説明

生分解性天然多糖を含む被膜及び器具

生分解性天然多糖を含むin situで形成された生分解性閉塞が記載される。マトリックスは、突出カップリング基を有する複数の生分解性天然多糖から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性天然重合物質を含むin situで形成された生分解性閉塞物に関する。
【0002】
関連出願へのクロスリファレンス
仮出願ではない本出願は、2005年9月21日に出願された「ARTICLE AND COATINGS INCLUDING NATURAL BIODEGRADABLE POLYSACCARIDES AND USES THEREOF」という表題の同一出願人による仮出願第60/719,466号の利益、並びに2006年4月10日に出願され、そして「IN SITU OCCLUSION USING NATURAL BIODEGRADABLE POLYSACCHARIDES」という表題を付された同一出願人による仮出願第60/791,086号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
塞栓組成物は、in situでマトリックスを形成するために、そして塞栓性質を有する被膜を形成するために使用できる。塞栓組成物は、それ自身又は表面と結合して塞栓物質(embolic mass)を形成することにより液体の移動を調節するように使用できる。この様な組成物は、動脈瘤におけるエンドリークを塞ぐため、動脈瘤を充填するため、動静脈瘻孔及び動静脈奇形を治療するため、血管を閉塞させるため、そして卵管を閉塞させるために有用である。
【0004】
塞栓組成物は、体の所望の位置にデリバリーされ、そして次にその位置で重合して、in situで形成されたヒドロゲルを提供する。多くの非生分解性マクロマーシステムが記載されてきており、そして閉塞物質として体内で使用することが提案されてきた。例えば、米国特許第5,410,016号、第5,626,863号、及び第6,676,971号を参照のこと。
【0005】
しかしながら、現在のマクロマー技術は、決して理想的なものではない。多くのマクロマーシステムは、非生分解性ポリマーシステム、例えばポリ(ビニルアルコール)(PVA)などに基いている。一般的にこれらのマクロマーシステムから形成されたマトリックスは、分解されそして体により再吸収されることはない。動脈瘤は、動脈瘤に接触する組織又は臓器に圧力をかけるので、非生分解性物質から形成された閉塞物は、動脈瘤が縮み、そして隣接する組織への圧力を開放させることを一般的に許容しない。
【0006】
ポリグリコリド物質は、in vivoで使用される器具の製造に広く使用されてきた。ポリグリコリドはpH感受性であり、そして加水分解により分解される。これは安定性についての懸念を示しうる。ポリグリコリドから形成された器具は、表面分解というよりはむしろ塊としての分解(bulk degradation)を示す。in vivoでは、これは、器具の一部が除去されそして体液を通して体の異なる位置へと移動することをもたらし、これはこの第二の位置において問題を引き起こしうる。さらに、ポリグリコリド物質は、組織にうまく結合しない。接着しないことは、閉塞物質の形成部位、例えば動脈瘤において不所望な流れを局在する領域を導き得る。
【0007】
ポリグリコリドは酸性化合物に分解する。これらの酸性分解産物は、不所望な非感染性炎症応答に関与すると報告されてきた。これらの酸性分解産物は、ポリペプチドの一部の塩基残基と相互作用することによりポリペプチドの機能に影響を与えることもある。生分解性の器具がポリペプチドにより提供される生物活性と関係がある場合、この様な相互作用は、不所望である。
【0008】
塞栓組成物は、シーラント機能を医療器具に提供できるポリマー被膜の形態でありうる。生分解性シーラント組成物は、インプラント可能な医療器具に付随する繊維などの多孔表面を有する器具に使用されてきた。シーラント被膜は最初、一定期間液体に対し多孔表面を不浸透性とする。しかしながら、シーラント物質が分解し、そして体により吸収されるにつれ、組織に含まれる細胞は、多孔物質に浸透し、そしてシーラント物質を置き換えていく。こうして新たに形成された組織は、一定期間の間、被膜シーラントのもともとの機能を置き換えていく。
【0009】
動物由来シーラント物質、例えばコラーゲン及びゼラチンは、一般的に繊維グラフトを被膜するために使用される。これらの物質は、in vivoで吸収されうる。血液凝固タンパク質であるフィブリンもシーラント物質として使用されてきた。これらの使用にも関わらず、これらのタイプのシーラント物質の使用に関して欠点及び懸念がある。1の具体的な問題は、その製品に付き物であるバッチ間の変動のためこれらの動物ソースから一定のシーラント組成物を製造することが難しいということである。
【0010】
多くの場合、シーラント技術で用いられるコラーゲンは、非ヒト動物ソース、例えばウシソースから得られる。これらの場合、ウシコラーゲン製剤が、ヒト対象へと導入するのに不所望な汚染物質を含むことがある。不所望な汚染物質の一例は、牛海綿状脳症(BSE)を引き起こすプリオン粒子である。
【0011】
狂牛病とも名づけられるBSEは、感染性海綿状脳症、つまりTSE(スポンジの様に見える脳の悪化領域のため名づけられた)と呼ばれる進行性の神経疾患の群の一つである。TSEの様々な形態が報告され、例えば、ヒツジのスクレイピー並びにヘラジカ(elk)及びミュールジカの慢性消耗性疾患が含まれる。リサイクルされた動物部分の使用が、ヒツジのスクレイピーの狂牛病への種間汚染を引き起こしたと一般的に信じれられており、そして汚染された牛肉及びウシ製品が、この疾患のヒトの変異病であるクロイツフェルトヤコブ病(CJD)を招いた。
【0012】
動物ソース由来の製剤は、他の不所望な汚染物質、例えば抗原因子などを提供し得るというさらなる懸念が存在する。これらの抗原因子は、移植された機器の付近において局在化された免疫応答を促進し、そしてその機能を妨害してしまう。これらの因子は、感染並びに局所的炎症を引き起こしうる。
【0013】
合成物質が、シーラント組成物の製造において使用できる一方、これらの合成物質が、非天然型生成物への分解する能力を有する。これらの非天然製品は、少なくとも部分的に生体に対して毒性であるか又は免疫原性であり、そして移植部位、又はその周囲で炎症、並びに感染を引き起こす。
【発明の開示】
【0014】
本発明の1の態様では、生分解性天然多糖は、器具、例えば(例えば、in situ形成により)体内で形成されうる器具を製造するために使用される。幾つかの態様では、当該器具は、不定形であることもあり、例えば、マトリックス形成組成物を用いることにより、体の一部の中又は上で形成される生分解性天然多糖の重合物質でありうる。生分解性天然多糖の重合物質は、体内の標的部位、例えば動脈瘤又は内腔を閉塞するために使用できる。
【0015】
幾つかの態様では、in situで形成されたマトリックスなどの器具は、様々な医学状態又は適応症のうちの1以上のいずれかを治療する方法、例えば組織増殖又は機能、特に整形外科、歯科、及び骨グラフト適用のための組織増殖又は機能を回復、改善、及び/又は増強する方法において使用される。これらの機能は、宿主組織と接触させて生分解性多糖の重合化マトリックスを配置することにより提供されうる。当該マトリックスは、マトリックス間及びマトリックス中での新たな組織の形成を促進又は許容することにより、組織増殖又は機能を修復又は改善することができる。組織への影響は、生分解性多糖自身により引き起こされるか、又はマトリックス中に存在するか及び/又はマトリックスから放出されうる1以上の生物活性薬と組み合わせた生分解性多糖により引き起こされてもよい。組織機能に影響することができる代表的な生物活性薬としては、ペプチド、例えば組織回復プロセスに関与するペプチド、及びEGF、FGF、PDGF、TGF-β、VEGF、PD-ECGF又はIGFファミリーに属しているペプチド、そして骨形成タンパク質-2、つまりBMP-2から派生するペプチドを含む。生物活性薬は、細胞、例えば血小板でありうる。
【0016】
幾つかの態様では、当該器具は、放射線不透過剤を含むことができる。例えば、ヨウ素を含む放射線不透過剤は、生分解性天然多糖と結合しうる。ヨウ素は、多糖(例えばアミロース又はマルトデキストリン)と複合体を形成すると考えられており、当該多糖はヨウ素結合化合物として作用する。当該器具は、造影ステップが行なわれる医療手順を有利に改善することができる。例えば、ヨウ素を含む生分解性天然多糖から形成された生分解性閉塞物は、閉塞物に付随したヨウ素の密度に基いてより容易に可視化することができる。
【0017】
当該器具を製造するのに、複数の生分解性天然多糖は、生分解性天然多糖から突出しているカップリング基を介して互いに架橋される(つまり、1以上のカップリング基は化学的に多糖に結合されている)。幾つかの態様では、生分解性天然多糖上のカップリング基は、重合可能な基である。遊離ラジカル重合反応において、重合可能な基は、組成物中で一緒になって生分解性天然多糖を架橋することができ、それにより生分解性天然多糖マトリックスを形成でき、これは、in vivo形成されたマトリックスでありうる。
【0018】
本明細書に記載される天然生物活性多糖は、互いに結合することができて、マトリックスを形成する非合成多糖であり、当該マトリックスは、in situで形成されたマトリックスとして使用できる。生分解性天然多糖は、酵素的に分解されうるが、非酵素的に加水分解的に安定であるという利点を与える。これは、特に、生物活性薬デリバリーについて利点となる。なぜなら、幾つかの点で、本発明は、酵素媒介性分解の条件下で生物活性薬を放出することができるが、拡散によっては放出されないからである。その結果、本発明の器具から放出される生物活性薬の速度は、合成生分解性物質、例えばポリ(ラクチド)から製造される器具からの放出の速度とは基本的に異なっている。
【0019】
生分解性天然多糖として、植物又は動物などの天然ソースから得られる多糖及び/又は多糖誘導体を含む。代表的な生分解性天然多糖としては、マルトデキストリン、アミロース、シクロデキストリン、ポリアルジトール、ヒアルロン酸、デキストラン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、硫酸デルマタン、硫酸ヘパラン、硫酸ケラタン、デキストラン、硫酸デキストラン、ポリ硫酸ペントサン、及びキトサンが挙げられる。好ましい多糖は、低分子量のポリマーであって、分岐を持たないか又はほとんど持たないポリマーであり、例えばデンプン製品から派生されるか及び/又はデンプン製品に見られるポリマー、例えばアミロース及びマルトデキストリンである。
【0020】
アミロース及びマルトデキストリンポリマーの特別な有用性のため、幾つかの態様では、平均分子量500,000Da又はそれ未満、250,000Da又はそれ未満、100,000Da又はそれ未満、又は50,000Da又はそれ未満の平均分子量を有する生分解性天然多糖が使用される。幾つかの態様では、生分解性天然多糖は、500Da又はそれより大きい平均分子量を有する。幾つかの態様では、生分解性天然多糖は、約1000Da〜約10,000Daの範囲の平均分子量を有する。特定の分子量を有する生分解性天然多糖は、市販されているか、又は例えば、酸加水分解及び/又は生分解性天然多糖調製品、例えばデンプンの酸加水分解及び/又は酵素分解により製造できる。特定サイズ範囲の生分解性天然多糖を用いる決定は、組成物の物理的特徴(例えば粘度)、マトリクスの所望される切断割合、組成物中のほかのオプション部分(例えば、生物活性薬など)の存在に左右されうる。
【0021】
本発明の方法及び組成物に従って使用される天然の生分解可能な多糖は、低いコストで容易に利用でき、及び/又は確立された技術を用いて容易に製造することができる。
【0022】
生分解性天然多糖、例えばマルトデキストリン又はアミロースなどの使用は、in vivoで使用されうる器具などの器具の形成のため組成物において使用された場合に多くの利点を提供する。天然の生分解性多糖含有器具の分解は、例えば天然単糖又は二糖、例えば一般的な血清成分であるグルコースの放出をもたらし得る。さらに、一般的な血清成分、例えばグルコースへと分解される生分解性天然多糖の使用は、非天然化合物、又は体内でかなり低い濃度でしか見られない化合物へと分解される合成生分解性多糖の使用よりも許容されると考えられる。
【0023】
本発明の幾つかの態様では、この有利な特徴は、非動物由来であり、かつ個人に対する免疫原性リスク又は毒性リスクをほとんど示さないか又は全く示さない生成物へと分解される生分解性天然多糖、例えばアミロース及びマルトデキストリンなどの使用を反映する。本発明は、様々な医学的処置において使用されうる器具についての改善され、費用の安い、天然の生分解性多糖組成物を提供する。
【0024】
本発明の別の利点は、生分解性天然多糖含有マトリックスが、生分解性ポリマー、例えばポリ(ラクチド)から製造される他のマトリックスよりも加水分解に抵抗性であるということである。本発明の生分解性天然多糖の分解は、主に酵素に媒介され、室温条件下で生分解性天然多糖をほとんど加水分解しないか又は全く加水分解しない。これは、マトリクスをin vivoで配置する前では、生分解性天然多糖が実質的に安定のままであること(例えば、分解に抵抗性であること)を許容する。他の生分解性ポリマー、例えばポリ(ラクチド)又はポリ(ラクチド-コ-グリコリド)は、比較的中性のpH範囲(例えばpH6.5〜7.5)でさえ加水分解を受けやすく、その結果この利点をもたらすことはない。
【0025】
その結果、本発明は、生分解性天然多糖を含む組成物、器具及び製造方法を含む。その結果、水性環境の存在下で安定性を提供するという利点を有する。
【0026】
一の態様では、本発明は、生分解性の器具を製造するための貯蔵安定性組成物であって、当該貯蔵安定性組成物が、カップリング基を含む生分解性天然多糖を含む、当該組成物を提供する。これらの組成物は、本明細書に提供される詳細に従って得られるか又は調製でき、次に当該組成物が生分解性の器具を形成するために使用されるまで、貯蔵の間に生じる生分解性天然多糖の有意な分解を伴うことなく一定期間貯蔵される。従って、本発明は、生分解性の器具を製造する方法であって、カップリング基を含む生分解性天然多糖を含む生分解性の器具組成物を製造し;当該器具組成物を一定の時間貯蔵し、そして次に当該器具組成物を使用して生分解性の器具を製造することを含む、前記方法を提供する。幾つかの態様では、生分解性の器具は、体内で天然の生分解性多糖の重合を促進することにより、Insituで形成される。場合により、1以上の生物活性薬及び/又は微粒子は、器具組成物の貯蔵前又は貯蔵後に加えることができる。
【0027】
関連する態様では、本発明は、当該生分解性天然多糖を著しく分解する危険性を伴わずに水溶液へと晒す方法を行なうことができる利点を提供する。例えば、生分解性天然多糖は、添加合成反応及び精製ステップを含む合成ステップ又は合成後のステップにおいて、水溶液と接触されるか、或いは生分解性天然多糖を含む器具は、例えば滅菌ステップ又は生物活性薬の生分解性の器具への取り込みに関するステップで、水溶液と接触されうる。
【0028】
生分解性天然多糖を含有する器具の分解は、カルボヒドラーゼなどの生分解性天然多糖分解酵素を含み得る体液と接触されるように配置された場合に開始される。
【0029】
本発明は、大きな親水性生物活性薬、例えばポリペプチド、核酸及び多糖、並びにウイルス粒子及び細胞を、生分解性の器具からデリバリーする有用な方法を提供する。比較すると、マトリックスから拡散するには大きすぎる場合、非分解性薬剤デリバリーマトリックスの使用は、これらの大きな生物活性薬のデリバリーに有用ではないこともある。しかしながら、本発明の同じ態様に従って、生物活性薬を有する生分解性天然多糖の混合物を含む器具は、体内に配置できるか、又は体内で形成され、そしてマトリックスが分解するにつれ、生物活性薬は徐々にマトリックスから放出される。本発明の1の態様では、生物活性薬は、約10000Da又はそれより大きい分子量を有する。
【0030】
幾つかの態様では、本発明は、薬剤放出生分解性の器具であって、
(i)エチレン不飽和基を含む、好ましくはアミロース及びマルトデキストリンから選ばれる生分解性天然多糖、
(ii)開始物質、及び
(iii)ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び多糖の群から選ばれる生物活性薬
を含むものを提供する。
【0031】
本発明の別の態様では、生分解性天然多糖は、疎水性性質を有する生分解性マトリックスを提供するために、疎水性部分を用いて改変される。その結果、生分解性の器具は、1以上の突出カップリング基および1以上の突出疎水性部分を含む生分解性天然多糖から形成することができる。代表的な疎水性部分としては、脂肪酸及びその誘導体、及びC2-C18アルキル鎖が挙げられる。
【0032】
その結果、本発明の幾つかの態様では、生分解性天然多糖の改変により、生分解性でありかつ疎水性生物活性薬を放出できる器具の製造が可能になる。
【0033】
別の態様では、生分解性天然から突出している疎水性部分は、生物活性薬の性質を有する。マトリックスを分解する際に、疎水性部分は、生分解性天然ポリマーから加水分解され、そして放出して治療効果を提供することができる。治療的に有用な疎水性部分の一例は酪酸である。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、生分解性天然非還元多糖から形成される器具からデリバリーされる生物活性薬の安定性を改善するための方法及び器具を提供する。当該非還元多糖は、不活性なマトリックスを提供することができ、それにより感受性の高い生物活性薬、例えばタンパク質及び酵素の安定性を改善することができる。器具は、生物活性薬、例えばポリペプチド、と供に複数の生分解性天然非還元多糖を有するマトリックスを含むことができる。代表的な非還元多糖は、ポリアルジトールを含む。生分解性の非還元多糖は、長期間にわたり生物活性薬を放出する器具を形成するためにかなり有用でありうる。
【0035】
本発明は、in vivoで使用するために適している生分解性天然多糖を含む器具の製造を示す。これらの製品は、優れた物理的性質を示し、そして特定の機能、例えば生物活性薬デリバリー又はシーラント機能、が所望される適用において使用することに適している。例えば、粘弾性質を有する器具を製造することができる。本発明の1の態様では、当該器具は、27kPa〜30kPaの範囲の粘弾性モジュール値(elastic modulus value)を有する。
【0036】
本発明の幾つかの実施態様では、マトリックスの加工用の組成物を製造する方法は、有機溶媒の使用を必要としなかった。有機溶媒の使用は、身体的に有害でありうる。有機溶媒の使用は、天然の生分解性多糖に基く組成物中に場合により含まれることのある生物活性薬の活性を潜在的に破壊する可能性がある。
【0037】
本生分解性天然多糖含有器具の有利な特徴の多くは、開始物質、特に突出カップリング基を有する生分解性天然多糖により提供されると考えられる。幾つかの態様では、生分解性天然多糖は、突出重合可能基、例えばエチレン不飽和基を有する。好ましい態様では、分解性の重合可能なポリマー(マクロマー)は、生分解性天然多糖を、エチレン不飽和基を含む化合物と反応させることにより形成される。例えば、幾つかの場合、生分解性天然多糖は、エチレン不飽和基及びイソシアネート基を含む化合物と反応される。合成の別の例では、生分解性天然多糖は、酸化剤で処理されて、多糖上に反応性アルデヒド種を形成させ、そして次にエチレン不飽和基及びアミノ基を含む化合物と反応された。多糖マクロマーは、優れたのマトリックス形成能を有することが示された。
【0038】
合成は、生分解性天然多糖に所望される量の突出カップリング基を提供するために行なわれうる。所定量のカップリング基を有する生分解性天然多糖の使用は、所望される物理的性質を有する器具の形成を許容する。その結果、幾つかの態様では、本発明は、生分解性天然多糖1mgあたりカップリング基約0.7μmolの量の突出カップリング基を有する生分解性天然多糖を提供する。好ましくは、生分解性天然多糖あたりのカップリング基の量は、約0.3μmol/mg〜約0.7μmol/mgの範囲である。例えば、アミロース又はマルトデキストリンは、エチレン不飽和基を有する化合物との合成反応にかけられて、約0.3μmol/mg〜約0.7μmol/mgの範囲のエチレン不飽和基充填レベルを有するアミロース又はマルトデキストリンマクロマーを提供することができる。
【0039】
本発明の幾つかの態様では、開始物質は、器具形成のための生分解性天然多糖マトリックスの形成を促進するために使用される。当該開始物質は、独立した化合物であってもよいし、又は生分解性天然ポリマーから突出しているカップリング基を活性化し、そして複数の生分解性天然ポリマーのカップリングを促進するために使用される突出化学基であってもよい。生分解性天然多糖から突出しているカップリング基が重合可能な基である場合、開始物質は、遊離ラジカル重合反応に使用され、組成物中で一緒になって生分解性天然多糖の架橋を促進する。
【0040】
一の態様では、開始物質は、酸化剤/還元剤対、「レドックス対」を含んで、生分解性多糖の重合を促進する。生分解性の器具の製造において、酸化剤及び還元剤は、生分解性多糖の存在下で混合される。レドックス対を用いる1の利点は、組合わされた場合に、酸化剤と還元剤が、特に強力な開始システムを提供できるということである。比較的低い粘度を有する生分解性多糖組成物から、例えば器具の製造に有用であるマトリックスの形成を促進できるので、これは利点がある。これは、生分解性糖組成物が多くの適用に、特にin situ重合された器具の形成のために使用される場合に有用である。例えば、低粘度の組成物は、小さいゲージデリバリー通路を通過して、比較的簡単にin situで重合できる組成物を提供することができる。
【0041】
本発明の幾つかの態様では、組成物の粘度は、約5センチポイズ(centi Poise)(cP)超、又は約10cP以上である。本発明の別の態様では、組成物の粘度は、約5cP又は10cP〜約700cPであり、そして幾つかの態様では、約5cP又は10cP〜250cPであり、そして幾つかの態様では約5cP又は10cP〜約45cPである。幾つかの態様では、組成物の粘度は、約5cP又は10cP超であり、そして組成物中の生分解性多糖は、500,000Da以下、250,000Da以下、100,000Da以下、又は50,000Da以下の平均分子量を有する。
【0042】
さらに、本発明は、in situで分解可能なマトリックスを形成するために使用できるレドックス成分は、細胞生存試験により示されるように生体適合性である。
【0043】
器具を製造する方法は、以下のステップ:
(a)カップリング基及びレドックス対の第一メンバー(例えば酸化剤)を含む生分解性天然多糖を含む第一組成物を提供し;そして
(b)第一組成物をレドックス対の第二メンバー(例えば還元剤)を含む第二組成物と混合する
を含むことができる。幾つかの態様では、第二組成物は、生分解性天然多糖を含む。例えば、第一組成物は、(a)カップリング基及び酸化剤を有する生分解性天然多糖を含むことができ、そして第二組成物は、(b)カップリング基および還元剤を有する生分解性天然多糖を含むことができる。幾つかの態様では、第一組成物が第二組成物と組み合わせられた場合、最終組成物は、約5cP以上でありうる。
【0044】
幾つかの態様では、本発明は、体内の標的部位で生分解性閉塞物を計測する方法を提供する。幾つかの場合、当該標的部位は、動脈瘤などの血管系に関する。当該方法は、以下のステップ:
(a)重合可能基及びレドックス対の第一メンバーを含む生分解性天然多糖を含む組成物を提供し;
(b)当該第一組成物を体内の標的部位にデリバリーし;そして
(c)当該組成物をレドックス対の第二メンバーと接触させる
を含む。当該接触ステップにおいて、当該レドックス対は、生分解性天然多糖の重合を開始して、標的部位に生分解性の閉塞物を形成する。
【0045】
幾つかの態様では、接触ステップは、レドックス対の第二メンバーを含む第二組成物をデリバリーすることを含む。標的部位で第一及び第二組成物を混合することは、レドックス反応をもたらし、そして重合可能基を介して生分解性天然多糖を架橋し、それにより生分解性閉塞物を形成する。
【0046】
幾つかの態様では接触ステップにおいて、標的部位にデリバリーされるように構成された器具は、レドックス対の第二メンバーを伴っている。幾つかの態様では、当該器具は、コイル、ワイヤー、及びストリングからなる群から選ばれる。幾つかの態様では、動脈瘤標的部位の治療において、当該器具は、動脈瘤の中又は近くに配置される器具から選ぶことができる。第二メンバーは、器具から放出可能であるか又は放出されない酸化剤でありうる。接触ステップでは、生分解性天然多糖の重合は、動脈流に挿入される器具によって生じる生分解性の閉塞物を形成する。例えば、神経動脈瘤(neuroaneurym)コイルと関連する生分解性閉塞物の形成は、コイルのみでの治療を超える明らかな改善を示す。なぜなら、動脈瘤は、実質的に形成されたマトリックスで閉塞されることがあるからである。重合可能な組成物は、慣用される神経動脈瘤コイルと使用できるが、生分解性である器具とも使用することができる。
【0047】
幾つかの態様では、第一組成物を標的部位(例えば神経動脈瘤など)にデリバリーするステップは、2.3フレンチ(french)未満の直径を有するマイクロカテーテルを用いて行なわれる。本発明の生分解性天然多糖は、これらの小直径のマイクロカテーテルを通過することができ、そしてさらに重合して所望される物理的性質で生分解性の閉塞物を形成することができるかなり低粘度の組成物を調製することを許容する。
【0048】
別の態様では、レドックス対の第一メンバー及び第二メンバーは、組成物が標的部位にデリバリーされる前に混合される。本発明は、レドックス対の第一及び第二メンバーが生分解性天然多糖の存在下で混合された後かなりの時間が経ってから所望の物理的性質を有するマトリックスが形成されるということを示す。組成物が重合し、そしてデリバリービヒクルを妨げる危険性を伴わずに標的部位への組成物のデリバリーが行なわれ得るので、この動作時間の定まったアンプル(ample set up time)は利点を有する。当該方法は、以下のステップ:
(a)重合可能基、レドックス対の第一メンバー、及びレドックス対の第二メンバーを含む生分解性天然多糖を含む組成物を提供し;
(b)組成物を体内の標的部位にデリバリーし;そして
(c)体内の標的部位に生分解性閉塞物を形成させる
を含む。本発明は、レドックス対のメンバーを混合した約20秒から約10分の範囲の時間で半硬質(semi-firm)又はソフトゲルの性質を有するマトリックスを形成できる組成物を提供する。
【0049】
幾つかの態様では、重合可能な組成物は、線維化促進剤を含みうる。線維促進剤を含む生分解性閉塞は、閉塞の付近において迅速かつ局在化された線維化応答を促進できる。これは、閉塞に伴って、凝血因子の集積及びフィブリン塊の形成を導く。次に、これは動脈瘤が回復する可能性を改善する。幾つかの態様では、線維化促進薬剤はポリマーである。当該ポリマーは、天然ポリマー、例えばコラーゲンに基いていることもあるし、又は合成ポリマーに基いていることもある。
【0050】
本発明の生分解性天然多糖の使用は、体の所望される位置を閉塞する多くの利点を提供する。所望される程度の生分解性を有する閉塞物は、多糖間の架橋度を制御することによりin situで形成できる。これは、in vivoにおける閉塞物の寿命の調節を可能にする。この調節は、回復応答を促進することができる。さらに、当該閉塞物は、他の生分解性ポリマーに一般的であるバルクエロージョン(blulk erosion)とは対照的に、表面エロージョン(surface erosion)によって分解する。次に、表面エロージョンは、閉塞形成部位から分解された閉塞物の粒子が、体内の異なる位置を閉塞させる可能性を除去することによって、安全性を改善する。さらに、in situプロセスの間に標的部位から失われた重合していない物質は、第二の位置において無害な物質に分解される。
【0051】
酸化剤は、無機又は有機酸化剤、例えば酵素から選択され、還元剤は無機又は有機還元剤、例えば酵素から選択されうる。代表的な酸化剤としては、過酸化物、例えば過酸化水素、金属酸化物、及びオキシダーゼ、例えばグルコース・オキシダーゼが挙げられる。代表的な還元剤としては、例えばLi、Na、Mg、Fe、Zn、Alなどの陽性元素金属の塩及び誘導体、並びにレダクターゼが挙げられる。1の態様では、還元剤は、酸化剤と混合された場合、2.5mM以上の濃度で、組成物中に存在する。他の試薬、例えば過硫酸の金属塩又はアンモニウム塩などは、組成物中に存在して、生分解性多糖の重合を促進する。
【0052】
レドックス重合を用いて形成された器具、例えば生分解性閉塞物は、その結果、重合された基、還元された酸化剤、及び酸化された還元剤を介して結合された複数の生分解性天然多糖を含みうる。
【0053】
本発明は、生分解性でありかつ生物活性薬を放出できる器具を製造する代わりの方法も提供する。器具は、以下の:
(a)第一カップリング基を含む生分解性天然多糖、
(b)第一カップリング基と反応する第二カップリング基を含む生分解性天然多糖、及び
(c)生物活性薬
を混合することを含む方法により形成できる。当該器具は、試薬(a)が(b)と反応して、生分解性天然多糖を結合して、生物活性薬である試薬(c)を含む器具を形成する場合に、部分液又は完全に形成できる。
【0054】
幾つかの態様では、本発明は、生物活性薬、並びに突出カップリング基を有するアミロース及びマルトデキストリンなどの生分解性天然多糖を含む生分解性微粒子の使用を利用する。
【0055】
微粒子は、生分解性天然多糖から形成される器具に含まれてもよい。例えば、微粒子は、本発明の生分解性天然多糖から形成された移植可能な医療器具に含まれるか、又はin situで形成された器具に含まれうる。
【0056】
別の態様では、本発明は、多孔表面を有するインプラント可能な医療器具、例えばグラフト、パッチ、及び創傷包帯と組み合わせて特に有用であるシーラント物質を製造するための組成物及び方法を提供する。幾つかの態様では、進歩性のある組成物は、インプラント可能な医療器具、特に多孔表面を含むインプラント可能な医療器具用のシーラント被膜を製造するために使用できる。
【0057】
シーラント被膜は、被膜器具の表面付近で、血液などの体液の移動についてバリアを提供しうる。例えば、生分解性天然多糖に基くシーラント被膜は、密封を形成することにより、器具表面で止血することができる。シーラント被膜中の生分解性天然多糖が徐々に分解し、そしてシーラント被膜が細胞及び組織修復に関与する他の因子により置き換えられるにつれて組織層が形成される。分解プロセスの間に、生分解性天然多糖分解産物、例えば天然単糖又は二糖、例えばグルコースが、シーラント被膜から放出される。これは、理想的なin vivo分解産物であると考えられる。なぜなら、グルコースは一般的に体内に見られ、そして分解/浸潤の間の組織修復に関与する細胞により利用されうるからである。浸潤した組織の増殖は、生分解性天然多糖含有シーラント被膜の機能を徐々に置き換える。
【0058】
本発明の別の特別な利点は、グルコースの放出が、生分解性天然多糖の分解過程及び組織浸潤過程が、強力な炎症応答を促進する可能性を低下させることである。なぜなら、生分解性天然多糖に基くシーラント被膜が、非抗原性であるか又は低い抗原性しか有さない物質へと分解することができるからである。別の利点は、分解産物が、疾患を引き起こし得るほかの物質であって、動物由来調製品(例えばウシコラーゲン調製品)には潜在的に存在する物質、例えば微生物、ウイルス、又はプリオン物質などを含まないということである。
【0059】
生分解性天然多糖、例えばアミロース又はマルトデキストリンポリマーなどを含む本発明のシーラント組成物であって、一緒になって医療機器上にマトリックス(少なくともシーラント被膜の一部)を形成することができるシーラント組成物は、シーラント被膜が分解するにつれて放出され得る生物活性薬を含むことができる。
【0060】
幾つかの態様では、本発明は、(i)カップリング基を含む生分解性天然多糖、及び(ii)開始物質を含む生分解性シーラント組成物であって、ここで当該カップリング基が当該開始物質により活性化でき、そして複数の生分解性天然多糖のカップリングを促進することができる、組成物を提供する。好ましくは、生分解性天然多糖は、アミロース又はマルトデキストリンなどのポリマーである。幾つかの態様では、シーラント組成物は、生物活性薬を含むことができる。開始物質は、生分解性天然多糖から独立しているか、生分解性天然多糖ポリマーから突出しているか、又は生分解性天然多糖ポリマーから突出しかつ独立していることもある。
【0061】
従って、本発明は、シーラント被膜を有する表面を製造する方法を提供する。シーラント被膜表面は、多孔表面を有する医療機器又は器具上に調製される。当該方法は、以下の試薬:(a)開始物質、及び(b)カップリング基を含む生分解性天然多糖を表面上に1以上のステップで配置することを含む。幾つかの態様では、生物活性薬は表面上に配置される。1の好ましい態様では、生物活性薬は、プロトロンビン又は凝血促進因子である。これらの態様では、成分が表面上に配置された後に、開始物質を活性化して、組成物中に存在する生分解性天然多糖を結合し、それにより表面上に、生物活性薬を含む生分解性天然多糖被膜を形成する。
【0062】
活性化ステップの間に、当該生分解性天然多糖を開始物質と接触させ、そして当該開始物質を活性化して、そのカップリング基を介して2以上の生分解性天然多糖のカップリングを促進する。好ましい態様では、生分解性天然多糖は、重合可能な基、例えばエチレン不飽和基を含み、そして開始物質は、重合可能な基の遊離ラジカル重合を開始することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本明細書に記載される本発明の実施態様は、包括的であることを意図せず、また以下の詳細な記載に従って開示される形態そのものに本発明を制限することを意図しない。むしろ、実施態様は、他の当業者が本発明の原理及び実施を認識しかつ理解することができるように選択され、そして開示されている。
【0064】
本明細書に言及される刊行物及び特許の全ては本明細書に援用される。本明細書に開示される刊行物及び特許は、単にその開示のために提供されている。本明細書のどれも本発明者が、本明細書で引用した任意の刊行物及び/又は特許を含む全ての刊行物及び/又は特許を予期できないということを認めるものとして解釈すべきではない。
【0065】
一の態様では、本発明は、生分解性の器具、例えば医療インプラント又はin vivoで形成されるマトリックスなどの製造方法を提供する。生分解性の器具は、生物活性薬の放出のために使用することができ、そしてこの様式で生物活性薬放出インプラント又はデポーとして機能することができる。幾つかの態様では、本発明の生分解性の器具は、所望の適用に許容される期間のうちに分解する。
【0066】
幾つかの態様では、生分解性の器具は、インプラント部位で機械的性質を提供し、そしてこれらの機械的性質をこれらがもはや必要なくなるまで維持する医療インプラントである。この期間の経過後に、当該医療インプラントは、上記性質が最早医療インプラントにより提供されない程度にまで分解され、そして生分解性成分は、吸収され及び/又は体外から排出される。幾つかの実施態様では、医療インプラントはゆっくり分解し、そして周囲の組織が回復するにつれ当該組織に適切な割合で応力を転移させ、そしてかって当該医療機器により生じていた応力を引き受けることができる。
【0067】
生分解性器具として、カップリング基を有する生分解性天然多糖が挙げられる。代表的な生分解性天然多糖は、アミロース及びマルトデキストリンを含む。
【0068】
本発明のさらに別の実施態様では、シーラント被膜は機器上に形成される。当該シーラント被膜は、生分解性マトリックスと、場合により1以上の生物活性薬、例えばプロトロンビン薬を含む。
【0069】
本発明のシーラント被膜は、少なくとも最初は、体内の液体が浸透できないバリアを多孔表面上に提供する。当該シーラント被膜は徐々に分解し、そしてその機能は、多孔物質に浸潤する組織により置き換えられる。その結果、シーラント被膜は特別な性質、例えば生分解性及び相対不浸透性(つまり、シーラント被膜の分解に対して)を有する。シーラント被膜は、柔軟であり及び/又は共形であり、そして柔軟性、弾性、及び曲げ性などの性質を有しうる。
【0070】
本明細書で使用される場合、シーラント被膜の機能に関して使用される不浸透性は、シーラント被膜が会合している物質を通した大量の液体又は流体の移動がかなり低下することを指す。例えば、シーラント被膜は、血液を透過させない。生分解性天然多糖に基くシーラント被膜が分解し、そして組織により置き換えられるので、不透過性は維持される。
【0071】
本明細書に記載される場合、「生分解性天然多糖」は、酵素的に切断されないが、一般的に非酵素的な加水分解に対し安定である非合成多糖を指す。生分解性天然多糖は、天然ソース、例えば植物又は動物から得られる多糖及び/又は多糖誘導体を含む。生分解性天然多糖は、生分解性天然多糖から加工又は改変される任意の多糖を含む(例えば、マルトデキストリンは、デンプンから加工された生分解性天然多糖である)。代表的な生分解性天然多糖として、アミロース、マルトデキストリン、シクロデキストリン、ポリアルジトール、ヒアルロン酸、デンプン、デキストリン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、デキストラン硫酸、ペントサンポリ硫酸、及びキトサンが挙げられる。好ましい多糖は、低分子量ポリマーであって、分岐を持たないか又はほとんど持たないポリマーであり、例えばデンプン調製品から生成され及び/又はデンプン調製品に見られるポリマー、例えばアミロース及びマルトデキストリンである。その結果、生分解性天然多糖は、実質的に非分岐又は非分岐ポリ(グルコピラノース)ポリマーでありうる。
【0072】
アミロース及びマルトデキストリンポリマーの特別な有用性のため、生分解性天然多糖が500,000Da以下、250,000Da以下、100,000Da以下、又は50,000Da以下の平均分子量を有することが好ましい。生分解性天然多糖が500Da以上の平均分子量を有することが好ましい。生分解性天然多糖の特に好ましい粒子サイズは、約1000Da〜約10,000Daの範囲内である。特定の分子量の生分解性天然多糖は、市販されているか又は調製することができる。特定のサイズ範囲を有する生分解性天然多糖の使用の決定は、組成物の物理的特徴(例えば、粘度)、マトリックスの所望される分解速度、組成物中に含まれるオプションの他の成分の存在、例えば生物活性薬などの因子に左右されうる。
【0073】
本明細書に使用される場合、「アミロース」又は「アミロースポリマー」は、α-1,4結合により結合される繰り返しのグリコピラノースユニットを有する直線状のポリマーを指す。幾つかのアミロースポリマーは、α-1,6結合を介したかなり少量の分岐(結合の約0.5%未満)を有するが、直線状(未分岐)アミロースポリマーが有するのと同じ物理的性質を示すことができる。一般的に、植物ソースから得られたアミロースポリマーは、約1×106Da以下の分子量を有する。比較として、アミロペクチンは、α-1,4結合により結合される繰り返しのグルコピラノースユニットを有して直線状の部分を形成し、そして当該直線部分がα-1,6結合を介して結合される分岐状ポリマー。分岐点結合は、一般的に全結合の1%超であり、そして典型的に全結合の4%〜5%である。一般的に、植物ソースに由来するアミロペクチンは、1×107Da以上の分子量を有する。
【0074】
アミロースは、様々なソースから得ることができるか、又は様々なソース中に存在している。一般的に、アミロースは非動物ソース、例えば植物ソースから得られる。幾つかの態様では、生成されたアミロース調製品は、カップリング基を有するアミロースポリマーを調製するための開始物質として使用される。別の態様では、開始物質として、アミロースは、他の多糖を含む混合物中で使用できる。
【0075】
例えば、幾つかの態様では、高アミロース含量を有するデンプン調製品、精製アミロース、合成アミロース又は濃縮アミロース調製品は、カップリング基を有するアミロースの製造において使用できる。デンプンソースでは、アミロースは一般的に分岐多糖であるアミロペクチンと一緒に存在している。本発明に従うと、アミロースを含む被膜組成物を使用することが好ましく、ここで当該アミロースは、組成物中に存在する場合、アミロペクチンより多い量で組成物中に存在する。例えば、幾つかの態様では、高アミロース含量を有するデンプン調製品、精製アミロース、合成アミロース又は濃縮アミロース調製品は、カップリング基を有するアミロースポリマーの製造において使用できる。幾つかの実施態様では、組成物は、アミロースを含む多糖の混合物を含み、ここで、多糖の混合物中のアミロース含量は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上である。別の実施態様では、組成物は、アミロース及びアミロペクチンを含む多糖の混合物を含み、そしてここで多糖の混合物中のアミロペクチン含量は30%以下、又は15%以下である。
【0076】
幾つかの場合、本発明では、非減退性デンプン(non-retrograding starches)、例えばもちデンプン(waxy starch)でありうる。スターチ中に存在するアミロペクチンの量は、α-1,6結合を切断し、アミロペクチンをアミロースへと脱分岐するアミロペクチナーゼでデンプンを処理することにより低減されうる。
【0077】
幾つかの場合、突出カップリング基を有するアミロースポリマー(例えば、突出エチレン不飽和基を有するアミロース)を調製するために、合成反応が行なわれ、そして合成の前、間、及び/又は後に、ステップが行なわれて、アミロースを濃縮し、又はアミロースを精製する。
【0078】
特定サイズのアミロース又は特定サイズの組合せが使用されうる。特定サイズ範囲のアミロースの選択は、適用、例えば被膜される表面のタイプ又は表面の多孔性に左右されうる。幾つかの実施態様では、500,000Da以下、250,000Da以下、100,000Da以下、50,000Da以下、好ましくは500Da超、或いは好ましくは1000Da〜10,000Daの範囲の平均分子量を有するアミロースが使用される。特定の分子量のアミロースは、市販されるか、又は調製できる。例えば、平均分子量70、110、及び320を有する合成アミロースは、Nakano Vinegar Co., Ltd.(愛知、日本)から得られる。特定サイズ範囲のアミロースの使用の決定は、組成物の物理的性質(例えば粘度)、マトリックスの所望される分解速度、組成物中の他のオプションの成分(例えば、生物活性薬など)の存在などの因子により左右される。
【0079】
所望される加水分解の程度まで85〜90℃の温度で熱安定性α-アミラーゼでデンプンスラリーを加水分解し、そして次に第二熱処理によりα-アミラーゼを不活性化することによって、マルトキストリンは一般的に作成される。マルトデキストリンは、ろ過により精製され、次にスプレー乾燥して最終生成物にした。マルトデキストリンは、一般的に、デキストロース相当量(Dextrose Equivalent)(DE)値により特徴決定される。当該値は、加水分解の程度に関し、DE=デキストロース分子量/デンプン加水分解産物の平均分子量(number-averaged MW starch hydrolysate)×100として定義される。
【0080】
全体としてデキストロース(グルコース)へと加水分解したデンプン調製品は、100のDEを有し、一方デンプンは約0のDEを有する。0より高いが、100未満のDEは、デンプン加水分解産物のミーンアベレージ分子量(mean-average molecular weight)を特徴決定し、そしてマルトデキストリンは、20未満のDEを有すると考えられる。例えば、約500〜5000Daの範囲の様々な分子量のマルトデキストリンが、市販されている(例えば、CarboMer、San Diego, CA)。
【0081】
生分解性天然多糖のほかの意図されるクラスは、生分解性天然非還元多糖である。非還元多糖は、不活性マトリックスを提供でき、タンパク質及び酵素などの感受性生物活性薬の安定性を改善する。非還元多糖は、非還元二糖(アノマー中心を介して結合された2個の単糖)、例えばトレハロース(α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシド)及びスクロース(β-D-フルクトフラノシルα-D-グルコピラノシド)のポリマーを指す。代表的な非還元多糖は、GPC(Muscatine, Iowa)から利用できるポリアルジトールである。別の態様では、多糖は、グルコピラノシル・ポリマー、例えば繰り返しの(1→3)O-β-D-グルコピラノシル・ユニットを含む。
【0082】
幾つかの態様では、組成物は、突出カップリング基以外の化学改変を含む生分解性天然多糖を含むことができる。この態様を明らかにするために、エステル化水酸基を有する改変アミロースを製造し、そして本発明の方法とあわせて組成物中で使用した。水酸基を有する他の生分解性天然多糖を同じ様式で改変してもよい。これらの改変のタイプは、特に所望の適用に適している組成物を作り上げる生分解性天然多糖の性質を変化又は改善することができる。多くの化学的に改変されたアミロースポリマー、例えば化学的に改変されたデンプンは、少なくとも許容される食品添加物であると考えられてきた。
【0083】
本明細書に使用される場合「改変生分解性天然多糖」は、カップリング基又は開始基により提供されるものとは異なる天然の生分解性多糖についての化学的改変を指す。カップリング基を有する改変されたアミロースポリマー(及び/又は開始基)は、本発明の組成物および方法において使用できる。
【0084】
この態様を実証するために、改変されたアミロースが記載される。アミロースの水酸基を化学的に改変することにより、アミロースの物理的性質を変化できる。アミロースの水酸基は、溶液中のアミロースポリマーとの間で広範囲の水素結合を可能にし、そして次にアミロース含有組成物、例えば溶液中のデンプン(減退性)を過熱し、次に冷却した際に観察される粘性溶液をもたらし得る。アミロースの水酸基は、分子間の水素結合を低減し又は除去するように改変されて、溶液中のアミロースの物理的性質を変化させることができる。
【0085】
その結果、幾つかの実施態様では、アミロースなどの生分解性天然多糖は、水酸基への1以上の改変を含むことができる。ここで、当該改変は、カップリング基により提供される改変とは異なっている。改変は、酢酸無水物(及びアジピン酸)、コハク酸無水物、1-オクテニルコハク酸無水物、塩化リン、トリメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、及びモノリン酸ナトリウムとのエステル化;プロピレン・オキシドとのエーテル化、塩酸及び硫酸での酸改変;及び過酸化水素、過酢酸、過マンガン酸カリウム、及び次亜塩素酸ナトリウムでの漂白又は酸化を含む。
【0086】
改変アミロースポリマーの例として、カルボキシメチルアミロース、カルボキシエチルアミロース、エチルアミロース、メチルアミロース、ヒドロキシエチルアミロース、ヒドロキシプロピルアミロース、アセチルアミロース、アミノアルキルアミロース、アリルアミロース、及び酸化アミロースが挙げられる。他の改変アミロースポリマーは、コハク酸アミロース及びオキテニルコハク酸アミロース(oxtenyl succinate amylose)が挙げられる。
【0087】
本発明の別の態様では、生分解性天然多糖は、疎水性を有する生分解性マトリックスを提供するために、疎水性部分で改変される。代表的な疎水性部分としては、以前に記載されており、脂肪酸及びその誘導体、並びにC2-C18アルキル鎖が挙げられる。アミロース又はマルトデキストリンなどの多糖は、脂肪酸無水物などの疎水性部分を有する化合物で改変できる。多糖の水酸基は、ラクトンの開環を引き起こすことができて、突出開環鎖状水酸基エステルを提供する。
【0088】
幾つかの実施態様では、生分解性天然から突出している疎水性部分は、生物活性薬の性質を有する。疎水性部分は、生分解性天然ポリマーから加水分解でき、そしてマトリックスから放出されて、治療効果を提供する。治療に有用な親水性部分の一例は、酪酸であり、酪酸は腫瘍細胞分化及びアポトーシスを誘発することが示されており、そして癌及び他の血液疾患の治療に有用であると考えられる。治療効果を提供する疎水性部分は、天然化合物でありうる(例えば酪酸)。その結果、結合された治療薬を有するマトリックスの分解は、全て天然の分解産物をもたらし得る。
【0089】
本発明に従って、カップリング基を含む生分解性天然多糖は、器具を形成するために使用される。他の多糖は、組成物中に存在してもよい。例えば、2以上の生分解性天然ポリマーは、器具を形成するために使用される。例として、アミロースと、1以上の生分解性天然多糖(類)、及びマルトデキストリンと1以上の生分解性天然の多糖(類)が挙げられ;1の態様では、組成物は、アミロース及びマルトデキストリンの混合物を、場合により別の生分解性天然多糖と含む。
【0090】
1の好ましい実施態様では、アミロース又はマルトデキストリンは、主な多糖である。幾つかの実施態様では、組成物は、アミロース又はマルトデキストリンとを含む多糖の混合物を含み、そして当該多糖の混合物におけるアミロース又はマルトデキストリンの含量は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85%重量以上である。
【0091】
精製又は濃縮アミロース調製品は、市販されているか、又はクロマトグラフィーなどの標準的な生化学技術を用いて製造できる。幾つかの態様では、高アミロースコーンスターチが使用できる。
【0092】
本明細書に使用される場合、「カップリング基」は、
(1) 反応性化学種を形成できる化学基、ここで当該化学種は同一又は類似の化学基と反応して生分解性天然多糖を連結できる結合を形成する(例えば、ここで反応性化学種の形成は、開始剤により促進することができる);又は
(2)2個の異なる化学基の対、ここで当該対は、特異的に反応して生分解性天然多糖を連結できる結合を形成する、
を含むことができる。カップリング基は、任意の適切な生分解性天然多糖、例えば本明細書に例示されるアミロース及びマルトデキストリンポリマーに結合できる。
【0093】
意図される反応基は、以下の表1に示される反応基A及び対応する反応基Bを含む。組成物の製造のために、基Aからの反応基を選択し、そして生分解性天然多糖の第一セットにカップリングし、そして対応する反応基Bを選択し、そして生分解性天然多糖の第二セットにカップリングさせた。反応基A及びBは、それぞれ第一及び第二カップリング基を表すことができる。少なくとも1及び好ましくは2、又は2以上の反応基は、個々の生分解性天然多糖ポリマーへと結合する。生分解性天然多糖の第一及び第二セットを混合でき、そして必要に応じて熱化学的に反応して、生分解性天然多糖のカップリングを促進し、そして生分解性天然多糖マトリックスの形成を促進する。
【0094】
【表1】

【0095】
アミンは、ヒドラジド(R-NH-NH2)を含む。
【0096】
例えば、適切なカップリング対は、求電子基を有する生分解性天然多糖と、求核基を有する生分解性天然多糖である。適切な求電子-求核対の例は、それぞれN-ヒドロキシスクシンイミド-アミン対である。別の適切な対は、オキシラン-アミン対である。
【0097】
幾つかの態様では、本発明の生分解性の多糖は、生分解性天然多糖あたりの少なくとも1、そしてより一般的に1超のカップリング基を含み、複数の生分解性天然多糖が、直線状及び/又は分岐状にカップリングされることを許容する。幾つかの好ましい実施態様では、生分解性天然多糖は、2以上の突出カップリング基を含む。
【0098】
幾つかの態様では、生分解性天然多糖上のカップリング基は重合可能な基である。遊離ラジカル重合反応では、重合可能な基は、組成物中で生分解性天然多糖を一緒に連結することができ、それにより生分解性生分解性天然多糖マトリックスを形成する。
【0099】
好ましい重合基は、エチレン不飽和基である。適切なエチレン不飽和基として、ビニル基、アクリル酸基、メタクリル酸基、エタクリレート基、2-フェニルアクリル酸基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、イタコネート基、及びスチレン基が挙げられる。異なるエチレン不飽和基の組み合わせは、アミロース又はマルトデキストリンなどの生分解性天然多糖上に存在しうる。
【0100】
突出カップリング基を有する生分解性天然多糖の製造では、任意の適切な合成方法が使用されうる。適切な合成スキームは、典型的に、例えばアミロース又はマルトデキストリンなどの生分解性天然多糖上での例えば水酸基の反応に関する。合成方法は、生分解性天然多糖骨格から突出しているカップリング基の所望の数を産生する為に改変され得る。例えば、水酸基は、カップリング基含有化合物と反応できるか、又はカップリング基含有化合物と反応するように改変できる。アクリレート基の数及び/又は密度は、本方法を用いて、例えば多糖基含量に対する反応部分の相対濃度を調節することにより制御されうる。
【0101】
実施の幾つかの様式では、生分解性多糖は、1mgの生分解性天然多糖あたりの約0.7μMの量のカップリング基の突出カップリング基を有する。好ましい態様では、生分解性天然多糖あたりのカップリング基の量は、約0.3μM/mg〜約0.7μM/mgの範囲である。例えば、アミロース又はマルトデキストリンは、アクリレート基含有化合物と反応して、約0.3μM/mg〜約0.7μM/mgの範囲のアクリレート充填レベルを有するアミロース又はマルトデキストリンマクロマーを提供する。
【0102】
本明細書で使用される場合、「開始物質」は、カップリング基から反応化学種の形成を促進することができる化合物又は1以上の化合物を指す。例えば、開始物質は、カップリング基を有する生分解性天然多糖の遊離ラジカル反応を促進することができる。1の実施態様では、開始物質は、照射により活性化される光反応性の基(光開始物質)である。幾つかの実施態様では、開始物質は、骨格及びポリマーの骨格から突出している1以上の開始基を有するポリマーを含む「開始ポリマー」でありうる。
【0103】
幾つかの態様では、開始物質は、光感受性であり、かつ有利ラジカル重合反応を介してアミロースポリマーのカップリングを促進するように活性化されうる化合物である。これらの活性物質のタイプは、本明細書で「光開始物質」と呼ばれる。幾つかの態様では、組成物中に存在する場合、生物活性薬に対して全く影響を与えないか又は最小の影響しか与えない光の波長により活性化される光開始物質を使用することが好ましい。光開始物質は、アミロースポリマーとは独立しているかシーラント組成物中に存在することもあるし、又はアミロースポリマーから突出して存在することもある。
【0104】
幾つかの実施態様では、光開始は、分子内又は分子間水素引き抜き反応を促進する基を用いて生じる。これらの開始システムは、さらなるエネルギー伝達アクセプター分子を加えることなく、そして非特異的水素引き抜きを用いることなく使用できるが、より一般的にエネルギー伝達アクセプター、典型的に四級アミンを用いて使用される。当該四級アミンは、アミノアルキルラジカル及びケチルラジカルの両方の形成をもたらす。水素引き抜き反応を示し、かつ重合開始システムにおいて有用である分子の例として、ベンゾフェノン、チオキサントン、及びカンフォルキノンが挙げられる。
【0105】
幾つかの好ましい実施態様では、光開始物質は、1以上の荷電基を含む。荷電された基の存在は、(アリールケトンなどの光反応性基を含み得る)光開始物質の水性システム中での溶解性を増加させ、その結果、改良された組成物を提供する。適切な荷電基は、例えば有機酸、例えばスルホン酸、リン酸、カルボン酸などの塩、並びにオニウム基、例えば四級アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、プロトン化アミンなどを含む。本実施態様では、適切な光開始物質は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アンスラキノン、アンスロン、アンスロン様複素環、及びそれらの誘導体から選ばれる例えば1以上のアリールケトン光基、及び例えば本明細書に記載される1以上の荷電基を含み得る。これらのタイプの水溶性光開始物質の例は、米国特許第6,077,698号に記載された。
【0106】
幾つかの態様では、光開始物質は、長波長紫外線(UV)及び目に見える光の波長により活性化される化合物である。例えば、当該開始物質は、光還元性又は光酸化可能な色素を含む。光還元可能な色素は、四級アミンなどの化合物と組み合わせて使用できる。四級アミンは、色素のラジカルアニオンを産生し、そして四級アミンのラジカルカチオンを産生する誘導性トリプレットをインターセプトする。光感受性反応性を示し、かつ開始物質として有用な分子の例として、アクリジンオレンジ、カンフォルキノン、エチル エオシン、エオシンY、エリスロシン、フルオレセイン、メチレングリーン、メチレンブルー、フロキシム(phloxime)、リボフラビン、ローズベンガル、チオニン、及びキサンチン色素が挙げられる。これらのタイプの光開始物質の使用は、光感受性生物活性薬が組成物に含まれる場合に特に利点がある。
【0107】
その結果、別の態様では、本発明は、(i)エチレン不飽和基を含む生分解性天然多糖、(ii)アクリジンオレンジ、カンファーキノン、エチルエオシン、エオシンY、エリスロシン、フルオレセイン、メチレングリーン、メチレンブルー、フロキシム、リボフラビン、ローズベンガル、チオニン、及びキサンチン色素からなる群から選ばれる光開始物質、及び(iii)生物活性薬を含む組成物を提供する。
【0108】
熱的に反応性の開始物質は、突出カップリング基を有する天然生分解性ポリマーの重合を促進するためにも使用できる。熱的に反応性の開始物質の例は、4,4'アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、及びベンゾイルペルオキシドのアナログを含む。レドックス開始物質は、突出カップリング基を有する天然生分解性ポリマーの重合を促進するために使用できる。一般的に、有機又は無機酸化剤の組合せ、及び有機及び無機還元剤の組合せが使用されて、重合のためのラジカルを精製するために使用される。レドックス開始剤の記載は、Principles of Polymerization、第二版、 Odian G., John Wiley and Sons, pgs 201-204, (1981)に記載される。
【0109】
幾つかの場合、開始物質は、塩基被膜中に含まれ、そして生分解性天然多糖又は当該天然生分解多糖を含む組成物は、塩基被膜上に配置されうる。例えば、生分解性天然多糖を含む被膜層は、合成多糖を含む被膜層上に形成されうる。合成ポリマーは、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミド)、又はそれらのコポリマーなどの親水性ポリマーで在り得る。幾つかの態様では、合成ポリマーは、光反応基、例えば合成ポリマーから突出している光反応基を用いて形成される。当該光反応基は、合成ポリマーを器具の表面に共有結合するために使用できる。
【0110】
幾つかの態様では、当該重合開始物質は、開始基(本明細書中で「開始ポリマー」と呼ばれる)を含むポリマーである。開始ポリマーのポリマー部分は、組成物、例えばシーラント組成物と用いるために適している特別な特徴又は特徴を有するように得られるか又は調製され得る。例えば、開始ポリマーのポリマー部分は、親水性又は両性の性質を有しうる。当該ポリマー部分は、突出荷電基を含むことができるか、又は特定の表面と相互作用することを可能にする基を有しうる。場合により、又はさらに、当該ポリマーは、カップリング基を有するアミロースポリマーにより形成されるマトリックスの性質を変化させるか又は改良することができる。例えば、開始ポリマーは、マトリックスの弾力性、屈曲性、湿潤性、又は柔軟性(又はそれらの組合せ)を変化させることができる。本明細書に記載されるようにあるポリマーは、生分解性天然多糖を含む物質用の可塑剤として有用である。開始基は、これらの可塑ポリマーに加えられ、そして本発明の組成物及び方法において使用される。
【0111】
例えば、幾つかの態様では、開始物質は、生分解性天然多糖から突出されていてもよい。その結果、生分解性天然多糖は、他の生分解性天然多糖から突出している重合可能基の活性化を促進することができ、そして生分解性天然多糖マトリックスの形成を促進することができる。
【0112】
別の場合では、開始物質ポリマーの重合部分は、例えば、アクリルアミド及びメタクリルアミドモノマーユニット、又はその誘導体を含むことができる。幾つかの実施態様では、組成物は、光反応基と、アクリルアミド及びメタクリルアミドポリマー及びコポリマーの群から選ばれる重合部分とを有する開始ポリマーとを含む。
【0113】
幾つかの態様では、開始物質は、酸化剤/還元剤対、つまりレドックス対を含み、生分解性多糖の重合を駆り立てる。この場合、生分解性多糖の重合は、1以上の酸化剤を1以上の還元剤と組み合わせた際に行なわれる。他の化合物は、組成物中に含まれて、生分解性多糖の重合を促進する。
【0114】
混合された場合、酸化剤と還元剤は、特に強力な開始システムを提供でき、そして低い粘度を有する組成物から多糖の重合マトリックスの形成を促進する。低粘度の多糖組成物は、組成物中の多糖の濃度が低いため、多糖が低い平均分子量しか有しないため、又はその両方のため生じてもよい。低粘度しか有さない多糖組成物からのマトリックス形成は、多くの適用において、特にin situ重合に特に利点がある。本発明の幾つかの態様では、低粘度の多糖組成物は、小さい孔のデリバリー流路、例えば針又はカテーテルを通過し、ここでレドックス対は、in situにおいて多糖の重合を引き起こす。
【0115】
本発明の幾つかの態様では、組成物の粘度は、約5cP超、又は約10cP以上である。本発明の別の態様では、組成物の粘度は約5cP又は10cP〜700cPであり、又は約5cP又は10cP〜約250cPである、又は約5cP又は10cP〜約45cPである。
【0116】
幾つかの実施様式では、組成物中の生分解性多糖の重合を促進してマトリックスを形成するために、1以上の生分解性多糖の存在下で酸化剤を還元剤に加える。例えば、生分解性多糖及び還元剤を含む組成物が、酸化剤を含む組成物へと加えられるか、生分解性多糖及び酸化剤を含む組成物が、還元剤を含む組成物へと加える。1の所望されるマトリックスの製造方法は、生分解性多糖と酸化剤を含む組成物を、生分解性多糖と還元剤を含む組成物と混合することである。この方法を記載するために、「第一組成物」と「第二組成物」という語句が使用できる。
【0117】
酸化剤は無機又は有機酸化剤、例えば酵素から選ぶことができる。還元剤は無機又は有機還元剤、例えば酵素から選ぶことができる。代表的な酸化剤は、過酸化物、例えば過酸化水素及びジ-tert-ブチルペルオキシド、金属酸化物、及び酸化酵素、例えばグルコースオキシダーゼを含む。
【0118】
代表的な還元剤及び共還元剤として、正電荷金属元素、例えばLi、Na、Mg、Fe、Zn、Alの塩及び誘導体、第一鉄塩、例えば乳酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、及び酢酸第一鉄、有機酸及びその誘導体、例えばアスコルビン酸、葉酸、及びパントテン酸、レダクターゼ、及びアミン化合物が挙げられる。共還元剤の他の還元剤として、エリスロベート(Erythrobate)及びα-トコフェロールが挙げられる。
【0119】
幾つかの態様では、レドックス対は、オキシダーゼ:還元体の組み合わせを含む。代表的なオキシダーゼ:還元体の組合せとして以下の:
(a)グリコレート(glycollate)オキシダーゼ:グリコレート/L-乳酸/D-乳酸/(+)マンデレート;
(b)乳酸オキシダーゼ:L-乳酸;
(c)グルコースオキシダーゼ:β-D-グルコース/2-ジオキシ-D-グルコース/6-メチル-D-グルコース;
(d)ヘキソースオキシダーゼ:β-D-グルコース/D-ガラクトース/D-マンノース;
(e)ガラクトースオキシダーゼ:D-ガラクトース/ラクトース;
(f)L-2-ヒドロキシ酸(hydroxy acid)オキシダーゼ:L-2-ヒドロキシ酸;
(g)アルデヒドオキシダーゼ:ホルムアルデヒド/アセトアルデヒド;
(h)キサンチンオキシダーゼ:プリン/ヒポキサンチン/キサンチン;
(i)ピルビン酸オキシダーゼ:ピルビン酸;
(J)シュウ酸オキシダーゼ:シュウ酸;
(k)ジヒドロ-オロチン酸-デヒドロゲナーゼ:L-4,5-ジヒドロ-オロチン酸/NAD;
(l)D-アスパラギン酸オキシダーゼ:D-アスパラギン酸/D-グルタミン酸;
(m)L-アミノ酸オキシダーゼ:L-メチオニン/L-フェニルアラニン/2-ヒドロキシ酸[s]/L-乳酸;
(n)D-アミノ酸オキシダーゼ:D-アラニン/バリン/D-プロリン;
(o)モノアミンオキシダーゼ:モノアミン/ベンジルアミン/オクチルアミン;
(p)ジアミンオキシダーゼ:ジアミン/スペルミジン/チラミン;
(q)アルコールオキシダーゼ:エタノール/メタノール
(r)炭水化物オキシダーゼ:D-グルコース/D-グルコピラノース/D-キシロピラノース/l-ソルボース(sorbose)/α-D-グルコノラクトン;
(s)NADHオキシダーゼ:NADH;
(t) リンゴ酸オキシダーゼ:L-リンゴ酸;
(u) コレステロールオキシダーゼ:コレステロール;
(v)チオールオキシダーゼ:チオール;及び
(w)アスコルビン酸オキシダーゼ:L-アスコルベート;
(v)チオールオキシダーゼ:チオール;及び
(w)アスコルビン酸オキシダーゼ:L-アスコルビン酸
が挙げられる。
【0120】
一の実施様式では、還元剤が酸化剤と混合される場合に、還元剤は、約2.5mM以上の濃度で存在する。混合する前に、還元剤は、例えば5mM以上の濃度で組成物中に存在しうる。
【0121】
他の試薬が組成物中に存在して、生分解性多糖の重合を促進してもよい。他の重合促進化合物、例えば過硫酸の金属塩又はアンモニウム塩などが、組成物中に含まれることもある。
【0122】
場合により、本発明の組成物及び方法は、重合の効率を改善することができる重合反応促進剤を含むことができる。有用な促進剤の例として、N-ビニル化合物、特にN-ビニルピロリドン及びN-ビニルカプロラクタムが挙げられる。この様な反応促進剤は、組成物の体積に基いて、約0.01重量%〜約5重量%、そして好ましくは約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度で使用できる。
【0123】
第一及び第二組成物において生分解性多糖の粘度は、同じでありうるか又は異なり得る。組成物が同じ又は類似の粘度を有する場合、良好な混合及びそれに続くマトリックス形成が得られるということが観察された。この点で、第一および第二組成物中で同じ生分解性のポリマーを使用する場合、生分解性ポリマーの濃度は、同じであるか又は異なりうる。
【0124】
幾つかの使用方法では、組成物の重合は、in situで、例えば重合された物質の塊での生分解性閉塞を形成させる標的部位で行なわれた。この態様を例示するために、動脈瘤標的部位の治療のために行なうことができる。本発明の生分解性物質で動脈瘤を充填することは、少なくとも動脈瘤を安定化することができ、そしてその結果動脈瘤を破裂させるか又は大きさを増加させる可能性を低減する。
【0125】
このプロセスでは、第一及び第二組成物は、マイクロカテーテルを介して動脈瘤標的部位にデリバリーされる。マイクロカテーテルは、一般的にかなり小さい直径、例えば約5フレンチ(french)(fr)以下、を有する(「フレンチサイズ」は、一般的にカテーテルの外径の単位を指す;Frサイズ×0.33=カテーテルの外径(mm)である。)。幾つかの態様では、神経動脈瘤標的部位及び血管、その中をカテーテルがナビゲートされる、により、約2.3フレンチ以下、例えば約1.7フレンチ〜約2.3フレンチの範囲を有するかなり小さいマイクロカテーテル(例えば、Boston Scientific Excelsior SL-10#168189)が使用されるということが決定される。生分解性閉塞を形成するために低粘度で使用できる本発明の組成物は、カテーテルの内腔を詰まらせる危険性を伴わずに、許容される流速でこれらのサイズのマイクロカテーテルを通してデリバリーすることができる。
【0126】
実際、二重内腔マイクロカテーテルは、対象の血管に挿入でき、そして神経動脈瘤標的部位にマイクロカテーテルの遠位末端を配置するようにナビゲートできる。生分解性天然多糖、及び別個に酸化剤及び還元剤を含む第一及び第二組成物は、動脈瘤にデリバリーでき、そして動脈瘤内において混合できる。本発明の重合可能な組成物に基いて、これらの組成物が、かなり小さいカテーテルを通してデリバリーできるということが発見された。例えば、当該組成物は、1.7frカテーテルを通してデリバリーすることができる(1.7frカテーテルの内径は、0.42mmであり、そして外径は、0.56mmである)。さらに、当該組成物は、かなり良好な流速でデリバリーできる。例えば、流速は、約40μl/秒〜約50μl/秒でありうる。ここで、本発明の組成物の使用は、かなり有効な様式で、小さい血管を介して到達できる動脈瘤の治療を許容することができる。
【0127】
別の実施形式では、レドックス対の第一及び第二メンバーは、組成物が標的部位にデリバリーされる前に混合される。組成物がマトリックスへと重合する前に組成物を混合し、そして標的部位にデリバリーすることを許容する組成物を製造する。これらの態様では、好ましいレドックス対は、過硫酸の金属塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、アミン化合物、例えばN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)から選ばれる酸化剤を含む。酸化剤は、望ましくは、約5mg/ml以上、約10mg/ml以上、約15mg/ml以上、又は約30mg/ml以上の濃度で存在する。TEMEDなどのアミン化合物は、望ましくは、約20μl/ml以上の量で組成物中に存在する。生分解性天然多糖、例えばポリアルジトール・アクリレートは、組成物中に約500mg/ml以上の量で存在する。
【0128】
レドックス対のメンバーを混合した後に、組成物が半硬質又はソルゲル性質を有するマトリックスを構築するのに時間がかかる。この時間は、約20秒以上であり、30秒以上、45秒以上、50秒以上、60秒以上、120秒以上、240秒以上、360秒以上、又は約600秒以上でありうる。この時間の間に、組成物を混合し、そして体内の標的部位、例えば動脈瘤へとデリバリーできる。組成物を標的部位へとデリバリーした後に、生分解性閉塞の形成においてマトリックスが形成される。
【0129】
本発明の組成物が、小径のカテーテルを介してデリバリーするのに特に適している一方、当該組成物は、大直径カテーテルを介してデリバリーすることもできる。大直径カテーテルは、本発明の組成物を、泌尿生殖器の1以上の部分にデリバリーするために使用できる。
【0130】
動脈瘤にデリバリーされる組成物の量を変えることができ、そして動脈瘤の大きさに左右される。このデリバリーは、局在部位でのレドックス反応及び組成物の重合をもたらして、動脈瘤における生分解性閉塞物を形成する。閉塞物は、動脈瘤を密封することができ、そしてさらに肥大することを予防できる。
【0131】
重合を促進する別の方法として、生分解性多糖及びレドックス対の第一メンバー、例えば還元剤は、レドックス対の第二メンバー、例えば酸化剤を伴う器具と接触することができる。当該器具は、医療機器の一部、例えば本明細書に記載される医療機器の一部であり、又は医療方法において使用できる任意の種類の器具でありうる。
【0132】
幾つかの場合、レドックス対の第二メンバーは、当該器具から放出可能である。例えば、当該器具が第二メンバーを浸透させている場合、第二メンバーは、当該器具自体からの拡散により放出されうる。或いは、第二メンバーは、第二メンバー上に形成された被膜から放出可能である。分解可能な物質は、第二メンバーを含む器具を形成するために使用することができる。第二メンバーは、第二メンバー上に形成された被膜から放出されうる。分解可能な物質は、第二メンバーを含む器具を形成するためにも使用できる。第二メンバーは、生分解性の器具又は器具上に形成される生分解性の被膜から放出可能である。当該器具又は被膜は、第二メンバーにそって本明細書に記載される生分解性天然多糖から形成されうる。
【0133】
別の場合、第二メンバーは、器具に放出されないように結合されている。例えば、第二メンバーは、器具の表面に共有結合されていてもよい。当該器具が、生分解性天然多糖を含有する組成物と接触されて配置される場合、レドックス反応は、器具の表面付近で生じ、そして表面からの多糖の重合を促進して、器具に付随しているマトリックスを形成する。
【0134】
幾つかの所望の実施様式では、第二メンバーは、器具上に固定された有機酸化化合物、例えばジ-tert-ブチルペルオキシドである。
【0135】
幾つかの態様では、生分解性天然多糖を含む組成物は、インプラント可能な機器である器具と併せて使用される。幾つかの場合、インプラント可能な機器は、閉塞機器である。インプラント可能な機器は、体内の任意の種類の標的領域の閉塞を促進する方法で使用できる。例えば、インプラント可能な機器は、対象の血管内に配置できる。別の例として、インプラント可能な機器は、対象の泌尿生殖器系の1以上の部分(例えば、女性対象の卵管など)に配置することができる。組成物は、標的部位でのインプラント可能な機器の機能を改善するために使用することができる。例えば、生分解性マトリックスは、標的部位でのインプラント可能な機器を伴って形成することができる。
【0136】
インプラント可能な機器は、多糖組成物の重合を促進するように機能しうる。例えば、レドックス対のメンバーは、インプラント可能な機器の1以上の部分と関連しうる。メンバーは、インプラント可能な装置から放出性であってもよく、又は放出されなくてもよい。
【0137】
インプラント可能な装置、又はその部分は、血管(移植可能な血管機器)内、例えば動脈、静脈、瘻孔、又は動脈瘤に配置するように構成できる。幾つかの場合、インプラント可能な機器は、血管閉塞コイル、ワイヤー、又はストリングから選ばれる閉塞機器であって、動脈瘤に挿入することができる機器である。幾つかの特異的な血管閉塞機器は、着脱可能な閉塞コイルを含む。幾つかの場合、インプラント可能な機器はステントである。
【0138】
或いは、移植可能な機器又はその一部は、他の体の内腔(例えば、卵管、胆管)内に配置されるような形にされる。例えば、インプラント可能な機器は、泌尿器系の一部に配置できる。幾つかの代表的な移植可能な泌尿機器は、妊娠調節のために使用される。例えば子宮鏡により卵管に挿入される繊維含有閉塞コイルである(Conceptus, Mountain View, CA)。
【0139】
血管閉塞機器は、ワイヤ、コイル、ブレード、ストリングなどの形態で在り得る。幾つかの血管閉塞機器は、らせん巻きの形を有する。代表的なコイルは、一般的に2.2mm以下の直径であり、より具体的に0.2mm〜2.2mmの範囲であり、そして直径1.25mm以下、例えば0.125mm〜1.25mmの範囲のワイヤーから構成されうる。血管閉塞装置の長さは、一般的に0.5〜100センチメートルの範囲である。
【0140】
血管閉塞装置は、金属、例えば白金、金、又はタングステンなどから一般的に調製されるが、他の金属、例えばレ二ウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、チタン、ニッケル、及びこれらの金属の合金、例えばステンレス鋼、チタン/ニッケル、及びにチノール合金が使用されうる。
【0141】
血管閉塞機器は、重合物質を含みうる。特に有用な機器は、ハイドロゲル性質を有する重合体を含む。代表的な重合体として、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース、ウレタン/カーボネートのコポリマー、スチレン/マレイン酸のコポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0142】
血管閉塞機器に付随する生分解性閉塞物の形成は、以下の手順により示される。酸化剤を含む末梢コイル部分を有する神経動脈瘤閉塞機器は、血管系を通して動脈瘤に進行される。マイクロカテーテルはまた、動脈瘤に進行される。コイル及びマイクロカテーテルは、同時に動脈瘤に進めることができるが、一方が他方の前に進められてもよい。酸化剤が放出可能である場合、重合可能な組成物をデリバリーする前に、酸化剤が放出され、そして動脈瘤の空間に拡散するために十分な時間のあいだ、コイルは動脈瘤内に存在し得る。多糖及び還元剤を含む組成物は、マイクロカテーテルを通して動脈瘤にデリバリーできる。
【0143】
コイルの遠位部分(distal portion)は、Gugliemi Detachable Coil(GDC)で用いられるコイルと同様の様式で、近位部分(proximal portion)から分離できる。静電荷は、動脈瘤に挿入されるコイル部分を分離するためにデリバリーすることができる。
【0144】
代わりの方法では、生分解性の閉塞は、以下のステップ:
(a)第一カップリング基を標的部位に含む生分解性天然多糖を有する第一組成物をデリバリーし;そして
(b)第一カップリング基と反応性である第二カップリング基を含む生分解性天然多糖を有する第二組成物をデリバリーする
を含む方法により形成できる。標的部位で第一組成物と第二組成物を混合することは、生分解性閉塞の架橋及び形成をもたらす。適切な第一及び第二カップリング基は本明細書に記載される。
【0145】
幾つかの態様では、重合可能な組成物は、線維形成促進剤を含みうる。線維形成促進剤は、形成された閉塞の付近において迅速かつ局在化された線維化応答を促進できる。これらは、凝血因子の蓄積、例えば血小板の接着、により、そして閉塞と併せてフィブリン塊の形成を導くことができる。物質の重合塊により提供される空間充填機能と組み合わせて、形成された血餅は、さらに動脈瘤を密封することができる。閉塞が分解するにつれ、そして組織が閉塞の付近に形成した場合、回復過程が生じ、ここで当該動脈瘤は大きさが減少するか、又は一緒に消滅する。増殖促進薬は、閉塞動脈瘤の首の部分に新生内膜の形成を促進できる。これにより、組織のマトリックス内への増殖を導くことができ、天然組織の閉塞の形成をもたらす。この様な回復プロセスは、対象にとってかなり利点がある。増殖促進薬は、形成された閉塞の付近に、所望のフィブリン形成促進応答を提供するのに十分な量で存在することができる。
【0146】
本発明の幾つかの態様では、線維化促進薬はポリマーである。増殖促進ポリマーは、天然ポリマー、例えばペプチド又はタンパク質などでありうる。線維化促進ペプチド又はタンパク質の例として、非限定的に、例えば、トロンビン及びコラーゲン、例えば組換えヒトコラーゲン(FibroGen, South San Francisco, CA)が挙げられる。コラーゲンペプチド及び改変コラーゲンは、線維化促進マトリックスの製造いおいて使用することができる。他の意図された線維化促進ポリペプチドは、本明細書に記載される。
【0147】
一の実施態様では、線維化促進マトリックスとして、非動物由来増殖促進ポリペプチドが挙げられる。本明細書に使用される場合、「動物」は、一般的に家畜として使用される非ヒト動物を指し、そしてウシ、ブタ、及びトリなどが挙げられ、一般的にこれらのものからコラーゲンが抽出される。
【0148】
他の有用な線維化促進薬は、血小板因子1〜4、血小板活性化因子(アセチルグリセリルエーテルホスホリルコリン);P-セレクチン及びフォン・ウィルブランド因子(vWF);組織因子;プラスミノーゲン活性化因子イニシエータ-1;トロンボキサン;凝血原トロンビン様酵素、例えばセラストチン及びアファシチン;ホスホリパーゼA2;Ca2+依存性レクチン(C型レクチン);糖タンパク質受容体に結合し、そして凝集を誘導する因子、例えばアグレチン、ロドシチン、アグレゴセルペンチン、トリワグレリン、及びイクイナトキシン;糖タンパク質Ib刺激薬、例えばマムシジン及びアルボアグリジン;vWF相互作用因子、例えばボトロセチン、ビチセチン、セラストチン(cerastotin)、及びエカリンが挙げられる。
【0149】
凝血カスケードに関与する他の因子、例えばタンパク質因子は、凝固因子I-XIII(例えば、フィブリノーゲン、プロトロンビン、組織トロンボプラスチン、カルシウム、プロアクセリン(促進物質グロブリン)、プロコンベルチン(血清プロトロンビン変換促進物質)、抗血友病因子、血漿トロンボプラスチン成分、スチュワート因子(自己プロトロンビンC)、血漿トロンボプラスチン前駆物質(PTA)、ハーゲマン因子、及びフィブリン-安定化因子(FSF、フィブリナーゼ、プロトランスグルタミナーゼ)を含む。
【0150】
幾つかの態様では、線維化促進薬は、線維化促進カチオン性ポリマーである。線維化促進カチオン性ポリマーは、好ましくは、血小板及び凝血因子を誘引するのに十分な正電荷を有するポリマーである。線維化促進カチオン性ポリマーとして、たとえば一級アミン基が挙げられる。代表的なカチオン性ポリマーとして、デキストラン及び例えば一級アミン基を有するポリアミン、例えば、DEAEデキストラン(ジエチレナミノエチルデキストラン)及びポリエチレンイミン(PEI)が挙げられる。好ましい合成線維化促進カチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミンである。代表的な天然カチオン性ポリマーとして、キチン及びキトサン(D-アセチル化キチン)が挙げられる。線維化促進カチオン性ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーでありうる。線維化促進マトリックスは、線維化促進応答を促進することができる異なるカチオン性ポリマーの混合物を含みうる。
【0151】
線維化促進ポリペプチドが使用される場合、未重合及び/又は重合形態の多糖と併せたポリペプチドの安定性を改善する生分解性組成物が製造されうる。例えば、線維化促進タンパク質、例えばコラーゲンは、非還元性多糖であるポリアルジトールマクロマーと組み合わせて含まれ得る。幾つかの方法では、安定性は、システイン残基を有するタンパク質中で適切なジスルフィド結合を維持することにより改善され得る。
【0152】
生分解性組成物は、線維化促進マクロマーを用いて製造することができる。例えば、線維化促進ポリペプチドマクロマーは、組成物中に含まれ、そして生分解性天然多糖と組み合わせて重合される。マクロマー形態のポリペプチドは、天然形態のポリペプチドを超える濃度で組成物中に含まれ得る。コラーゲンマクロマーは、本明細書に記載される技術を含む様々な技術により調製することができる。
【0153】
組成物のデリバリーの間に、標的部位にデリバリーされた重合物質を維持するのに努力を払う一方、未重合又は部分的に重合された物質のいくらかの漏出が起こり得るということが考慮される。本発明の組成物は、標的部位から失われた任意の未重合又は部分的に重合された物質が、体内のいたるところに存在する無害の生成物へと分解されるという点で明らかに利点を有する。
【0154】
放射性不透過剤は、生分解性天然多糖組成物中にも含まれ得る。放射性不透過剤は、インプラントされ、挿入され、又は体内に形成された器具の造影を改善できる。例えば、造影剤は、生分解性天然多糖を用いて形成される生分解性器具内に含まれ得る。造影剤は、体内の所望の位置へと挿入する間及び/又は後で、装置の検出を改善できる。造影剤は、生分解性マトリックス、例えば閉塞物中に含まれ、当該マトリックスは体内の標的部位、例えば動脈瘤に形成される。造影剤は、閉塞の形成を検出するのに有用であり、並びに生分解性天然多糖が接触する組織の態様を検出するのに有用でありうる。
【0155】
幾つかの具体的な態様では、放射線不透過性薬剤は、ヨウ素を含む。本発明の多糖組成物は、ヨウ素を複合体形成するために発見され、それにより体内で器具の造影を改善する有用な方法を提供する。多糖マトリックスの分解の間又は後でのヨウ素の放出は非毒性である。
【0156】
放射性不透過薬剤は、ヨウ素でありうるか、又は第二の化合物、例えば市販されているヨウ素含有放射性透過薬でありうる。
【0157】
放射性不透過薬は、放射性アイソトープ、例えばI125でありうる。放射性アイソトープは、二次的な機能を果たしうる。例えば、重合化生分解性天然多糖と接触する組織の放射性治療などである。
【0158】
幾つかの態様では、生分解性天然多糖を含む水性組成物、例えば突出カップリング基を有するアミロース又はマルトデキストリンを含む水性組成物、及び生物活性薬は、器具を形成する方法で得られ、かつ使用される。組成物は、生物活性薬、例えば水溶性小分子、タンパク質、又は核酸を、生分解性天然多糖と混合することにより調製されうる。
【0159】
本発明の幾つかの態様では、カップリング基を含む生分解性天然多糖が、器具を形成するために使用される。他の多糖が、組成物中に存在してもよい。例えば、組成物は、2の、又は2超の異なる生分解性天然多糖を含むことができる。例えば、幾つかの場合、生分解性天然多糖(例えば、アミロース又はマルトデキストリン)は、別の生分解性多糖(つまり、第二ポリマー)又は1超のほかの生分解性多糖と一緒に器具組成物中に存在することができる。追加のポリマー(単数)又はポリマー(複数)は、マトリックスの性質を変更するために、又はマトリックスの体積を変更するバルクポリマーとして役立ち得る。例えば、他の生分解性多糖は、アミロースポリマーと組み合わせて使用できる。これらには、ヒアルロン酸、デキストラン、デンプン、アミロース(例えば、非誘導性)、アミロペクチン、セルロース、キサンタン、プルラン、キトサン、ペクチン、イヌリン、アルギネート、及びヘパリンが挙げられる。
【0160】
本発明のさらに別の実施態様では、少なくともカップリング基を有する生分解性天然多糖を含むシーラント組成物は、多孔表面上に配置される。
【0161】
組成物中における生分解性天然多糖の濃度は、架橋された生分解性天然多糖の所望の密度を有する器具を提供するように選択することができる。幾つかの実施態様では、組成物中の生分解性天然多糖の濃度は、組成物中に含まれる活性薬のタイプ又は性質に左右され得る。幾つかの実施態様では、カップリング基を有する生分解性天然多糖は5〜100%(w/v)、及び5〜50%の範囲の濃度で組成物中に存在するか、そしてより具体的な実施態様で、10〜20%、そして他の実施態様で20〜50%(w/v)の範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0162】
例えば、医療インプラントの形成の場合には、生分解性天然多糖の濃度は、構造的により固いインプラントを提供するために高くされてもよい。
【0163】
他のポリマー又は非ポリマー化合物が、マトリックスの弾力性、柔軟性、湿潤性、又は接着性(又はそれらの組合せ)を変化させるために、カップリング基を有する生分解性天然多糖により形成されるマトリックスの性質を変化又は改善できる組成物中に含まれてもよい。
【0164】
例えば、マトリックスの性質を改善するために、可塑剤の1又は組合せを混合して含むことが可能である。適切な可塑剤として、グリセロール、ジエチレングリコール、ソルビトール、ソルビトール・エステル、マルチトール、スクロース、フルクトース、転化糖、コーンシロップ及びそれらの混合物を含む。可塑剤の量及びタイプは、既知の標準及び技術を用いて容易に決定できる。
【0165】
本発明の幾つかの態様では、医療器具の多孔表面上にシーラント被膜が提供される。当該医療器具は、医学的状態の予防又は治療のために哺乳動物に導入される任意の器具でありうる。ここで、当該医療器具は、(少なくとも最初は)シーラント被膜を含み、そしてシーラント機能を有する。シーラント被膜を有する医療器具は、1以上の機能を提供することができ、例えば血液などの体液の移動に対して障壁を提供することを含む。
【0166】
シーラント被膜は、多孔表面を有する機器の表面上に形成でき、ここで多孔表面を密封して、体液の移動に対し、障壁を提供することが望ましい。多くの場合、これらの人工的な障壁を提供して、移植された機器が意図されたように体内で機能することを保証することが望ましい。しかしながら、体が、シーラントバリア物質を体由来の天然物質と置き換えることにより、徐々にシーラント被膜の機能を維持することを可能にすることが望ましい。
【0167】
シーラント組成物は、器具の表面の孔をシーラント物質で埋める様式で、調製及び/又は適用できる。これは、例えば、被膜組成物の粘度及びに被膜の形成の間に生分解性天然多糖のカップリングなどの因子を制御することにより達成できる。
【0168】
「多孔表面」を有する器具は、孔を有する表面、その上に生分解性天然多糖に基くシーラント被膜が形成できる、を有する任意の器具を指す。当該孔は、好ましくは、シーラント被膜が分解した際に孔の中に組織の増殖を可能にする物理的な直径を有する。孔表面は、非多孔性物質と結合しており、例えば、多孔表面への支持を提供できる足場(Scaffold)などと結合できる。
【0169】
医療器具は、シーラント被膜を与えられる多孔表面と、シーラント被膜で被膜されず、場合によりシーラント被膜で被膜されるか又はシーラント被膜とは異なる物質で被膜される無孔表面とを含むことができる。多孔表面の全て又は一部は、シーラント被膜で被膜されうる。幾つかの場合、生分解性天然多糖に基くシーラント物質とは異なるシーラント物質は、生分解性天然多糖に基くシーラント物質と組み合わせて使用できる。
【0170】
内部及び外部多孔表面を有する器具では、内部又は外部のいずれかが被膜されるか、又は内部及び/又は外部の一部が被膜されることもある。被膜される器具の一部は、特に所望される適用又は被膜された器具の機能に左右されうる。例えば、幾つかの場合、医療器具の多孔部分を通した、液体、例えば血液の流れの違いを有することが望まれ得る。また、器具の選択された部分に基く組織の増殖は、シーラント被膜を所望される位置に配置することにより促進され得る。
【0171】
器具の多孔表面は、凝血性であり、及び/又は表面閉塞領域(血流が減少しているか又は流れていない領域)を示す材料を含むことができる。当該適用に依存して、所望の程度の多孔性を有する表面が得られる。当該表面は、細胞の内部成長に適した十分な程度の多孔性、並びに組織形成因子を有する。組織の内部成長の際に、表面は、液体不透過性であるバリアが提供され得る。
【0172】
多くの場合、当該器具の多孔表面は、繊維であるか、又は繊維様品質である。多孔表面は、織物から形成でき、当該織物は、織布、編まれた物質、及び編み上げ物質を含む。特に有用な織物物質は、当該技術分野に知られている任意の適切な織りパターンを用いて形成できる織布である。
【0173】
多孔表面は、グラフト、シース、カバー、パッチ、スリーブ、ラップ、ケーシングなどでありうる。これらのタイプの器具は、医療器具自体として機能することができるか、又は医療器具の別の部分と組み合わせて使用できる(この例は本明細書に記載される)。
【0174】
多孔表面は、任意の適切な生物物質のタイプを含むことができる。有用な生体物質が、本明細書に記載される繊維の製造のためにファイバーへと編むことができる。有用な材料は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、及びポリテトラフルオロエチレンなどの合成付加又は縮合ポリマーを含む。ポリエチレンテレフタラート(PET)は、繊維において一般的に使用されるポリマーである。これらのポリマーのブレンドは、繊維の構築用のファイバー、例えば単一フィラメント又は多フィラメントファイバーの製造に使用できる。一般的に使用される繊維として、ナイロン、ベロア、及びDACRON(登録商標)が挙げられる。
【0175】
繊維は、場合により、器具の物理的性質を改善するために、例えば、グラフトの強度を改善するために、固い物質を含み得る。この様な物質は、移植された機器の機能を改善できる。例えば、強化物質は、グラフトの開通性を改善できる。
【0176】
多孔表面は、これらのタイプのポリマーのマンドレルを浸すことにより形成されうる。
【0177】
他の特定の意図された多孔表面として、心臓パッチの表面が挙げられる。心臓パッチは、心血管再構築に付随する縫合線の出血を低減するために使用することができる。当該パッチは、貫通縫合の周囲を密封するために使用できる。心臓パッチに使用される一般的な物質は、PTFE及びDACRON(登録商標)を含む。
【0178】
多孔表面として使用される物質の厚さは、適用に応じて変えられる。しかしながら、これらの厚さが平均で約1.0mm以下、及び典型的に約0.10mm〜約1.0mmの範囲であることが一般的である。
【0179】
他の特に意図された多孔表面として、グラフト、特に織布の外部分を有するグラフトを含む。織布のグラフトの例として、織られるか又は平滑内部を有するベロア織り外部分を有するグラフトが挙げられる。織布製品から構築されたグラフトは、当該技術分野に知られており、そして多くの文献、例えば、米国特許第4,047,252号;第5,178,630号;第5,282,848号;及び第5,800,514号に記載されてきた。
【0180】
生分解性天然多糖は、様々な器具にシーラント被膜を提供するように使用できる。本明細書に使用される場合、「器具」は、広い意味で使用され、そしてデバイスなどの対象を含む。この様な物品として、非限定的に、血管インプラント及びグラフト、グラフト、外科機器;合成プロテーゼ、血管プロテーゼ、例えばエンドプロテーゼ、ステント-グラフト、及びエンド血管ステントの組み合わせ;小直径のグラフト、腹部大動脈瘤移植片;創傷包帯材及び創傷管理装置;止血性障壁;メッシュ及びヘルニア栓;パッチ、例えば子宮出血パッチ、心房中隔欠損症(ASD)パッチ、卵円孔開存(PFO)パッチ、心室中隔欠損(VSD)パッチ、及び他の一般的な心臓パッチ;ASD、PFO、及びVSDクロージャー;経皮クロージャー装置、僧帽弁形成術装置;左心房の付属器フィルタ;弁弁輪形成術装置、カテーテル;中心静脈アクセスカテーテル、血管アクセスカテーテル、膿瘍ドレナージカテーテル、薬注入カテーテル、非経口栄養カテーテル、静脈内カテーテル(例えば、抗血栓薬で処理される)、ストローク治療カテーテル、血圧及びステント移植片カテーテル;吻合装置及び吻合の閉鎖;動脈瘤排除装置;グルコースセンサーなどのバイオセンサー;受胎調節装置;乳房移植片;心臓のセンサー;感染制御装置;膜;組織骨格;組織-関連物質;大脳髄液(CSF)シャント、緑内障排出シャントを含むシャント;歯科装置及び歯科インプラント;耳装置、例えば耳排液法管、鼓膜切開術孔管;眼の装置;カフ及び装置のカフ部分、例えば排液法管カフ;移植薬剤注入管カフ、カテーテルカフ、縫合カフ;脊髄及び神経学的装置;神経再生導管;神経的カテーテル;神経パッチ;整形の装置、例えば整形の継手(関節)移植片、骨修復/増大装置、軟骨修復装置;泌尿器科装置及び尿道装置、例えば泌尿器科グラフト、膀胱装置、腎臓装置及び血液透析装置、結腸瘻造設バッグ付着装置;胆道ドレナージ製品が挙げられる。
【0181】
本発明の多くの態様では、生分解性器具は1以上の生物活性薬を含む。当該生物活性薬は、生分解性器具そのものの中に分散され得る。或いは、生物活性薬は、微粒子中に存在しうる。生物活性薬は、生分解性天然多糖及び/又は微粒子の分解の際にデリバリーされうる。
【0182】
「生物活性薬」という用語は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸、脂質、多糖、合成無機又は有機分子、ウイルス粒子、細胞、又はそれらの組み合わせであって、in vivoで動物、例えば非限定的に、トリ、哺乳動物、例えばヒトに投与された場合に生物学的効果を引き起こすものを指す。非限定的な例は、抗原、酵素、ホルモン、受容体、ペプチド及び遺伝子治療薬である。適切な遺伝子治療薬の例として、連結されたプロモーター及び賦形剤と一緒に、(a)治療核酸、例えばアンチセンスDNA、アンチセンスRNA、及びインターフェレンスRNA、及び(b)治療遺伝子産物をコードする核酸、例えばプラスミドDNA及びウイルス断片を含む。取り込まれうるほかの分子の例として、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ビタミン、ミネラル、及びステロイドが挙げられる。
【0183】
この様なものに限定されないが、本発明は、特に、大きな親水性分子である生物活性薬、例えばポリペプチド(例えば、タンパク質又はペプチド)、核酸(例えばDNA又はRNA)、多糖(例えばヘパリン)、並びに粒子、例えばウイルス粒子及び細胞をデリバリーするため使用されうる。1の態様では、生物活性薬は、約10,000以上の分子量を有する。
【0184】
本発明の生分解性被膜(生分解性天然マトリックス及び/又は生分解性微粒子の両方)に取り込まれうる生物活性薬のクラスとして、非限定的に、ACE阻害薬、アクチン阻害剤、鎮痛薬、麻酔薬、降圧薬、抗ポリメラーゼ、抗分泌性薬剤、抗-AIDS物質、抗生物質、抗癌性物質、抗コリン薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、制吐薬、抗真菌薬、抗-緑内障溶質、抗ヒスタミン薬、降圧薬、抗-炎症性薬剤(例えば、NSAID)、抗代謝薬、抗有糸分裂薬、抗酸化剤、抗寄生虫及び/又は抗-パーキンソン薬、抗増殖薬(例えば、血管新生抑制薬剤)、抗原虫性溶質、抗精神病物質、解熱薬、消毒薬、鎮痙薬、抗ウイルス薬、カルシウムチャネル遮断薬、細胞応答修飾因子、キレート剤、化学療法剤、ドパミン受容体刺激薬、細胞外基質成分、血栓溶解薬、フリーラジカルスカベンジャー、成長ホルモン拮抗物質、睡眠薬、免疫抑制薬、免疫毒素、表面糖タンパク質受容体の阻害剤、微小管重合阻害薬、縮瞳薬、筋収縮薬、筋弛緩剤、神経毒、神経伝達物質、オピオイド、光線力学的治療薬剤、プロスタグランジン、再構築阻害剤、スタチン類、ステロイド類、血小板溶解薬、精神安定薬、血管拡張薬、及び血管攣縮阻害剤が挙げられる。
【0185】
抗生物質は、当該技術分野に知られており、そして微生物の増殖を阻害し又は微生物を殺傷する物質である。抗生物質の例として、ペニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、バシトラシン、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、セファロスポリン類、ゲルダナマイシン、及びそれらのアナログが挙げられる。セファロスポリン類の例として、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セファレキシン、セフラジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロル、セフロキシム、セフォニシド、セフォラニド、セフォタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、及びセフォペラゾンが挙げられる。
【0186】
消毒薬は、例えば、その活性を抑制するか又は微生物を破壊することにより一般的に非特異的な様式で微生物の増殖又は作用を抑制又は停止する物質として認識されている。消毒薬の例として、スルファジアジン銀、クロルヘキシジン、グルタルアルデヒド、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノール、フェノール類化合物、ヨードフォール化合物、四級アンモニウム化合物、及び塩素化合物が挙げられる。
【0187】
抗ウイルス薬は、ウイルスの複製を破壊又は抑制できる物質である。抗ウイルス薬の例として、α-メチル-P-アダマンタンメチルアミン、ヒドロキシ-エトキシメチルグアニン、アダマンタンアミン、5-ヨード-2'デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン、及びアデニンアラビノシドが挙げられる。
【0188】
酵素阻害薬は、酵素反応を阻害する物質である。酵素阻害薬の例として、塩化エドロホニウム、N-メチルフィソスチグミン(N-methylphysostigmine)、臭化ネオスチグミン、硫酸フィゾスチグミン、タクリンHCl、タクリン、1-ヒドロキシマレイン酸、ヨードツベルシジン、p-ブロモテトラミソール(p-bromotetramisole)、10-(α-ジエチルアミノプロピオニル)フェノチアジンヒドロクロリド、塩化カルミダゾリウム、ヘミコリニウム-3,3,5-ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3-フェニルプロパルギルアミン、N-モノメチル-L-アルギニンアセテート、カルビドパ、3-ヒドロキシベンジルヒドラジンHCl、ヒドララジンHCl、クロルジリンHCl、デプレニルHCl、L(-),デプレニルHCl、D(+),ヒドロキシルアミンHCl、イプロニアジドリン酸、6-MeO-テトラヒドロ-9H-ピリド-インドール、ニアラミド、パージリンHCl、キナクリンHCl、セミカルバジドHCl、トラニルシプロミンHCl、N,N-ジエチルアミノエチル-2,2-ジフェニルバレレート・ヒドロクロリド、3-イソブチル-1メチルキサンチン、パパベリンHCl、インドメタシン、2-シクロオクチル-2-ヒドロキシエチルアミン・ヒドロクロリド、2,3-ジクロロ-α-メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9-ジクロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-2-ベンザゼピン・ヒドロクロリド、p-アミノグルテチミド、p-アミノグルテチミド酒石酸塩、R(+),p-アミノグルテチミド酒石酸塩、S(-),3-ヨードチロシン、α-メチルチロシン、L(-)α-メチルチロシン、DL(-),セタゾールアミド、ジクロロフェンアミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド、及びアロプリノールが挙げられる。
【0189】
解熱薬は、熱を回復又は下げることができる物質である。抗炎症薬は、炎症を相殺するか又は抑制することができる物質である。このような薬剤の例としては、アスピリン(サリチル酸)、インドメタシン、ナトリウムインドメタシン三水和物、サリチルアミド、ナプロキセン、コルヒチン、フェノプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ジクロフェナク、インドプロフェン及びナトリウムサリチルアミドが挙げられる。局所麻酔薬は、局在領域において麻酔効果を有する物質である。この様な麻酔薬の例として、プロカイン、リドカイン、テトラカイン及びジブカインが挙げられる。
【0190】
細胞応答修飾因子は、走化性因子、例えば血小板由来増殖因子(pDGF)である。他の走化性因子としては、好中球-活性化タンパク質、単球走化性タンパク質、マクロファージ炎症性タンパク質、SIS(スモール誘導性分泌(small inducible secreted)タンパク質、血小板因子、血小板塩基性タンパク質、メラノーマ増殖刺激活性因子、上皮増殖因子、形質転換成長因子(α)、線維芽細胞増殖因子、血小板由来血管内皮細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、神経成長因子、及び骨成長/軟骨-誘導因子(α及びβ)が挙げられる。他の細胞応答修飾因子は、インターロイキン、インターロイキン阻害剤又はインターロイキン受容体、例えばインターロイキン1〜インターロイキン10;インターフェロン、例えばα、β及びγ;造血性因子、例えばエリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子及び顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子;腫瘍壊死因子、例えばα及びβ;トランスフォーミング増殖因子(β)、例えばβ-1、β-2、β-3、インヒビン、アクチビン、及びこれらのタンパク質のいずれかの産生用にコード化するDNAが挙げられる。
【0191】
スタチン類の例として、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ラウスバスタチン(rousvastatin)、及びスーパースタチンが挙げられる。
【0192】
造影剤は、所望部位、例えば腫瘍をin vivoで造影することができる薬剤であり、組成物中に含めることもできる。造影剤の例として、in vivoで検出できるラベルを有する物質、例えば蛍光標識に結合された物質が挙げられる。抗体という用語は、全抗体又はその断片を含む。
【0193】
代表的なリガンド又は受容体として、抗体、抗原、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ヘパリン、IV型コラーゲン、プロテインA、及びプロテインGが挙げられる。
【0194】
代表的な抗生物質として、抗生物質ペプチドが挙げられる。
【0195】
幾つかの態様では、生物活性薬が、医療機器の表面の適合性(例えば、血液及び/又は周囲の組織との適合性)を改善するように選択される。本明細書で「生体適合性薬剤」と呼ばれる薬剤は、医療機器表面に結合された場合に、血液を医療機器の基層物質から血液を守るのに役立つ。適切な生体適合性薬剤は、好ましくは、医療機器に血液成分が接着する可能性を低減し、こうして、血栓又は塞栓(放出されそして下流へと流れる血餅)の形成を低減する。
【0196】
生物活性薬は、抗再狭窄硬化、例えば抗増殖性、抗血小板、及び/又は抗血栓効果を提供できる。幾つかの実施態様では、生物活性薬としては、抗炎症薬、免疫抑制薬、細胞接着因子、受容体、リガンド、増殖因子、抗生物質、酵素、核酸などが挙げられる。抗増殖性効果を有する化合物は、例えば、アクチノマイシンD、アンジオペプチン、c-mycアンチセンス、パクリタキセル、タキサンなどを含みうる。
【0197】
抗血栓性効果を有する生物活性薬の代表的な例として、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ナトリウムヘパリン、低分子量ヘパリン、ヒルジン、リジン、プロスタグランジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン・アナログ、D-フェニルアラニル-L-プロリル-L-アルギニル-クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体抗体、コプロテインIIb/IIIa血小板膜受容体抗体、組換え型ヒルジン、トロンビン阻害剤(例えば、Biogenから市販されている)、コンドロイチン硫酸、改変デキストラン、アルブミン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ウロキナーゼ、一酸化窒素阻害剤などが挙げられる。
【0198】
生物活性薬は、血小板凝集を媒介するGPIIb-IIIa血小板受容体複合体の阻害剤でありうる。GPIIb/IIIa阻害剤は、モノクローナル抗体Fabフラグメントc7E3(当該物質はアブシキシマブ(ReoPro(登録商標)としても知られている)及び合成ペプチド又はペプチドミメティクス、例えばエプチフィバチド(Integrilin(登録商標))又はチロフィバン(Agrastat(商標))が挙げられ得る。
【0199】
生物活性薬は、免疫抑制薬、例えば、シクロスポリン、CD-34抗体、エベロリムス、ミコフェノール酸、シロリムス、タクロリムスなどでありうる。
【0200】
他の代表的な治療用抗体として、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、ヒト化抗-HER2モノクローナル抗体(moAb);アレムツズマブ(Campath(登録商標))、ヒト化抗-CD52moAb;ゲムツズマブ(Mylotarg(登録商標))、ヒト化抗-CD33moAb;リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、キメラ抗-CD20moAb;イブリツモマブ(Zevalin(登録商標))、β-放出放射性同位元素にコンジュゲートしたマウスmoAb;トシツモマブ(Bexxar(商標))、マウスの抗-CD20moAb;エドレコロマブ(Panorex(登録商標))、マウス抗-上皮細胞接着分子moAb;セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、キメラ抗-EGFRmoAb;及びベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ヒト化抗-VEGFmoAbが挙げられる。
【0201】
さらに、生物活性薬は、表面接着分子又は細胞間接着分子でありうる。代表的な細胞接着分子又は付着タンパク質(例えば、細胞外マトリックスタンパク質、例えばフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、ビトロネクチン、テネイシン、フィブリノーゲン、トロンボスポンジン、オステオポンチン、フォンウィルブランド因子、骨シアロタンパク質(及びその活性ドメイン)、又は親水性ポリマー、例えばヒアルロン酸、キトサン又はメチルセルロース、及び他のタンパク質、炭水化物、及び脂肪酸が挙げられる。代表的な細胞間接着分子として、N-カドヘリン及びP-カドヘリン並びにそれらの活性ドメインが挙げられる。
【0202】
代表的な増殖因子として、線維芽細胞の増殖因子、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換成長因子、血管内皮増殖因子、骨形態形成タンパク質及び他の骨成長因子、及び神経増殖因子が挙げられる。
【0203】
生物活性薬は、以下の:
モノ-2-(カルボキシメチル)ヘキサデカンアミドポリ(エチレングリコール)200モノ-4-ベンゾイルベンジルエーテル、
モノ-3-カルボキシヘプタデカンアミドポリ(エチレングリコール)200モノ-4-ベンゾイルベンジルエーテル、
モノ-2-(カルボキシメチル)ヘキサデカンアミドテトラ(エチレングリコール)モノ-4-ベンゾイルベンジルエーテル、
モノ-3-カルボキシヘプタデカンアミドテトラ(エチレングリコール)モノ-4-ベンゾイルベンジルエーテル、
N-[2-(4-ベンゾイルベンジルオキシ)エチル]-2-(カルボキシメチル)ヘキサデカンアミド、
N-[2-(4-ベンゾイルベンジルオキシ)エチル]-3-カルボキシヘプタデカンアミド、
N-[12-(ベンゾイルベンジルオキシ)ドデシル]-2-(カルボキシメチル)ヘキサデカンアミド、
N-[12-(ベンゾイルベンジルオキシ)ドデシル]-3-カルボキシ-ヘプタデカンアミド、
N-[3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル]-2-(カルボキシメチル)ヘキサデカンアミド、
N-[3-(4-ベンゾイルベンズアミド)プロピル]-3-カルボキシヘプタデカンアミド、
N-(3-ベンゾイルフェニル)-2-(カルボキシメチル)ヘキサデカンアミド、
N-(3-ベンゾイルフェニル)-3-カルボキシヘプタデカンアミド、
N-(4-ベンゾイルフェニル)-2-(カルボキシメチル)ヘキサデカンアミド、
ポリ(エチレングリコール)200モノ-15-カルボキシペンタデシルモノ-4-ベンゾイルベンジルエーテル、及び
モノ-15-カルボキシペンタデカンアミドポリ(エチレングリコール)200モノ-4-ベンゾイルベンジルエーテル
から選ばれうる。
【0204】
意図される生物活性薬及び/又は生物活性薬のさらなる例として、ラパマイシンのアナログ(「ラパログ」)、ABT-578(Abbott社)、デキサメサゾン、ベタメタゾン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ポシド(poside)、テニポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン,アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミド及びそのアナログ、メルファラン、クロラムブシル、エチレンイミン類及びメチルメルアミン類、アルキルスルホネート-ブスルファン、ニトロソ尿素、カルムスチン(BCNU)及びアナログ、ストレプトゾシン、トラゼン-ダカルバジニン、メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2-クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、エストロゲン、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、ブレベルジン(breveldin)、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン,6U-メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、アセトアミノフェン、エトダラック(etodalac)、トルメチン、ケトロラック、イブプロフェン及びその誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンタトラゾン、ナブメトン、オーラノフィン、オーロチオグルコース、金ナトリウムチオリンゴ酸、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル;アンジオテンシン受容体拮抗薬;一酸化窒素ドナー;及びmTOR阻害剤が挙げられる。
【0205】
ウイルス粒子及びウイルスとして、治療的に有用でありうるウイルス、例えば遺伝子治療に使用されるウイルス、及び弱毒化ウイルス粒子及び免疫応答及び免疫生成を促進できるウイルスが挙げられる。有用なウイルス粒子として、天然及び合成タイプの両方が挙げられる。ウイルス粒子として、非限定的に、アデノウイルス、バキュロウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、及びレトロウイルスが挙げられる。
【0206】
遺伝子機能を改変させるために使用できる他の生物活性薬として、プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、及び結合可能なDNA断片、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA及びRNA、改変DNA及びRNA、iRNA、リボザイム、siRNA、及びshRNAが挙げられる。
【0207】
他の生物活性薬として、血小板、幹細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、好酸球、脂肪細胞、星状細胞、好塩基球、肝細胞、ニューロン、心筋細胞、軟骨細胞、上皮細胞、樹状突起、内分泌細胞、血管内皮細胞、好酸球、赤血球、線維芽細胞、濾胞細胞、神経節細胞、肝細胞、血管内皮細胞、ライディッヒ細胞、実質細胞、リンパ球、リゾチーム-分泌細胞、マクロファージ、マスト細胞、巨核球、メラニン形成細胞、単球、筋様細胞、首神経細胞、好中球、オリゴデンドロサイト、卵母細胞、骨芽細胞、骨軟骨吸収細胞、破骨細胞、骨細胞、形質細胞、精母細胞、網状赤血球、シュワン細胞、セルトリ細胞、骨格筋細胞、及び平滑筋細胞などの細胞が挙げられる。生物活性薬は、遺伝子改変型、組換え型、ハイブリッド型、突然変異型細胞、及び他の変化を有する細胞が含まれうる。
【0208】
無機塩、BSA(ウシ血清アルブミン)、及び不活性有機化合物などの添加物は、当業者に知られている様に、生物活性薬の放出のプロファイルを変更するために使用できる。
【0209】
組成物中に溶解又は懸濁された生物活性薬(単数又は複数)の濃度は、最終組成物の重量に基いて、約0.01〜約90重量%の範囲でありうる。
【0210】
具体的な生物活性薬、又は生物活性薬の組合せは、以下の因子:調節デリバリーデバイスの適用、治療される医学的状態、予期される治療期間、インプラント部位の特徴、使用される生物活性薬の数及びタイプなどのうちの1以上に依存して選択されうる。
【0211】
本明細書に記載される任意の重合組成物は、医療器具の表面に提供され、そして医療機器の最終的な適用に左右されて任意の数の所望される生物活性薬を含むことができる。
【0212】
生物活性薬の包括的なリストは、The Merck Index、第13版、Merck & Co. (2001)に見出すことができる。生物活性薬は、Sigma Aldrich Fine Chemicals,Milwaukee, WIから市販されている。
【0213】
本発明の幾つかの態様では、生物活性薬は、生分解性天然多糖に基くマトリックスと一緒に凝血を促進するために使用できる。当該マトリックスは、シーラント機能を有する被膜が所望される場合に特に有用である。凝血薬を含むシーラント被膜は、当該シーラント被膜物質が分解する際に組織の内向きの増殖を促進することができる。凝血の程度は、様々な因子、例えば、被膜内の又は被膜上に1以上の生物活性薬の存在によりにより制御されうる。適切な凝血薬が本明細書に記載される。
【0214】
幾つかの態様では、凝血薬は、器具表面と接触して存在する血液及び/又は周囲の組織に影響を与えるために選択されうる。幾つかの場合、凝血薬は、医療器具へと接着する血液成分の能力に影響する能力について選択される。当該凝血薬は、幾つかの場合、被膜器具の表面での血栓の形成を促進するように選択され得る。その結果、幾つかの場合では、シーラント被膜は、トロンビン薬、例えばトロンビン、コラーゲン(例えば、(合成)組換えヒトコラーゲン(FibronGen、South San Francisco, CA))、ADP、又はコンバルキシン(convulxin)を含んで、器具の被膜表面で凝血を促進することができる。
【0215】
他のプロトロンビン因子又は凝血促進因子は、血小板因子1〜4、血小板活性化因子(アセチルグリセリルエーテルホスホリルコリン);P-セレクチン及びフォン・ウィルブランド因子(vWF);組織因子;プラスミノーゲン活性化因子イニシエータ-1;トロンボキサン;凝血原トロンビン様酵素、例えばセラストチン及びアファシチン;ホスホリパーゼA2;Ca2+依存性レクチン(C型レクチン);糖タンパク質受容体を結合する因子、及び凝集を誘導する因子、例えばアグレチン、ロドシチン、アグレゴセルペンチン、トリワグレリン、及びイクイナトキシン;糖タンパク質Ib刺激薬、例えばマムシジン及びアルボアグリジン;フォンウィルブランド相互作用因子、例えばボトロセチン、ビチセチン、セラストチン(cerastotin)、及びエカリンを含む。
【0216】
凝血カスケードに関与する他の因子、例えばタンパク質因子は、凝固因子I-XIII(例えば、フィブリノーゲン、プロトロンビン、組織トロンボプラスチン、カルシウム、プロアクセリン(促進物質グロブリン)、プロコンベルチン(血清プロトロンビン変換促進物質)、抗血友病因子、血漿トロンボプラスチン成分、スチュワート因子(自己プロトロンビンC)、血漿トロンボプラスチン前駆物質(PTA)、ハーゲマン因子、及びフィブリン-安定化因子(FSF、フィブリナーゼ、プロトランスグルタミナーゼ)を含む。
【0217】
幾つかの表面接着分子又は細胞間接着分子は、凝血又は血栓形成を促進するように機能しうる。代表的な細胞接着分子又は接着タンパク質(例えば、細胞外マトリックスタンパク質)としては、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、ビトロネクチン、テネイシン、フィブリノーゲン、トロンボスポンジン、オステオポンチン、フォン・ウィルブランド因子、骨シアロタンパク質(及びそれらの活性ドメイン)、又は親水性ポリマー、例えばヒアルロン酸、キトサン又はメチルセルロース、及び他のタンパク質、炭水化物、及び脂肪酸が挙げられる。代表的な細胞間接着分子として、N-カドヘリン及びP-カドヘリン並びにそれらの活性ドメインが挙げられる。
【0218】
特定の血栓性薬剤、又は血栓性薬剤と他の生物活性薬との組合せは、以下の因子:医療器具の適用、治療される医療状態、予期される治療期間、インプラント部位の特徴、使用される血栓形成/生物活性薬の数及びタイプ、シーラント被膜の化学組成(例えば、アミロース、選択された添加剤など)、形成されたシーラント被膜のカップリングの程度などのうちの1以上に左右されて選択されうる。
【0219】
本明細書に記載されるシーラント組成物のいずれかは、医療器具の表面に提供され得る。幾つかの実施態様では、シーラント被膜は、医療機器の最終的な適用に依存して、任意の数の所望されるトロンビン/生物活性薬を含むことができる。シーラント物質の被膜(血液凝固薬/生物活性薬を伴って又は伴わない)は、標準技術を用いて医療器具に適用できて、器具の表面全体をカバーするか、又は器具表面の一部をカバーする。さらに、シーラント組成物の物質は、単一被膜層として(血液凝固薬及び/又は生物活性薬を伴って又は伴わずに)提供され得るか、又は(血液凝固薬及び/又は生物活性薬を伴って又は伴わずに、複数の被膜層として提供され得る。複数の被膜層が表面上に提供された場合、各被膜層の物質は、所望の効果を提供するように選択され得る。
【0220】
本発明の幾つかの態様では、生分解性天然多糖に基く被膜から生物活性薬をデリバリーする前に微粒子が使用される。本発明の微粒子は、アミロースポリマーにより形成されるマトリックスと結合される支持体上に固定することができる任意の三次元構造を含み得る。「微粒子」という用語は、3次元構造がかなり小さいが、粒子サイズ範囲が限定されず、又は特定の形を有する構造に限定されないものである。本発明に従って、微粒子は、典型的に5nm〜100μmの直径の大きさを有する。一般的に、微粒子は球状であるか、ある程度球状の形をしているが、他の形状を同様に有することもある。本発明の好ましい実施態様では、生分解性微粒子は、100nm〜20μmの直径の範囲のサイズを有し、そしてさらにより好ましくは400nm〜20μmの直径の範囲のサイズを有する。
【0221】
生分解性である微粒子は、微粒子中の1以上の生分解性物質の存在を指す。生分解性微粒子は、生分解性物質(例えば、生分解性ポリマー)及び生物活性薬を含む。生分解性微粒子は、水環境、例えば体液にさらされた際に徐々に分解し、そして生物活性薬を放出できる。
【0222】
生分解性微粒子は、1以上の生分解性ポリマーを含む場合がある。生分解性微粒子中に含まれうる生分解性ポリマーの例として、例えばポリ乳酸、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリホスファジン、ポリメチリデンマロネート、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルケン無水物、ポリペプチド、ポリ無水物、及びポリエステルなどが挙げられる。
【0223】
生分解性ポリエーテルエステル・コポリマーを使用できる。一般的にいうと、ポリエーテルエステルコポリマーは、親水性ブロック(例えばポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール)及び疎水性ブロック(例えば、ポリエチレンテレフタラート)を含む両親媒性ブロックコポリマーである。ブロックコポリマーの例として、ポリ(エチレングリコール)-に基き、かつポリ(ブチレンテレフタラート)に基くブロック(PEG/PBTポリマー)を含む。これらのタイプのマルチブロックコポリマーの例は、米国特許第5,980,948号に記載される。PEG/PBTポリマーは、Octoplus BVからPolyActive(商標)の商標名で市販されている。
【0224】
少なくとも2の異なるエステル結合を含む生分解性断片化分子構造を有する生分解性コポリマーが使用されうる。生分解性ポリマーは、(AB又はABAタイプの)ブロックコポリマーであるか、又は(マルチブロック又はランダムブロックとしても知られている(AB)n型の断片化コポリマーでありうる。これらのコポリマーは、かなり異なるトランスエステル化への反応性を有するコポリマー中に結合を形成する2(以上)の環エステルモノマーを用いて2(以上)の段階で開環重合して形成される。これらのポリマーの例が、例えば米国特許第5,252,701号(Jarrettら、"Segmented Absorbable Copolymer”)に記載される。
【0225】
他の適切な生分解性ポリマー物質は、リン含有結合を含む生分解性テレフタラートコポリマーを含む。ポリ(リン酸エステル)、ポリ(ホスホン酸エステル)、及びポリ(亜リン酸エステル)と呼ばれるリン酸エステル結合を有するポリマーが知られている。例えば、Penczekら、Handbook of Polymer Synthesis、第17章:「Phosphorus-Containing Polymers」1077-1132(HansR. Kricheldorf編、1992)、並びに米国特許第6,153,212号、第6,485,737号、第6,322,797号、第6,600,010号、第6,419,709号を参照のこと。亜リン酸エステルであるリン酸エステル結合を含む生分解性テレフタラートポリエステルを使用することができる。適切なテレフタラートポリエステル-ポリホスファイトコポリマーが、例えば米国特許第6,419,709(Maoら、"Biodegradable Terephthalate Polyester-Poly(Phosphite) Compositions, Articles, and Methods of Using the Same")に記載される。ホスホン酸エステルであるリン酸エステルを含む生分解性テレフタラートポリエステルが使用できる。適切なテレフタラート・ポリエステル-ポリ(リン酸エステル)コポリマーは、米国特許第6,485,737号及び第6,153,212号(Maoら、「Biodegradable Terephthalate Polyester-Poly(Phosphonate)Compositions, Articles and Methods of Using the Same)に記載される。リン酸エステルであるリン酸エステル結合を含む生分解性テレフタラートポリエステルが使用できる。適切なテレフタラートポリエステル-ポリ(リン酸エステル)コポリマーが、例えば米国特許第6,322,797号及び第6,600,010号(Maoら、”Biodegradable Terephthalate Polyester-Poly(Phosphate) Polymers, Compositions, Articles, and Methods for Making and Using the Same”)に記載される。
【0226】
生分解性多価アルコールエステルを使用することもできる(例えば、米国特許第6,592,895号)。この特許は、脂肪性ホモポリマー又はコポリマーポリエステルに由来するアシル部分を提供するために、多価親水性アルコールをエステル化することにより作成される生分解性星型ポリマーを記載する。当該生分解性ポリマーは、架橋ポリマー構造を有するヒドロゲル(例えば、米国特許第6,583,219号に記載される)を形成する疎水性及び親水性成分を含む3次元架橋ポリマーネットワークでありうる。疎水性成分は、不飽和基末端を有する疎水性マクロマーであり、そして親水性ポリマーは、化合物を導入する不飽和基と反応する水酸基を含む多糖である。当該成分は、遊離ラジカル重合により1層架橋ポリマーネットワーク構造に変換可能である。さらなる実施態様では、生分解性ポリマーは、α-アミノ酸に基くポリマー(例えば、米国特許第6,503,538号に記載される様に、エラストマーコポリエステルアミドまたはコポリエステエルウレタン)を含むことができる。
【0227】
生分解性微粒子は、天然ソースから得られる1以上の生分解性ポリマーを含むことができる。幾つかの好ましい態様では、生分解性ポリマーは、ヒアルロン酸、デキストラン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、セルロース、キサンタン、プルラン、キトサン、ペクチン、イヌリン、アルギネート、及びヘパリンから選ばれる。これらの生分解性ポリマーのうちの1つ、又は2以上の組合せが使用されうる。特定の生分解性ポリマーは、微粒子中に存在する生物活性薬のタイプに基いて選ばれうる。その結果、本発明の幾つかの態様では、生分解性マトリックスは、生分解性天然多糖マトリックス及び生分解性天然多糖含有微粒子を含むことができる。
【0228】
その結果、幾つかの実施態様では、微粒子は、アミロース又はマルトデキストリンなどの生分解性天然多糖を含む。幾つかの実施態様では、生分解性天然多糖は、微粒子中の主要生分解性組成物でありうる。幾つかの実施態様では、被膜マトリックスと微粒子の両方が、アミロース及び/又はマルトデキストリンを成分として含む。
【0229】
デキストランに基く微粒子は、特にタンパク質、ペプチド、及び核酸などの生物活性や の取り込みに特に有用でありうる。デキストランに基くタンパク質の製造の例は、米国特許第6,303,148号に記載される。
【0230】
アミロース及び他のデンプンに基く微粒子の製法は、様々な引用文献、例えば、米国特許第4,713,249号;米国特許第6,692,770号;及び米国特許第6,703,048号に記載された。生分解性ポリマー及びその合成は、Mayer, J.M., 及びKaplan, DX. (1994) Trends in Polymer Science 2: 227-235頁;及びJagur-Grodzinski, J., (1999) Reactive and Functional Polymers: Biomedical Application of Functional Polymers,39巻、99-138頁に記載された。
【0231】
本発明の幾つかの態様では、生分解性微粒子は、生物学的に活性な薬剤(生物活性薬)、例えば医薬又はプロドラッグを含む。微粒子は、確立された技術、例えば溶媒蒸発により、様々な生物活性薬を取り込むように製造された(例えば、Wichert, B.及びRohdewald, P. J Microencapsul. (1993) 10:195を参照のこと)。生物活性薬は、in vivoで生分解性微粒子が分解した際に、生分解性粒子から放出できる(微粒子は、生分解性天然多糖マトリックス中に存在する)。生物活性薬を有する微粒子は、所定の期間にわたり薬剤の所望される量を放出するように剤形されうる。生物活性薬の放出に影響する因子及び放出される量は、微粒子のサイズ、微粒子に取り込まれる生物活性薬の量、微粒子を加工する際に使用される分解性物質のタイプ、支持体の単位領域あたりに固定された生分解性微粒子の量などにより変えることができる。
【0232】
当該微粒子は、塩、スクロース、PEG又はアルコールなどのポロゲン(porogen)で処理されて、生物活性薬を取り込むのに所望されるサイズの空孔を作り上げる。
【0233】
生分解性微粒子中に提供される生物活性薬の量は、所望される効果を達成するために使用者により調節されうる。生物的に活性な化合物は、適用に適した範囲で微粒子により提供され得る。別の例では、タンパク質分子は、生分解性微粒子により提供することができる。例えば、存在するタンパク質分子の量は、微粒子の1μm直径あたり、1〜250,000個の範囲の分子でありうる。
【0234】
一般的に、生分解性微粒子中に存在する生物活性薬の濃度は、多くの因子、例えば非限定的に、被膜からの放出割合、被膜中の生物活性薬のタイプ、放出後の生物活性薬の所望される局所又は全身濃度、及び生物活性薬の半減期のうちの任意の1つ又は組合せに基いて選択することができる。幾つかの場合、微粒子中の生物活性薬の濃度は、微粒子の重量に基いて、約0.001重量%以上、又は約0.001%〜約50重量%、又はそれ以上でありうる。
【0235】
生分解性微粒子中に含められる特定の生物活性薬、又は微粒子中の活性薬の組合せは、被膜機器の適用、治療される医学的状態、意図された治療期間、埋め込み部位の特徴、使用される生物活性薬の数及びタイプ、微粒子の化学組成物、微粒子のサイズ、架橋などの因子に左右されて選択されうる。
【0236】
生分解性微粒子は、疎水性又は親水性薬剤に適している組成物を有するように製造できる。例えば、ポリラクチド又はポリカプロラクトンなどのポリマーは、疎水性薬剤を含む生分解性微粒子を製造するために有用でありうる;一方、アミロース又はグリコリドなどのポリマーは、親水性薬剤を含む微粒子を製造するのに有用でありうる。
【0237】
以下の方法の好ましい態様では、生分解性天然多糖は、アミロース及びマルトデキストリンの群から選択される。以下の方法の別の好ましい態様では、生分解性天然多糖は、500,000Da以下、250,000Da以下、100,000Da以下、又は50,000Da以下の分子量を有する。生分解性天然多糖は、500Da以上の平均分子量を有することが望ましい。生分解性天然多糖の特に好ましいサイズ範囲は、約1000Da〜約10,000Daの範囲である。
【0238】
活性化ステップの間に、生分解性天然多糖及び活性化薬剤を含む組成物は、開始物質と接触され、そして開始物質は活性化されて、そのカップリング基を介して2以上の生分解性天然多糖の架橋を促進する。好ましい態様では、生分解性天然多糖は、重合可能な基、例えばエチレン不飽和基を含み、そして開始物質は、重合可能な基のフリーラジカル重合を開始できる。これらの方法は、in situでマトリックスを形成するように使用でき、ここで当該組成物は、表面上よりはむしろ対象の中にそれぞれは位置される。
【0239】
本発明は、カップリング基を有する生分解性天然多糖を含む生分解性シーラント被膜を製造する方法を提供する。ここで、場合により生物活性薬は、シーラント被膜中に含めることができる。
【0240】
幾つかの実施態様では、本方法は、以下のステップ:
(i)(a)カップリング基を有する生分解性天然多糖、及び(b)開始物質を含むシーラント組成物を配置し、そして
(ii)開始物質を活性化して、シーラント被膜を活性化する
を含む。本発明のこの態様は、バルク重合アプローチが行なわれる被膜方法を含む。例えば、幾つかの実施態様では、重合開始物質及び重合可能基を有する生分解性天然多糖を含む組成物が表面上に配置される。例えば、幾つかの実施態様では、重合開始物質及び重合可能基を有する生分解性天然多糖を含む組成物が表面上に配置される。次に、開始物質が活性化されて、バルク重合を促進し、そして表面と結合された生分解性天然多糖とのカップリングを促進した。
【0241】
別の態様では、当該方法は以下のステップ:
(i)開始物質を表面上に配置し、
(ii)カップリング基を有する生分解性天然多糖を配置し;そして
(iii)開始物質を活性化して、アミロースポリマーを有する被膜組成物を提供する
を含む。所望される場合、生分解性天然多糖を他の試薬と一緒に表面上に配置することができる。本発明のこの態様は、グラフト重合アプローチが行なわれる被膜方法を含む。例えば、幾つかの実施態様では、重合開始物質は最初に表面に配置され、次に重合可能基を有する生分解性天然多糖を、開始物質を有する表面に配置した。開始物質を活性化して、遊離ラジカル重合を促進し、そして当該表面の生分解性天然多糖をカップリングした。
【0242】
本発明の別の実施態様では、カップリング基及び生分解性薬剤を有する生分解性天然多糖を含む水性組成物が得られ、そしてシーラント被膜を表面へと提供する方法で用いられる。この組成物は、生分解性天然多糖を生物活性薬、例えば水溶性小分子、タンパク質、又は核酸と混合することにより製造され得る。本発明の1の好ましい態様では、生物活性薬は、凝血促進因子又はプロトロンビン因子である。例えば、生物活性医薬は、組換えコラーゲンなどのタンパク質、又は血小板凝集を誘導する血小板の受容体と関連する他のタンパク質でありうる。
【0243】
幾つかの態様では、本発明は、マトリックスを、マトリックスの分解を引き起こす酵素へと晒すことにより、生分解性マトリックスから生物活性薬をデリバリーする方法を提供する。この方法を実施する際に、マトリックスが対象に提供される。マトリックスは、突出カップリング基を有する生分解性天然多糖を含み、ここで当該マトリックスは、カップリング基を反応させて、複数の生分解性天然多糖の架橋されたマトリックスを形成させることにより形成され、そしてここで当該マトリックスが生物活性薬を含む。当該マトリックスは次に、マトリックスの分解を促進できるカルボヒドラーゼに晒される。
【0244】
アミラーゼの血清濃度は、約50〜100U/リットルの範囲であると見積もられ、そしてガラス体濃度も、当該範囲に入る(Varela, R.A., and Bossart, G.D. (2005) JAm Vet Med Assoc 226:88-92)。
【0245】
幾つかの態様では、カルボヒドラーゼは、局所濃度を増加させるために対象に、例えば血清又はマトリックスの周囲の組織に投与でき、その結果当該カルボヒドラーゼは、マトリックスの分解を促進することができる。カルボヒドラーゼを導入する代表的な経路は、局所注射、静脈内(IV)経路などを含む。或いは、分解は、例えば食事プロセスにより、又はカルボヒドラーゼの合成レベルを増加させる化合物を摂取又は投与することにより、マトリックスの付近のカルボヒドラーゼ濃度を間接的に高めることによって促進することができる。
【0246】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに記載されよう。多くの変化が、本発明の範囲から逸脱することなく記載される実施態様になされ得るということが当業者に明らかであろう。こうして、本発明の範囲は、当該適用に記載される実施態様に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の文言により記載される実施態様及びその実施態様の均等物によりのみ限定されるべきである。他に記載がない限り、全ての割合は重量%である。
【0247】
実施例1
アクリル化アミロースの合成
重合可能ビニル基を有するアミロースを、0.75gのアミロース(A0512;Aldrich)を100mlのメチルスルホキシド(JT Baker)を入れた250mlのアンバーバイアル(amber vial)中で混合することにより製造した。1時間後、2mlのトリエチルアミン(TEA;Aldrich)を加え、そして混合物を室温で5分間攪拌させた。続いて、2mlのグリシジル・アクリレート(polysciences)を加え、そしてアミロース及びグリシジルアクリレートを室温で一晩攪拌することにより反応させた。アミロース・グリシジル・アクリレート反応産物を含む混合物を3日間、DI水に対して連続流入透析を用いて透析した。得られたアクリル化アミロース(0.50g;71.4%収率)を次に凍結乾燥し、そして遮光して室温で乾燥下で貯蔵した。
【0248】
実施例2
MTA-PAAmの合成
重合開始物質を、光反応基を有するメタクリルアミドをアクリルアミドと共重合することにより製造した。
メタクリルアミド-オキソチオキサンテンモノマー(N-[3-(7-メチル-9-オキソチオキサンテン-3-カルボキサミド)プロピル]メタクリルアミド(MTA-APMA))を最初に製造した。N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド・ヒドロクロリド(APMA)、4.53g(25.4mmol)(米国特許第5,858,653号実施例2に記載されるとおりの製造される)を100mlの無水クロロホルムを入れ、乾燥チューブを備えた250mlの丸底フラスコ中で懸濁した。7-メチル-9-オキソチオキサンテン-3-カルボン酸(MTA)を米国特許第4,506,083号、実施例Dに記載される様に製造した。MTA-クロリド(MTA-Cl)を米国特許第6,007,833号、実施例1に記載される様に製造した。氷浴中でスラリーを冷却した後に、MTA-Cl(7.69g;26.6mmol)を固体として加え、APMA-クロロホルム懸濁液になるまで攪拌した。7.42ml(53.2mmol)のTEAを含む20mlのクロロホルムの溶液を1.5時間に渡り加え、次に室温へとゆっくり暖めた。混合物を16時間室温で乾燥チューブの下で攪拌させた。この時間の後に、反応液を0.1N・HClで洗浄し、そして少量のフェノチアジンを阻害剤として加えた後に、溶媒を吸引下で取り除いた。得られた産物をテトラヒドロフラン(THF)/トルエン(3/1)で再結晶し、そして風乾後に8.87g(88.7%の収率)の産物を与えた。MTA-APMAの構造を、NMR分析により確認した。
【0249】
次にMTA-APMAを、アクリルアミドを含むDMSOで、2-メルカプトエタノール(鎖トランスファー試薬)、N,N,N',N'-テトラメチル-エチレンジアミン(共触媒)、及び2,2'-アゾビス(2-メチル-プロピオニトリル)(遊離ラジカル開始物質)の存在下で室温で共重合させた。溶液に窒素を20分間通気し、密封し、そして55℃で20時間インキュベートした。溶液を3日間連続流入透析を用いてDI水に対して3日間透析した。得られたMTA-PAAmを凍結乾燥し、乾燥化で貯蔵し、そいて室温で遮光した。
【0250】
実施例3
4-ブロモメチルベンゾフェノン(BMBP)の製造
4-メチルベンゾフェノン(750g;3.82mol)を、オーバーヘッド攪拌子を備える5リットルのMortonフラスコに加え、そして2850mlのベンゼン中に溶解した。次に、溶液を還流状態まで熱し、続いて610g(3.82mol)の臭素を含む330mlのベンゼンを加えた。添加割合は、約1.5ml/分であり、そしてフラスコを90ワット(90ジュール/秒)ハロゲンスポットライトで照射して、反応を開始させた。タイマーを用いて、10%の負荷サイクル(5秒のオン、40秒のオフ)、続いて1時間の20%の負荷サイクル(10秒のオン、40秒のオフ)をランプで与えた。添加の終わりに、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析し、そして71%の所望される4-ブロモメチルベンゾフェノン、8%のジブロモ生成物、及び20%の未反応性4-メチルベンゾフェノンを含むことが発見された。冷却した後に、反応混合物を10gの亜硫酸ナトリウムを含む100mlの水で洗浄し、続いて、3×200mlの水で洗浄した。生成物を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして1:3のトルエン:ヘキサンで2回再結晶した。吸引下で乾燥した後に、635gの4-ブロモメチルベンゾフェノンを単離し、60%の収率を与え、112℃〜114℃の融点を有した。核磁気共鳴(NMR)分析(1H NMR(CDCl3)は、所望される生成物と一致した:芳香族プロトン(7.20〜7.80(m、9H))及びメチレンプロトン(4.48(S,2H))。全ての化学シフト値を、テトラメチルシラン内部基準からの下方向にppmで表す。
【0251】
実施例4
エチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)ジブロミドの調製
N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(6g;51.7mmol)を225mlのクロロホルム中で攪拌しながら溶解した。実施例3に記載される様に、BMBP(29.15g;106.0mmol)を固体として加え、そして反応混合液を室温で72時間攪拌した。この時間の後に、得られた固体をろ過により単離し、そして白色固体を冷クロロホルムで洗浄した。残りの溶媒を減圧下で取り除き、そして34.4gの固体を99.7%の収率で単離した(融点218℃〜220℃)。NMR分光計での分析は、所望の生成物と一致した:1H NMR(DMSO-d6)、芳香族プロトン7.20-7.80(m、18H)、ベンジルメチレン4.80(br.s、4H)、メチレンアミン4.15(br.s、4H)、及びメチル3.15(br.s、12H)。
【0252】
実施例5
PETメッシュ上へのアミロースマトリックスの形成
実施例1に記載されるアクリル化アミロース(100mg)を8mlのアンバーバイアルに配置した。実施例5に記載されるエチレンビス(4-ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウム)ジブロミド(3mg)、2μlの2-NVP、及び1mlの1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)をアクリル化アミロースに加え、そしてシェーカー上で2時間37℃で混合した。混合物(250μl)を3cm×2cmポリエチレンテレフタラート(PET)メッシュ支持体(41μmモノフィル直径;Goodfellow Cambridge Ltd., UK)に広げた。適用されたアミロース混合物を有するPET支持体をDymax Lightweld PC-2 illumination system (Dymax Corp.; 軽密度.5mW/cm2)に光源から15cmの位置に配置し、そして60秒間照射した。照射後、適用されたアミロース混合物がエラストマー性質を有するPET支持体上で半硬質ゲルを形成することが発見された。
【0253】
実施例6
1-(6-オキソ-6-ヒドロキシヘキシル)マレイミド(Mal-EACA)の調製
マレイミド機能酸(maleimide functional acid)を、以下の方法で製造し、そして実施例7で使用した。EACA(6-アミノカプロン酸)(100g、0.762mol)をオーバーヘッド攪拌子及び乾燥チューブを備える3lの三つ首フラスコ中で300mlの酢酸に溶解した。マレイン酸無水物(78.5g;0.801mol)を200mlの酢酸に溶解し、そしてEACA溶液に加えた。混合物を1時間攪拌し、沸騰水浴で加熱し、白色固体の形成をもたらした。一晩室温で冷却した後に、固体をろ過により回収し、そして50mlのヘキサンで2回洗浄した。乾燥した後に、(z)-4-オキソ-5-アザ-ウンデカ-2-エン二酸(化合物1)の収率は、158〜165g(90〜95%)であり、融点は160〜165℃であった。NMR分光計での分析は、所望の産物と一致した:1HNMR(DMSOd6、400MHz)δ6.41、6.24(d、2H、J=12.6Hz;ビニルプロトン)、3.6-3.2(b、1H;アミドプロトン)、3.20-3.14(m、2H:窒素に隣接するメチレン)、2.20(t、2H、J=7.3;カルボニルに隣接するメチレン)、1.53-1.44(m、4H;中心メチレンに隣接するメチレン)、及び1.32-1.26(m、2H;中心メチレン)。
【0254】
(z)-4-オキソ-5-アザ-ウンデカ-2-エン二酸(160g;0.698mol)、塩化亜鉛280g(2.05mol)、及びフェノチアジン、0.15gをオーバーヘッド攪拌子、コンデンサー、熱電温度計、追加漏斗、不活性ガスの入り口、及び加熱マントルを備えた2lの丸底フラスコに加えた。クロロホルム(CHCl3)320mlを2lの反応フラスコに加え、そして混合物の攪拌を開始した。トリエチルアミン(480ml;348g、3.44mol(TEA))を1時間かけて加えた。次に、クロロトリメチルシラン(600ml;510g、4.69mol)を2時間かけて加えた。反応液を還流条件にし、そして一晩(〜16時間)還流した。反応液を冷却し、そしてCHCl3(500mL)、水(1.0リットル)、氷(300g)、及び12N塩酸(240ml)を入れた20lの容器に15分かけて加えた。15分の攪拌の後に、水相を試験して、pHが5未満であることを確かめた。有機相を分離し、そして水層をCHCl3(各抽出あたり、700ml)で3回抽出した。有機相を混合し、そしてロータリーエバポレーターで蒸発させた。残渣を20lの容器内に配置した。炭酸水素ナトリウム(192g)を含む水溶液(2.4l)を残渣に加えた。固体が溶解するまで炭酸水素ナトリウムを攪拌した。炭酸水素ナトリウム溶液を塩酸で(1.1N、26l)で5分かけて処理して、pHを2未満にした。次に、酸性混合物をCHCl3(1.2l及び0.8l)で2回抽出した。合わせた抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、そして蒸発させた。残渣をトルエン及びヘキサンから再結晶した。次に結晶産物をろ過により単離し、そして乾燥させて、85.6gの白色N-(6-オキソ-6-ヒドロキシヘキシル)マレイミド(Mal-EACA;化合物2)を生成した。NMR分光計での分析は、所望の産物と一致した:1H NMR(CDCl3,400MHz)δ6.72(s,2H;マレイミドプロトン),3.52(t,2H,J=7.2Hz;マレイミドの次のメチレン)、2.35(t,2H,J=7.4;カルボニルの次のメチレン)、1.69-1.57(m,4H;中心メチレンに隣接するメチレン)、及び1.39-1.30(m,2H;中心メチレン)。当該産物は、89.9℃のDSC(示差走査熱量計)融点ピークを有した。
【化1】

【0255】
実施例7
N-(5-イソシアナトペンチル)マレイミド(Mal-C5-NCO)の調製
実施例7のMal-EACA(5.0g;23.5mmol)及びCHCl3(25mL)を100mlの丸底フラスコに配置し、そして氷浴中で冷却しながら磁性攪拌子を用いて攪拌した。塩化オキサリル(10.3ml;〜15g;118mmol)を加え、そして反応液を一晩攪拌して室温にした。ロータリーエバポレーターで揮発物質を取り除き、そして残渣を各回あたり10mlのCHCl3で3回共沸した。中間体Mal-EAC-Cl[N-(6-オキソ-6-クロロヘキシル)マレイミド](化合物3)をアセトン(10ml)中に溶解し、そしてアジ化ナトリウム(2.23g;34.3mmol)を含む攪拌水溶液に加えた。氷浴を用いて混合物を1時間攪拌した。有機相を氷浴に取っておき、そして水相を10mlのCHCl3で3回抽出した。アシルアジドの全ての操作を氷浴温度で行なった。アジド反応の混合された有機溶液を、1時間無水硫酸ナトリウムで乾燥した。N-(6-オキソ-6-アジドヘキシル)マレイミド(化合物4)溶液をさらに一晩分子シーブとゆっくり混合することにより乾燥させた。冷アジド溶液をろ過し、そして還流CHCl3(5ml)に10分かけて加えた。アジド溶液を2時間還流した。得られたMal-C5-NCO(化合物5)の溶液の重量は、55.5gであり、当該物質を湿気から保護した。イソシアネート溶液のサンプル136mgを蒸発させ、DBB(1,4-ジブロモベンゼン)、7.54mg及びクロロホルム-d0.9mlで処理した:1H NMR(CDCl3,400MHz)δ6.72(s,2H)、3.55(t,2H,J=7.2Hz)、3.32(t,2H,J=6.6Hz)、1.70-1.59(m,4H)、1.44-1.35(m,2H)。当該NMRスペクトルは、所望の産物と一致した。7.38でのDBB内部標準δ(積算値は2.0であり、産物1モルあたり4H)を用いて、Mal-C5-NCOを含む溶液の分子を見積もるために用いた。溶液中の生成物の計算量は、23.2mmolで98%の収率であった。NCO試薬(濃度は0.42mmol/g)を用いて実施例13のマクロマーを製造した。
【0256】
【化2】

【0257】
実施例8
3-(アクリロイルオキシ)プロパン酸(2-カルボキシエチル・アクリレート;CEA)の調製
アクリル酸(100g;1.39mol)及びフェノチアジン(0.1g)を500mlの丸底フラスコにいれた。反応液を92℃で14時間攪拌した。過剰量のアクリル酸を25℃で吸引ポンプ機を用いてロータリーエバポレーターで取り除いた。得られた残渣量は51.3gであった。CEA(化合物6)をさらに精製することなく、実施例9で用いた。
【化3】

【0258】
実施例9
3-クロロ-3-オキソプロピル・アクリレート(CEA-Cl)の製造
実施例8から得たCEA(51g;約0.35mol)及びジメチルホルムアミド(DMF;0.2ml;0.26mmol)をCH2Cl3(100ml)に溶解した。CEA溶液をゆっくり(2時間かけて)塩化オキサリルの攪拌溶液に加え(53ml;0.61mol)、DMF(0.2ml;2.6mmol)、アンスラキノン(0.5g;2.4mmol)、フェノチアジン(0.1g、0.5mmol)及びCH2Cl3(75ml)を、200mm圧で氷浴の500mlの丸底フラスコに加えた。ドライアイスコンデンサーを用いて、CH2Cl3を反応フラスコ中に留めておいた。添加を完了した後に、反応液を室温で一晩攪拌した。反応溶液の重量は369gであった。CEA-Cl(化合物7)反応溶液(124mg)のサンプルを、1,4-ジブロモベンゼン(DBB,6.85mg)で処理し、蒸発させ、そしてCDCl3中に溶解した:1H NMR(CDCl3,400MHz)δ7.38(s,4H;DBB内部標準)、6.45(d,1H,J=17.4Hz)、6.13(dd,1H,J=17.4、10.4Hz)、5.90(d,1H,J=10.4Hz)、4.47(t,2H,J=5.9Hz)、3.28(t,2H,J=5.9)。当該スペクトルは、所望の産物と一致した。1.0モルのCEA-Clには、0.394molのDBBが存在する。これは、61%の収率が計算される。市販されるCEA(426g;Aldrich)は、上に記載される方法と同様の方法で塩化オキサリルと反応される。残渣CEA-Cl(490g)を、油浴を用いて140℃、18mmHgで蒸留した。蒸留温度を98℃にし、そして150gの蒸留産物を回収した。120℃の最大油浴温度で18mmHgで蒸留した。蒸留の温度範囲は、30℃〜70℃であり、11gの物質を与えた。蒸留産物は、3-クロロ-3-オキソプロピル3-クロロプロパノエートであるようだ。第2蒸留物の残渣(125g;理論上26%)を実施例10に用いた。
【0259】
【化4】

【0260】
実施例10
3-アジド-3-オキソプロピル・アクリレート(CEA-N3)の調製
実施例9から得たCEA-Cl(109.2g;0.671mol)をアセトンに溶解した。アジ化ナトリウム(57.2g;0.806mol)を水(135ml)に溶解し、そして冷却した。次にCEA-Cl溶液を、冷却アジド溶液に加え、氷浴で1.5時間激しく攪拌した。反応混合液を、各抽出あたり150mlのCHCl3で2回抽出した。40mmの直径×127mmのシリカゲルカラムにCHCl3溶液を通過させた。3-アジド-3-オキソプロピル・アクリレート(化合物8)溶液を、4℃で一晩乾燥分子シーブとゆっくり攪拌した。乾燥溶液を精製せずに実施例11に用いた。
【0261】
【化5】

【0262】
実施例11
2-イソシアナトエチルアクリレート(EA-NCO)の製造
(実施例10の)乾燥アジド溶液を還流CHCl3、75mlにゆっくり加えた。添加を終えた後に、還流を2時間続けた。EA-NCO(化合物9)溶液(594.3g)を湿気から保護した。EA-NCO溶液のサンプル(283.4mg)をDBB(8.6mg)と混合し、そして蒸発させた。残渣をCDCl3に溶解した: 1H NMR(CDCl3,400MHz)δ7.38(s,4H;DBB内部標準)、6.50(d,1H,J=17.3Hz)、6.19(dd,1H,J=17.3,10.5Hz)、5.93(d,1H,J=10.5Hz)、4.32(t,2H,J=5.3Hz)、3.59(t,2H,J=5.3)。スペクトルは、所望のEA-NCOと一致した。1.0molのEA-NCOには、0.165molのDBBが存在した。これは、110mgEANCO/g溶液の計算濃度を与えた。EA-NCO溶液を用いて実施例12のマクロマーを製造した。
【化6】

【0263】
実施例12
マルトデキストリン-アクリレートモノマー(MD-Acrylate)の製造
マルトデキストリン(MD;Aldrich;9.64g;約3.21Mol;DE(デキストロース相当量):4.0〜7.0)をジメチルスルホキシド(DMSO)60mlに溶解した。マルトデキストリンのサイズを計算して、2000Da〜4000Daの範囲にした。実施例12のEA-NCO(24.73g;19.3mmol)の溶液を蒸発させ、そして乾燥DMSO(7.5ml)に溶解した。2つのDMSO溶液を混合し、そして一晩55℃に熱した。DMSO溶液を透析チューブ(1000MWCO、45mmフラット幅×50cm長)に配置し、そして水に対して3日間透析した。マクロマー溶液をろ過し、そして凍結乾燥して7.91gの白色固体を与えた。マクロマー(49mg)及びDBB(4.84mg)のサンプルを0.8mlのDMSO-d6に溶解した:1H NMR(DMSO-d6, 400MHz)δ7.38(s,4H;内部標準、積算値2.7815)、6.50,6.19,及び5.93(二重線、3H;ビニルプロトン積算値3.0696)。マクロマーの計算されたアクリレート充填量は、0.616μmol/mgポリマーであった。
【0264】
実施例13
マルトデキストリン-マレイミドマクロマー(MD-Mal)の製造
実施例12に類似する製法を用いて、MD-Malマクロマーを製造した。実施例8から得たMal-C5-NCO(0.412g;1.98mmol)の溶液を蒸発させ、そして乾燥DMSO(2ml)に溶解した。MD(0.991g;0.33mmol)をDMSO(5ml)に溶解した。DMSO溶液を混合し、そして55℃で16時間攪拌した。透析及び凍結乾燥により、0.566gの産物を得た。マクロマー(44mg)のサンプルとDBB(2.74mg)を0.08mlのDMSO-d6に溶解した:1H NMR (DMSO-d6,400MHz)δ7.38(s,4H;内部標準積算値2.3832)、6.9(s,2H;マレイミドプロトン積算値1.000)。マクロマーの計算されたアクリレート充填量は、0.222μmol/mgポリマーであった。マトリックスを製造する能力についてマクロマーを試験した(実施例17を参照のこと)。
【0265】
実施例14
MTA-PAAmを用いたマルトデキストリン-アクリレート生分解性マトリックスの形成
実施例12に製造される250mgのMD-アクリレートを8mlのアンバーバイアルに入れた。MD-アクリレートに3mgのMTA-PAAm(凍結乾燥)、2μlの2-NVP、及び1mlの1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)を加え、MD-アクリレートを有する組成物を250mg/mlで提供した。次に、当該試薬を37℃でシェーカー上で1時間混合した。50μlの混合物をスライドガラス上に配置し、そして400〜500nmフィルターを備えるEFOS100SS照射システムを用いて40秒間照射した。照射後、ポリマーがエラストマー性質を有する半硬質ゲルが形成することを発見した。
【0266】
実施例15
カンファーキノンを用いたMD-アクリレート生分解性マトリックスの形成
実施例12で製造された250mgのMD-アクリレートを8mlのアンバーバイアルに入れた。MD-アクリレートに、14mgのカンファーキノン-10-スルホン酸水和物(Toronto Research Chemicals, Inc.)、3μlの2-NVP、及び1mlの蒸留水を加えた。次に試薬を1時間シェーカー上で37℃で混合した。50μlの量の混合物をスライドガラスに配置し、そしてSmartliteIQ(商標)LED硬化光(Dentsply Caulk)を用いて40秒間照射した。照射後、ポリマーがエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成することが発見された。
【0267】
実施例16
MTA-PAAmを用いたMD-Mal生分解性マトリックスの形成
実施例13に調製される250mgのMD-Malを8mlのアンバーバイアルに配置した。MD-Malに、3mgのMTA-PAAm(凍結乾燥)、2μlの2-NVP、及び1mlの1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)を加えた。次に、試薬を37℃シェーカー上で1時間混合した。50μlの量の混合物をスライドガラスに配置し、そして400〜500nmフィルターを備えたEFOS100SS照射システムで40秒間照射した。照射後、ポリマーがエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成することが発見された。
【0268】
実施例17
MD-アクリレートマトリックスに取り込まれ/放出される生物活性薬
実施例12に記載される500mgのMD-アクリレートを、8mlのアンバーバイアルに配置した。MD-アクリレートに、3mgのMTA-PAAm(凍結乾燥)、2μlの2-NVP、及び1mlの1×リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)を加えた。次に試薬を1時間シェーカー上で37℃で混合した。この混合物に、5mgの70kD・FITC-デキストラン又は5mg10kDのFITC-デキストラン(Sigma)を加え、そして30秒間ボルテックスした。200μlの量の混合物をTeflonウェルプレート(8mm直径、4mmの深さ)に入れ、そして400〜500nmフィルターを備えるEFOS100SS照射システムで40秒間照射した。形成されたマトリックスは緩く、そして実施例17の形成されたMD-アクリレートマトリックスとして架橋されていなかった。照射の後に、マトリックスは12ウェルプレート(FALCON)に移され、そして0.6mlのPBSを含むウェル中に配置される。一日おきに、6日間、150μlのPBSを各ウェルから取り出し、そして96ウェルプレートに配置した。残りの850μlをサンプルから取り出し、そして1mlの新たなPBSと取り替えた。96ウェルプレートを490の吸光で、分光高度計(Shimadzu)でFITC-デキストランについて分析した。結果は、検出可能な10kd又は70kDのFITC-デキストランの少なくとも70%が、2日後にマトリックスから放出されたことを示した。視覚観察により、6日後において、マトリックス内に定量できない量の10kD又は70kDのFITC-デキストランが残っていたことが示された。
【0269】
実施例18
ポリアルジトール-アクリレート合成
ポリアルジトール(PA;GPC;9.64g;〜3.21mol)をジメチルスルホキシド(DMSO)60mlに溶解した。ポリアルジトールのサイズは、2,000Da〜4,000Daの範囲であると計算された。実施例12からのEA-NCOの溶液(24.73g;19.3mmol)を蒸発させ、そして乾燥DMSO(7.5ml)中に溶解した。2個のDMSO溶液を混合し、そして一晩55℃に熱した。DMSO溶液を溶解チューブ(1000MWCO、45mmフラット幅×50cm長)に配置し、そして3日間水に対して透析した。ポリアルジトール・マクロマー溶液をろ過し、そして凍結乾燥して7.91gの白色固体を与えた。マクロマー(49mg)、及びDBB(4.84mg)のサンプルを0.8mlDMSO-d6中に溶解した:1H NMR (DMSO-d6,400MHz)δ7.38(s,4H;内部標準積算値2.7815)、6.50、6.19、及び5.93(二重線,3H;ビニルプロトン積算値3.0696)。マクロマーの計算されたアクリレート充填量は、0.616μmol/mgポリマーであった。
【0270】
実施例19
REDOX化学を用いたマルトデキストリンアクリレート生分解性マトリックスの形成
2つの溶液を調製した。溶液#1を以下のように調製した:実施例13で調製された250mgのMD-アクリレートを、8mlのバイアルに入れた。当該MD-アクリレートに、15mgのグルコン酸第一鉄(Sigma)、30mgのアスコルビン酸(Sigma)、67μlのAMPS(Lubriozol)及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液#2を以下のように調製した:実施例13に製造される250mgのMD-アクリレートを8mlの第二バイアルに入れた。このMD-アクリレートに、30μlのAMPS、80μlの過酸化水素(Sigma)及び890μlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0271】
50μlの溶液#1をスライドガラスに加えた。50μlの溶液#2を溶液#1に加え、すこしボルテックスをかけた。2秒間の混合の後に、混合物は重合し、そしてエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成した。
【0272】
実施例20
REDOX化学を用いたマルトデキストリン-アクリレート生分解性マトリックスの形成
実施例31と同様に、2つの溶液を調製したが、この実施例の溶液#1では、異なる濃度のグルコン酸第一鉄(Sigma)及びアスコルビン酸を用いた。溶液#1を以下のように調製した:(実施例13で製造された)250mgのMD-アクリレートを、8mlのバイアルに入れた。当該MDアクリレートに5mgのグルコン酸第一鉄(Sigma)、40mgのアスコルビン酸(Sigma)、67μlのAMPS(Lubrizol)及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液#2を以下のように調製した:実施例7で調製された250mgのMD-アクリレートを8mlの第2バイアルへと入れた。当該MD-アクリレートに30μlのAMPS、80μlの過酸化水素(Sigma)及び890μlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0273】
50μlの溶液#1をスライドガラスに加えた。50μlの溶液#2を溶液#1に加え、すこしボルテックスにかけた。8秒間混合した後に、混合物は重合し、そしてエラストマー性質を有する半硬質を形成した。
【0274】
実施例21
REDOX化学を用いたマルトデキストリン-アクリレート生分解性マトリックスの形成
2つの溶液を調製した。溶液#1を以下のように製造した:(実施例13で調製された)250mgのMD-アクリレートを8mlのバイアルに入れた。当該MD-アクリレートに15mgのアスコルビン酸鉄(II)(Sigma)、30mgのアスコルビン酸(Sigma)、67μlのAMPS(Lubrizol)及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液#2を以下のように製造した:実施例7に製造される250mgのMD-アクリレートを8mlの第二バイアルに入れた。当該MD-アクリレートに、30μlのAMPS、80μlの過酸化水素(Sigma)及び890μlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0275】
50μlの溶液#1をスライドガラスに加えた。50μlの溶液#2を溶液#1に加え、少しボルテックスにかけた。2秒間混合後に、混合物は重合し、そしてエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成した。
【0276】
実施例22
REDOX化学を用いたポリアルジトール-アクリレート生分解性マトリックスの形成
2つの溶液を調製した。溶液#1を以下のように製造した:実施例21で製造される1000mgのポリアルジトール・アクリレートを8mlバイアルに入れた。ポリアルジトール・アクリレートに、15mgの硫酸鉄7水和物(Sigma)、30mgのアスコルビン酸(Sigma)、67μlのAMPS(Lubrizol)及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液#2を以下のように製造した:実施例に製造される1000mgのポリアルジトール-アクリレートを8mlの第二バイアルにいれた。このポリアルジトール・アクリレートに、30μlのAMPS、80μlの過酸化水素(Sigma)及び890μlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0277】
50μlの溶液#1をスライドガラスに加えた。50μlの溶液#2を溶液#1に加え、少しボルテックスにかけた。2秒間混合後に、混合物は重合し、そしてエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成した。
【0278】
実施例23
MD-アクリレートマトリックスへの生物活性薬の取り込み
2つの溶液を調製した。溶液#1を以下のように調製した:(実施例13で調製された)250mgのMD-アクリレートを、8mlのバイアルに入れた。当該MD-アクリレートに、15mgの酢酸鉄(II)(Sigma)、30mgのアスコルビン酸(Sigma)、67μlのAMPS(Lubriozol)、75mgのウシ血清アルブミン(BSA;生物活性薬を示す)及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液#1を以下のように調製した:250mgのMD-アクリレートを8mlの第二バイアルに入れた。このMD-アクリレートに、30μlのAMPS、80μlの過酸化水素(Sigma)、75mgのBSA及び890μlの酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0279】
50μlの溶液#1をスライドガラスに加えた。50μlの溶液#2を溶液#1に加え、すこしボルテックスをかけた。2秒間の混合の後に、混合物は重合し、そしてエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成した。
【0280】
実施例24
アクリル化マルトデキストリン(ブチリル化MD)の製造
突出ブチリル基を有するマルトデキストリンを、酪酸無水物を様々なモル比でカップリングすることにより調製した。
【0281】
ブチリル化MD(1ブチル/4グルコースユニット、1:4B/GU)を提供するために、以下の方法を行なった。マルトデキストリン(MD;Aldrich;11.0g;3.67mmol;DE(デキストロース相当量):4.0〜7.0)をジメチルスルホキシド(DMSO)600mlに攪拌しながら溶解した。マルトデキストリンのサイズを計算して、2000Da〜4000Daの範囲であった。反応溶液が完了すると、1-メチルイミダゾール(Aldrich;2.0g、1.9l)及び酪酸無水物(Aldrich;5.0g、5.2ml)を攪拌して加えた。反応混合液を室温で4時間攪拌した。この時間の後に、反応混合物を水で反応を止め、そして1000MWCO透析チューブを用いて、DI水に対し透析した。ブチリル化デンプンを凍結乾燥により単離して、9.315g(85%収率)を与えた。NMRは、1:3のB/GUのブチリル化を確認した(1.99mmolのブチル/サンプルg)。
【0282】
ブチリル化-MD(1:8 B/GU)に、2.5g(2.6ml)酪酸無水物を上記酪酸無水物の量の変わりに用いた。79%の収率(8.741g)を得た。NMRにより、1:5のB/GU(1.31mmolブチル/gサンプル)のブチリル化を確認した。
【0283】
ブチリル化-MD(1:2 B/GU)に、10.0g(10.4ml)の酪酸無水物を上記酪酸無水物の量の変わりに用いた。96%の収率(10.536g)を得た。NMRにより、1:2 B/GU(3.42mmolブチル/gサンプル)のブチリル化を確認した。
【0284】
実施例25
アクリル化アシル化マルトデキストリン(ブチリル化-MD-アクリレート)の製造
突出ブチリル基及びアクリレート基を有するマルトデキストリン・マクロマーを、酪酸無水物を様々な分子比でカップリングすることにより製造した。
【0285】
ブチリル化-MD-アクリレート(1ブチル/4グルコースユニット、1:4B/GU)を提供するために、以下の方法を行なった。MD-アクリレート(実施例13;1.1g;0.367mmol)をジメチルスルホキシド(DMSO)60ml中で攪拌して溶解させた。反応溶液を完了した後に、1-メチルイミダゾール(0.20g、0.19ml)及び酪酸無水物(0.50g、0.52ml)を攪拌しながら加えた。反応混合液を室温で4時間攪拌させた。この時間の後に、反応混合物を水で反応を止め、そして1000MWCO透析チューブを用いてDI水に対して透析した。ブチリル化デンプンアクリレートを、凍結乾燥を介して単離して、821mgを与えた(75%収率、物質は単離の際に失われる。NMRにより、1:3B/GUのブチリル化を確認した(2.38mmolブチル/gサンプル)。
【0286】
実施例26
アクリル化アシル化マルトデキストリン(ブチリル化-MD-アクリレート)の製造
突出ブチリル基及びアクリレート基を有するマルトデキストリンを、酪酸無水物を様々な分子比でカップリングすることにより製造した。
【0287】
ブチリル化-MD-アクリレートを製造するために以下の方法を行なった。ブチリル化-MD(実施例43;1.0g;0.333mmol)をジメチルスルホキシド(DMSO)60ml中で攪拌して溶解させた。反応溶液を完了した後に、実施例12のEA-NCO(353mg;2.50mmol)を蒸発させ、そして乾燥DMSO(1.0ml)に溶解した。2のDMSO溶液を混合し、そして一晩55℃に熱した。DMSO溶液を透析チューブ(1000MWCO)に入れ、そして水に対して3日間透析した。マクロマー溶液をろ過し、そして凍結乾燥して白色固体を与えた。
【0288】
実施例27
マルトデキストリン-メタクリレートマクロマー(MD-メタクリレート)の製造
MD-メタクリレートを提供するために、以下の方法を行なった。マルトデキストリン(MD;Aldrich;100g;3.67mmol;DE:4.0-7.0)をジメチルスルホキシド(DMSO)1000ml中に攪拌して溶解した。マルトデキストリンの大きさは、2000Da〜4000Daの範囲内であると計算された。反応溶液を完了させ、1-メチルイミダゾール(Aldrich;2.0g、1.9ml)の次にメタクリル酸無水物(Aldrich;38.5g)を攪拌しながら加えた。反応混合液を1時間室温で攪拌した。この時間の後に、反応混合物を水で反応を止め、そして1000MWCO透析チューブを用いてDI水に対して透析した。凍結乾燥を介してMDメタクリレートを単離して、63.283g(収率63%)を与えた。マクロマーの計算されたメタクリレート充填量は、0.33μmol/mgポリマーであった。
【0289】
実施例28
REDOX化学を用いたMD-メタクリレート生分解性マトリックスの形成
2つの溶液を調製した。溶液#1を以下のように調製した:実施例47で調製された250mgのMD-メタクリレートを8mlのバイアルに入れた。当該MD-メタクリレートに、9mgのグルコン酸第一鉄(Sigma)、30mgアスコルビン酸(Sigma)、及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液#2を以下のとおりに調製した:実施例47で調製された250mgのMD-メタクリレートを、8mlの第二バイアルに入れた。MD-メタクリレートに、80μlの過酸化水素(Sigma)を加え、そして920μlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0290】
50μlの溶液#1をスライドガラスに加えた。50μlの溶液#2を溶液#1に加えて少し混合した。5秒間の混合の後に、混合物は重合し、そしてエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成した。
【0291】
実施例29
REDOX化学/マイクロカテーテルデリバリーシステムを用いたMD-メタクリレート生分解性マトリックスの形成
MD-メタクリレート濃度及びレドックス成分を変えてMD-メタクリレートレドックス組成物を調製した。これらの組成物をマイクロカテーテルに通して標的部位にデリバリーし、当該標的部位で混合してマトリックスの形成が生じた。表2により、実験結果が示される。
【0292】
MD-アクリレート(MD-A)を異なる濃度で含む還元溶液及び酸化溶液を調製した(表10、行A及びBを参照のこと)。溶液1A及び1Bは以下のように調製した:250mg又は500mgのMD-アクリレート(実施例13に調製される)を8mlバイアルに入れた。MD-アクリレートに、10mgの鉄(II)L-アスコルベート(Sigma)、20mgのアスコルビン酸(Sigma)、及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液2A及び2Bを以下のように調製した:(実施例13で調製された)250mg又は500mgのMD-アクリレートを8mlの第二バイアルに入れた。当該MD-アクリレートに、80μlの過酸化水素(Sigma)及び920μlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0293】
異なる濃度でMD-メタクリレート(MD-MA)を含む還元溶液及び酸化溶液を調製した(表10、行C-Gを参照のこと)。溶液1C-1Gを以下のように調製した:(実施例47に記載された)250mg、350mg、又は500mgのMD-メタクリレートを個別に8mlバイアルに入れた。MD-メタクリレートに、10mgのイオン(II)L-アスコルビン酸(Sigma)、20mgアスコルビン酸(Sigma)、及び1000μlの脱イオン水を加えた。溶液2C-2Gを以下のように調製した:(実施例47で調製された)250mg、350mg、又は500mgのMD-メタクリレートを8mlの第二バイアルにいれた。当該MD-メタクリレートに80μlの過酸化水素(Sigma)を加え、そして920μlの0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)を加えた。
【0294】
溶液1(個別にA-G)を3mlのシリンジ(Becton-Dickinson)に加え、そしてシリンジをマイクロカテーテルに取り付けた(Excelsior SL-10;2.4-1.7fr;Boston Scientific or Renegdae;3.0〜2.5fr;Boston Scientific)。中程度の圧力をシリンジにかけ、約50μlの溶液1(個別に、A〜G)をスライドガラスに配置した。溶液2(個別にA〜G)を3mlの第二シリンジ(Becton-Dickinson)に加え、そして当該シリンジを第二マイクロカテーテルに取り付けた。スライドガラス上の第一溶液のうえにカテーテルの末端を保持し、そして中程度の圧力をシリンジにかけ、約50μlの溶液2をスライドガラス上の溶液1に加えた。
【0295】
2〜5秒間の混合の後に、混合物が重合し、そしてエラストマー性質を有する半硬質ゲルを形成した。
【0296】
【表2】

【0297】
実施例30
REDOX化学を用いたポリアルジトール-アクリレート生分解性マトリックスの形成
ポリアルジトール-アクリレート(PD-A)を含む還元溶液及び酸化溶液を製造した(表3を参照のこと)。酸化溶液を以下のように調製した:(実施例18で調製された)500mgのPD-Aを個別に8mlバイアルに配置した。PD-Aに、様々な量の過硫酸アンモニウム(Sigma)(表3、行I-Lを参照のこと)、過硫酸カリウム(表3、行M-P)、又は過硫酸ナトリウム(表3、行A-Hを参照のこと)および1000μlのPBSを加えた。還元溶液を以下のように調製した:500mgのPD-Aを8mlの第二バイアルに入れた。当該PD-Aに、20μl又は40μlのTEMED、40μlの1N塩酸(VWR)及び960μlのリン酸緩衝生理食塩水(Sigma;pH7.4)を加えた。
【0298】
各重合実験を以下のように行なった:50μlの酸化溶液をスライドガラスに移し、続いて50μlの還元溶液を当該酸化溶液に加える。23℃又は37℃で5秒間混合した後に、混合物は重合し、そしてエラストマー性質を有するゲルを形成した。
【0299】
【表3】

【0300】
実施例31
ポリアルジトール-アクリレートREDOX成分内での細胞生存性
表4に示される濃度を有する溶液を調製した。
細胞懸濁液を以下のように調製した:PC-12細胞(ATCC;継代5;75%コンフルエント)をT-75フラスコから、トリプシン-EDTAを2分間用いて回収した。細胞を15mlポリエチレンコニカル(VWR)に入れ、そして無血清F12k培地中で4分間500rpmで遠心した。細胞をヘモサイトメーターを用いて計数し、500rpmで4分間遠心し、そして滅菌PBS中で600,000細胞/mlで懸濁した。
【0301】
細胞生存度についてマトリックス形成組成物の個々の成分の効果を決定するために、溶液A-Gを個別にPC-12細胞と混合した。50μlの細胞懸濁液を350μlの溶液A-Gに加えた(表4)。15分のインキュベートの後に、細胞生存性をLive/Dead(商標)生存性/細胞毒性キット(カタログ番号L3224;Molecular Probes, Eugene, OR)を用いて評価した。
【0302】
細胞生存性について、形成されたマトリックスの効果を試験した。PD-Aマトリックスを形成するために、溶液#1(200mgのPD-A、10μlのTEMED、20μlの1N・HCl、470μlのPBSを200μlの量で1.6mlのエッペンドルフ(VWR)に加えた。溶液#2(400mgPD-A、10mgの過硫酸カリウム、75K PC-12細胞、500μlのPBS)を200μlの量で、エッペンドルフ中の溶液#1に加え、そして10秒間混合した。15分のインキュベートの後に、細胞生存度を、Live/Dead(商標)生存度/細胞毒性キットを用いて評価した。
【0303】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の標的部位において生分解性閉塞を形成する方法であって、当該方法が以下のステップ:
突出重合可能基を含む生分解性天然多糖及びレドックス対の第一メンバーを含む組成物を提供し;
上記組成物を体内の標的部位にデリバリーし;そして
上記組成物を上記レドックス対の第二メンバーと接触させる
を含み、ここで上記接触ステップにおいて、上記レドックス対が上記生分解性天然多糖の重合を開始させて上記生分解性閉塞を形成する、前記方法。
【請求項2】
前記接触ステップが、突出重合可能基を含む生分解性天然多糖及びレドックス対の第二メンバーを含む第二組成物をデリバリーすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記提供ステップにおいて、前記組成物が、45cP未満の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デリバリーステップが、2.3fr以下の直径を有するマイクロカテーテルを用いて標的部位に前記組成物をデリバリーすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記デリバリーステップにおいて、前記標的部位が動脈瘤である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触ステップが、前記組成物を、前記標的部位に挿入されるような形にされた器具と接触させることを含み、ここで当該器具が、レドックス対の第二メンバーを伴っている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接触ステップにおいて、前記器具が、動脈瘤コイル、ワイヤー、又はストリングから選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接触ステップが、前記レドックス対の第二メンバーを含む第二組成物をデリバリーすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記提供ステップにおいて、前記レドックス対の第一メンバーが還元剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記提供ステップにおいて、前記生分解性天然多糖が、100,000Da以下の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記提供ステップにおいて、前記生分解性天然多糖が、50,000Da以下の分子量を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記提供ステップにおいて、前記生分解性天然多糖が、1000Da〜10,000Daの範囲の分子量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記提供ステップにおいて、前記生分解性多糖が、アミロース、マルトデキストリン、シクロデキストリン、及びポリアルジトールからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記提供ステップにおいて、前記生分解性多糖が、非還元性生分解性天然多糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記提供ステップにおいて、前記生分解性多糖が、ポリアルジトールからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記提供ステップにおいて、前記組成物が線維化促進剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記提供ステップにおいて、前記線維化促進剤が、コラーゲン又はその活性化ドメインを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記提供ステップにおいて、前記コラーゲンが、コラーゲンI又はその活性ドメインである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記提供ステップにおいて、前記線維化促進剤が、重合可能基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
体内の標的部位において、生分解性閉塞の形成のためのキットであって、当該キットが以下の:
突出重合可能基を含む生分解性天然多糖;
レドックス対の第一メンバー;
上記標的部位にデリバリーされるような形にされた器具;及び
レドックス対の第二メンバー
を含む、前記キット。
【請求項21】
生分解性天然多糖及びレドックス対の第一メンバーを含む第一組成物を含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記器具が、神経動脈瘤コイルを含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記レドックス対の前記第二メンバーが、前記器具に付随している、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
体内の標的部位において生分解性閉塞を形成する方法であって、当該方法が以下のステップ:
突出重合可能基を含む生分解性天然多糖、レドックス対の第一メンバー、及びレドックス対の第二メンバーを含む組成物を提供し;
上記組成物を体内の標的部位にデリバリーし;そして
生分解性閉塞が体内の標的部位において形成することを許容する
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記生分解性閉塞が、組成物を提供するステップ後少なくとも20秒で形成する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
体内の標的部位で生分解性閉塞を形成する方法であって、当該方法が以下のステップ:
第一組成物を上記標的部位にデリバリーし、ここで当該第一組成物が第一カップリング基を含む生分解性天然多糖を含み;そして
第二組成物を上記標的部位にデリバリーし、ここで当該第二組成物が第二カップリング基を含む
を含み、ここで上記第二カップリング基が上記カップリング基と反応性であり;デリバリーステップの間又は後に、上記第一カップリング基と第二カップリング基とのあいだの反応が、上記生分解性閉塞の形成を促進する、前記方法。

【公表番号】特表2009−508653(P2009−508653A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532381(P2008−532381)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/036812
【国際公開番号】WO2007/035865
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】