説明

生物学的因子又は薬物を被検者に送達するためのシステム、装置及び方法

糖尿病を管理するための方法、コンピューターで実施される方法及び関連する装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者体内における薬物レベル又は生物学的因子の管理に関する。本発明は、さらに、概して、天然のβ細胞を模倣するためのグルコース及びインスリン送達のレベルの管理にも関し、さらに詳細には、インスリンの投与をリアルタイムで制御し且つ血漿グルコースのレベルをモニターするするための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者体内の薬物又は別の生物学的因子の循環レベルを維持することは、適切な治療及び生物学的な機能にとって重要である。
【0003】
真性糖尿病は、世界中で1億人以上が罹患している。米国では、病気に冒された1200万人の医療費の見積額は、毎年1360億ドルであると概算される。真性糖尿病は、膵臓が充分な量のインスリンを分泌することができないということを特徴とする、代謝の障害である。インスリンの量が不充分であると血糖値が大きく変動し、短期間の及び長期にわたる生理学的な結果を招き得る。1型糖尿病を患っている患者における高い血糖値(高血糖症)に起因する長期的合併症としては、網膜症、神経障害、腎障害及び別の血管合併症などがある。低い血糖値(低血糖症)は、糖尿病性昏睡、発作、偶発症候、無酸素症、脳損傷、認知機能低下及び死を引き起こし得る。
【0004】
糖尿病患者におけるグルコース調節への慣習的なアプローチとしては、毎日3〜5回のインスリン注射などがあり、これは、毎日4〜8回血糖を侵襲的に測定することによりインスリンの量を決定することを伴っている。このインスリン送達方法は、有痛性で面倒であり、そして、典型的に使用されるインスリン類似体の薬物動態学に起因して信頼できない。インスリン送達をもっと使いやすいものとするために、ペン装置が開発された。しかしながら、インスリン又はインスリン類似体の複数のタイプを混合することができないということは、不利である。吸入インスリン送達及び経皮インスリン送達などのインスリン送達の幾つかの別の経路が、インスリン注射に代わるものとして研究されてきた。別の研究は、ポンプを使用する連続皮下インスリン注入(CSII)の有効性について探求していた。この探求は、主に、慣習的なインスリン療法又は複数回定時インスリン注射(MDI)との比較でなされたきた。外部インスリン注入ポンプによる連続皮下インスリン注入は、通常、速効性のインスリン類似体を使用する。
【0005】
固定投与量による典型的なアプローチは、日々の代謝要求が代謝的に類似しているということ及び固定投与量が患者にとって必要とされるインスリンのタイミングと量を充分に満たすということを仮定している。
【0006】
残念なことに、血糖変動は多くの患者において抑制できずに70〜120mg/dLの正常な範囲を超えて起こり続ける。このことは、身体的な合併症のリスクを悪化させる。低血糖症及び高血糖症は、患者の必要とされるインスリンが投薬計画によって予測される濃度及び血流中に存在している濃度から外れる場合に周期的に発症し得る。
【0007】
速効性のインスリン類似体の導入に加えて、外部インスリン注入ポンプの開発は、強力なインスリン療法を実現可能なものにすることにおいて大きな助けとなってきた。インスリン療法の有効性は、血流中のグリコシル化ヘモグロビンの割合(%)を測定することによって定量化される(A1C)。6%未満の値は、糖尿病を患っていない通常の健康なヒトにおいて見られるのに対して、それよりも高い割合(%)は、持続性高血糖症を示している。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、「Zone-MPC」〔ここで、該Zone-MPCは、マッピングされた入力データ(mapped-input data)を使用し、そして、線形差分個人化モデル(linear difference personalized model)によって自動的に調節される〕に基づく人工的な膵臓β細胞を提供する。本明細書に記載されているアプローチは、平均的な患者モデルも使用し得る。範囲制御(control to range)は、一般に、制御量(CV)を所定のゾーン内に維持するための制御器目標(controller goal)を有する特定の設定値がない制御対象に適用される。範囲制御は、正常血糖ゾーンがないことよりも、むしろ、自然血糖設定値がないので、人工的な膵臓β細胞として極めて適している。さらに、Zone-MPCを使用することは、制御ムーブ(control moves)の低減をもたらし、これは、携帯用インスリンポンプのエネルギー効率を改善し、且つ、インスリン送達の振動プロフィールを最小限度に抑える。
【0009】
Zone-MPCは、FDAによって認可されているUVa-/-U. Padova代謝シミュレーターで評価した。制御は、新規アプローチにおいてインスリンと食事の入力を過減衰2次伝達関数でマッピングすることにより確認されたARX-モデルに基づいていた。該マッピングされた入力は、インスリン投与に対するより大きなメモリーを可能とするZone-MPC公式化における付加的な状態変数として使用される。Zone-MPCは、食事の不確実さを伴うアナウンスされた食事とアナウンスされていない食事を処理する能力を示した。Zone-MPCは、「最適な」オープンループ処理と比較して重要な利点を示した。さらに、Zone-MPCは、定値制御と比較して最少の性能損失で制御ムーブのばらつきを低減させる。騒々しい連続グルコースモニタリング(CGM)に直面してポンプの活動を弱める能力がZone-MPCによって示されており、これは、より安全なインスリン送達をもたらし、また、電力排出を最小限度にする。市販製品に対する可能化段階は、完全に自動化された様式でCGM測定から機能制御装置まで直接的に進行する能力であるということが示された。個人化Zone-MPCは、完全に自動化された人工的な膵臓β細胞の完璧な候補である。
【0010】
本開示は、被検者に対する薬物又は生物学的作用因子を連続的にモニター及び送達する方法を提供する。該方法は、被検者に関する薬物又は生物学的作用因子の血中濃度に関連する値を得ること;そのデータを伝達関数を用いてマッピングすること;複数の状態を含んでいる線形差分モデルを作ること;被検者体内の薬物又は生物学的作用因子に関する規定値ゾーンを得ること;線形差分モデルと規定ゾーンを用いて予測される薬物又は生物学的作用因子の値に基づいて薬物又は生物学的作用因子の次の投与薬量及び/又は送達の時間を計算すること;計算された次の投与に基づいて被検者に薬物又は生物学的作用因子を送達すること;を含んでいる。該生物学的作用因子は、二次的なもの(例えば、直接的な生物学的作用因子又は活性薬剤に対する副産物又は誘導された因子など)であり得る。上記の値は、活性薬剤若しくは副産物の血中濃度又は生理学的症候(例えば、体温)であり得る。さまざまな実施形態において、該値は、オープンループシステムで得るか、又は、臨床ケアの下で得ることができる。一実施形態では、該薬物又は生物学的作用因子は、インスリン及び/又はグルコースである。例えば、一部の実施形態では、該数値データは、被検者体内のインスリン濃度及び血糖値を含んでいる。さらに別の実施形態では、該方法は、糖尿病を治療するために使用される。
【0011】
本開示は、インスリン及びグルコースを調節する方法を提供し、ここで、該方法は、被検者に関するインスリン及び食事のデータ値並びに連続グルコースモニタリング(CGM)データ値を得ること;伝達関数:
【数1】

【0012】
〔ここで、τは、測定の時点である〕
を用いてインスリン(I)データ値と食事(M)データ値をマッピングして、新しい状態Imap及びMmapを得ること;
【数2】

【0013】
〔ここで、γi及びδiは、それぞれ、血中に吸収された後のインスリン及び食事に関する重み因子(weighting factor)を表す〕
を含んでいる線形差分モデルを作ること;被検者に関する予め定めた血糖ゾーンを得ること;線形差分モデルと予め定めた血糖ゾーンを用いて予測される血糖値に基づいて次のインスリン投与を計算すること;及び、計算された次のインスリン投与に基づいて被検者にインスリンを送達すること;を含んでいる。一実施形態では、インスリンの送達は、時間的に変動し、及び、投与量によって変わる。別の実施形態では、インスリンの送達は、持続注入であるか、又は、不連続注入である。一実施形態では、該インスリンは、ヒトインスリン、哺乳動物インスリン又はインスリン類似体である。グルコースデータは、一時的な(episotic)グルコース測定値又はセルフモニタリング測定値を包含し得る。グルコース測定値は、皮下で、静脈内で、腹腔内で、又は、非侵襲的に、得ることができる。CGMデータは、埋込グルコースセンサー、光学的グルコースセンサー、酵素的グルコースセンサー及びフィンガースティックグルコースセンサーから本質的になるセンサーの群から選択されるセンサーで得る。
【0014】
投与は、薬物又はインスリンを送達するポンプ又は装置で実施する。例えば、コンピューター制御されている埋込型の薬物ポンプ又はインスリンポンプ。
【0015】
本開示の方法は、コンピューター制御されたポンプ又はセンサーによって実施することができる。そのようなコンピューターは、PDA装置又は別のハンドヘルド装置であり得る。
【0016】
本開示は、さらに、本開示の自動化された方法を実行する制御器を含んでいる自動化ポンプシステム(例えば、インスリンポンプシステム)を提供し、ここで、インスリン又はインスリン類似体は、該ポンプによってヒトに送達される。
【0017】
一部の実施形態では、該コンピューター制御された又は自動化された方法は、ウェブベースアプリケーション、無線システム又は別のコンピューターデータ転送手段を介して実行される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】血糖に対する食事とインスリンの影響の分離を促進するプロトコルを示す図である。
【図2A−B】インスリンと食事の入力が、2次伝達関数によってマッピングされ、結果として、引き離されて分離されていることを示しているプロットを示す図である。図Aは、T1DM被検者から収集された典型的な入力データを表している:食事とインスリンは、比較的接近した離散時刻にわたってパルスとして割り当てられている。図Bは、変換された入力の結果を表しており、ここで、各パルスは、時間的に引き延ばされた時間応答になっている。
【図3】糖尿病に関連したZone-MPCの図解を示す図である:Zone-MPCは、典型的には、異なった3つのゾーンに分けられている。許容される範囲は、制御目標であり、上限と下限によって範囲が限定されている。例えば、図中の緑色の点は、許容される範囲内にある予測血糖値を示している。上部ゾーンは、望ましくない予測高血糖値を表しており、その予測高血糖値は図中において橙色の点で表されている。下部ゾーンは、望ましくない予測低血糖値を表しており、その予測低血糖値は、低血糖ゾーンを表しているか又は低警告ゾーンである前低血糖保護領域(pre-hypoglycemic protective area)を表している。該Zone-MPCは、特定の条件下で許容されるゾーン内に留まるようにインスリン制御ムーブを操作することによって予測血糖を最適化する。
【図4】2つの部分を含んでいるZone-MPCの中のモデル予測構造を示す図である。第1の部分は、種々の被検者において変化しない2次伝達関数である。第2の部分は、マッピングされた入力データを仮定して血糖を予測する個人化離散モデルである。総合的な予測は、過去の出力、入力及び未来の操作された制御ムーブを含んでいる生データの結果であり、これらの生データは、伝達関数を経て新しい状態(Imap,Mmap)にマッピングされて個人化離散モデルとなって、血糖の予測を与える。
【図5】UVa被検者#5に対して適用されたときの実験1〜実験4の間の比較を示す図である。実験1〜実験4は、それぞれ、灰色の三角並びに赤色、青色及び黒色の丸で表されている。図(a)及び図(b)は、それぞれ、血糖反応及びインスリン投与を表している。黒い破線は、60[mg/dL]及び180[mg/dL]を示している。インスリン投与は、オープンループボーラス処理と制御器インスリン投与を単一のプロット内に含ませるために片対数目盛で表されている。
【図6−1】10人のUVa-/-U.Padova被検者に対する、それぞれ、実験1〜実験4、(a)〜(d)の集団の結果を示す図である。灰色の領域の境界は、所与の各時刻における最少ポイント及び最大ポイントであり、緑色の実線は、平均血糖反応であり、並びに、赤い破線は、各時点における平均血糖標準偏差包絡線である。実験1〜実験4に関するグルコースの分布は、ヒストグラムプロットで表されている。
【図6−2】10人のUVa-/-U.Padova被検者に対する、それぞれ、実験1〜実験4、(a)〜(d)の集団の結果を示す図である。灰色の領域の境界は、所与の各時刻における最少ポイント及び最大ポイントであり、緑色の実線は、平均血糖反応であり、並びに、赤い破線は、各時点における平均血糖標準偏差包絡線である。実験1〜実験4に関するグルコースの分布は、ヒストグラムプロットで表されている。
【図7】UVa被検者#5に対して適用されたときの実験1、実験5、実験6及び実験7の間の比較を示す図である。実験1、実験5、実験6及び実験7は、それぞれ、灰色の三角並びに赤色、青色及び黒色の丸で表されている。図(a)及び図(b)は、それぞれ、血糖反応及びインスリン投与を表している。インスリン投与は、オープンループボーラス処理と制御器インスリン投与を単一のプロット内に含ませるために片対数目盛で表されている。
【図8−1】10人のUVa-/-U.Padova被検者に対する、実験1、実験5、実験6及び実験7の集団の結果を示す図である。灰色の領域の境界は、所与の各時刻における最少ポイント及び最大ポイントであり、緑色の実線は、平均血糖反応であり、並びに、赤い破線は、各時点における平均血糖標準偏差包絡線である。実験1、実験5、実験6及び実験7に関するグルコースの分布は、ヒストグラムプロットで表されている。
【図8−2】10人のUVa-/-U.Padova被検者に対する、実験1、実験5、実験6及び実験7の集団の結果を示す図である。灰色の領域の境界は、所与の各時刻における最少ポイント及び最大ポイントであり、緑色の実線は、平均血糖反応であり、並びに、赤い破線は、各時点における平均血糖標準偏差包絡線である。実験1、実験5、実験6及び実験7に関するグルコースの分布は、ヒストグラムプロットで表されている。
【図9−1】10人のUVa-/-U.Padova被検者に対する、実験2、実験8及び実験9の集団の結果を示す図である。灰色の領域の境界は、所与の各時刻における最少ポイント及び最大ポイントであり、緑色の実線は、平均血糖反応であり、並びに、赤い破線は、各時点における平均血糖±STDである。実験2、実験8及び実験9に関するグルコースの分布は、ヒストグラムプロットで表されている。
【図9−2】10人のUVa-/-U.Padova被検者に対する、実験2、実験8及び実験9の集団の結果を示す図である。灰色の領域の境界は、所与の各時刻における最少ポイント及び最大ポイントであり、緑色の実線は、平均血糖反応であり、並びに、赤い破線は、各時点における平均血糖±STDである。実験2、実験8及び実験9に関するグルコースの分布は、ヒストグラムプロットで表されている。
【図10A−B】本開示の実施形態のさまざまなフローチャートを示す図である。
【図10C】本開示の実施形態のさまざまなフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書及び添付されている「特許請求の範囲」において使用されている場合、単数形「a」及び「the」は、文脈中に別途明瞭に示されていない限り、複数の指示物を包含する。かくして、例えば、「ポンプ(a pump)」についての言及は複数の当該ポンプを包含し、また、「該プロセッサ(the processor)」についての言及は1つ以上のプロセッサについての言及を包含する、など。
【0020】
さらに、「又は(or)」が使用されている場合、それは、特に別途示されていない限り、、「及び/又は(and/or)」を意味する。同様に、「含んでいる(comprise)」、「含んでいる(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(include)」、「含んでいる(includes)」及び「含んでいる(including)」は、互いに交換可能であり、限定することは意図されていない。
【0021】
さらに、さまざまな実施形態についての記載において用語「含んでいる(comprising)」が使用されている場合、特定の例において実施形態を代替的に用語「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」を用いて記載することが可能であることを当業者は理解するであろうということも理解されるべきである。
【0022】
本明細書中に記載されている方法及び材料と類似しているか又は同等である方法及び材料を開示されている方法及び組成物の実施において使用することが可能であるが、本明細書中には、代表的な方法、装置及び材料が記載されている。
【0023】
特に別途定義されていない限り、本明細書中で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、この開示内容が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。かくして本出願の全体にわたって使用されている場合、下記用語は以下の意味を有する。
【0024】
薬物又は生物学的因子の適切な循環レベル及び治療レベルを維持することは、さまざまな疾患及び障害の治療並びに生物学的な機能において重要である。ホルモン、薬物及び生物学的因子の送達及び調節は、恒常性、身体機能及び適切な代謝において重要である。ホルモン類(並びに、サイトカイン類及び別の生物学的因子)は、2〜3の例を挙げれば、さまざまな身体機能、外部刺激、代謝性変化及び成長などに応答して放出される。
【0025】
本開示は、薬物又はホルモン(これは、サイトカイン及び別の生物学的因子を包含する)のレベルを適切な生物学的活性のための適切なゾーンの範囲内に維持するアルゴリズム、サンプリングプロセス及び送達システムを提供する。本開示には、例として、グルコース及びインスリンが記載されているが、その例は、単に例証的なものであって、限定的なものではない。むしろ、該方法、システム及び装置は、薬物及びホルモン(これは、サイトカイン及び別の因子を包含する)などを包含する別の生物学的活性剤のために使用することができる。さらに、該方法、システム及び装置は、被検者における望ましい定常状態を維持するために、薬物送達のモニタチング及び調節においても使用することができる。本開示のこれらの実施形態及び別の実施形態は、以下の記載に鑑みて明らかであろう。
【0026】
本開示が、特定の薬物又は類似体に限定されず、むしろ、ヒトインスリン、哺乳動物インスリン、プロインスリン、インスリン類似体などを包含するということは、理解されるであろう。同様に、薬物、プロ薬物及び薬物類似体などは、本開示の方法に包含される。
【0027】
本開示は、薬物送達を望ましい値のゾーン内で制御するために、線形差分モデルをモデル予測制御(MPC)アルゴリズムと組み合わせて利用する。MPCアルゴリズムは、未来のプロセス応答について明記するために、4つのアプローチに分類される:固定設定値、ゾーン、基準経路(reference trajectory)、及び、ファンネル。未来のプロセス応答のために固定設定値を使用することで、制御器が離調されない限り、大きな入力調節(input adjustment)が可能である。ゾーン制御は、通常はソフト制約(soft constraints)として定義される上限と下限によって範囲が限定されている「ゾーン」内に制御量(CV)を維持するように設計される。一部のMPCアルゴリズムは、該CVへと至る望ましい応答経路(基準経路と称される)を定める。該基準経路は、通常、現在のCV状態から望ましい設定値へと至る定められた経路(define path)を表す。該基準経路制御は、該CVが定められた設定値に近づく場合、固定定値制御に戻る。ロバスト多変数モデル予測制御技術(Robust Multivariable Predictive Control Technology)(RMPCT, Honeywell Inc., 1995)は、CVを定められたゾーン内に維持しようと試みる;しかしながら、CVが該ゾーンの範囲外にある場合、ファンネルは、該CVをそのゾーン内に戻すように規定されている。
【0028】
Zone-MPCは、CVの特定の設定値が上限と下限によって範囲が定められているゾーンと比較して関連性が低い場合に適用される。さらに、ノイズ及びモデルミスマッチの存在下では、固定設定値を用いる実用的価値は存在しない。Zone-MPCについての詳細な説明は、Maciejowskiによって提供された。本発明者らのZone-MPCは、それぞれ予測されるCVが所望されるゾーンの内部又は外部にある場合に最適化重み(optimization weights)をゼロと幾つかの最終値の間で切り替えることによってソフト制約を受ける固定された上限及び下限(図2)を定めることによって実行される。予測される残差は、一般に、所望されるゾーンの外部にあるCVと最も近い境界の間の差として定義される。
【0029】
本開示は、「Zone-MPC」〔ここで、該Zone-MPCは、マッピングされた入力データを使用し、そして、線形差分個人化モデルによって自動的に調節される〕に基づく人工的な膵臓β細胞を提供する。該方法は、さらに、平均患者モデルにまで適用範囲が拡張された。範囲制御は、一般に、制御量(CV)を所定のゾーン内に維持するための制御器目標を有する特定の設定値がない制御対象に適用される。範囲制御は、正常血糖ゾーンがないことよりも、むしろ、自然血糖設定値がないので、人工的な膵臓β細胞として極めて適している。さらに、Zone-MPCを使用することは、制御ムーブの低減をもたらし、これは、携帯用インスリンポンプのエネルギー効率を改善し、且つ、インスリン送達の振動プロフィールを最小限度に抑える。
【0030】
1型真性糖尿病(T1DM)は、正常血糖を維持するのに不可欠なインスリンを生成する生来の能力を喪失していることを特徴とし、そして、外因性インスリン注射による適切な治療を受けないと、生命にかかわる重篤な合併症を引き起こす。T1DMを有している人々は、血糖値を調節する能力を失い、長期間の高血糖症を患っている。T1DM被検者に提供される最も一般的な療法は、オープンループインスリン注射である:しかしながら、オープンループ注射によって治療されている被検者の多くは、依然として長期間の高血糖症を患っており、結果として、網膜症、腎障害、神経障害及び血管合併症などの合併症を発症する。
【0031】
皮下インスリンポンプ及び持続性グルコースセンサーを使用する自動クローズドループアルゴリズムに基づいた人工膵臓を開発することは、望ましい。しかしながら、人工膵臓に関するループを閉じることは、依然として、モデル識別及び制御などの多くの課題を生じる。
【0032】
人工的な膵臓β細胞の探求は、約40年前に始まった。それらの装置は、インスリン投与を操作するために持続的グルコース測定を使用する外部クローズドループシステム又は内部クローズドループシステムとして表すことができ、従って、T1DMを患っている人々が失った生来の糖調節能力を補うことができる。
【0033】
モデル予測制御(MPC)は、未来の制御ムーブ(CM)を操作することによって未来のプロセス応答を最適化するために明示的プロセスモデルを使用するコンピューター制御アルゴリズムである。MPCのコンセプトは、1970年代の初めの頃に生み出され、そして、Shell社の技術者によって、「識別及び制御(identification and control)」(IDCOM)又は「動的マトリックス制御」(DMC)と称された。MPCは、元々、石油精製所及び発電設備において実施されたが、最近では、MPCは、宇宙空間、食料、自動車及び化学における用途などを包含する極めて様々な応用分野で見いだされ得る。MPCが流行していることの最も重要な理由としては、その制約の取扱い、その非線形性の適合及び類のない性能基準を公式化するその能力などがある。
【0034】
MPCは、費用関数(これは、予測ホライゾンとして知られているP未来プロセスインスタント(P future process instants)及びM未来(M future)制御ムーブ(CM)、制御ホライゾンを包含する)を用いて全ての制御を最適化する。各サイクルにおいて、最適化は、アップデートされたプロセスデータを用いて繰り返される。しかしながら、各最適化列の最初の制御ムーブのみが該プロセスに送られる。最適な解が未来の制約違反を防止するように、プロセスの入力制約及び出力制約は直接含まれている。
【0035】
モデル予測制御(MPC)は、被検者への物質送達を制御するための見込みのあるアルゴリズムである(例えば、人工膵臓制御アルゴリズム)。MPCは、化学加工工業において過去40年間にわたって使用されてきた最適な制御アルゴリズムである。MPCは、モデルに基づいた予測を用いることによって費用関数を最小化する反復オープンループ最適化に基づいている。
【0036】
アルゴリズムを開発するプロセスは、基礎を成すレベルと予測されるレベルを開発することを含んでいる。臨床における生体物質の測定値(mearurements)を用いてアルゴリズムを開発するためのさまざまな基準及び値を作ることができる。一実施形態では、臨床データは、通常、インスリン送達及び食事についての離散的な情報を含んでいて、個人化モデルを作るために使用される。2種類の異なった2次伝達関数で臨床におけるインスリン投与歴と食事歴をマッピングすることによって、それらのモデルの識別精度が改善される。さらに、マッピングされたインスリンをZone-MPCにおける付加的な状態として使用することによって、過去の制御ムーブに関する情報が豊富になり、それによって、過剰投与の可能性が低減される。
【0037】
本開示は、ホルモン、サイトカイン、薬物又は別の因子などの生物学的物質を調節及び注射するための、「Zone-MPC」〔ここで、該Zone-MPCは、マッピングされた入力データを使用し、そして、線形差分個人化モデルによって自動的に調節される〕と称される薬物/生物学的因子注射プロセス及びシステムを提供する。範囲制御は、一般に、制御量(CV)を所定のゾーン内に維持するための制御器目標を有する特定の設定値がない制御対象に適用される。
【0038】
一実施形態では、本開示は、「Zone-MPC」〔ここで、該Zone-MPCは、マッピングされた入力データを使用し、そして、線形差分個人化モデルによって自動的に調節される〕に基づく人工的な膵臓β細胞を提供する。範囲制御は、一般に、制御量(CV)を所定のゾーン内に維持するための制御器目標を有する特定の設定値がない制御対象に適用される。範囲制御は、正常血糖ゾーンがないことよりも、むしろ、自然血糖設定値がないので、人工的な膵臓β細胞として極めて適している。さらに、Zone-MPCを使用することは、制御ムーブの低減をもたらし、これは、携帯用インスリンポンプのエネルギー効率を改善する。
【0039】
図10を参照すれば、本開示の実施形態のフローチャートが示されている。該フローチャートは、グルコース及びインスリンを対象としている。しかしながら、別の薬物及びホルモンなども本開示の方法及びシステムにおいて同様に処理し得るということは理解されるであろう。囲み線(10)に示されているように、インスリン食事のオープンループデータコレクションが得られる。該データは、被検者に食事を与えた後、インスリンのボーラス注射を施すことによって得ることができる。次いで、得られたデータを用いてインスリン食事レベルをマッピングする(囲み線(20))。囲み線(30)に示されているように、持続的な血糖測定が得られる。そのようなレベルは、任意の数のグルコースセンサーを用いて検出することができる。次いで、自動モデル識別公式(automatic model identification formula)を測定されてマッピングされたインスリン食事及びグルコース測定値に基づいて(複数の異なった自己回帰外因性(ARX)入力モデルから)識別する(囲み線(40))。次いで、そのモデルを、自己回帰外因性入力モデルを再最適化することによってさらに改善することができる(囲み線(50))。この最適化された自己回帰外因性入力モデルは、複数の線形状態を含み得る個人化線形差分モデルとして使用される(囲み線(60))。
【0040】
得られた線形差分モデル(囲み線(60))を、次いで、所定の臨床投与量ゾーン(例えば、図10B、囲み線(100))と組み合わせて、次の薬物/因子の送達時間及び投与量の評価及び決定を支持するために使用する(囲み線(90))。本明細書中で使用されている場合、「投与量ゾーン(dose zone)」は、特定の生物学的作用因子の下限血中濃度及び上限血中濃度を含んでいる。本開示の別の実施形態では、本開示の方法を用いて、血圧、酸素飽和度、乳酸塩及び温度などの代替的な生理学的変量をゾーン制御することができる。グルコースの場合、該投与量ゾーン又は「血糖ゾーン」は、目標とする血中グルコース濃度の上限レベル及び下限レベルを含んでいる。本開示の方法及びシステムを使用して、生物学的因子(例えば、グルコース)を「ゾーン」内に維持する。図10の囲み線(110)に示されているように、例えば、インスリンが被検者に送達された後、グルコースが測定され、並びに、現在及び過去の両方のインスリン、食事及び血糖値が評価される(囲み線(120)及び囲み線(130))。この情報は、Zone-MPCプロセスアルゴリズムにフィードバックされ(囲み線(90))、サイクルは繰り返される。
【0041】
当該プロセスの僅かに異なった描写が図10Cに示されている。この描写においては、被検者への次の生物学的作用因子の送達(例えば、薬物、ホルモン(例えば、インスリン)などの送達)(囲み線(160))の投与量及びタイミングを決定するために、制御器重量(囲み線(150))及びゾーン設定(囲み線(100))と組み合わされた線形差分モデル(囲み線(60))がZone-MPCアルゴリズム(囲み線(90))に供給される。
【0042】
フローチャートに示されているように、Zone-MPCモデルは、自己回帰外因性入力(ARX)モデル(ここで、該自己回帰外因性入力(ARX)モデルは、その予測能力によって選択され、次いで、その予測能力を向上させるために再最適化される)によって誘導される線形差分方程式に基づいている。当該Zone-MPCに関する線形差分方程式予測子の基礎として機能するARXモデルは、ARX-モデルの候補のカタログから選択する。種々のARX-モデルを固定化されたホライゾン全体に対するそれらの予測能力によって評価し、次いで、固定化されたホライゾン全体に対してより高い予測R2〔方程式(1)〕を与えるARX-モデルを再最適化して、Zone-MPC予測子である新規線形差分方程式を得る。
【0043】
方程式(1)は、R2指標を与え、ここで、
【数3】

【0044】
は、収集されたデータポイントのベクトルであり、
【数4】

【0045】
は、収集されたデータポイントの平均であり、及び、
【数5】

【0046】
は、予測値である。R2指標は、完全なモデル予測の場合には1に近づき、及び、一定の平均値よりも優れた予測を与えないモデルの場合には、0に近づく。
【数6】

【0047】
線形差分方程式は、過去の入力/出力離散記録を使用して未来の離散予測を生成する。例えば、方程式(2)は、時刻「k」において予測される出力「y」とそれぞれ過去の「p」及び「q」の出力及び入力の記録の間の関係を表している。
【数7】

【0048】
観察されたデータ
【数8】

【0049】
〔ここで、Nは、収集されたデータポイントの数である〕の存在下において、方程式(3)において公式化されているように、N個のデータ記録
【数9】

【0050】
と予測値
【数10】

【0051】
の間の誤差二乗和を最小にすることによって回帰ベクトルθ値を確立するために直線回帰を実施することができる。
【数11】

【0052】
過去の出力のリグレッサー
【数12】

【0053】
に対する回帰は、自己回帰として定義され、そのモデルは、ARXモデルと称される。
【0054】
ARX-モデルの出力次数、入力次数及び遅延の決定は、データ妥当性検証及び複雑さの要件(complexity consideration)に依存する。ARXモデルの識別は、妥当な次数及び遅延に基づいた研究者の決定によって初期設定される。次いで、次数と遅延の種々の結合組合せ(combinatory combination)によってARXモデルのプールを生成させ、各ARX-モデルを、校正データに対する予測能力及び典型的には妥当性検証データに対する予測能力によって、評価する。何らかのトレードオフをモデル予測能力とARX-モデルの複雑さ〔例えば、赤池情報量基準(AIC)〕の間で公式化することができる。しかしながら、識別のために収集されたデータの量が、最終的には、その識別を支配する。
【0055】
インビボ実験を最もよくシミュレートするために、データ収集プロトコルをFDAに認可されているUVa-/-U.Podava 代謝シミュレーターに適用した。データ収集プロトコル(図1)において、第1日ではルーチンに対する修正を規定しない。第2日と第3日は、両日とも、午前7時に、インスリンボーラスなしで25gの炭水化物(CHO)の朝食で開始し、その後、午前9時に、補正ボーラス;午後1時に、補正ボーラスと一緒に50gのCHOの昼食を摂らせる。午後5時に、補正ボーラスなしで15gのCHOの間食を与え、午後8時に、ボーラスなしで75gのCHOの夕食を与える。第4日及び第5日は、午前7時に、インスリンボーラスと同時に25gのCHOの朝食で開始し、次いで、正午に、50gの昼食を摂らせ、及び、午後2時に、インスリンボーラス投与する。午後8時に、インスリンボーラスなしで75gのCHOの夕食を与え、午後10時に、インスリンボーラスを投与する。第6日は、午前9時に、ボーラスを投与することにより、絶食条件下でのボーラスのみに対する応答について試験する。
【0056】
食事及びインスリンの入力のデータを2次伝達関数(方程式(4))によってマッピングして、識別の問題を克服する:大きな利得不確定性(large gain uncertainty)は、多くの場合接近した時刻に送達される食事とインスリンの反対の効果に起因する。食事とインスリンの利得を区別する能力を失うことは、制御に関する不充分なモデルをもたらし得る。しかしながら、2種類の異なった2次伝達関数を用いた入力データのマッピング(図2)は、入力データを分離し、引き離す。これにより、該モデルに関して回帰するための良好な期間が得られる。臨床での観察及び薬物動態学的/薬力学的データは、平均して、血糖に対するインスリンの効果は注射の30分後に観察されること、及び、血糖に対する食事の効果は20分後に観察されることを示唆している。この演繹的知識を使用して、下記2次伝達関数を設計した:
【数13】

【0057】
方程式(4)は、測定されたインスリン及び食事、それぞれ、I及びMをマッピングして新しい状態Imap及びMmapとするのに使用される伝達関数を表している。1〜4は、それぞれ、時定数1〜時定数4を表している。方程式(4a)は、時定数が30分、25分、10分及び45分に設定されている同様のモデルを示している。
【0058】
ARX-モデルリグレッサーは、通常、出力/入力データの1段階シフトによって設定され、その結果、時刻kにおける各予測は、時刻k-1までの記録された出力/入力データによって評価される。しかしながら、時刻kにおける予測出力は、特にサンプリング時間が比較的短い場合には、時刻k-1における出力の測定値と高い相関がある。これは、予測能力を失うARX-モデルをもたらす。
【0059】
示唆された識別手順に加えられるのは、ホライゾン予測最適化を使用してARXリグレッサーを調整することである。ホライゾン予測最適化は、確定した予測ホライゾン(PH)全体にわたる帰納的予測を最小化する。ホライゾン予測最適化は、1段階予測で開始してPH段階後の全体的な予測を含んでいる予測値の全体的なシーケンスを使用する。これは、PHサンプリング時間後の値のみを通常使用する一般的な別の最適化とは異なっている。ホライゾン予測最適化費用関数(方程式(6))は、記録された出力データyと帰納的予測yrecの間の正規化誤差二乗和を最小化することを試みる。ホライゾン予測最適化においては、一般的なARXモデリングにおいて実施される直線回帰とは異なって、各PHサイクルの後でベクトルyrecの値がアップデートされる。時刻kにおける予測
【数14】

【0060】
の値は、pまでの過去の予測k-1の関数であり、ここで、pは、オート-リグレッサーの次数である。
【数15】

【0061】
の過去の値は、PHの長さに対する各帰納的予測後のyの過去の値に等しくなるように設定される。結果は、
【数16】

【0062】
の長さをカバーする一組の帰納的予測セグメントであり、ここで、Nは、データ記録の数である。ホライゾン予測最適化に関する初期条件は、ワン-ステップ-アヘッドARX-モデル解であり、これは、即座に生成させることができる。さらに、該ホライゾン予測最適化に由来する新しい線形差分方程式に制約を適用する。モデルが不安定であることを防止するために、モデルが非物理的利得を有することを防止するために、又は、モデルが逆応答を有することを防止するために、及び、モデルが予測制御に適し得るように、以下の5つの制約を最適化に適用する:
1. 安定性に関して、以下の固有多項式
【数17】

【0063】
のルートは、全て、単位サークルの内部であり、ここで、
【数18】

【0064】
は、オートリグレッサーである。
【0065】
2. ネガティブインスリン利得要件
【数19】

【0066】
ここで、
【数20】

【0067】
は、インスリンリグレッサーである。
【0068】
3. ポジティブ食事利得要件
【数21】

【0069】
ここで、
【数22】

【0070】
は、食事リグレッサーである。
【0071】
4. インスリンにおける非逆応答
【数23】

【0072】
ここで、
【数24】

【0073】
は、方程式(5)によって定義される。
【0074】
5. 食事における非逆応答
【数25】

【数26】

【0075】
方程式(5)は、原点(origin)の片側にのみ要素を有しているベクトルが与えられた場合(即ち、全てポジティブ又は全てネガティブ)に0となるブール関数を表している。原点の異なる側の少なくとの2つの要素をを有しているベクトルが与えられた場合、該関数は1となる。
【0076】
方程式(6)は、ホライゾン予測最適化の費用関数Vを表しており、ここで、ydata(k)は、時刻kにおけるデータ記録であり、yrec(k)は、時刻kにおける帰納的予測である。Imap及びMmapは、それぞれ、マッピングされた、インスリンデータ記録及び食事データ記録である。p、q1及びq2は、それぞれ、出力(血糖)、インスリン及び食事の次数であり、並びに、d1及びd2は、それぞれ、インスリン及び食事のサンプリング時間における遅延である。αk、βk及びγkは、それぞれ、グルコース、インスリン及び食事のリグレッサーである。
【数27】

【0077】
方程式(7)は、3つの寄与〔予測ホライゾンP上の所望の出力経路(yrk+j)からの未来の出力経路(yk+j)偏差;制御ホライゾンM上の名目値(nominal value)usからの未来の入力(uk+j)偏差;及び、制御ホライゾンM上の制御ムーブ増分(Δuk+j)〕に関与するMPCフォーマットで使用される典型的な目的関数を表している。該目的関数の4つの成分のそれぞれの相対的シェアは、時間依存重みマトリックス(time dependent weight matrices)Qj、Sj及びRjによって扱う。最適化は、モデル制約下に(xk+jは、モデル状態変数である)、最大名目入力値及び最小名目入力値(umin、及び、umax)並びに最小制御ムーブ増分及び最大制御ムーブ増分(Δulow、及び、Δuup)に対する制約を受けて実施する。方程式(7)によって表される目的関数を用いた最適化の解は、ベクトル
【数28】

【0078】
である。
【0079】
種々のMPCアルゴリズムは、さらなるプロセス応答について明記するために4つのアプローチに分類することができる: 固定設定値、ゾーン、基準経路、及び、ファンネル。未来のプロセス応答のために固定設定値を使用することで、制御器が離調されない限り、大きな入力調節が可能である。ゾーン制御は、通常はソフト制約として定義される上限と下限によって範囲が限定されているゾーン内に制御量(CV)を維持するように設計される。一部のMPCアルゴリズムは、該CVへと至る望ましい応答経路(基準経路と称される)を定める。該基準経路は、通常、現在のCV状態から望ましい設定値へと至る定められた経路(define path)を表す。該基準経路制御は、該CVが定められた設定値に近づく場合、固定定値制御に戻る。ロバスト多変数モデル予測制御技術(Robust Multivariable Predictive Control Technology)(RMPCT, Honeywell Inc., 1995)は、CVを定められたゾーン内に維持しようと試みる;しかしながら、CVが該ゾーンの範囲外にある場合、ファンネルは、該CVをそのゾーン内に戻すように規定されている。
【0080】
Zone-MPCは、CVの特定の設定値が上限と下限によって範囲が定められているゾーンと比較して関連性が低い場合に適用される。さらに、ノイズ及びモデルミスマッチの存在下では、固定設定値を用いる実用的価値は存在しない。Zone-MPCについての詳細な説明は、Maciejowskiによって提供された。本発明者らのZone-MPCは、それぞれ予測されるCVが所望されるゾーンの内部又は外部にある場合に最適化重みをゼロと幾つかの最終値の間で切り替えることによってソフト制約を受ける固定された上限及び下限(図2)を定めることによって実行される。予測される残差は、一般に、所望されるゾーンの外部にあるCVと最も近い境界の間の差として定義される。
【0081】
Zone-MPCのコアは、ゾーン要件(zone consideration)を保持するその費用関数公式化の中に存在する。Zone-MPCは、MPCの任意の別の形態と同様に、過去のm入力/出力記録と最適化されることが必要な未来の入力
【数29】

【0082】
ムーブを使用する明示的モデルによって未来の
【数30】

【0083】
出力を予測する。しかしながら、特定の固定設定値に向かって努力する代わりに、最適化は、予測出力を、上限と下限によって範囲が定められているゾーンの範囲内に維持するか又は移動させようと試みる。
【0084】
図2は、血糖調節に適用されるZone-MPCを表している。血糖の固定された上限及び下限は、予め定められる。線形差分モデルを使用して、血糖動力学を予測し、最適化が、費用関数の中で定義される重みと制約の下で、未来の血糖のゾーンからの逸脱を低減させる。
【0085】
本発明の例において使用されるZone-MPC費用関数は、以下のように定義される:
【数31】

【0086】
ここで、Q及びRは、それぞれ、予測される出力及び未来の入力に対する一定の最適化重みであり、
【数32】

【0087】
は、許容される範囲を超える全ての予測出力状態の重ね合わせであり:
【数33】

【数34】

【0088】
は、全ての別の予測値をゼロに設定することによって、下限よりも低い全ての予測ポイントを収集し:
【数35】

【数36】

【0089】
は、全ての別の予測値をゼロに設定することによって、上限よりも高い全ての予測ポイントを収集する:
【数37】

【0090】
未来のCMは、インスリンの最大速度を達成するインスリンポンプの能力及びネガティブインスリン値を産する無能さによって、ハード制約を受ける。目的関数(方程式(8))は、制御ムーブ増分成分を無視することによって高速の制御ムーブメントを可能にする。
【0091】
インスリンの過剰投与とその結果としての低血糖症を防止するために、方程式(4)で表される2次入力伝達関数を再度使用して、Zone-MPCスキーマの中に人工的な入力メモリーを生成させる。インスリンの過剰送達を回避するために、任意の順次的なインスリン送達の評価は、インスリン作用の長さに対して過去に投与されたインスリンを考慮しなければならない。しかしながら、比較的低い次数を有する1状態線形差分モデルは、過去に投与された入力(インスリン)「メモリー」のメインソースとして出力(血糖)を使用する。モデルミスマッチ又はノイズ又は被検者のインスリン感受性の変化に直面して、これは、インスリンの不足又は過剰送達をもたらし得る。これは、マッピングされたインスリンと食事の入力に関する2つの付加的な状態を加えることによって軽減することができる。
【0092】
上記で論じたように、ARX-モデルは、マッピングされた入力を用いて識別した。方程式(12)に表されているように、インスリンと食事の測定値及び識別用に使用した伝達関数を1つの状態(グルコース)及び2つの入力(インスリン及び食事)を有している1つのARX-モデルの中に埋め込むことができる。
【数38】

【0093】
ここで、G、I及びMは、それぞれ、血糖値、インスリン投与及び食事を表している。αi、β1i及びβ2iは、モデル係数であり、d1及びd2は、それぞれ、インスリン及び食事の時間遅延であり、並びに、P、q1及びq2は、それぞれ、グルコース、インスリン及び食事の次数である。
【0094】
方程式(12)を使用して予測するために、P過去の測定値は、それぞれ、G並びにd1+q1及びd2+q2の過去のインスリン及び食事の測定値が必要である。しかしながら、Gは決定性差分方程式の結果である無限のメモリーを有しているが、入力メモリーは、制限された次数の過去の入力に制限される。例えば、インスリンにおける遅延d1は2回のサンプル時間に等しく、モデルにおけるインスリンの次数は3回のサンプル時間に等しく、該モデルは、先の5回のサンプル時間のみのインスリン投与を受けた。モデルミスマッチがないか又はノイズがないか又はインスリン感受性の変化がない完全な状態では、過去の入力はG動力学に含まれるであろう;しかしながら、実際には、これらの状態は、達成されそうにない。
【0095】
モデルの代替的な公式化(これは、非常に信頼性の高い入力メモリーをシステムに与える)は、方程式(13)で表される。
【数39】

【0096】
ここで、Imap及びMmapは、それぞれ、マッピングされたインスリン及び食事の値を表す新しい状態である。γi及びδiは、一組の係数に新しく加えられるものである。これらの新しい状態は、血中に吸収された後のインスリン及び食事を表す。
【0097】
方程式(13)は、マッピングされたインスリンと食事の入力(それぞれ、Imap、及び、Mmap)を付加的な状態として使用する方程式(12)に対する改善された公式化を表す。この新しい2つの状態は、過去の2つの新しい状態記録と過去の2つの入力記録を用いて評価される。過去の新しい状態記録を維持することで、G測定値と独立している無限の入力メモリーが可能となる。該状態は、各Zone-MPCサイクルの後でアップデートされ、それによって、過去の全ての入力影響を維持する。
【0098】
MPCに関して4つの主要な調整パラメータが利用可能である。第1に、予測ホライゾンPは、MPC費用関数によって使用される予測サンプルの数を示している固定された整数値である。Pは、ほぼ整定時間であるべきである。小さすぎるPを選択すると、価値のある動的応答を失う。他方では、大きすぎるPを選択すると、定常状態への動力学の影響が低減される。第2に、制御ホライゾンMは、最適化される制御ムーブを示す整数である。大きなMは、緩慢な制御応答を生じる;しかしながら、M=1を選択すると、非常に攻撃的な制御をもたらす。残りの2つのパラメータは、上記で記載したQとRである。4つのMPC調整パラメータに加えてZone-MPCを適用する場合、該ゾーンは、もう1つの調整変数として処理することができる。
【0099】
Zone-MPCの調整に影響することが見いだされた最も支配的な動力学的特性は、ARX-モデルの整定時間(ST)であった。整定時間は、ステップ入力に対する応答の95%を達成するために動的システムにかかる時間であると定義される。予測ホライゾンPは、個々の被検者モデルSTに対応する用に設定した。しかしながら、PとMの間の比率が変えられた場合(方程式(8))、出力偏差と入力偏差の間の相対コストも同様に変わる。
【0100】
ARXモデルに基づいたグルコースの予測が約3時間に限定されるということは留意すべきである。従って、長期整定時間を正確に補償するためには、制御ムーブ(R)に対する重みは、STの関数である。このようにして、出力と入力の重みの間のバランスは方程式(8)の中に保存される。さらに、3時間の予測に基づいたモデルの適合性は、Rに対する付加的なペナルティーとして使用される。
【数40】

【0101】
方程式(14)は、制御ムーブに対する調節された費用重み(cost weight)を表している。STは、サンプリング時間によって定義され、FITover three hoursは0より大きく且つ1より小さな値を有する推定され、そして、方程式(15)によって計算された。
【数41】

【0102】
ここで、
【数42】

【0103】
は、3時間にわたるARXモデル予測の収集を含んでいるベクトルであり、PHは、3時間に含まれているサンプリング時間の数であり、pは、オート-リグレッサーの次数である。Nは、データ値の総数であり、
【数43】

【0104】
は、データ値のベクトルであり、及び、
【数44】

【0105】
は、データ値の平均である。
【0106】
Q及びMは、それぞれ、1〜5の固定値として使用した。
【0107】
Zone-MPCは、食事のアナウンスがある場合とない場合の3種類の異なったモードにおける「最適な」オープンループ処理と比較して、正常血糖に近い血糖反応を維持することを達成する。食事の不確かさに直面して、アナウンスされたZone-MPCは、アナウンスされないZone-MPCと比較してほんの僅かに改善された結果を与えた。CHOの見積もりにおける使用者の誤り及び当該システムと相互に作用する必要性を考慮した場合、アナウンスされないZone-MPCは、魅力的な選択肢である。Zone-MPCは、制御器の離調を必要とせずに固定された定値制御上の制御ムーブのばらつきを低減させる。このことは、必要とされるときに素早く作動する能力をZone-MPCに与え、正常血糖範囲内における不要な制御ムーブを低減させる。
【実施例】
【0108】
9種類の制御実験を、FDAによって認可されているUVa-/-U.Padova代謝シミュレーターを用いて、それぞれ、午前7時、午後1時及び午後8時に75g、75g及び50gのCHOの3回の食事のシナリオに従って、10人の成人被検者に対してコンピューターを用いて実施する。全てのMPC実験において、予測出力に対する重みQは1に設定し、未来の制御ムーブに対する重みRは方程式(14)によって自動的に設定させる。
【0109】
Zone-MPCは、40%の不確かさを有するアナウンスされていない食事及びアナウンスされている食事をそれらの名目値で使用して、3種類の異なったモードで試験した。それぞれ、午前7時、午後1時及び午後8時に75g、75g及び50gの炭水化物(CHO)を摂らせるシナリオに従って、10人の成人被検者をコンピューターを用いて評価した。Zone-MPCの結果は、予め調整した「最適な」オープンループ処理の結果と比較する。9種類の実験は、以下のとおりに実施した:
実験1: 予め調整したビルトインオープンループ処理を名目食事値で適用する。
実験2: Zone-MPCの限界を80mg/dL〜140mg/dLの間に設定し、及び、食事はアナウンスしない。
実験3: Zone-MPCの限界を100mg/dL〜120mg/dLの間に設定し、及び、食事はアナウンスしない。
実験4: MPCの設定値110mg/dL、及び、食事はアナウンスしない。
実験5: Zone-MPCの限界を80mg/dL〜140mg/dLの間に設定し、及び、名目食事をアナウンスする。
実験6: Zone-MPCの限界を100mg/dL〜120mg/dLの間に設定し、及び、名目食事をアナウンスする。
実験7: MPCの設定値110mg/dL、及び、名目食事をアナウンスする。
実験8: 予め調整したビルトインオープンループ処理について、摂られた食事の値と-40%のミスマッチでアナウンスされた食事を用いて試験する。
実験9: Zone-MPCの限界を80mg/dL〜140mg/dLの間に設定し、摂られた食事の値と-40%のミスマッチでアナウンスされた食事を用いる。
【0110】
図5は、UVaシミュレーターの被検者#5に対して実施された試験を表している。図5においては、実験1〜実験4は、それぞれ、灰色の三角並びに赤色、青色及び黒色の丸で表されている。図5は、Zone-MPCの範囲が詰まっていればいるほど制御ムーブの変異が大きくなるということを示している。図5において、実験1は、1回目の食事に対するMPC実験よりも有利であることを示している;しかしながら、この有利点は、試験の残りの部分を通して重複している試験初期設定の結果である。
【0111】
図6は、10人のUVa-/-U.Padova被検者全員に対する、それぞれ、実験1〜実験4、(a)〜(d)の集団の結果を示している。実験1、実験2、実験3及び実験4の平均グルコース値は、それぞれ、180mg/dL、171mg/dL、160mg/dL及び155mg/dLであって、平均標準偏差(STD)は、27mg/dL、22mg/dL、23mg/dL及び23mg/dLであり、最大値は、314mg/dL、291mg/dL、280mg/dL及び274mg/dLに達し、最小値は、110mg/dL、85mg/dL、83mg/dL及び76mg/dLに達する。実験1は、最も高い平均STD及び最大値を示しており、このことは、「最適な」オープンループ処理が劣っていることを示している。実験2〜実験4に関しては、範囲が狭くなるにつれて、最小値及び最大値が低下している。しかしながら、実験2のSTDが最も低く、このことは、10人の被検者の間の制御性能のばらつきが減少していることを暗示しており、そして、より高い信頼性を示している。
【0112】
図7は、UVa-/-U. Padova代謝シミュレーターの被検者#5に対する実験1、実験5、実験6及び実験7の間の比較を示しており、そして、それぞれ、灰色の三角並びに赤色、青色及び黒色の丸で示されている。図7に示されているように、Zone-MPCの範囲が狭くなればなるほど、制御シグナルの変位が大きくなる。食事のアナウンスが実施された場合(実験5、実験6及び実験7)、Zone-MPCは、より速い食事外乱拒絶によって、1日を通してオープンループ処理よりも優れた調節を提供している。
【0113】
図8は、10人のUVa-/-U.Padova被検者全員に対する、それぞれ、実験1、実験5、実験6及び実験7、(a)〜(d)の集団の結果を示している。実験1、実験5、実験6及び実験7の平均グルコース値は、それぞれ、180mg/dL、152mg/dL、141mg/dL及び136mg/dLであって、平均STDは、27mg/dL、28mg/dL、29mg/dL及び29mg/dLであり、最大値は、314mg/dL、267mg/dL、262mg/dL及び258mg/dLに達し、最小値は、110mg/dL、66mg/dL、62mg/dL及び59mg/dLに達する。アナウンスされた食事の結果は、平均値、最大値及び最小値の低下であるということを理解することができる。しかしながら、最小値を低下させることは、さらに、特に実験7に関して、低血糖イベントの可能性を増加させる。
【0114】
図9は、実験2、実験8及び実験9を用いて、10人のUVa-/-U. Padova被検者に対する集団の応答を表している。実験2、実験8及び実験9の平均グルコース値は、それぞれ、171mg/dL、205mg/dL及び161mg/dLであって、平均STDは、22mg/dL、36mg/dL及び24mg/dLであり、最大値は、291mg/dL、364mg/dL及び274mg/dLに達し、最小値は、85mg/dL、110mg/dL及び85mg/dLに達する。実験8は、不確かさに直面して、オープンループ処理を使用することの明らかな不利点を示している。実験8は、300mg/dLを超える極端なグルコース値を有する長時間の高血糖になる。実験2と実験9を比較した場合、食事をアナウンスすることの有利点は、不確かさに直面して低下し、そして、当該2つの実験は、類似した性能指数に達する。
【0115】
表1.9種類の全ての実験における10人の被検者に関する180mg/dLを超えている時間(TO180[分])及び低血糖イベントの数(HYPO#[-])の結果の概要。上記で述べたように、実験8(オープンループ 食事不確かさ40%)は、10人全ての被検者に関して、180mg/dLを超えている最も長い時間(分)を示している。被検者#5は、実験7に従って唯一の低血糖イベントを経験している。実験7は、さらにまた、全ての被検者に関して、180mg/dLを超えている持続時間が最も短い。
【表1】

【0116】
本明細書中に記載されているZone-MPCは、FDAによって認可されているUVa-/-U. Padova代謝シミュレーターで評価した。制御は、新規アプローチにおいてインスリンと食事の入力を過減衰2次伝達関数でマッピングすることにより確認されたARX-モデルに基づいていた(インスリン以外のマッピングされた生物学的因子も同様に使用することができることは理解されるであろう)。該マッピングされた入力は、インスリン投与に対するより大きなメモリーを可能とするZone-MPC公式化における付加的な状態変数として使用される。
【0117】
Zone-MPCは、食事の不確実さを伴うアナウンスされた食事とアナウンスされていない食事を処理する能力を示した。Zone-MPCは、「最適な」オープンループ処理と比較して重要な利点を示した。さらに、Zone-MPCは、定値制御と比較して最少の性能損失で制御ムーブのばらつきを低減させる。さらに、騒々しい連続グルコースモニタリング(CGM)に直面してポンプの活動を弱める能力がZone-MPCによって示されており、これは、より安全なインスリン送達をもたらし、また、電力排出を最小限度にする。個人化Zone-MPCは、完全に自動化された人工的な膵臓β細胞の完璧な候補であるか、又は、別の薬物若しくはホルモンの送達システムの完璧な候補である。
【0118】
Zone-MPCは、固定設定値が完全には定められない場合に適用され、そして、制御変数の目標はゾーンとして表され得る。正常血糖は、通常、範囲として定められるので、Zone-MPCは、人工的な膵臓β細胞に関する制御戦略である。
【0119】
一実施形態では、本開示の装置(apparatus)/装置(device)は、データ通信インタフェース、そのデータ通信インタフェースに動作可能に連結された1つ以上のプロセッサ、1つ以上のプロセッサによって実行されたときにその1つ以上のプロセッサに輸液装置からのデータを受けさせる命令を格納するメモリー、及び、本明細書中に記載されているZone-MPC法を利用して情報を加工し、生物学的作用因子(例えば、インスリン)を被検者に送達する検体モニタリング装置を含んでいる。さらに、その上に具体的に表現されたプロセッサが読み取り可能なコードを有している1つ以上の記憶装置〔これは、例えば、PDA、例えば、iPHONE、又は、Bluetoothが可能な別の装置などを包含する〕も使用することができる。
【0120】
上記で記載されているさまざまなプロセス(これは、送達装置、制御器ユニット及び検体モニタリングシステムによって実施されるプロセスを包含する)は、複合的なシステムのモデリングを可能とするオブジェクト指向言語を用いて開発されたコンピュータープログラムとして具体的に表現され得る。本開示の方法を実施するのに必要とされるソフトウェアは、送達装置、制御器ユニット、データ端末及び/又は検体モニタリングシステムのメモリー又は記憶装置の中に格納することができ、そして、1つ以上のコンピュータープログラム製品を包含し得る。
【0121】
多くの種類のさまざまな検体測定装置(例えば、血糖値計(glucose meters))及び輸液ポンプシステムが当技術分野において知られている。例えば、Diabetes Forecastは、消費者測定装置及びポンプシステムを列挙している年1回の刊行物を発行している。これらのシステムは、いずれも、センサーデバイス又は輸液システムに本開示の方法を実施させるための制御器又は計算機命令を含み得る。
【0122】
さまざまな特定の実施形態について例証し、説明してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくさまざまな変更を加えることが可能であるということは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に対して薬物又は生物学的作用因子を連続的にモニター及び送達する方法であって、
被検者に関する薬物又は生物学的作用因子の血中濃度に関連する値を得ること;
そのデータを伝達関数を用いてマッピングすること;
複数の状態を含んでいる線形差分モデルを作ること;
被検者体内の薬物又は生物学的作用因子に関する規定値ゾーンを得ること;
線形差分モデルと規定ゾーンを用いて予測される薬物又は生物学的作用因子の値に基づいて薬物又は生物学的作用因子の次の投与薬量及び/又は送達の時間を計算すること;
計算された次の投与に基づいて被検者に薬物又は生物学的作用因子を送達すること;
を含んでいる、前記方法。
【請求項2】
前記薬物又は生物学的作用因子がインスリンである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記数値データが、インスリン濃度及び血糖値を含んでいる、請求項2の方法。
【請求項4】
前記方法が、糖尿病を治療する、請求項1の方法。
【請求項5】
値を得ることが、被検者に関するインスリン及び食事のデータ値並びに連続グルコースモニタリング(CGM)データ値を得ることを含んでいることを含み;
伝達関数:
【数1】

〔ここで、τは、測定の時点である〕
を用いてインスリン(I)データ値と食事(M)データ値をマッピングして、新しい状態Imap及びMmapを得ること;
線形差分モデルを作ることが、
【数2】

〔ここで、γi及びδiは、それぞれ、血中に吸収された後のインスリン及び食事に関する重み因子を表す〕
を含んでいる線形差分モデルを作ることを含み;
規定値ゾーンを得ることが、被検者に関する所定の血糖ゾーンを得ることを含み;
線形差分モデルと所定の血糖ゾーンを用いて予測される血糖値に基づいて次のインスリン投与を計算すること;
計算された次のインスリン投与に基づいて被検者にインスリンを送達すること;
を含む、請求項2、3又は4の方法。
【請求項6】
前記インスリンの送達が、時間的に変動し、及び、投与量によって変わる、請求項5の方法。
【請求項7】
前記インスリンの送達が、持続注入であるか、又は、不連続注入である、請求項5の方法。
【請求項8】
前記次の投与が、薬物又はインスリンを送達するポンプ又は装置で実施される、請求項1〜5の方法。
【請求項9】
前記次の投与が、コンピューター制御されている埋込型の薬物ポンプ又はインスリンポンプで実施される、請求項1〜5の方法。
【請求項10】
前記インスリンが、インスリン又はインスリン類似体を含んでいる、請求項5の方法。
【請求項11】
各食事の後の最大血糖値が、血糖ゾーンの範囲内に維持される、請求項5の方法。
【請求項12】
前記CGMデータが、一時的なグルコース測定値又はセルフモニタリング測定値である、請求項5の方法。
【請求項13】
前記グルコース測定値が、皮下で、静脈内で、腹腔内で、又は、非侵襲的に得られる、請求項5の方法。
【請求項14】
前記CGMデータが、埋込グルコースセンサー、光学的グルコースセンサー、酵素的グルコースセンサー及びフィンガースティックグルコースセンサーから本質的になるセンサーの群から選択されるセンサーで得られる、請求項5の方法。
【請求項15】
前記薬物、生物学的作用因子又はインスリンが被検者に自動化ポンプで送達される、コンピューターによって実施される請求項1〜14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記薬物、生物学的作用因子又はインスリンが被検者に自動化ポンプで送達される、請求項1〜14のいずれか1項の自動化された方法。
【請求項17】
請求項5〜14の自動化された方法を実施する制御器を含んでいるインスリンポンプシステムであって、インスリン又はインスリン類似体が被検者にポンプで送達される、前記インスリンポンプシステム。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかのコンピューターで実施される方法、自動化された方法又はポンプシステムであって、前記コンピューター又はシステムが、請求項1〜14の方法に従ってポンプを機能させるための命令を含んでいるコンピューターが読み取り可能な記憶媒体を含んでいる、前記コンピューターで実施される方法、自動化された方法又はポンプシステム。
【請求項19】
センサー、ポンプ若しくはPDAで実施されるか、又は、ウェブベースアプリケーションを介して実施される、請求項1〜14の方法。

【図1】
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【図2A−B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10A−B】
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【図10C】
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【公表番号】特表2013−519451(P2013−519451A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553057(P2012−553057)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024640
【国際公開番号】WO2011/100624
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.iPHONE
【出願人】(500445295)ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア (28)
【出願人】(512208671)サンサム ダイアベティス リサーチ インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】