説明

生分解性多孔質体およびそれを用いた吸水材料

【課題】 簡便な方法により得られる、連続気泡構造を有し、吸水性を有する新規な多孔質体およびそれを用いた吸水材料を提供することを目的とする。
【解決手段】 かさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下の粉体およびバインダー成分からなる連続気泡多孔質体であって、バインダー成分の融点または軟化点が、粉体の融点または軟化点より低く、かつ、粉体100重量部に対して1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を含む連続気泡多孔質体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続気泡多孔質体、および該連続気泡多孔質体を用いてなる吸水材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体は、内部に気泡で満たされた多数の空洞を有する固体である。まあ、空洞が互いに連結した構造は連続気泡構造を呼ばれるが、このような連続気泡構造を有する多孔質体は、液体を吸収する性質(吸水性)を有していることが多い。
【0003】
例えば、連続気泡構造を有するポリウレタンフォームは、その吸水性を利用して食器の洗浄用スポンジとして広く用いられている。また、連続気泡構造を有するポリウレタンフォームやフェノールフォームがフラワーアレンジメント台座として使用されている。これはその吸水性を利用したもので、生花を長期間に渡り枯らさずに保持する機能を有している。さらに、農業分野において、ロックウールを固めて得られる多孔質体が、養液栽培等で用いる培地として使用されるようになってきている。この用途において使用される多孔質体は、栽培される植物の根を保持するとともに、それ自身が養分を含んだ水を吸い上げて根へ供給するという機能を担っている。このように、液体を吸収する性質を有する多孔質体は極めて有用なものである。
【0004】
連続気泡多孔質体の提案としては、例えば、特許文献1には、乳酸を主成分とする重合体からなる、平均孔径1〜30μmの連通孔を有するポリ乳酸多孔質体が開示されている。該多孔質体は、乳酸を主成分とする重合体、水溶性のポリアルキレンエーテルおよび乳酸の共重合体を溶媒に溶解して溶液とし、該溶液を乾燥して固形物とした後に別な液体で前記共重合体を溶出させて製造される。しかしながら、該製造方法は手順が極めて煩雑であり、コストアップにつながりやすいという問題がある。また、フィルム状のものは得ることはできるが、乾燥時に連通構造が変化しやすく、比較的厚みのあるものを得ることが困難であるという問題がある。
【0005】
また、特許文献2には、生分解性プラスチックに有機発泡剤や水、天然繊維素を混合または混練し、これを型内に入れ、型内で加熱発泡させる、あるいは、混練押出し後、圧開放によって発泡させる等の方法によって製造された、少なくとも一種の生分解性プラスチックを主成分とする連続気泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−306983号公報
【特許文献2】特開2000−217683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、連続気泡構造を有し、吸水性を有する新規な多孔質体およびそれを用いた吸水材料を簡便な方法で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に関して鋭意検討を行った結果、かさ密度が低い粉体、特定の融点または軟化点を有するバインダー成分および界面活性剤からなる連続気泡多孔質は、粉体の体積収縮が抑制されて加熱成形可能であり、良好な吸水性、適度な脆性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、すなわち、本発明の第一は、かさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下である粉体、バインダー成分および界面活性剤からなる連続気泡多孔質体であって、バインダー成分の融点または軟化点が粉体の融点または軟化点より低く、かつ、粉体100重量部に対して、界面活性剤を1重量部以上30重量部以下含むことを特徴とする、連続気泡多孔質体に関する。
【0010】
好ましい態様としては、
(1)粉体がポリ乳酸である、
(2)かさ密度が0.01g/cm以上0.2g/cm以下である、
(3)かさ密度0.001g/cm以上0.1g/cm以下の粉体およびバインダー成分を加熱により互いに融着して得られる、
(4)粉体が、加水分解処理を施したものである、
前記記載の連続気泡多孔質体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連続気泡多孔質体は、簡便な方法により得られ、優れた吸水性を示し、また、全体に渡り均一な連続気泡構造を有している。
本発明の連続気泡多孔質体は、高い吸水性を有しているため、フラワーアレンジメント用台座や植物の培地として好ましく使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の連続気泡多孔質体は、かさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下の粉体およびバインダー成分からなり、粉体100重量部に対して1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を含むものである。
【0013】
本発明の連続気泡多孔質体を構成する粉体のかさ密度は、0.001g/cm以上0.1g/cm以下であり、好ましくは0.002g/cm以上0.05g/cm以下である。粉体のかさ密度が0.001g/cm未満では、該粉体を用いて得られる成形体の強度が低下する傾向があり、0.1g/cmを超えると、該粉体を用いて得られる成形体の重量が増加するのみならず、単位体積当たりの連続した内部空洞体積が低下する傾向がある。
なお、粉体のかさ密度はJIS K6911に準拠して測定されるものであり、下式(1)に基づいて算出できる。
粉体のかさ密度(g/cm)=〔試料を入れたメスシリンダの質量(g)−メスシリンダの質量(g)〕/〔試料の容量(cm)〕 (1)
【0014】
本発明に使用する前記粉体は、所定のかさ密度を有していれば、その製造方法に特に限定はされないが、粉体のかさ密度を幅広く容易に調整できる点から、発泡体を粉砕加工することにより得ることが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる粉砕加工は、公知の技術を用いて容易に行うことができる。好ましい具体例として、ジェットミル、カッターミル、ボールミル、スパイラルミル、ハンマーミル等の粉砕機を用いる方法が挙げられる。この際、粉砕機通過後の処理物を篩にかけ、十分に微細化された粉体のみを選別する方法を併用しても良い。また、粉砕時の基材樹脂の溶融を防止する目的で、発泡体や粉砕機を冷却する方法も好ましく用いられる。
【0016】
本発明で用いられる粉体を、発泡体の粉砕加工によって得る場合、粉体のかさ密度は、粉砕加工に供する発泡体の密度および粉体の形状に依存する傾向があり、一般には発泡体のかさ密度が小さいほど、また、粉体のアスペクト比が大きいほど小さくなる傾向にある。
【0017】
本発明における発泡体を粉砕加工することにより得られる粉体は、薄片がつながった微細構造を有しやすく、また、低いかさ密度とすることができる。その場合、連続気泡多孔質体が軽量となるのみならず、内部の連続した空洞比率を大きくとることができるため、体積当たりの吸水量を大幅に高めることができる。
【0018】
本発明においては、薄片のつながった微細構造を有した粉体とするため、用いられる発泡体の平均気泡径は、100μm以上1000μm以下、さらには150μm以上700μm以下にすることが好ましい。発泡体の平均気泡径が100μm未満であると、粉体に独立気泡が含まれ、吸水性が低下する傾向がある。また、平均気泡径が1000μmを越えると、粉体のかさ密度が大きくなる傾向がある。
なお、発泡体の平均気泡径は、電子顕微鏡で発泡体の気泡構造を撮影し、ASTM:D3576−94に準拠して気泡1個当たりの長さを計算し、1.5倍して気泡径とした値である。
【0019】
本発明における粉体の平均外径は、得ようとする多孔質体の性状によって異なるが、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明でいう「平均外径」とは、JIS K0069に規定される乾式ふるい分け試験方法で求められる乾式ふるい分け粒子径の質量基準の粒子径分布において、積算百分率が50%となる径を言う。具体的には、JIS Z8801−1に規定された標準ふるいを用いた上記試験で得られた、各ふるいの目開きに対する積算百分率(%)をプロットし、各店を直線でつないだ図において、積算百分率が50%となる目開きの値を持って平均外径とする。
【0021】
本発明で好適に用いられる粉体としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース及びその誘導体、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂が挙げられるが、熱可塑性を示し、また加工性が比較的良好であるという理由から脂肪族ポリエステル系樹脂であることが好ましい。また、脂肪族ポリエステル系樹脂は、良好な生分解性を示す傾向にあるため、フラワーアレンジメント用台座等の農業園芸資材に使用した後の廃棄処理にする際、特段の処理を必要としないため好適に用いることができる。
【0022】
本発明における脂肪族ポリエステル系樹脂とは、脂肪族ポリエステルを主たる成分(50重量%以上)とするものをいい、例えば、ポリ乳酸を主たる成分とするポリ乳酸系樹脂、ポリ3−(ヒドロキシブチレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレートーコーバリレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレートーコーヘキサノエート)等を代表とするヒドロキシ酸重縮合物や、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族カルボン酸との重縮合物などが例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、2以上の脂肪族ポリエステル系樹脂を混合して使用することもできる。
【0023】
これらの中でも、本発明の効果を得るには、脂肪族ポリエステル系樹脂として、ポリ乳酸系樹脂あるいはヒドロキシ酸重縮合物が好ましく、特にポリ乳酸系樹脂が環境に優しい点から、より好ましい。
【0024】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、特に限定はないが、乳酸成分の異性体比率が5%以上、好ましくは8%以上であるポリ乳酸を主成分としたものであることが好ましい。異性体比率が当該範囲であれば、ポリ乳酸系樹脂は非晶性であるため、発泡性、成形性の点から低密度の発泡体を得やすいため好ましい。
【0025】
次に、発泡体を用いて粉体を製造する場合について、説明する。
【0026】
まずは、前記樹脂を用いて、発泡体を製造する。
発泡体の製造方法としては、公知の製造方法がいずれも好ましく用いられる。例えば、特許2005−162804号公報に記載の押出発泡法、特許2004−149649号公報に記載のビーズ法、等が適用できる。
【0027】
また、以上のようにして得られる発泡体に対して、硬さ(脆さ)を調節する目的で、さらに加水分解処理を施しても良い。
【0028】
加水分解の方法や条件としては、均一に加水分解が進むのであれば特に限定はないが、土壌中での処理は加水分解時間が極めて長いうえ、均一に加水分解が起こりにくいのに対して、非晶性脂肪族ポリエステル系樹脂を基材樹脂とする発泡成形体に対して浸透力の高い水蒸気や恒温恒湿機を用いた加水分解が好ましく、処理の均一性、制御しやすさという観点から、恒温恒湿機を用いる方法がさらに好ましい。
【0029】
恒温恒湿機を用いて加水分解を行う場合、非晶性脂肪族ポリエステル系樹脂を基材樹脂とする発泡成形体を、好ましくは60℃以上100℃以下かつ相対湿度60%以上、より好ましくは60℃以上100℃以下、相対湿度60%以上100%以下、より好ましくは60℃以上95℃以下、相対湿度60%以上100%以下の温湿度条件で、好ましくは3時間以上48時間以下、より好ましくは4時間以上24時間以下処理することが好ましい。
【0030】
本発明においては、発泡体の形状にも特段の制限はなく、粒子状、シート状、ブロック状のものが何れも好ましく用いられるが、これらのうち、引き続き行われる粉砕工程が容易になるという点から、粒子状であることが好ましい。
【0031】
本発明において用いられる使用する発泡体の密度は、0.001g/cm〜0.1g/cmであることが好ましい。
【0032】
本発明の連続気泡多孔質体は、粉体の融点または軟化点より低い、融点または軟化点を有するバインダー成分を含んでなることにより、成形体全体を固化できる傾向があること、後述する加熱処理温度を粉体が溶融または軟化する温度以下に抑えることができ、粉体の収縮を抑制することができる。
【0033】
なお、粉体およびバインダー成分の融点は、示差走査熱量測定法において10℃/分の昇温速度で0〜200℃まで昇温した際に得られる、融解熱量曲線における最大ピークトップを示す温度である。また、粉体およびバインダー成分の軟化点は、JIS K5902に準拠して測定した温度である。
【0034】
本発明の連続気泡多孔質体におけるバインダー成分含有量としては、粉体100重量部に対しての5重量部以上70重量部以下であることが好ましく、10重量部以上60重量部以下がより好ましく、10重量部以上50重量部以下がさらに好ましい。バインダー成分の含有量が当該範囲内である場合、収縮を抑制でき適度な脆性を有する連続気泡多孔質体を得ることができる。
【0035】
本発明で用いられるバインダー成分としては、その融点または軟化点が前記粉体の融点または軟化点より低いものであれば、特に限定はされないが、好ましい具体例として、低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂;グリセリンモノステアテート、グリセリンジステアテート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリンモノラウレートなどのグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタンステアレート、ソルビタントリステアレート、ソブビタンパルミテートなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリカプロラクトンなどの開環重合物;ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族カルボン酸との重縮合物;ロジン、ロジンエステル、セラックなどの天然樹脂;などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステルやポリカプロラクトンが、安全性が比較的高く、扱いやすいため、好ましい。
【0036】
本発明におけるバインダー成分の常温常圧下における形状としては、粉末状、フレーク状といった固体であることが好ましい。
【0037】
本発明において、バインダー成分を前記粉体に混合する方法に特段の限定はないが、好ましい具体例として、前記発泡体およびバインダー成分を粉砕工程に供給して発泡体を粉砕すると同時にバインダー成分を混合する方法、前記粉体と粉末状にしたバインダー成分をブレンドする方法、バインダー成分を溶媒に溶解させた溶液を前記粉体に混合してブレンドする方法、などが挙げられる。
【0038】
本発明の連続気泡多孔質体は、粉体100重量部に対して1重量部以上30重量部以下、好ましくは1重量部以上20重量部以下の界面活性剤を含んでなることにより、その吸水量および吸水速度を大幅に高めることができる。界面活性剤の含有量が1重量部未満では吸水量および吸水速度の向上効果が得られない傾向があり、また、30重量部を超える場合は、吸水させた後の多孔質体の強度が不十分になる。
【0039】
本発明において、界面活性剤の添加方法に特段の制限はないが、好ましい方法の具体例として、連続気泡多孔質体を得る前に、界面活性剤と前記粉体と前記バインダー成分を混合する方法、界面活性剤を予め粉体を構成する基材樹脂に練りこんでおく方法が挙げられる。
【0040】
本発明で用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれの種類も好適に用いることができる。これらのうちでも、安全性が比較的高く、安価である点から、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0041】
本発明で好ましく用いられる界面活性剤の具体例としては、例えば、脂肪族酸ナトリウム、脂肪族酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸カリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルカリウム、α−スルホ脂肪族エステル、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸カリウム、モノアルキル硫酸ナトリウム、モノアルキル硫酸カリウム、モノアルキルリン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン系界面活性剤;アルキルカルボキシベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどのノニオン性界面活性剤;などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明の連続気泡多孔質体は、粉体およびバインダー成分を融着させることにより得られる。
【0043】
本発明において、粉体およびバインダー成分を融着させる方法として特段の制限はないが、好ましい例として、前記粉体とバインダー成分を熱により融着させる方法が挙げられる。粉体とバインダー成分を熱により融着させる方法の具体例として、粉体、バインダー成分および界面活性剤の混合物を型に入れ、バインダー成分が溶融するものの粉体が溶融しない温度において所定時間処理する方法、などが挙げられる。
【0044】
上記加熱処理温度は、粉体を構成する基材樹脂の種類とバインダー成分の種類および得ようとする連続気泡多孔質体の形状や大きさにより異なるが、60℃以上120℃以下であることか好ましい。加熱処理温度が60℃未満であるとバインダー成分の溶融が十分でなく、成形体は得られない傾向がある。また、加熱処理の温度が120℃を超える場合、多孔質体の密度が高くなりやすく、吸水性が劣る連続気泡多孔質体となりやすくなる傾向がある。
【0045】
上記加熱処理時間は、粉体を構成する基材樹脂の種類とバインダー成分の種類および得ようとする連続気泡多孔質体の形状や大きさ、さらには処理温度、処理方法等によっても異なるが、5分以上10時間以下であることが好ましい。加熱時間が5分より短い場合、バインダー成分の溶融が十分でなく、成形体は得られない傾向がある。また、加熱処理時間が10時間を超える場合、得られる連続気泡多孔質体が時間と共に収縮し、密度が高くなる傾向がある。
【0046】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、各種の添加剤、具体的には顔料、染料、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の無機物、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、充填剤、防曇剤、抗菌剤、潤滑剤、などが含まれていても良く。各種添加剤は、粉体およびバインダー成分と共に混合する、或いは、粉体の基材樹脂に予め混合しておくことにより、添加することができる。
【0047】
本発明の連続気泡多孔質体のかさ密度は、軽量かつ吸水性量に優れる点から、0.01g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましく、0.02g/cm以上0.15g/cm以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明の連続気泡多孔質体の連続気泡率は、80%以上100%以下が好ましく、90%以上100%以下がより好ましい。連続気泡率が80%未満の場合、成形体内部の連続した内部空洞が少ないため、吸水量が低下する傾向がある。
【0049】
本発明の連続気泡多孔質体のおける連続気泡は、全体にわたり均一であることが好ましい。なお、連続気泡が全体にわたり均一であることは、成形体の表層部と中心部から試料片を切り出し、それぞれの連続気泡率測定することにより評価することができる。本発明の連続気泡多孔質体の連続気泡率は、表層部、中心部とも80%以上100%以下の範囲が好ましい。
【0050】
本発明の連続気泡多孔質体は、低密度で、全体にわたり均一な連続気泡を有するものとすることが容易であり、その結果、良好な液体吸収性を示しやすい構造となる。さらに、前記構造を有する連続気泡多孔質体に特定量の界面活性剤を含有させることにより、初めて極めて優れた吸水性を発現させることが可能となるものである。したがって、本発明の連続気泡多孔質体は、吸水材料として好適に使用することができるものである。
【0051】
本発明における吸水材料とは、常温常圧下において、水と接することにより、自然に水が内部に浸透すると共に、浸透した水をそれ自身が保持する材料をいう。さらに、本発明の吸水材料は、いわゆる毛細管現象などの物理現象に基づいた吸水性を示すことにより、水の保持力が適度に弱く、例えば植物の根が水を吸収するのに対応して水を放出することができるという特徴を有しているものをいう。
【0052】
本発明の連続多孔質体を用いた吸水材料の用途としては、具体的にはフラワーアレンジメント台座、また植物の培地、土壌改良剤等が例示でき、これらに好適に用いられる。
【0053】
上記用途に用いる場合、連続気泡多孔質体の形状については特段の制限はなく、ブロック状、シート状など用途に応じて、適した形状とすることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明のフラワーアレンジメント用台座を具体的な実施例により詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は重量基準である。
【0055】
<連続気泡多孔質体のかさ密度測定>
得られた連続気泡多孔質体を5cm角に切り出し、その重量(g)を測定し、式(2)従って算出した。
かさ密度(g/cm)=[立方体の重量(g)]/[125(cm)] (2)
【0056】
<連続気泡多孔質体の連続気泡率測定>
得られた連続気泡多孔質体の表層部と中心部を切り出し、空気比較式比重計(1000型 東京サイエンス株式会社製)を用い、ASTM D−2856に準じて測定した。表層部と中心部の連続気泡率が80%以上100%以下であるとき、連続気泡率が全体に渡って均一であるとした。
【0057】
<連続気泡多孔質体の吸水性試験>
得られた連続気泡多孔質体を3cm角に切り出し、その重量を測定した。次に、カップに入れた水道水の水面に多孔質体を静置し、吸水させた。5分間吸水させた多孔質体の重量を測り、吸水前後の重量比を式(3)に従い、吸水性として算出した。
吸水性(g/g)=[吸水後の重量(g)]/[吸水前の重量(g)] (3)
【0058】
<連続気泡多孔質体の脆性評価>
得られた連続多孔質体に直径2mmの茎を持ったガーベラを垂直に挿すことにより、脆性を下記のように評価した、
○:茎が折れたり、曲がったりせず、抵抗なくささる。
△:茎が折れたり、曲がったりしないが、挿すのに抵抗がある。
×:茎の先が潰れる、茎が折れてしまい、させない。
【0059】
(実施例1)
[発泡粒子の作製]
D体比率10%、MI値3.7g/10分の非晶性ポリ乳酸樹脂100重量部およびポリイソシアネート化合物[日本ポリウレタン(株)製、MR−200]2.0重量部を、二軸押出機(東芝機械製、TEM35B)を用いて、シリンダー温度185℃にて溶融混練し、水中カッターを用いて、約1mmφ(約1.5mg)のビーズ状のポリ乳酸系樹脂粒子を得た。
得られたポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対して、水100重量部、発泡剤として脱臭ブタン(ノルマルブタン/イソブタン重量比=7/3)12重量部、食塩10重量部および、分散助剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル0.3重量部を、オートクレーブ内に仕込み、84℃で90分間保持した。十分に冷却後取出し、乾燥して、非晶性ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の発泡剤含浸率は5.5%であった。
得られたポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を、予備発泡機(ダイセン工業製、BHP−300)に投入し、90℃の蒸気下に40〜60秒間保持して、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を風乾した後、目開きが5.60mmの篩を用いて、融着粒子を分別・除去した。通過・分取されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子のかさ倍率は0.025g/cm、平均気泡径は400μmであった。
[粉体の作製]
得られた発泡粒子を水で濡らし、粉砕機としてカッターミル[テスコム製、ミル&ミキサー TML160]を用いて粉砕し、40℃の真空乾燥機内で真空乾燥させた後、目開き800μmの篩を用いて、通過した粉体を得た。得られた粉体のかさ密度は0.031g/cmであり、軟化点は120℃であった。
[連続気泡多孔質体の作製]
得られた粉体100重量部に対して、バインダー成分としてグリセリンモノステアテート[理研ビタミン(株)製、リケマールS−100P、融点70℃]20重量部、界面活性剤としてα−オレフィンスルホン酸ナトリウム[ライオン(株)製、リポランPJ−400]3重量部を加え、よく混合した。得られた混合物30gをアルミニウム製の型(7cm角)に擦り切り一杯まで入れ、100℃にて5時間加熱処理を行い、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体のかさ密度測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、収縮性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0060】
(実施例2)
[連続気泡多孔質体の作製]において、グリセリンモノステアテート添加量を50重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体のかさ密度測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、収縮性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0061】
(実施例3)
[連続気泡多孔質体の作製]において、バインダー成分をポリカプロラクトン(和光純薬製、融点60℃、Mw=10000)20重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体のかさ密度測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、収縮性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0062】
(実施例4)
[発泡粒子の作製]において、得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を、温度80℃、相対湿度95%とした恒温恒湿機[いすず製作所製、プログラム温湿度調節器、HPAV−120−40型]中に24時間静置し、加水分解処理を行った以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体のかさ密度測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、収縮性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0063】
(比較例1)
[連続気泡多孔質体の作製]において、バインダー成分としてのグリセリンモノステアテートを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得ようとしたが、粉体を固化することはできなかった。
【0064】
(比較例2)
[粉体の作製]において、粉砕機として実施例1で得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子をウルトラセントリミル[日本コークス工業(株)製、UCM型]を用いて粉砕を行った以外は、実施例1と同様に、粉体を得、さらに連続気泡多孔質体を得た。なお、得られた該粉体のかさ密度は0.33g/cmであった。得られた連続気泡多孔質体のかさ密度測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、収縮性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0065】
(比較例3)
[連続気泡多孔質体の作製]において、実施例4において得られた粉体100重量部に対して、バインダー成分(成分)としてロジンエステル(荒川化学工業株式会社製、S−EA125、軟化点125℃)20重量部および、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン株式会社製 リポランPJ−400)3重量部を加え、よく混合した。
得られた混合物をアルミニウム製の型(7cm角)に入れ、130℃にて5時間加熱処理を行い、連続気泡多孔質体を得ようとしたが、粉体の溶融による収縮が大きく、多孔質体を得ることはできなかった。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示した結果から、実施例で得られた、低かさ密度で、バインダー成分、かつ界面活性剤を含んだ連続気泡多孔質体は高い吸水性を示していることが確認できる。また、実施例4に示したように、加水分解処理を施した発泡粒子から得られた粉体を使用した連続気泡多孔質体は、適度な脆性を示すため、フラワーアレンジメント台座として好適に用いられることが確認できた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
かさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下である粉体、バインダー成分および界面活性剤からなる連続気泡多孔質体であって、
バインダー成分の融点または軟化点が、粉体の融点または軟化点より低く、かつ、界面活性剤を、粉体100重量部に対して1重量部以上30重量部以下含むことを特徴とする、連続気泡多孔質体。
【請求項2】
粉体がポリ乳酸系樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の連続気泡多孔質体。
【請求項3】
かさ密度が0.01g/cm以上0.2g/cm以下である、請求項1または2に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項4】
かさ密度0.001g/cm以上0.1g/cm以下の粉体およびバインダー成分を加熱により互いに融着して得られることを特徴とする、請求項1〜3何れか一項に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項5】
粉体が、加水分解処理を施したものである、請求項1〜4の何れか一項に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項6】
請求項1〜5何れか一項に記載の連続気泡多孔質体からなる、吸水材料。


【公開番号】特開2011−241262(P2011−241262A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112573(P2010−112573)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】