生分解性マグネシウム合金およびその使用
整形外科用インプラントのような埋め込み可能な医療デバイスを製造するために使用されることができる新規なマグネシウム系組成物が開示される。その組成物は、医療適用のために非常に好適である生体適合性、機械的特性および分解速度を特徴とするモノリシック構造物、多孔性構造物および/または多層化構造物を構築するために使用されることができる。これらのマグネシウム系組成物から作製される物品(例えば、医療デバイス)、および、これらのマグネシウム系組成物を調製するためのプロセスもまた開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性マグネシウム合金、および、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントなど)の製造におけるその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
折れた骨を再編成するために、また、アラインメントを骨が治癒するまで維持するために、様々な金属性インプラント(例えば、プレート、ネジ、ならびに、髄内用のくぎおよびピンなど)が整形外科手術の実施において一般に使用される。金属性インプラントはまた、例えば、脊髄障害、脚長相違、スポーツ傷害および事故の場合において骨格系を補強するために選択的手術時において使用されることがある。一般に使用されるさらなる金属性インプラントが、内腔(具体的には冠状動脈など)を支持するために役立つステントである。
【0003】
現在使用されている金属性インプラントのほとんどが、要求される生体力学的プロフィルを典型的には有するステンレス鋼、白金またはチタンから作製される。しかしながら、そのようなインプラントは、残念なことに、体内で分解せず、従って、インプラントがもはや医学的に必要とされないときには、身体によって拒絶される前に手術により取り除かなければならないことが多い。
【0004】
骨の治癒、例えば、骨折後の骨の治癒が、健康な個体では、薬理学的介入および/または外科的介入を必要とすることなく生じる。ほとんどの場合において、骨の治癒は、骨の完全な強度を回復するために数ヶ月を必要とする非常に長いプロセスである。
【0005】
個体における骨治癒プロセスは、その身体的状態および年齢によって、また、傷害の重症度および損傷した骨のタイプによって影響される。
【0006】
不適切な骨治癒により、激しい痛み、入院延長、および、様々な身体的障害が発現し得るので、骨がひどく損傷される場合、または、個体における骨治癒プロセスが正常でない場合には、外的介入(例えば、外科的インプラントなど)が、適切な骨修復を確実にするために必要となる場合が多い。
【0007】
そのような外的介入が長骨又は他の骨格骨の修復のために利用される場合、修復は、修復により誘導される骨損傷を回避するように十分に柔軟でなければならず、それにもかかわらず、修復は、骨にかかる力に耐えるために十分に強いことが望ましい。
【0008】
多くの場合、特に、骨の欠損修復を必要とする場合には、外的介入は典型的には、アラインメントを回復することを目的とし、また、損傷された骨の適切な治癒を保証する金属性インプラントの手術による埋め込みを使用して行われる。しかしながら、解剖学的部位におけるそのような金属性インプラントの存在は、覆っている腱に対する摩耗および損傷、骨インプラント界面での感染症を引き起こす可能性があり、また、さらには、その剛性は応力遮蔽を引き起こすことが多く、実際には、その下にある骨を弱くする。金属性インプラントに関連する他の合併症には、遅発性骨髄炎、および、インプラントが緩むことに伴う痛みが含まれる。
【0009】
従って、小児科患者では、インプラントが正常な成長を妨害することがあり、また、さらには上記の合併症を引き起こすことがあるので、インプラントは通常の場合には取り出される。
【0010】
それにもかかわらず、成人患者では、合併症が生じない限り、金属性インプラントのほとんどが治癒後に取り出されない。その主な理由は、さらなる外科的手法に伴うさらなる病的状態ならびに隣接する組織に対する感染および損傷の他の危険性である。
【0011】
金属性支持インプラント(具体的には、骨修復の分野で使用される金属性支持インプラント)に関連する制限を克服するために、非常に多くの努力が、生分解性であるそのようなインプラントを設計するためになされている。
【0012】
生分解性の支持インプラントは、事前に設計された既知の速度で時間とともに分解することができ、そのような生分解性インプラントは、治癒プロセスが完了するまで骨を支持し、従って、これにより、支持インプラントを取り出すための不必要な外科的手法を行う必要性が回避され、また、関連する危険性および費用を著しく軽減する。
【0013】
現在使用されている生分解性インプラントは様々なポリマーに基づいており、例えば、ポリヒドロキシ酸、PLA、PGA、ポリ(オルトエステル)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレン)などに基づく。しかしながら、そのようなインプラントは、比較的不良な強度および延性、ならびに、ヒト組織と反応しやすい傾向を欠点として有する(これらは、局所的な骨成長を制限し得る特徴である)。加えて、現在、生分解性インプラントを形成するために典型的に使用される生分解性ポリマーは極めて高価であり、従って、生分解性インプラントを費用効果的なものにしていない。
【0014】
従って、生分解性の金属性インプラントで、所望の分解性速度、必要な生体適合性、ならびに、それにもかかわらず、必要な強度および柔軟性を示すものが、これまで長い間探し求められている。
【0015】
マグネシウム(Mg)は、この分野では腐食と多くの場合には呼ばれるプロセスで生理学的環境において分解して、水酸化マグネシウムおよび水素を生じさせる金属元素である。マグネシウムはまた、非毒性の元素として知られている。人体のためのマグネシウムの推奨量は1日あたり400mgである。これらの特徴を考慮すると、マグネシウムは、生分解性の金属性インプラントを形成するための魅力的な元素であると考えられている。
【0016】
様々な生分解性金属性インプラント(ほとんどがマグネシウムおよび鉄の合金から作製される)がこの分野において記載されている。
【0017】
マグネシウムを骨接合術の分野において骨折固定のために使用するという考えが1907年にLambotteによって最初に提案された。Lambotteは、下肢骨の骨折固定のために、マグネシウムプレートを金メッキされたスチール製くぎとともに使用することを試みた。しかしながら、マグネシウムの腐食性のために、プレートが、皮膚下における水素ガスの有害な、異常な形成を伴って8日に満たないうちに崩壊した。
【0018】
マグネシウムの腐食プロセスは下記の反応を伴う:
Mg(s)+2H2O→Mg(OH)2+H2
【0019】
従って、溶解したマグネシウムの1モル毎について、1モルの水素が発生し、一方で、水素発生速度はマグネシウム溶解速度に完全に依存している。従って、マグネシウム腐食の動態が水素発生速度についての決定因子である。発生した水素を吸収または放出する人体の能力、従って、皮下での大量の水素気泡の蓄積を回避する人体の能力が制限される間は、皮下水素気泡の異常な形成をもたらし得るマグネシウム系インプラントを使用することは非常に望ましくない。生理学的環境におけるマグネシウムの腐食は自発的であるので、水素発生速度を低下させることは、マグネシウム系インプラントの腐食速度を低下しさえすれば達成することができ、このことは典型的には、様々な処理によって、好ましくは、元素を合金にすることによって行われる。Lambotteの先駆的研究に続いて、様々な他の研究が行われた。例えば、Verbrugge[La Press Med.、1934、23:260〜5]は、1934年に、8%アルミニウム(AlまたはA)を含有するマグネシウム合金を使用した。McBrideは、95パーセントのマグネシウム、4.7パーセントのアルミニウムおよび0.3パーセントのマンガン(Mn)を含有するネジ、ボルトおよび合釘の使用を記載した[J.Am Med.Assoc.、1938、111(27):2464〜7;Southern Medical Journal、31(5)、508、1938]。しかしながら、これらの活動は、合金において使用される不適合性元素(例えば、アルミニウム、亜鉛および重元素など)が存在し、かつ、製造されたインプラントの分解動態が制御されないために、失敗したことが分かった。
【0020】
英国特許第1237035号および米国特許第3687135号(Stroganov)には、0.4%〜4%の希土類元素(REまたはE)(好ましくはネオジム(Nd)およびイットリウム(Y)である)、0.05%〜1.2%のカドミウム(Cd)、0.05%〜1.0%のカルシウム(Ca)またはアルミニウム、0.05%〜0.5%のマンガン、0.0%〜0.8%の銀(Ag)、0.0%〜0.8%のジルコニウム(Zr)および0.0%〜0.3%のケイ素(Si)を含むマグネシウム系生分解性インプラントが記載されている。
【0021】
Stroganovは、様々なマグネシウム系インプラントが、有害な影響を人体に対して局所的または全身的のいずれでも有することなく、体内で完全に溶解することができたことを報告した。加えて、Stroganovは、表面金属の1平方センチメートル毎について4.5立方センチメートルまでの水素が48時間の暴露の期間中に吸収されるように、マグネシウム分解から生じる水素発生を、身体の吸収能と合うように制御することができることを見出した。これらの特許の教示によれば、マグネシウムの生分解性インプラントは約6ヶ月の内に完全に分解する。
【0022】
Frank Witte率いる研究者のグループが、骨修復のためのマグネシウム系整形外科用インプラントを用いて行われた数多くの研究を発表した[例えば、公開番号20040241036を有する米国特許出願、Biomedicals(2005)26,3557;Biomedicals(2006)27,1013;Witteら、”In Vivo degradation kinetics of magnesium implats”,Hasylab annual report online edition,2003,G.Flakenberg,U.KrellおよびJ.R.Scheinder(編);ならびにWitteら、”Characterization of Degradable Magnesium Alloys as Orthopedic Implant Material by Synchrotron−Radiation−Based Microtomography”,Hasylab annual report online edition,2001,G.Flakenberg,U.KrellおよびJ.R.Scheinder(編)参照]。
【0023】
これらの研究のいくつかは、下記のマグネシウム合金の機械的特性および分解速度に焦点を当てた:例えば、AZ31(これは約3%のアルミニウムおよび約1%の亜鉛を含有する)、AZ91(これは約9%のアルミニウムおよび約1%の亜鉛を含有する)、WE43(これは約4%のイットリウムおよび約3%の希土類元素(Nd、Ce、DyおよびLu)を含有する)、LAE442(これは、約4%のイットリウム、約4%のアルミニウムおよび約2%の上記のような希土類元素を含有する)、および、0.2%〜2%のカルシウムを含有するマグネシウム合金など。従って、例えば、AZ91は6.9mm/年の速度で分解し、LAE442は2.8mm/年の速度で分解すること、および、0.4%〜2%のカルシウムを含有するマグネシウム合金の2.5%〜11.7%が72時間以内に分解したことが見出された。Witteおよびその共同研究者らは、アルミニウムが、十分な機械的安定性を達成するために、また、ガス発生現象を生体内の分解プロセスにおいて防止するために必要であることを彼らの刊行物のいくつかにおいて結論づけた。
【0024】
第5回Euspen国際会議(モンペリエ、フランス、2005年)の議事録に示されたいくつかの研究において、Bachらは、MgZn2Mn2の機械的強度および腐食速度について得られたデータを、合金の腐食速度を約1桁ほど低下させるフッ化物の安定化被覆表面を形成するようにフッ化水素酸でさらに処理された同じ合金と比較して記載する。
【0025】
この同じ刊行物において、Friedrich−Wilhelmらは、例えば、AZ91合金から作製される様々なマグネシウム合金多孔質スポンジの腐食プロフィルについて得られたデータを記載する。これらのデータは、多孔性合金が、非多孔性合金と同じ要求される活性を示さず、一方で、望ましくない高い速度で分解したことを示していた。
【0026】
なおさらにこの同じ刊行物において、Wirthらは、異なるマグネシウム合金(例えば、MgCa0.8、LAE422、LACer442およびWE43など)から作製される分解性骨インプラントのウサギ脛骨における使用を記載する。LACer442を除いて、これらのマグネシウム合金が埋め込まれた動物においてガスの蓄積は認められなかった。結果はさらに、マグネシウム合金のE弾性率および引張り降伏強さが、応力遮蔽を回避するように好適であったこと、また、インプラントの表面におけるカルシウムおよびリンの蓄積が認められたこと(このことは、骨治癒プロセスが起きていることを示す)を示した。
【0027】
なおさらにこの同じ刊行物において、Denkenaらは様々なマグネシウム合金のインビトロ分解研究を示し、この研究において、Denkenaらは、AZ91合金が、局在化した分解を有することが示され、一方で、MgCa0.2〜0.8合金がより均一な分解プロフィルを示したことを報告した。それにもかかわらず、これらの合金はどれも、整形外科用インプラントのための所望の腐食プロフィルを示さないことを結論づけた。
【0028】
別の研究者グループ(Heubleinおよび共同研究者ら)は、血管および心臓血管適用(例えば、ステントとして適用)のためのマグネシウム系インプラントを用いて行われた数多くの研究を発表した[例えば、Heart 89(6),651,2003;Journal of Intrventional Cardiology,17(6),391,2004;The British Journal of Cardiology Acut & Interventional Cardiology,11(3),802004参照]。従って、例えば、Heubleinらは、ブタにおいて首尾よく試験された、本明細書中上記で記載されるマグネシウム合金AE21から作製される4mgの様々なステントを教示する。これらのステントは、3ヶ月後における完全な分解性を示すことが見出された。Heubleinらはさらに、ミニ豚における予備的な心臓血管の前臨床試験および膝の裏側でのヒト動脈における臨床試験、ならびに、WE43マグネシウム合金から作製されるマグネシウムステントを使用する臨床的心臓血管インプラント試験からの限定された結果を示している。
【0029】
公開番号第20040098108号の米国特許出願は、90%を越えるマグネシウム(Mg)、3.7%〜5.5%のイットリウム(Y)および1.5%〜4.4%の希土類(好ましくはネオジム)から作製される体内人工器官(具体的にはステント)を教示する。公開番号第20060058263号および同第20060052864号の米国特許出願は、60%〜88%のマグネシウム(Mg)から作製される体内人工器官(具体的にはステント)を教示する。これらの刊行物はさらに、これらのインプラントの機械的一体性が、1日から90日まで持続する期間にわたって残存することを教示する。
【0030】
米国特許第6287332号は、マグネシウム合金から作製される埋め込み可能な生体再吸収性の血管壁支持体を教示する。公開番号第20060052825号を有する米国特許出願は、Mg合金から作製される手術用インプラントを教示する。好ましくは、これらのマグネシウム合金は、アルミニウム、亜鉛および鉄を含む。
【0031】
米国特許第6854172号は、管状インプラント(例えば、ステントなど)の製造における使用のために特に有用なマグネシウム合金を調製するプロセスを教示する。このプロセスは、ピン形状の半製品を得るように、鋳造、熱処理および続く熱機械加工(例えば、押出しなど)を行い、その後、半製品を2つ以上の部分に切断し、それぞれの部分を機械加工して、管状インプラントを得ることによって行われる。
【0032】
ステントとして使用するために意図されるMg合金の、生体適合性、機械的強度および分解性に関する所望の特徴は、整形外科用インプラントとして使用するために意図されるMg合金の特徴と異なることに本明細書中では留意しなければならない。従って、例えば、心臓血管ステントにおけるマグネシウムの総質量はおよそ4mgである一方で、整形外科用インプラントでは、マグネシウムの総質量は数十グラムにまですることができる。加えて、様々な生分解性インプラントは典型的には、3〜6ヶ月の内に崩壊するように設計され、従って、整形外科適用では、損傷された部位における十分な骨形成を可能にするように、1.5年に至るまでのより長い期間が所望される。従って、整形外科適用では、生体非適合性元素(例えば、鉛、ベリリウム、銅、トリウム、アルミニウム、亜鉛およびニッケルなど、それらのいくつかがマグネシウム工業では合金用元素として日常的に使用される)の使用を避けることが絶対的に必要である。整形外科用インプラントはさらに、インプラントが耐えなければならない圧力および摩耗がより大きいために、機械的強度がより大きいことが要求される。
【0033】
米国特許第6767506号は、少なくとも92%のマグネシウム、2.7%〜3.3%のネオジム、>0〜2.6%のイットリウム、0.2%〜0.8%のジルコニウム、0.2%〜0.8%の亜鉛、0.03%〜0.25%のカルシウム、および、<0.00〜0.001%のベリリウムを含有する高耐熱性マグネシウム合金を教示する。これらのマグネシウム合金は、高い温度で強度、耐クリープ性および耐食性の組合せが改善されたこと示す。これらのマグネシウム合金を医療適用のために使用することは、この特許では教示も、示唆もされていない。
【0034】
従って、先行技術により、様々なMg合金が教示され、いくつかが、生分解性インプラント(例えば、ステントおよび整形外科用インプラントなど)として使用するために意図される一方で、これらの合金は、生体適合性十分でなく、および/または、機械的強度および腐食速度に関する成績が十分でないことを特徴とする。
【0035】
従って、上記の制限を有しない、医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントおよび他のインプラントなど)を製造するために好適である新規なマグネシウム系合金が必要であることが広く認識されており、従って、そのようなマグネシウム系合金を有することは非常に好都合であると考えられる。
【0036】
いくつかの研究では、電流が、骨形成活性を刺激することにおいて、また、結果として、骨形成を誘導すること、骨成長を促進させること、および、骨粗鬆症を治療または予防することにおいて有益な役割を果たし得ることが示されている。関連技術の概要が、例えば、Oishiら[Neurosurgery、47(5)、1041、2000]による総説において、また、Marinoによる別の概説、“Direct Current and Bone Growth“、Painmaster(商標)、臨床データ記録(www.newcare.net/PDF/bonegrowth.pdf)において見出され得る。Blackら[Bioelectrochemistry and Bioenergetics、12(1984)、323〜327]もまた、骨形成刺激に対する直接的および間接的な電流の影響のインビトロ研究およびインビボ研究を教示する。しかしながら、これらの研究は、骨成長を骨粗鬆症の骨および他の損傷された骨において促進させることにおけるマグネシウム合金についての役割を教示していない。
【発明の開示】
【0037】
本発明者らは今回、様々な治療目的のために非常に有益であり、また、整形外科用インプラントに関して特に有益である機械的特性、電気化学的特性および分解動態的特性を示す新規なマグネシウム系組成物を考案し、首尾よく調製および実行している。
【0038】
従って、本発明の1つの態様によれば、少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜4重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含み、亜鉛を含まない組成物が提供される。
【0039】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0040】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0041】
本発明の別の態様によれば、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含み、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度によって特徴づけられ、亜鉛を含まない組成物が提供される。
【0042】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記組成物は、本明細書中に記載されるように、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0043】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記組成物はさらに、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む。
【0044】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがアルミニウムを含まない。
【0045】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが1.5重量パーセント〜2.5重量パーセントのネオジムを含む。
【0046】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのカルシウムを含む。
【0047】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが0.1重量パーセント〜1.5重量パーセントのイットリウムを含む。
【0048】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのジルコニウムを含む。
【0049】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、2.01重量パーセントのネオジム、0.60重量パーセントのイットリウム、0.30重量パーセントのジルコニウム、および0.21重量パーセントのカルシウムを含む。
【0050】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、2.01重量パーセントのネオジム、1.04重量パーセントのイットリウム、0.31重量パーセントのジルコニウム、および0.22重量パーセントのカルシウムを含む。
【0051】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがさらに、鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素を含み、この場合、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない。
【0052】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがさらに、0.004重量パーセントの鉄、0.001重量パーセントの銅、0.001重量パーセントのニッケル、および0.003重量パーセントのケイ素を含む。
【0053】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、1.2ジュールよりも大きい衝撃値を特徴とする。
【0054】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、約1.2ジュール〜約2ジュールの範囲にある衝撃値によって特徴づけられ、好ましくは、約1.3ジュール〜約1.8ジュールの範囲ある衝撃値を特徴とする。
【0055】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、80HREよりも大きい硬さを特徴とする。
【0056】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、約80HRE〜約90HREの範囲にある硬さを特徴とする。
【0057】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、200MPaよりも大きい最大抗張力によって特徴づけられ、好ましくは、約200MPa〜約250MPaの最大抗張力を特徴とする。
【0058】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、150MPaよりも大きい引張り降伏強度によって特徴づけられ、好ましくは、約150MPa〜約200MPaの引張り降伏強度を特徴とする。
【0059】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、15パーセントよりも大きい伸び値を特徴とする。
【0060】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に浸漬されたとき、3ml/hour未満の水素発生速度を特徴とする。
【0061】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度での電流を生じさせる。
【0062】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズを特徴とする。
【0063】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがモノリシック構造を有する。
【0064】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが多孔性構造を有する。
【0065】
本発明の別の態様によれば、多孔性構造を有する、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む組成物が提供される。
【0066】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は、約100ミクロン〜約200ミクロンの範囲にある平均孔径を特徴とする。
【0067】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は、組成物に取り込まれるか、または、組成物に付着する活性な物質を有する。
【0068】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物はさらに、本明細書中に記載されるように、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む。
【0069】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は亜鉛を含まない。
【0070】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物はアルミニウムを含まない。
【0071】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物はさらに、鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素を含み、この場合、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない。
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、コア層と、コア層の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つの被覆層とを含み、コア層が第1のマグネシウム系組成物である物品が提供される。
【0073】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0074】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はさらに、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、この場合、そのような元素のそれぞれの量は、好ましくは、本明細書中に記載される通りである。
【0075】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物は亜鉛を含まない。
【0076】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はアルミニウムを含まない。
【0077】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はさらに、鉄、ニッケル、銅、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素を含み、この場合、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.01重量パーセントを超えない。
【0078】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はモノリシック構造を有する。
【0079】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの被覆層は多孔性組成物を含む。
【0080】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は多孔性ポリマーまたは多孔性セラミックを含む。
【0081】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は、本明細書中に記載されるように多孔性のマグネシウム系組成物である。
【0082】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの被覆層は第2のマグネシウム系組成物を含む。
【0083】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの被覆層の腐食速度および前記コア層の腐食速度は互いに異なる。
【0084】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される物品はさらに、前記コア層および/または前記少なくとも1つの被覆層に付着しているか、あるいは取り込まれている少なくとも1つの活性な物質を含む。
【0085】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記物品は医療デバイスであり、例えば、埋め込み可能な医療デバイスなどである。
【0086】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む少なくとも1つのマグネシウム系組成物を含む医療デバイスが提供される。
【0087】
好ましくは、前記組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0088】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含み、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とするマグネシウム系組成物を含む医療デバイスが提供される。
【0089】
そのような医療デバイスは好ましくは、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムをさらに含む組成物を含む。
【0090】
本明細書中に記載される医療デバイスが構成される組成物は、好ましくは、本明細書中上記で記載されるような組成(元素およびその量)および特性を特徴とする。
【0091】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、本明細書中に記載されるような医療デバイスは、医療デバイスに結合しているか、または、医療デバイスに取り込まれている少なくとも1つの活性な物質を有する。
【0092】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記医療デバイスはさらに、マグネシウム系組成物の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物を含む。
【0093】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記医療デバイスはさらに、マグネシウム系組成物がその少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物を含む。
【0094】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記医療デバイスは埋め込み可能な医療デバイスであり、例えば、プレート、メッシュ、ネジ、ステープル、ピン、鋲、ロッド、縫合アンカー、吻合用のクリップまたはプラグ、歯科用のインプラントまたはデバイス、大動脈瘤グラフトデバイス、房室間シャント、心臓弁、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイス、関節置換デバイス、組織再生デバイス、血液透析グラフト、留置用動脈カテーテル、留置用静脈カテーテル、ニードル、血管ステント、気管ステント、食道ステント、尿道ステント、直腸ステント、ステントグラフト、合成血管グラフト、チューブ、血管動脈瘤オクルダー、血管クリップ、血管人工フィルター、血管シース、静脈弁、手術用インプラントおよびワイヤなどであり、しかし、これらに限定されない。
【0095】
好ましくは、医療デバイスは整形外科用の埋め込み可能な医療デバイスであり、例えば、プレート、メッシュ、ネジ、ピン、鋲、ロッド、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイスおよび関節置換デバイスなどであるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも60重量パーセントのマグネシウムを含む混合物を鋳造して、それにより、マグネシウム含有鋳造物を得ること、および、このマグネシウム含有鋳造物を、少なくとも1回の押出し処理および少なくとも1回の予熱処理を含む多段階押出し手順に供することを含む、マグネシウム系組成物を調製するプロセスが提供される。
【0097】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記多段階押出し手順は、鋳造物を第1の押出しに供して、それにより、第1の押出しマグネシウム含有組成物を得ること、第1の押出しマグネシウム含有組成物を第1の温度に予熱すること、および、該第1の押出しマグネシウム含有組成物を第2の押出しに供して、それにより、第2の押出しマグネシウム含有組成物を得ることを含む。
【0098】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多段階押出し手順はさらに、第2の押出しに続いて、第2の押出しマグネシウム含有組成物を第2の温度に予熱すること、および、該第2の押出しマグネシウム含有組成物を第3の押出しに供することを含む。
【0099】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記プロセスはさらに、鋳造に続いて、鋳造物を均質化に供することを含む。
【0100】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記プロセスはさらに、多段階押出し手順に続いて、組成物を応力除去処理に供することを含む。
【0101】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記プロセスはさらに、好ましくは、組成物の応力除去処理を行うことに続いて、得られた組成物を表面処理に供することを含む。表面処理は、例えば、本明細書中に記載されるように、化成処理または陽極酸化処理が可能である。
【0102】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0103】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マグネシウム系組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0104】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マグネシウム系組成物はさらに、好ましくは、本明細書中に記載されるように、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0105】
本発明のなおさらなる態様によれば、本明細書中に記載される組成物、物品または医療デバイスを、損傷された骨の近傍に設置することを含む、損傷された骨を有する対象において骨形成を促進させる方法が提供される。
【0106】
本発明は、当該分野において既知のマグネシウム系組成物よりはるかに優れる、マグネシウム系組成物、そのマグネシウム系組成物から作製される物品、および医療デバイスを提供することによって、現在知られている構成の欠点に首尾良く対処する。
【0107】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。すべての百分率は、別途明記されない限り、重量/重量に基づく。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0108】
本明細書で使用する用語「約」は、±10%を指す。
【0109】
用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0110】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0111】
本明細書中で使用される、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1種の化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0112】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0113】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0114】
用語「方法(method)」または「方法/プロセス(process)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0115】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0116】
図1は、本発明の実施形態による押出しマグネシウム合金の代表的な例を示す写真である。
【0117】
図2a〜図2cは、BMG350の1:500のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、左)および1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、右)、BMG351の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2b)、ならびに、BMG352の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2c)を示す。
【0118】
図3a〜図3bは、本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される浸漬アッセイの実験構成をアッセイ前(図3a)およびアッセイ期間中(図3b)において示す写真である。
【0119】
図4a〜図4bは、本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される電気化学的アッセイの実験構成を示す写真(図4a)、および、例示的な動電位プロット(図4b)である。
【0120】
図5は、合金を37℃で0.9%NaCl溶液に浸け、電位を0.5mV/秒の走査速度で加えたときに得られるBMG350のポテンシオダイナミック分極曲線(青色)、BMG351のポテンシオダイナミック分極曲線(ピンク色)およびBMG352のポテンシオダイナミック分極曲線(黄色)を示す。
【0121】
図6は、埋め込み後30日でWistarラットから外植され、クリーニングに供されたBMG351合金の、1:10のスケール(左、下部画像)および1:50のスケール(右、上部画像)での光学画像である。
【0122】
図7は、マグネシウム合金の削りくずをアルゴン雰囲気および水冷のもとで粉砕したときに得られる、平均粒子サイズが200ミクロンである、イットリウムおよびネオジムを含有するマグネシウム合金(BMG352)粉末のSEM顕微鏡写真である。
【0123】
図8は、多孔性の程度が35%である、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)から形成される例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【0124】
図9は、穴がドリルにより開けられた、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)の別の例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【0125】
図10は、約500μmの孔径を有する、本発明の実施形態による別の多孔性試験片の光学画像を示す。
【0126】
図11a〜図11bは、マグネシウム含有組成物からの水素発生を評価するための例示的な装置(図11a)、および、Piiperら(Journal of applied physiology、17、第2号、268〜274頁)に従った、生理学的環境での水素ガスの吸収についての拡散/灌流モデルの概略図(図11b)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0127】
本発明は、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントなど)を製造するために使用することができる新規なマグネシウム系組成物に関する。具体的には、本発明の実施形態の組成物は、医療適用のために非常に好適である生体適合性、機械的特性および分解速度を特徴とするモノリシック構造物、多孔性構造物および/または多層化構造物を構築するために使用することができる。従って、本発明はさらに、このようなマグネシウム系組成物を含む物品(具体的には医療デバイス)、および、このようなマグネシウム系組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0128】
本発明による組成物、物品、医療デバイスおよびプロセスの原理および操作は、図面および付随する説明を参照して、よりよく理解することができる。
【0129】
本明細書中上記で議論されたように、これまで教示されている様々な生分解性金属合金は、不都合なことに、これらの合金を医療適用(例えば、埋め込み可能なデバイスなど)における使用のために適さないものにする低い生体適合性および/または高い腐食速度を特徴とする。
【0130】
本明細書中上記でさらに議論されたように、生分解性金属デバイスの主要な要件、具体的には、整形外科用インプラントの主要な要件には、毒性元素(例えば、亜鉛およびアルミニウムなど)の非存在、または、最大でも、毒性元素の非毒性量の存在、および、インプラントの医療適用に適する生分解性速度(腐食速度)(これは整形外科用インプラントの場合には12〜24ヶ月である)が含まれる。
【0131】
所望される性質を示す新規な金属合金についての調査において、本発明者らは、それぞれがマグネシウムを組成物の総重量の90重量パーセントよりも高い濃度(好ましくは、95重量パーセントよりも高い濃度)で含む様々な新規な組成物を設計し、首尾よく実施している。これらの組成物はまた、本明細書中では交換可能に、マグネシウム系組成物、マグネシウム合金、マグネシウム含有組成物、マグネシウム含有システムまたはマグネシウム系システムとして示される。
【0132】
本明細書中に記載される組成物は、整形外科用インプラントのために好適である生体適合性および分解動態を示すように特に設計された。従って、このような組成物を設計することにおける主な検討事項は下記の通りであった:
【0133】
整形外科用インプラントの質量が比較的大きいために、組成物を構成する元素組成が、組成物が分解するとき、体内に存在する遊離元素のそれぞれの1日濃度がそれぞれの元素の許容され得る非毒性レベルを越えないように慎重に選択された。この目的のために、各元素の量(濃度)および全体としての組成物の分解動態の両方が検討された。
【0134】
整形外科用インプラントが、骨治癒プロセスが完了するまでフィラーまたは支持材として役立ち、それにもかかわらず、長期間にわたって体内に留まらないという要件のために、組成物の分解動態は、インプラントが、許容され得る時間枠の範囲内で完全に分解されるように選択される。そのような時間枠は典型的には、例えば、埋め込み部位、損傷の性質、および、処置されている個体に関する他の検討事項(例えば、体重、年齢)に従って決定される。それにもかかわらず、好ましくは、そのような時間枠は典型的には6ヶ月〜24ヶ月の範囲であり、好ましくは6ヶ月〜18ヶ月の範囲であり、より好ましくは12ヶ月〜18ヶ月の範囲である。
【0135】
整形外科用インプラントは、損傷した骨が治癒するまで一時的な支持物として働くことを目的とするので、そのようなインプラントは、骨と同様に、実質的な圧力および摩耗に耐えることができなければならず、従って、十分な機械的強度および柔軟性を有しなければならない。
【0136】
それにもかかわらず、本明細書中に記載される組成物はまた、本明細書中下記において詳述されるように、他の物品およびデバイスの製造における使用のために好適である。
【0137】
1つの実施形態において、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがさらに、マグネシウムに加えて、本明細書中上記で記載されたように、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウムおよび0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む。
【0138】
組成物を構成する元素のそれぞれの量は、十分な生体適合性を組成物に与えるように、その元素の非毒性範囲内で選択される。さらには、これらの元素およびそれらの濃度は、所望される冶金学的特性、機械的特性および分解動態的特性を組成物に与えるように選択される。1つの実施形態において、これらの元素のそれぞれの量は、これらの元素が、マグネシウム分解に合わせて並行して分解するように選択される。
【0139】
従って、例えば、主要な合金用元素はイットリウムおよびネオジムであり、これらが、十分な機械的強度および耐食性を合金に与える。カルシウムが、合金の鋳造時における酸化を防止するために低い量で使用され、ジルコニウムが結晶成長抑制剤として役立ち、合金の機械的特性を改善する。
【0140】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるネオジムの量は組成物の総重量の1.5重量パーセント〜4重量パーセントの範囲であり、より好ましくは1.5重量パーセント〜2.5重量パーセントの範囲である。
【0141】
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるカルシウムの量は組成物の総重量の0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントの範囲である。
【0142】
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるイットリウムの量は組成物の総重量の0.1重量パーセント〜2重量パーセントの範囲であり、より好ましくは0.1重量パーセント〜1.5重量パーセントの範囲である。
【0143】
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるジルコニウムの量は組成物の総重量の0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントの範囲である。
【0144】
本明細書中に記載されるマグネシウム系組成物の代表的な一例は、マグネシウムに加えて、2.01重量パーセントのネオジム、0.60重量パーセントのイットリウム、0.30重量パーセントのジルコニウムおよび0.21重量パーセントのカルシウムを含む。
【0145】
本明細書中に記載されるマグネシウム系組成物の別の代表的な一例は、マグネシウムに加えて、2.01重量パーセントのネオジム、1.04重量パーセントのイットリウム、0.31重量パーセントのジルコニウムおよび0.22重量パーセントのカルシウムを含む。
【0146】
本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、好ましくは、1つまたは複数の重元素をさらに含み、これらは典型的には、マグネシウム抽出プロセスに由来する残存成分である。例示的な重元素には、鉄、銅、ニッケルまたはケイ素が含まれる。そのような元素は合金の耐食性に対する大きな効果(これは1桁またはそれ以上の変化によって明らかにされ得る)を有するので、これらの重元素のそれぞれの濃度は好ましくは、組成物の所望される耐食性を得るように、できる限り低いレベルで維持される。従って、好ましくは、これらの重元素のそれぞれの濃度はppm(百万分率)レベルの範囲であり、組成物の総重量の0.005重量パーセントを超えない。
【0147】
代表的な一例において、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、0.004重量パーセントの鉄、0.001重量パーセントの銅、0.001重量パーセントのニッケルおよび0.003重量パーセントのケイ素を含む。
【0148】
本明細書中に記載される組成物に含むことができるさらなる元素には、組成物が、体内に存在する遊離元素の1日濃度がその許容され得る非毒性レベルを越えないように設計される限り、3重量パーセントまでの範囲にある量でのストロンチウム、1重量パーセントまでの範囲にある量でのマンガン、および、1重量パーセントまでの範囲にある量での銀がある。
【0149】
本明細書中に記載される組成物は好都合なことに、多くの医療適用のために非常に好適であり、また、整形外科用インプラントのために特に好適である分解動態を特徴とする。
【0150】
本明細書中に記載される組成物の腐食速度は、典型的には、様々な国際的規格に従って試験され、求められる。これらには、例えば、ASTM G15−93(これは、腐食および腐食試験に関連する標準的用語を説明する);ASTM G5−94(これは、定電位陽極分極測定および動電位陽極分極測定を行うための指針を提供する);ASTM G3−89(これは、腐食試験における電気化学的測定に適用可能な従来法を説明する);Ghaliら、“Testing of General and localized Corrosion of Magnesium allys: A critical Review“、ASM international、2004;ISO10993−15、医療デバイスの生物学的評価のための試験、金属および合金からの分解産物の特定および定量;およびASTM G31−72(これは、金属の実験室腐食試験のための標準的実施書である)が含まれる。
【0151】
ASTM G31−72は、実験室での浸漬腐食試験(具体的には、質量喪失試験)のための受け入れられる手順、および、そのような試験に影響を及ぼす要因を記載する実施書である。これらの要因には、試験片調製、装置、試験条件、試験片の清浄化方法、結果の評価、ならびに、腐食速度の計算および報告が含まれる(www.astm.org参照)。
【0152】
従って、別の実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、ASTM G31−72に従って行われる浸漬実験によって測定される場合、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されるとき、約0.5mcd〜約1.5mcd(mcd=ミリグラム/平方センチメートル/日)の範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0153】
従って、およそ7グラムの重量および35cm2の表面積を有する医療デバイス(例えば、整形外科用インプラント)を考えると、そのような医療デバイスの完全な分解が、8から47ヶ月に及ぶ期間の範囲内で生じる。
【0154】
好ましい実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、本明細書中上記に記載される浸漬アッセイによって測定される場合、約0.8mcd〜約1.2mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0155】
別の好ましい実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、本明細書中下記において記載されるように、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に37℃で浸漬されるとき、本明細書中上記に記載される浸漬アッセイによって測定される場合、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0156】
具体的な一例において、本明細書中ではBMG350およびBMG351として示される本明細書中に記載される組成物の代表的な例は、それらが14グラムの重量および33cm2の表面積を有する場合、本明細書中上記で記載される浸漬アッセイによって測定された場合、1.02mcdおよび0.83mcdの腐食速度をそれぞれ示すことが見出された(実施例2の表4参照)。これらの値は約13.7ヶ月および16.7ヶ月の分解期間にそれぞれ対応し、これらは、本明細書中上記で議論されたように、医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントなど)のために非常に望ましい。
【0157】
これらの組成物はさらに、実験室ラットで行われたインビボアッセイにおいて、約0.1mcd〜0.2mcdの腐食速度を示すことが見出された。
【0158】
代替として、または、好ましくは加えて、組成物は、電気化学的アッセイで測定される場合、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されるときには1時間の安定化時間の後、電位が0.5mV/秒の速度で加えられるとき、約0.2mcd〜約0.4mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。そのような電気化学的アッセイ、および、腐食アッセイと、電気化学的アッセイとの間における関係の詳細な議論については、下記の実施例の節における実施例2を参照願いたい。
【0159】
好ましい実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、本明細書中上記に記載される電気化学的アッセイによって測定される場合、約0.3mcd〜約0.35mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0160】
様々なマグネシウム系システムを医療適用において使用することによって、整形外科用インプラントの分解動態(腐食速度)に関して本明細書中上記で議論された所望されるパラメーターに加えて、水素の発生もまた考慮されなければならない。本明細書中上記で議論されたように、マグネシウムの分解では、水素が放出されるプロセスを伴うので、腐食速度を、水素形成速度が適合可能であるように、また、大量の水素気泡が皮下に蓄積しないようにすることが非常に望ましい。
【0161】
下記の実施例の節において明らかにされるように(実施例7を参照のこと)、本発明の実施形態による例示的なマグネシウム系システムの水素発生速度が、ヒトの水素吸収能を計算するために適合化されたモデルにおいて測定され、そのモデルで得られたデータに対して比較された。得られた結果は、本明細書中に示されるマグネシウム含有組成物の水素発生速度がヒトの水素吸収能よりも十分に小さいことを明瞭に示した。
【0162】
従って、好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、7.4のpHを有するPBS(リン酸塩緩衝化生理的食塩水)溶液に浸漬されたとき、3ml/hourよりも低い水素発生速度によって、好ましくは、2ml/hourよりも低い水素発生速度によって、より好ましくは、1.65ml/hourよりも低い水素発生速度によって、一層より好ましくは、1.2ml/hourよりも低い水素発生速度を特徴とする。1つの好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、0.2ml/hour〜1.5ml/hourの範囲にある水素発生速度を特徴とする。
【0163】
本明細書中上記で議論されたように、本明細書中に記載される組成物の腐食速度は、合金を構成する様々な成分の量を操作することによって所望する通りに制御することができる。それにもかかわらず、現在知られているマグネシウム合金はどれも、例えば、本明細書中に記載される組成物の代表的な例などについて得られる比較的低い腐食速度(比較的大きい耐食性)を示さないことには留意しなければならない。
【0164】
本明細書中に記載される組成物は、さらに好都合なことに、これらの組成物を医療適用における使用のために非常に好適にする機械的特性を特徴とする。
【0165】
従って、好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、1.2ジュールよりも大きい衝撃値によって特徴づけられ、例えば、約1.2ジュール〜約2ジュールの範囲にある衝撃値によって、より好ましくは、約1.3ジュール〜約1.8ジュールの範囲ある衝撃値を特徴とする。
【0166】
本明細書中で使用される表現「衝撃」は、応力集中部分または切欠きが存在するとき、材料がエネルギーを吸収することができることを表す。衝撃は典型的には、シャルピーV字型切欠き試験、動的引裂き試験、落重試験および落重引裂き試験によって測定される。本明細書中では、衝撃は、振り子からの衝撃に対する材料の抵抗性を測定する切欠きアイゾッド衝撃として表される。
【0167】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、80HREよりも大きい硬度を特徴とし、例えば、約80HRE〜約90HREの範囲にある硬度を特徴とする。
【0168】
本明細書中で使用される表現「硬さ」は、永久的変形に対する固体材料の抵抗性を表す。硬さは、相対的なスケールを使用して測定される。本明細書中で使用される表現のHREは、1/8”のボール圧子を100Kgの力荷重で使用するロックウェル硬度Eスケールを表す。
【0169】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、200MPaよりも大きい最大抗張力によって特徴づけられ、例えば、約200MPa〜約250MPaの範囲にある最大抗張力を特徴とする。
【0170】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、150MPaよりも大きい引張り降伏強さによって特徴づけられ、例えば、約150MPa〜約200MPaの範囲にある引張り降伏強さを特徴とする。
【0171】
本明細書中で使用される表現「引張り降伏強さ」は、材料が降伏点に達する前に、材料が受けることができる引張り応力の最大量を表す。引張り強さは応力−ひずみ曲線から実験的に求めることができ、単位面積あたりの力(例えば、ニュートン/平方メートル(N/m2)またはパスカル(Pa))の単位で表される。
【0172】
本明細書中で使用される表現「最大抗張力」は、材料が降伏点の後で受けることができる引張り応力の最大量を表し、この場合、ひずみを受けている合金は、最大抗張力点にまで硬くなる。材料が最大抗張力点で無荷重であるならば、応力−ひずみ曲線は、原点と降伏点との間における曲線のそのような部分に平行である。材料に再び荷重がかけられるならば、材料は、新しい降伏強さになる極限強さにまで再び荷重除去曲線に従う。最大抗張力は、本明細書中上記で記載されたように、応力−ひずみ曲線から実験的に求めることができ、単位面積あたりの力の単位で表される。
【0173】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、15パーセントよりも大きい伸び値によって特徴づけられ、より好ましくは、約15パーセント〜約20パーセントの範囲にある伸び値を特徴とする。
【0174】
本明細書中で使用される表現「伸び」は、物質(本明細書中では合金)の延性の目安として一般に使用され、引張り試験において破断するまで伸ばされている試験片の永久的伸長を表す。伸びは、典型的には、元の長さの百分率として表される。
【0175】
これらの値は、本明細書中に記載される組成物が、医療適用のために、具体的には、整形外科用インプラントのために非常に好適である機械的強度および柔軟性を特徴とすることを明瞭に示している。
【0176】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本明細書中に記載される組成物は、さらに有益には、「電流生成効果」を有するとして、すなわち、電流をその分解プロセスの期間中に生じさせるとして特徴づけられることが見出されている。測定では、これらの組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されるとき、電流を、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることが示されている。測定ではまた、これらの組成物は、PBS(pH=7.4)に37℃で浸漬されるとき、電流を、約18μA/cm2〜約60μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることが示されている。
【0177】
本明細書中上記で議論されたように、また、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、そのような電流密度は、損傷した骨の部位またはその近傍で生じるとき、骨細胞の成長を促進させる。従って、例えば、整形外科用デバイスとして使用されるとき、本明細書中に記載される組成物は、支持用マトリックスとしてだけでなく、骨治癒プロセスを加速させる骨成長促進マトリックスとしても役立ち得る。さらに、これらの組成物は、例えば、骨粗鬆症を治療または予防するために使用することができる。
【0178】
本明細書中に記載される組成物が調製されるプロセスに依存して、本明細書中下記において詳述されるように、本明細書中に記載される組成物は、様々な微細構造を有するように設計することができる。
【0179】
従って、例えば、通常の鋳造/鍛造によって作製される合金は約10マイクロメートル〜約300マイクロメートルの平均結晶粒サイズをもたらす。急速凝固によって作製される合金は5マイクロメートルまでの平均結晶粒サイズをもたらす。ナノサイズの結晶粒もまた得ることができ、この場合には、約100ナノメートルまでの平均結晶粒サイズを有する。本明細書中に記載される組成物の機械的特性は、合金における平均結晶粒サイズに依存し、典型的には、結晶粒サイズが小さくなるにつれ、改善される。
【0180】
従って、本明細書中に記載される組成物は、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズによって、好ましくは、約10ナノメートル〜約100ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズによって、より好ましくは、約50ナノメートル〜約50ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズを特徴とする。
【0181】
本明細書中で使用される用語「結晶粒」は、双晶化領域および亜結晶粒の含有の有無にかかわりなく、また、原子が規則正しいパターンで配置される多結晶性の金属または合金における個々の粒子を表す。
【0182】
調製経路にさらに依存して、本明細書中に記載される組成物はモノリシック構造または多孔性構造のいずれかを有することができる。
【0183】
本明細書中で使用される表現「モノリシック構造」は、連続する一体型の統合された固体構造を表す。モノリシック構造は、典型的には、比較的大きい嵩密度および機械的特性(例えば、硬度、衝撃、引張りおよび伸び強度など)を特徴とする。
【0184】
本明細書中で使用される用語「多孔性」は、固体材料(例えば、発泡体など)、スポンジ状材料、または、固体物の内部に埋め込まれ、乱雑に分散される気泡の泡状塊のコンシステンシーを表す。多孔性物質は、典型的には、また、好都合には、モノリシック構造と比較した場合、表面積がより大きく、流体吸収がより大きいことを特徴とする。
【0185】
従って、別の実施形態において、組成物は多孔性構造を有する。
【0186】
多孔性構造は、付加された効果を組成物に与えることができる様々な物質を組成物の細孔の内部に取り込むことを可能にする。そのような物質は、例えば、本明細書中下記において詳述されるような生物学的に活性な物質、ならびに/あるいは、組成物に、例えば、生体適合性改善、分解動態および/または機械的特性を与える薬剤が可能である。そのような物質は、代替として、または、加えて、例えば、その多孔性表面に堆積または付着することによって組成物に結合させることができる。
【0187】
多孔性構造の多孔性および孔サイズ分布は、多孔性組成物の調製時において制御することができ、必要な場合には、また、好ましくは、取り込まれる物質の構造的特徴および/または生物学的特徴に従って設計される。
【0188】
一般には、多孔性構造における平均孔径は、本発明の好ましい実施形態によれば、1ミクロン〜1000ミクロンの範囲であり得る。本発明の実施形態によれば、多孔性構造における平均孔径は、封入する薬剤の所望の負荷プロフィルおよび放出プロフィルを可能にするように制御することができる。従って、例えば、閉じ込められる薬剤が小分子(例えば、抗生物質などの薬物)である場合、好ましい平均孔径は約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲である。封入する薬剤が細胞を含む場合には、100ミクロン以上の平均孔径を有する、より大きい孔が好ましい。
【0189】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるような多孔性組成物は、約100ミクロン〜約200ミクロンの範囲である平均孔径を特徴とする。
【0190】
多孔性組成物は、本発明の実施形態によれば、少なくとも95重量パーセントマグネシウムを含む。本明細書中に記載される多孔性組成物を構成する他の元素は、好ましくは、本明細書中上記で記載される通りである。
【0191】
本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、さらに好都合なことに、亜鉛を含まないとして特徴づけられる。
【0192】
本明細書中で使用される表現「を含まない」は、元素に関しては、組成物内におけるこの元素の濃度が10ppm未満であり、好ましくは5ppm未満であり、より好ましくは1ppm未満であり、より好ましくは0.1ppm未満であり、最も好ましくはゼロであることを意味する。
【0193】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物はさらに、アルミニウムを含まない。この分野では広く知られているように、市販のマグネシウム合金のほとんどが実質的な量(例えば、100ppm超)の亜鉛およびアルミニウムを含有する。これらのマグネシウム合金は多くの場合、医療適用のためのマグネシウム系組成物を構成するための出発材料として使用される。亜鉛およびアルミニウムの望ましくない毒性のために、そのような組成物は、インプラントの実質的な量および比較的長期にわたる分解時間が必要な適用(例えば、整形外科用インプラントなど)において使用されるときには特に、不適切な生体適合性を有すると考えられる。
【0194】
従って、亜鉛および/またはアルミニウムを含まないマグネシウム系組成物が非常に好都合であることは明白である。
【0195】
本明細書中に記載される組成物は、2つ以上の層(そのうちの少なくとも1つが本明細書中に記載されるようなマグネシウム系組成物である)が、例えば、コア/被覆構造として構築される多層化された物品を形成するために利用することができる。
【0196】
従って、本発明の別の側面によれば、コア層と、コア層の少なくとも一部分に適用されている少なくとも1つの被覆層とを含む物品が提供される。
【0197】
従って、物品は、本発明のこれらの実施形態によれば、コア層、および、コア層に適用される1つの被覆層、または、代替として、それぞれがコア層の異なる部分に適用される2つ以上の被覆層から構成される二層化された物品が可能である。物品は、代替として、コア層と、コア層にその後に順次適用される2層以上(例えば、3層、4層、5層など)の被覆層とから構成される多層化された物品が可能である。
【0198】
本明細書中に記載される物品におけるコア層はマグネシウム系組成物であり、本明細書中では第1のマグネシウム系組成物として示される。
【0199】
第1のマグネシウム系組成物は、好ましくは、組成物について本明細書中上記で記載されたように、少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含み、また、ネオジム、イットリウム、ジルコニウムおよび/またはカルシウムをさらに含むことができる。
【0200】
第1のマグネシウム系組成物はさらに、本明細書中上記で記載されたように、1つまたは複数の重元素(例えば、鉄、ニッケル、銅およびケイ素など)を含むことができる。
【0201】
マグネシウム系の第1の組成物に適用される1つまたは複数の被覆層のそれぞれを、最終的な物品の所望の特徴に従って選択または設計することができる。好ましくは、被覆層は生体適合性材料から作製される。
【0202】
従って、例えば、1つの実施形態において、第1のマグネシウム系組成物はモノリシック構造を有し、被覆層は多孔性組成物を含む。そのような物品は、活性な物質を多孔性層に取り込むために使用することができるか、または、それぞれが異なる層に取り込まれる多数の異なる活性な物質を取り込むために使用することができる。従って、そのような物品は、モノリシック構造起因すると考えられる機械的特性と、多孔性の被覆層に起因すると考えられる、活性な物質を放出する能力とを特徴とする。
【0203】
被覆層を構成する多孔性組成物は、例えば、多孔性ポリマーおよび/または多孔性セラミックから構成され得る。代表的な例には、限定されないが、ポリイミド、ヒドロキシアパタイト、ゼラチン、ポリアクリレート、ポリグリコール酸およびポリラクチドなどが含まれる。そのような被覆を様々な方法論によって適用することができ、例えば、J.E.Gray、“Protective coatings on magnesium and its alloys − a critical review“、Journal of alloys and compounds、336(2002)、88頁〜113頁に記載される方法論などによって適用することができ、また、そのような被覆を使用して、その結果、生体適合性を物品に与えるようにすることができ、かつ/または、物品の腐食分解動態を調節するようにすることができる。従って、例えば、物品が埋め込み可能なデバイスであるか、または、埋め込み可能なデバイスの一部を形成する場合において、そのような被覆層は、少なくとも埋め込み時に、また、デバイスが再吸収されるまで、改善された生体適合性を物品に与えるように選択することができる。被覆層はさらに、物品の腐食速度を少なくとも埋め込み後の最初の期間の期間中において低下させるように選択することができる。
【0204】
好ましい実施形態において、多孔性組成物は、多孔性のマグネシウム系組成物、好ましくは、本明細書中上記で記載されるような多孔性マグネシウム系組成物であり、本明細書中では第2のマグネシウム系組成物として示される。第2のマグネシウム系組成物は、場合により、および、好ましくは、第2のマグネシウム系組成物に付着するか、または、第2のマグネシウム系組成物に取り込まれる活性な物質を含む。
【0205】
代替として、または、上記に加えて、別の実施形態において、コア層および被覆層(1つまたは複数)は、被覆層(1つまたは複数)の腐食速度およびコア層の腐食速度が互いに異なるように選択され、その結果、分解動態の細かく制御されたシーケンスを提供するようにされる。
【0206】
被覆層のそれぞれが、この実施形態によれば、本明細書中上記で記載されたようにポリマー物質またはセラミック物質であり得るか、あるいは、場合により、および、好ましくは、(第1のマグネシウム系組成物とは異なる)1つまたは複数のマグネシウム系組成物(これらは、本明細書中では、第2、第3、第4などのマグネシウム系組成物として示される)であり得る。
【0207】
一例において、物品は、それぞれが異なる腐食速度を特徴とする本明細書中に記載されるような2つ以上のマグネシウム系組成物を含む。本明細書中上記で詳しく議論されたように、そのような組成物の腐食速度は、そのマグネシウム合金を構成する成分を選択することによって制御することができ、例えば、重元素の含有量を決定することによって制御することができる。
【0208】
1つの例示的な物品において、コア層は、鉄の含有量が、例えば、100〜500ppmである、本明細書中に記載されるような第1のマグネシウム系組成物を含み、被覆層は、鉄の含有量が、例えば、50ppmである、本明細書中に記載されるような第2のマグネシウム系組成物を含む。生理学的条件下において、被覆層は比較的遅い速度で最初に分解し、そして、被覆層が分解したとき、コア層がそれよりも速く分解する。そのような制御された分解動態は、物品が整形外科用インプラントとして使用される場合には非常に望ましい。これは、物品が骨治癒プロセスに適合するからである。
【0209】
多孔性またはモノリシック型のマグネシウム系コア層と、多孔性またはモノリシック型の被覆層との他の組合せもまた、本明細書中では包含される。
【0210】
本明細書中上記で議論されたように、物品は、好都合には、1つまたは複数の活性な物質をさらに含むことができる。活性な物質は、物品の所望される特徴および活性な物質の所望される放出動態に依存して、コア層および/または被覆層のそれぞれに結合させることができ、あるいは、コア層および/または被覆層のそれぞれに取り込むことができる。
【0211】
本明細書中上記で述べられたように、本明細書中に記載される組成物および物品のそれぞれが、医療デバイスを形成するために、具体的には、埋め込み可能な医療デバイスを形成するために都合よく利用され得る。
【0212】
従って、本発明のさらなる側面によれば、本明細書中に記載されるマグネシウム系組成物の1つまたは複数を含む医療デバイスが提供される。
【0213】
医療デバイスは、1つだけのマグネシウム系組成物を含むことができ、または、本明細書中上記の物品について記載されたような多層化された構造を有することができる。
【0214】
本明細書中に記載される組成物および物品が有益に使用され得る医療デバイスの代表的な例には、限定されないが、プレート、メッシュ、ステープル、ネジ、ピン、鋲、ロッド、縫合アンカー、吻合用のクリップまたはプラグ、歯科用のインプラントまたはデバイス、大動脈瘤グラフトデバイス、房室間シャント、心臓弁、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイス、関節置換デバイス、組織再生デバイス、血液透析グラフト、留置用動脈カテーテル、留置用静脈カテーテル、ニードル、血管ステント、気管ステント、食道ステント、尿道ステント、直腸ステント、ステントグラフト、合成血管グラフト、チューブ、血管動脈瘤オクルダー、血管クリップ、血管人工フィルター、血管シース、静脈弁、手術用インプラントおよびワイヤが含まれる。
【0215】
本発明の好ましい実施形態によれば、医療デバイスは整形外科用の埋め込み可能な医療デバイスであり、例えば、プレート、メッシュ、ステープル、ネジ、ピン、鋲、ロッド、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイスおよび関節置換デバイスなどであるが、これらに限定されない。
【0216】
本明細書中に記載される医療デバイスは、それに付着している少なくとも1つの活性な物質を有することができる。活性な物質はマグネシウム系組成物の表面に結合させることができるか、または、多孔性のマグネシウム系組成物の場合には、孔内に封入することができる。
【0217】
本明細書中で使用される表現「活性な物質」は、1つまたは複数の有益な活性(例えば、治療活性、診断活性、生体適合性、腐食動態調節、疎水性、親水性、表面改質および審美的特性など)を及ぼす分子、化合物、複合体、付加物および/または混合物を表す。
【0218】
治療活性を及ぼす活性な物質はまた、本明細書中では交換可能に、「生物活性剤」、「医薬活性剤」、「医薬活性物質」、「治療活性剤」、「生物学的活性剤」、「治療剤」、「薬物」および他の関連した用語として示され、例えば、遺伝子治療剤、非遺伝子治療剤および細胞を包含する。本発明に従って有用である生物活性剤は単独または組合せで使用することができる。本発明の関連における用語「生物活性剤」にはまた、放射線治療のために役立ち得る放射性物質が含まれ、この場合、そのような物質は、有害な組織(例えば、腫瘍など)を局所的領域において破壊するために、または、例えば、最新のステント適用などでは健康な組織の成長を阻害するために利用され、あるいは、核医学および放射線イメージングにおいて使用されるバイオマーカーとして利用される。
【0219】
本明細書中に記載される組成物、物品またはデバイスに有益に取り込まれ得る生物活性剤の代表的な例には、限定されないが、骨成長促進剤(例えば、増殖因子、骨形態形成タンパク質および骨幹細胞など)、血管生成促進剤、サイトカイン、ケモカイン、化学誘因物質、化学忌避物質、薬物、タンパク質、アゴニスト、アミノ酸、アンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗体、抗原、抗うつ剤、免疫抑制剤、抗高血圧剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗増殖剤、アンチセンス、抗ウイルス剤、化学療法剤、補因子、脂肪酸、ハプテン、ホルモン、阻害剤、リガンド、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、標識されたオリゴヌクレオチド、核酸構成物、ペプチド、ポリペプチド、酵素、糖類、多糖類、放射性同位体、放射性医薬品、ステロイド、トキシン、ビタミン、ウイルス、細胞、および、これらの任意の組合せが含まれる。
【0220】
本明細書中に記載される組成物、物品および医療デバイスに有益に取り込まれ得るか、または結合され得る活性な物質の1つのクラスが、様々な骨成長促進剤である。これらには、例えば、増殖因子が含まれ、例えば、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15およびBMP−16など)、ならびに、軟骨誘導因子−A、軟骨誘導因子−B、類骨誘導因子、コラーゲン増殖因子およびオステオゲニンなどが含まれるが、これらに限定されない。代替として、または、加えて、いずれかのBMPの上流側または下流側の作用を誘導することができる分子が提供され得る。そのような分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質、または、それらをコードするDNAのいずれかが含まれる。
【0221】
一般に、TGFが、細胞増殖、遺伝子発現およびマトリックスタンパク質合成に影響を及ぼすことによって組織治癒を調節することにおいて中心的役割を果たし、BMPが細胞の複製を引き起こす遺伝子発現を開始させ、BDGFが、細胞複製の速度を加速させるために、既に活性な遺伝子の活性を増大させる作用因子である。上記増殖因子のすべてを天然の供給源(例えば、哺乳動物組織)から単離することができ、または、組換えペプチドとして製造することができる。
【0222】
従って、活性な物質は、代替では、本明細書中上記で記載された増殖因子を発現および分泌する細胞タイプが可能である。このような細胞には、増殖因子を産生し、細胞質での位置から細胞質以外の位置へのその転位を誘導する細胞が含まれる。そのような細胞には、増殖因子を自然の状態で発現および分泌する細胞、または、増殖因子を発現および分泌するように遺伝子修飾される細胞が含まれる。そのような細胞はこの分野では広く知られている。
【0223】
活性な物質はさらには、骨幹細胞が可能である。この分野において知られているような骨幹細胞には、骨形成細胞として特徴づけられる、骨髄間質細胞の骨形成性の亜集団が含まれる。骨幹細胞には、骨形成性の骨形成細胞それ自体、および/または、骨幹細胞を形成する胚性幹細胞が含まれ得る。骨幹細胞は、例えば、Butteryら(2001)、Thompsonら(1998)、Amitら(2000)、Schuldinerら(2000)およびKehatら(2001)において記載されるように、様々な公知の手法を使用して単離することができる。そのような細胞は好ましくは自家供給源の細胞であり、これらには、例えば、ヒト胚性幹細胞、マウスまたはヒトの骨幹細胞、マウスまたはヒトの骨幹細胞性骨髄由来細胞、マウスまたはヒトの骨幹細胞性胚由来細胞、および、マウスまたはヒトの胚細胞が含まれる。これらの細胞はさらに、成長因子を分泌する細胞として役立ち得る。
【0224】
本明細書中に記載される組成物、物品および医療デバイスに有益に取り込まれ得るか、または結合され得る活性な物質のさらなるクラスには、抗生物質が含まれる。好ましくは、活性な物質には、骨または周囲の組織に典型的な広範囲の細菌感染をカバーする抗生物質または抗生物質の組合せが含まれる。
【0225】
本発明の実施形態のこの関連において利用することができる好適な抗生物質の例には、例えば、アミノグリコシド系、ペニシリン系、セファロスポリン系、半合成ペニシリン系およびキノリン系の抗生物質が含まれる。
【0226】
好ましくは、本発明では、骨または周囲の組織に典型的な広範囲の細菌感染をカバーする抗生物質または抗生物質の組合せが利用される。好ましくは、これらの抗生物質のなかでも、足場から効率的に放出されるタイプが選択される。
【0227】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる活性な物質のさらなる例には、ポリマー薬剤(例えば、タンパク質、酵素)および非ポリマー薬剤(例えば、小分子治療剤)の両方を含み、Caチャネルブロッカー、セロトニン経路モデュレータ、環状ヌクレオチド経路薬剤、カテコールアミンモデュレータ、エンドセリン受容体拮抗剤、一酸化窒素ドナー/放出分子、麻酔薬、ACE阻害剤、ATII受容体拮抗剤、血小板粘着阻害剤、血小板凝集抑制剤、凝固経路モデュレータ、シクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、天然および合成コルチコステロイド、リポキシゲナーゼ経路阻害剤、ロイコトリエン受容体拮抗剤、E−およびP−セレクチンの拮抗剤、VCAM−1およびICAM−1相互作用の阻害剤、プロスタグランジンおよびその類似体、マクロファージ活性化阻止剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、魚油およびオメガ−3−脂肪酸、フリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、様々な成長因子に影響を及ぼす薬剤(FGF経路薬剤、PDGF受容体拮抗剤、IGF経路薬剤、TGF―β経路薬剤、EGF経路薬剤、TNF−α経路薬剤、トロンボキサンA2[TXA2]経路モデュレータ、およびタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を含む)、MMP経路薬剤、細胞運動阻害剤、抗炎症剤、抗増殖/抗新生物薬、マトリックス沈着/組織化経路阻害剤、内皮形成促進剤、血液レオロジーモデュレータ、ならびに、インテグリン、ケモカインおよび増殖因子が含まれる。
【0228】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる血管新生促進剤の非限定的な例としては、血管内皮増殖因子(VEGF)または血管透過性因子(VPF);酸性線維芽細胞増殖因子(AFGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバー;インターロイキン8(IL−8);上皮細胞増殖因子(EGF);血小板由来増殖因子(PDGF)または血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF);形質転換増殖因子αおよびβ(TGF−α、TGF−β);腫瘍壊死因子α(TNF−α);肝細胞増殖因子(HGF);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);インスリン様成長因子−1(IGF−1);アンジオゲニン;アンジオトロピン;およびフィブリンおよびニコチンアミドが含まれる。
【0229】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができるサイトカインおよびケモカインの非限定的な例としては、アンジオゲニン、カルシトニン、ECGF、EGF、E−セレクチン、L−セレクチン、FGF、FGF塩基、G−CSF、GM−CSF、GRO、ヒルジン、ICAM−I、IFN、IFN−γ、IGF−I、IGF−II、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、M−CSF、MIF、MIP−1、MIP−1α、MIP−1β、NGF鎖、NT−3、PDGF−α、PDGF−β、PECAM、RANTES、TGF−α、TGF−β、TNF−α、TNF−β、TNF−κ、およびVCAM−1が含まれる。
【0230】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができるさらなる活性な物質には、遺伝子治療剤およびリボザイムなどのタンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、およびゲノムDNA、cDNAまたはRNAなどの特定の生成物をコードするポリヌクレオチド(組み換え核酸を含む)が含まれる。ポリヌクレオチドは、「裸の」形態でまたはポリヌクレオチドの組み込みおよび発現を増強するベクター系と共に提供されることができる。これらは、DNA凝縮剤(ヒストンなど)、非感染性ベクター(プラスミド、脂質、リポソーム、カチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質など)、およびウイルスおよびウイルス様粒子などのウイルスベクター(つまりウイルスのように作用するように作られた合成粒子)を含むことができる。ベクターは、付着ペプチド標的配列、アンチセンス核酸(DNAとRNA)、およびDNAキメラをさらに含んでいてもよく、それは不完全で欠陥のある内在性分子を取り替えるための膜転位配列(「MTS」)、tRNAまたはrRNAなどの輸送タンパク質をコードする遺伝子配列および単純疱疹ウイルス−1(「VP22」)を含む。
【0231】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができるウイルスおよび非ウイルス性のベクターには、限定されないが、アデノウイルス、腸アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルスなど)、レンチウイルス、単純疱疹ウイルス、生体外修飾細胞(すなわち、幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、マクロファージ、他)、複製型ウイルス(ONYX−015など)、およびハイブリッドベクター、人工染色体およびミニ染色体、プラスミドDNAベクター(pCOR)、カチオン性ポリマー(ポリエチレンイミン、ポリエーテル−PEIおよびポリエチレンオキシド−PEIなどのポリエチレンイミン(PEI)グラフトコポリマー、中性ポリマーPVP、SP1017(SUPRATEK)、脂質またはリポプレックス、タンパク質形質導入領域(PTD)などの標的配列を有するまたは有しないナノ粒子およびミクロ粒子が含まれる。
【0232】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的化学療法剤には、限定されないが、アミノ含有化学療法剤、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、N−(5,5−ジアセトキシペンチル)ドキソルビシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、9−アミノカンプトテシン、アミノペルチン、アンチノマイシン、N8−アセチルスペルミジン、1−(2−クロロエチル)−1,2−ジメタンスルホニルヒドラジン、ブレオマイシン、タリソマイシンおよびその誘導体など;ヒドロキシ含有化学療法剤、例えばエトポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エスペラマイシン、1,8−ジヒドロキシ−ビシクロ[7.3.1]トリデカ−4−エン−2,6−ジイン−13−オン、アングイジン、モルホリノ−ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、およびそれらの誘導体;スルフヒドリル含有化学療法剤およびカルボキシル含有化学療法剤が含まれる。
【0233】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的非ステロイド系抗炎症薬物には、限定されないが、オキシカム系、例えば、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカムおよびCP−14,304など;サリチル酸系、例えば、アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサールおよびフェンドサールなど;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナクおよびケトロラクなど;フェナム酸系、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸など;プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェンおよびチアプロフェニクなど;ピロゾール系、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾンおよびトリメタゾンなどが含まれる。
【0234】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的ステロイド系抗炎症薬物には、限定されないが、コルチコステロイド系、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルアンドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアンドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよびそのエステルの残り、クロロプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタマート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、および、これらの混合物が含まれる。
【0235】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的抗酸化剤には、限定されないが、アスコルビン酸(ビタミンC)およびその塩、脂肪酸のアスコルビン酸エステル、アスコルビン酸誘導体(例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、ソルビン酸アスコルビル)、トコフェロール(ビタミンE)、ソルビン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールの他のエステル、ブチル化ヒドロキシ安息香酸およびそれらの塩、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(Trolox(登録商標)の商品名で市販されている)、没食子酸およびそのアルキルエステル、特に没食子酸プロピル、尿酸およびその塩およびアルキルエステル、ソルビン酸およびその塩、リポ酸、アミン(例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アミノ−グアニジン)、スルフヒドリル化合物(例えばグルタチオン)、ジヒドロキシフマル酸およびその塩、リシンピドレート、アルギニンピロレート、ノルジヒドログアイアレチン酸、ビオフラボノイド、クルクミン、リジン、メチオニン、プロリン、スーパーオキシドディスムターゼ、シリマリン、茶抽出物、ブドウ果皮/種子抽出物、メラニン、およびローズマリー抽出物が含まれる。
【0236】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的ビタミンには、限定されないが、ビタミンAおよびその類似体および誘導体:レチノール、レチナール、パルミチン酸レチニール、レチノイン酸、トレチノイン、イソ−トレチノイン(総称的にレチノイドとして知られる)、ビタミンE(トコフェロールおよびその誘導体)、ビタミンC(L−アスコルビン酸およびそのエステルおよび他の誘導体)、ビタミンB3(ナイアシンアミドおよびその誘導体)、α−ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸など)およびβ−ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸など)が含まれる。
【0237】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的ホルモンには、限定されないが、アンドロゲン化合物およびプロゲスチン化合物が含まれ、例えばメチルテストステロン、アンドロステロン、酢酸アンドロステロン、プロピオン酸アンドロステロン、安息香酸アンドロステロン、アンドロステロンジオール、アンドロステロンジオール−3−アセテート、アンドロステロンジオール−17−アセテート、アンドロステロンジオール3−17−ジアセテート、アンドロステロンジオール−17−ベンゾエート、アンドロステロンジオン、アンドロステンジオン、アンドロステンジオール、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンナトリウム、ドロモスタノロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エチルエストレノール、フルオキシメステロン、ナンドロロンフェンプロピオネート、ナンドロロンデカノエート、ナンドロロンフリルプロピオネート、ナンドロロンシクロヘキサン−プロピオネート、ナンドロロンベンゾエート、ナンドロロンシクロヘキサンカルボキシレート、アンドロステロンジオール−3−アセテート−1−7−ベンゾエート、オキサドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、テストステロン、テストステロンデカノエート、4−ジヒドロテストステロン、5α−ジヒドロテストステロン、テストラクトン、17α−メチル−19−ノルテストステロンおよびその医薬的に許容されるエステルおよび塩、ならびに前述のいずれかの組み合わせ、デゾゲストレル、ジドロゲステロン、二酢酸エチノジオール、メドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、19−ノルテストステロン、リノエストレノール、酢酸キンゲスタノール、メドロゲストン、ノルゲストリエノン、ジメチステロン、エチステロン、酢酸シプロテロン、酢酸クロルマジノン、酢酸メゲストロール、ノルゲスチメート、ノルゲストレル、デゾグレストレル、トリメゲストン、ゲストデン、酢酸ノメゲストロール、プロゲステロン、硫酸5α−プレグナン−3β,20α−ジオール、硫酸5α−プレグナン−3β,20β−ジオール、5α−プレグナン−3β−オール−20−オン、16,5α−プレグナン−3β−オール−20−オン、4−プレグネン−20β−オール−3−オン−20−スルファート、アセトキシプレグネノロン、酢酸アナゲストン、シプロテロン、ジヒドロゲステロン、酢酸フルロゲストン、ゲスタデン、酢酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、酢酸ヒドロキシメチルプロゲステロン、3−ケトデゾゲストレル、メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、ノルエチステロンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0238】
活性な物質は、生物活性薬剤に加えて、生物活性薬剤の性能を改善し得る添加剤をさらに含むことができる。これらとしては、例えば、浸透増強剤、湿潤剤、キレート化剤、防腐剤、閉塞剤、緩和剤、透過増強剤および抗刺激剤が含まれる。これらの薬剤は、多孔性被覆の細孔内に被包することができるし、または被覆を形成するポリマー内にドーピングすることができる。
【0239】
湿潤剤の代表的な例としては、限定されないが、グアニジン、グリコール酸およびグリコール酸塩(例えば、アンモニア塩および4級アルキルアンモニウム塩)、多様な任意の形態のアロエベラ(例えば、アロエベラゲル)、アラントイン、ウラゾール、ポリヒドロキシアルコール(例えば、ソルビトール、グリセリン、ヘキサントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、ポリエチレングリコール、糖類およびデンプン、糖およびデンプン誘導体(例えば、アルコキシル化グルコース)、ヒアルロン酸、ラクタミドモノエタノールアミン、アセタミドモノエタノールアミンおよびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0240】
キレート化剤の非限定的な例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA誘導体またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0241】
閉塞剤の非限定的な例としては、ペトロラタム、鉱油、密蝋、シリコーン油、ラノリンおよび油溶性ラノリン誘導体、飽和および不飽和脂肪アルコール(例えば、ベヘニルアルコールなど)、炭化水素(例えば、スクアランなど)、および様々な動物性および植物性の油(例えば、アーモンド油、落花生油、小麦胚芽油、亜麻仁油、ホホバ油、アンズ種油、クルミ、ヤシの実、ピスタチオの実、ゴマの種、菜種、トショウ油、トウモロコシ油、桃仁油、ケシの実油、パイン油、ヒマシ油、大豆油、アボカド油、サフラワー油、ココナッツ油、ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、ブドウ種子油およびヒマワリ種油が含まれる。
【0242】
緩和剤の非限定的な例としては、ドデカン、スクアラン、コレステロール、イソヘキサデカン、イソノナン酸イソノニル、PPGエーテル、ペトロラタム、ラノリン、サフラワー油、ヒマシ油、ココナッツ油、綿実油、パーム核油、パーム油、落花生油、大豆油、ポリオールカルボン酸エステル、それの誘導体およびそれらの混合物が含まれる。
【0243】
浸透増強剤の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アラントイン、ウラゾール、N,N−ジメチルアセタミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド(C10 MSO)、ポリエチレングリコールモノラウレート(PEGML)、プロピレングリコール(PG)、プロピレングリコールモノラウレート(PGML)、グリセリンモノラウレート(GML)、レシチン、1−置換アザシクロヘプタン−2−オン、特に1−n−ドデシルシクラザシクロヘプタン−2−オン(Whitby Research Incorporated,Richmond,Va.からAzone(登録商標)の名称で入手可能)、アルコール類などが含まれる。浸透増強剤は、植物油であってもよい。そのような油としては、例えば、サフラワー油、綿実油およびトウモロコシ油が含まれる。
【0244】
抗炎症剤の非限定的な例としては、ステロイド性および非ステロイド性の抗炎症剤および他の材料(例えば、アロエベラ、カモミール、アルファ−ビサボロール、コーラの木抽出物、緑茶抽出物、茶樹油、甘草抽出物、アラントイン、カフェインまたは他のキサンチン、グリチルリチン酸およびその誘導体)が含まれる。
【0245】
防腐剤の非限定的な例としては、1つ以上のアルカノール、EDTA二ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸)、EDTA塩、EDTA脂肪酸コンジュゲート、イソチアゾリノン、パラベン(例えばメチルパラベンおよびプロピルパラベン)、プロピレングリコール、ソルベート、尿素誘導体(例えば、ジアゾリンジニル尿素)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。本実施形態による複合構造体は、精巧な処理および取り扱いを必要とし、もし熱、障害物質および溶媒などの条件および/または他の有害な条件に曝露されると、それらの生物学的および/または治療的活性を保持することができない生物活性薬剤を被包することが望ましい場合、特に有益である。そのような生物活性薬剤は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、多糖類、成長因子、ホルモン、抗血管新生因子、インターフェロンまたはサイトカイン、細胞およびプロドラッグを含む。
【0246】
診断剤は、モニタリング目的/標識化目的のために、それ自体で、または、生物活性剤との組合せでのいずれかで本発明の実施形態に関連して活性な物質として利用することができる。
【0247】
診断剤はまた、本明細書中では交換可能に、「標識化合物または標識成分」として示され、知られている技術を使用して、例えば、スペクトル測定(例えば、蛍光、リン光)、電子顕微鏡観察、X線回折および画像化、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)、磁気共鳴画像化(MRI)およびコンピューター断層撮影(CT)などを使用して検出器によって特定および追跡することができる検出可能な成分またはプローブを含む。
【0248】
標識化合物または標識成分の代表的な例には、限定されないが、発色団、蛍光性の化合物または成分、リン光性の化合物または成分、造影剤、放射性薬剤、磁性の化合物または成分(例えば、反磁性物質、常磁性物質および強磁性物質)、および、重金属クラスターが含まれる。
【0249】
本発明のこの関連において有益に利用することができる他の活性な物質には、例えば、滑らかさ、疎水性および生体適合性などに関して、所望の特性を、組成物、物品または医療デバイスの表面に与えることができる薬剤が含まれる。
【0250】
本明細書中に記載される組成物は、本明細書中上記で詳述されたように、細かく制御された特徴を示すように設計された一方で、本発明者らは、そのような特徴を有するマグネシウム系組成物を調製するための手法を考案している。従って、本明細書中に記載される組成物を調製する過程において、本発明者らは、マグネシウム合金のいくつかの特徴が、合金を調製するための条件を選択することによって制御され得ることを発見している。
【0251】
一般に、マグネシウム合金の特徴は、合金における成分およびそれらの相対的な量、合金における結晶粒のサイズおよび形状、ならびに、金属間相における結晶粒の配置によって決定される。本発明者らによって考案されるプロセスは、所望される特徴を有するマグネシウム合金を得るように、これらのパラメーターを細かく制御することを可能にする。
【0252】
従って、本発明のさらなる側面によれば、マグネシウム系組成物を調製するプロセスが提供される。このプロセスは一般には、少なくとも60重量パーセントのマグネシウムを含む混合物を鋳造して、それにより、マグネシウム含有鋳造物を得ること、および、このマグネシウム含有鋳造物を、少なくとも1回の押出し処理および少なくとも1回の予熱処理を含む多段階押出し手順に供することを含む。
【0253】
冶金学の分野では広く知られているように、鋳造は、金属または金属の混合物が、融解するまで加熱し、その後、鋳型に注ぎ、冷却および凝固する製造技術である。
【0254】
マグネシウム含有組成物の鋳造を、この分野で知られている任意の鋳造手順を使用して行うことができ、これらには、例えば、砂型鋳造、重力鋳造、直接チル(DC)鋳造、遠心鋳造、ダイカスト、プラスター鋳造およびロストワックス鋳造が含まれる。
【0255】
1つの好ましい実施形態において、鋳造は重力鋳造であり、これは600℃〜900℃の範囲にある温度で行われ、好ましくは、700℃〜800℃の範囲にある温度で行われる。この手順を使用して得られる鋳造物は典型的にはインゴットの形態である。
【0256】
別の好ましい実施形態において、鋳造は直接チル鋳造である。この手順を使用して得られる鋳造物は典型的にはビレットの形態である。
【0257】
選択された鋳造手順、および、選択された鋳造手順が行われる条件は、合金の最終的性質に影響を及ぼし得る。
【0258】
従って、例えば、直接チル鋳造手順では、得られる材料は、凝固時間がより短いために、結晶粒のサイズがより小さくなる。小さい結晶粒サイズは、最終製造物の機械的特性に影響を及ぼす重要な特徴であり、また、その後の押出し手順を行う条件にさらに影響を及ぼし得る(例えば、より低い圧力をより小さい結晶粒サイズのために利用することができる)。
【0259】
融解手順が行われる温度もまた、結晶粒のサイズに影響を及ぼす。加えて、温度はまた、得られる合金の組成に影響を及ぼし得る。従って、例えば、高い温度では、Fe粒子の量の望ましくない上昇がもたらされる場合がある。低い温度では、プロセス期間中におけるいくつかの成分の望ましくない喪失が生じる可能性がある。従って、成分のそれぞれの量が、合金の最終的性質を決定するために重要である場合には、温度は、合金の所望の組成を維持するように注意深く選択される。
【0260】
合金用成分が加えられる順序は、最終製造物の性質にさらに影響を及ぼし得る。
【0261】
好ましい実施形態では、合金元素のすべてを加えた後、得られる溶融物は、凝固に供される前に、(融解温度で)定着することができる。そのような定着時間により、鉄(Fe)のレベルがより低くなることが多い。
【0262】
さらに好ましくは、凝固前に、溶融混合物は試験され、その結果、溶融混合物における様々な成分の量が求められ、従って、これらの量を凝固前に所望の通りに調節することができる。
【0263】
なおさらに好ましくは、鋳造手順が保護的雰囲気のもとで行われ、これは、成分の分解(具体的には、マグネシウムの分解)を減らすことを目的とする。
【0264】
そのような鋳造を行うための詳細な例示的手順が下記の実施例の節において示される。
【0265】
場合により、また、好ましくは、鋳造プロセスに続いて、マグネシウム含有鋳造物は多段階押出し手順の前に均質化に供される。均質化処理は、不純物および金属間相の拡がりが拡散によって全体において均質化することを生じさせる。均質化処理はさらに、その後の塑性変形および熱処理に対する合金応答を改善する。
【0266】
均質化は好ましくは、少なくとも300℃の温度(好ましくは少なくとも400℃の温度、より好ましくは少なくとも500℃の温度)で、少なくとも4時間の期間中(好ましくは少なくとも5時間の期間中、より好ましくは少なくとも6時間の期間中、より好ましくは少なくとも7時間の期間中、最も好ましくは約8時間にわたって)行われる。例示的な好ましい実施形態において、均質化処理が520℃で8時間にわたって行われる。
【0267】
本明細書中で使用される用語「押出し」は、金属(または他の材料)が、エネルギーが加えられている同じ方向でダイオリフィスを通過させられる製造プロセス(通常押出し)、または、逆方向でダイオリフィスを通過させられる製造プロセス(間接押出し)(そのような場合、金属は通常、形状化されたロッド、レールまたはパイプを生じさせるために、ポンチまたは移動する形成用ツールの外形に従う)を表す。このプロセスは、通常、長い長さの最終製造物をもたらし、実際には連続的または半連続的であり得る。いくつかの材料は熱間引抜きされ、一方で、いくつかの材料は冷間引抜きすることができる。
【0268】
「多段階押出し」により、従って、マグネシウム含有組成物が押出し手順(処理)に繰り返し供され、従って、ダイを繰り返し通過させられることが本明細書中では意味される。好ましくは、そのような押出し手順のそれぞれが、異なる条件(例えば、異なる圧力、温度および/または速度)で行われる。
【0269】
さらに好ましくは、マグネシウム含有組成物はそのような押出し手順の少なくとも1つの前に予熱処理に供される。「熱処理」により、組成物が少なくとも100℃の温度(好ましくは少なくとも200℃の温度、より好ましくは少なくとも300℃の温度、より好ましくは330℃〜370℃の範囲での温度)に供されることが意味される。押出し手順のそれぞれの前に加えられる熱処理は同じまたは異なることが可能である。
【0270】
好ましい実施形態において、得られた鋳造物は最初に第1の押出しに供されて、それにより、第1の押出しマグネシウム含有組成物を得る。この手順は予備押出し処理と呼ぶことができ、この処理は、鋳造物を、その後の多段階押出しにおいて利用される押出し装置および押出し条件に合わせることを目的とし、また、使用される鋳造手順に依存して、必要に応じて行われる。
【0271】
その後、多段階押出し手順が好ましくは、下記のように行われる:得られた押出し組成物が第1の温度において第1の予熱に供される。その後、予熱されたマグネシウム含有組成物が第2の押出しに供されて、それにより、別の(第2の)押出しマグネシウム含有組成物を得る。
【0272】
これらの予熱手順および押出し手順は、押出し組成物の最終的な形態が得られるまで、所望に応じて繰り返すことができる。
【0273】
1つの好ましい実施形態において、第2の押出しに続いて、得られた(第2の)押出し組成物は別の予熱処理に供され、その後、さらなる(第3の)押出しに供される。
【0274】
本明細書中に記載される多段階押出し手順の使用は、最終製造物における結晶粒サイズを細かく制御することを可能にする。押出し条件および熱処理条件を操作することによって、最終製造物を、所望されるように種々の幅で、また、所望されるように様々な微細構造で得ることができる。本明細書中上記で議論されたように、これらの特徴は、最終製造物の腐食速度および機械的特性に影響を及ぼす。
【0275】
好ましくは、多段階押出し手順における押出し処理のそれぞれが、300〜450℃の範囲にあるダイ温度、および、2500〜3200psiの範囲ある機械圧力で行われる。例示的な押出し処理において利用される条件が下記の実施例の節において表1に詳しく示される。
【0276】
予熱処理は、好ましくは、150〜450℃の範囲にある温度で行われ、より好ましくは、300〜400℃の範囲にある温度で行われる。
【0277】
場合により、鋳造物の変形を、本明細書中に記載される多段階押出しプロセスと同様に行われる鍛造プロセスによって行うことができる。
【0278】
本明細書中で使用される用語「鍛造」は、鋳造された組成物を閉じた空洞において圧縮し、その結果、空洞の形状への組成物の変形を得ることを意味する。この処理は、例えば、ネジおよび/またはプレートの調製が所望される場合に利用することができる。鍛造が行われる温度は好ましくは300℃〜450℃であり、加えられる圧力は、押出し処理のために示された圧力よりも2〜5倍大きい。
【0279】
多段階押出し手順の後で、押出し組成物はさらに、最終製造物の所望される形状を得るように、様々な切断手順および機械加工手順に供することができる。これらの手順には、例えば、一般的な切断手順および機械加工手順、ならびに、本明細書中に記載されるような鍛造、鋳造および引抜きなどが含まれ得る。
【0280】
場合により、また、好ましくは、多段階押出し手順によって得られる押出し組成物はさらに、応力除去処理に供される。好ましくは、応力除去処理は、組成物を、5分〜30分の範囲にある期間の間、少なくとも100℃の温度(より好ましくは少なくとも200℃の温度、より好ましくは少なくとも300℃の温度)で加熱することによって行われる。
【0281】
さらに場合により、また、好ましくは、最終製造物は、スクラッチを製造物の表面から除くことを典型的には目的とする、機械的手段および/または化学的手段による研磨に供される。
【0282】
さらに場合により、得られた製造物は、形成された組成物の腐食速度および/または適合性を調節することを好ましくは目的とする表面処理に供される。1つの好ましい実施形態において、表面処理は、製造物の表面における表層(これは好ましくは酸化マグネシウム層である)を形成することを目的とする。
【0283】
表面処理は、好ましくは、研磨手順が行われるならば、研磨手順に続いて行われ、この趣旨でこの分野において知られている技術のいずれかを使用して行うことができる。そのような技術には、例えば、化成被覆および陽極酸化処理が含まれる。
【0284】
本発明の実施形態の関連での使用のために好適である例示的な化成被覆の技術には、リン酸塩−過マンガン酸塩の化成被覆、フルオロジルコン酸塩の化成被覆、スズ酸塩処理、セリウム、ランタンおよびプラセオジムの化成被覆、ならびに、コバルトの化成被覆が含まれるが、これらに限定されない。これらの技術の詳細な記述については、例えば、J.E.Gray、Journal of alloys and compounds、336(2002)、88〜113頁参照(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)。
【0285】
陽極酸化は、酸化物の薄膜を不動態化処理として金属および合金の表面に生じさせるために使用される電解プロセスであり、典型的には、DC電流またはAC電流を加えることによって行われる。
【0286】
本発明の実施形態の関連での使用のために好適である例示的な陽極酸化技術には、陽極酸化浴がアンモニアおよびリン酸水素アンモニウムナトリウムの水溶液からなるアノマグ(anomag)プロセスが含まれるが、これに限定されない。他の技術が、Gray(2002)(上掲)に記載される。
【0287】
他の不動態化技術もまた、本明細書中に記載される表面処理の関連において使用することができる。これらには、例えば、pHが10を越えるアルカリ溶液における浸漬、有機溶液における浸漬などが含まれる。
【0288】
上記で記載されたプロセスは、様々なマグネシウム系合金を製造するために利用することができる。好ましい実施形態において、上記プロセスは、少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含むマグネシウム系組成物を製造するために利用され、さらには、本明細書中に記載される組成物のいずれかを調製するために利用される。
【0289】
本明細書中上記で議論されたように、また、下記の実施例の節においてさらに明らかにされるように、本明細書中に記載される組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に浸漬されたときには、電流を約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることを特徴とし、また、7.4のpHを有するPBS溶液に浸漬されたときには、電流を約15μA/cm2〜約60μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることを特徴とした。本明細書中上記でさらに議論されたように、そのような電流密度は、骨の環境において加えられたとき、骨形成を刺激する。
【0290】
従って、本発明の別の態様によれば、損傷された骨を有する対象において骨形成を刺激する方法が提供され、この場合、この方法は、本明細書中に記載される組成物、物品および医療デバイスのいずれかを、損傷された骨の近傍に設置することによって行われる。そのような方法は、例えば、折れた骨を処置するように、および/または、骨粗鬆症を局所的に治療もしくは予防するように利用することができる。
【0291】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なお、これら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0292】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なお、これら実施例によって本発明は限定されない。
【0293】
材料および実験方法
材料:
マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、イットリウムおよびネオジムをすべて、Dead Sea Magnesium Ltd.から得た。
炭酸水素アンモニウムをAlfa Aesarから得た。
アルゴンをMaximaから得た。
0.9%のNaCl溶液をFrutarom Ltd.から得た。
8グラム/リットルのNaCl、0.2グラム/リットルのKCl、1.15グラム/リットルのNaH2PO4および0.2グラム/リットルのKH2PO4を含有するPBS(pH=7.4)をSigma Aldrichから得た。
【0294】
加工設備:
ハシングタイ(hashingtai)SM−1 Powder Mixerを使用した。
MTI GLX1300 Vacuum Ovenを使用した。
成形および押出しを、3Ksi押出し装置を使用して行った。
【0295】
分析:
元素分析を、Baird spectrovac2000質量分析計を使用して行った。
衝撃を、Mohr Federhaft AGアナログ衝撃装置を使用して測定した。
硬度を、Wilsonロックウェル硬さ試験機を使用して測定した。
引張り強さを、Instron引張り試験装置を使用して測定した。
伸びを、Instron引張り試験装置を使用して測定した。
光学顕微鏡観察を、Sony CCDカメラを備えるNikon optiphotを使用して行った。
SEM測定およびEDS測定をJeol JSM5600で行った。
【0296】
実施例1
合金の製造および特徴づけ
本発明の実施形態によるマグネシウム合金の3つの代表的な例(これらは、本明細書中では、BMG350、BMG351およびBMG352として、または、交換可能に、BioMag350、351および352としてそれぞれ示される)を、下記の一般的手順に従って調製し、特徴づけた。
【0297】
一般的製造プロセス:
合金を、例えば、重力鋳造を使用して鋳造し、続いて、均質化処理を、微細構造を均一化するという目的のために行う。得られるインゴットを、本明細書中下記において例示されるように、加熱して予熱処理し、多段階押出しに供する。
【0298】
典型的な一例では、合金を下記のように重力鋳造に供した:
純粋なMgインゴット(規格、9980A−99.8%)を、低炭素鋼から作製されたるつぼにおいて、CO2および0.5%SF6の保護的雰囲気のもと、780℃の温度で融解した。温度を凝固の最終段階まで維持した。
【0299】
その後、ネオジム(Nd、商業的に純粋、0.5%の不純物)を、好ましくは小さい塊で加え、溶融物を、溶融マグネシウムへのNdの溶解を可能にするように20分間撹拌した。
【0300】
イットリウムはY−Feの金属間相を形成し得るので、得られたMg−Nd溶融物を、溶融物に存在する何らかのFe粒子が沈下することを可能にするように30分間定着させた。本明細書中上記で議論されたように、低い量(ppm)のFeを有するマグネシウム合金が望ましい。
【0301】
その後、イットリウム(商業的に純粋、1%未満の不純物)を、溶融物を穏やかに撹拌しながら加え、続いて、カルシウムを、得られた溶融物を穏やかに撹拌しながら加えた。さらなる金属が合金に存在するならば、さらなる金属もまた、溶融物を穏やかに撹拌しながら、この段階で加えられる。
【0302】
溶融物の組成を、溶融物における各成分の所望された量を確認するように、質量分析法を使用してこの段階で評価し、必要ならば、組成の補正を(例えば、1つまたは複数の成分のある量を加えることによって)行った。様々な成分の所望される量は、本明細書中上記で記載される所望のパラメーターによって決定される。例示的な合金(BMG350、351および352)の組成が本明細書中上記で詳述される。
【0303】
得られた溶融物を、組成を均質化するために、また、Fe粒子の量を低下させるために約40分間定着させた。この定着期間の期間中に、溶融物におけるFeの量が、質量分析法を使用して求められる。
【0304】
その後、溶融物をインゴットに注入し、本明細書中上記で記載される保護的環境のもとで凝固させる。
【0305】
凝固すると、インゴットは均質化処理を520℃で8時間受ける。
【0306】
得られたインゴットは、その後、下記のように押出しプロセスに供される;
得られたインゴットを、クローズドダイを使用して、最大装置圧力(3150psi)により、360℃のダイ温度で円形ビレットに押し出し、プレスした。
【0307】
得られたビレットを、押出し装置に合うように、また、さらには表面を清浄にするように204mm(8インチ)の直径に機械加工し、その後、示された温度に予熱した(表1参照)。
【0308】
予熱ビレットを、50.8mm(2インチ)の断面を達成するように、下記の表1に示されるパラメーターに従って440℃のダイ温度で押し出した。
【0309】
得られた2インチのビレットを、示されるように再び予熱し、要求される最終的な外形(例えば、直径30mmのロッド)への押出しに再び供した。
【0310】
得られたロッドを、その後、特定の試験片形態を得るように、機械加工および必要な場合には切削に供した。
【0311】
好ましくは、最終製造物は、試験片における残留応力を低下させるように、365℃での20〜30分間の応力除去処理に供された。応力除去プロセスの効果を、本明細書中下記で記載される浸漬実験によって確認した。応力が除去された試験片は、機械加工に供されているとき、はるかにより大きい腐食速度を示した。
【0312】
得られた試験片の最終的処理には、典型的には、製造物の滑らかな表面を、スクラッチを除くことによって提供することを目的とする研磨(例えば、機械的手段または化学的手段による研磨)が含まれる。
【0313】
得られた製造物は、その後、本明細書中上記で詳述されるように、また、例えば、Grey(2002、上掲)に記載されるように表面処理に供される。一例において、最終製造物は、本明細書中に記載されるようにリン酸塩−過マンガン酸塩の化成被覆に供される。別の一例では、最終製造物は、本明細書中に記載されるようにアノマグプロセスに供される。
【0314】
化学組成:
下記の表2は、質量分析法によって求められるときの、本明細書中上記に記載される一般的プロセスによって得られる3つの合金のそれぞれの組成を示す。
【0315】
機械的特性:
合金の機械的評価を、下記に記載される用語および試験を使用して、国際的規格に従って行った:
ASTM E6−89:機械的試験の方法に関連する標準的用語;
ASTM E8M−95a:金属材料の引張り試験のための標準試験方法[メートル法];
STM E18−94:金属材料のロックウェル硬さおよびロックウェル表面硬さのための標準試験法;および
STM規格E23−4b:金属材料の切欠き棒衝撃試験のための標準試験方法。
【0316】
5個の試験片をそれぞれの試験において使用した。下記の表3は、試験された組成物(BMG350、351および352)について得られた結果(平均化された結果)を示す。
【0317】
これらの結果は、実質的な違いが、機械的強度に関して、これら3つの試験された合金の間に何ら認められないことを明瞭に示す。より強い合金は、わずかに増大した最大抗張力および引張り降伏強さを有するBMG350であるようである。他方で、BMG350および351の伸び特性はBMG352よりも実質的に大きい。
【0318】
これらの結果はさらに、試験された合金のすべてが、降伏点に達する前に、160MPaに至るまで耐えることができることを明瞭に示す。従って、このことは、これらの合金がすべての中負荷適用に対して適用可能であることを示している。
【0319】
顕微鏡評価:
試験された合金の微細構造を、SEM測定およびEDS測定を使用して評価した。図2a、図2bおよび図2cは、BMG350、351および352のSEM顕微鏡写真をそれぞれ示す。図に示されるように、平均結晶粒サイズがおよそ20ミクロン以下であり、相および結晶粒の典型的な伸長が押出しプロセスのために明らかである。本明細書中上記で議論されたように、そのような小さい結晶粒サイズは大きい機械的強度をもたらす。
【0320】
図においてさらに示されるように、金属間相が塊に沿って分布する。そのような金属間相は、Mgマトリックスに対する陰極として作用することによって腐食速度に影響を及ぼすことが予想される。従って、腐食プロセスは、これらの金属間相に隣接した場所で始まることが予想される。従って、十分に分布した金属間相により、一様な腐食プロセスが保証される。
【0321】
実施例2
腐食試験
本発明の実施形態による代表的な合金の腐食速度を、浸漬技術および電気化学的技術の両方を、下記のようなASTM、ISOおよびFDAの関連した規格および指針に従って使用して評価した:
ASTM G15−93:腐食および腐食試験に関連する標準的用語;
ASTM G5−94:定電位陽極分極測定およびポテンシオダイナミック陽極分極測定を行う;
ASTM G3−89:腐食試験における電気化学的測定に適用可能な従来法;
E.Ghaliら、“Testing of General and localized Corrosion of Magnesium allys: A critical Review“、ASM international、2004;
ISO10993−15、医療デバイスの生物学的評価、金属および合金からの分解産物の特定および定量;および
ASTM G31−72:“Standard practice for laboratory corrosion testing of metals”。
【0322】
浸漬アッセイ:
浸漬実験を、合金を0.9%NaCl溶液(90グラムのNaCl/10リットルの脱イオン水)に37℃で7日(168時間)の期間にわたって浸けることによって、ASTM G31−72(金属の実験室腐食を測定するために使用される試験方法)において定義されるように行った。これらの実験の目的のために使用される試験片は、直径が10mmで、長さが100mmのロッド(約33cm2の表面積)である。試験片はすべて、重量および大きさが浸漬前に測定された。
【0323】
図3aおよび図3bは、これらのアッセイで使用される実験構成を示す。
【0324】
浸漬試験後、試験片を、腐食生成物を除くために20%のCrO3溶液および熱水により清浄にした。清浄後、試験片を重量測定し、腐食速度を下記の式に従って計算した:
腐食速度=(W・1000)/(A・T)
式中、
T=暴露時間(日数)
A=表面の面積(cm2)
W=質量喪失(グラム)。
【0325】
得られた結果が下記の表4に示される。
【0326】
これらの結果から、BMG351についてのわずかに優れた耐食性が、それ以外の試験されたサンプルと比較したとき、明瞭に示される。表4においてさらに示されるように、試験片の完全な分解を予測するための結果の外挿では、ほぼ1年半後における試験片の完全な分解が示される。この期間が生分解性の整形外科用インプラントの分野では最適であると見なされることは特筆される。
【0327】
本明細書中上記で記載されるように行われるが、NaCl溶液をPBS溶液(pH=7.4、本明細書中上記で記載される)により置き換える別のアッセイでは、0.41±0.02mcdの値がBMG351について得られた。
【0328】
電気化学的アッセイ:
ポテンシオダイナミック分極測定を、ASTM G5−94“Making potentiostatic and potentiodynamic anodic polarization measurements”(37℃での0.9%NaCl溶液またはPBSにおける試験された合金の電気化学的分極によって腐食速度を測定するために使用される試験方法)において定義されるように行った。
【0329】
本明細書中上記で記載されるようなPBS溶液(pH=7.4)を、ASTM F2129「小さいインプラントデバイスの腐食感受性を求めるためにサイクリックポテンシオダイナミック分極測定を行う」によって示されるように使用した。
【0330】
簡単に記載すると、実験を、下記の3電極セルを使用するGamryポテンシオスタットで行った:対向電極(白金箔、99.5%の純度、20cm×1mm、表面=629mm2)、参照電極(KCl電極)および作用電極(試験されるべき試験片、表面=28.3mm2)。Gamryポテンシオスタットを実験開始時に校正した。
【0331】
試験片を(600グリットのSiC研磨紙を使用して)試験前に研磨し、エタノールとともに超音波洗浄した。試験される試験片をガラス管に挿入した。これらのアッセイのための実験構成が図4aに示される。
【0332】
試験パラメーターは、
初期遅延(Ecorrの安定化)=3600秒(1時間);
走査速度=0.5mV/秒;
初期電位=−250mV(対Ecorr);
最終電位=電流密度が1mA/cm2(約1ボルト対Ecorr)を越えるときの電位
サンプル面積=0.283cm2
であった。
【0333】
図4bは例示的なポテンシオダイナミック分極プロットを示す。得られた結果が下記の表5および図5に示される。すべての測定値が、Tafel外挿法を使用して得られた。
【0334】
表5および図5に示されるように、著しく低下した腐食速度が、本明細書中上記で記載される浸漬アッセイと比較したとき、電気化学的アッセイにおいて得られた一方で、これらの観測結果は、電気化学的分極法では、外挿された方法である浸漬とは対照的に、様々なレベルの電位における金属の完全なライフサイクルの目安(図5参照)が提供されるという事実に起因すると考えられる。
【0335】
下記の表6は、ポテンシオダイナミックプロットから導き出されるような腐食電位および電流密度に関して、0.9%NaCl溶液およびPBSにおいて得られる比較結果を示す。
【0336】
表6に示されるように、異なるデータが、PBSと比較した場合、0.9%NaClにおいて行われた実験では得られた。これらの違いは、pHレベルがNaCl溶液では試験片の分解の期間中に増大するという事実に起因すると考えられ、従って、変化が緩衝剤(PBS)溶液では何ら起こらない。骨のヒトの生理学的環境はリン酸塩を含有する(例えば、Witteら、Biomaterials、26(2005)、3557〜3563頁参照)ので、PBSにおいて得られる結果は生理学的環境についてのより確かな目安であることが推定される。
【0337】
実施例3
インビボ研究
インビボ分解研究をPharmaSeed Ltd.(Nes Ziona)において行った。オスのWistarラット(11〜12週齢)を使用した。
【0338】
14mm×10mm×1mmの大きさを有する4つのBMG351試験片を、2週間および4週間の期間、12匹のWistarラットのそれぞれに埋め込んだ。これらの試験片は、2つの試験片が脊柱の左側に、2つの試験片が脊柱の右側に、それぞれのラットにおいて皮下に埋め込まれた。剃毛し、皮膚表面を清浄にした後、皮下ポケットを、はさみによる鈍的切開によって作製した。試験片をポケットに置き、傷を縫合糸により閉じた。
【0339】
それぞれの試験片を埋め込み前および外植後に重量測定した。外植後、それぞれの試験片を、腐食生成物がどのくらいラットの血流によって除かれたかを評価するために、クロム酸溶液における清浄化の前および清浄化の後で重量測定した。得られた結果が下記の表7にまとめられる。
【0340】
下記のスキーム1は、ラット体重に放出されたMg酸化物の量の計算が1つだけの試験片について行われた方法を示す。最後の式が得られると、その式をすべての利用可能な結果に適用した。
【0341】
得られた結果により、上記の実施例2に示されるインビトロ結果が確認された。得られた結果は、試験された試験片の類似する重量減少(腐食)速度を示している。さらには、腐食生成物を埋め込み部位から取り除くことに対する目安もまた得られ、評価された。4週間の期間についての得られた重量減少は総重量の6.5%(1.25%/週)であった。これは、インビトロ浸漬実験で得られた1週間についての1.39%の重量喪失と一致している。
【0342】
外植後に調べられた腐食形態学が図6に示される。図6は、一様に腐食された表面を、試験片全体での合金欠陥部におけるいくらかの孔食とともに示す。
【0343】
実施例4
多孔性マグネシウム合金
一般的手順:
粉末化されたマグネシウム合金が、知られている手順に従って、マグネシウム合金の削りくずを不活性な雰囲気で粉砕することによって調製される。簡単に記載すると、削りくずをアルゴン雰囲気下で粉砕装置に負荷し、粉砕操作を、冷却剤をミルハウスジャケットに通すことにより粉末の温度を制御しながら行う。粉砕を、目標の粒子サイズ分布(PSD)が得られるまで続ける。
【0344】
その後、粉末化されたマグネシウム合金を、事前に決定された比率で、事前に決定されたPSDの炭酸水素アンモニウム粉末と混合する。均質化された混合物を鋳型に入れ、空気圧によりスラブに圧縮するか、または、直接、事前に設計された形状に圧縮する。その後、圧縮された粉末を真空オーブンに移し、加熱焼結する。スラブが形成される場合は、スラブを、知られている手順を使用して、焼結前または焼結後のいずれかで、最終的なインプラント形状に機械加工する。
【0345】
必要な場合には、多孔性の形状化された製造物は、その後、少なくとも1つの活性な物質(例えば、抗体)を含有する溶液において含浸され、溶媒が減圧下において室温で除かれ、続いて、真空オーブンにおいて除かれる。
【0346】
典型的な一例において、イットリウムおよびネオジムを含有するBMG352のマグネシウム合金削りくずが、アルゴン雰囲気および水冷却のもと、6時間、アトリター(atritter)を16000RPMで使用して粉砕される。図7に示されるように、得られた粉末のSEM分析は、得られた粉末が、100〜200μmのサイズを有する球状粒子からなったことを示した。
【0347】
得られた粉末を4:1(v/v)の比率で炭酸水素アンモニウム粉末と混合し、得られたミックス粉末をディスク形状のダイに移し、空気圧により80psiで圧縮して、ディスク形状を得た。得られたディスクを焼結用真空オーブンに移し、パイレックス(登録商標)ガラスの真空チューブにおいて620℃で10分間焼結した。
【0348】
図8は、直径が8mmである、本明細書中上記で記載されるように得られた例示的なディスクを示す。
【0349】
図9は、2mmの穴がドリルにより貫通して開けられた、15%の多孔性を有する別の例示的なディスクを示し、このディスクは強い粒子間結合を焼結プロセスの結果として明らかにする。
【0350】
図10は、本明細書中上記に記載されるプロセスによって製造される、約500μmの細孔直径を有する別の例示的な多孔性試験片を示す。
【0351】
実施例5
多層化されたマグネシウム系システム
多層化されたマグネシウム系生分解性システムが、例えば、本明細書中に記載されるような生分解性マグネシウム合金から作製されるモノリシック型のマグネシウムコアと、本明細書中に記載されるような多孔性マグネシウム合金から作製される外側層とを有するシステムを構築することによって得られる。コア層は機械的強度を提供し、従って、外側の多孔性層には、マグネシウムが分解するときに放出される治療活性物質(例えば、抗生物質)が負荷される。
【0352】
実施例6
電流生成マグネシウム合金による骨形成
本明細書中上記で議論されたように、2〜20μA/cm2の範囲での一定のレベルの電流は、折れた骨または骨粗鬆症の骨を通過するとき、骨の成長を著しく刺激することができ、従って、骨治癒プロセスを促進させ得ることが認識されている。この現象についての作用機構は未だ理解されていない。
【0353】
本明細書中上記においてさらに示されるように、本明細書中に記載されるマグネシウム合金の分解機構は電気化学的反応を介してである。従って、一定のレベルの電流および電位がマグネシウム合金の分解部位において生じる。
【0354】
従って、マグネシウム系インプラントはさらに、骨形成を埋め込み部位における電流の生成により促進させるために使用され得ることが本明細書中では認識されている。
【0355】
本明細書中上記の表6に示されるように、BMG351、BMG350およびBMG352の電気化学的試験のときに測定された電流密度は、NaCl溶液においておよそ10μA/cm2の値を示し、PBSにおいて18〜60μA/cm2の範囲での値を示した。これらのデータは、マグネシウム系インプラントが、細胞の成長を刺激するために首尾よく利用され得ること、また、このことは、損傷された骨領域または骨粗鬆症の骨のいずれかにおいて骨形成を促進させるために首尾よく利用され得ることを示している。
【0356】
実施例7
水素発生の測定
マグネシウム含有試験片の発生水素の測定が、図11aに示されるように、ビュレット、漏斗および溶液タンクを使用して行われる。試験される試験片から発生する水素の気泡が、漏斗を通って、測定が行われ得るビュレットの中に流れる。そのようなシステムは、温度制御器もまた備えるときには、体温(37℃)をシミュレートすることを可能にする。
【0357】
試験片から発生した水素の気泡が、漏斗を通って、測定が行われ得るビュレットの中に流れる[G.Song and A.Atrens、Advanced engineering materials、2003、第5巻、第12号]。発生した水素のモル数の計算が、下記の式を使用して行われる:
【0358】
ビュレットの先端における水素圧は大気圧に非常に近い(760mmHgは大雑把には23メートルの水に等しい)。
【0359】
本明細書中上記に記載されるこのシステムを使用して、本明細書中に記載される例示的なマグネシウム合金(BMG351)の水素発生を異なる条件(0.9%NaCl;PBS(pH=7.4))のもとで測定した。試験された試験片は7cm2の表面積を有する。得られたデータを、35cm2の表面積に従って、プレートおよびネジから作製されるデバイスの発生速度に外挿した。
【0360】
得られたデータを、本明細書中下記のスキーム2に示される式に従って処理した。
【0361】
これらの計算に基づいて、結果を、Em−モルによる水素発生[モル/日/平方cm]として、または、Ev−体積による水素発生[ミリリットル/日/平方cm・マグネシウム]として示すことができる。
【0362】
得られた結果は、プレートおよびネジの完全なシステムの推定表面積のために、35cm2が後で乗じられた。
【0363】
得られた結果が下記の表8に示される。
【0364】
表8において認められ得るように、PBS溶液に浸漬されたときの試験されたマグネシウム合金の水素発生速度は、0.9%NaCl溶液に浸漬されたときの速度より小さかった。本明細書中上記で示されたように、PBS溶液で得られた結果は、生理学的環境に関してのより確からしい目安であると考えることは妥当である。
【0365】
これらの結果をヒトの生理学的環境の吸収能と比較するために、単純なモデルを使用した(Piiperら、Journal of applied physiology、17、第2号、268頁〜274頁を参照のこと)。このモデルは、種々の不活性な気体のラットの吸収能を計算するために開発された。従って、このモデルを、水素吸収を強調してヒトの生理学に変換した。図11bに示されるモデルは、生理学的環境における水素の吸収が、2つの方法から、すなわち、拡散および灌流からなることを予測する。
【0366】
示されたモデルは下記の式によって記述することができる:
式中、
αは1気圧における1ミリリットルの血液あたりのミリリットル水素での血液における水素の溶解度を示す;0.0146ml/cm3×atm.の値がMeyerら(European Journal of physiology、384、131頁〜134頁)に従って使用された;
Pgは気圧の単位での気泡における水素の圧力を示す;0.97気圧の値が使用された;
Plは気圧の単位での血液における水素の圧力を示す;0の値が使用された;
Dは、表面積対拡散バリア長さの比率が乗じられた拡散係数に等しい透過係数を示す。
【0367】
ヒトの生理学に対する上記式を採用するために、下記のパラメーターが使用されたか、または考慮された:
大気におけるH2含有量は0.5ppmであり、従って、血液における分子状水素の含有量(Pl)はゼロであると仮定される;
プレートおよびネジの構造体の表面積は35cm2である;
骨の周りにおける血流が5ミリリットル/分/100グラム骨として計算された。これは、骨の周りではなく、骨の血管における血流のみを含むことが意味される[I.McCarthy、Journal of bone joint surgery−American(2006)、88、4〜9頁];
100ミクロンの拡散バリアが計算のために任意の選択された。典型的には、拡散バリアは10〜100ミクロンの範囲である[HlastalaおよびVan Liew、Respiration physiology(1975)、24、147〜158頁]。
【0368】
ヒトの生理学のためのこれらの値を上記式に入れた後、プレートの周囲における水素気泡の吸収についての得られた値は1.65ミリリットル/時間である。
【0369】
表8に示される結果に戻ると、試験された例示的なマグネシウム系組成物またはマグネシウム系デバイスの水素発生速度が十分にヒトにおける水素吸収能の範囲内であることを理解することができる。
【0370】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0371】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0372】
【図1】本発明の実施形態による押出しマグネシウム合金の代表的な例を示す写真である。
【図2】BMG350の1:500のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、左)および1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、右)、BMG351の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2b)、ならびに、BMG352の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2c)を示す。
【図3】本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される浸漬アッセイの実験構成をアッセイ前(図3a)およびアッセイ期間中(図3b)において示す写真である。
【図4a】本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される電気化学的アッセイの実験構成を示す写真(図4a)である。
【図4b】本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される電気化学的アッセイの例示的な動電位プロット(図4b)である。
【図5】合金を37℃で0.9%NaCl溶液に浸け、電位を0.5mV/秒の走査速度で加えたときに得られるBMG350のポテンシオダイナミック分極曲線(青色)、BMG351のポテンシオダイナミック分極曲線(ピンク色)およびBMG352のポテンシオダイナミック分極曲線(黄色)を示す。
【図6】埋め込み後30日でWistarラットから外植され、クリーニングに供されたBMG351合金の、1:10のスケール(左、下部画像)および1:50のスケール(右、上部画像)での光学画像である。
【図7】マグネシウム合金の削りくずをアルゴン雰囲気および水冷のもとで粉砕したときに得られる、平均粒子サイズが200ミクロンである、イットリウムおよびネオジムを含有するマグネシウム合金(BMG352)粉末のSEM顕微鏡写真である。
【図8】多孔性の程度が35%である、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)から形成される例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【図9】穴がドリルにより開けられた、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)の別の例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【図10】約500μmの孔径を有する、本発明の実施形態による別の多孔性試験片の光学画像を示す。
【図11】マグネシウム含有組成物からの水素発生を評価するための例示的な装置(図11a)、および、Piiperら(Journal of applied physiology、17、第2号、268〜274頁)に従った、生理学的環境での水素ガスの吸収についての拡散/灌流モデルの概略図(図11b)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性マグネシウム合金、および、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントなど)の製造におけるその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
折れた骨を再編成するために、また、アラインメントを骨が治癒するまで維持するために、様々な金属性インプラント(例えば、プレート、ネジ、ならびに、髄内用のくぎおよびピンなど)が整形外科手術の実施において一般に使用される。金属性インプラントはまた、例えば、脊髄障害、脚長相違、スポーツ傷害および事故の場合において骨格系を補強するために選択的手術時において使用されることがある。一般に使用されるさらなる金属性インプラントが、内腔(具体的には冠状動脈など)を支持するために役立つステントである。
【0003】
現在使用されている金属性インプラントのほとんどが、要求される生体力学的プロフィルを典型的には有するステンレス鋼、白金またはチタンから作製される。しかしながら、そのようなインプラントは、残念なことに、体内で分解せず、従って、インプラントがもはや医学的に必要とされないときには、身体によって拒絶される前に手術により取り除かなければならないことが多い。
【0004】
骨の治癒、例えば、骨折後の骨の治癒が、健康な個体では、薬理学的介入および/または外科的介入を必要とすることなく生じる。ほとんどの場合において、骨の治癒は、骨の完全な強度を回復するために数ヶ月を必要とする非常に長いプロセスである。
【0005】
個体における骨治癒プロセスは、その身体的状態および年齢によって、また、傷害の重症度および損傷した骨のタイプによって影響される。
【0006】
不適切な骨治癒により、激しい痛み、入院延長、および、様々な身体的障害が発現し得るので、骨がひどく損傷される場合、または、個体における骨治癒プロセスが正常でない場合には、外的介入(例えば、外科的インプラントなど)が、適切な骨修復を確実にするために必要となる場合が多い。
【0007】
そのような外的介入が長骨又は他の骨格骨の修復のために利用される場合、修復は、修復により誘導される骨損傷を回避するように十分に柔軟でなければならず、それにもかかわらず、修復は、骨にかかる力に耐えるために十分に強いことが望ましい。
【0008】
多くの場合、特に、骨の欠損修復を必要とする場合には、外的介入は典型的には、アラインメントを回復することを目的とし、また、損傷された骨の適切な治癒を保証する金属性インプラントの手術による埋め込みを使用して行われる。しかしながら、解剖学的部位におけるそのような金属性インプラントの存在は、覆っている腱に対する摩耗および損傷、骨インプラント界面での感染症を引き起こす可能性があり、また、さらには、その剛性は応力遮蔽を引き起こすことが多く、実際には、その下にある骨を弱くする。金属性インプラントに関連する他の合併症には、遅発性骨髄炎、および、インプラントが緩むことに伴う痛みが含まれる。
【0009】
従って、小児科患者では、インプラントが正常な成長を妨害することがあり、また、さらには上記の合併症を引き起こすことがあるので、インプラントは通常の場合には取り出される。
【0010】
それにもかかわらず、成人患者では、合併症が生じない限り、金属性インプラントのほとんどが治癒後に取り出されない。その主な理由は、さらなる外科的手法に伴うさらなる病的状態ならびに隣接する組織に対する感染および損傷の他の危険性である。
【0011】
金属性支持インプラント(具体的には、骨修復の分野で使用される金属性支持インプラント)に関連する制限を克服するために、非常に多くの努力が、生分解性であるそのようなインプラントを設計するためになされている。
【0012】
生分解性の支持インプラントは、事前に設計された既知の速度で時間とともに分解することができ、そのような生分解性インプラントは、治癒プロセスが完了するまで骨を支持し、従って、これにより、支持インプラントを取り出すための不必要な外科的手法を行う必要性が回避され、また、関連する危険性および費用を著しく軽減する。
【0013】
現在使用されている生分解性インプラントは様々なポリマーに基づいており、例えば、ポリヒドロキシ酸、PLA、PGA、ポリ(オルトエステル)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレン)などに基づく。しかしながら、そのようなインプラントは、比較的不良な強度および延性、ならびに、ヒト組織と反応しやすい傾向を欠点として有する(これらは、局所的な骨成長を制限し得る特徴である)。加えて、現在、生分解性インプラントを形成するために典型的に使用される生分解性ポリマーは極めて高価であり、従って、生分解性インプラントを費用効果的なものにしていない。
【0014】
従って、生分解性の金属性インプラントで、所望の分解性速度、必要な生体適合性、ならびに、それにもかかわらず、必要な強度および柔軟性を示すものが、これまで長い間探し求められている。
【0015】
マグネシウム(Mg)は、この分野では腐食と多くの場合には呼ばれるプロセスで生理学的環境において分解して、水酸化マグネシウムおよび水素を生じさせる金属元素である。マグネシウムはまた、非毒性の元素として知られている。人体のためのマグネシウムの推奨量は1日あたり400mgである。これらの特徴を考慮すると、マグネシウムは、生分解性の金属性インプラントを形成するための魅力的な元素であると考えられている。
【0016】
様々な生分解性金属性インプラント(ほとんどがマグネシウムおよび鉄の合金から作製される)がこの分野において記載されている。
【0017】
マグネシウムを骨接合術の分野において骨折固定のために使用するという考えが1907年にLambotteによって最初に提案された。Lambotteは、下肢骨の骨折固定のために、マグネシウムプレートを金メッキされたスチール製くぎとともに使用することを試みた。しかしながら、マグネシウムの腐食性のために、プレートが、皮膚下における水素ガスの有害な、異常な形成を伴って8日に満たないうちに崩壊した。
【0018】
マグネシウムの腐食プロセスは下記の反応を伴う:
Mg(s)+2H2O→Mg(OH)2+H2
【0019】
従って、溶解したマグネシウムの1モル毎について、1モルの水素が発生し、一方で、水素発生速度はマグネシウム溶解速度に完全に依存している。従って、マグネシウム腐食の動態が水素発生速度についての決定因子である。発生した水素を吸収または放出する人体の能力、従って、皮下での大量の水素気泡の蓄積を回避する人体の能力が制限される間は、皮下水素気泡の異常な形成をもたらし得るマグネシウム系インプラントを使用することは非常に望ましくない。生理学的環境におけるマグネシウムの腐食は自発的であるので、水素発生速度を低下させることは、マグネシウム系インプラントの腐食速度を低下しさえすれば達成することができ、このことは典型的には、様々な処理によって、好ましくは、元素を合金にすることによって行われる。Lambotteの先駆的研究に続いて、様々な他の研究が行われた。例えば、Verbrugge[La Press Med.、1934、23:260〜5]は、1934年に、8%アルミニウム(AlまたはA)を含有するマグネシウム合金を使用した。McBrideは、95パーセントのマグネシウム、4.7パーセントのアルミニウムおよび0.3パーセントのマンガン(Mn)を含有するネジ、ボルトおよび合釘の使用を記載した[J.Am Med.Assoc.、1938、111(27):2464〜7;Southern Medical Journal、31(5)、508、1938]。しかしながら、これらの活動は、合金において使用される不適合性元素(例えば、アルミニウム、亜鉛および重元素など)が存在し、かつ、製造されたインプラントの分解動態が制御されないために、失敗したことが分かった。
【0020】
英国特許第1237035号および米国特許第3687135号(Stroganov)には、0.4%〜4%の希土類元素(REまたはE)(好ましくはネオジム(Nd)およびイットリウム(Y)である)、0.05%〜1.2%のカドミウム(Cd)、0.05%〜1.0%のカルシウム(Ca)またはアルミニウム、0.05%〜0.5%のマンガン、0.0%〜0.8%の銀(Ag)、0.0%〜0.8%のジルコニウム(Zr)および0.0%〜0.3%のケイ素(Si)を含むマグネシウム系生分解性インプラントが記載されている。
【0021】
Stroganovは、様々なマグネシウム系インプラントが、有害な影響を人体に対して局所的または全身的のいずれでも有することなく、体内で完全に溶解することができたことを報告した。加えて、Stroganovは、表面金属の1平方センチメートル毎について4.5立方センチメートルまでの水素が48時間の暴露の期間中に吸収されるように、マグネシウム分解から生じる水素発生を、身体の吸収能と合うように制御することができることを見出した。これらの特許の教示によれば、マグネシウムの生分解性インプラントは約6ヶ月の内に完全に分解する。
【0022】
Frank Witte率いる研究者のグループが、骨修復のためのマグネシウム系整形外科用インプラントを用いて行われた数多くの研究を発表した[例えば、公開番号20040241036を有する米国特許出願、Biomedicals(2005)26,3557;Biomedicals(2006)27,1013;Witteら、”In Vivo degradation kinetics of magnesium implats”,Hasylab annual report online edition,2003,G.Flakenberg,U.KrellおよびJ.R.Scheinder(編);ならびにWitteら、”Characterization of Degradable Magnesium Alloys as Orthopedic Implant Material by Synchrotron−Radiation−Based Microtomography”,Hasylab annual report online edition,2001,G.Flakenberg,U.KrellおよびJ.R.Scheinder(編)参照]。
【0023】
これらの研究のいくつかは、下記のマグネシウム合金の機械的特性および分解速度に焦点を当てた:例えば、AZ31(これは約3%のアルミニウムおよび約1%の亜鉛を含有する)、AZ91(これは約9%のアルミニウムおよび約1%の亜鉛を含有する)、WE43(これは約4%のイットリウムおよび約3%の希土類元素(Nd、Ce、DyおよびLu)を含有する)、LAE442(これは、約4%のイットリウム、約4%のアルミニウムおよび約2%の上記のような希土類元素を含有する)、および、0.2%〜2%のカルシウムを含有するマグネシウム合金など。従って、例えば、AZ91は6.9mm/年の速度で分解し、LAE442は2.8mm/年の速度で分解すること、および、0.4%〜2%のカルシウムを含有するマグネシウム合金の2.5%〜11.7%が72時間以内に分解したことが見出された。Witteおよびその共同研究者らは、アルミニウムが、十分な機械的安定性を達成するために、また、ガス発生現象を生体内の分解プロセスにおいて防止するために必要であることを彼らの刊行物のいくつかにおいて結論づけた。
【0024】
第5回Euspen国際会議(モンペリエ、フランス、2005年)の議事録に示されたいくつかの研究において、Bachらは、MgZn2Mn2の機械的強度および腐食速度について得られたデータを、合金の腐食速度を約1桁ほど低下させるフッ化物の安定化被覆表面を形成するようにフッ化水素酸でさらに処理された同じ合金と比較して記載する。
【0025】
この同じ刊行物において、Friedrich−Wilhelmらは、例えば、AZ91合金から作製される様々なマグネシウム合金多孔質スポンジの腐食プロフィルについて得られたデータを記載する。これらのデータは、多孔性合金が、非多孔性合金と同じ要求される活性を示さず、一方で、望ましくない高い速度で分解したことを示していた。
【0026】
なおさらにこの同じ刊行物において、Wirthらは、異なるマグネシウム合金(例えば、MgCa0.8、LAE422、LACer442およびWE43など)から作製される分解性骨インプラントのウサギ脛骨における使用を記載する。LACer442を除いて、これらのマグネシウム合金が埋め込まれた動物においてガスの蓄積は認められなかった。結果はさらに、マグネシウム合金のE弾性率および引張り降伏強さが、応力遮蔽を回避するように好適であったこと、また、インプラントの表面におけるカルシウムおよびリンの蓄積が認められたこと(このことは、骨治癒プロセスが起きていることを示す)を示した。
【0027】
なおさらにこの同じ刊行物において、Denkenaらは様々なマグネシウム合金のインビトロ分解研究を示し、この研究において、Denkenaらは、AZ91合金が、局在化した分解を有することが示され、一方で、MgCa0.2〜0.8合金がより均一な分解プロフィルを示したことを報告した。それにもかかわらず、これらの合金はどれも、整形外科用インプラントのための所望の腐食プロフィルを示さないことを結論づけた。
【0028】
別の研究者グループ(Heubleinおよび共同研究者ら)は、血管および心臓血管適用(例えば、ステントとして適用)のためのマグネシウム系インプラントを用いて行われた数多くの研究を発表した[例えば、Heart 89(6),651,2003;Journal of Intrventional Cardiology,17(6),391,2004;The British Journal of Cardiology Acut & Interventional Cardiology,11(3),802004参照]。従って、例えば、Heubleinらは、ブタにおいて首尾よく試験された、本明細書中上記で記載されるマグネシウム合金AE21から作製される4mgの様々なステントを教示する。これらのステントは、3ヶ月後における完全な分解性を示すことが見出された。Heubleinらはさらに、ミニ豚における予備的な心臓血管の前臨床試験および膝の裏側でのヒト動脈における臨床試験、ならびに、WE43マグネシウム合金から作製されるマグネシウムステントを使用する臨床的心臓血管インプラント試験からの限定された結果を示している。
【0029】
公開番号第20040098108号の米国特許出願は、90%を越えるマグネシウム(Mg)、3.7%〜5.5%のイットリウム(Y)および1.5%〜4.4%の希土類(好ましくはネオジム)から作製される体内人工器官(具体的にはステント)を教示する。公開番号第20060058263号および同第20060052864号の米国特許出願は、60%〜88%のマグネシウム(Mg)から作製される体内人工器官(具体的にはステント)を教示する。これらの刊行物はさらに、これらのインプラントの機械的一体性が、1日から90日まで持続する期間にわたって残存することを教示する。
【0030】
米国特許第6287332号は、マグネシウム合金から作製される埋め込み可能な生体再吸収性の血管壁支持体を教示する。公開番号第20060052825号を有する米国特許出願は、Mg合金から作製される手術用インプラントを教示する。好ましくは、これらのマグネシウム合金は、アルミニウム、亜鉛および鉄を含む。
【0031】
米国特許第6854172号は、管状インプラント(例えば、ステントなど)の製造における使用のために特に有用なマグネシウム合金を調製するプロセスを教示する。このプロセスは、ピン形状の半製品を得るように、鋳造、熱処理および続く熱機械加工(例えば、押出しなど)を行い、その後、半製品を2つ以上の部分に切断し、それぞれの部分を機械加工して、管状インプラントを得ることによって行われる。
【0032】
ステントとして使用するために意図されるMg合金の、生体適合性、機械的強度および分解性に関する所望の特徴は、整形外科用インプラントとして使用するために意図されるMg合金の特徴と異なることに本明細書中では留意しなければならない。従って、例えば、心臓血管ステントにおけるマグネシウムの総質量はおよそ4mgである一方で、整形外科用インプラントでは、マグネシウムの総質量は数十グラムにまですることができる。加えて、様々な生分解性インプラントは典型的には、3〜6ヶ月の内に崩壊するように設計され、従って、整形外科適用では、損傷された部位における十分な骨形成を可能にするように、1.5年に至るまでのより長い期間が所望される。従って、整形外科適用では、生体非適合性元素(例えば、鉛、ベリリウム、銅、トリウム、アルミニウム、亜鉛およびニッケルなど、それらのいくつかがマグネシウム工業では合金用元素として日常的に使用される)の使用を避けることが絶対的に必要である。整形外科用インプラントはさらに、インプラントが耐えなければならない圧力および摩耗がより大きいために、機械的強度がより大きいことが要求される。
【0033】
米国特許第6767506号は、少なくとも92%のマグネシウム、2.7%〜3.3%のネオジム、>0〜2.6%のイットリウム、0.2%〜0.8%のジルコニウム、0.2%〜0.8%の亜鉛、0.03%〜0.25%のカルシウム、および、<0.00〜0.001%のベリリウムを含有する高耐熱性マグネシウム合金を教示する。これらのマグネシウム合金は、高い温度で強度、耐クリープ性および耐食性の組合せが改善されたこと示す。これらのマグネシウム合金を医療適用のために使用することは、この特許では教示も、示唆もされていない。
【0034】
従って、先行技術により、様々なMg合金が教示され、いくつかが、生分解性インプラント(例えば、ステントおよび整形外科用インプラントなど)として使用するために意図される一方で、これらの合金は、生体適合性十分でなく、および/または、機械的強度および腐食速度に関する成績が十分でないことを特徴とする。
【0035】
従って、上記の制限を有しない、医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントおよび他のインプラントなど)を製造するために好適である新規なマグネシウム系合金が必要であることが広く認識されており、従って、そのようなマグネシウム系合金を有することは非常に好都合であると考えられる。
【0036】
いくつかの研究では、電流が、骨形成活性を刺激することにおいて、また、結果として、骨形成を誘導すること、骨成長を促進させること、および、骨粗鬆症を治療または予防することにおいて有益な役割を果たし得ることが示されている。関連技術の概要が、例えば、Oishiら[Neurosurgery、47(5)、1041、2000]による総説において、また、Marinoによる別の概説、“Direct Current and Bone Growth“、Painmaster(商標)、臨床データ記録(www.newcare.net/PDF/bonegrowth.pdf)において見出され得る。Blackら[Bioelectrochemistry and Bioenergetics、12(1984)、323〜327]もまた、骨形成刺激に対する直接的および間接的な電流の影響のインビトロ研究およびインビボ研究を教示する。しかしながら、これらの研究は、骨成長を骨粗鬆症の骨および他の損傷された骨において促進させることにおけるマグネシウム合金についての役割を教示していない。
【発明の開示】
【0037】
本発明者らは今回、様々な治療目的のために非常に有益であり、また、整形外科用インプラントに関して特に有益である機械的特性、電気化学的特性および分解動態的特性を示す新規なマグネシウム系組成物を考案し、首尾よく調製および実行している。
【0038】
従って、本発明の1つの態様によれば、少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜4重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含み、亜鉛を含まない組成物が提供される。
【0039】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0040】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0041】
本発明の別の態様によれば、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含み、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度によって特徴づけられ、亜鉛を含まない組成物が提供される。
【0042】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記組成物は、本明細書中に記載されるように、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0043】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記組成物はさらに、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む。
【0044】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがアルミニウムを含まない。
【0045】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが1.5重量パーセント〜2.5重量パーセントのネオジムを含む。
【0046】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのカルシウムを含む。
【0047】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが0.1重量パーセント〜1.5重量パーセントのイットリウムを含む。
【0048】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのジルコニウムを含む。
【0049】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、2.01重量パーセントのネオジム、0.60重量パーセントのイットリウム、0.30重量パーセントのジルコニウム、および0.21重量パーセントのカルシウムを含む。
【0050】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、2.01重量パーセントのネオジム、1.04重量パーセントのイットリウム、0.31重量パーセントのジルコニウム、および0.22重量パーセントのカルシウムを含む。
【0051】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがさらに、鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素を含み、この場合、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない。
【0052】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがさらに、0.004重量パーセントの鉄、0.001重量パーセントの銅、0.001重量パーセントのニッケル、および0.003重量パーセントのケイ素を含む。
【0053】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、1.2ジュールよりも大きい衝撃値を特徴とする。
【0054】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、約1.2ジュール〜約2ジュールの範囲にある衝撃値によって特徴づけられ、好ましくは、約1.3ジュール〜約1.8ジュールの範囲ある衝撃値を特徴とする。
【0055】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、80HREよりも大きい硬さを特徴とする。
【0056】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、約80HRE〜約90HREの範囲にある硬さを特徴とする。
【0057】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、200MPaよりも大きい最大抗張力によって特徴づけられ、好ましくは、約200MPa〜約250MPaの最大抗張力を特徴とする。
【0058】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、150MPaよりも大きい引張り降伏強度によって特徴づけられ、好ましくは、約150MPa〜約200MPaの引張り降伏強度を特徴とする。
【0059】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、15パーセントよりも大きい伸び値を特徴とする。
【0060】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に浸漬されたとき、3ml/hour未満の水素発生速度を特徴とする。
【0061】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度での電流を生じさせる。
【0062】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズを特徴とする。
【0063】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがモノリシック構造を有する。
【0064】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが多孔性構造を有する。
【0065】
本発明の別の態様によれば、多孔性構造を有する、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む組成物が提供される。
【0066】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は、約100ミクロン〜約200ミクロンの範囲にある平均孔径を特徴とする。
【0067】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記組成物は、組成物に取り込まれるか、または、組成物に付着する活性な物質を有する。
【0068】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物はさらに、本明細書中に記載されるように、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む。
【0069】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は亜鉛を含まない。
【0070】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物はアルミニウムを含まない。
【0071】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物はさらに、鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素を含み、この場合、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない。
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、コア層と、コア層の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つの被覆層とを含み、コア層が第1のマグネシウム系組成物である物品が提供される。
【0073】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0074】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はさらに、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、この場合、そのような元素のそれぞれの量は、好ましくは、本明細書中に記載される通りである。
【0075】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物は亜鉛を含まない。
【0076】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はアルミニウムを含まない。
【0077】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はさらに、鉄、ニッケル、銅、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素を含み、この場合、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.01重量パーセントを超えない。
【0078】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、第1のマグネシウム系組成物はモノリシック構造を有する。
【0079】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの被覆層は多孔性組成物を含む。
【0080】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は多孔性ポリマーまたは多孔性セラミックを含む。
【0081】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多孔性組成物は、本明細書中に記載されるように多孔性のマグネシウム系組成物である。
【0082】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの被覆層は第2のマグネシウム系組成物を含む。
【0083】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記少なくとも1つの被覆層の腐食速度および前記コア層の腐食速度は互いに異なる。
【0084】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、本明細書中に記載される物品はさらに、前記コア層および/または前記少なくとも1つの被覆層に付着しているか、あるいは取り込まれている少なくとも1つの活性な物質を含む。
【0085】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記物品は医療デバイスであり、例えば、埋め込み可能な医療デバイスなどである。
【0086】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む少なくとも1つのマグネシウム系組成物を含む医療デバイスが提供される。
【0087】
好ましくは、前記組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0088】
本発明のなおさらなる態様によれば、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含み、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とするマグネシウム系組成物を含む医療デバイスが提供される。
【0089】
そのような医療デバイスは好ましくは、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムをさらに含む組成物を含む。
【0090】
本明細書中に記載される医療デバイスが構成される組成物は、好ましくは、本明細書中上記で記載されるような組成(元素およびその量)および特性を特徴とする。
【0091】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、本明細書中に記載されるような医療デバイスは、医療デバイスに結合しているか、または、医療デバイスに取り込まれている少なくとも1つの活性な物質を有する。
【0092】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記医療デバイスはさらに、マグネシウム系組成物の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物を含む。
【0093】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記医療デバイスはさらに、マグネシウム系組成物がその少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物を含む。
【0094】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記医療デバイスは埋め込み可能な医療デバイスであり、例えば、プレート、メッシュ、ネジ、ステープル、ピン、鋲、ロッド、縫合アンカー、吻合用のクリップまたはプラグ、歯科用のインプラントまたはデバイス、大動脈瘤グラフトデバイス、房室間シャント、心臓弁、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイス、関節置換デバイス、組織再生デバイス、血液透析グラフト、留置用動脈カテーテル、留置用静脈カテーテル、ニードル、血管ステント、気管ステント、食道ステント、尿道ステント、直腸ステント、ステントグラフト、合成血管グラフト、チューブ、血管動脈瘤オクルダー、血管クリップ、血管人工フィルター、血管シース、静脈弁、手術用インプラントおよびワイヤなどであり、しかし、これらに限定されない。
【0095】
好ましくは、医療デバイスは整形外科用の埋め込み可能な医療デバイスであり、例えば、プレート、メッシュ、ネジ、ピン、鋲、ロッド、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイスおよび関節置換デバイスなどであるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも60重量パーセントのマグネシウムを含む混合物を鋳造して、それにより、マグネシウム含有鋳造物を得ること、および、このマグネシウム含有鋳造物を、少なくとも1回の押出し処理および少なくとも1回の予熱処理を含む多段階押出し手順に供することを含む、マグネシウム系組成物を調製するプロセスが提供される。
【0097】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記多段階押出し手順は、鋳造物を第1の押出しに供して、それにより、第1の押出しマグネシウム含有組成物を得ること、第1の押出しマグネシウム含有組成物を第1の温度に予熱すること、および、該第1の押出しマグネシウム含有組成物を第2の押出しに供して、それにより、第2の押出しマグネシウム含有組成物を得ることを含む。
【0098】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記多段階押出し手順はさらに、第2の押出しに続いて、第2の押出しマグネシウム含有組成物を第2の温度に予熱すること、および、該第2の押出しマグネシウム含有組成物を第3の押出しに供することを含む。
【0099】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記プロセスはさらに、鋳造に続いて、鋳造物を均質化に供することを含む。
【0100】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記プロセスはさらに、多段階押出し手順に続いて、組成物を応力除去処理に供することを含む。
【0101】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、前記プロセスはさらに、好ましくは、組成物の応力除去処理を行うことに続いて、得られた組成物を表面処理に供することを含む。表面処理は、例えば、本明細書中に記載されるように、化成処理または陽極酸化処理が可能である。
【0102】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0103】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マグネシウム系組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む。
【0104】
記載される好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、マグネシウム系組成物はさらに、好ましくは、本明細書中に記載されるように、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0105】
本発明のなおさらなる態様によれば、本明細書中に記載される組成物、物品または医療デバイスを、損傷された骨の近傍に設置することを含む、損傷された骨を有する対象において骨形成を促進させる方法が提供される。
【0106】
本発明は、当該分野において既知のマグネシウム系組成物よりはるかに優れる、マグネシウム系組成物、そのマグネシウム系組成物から作製される物品、および医療デバイスを提供することによって、現在知られている構成の欠点に首尾良く対処する。
【0107】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。すべての百分率は、別途明記されない限り、重量/重量に基づく。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0108】
本明細書で使用する用語「約」は、±10%を指す。
【0109】
用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0110】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0111】
本明細書中で使用される、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1種の化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0112】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0113】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0114】
用語「方法(method)」または「方法/プロセス(process)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0115】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0116】
図1は、本発明の実施形態による押出しマグネシウム合金の代表的な例を示す写真である。
【0117】
図2a〜図2cは、BMG350の1:500のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、左)および1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、右)、BMG351の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2b)、ならびに、BMG352の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2c)を示す。
【0118】
図3a〜図3bは、本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される浸漬アッセイの実験構成をアッセイ前(図3a)およびアッセイ期間中(図3b)において示す写真である。
【0119】
図4a〜図4bは、本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される電気化学的アッセイの実験構成を示す写真(図4a)、および、例示的な動電位プロット(図4b)である。
【0120】
図5は、合金を37℃で0.9%NaCl溶液に浸け、電位を0.5mV/秒の走査速度で加えたときに得られるBMG350のポテンシオダイナミック分極曲線(青色)、BMG351のポテンシオダイナミック分極曲線(ピンク色)およびBMG352のポテンシオダイナミック分極曲線(黄色)を示す。
【0121】
図6は、埋め込み後30日でWistarラットから外植され、クリーニングに供されたBMG351合金の、1:10のスケール(左、下部画像)および1:50のスケール(右、上部画像)での光学画像である。
【0122】
図7は、マグネシウム合金の削りくずをアルゴン雰囲気および水冷のもとで粉砕したときに得られる、平均粒子サイズが200ミクロンである、イットリウムおよびネオジムを含有するマグネシウム合金(BMG352)粉末のSEM顕微鏡写真である。
【0123】
図8は、多孔性の程度が35%である、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)から形成される例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【0124】
図9は、穴がドリルにより開けられた、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)の別の例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【0125】
図10は、約500μmの孔径を有する、本発明の実施形態による別の多孔性試験片の光学画像を示す。
【0126】
図11a〜図11bは、マグネシウム含有組成物からの水素発生を評価するための例示的な装置(図11a)、および、Piiperら(Journal of applied physiology、17、第2号、268〜274頁)に従った、生理学的環境での水素ガスの吸収についての拡散/灌流モデルの概略図(図11b)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0127】
本発明は、埋め込み可能な医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントなど)を製造するために使用することができる新規なマグネシウム系組成物に関する。具体的には、本発明の実施形態の組成物は、医療適用のために非常に好適である生体適合性、機械的特性および分解速度を特徴とするモノリシック構造物、多孔性構造物および/または多層化構造物を構築するために使用することができる。従って、本発明はさらに、このようなマグネシウム系組成物を含む物品(具体的には医療デバイス)、および、このようなマグネシウム系組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0128】
本発明による組成物、物品、医療デバイスおよびプロセスの原理および操作は、図面および付随する説明を参照して、よりよく理解することができる。
【0129】
本明細書中上記で議論されたように、これまで教示されている様々な生分解性金属合金は、不都合なことに、これらの合金を医療適用(例えば、埋め込み可能なデバイスなど)における使用のために適さないものにする低い生体適合性および/または高い腐食速度を特徴とする。
【0130】
本明細書中上記でさらに議論されたように、生分解性金属デバイスの主要な要件、具体的には、整形外科用インプラントの主要な要件には、毒性元素(例えば、亜鉛およびアルミニウムなど)の非存在、または、最大でも、毒性元素の非毒性量の存在、および、インプラントの医療適用に適する生分解性速度(腐食速度)(これは整形外科用インプラントの場合には12〜24ヶ月である)が含まれる。
【0131】
所望される性質を示す新規な金属合金についての調査において、本発明者らは、それぞれがマグネシウムを組成物の総重量の90重量パーセントよりも高い濃度(好ましくは、95重量パーセントよりも高い濃度)で含む様々な新規な組成物を設計し、首尾よく実施している。これらの組成物はまた、本明細書中では交換可能に、マグネシウム系組成物、マグネシウム合金、マグネシウム含有組成物、マグネシウム含有システムまたはマグネシウム系システムとして示される。
【0132】
本明細書中に記載される組成物は、整形外科用インプラントのために好適である生体適合性および分解動態を示すように特に設計された。従って、このような組成物を設計することにおける主な検討事項は下記の通りであった:
【0133】
整形外科用インプラントの質量が比較的大きいために、組成物を構成する元素組成が、組成物が分解するとき、体内に存在する遊離元素のそれぞれの1日濃度がそれぞれの元素の許容され得る非毒性レベルを越えないように慎重に選択された。この目的のために、各元素の量(濃度)および全体としての組成物の分解動態の両方が検討された。
【0134】
整形外科用インプラントが、骨治癒プロセスが完了するまでフィラーまたは支持材として役立ち、それにもかかわらず、長期間にわたって体内に留まらないという要件のために、組成物の分解動態は、インプラントが、許容され得る時間枠の範囲内で完全に分解されるように選択される。そのような時間枠は典型的には、例えば、埋め込み部位、損傷の性質、および、処置されている個体に関する他の検討事項(例えば、体重、年齢)に従って決定される。それにもかかわらず、好ましくは、そのような時間枠は典型的には6ヶ月〜24ヶ月の範囲であり、好ましくは6ヶ月〜18ヶ月の範囲であり、より好ましくは12ヶ月〜18ヶ月の範囲である。
【0135】
整形外科用インプラントは、損傷した骨が治癒するまで一時的な支持物として働くことを目的とするので、そのようなインプラントは、骨と同様に、実質的な圧力および摩耗に耐えることができなければならず、従って、十分な機械的強度および柔軟性を有しなければならない。
【0136】
それにもかかわらず、本明細書中に記載される組成物はまた、本明細書中下記において詳述されるように、他の物品およびデバイスの製造における使用のために好適である。
【0137】
1つの実施形態において、本明細書中に記載される組成物のそれぞれがさらに、マグネシウムに加えて、本明細書中上記で記載されたように、1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウムおよび0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウムを含む。
【0138】
組成物を構成する元素のそれぞれの量は、十分な生体適合性を組成物に与えるように、その元素の非毒性範囲内で選択される。さらには、これらの元素およびそれらの濃度は、所望される冶金学的特性、機械的特性および分解動態的特性を組成物に与えるように選択される。1つの実施形態において、これらの元素のそれぞれの量は、これらの元素が、マグネシウム分解に合わせて並行して分解するように選択される。
【0139】
従って、例えば、主要な合金用元素はイットリウムおよびネオジムであり、これらが、十分な機械的強度および耐食性を合金に与える。カルシウムが、合金の鋳造時における酸化を防止するために低い量で使用され、ジルコニウムが結晶成長抑制剤として役立ち、合金の機械的特性を改善する。
【0140】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるネオジムの量は組成物の総重量の1.5重量パーセント〜4重量パーセントの範囲であり、より好ましくは1.5重量パーセント〜2.5重量パーセントの範囲である。
【0141】
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるカルシウムの量は組成物の総重量の0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントの範囲である。
【0142】
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるイットリウムの量は組成物の総重量の0.1重量パーセント〜2重量パーセントの範囲であり、より好ましくは0.1重量パーセント〜1.5重量パーセントの範囲である。
【0143】
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物におけるジルコニウムの量は組成物の総重量の0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントの範囲である。
【0144】
本明細書中に記載されるマグネシウム系組成物の代表的な一例は、マグネシウムに加えて、2.01重量パーセントのネオジム、0.60重量パーセントのイットリウム、0.30重量パーセントのジルコニウムおよび0.21重量パーセントのカルシウムを含む。
【0145】
本明細書中に記載されるマグネシウム系組成物の別の代表的な一例は、マグネシウムに加えて、2.01重量パーセントのネオジム、1.04重量パーセントのイットリウム、0.31重量パーセントのジルコニウムおよび0.22重量パーセントのカルシウムを含む。
【0146】
本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、好ましくは、1つまたは複数の重元素をさらに含み、これらは典型的には、マグネシウム抽出プロセスに由来する残存成分である。例示的な重元素には、鉄、銅、ニッケルまたはケイ素が含まれる。そのような元素は合金の耐食性に対する大きな効果(これは1桁またはそれ以上の変化によって明らかにされ得る)を有するので、これらの重元素のそれぞれの濃度は好ましくは、組成物の所望される耐食性を得るように、できる限り低いレベルで維持される。従って、好ましくは、これらの重元素のそれぞれの濃度はppm(百万分率)レベルの範囲であり、組成物の総重量の0.005重量パーセントを超えない。
【0147】
代表的な一例において、本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、0.004重量パーセントの鉄、0.001重量パーセントの銅、0.001重量パーセントのニッケルおよび0.003重量パーセントのケイ素を含む。
【0148】
本明細書中に記載される組成物に含むことができるさらなる元素には、組成物が、体内に存在する遊離元素の1日濃度がその許容され得る非毒性レベルを越えないように設計される限り、3重量パーセントまでの範囲にある量でのストロンチウム、1重量パーセントまでの範囲にある量でのマンガン、および、1重量パーセントまでの範囲にある量での銀がある。
【0149】
本明細書中に記載される組成物は好都合なことに、多くの医療適用のために非常に好適であり、また、整形外科用インプラントのために特に好適である分解動態を特徴とする。
【0150】
本明細書中に記載される組成物の腐食速度は、典型的には、様々な国際的規格に従って試験され、求められる。これらには、例えば、ASTM G15−93(これは、腐食および腐食試験に関連する標準的用語を説明する);ASTM G5−94(これは、定電位陽極分極測定および動電位陽極分極測定を行うための指針を提供する);ASTM G3−89(これは、腐食試験における電気化学的測定に適用可能な従来法を説明する);Ghaliら、“Testing of General and localized Corrosion of Magnesium allys: A critical Review“、ASM international、2004;ISO10993−15、医療デバイスの生物学的評価のための試験、金属および合金からの分解産物の特定および定量;およびASTM G31−72(これは、金属の実験室腐食試験のための標準的実施書である)が含まれる。
【0151】
ASTM G31−72は、実験室での浸漬腐食試験(具体的には、質量喪失試験)のための受け入れられる手順、および、そのような試験に影響を及ぼす要因を記載する実施書である。これらの要因には、試験片調製、装置、試験条件、試験片の清浄化方法、結果の評価、ならびに、腐食速度の計算および報告が含まれる(www.astm.org参照)。
【0152】
従って、別の実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、ASTM G31−72に従って行われる浸漬実験によって測定される場合、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されるとき、約0.5mcd〜約1.5mcd(mcd=ミリグラム/平方センチメートル/日)の範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0153】
従って、およそ7グラムの重量および35cm2の表面積を有する医療デバイス(例えば、整形外科用インプラント)を考えると、そのような医療デバイスの完全な分解が、8から47ヶ月に及ぶ期間の範囲内で生じる。
【0154】
好ましい実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、本明細書中上記に記載される浸漬アッセイによって測定される場合、約0.8mcd〜約1.2mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0155】
別の好ましい実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、本明細書中下記において記載されるように、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に37℃で浸漬されるとき、本明細書中上記に記載される浸漬アッセイによって測定される場合、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0156】
具体的な一例において、本明細書中ではBMG350およびBMG351として示される本明細書中に記載される組成物の代表的な例は、それらが14グラムの重量および33cm2の表面積を有する場合、本明細書中上記で記載される浸漬アッセイによって測定された場合、1.02mcdおよび0.83mcdの腐食速度をそれぞれ示すことが見出された(実施例2の表4参照)。これらの値は約13.7ヶ月および16.7ヶ月の分解期間にそれぞれ対応し、これらは、本明細書中上記で議論されたように、医療デバイス(例えば、整形外科用インプラントなど)のために非常に望ましい。
【0157】
これらの組成物はさらに、実験室ラットで行われたインビボアッセイにおいて、約0.1mcd〜0.2mcdの腐食速度を示すことが見出された。
【0158】
代替として、または、好ましくは加えて、組成物は、電気化学的アッセイで測定される場合、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されるときには1時間の安定化時間の後、電位が0.5mV/秒の速度で加えられるとき、約0.2mcd〜約0.4mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。そのような電気化学的アッセイ、および、腐食アッセイと、電気化学的アッセイとの間における関係の詳細な議論については、下記の実施例の節における実施例2を参照願いたい。
【0159】
好ましい実施形態において、本発明の実施形態による組成物は、本明細書中上記に記載される電気化学的アッセイによって測定される場合、約0.3mcd〜約0.35mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする。
【0160】
様々なマグネシウム系システムを医療適用において使用することによって、整形外科用インプラントの分解動態(腐食速度)に関して本明細書中上記で議論された所望されるパラメーターに加えて、水素の発生もまた考慮されなければならない。本明細書中上記で議論されたように、マグネシウムの分解では、水素が放出されるプロセスを伴うので、腐食速度を、水素形成速度が適合可能であるように、また、大量の水素気泡が皮下に蓄積しないようにすることが非常に望ましい。
【0161】
下記の実施例の節において明らかにされるように(実施例7を参照のこと)、本発明の実施形態による例示的なマグネシウム系システムの水素発生速度が、ヒトの水素吸収能を計算するために適合化されたモデルにおいて測定され、そのモデルで得られたデータに対して比較された。得られた結果は、本明細書中に示されるマグネシウム含有組成物の水素発生速度がヒトの水素吸収能よりも十分に小さいことを明瞭に示した。
【0162】
従って、好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、7.4のpHを有するPBS(リン酸塩緩衝化生理的食塩水)溶液に浸漬されたとき、3ml/hourよりも低い水素発生速度によって、好ましくは、2ml/hourよりも低い水素発生速度によって、より好ましくは、1.65ml/hourよりも低い水素発生速度によって、一層より好ましくは、1.2ml/hourよりも低い水素発生速度を特徴とする。1つの好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、0.2ml/hour〜1.5ml/hourの範囲にある水素発生速度を特徴とする。
【0163】
本明細書中上記で議論されたように、本明細書中に記載される組成物の腐食速度は、合金を構成する様々な成分の量を操作することによって所望する通りに制御することができる。それにもかかわらず、現在知られているマグネシウム合金はどれも、例えば、本明細書中に記載される組成物の代表的な例などについて得られる比較的低い腐食速度(比較的大きい耐食性)を示さないことには留意しなければならない。
【0164】
本明細書中に記載される組成物は、さらに好都合なことに、これらの組成物を医療適用における使用のために非常に好適にする機械的特性を特徴とする。
【0165】
従って、好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、1.2ジュールよりも大きい衝撃値によって特徴づけられ、例えば、約1.2ジュール〜約2ジュールの範囲にある衝撃値によって、より好ましくは、約1.3ジュール〜約1.8ジュールの範囲ある衝撃値を特徴とする。
【0166】
本明細書中で使用される表現「衝撃」は、応力集中部分または切欠きが存在するとき、材料がエネルギーを吸収することができることを表す。衝撃は典型的には、シャルピーV字型切欠き試験、動的引裂き試験、落重試験および落重引裂き試験によって測定される。本明細書中では、衝撃は、振り子からの衝撃に対する材料の抵抗性を測定する切欠きアイゾッド衝撃として表される。
【0167】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、80HREよりも大きい硬度を特徴とし、例えば、約80HRE〜約90HREの範囲にある硬度を特徴とする。
【0168】
本明細書中で使用される表現「硬さ」は、永久的変形に対する固体材料の抵抗性を表す。硬さは、相対的なスケールを使用して測定される。本明細書中で使用される表現のHREは、1/8”のボール圧子を100Kgの力荷重で使用するロックウェル硬度Eスケールを表す。
【0169】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、200MPaよりも大きい最大抗張力によって特徴づけられ、例えば、約200MPa〜約250MPaの範囲にある最大抗張力を特徴とする。
【0170】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、150MPaよりも大きい引張り降伏強さによって特徴づけられ、例えば、約150MPa〜約200MPaの範囲にある引張り降伏強さを特徴とする。
【0171】
本明細書中で使用される表現「引張り降伏強さ」は、材料が降伏点に達する前に、材料が受けることができる引張り応力の最大量を表す。引張り強さは応力−ひずみ曲線から実験的に求めることができ、単位面積あたりの力(例えば、ニュートン/平方メートル(N/m2)またはパスカル(Pa))の単位で表される。
【0172】
本明細書中で使用される表現「最大抗張力」は、材料が降伏点の後で受けることができる引張り応力の最大量を表し、この場合、ひずみを受けている合金は、最大抗張力点にまで硬くなる。材料が最大抗張力点で無荷重であるならば、応力−ひずみ曲線は、原点と降伏点との間における曲線のそのような部分に平行である。材料に再び荷重がかけられるならば、材料は、新しい降伏強さになる極限強さにまで再び荷重除去曲線に従う。最大抗張力は、本明細書中上記で記載されたように、応力−ひずみ曲線から実験的に求めることができ、単位面積あたりの力の単位で表される。
【0173】
さらに好ましくは、本発明の実施形態による組成物は、15パーセントよりも大きい伸び値によって特徴づけられ、より好ましくは、約15パーセント〜約20パーセントの範囲にある伸び値を特徴とする。
【0174】
本明細書中で使用される表現「伸び」は、物質(本明細書中では合金)の延性の目安として一般に使用され、引張り試験において破断するまで伸ばされている試験片の永久的伸長を表す。伸びは、典型的には、元の長さの百分率として表される。
【0175】
これらの値は、本明細書中に記載される組成物が、医療適用のために、具体的には、整形外科用インプラントのために非常に好適である機械的強度および柔軟性を特徴とすることを明瞭に示している。
【0176】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本明細書中に記載される組成物は、さらに有益には、「電流生成効果」を有するとして、すなわち、電流をその分解プロセスの期間中に生じさせるとして特徴づけられることが見出されている。測定では、これらの組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されるとき、電流を、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることが示されている。測定ではまた、これらの組成物は、PBS(pH=7.4)に37℃で浸漬されるとき、電流を、約18μA/cm2〜約60μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることが示されている。
【0177】
本明細書中上記で議論されたように、また、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、そのような電流密度は、損傷した骨の部位またはその近傍で生じるとき、骨細胞の成長を促進させる。従って、例えば、整形外科用デバイスとして使用されるとき、本明細書中に記載される組成物は、支持用マトリックスとしてだけでなく、骨治癒プロセスを加速させる骨成長促進マトリックスとしても役立ち得る。さらに、これらの組成物は、例えば、骨粗鬆症を治療または予防するために使用することができる。
【0178】
本明細書中に記載される組成物が調製されるプロセスに依存して、本明細書中下記において詳述されるように、本明細書中に記載される組成物は、様々な微細構造を有するように設計することができる。
【0179】
従って、例えば、通常の鋳造/鍛造によって作製される合金は約10マイクロメートル〜約300マイクロメートルの平均結晶粒サイズをもたらす。急速凝固によって作製される合金は5マイクロメートルまでの平均結晶粒サイズをもたらす。ナノサイズの結晶粒もまた得ることができ、この場合には、約100ナノメートルまでの平均結晶粒サイズを有する。本明細書中に記載される組成物の機械的特性は、合金における平均結晶粒サイズに依存し、典型的には、結晶粒サイズが小さくなるにつれ、改善される。
【0180】
従って、本明細書中に記載される組成物は、約10ナノメートル〜約1000ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズによって、好ましくは、約10ナノメートル〜約100ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズによって、より好ましくは、約50ナノメートル〜約50ミクロンの範囲にある平均結晶粒サイズを特徴とする。
【0181】
本明細書中で使用される用語「結晶粒」は、双晶化領域および亜結晶粒の含有の有無にかかわりなく、また、原子が規則正しいパターンで配置される多結晶性の金属または合金における個々の粒子を表す。
【0182】
調製経路にさらに依存して、本明細書中に記載される組成物はモノリシック構造または多孔性構造のいずれかを有することができる。
【0183】
本明細書中で使用される表現「モノリシック構造」は、連続する一体型の統合された固体構造を表す。モノリシック構造は、典型的には、比較的大きい嵩密度および機械的特性(例えば、硬度、衝撃、引張りおよび伸び強度など)を特徴とする。
【0184】
本明細書中で使用される用語「多孔性」は、固体材料(例えば、発泡体など)、スポンジ状材料、または、固体物の内部に埋め込まれ、乱雑に分散される気泡の泡状塊のコンシステンシーを表す。多孔性物質は、典型的には、また、好都合には、モノリシック構造と比較した場合、表面積がより大きく、流体吸収がより大きいことを特徴とする。
【0185】
従って、別の実施形態において、組成物は多孔性構造を有する。
【0186】
多孔性構造は、付加された効果を組成物に与えることができる様々な物質を組成物の細孔の内部に取り込むことを可能にする。そのような物質は、例えば、本明細書中下記において詳述されるような生物学的に活性な物質、ならびに/あるいは、組成物に、例えば、生体適合性改善、分解動態および/または機械的特性を与える薬剤が可能である。そのような物質は、代替として、または、加えて、例えば、その多孔性表面に堆積または付着することによって組成物に結合させることができる。
【0187】
多孔性構造の多孔性および孔サイズ分布は、多孔性組成物の調製時において制御することができ、必要な場合には、また、好ましくは、取り込まれる物質の構造的特徴および/または生物学的特徴に従って設計される。
【0188】
一般には、多孔性構造における平均孔径は、本発明の好ましい実施形態によれば、1ミクロン〜1000ミクロンの範囲であり得る。本発明の実施形態によれば、多孔性構造における平均孔径は、封入する薬剤の所望の負荷プロフィルおよび放出プロフィルを可能にするように制御することができる。従って、例えば、閉じ込められる薬剤が小分子(例えば、抗生物質などの薬物)である場合、好ましい平均孔径は約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲である。封入する薬剤が細胞を含む場合には、100ミクロン以上の平均孔径を有する、より大きい孔が好ましい。
【0189】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるような多孔性組成物は、約100ミクロン〜約200ミクロンの範囲である平均孔径を特徴とする。
【0190】
多孔性組成物は、本発明の実施形態によれば、少なくとも95重量パーセントマグネシウムを含む。本明細書中に記載される多孔性組成物を構成する他の元素は、好ましくは、本明細書中上記で記載される通りである。
【0191】
本明細書中に記載される組成物のそれぞれが、さらに好都合なことに、亜鉛を含まないとして特徴づけられる。
【0192】
本明細書中で使用される表現「を含まない」は、元素に関しては、組成物内におけるこの元素の濃度が10ppm未満であり、好ましくは5ppm未満であり、より好ましくは1ppm未満であり、より好ましくは0.1ppm未満であり、最も好ましくはゼロであることを意味する。
【0193】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物はさらに、アルミニウムを含まない。この分野では広く知られているように、市販のマグネシウム合金のほとんどが実質的な量(例えば、100ppm超)の亜鉛およびアルミニウムを含有する。これらのマグネシウム合金は多くの場合、医療適用のためのマグネシウム系組成物を構成するための出発材料として使用される。亜鉛およびアルミニウムの望ましくない毒性のために、そのような組成物は、インプラントの実質的な量および比較的長期にわたる分解時間が必要な適用(例えば、整形外科用インプラントなど)において使用されるときには特に、不適切な生体適合性を有すると考えられる。
【0194】
従って、亜鉛および/またはアルミニウムを含まないマグネシウム系組成物が非常に好都合であることは明白である。
【0195】
本明細書中に記載される組成物は、2つ以上の層(そのうちの少なくとも1つが本明細書中に記載されるようなマグネシウム系組成物である)が、例えば、コア/被覆構造として構築される多層化された物品を形成するために利用することができる。
【0196】
従って、本発明の別の側面によれば、コア層と、コア層の少なくとも一部分に適用されている少なくとも1つの被覆層とを含む物品が提供される。
【0197】
従って、物品は、本発明のこれらの実施形態によれば、コア層、および、コア層に適用される1つの被覆層、または、代替として、それぞれがコア層の異なる部分に適用される2つ以上の被覆層から構成される二層化された物品が可能である。物品は、代替として、コア層と、コア層にその後に順次適用される2層以上(例えば、3層、4層、5層など)の被覆層とから構成される多層化された物品が可能である。
【0198】
本明細書中に記載される物品におけるコア層はマグネシウム系組成物であり、本明細書中では第1のマグネシウム系組成物として示される。
【0199】
第1のマグネシウム系組成物は、好ましくは、組成物について本明細書中上記で記載されたように、少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含み、また、ネオジム、イットリウム、ジルコニウムおよび/またはカルシウムをさらに含むことができる。
【0200】
第1のマグネシウム系組成物はさらに、本明細書中上記で記載されたように、1つまたは複数の重元素(例えば、鉄、ニッケル、銅およびケイ素など)を含むことができる。
【0201】
マグネシウム系の第1の組成物に適用される1つまたは複数の被覆層のそれぞれを、最終的な物品の所望の特徴に従って選択または設計することができる。好ましくは、被覆層は生体適合性材料から作製される。
【0202】
従って、例えば、1つの実施形態において、第1のマグネシウム系組成物はモノリシック構造を有し、被覆層は多孔性組成物を含む。そのような物品は、活性な物質を多孔性層に取り込むために使用することができるか、または、それぞれが異なる層に取り込まれる多数の異なる活性な物質を取り込むために使用することができる。従って、そのような物品は、モノリシック構造起因すると考えられる機械的特性と、多孔性の被覆層に起因すると考えられる、活性な物質を放出する能力とを特徴とする。
【0203】
被覆層を構成する多孔性組成物は、例えば、多孔性ポリマーおよび/または多孔性セラミックから構成され得る。代表的な例には、限定されないが、ポリイミド、ヒドロキシアパタイト、ゼラチン、ポリアクリレート、ポリグリコール酸およびポリラクチドなどが含まれる。そのような被覆を様々な方法論によって適用することができ、例えば、J.E.Gray、“Protective coatings on magnesium and its alloys − a critical review“、Journal of alloys and compounds、336(2002)、88頁〜113頁に記載される方法論などによって適用することができ、また、そのような被覆を使用して、その結果、生体適合性を物品に与えるようにすることができ、かつ/または、物品の腐食分解動態を調節するようにすることができる。従って、例えば、物品が埋め込み可能なデバイスであるか、または、埋め込み可能なデバイスの一部を形成する場合において、そのような被覆層は、少なくとも埋め込み時に、また、デバイスが再吸収されるまで、改善された生体適合性を物品に与えるように選択することができる。被覆層はさらに、物品の腐食速度を少なくとも埋め込み後の最初の期間の期間中において低下させるように選択することができる。
【0204】
好ましい実施形態において、多孔性組成物は、多孔性のマグネシウム系組成物、好ましくは、本明細書中上記で記載されるような多孔性マグネシウム系組成物であり、本明細書中では第2のマグネシウム系組成物として示される。第2のマグネシウム系組成物は、場合により、および、好ましくは、第2のマグネシウム系組成物に付着するか、または、第2のマグネシウム系組成物に取り込まれる活性な物質を含む。
【0205】
代替として、または、上記に加えて、別の実施形態において、コア層および被覆層(1つまたは複数)は、被覆層(1つまたは複数)の腐食速度およびコア層の腐食速度が互いに異なるように選択され、その結果、分解動態の細かく制御されたシーケンスを提供するようにされる。
【0206】
被覆層のそれぞれが、この実施形態によれば、本明細書中上記で記載されたようにポリマー物質またはセラミック物質であり得るか、あるいは、場合により、および、好ましくは、(第1のマグネシウム系組成物とは異なる)1つまたは複数のマグネシウム系組成物(これらは、本明細書中では、第2、第3、第4などのマグネシウム系組成物として示される)であり得る。
【0207】
一例において、物品は、それぞれが異なる腐食速度を特徴とする本明細書中に記載されるような2つ以上のマグネシウム系組成物を含む。本明細書中上記で詳しく議論されたように、そのような組成物の腐食速度は、そのマグネシウム合金を構成する成分を選択することによって制御することができ、例えば、重元素の含有量を決定することによって制御することができる。
【0208】
1つの例示的な物品において、コア層は、鉄の含有量が、例えば、100〜500ppmである、本明細書中に記載されるような第1のマグネシウム系組成物を含み、被覆層は、鉄の含有量が、例えば、50ppmである、本明細書中に記載されるような第2のマグネシウム系組成物を含む。生理学的条件下において、被覆層は比較的遅い速度で最初に分解し、そして、被覆層が分解したとき、コア層がそれよりも速く分解する。そのような制御された分解動態は、物品が整形外科用インプラントとして使用される場合には非常に望ましい。これは、物品が骨治癒プロセスに適合するからである。
【0209】
多孔性またはモノリシック型のマグネシウム系コア層と、多孔性またはモノリシック型の被覆層との他の組合せもまた、本明細書中では包含される。
【0210】
本明細書中上記で議論されたように、物品は、好都合には、1つまたは複数の活性な物質をさらに含むことができる。活性な物質は、物品の所望される特徴および活性な物質の所望される放出動態に依存して、コア層および/または被覆層のそれぞれに結合させることができ、あるいは、コア層および/または被覆層のそれぞれに取り込むことができる。
【0211】
本明細書中上記で述べられたように、本明細書中に記載される組成物および物品のそれぞれが、医療デバイスを形成するために、具体的には、埋め込み可能な医療デバイスを形成するために都合よく利用され得る。
【0212】
従って、本発明のさらなる側面によれば、本明細書中に記載されるマグネシウム系組成物の1つまたは複数を含む医療デバイスが提供される。
【0213】
医療デバイスは、1つだけのマグネシウム系組成物を含むことができ、または、本明細書中上記の物品について記載されたような多層化された構造を有することができる。
【0214】
本明細書中に記載される組成物および物品が有益に使用され得る医療デバイスの代表的な例には、限定されないが、プレート、メッシュ、ステープル、ネジ、ピン、鋲、ロッド、縫合アンカー、吻合用のクリップまたはプラグ、歯科用のインプラントまたはデバイス、大動脈瘤グラフトデバイス、房室間シャント、心臓弁、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイス、関節置換デバイス、組織再生デバイス、血液透析グラフト、留置用動脈カテーテル、留置用静脈カテーテル、ニードル、血管ステント、気管ステント、食道ステント、尿道ステント、直腸ステント、ステントグラフト、合成血管グラフト、チューブ、血管動脈瘤オクルダー、血管クリップ、血管人工フィルター、血管シース、静脈弁、手術用インプラントおよびワイヤが含まれる。
【0215】
本発明の好ましい実施形態によれば、医療デバイスは整形外科用の埋め込み可能な医療デバイスであり、例えば、プレート、メッシュ、ステープル、ネジ、ピン、鋲、ロッド、骨折治癒用デバイス、骨置換デバイスおよび関節置換デバイスなどであるが、これらに限定されない。
【0216】
本明細書中に記載される医療デバイスは、それに付着している少なくとも1つの活性な物質を有することができる。活性な物質はマグネシウム系組成物の表面に結合させることができるか、または、多孔性のマグネシウム系組成物の場合には、孔内に封入することができる。
【0217】
本明細書中で使用される表現「活性な物質」は、1つまたは複数の有益な活性(例えば、治療活性、診断活性、生体適合性、腐食動態調節、疎水性、親水性、表面改質および審美的特性など)を及ぼす分子、化合物、複合体、付加物および/または混合物を表す。
【0218】
治療活性を及ぼす活性な物質はまた、本明細書中では交換可能に、「生物活性剤」、「医薬活性剤」、「医薬活性物質」、「治療活性剤」、「生物学的活性剤」、「治療剤」、「薬物」および他の関連した用語として示され、例えば、遺伝子治療剤、非遺伝子治療剤および細胞を包含する。本発明に従って有用である生物活性剤は単独または組合せで使用することができる。本発明の関連における用語「生物活性剤」にはまた、放射線治療のために役立ち得る放射性物質が含まれ、この場合、そのような物質は、有害な組織(例えば、腫瘍など)を局所的領域において破壊するために、または、例えば、最新のステント適用などでは健康な組織の成長を阻害するために利用され、あるいは、核医学および放射線イメージングにおいて使用されるバイオマーカーとして利用される。
【0219】
本明細書中に記載される組成物、物品またはデバイスに有益に取り込まれ得る生物活性剤の代表的な例には、限定されないが、骨成長促進剤(例えば、増殖因子、骨形態形成タンパク質および骨幹細胞など)、血管生成促進剤、サイトカイン、ケモカイン、化学誘因物質、化学忌避物質、薬物、タンパク質、アゴニスト、アミノ酸、アンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗体、抗原、抗うつ剤、免疫抑制剤、抗高血圧剤、抗炎症剤、抗酸化剤、抗増殖剤、アンチセンス、抗ウイルス剤、化学療法剤、補因子、脂肪酸、ハプテン、ホルモン、阻害剤、リガンド、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、標識されたオリゴヌクレオチド、核酸構成物、ペプチド、ポリペプチド、酵素、糖類、多糖類、放射性同位体、放射性医薬品、ステロイド、トキシン、ビタミン、ウイルス、細胞、および、これらの任意の組合せが含まれる。
【0220】
本明細書中に記載される組成物、物品および医療デバイスに有益に取り込まれ得るか、または結合され得る活性な物質の1つのクラスが、様々な骨成長促進剤である。これらには、例えば、増殖因子が含まれ、例えば、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15およびBMP−16など)、ならびに、軟骨誘導因子−A、軟骨誘導因子−B、類骨誘導因子、コラーゲン増殖因子およびオステオゲニンなどが含まれるが、これらに限定されない。代替として、または、加えて、いずれかのBMPの上流側または下流側の作用を誘導することができる分子が提供され得る。そのような分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質、または、それらをコードするDNAのいずれかが含まれる。
【0221】
一般に、TGFが、細胞増殖、遺伝子発現およびマトリックスタンパク質合成に影響を及ぼすことによって組織治癒を調節することにおいて中心的役割を果たし、BMPが細胞の複製を引き起こす遺伝子発現を開始させ、BDGFが、細胞複製の速度を加速させるために、既に活性な遺伝子の活性を増大させる作用因子である。上記増殖因子のすべてを天然の供給源(例えば、哺乳動物組織)から単離することができ、または、組換えペプチドとして製造することができる。
【0222】
従って、活性な物質は、代替では、本明細書中上記で記載された増殖因子を発現および分泌する細胞タイプが可能である。このような細胞には、増殖因子を産生し、細胞質での位置から細胞質以外の位置へのその転位を誘導する細胞が含まれる。そのような細胞には、増殖因子を自然の状態で発現および分泌する細胞、または、増殖因子を発現および分泌するように遺伝子修飾される細胞が含まれる。そのような細胞はこの分野では広く知られている。
【0223】
活性な物質はさらには、骨幹細胞が可能である。この分野において知られているような骨幹細胞には、骨形成細胞として特徴づけられる、骨髄間質細胞の骨形成性の亜集団が含まれる。骨幹細胞には、骨形成性の骨形成細胞それ自体、および/または、骨幹細胞を形成する胚性幹細胞が含まれ得る。骨幹細胞は、例えば、Butteryら(2001)、Thompsonら(1998)、Amitら(2000)、Schuldinerら(2000)およびKehatら(2001)において記載されるように、様々な公知の手法を使用して単離することができる。そのような細胞は好ましくは自家供給源の細胞であり、これらには、例えば、ヒト胚性幹細胞、マウスまたはヒトの骨幹細胞、マウスまたはヒトの骨幹細胞性骨髄由来細胞、マウスまたはヒトの骨幹細胞性胚由来細胞、および、マウスまたはヒトの胚細胞が含まれる。これらの細胞はさらに、成長因子を分泌する細胞として役立ち得る。
【0224】
本明細書中に記載される組成物、物品および医療デバイスに有益に取り込まれ得るか、または結合され得る活性な物質のさらなるクラスには、抗生物質が含まれる。好ましくは、活性な物質には、骨または周囲の組織に典型的な広範囲の細菌感染をカバーする抗生物質または抗生物質の組合せが含まれる。
【0225】
本発明の実施形態のこの関連において利用することができる好適な抗生物質の例には、例えば、アミノグリコシド系、ペニシリン系、セファロスポリン系、半合成ペニシリン系およびキノリン系の抗生物質が含まれる。
【0226】
好ましくは、本発明では、骨または周囲の組織に典型的な広範囲の細菌感染をカバーする抗生物質または抗生物質の組合せが利用される。好ましくは、これらの抗生物質のなかでも、足場から効率的に放出されるタイプが選択される。
【0227】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる活性な物質のさらなる例には、ポリマー薬剤(例えば、タンパク質、酵素)および非ポリマー薬剤(例えば、小分子治療剤)の両方を含み、Caチャネルブロッカー、セロトニン経路モデュレータ、環状ヌクレオチド経路薬剤、カテコールアミンモデュレータ、エンドセリン受容体拮抗剤、一酸化窒素ドナー/放出分子、麻酔薬、ACE阻害剤、ATII受容体拮抗剤、血小板粘着阻害剤、血小板凝集抑制剤、凝固経路モデュレータ、シクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、天然および合成コルチコステロイド、リポキシゲナーゼ経路阻害剤、ロイコトリエン受容体拮抗剤、E−およびP−セレクチンの拮抗剤、VCAM−1およびICAM−1相互作用の阻害剤、プロスタグランジンおよびその類似体、マクロファージ活性化阻止剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、魚油およびオメガ−3−脂肪酸、フリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、様々な成長因子に影響を及ぼす薬剤(FGF経路薬剤、PDGF受容体拮抗剤、IGF経路薬剤、TGF―β経路薬剤、EGF経路薬剤、TNF−α経路薬剤、トロンボキサンA2[TXA2]経路モデュレータ、およびタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を含む)、MMP経路薬剤、細胞運動阻害剤、抗炎症剤、抗増殖/抗新生物薬、マトリックス沈着/組織化経路阻害剤、内皮形成促進剤、血液レオロジーモデュレータ、ならびに、インテグリン、ケモカインおよび増殖因子が含まれる。
【0228】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる血管新生促進剤の非限定的な例としては、血管内皮増殖因子(VEGF)または血管透過性因子(VPF);酸性線維芽細胞増殖因子(AFGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む線維芽細胞成長因子ファミリーのメンバー;インターロイキン8(IL−8);上皮細胞増殖因子(EGF);血小板由来増殖因子(PDGF)または血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF);形質転換増殖因子αおよびβ(TGF−α、TGF−β);腫瘍壊死因子α(TNF−α);肝細胞増殖因子(HGF);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);インスリン様成長因子−1(IGF−1);アンジオゲニン;アンジオトロピン;およびフィブリンおよびニコチンアミドが含まれる。
【0229】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができるサイトカインおよびケモカインの非限定的な例としては、アンジオゲニン、カルシトニン、ECGF、EGF、E−セレクチン、L−セレクチン、FGF、FGF塩基、G−CSF、GM−CSF、GRO、ヒルジン、ICAM−I、IFN、IFN−γ、IGF−I、IGF−II、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、M−CSF、MIF、MIP−1、MIP−1α、MIP−1β、NGF鎖、NT−3、PDGF−α、PDGF−β、PECAM、RANTES、TGF−α、TGF−β、TNF−α、TNF−β、TNF−κ、およびVCAM−1が含まれる。
【0230】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができるさらなる活性な物質には、遺伝子治療剤およびリボザイムなどのタンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、およびゲノムDNA、cDNAまたはRNAなどの特定の生成物をコードするポリヌクレオチド(組み換え核酸を含む)が含まれる。ポリヌクレオチドは、「裸の」形態でまたはポリヌクレオチドの組み込みおよび発現を増強するベクター系と共に提供されることができる。これらは、DNA凝縮剤(ヒストンなど)、非感染性ベクター(プラスミド、脂質、リポソーム、カチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質など)、およびウイルスおよびウイルス様粒子などのウイルスベクター(つまりウイルスのように作用するように作られた合成粒子)を含むことができる。ベクターは、付着ペプチド標的配列、アンチセンス核酸(DNAとRNA)、およびDNAキメラをさらに含んでいてもよく、それは不完全で欠陥のある内在性分子を取り替えるための膜転位配列(「MTS」)、tRNAまたはrRNAなどの輸送タンパク質をコードする遺伝子配列および単純疱疹ウイルス−1(「VP22」)を含む。
【0231】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができるウイルスおよび非ウイルス性のベクターには、限定されないが、アデノウイルス、腸アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルスなど)、レンチウイルス、単純疱疹ウイルス、生体外修飾細胞(すなわち、幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、マクロファージ、他)、複製型ウイルス(ONYX−015など)、およびハイブリッドベクター、人工染色体およびミニ染色体、プラスミドDNAベクター(pCOR)、カチオン性ポリマー(ポリエチレンイミン、ポリエーテル−PEIおよびポリエチレンオキシド−PEIなどのポリエチレンイミン(PEI)グラフトコポリマー、中性ポリマーPVP、SP1017(SUPRATEK)、脂質またはリポプレックス、タンパク質形質導入領域(PTD)などの標的配列を有するまたは有しないナノ粒子およびミクロ粒子が含まれる。
【0232】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的化学療法剤には、限定されないが、アミノ含有化学療法剤、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、N−(5,5−ジアセトキシペンチル)ドキソルビシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、9−アミノカンプトテシン、アミノペルチン、アンチノマイシン、N8−アセチルスペルミジン、1−(2−クロロエチル)−1,2−ジメタンスルホニルヒドラジン、ブレオマイシン、タリソマイシンおよびその誘導体など;ヒドロキシ含有化学療法剤、例えばエトポシド、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エスペラマイシン、1,8−ジヒドロキシ−ビシクロ[7.3.1]トリデカ−4−エン−2,6−ジイン−13−オン、アングイジン、モルホリノ−ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、およびそれらの誘導体;スルフヒドリル含有化学療法剤およびカルボキシル含有化学療法剤が含まれる。
【0233】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的非ステロイド系抗炎症薬物には、限定されないが、オキシカム系、例えば、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカムおよびCP−14,304など;サリチル酸系、例えば、アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサールおよびフェンドサールなど;酢酸誘導体、例えば、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナクおよびケトロラクなど;フェナム酸系、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸など;プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェンおよびチアプロフェニクなど;ピロゾール系、例えば、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾンおよびトリメタゾンなどが含まれる。
【0234】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的ステロイド系抗炎症薬物には、限定されないが、コルチコステロイド系、例えば、ヒドロコルチゾン、ヒドロキシトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デスオキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルアンドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアンドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルアドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾンおよびそのエステルの残り、クロロプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタマート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、および、これらの混合物が含まれる。
【0235】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的抗酸化剤には、限定されないが、アスコルビン酸(ビタミンC)およびその塩、脂肪酸のアスコルビン酸エステル、アスコルビン酸誘導体(例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、ソルビン酸アスコルビル)、トコフェロール(ビタミンE)、ソルビン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールの他のエステル、ブチル化ヒドロキシ安息香酸およびそれらの塩、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(Trolox(登録商標)の商品名で市販されている)、没食子酸およびそのアルキルエステル、特に没食子酸プロピル、尿酸およびその塩およびアルキルエステル、ソルビン酸およびその塩、リポ酸、アミン(例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アミノ−グアニジン)、スルフヒドリル化合物(例えばグルタチオン)、ジヒドロキシフマル酸およびその塩、リシンピドレート、アルギニンピロレート、ノルジヒドログアイアレチン酸、ビオフラボノイド、クルクミン、リジン、メチオニン、プロリン、スーパーオキシドディスムターゼ、シリマリン、茶抽出物、ブドウ果皮/種子抽出物、メラニン、およびローズマリー抽出物が含まれる。
【0236】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的ビタミンには、限定されないが、ビタミンAおよびその類似体および誘導体:レチノール、レチナール、パルミチン酸レチニール、レチノイン酸、トレチノイン、イソ−トレチノイン(総称的にレチノイドとして知られる)、ビタミンE(トコフェロールおよびその誘導体)、ビタミンC(L−アスコルビン酸およびそのエステルおよび他の誘導体)、ビタミンB3(ナイアシンアミドおよびその誘導体)、α−ヒドロキシ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸など)およびβ−ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸など)が含まれる。
【0237】
本発明の実施形態のこの関連において有益に使用されることができる例示的ホルモンには、限定されないが、アンドロゲン化合物およびプロゲスチン化合物が含まれ、例えばメチルテストステロン、アンドロステロン、酢酸アンドロステロン、プロピオン酸アンドロステロン、安息香酸アンドロステロン、アンドロステロンジオール、アンドロステロンジオール−3−アセテート、アンドロステロンジオール−17−アセテート、アンドロステロンジオール3−17−ジアセテート、アンドロステロンジオール−17−ベンゾエート、アンドロステロンジオン、アンドロステンジオン、アンドロステンジオール、デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンナトリウム、ドロモスタノロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エチルエストレノール、フルオキシメステロン、ナンドロロンフェンプロピオネート、ナンドロロンデカノエート、ナンドロロンフリルプロピオネート、ナンドロロンシクロヘキサン−プロピオネート、ナンドロロンベンゾエート、ナンドロロンシクロヘキサンカルボキシレート、アンドロステロンジオール−3−アセテート−1−7−ベンゾエート、オキサドロロン、オキシメトロン、スタノゾロール、テストステロン、テストステロンデカノエート、4−ジヒドロテストステロン、5α−ジヒドロテストステロン、テストラクトン、17α−メチル−19−ノルテストステロンおよびその医薬的に許容されるエステルおよび塩、ならびに前述のいずれかの組み合わせ、デゾゲストレル、ジドロゲステロン、二酢酸エチノジオール、メドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、アリルエストレノール、19−ノルテストステロン、リノエストレノール、酢酸キンゲスタノール、メドロゲストン、ノルゲストリエノン、ジメチステロン、エチステロン、酢酸シプロテロン、酢酸クロルマジノン、酢酸メゲストロール、ノルゲスチメート、ノルゲストレル、デゾグレストレル、トリメゲストン、ゲストデン、酢酸ノメゲストロール、プロゲステロン、硫酸5α−プレグナン−3β,20α−ジオール、硫酸5α−プレグナン−3β,20β−ジオール、5α−プレグナン−3β−オール−20−オン、16,5α−プレグナン−3β−オール−20−オン、4−プレグネン−20β−オール−3−オン−20−スルファート、アセトキシプレグネノロン、酢酸アナゲストン、シプロテロン、ジヒドロゲステロン、酢酸フルロゲストン、ゲスタデン、酢酸ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、酢酸ヒドロキシメチルプロゲステロン、3−ケトデゾゲストレル、メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、ノルエチステロンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0238】
活性な物質は、生物活性薬剤に加えて、生物活性薬剤の性能を改善し得る添加剤をさらに含むことができる。これらとしては、例えば、浸透増強剤、湿潤剤、キレート化剤、防腐剤、閉塞剤、緩和剤、透過増強剤および抗刺激剤が含まれる。これらの薬剤は、多孔性被覆の細孔内に被包することができるし、または被覆を形成するポリマー内にドーピングすることができる。
【0239】
湿潤剤の代表的な例としては、限定されないが、グアニジン、グリコール酸およびグリコール酸塩(例えば、アンモニア塩および4級アルキルアンモニウム塩)、多様な任意の形態のアロエベラ(例えば、アロエベラゲル)、アラントイン、ウラゾール、ポリヒドロキシアルコール(例えば、ソルビトール、グリセリン、ヘキサントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなど)、ポリエチレングリコール、糖類およびデンプン、糖およびデンプン誘導体(例えば、アルコキシル化グルコース)、ヒアルロン酸、ラクタミドモノエタノールアミン、アセタミドモノエタノールアミンおよびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0240】
キレート化剤の非限定的な例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA誘導体またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0241】
閉塞剤の非限定的な例としては、ペトロラタム、鉱油、密蝋、シリコーン油、ラノリンおよび油溶性ラノリン誘導体、飽和および不飽和脂肪アルコール(例えば、ベヘニルアルコールなど)、炭化水素(例えば、スクアランなど)、および様々な動物性および植物性の油(例えば、アーモンド油、落花生油、小麦胚芽油、亜麻仁油、ホホバ油、アンズ種油、クルミ、ヤシの実、ピスタチオの実、ゴマの種、菜種、トショウ油、トウモロコシ油、桃仁油、ケシの実油、パイン油、ヒマシ油、大豆油、アボカド油、サフラワー油、ココナッツ油、ヘーゼルナッツ油、オリーブ油、ブドウ種子油およびヒマワリ種油が含まれる。
【0242】
緩和剤の非限定的な例としては、ドデカン、スクアラン、コレステロール、イソヘキサデカン、イソノナン酸イソノニル、PPGエーテル、ペトロラタム、ラノリン、サフラワー油、ヒマシ油、ココナッツ油、綿実油、パーム核油、パーム油、落花生油、大豆油、ポリオールカルボン酸エステル、それの誘導体およびそれらの混合物が含まれる。
【0243】
浸透増強剤の非限定的な例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アラントイン、ウラゾール、N,N−ジメチルアセタミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド(C10 MSO)、ポリエチレングリコールモノラウレート(PEGML)、プロピレングリコール(PG)、プロピレングリコールモノラウレート(PGML)、グリセリンモノラウレート(GML)、レシチン、1−置換アザシクロヘプタン−2−オン、特に1−n−ドデシルシクラザシクロヘプタン−2−オン(Whitby Research Incorporated,Richmond,Va.からAzone(登録商標)の名称で入手可能)、アルコール類などが含まれる。浸透増強剤は、植物油であってもよい。そのような油としては、例えば、サフラワー油、綿実油およびトウモロコシ油が含まれる。
【0244】
抗炎症剤の非限定的な例としては、ステロイド性および非ステロイド性の抗炎症剤および他の材料(例えば、アロエベラ、カモミール、アルファ−ビサボロール、コーラの木抽出物、緑茶抽出物、茶樹油、甘草抽出物、アラントイン、カフェインまたは他のキサンチン、グリチルリチン酸およびその誘導体)が含まれる。
【0245】
防腐剤の非限定的な例としては、1つ以上のアルカノール、EDTA二ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸)、EDTA塩、EDTA脂肪酸コンジュゲート、イソチアゾリノン、パラベン(例えばメチルパラベンおよびプロピルパラベン)、プロピレングリコール、ソルベート、尿素誘導体(例えば、ジアゾリンジニル尿素)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。本実施形態による複合構造体は、精巧な処理および取り扱いを必要とし、もし熱、障害物質および溶媒などの条件および/または他の有害な条件に曝露されると、それらの生物学的および/または治療的活性を保持することができない生物活性薬剤を被包することが望ましい場合、特に有益である。そのような生物活性薬剤は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、多糖類、成長因子、ホルモン、抗血管新生因子、インターフェロンまたはサイトカイン、細胞およびプロドラッグを含む。
【0246】
診断剤は、モニタリング目的/標識化目的のために、それ自体で、または、生物活性剤との組合せでのいずれかで本発明の実施形態に関連して活性な物質として利用することができる。
【0247】
診断剤はまた、本明細書中では交換可能に、「標識化合物または標識成分」として示され、知られている技術を使用して、例えば、スペクトル測定(例えば、蛍光、リン光)、電子顕微鏡観察、X線回折および画像化、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)、磁気共鳴画像化(MRI)およびコンピューター断層撮影(CT)などを使用して検出器によって特定および追跡することができる検出可能な成分またはプローブを含む。
【0248】
標識化合物または標識成分の代表的な例には、限定されないが、発色団、蛍光性の化合物または成分、リン光性の化合物または成分、造影剤、放射性薬剤、磁性の化合物または成分(例えば、反磁性物質、常磁性物質および強磁性物質)、および、重金属クラスターが含まれる。
【0249】
本発明のこの関連において有益に利用することができる他の活性な物質には、例えば、滑らかさ、疎水性および生体適合性などに関して、所望の特性を、組成物、物品または医療デバイスの表面に与えることができる薬剤が含まれる。
【0250】
本明細書中に記載される組成物は、本明細書中上記で詳述されたように、細かく制御された特徴を示すように設計された一方で、本発明者らは、そのような特徴を有するマグネシウム系組成物を調製するための手法を考案している。従って、本明細書中に記載される組成物を調製する過程において、本発明者らは、マグネシウム合金のいくつかの特徴が、合金を調製するための条件を選択することによって制御され得ることを発見している。
【0251】
一般に、マグネシウム合金の特徴は、合金における成分およびそれらの相対的な量、合金における結晶粒のサイズおよび形状、ならびに、金属間相における結晶粒の配置によって決定される。本発明者らによって考案されるプロセスは、所望される特徴を有するマグネシウム合金を得るように、これらのパラメーターを細かく制御することを可能にする。
【0252】
従って、本発明のさらなる側面によれば、マグネシウム系組成物を調製するプロセスが提供される。このプロセスは一般には、少なくとも60重量パーセントのマグネシウムを含む混合物を鋳造して、それにより、マグネシウム含有鋳造物を得ること、および、このマグネシウム含有鋳造物を、少なくとも1回の押出し処理および少なくとも1回の予熱処理を含む多段階押出し手順に供することを含む。
【0253】
冶金学の分野では広く知られているように、鋳造は、金属または金属の混合物が、融解するまで加熱し、その後、鋳型に注ぎ、冷却および凝固する製造技術である。
【0254】
マグネシウム含有組成物の鋳造を、この分野で知られている任意の鋳造手順を使用して行うことができ、これらには、例えば、砂型鋳造、重力鋳造、直接チル(DC)鋳造、遠心鋳造、ダイカスト、プラスター鋳造およびロストワックス鋳造が含まれる。
【0255】
1つの好ましい実施形態において、鋳造は重力鋳造であり、これは600℃〜900℃の範囲にある温度で行われ、好ましくは、700℃〜800℃の範囲にある温度で行われる。この手順を使用して得られる鋳造物は典型的にはインゴットの形態である。
【0256】
別の好ましい実施形態において、鋳造は直接チル鋳造である。この手順を使用して得られる鋳造物は典型的にはビレットの形態である。
【0257】
選択された鋳造手順、および、選択された鋳造手順が行われる条件は、合金の最終的性質に影響を及ぼし得る。
【0258】
従って、例えば、直接チル鋳造手順では、得られる材料は、凝固時間がより短いために、結晶粒のサイズがより小さくなる。小さい結晶粒サイズは、最終製造物の機械的特性に影響を及ぼす重要な特徴であり、また、その後の押出し手順を行う条件にさらに影響を及ぼし得る(例えば、より低い圧力をより小さい結晶粒サイズのために利用することができる)。
【0259】
融解手順が行われる温度もまた、結晶粒のサイズに影響を及ぼす。加えて、温度はまた、得られる合金の組成に影響を及ぼし得る。従って、例えば、高い温度では、Fe粒子の量の望ましくない上昇がもたらされる場合がある。低い温度では、プロセス期間中におけるいくつかの成分の望ましくない喪失が生じる可能性がある。従って、成分のそれぞれの量が、合金の最終的性質を決定するために重要である場合には、温度は、合金の所望の組成を維持するように注意深く選択される。
【0260】
合金用成分が加えられる順序は、最終製造物の性質にさらに影響を及ぼし得る。
【0261】
好ましい実施形態では、合金元素のすべてを加えた後、得られる溶融物は、凝固に供される前に、(融解温度で)定着することができる。そのような定着時間により、鉄(Fe)のレベルがより低くなることが多い。
【0262】
さらに好ましくは、凝固前に、溶融混合物は試験され、その結果、溶融混合物における様々な成分の量が求められ、従って、これらの量を凝固前に所望の通りに調節することができる。
【0263】
なおさらに好ましくは、鋳造手順が保護的雰囲気のもとで行われ、これは、成分の分解(具体的には、マグネシウムの分解)を減らすことを目的とする。
【0264】
そのような鋳造を行うための詳細な例示的手順が下記の実施例の節において示される。
【0265】
場合により、また、好ましくは、鋳造プロセスに続いて、マグネシウム含有鋳造物は多段階押出し手順の前に均質化に供される。均質化処理は、不純物および金属間相の拡がりが拡散によって全体において均質化することを生じさせる。均質化処理はさらに、その後の塑性変形および熱処理に対する合金応答を改善する。
【0266】
均質化は好ましくは、少なくとも300℃の温度(好ましくは少なくとも400℃の温度、より好ましくは少なくとも500℃の温度)で、少なくとも4時間の期間中(好ましくは少なくとも5時間の期間中、より好ましくは少なくとも6時間の期間中、より好ましくは少なくとも7時間の期間中、最も好ましくは約8時間にわたって)行われる。例示的な好ましい実施形態において、均質化処理が520℃で8時間にわたって行われる。
【0267】
本明細書中で使用される用語「押出し」は、金属(または他の材料)が、エネルギーが加えられている同じ方向でダイオリフィスを通過させられる製造プロセス(通常押出し)、または、逆方向でダイオリフィスを通過させられる製造プロセス(間接押出し)(そのような場合、金属は通常、形状化されたロッド、レールまたはパイプを生じさせるために、ポンチまたは移動する形成用ツールの外形に従う)を表す。このプロセスは、通常、長い長さの最終製造物をもたらし、実際には連続的または半連続的であり得る。いくつかの材料は熱間引抜きされ、一方で、いくつかの材料は冷間引抜きすることができる。
【0268】
「多段階押出し」により、従って、マグネシウム含有組成物が押出し手順(処理)に繰り返し供され、従って、ダイを繰り返し通過させられることが本明細書中では意味される。好ましくは、そのような押出し手順のそれぞれが、異なる条件(例えば、異なる圧力、温度および/または速度)で行われる。
【0269】
さらに好ましくは、マグネシウム含有組成物はそのような押出し手順の少なくとも1つの前に予熱処理に供される。「熱処理」により、組成物が少なくとも100℃の温度(好ましくは少なくとも200℃の温度、より好ましくは少なくとも300℃の温度、より好ましくは330℃〜370℃の範囲での温度)に供されることが意味される。押出し手順のそれぞれの前に加えられる熱処理は同じまたは異なることが可能である。
【0270】
好ましい実施形態において、得られた鋳造物は最初に第1の押出しに供されて、それにより、第1の押出しマグネシウム含有組成物を得る。この手順は予備押出し処理と呼ぶことができ、この処理は、鋳造物を、その後の多段階押出しにおいて利用される押出し装置および押出し条件に合わせることを目的とし、また、使用される鋳造手順に依存して、必要に応じて行われる。
【0271】
その後、多段階押出し手順が好ましくは、下記のように行われる:得られた押出し組成物が第1の温度において第1の予熱に供される。その後、予熱されたマグネシウム含有組成物が第2の押出しに供されて、それにより、別の(第2の)押出しマグネシウム含有組成物を得る。
【0272】
これらの予熱手順および押出し手順は、押出し組成物の最終的な形態が得られるまで、所望に応じて繰り返すことができる。
【0273】
1つの好ましい実施形態において、第2の押出しに続いて、得られた(第2の)押出し組成物は別の予熱処理に供され、その後、さらなる(第3の)押出しに供される。
【0274】
本明細書中に記載される多段階押出し手順の使用は、最終製造物における結晶粒サイズを細かく制御することを可能にする。押出し条件および熱処理条件を操作することによって、最終製造物を、所望されるように種々の幅で、また、所望されるように様々な微細構造で得ることができる。本明細書中上記で議論されたように、これらの特徴は、最終製造物の腐食速度および機械的特性に影響を及ぼす。
【0275】
好ましくは、多段階押出し手順における押出し処理のそれぞれが、300〜450℃の範囲にあるダイ温度、および、2500〜3200psiの範囲ある機械圧力で行われる。例示的な押出し処理において利用される条件が下記の実施例の節において表1に詳しく示される。
【0276】
予熱処理は、好ましくは、150〜450℃の範囲にある温度で行われ、より好ましくは、300〜400℃の範囲にある温度で行われる。
【0277】
場合により、鋳造物の変形を、本明細書中に記載される多段階押出しプロセスと同様に行われる鍛造プロセスによって行うことができる。
【0278】
本明細書中で使用される用語「鍛造」は、鋳造された組成物を閉じた空洞において圧縮し、その結果、空洞の形状への組成物の変形を得ることを意味する。この処理は、例えば、ネジおよび/またはプレートの調製が所望される場合に利用することができる。鍛造が行われる温度は好ましくは300℃〜450℃であり、加えられる圧力は、押出し処理のために示された圧力よりも2〜5倍大きい。
【0279】
多段階押出し手順の後で、押出し組成物はさらに、最終製造物の所望される形状を得るように、様々な切断手順および機械加工手順に供することができる。これらの手順には、例えば、一般的な切断手順および機械加工手順、ならびに、本明細書中に記載されるような鍛造、鋳造および引抜きなどが含まれ得る。
【0280】
場合により、また、好ましくは、多段階押出し手順によって得られる押出し組成物はさらに、応力除去処理に供される。好ましくは、応力除去処理は、組成物を、5分〜30分の範囲にある期間の間、少なくとも100℃の温度(より好ましくは少なくとも200℃の温度、より好ましくは少なくとも300℃の温度)で加熱することによって行われる。
【0281】
さらに場合により、また、好ましくは、最終製造物は、スクラッチを製造物の表面から除くことを典型的には目的とする、機械的手段および/または化学的手段による研磨に供される。
【0282】
さらに場合により、得られた製造物は、形成された組成物の腐食速度および/または適合性を調節することを好ましくは目的とする表面処理に供される。1つの好ましい実施形態において、表面処理は、製造物の表面における表層(これは好ましくは酸化マグネシウム層である)を形成することを目的とする。
【0283】
表面処理は、好ましくは、研磨手順が行われるならば、研磨手順に続いて行われ、この趣旨でこの分野において知られている技術のいずれかを使用して行うことができる。そのような技術には、例えば、化成被覆および陽極酸化処理が含まれる。
【0284】
本発明の実施形態の関連での使用のために好適である例示的な化成被覆の技術には、リン酸塩−過マンガン酸塩の化成被覆、フルオロジルコン酸塩の化成被覆、スズ酸塩処理、セリウム、ランタンおよびプラセオジムの化成被覆、ならびに、コバルトの化成被覆が含まれるが、これらに限定されない。これらの技術の詳細な記述については、例えば、J.E.Gray、Journal of alloys and compounds、336(2002)、88〜113頁参照(これは、全体が本明細書中に示されるかのように参考として組み込まれる)。
【0285】
陽極酸化は、酸化物の薄膜を不動態化処理として金属および合金の表面に生じさせるために使用される電解プロセスであり、典型的には、DC電流またはAC電流を加えることによって行われる。
【0286】
本発明の実施形態の関連での使用のために好適である例示的な陽極酸化技術には、陽極酸化浴がアンモニアおよびリン酸水素アンモニウムナトリウムの水溶液からなるアノマグ(anomag)プロセスが含まれるが、これに限定されない。他の技術が、Gray(2002)(上掲)に記載される。
【0287】
他の不動態化技術もまた、本明細書中に記載される表面処理の関連において使用することができる。これらには、例えば、pHが10を越えるアルカリ溶液における浸漬、有機溶液における浸漬などが含まれる。
【0288】
上記で記載されたプロセスは、様々なマグネシウム系合金を製造するために利用することができる。好ましい実施形態において、上記プロセスは、少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含むマグネシウム系組成物を製造するために利用され、さらには、本明細書中に記載される組成物のいずれかを調製するために利用される。
【0289】
本明細書中上記で議論されたように、また、下記の実施例の節においてさらに明らかにされるように、本明細書中に記載される組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に浸漬されたときには、電流を約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることを特徴とし、また、7.4のpHを有するPBS溶液に浸漬されたときには、電流を約15μA/cm2〜約60μA/cm2の範囲にある密度で生じさせることを特徴とした。本明細書中上記でさらに議論されたように、そのような電流密度は、骨の環境において加えられたとき、骨形成を刺激する。
【0290】
従って、本発明の別の態様によれば、損傷された骨を有する対象において骨形成を刺激する方法が提供され、この場合、この方法は、本明細書中に記載される組成物、物品および医療デバイスのいずれかを、損傷された骨の近傍に設置することによって行われる。そのような方法は、例えば、折れた骨を処置するように、および/または、骨粗鬆症を局所的に治療もしくは予防するように利用することができる。
【0291】
本発明の追加の目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なお、これら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0292】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なお、これら実施例によって本発明は限定されない。
【0293】
材料および実験方法
材料:
マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、イットリウムおよびネオジムをすべて、Dead Sea Magnesium Ltd.から得た。
炭酸水素アンモニウムをAlfa Aesarから得た。
アルゴンをMaximaから得た。
0.9%のNaCl溶液をFrutarom Ltd.から得た。
8グラム/リットルのNaCl、0.2グラム/リットルのKCl、1.15グラム/リットルのNaH2PO4および0.2グラム/リットルのKH2PO4を含有するPBS(pH=7.4)をSigma Aldrichから得た。
【0294】
加工設備:
ハシングタイ(hashingtai)SM−1 Powder Mixerを使用した。
MTI GLX1300 Vacuum Ovenを使用した。
成形および押出しを、3Ksi押出し装置を使用して行った。
【0295】
分析:
元素分析を、Baird spectrovac2000質量分析計を使用して行った。
衝撃を、Mohr Federhaft AGアナログ衝撃装置を使用して測定した。
硬度を、Wilsonロックウェル硬さ試験機を使用して測定した。
引張り強さを、Instron引張り試験装置を使用して測定した。
伸びを、Instron引張り試験装置を使用して測定した。
光学顕微鏡観察を、Sony CCDカメラを備えるNikon optiphotを使用して行った。
SEM測定およびEDS測定をJeol JSM5600で行った。
【0296】
実施例1
合金の製造および特徴づけ
本発明の実施形態によるマグネシウム合金の3つの代表的な例(これらは、本明細書中では、BMG350、BMG351およびBMG352として、または、交換可能に、BioMag350、351および352としてそれぞれ示される)を、下記の一般的手順に従って調製し、特徴づけた。
【0297】
一般的製造プロセス:
合金を、例えば、重力鋳造を使用して鋳造し、続いて、均質化処理を、微細構造を均一化するという目的のために行う。得られるインゴットを、本明細書中下記において例示されるように、加熱して予熱処理し、多段階押出しに供する。
【0298】
典型的な一例では、合金を下記のように重力鋳造に供した:
純粋なMgインゴット(規格、9980A−99.8%)を、低炭素鋼から作製されたるつぼにおいて、CO2および0.5%SF6の保護的雰囲気のもと、780℃の温度で融解した。温度を凝固の最終段階まで維持した。
【0299】
その後、ネオジム(Nd、商業的に純粋、0.5%の不純物)を、好ましくは小さい塊で加え、溶融物を、溶融マグネシウムへのNdの溶解を可能にするように20分間撹拌した。
【0300】
イットリウムはY−Feの金属間相を形成し得るので、得られたMg−Nd溶融物を、溶融物に存在する何らかのFe粒子が沈下することを可能にするように30分間定着させた。本明細書中上記で議論されたように、低い量(ppm)のFeを有するマグネシウム合金が望ましい。
【0301】
その後、イットリウム(商業的に純粋、1%未満の不純物)を、溶融物を穏やかに撹拌しながら加え、続いて、カルシウムを、得られた溶融物を穏やかに撹拌しながら加えた。さらなる金属が合金に存在するならば、さらなる金属もまた、溶融物を穏やかに撹拌しながら、この段階で加えられる。
【0302】
溶融物の組成を、溶融物における各成分の所望された量を確認するように、質量分析法を使用してこの段階で評価し、必要ならば、組成の補正を(例えば、1つまたは複数の成分のある量を加えることによって)行った。様々な成分の所望される量は、本明細書中上記で記載される所望のパラメーターによって決定される。例示的な合金(BMG350、351および352)の組成が本明細書中上記で詳述される。
【0303】
得られた溶融物を、組成を均質化するために、また、Fe粒子の量を低下させるために約40分間定着させた。この定着期間の期間中に、溶融物におけるFeの量が、質量分析法を使用して求められる。
【0304】
その後、溶融物をインゴットに注入し、本明細書中上記で記載される保護的環境のもとで凝固させる。
【0305】
凝固すると、インゴットは均質化処理を520℃で8時間受ける。
【0306】
得られたインゴットは、その後、下記のように押出しプロセスに供される;
得られたインゴットを、クローズドダイを使用して、最大装置圧力(3150psi)により、360℃のダイ温度で円形ビレットに押し出し、プレスした。
【0307】
得られたビレットを、押出し装置に合うように、また、さらには表面を清浄にするように204mm(8インチ)の直径に機械加工し、その後、示された温度に予熱した(表1参照)。
【0308】
予熱ビレットを、50.8mm(2インチ)の断面を達成するように、下記の表1に示されるパラメーターに従って440℃のダイ温度で押し出した。
【0309】
得られた2インチのビレットを、示されるように再び予熱し、要求される最終的な外形(例えば、直径30mmのロッド)への押出しに再び供した。
【0310】
得られたロッドを、その後、特定の試験片形態を得るように、機械加工および必要な場合には切削に供した。
【0311】
好ましくは、最終製造物は、試験片における残留応力を低下させるように、365℃での20〜30分間の応力除去処理に供された。応力除去プロセスの効果を、本明細書中下記で記載される浸漬実験によって確認した。応力が除去された試験片は、機械加工に供されているとき、はるかにより大きい腐食速度を示した。
【0312】
得られた試験片の最終的処理には、典型的には、製造物の滑らかな表面を、スクラッチを除くことによって提供することを目的とする研磨(例えば、機械的手段または化学的手段による研磨)が含まれる。
【0313】
得られた製造物は、その後、本明細書中上記で詳述されるように、また、例えば、Grey(2002、上掲)に記載されるように表面処理に供される。一例において、最終製造物は、本明細書中に記載されるようにリン酸塩−過マンガン酸塩の化成被覆に供される。別の一例では、最終製造物は、本明細書中に記載されるようにアノマグプロセスに供される。
【0314】
化学組成:
下記の表2は、質量分析法によって求められるときの、本明細書中上記に記載される一般的プロセスによって得られる3つの合金のそれぞれの組成を示す。
【0315】
機械的特性:
合金の機械的評価を、下記に記載される用語および試験を使用して、国際的規格に従って行った:
ASTM E6−89:機械的試験の方法に関連する標準的用語;
ASTM E8M−95a:金属材料の引張り試験のための標準試験方法[メートル法];
STM E18−94:金属材料のロックウェル硬さおよびロックウェル表面硬さのための標準試験法;および
STM規格E23−4b:金属材料の切欠き棒衝撃試験のための標準試験方法。
【0316】
5個の試験片をそれぞれの試験において使用した。下記の表3は、試験された組成物(BMG350、351および352)について得られた結果(平均化された結果)を示す。
【0317】
これらの結果は、実質的な違いが、機械的強度に関して、これら3つの試験された合金の間に何ら認められないことを明瞭に示す。より強い合金は、わずかに増大した最大抗張力および引張り降伏強さを有するBMG350であるようである。他方で、BMG350および351の伸び特性はBMG352よりも実質的に大きい。
【0318】
これらの結果はさらに、試験された合金のすべてが、降伏点に達する前に、160MPaに至るまで耐えることができることを明瞭に示す。従って、このことは、これらの合金がすべての中負荷適用に対して適用可能であることを示している。
【0319】
顕微鏡評価:
試験された合金の微細構造を、SEM測定およびEDS測定を使用して評価した。図2a、図2bおよび図2cは、BMG350、351および352のSEM顕微鏡写真をそれぞれ示す。図に示されるように、平均結晶粒サイズがおよそ20ミクロン以下であり、相および結晶粒の典型的な伸長が押出しプロセスのために明らかである。本明細書中上記で議論されたように、そのような小さい結晶粒サイズは大きい機械的強度をもたらす。
【0320】
図においてさらに示されるように、金属間相が塊に沿って分布する。そのような金属間相は、Mgマトリックスに対する陰極として作用することによって腐食速度に影響を及ぼすことが予想される。従って、腐食プロセスは、これらの金属間相に隣接した場所で始まることが予想される。従って、十分に分布した金属間相により、一様な腐食プロセスが保証される。
【0321】
実施例2
腐食試験
本発明の実施形態による代表的な合金の腐食速度を、浸漬技術および電気化学的技術の両方を、下記のようなASTM、ISOおよびFDAの関連した規格および指針に従って使用して評価した:
ASTM G15−93:腐食および腐食試験に関連する標準的用語;
ASTM G5−94:定電位陽極分極測定およびポテンシオダイナミック陽極分極測定を行う;
ASTM G3−89:腐食試験における電気化学的測定に適用可能な従来法;
E.Ghaliら、“Testing of General and localized Corrosion of Magnesium allys: A critical Review“、ASM international、2004;
ISO10993−15、医療デバイスの生物学的評価、金属および合金からの分解産物の特定および定量;および
ASTM G31−72:“Standard practice for laboratory corrosion testing of metals”。
【0322】
浸漬アッセイ:
浸漬実験を、合金を0.9%NaCl溶液(90グラムのNaCl/10リットルの脱イオン水)に37℃で7日(168時間)の期間にわたって浸けることによって、ASTM G31−72(金属の実験室腐食を測定するために使用される試験方法)において定義されるように行った。これらの実験の目的のために使用される試験片は、直径が10mmで、長さが100mmのロッド(約33cm2の表面積)である。試験片はすべて、重量および大きさが浸漬前に測定された。
【0323】
図3aおよび図3bは、これらのアッセイで使用される実験構成を示す。
【0324】
浸漬試験後、試験片を、腐食生成物を除くために20%のCrO3溶液および熱水により清浄にした。清浄後、試験片を重量測定し、腐食速度を下記の式に従って計算した:
腐食速度=(W・1000)/(A・T)
式中、
T=暴露時間(日数)
A=表面の面積(cm2)
W=質量喪失(グラム)。
【0325】
得られた結果が下記の表4に示される。
【0326】
これらの結果から、BMG351についてのわずかに優れた耐食性が、それ以外の試験されたサンプルと比較したとき、明瞭に示される。表4においてさらに示されるように、試験片の完全な分解を予測するための結果の外挿では、ほぼ1年半後における試験片の完全な分解が示される。この期間が生分解性の整形外科用インプラントの分野では最適であると見なされることは特筆される。
【0327】
本明細書中上記で記載されるように行われるが、NaCl溶液をPBS溶液(pH=7.4、本明細書中上記で記載される)により置き換える別のアッセイでは、0.41±0.02mcdの値がBMG351について得られた。
【0328】
電気化学的アッセイ:
ポテンシオダイナミック分極測定を、ASTM G5−94“Making potentiostatic and potentiodynamic anodic polarization measurements”(37℃での0.9%NaCl溶液またはPBSにおける試験された合金の電気化学的分極によって腐食速度を測定するために使用される試験方法)において定義されるように行った。
【0329】
本明細書中上記で記載されるようなPBS溶液(pH=7.4)を、ASTM F2129「小さいインプラントデバイスの腐食感受性を求めるためにサイクリックポテンシオダイナミック分極測定を行う」によって示されるように使用した。
【0330】
簡単に記載すると、実験を、下記の3電極セルを使用するGamryポテンシオスタットで行った:対向電極(白金箔、99.5%の純度、20cm×1mm、表面=629mm2)、参照電極(KCl電極)および作用電極(試験されるべき試験片、表面=28.3mm2)。Gamryポテンシオスタットを実験開始時に校正した。
【0331】
試験片を(600グリットのSiC研磨紙を使用して)試験前に研磨し、エタノールとともに超音波洗浄した。試験される試験片をガラス管に挿入した。これらのアッセイのための実験構成が図4aに示される。
【0332】
試験パラメーターは、
初期遅延(Ecorrの安定化)=3600秒(1時間);
走査速度=0.5mV/秒;
初期電位=−250mV(対Ecorr);
最終電位=電流密度が1mA/cm2(約1ボルト対Ecorr)を越えるときの電位
サンプル面積=0.283cm2
であった。
【0333】
図4bは例示的なポテンシオダイナミック分極プロットを示す。得られた結果が下記の表5および図5に示される。すべての測定値が、Tafel外挿法を使用して得られた。
【0334】
表5および図5に示されるように、著しく低下した腐食速度が、本明細書中上記で記載される浸漬アッセイと比較したとき、電気化学的アッセイにおいて得られた一方で、これらの観測結果は、電気化学的分極法では、外挿された方法である浸漬とは対照的に、様々なレベルの電位における金属の完全なライフサイクルの目安(図5参照)が提供されるという事実に起因すると考えられる。
【0335】
下記の表6は、ポテンシオダイナミックプロットから導き出されるような腐食電位および電流密度に関して、0.9%NaCl溶液およびPBSにおいて得られる比較結果を示す。
【0336】
表6に示されるように、異なるデータが、PBSと比較した場合、0.9%NaClにおいて行われた実験では得られた。これらの違いは、pHレベルがNaCl溶液では試験片の分解の期間中に増大するという事実に起因すると考えられ、従って、変化が緩衝剤(PBS)溶液では何ら起こらない。骨のヒトの生理学的環境はリン酸塩を含有する(例えば、Witteら、Biomaterials、26(2005)、3557〜3563頁参照)ので、PBSにおいて得られる結果は生理学的環境についてのより確かな目安であることが推定される。
【0337】
実施例3
インビボ研究
インビボ分解研究をPharmaSeed Ltd.(Nes Ziona)において行った。オスのWistarラット(11〜12週齢)を使用した。
【0338】
14mm×10mm×1mmの大きさを有する4つのBMG351試験片を、2週間および4週間の期間、12匹のWistarラットのそれぞれに埋め込んだ。これらの試験片は、2つの試験片が脊柱の左側に、2つの試験片が脊柱の右側に、それぞれのラットにおいて皮下に埋め込まれた。剃毛し、皮膚表面を清浄にした後、皮下ポケットを、はさみによる鈍的切開によって作製した。試験片をポケットに置き、傷を縫合糸により閉じた。
【0339】
それぞれの試験片を埋め込み前および外植後に重量測定した。外植後、それぞれの試験片を、腐食生成物がどのくらいラットの血流によって除かれたかを評価するために、クロム酸溶液における清浄化の前および清浄化の後で重量測定した。得られた結果が下記の表7にまとめられる。
【0340】
下記のスキーム1は、ラット体重に放出されたMg酸化物の量の計算が1つだけの試験片について行われた方法を示す。最後の式が得られると、その式をすべての利用可能な結果に適用した。
【0341】
得られた結果により、上記の実施例2に示されるインビトロ結果が確認された。得られた結果は、試験された試験片の類似する重量減少(腐食)速度を示している。さらには、腐食生成物を埋め込み部位から取り除くことに対する目安もまた得られ、評価された。4週間の期間についての得られた重量減少は総重量の6.5%(1.25%/週)であった。これは、インビトロ浸漬実験で得られた1週間についての1.39%の重量喪失と一致している。
【0342】
外植後に調べられた腐食形態学が図6に示される。図6は、一様に腐食された表面を、試験片全体での合金欠陥部におけるいくらかの孔食とともに示す。
【0343】
実施例4
多孔性マグネシウム合金
一般的手順:
粉末化されたマグネシウム合金が、知られている手順に従って、マグネシウム合金の削りくずを不活性な雰囲気で粉砕することによって調製される。簡単に記載すると、削りくずをアルゴン雰囲気下で粉砕装置に負荷し、粉砕操作を、冷却剤をミルハウスジャケットに通すことにより粉末の温度を制御しながら行う。粉砕を、目標の粒子サイズ分布(PSD)が得られるまで続ける。
【0344】
その後、粉末化されたマグネシウム合金を、事前に決定された比率で、事前に決定されたPSDの炭酸水素アンモニウム粉末と混合する。均質化された混合物を鋳型に入れ、空気圧によりスラブに圧縮するか、または、直接、事前に設計された形状に圧縮する。その後、圧縮された粉末を真空オーブンに移し、加熱焼結する。スラブが形成される場合は、スラブを、知られている手順を使用して、焼結前または焼結後のいずれかで、最終的なインプラント形状に機械加工する。
【0345】
必要な場合には、多孔性の形状化された製造物は、その後、少なくとも1つの活性な物質(例えば、抗体)を含有する溶液において含浸され、溶媒が減圧下において室温で除かれ、続いて、真空オーブンにおいて除かれる。
【0346】
典型的な一例において、イットリウムおよびネオジムを含有するBMG352のマグネシウム合金削りくずが、アルゴン雰囲気および水冷却のもと、6時間、アトリター(atritter)を16000RPMで使用して粉砕される。図7に示されるように、得られた粉末のSEM分析は、得られた粉末が、100〜200μmのサイズを有する球状粒子からなったことを示した。
【0347】
得られた粉末を4:1(v/v)の比率で炭酸水素アンモニウム粉末と混合し、得られたミックス粉末をディスク形状のダイに移し、空気圧により80psiで圧縮して、ディスク形状を得た。得られたディスクを焼結用真空オーブンに移し、パイレックス(登録商標)ガラスの真空チューブにおいて620℃で10分間焼結した。
【0348】
図8は、直径が8mmである、本明細書中上記で記載されるように得られた例示的なディスクを示す。
【0349】
図9は、2mmの穴がドリルにより貫通して開けられた、15%の多孔性を有する別の例示的なディスクを示し、このディスクは強い粒子間結合を焼結プロセスの結果として明らかにする。
【0350】
図10は、本明細書中上記に記載されるプロセスによって製造される、約500μmの細孔直径を有する別の例示的な多孔性試験片を示す。
【0351】
実施例5
多層化されたマグネシウム系システム
多層化されたマグネシウム系生分解性システムが、例えば、本明細書中に記載されるような生分解性マグネシウム合金から作製されるモノリシック型のマグネシウムコアと、本明細書中に記載されるような多孔性マグネシウム合金から作製される外側層とを有するシステムを構築することによって得られる。コア層は機械的強度を提供し、従って、外側の多孔性層には、マグネシウムが分解するときに放出される治療活性物質(例えば、抗生物質)が負荷される。
【0352】
実施例6
電流生成マグネシウム合金による骨形成
本明細書中上記で議論されたように、2〜20μA/cm2の範囲での一定のレベルの電流は、折れた骨または骨粗鬆症の骨を通過するとき、骨の成長を著しく刺激することができ、従って、骨治癒プロセスを促進させ得ることが認識されている。この現象についての作用機構は未だ理解されていない。
【0353】
本明細書中上記においてさらに示されるように、本明細書中に記載されるマグネシウム合金の分解機構は電気化学的反応を介してである。従って、一定のレベルの電流および電位がマグネシウム合金の分解部位において生じる。
【0354】
従って、マグネシウム系インプラントはさらに、骨形成を埋め込み部位における電流の生成により促進させるために使用され得ることが本明細書中では認識されている。
【0355】
本明細書中上記の表6に示されるように、BMG351、BMG350およびBMG352の電気化学的試験のときに測定された電流密度は、NaCl溶液においておよそ10μA/cm2の値を示し、PBSにおいて18〜60μA/cm2の範囲での値を示した。これらのデータは、マグネシウム系インプラントが、細胞の成長を刺激するために首尾よく利用され得ること、また、このことは、損傷された骨領域または骨粗鬆症の骨のいずれかにおいて骨形成を促進させるために首尾よく利用され得ることを示している。
【0356】
実施例7
水素発生の測定
マグネシウム含有試験片の発生水素の測定が、図11aに示されるように、ビュレット、漏斗および溶液タンクを使用して行われる。試験される試験片から発生する水素の気泡が、漏斗を通って、測定が行われ得るビュレットの中に流れる。そのようなシステムは、温度制御器もまた備えるときには、体温(37℃)をシミュレートすることを可能にする。
【0357】
試験片から発生した水素の気泡が、漏斗を通って、測定が行われ得るビュレットの中に流れる[G.Song and A.Atrens、Advanced engineering materials、2003、第5巻、第12号]。発生した水素のモル数の計算が、下記の式を使用して行われる:
【0358】
ビュレットの先端における水素圧は大気圧に非常に近い(760mmHgは大雑把には23メートルの水に等しい)。
【0359】
本明細書中上記に記載されるこのシステムを使用して、本明細書中に記載される例示的なマグネシウム合金(BMG351)の水素発生を異なる条件(0.9%NaCl;PBS(pH=7.4))のもとで測定した。試験された試験片は7cm2の表面積を有する。得られたデータを、35cm2の表面積に従って、プレートおよびネジから作製されるデバイスの発生速度に外挿した。
【0360】
得られたデータを、本明細書中下記のスキーム2に示される式に従って処理した。
【0361】
これらの計算に基づいて、結果を、Em−モルによる水素発生[モル/日/平方cm]として、または、Ev−体積による水素発生[ミリリットル/日/平方cm・マグネシウム]として示すことができる。
【0362】
得られた結果は、プレートおよびネジの完全なシステムの推定表面積のために、35cm2が後で乗じられた。
【0363】
得られた結果が下記の表8に示される。
【0364】
表8において認められ得るように、PBS溶液に浸漬されたときの試験されたマグネシウム合金の水素発生速度は、0.9%NaCl溶液に浸漬されたときの速度より小さかった。本明細書中上記で示されたように、PBS溶液で得られた結果は、生理学的環境に関してのより確からしい目安であると考えることは妥当である。
【0365】
これらの結果をヒトの生理学的環境の吸収能と比較するために、単純なモデルを使用した(Piiperら、Journal of applied physiology、17、第2号、268頁〜274頁を参照のこと)。このモデルは、種々の不活性な気体のラットの吸収能を計算するために開発された。従って、このモデルを、水素吸収を強調してヒトの生理学に変換した。図11bに示されるモデルは、生理学的環境における水素の吸収が、2つの方法から、すなわち、拡散および灌流からなることを予測する。
【0366】
示されたモデルは下記の式によって記述することができる:
式中、
αは1気圧における1ミリリットルの血液あたりのミリリットル水素での血液における水素の溶解度を示す;0.0146ml/cm3×atm.の値がMeyerら(European Journal of physiology、384、131頁〜134頁)に従って使用された;
Pgは気圧の単位での気泡における水素の圧力を示す;0.97気圧の値が使用された;
Plは気圧の単位での血液における水素の圧力を示す;0の値が使用された;
Dは、表面積対拡散バリア長さの比率が乗じられた拡散係数に等しい透過係数を示す。
【0367】
ヒトの生理学に対する上記式を採用するために、下記のパラメーターが使用されたか、または考慮された:
大気におけるH2含有量は0.5ppmであり、従って、血液における分子状水素の含有量(Pl)はゼロであると仮定される;
プレートおよびネジの構造体の表面積は35cm2である;
骨の周りにおける血流が5ミリリットル/分/100グラム骨として計算された。これは、骨の周りではなく、骨の血管における血流のみを含むことが意味される[I.McCarthy、Journal of bone joint surgery−American(2006)、88、4〜9頁];
100ミクロンの拡散バリアが計算のために任意の選択された。典型的には、拡散バリアは10〜100ミクロンの範囲である[HlastalaおよびVan Liew、Respiration physiology(1975)、24、147〜158頁]。
【0368】
ヒトの生理学のためのこれらの値を上記式に入れた後、プレートの周囲における水素気泡の吸収についての得られた値は1.65ミリリットル/時間である。
【0369】
表8に示される結果に戻ると、試験された例示的なマグネシウム系組成物またはマグネシウム系デバイスの水素発生速度が十分にヒトにおける水素吸収能の範囲内であることを理解することができる。
【0370】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0371】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0372】
【図1】本発明の実施形態による押出しマグネシウム合金の代表的な例を示す写真である。
【図2】BMG350の1:500のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、左)および1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2a、右)、BMG351の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2b)、ならびに、BMG352の1:2000のスケールでのSEM顕微鏡写真(図2c)を示す。
【図3】本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される浸漬アッセイの実験構成をアッセイ前(図3a)およびアッセイ期間中(図3b)において示す写真である。
【図4a】本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される電気化学的アッセイの実験構成を示す写真(図4a)である。
【図4b】本発明の実施形態によるマグネシウム合金の腐食速度を求めるために使用される電気化学的アッセイの例示的な動電位プロット(図4b)である。
【図5】合金を37℃で0.9%NaCl溶液に浸け、電位を0.5mV/秒の走査速度で加えたときに得られるBMG350のポテンシオダイナミック分極曲線(青色)、BMG351のポテンシオダイナミック分極曲線(ピンク色)およびBMG352のポテンシオダイナミック分極曲線(黄色)を示す。
【図6】埋め込み後30日でWistarラットから外植され、クリーニングに供されたBMG351合金の、1:10のスケール(左、下部画像)および1:50のスケール(右、上部画像)での光学画像である。
【図7】マグネシウム合金の削りくずをアルゴン雰囲気および水冷のもとで粉砕したときに得られる、平均粒子サイズが200ミクロンである、イットリウムおよびネオジムを含有するマグネシウム合金(BMG352)粉末のSEM顕微鏡写真である。
【図8】多孔性の程度が35%である、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)から形成される例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【図9】穴がドリルにより開けられた、本発明の実施形態による、イットリウムおよびネオジムを含有する多孔性マグネシウム組成物(BMG352)の別の例示的な焼結ディスクの光学画像である。
【図10】約500μmの孔径を有する、本発明の実施形態による別の多孔性試験片の光学画像を示す。
【図11】マグネシウム含有組成物からの水素発生を評価するための例示的な装置(図11a)、および、Piiperら(Journal of applied physiology、17、第2号、268〜274頁)に従った、生理学的環境での水素ガスの吸収についての拡散/灌流モデルの概略図(図11b)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜4重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
を含み、亜鉛を含まない組成物。
【請求項2】
少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む組成物であって、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とし、亜鉛を含まない組成物。
【請求項4】
7のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
をさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
アルミニウムを含まない、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
1.5重量パーセント〜2.5重量パーセントのネオジムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのカルシウムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
0.1重量パーセント〜1.5重量パーセントのイットリウムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのジルコニウムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
2.01重量パーセントのネオジム、0.60重量パーセントのイットリウム、0.30重量パーセントのジルコニウム、および0.21重量パーセントのカルシウムを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
2.01重量パーセントのネオジム、1.04重量パーセントのイットリウム、0.31重量パーセントのジルコニウム、および0.22重量パーセントのカルシウムを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含み、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
0.004重量パーセントの鉄、0.001重量パーセントの銅、0.001重量パーセントのニッケル、および0.003重量パーセントのケイ素をさらに含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項15】
1.2ジュールよりも大きい衝撃値を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
80HREよりも大きい硬さを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
200MPaよりも大きい最大抗張力を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
150MPaよりも大きい引張り降伏強度を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
15パーセントよりも大きい伸び値を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項1、2および6〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に浸漬されたとき、3ml/hour未満の水素発生速度を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度での電流を生じさせる、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
多孔性構造を有する、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む組成物。
【請求項25】
約100ミクロン〜約200ミクロンの範囲にある平均孔径を特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
組成物に取り込まれるか、または、組成物に付着する活性な物質を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
をさらに含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
亜鉛を含まない、請求項24〜27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
アルミニウムを含まない、請求項24〜28のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含み、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない、請求項24〜29のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
コア層と、前記コア層の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つの被覆層とを含み、前記コア層が第1のマグネシウム系組成物である物品。
【請求項32】
前記第1のマグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記第1のマグネシウム系組成物は、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記第1のマグネシウム系組成物は亜鉛を含まない、請求項33に記載の物品。
【請求項35】
前記第1のマグネシウム系組成物はアルミニウムを含まない、請求項33に記載の物品。
【請求項36】
前記第1のマグネシウム系組成物は、鉄、ニッケル、銅、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含む、請求項31〜35のいずれかに記載の物品。
【請求項37】
前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.01重量パーセントを超えない、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記第1のマグネシウム系組成物はモノリシック構造を有する、請求項31〜35のいずれかに記載の物品。
【請求項39】
前記少なくとも1つの被覆層は多孔性組成物を含む、請求項31〜38のいずれかに記載の物品。
【請求項40】
前記多孔性組成物は多孔性ポリマーまたは多孔性セラミックを含む、請求項39に記載の物品。
【請求項41】
前記多孔性組成物は多孔性のマグネシウム系組成物である、請求項39に記載の物品。
【請求項42】
前記少なくとも1つの被覆層は第2のマグネシウム系組成物を含む、請求項31〜38のいずれかに記載の物品。
【請求項43】
前記少なくとも1つの被覆層の腐食速度および前記コア層の腐食速度は互いに異なる、請求項31〜42のいずれかに記載の物品。
【請求項44】
前記コア層および/または前記少なくとも1つの被覆層に付着しているか、あるいは取り込まれている少なくとも1つの活性な物質をさらに含む、請求項31〜43のいずれかに記載の物品。
【請求項45】
医療デバイスである、請求項31〜44のいずれかに記載の物品。
【請求項46】
前記医療デバイスは、埋め込み可能な医療デバイスなどである、請求項45に記載の物品。
【請求項47】
少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
を含む少なくとも1つのマグネシウム系組成物を含む医療デバイス。
【請求項48】
前記組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項47に記載の医療デバイス。
【請求項49】
少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含み、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とするマグネシウム系組成物を含む医療デバイス。
【請求項50】
7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項49に記載の医療デバイス。
【請求項51】
前記組成物は、
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
をさらに含む、請求項49に記載の医療デバイス。
【請求項52】
前記組成物は亜鉛を含まない、請求項47〜51のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項53】
前記組成物はアルミニウムを含まない、請求項47〜51のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項54】
前記組成物は、鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含み、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない、請求項47〜53のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項55】
前記組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項47、48および52〜54のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項56】
前記組成物は、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項55に記載の医療デバイス。
【請求項57】
前記組成物は、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に浸漬されたとき、3ml/hour未満の水素発生速度を特徴とする、請求項47〜54のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項58】
前記組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度での電流を生じさせる、請求項47〜54のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項59】
医療デバイスに結合している少なくとも1つの活性な物質を有する、請求項47〜58のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項60】
前記マグネシウム系組成物の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物をさらに含む、請求項47〜59にいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項61】
前記マグネシウム系組成物がその少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物をさらに含む、請求項47〜59のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項62】
埋め込み可能な医療デバイスである、請求項47〜61のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項63】
整形外科用の埋め込み可能な医療デバイスである、請求項62に記載の医療デバイス。
【請求項64】
少なくとも60重量パーセントのマグネシウムを含む混合物を鋳造して、それにより、マグネシウム含有鋳造物を得ること、および、
前記マグネシウム含有鋳造物を、少なくとも1回の押出し処理および少なくとも1回の予熱処理を含む多段階押出し手順に供し、それにより、マグネシウム系組成物を得ること
を含む、マグネシウム系組成物を調製するプロセス。
【請求項65】
前記多段階押出し手順は、
前記鋳造物を第1の押出しに供して、それにより、第1の押出しマグネシウム含有組成物を得ること、
前記第1の押出しマグネシウム含有組成物を第1の温度に予熱すること、および、
前記第1の押出しマグネシウム含有組成物を第2の押出しに供して、それにより、第2の押出しマグネシウム含有組成物を得ること
を含む、請求項64に記載のプロセス。
【請求項66】
前記多段階押出し手順は、前記第2の押出しに続いて、
前記第2の押出しマグネシウム含有組成物を第2の温度に予熱すること、および、
前記第2の押出しマグネシウム含有組成物を第3の押出しに供すること
をさらに含む、請求項65に記載のプロセス。
【請求項67】
前記マグネシウム系組成物を表面処理に供することをさらに含む、請求項64〜66のいずれかに記載のプロセス。
【請求項68】
前記表面処理は化成被覆および陽極酸化からなる群から選択される、請求項67に記載のプロセス。
【請求項69】
前記マグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項64〜68のいずれかに記載のプロセス。
【請求項70】
前記マグネシウム系組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項69に記載のプロセス。
【請求項71】
前記マグネシウム系組成物は、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項69または70に記載のプロセス。
【請求項72】
前記マグネシウム系組成物は亜鉛を含まない、請求項64〜71のいずれかに記載のプロセス。
【請求項73】
前記マグネシウム系組成物はアルミニウムを含まない、請求項64〜71のいずれかに記載のプロセス。
【請求項74】
前記マグネシウム系組成物は、鉄、ニッケル、銅、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含む、請求項64〜73のいずれかに記載のプロセス。
【請求項75】
損傷された骨を有する対象において骨形成を促進させる方法であって、請求項1〜63のいずれかに記載される組成物、物品、または医療デバイスを、前記損傷された骨の近傍に設置することを含む方法。
【請求項1】
少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜4重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
を含み、亜鉛を含まない組成物。
【請求項2】
少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む組成物であって、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とし、亜鉛を含まない組成物。
【請求項4】
7のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
をさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
アルミニウムを含まない、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
1.5重量パーセント〜2.5重量パーセントのネオジムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのカルシウムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
0.1重量パーセント〜1.5重量パーセントのイットリウムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
0.1重量パーセント〜0.5重量パーセントのジルコニウムを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
2.01重量パーセントのネオジム、0.60重量パーセントのイットリウム、0.30重量パーセントのジルコニウム、および0.21重量パーセントのカルシウムを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
2.01重量パーセントのネオジム、1.04重量パーセントのイットリウム、0.31重量パーセントのジルコニウム、および0.22重量パーセントのカルシウムを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含み、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない、請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
0.004重量パーセントの鉄、0.001重量パーセントの銅、0.001重量パーセントのニッケル、および0.003重量パーセントのケイ素をさらに含む、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項15】
1.2ジュールよりも大きい衝撃値を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
80HREよりも大きい硬さを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
200MPaよりも大きい最大抗張力を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
150MPaよりも大きい引張り降伏強度を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
15パーセントよりも大きい伸び値を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項1、2および6〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に浸漬されたとき、3ml/hour未満の水素発生速度を特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度での電流を生じさせる、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
多孔性構造を有する、少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む組成物。
【請求項25】
約100ミクロン〜約200ミクロンの範囲にある平均孔径を特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
組成物に取り込まれるか、または、組成物に付着する活性な物質を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
をさらに含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
亜鉛を含まない、請求項24〜27のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
アルミニウムを含まない、請求項24〜28のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含み、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない、請求項24〜29のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
コア層と、前記コア層の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つの被覆層とを含み、前記コア層が第1のマグネシウム系組成物である物品。
【請求項32】
前記第1のマグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項31に記載の物品。
【請求項33】
前記第1のマグネシウム系組成物は、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
前記第1のマグネシウム系組成物は亜鉛を含まない、請求項33に記載の物品。
【請求項35】
前記第1のマグネシウム系組成物はアルミニウムを含まない、請求項33に記載の物品。
【請求項36】
前記第1のマグネシウム系組成物は、鉄、ニッケル、銅、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含む、請求項31〜35のいずれかに記載の物品。
【請求項37】
前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.01重量パーセントを超えない、請求項36に記載の物品。
【請求項38】
前記第1のマグネシウム系組成物はモノリシック構造を有する、請求項31〜35のいずれかに記載の物品。
【請求項39】
前記少なくとも1つの被覆層は多孔性組成物を含む、請求項31〜38のいずれかに記載の物品。
【請求項40】
前記多孔性組成物は多孔性ポリマーまたは多孔性セラミックを含む、請求項39に記載の物品。
【請求項41】
前記多孔性組成物は多孔性のマグネシウム系組成物である、請求項39に記載の物品。
【請求項42】
前記少なくとも1つの被覆層は第2のマグネシウム系組成物を含む、請求項31〜38のいずれかに記載の物品。
【請求項43】
前記少なくとも1つの被覆層の腐食速度および前記コア層の腐食速度は互いに異なる、請求項31〜42のいずれかに記載の物品。
【請求項44】
前記コア層および/または前記少なくとも1つの被覆層に付着しているか、あるいは取り込まれている少なくとも1つの活性な物質をさらに含む、請求項31〜43のいずれかに記載の物品。
【請求項45】
医療デバイスである、請求項31〜44のいずれかに記載の物品。
【請求項46】
前記医療デバイスは、埋め込み可能な医療デバイスなどである、請求項45に記載の物品。
【請求項47】
少なくとも90重量パーセントのマグネシウム、
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
を含む少なくとも1つのマグネシウム系組成物を含む医療デバイス。
【請求項48】
前記組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項47に記載の医療デバイス。
【請求項49】
少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含み、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とするマグネシウム系組成物を含む医療デバイス。
【請求項50】
7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項49に記載の医療デバイス。
【請求項51】
前記組成物は、
1.5重量パーセント〜5重量パーセントのネオジム、
0.1重量パーセント〜3重量パーセントのイットリウム、
0.1重量パーセント〜1重量パーセントのジルコニウム、および
0.1重量パーセント〜2重量パーセントのカルシウム
をさらに含む、請求項49に記載の医療デバイス。
【請求項52】
前記組成物は亜鉛を含まない、請求項47〜51のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項53】
前記組成物はアルミニウムを含まない、請求項47〜51のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項54】
前記組成物は、鉄、銅、ニッケル、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含み、前記少なくとも1つの重元素のそれぞれの濃度は0.005重量パーセントを超えない、請求項47〜53のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項55】
前記組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.5mcd〜約1.5mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項47、48および52〜54のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項56】
前記組成物は、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に37℃で浸漬されたとき、ASTM G31−72に従って測定すると、約0.1mcd〜約1mcdの範囲にある腐食速度を特徴とする、請求項55に記載の医療デバイス。
【請求項57】
前記組成物は、7.4のpHを有するリン酸塩緩衝液に浸漬されたとき、3ml/hour未満の水素発生速度を特徴とする、請求項47〜54のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項58】
前記組成物は、0.9%塩化ナトリウム溶液に37℃で浸漬されたとき、約5μA/cm2〜約25μA/cm2の範囲にある密度での電流を生じさせる、請求項47〜54のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項59】
医療デバイスに結合している少なくとも1つの活性な物質を有する、請求項47〜58のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項60】
前記マグネシウム系組成物の少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物をさらに含む、請求項47〜59にいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項61】
前記マグネシウム系組成物がその少なくとも一部分の上に適用されている少なくとも1つのさらなる組成物をさらに含む、請求項47〜59のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項62】
埋め込み可能な医療デバイスである、請求項47〜61のいずれかに記載の医療デバイス。
【請求項63】
整形外科用の埋め込み可能な医療デバイスである、請求項62に記載の医療デバイス。
【請求項64】
少なくとも60重量パーセントのマグネシウムを含む混合物を鋳造して、それにより、マグネシウム含有鋳造物を得ること、および、
前記マグネシウム含有鋳造物を、少なくとも1回の押出し処理および少なくとも1回の予熱処理を含む多段階押出し手順に供し、それにより、マグネシウム系組成物を得ること
を含む、マグネシウム系組成物を調製するプロセス。
【請求項65】
前記多段階押出し手順は、
前記鋳造物を第1の押出しに供して、それにより、第1の押出しマグネシウム含有組成物を得ること、
前記第1の押出しマグネシウム含有組成物を第1の温度に予熱すること、および、
前記第1の押出しマグネシウム含有組成物を第2の押出しに供して、それにより、第2の押出しマグネシウム含有組成物を得ること
を含む、請求項64に記載のプロセス。
【請求項66】
前記多段階押出し手順は、前記第2の押出しに続いて、
前記第2の押出しマグネシウム含有組成物を第2の温度に予熱すること、および、
前記第2の押出しマグネシウム含有組成物を第3の押出しに供すること
をさらに含む、請求項65に記載のプロセス。
【請求項67】
前記マグネシウム系組成物を表面処理に供することをさらに含む、請求項64〜66のいずれかに記載のプロセス。
【請求項68】
前記表面処理は化成被覆および陽極酸化からなる群から選択される、請求項67に記載のプロセス。
【請求項69】
前記マグネシウム系組成物は少なくとも90重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項64〜68のいずれかに記載のプロセス。
【請求項70】
前記マグネシウム系組成物は少なくとも95重量パーセントのマグネシウムを含む、請求項69に記載のプロセス。
【請求項71】
前記マグネシウム系組成物は、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、およびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1つの元素をさらに含む、請求項69または70に記載のプロセス。
【請求項72】
前記マグネシウム系組成物は亜鉛を含まない、請求項64〜71のいずれかに記載のプロセス。
【請求項73】
前記マグネシウム系組成物はアルミニウムを含まない、請求項64〜71のいずれかに記載のプロセス。
【請求項74】
前記マグネシウム系組成物は、鉄、ニッケル、銅、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1つの重元素をさらに含む、請求項64〜73のいずれかに記載のプロセス。
【請求項75】
損傷された骨を有する対象において骨形成を促進させる方法であって、請求項1〜63のいずれかに記載される組成物、物品、または医療デバイスを、前記損傷された骨の近傍に設置することを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−535504(P2009−535504A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507240(P2009−507240)
【出願日】平成19年4月29日(2007.4.29)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000520
【国際公開番号】WO2007/125532
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508322783)バイオマグネシウム システムズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月29日(2007.4.29)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000520
【国際公開番号】WO2007/125532
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508322783)バイオマグネシウム システムズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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