは対照的に水中で、0.01質量%で溶解しうる場合には、本発明の要求する親水性/疎水性を充足する。
【0021】
一般に良好な指標として、算定されたVan Krevelen溶解性パラメータは、本発明のコポリマーのセグメントが疎水性または親水性である場合には、測定のために挙げることができる。van Krevelen/Hofzyger "ポリマーの性質", p. 200-225、 D.W. van Krevelen (Elsevier, 1990)に記載されている。vanKrevelen/Hofzygerの溶解性パラメータおよび3−D溶解性パラメータが<25である場合に、ポリマーブロックまたはセグメントは疎水性である。パラメータが≧25である場合には、ポリマーは親水性である。
【0022】
本発明の目的のためのパラメータ値を測定するために、繰り返しのない末端を有する8個の重合されたモノマー単位を、H−または考えられる分子によって置換する。たとえば、tert.−ブチルアクリレートをモノマー部分として含有するポリマーに関しては、以下の標準分子を、vanKrevelen/Hofzyger溶解性パラメータを算定するために使用する。
【0023】
【化1】

【0024】
vanKrevelen/Hofzyger溶解性パラメータは、ソフトウェアツール、たとえばMolecular Modeling Pro, version 5.22(Norgwyn Montgomery Software me, (C)2003)によって概算することができる。前記ポリマーに関しては、29.35の値が得られた。
【0025】
二者択一的に、疎水性および親水性は、当業者に公知のHildebrand溶解性パラメータ、いわゆるHansen溶解性パラメータを用いて定義することができ、この場合、これらは化学成分の極性を特徴づけるものである。エタノールは、通常は参考例として用いられ、この場合、エタノールは25の溶解性パラメータδを有する。したがってセグメントは、そのHansen溶解性パラメータが25以下である場合には疎水性とみなされ、かつその溶解性パラメータが25を上回る場合には親水性とみなされる。Hansen溶解性パラメータは、前記ソフトウエアおよび標準分子によって概算することができる。
【0026】
ポリサッカリド骨格上に直接的にグラフトされるであろう疎水性ポリマーセグメントは、繰り返し単位の数によって特徴付けられ、この場合、この数は5〜200個、好ましくは15〜100個である。これらは、好ましくは、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリプロピレングリコールおよびポリアンヒドリドから成る群から選択される。
【0027】
疎水性ポリマーセグメントに共有結合しているであろう親水性ポリマーセグメントは、5〜300個、好ましくは15〜200個の繰り返し単位の数によって特徴付けられる。これらは、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリトリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリル酸塩、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリメチルエーテルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸およびポリアクリロニトリルから成る群から選択される。用語(メタ)アクリレートは、相当するアクリレートおよび/またはメタクリレートを包含する。
【0028】
本発明のコポリマー組成物は、水性環境下でコア−シェルの組織化された構造を生じる。したがって、本発明の他の対象は、コア−シェル構造を有する粒子に関し、この場合、これらは、前記に示す生分解性コポリマー組成物から構成される。より詳細には水性媒体と接触させた際に、本発明による組成物の疎水性ブロックは、コアを構成するものに分類され、かつ親水性ブロックは、疎水性ブロック周囲でシェルを構成するように配置される。系は、粒子を形成するポリサッカリド骨格周囲に配置され、したがって有利には、活性成分、特に疎水性成分のための送達系として使用することができ、その性質に依存して、コア部分に包含され、それによって、ポリマーマトリックスは、この活性成分のための制御された送達系を提供するものである。
【0029】
前記粒子は、本発明によるコポリマー組成物と水性媒体とを接触させる方法によって得ることができる。
【0030】
これらは、好ましくは10〜500nmの平均直径を有する。
【0031】
このように形成された粒子は、活性成分、たとえば薬剤、フレーバーまたはフレグランス成分または組成物を包接しうるものであって、かつ、コポリマー組成物から、コポリマーの分解前に拡散させることによってか、あるいは、コポリマーマトリックスからポリマー分解物として放出させることによって、前記成分または組成物の制御された放出のための送達系として使用することができる。包接された活性成分の放出は、部分的に組成物の種々のポリマーの分子量によって調節することができるか、あるいは、グラフト密度によって調節することができる。
【0032】
好ましい実施態様において、保護されうる活性材料は、香料またはフレーバー成分または組成物である。「香料またはフレーバー成分または組成物」の用語は、天然および合成由来双方の種々のフレーバーおよびフレグランス材料を示すものであると考えられる。これには、単独の化合物及び混合物が含まれる。天然エクストラクトはさらに、本発明の粒子内で包接されてもよく、この場合、これらは、たとえばシトラスエクストラクト、たとえばレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツまたはマンダリン油または特にスパイスのエッセンシャルオイルを含む。このようなフレーバーおよび香料成分の例は、最近の文献中で見いだすことができ、この場合、これらは、たとえば、in Perfueme and Plavour Chemicals, 1969, by S. Arctander, Montclair N. J. (USA); Fenaroli's Handbook of Flavour Ingredients, CRC Press or Synthetic Food Adjuncts by M.B. Jacobs, van Nostrand Co., Incである。これらは、香料、フレーバーおよび/または芳香消費製品の分野、すなわち、香気または味を消費製品に付与する分野において当業者に公知である。
【0033】
活性成分は、吸収または拡散によって、粒子中に導入することができる。これらの導入は、コポリマーおよび活性成分のプレミックス組成物を、水性媒体中に分散することによって得ることができる。より好ましくは、本発明による送達系を製造するための方法は、以下に示すようにコポリマー組成物を製造する工程、前記組成物を乾燥する工程および乾燥した組成物を活性成分または組成物と混合する工程を含む。これは、送達系の全質量に対して5〜70質量%の異なる量で存在していてもよい。
【0034】
本発明の粒子が、香料成分または組成物を封入する場合には、これらは有利には、ファインパヒュームおよび機能性香料の双方の香料において、多くの適用で使用することができる。特に、これらは、香料配合物の製造において、たとえば、香料、オードトワレまたはアフターシェイブローションのような用途において従来使用される他の香料成分、溶剤またはアジュバントと一緒にのみならず、機能性製品中で、製品、たとえばセッケン、バスまたはシャワージェル、シャンプーまたは他のヘアケア製品、化粧品組成物、デオドラントまたはエアフレッシュナー、洗剤またはファブリックソフナーまたはハウスホールド製品中に存在するベースの機能性成分と一緒に、使用することができる。これらのベース中に存在する機能性成分は、洗剤、清浄化、精製、柔軟化、抗菌性、安定化の性質を有する。
【0035】
すべての適用において、香料と一緒に導入される本発明の粒子は、他の香料成分、溶剤またはアジュバントまたは香料組成物の製造において従来使用するものを含む香料組成物自体としてか、あるいはその一部分として使用することができる。
【0036】
用語「香料組成物」は、香料分野の範囲内であると理解されるべきである。好ましくは、これらは一般的名称において、発香性材料ブレンドと示され、この場合、これらは、独特かつ美的に適した性質を有するものと認識される。注意深く均衡にブレンドされることによって(特定成分を特定割合で)、それぞれの材料は、全フレグランスの獲得におけるその一部分を担う。したがって、この創造的かつ独創的な組成物は、構造的に、成分自体およびその相対的な割合によって寄与される配合物によって特徴付けられる。
【0037】
香料分野における香料配合物は、単に好適な芳香性材料の混合物であるばかりでない。他方で、動的な系に寄与する反応体および形成された生成物を含む化学反応は、別記しないかぎりにおいて、発香性材料が出発材料、形成された生成物またはこれらの双方中において存在する場合であったとしても、香料配合物と同化させることはできない。
【0038】
ここで、公知の性質とは別に、香料または香料組成物は、多くの工業的要求を充たすべきである。たとえば、十分な強さであること、拡散すること、好適であること、かつその本質的なフレグランスの特性を、その蒸発期間に亘って保持することが必要とされる。
【0039】
さらに、香料配合物は、意図される用途の機能に適合させるべきである。特に、香料組成物は、ファインフレグランスのためにデザインされてもよいか、あるいは、機能性製品のためにデザインされてもよく(石鹸、洗剤、化粧品等)、この場合、これらは、意図される用途に対して適切な程度で存在する必要がある。さらに配合物は、最終生成物中で化学的に安定でなければならない。これを達成する技術は、パヒューマー技術の本質的な部分であり、かつ、本来のもののみならず良好に作成された香料または香料配合物を配合するのに経験上必要なレベルに到達することは、長年に亘る熱心な仕事が必要とされる。
【0040】
ここで、これらの技術的考慮は、香料配合物が、香料材料以外の他の成分を含有していてもよいことを含み、その際、「香料配合物の製造において常用の溶剤またはアジュバント」として示される。
【0041】
先ず第一に、組成物が、ファインパヒュームまたは工業的製品での使用のいずれかのためのデザインされるのかにかかわらず、溶剤系は、フレグランスの最も大きい部分を占める。香料組成物の製造において従来使用される溶剤は、これに限定されることはないが、最も通常使用されるのはジプロピレングリコール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはクエン酸エチルを含む。
【0042】
他方で、機能性製品に関して意図される香料組成物の製造は、快楽性(hedonic、どのように製品がにおいを発するべきか)および香料を生成物配合物、しばしば生成物ベースと呼称されるものに適合する技術の双方に関する考察を含む。したがって、香料組成物は、香料を付与すべきベースに依存して、多くの異なる機能を有していてもよい「アジュバント」を含有していてもよい。これらのアジュバントは、たとえば安定化剤および抗酸化剤を含む。
【0043】
今日において、賦香された生成物の型および生成物配合物の範囲は広範囲に亘るため、生成物ベースに依存する生成物および使用されうるそれぞれの場合のアジュバントの定義に基づいて、アプローチをしばしば変更することは実行不可能である。それというのも、本願は、香料配合物中で従来使用される溶剤またはアジュバントのリストまたは詳細なアプローチについて排他的に含むものでないためである。しかしながら、当業者は、特に専門的パヒューマーは、これらの成分を、賦香すべき生成物および香料中の香料成分の性質の機能として選択する能力を有する。
【0044】
他方では、本発明の粒子が、フレーバー成分または組成物を封入する場合には、これらは、フレーバー組成物に添加されるか、あるいは、すぐに食べることができる消費製品に直接添加することができる。「フレーバー組成物」とは、本明細書中の記載においてフレーバー成分、溶剤またはアジュバントまたはフレーバー配合物の製造のために通常使用されるものの混合物を意味し、すなわち、食用に適した組成物に添加し、その官能的性質、特にその香気、フレーバーおよび/またはテイストを付与、改善または改質することが意図される成分の特別な混合物を意味する。
【0045】
フレーバー配合物の製造のための常用の溶剤およびアジュバントもまた公知である。これらは、フレーバー配合物についての技術的要求、たとえば安定性または調性(tonality)を充たすことが可能である。溶剤は、フレーバー組成物の最も大きい部分を占める。本発明の範囲内で、常用の溶剤とは、たとえばベンジルアルコール、プロピレングリコール、トリアセチン、植物油、エタノールまたはリモネンを含む。他方、アジュバントは、フレーバー組成物中での多くの異なる機能を有していてもよい。これらは、たとえば安定化剤を含む。
【0046】
他方、本発明の粒子は、さらにすぐに使用可能な消費製品または最終製品に、直接的に添加することができる。いいかえれば、これらは、前記に示したようにフレーバー組成物に最初に添加することができ、その際、生じる組成物をその後に最終生成物に添加するか、あるいは、フレーバー組成物とは別個に食用に適した生成物に添加することができる。
【0047】
第3の実施態様において、本発明の粒子が薬剤を封入する場合には、これらを製薬学的組成物に添加することができる。
【0048】
他の活性成分は、本発明の粒子中に封入されていれもよく、たとえば栄養剤またはたとえば甘味料である。前記活性成分は、本発明を何ら制限するものではない。組成物、たとえば香料組成物、フレーバー組成物または医薬組成物において、本発明の粒子は、広範囲の濃度で、適用および好ましい効果に依存して使用することができる。当業者は、特別な適用のために正確な用量を選択することができる。
【0049】
本発明の他の対象は、前記のような生分解性コポリマーを製造するための方法である。本発明による方法は、ポリサッカリドの化学的改変によって、ミクロ開始剤を製造する主要な工程を含み;前記マクロ開始剤を用いて、疎水性モノマーを重合することで、ポリサッカリド上にグラフトされた疎水性第1セグメントを提供し;ミクロ開始剤として得られたポリマーを用いて、モノマーを重合して第1セグメントと共有結合する第2セグメントを構成し;かつ、必要である場合には、親水性セグメントを化学的に改変する。
【0050】
より詳細には、本発明の最初の工程は、ヒドロキシル官能基のシリル化によってポリサッカリド鎖のヒドロキシル基を部分的に保護することから成る。ポリサッカリドのヒドロキシル官能基とシリル化剤との比は1〜3等量であり、これによって20〜70%の保護されたポリサッカリドのヒドロキシル官能基を提供する。保護されたヒドロキシル官能基の比は、NMR分析によって制御することができる。シリル化は公知であり、かつ当業者は、適した反応条件および適したシリル化剤を選択することができる。ヘキサメチルジシラザンを、通常シリル化剤として使用する。この工程の詳細は、以下の実施例に示す。
【0051】
改質化されたポリサッカリドの保護されていないヒドロキシル官能基は、疎水性モノマー重合のための開始剤として、方法の第2工程で使用する。いいかえれば、得られた改質化されたポリサッカリド骨格は、種々のモノマーの重合を開始する能力を有するマクロ開始剤を構成し、この場合、重合は、方法の第2工程で、開環重合によって実施する。この第2工程中で、疎水性セグメントはさらに「第1のセグメント」として呼称され、したがって、ポリサッカリド骨格上にグラフトされる。好ましくは、重合は120〜150℃で、かつ触媒の存在下で実施する。特に例証される条件は、以下の実施例中でより詳細に示す。
【0052】
第3の工程において、ポリサッカリド骨格上にグラフトされている疎水性セグメントの末端基は、開始剤、すなわち、臭化アルキルによってエステル化され、ブロミド官能基を提供する。この新たに形成されたマクロ開始剤は、モノマー、たとえば(メタ)アクリレートモノマーを重合する能力を有し、この場合、重合は、方法の最後の本質的な工程を構成する。好ましい実施態様において、この重合は、原子移動ラジカル重合(ATPR)によって実施され、この場合、これは、よく知られたジブロック、トリブロックおよびグラフトコポリマーの合成に常用される公知技術であり、この場合、これは、刊行物、たとえば、Hedrick J.L.ら, Macromolecules, 1998, 31, 8691に記載されている。この刊行物は、疎水性ブロックのヒドロキシル官能基のエステル化が、開始剤、たとえば臭化アルキルによって得ることができることを記載している。この方法は、広範囲の官能性モノマーの重合を可能にし、かつプロトン性溶剤または官能基、たとえばヒドロキシルに対して感受性ではない。本発明による方法の第4の工程中で、モノマーは重合され、第1の疎水性セグメントと共有結合する第2のセグメントを提供する。第1の実施態様において、この工程で使用されるモノマーは親水性であり、かつこの工程はこれを直接に、好ましい生成物、すなわち、ポリサッカリド鎖上でグラフトされた両親媒性ポリマージブロックに導く。ここで、第2の実施態様によれば、方法の第4工程において重合されたモノマーは疎水性である。この場合において、第5の工程は、第2のセグメントを改質化するために必要不可欠であり、これを親水性に導く。これは、後者のセグメントの化学的改変を介して可能である。したがって、第2セグメント上に存在する官能基は、方法の最終工程において化学的に改質化することができる。たとえば、4級化を実施することができ、くし型のカチオンシェルを提供する。加水分解は、化学的改変の他の可能性である。これらの改変はさらに、水中での粒子の溶解性に影響するものであってもよい。
【0053】
記載された方法は、水と接触した際にコアシェル構造を生じる組成物を提供することを可能にする。この組成物は、親水性のシェルを有し、この場合、このシェルは、アニオン(たとえばポリメタクリル酸)、カチオン(たとえば、ポリトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートの塩を含む)またはノニオン(たとえばポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメチルエーテルジエチレングリコールメタクリレートを含む)であってもよい。
【0054】
本発明は、さらに本発明のコポリマーを含有する賦香製品に関する。好ましくは、賦香生成物は液体生成物である。
【0055】
たとえば、賦香生成物はパヒューム、オードトワレ、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル、石鹸(液体または固体)、クリーム、ローション、液体洗剤、固体洗剤または繊維柔軟剤である。本発明のポリマーが液体である場合には、直接的に生成物に添加することができる。二者択一的に、最初に香料と接触させて、その疎水性ブロックの範囲内でフレグランス化合物を吸収または結合させる。その後に、ポリマーを生成物の製造における任意の段階で、好ましくは香料を添加させる場合に生成物に添加してもよい。
【0056】
図1は、時間の経過によるリナロールの損失量の発生を示す相当する平均曲線を示す。フレグランス放出上のコポリマーの顕著な効果を観察することができた。リナロール放出の等温線は、2個の相を含むようである:早い相が等温線の開始時に、引き続いて遅い相である。この効果は、HPC試料に関しては観察されない。
【0057】
図2は、グラフトコポリマーの存在下または不在下で、EDT中で時間の経過に亘ってのフレグランスの質量損失の発生を示す、相当する平均曲線を示す。3個の主要な相が存在し、最初の層は、主に水およびエタノールの損失に相当し、第2の層は、50℃でのフレグランスの低い損失によって特徴付けられる、約3000秒に亘ってプラトーを維持するものであり、かつ最後の層は、150℃に温度をゆるやかに増加させることによる、フレグランスの完全な損失を示す。
【0058】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に記載され、その際、温度は摂氏度であり、略記は技術分野において通常の意味を有する。
【0059】
実施例
一般的説明
a)薬剤
溶剤およびペンタメチルジエチレントリアミン(PMEDETA)は、CaH上で蒸留し、かつ窒素下に置く。メタクリレートおよびアクリレートモノマーは、開始剤除去カラム(CAS 9003-70-7 ;Aldrich)上で濾過することによって精製される。臭化銅(CAS 7787-70-4;Aldrich)およびヒドロキシプロピル−セルロース(Mw=l 00000 g.mol−1; Aldrich, CAS 9004-64-2)を、受け器として使用した。(3S)−シス−3,6−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオンを、使用前に酢酸エチル中で再結晶化した。
【0060】
b)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SEC装置を、カラムMacherey-Nagel Nucluogel GPC 104-5を用いて実施した。溶剤として、HPLCグレードのものを使用した。ポリマー濃度を4mg/mlに固定した。流速を、1ml/分にし、かつ注入量を50mlにした。
【0061】
例1
本発明による生分解性コポリマー組成物の合成(66%置換率)
a)トリメチルシリル基を有する官能化ヒドロキシプロピルセルロースの合成(HPC−g−TMS)
100mlの3首丸形フラスコ中に、HPC4g(M=10g.mol−1, n=4.10−5mmol, DP=150, Mu=350,41 g.mol−1)を、乾燥アセトニトリル60ml中に溶解した(蒸留し、かつモレキュラーシーブ上に置いた)。ヘキサメチルジシラザン2.66Ml(M=161,39g.mol−1, n=12,77mmol, m=1.89gl, d=0,7742, m=2.06g)を滴加し、かつ媒体を90℃で4時間に亘って窒素下で加熱した。ポリマーを、水中に沈澱(3回に亘って)させることによって、白色の固体を得て、これを真空下で24時間に亘って乾燥させた。
m=4.75g、収率=80%
【0062】
【表1】

【0063】
b)ポリ−L−乳酸でグラフトしたヒドロキシピロピルセルロースの合成(HPC−g−PLLA)
冷却装置を備えた100mlの3首丸底フラスコ中に、200mgのHPC−g−TMS(66%OH基, MU=408.60 g.mol−1, n=0.98 mmol)および L−ラクチド 7.06g(M=144.13 g.mol−1, n=48.98mmol)を真空下で1時間に亘って乾燥させた。これらの固体を、乾燥キシレン25ml中に可溶化した。媒体を、135℃に加熱し、かつオクタン酸錫(tin octaote)の1滴を、重合を開始させるために添加した。媒体を135℃で72時間に亘って撹拌した。その後にポリマーを冷ヘプタン中に沈澱させ、濾過し、かつ白色の固体を得て、これを真空下で乾燥させた。すべてのモノマーを除去するために、コポリマーをアセトン中で可溶化し、かつ冷水中で沈澱させ、白色の固体を得た。
m=5.92g、収率=82%
【0064】
【表2】

【0065】
c)HPC−g−PLLA-開始剤の合成
3首丸底フラスコ中で、HPC−g−PLLA5.80g(MU=3280g.mol−1;nOH=3.52mmol)を、蒸留したTHF20ml中で可溶化した。この溶液を0℃に冷却した。その後に2−ブロモプロピオニロルブロミド740μl(M=215.88 g.mol−1,n=7.06mmol, m=1.52g)を添加し、引き続いてEtN(M=lOl.19 g.mol−1, n=7.06mmol,m=713mg, d=0.7255)983μlを添加した。媒体を室温で48時間に亘って撹拌し、懸濁液を得た。ポリマーを2回に亘って水中に沈澱させ、固体を得て、これをアセトン中で可溶化し、かつ冷ヘプタン中に沈澱させた。固体を真空下で24時間に亘って乾燥させた。
m=5.80g、収率=92%
【0066】
【表3】

【0067】
d)ヒドロキシプロピルセルロース−g−ポリ−L−乳酸−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート(HPC−g−PLLA−b−PDMAEMA)の合成
50mlの2首丸底フラスコ中に、HPC−g−PLLA−開始剤0.5g(Mu=3560 g.mol−1, n=0.14mmol)を、蒸留したアニゾール7.85ml中で可溶化した。その後に、2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート4.73ml(M=157.21 g.mol−1, d=0.933, n=28.09 mmol, DPn=100, m=4.41 g)およびHMTETA59μl(M=173.30 g.mol−1, d=0.83, n=0.28 mmol)を添加し、引き続いて2個の凍結−ポンプ−融解サイクルをおこなった。その後に、臭化銅を添加し(M=143.45 g.mol−1, m=40 mg, n=0.28 mmol)、かつ1個の凍結−ポンプ−融解サイクルによって脱ガスした。媒体を60℃まで加熱し、かつ3時間に亘って撹拌した。重合を液体窒素中で凍結することによって停止させ、かつ、媒体をTHT中で希釈した。溶液をシリカゲルカラム上で濾過し、かつ溶剤を除去した。ポリマーを、クロロホルム中で溶解し、かつ冷ヘプタン(0℃)中に沈澱させ、黄色の固体を得た。
m=2.4g、収率=48%
【0068】
【表4】

【0069】
e)HPC−g−PLLA−b−PTMASEMA(25−75)の合成
50mlの2首丸底フラスコ中で、洗浄かつ乾燥させた、1.0g のHPC−g−PLLA−PDMAEMA (Mu=36400g.mol−1, n=0.028 mmol)を、蒸留したTHF10ml中で可溶化した。その後に、ジメチルスルフェート168μl(10%THF中)を滴加した(M=126.13 g.mol−1, n=1.94mmol, d=1.3322, m=225 mg)。媒体を12時間に亘って室温で撹拌した。生成物を沈澱させ、かつ濾過によって、白色の固体が得られた。
m=1.2g、収率=96%
【0070】
【表5】

【0071】
例2
本発明のポリサッカリド骨格による、生分解可能なコポリマー組成物の合成(66%置換率)
工程a)、b)およびc)は、例1に記載したようにしておこなった。
【0072】
d)ヒドロキシプロピルセルロース−g−ポリ−L−乳酸−b−ポリ−tertio−ブチル−メタクリレート(HPC−g-PLLA-b-PBuMA)の合成(66%PLLA−b−PBuMA(40/60))
50mlの2首丸底フラスコ中に、HPC−g−PLLA開始剤(Mu=3560 g.mol−1、n=0.14mmol)0.50gを、蒸留したTHF7.50ml中で可溶化した。その後にtertio−ブチルメタクリレート4.60ml(M=142.20g.mol−1, d=0.875, n=28.09 mmol, DPn=100, m=4.00g)およびPMDETA59μl(M=173.30g.mol−1, d=0.83, n=0.28 mmol)を添加し、引き続いて2個の凍結−ポンプ−融解サイクルをおこなった。その後に、臭化銅を添加し(M=143.45 g.mol−1, m=40.30 mg, n=0.28 mmol)、かつ引き続いて、1個の凍結−ポンプ−融解サイクルをおこなった。媒体を60℃に加熱し、かつ24時間に亘って撹拌した。重合を液体窒素中で凍結することによって停止させ、かつ媒体をTHF中で希釈した。溶液をシリカゲルカラム上で濾過し、かつ溶剤を除去した。ポリマーをTHF中に溶解し、冷ヘプタン中で沈澱させ(0℃)、その後にアセトン中に溶解し、かつ冷水中で沈澱させて、白色の固体を得た。
m=1.40g、収率=31%
【0073】
【表6】

【0074】
e)ヒドロキシプロピルセルロース−g−ポリ−L−乳酸−b−ポリメタクリル酸(HPC−g−PLLA−b−PMMA)の合成(66%PLLA)
丸底フラスコ中で、HPC−g−PLLA−b−PBuMA900mgを、5mlのジクロロメタン中で可溶化した。トリフルオロ酢酸3Mlを添加し、かつ、媒体を室温で1時間に亘って撹拌し、かつ橙色にした。溶剤を除去し、かつ透明な赤色の固体を生じた。これを、ジエチルエーテルを用いて4回に亘って洗浄し、かつ赤色の濾液および白色の固体を得た。
m=0.70g、収率=89%
【0075】
【表7】

【0076】
例3
本発明による生分解可能なコポリマー組成物の合成(50%置換率)
a)トリメチルシリル基を有する官能化HPCの合成
例1a)と同様の方法を、以下の成分を用いて実施した:
HPC3.3g(M=10 g.mol−1, n=3.3.10−5 mmol, DP=150, MU=350.41 g.mol−1)、
ヘキサメチルジシラザン3.97ml(M=161.39 g.mol−1, n=18.84mmol, m=3.04g,d=0.7742)、
乾燥アセトニトリル50ml(蒸留し、かつモレキュラーシーブ上に置いたもの)
90℃、5時間、
m=4.2g、収率=74%
【0077】
【表8】

【0078】
b)HPC−g−PLLAの合成(置換率:50%PLLA)
例1b)と同様の方法を、以下の成分を用いて実施した:
HPC−g−TMS(50%OH基、Mu=917.45g.mol−1, n=0.545mmol)500mg、
L−乳酸(M=144.13g.mol−1, n=40.87mmol)5.89g、
乾燥キシレン28ml、
m=4.72g、収率=74%
【0079】
【表9】

【0080】
c)HPC−g−PLLA-開始剤の合成
2首の丸底フラスコ中に、HPC−g−PLLA(MU=7835g.mol−1; nOH=0.5mmol)1.30gを、10mlの蒸留THF中に可溶化した。この溶液を0℃に冷却した。その後にEtN 350μl(M=101.19g.mol−1,n=2.49mmol, m=252mg,d=0.7255)を添加し、引き続いて2−ブロモプロピオニルブロミド261μlを添加した(M=215.88g.mol−1,n=2.49mmol,M=540mg)。媒体を、60℃で72時間に亘って撹拌し、懸濁液を得た。ポリマーを水中への沈澱によって得て、固体を生じ、この場合、この固体は、アセトン中で可溶化し、かつ冷ヘプタン中に沈澱させた。固体を真空下で24時間に亘って乾燥させた。
m=1.27g、収率=97%
【0081】
【表10】

【0082】
d)ポリ−L−乳酸−b−ポリ−tertio−ブチルメタクリル酸の合成(50%PLLA−b−PBuMA)
25mlの2首丸底フラスコ中に、HPC−g−PLLA−開始剤(Mu=3110g.mol−1,n=0.10mmol)0.311gを、蒸留したアニゾール5.70ml中に可溶化した。その後に、tertio−ブチルメタクリレート(M=142.20g.mol−1, d=0.875, n=15.00mmol, DPn=100, m=2.13g)2.75mlおよびPMDETA(M=173.30g.mol−1,d=0.83, n=0.15mmol)31.3μlを添加し、かつ、2個の凍結−ポンプ−融解サイクルをおこなった。その後に、臭化銅を添加し(M=143.45g.mol−1, m=21.50mg, n=0.15mmol)、かつ、1個の凍結−ポンプ−融解サイクルをおこなった。媒体を60℃に加熱し、かつ24時間に亘って放置した。重合を、液体窒素中で凍結することによって停止させ、かつ、媒体をクロロホルム中に希釈した。臭化銅を水中で抽出することによって除去した。ポリマーを、NaSO上で、少量のシリカを用いて乾燥させ、濾過し、その後に冷ヘプタン(0℃)中に沈澱させ、かつ濾過し、固体を得た。これはアセトン中に可溶化し、かつ冷水中に沈澱させ、白色の固体を得た。
m=0.52g、収率=29%
【0083】
【表11】

【0084】
e)ポリ−L−乳酸−b−ポリメタクリル酸の合成(50%のPLLA−b−PMMA)
丸底フラスコ中で、HPC−g−PLLA−b−PBuMA0.45gを5mlのジクロロメタン中に可溶化させた。トリフルオロ酢酸3Mlを添加し、かつ媒体を室温で1時間に亘って撹拌した。ポリマーを、冷ヘプタン中に沈澱させることによって得て、かつ濾過し、白色の固体を得た。
m=0.30g;収率=85%
【0085】
【表12】

【0086】
例4
本発明による生分解可能なコポリマー組成物の合成(33%置換率)
a)トリメチルシリル基を有する官能化HPCの合成
例1a)と同様の方法を、以下の成分を用いて実施した:
HPC(M=10g.mol−1, n=2.10−5mmol, DPn=150, MU=350.41g.mol−1)2g、
ヘキサメチルジシラザン(M=161.39g.mol−1, n=17.13mmol, m=2.76g, d=0.7742)3.61ml、
乾燥アセトニトリル30ml(蒸留し、かつモレキュラーシーブ上に置いたもの)
90℃、24h、
m=2.4g、収率=85%
【0087】
【表13】

【0088】
b)HPC−g−PLLAの合成(置換率33%)
例1b)と同様の方法を、以下の成分を用いて実施した:
HPC−g−TMS(33%OH基、MU=480.80g.mol−1, n=0.77mmol)370mg、
L−ラクチド(M=144.13g.mol−1,n=38.50mmol)5.55g、
乾燥キシレン28ml、
m=5.06g、収率=86%
【0089】
【表14】

【0090】
c)HPC−g−PLLA−開始剤の合成
2首丸底フラスコ中に、HPC−g−PLLA700mg(Mu=1922g.mol−1;nOH=0.54mmol)を、蒸留THF7ml中に可溶化した。この溶液を0℃に冷却した。その後に、EtN(M=101.19g.mol−1, n=2.73mmol, m=276mg, d=0.7255)381μlを添加し、2−ブロモプロピオニルブロミド(M=215.88g.mol−1, n=2.73mmol, m=589mg)286μlを引き続いて添加した。媒体を60℃で72時間に亘って撹拌し、懸濁液を形成した。ポリマーを、水中に沈澱させることによって固体が得られ、この場合、これを、アセトン中で可溶化し、かつ冷ヘプタン中に沈澱させた。固体を真空下で、24時間に亘って乾燥させた。
m=0.65g、収率=87%
【0091】
【表15】

【0092】
d)ポリ−L−乳酸−b−ポリ−tertio−ブチルメタクリレートの合成(33% PLLA−b−PBuMA)
25mlの2首丸底フラスコ中に、HPC−g−PLLA−開始剤(Mu=3000g.mol−1, n=0.20mmol)0.60gを、蒸留したTHF7.50ml中で可溶化した。その後に、tertio−ブチルメタクリレート(M=142.20g.mol−1, d=0.875, n=20.00mmol, DPn=100, m=2.84g)3.40mlおよびPMDETA42μl(M=173.30g.mol−1, d=0.83, n=0.20mmol, m=34.6mg)を添加し、かつ、2個の凍結−ポンプ−融解サイクルをおこなった。その後に、臭化銅を添加し(M=143.45g.mol−1, m=28.7mg, n=0.20mmol)、かつ3個の凍結−ポンプ−融解サイクルをおこなった。媒体を60℃に加熱し、かつ24時間に亘って撹拌した。重合を、液体窒素中で凍結することによって停止させ、かつ媒体をクロロホルム中に希釈した。臭化銅を水中で抽出することによって除去した。ポリマーをNaSO上で、少量のシリカを用いて乾燥させ、濾過し、その後に冷ヘプタン(0℃)中に沈澱させ、かつ濾過し固体を得た。これをアセトン中で可溶化し、かつ冷水中に沈澱させ、白色の固体を得た。
m=1.20g、収率=35%
【0093】
【表16】

【0094】
e)ポリ−L−乳酸−b−ポリメタクリル酸(33%のPLLA−b−PMMA)の合成
丸底フラスコ中で、HPC−g−PLLA−b−PBuMA1.00gを、4mlのジクロロメタン中で可溶化した。トリフルオロ酢酸4Mlを添加し、かつ媒体を室温で1時間に亘って撹拌した。ポリマーを、冷ヘプタン中に沈澱させることによって得て、かつ濾過し、白色の固体を得た。
m=0.80g; 収率=91%
【0095】
【表17】

【0096】
例5
ポリ−L−乳酸−b−ポリアクリレート(HPC−g−PLLA−b−PAA)によるグラフトされたHPCの合成
丸底フラスコ中で、アクリレートモノマー(tertio−ブチルアクリレート(5d−e)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(5f)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(5g)およびジエチレングリコールメチルエーテル)アクリレート(5h)を、塊状でかまたはジオキサン中(50%v/v)の形で重合させた。
【0097】
例1c、3cおよび4c中で記載されたポリマーを開始剤として使用した。HEMTETA、ビピリジンおよびトリス(ジメチルアミノエチル)アミンを、リガンドとして使用し、かつCuBrを触媒として使用した。重合は、50℃〜110℃の温度で、窒素下で実施した。さらに化学的改変は、ポリ(tert−ブチルアクリレート)およびポリ(2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート)上でおこない、この場合、これは、2e、3e、4eおよび1eにそれぞれ相当し、HPC−g−PLLA−b−PAAを提供した。
【0098】
例6
本発明のコポリマー組成物を有するフレグランス送達系の製造
例1で記載したようにして製造されたコポリマーHPC−g−PLLA−PTMAEMAを乾燥させ、かつ50/50%(w/w)の混合比で、リナロールと一緒に直接混合した。同様の製造を、HPCを用いておこなった。2個の試料を、室温で少なくとも1日に亘って保存した。その後に、それぞれの試料10mgの量を、熱重量測定器を用いて、25℃での等温を、一定量の窒素ガス(20ml/分)下で記録することによって分析した。分析を、HPC−PLLA−PTMAEMA/リナロール試料 (質量 8.99, 9.57および8.85 mg)を用いて3回に亘って繰り返し、かつHPC/リナロール試料(質量9.76 および 9.77 mg)を用いて2回に亘って繰り返した。等温の時間を200分に固定した。
【0099】
例7
フレグランスの放出をコントロールするための、本発明のコポリマーを含有するオードトワレ (EDT)の製造
種々のコポリマー(例1d、5fおよび5g)(0.5質量%)を、EDT中で可溶化し、この場合、これは、エタノール80%、水10%およびフレグランス10%(ベンジルサリチレート35g ハバノリド(1−オキサ−12−シクロヘキサデセン−2−オン)2g、セタロックス2g、ヘジオン((+-)−メチル−3−オキソ−2−ペンチル−1−シクロペンタンアセテート)35g、バクダノール(2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール)1g、リリアル(3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール)10g、クマリン1g、バニリン2g、アントラニレート(pas dans chemisis en tant que tel)1g、ネオフロロール((+-)−テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール)1.5g、ステアリルアセテート(l−フェニルエチルアセテート)1.5g、ベンジルアセテート6g、ゼストバール(2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−l−カルバルデヒド)2gを含有していた。
【0100】
その後に、これらの溶液10mlをアルミナるつぼ中に導入した。フレグランスの質量損失を、熱重量測定によって(それぞれの試料を2回に亘って)、一定の窒素流(20ml/分)下で測定した。測定(図2)を、25℃〜50℃(5℃/分)で開始し、50℃で115分に亘って置き、その後に150℃(10℃/分)になるまで置いた。
【0101】
結果を、図2に示す。50℃で115分に亘っての質量損失は、本発明にコポリマーを欠くEDTの場合に最も高く(最も下の線、Perfume, EtOH/Eau)、その一方で、本発明による例1d、5gおよび5fのコポリマーを含む試料は、明らかに少ない損失(上部の3個の線)を示し、この場合、これらは種々のポリマーにおいてわずかな相違がみられた。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】時間の経過によるリナロールの損失を示す図
【図2】グラフトコポリマーの存在下または不在下で、EDT中で時間の経過に亘ってのフレグランスの損失を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリサッカリド骨格および前記ポリサッカリド骨格上でグラフトされた両親媒性ジブロックコポリマーを含有するコポリマーにおいて、それぞれ両親媒性ジブロックが:
a)ポリサッカリド骨格上に直接グラフトされ、かつ5〜200個の繰り返し単位を有する疎水性ポリマーセグメント;および
b)疎水性セグメントと共有結合し、かつ5〜300個の繰り返し単位を含有する親水性ポリマーセグメント、を含む、ポリサッカリド骨格および前記ポリサッカリド骨格上でグラフトされた両親媒性ジブロックコポリマーを含有するコポリマー。
【請求項2】
両親媒性ジブロックコポリマーが、ヒドロキシル官能基による置換率30%〜80%でポリサッカリド上にグラフトされている、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
疎水性セグメントが15〜100個の繰り返し単位を含有し、かつ、疎水性ポリマーセグメントが15〜200個の繰り返し単位を含有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
ポリサッカリド骨格が、デキストラン、アラビノガラクタン、プルラン、セルロース、セロビオース、イヌリン、キトサン、アルギネート、ヒアルロン酸およびシクロデキストリンから成る群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
疎水性ポリマーセグメントが、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリプロピレングリコールおよびポリアンヒドリドから成る群から選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
親水性ポリマーセグメントが、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリトリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリル酸塩、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリメチルエーテルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸およびポリアクリロニトリルから成る群から選択されている、請求項1に記載のポリマー
【請求項7】
以下の工程、
a)ポリサッカリド鎖のヒドロキシル官能基を、シリル化剤で部分的にシリル化し、その際、ポリサッカリドのヒドロキシル官能基とシリル化剤との比は1〜3等量であり、変性ポリサッカリドを提供し、
b)a)で得られた変性ポリサッカリドを用いて、開環重合によって120℃〜150℃の温度で、触媒の存在下で、生分解可能な疎水性モノマーを重合して、第1の疎水性セグメントでグラフトされたポリサッカリド骨格を提供し、
c)第1の疎水性セグメントの末端基を、過剰量で使用される臭化アルキルを用いてエステル化することによって、ミクロ開始剤を製造し、
d)c)で得られたマクロ開始剤を用いて、第2のセグメントを第1のセグメントと共有結合させモノマーを重合し、これによりコポリマージブロック組成物を製造し;かつ、
e)場合によっては、第2のセグメントを化学的に変性する、請求項1に記載のコポリマーの製造方法。
【請求項8】
工程d)中で使用されたモノマーが親水性であり、かつ工程e)を実施しない、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程d)中で使用されたモノマーが疎水性であり、かつ工程e)を実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程d)中の重合を、原子移動ラジカル重合によって実施する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
工程e)が、疎水性セグメントを親水性セグメントに形質転換するための、疎水性セグメントの加水分解または四級化から成る、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載のコポリマー組成物から成る、コア−シェル構造を有する生分解性粒子。
【請求項13】
請求項7に記載のコポリマー組成物の製造を含む方法に引き続いて、得られたコポリマー組成物と水性媒体との接触によって得られる、請求項12に記載の生分解性粒子。
【請求項14】
10〜500nmの平均直径を有する、請求項12に記載の粒子。
【請求項15】
薬剤、フレーバーまたは香料の成分または組成物を封入し、前記成分または組成物のための送達系を提供する、請求項12に記載の粒子。
【請求項16】
送達系に封入される成分または組成物のための送達系としての、請求項15に記載の粒子の使用。
【請求項17】
以下の工程、
a)請求項7に記載の方法によって、コポリマー組成物を製造し;
b)前記組成物を乾燥させ;
c)乾燥組成物と薬剤、フレーバーまたは香料の成分または組成物を、送達系の全質量に対して5〜70質量%の量で混合する、
を含む、請求項15に記載された送達系を製造するための方法。
【請求項18】
香料成分または組成物を封入する、請求項15に記載の粒子。
【請求項19】
香料配合物の製造において常用の補助成分、溶剤またはアジュバント、香料成分として請求項18に記載の粒子を含有する、香料組成物。
【請求項20】
請求項1から6までのいずれか1項記載のポリマーを含有する賦香製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−536426(P2007−536426A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512548(P2007−512548)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001179
【国際公開番号】WO2005/108471
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】