説明

生物学的に活性なペプチド

(i)WDLYFEIVW(配列番号1);または
(ii)WDLYFEIVW(配列番号1)内に1、2、3または4つのL−アミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列;または
(iii)部分(i)および(ii)のうちのいずれか1つのペプチドまたはペプチド誘導体のレトロインベルソバリアント
を含むペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、前記ペプチドまたはペプチド誘導体は、凝血促進活性を有する。
(i)imfwydcyeを含むアミノ酸配列;または
(ii)imfwydcye内に1、2、3、4、5または6つのアミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列
を含むペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、前記ペプチドまたはペプチド誘導体は、凝血促進活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年4月17日に出願された米国仮特許出願第61/009,326号、および2008年11月10日に出願された米国仮特許出願第61/113,055号の優先権を主張し、これらの米国仮特許出願の各々は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIが欠乏した患者を処置するための凝血促進活性を有する低分子量ペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血液凝固カスケードは、一連のセリンプロテアーゼ酵素(チモーゲン)およびタンパク質補助因子を含む。必要なときに、不活性なチモーゲン前駆体は、活性型に変換され、その結果として、カスケードにおける次の酵素が変換される。これは、3つの異なるセグメント:内因性経路(接触活性化)、外因性経路(組織因子)および共通経路に分けられる。
【0004】
このカスケードの内因性経路において、血友病は、最も著しい出血障害であり、血友病は、第FIX因子(FIXa)/第VIIIa因子(FVIIIa)複合体(内因性テナーゼ複合体)による第Xa因子の産生が不十分であり、それにより、不十分な血餅の形成がもたらされる。そして、出血が自発的または損傷後に生じ得る。
【0005】
血友病は、遺伝性の出血障害であり、血友病AおよびBという2つの型の血友病が知られている。血友病Aは、FVIII欠乏の結果であり、関節および筋肉への出血を特徴とする。FVIIIは、血漿中において非常に低濃度で循環するものであり、フォン・ビルブラント因子(vWF)に対して非共有結合的に結合する。止血中、FVIIIは、トロンビンによって活性化され、vWFから分離し、そして活性化の速度を上げることによって、活性化されたFIXa媒介性FX活性化に対する補助因子として作用する。
【0006】
1%未満の正常なFVIIIを有する患者が、重篤な血友病を有し、1〜5%が、中程度に重篤な血友病を有し、そして5%を超えるが40%未満が、軽度の血友病を有すると考えられている。
【0007】
現今では、血友病Aを管理するための最適な処置は、様々な血漿由来または組換えのFVIII濃縮物を用いた補充療法である。溶媒−界面活性剤処理または液相熱処理を含む特定のウイルス不活性化工程は、ウイルスを不活性化するために利用可能であるが、血漿由来濃縮物中の十分に特徴付けされていない作用物質(例えば、プリオン)の伝達の可能性が、なおも当該分野において考察されている問題である。
【0008】
FVIIIは、出血障害において治療的に使用するための組換えタンパク質としても合成される。このような製品は、ウイルス混入のリスクが低い。血友病Aを処置するための多くの組換え製品が市場に存在する。これらの濃縮物のうちの1つは、Baxter Healthcare Corporationが製造する、CHO細胞において産生されるAdvate(登録商標)FVIII組成物である。この製品の細胞培養プロセス、精製または最終的な製剤化にヒトまたは動物の血漿タンパク質は加えられない。
【0009】
純度、有効性およびウイルスの安全性を保証するFVIIIの製造が、過去数十年間にわたって進歩しているにもかかわらず、いくつかの限界が残っている。第一に、重篤な血友病A患者は、治療を無効にしてしまう抗FVIIIインヒビター抗体の形成に頻繁に影響を受ける。
【0010】
重篤なHAを有する患者の約30%は、FVIIIを中和し得る同種抗体インヒビターを産生する(Hay,Haemophilia 2006;12 Suppl 6:23−9;Peerlinck and Hermans,Haemophilia 2006;12:579−90)。これらのインヒビターは、代表的には、補体を固定せず、循環免疫複合体とともに観察される末端器官の損傷をもたらさない、主にIgG4サブクラスの、免疫グロブリンG(IgG)である。それらのインヒビターは、主に1%未満のFVIIIを有する患者において、幼齢(約50%が10歳まで)において生じる。さらに、FVIII欠乏の履歴を有しない人におけるFVIII抗体インヒビターの産生である、後天性の血友病が生じることがある。この状態は、特発性であり得るか(50歳を超える人において起きる)、膠原血管病もしくは周産期と関連し得るか、または薬物反応(例えば、ペニシリンに対する)を示し得る。臨床目的のために、ベセズダ単位(BU)のインヒビター力価を得ることができる機能的インヒビターアッセイを行うことによって、抗体応答の大きさが定量化され得る。International Society of Thrombosis and Haemostasis(ISTH)における高力価応答の定義は、>5BUであり、低力価応答の定義は、0.5〜5BUである。
【0011】
大量のヒトFVIIIを用いてそれらのインヒビターを圧倒する試みが試されている。ヒトFVIII抗体との交差反応性が低いブタのFVIIIもまた、投与されている。活性化されたプロトロンビン複合体濃縮物(例えば、FEIBA(第8因子インヒビターバイパス物質)および組換え活性化FVII因子(FVIIa)を含むFVIIIバイパス物質もまた、より頻繁に使用されている。
【0012】
インヒビター産生の欠点に加えて、FVIIIなどの治療用ポリペプチド薬が、タンパク分解酵素によって急速に分解されるので、FVIIIは、頻繁に静脈内に投与される必要がある。様々なFVIII製品の循環中の平均半減期を考慮に入れると、これは、通常、1週間に2〜3回FVIIIを投与することによって達成され得る。したがって、この処置は、外来患者集団、特に、小さい小児における外来患者集団にとってかなり困難である。
【0013】
したがって、現在のところ、FVIIIの多くの製造者の目的は、製品の他のすべての特徴を維持しつつ、薬力学的および薬物動態学的特性が向上した次世代の製品を開発することである。循環半減期が長くなった改善されたポリペプチド薬は、投与の必要回数を減少させ得るので、そのポリペプチド薬の化学的または酵素的な改変が、この目標を達成する好ましいアプローチの1つである。
【0014】
1つのそのような例は、薬力学的および薬物動態学的プロファイルを保護し、改善するポリペプチド薬のPEG化である(Harris and Chess,Nat Rev Drug Discov.2003;2:214−21)。特許文献1では、ポリ(アルキレンオキシド)−FVIIIまたはFIX結合体が記載されており、そのタンパク質は、前記FVIIIのカルボニル基を介してポリ(アルキレンオキシド)に共有結合されている。
【0015】
これらの方法が、インヒビターの発生を減少させるとしても、なおもそれらは静脈内投与の必要性を取り消さないだろう。上で考察された血友病処置法の欠点のほとんどを時代遅れにさせる最も精密で簡潔な選択肢は、凝血を改善する能力を備え、非静脈内経路によって投与することができる、ペプチド(ペプチド模倣物)などの低分子量化合物の開発だろう。そのような作用物質は、長年にわたってすでに検討されているが(例えば、Kaufman and Pipe,Haemophilia 1998;4.370−9;Llung,Thromb Haemost.1999;82:525−30)、現在のところ、利用可能でないし、臨床開発中でもない。
【0016】
血液凝固における小ペプチドの使用についての現在の最先端は、例えば、以下の刊行物によって実証されている:DK Liles,DM Monroe and HR Roberts(1997)Blood Vol 90 No 10 Supplement 1,463aは、リン脂質表面上でFXのFIXa媒介性活性化を促進し得るFVIII由来のペプチド698−712を開示しているポスター要約である。しかしながら、FVIIIaの存在下では、そのペプチドは、リン脂質表面上でのFXのFIXa媒介性活性化を阻害する。今まで、このポスター要約において開示された結果を確証する、これらの著者らの査読刊行物は存在しない。
【0017】
Blosteinら(2000)Biochemistry 39:12000−12006では、両親媒性のアルファヘリックスが、FIXa Glaドメインと相互作用することができ、リン脂質の非存在下においてFXの活性化を高めることが開示されている。それらのペプチドは、リン脂質を模倣することによって、アミノ酸配列とは独立して作用すると見られた。そのようなペプチドを治療において使用するという提案は存在しない。健常な状態では、活性化された血小板は、脂質[0]表面を支持する凝血を提供する。血小板は、血管の損傷部位に形成されるトロンビンによって活性化されるので、凝血プロセスは、損傷部位に限定される。凝血促進脂質に対する一般的な代替物であるペプチドを身体に提供することは、全身性の凝血を引き起こし得、最終的には播種性血管内凝固(DIC)に導き得るので、非常に望ましくない。それゆえ、Blosteinによって報告されたペプチドは、治療において有用ではないだろう。
【0018】
特許文献2および特許文献3は、FVIIIaと相互作用するFIXaプロテアーゼドメインの領域を開示している。それらのペプチドは、FIXaのFVIIIa結合部位を含み、FIXaがFVIIIaに結合することを阻害する。しかしながら、それらは、血栓症を予防するためまたは処置するための抗凝固薬としてのみ有用である。
【0019】
特許文献4は、ヒトFVIIIおよびFVIII様タンパク質に対する結合分子を開示している。これらのポリペプチドは、FVIIIおよび/またはFVIII様ポリペプチドに結合し、血液または条件培地などの溶液からのヒトFVIIIおよび/またはFVIII様ポリペプチドの検出および精製に有用である。
【0020】
特許文献5では、FIX/FIXa活性化抗体および抗体誘導体が、FIXaのアミド分解活性を高めるため、ならびに血友病Aおよび出血性素質などの血液凝固障害を処置するために使用されている。
【0021】
特許文献6では、FVIIaアンタゴニストが開示されている。これらのアンタゴニストは、FVIIa活性を阻害するペプチドであり、血栓溶解治療と併用して動脈血栓症の予防に有用であると言われている。
【0022】
本明細書中の、以前に公開されている文書の列挙または考察は、その文書が、最先端の一部であるかまたは通常の一般的な知識であるという承認として必ずしも取られるべきでない。
【0023】
当該分野では、血友病A(FVIII欠乏)を有する患者を処置するための凝血促進活性を備えた低分子量ペプチドに対する大きな必要性が残っている。本発明は、血友病Aの非静脈内処置に使用することができる凝血促進活性を備えた新規の低分子量ペプチドを提供する。本発明(The present prevention)は、これらの新規ペプチドをFV、FVII、FXおよび/またはFXIの欠乏の処置のためにも提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第6,037,452号明細書
【特許文献2】米国特許第7,109,170号明細書
【特許文献3】米国特許第6,624,289号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第20010014456A1号明細書
【特許文献5】米国特許第7,033,590号明細書
【特許文献6】米国特許第7,084,109号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
発明の要旨
本発明の第1の局面は:
(i)WDLYFEIVW(配列番号1);または
(ii)WDLYFEIVW(配列番号1)内に1、2、3または4つのL−アミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列;または
(iii)部分(i)および(ii)のうちのいずれか1つのペプチドまたはペプチド誘導体のレトロインベルソ(retro−inverso)バリアント
を含むペプチドまたはペプチド誘導体を提供し、ここで、前記ペプチドまたはペプチド誘導体は、凝血促進活性を有する。
【0026】
不確かさを回避するために、配列WDLYFEIVW(配列番号1)は、アミノ酸に対する3文字コードを用いて、L−アミノ酸Trp−Asp−Leu−Tyr−Phe−Glu−Ile−Val−Trpとして表され得る。WDLYFEIVW(配列番号1)のレトロインベルソバリアントは、wviefyldwであり、D−アミノ酸を含む。
【0027】
本発明の第2の局面は:
(i)imfwydcyeを含むアミノ酸配列;または
(ii)imfwydcye内に1、2、3、4、5もしくは6つのアミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列
を含むペプチドまたはペプチド誘導体を提供し、ここで、前記ペプチドまたはペプチド誘導体は、凝血促進活性を有する。
【0028】
不確かさを回避するために、配列cimfwydcyeは、アミノ酸に対する3文字コードを用いて、D−アミノ酸ile−met−phe−trp−tyr−asp−cys−tyr−gluとして表され得る。
【0029】
本発明の第3の局面は、本発明の第1または第2の局面のさらなるペプチドまたはペプチド誘導体に結合体化された、本発明の第1または第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体を含む二重ペプチドを提供し、ここで、その2つのペプチド/誘導体は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよく、その二重ペプチドは、凝血促進活性を有する。
【0030】
本発明の第4の局面は、本発明の第1もしくは第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体、または本発明の第3の局面の二重ペプチドを含む薬学的組成物を提供する。
【0031】
本発明の第5の局面は、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置するための、第1もしくは第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体、または本発明の第3の局面の二重ペプチドを提供する。
【0032】
本発明の第6の局面は、患者におけるFV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を処置するための薬物の製造における、第1もしくは第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体、または本発明の第3の局面の二重ペプチドの使用を提供する。
【0033】
本発明の第7の局面は、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法を提供し、その方法は、治療有効量の第4の局面の薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0034】
本発明の第8の局面は、凝血促進活性を有するペプチドまたはペプチド誘導体を提供し、ここで、そのペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIまたはそのフラグメントではなく、その凝血促進活性は、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける、少なくとも100mU/mLの第8因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、好ましくは、少なくとも300mU/mLのFEIBA、より好ましくは、少なくとも900mU/mLのFEIBA、最も好ましくは、少なくとも1200mU/mLのFEIBAの凝血促進活性と等しい、25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である。
【0035】
本発明の第9の局面は、凝血促進活性を有するペプチドまたはペプチド誘導体を提供し、ここで、そのペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIまたはそのフラグメントではなく、その凝血促進活性は、30分以内、好ましくは、15分以内、最も好ましくは、10分以内にピークを迎える、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である。
【0036】
本発明の第10の局面は、凝血促進活性を有するペプチドまたはペプチド誘導体を提供し、ここで、そのペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIまたはそのフラグメントではなく、そのペプチドまたはペプチド誘導体は、重篤なヒト血友病Aの動物モデルにおいて投与されたときに、生物学的に活性なFVIIIの欠如を少なくとも部分的に補償し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1:規定の二重経路トロンビン生成アッセイにおける、ピークトロンビン生成およびトロンビンピーク時間に対する、血友病の処置について承認された治療法の効果。
【図2】図2:FVIII−/−マウス出血モデル−失血量に対するA01の効果。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
本発明の範囲内の用語「アミノ酸」は、天然に存在するすべてのL α−アミノ酸を含むと意図される。天然に存在するアミノ酸に対して、1文字および3文字の省略形が本明細書中で使用される(Lehninger,Biochemistry,2d ed.,Worth Publishers,New York,1995:71−92)。用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)および改変物、非タンパク新生アミノ酸、ならびにアミノ酸を模倣するように設計された構造も含む。
【0039】
改変されたアミノ酸および非タンパク新生アミノ酸は、Grant,Synthetic Peptides:A User’s Guide,Oxford University Press,1992において広く説明されている。
【0040】
例えば、天然に存在しない様々なアミノ酸の導入または本明細書中で述べられるようなアミノ酸の改変によって、そのペプチドの改善された安定性および溶解性、プロテアーゼ分解に対する抵抗性、ならびに活性を提供することが可能である。
【0041】
非タンパク新生アミノ酸としては、β−アラニン(β−Ala)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、4−アミノ酪酸(γ−Abu)、2−アミノイソ酪酸(Aib)、6−アミノヘキサン酸(ε−Ahx)、オルニチン(orn)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、サルコシン、シトルリン、システイン酸(Coh)およびシクロヘキシルアラニン、メチオニンスルホキシド(Meo)、メチオニンスルホン(Moo)、ホモセリンメチルエステル(Hsm)、プロパルギルグリシン(Eag)、5−フルオロトリプトファン(5Fw)、6−フルオロトリプトファン(6Fw)、3’,4’−ジメトキシフェニル−アラニン(Ear)、3’,4’−ジフルオロフェニルアラニン(Dff)、4’−フルオロフェニル−アラニン(Pff)、1−ナフチル−アラニン(1Ni)、1−メチルトリプトファン(1Mw)、ペニシラミン(Pen)、ホモセリン(HSe)が挙げられ得るがこれらに限定されない。さらに、そのようなアミノ酸としては、α−アミノイソ酪酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン(Phg)、ベンゾチエニルアラニン(Bta)、L−ホモ−システイン(L−Hcys)、N−メチル−フェニルアラニン(NMF)、2−チエニルアラニン(Thi)、3,3−ジフェニルアラニン(Ebw)、ホモフェニルアラニン(Hfe)、s−ベンジル−L−システイン(Ece)またはシクロヘキシルアラニン(Cha)が挙げられ得るがこれらに限定されない。これらおよび他の非タンパク新生アミノ酸は、D−またはL−異性体として存在し得る。異性体の表示が与えられていない場合、L−異性体が意図される。
【0042】
アミノ酸を模倣するように設計された構造は、アミノ酸のアミノ基および/またはカルボキシル基が別の基で置き換えられた化合物である。非限定的な例は、チオアミド、尿素、チオ尿素、アシルヒドラジド、エステル、オレフィン、スルホンアミド、リン酸アミド、ケトン、アルコール、ボロン酸アミド、ベンゾジアゼピンおよび他の芳香族複素環または非芳香族複素環の組み込みである(概説として、M.A.Estiarte,D.H.Rich,Burgers Medicinal Chemistry,6th edition,volume 1,part 4,John Wiley & Sons,New York,2002を参照のこと)。これらの構造が、ペプチド誘導体内に含まれている場合、それらは、通常、アミド結合の代わりに、上で述べた官能基の少なくとも1つを用いてペプチド誘導体の残りの部分に接続される。
【0043】
「ペプチド」とは、アミノ酸残基がペプチド(−CO−NH−)結合によって連結されている分子だけではなく、ペプチド結合が逆転している分子も含む。「逆改変された(retro modified)」ペプチドとは、逆改変される本来のペプチドと逆の方向でアミノ酸残基が会合されるアミノ酸で構成されているペプチドである。本来のペプチドがL−アミノ酸を含む場合、「逆改変された」ペプチドもまたL−アミノ酸を含み得る。しかしながら、本来のペプチドがD−アミノ酸を含む場合、「逆改変された」ペプチドは、D−アミノ酸を含み得る。逆ペプチドは、CO−NHペプチド結合の代わりにNH−CO結合を含む。「インベルソ改変された(inverso modified)」ペプチドとは、インベルソ改変される本来のペプチドと同じ方向でアミノ酸残基が会合されるが、それらのアミノ酸のキラリティが反転しているペプチドである。したがって、本来のペプチドが、L−アミノ酸を含む場合、「インベルソ改変された」ペプチドは、D−アミノ酸を含み得る。本来のペプチドが、D−アミノ酸を含む場合、「インベルソ改変された」ペプチドは、L−アミノ酸を含み得る。インベルソペプチドは、依然としてCO−NHペプチド結合を有し得る。「レトロインベルソ改変された」ペプチドとは、レトロインベルソ改変される本来のペプチドに対して逆の方向で会合され、かつ、キラリティが反転している、アミノ酸残基で構成されているペプチドのことを指す。レトロインベルソアナログは、本来のペプチド配列におけるような側鎖のトポロジーをほぼ維持しつつ、逆転した末端および逆転したペプチド結合の方向(すなわちNH−CO)を有する。Guichardら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci USA 91:9765−9769では、レトロインベルソペプチドが、D−ペプチドおよび逆ペプチドではなく、天然のL−ペプチドIRGERAの構造および抗原活性を模倣すると記載された。そのようなレトロインベルソペプチド模倣物は、当該分野で公知の方法、例えば、本明細書中で参考として援用されるMeziereら(1997)J.Immunol.159,3230−3237に記載されている方法を用いて作製され得る。部分的なレトロインベルソペプチドアナログは、配列の一部だけが、逆転していて、鏡像異性のアミノ酸残基で置き換えられているポリペプチドである。そのようなアナログを作製するためのプロセスは、欧州特許97994−BであるPessi,A.,Pinori,M.,Verdini,A.S.& Viscomi,G.C.(1987)“Totally solid phase synthesis of peptide(s)−containing retro−inverted peptide bond,using crosslinked sarcosinyl copolymer as support”に記載されている。
【0044】
慣例的に、L−アミノ酸は、大文字を用いて表され、D−アミノ酸は、小文字を用いて表される。本発明のペプチドおよびペプチド誘導体は、好ましい形態で表されるが、それらはその好ましい形態に限定されない。本発明の第1の局面のペプチドは、WDLYFEIVW(配列番号1)またはそのバリアントを含むと表される。本発明の第1の局面のペプチドは、WDLYFEIVW(配列番号1)のレトロインベルソバリアントまたはそのバリアント、すなわちwviefyldwまたはそのバリアントでもあり得る。本発明の第2の局面のペプチドは、cimfwydcyeまたはそのバリアントを含むと表される。
【0045】
慣例的に、アミノ酸が、ペプチド結合によって連結される場合、ペプチドは、N末端におけるアミノ基が左側に見られ、C末端におけるカルボキシル基が右側に見られるように表示される。本発明に記載のペプチドおよびペプチド誘導体は、この様式で表示される。
【0046】
「ペプチド誘導体」は、1つ以上のアミノ酸残基の改変、またはリンカー基もしくは他の共有結合された基を含む。
【0047】
誘導体の例としては、アミノ末端または別の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、カルボキシル末端または別の遊離カルボキシル基もしくは遊離ヒドロキシ基のエステル、カルボキシル末端またはアンモニアもしくは適当なアミンとの反応によって生成される別の遊離カルボキシル基のアミド、グリコシル化された誘導体、ヒドロキシル化された誘導体、ヌクレオチジル化された(nucleotidylated)誘導体、ADP−リボシル化された誘導体、ペグ化された誘導体、リン酸化された誘導体、脂肪親和性部分に結合体化された誘導体、および抗体または他の生物学的リガンドに結合体化された誘導体が挙げられる。ペプチド結合−CO−NH−の改変、例えば、−CH−NH−への還元または−CO−N(アルキル)−へのアルキル化によって得られる誘導体もまた化学誘導体の中に含まれる。
【0048】
好ましい誘導体化は、C末端のアミド化である。ペプチドのC末端のアミド化は、C末端の負電荷を除去する。C末端のアミドを有するペプチド誘導体は、C末端において「NH」を用いて表示され、例えば、Ac−WDLYFEIVW−NH(配列番号1)である。別の好ましい誘導体化は、N末端のアセチル化である。これは、N末端における正電荷を除去する。C末端のアミド化またはN末端のアセチル化などによるC末端またはN末端のブロッキングは、エキソタンパク分解(exoproteolytic)消化に対する感受性を低下させるので、タンパク分解に対する安定性を改善し得る。
【0049】
適当なリンカーとしては、可撓性リンカー4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(Ttds)、グリシン、6−アミノヘキサン酸、ベータ−アラニン、またはTtds、グリシン、6−アミノヘキサン酸およびベータ−アラニンの組み合わせが挙げられる。
【0050】
本発明のペプチドは、化学合成、組換えDNA技術、より大きな分子の生化学的もしくは酵素的な断片化、前述のものの組み合わせまたは他の任意の方法によって生成され得る。
【0051】
ペプチド(少なくとも、アミノ酸残基間にペプチド結合を含むもの)は、“Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis−A Practical Approach”,W.C.Chan,P.D.White編,Oxford University Press,New York 2000およびその中の参考文献に記載されているような固相ペプチド合成のFmocストラテジーによって合成され得る。一時的なN−アミノ基の保護は、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によってもたらされる。この高度に塩基不安定性の保護基の切断の反復は、N,N−ジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンを用いて実施される。側鎖の官能性は、ブチルエーテル(セリン、トレオニンおよびチロシンの場合)、ブチルエステル(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体(リジンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体(システイン、アスパラギンおよびグルタミンの場合)および4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル誘導体(アルギニンの場合)として保護され得る。固相支持体は、3つのモノマー、ジメチルアクリルアミド(骨格モノマー)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(クロスリンカー)およびアクリロイルサルコシンメチルエステル(官能性付与物質(functionalising agent))から構成されるポリジメチル−アクリルアミドポリマーに基づくものである。ペプチドと樹脂とが切断可能に連結された、使用される作用物質は、酸不安定性の4−ヒドロキシメチル−フェノキシ酢酸誘導体であるか、またはC末端のアミドの場合、Rink−アミドリンカーである。すべてのアミノ酸誘導体が、アスパラギンおよびグルタミンを除いて、予め成形された対称的な無水物誘導体として加えられ、それらは、逆転されたN,N−ジシクロヘキシル−カルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール媒介性の結合方法を用いて加えられる。すべての結合反応および脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸またはイソチン(isotin)試験法を用いてモニターされる。合成が完了したら、50%スカベンジャー混合物を含む95%トリフルオロ酢酸で処理することによって、ペプチドを樹脂の支持体から切断し、同時に側鎖保護基を除去する。通常使用されるスカベンジャーは、エタンジチオール、フェノール、アニソールおよび水であり、正確な選択は、合成されるペプチドの構成要素であるアミノ酸に依存する。真空中で蒸発させることによってトリフルオロ酢酸が除去され、次いで、ジエチルエーテルで倍散されることにより、粗ペプチドが得られる。存在するいずれのスカベンジャーも、単純な抽出方法によって除去され、水相の凍結乾燥により、スカベンジャーを含まない粗ペプチドが得られる。ペプチド合成のための試薬は、一般に、Calbiochem−Novabiochem(UK)Ltd,Nottingham NG7 2QJ,UKから入手可能である。精製は、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、溶解度差(differential solubility)および(主に)逆相高速液体クロマトグラフィなどの手法のうちのいずれか1つまたはそれら組み合わせによって実施され得る。ペプチドの解析は、薄層クロマトグラフィ、逆相高速液体クロマトグラフィ、酸加水分解後のアミノ酸解析を用いて、および高速原子衝撃(FAB)質量分光解析によって、行われ得る。
【0052】
連続したセルロース膜上での位置的にアドレス可能なペプチドの化学合成を可能にするSPOT合成もまた使用され得る(R Frank Tetrahedron(1992)48,9217)。
【0053】
固相ペプチド合成手法の代替物として、組換えタンパク質発現またはインビトロ翻訳系によってもペプチドは産生され得る(Sambrookら、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2001,3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)。当然のことながら、それは、ポリヌクレオチドによってコード可能な、天然に存在するペプチド結合によって連結された天然に存在するアミノ酸残基を含むペプチドだけである。そのような方法は、ペプチドが、特に大きい、例えば、50アミノ酸より大きい、または100アミノ酸より大きい場合に、固相ペプチド合成手法よりも好ましい。
【0054】
「バリアント」アミノ酸配列は、本発明の第1の局面に関して定義されるとき、WDLYFEIVW(配列番号1)内に1、2、3または4つのL−アミノ酸置換を含み得る。
【0055】
好ましくは、バリアントアミノ酸配列は、XYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、W、LまたはPであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、Phg、L、Ebw、Pff、Thi、1Ni、Hfe、EceまたはChaであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号1)。
【0056】
より好ましくは、バリアントアミノ酸配列は、XYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、WまたはLであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、PhgまたはLであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号1)。
【0057】
「バリアント」アミノ酸配列は、本発明の第2の局面に関して定義されるとき、imfwydcye内に1、2、3、4、5または6つのアミノ酸置換を含み得る。
【0058】
好ましくは、imfwydcye内の前記置換の少なくとも1、2、3、4、5または6つが、D−アミノ酸である。
【0059】
バリアント内のいずれの置換も、非保存的であってもよいし、保存的であってもよい。
【0060】
「保存的置換」とは、以下の基:Val、Ile、Leu、Ala、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr、Gly、Ala;Lys、Arg、His;およびPhe、Tyr、Trpの中の置換のことを意味する。
【0061】
好ましくは、本発明の第1の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は、RMEFDVWDLYFEIVW(配列番号2)またはRMKFDVWDLYFEIVW(配列番号2);またはRMEFDVWDLYFEIVW(配列番号2)もしくはRMKFDVWDLYFEIVW(配列番号2)内に1、2、3、4、5または6つのアミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列を含む。
【0062】
不確かさを回避するために、配列RMEFDVWDLYFEIVW(配列番号2)は、アミノ酸に対する3文字コードを用いて、Arg−Met−Glu−Phe−Asp−Val−Trp−Asp−Leu−Tyr−Phe−Glu−Ile−Val−Trpとして表され得る。RMKFDVWDLYFEIVW(配列番号2)は、アミノ酸に対する3文字コードを用いて、Arg−Met−Lys−Phe−Asp−Val−Trp−Asp−Leu−Tyr−Phe−Glu−Ile−Val−Trpとして表され得る。
【0063】
より好ましくは、バリアントアミノ酸配列は、X10FDVXYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、RまたはPであり、Xは、M、Nva、Moo、N、Nle、Meo、Q、Eagであり、X10は、E、KまたはDであり、Xは、W、LまたはPであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、Phg、L、Ebw、Pff、Thi、1Ni、Hfe、Ece、Chaであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号2)。
【0064】
より好ましくは、バリアントアミノ酸配列は、X10FDVXYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、RまたはPであり、Xは、MまたはNvaであり、X10は、E、KまたはDであり、Xは、WまたはLであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、PhgまたはLであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号2)。
【0065】
適切には、本発明の第1の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は、以下の表に表されるようなペプチドもしくはペプチド誘導体であるか、あるいは以下の表1〜3に表されるようなペプチドもしくはペプチド誘導体のアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる:
【0066】
【表1−1】

【0067】
【表1−2】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

上の表において、−ttds−は、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミンである。「N」は、アスパラギンである。「NH」は、C末端のアミド基である。
【0070】
好ましくは、本発明の第1の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は、以下のリストに表されるペプチドを含まないか、またはそれらからならない:
【0071】
【化1】

【0072】
【化2】

【0073】
【化3】

【0074】
【化4】


【0075】
好ましくは、本発明の第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は:
(i)cimfwydcyeを含むアミノ酸配列;または
(ii)cimfwydcye内に1、2、3、4、5、6もしくは7つのアミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列
を含む。好ましくは、cimfwydcye内の前記置換の少なくとも1、2、3、4、5、6または7つが、D−アミノ酸である。
【0076】
好ましくは、本発明の第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は:X10を含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、存在する場合、c、s、y、i、D−Pen、C、t、D−Nva、D−Nleまたはkであり、Xは、i、y、wまたはdであり、Xは、cまたはmであり、Xは、f、t、vまたはcであり、Xは、wまたはcであり、Xは、yまたはcであり、Xは、d、eまたはfであり、Xは、c、e、f、yまたはdであり、Xは、yまたはwであり、そしてX10は、eまたはiであり、cimfwydcyeと比べて7を超えないアミノ酸置換が存在する。
【0077】
好ましくは、ペプチドまたはペプチド誘導体は、XwydXyeを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、c、C、D−Penまたはsであり、Xは、I、yまたはwであり、Xは、cまたはmであり、Xは、f、tまたはvであり、そしてXは、cまたはeである。
【0078】
好ましくは、ペプチドまたはペプチド誘導体は、XmXwydXyeを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、c、CまたはD−Penであり、Xは、iまたはyであり、Xは、f、tまたはvであり、そしてXは、cまたはeである。
【0079】
適切には、本発明の第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は、以下の表に表されるようなペプチドもしくはペプチド誘導体であるか、または以下の表4〜6に表されるようなペプチドもしくはペプチド誘導体のアミノ酸配列を含むか、もしくはそれらからなる:
【0080】
【表4】

好ましい実施形態において、ペプチドB05、B06、B14、B15、B17、B18、B34、B35およびB37は、環状である。
【0081】
【表5】

好ましい実施形態において、ペプチドB26、B27、B28、B30、B31、B32、B33、B36、B38およびB39は、環状である。
【0082】
【表6】

好ましい実施形態において、ペプチドB01、B02、B11、B25およびB29は、環状である。
【0083】
上の表において、−TTDS−は、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミンである。「NH」は、C末端のアミド基である。
【0084】
B08は、B01と同一であるので、上の表において削除されている。B12は、B02と同一であるので、上の表において削除されている。
【0085】
好ましくは、本発明の第1の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は、以下のリストに表されるペプチドを含まないか、またはそれらからならない:
【0086】
【化5】


【0087】
好ましくは、本発明の第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は、環状ペプチドである。第1の局面のペプチドまたはペプチド誘導体もまた、環状であり得る。
【0088】
用語「環状ペプチド」とは、本明細書中で使用されるとき、例えば、環化に適した2つ以上の追加の基がしばしばカルボキシル末端およびアミノ末端において付加されているペプチドの環状誘導体のことを指す。適当な基としては、アミノ酸残基が挙げられる。環状ペプチドは、分子内ジスルフィド結合、すなわち−S−S−、2つの付加された残基間の分子内アミド結合、すなわち−CONH−もしくは−NHCO−、または分子内S−アルキル結合、すなわち−S−(CH)n−CONH−もしくは−NH−CO(CH)n−S−のいずれかを含み得、ここで、nは、1、2またはそれ以上であり、好ましくは、6を超えない。環化は、Scharn,D.ら(2001)J.Org.Chem 66;507において例示されているようなトリアジン化学によっても行われ得る。環状ペプチド配列は、ペプチド配列の前に接頭辞「シクロ」を用いて表示され、配列の環状部分は、括弧内に組み込まれ、さらに、配列の残りの部分とハイフンによって分離される。
【0089】
本発明の第1または第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体は、ポリエチレングリコール(PEG)への結合体化によって改変され得る。PEG化の適当な方法は、米国特許第5,122,614号(Zalipsky;Enzon,Inc.)および同第5,539,063号(Hakimiら;Hoffmann−La Roche Inc.)に開示されており、これらのPEG化方法のすべてが本明細書中で参考として援用される。様々な分子量のPEGが、使用され得、適切には、5000〜40000kDが使用され得る。好ましい分子量は、5000kDである。好ましくは、PEGは、単分散であり、これは、PEG分子間の分子量にほとんど変動がないことを意味する。PEG化は、ペプチドの溶解性および血漿半減期を改善し得る。
【0090】
本発明の第3の局面は、本発明の第1または第2の局面のさらなるペプチドまたはペプチド誘導体に結合体化された、本発明の第1または第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体を含む二重ペプチドを提供し、ここで、そのペプチドまたはペプチド誘導体は、そのさらなるペプチドまたはペプチド誘導体と同じであってもよいし、異なっていてもよく、その二重ペプチドは、凝血促進活性を有する。
【0091】
二重ペプチドは、ペプチド、ペプチド模倣物もしくは非ペプチドであり得る可撓性リンカーによって、または立体構造的に束縛されたペプチド、ペプチド模倣物または非ペプチドの基本単位、例えば、トリアジン部分を含み得る立体構造的に束縛されたリンカーによって、または当該分野で公知の他の任意の可能性のある方法によって、互いに共有結合された、2つの同じまたは2つの異なる、本発明の第1または第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体を含み得る。
【0092】
好ましくは、本発明の第1および第2の局面のペプチドまたはペプチド誘導体ならびに本発明の第3の局面の二重ペプチドは、0.5〜3.5kDの分子量を有する。「分子量」とは、任意の対イオンまたは付加物を除いた、ペプチドまたはペプチド誘導体のモノマーの理論的質量のことを意味する。PEG化されたペプチドの場合、分子量は、任意の対イオンまたは付加物を除き、PEG部分を除いた単量体分子の質量と定義される。0.5kD〜3.5kDのペプチド、ペプチド誘導体および二重ペプチドが、それよりも大きいペプチドよりも容易に合成され、免疫原性であるリスクが低く、一般に、容易に患者に投与される。0.5kD未満のペプチドは、容易に合成され得、投与され得、そして免疫原性である可能性は低いが、必要とされる凝血促進活性を有しないことがある。それにもかかわらず、0.5kD未満および3.5kD超のペプチド、ペプチド誘導体および二重ペプチドは、適切な活性を有する場合、本発明によって包含される。
【0093】
本発明の第1および第2の局面のペプチドおよびペプチド誘導体ならびに本発明の第3の局面の二重ペプチドは、凝血促進活性を有する。
【0094】
「凝血促進活性」とは、適当な試験系においてトロンビン生成および/またはフィブリン沈着を促進する能力のことを意味する。
【0095】
様々なアッセイが凝血促進活性を測定するために利用可能であることが認識されるだろう。実際に、様々なタイプの凝血促進活性が存在する。ペプチドおよびペプチド誘導体は、FV、FVII、FVIII、FXまたはFXIが枯渇した血漿中で凝血を促進し得る。好ましい実施形態において、本発明のペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIが枯渇しているかまたは存在しない血漿中においてトロンビン生成および/またはフィブリン沈着を促進する。このタイプの活性は、凝血FVIII活性と呼ばれる。血漿が、FVIIIを欠いている個体由来である場合、その活性は、代表的には、FVIII等価活性と呼ばれる。血漿が、FVIIIに対するインヒビターを含む場合、その活性は、代表的には、FVIIIインヒビターバイパス等価活性と呼ばれる。他の凝血促進活性としては、FV活性、FVII活性、FX活性およびFXI活性が挙げられる。
【0096】
個別のペプチドおよびペプチド誘導体は、様々なタイプのアッセイ間において、相対的な有効性が異なり得る。それゆえ、ペプチドまたはペプチド誘導体が、特定のアッセイにおいて低い有効性を有すると見られたとしても、それにもかかわらずそれは、別のアッセイでは適切に高レベルの凝血促進活性を有することがある。
【0097】
凝血促進活性を測定するための適当なアッセイは、以下に記載される、規定の内因性トロンビン生成アッセイである。このアッセイでは、ある化合物が、25、50または100μMの濃度において、60分間、好ましくは、50、40、30、20または10分間で5nMのトロンビンの生成を刺激することができる場合、その化合物は、凝血促進活性を有すると考えられる。好ましくは、その化合物は、60分間、より好ましくは、50、40、30、20または10分間で10nMのトロンビンの生成を刺激することができる。代替のアッセイは、以下に記載される、規定の二重経路トロンビン生成アッセイである。このアッセイでは、ある化合物が、25、50または100μMの濃度において、70分間、好ましくは、60、50、40、30または20分間で5nMのトロンビンの生成を刺激することができる場合、その化合物は、凝血促進活性を有すると考えられる。好ましくは、その化合物は、70分間、より好ましくは、60、50、40、30または20分間で10nMのトロンビンの生成を刺激することができる。上記のアッセイは、FVIII枯渇血漿またはFVIII阻害血漿の存在下において行われるので、それらは、凝血FVIII活性を測定するために特に有用である。しかしながら、それらは、FVIII枯渇血漿またはFVIII阻害血漿の代わりに、適当な枯渇血漿または阻害血漿を用いることによって、他のタイプの凝血促進活性について試験するために容易に適応され得る。
【0098】
適切には、凝血促進活性は、少なくとも100mU/mLの第8因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、好ましくは、少なくとも300mU/mLのFEIBA、より好ましくは、少なくとも600mU/mLのFEIBA、最も好ましくは、少なくとも1200mU/mLのFEIBAの凝血促進活性と等しい、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける25、50または100μMの化合物のトロンビン生成時間である。トロンビン生成時間またはピーク時間は、以下に記載されるアッセイにおいて、予め温められた血漿を他の成分に加えた時点から、トロンビンがピーク最大値になる時点までの時間である。
【0099】
あるいは、凝血促進活性は、少なくとも1mU/mLの第8因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、好ましくは、少なくとも5mU/mLのFEIBA、最も好ましくは、少なくとも10mU/mLのFEIBAに等しい、規定の二重経路トロンビン生成アッセイ(DDPTGA)における25、50または100μMの化合物のトロンビンピーク最大値である。ピークIIaとも呼ばれるトロンビンピーク最大値は、アッセイ中に生成される最大トロンビン濃度である。適当な因子が枯渇した血漿が、FVIII欠乏血漿またはFVIII阻害血漿の代わりに用いられる場合、規定の二重経路トロンビン生成アッセイを用いることにより、FVIII活性以外の凝血活性を測定することができる。本発明のペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドが、25、50または100μMの濃度において、FV、FVII、FXまたはFXI欠乏血漿を用いるそれぞれ120分にわたるDDPTGAにおいて、ペプチドの非存在下で刺激されたときよりも多いトロンビンの生成を刺激することができる場合、それらは、FV、FVII、FXまたはFXI活性を有すると考えられる。
【0100】
適切には、凝血促進活性は、30分以内、好ましくは、15分以内、最も好ましくは、10分以内にピークを迎える、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける25、50または100μMの化合物のトロンビン生成時間である。[0]あるいは、凝血促進活性は、50分以内、好ましくは、45分以内、最も好ましくは、30分以内にピークを迎える、規定の二重経路トロンビン生成アッセイにおける25、50または100μMの化合物のトロンビン生成時間である。
【0101】
トロンビン生成に対するペプチドもしくはペプチド誘導体または二重ペプチドの効果は、FVIII免疫阻害患者、FVIII免疫除去患者、FVIIIインヒビター患者もしくは血友病A患者の血漿、または他のタイプの凝固因子が欠如した血漿において、例えば、以下に記載されるように、黒色96ウェルマイクロプレート(Cliniplate,Thermo Labsystems)内でトロンビン特異的蛍光発生基質I−1140(Bachem)のゆっくりとした切断を連続的にモニターすることによって、測定され得る。ペプチドまたはペプチド誘導体の効果を測定するトロンビン生成アッセイにおいて有益に測定され得るパラメータは、ピーク時間におけるトロンビン濃度;ピークトロンビンにおけるトロンビン生成時間;トロンビン生成曲線の増大相の傾きおよびトロンビン生成の時間のずれ(開始相)である。
【0102】
トロンビン生成の内因性経路は、FXIaおよびリン脂質を含めることによって、トロンビン生成アッセイにおいてアッセイされ得る。活性化された部分的トロンボプラスチン時間(aPTT)試験に類似したそのようなアッセイでは、トロンビン生成は、単独で内因性経路に向けられ、そしてFVIII依存的である。適当なアッセイは、以下に記載される、規定の内因性トロンビン生成アッセイである。あるいは、FXIaおよびリン脂質の代わりに低濃度のTFおよびリン脂質を使用することによって、トロンビンは、外因性経路(組織因子)と内因性経路の両方によって生成される。この形態のトロンビン生成アッセイは、両方のトロンビン生成経路が関わるので、より生理的なアッセイであり;それは、部分的にFVIII依存的である。適当なアッセイは、規定の二重経路トロンビン生成アッセイである。
【0103】
規定の内因性トロンビン生成アッセイは、以下のとおり行われる。40μlのヒト正常血漿を、ヤギにおいて産生された10μlの熱失活された抗ヒトFVIII血漿(600BU/ml、56℃において6時間インキュベート)とともにインキュベートすることによって(2時間、37℃)、ヒト血漿のFVIII活性を阻害する。FXIa(16.67nM)(Enzyme Research Laboratories)とリン脂質(ホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン60%/40%、120μM)(Avanti Polar Lipids)との15μlの混合物、3.33mM I−1140と50mM CaClとの15μlの混合物、および10μlのペプチド溶液(様々な濃度)を、10μlの2×HNa/HSA5(50mM Hepes、350mM NaCl,pH7.35、10mg/ml HSA)に加える。37℃において6分間インキュベートした後、50μlの予め温められた(37℃)FVIII阻害血漿を加えることによって、トロンビン生成を開始する。FVIII阻害血漿の代わりに、FVIIIインヒビター患者血漿またはいくつかが欠如した血漿を用いることができる。マイクロプレートをすぐにGENios Plus(Tecan)またはSafire 2(Tecan)蛍光リーダーに入れ、そのプレートを21秒ごとに読み出すことによって、蛍光シグナル(ex 340nm/em 440nM)を動力学的に追跡する。もとの蛍光データから逸脱することによって、ある濃度範囲のトロンビンを用いて構築された標準曲線から、生成されたトロンビンの量が算出される。
【0104】
活性等価単位を算出するために、第8因子インヒビターバイパス作用物質(FEIBA、Baxter AG)、Immunate(ヒトFVIII、精製された血漿由来)対照基準(Baxter AG)またはRecombinate標準物質(ヒトFVIII、精製された組換え、Baxter AG)の希釈物を用いて、実験を行う。ピークトロンビンにおけるトロンビン生成時間に対してプロットされたFEIBA(FVIII)濃度の対数の線形の当てはめにより、標準曲線がもたらされる。この曲線を用いて、FEIBA(FVIII)等価活性が、規定のペプチド濃度について算出される。
【0105】
ペプチド濃度が本明細書中で与えられる場合、それは、最終的なアッセイ体積におけるペプチドの濃度ではないが、血漿体積について補正された濃度であることが理解されるべきである。最終的なアッセイ体積における濃度は、補正された濃度を2.5で割った値である。したがって、100μMという濃度が与えられる場合、最終的なアッセイ体積における実際の濃度は、40μMである。同様に、FEIBA等価活性もまた、血漿体積について補正される。したがって、100μMにおいて、ペプチドが、DITGAにおける100mU/mlのFEIBAと等しい活性を有すると述べられる場合、最終的なアッセイ体積におけるペプチドの濃度は、40μMであり、コントロールアッセイにおけるFEIBAの等しい濃度は、40mU/mlのFEIBAである。
【0106】
規定の二重経路トロンビン生成アッセイは、市販の試験キット(Technothrombin TGA,Technoclone GmbH,Vienna,Austria)を用いて以下に記載されるように行われる。簡潔には、40μlの1.25mM蛍光発生基質(Z−GGR−AMC)18.75mM CaCl、10μlのTGA試薬B(リン脂質ベシクルホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン80%/20%(3.2μM)含有17.9pM組換えヒト組織因子;Technoclone GmbH)または10μlのTGA試薬C high(リン脂質ベシクルホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン80%/20%(32μM)含有71.6pM組換えヒト組織因子;Technoclone GmbH)および10μlのペプチド希釈物、FEIBA対照基準またはFVIIa標準希釈物(Enzyme Research Laboratories,South Bend,Indiana USA)の混合物を37℃において4分間インキュベートする。好ましくは、試薬C highを用いる。いくつかのタイプのうちの1つのヒト血漿40μlを加えることによって、トロンビン生成を開始する(37℃)。トロンビンによる蛍光発生基質の変換の後、すぐにそのプレートを予め加熱された(37℃)マイクロプレート蛍光リーダー(Tecan Safire 2,ex 360nm/em 460nm)に入れ、そのプレートを30秒ごとに動力学的に読み出す。もとの蛍光データから逸脱することによって、ある濃度範囲のトロンビンを用いて構築された標準曲線から、生成されたトロンビンの量が算出される。トロンビン生成曲線のピークまたはトロンビンがピークを迎える時間において、トロンビンに対してプロットされた第VIIa因子またはFEIBA濃度の非線形回帰分析によって、標準曲線がもたらされる。これらの曲線を用いて、第VIIa因子またはFEIBA等価活性が、規定のペプチド濃度について算出され得る。DITGAに関して記載されるように、ペプチド濃度が、本明細書中でDDPTGAに関して与えられる場合、それは、最終的なアッセイ体積におけるペプチドの濃度ではないが、血漿体積について補正された濃度であることが理解されるべきである。最終的なアッセイ体積における濃度は、補正された濃度を2.5で割った値である。FEIBA等価活性もまた、同じ補正率を適用することによって、血漿体積について補正される。
【0107】
凝血促進活性、特に、FVIII等価活性またはFVIIIインヒビターバイパス活性を測定するための別の適当なアッセイは、以下に記載されるような、規定のフィブリン沈着アッセイである。適切には、規定のフィブリン沈着アッセイにおける25μMの試験化合物のサンプルの凝血促進活性は、少なくとも30mU/mLの第8因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、好ましくは、少なくとも80mU/mLのFEIBA、最も好ましくは、少なくとも200mU/mLのFEIBAと等しい。このアッセイは、FVIII枯渇血漿またはFVIII阻害血漿の存在下において行われるので、凝血FVIII活性を測定するために特に有用である。
【0108】
規定のフィブリン沈着アッセイは、以下のとおり行われる。まず、100μlのヒト正常血漿を、ヤギにおいて産生された25μlの熱失活された抗ヒトFVIII血漿(300BU/ml、56℃において6時間インキュベートしたもの)とともにインキュベートすることによって(2時間、37℃)、ヒトクエン酸塩加血漿(Baxter AG)のFVIII活性を阻害する。試験される各サンプルについて、このFVIII阻害ヒト正常血漿125μlを、予め温められたキュベットに移し、75μlの試験化合物またはFEIBA対照基準(Baxter AG)の希釈物を加える。その試験化合物またはFEIBA対照基準の希釈物は、50mMイミダゾール、100mM NaClおよび10mg/mlのヒト血清アルブミン(Sigma)pH7.4を含む。トリガーとして、および凝血促進表面を提供するために、50mMイミダゾール、100mM NaCl、10mg/mlのヒト血清アルブミン(Sigma)pH7.4中の、ヒト第XIa因子(3.13nM、Enzyme Research Laboratories)とリン脂質(PL)ベシクル(ホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン60%/40%、30μM;Avanti Polar Lipids)との100μlの混合物を含める。37℃において3分間インキュベートした後、100μlの25mM CaClを加えることによって、凝血反応を開始する。凝固計(KC10A,Amelung,Germany)によって血餅形成をモニターする。手短に言うと、各キュベットを磁気的検出デバイスの上でゆっくりと回転させ、その各キュベットは小さな磁性金属球を含む。血漿成分が溶液中に残存する一方で、その球は、キュベットの底に溜まる。やがて血餅が形成し始め、その球が、回転しているキュベット内において成長中の血餅を伴って回転し始める。「凝固時間」は、CaClを加えた時点から、成長中の血餅が金属球のまわりを回転し始める時点までの時間と定義され、それが記録される。FEIBA対照基準希釈物に対する標準曲線は、凝固時間(y軸)に対する対数FEIBA濃度(x軸)の線形回帰によって算出される。各化合物濃度の凝固時間に基づいて、FEIBA等価活性が、この標準曲線に従って算出される。
【0109】
ペプチド濃度が、規定のフィブリン沈着アッセイに関して本明細書中で与えられる場合、それは、最終的なアッセイ体積におけるペプチドの濃度ではないが、血漿体積について補正された濃度であることが理解されるべきである。最終的なアッセイ体積における濃度は、補正された濃度を4で割った値である。したがって、100μMという濃度が与えられる場合、最終的なアッセイ体積における実際の濃度は、25μMである。同様に、FEIBA等価活性もまた、血漿体積について補正される。したがって、100μMにおいてペプチドが、規定のフィブリン沈着アッセイにおける100mU/mlのFEIBAと等しい活性を有すると述べられる場合、最終的なアッセイ体積におけるペプチドの濃度は、25μMであり、コントロールアッセイにおけるFEIBA等価濃度は、25mU/mlのFEIBAである。
【0110】
好ましくは、本発明の第1および第2の局面のペプチドおよびペプチド誘導体ならびに本発明の第3の局面の二重ペプチドは、重篤なヒト血友病Aの動物モデルにおいて投与されたときに、生物学的に活性なFVIIIの欠如を少なくとも部分的に補償し得る。例えば、それらは、FVIII欠損マウス(例えば、FVIIIのエキソン17またはエキソン16が破壊されている、Biら(Nat Genet.1995;10:119−21)に詳細に記載されているような系統)において出血を調節する際に活性であり得る。エキソン16FVIII−/−マウスは、Jackson Laboratory,600 Main Street,Bar Harbor,Maine 04609 USAから入手可能である(系統名:B6;129S4−F8tm1Kaz/J)。
【0111】
化合物が出血を調節する能力を試験するのに適したアッセイは、尾クリップ(tail clip)アッセイである。ペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドが、適当なビヒクルにおいて、マウスに、代表的にはi.v.、i.p.またはs.c.投与される。様々な用量の各ペプチドまたはペプチド誘導体が、様々な群のマウスに投与されることにより、用量依存性が測定され得る。マウスの群、代表的には、重篤な出血性素質を有する8〜16匹の雄および雌のエキソン17FVIIIノックアウトマウスに、単回のi.v.(尾静脈)、i.p.またはs.c.ボーラス注射を行う(10ml/kg体重)。尾クリップの2分前に、100mg/kgのケタミンおよび5mg/kgのキシラジンのi.p.適用によって動物を麻酔する。ペプチドまたはペプチド誘導体をi.v.投与した5分後、およびi.p.またはs.c.投与した60分後に、尾端の0.5cmを切除する。その創傷からの血液滴下を、定義された時間(例えば、0〜2分、2〜4分、4〜6分、6〜8、8〜10、10〜12、12〜14、14〜16、16〜20、20〜24、24〜28、28〜32、32〜42、42〜52および52〜62分)にわたって、5.0mlの0.04%NHが入ったチューブに回収する。各チューブ内の血液細胞を破壊し、室温における3時間のインキュベート時間の後、超音波処理することによって、ヘモグロビンを抽出する。その抽出物の414nmおよび620nmにおける吸光度をマイクロタイタープレートにおいて測定する。620nmは、参照波長であり、A620読み出しをA414読み出しから減算する。C57/Bl6マウスなどの野生型コントロールマウス由来の既知量の血液によって作成された標準曲線から、減算された読み出しに相当する抽出物中の血液の量を算出する。記録されるマウスの出血特徴のパラメータは、総失血量、出血速度、出血時間、1h、2h、3h、4h、24hおよび48h生存である。累積の失血量を、各時間に対する血液の量を合計することによって算出する。動物の群についてのデータを平均し、出血時間に対してプロットする。各時点における処置群およびビヒクルコントロール群に対するデータセットをスチューデントのt検定によって統計的有意性について解析する。
【0112】
好ましくは、ペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドを投与されたマウスは、尾クリップアッセイにおける尾クリップから62分後において、ビヒクル単独を投与されたマウスの70%を超えない失血量、より好ましくは、ビヒクル単独を投与されたマウスの60%を超えない、最も好ましくは、50%を超えない失血量という失血量を有する。
【0113】
好ましくは、上記のアッセイにおいてペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドを投与されたマウスの生存は、尾クリップの2時間後において、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも60%、最も好ましくは、少なくとも80%である。好ましくは、尾クリップアッセイにおいてペプチドまたはペプチド誘導体を投与されたマウスの生存は、尾クリップの24時間後において、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、最も好ましくは、少なくとも40%である。
【0114】
好ましくは、本発明の第1および第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体または本発明の第3の局面の二重ペプチドは、30分後において、ヒト血漿中で少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも90%の安定性を有する。ヒト血漿中における安定性を測定するのに適したアッセイは、実施例に記載される。
【0115】
好ましくは、本発明の第1および第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体または本発明の第3の局面の二重ペプチドは、25℃のリン酸緩衝食塩水pH7.4において、少なくとも25μM、好ましくは、少なくとも60μM、最も好ましくは、少なくとも100μMの水溶解性を有する。25℃のリン酸緩衝食塩水pH7.4における水溶解性を測定するのに適したアッセイは、実施例に記載される。
【0116】
本明細書中において、用語「第VIII因子」または「FVIII」とは、天然のFVIIIと関連する生物学的活性を示す任意のFVIII部分のことを指す。FVIIIの配列は、NCBI Accession Number NP_000123またはUniProtKB/Swiss−ProtエントリーP00451として見出され得る。
【0117】
本明細書中で使用されるとき、「血漿由来FVIII」は、凝血経路を活性化する特性を有する哺乳動物から得られる血液中に見られるすべての形態のそのタンパク質を含む。
【0118】
本明細書中で使用されるとき、「rFVIII」とは、組換えDNA技術を介して得られたFVIIIのことを示す。
【0119】
本発明の第4の局面は、本発明の第1もしくは第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体または本発明の第3の局面の二重ペプチドを含む薬学的組成物を提供する。ペプチド、ペプチド誘導体および二重ペプチドは、薬学的に許容可能な塩、溶媒和物または水和物の形態であり得る。適切には、薬学的組成物は、薬学的に許容可能なキャリアを含む。キャリアは、好ましくは、液体処方物であり得、好ましくは、等張性の緩衝水溶液である。適切には、薬学的組成物は、生理的または生理的に近いpHを有する。適切には、それは、生理的または生理的に近いオスモル濃度および塩分である。それは、塩化ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウムを含み得る。本発明のペプチド、ペプチド誘導体および二重ペプチドは、生物学的処理の発生が生じ得る著しい発熱性なしに作製され得る。これは、特に、低レベルのエンドトキシンしか許容され得ない静脈内処方物に対して重要であり得る。皮下、腹腔内、口腔、静脈内および他の非経口処方物は、無菌であり、エンドトキシンを含まないことが、好ましい。
【0120】
薬学的に許容可能なキャリアは、賦形剤(例えば、希釈剤など)および添加剤(例えば、安定化剤、保存剤、可溶化剤など)も含み得る。本発明のペプチドは、いずれの薬学的に許容可能な塩の形態でも存在し得る。
【0121】
本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な」とは、USもしくはEUの規制当局または他の政府によって承認されているか、あるいはヒトにおいて使用するために米国薬局方または他の一般に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0122】
本組成物は、例えば、懸濁液、エマルジョン、徐放処方物、クリーム、ゲルまたは粉末でもあり得る。本組成物は、従来の結合剤、およびトリグリセリドなどのキャリアを用いて、坐剤として製剤化され得る。
【0123】
本発明のペプチド、ペプチド誘導体および二重ペプチドの静脈内送達が、可能であり得るが、非静脈内経路、特に、皮下送達、経鼻送達、口腔送達、経口送達または肺送達が好ましい。腹腔内(i.p.)送達もまた用いられ得る。
【0124】
薬学的組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、佐剤、ポリペプチドもしくはグリシンなどのアミノ酸、酸化防止剤、EDTAもしくはグルタチオンなどのキレート剤および/または保存剤の1つ以上をさらに含み得る。さらに、1つ以上の他の活性成分が、本明細書中に提供される薬学的組成物中に含められ得る(が、含められなくてもよい)。
【0125】
薬学的組成物は、任意の適切な投与様式(例えば、局所的(例えば、経皮的または眼球)、経口投与、口腔投与、経鼻投与、膣内投与、直腸内投与または非経口投与を含む)に対して製剤化され得る。非経口という用語は、本明細書中で使用されるとき、皮下、皮内、脈管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、鞘内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液包内および腹腔内注射、ならびに任意の同様の注射または注入手法を含む。経口使用に適した形態としては、例えば、錠剤、トローチ剤、舐剤、水性もしくは油性の懸濁液、分散性の散剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、硬カプセルもしくは軟カプセル、またはシロップ剤もしくはエリキシル剤が挙げられる。本明細書中に提供される組成物は、凍結乾燥物として製剤化され得る。
【0126】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物において活性成分を含む。そのような賦形剤としては、懸濁剤(例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴム);ならびに分散剤または湿潤剤(例えば、レシチンなどの天然に存在するホスファチド、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの縮合物(例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)が挙げられる。水性懸濁液は、1つ以上の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、1つ以上の着色剤、1つ以上の着香料および1つ以上の甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン)も含み得る。
【0127】
ペプチドまたはペプチド誘導体は、局部的または局所的投与(例えば、皮膚、創傷、または粘膜への局所的適用、眼内など)のために製剤化され得る。局所的投与用の処方物は、代表的には、追加の随意の成分を伴って、または伴わずに、活性な作用物質と組み合わされる局所用ビヒクルを含む。適当な局所用ビヒクルおよび追加の成分は、当該分野で周知であり、ビヒクルの選択が、特定の物理的形状および送達様式に依存することは明らかであろう。局所用ビヒクルとしては、水;アルコール(例えば、エタノールまたはイソプロピルアルコール)またはグリセリンなどの有機溶媒;グリコール(例えば、ブチレングリコール、イソプレングリコールまたはプロピレングリコール);脂肪族アルコール(例えば、ラノリン);水と有機溶媒との混合物および有機溶媒の混合物(例えば、アルコールおよびグリセリン);脂質ベースの材料(例えば、脂肪酸、アシルグリセロール(鉱油などの油、および天然起源または合成起源の脂肪を含む)、ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質およびろう);タンパク質ベースの材料(例えば、コラーゲンおよびゼラチン);シリコーンベースの材料(不揮発性と揮発性の両方);および炭化水素ベースの材料(例えば、マイクロスポンジおよびポリマーマトリックス)が挙げられる。組成物は、適用される処方物の安定性または有効性を改善するように適応された1つ以上の成分(例えば、安定化剤、懸濁剤、乳化剤、粘度調整剤、ゲル化剤、保存剤、酸化防止剤、皮膚浸透促進剤、保湿剤および徐放材料)をさらに含み得る。そのような成分の例は、Martindale−The Extra Pharmacopoeia(Pharmaceutical Press,London 1993)およびMartin(ed.),Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。処方物は、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセルなどのマイクロカプセル、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子またはナノカプセルを含み得る。
【0128】
薬学的組成物は、スプレー、ミストまたはエアロゾルを含む吸入処方物として製剤化され得る。吸入処方物の場合、本明細書中に提供される化合物は、当業者に公知の任意の吸入方法を介して送達され得る。そのような吸入方法および吸入デバイスとしては、CFCもしくはHFAなどの噴霧剤、または生理的および環境的に許容可能な噴霧剤を含む定量吸入器が挙げられるが、これに限定されない。他の適当なデバイスは、呼吸によって操作される吸入器、多用量(multidose)乾燥粉末吸入器およびエアロゾル噴霧器である。本方法において使用するためのエアロゾル処方物は、代表的には、噴霧剤、界面活性物質および共溶媒を含み、適当な計量弁によって閉じられている従来のエアロゾル容器内に満たされ得る。
【0129】
吸入組成物は、噴霧化および気管支内使用に適した活性成分を含む液体もしくは粉末の組成物、または計量された用量を分配するエアロゾルユニットを介して投与されるエアロゾル組成物を含み得る。適当な液体組成物は、薬学的に許容可能な水性の吸入溶媒、例えば、等張性食塩水または静菌水において活性成分を含む。それらの溶液は、ポンプ、もしくは圧搾により作動し噴霧されるスプレーディスペンサーを用いて、または必要な投薬量の液体組成物を患者の肺に吸入させるか、もしくは吸入させることができる他の任意の従来の手段によって投与される。例えば、点鼻薬または点鼻液として投与するためのキャリアが液体である適当な処方物は、活性成分の水性または油性の溶液を含む。
【0130】
鼻投与に適した処方物または組成物(キャリアは固体である)は、嗅剤が投与される様式で(すなわち、鼻に近づけられた粉末の容器からの鼻腔を通じた急速な吸入によって)投与される、例えば、20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末を含む。適当な粉末の組成物としては、例として、ラクトースまたは気管支内投与に対して許容可能な他の不活性な粉末と十分に混合された活性成分の粉末状の調製物が挙げられる。その粉末の組成物は、エアロゾルディスペンサーを介して投与され得るか、またはカプセルを穿刺し、吸入に適した一様の流れで粉末を噴出するデバイスに患者によって挿入され得る、壊れやすいカプセルの中に入れられ得る。
【0131】
薬学的組成物は、徐放処方物(すなわち、投与後に調節因子(modulator)の緩徐放出をもたらすカプセルなどの処方物)として製剤化され得る。そのような処方物は、一般に、周知の技術を用いて調製され得、例えば、経口、直腸もしくは皮下埋没、または所望の標的部位における埋没によって、投与され得る。そのような処方物内において使用するためのキャリアは、生体適合性であり、生分解性でもあり得る;好ましくは、その処方物は、比較的一定レベルの調節因子の放出をもたらす。徐放処方物内に含まれる調節因子の量は、例えば、埋没部位、放出の速度および予想される持続時間、ならびに処置されるかまたは予防される状態の性質に依存する。
【0132】
薬学的組成物が、バイオアベイラビリティを改善する作用物質、例えば、有機溶媒を用いて製剤化され得る。例えば、Cremophor EL(登録商標)(Product No.00647/1/63;BASF Aktiengesellschaft,Germany)は、35モルのエチレンオキシドを1モルのひまし油と反応させることによって調製されるポリエトキシ化ひまし油である。それを用いることにより、水溶液系において無極性材料のエマルジョンが安定化され得る。あるいは、ペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドは、バイオアベイラビリティを改善するために、タンパク質性の微小粒子内またはナノ粒子内に組み込まれ得るか、またはそれらに結合され得る。適当な微小粒子およびナノ粒子は、US5,439,686(Desaiら;Vivorx Pharmaceuticals,Inc.,CA)およびUS5,498,421(Grinstaffら;Vivorx Pharmaceuticals,Inc.,CA)に記載されている。適切には、タンパク質性のナノ粒子は、ヒト血清アルブミン、特に、ヒト血清アルブミンまたはその組換え型を含む。WO2007/077561(Gabbai;Do−Coop Technologies Ltd.,Israel)には、ナノ構造、およびその中においてNeowaterTMと呼ばれている液体を含む別の適当なキャリアが記載されている。
【0133】
ヒト患者を含む患者への経口および非経口投与の場合、本発明のペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドの1日の投薬量レベルは、通常、単回量または分割量として投与される2〜2000mg/成体(すなわち、約0.03〜30mg/kg)であり得る。
【0134】
したがって、例えば、本発明のペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドの錠剤またはカプセルは、単独で、または必要に応じて一度に2つ以上での投与について、2mg〜2000mgの活性な化合物を含み得る。いかなる事象においても、医師が、任意の個別患者に最も適するであろう実際の投薬量を決定し得、その投薬量は、特定の患者の年齢、体重および応答によって変動し得る。上記の投薬量は、平均的な症例の典型である。当然のことながら、それよりも高いまたは低い投薬量の範囲が正当である個別の例が存在し得、そのような範囲は、本発明の範囲内である。
【0135】
獣医学的に使用する場合、本発明のペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドは、通常の獣医学診療に従って適切に許容可能な処方物として投与され、獣医学の外科医が、特定の動物について最も適切である投薬レジメンおよび投与経路を決定する。
【0136】
本明細書中に開示されるペプチド、ペプチド誘導体および二重ペプチドは、医学的応用および畜産または獣医学的応用のために使用され得る。代表的には、本生成物は、ヒトにおいて使用される。用語「患者」とは、哺乳動物の個体のことを示すと意図され、本明細書全体および請求項においてそのように使用される。
【0137】
本発明の第5の局面は、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置するための、本発明の第1もしくは第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体または第3の局面の二重ペプチドを提供する。
【0138】
本発明の第6の局面は、患者におけるFV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を処置するための薬物の製造における、第1または第2の局面のペプチドもしくはペプチド誘導体または本発明の第3の局面の二重ペプチドの使用を提供する。
【0139】
本発明の第7の局面は、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法を提供し、その方法は、治療有効量の第4の局面の薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0140】
本発明のペプチド、ペプチド誘導体および二重ペプチドは、急性の出血の予防と処置の両方の目的でFV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を処置するために使用され得る。FVIII欠乏(血友病A)を有する患者は、FVIIIに対するインヒビター抗体を産生することが多い。インヒビターの産生(FIXに対する)は、FIX欠乏(血友病B)においても知られている。FV、FVII、FXIおよびFX欠乏を有する患者がインヒビターを産生し得ることがあり得るにもかかわらず、このような障害が非常に珍しい先天性の障害であるので、インヒビターの産生についてほとんど知られていない。インヒビター患者の処置は、第5、第6および第7の局面の好ましい実施形態である。そのようなインヒビター患者は、5BUよりも高い高力価応答または0.5〜5BUの低力価応答のいずれかを有し得る。代表的には、それらのインヒビターは、FVIIIに対するものであり、その患者は、血友病Aを有する。
【0141】
FVIIIに対する抗体応答の大きさは、機能的インヒビターアッセイ(例えば、[0]Kasper CKら(1975)Proceedings:A more uniform measurement of factor VIII inhibitors.Thromb Diath Haemorrh.34(2):612に記載されているようなアッセイ)を用いて定量化され得る。FXIインヒビターは、Kasperによって報告されているようにaPTTアッセイによって定量化され得る。FV、FVIIおよびFXのインヒビターは、Kasperの手順に従ってPTベースのアッセイによって定量化され得る。
【0142】
本発明の第8、第9または第10の局面に記載のペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIまたはそのフラグメントではない。代表的には、それは、ヒト起源、哺乳動物起源または脊椎動物起源に関係なく、いずれのFVIIIタンパク質のアミノ酸配列からもならないか、またはそれらを含まない。それは、FVIIIタンパク質のフラグメントからなるものでもない。代表的には、それは、ヒトFVIIIタンパク質などのFVIIIタンパク質の、50より少ない、20より少ない、10より少ない、5より少ない連続したアミノ酸を含む。好ましいペプチドおよびペプチド誘導体は、本発明の第1および第2の局面のペプチドおよびペプチド誘導体または本発明の第3の局面の二重ペプチドである。代替のペプチドおよびペプチド誘導体が、例示されるペプチドおよびペプチド誘導体に関して記載されるように、合成され得、凝血促進活性について試験され得る。
【0143】
本発明の第8、第9または第10の局面のペプチドおよびペプチド誘導体は、上に記載されたように薬学的組成物として製剤化され得、上に記載されたように医薬において使用され得る。
【0144】
本発明は、以下の実施例においてさらに例証されるが、それらの実施例にいかなる限定もされない。
【実施例】
【0145】
実施例1:トロンビン生成活性を有する化合物の合成および同定
第XIa因子およびリン脂質ベシクルの存在下におけるFVIII阻害ヒト血漿中のトロンビン生成をインビトロにおいて定量化する「規定の内因性トロンビン生成アッセイ」を用いて、化合物をスクリーニングした。上記のアッセイ、ならびに具体的な説明に記載されているように第XIa因子およびリン脂質の代わりに組織因子およびリン脂質を用いる「規定の二重経路トロンビン生成アッセイ」において、さらに化合物をスクリーニングした。
【0146】
従来の固相ペプチド合成、または連続的なセルロース膜上でのペプチドの位置的にアドレス可能な化学合成を可能にする50〜100nmolペプチド/スポットでのSPOT合成によって、ペプチドおよびペプチド誘導体である化合物を合成した。ペプチドを、10%または50%DMSO水溶液に溶解した。
【0147】
ペプチドおよびペプチド誘導体のPEG化を以下のとおり行った。PEG5000 NHS−エステルを、溶液中でHPLC精製ペプチドのN末端に結合した。ペプチド配列内にリジンが存在する場合、ε−アミノ基におけるPEG化を回避するために、このアミノ酸をivDde保護基で保護した。PEG5000をN末端に結合した後、ivDde保護基をジメチルホルムアミド中の3%水和ヒドラジンによって切断した後、HPLCによって最終生成物を再精製した。
【0148】
以下の表7および8に示されるような、トロンビン生成を促進するとみられる化合物を同定した。
【0149】
【表7】

上の表において、O−は、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(ttds)である。
【0150】
【表8】

上の表において、−O−は、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(ttds)である。B01、B02、B05およびB06と命名されている、本研究において使用された実際のペプチドは、環状だった。
【0151】
実施例2:内因性経路および二重経路のトロンビン生成アッセイにおける化合物の試験
FVIII阻害ヒト血漿を用いる、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおいて、様々な濃度の各ペプチドを試験した。結果を以下の表に示す。
【0152】
【表9】

フルオロフォアのAMCを放出するZ−GGR−AMCの切断に基づくインビトロトロンビン生成アッセイ、すなわち、規定の二重経路トロンビン生成アッセイを、正常ヒト血漿を用いて行った。固定された濃度のリン脂質(すなわち、3.2μM)を含む組成物における、ピークトロンビン生成およびトロンビンピーク時間の組織因子依存性を特徴づけた。固定された濃度の組織因子(すなわち、7.2pM)を含む組成物における、リン脂質依存性を特徴づけた。ピーク時間(ピークトロンビン生成までの時間)は、リン脂質または組織因子の濃度に依存した。最終版のこのアッセイは、具体的な説明に記載されているとおりであり、ここで、(32μMリン脂質および71.6pM組織因子)を含む10μlの試薬C highを総体積100μlにおいて使用する。
【0153】
FVIII欠乏血漿またはFVIII阻害血漿中の3.2μMリン脂質および7.2pM組織因子を用いて、さらなる研究を行うことにより、様々な凝固因子調製物のピークトロンビン生成およびトロンビンピーク時間に対する効果を特徴づけた。本研究は、このアッセイにおける化合物の有効性を比較する根拠を提供した。簡潔には、rFVIII(Baxter製のRecombinate(登録商標)FVIII)を、FVIII欠乏血漿中の0、5、10、20、40および80mU/mlにおいて試験した。FVIII阻害血漿中の0、8、16、31、63および125mU/mlにおいてFEIBAを試験した。FVIII阻害血漿中の0、0.1、0.4、1.6、6.3および25nMにおいてFVIIaを試験した。結果を図1に示す。FVIII欠乏血漿中の組換えFVIII(Recombinate(登録商標))およびFVIII免疫阻害血漿中のFEIBAとFVIIaとの両方について、トロンビン生成パラメータの濃度依存性の改善が観察される。ピークトロンビンが増加し、時間のずれとトロンビンピーク時間の両方が短くなる。
【0154】
この規定の二重経路トロンビン生成アッセイ(DDPTGA)において、トロンビン生成を引き起こすために試薬C high(Technoclone)を用いて、化合物を試験した。結果を以下の表に示す。このアッセイは、規定の内因性トロンビン生成アッセイ(DITGA)よりもFVIII様活性に対する感度が低いにもかかわらず、いくつかの化合物が、検出可能な活性を有した。
【0155】
【表10】

「ピークIIa」は、トロンビン生成曲線のピークにおいて生成されたトロンビンの量である。「ピーク時間」は、トロンビン生成反応の開始から最大量が生成されるまでの時間である。BLS=最低基準未満。
【0156】
トロンビンは、添加されるペプチドの非存在下でさえも、依然としてこのアッセイにおいて生成される。したがって、ピークIIaが、特定のペプチド濃度において「BLS」である場合、依然としてトロンビンピークが存在するが、それは、最低濃度の基準(5mU/mlのFVIII、8mU/mlのFEIBAまたは0.1nMのFVII)によって達成されるものよりも低い。同様に、ピーク時間が、「BLS」であるとき、トロンビン生成がピークを迎えるまでの時間は、最低濃度の標準物質によって達成されるピーク時間よりも長い。あるペプチドは、ピーク時間に対して有意な効果を有し得るが、ピークIIaに対しては有意な効果を有し得ないか、またはその逆である。しかしながら、ペプチドが、ピーク時間とピークIIaの両方に対して効果を有することが、好ましい。B03、B04およびA15は、トロンビン生成の両方の局面に対して正に影響した。いくつかのペプチドの場合、トロンビン生成に対する効果の濃度依存性は、高ペプチド濃度において見られず、これは、非特異的な相互作用によって説明され得る。
【0157】
実施例3:いくつかの枯渇血漿を用いたトロンビン生成アッセイにおける化合物の試験
具体的な説明において記載される、フルオロフォアのAMCを放出するZ−GGR−AMCの切断に基づくインビトロトロンビン生成アッセイ、すなわち、規定の二重経路トロンビン生成アッセイを用いることにより、いくつかの枯渇ヒト血漿において化合物の効果を特徴づけた。これらの実験では、各100μlの反応物が、リン脂質ベシクルのホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン80%/20%(3.2μM)および17.9pM組換えヒト組織因子を含む10μlの試薬Bを含んでいた。10μlのペプチド希釈物、40μlのTGA基質および40μlの血漿を、具体的な説明に記載されるように使用した。
【0158】
これらの実験において使用された血漿は、新鮮凍結されたものであり、第V因子、第VII/VIIa因子、第VIII因子、第X因子または第XI因子欠乏だった(George King Bio−Medical,Inc.)。欠乏血漿の残留凝固因子レベルは、1%未満と特定された。
【0159】
実験において使用された枯渇血漿の各々について、2つの濃度、すなわち、50μMおよび80、90または100μMにおいて化合物を試験した。試験化合物を含まないネガティブコントロールを使用した。結果を以下の表に要約する。
【0160】
【表11】

トロンビン生成の刺激:「+」は、刺激ありを意味し;「−」は刺激なしを意味する。コントロール実験では、ペプチドを含めなかった。
【0161】
試験されたすべての枯渇血漿が、ペプチドの非存在下においてトロンビン生成を示さなかったか、または非常に低いトロンビン生成を示したことから、使用された組織因子濃度では、すべての凝固因子の相互作用がトロンビン生成にとって重要であることが示唆される。いくつかのペプチドが、すべてのチモーゲン枯渇血漿(FVII、FXまたはFXI)においてトロンビン生成を刺激したのに対して、FV枯渇血漿中のトロンビン生成が、低いことから、共通の経路が、ペプチドによって刺激されるトロンビン生成にとって重要であることが示唆される。
【0162】
実施例4:規定のフィブリン沈着アッセイにおける化合物の活性
具体的な説明に記載されるように、規定のフィブリン沈着アッセイにおいて、フィブリン沈着を刺激する能力について様々なペプチドを試験した。結果を以下の表に示す。
【0163】
【表12】

すべての試験化合物が、FVIII阻害血漿の凝固時間およびフィブリン形成を短縮した。トロンビン生成実験と組み合わせて、このことから、試験化合物の凝血促進活性が確かめられる。ほとんどの化合物が、濃度依存的様式で作用したが、少数のものが、高濃度において低い活性を有した(これは非特異的な相互作用に起因し得る)。
【0164】
実施例5:化合物を特徴付けるためのインビトロアッセイ
トロンビン生成アッセイにおける活性だけでなく、薬物動態、溶解性、HERG阻害および分子量についても、化合物を特徴づける。
【0165】
薬物動態学的(PK)研究
インビボにおける有効性研究のデザインおよび解釈のために、PK研究が必要である。血漿タンパク質の結合性、血漿中安定性およびミクロソーム安定性がすべて、このカテゴリーの中に含められる。
【0166】
1.血漿タンパク質の結合性
ヒト血漿(Bioreclamation,Hicksville,NY)、マウス血漿(Lampire Laboratory,Pipersville,PA)またはマウス血清アルブミン(Sigma,St.Louis,MO)(マトリックスと呼ばれる)に対する化合物の結合の程度を、96ウェルマイクロ平衡透析ブロックシステム(HDT−96;HTDialysis,LLC,Gales Ferry,CT)において測定した。簡潔には、そのシステムの各ユニットは、半透膜によって分断されたドナーチャンバーおよびレシーバーチャンバーを備える。この実験の原理は、タンパク質(およびそのタンパク質に結合した化合物)がドナーチャンバー内に保持されて、膜を通過できないということである。遊離化合物は、膜を介して両方のチャンバー間を拡散することができ、この実験中に平衡に達する。これらの実験において、半透膜は、再生セルロースから作製されたものであり、12〜14kDの分子量カットオフを有するものだった(cat.no 1101,HTDialysis,LLC)。
【0167】
Sigmaから購入したプロテアーゼインヒビターカクテル(P2714−1BTL)をそのアッセイに含めることにより、試験化合物のタンパク質分解を阻害した。そのカクテルは、蒸留水において50×原液として新しく調製した。マウス血清アルブミンを、リン酸緩衝食塩水(PBS)において40g/Lにて新しく調製した。そのPBSは、Invitrogen(Carlsbad,CA)から購入したものであり、使用する前にpH7.4に調整した。血漿は、希釈せずに使用した。プロテアーゼインヒビター原液を各マトリックス(すなわち、PBS中のマウス血清アルブミン)に最終1×濃度において加えた。コントロール化合物のワルファリンを含むDMSO中で各試験化合物の原液を調製した。ワルファリンは、タンパク質に強く結合する化合物であり、本実験中の膜の完全性を保証するために、これを各原液に含めた。原液のアリコートを各マトリックスに加えることにより、5μMの試験化合物および10μMのワルファリンという最終濃度を得た。DMSOの最終濃度は、0.72%(v/v)だった。他の成分を加えることによるマトリックスの希釈は無視できた(4%未満)。その膜片を1時間蒸留水で水和した;その膜を30%エタノール水溶液中に20分間浸漬し、次いで、その膜を蒸留水で2回すすいだ。すすいだ後、その膜をPBS中に入れ、使える状態にした。透析ブロックの組み立ては、製造者のプロトコルに従った。組み立てた後、150μlの各マトリックス/試験化合物のアリコートを別々のドナーチャンバーに加え、150μlのPBSを膜の反対側の対応するレシーバーチャンバーに加えた。各マトリックス/試験化合物の残りを、さらなる解析のために−80℃において保存した。これらのマトリックスにおける試験化合物およびワルファリンの濃度を測定し、それらの値を回収率の算出に用いた。次いで、96ウェル透析ブロックを、37℃に予め温められた閉鎖系の加熱された振盪器に置き、6時間インキュベートした。インキュベート後、両側をサンプリングした。試験化合物ならびにワルファリンの濃度をLC/MS/MS解析によって測定した。
【0168】
回収率およびタンパク質結合値を以下のとおり算出した:
%回収=[(ドナー内濃度+レシーバー内濃度)/(マトリックスにおける測定された濃度)]×100%(1)
%結合=[(ドナー内濃度−レシーバー内濃度)/(ドナー内濃度)]×100%(2)
「%回収」は、マトリックスに加えられた化合物が、ドナーおよびレシーバーチャンバーからどれくらい回収可能であるかの尺度である。回収率が、100%未満である場合、化合物の割合は、チャンバーの膜またはプラスチック表面に結合したかもしれないか、または分解されたかもしれない。「%結合」は、化合物がどれくらいマトリックスに結合しているか、ゆえに、化合物がどれくらいドナーチャンバーとレシーバーチャンバーとの間で平衡することができないかの尺度である。
【0169】
A01およびワルファリン(コントロール)についての結果を以下の表に示す。
【0170】
【表13】

【0171】
【表14】

2.血漿中安定性
ヒトもしくはマウスの血漿中における化合物の半減期、またはヒトもしくはマウスの血漿中でのインキュベート後に残留している化合物のパーセンテージを以下のとおり測定する。この実験手順において、試験化合物の濃度は、DMSO中10mMの試験化合物原液から調製される5μMである。プロパンテリンを標準物質として使用する。試験サンプルを調製するために、DMSO中の試験化合物原液の1/20希釈物を50%アセトニトリル/50%HO中で調製し、次いで、これを1.5ml Eppendorfチューブ内で、予め温められた(37℃)血漿(5μlの化合物[1/20希釈物]+495μlの血漿)において1/100希釈する。標準化合物の2mMプロパンテリンは、DMSOで1/4希釈し、続いて、1.5ml Eppendorfチューブ内で、予め温められた血漿(5μlの化合物[1/4希釈物]+495μlの血漿)において1/100希釈する。それらのすべてのサンプルを37℃の水浴内でインキュベートする。化合物またはプロパンテリン標準物質を血漿と混合した直後に、500μlのアセトニトリルを加える(t=0分と命名)。選択されたインキュベート時間が経過した後(通常、t=60分)、各サンプルをさらなる500μlのアセトニトリルと混合する。それらのサンプルをボルテックスミキサー上で30秒間混合し、10分間氷上に置き、そして遠心分離するために回収する。サンプルを4℃において10分間20000gで遠心する。500μlの上清を新しい1.5ml Eppendorfチューブに移し、等体積のアセトニトリルを加える。そのサンプルを、ボルテックスミキサーを用いて30秒間再度混合する。2回目の遠心分離工程(20000g,10分,4℃)の後、HPLC−MS解析するために、250μlの上清をHPLCガラスバイアルに移す。HPLCを行うための条件は、以下のとおりである:注入体積を20μlに設定する。温度を25℃に設定する。0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)(v/v)を含む95:5〜5:95の水:アセトニトリルの線形勾配を0.3ml/分の流速で10分間適用する。PDA−検出器が、210〜400nmにおいてスキャンする。イオントラップが280℃における温度のESI源を備え、50〜2000amuでのフルスキャンモードで質量スキャンを行った後、1.5Vの衝突エネルギーを用いて動的排除(dynamic exclusion)MS実験を行う(親イオンの最小カウント(min.count)として105)。0分間のインキュベーション時間に対する60分間のインキュベーション時間(または最適な時間)における、フルスキャンモードでの総イオン流(total−ion−current)(tic)中の標的化合物のプロトン化分子質量のイオンをモニターする曲線下面積(AUC)比からパーセント安定性を算出する。
【0172】
結果を以下の表に示す。経時的な化合物濃度の低下は、タンパク分解性の分解および/または化学修飾に起因し得る。
【0173】
【表15】

3.ミクロソーム安定性
試験を用いることにより、ヒト起源または動物起源のミクロソーム調製物中での化合物の安定性を測定した。Cerepによって提供されるアッセイ(France,Catalog ref.900−8h)または以下に記載されるプロトコルにおいて、ミクロソーム安定性を測定する。10mM/5mMの化合物溶液(試験化合物、標準物質のベラパミル、イミプラミンおよびテルフェナジン)を100%DMSO中で調製する。それらを、蒸留されたHO/MeOHによって希釈することにより、最終混合物中で0.4%未満の(less then)DMSO(v/v)を含む、アッセイにおける1μMの最終濃度がもたらされる。安定性アッセイ用のマスターミックス:3414μlの蒸留水、440μlの500mM NaPO−緩衝液pH7.4、440μlのNADP(10mM)、22μlのGlc−6−P(1M)、17.6μlのGlc−6−P−DHの1U/ml溶液、66μlの肝臓ミクロソーム(ラットまたはマウス、アッセイにおける最終濃度300μg/ml)を、10ml Falcontube(総容積4.4ml)中で調製する。そのマスターミックスを37℃の水浴内において10分間プレインキュベートする。96ウェル−U−プレート(PP−Nunc)において、300μlの反応混合物(プレインキュベートされたマスターミックス)とともに、1ウェルあたり5μlの60μM化合物溶液を加える。次の工程の前に、すべてのウェルを慎重に混合することにより、確実に均質の懸濁液にしなければならない。t=0分において75μlのサンプル(2つ組)を各化合物について採取する。プレートを密閉し、水浴/サーモミキサーに30分間戻す。内標準も含む、試験化合物/標準物質を、200μlのメタノールを加えることによって抽出する。内標準は、「Pep770」(Jerini AG,Berlin,Germany)であり、最終濃度6.25ng/mlにおいて使用される。それらのサンプルを4℃、1300gで10分間遠心する。200μlの上清を、1ウェルあたり10μlのDMSOが入った96ウェルプレートに移す。化合物の安定性をHPLC−MS解析によって測定する(3つ組)。同じ手順を30分後に繰り返す。平均「AUC t=0分」および「AUC t=30分」の比を算出し、30分後の残留化合物の量のパーセンテージを決定する。すべてのピークに対するシグナルとノイズとの比は、5:1またはそれより良好なものでなければならない。異なる時点における比AUC検体:AUC標準物質が、用いられなければならない。コントロール化合物に対して算出された安定性は、このアッセイの正当性を立証するある特定の範囲内に入っていなければならない。
【0174】
結果を以下の表に示す。
【0175】
【表16】

溶解性
Cerepによって提供されるアッセイ(France,Catalog ref.900−11a)において、または以下のプロトコルに従って、pH7.4のPBSにおいて水溶解性を測定する。この手順の目的は、HPLCを用いて緩衝液における候補薬(被検体)の飽和濃度を推定することによって、緩衝液におけるその候補の溶解性を決定することである。有機溶媒における既知濃度の候補を、標準物質として使用する。最初の工程として、DMSOにおいて試験化合物の原液を調製しなければならない。化合物の最大溶解性に応じて、DMSOにおける50mMという濃度が、達成されるべきである。DMSO原液を、DMSO(100%参照溶液)および緩衝液(試験溶液)を用いて50μMという最終濃度に希釈することにより、各々、最大体積500μLを得る。両方の溶液を、Eppendorf「サーモミキサーコンフォート」において少なくとも60分間、25℃、950rpmにおいて振盪する。その懸濁液を22330gで少なくとも2分間遠心し、100μLの上清をガラスバイアル内に置かれたポリプロピレン挿入物に移し、止め輪キャップで閉じる。あるいは、前に記載された出発溶媒体積の半分を用いて、それらの溶液をマイクロタイタープレートにおいて調製することができる。溶解性を決定するために、すべてのサンプルをHPLCによって3つ組で解析する。注入体積は、少なくとも10μLである。得られたデータを「Chemstationソフトウェア」(Agilent,Waldbronn,Germany)によって解析する。有機溶液の解析からのピークを積分し、算術平均を「AUC1」(HPLCにおいて注入された既知量の参照面積)として報告する。同じ手順を、緩衝溶液の解析から得られたスペクトルに適用することにより、「AUC2」(緩衝液に溶解された未知量の化合物の面積)を得る。一般に、AUCは、20面積単位(area units)よりも大きく(greater then)なければならず、ノイズに対するシグナル(ピークの高さ)は、3よりも良好でなければならない。平均「AUC2」と「AUC1」との比を算出し、それにより、緩衝液中に溶解された化合物の量のパーセンテージが得られ、溶解性が、μMを単位として報告され得る。
【0176】
結果を以下の表に示す。
【0177】
【表17】

HERG阻害
QT延長を、パッチクランプ手法またはRb流出によって測定されるHERG阻害によって評価する。
【0178】
Rb+流出法(Cerep,France,Catalog.Ref.900−36rb)を、最初のスクリーニングのために用いる。Rb+流出アッセイでは、アッセイの適格性を評価するために、試験化合物と同時に参照化合物(アステミゾール)を試験した。それは、10μMにおいて試験され、そのデータを、Cerepにおいて測定された既存値と比較した。
【0179】
HERG阻害を精密に特徴づけるために、パッチクランプアッセイ(Cerep,France,Catalog ref.900−36)を適用する。一般的な力価序列システムをRocheら、2002,Chem Bio Chem 3:455−459から採用する。アッセイの感度が変化しなかったことを確かめるために、10nM E−4031(Wako,cat.no.052−06523)を用いて同じ(クローン)バッチの細胞において行われる別個の実験から、Cerepにおいて歴史的に得られたデータ(58.4±2.0%阻害、平均±SEM、n=3)に匹敵する結果(56.7±1.8%阻害、平均±SEM、n=3)が得られた。試験化合物(10mM原液)をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。その1μMの溶液は、0.01%DMSOを含んでいた。最大1%DMSOを含む両方の(Bath)溶液が、HERGによって電気信号に直されるテール電流に対して有意な効果を有しない。
【0180】
10μMにおけるRb+流出法によるいくつかの化合物のスクリーニングは、HERGチャネル活性の阻害を示さなかった。より感度の高いパッチクランプアッセイでは、化合物A01、A05およびA16が、低力価HERGチャネル遮断物として分類され得るのに対し、B03は、高力価HERGチャネル遮断物として同定された。結果を以下の表に示す。
【0181】
【表18】

分子量
分子量を、任意の対イオンまたは付加物を除いた単量体分子の理論的質量として定義する。化合物の分子量を以下の表に示す。
【0182】
【表19】

実施例6:ADME−Tox
実施例5に記載されたように、様々な化合物のADME−Tox解析を行った。要約結果を以下の表に示す。
【0183】
【表20】

簡潔には、PBSpH7.4において水溶解性を試験した。結果は、μMを単位として示される。ヒト血漿中において30分間、タンパク質分解に対する安定性を試験した。各々についての結果は、%安定性として示される。マウスミクロソーム調製物において30分間、ミクロソーム安定性を試験した。結果は、%安定性として示される。1μMのペプチドまたはペプチド誘導体におけるパッチクランプ法を用いて、HERGチャネル阻害を試験し、%阻害として示す。
【0184】
実施例7:動物モデル
以下のアッセイを動物において行う。
【0185】
1.急性毒性学
毒性学研究は、有毒作用に起因する態度の変化を適用の直後および1日2回モニターすること;体重のモニタリング;脳、心臓、腎臓、肝臓、肺の組織病理学を含んだ。
【0186】
C57Bl/6マウスにおいて実験を行った。
【0187】
2.薬物動態
化合物の薬物動態を、1〜30mg/kgにおいてC57Bl/6マウスまたはWistarラットにおいて試験した。LC−MSを用いて、適切な間隔で血流中の化合物濃度をモニターした。
【0188】
3.循環解析
C57Bl/6マウスにおいて血圧および心拍数をモニターし、心電図を採った。
【0189】
4.動物疾患モデル
FVIII−/−(E17)マウス、FIX−/−マウスおよびC57Bl/6コントロールマウスにおける尾クリップモデルを用いた。定量化されるパラメータは、総失血量、出血時間、出血速度および生存だった。
【0190】
実施例8:急性毒性学
体重が18〜20gのC57Bl/6マウスに、適当なビヒクル中の化合物を、10ml/kgにおいて、尾静脈にi.v.投与するか、またはi.p.もしくはs.c投与した。投与された化合物の量は、0.075〜125mg/kg(i.v.)、15〜125mg/kg(i.p.)および125mg/kg(s.c.)の範囲だった。1群あたり4匹のマウスだった。有毒作用に起因する態度の変化を、化合物を投与した直後およびその60分後にモニターした。投与後5日間にわたって体重をモニターした。投与の5日後に、マウスを選別し、剖検を行った。脳、心臓、腎臓、肝臓、肺および脾臓の生検を実施した。結果を以下の表に記載する。
【0191】
【表21】

上の表では、投与後の60分間で毒性不検出、いくらか毒性または重度の毒性を生じる試験された最大用量が記録されている。「毒性不検出」は、急性の毒性の観察結果がなかったことを示す。「いくらか毒性」は、失調またはカタレプシーが記録されたが、動物は死亡しなかったことを示す。「重度の毒性」は、動物のうちの1匹が化合物適用の1時間以内に死亡したことを示す。
【0192】
要約すると、化合物の大部分が、十分に許容された。特定の経路によって投与されたときに重度の毒性を生じた化合物の用量は、薬物動態、循環解析または動物疾患モデルにおいてその経路によって試験されなかった。
【0193】
化合物の大部分については、最高用量でさえも、生存マウスから5日後に回収された生検サンプルにおいて肉眼での病理所見は観察されず、このことから、それらの化合物が十分に許容されたことが示唆される。どの動物においても同定された唯一の病理学的変化は、肝臓、腎臓、肺または心臓における軽度の異常だった。これらは、おそらく、化合物に関連しない軽度の感染症に起因するか、または選別に起因する、個々の動物における自発性の観察結果だった。
【0194】
試験された各化合物について、負の応答を示唆する生存マウスの平均体重に対する作用が無かったことが顕著だった。
【0195】
実施例9:化合物の薬物動態
i.v.、i.p.またはs.c.投与後の血漿中の化合物濃度をモニターするために、薬物動態学的研究を行った。研究は、体重が約20gのC57Bl/6マウスにおいて行った。
【0196】
各ペプチドに対して、すべての投与経路について同じ処方物を使用し、それらは以下のとおりだった:A01は、5%DMSO、5%Cremophor EL(Sigma−Aldrich)、0.5%Tween80において製剤化され;A02およびA09は、各々、5%DMSO、30%PEG400(ポリエチレングリコール)50mMリン酸ナトリウムpH7.4において製剤化され;A05は、5%DMSO、20mMグリシンpH9.0において製剤化され;A06およびA07は、各々、5%DMSO、0.9%NaCl、50mMリン酸ナトリウムpH7.4において製剤化された。
【0197】
ESI源を備えた、質量分析計LCQ classic(Thermo Electron,US)またはAdvantage(Thermo Electron,US)と組み合わされたSurveyor HPLCにおけるHPLC−MSによって、血漿中のペプチド濃度を解析した。すべてのHPLC実験は、線形勾配:溶出剤A 0.05%トリフルオロ酢酸(trifluoracetic acid)(TFA)の水溶液;溶出剤B 0.05%TFAのアセトニトリル溶液;流速0.3mL/分を10分間用いるPhenomenex C−18 Lunaカラム(50mm×2.0mm,5μlの注入体積)において行われた。220〜400nmにおけるUVスペクトルをPDAによって記録した。内標準は、100%メタノール中の0.1μg/ml溶液として調製する。50μlの血漿および50μlの内標準を混合する。100μlのメタノールを加え、完全に混合する。氷上で30分間インキュベートした後、バイアルを4℃において15分間遠心する(20820g)。150μlの上清をHPLCバイアルに移す。
【0198】
i.v.またはi.p.投与後の結果を以下の表に示す。簡潔には、i.v.投与後の血漿からのペプチドのクリアランスは、おおよそ対数的な経過をたどった。i.p.投与後については、40〜60分後にCmaxに達した。次いで、化合物濃度が低下した。このプロファイルは、i.p.またはs.c.投与にとって特徴的である。
【0199】
【表22】

実施例10:A01の投与後の循環解析
3匹の雄および3匹の雌のC57Bl/6マウス(各々、約20gの体重)の3群において、平均動脈圧および心拍数をモニターし、心電図を採った。それらの群を、10ml/kg NaClをi.v.投与される「コントロール」;10ml/kgをi.v.投与される「ビヒクル」;または20mg/kgでビヒクル中のA01をi.v.投与される「化合物」に割り当てた。「ビヒクル」は、注射用水におけるDMSO5%、Cremophor EL(Sigma−Aldrich)5%、Tween80 0.05%だった。
【0200】
各マウスについて、食塩水/ヘパリンで満たされたカテーテルを頚動脈に固定した。そのカテーテルを、トランスデューサーを介して血圧Plugsys−モジュール(Hugo Sachs Electronik−Harvard Apparatus GmbH,Germany(HSE))に連結した。ECG電極を、皮下に埋め込み、ECG Plugsys−モジュール(HSE)を介してPCに連結した。ECGから心拍数を算出した。循環パラメータを安定化させるために少なくとも10分後に、食塩水、ビヒクルまたは化合物を、必要に応じて、頚静脈に接続されたカテーテルを介して投与した。投与後の60分間にわたって循環パラメータをモニターし、記録した。各動物について、研究薬投与後の観察時間内の平均動脈圧および心拍数の経過を、線形台形公式を用いる曲線下面積(AUC)を用いて推定した。個別のAUC(A01 20mg/kg i.v.)を、ビヒクル(10mL/kg i.v.)および食塩水(10mL/kg i.v.)のAUCと比較した。帰無仮説(化合物とビヒクルまたは食塩水との間に差はない)を、正確なウィルコクソン順位和検定を用いて評価した。多重比較のために、非調整および調整両側p値を算出した。多重性についての調整を、Bonferroni−Holm法を用いることによって行った。有意水準は、5%に設定した。すべての統計解析を、R Version 2.4.0を用いて行った。差はないという帰無仮説を、両側対立仮説に対して試験した。結果を以下の表に示す。
【0201】
【表23】

A01 20mg/kg i.v.と食塩水10ml/kg i.v.との間、ならびにA01 20mg/kg i.v.とビヒクル10ml/kg i.v.との間の、研究薬投与後の60分以内の平均動脈圧のAUCに統計学的に有意な(5%レベル)差はなかった。A01 20mg/kg i.v.と食塩水10ml/kg i.v.との間、ならびにA01 20mg/kg i.v.とビヒクル10ml/kg i.v.との間の、研究薬投与後の60分以内の心拍数のAUCに統計学的に有意な(5%レベル)差はなかった。
【0202】
実施例11:動物疾患モデル−コントロール実験
FVIII(E17)−/−、FIX−/−(Lin HF Blood 1997;90:3962−6)および野生型C57Bl/6マウスにおける出血パラメータ、ならびに凝固因子調製物に対するそれらの応答を特徴づけるマウス尾クリップアッセイを開発するために実験を行った。
【0203】
試験された凝固因子調製物は、Advate(登録商標)およびImmunine(登録商標)だった。Advate(登録商標)は、rFVIII調製物(Baxter AG,Austria)である。Immunine(登録商標)は、精製された血漿FIX調製物(Baxter AG,Austria)である。
【0204】
具体的な説明において記載されるように、尾クリップアッセイにおいて尾クリップ後の62分間、失血量をモニターした。FVIII−/−マウスに、25、50もしくは100U/kgのrFVIII(Advate(登録商標))i.v.投与するか、またはビヒクル単独を投与した。そのビヒクルは、38mg/mlのマンニトール、10mg/mlのトレハロース、108mEq/lのナトリウム、12mMのヒスチジン、12mMのTris、1.9mMのカルシウム、0.17mg/mlのPolysorbate−80、0.1mg/mlのグルタチオンである、Advate処方物緩衝液だった。コントロールとして、C57Bl/6マウスにビヒクル単独を投与した。rFVIIIの投与によって、62分間にわたって、失血量の用量依存的減少がもたらされた。この実験に対する生存データを以下の表に示す。
【0205】
【表24】

50、100または200U/kgのImmunine(登録商標)FIXをi.v.投与されたか、またはビヒクル単独を投与されたFIX−/−マウスの失血量を、尾クリップ後の62分間、モニターした。コントロールとして、C57Bl/6マウスにビヒクル単独を投与した。FIXの投与によって、62分間にわたって失血量の用量依存的減少がもたらされた。この実験に対する生存データを以下の表に示す。
【0206】
【表25】

このデータは、FVIII−/−モデルにおいて25〜100U/kgにおけるAdvate(登録商標)FVIIIが、出血パラメータおよび生存を用量依存的に改善することを示している。FIX−/−モデルにおいて、50〜200U/kgにおけるImmunine(登録商標)FIXは、出血パラメータおよび生存を用量依存的に改善する。したがって、FVIII−/−モデルは、リード化合物の凝血FVIII活性を試験するための適切なモデルである。FIX−/−モデルは、化合物の凝血FIX活性を試験するための適切なモデルである。
【0207】
実施例12:動物疾患モデル−A01の有効性
FVIII−/−マウスの出血パラメータおよび生存に対する投与されたA01の効果を、具体的な説明に記載される尾クリップモデルにおいて試験した。同様の実験をFIX−/−マウスにおいて行った。
【0208】
尾クリップの5分前に20mg/kgのA01をi.v.投与された8匹の雄および8匹の雌のFVIII−/−マウスの群における尾クリップ後の失血量の平均体積は、ビヒクル単独を投与されたマウスのコントロール群による失血量の平均体積と比べて、大部分の時点において有意に異なった(p<0.05)。ビヒクルは、注射用水における、5%DMSO、5%Cremophor EL、0.05%Tween80だった。尾クリップの52分後および62分後において、差がp<0.01において有意だった。データを図2および以下の表に示す。この実験においてマウスの生存曲線を比較するために使用したログランク検定は、ビヒクルコントロールよりも20mg/kgのA01 i.v.を用いたほうが統計学的に有意に長い生存時間を示している(p値=0.0028)。
【0209】
【表26】

上記の実験を繰り返すことにより、その再現性の示唆が得られた。結果を以下の表に示す。独立して行われたこれらの2つの実験においてばらつきが観察されているが、A01で処置された動物は、より少ない出血であり、より長く生存する。
【0210】
【表27】

同じモデルを用いてさらなるデータを得たが、尾クリップを0.5cmではなく1cmとし、マウスを性別に従ってグループ化した。作用物質をi.v.投与した。この実験では、A01は、雄マウスよりも雌において有効であると見られた。結果を以下の表に示す。
【0211】
【表28】

別段述べられない限り、群は、同数の雄および雌マウスを含んでいた。
【0212】
尾クリップの5分前に20mg/kgのA01をi.v.投与された16匹のFIX−/−マウスの群における尾クリップ後の失血量の平均体積は、ビヒクル単独を投与されたマウスのコントロール群による失血量の平均体積と比べて、いずれの時点においても有意に異ならなかった(p<0.05)。A01を投与されたマウスの生存と、ビヒクル単独を投与されたマウスの生存とに有意差はなかった。
【0213】
これらの結果から、A01が、尾クリップ後に失血量を減少させ、生存時間を延長することによってFVIII−/−マウスにおけるFVIIIの欠乏について少なくとも部分的に補償し得るが、FIX−/−マウスでは効果を有しないことが証明される。A01は、血友病モデルにおいて有効性を示したので、最も好ましいペプチドと考えられる。
【0214】
実施例13:FVIII−/−マウス尾クリップモデルにおいて試験する化合物の結果
0.5cmの尾クリップを用いるFVIII−/−尾クリップモデルにおけるi.p.投与によって、A01をさらに試験した。データを以下の表に要約する。
【0215】
【表29】

20mg/kgのA01を投与された雌マウスは、10ml/kgのビヒクルをi.p.投与された雌マウスよりも統計学的に有意(5%レベル)に長い生存時間を有した(両側p値p=0.0073;ログランク検定)。20mg/kgのA01をi.p.投与された雄マウスと、10ml/kgのビヒクルをi.p.投与された雄マウスとの間には、生存曲線の統計学的有意差はなかった(5%レベル)。この実験では、コントロール群内の雄は、コントロール群内の雌よりも良好に生存すると見られた。
【0216】
実施例14:リード化合物を特徴づけるための実験の要約
以下の化合物は、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおいて活性を有する:A01、A03、A05、A19、B01、A02、B03、B05、B06、A06、A20、A07、A08、A09およびB07。これらのうち、A03、A02、B03、A08およびA09は、100μMにおいて少なくとも1200mU/mLのFEIBAのトロンビン生成活性を有する。
【0217】
以下の化合物は、規定の二重経路トロンビン生成アッセイにおいて活性を有する:A02、A03、A08、A09、A18、B03、B04、A07、A15、A06およびA17。これらのうち、A09は、50μMにおいて少なくとも10mU/mLのFEIBAのピークIIa活性を有した。B03、B04およびA15は、50または100μMにおいて少なくとも10mU/mLのFEIBAのピークIIa活性を有した。
【0218】
以下の化合物は、規定のフィブリン沈着アッセイにおいて活性を有する:A01、B01、A05、B03、A06およびA07。
【0219】
以下の化合物は、ヒト血漿中での30分間のインキュベート後に少なくとも50%の安定性を有する:A01、A19、A07、A20、A06、A02、A03、A08、A09、B07、B06、B05およびA05。
【0220】
以下の化合物は、PBS pH7.4において少なくとも25μMの溶解性を有する:A09、B03、B07、B06、B05、A07、A20、A06、A02、A03およびA16。これらのうち、B03、B07、B05、A07、A20、A06、A03およびA16は、PBS pH7.4において少なくとも100μMの溶解性を有する。
【0221】
A01、A05およびA16は、低力価HERGチャネル遮断物として同定された。
【0222】
A01は、FVIII−/−マウスにおける尾クリップアッセイにおいて活性を有すると同定された。
【0223】
実施例15:成人被験体における血友病Aの処置
高用量FVIII治療後にFVIIIに対する同種抗体インヒビターを産生することは血友病A患者に対して特徴的である。代表的なシナリオでは、患者の血漿から調製される血清中のそのような抗体の存在は、臨床医によってモニターされる。抗体応答の力価が、許容し難いほど高くなるとき(例えば、約5BU)、臨床医は、患者にFVIIIを注入することを中止し、そしてペプチドA01などの本発明のペプチドを投与し始めることを決め得る。
【0224】
本ペプチドは、US5,439,686に記載されているように、アルブミン殻内の直径約10μmの微小粒子として製剤化され得、水性媒質に懸濁され得る。患者は、噴霧器を用いて吸入によってその処方物を自己投与し得る。5または10mgという1日量または1日2回の用量が、吸入され得る。臨床医は、有効性を確かめるために、ペプチド治療を開始したすぐ後に部分トロンボプラスチン時間を試験し得る。その結果に応じて、用量をしかるべく変更させ得る。用量を大幅に増加させる必要がある場合、より小さい微小粒子、代表的には直径約5μmの小さい微小粒子が使用され得、それらを静脈内に投与し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)WDLYFEIVW(配列番号1);または
(ii)WDLYFEIVW(配列番号1)内に1、2、3もしくは4つのL−アミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列;または
(iii)部分(i)および(ii)のうちの1つのペプチドもしくはペプチド誘導体のレトロインベルソバリアント
を含むペプチドまたはペプチド誘導体であって、
ここで、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、凝血促進活性を有する、ペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項2】
前記バリアントアミノ酸配列が、XYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、W、LまたはPであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、Phg、L、Ebw、Pff、Thi、1Ni、Hfe、EceまたはChaであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号1)、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項3】
前記バリアントアミノ酸配列が、XYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、WまたはLであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、PhgまたはLであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号1)、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項4】
(1)RMEFDVWDLYFEIVW(配列番号2);または
(2)RMKFDVWDLYFEIVW(配列番号2)
(2)RMEFDVWDLYFEIVW(配列番号2)もしくはRMKFDVWDLYFEIVW(配列番号2)内に1から6つのアミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列
を含む、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項5】
前記バリアントアミノ酸配列が、より多いX10FDVXYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、RまたはPであり、Xは、M、Nva、Moo、N、Nle、Meo、Q、Eagであり、X10は、E、KまたはDであり、Xは、W、LまたはPであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、Phg、L、Ebw、Pff、Thi、1Ni、Hfe、Ece、Chaであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号2)、請求項4に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項6】
前記バリアントアミノ酸配列が、X10FDVXYXEXを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、RまたはPであり、Xは、MまたはNvaであり、X10は、E、KまたはDであり、Xは、WまたはLであり、Xは、DまたはSであり、Xは、LまたはFであり、Xは、F、PhgまたはLであり、Xは、IまたはFであり、Xは、S、VまたはGであり、そしてXは、WまたはLである(配列番号2)、請求項5に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項7】
N末端においてアセチル化されており、C末端においてアミド化されており、そして/またはいずれかの末端においてPEG化されている、請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項8】
環状である、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項9】
【化6】

【化7】

を含むか、またはそれらからなる、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、−ttds−は、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミンであり、(Nva)は、ノルバリンであり、(Phg)は、フェニルグリシンであり、(Coh)は、システイン酸であり、(Moo)は、メチオニンスルホンであり、(Ebw)は、3,3−ジフェニルアラニンであり、(Pff)は、4’−フルオロフェニル−アラニンであり、(Nle)は、ノルロイシンであり、(Meo)は、メチオニンスルホキシドであり、(Eag)は、プロパルギルグリシンであり、(Thi)は、2−チエニルアラニンであり、(1Ni)は、1−ナフチル−アラニンであり、(Hfe)は、ホモフェニルアラニンであり、(Ece)は、s−ベンジル−L−システインであり、(Cha)は、シクロヘキシルアラニンである、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項10】
(i)imfwydcyeを含むアミノ酸配列;または
(ii)imfwydcye内に1、2、3、4、5もしくは6つのアミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列
を含むペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、凝血促進活性を有する、ペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項11】
(i)cimfwydcyeを含むアミノ酸配列;または
(ii)cimfwydcye内に1、2、3、4、5、6もしくは7つのアミノ酸置換を含むバリアントアミノ酸配列
を含む、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項12】
前記バリアントアミノ酸配列が、X10を含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、存在する場合、c、s、y、i D−Pen、C、t、D−Nva、D−Nleまたはkであり、Xは、i、y、wまたはdであり、Xは、cまたはmであり、Xは、f、t、vまたはcであり、Xは、wまたはcであり、Xは、yまたはcであり、Xは、d、eまたはfであり、Xは、c、e、f、yまたはdであり、Xは、yまたはwであり、そしてX10は、eまたはiである、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項13】
前記バリアントアミノ酸配列が、XwydXyeを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、c、C、D−Penまたはsであり、Xは、i、yまたはwであり、Xは、cまたはmであり、Xは、f、tまたはvであり、そしてXは、cまたはeである、請求項12に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項14】
前記バリアントアミノ酸配列が、XmXwydXyeを含むアミノ酸配列を含み、ここで、Xは、c、CまたはD−Penであり、Xは、iまたはyであり、Xは、f、tまたはvであり、そしてXは、cまたはeである、請求項13に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項15】
N末端においてアセチル化されており、C末端においてアミド化されており、そして/またはいずれかの末端においてPEG化されている、請求項10に記載のペプチド誘導体。
【請求項16】
N末端においてアセチル化されており、C末端においてアミド化されており、そして/またはいずれかの末端においてPEG化されている、請求項11に記載のペプチド誘導体。
【請求項17】
環状である、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項18】
【化8】

を含むか、またはそれらからなる、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、−TTDS−は、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミンであり、(D−Pen)は、D−ペニシラミンであり、(D−Nva)は、D−ノルバリンであり、(D−Nle)は、D−ノルロイシンである、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項19】
前述のいずれかの請求項において定義されたようなさらなるペプチドまたはペプチド誘導体に結合体化された、請求項1において定義されたようなペプチドまたはペプチド誘導体を含む二重ペプチドであって、ここで、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、該さらなるペプチドまたはペプチド誘導体と同じであってもよいし、異なっていてもよく、該二重ペプチドは、凝血促進活性を有する、二重ペプチド。
【請求項20】
前述のいずれかの請求項において定義されたようなさらなるペプチドまたはペプチド誘導体に結合体化された、請求項10において定義されたようなペプチドまたはペプチド誘導体を含む二重ペプチドであって、ここで、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、該さらなるペプチドまたはペプチド誘導体と同じであってもよいし、異なっていてもよく、該二重ペプチドは、凝血促進活性を有する、二重ペプチド。
【請求項21】
0.5から3.5kDの分子量を有する、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項22】
0.5から3.5kDの分子量を有する、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項23】
前記凝血促進活性が、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける、少なくとも100mU/mLの第8因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、好ましくは、少なくとも300mU/mLのFEIBA、より好ましくは、少なくとも900mU/mLのFEIBA、最も好ましくは、少なくとも1200mU/mLのFEIBAの凝血促進活性と等しい、25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項24】
前記凝血促進活性が、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける、少なくとも100mU/mLの第8因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、好ましくは、少なくとも300mU/mLのFEIBA、より好ましくは、少なくとも900mU/mLのFEIBA、最も好ましくは、少なくとも1200mU/mLのFEIBAの凝血促進活性と等しい、25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド。
【請求項25】
前記凝血促進活性が、30分以内、好ましくは、15分以内、最も好ましくは、10分以内にピークを迎える、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項26】
前記凝血促進活性が、30分以内、好ましくは、15分以内、最も好ましくは、10分以内にピークを迎える、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項27】
重篤なヒト血友病Aの動物モデルにおいて投与されたときに、生物学的に活性なFVIIIの欠如を少なくとも部分的に補償し得る、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項28】
重篤なヒト血友病Aの動物モデルにおいて投与されたときに、生物学的に活性なFVIIIの欠如を少なくとも部分的に補償し得る、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項29】
30分後において、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも90%のヒト血漿中の安定性を有する、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項30】
30分後において、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも80%、最も好ましくは、少なくとも90%のヒト血漿中の安定性を有する、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項31】
pH7.4のリン酸緩衝食塩水中で、少なくとも25μM、好ましくは、少なくとも60μM、最も好ましくは、少なくとも100μMの水溶解性を有する、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項32】
pH7.4のリン酸緩衝食塩水中で、少なくとも25μM、好ましくは、少なくとも60μM、最も好ましくは、少なくとも100μMの水溶解性を有する、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項33】
請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体、ならびに1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、キャリアおよび/もしくは希釈剤を含む薬学的組成物。
【請求項34】
請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体、ならびに1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、キャリアおよび/もしくは希釈剤を含む薬学的組成物。
【請求項35】
皮下投与、経鼻投与、口腔投与、経口投与または肺内投与に適した、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
皮下投与、経鼻投与、口腔投与、経口投与または肺内投与に適した、請求項34に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
静脈内投与に適した、請求項35に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
静脈内投与に適した、請求項36に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
医薬において使用するための、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項40】
医薬において使用するための、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項41】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置するための、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項42】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置するための、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項43】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を処置するための薬物の製造における、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体の使用。
【請求項44】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を処置するための薬物の製造における、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体の使用。
【請求項45】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項33に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項46】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項34に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項47】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項35に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項48】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項36に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項49】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項37に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項50】
FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIの欠乏を有する患者を処置する方法であって、治療有効量の請求項38に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項51】
前記患者が、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIに対するインヒビター抗体を有する、請求項41に記載のペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項52】
前記患者が、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIに対するインヒビター抗体を有する、請求項43に記載の使用。
【請求項53】
前記患者が、FV、FVII、FVIII、FXおよび/またはFXIに対するインヒビター抗体を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
固相合成によって、請求項1に記載のペプチドまたはペプチド誘導体を作製する方法。
【請求項55】
固相合成によって、請求項10に記載のペプチドまたはペプチド誘導体を作製する方法。
【請求項56】
凝血促進活性を有するペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIまたはそのフラグメントではなく、該凝血促進活性は、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける、少なくとも100mU/mLの第8因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)、好ましくは、少なくとも300mU/mLのFEIBA、より好ましくは、少なくとも900mU/mLのFEIBA、最も好ましくは、少なくとも1200mU/mLのFEIBAの凝血促進活性と等しい、25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である、ペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項57】
凝血促進活性を有するペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIまたはそのフラグメントではなく、該凝血促進活性は、30分以内、好ましくは、15分以内、最も好ましくは、10分以内にピークを迎える、規定の内因性トロンビン生成アッセイにおける25、50または100μMのペプチド、ペプチド誘導体または二重ペプチドのトロンビン生成時間である、ペプチドまたはペプチド誘導体。
【請求項58】
凝血促進活性を有するペプチドまたはペプチド誘導体であって、ここで、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、FVIIIまたはそのフラグメントではなく、該ペプチドまたはペプチド誘導体は、重篤なヒト血友病Aの動物モデルにおいて投与されたときに、生物学的に活性なFVIIIの欠如を少なくとも部分的に補償し得る、ペプチドまたはペプチド誘導体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−518179(P2011−518179A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505212(P2011−505212)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/040857
【国際公開番号】WO2009/137256
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】