説明

生活習慣病予防材及びそれを用いた飲食品

【課題】
継続的に摂取しても安全で、優れた生活習慣病予防効果を有する物質をクロレラのプロテアーゼ処理物から見出し、さらに、当該物質を機能性食品や健康食品に添加するための素材として、あるいは機能性食品や健康食品自体として利用すること。

【解決手段】
本発明はクロレラのプロテアーゼ処理物を有効成分として含有する生活習慣病予防材を提供する。本発明の生活習慣病予防材は、肥満、高脂血(中性脂肪・遊離脂肪酸)、又は高血糖のいずれかを改善させ、インスリン感受性改善作用、肝機能(GPT)改善作用、又は腎機能(尿酸)改善作用のいずれかを有することを特徴とする。また、少量摂取で生活習慣病の予防が可能であるため、日常的及び長期的な摂取に適しており、特に、食品としての摂取に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロレラのプロテアーゼ処理物を有効成分として含有する生活習慣病予防材及びそれを用いた飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国において食生活の欧米化によりカロリー摂取過多の傾向が進む一方で,野菜や繊維質などの摂取不足が指摘されている。このような食生活のアンバランスや運動不足などにより生活習慣病患者やその予備軍が増加している。
【0003】
生活習慣病患者やその予備軍では肥満症、糖尿病、高脂血症および高血圧症などを2つあるいは3つ併発している状態が多い。これらの症状は相乗的に病気を悪化させ、生活習慣病の更なる進行と新たな病気の併発を招く。そのため、生活習慣病を予防する上で重要なことはより多くの症状を抑えるにある。生活習慣病は普段の食生活に深く左右されることから、長期的に摂取しても安全で生活習慣病予防作用を持つ食品の開発が期待される。
【0004】
クロレラは、緑色植物門、緑藻鋼、クロレラ属の緑藻である。クロレラは特に高蛋白質であり、必須アミノ酸、核酸、ミネラルの他、ビタミンEやカロチノイドなども含有されている。このようにクロレラは栄養豊富であるので、動物の飼料や健康食品あるいは食品添加物として利用されおり、食経験の多い安全な素材である。
【0005】
従来のクロレラでは、生活習慣病の予防における摂取目安量は成人において9g/日となっている(非特許文献1)。クロレラの摂取目安量を一般的な錠剤の重さ0.2gに換算すると、45錠/日という量を飲用することになり、多量のクロレラを飲む必要があった。
【0006】
近年、食品にプロテアーゼ処理をすることで生活習慣病予防効果を持つ素材の開発が可能になり、魚肉や牛肉、大豆などの素材で検討が行われ開示されてきた(特許文献1、2、3)。クロレラについても検討が行われており、クロレラをプロテアーゼ処理することにより、消化吸収率の向上、苦味の除去、水溶性の付加などの素材改良の可能性を示している(特許文献4)。
【0007】
また、クロレラのプロテアーゼ処理物から得られたペンタペプチドについて血圧降下作用を有することが判明している(特許文献5)。その他にも、クロレラのプロテアーゼ処理物によるコレステロール代謝改善作用が明らかとなった(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−338482号広報
【特許文献2】特開平10-66515号広報
【特許文献3】特開2005-206545号広報
【特許文献4】特開2000-106826号広報
【特許文献5】特開平11-343298号広報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】藤原洋子、平川敬二、新保國弘;高脂血症患者に及ぼすクロレラ長期投与の影響.日本栄養・食糧学会誌、43(3):167(1990)
【非特許文献2】上野すぎ、小西史子、中村寿雄、隈本正一郎;クロレラペプチド(ALE)はストレプトゾトシン(STZ)ラットの脂質代謝を改善させる.日本栄養・食糧学会大会、埼玉、2008.講演要旨集 p.204.
【非特許文献3】続医薬品の開発(vol.1, p.31-44)
【非特許文献4】尾崎真智子、藤田朋恵、熊谷雄治、大谷義夫;日本人健常成人を対象としたfirst-in-human試験における初回投与量設定に関するレトロスペクティブな検討.臨床薬理(37(3)May 2006, p.119-126)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の知見により、様々な食品素材からプロテアーゼ処理をすることで多くの生活習慣病予防効果を引き出すことが期待できる。しかし、クロレラのプロテアーゼ処理物において血圧降下作用やコレステロール代謝改善作用以外の作用は知られておらず、多くの症状の併発を特徴とする生活習慣病への予防にとって十分な素材とは言えない。
【0011】
そこで、本発明は、継続的に摂取しても安全で、優れた生活習慣病予防作用をクロレラのプロテアーゼ処理物からさらに見出し、機能性食品や健康食品に添加するための素材として、あるいは機能性食品や健康食品自体として利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に対して、本発明者らは、微生物、動物及び植物由来の蛋白質分解酵素のうち1種類もしくは2種以上で、クロレラを処理して、得られるクロレラのプロテアーゼ処理物を含有することを特徴とする生活習慣予防材を提供する。
【0013】
この生活習慣病予防材は微生物、動物及び植物由来の蛋白質分解酵素である金属プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼのいずれかを使用して加水分解を行い、得られたクロレラのプロテアーゼ処理物を使用することによって得られる。
【0014】
蛋白質分解酵素は低分子化されたペプチドを効率よく安全に製造するにはエンド型で至適温度が高く、酵素分解能力の高いペプチターゼ、例えばBacillus licheniformis由来のアルカリプロテアーゼなどが最も望ましい。
【0015】
微生物、動物及び植物由来の蛋白質分解酵素による加水分解の方法で得られたクロレラのプロテアーゼ処理物は分子量10,000以下のクロレラのペプチド混合物を得られる。好ましくは、分子量2,000以下であることが望ましい。
【0016】
このようにして得られたクロレラのプロテアーゼ処理物を噴霧乾燥もしくは凍結乾燥によって得られた粉末状態で使用することにより、クロレラのプロテアーゼ処理物を含有する生活習慣病予防材として提供する。
【0017】
本発明の生活習慣病予防材は肥満、高脂血(中性脂肪・遊離脂肪酸)、又は高血糖のいずれかを改善することで生活習慣病の予防または改善を提供する。
【0018】
また、本発明の生活習慣病予防材はインスリン感受性改善作用、肝機能(GPT)改善作用、又は腎機能(尿酸)改善作用のいずれかを有することで生活習慣病の予防または改善を提供する。
【0019】
すなわち、本発明は、クロレラを蛋白質分解酵素で加水分解処理して得られるプロテアーゼ処理物を含有することを特徴として作成した生活習慣病予防材に、肥満抑制効果、血糖上昇抑制効果、血中脂質(中性脂肪、遊離脂肪酸)の抑制効果、肝機能(GPT)の改善効果、腎機能(尿酸)の改善効果及びインスリン感受性の改善効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生活習慣病に対して優れた予防または改善作用を有する生活習慣病予防材が提供される。または機能性食品や健康食品に添加するための素材として、あるいは機能性食品や健康食品自体として利用することができる。
【0021】
本発明の生活習慣病予防材を日々の生活習慣により、高血糖、高脂血および肥満となっている人の改善に好適である。また、インスリン感受性改善作用、肝機能(GPT)改善作用、又は腎機能(尿酸)改善作用のいずれかを有することで、生活習慣病予備軍や健常人の生活習慣病発症の予防にも利用することが可能である。
【0022】
従来のクロレラによる生活習慣病の予防または改善において、成人において9g/日を経口摂取する必要があった。しかし、本発明の生活習慣病予防材において生活習慣病の予防または改善の摂取目安量は60mg以上/日であり、プロテアーゼ処理物の含有量から比較して従来のクロレラ摂取量の約30分の1の用量で生活習慣病の予防が可能となった。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)血漿中のGPTを示すグラフ。(b)血漿中の中性脂肪を示すグラフ。(c)血漿中の遊離脂肪酸を示すグラフ。
【図2】(a)血漿中の血糖値を示すグラフ。(b)血漿中の尿酸値を示すグラフ。
【図3】各群における精巣周囲脂肪量を示すグラフ。
【図4】インスリンを投与した際の各時間における血糖値を表したインスリン感受性試験のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
クロレラ原料としては、緑藻に属する淡水産単細胞藻類の一種であるクロレラ属藻類(例えば、Chlorella prenoidosa、C.ellipsoidea、C.vulgaris、など)であればすべて使用可能である。本発明に使用できるクロレラの培養方法は、大きく分けて光合成培養(明培養)、タンク培養(暗培養)の二つの方法がある。本発明品を製造するための原料は、いずれの培養法により生産されたクロレラも使用できる。
【0025】
次に、選抜された保存株で小型ジャーファーメンターを用いて、種培養を行う。次に光合成培養は、小型の培養プールに植え継ぎ、順次大型プールへと拡大培養を行う。またタンク培養は、種培養後大型の無菌タンクに植え継ぎ、グルコース及び酢酸などの炭素源を用いて培養を行う。上記の培養方法で生産されたクロレラを酵素処理する際は、生クロレラ及び乾燥クロレラのいずれの形態でも使用し得る。
【0026】
次に上記方法で生産されたクロレラは加熱処理を行った後にpHを調整し、微生物、動物及び植物由来の蛋白質分解酵素で2〜18時間加水分解を行う。また処理温度は、処理時間が長いことから汚染の危険を避けるためにできるだけ高温(55〜60℃)で処理することが望ましい。
【0027】
本発明において使用する微生物、動物及び植物由来の蛋白質分解酵素は、金属プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼのいずれかを使用する。中でも、低分子化されたペプチドを効率よく安全に製造するにはエンド型で至適温度が高く、酵素分解能力の高いペプチターゼ、例えばBacillus licheniformis由来のアルカリプロテアーゼなどが最も望ましい。また、2種以上の蛋白質分解酵素を用いて、低分子化する方法も可能である。
【0028】
分解終了後80℃、30分間昇温させ、酵素失活後冷却し、遠心分離機により固液分離を行う。得られた上清部を電気透析装置で脱塩後、限外濾過を行い、その後噴霧乾燥もしくは凍結乾燥させ、クロレラのプロテアーゼ処理物を粉末で得ることができる。
【0029】
こうして得られたクロレラのプロテアーゼ処理物粉末は、そのまま散剤や粉剤等の形態で服用してもよく、あるいは適当な賦形剤、乳化剤、溶剤、安定剤等の添加剤とともに顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等の形態に加工してもよい。また、ドリンク剤等の形態に加工して服用することも可能である。
【0030】
本発明の生活習慣病予防材の投与量は、年齢、治療効果及び病態などにより異なるが、ラットを用いた動物実験の結果によると、生活習慣病予防作用を示すためにはクロレラのプロテアーゼ処理物を、ラット体重1kg換算で60mg以上/日で投与する必要があることが分かった。このことから、外挿法に従うと、成人に対する有効成分量は、60mg以上/日となる(非特許文献3、4)。
【0031】
従来のクロレラにおいて、生活習慣病の予防における摂取目安量は成人において9g/日となっている。本発明の生活習慣病予防材であるクロレラのプロテアーゼ処理物は実施例においてクロレラ1g当たり0.244g作成できることが確認された。よって、従来のクロレラの有効成分量9g におけるクロレラのプロテアーゼ処理物の含量は2.196gであり、本発明の生活習慣病予防材の有効成分量よりも36.6倍も摂取していることになる。
【0032】
本発明の生活習慣病予防材の有効成分量は成人に対して60mg以上/日であり、上記に示す従来のクロレラにおける摂取量よりも、クロレラのプロテアーゼ処理物の含量の換算において約30分の1の用量で生活習慣病予防作用を示すことが可能となった。
【0033】
成人に対して60mg以上/日の有効成分量を用いて、クロレラのプロテアーゼ処理物を有効成分として食品や医薬品、医薬部外品などに使用することにより、生活習慣病を予防または改善することができる。
【0034】
本発明の生活習慣病予防材における生活習慣病予防効果とは高血糖、高脂血および肥満のいずれかを改善することである。また、インスリン感受性改善作用、肝機能(GPT)改善作用、又は腎機能(尿酸)改善作用のいずれかを有することにより、生活習慣病予備軍や健常人の生活習慣病発症の予防にも利用することが可能である。
【0035】
本発明の生活習慣病予防材は、ヒト以外にも、ウマ、ウシ、ブタのような家畜(非ヒト哺乳動物)、ニワトリ等の家禽、あるいは犬、猫、ラット及びマウス等のペットに投与してもよい。次に、実施例を示して本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
蛋白質分解酵素の検討を行った。100℃、20分の加熱処理をしたクロレラスラリー(154g/L)を酵素添加量1%(w/w)、液量500ml、PH7.0の条件で、5時間の酵素分解処理におけるクロレラのプロテアーゼ処理物の抽出濃度を測定した。蛋白質分解酵素はサモアーゼ、アクチナーゼAS、デナチームAP、パパイン、プロチンPC10F、ニュートラーゼ、プロタミックス、プロナーゼプロテアーゼ、アルカラーゼ(いずれも商品名)を使用した。使用した蛋白質分解酵素によるクロレラのプロテアーゼ処理物の抽出濃度は平均25g/Lであった。アルカラーゼにおいては、42g/Lと効率よく抽出できることが判明した。
【実施例2】
【0037】
クロレラのプロテアーゼ処理物を作成した。130g/Lの濃度に調整された生のクロレラスラリー12Lをオートクレーブ(120℃、15min)で加熱処理を施し、冷却後水酸化ナトリウムでpH8.3に調整した。次に(アルカラーゼ2.4L FG、ノボザイム社製)を24ml添加し、緩い撹拌をしながら55℃で18時間加水分解を行った。その後80℃、30分間酵素失活後冷却を行った。
【0038】
次に遠心分離機で得られた上清を電気透析装置(アシライザー02型、アストム社製)により脱塩を行った(電導度7.4→5.3ms/cm)。脱塩後限外濾過(<2000MW、ザルトリウス社製)を行い、濾液を凍結乾燥し、350gのクロレラのプロテアーゼ処理物を粉末で得た。
【0039】
上記クロレラのプロテアーゼ処理物の粉末の成分組成について高速液体クロマトグラフィーを用いて分画を行った後分析を行った結果、全糖量24%(グルコース+アミノ糖)、タンパク量61%(オリゴペプチド43%+遊離アミノ酸14%)であった。また、クロレラのプロテアーゼ処理物の組成は分子量10,000以下の物質で構成されており、分子量2000以下のペプチド混合物が50〜60%を占めていた。
【実施例3】
【0040】
クロレラペプチド混合粉末含有錠剤(200mg/Tab)を製造した。配合組成はクロレラのプロテアーゼ処理物75%、結晶セルロース10%、還元麦芽糖11%、シュガーエステル4%であった。錠剤の物性は、硬度、崩壊度、ともに良好で、40℃、6か月の加速試験を行った結果、多少着色がみられる程度で物性変化はほとんどなかった。
【0041】
生活習慣病は個人によって症状や進行が違う。そこでの4つの生活習慣病モデルを作製し、クロレラのプロテアーゼ処理物の生活習慣病予防効果の評価を行った。
【実施例4】
【0042】
ストレプトゾトシンは、実験動物の膵臓β細胞を破壊し、インスリンの産生を抑制し高血糖状態を作り出す薬剤である。ストレプトゾトシンをSD系雄ラットに投与することによって、糖尿病モデルラットが作成できる。この糖尿病モデルラットに対するクロレラのプロテアーゼ処理物の生活習慣病予防効果の評価を行った。
【0043】
6週齢SD系雄ラットにストレプトゾトシンを体重当たり50mg/kg Body Weightを腹腔内投与し、2日後に血糖値250〜399mg/dlの1型糖尿病モデルラットを作成した。その後、血糖値が揃うように5匹ずつ2群に分け、無処置群、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群として飼育した。クロレラのプロテアーゼ処理物はラット体重1kg換算で60mg/日を毎日一回ゾンデで投与した。
【0044】
飼育期間は5週間とし、摂餌および摂水を自由摂取とした。飼育終了時に血漿から肝機能損傷度の指標としてGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)、血中脂質の指標として中性脂肪および遊離脂肪酸を測定した。
【0045】
図1(a)、(b)及び(c)にGPT、中性脂肪量及び遊離脂肪酸量の測定結果を示した。無処置群に比べて、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群においてGPT、中性脂肪量及び遊離脂肪酸量は有意に抑制された(p<0.05 )。この結果から、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群において肝臓機能低下と血中脂質を改善する働きがあることが確認された。
【0046】
また、この生活習慣病予防作用はラット体重1kg換算で60mg/日のクロレラのプロテアーゼ処理物を投与した場合に認められることが明らかとなった。
【実施例5】
【0047】
生活習慣病のモデル実験において、高脂肪や高糖質などの高カロリーな餌を給餌することによる生活習慣病実験がある。今回の実験において、SD系雄ラットを高脂肪の餌を用いて、肥満に対するクロレラのプロテアーゼ処理物の生活習慣病予防効果の評価を行った。
【0048】
7週齢SD系雄ラットを6匹ずつ2群に分け、無処置群、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群として飼育した。クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群はラット体重1kg換算で60mg/日を毎日一回ゾンデで投与した。飼育期間は4週間とし、摂餌および摂水を自由摂取とした。飼育終了時に血漿から血糖値の測定および腎機能損傷度の指標として尿酸の測定を行った。なお、飼育期間の餌は表1に示す高脂肪食を用いた。
【0049】
図2(a)及び(b)に血糖値及び尿酸の測定結果を示した。血糖値及び尿酸において、無処置群に対してクロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群は有意に抑制された(a:p<0.05、b:p<0.01 )。これらの結果から、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群において血糖値の上昇の抑制及び腎機能低下を改善する働きがあることが明らかとなった。
【実施例6】
【0050】
生活習慣病のモデル実験において、高コレステロールの餌を給餌することによる生活習慣病実験がある。今回の実験において、ICR系雄マウスを高コレステロールの餌を用いて、生活習慣病に対するクロレラのプロテアーゼ処理物の生活習慣病予防効果の評価を行った。
【0051】
6週齢ICR系雄マウスを10匹ずつ2群に分け、無処置群、プロテアーゼ処理物を与えた群として飼育した。クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群は100g当りにクロレラのプロテアーゼ処理物を100mg配合した餌を与えた。飼育期間は13週間とし、摂餌及び摂水を自由摂取とした。飼育終了時に内蔵脂肪量を測定した。なお、飼育期間の餌は表2に示す高コレステロール食を用いた。
【0052】
図3に内蔵脂肪量の測定結果を示した。内臓脂肪量は、無処置群に対してクロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群において有意に抑制された(p<0.05 )。これらの結果から、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群において肥満を改善する働きがあることが明らかとなった。
【実施例7】
【0053】
db/dbマウスは過食による肥満から糖尿病を発症する生活習慣病モデルマウスである。この生活習慣病モデルマウスを用いて、クロレラのプロテアーゼ処理物の生活習慣病予防効果の評価を行った。
【0054】
肥満・2型糖尿病モデルマウスである6週齢db/db雄マウスを、血糖値を測定して血糖値が揃うように6匹ずつ2群に分け、無処置群、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群として飼育した。クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群は100g当りにクロレラのプロテアーゼ処理物を100mg配合した餌を与えた。実験期間は13週間とし、摂餌及び摂水を自由摂取とした。実験期間12週目において、マウス体重1kg当たり2.0 IUのインスリンを腹腔内投与して血糖値の低下を測定するインスリン感受性試験を行った。
【0055】
図4にインスリン感受性試験の測定結果を示した。インスリン感受性試験において、無処置群に対してクロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群はインスリン投与後、30分及び60分において有意に血糖値を低下させた(p<0.05 )。これらの結果から、クロレラのプロテアーゼ処理物を与えた群においてインスリン感受性を改善する働きがあることが明らかとなった。
【表1】


【表2】

【符号の説明】
【0056】
A.無処置群
B.クロレラのプロテアーゼ処理物を投与した群



【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物、動物及び植物由来の蛋白質分解酵素のうち1種類もしくは2種以上で、クロレラを処理して、得られるクロレラのプロテアーゼ処理物を含有することを特徴とする生活習慣病予防材。
【請求項2】
微生物、動物及び植物由来の蛋白質分解酵素は、金属プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼのいずれかを使用して加水分解を行う ことを特徴とする請求項1記載の生活習慣病予防材。
【請求項3】
クロレラのプロテアーゼ処理物は、分子量10,000以下のクロレラのペプチド混合物からなることを特徴とする請求項1記載の生活習慣病予防材。
【請求項4】
生活習慣病予防として、クロレラのプロテアーゼ処理物を、噴霧乾燥もしくは凍結乾燥によって得られた粉末状態で使用することを特徴とする請求項1記載の生活習慣病予防材。
【請求項5】
生活習慣病としての肥満、高脂血(中性脂肪・遊離脂肪酸)、又は高血糖のいずれかを改善することを特徴とする請求項1記載の生活習慣病予防材。
【請求項6】
インスリン感受性改善作用、肝機能(GPT)改善作用、又は腎機能(尿酸)改善作用のいずれかを有する請求項1に記載の生活習慣病予防材。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかの項に記載の生活習慣病予防材を60mg以上/日で摂取できるように含有していることを特徴とする飲食品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−235517(P2010−235517A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85407(P2009−85407)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000105051)クロレラ工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】