説明

生理活性物質を含む脂質粒子、その調製法及び使用法

本発明は、疎水性の生理活性物質と逆六方晶相形成性の脂質との両親媒性物質で被覆された錯体を含む非リポソーム製脂質粒子と、その調製法及びキットとに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年12月14日に出願された米国仮特許出願第60/632,832号に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質粒子錯体は、数多くの生理活性物質及び造影剤の治療上及び診断上の有効性を高めることのできる薬物送達系として長きにわたって認識されてきた。多くの様々な抗生物質及びX線造影剤を用いた実験では、生理活性物質及び造影剤を脂質錯体で封入することにより、より良好な治療活性又は良好な造影が高いレベルの安全性で達成できることが示されている。
【0003】
基本的には、今日までのところ、薬物送達に適しているとして三種類の主な粒子状の脂質−水系があり、具体的には例えばリポソームなどのラメラ中間相、ミセル、逆ミセル及び混合ミセルを含むミセル・ベースの相、及び、マイクロ乳液を含む多種の乳液や、ISCOMなどの新規な担体などに基づくものである (Morein 1988) (これらの系に関する概略的な文章はPharmaceutical Dosage Forms, Disperse Systems 1988である)。後者の系は、今世紀初頭から静脈内栄養の代わりに、そしてフロイント・アジュバントとして知られるアジュバント系として、利用されてきた。これらはそれぞれ水中油 (O/W) 及び油中水 (W/O) 型である。リポソームはその発見以来、多様な経路及び薬物の薬物送達系として広範に調査されてきた。新規なコロイド状薬物担体系の開発は集中的に活動が行われている研究分野であり、新たな系、特に新たな乳液ベースの系が近い将来、現れる可能性が高い。脂質ベースの賦形剤はいくつかの異なる形態を採ることができ、例えば通常の又は逆ミセル、マイクロ乳液、リポソーム、水中油、油中水型多層乳液などの多様な形を含む単層、多層の乳液、懸濁液及び固形結晶などを採ることができる。加えて、非イオン性界面活性剤から形成される所謂ニオソームも薬物賦形剤として調査されてきた。薬物送達及びバイオ技術におけるこれらの賦形剤の使用はよく文献化されている (Mulley 1974, Davis et al. 1983, Gregoriadis 1988a, Liebermann et
al 1989)。特に薬物送達の分野では、脂質ベースの薬物送達系、特に分散系の使用に対し、製薬業がより効力があり特異的で、従ってより細胞障害性の高い薬物を開発するようになるにつれて、関心が高まってきた。
【0004】
リポソームは多種の方法で製造することができる(レビューについては例えば Cullis et al. (1987)を参照されたい)。Banghamの手法(J. Mol.
Biol. (1965))では通常の多層ベシクル(MLV).ができる。Lenk ら(米国特許第4,522,803号、第5,030,453号及び第5,169,637号)、Fountain ら(米国特許第4,588,578号)及びCullis ら(米国特許第4,975,282号)は、溶質をそれらの水性区画のそれぞれの中に実質的に均一に層間分布させて有する多層リポソームを作製する方法を開示している。Paphadjopoulos らは米国特許第4,235,871号が逆相蒸発法によるオリゴラメラ状リポソーム調製法を開示している。
【0005】
単層ベシクルはCullis ら(米国特許第5,008,050号)及びLoughrey ら(米国特許第5,059,421号))の押出法などの数多くの技術により、MLVから作製することができる。音波破砕及び均質化を、より大型のリポソームからより小型の単層リポソームができるように用いることができる(例えばPaphadjopoulos et al. (1968); Deamer and Uster (1983); and Chapman
et al. (1968)を参照されたい)。
【0006】
Bangham ら. (J. Mol. Biol., 1965, 13:238-252) の当初のリポソーム調製法は、有機溶媒にホスホリピドを懸濁させた後、乾燥するまで蒸発させて、反応容器上にホスホリピドの薄膜を残すという方法に関する。次に、適量の水相を加え、その混合液を「膨潤」させて、その結果できた、多層ベシクル(MLV)から成るリポソームを機械的手段により分散させる。この調製法は、Papahadjopoulos ら (Biochim.
Biophys, Acta., 1967, 135:624-638)の解説した小型の音波破砕された単層ベシクルと大型の単層ベシクルの開発の基礎となるものである。
【0007】
例えば逆相蒸発法、注入法、及び界面活性剤希釈法など、大型の単層ベシクル(LUV)を作製する技術を用いてリポソームを作製することもできる。リポソームを作製するこれら及び他の方法のレビューは、引用をもってその関連部分をここに援用することとする文献Liposomes, Marc Ostro, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1983、第1章に見られよう。更に、引用をもってその関連部分をここに援用することとするSzoka,
Jr. et al., (1980, Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9:467)も参照されたい。
【0008】
ベシクルを調製するために用いられる他の技術には、逆相蒸発ベシクル(REV)を形成するもの、Papahadjopoulos
らの米国特許第4,235,871号がある。用いてもよい別のクラスのリポソームは、実質的に同等なラメラ溶質分布を有することを特徴とするものである。このクラスのリポソームは、Lenkらの米国特許第4,522,803号が定義する通りの安定なプルリラメラ(原語:plurilamellar)・ベシクル(SPVL)と命名されており、その中にはFountainらの米国特許第4,588,578
号が解説する通りの単相性ベシクルや、上述したような凍結解凍される多層ベシクル (FATMLV) がある。
【0009】
コレステロールヘミスクシネートなどの多種のステロール類及びそれらの水溶性誘導体がリポソームを形成するために用いられてきた;具体的には1988年1月26日発行のJanoff らの米国特許第4,721,612号、標題「Steroidal Liposomes.」を参照されたい。Mayhew らは、1985年3月14日に公開されたPCT公報 WO 85/00968で、アルファ-トコフェロール及びそのいくつかの誘導体を含むリポソーム中に薬物を封入することにより、それらの毒性を減らす方法を解説した。更に、多種のトコフェロール及びそれらの水溶性誘導体がリポソームを形成するために用いられてきており、例えば1987年4月23日に公開されたJanoff らのPCT公報87/02219号、標題「アルファ-トコフェロールベースのベシクル」を参照されたい。
【0010】
リポソーム−薬物送達系においては、薬物などの生理活性物質をリポソーム内に捕らえた後、治療しようとする患者に投与する。例えば Rahman らの米国特許第3,993,754号;Searsの米国特許第4,145,410号;Paphadjopoulosらの米国特許第4,235,871号;Schneiderの米国特許第4,224,179号;Lenk らの米国特許第4,522,803号;及びFountain らの米国特許第4,588,578号を参照されたい。代替的には、生理活性物質が親油性である場合、それを脂質二重層に結合させてもよい。
【0011】
リポソーム製脂質錯体は薬物送達系について広範に研究されてきたが、非リポソーム製の脂質錯体はあまり注目されてこなかった。このような非リポソーム製脂質錯体は、例えば(1)フリーズ−フラクチャー電子顕微鏡写真 (Deamer et al., Biochim. Biophys. Acta, 1970, 219:47-60)で非リポソーム製の錯体を示すこと;(2)捕獲される容積測定 (Deamer et al.,
Chem. Phys. Lipids, 1986, 40:167-188)が基本的にゼロの被捕獲容積を示し、従って被リポソーム製であることを示すこと;(3)示差走査熱分析 (DSC) (Chapman, D., in: Liposome Technology, Gregoriadis, G., ed.,
1984, CRC Press, Boca Raton)が、脂質二重層前遷移相又は主遷移のいずれも示さないこと;(4)31P-NMRスペクトル (Cullis et al., 1982 in: Membrane
Fluidity in Biology, Academic Press, Inc., London & N.Y.)が高度に固定した脂質を示唆すること(幅広い等方性の);及び(5)X線回折データ
(Shipley et al., in: Biomembranes, 1973, Chapman, D. and Wallach, D., eds., Vol
2:1, Academic Press, Inc., London & N.Y.)がゲル相脂質を示すこと、により特徴付けられる。これらの系に更に特徴的なのは、密度勾配遠心分離法で証左される、脂質との薬物の完全な結合である。この技術では、勾配を高速(約230,000×g)で約24時間、遠心分離させる。これにより、勾配中のすべての成分がそれらの平衡密度位置に確実に達することになる。これらの系の溶出プロファイルでは、薬物及び脂質のピークが重なっていることが示され、従って薬物のすべてが脂質に結合していることが示唆される。
【0012】
疎水性薬物は一般に、従来のホスホリピド製リポソームに充填することは難しい。なぜならそれらは、ホスホリピド製リポソーム膜に取り込まれるよりも結晶する傾向があるからである。このように、非リポソーム製薬物送達系は、疎水性薬物を調合するためのより将来性ある方法である。
【0013】
米国特許第6,406,713号は、25モルパーセント乃至約50モルパーセントの薬物を用いた場合に非リポソーム製である高い薬物対脂質錯体(HDLC)を開示している。しかしながら、より高い薬物対脂質比も有益であろう。
【0014】
米国特許第5,531,925 号は、逆立体液晶相、逆六方晶液晶相、又は均質L3相から選択される内側の非ラメラ性リオトロピック液晶相と、ラメラ状結晶相、ラメラ状液晶相、又はL3相から選択される表面相とを有する非リポソーム製粒子を開示している。高い薬物充填レベルに対応でき、好ましい送達プロファイルを示すことのできる新規な特性を持つ新しい形の脂質粒子が求められている。
【0015】
発明の概要
部分的には、本発明は、疎水性の生理活性物質と逆六方晶相形成性の脂質とから成る、両親媒性物質で被膜された錯体を含む脂質粒子を特徴とする。好適な疎水性生理活性物質には、パクリタキセルなどのタキサン、アンホテリシンBなどの癌治療化合物、カンプトテシン、及びシスプラチンなどのプラチナ化合物がある。
【0016】
好適な逆六方晶相形成性脂質には、ホスファチジルエタノールアミン (PE)、例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン (DMPE)、又はジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン (DPPE)がある。
【0017】
好適な両親媒性物質には、ホスファチジルコリン
(PC)、ホスファチジルグリセロール (PG)、ホスファチジルセリン (PS)、ホスファチジルエタノールアミン (PE)、ホスファチジルイノシトール
(PI)、リン酸 (PA)、スフィンゴミエリン、ガングリオシド、lysoPC、PEG-脂質、界面活性剤、又はこれらの組合せ、がある。
【0018】
部分的には、本発明は、脂質粒子を調製する方法や、当該疾患又は状態を治療するために有用な疎水性生理活性物質を含む脂質粒子を治療上有効量、患者に投与するステップを含む、前記患者の状態又は疾患を治療する方法を特徴とするものである。
【0019】
本発明の脂質粒子を調製する好適な方法には、疎水性の生理活性物質と、逆六方晶相形成性の脂質との混合物を脱イオン水中で音波破砕した後、両親媒性物質を添加し、乳濁した懸濁液が形成されるまで更に音波破砕するステップを含む。更なる実施態様では、その結果できる脂質粒子を分画して特定のパラメータの粒子を得てもよい。
【0020】
別の実施態様では、本発明の脂質粒子を注入プロセスにより形成することができる。このプロセスでは、疎水性の生理活性物質と逆六方晶相形成性の脂質とを非水性溶媒中で同時溶解させて水溶液中に注入した後、非水性溶媒を除去する。当該の両親媒性物質を非水性溶媒に溶解させ、水溶液中に注入した後、非水性溶媒を除去する。別々に調製されたこれら2つの懸濁液を一緒に混合し、音波破砕する。更なる実施態様では、その結果できる脂質粒子を分画して特定のパラメータの粒子を得てもよい。
【0021】
部分的には、本発明は、本発明の脂質粒子とその使用に関する指示とを含むキットを特徴とする。
【0022】
本発明のこれらの実施態様、他の実施態様、並びにそれらの特徴及び特性は以下の解説、図面及び請求の範囲から明白であろう。
【0023】
発明の詳細な説明
定義
便宜上、本発明を更に解説する前に、明細書、実施例及び付属の請求の範囲で用いられたいくつかの用語をここに集める。これらの定義は本開示の他の部分を参考に読まれねばならず、また当業者の理解する通りに理解されねばならない。そうでないと定義しない限り、ここで用いられた全ての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0024】
冠詞「一つの(原語:“a”)及び「一つの(原語:”an”)」は、ここでは、この冠詞の文法上の目的語の一つ又は二つ以上(即ち少なくとも一つ)を言うために用いられている。例を挙げると、「ある一つの要素」とは、一つの要素又は二つ以上の要素を意味する。
【0025】
用語「両親媒性物質」は、ここでは、極性で水溶性の基と、非極性で水不溶性の基の両方を含有するいずれかの物質を意味するために用いられている。
【0026】
用語「生物学的利用能のある」は当業で公知であり、投与先の対象又は患者にとってそれ、もしくはその投与量の一部分が吸収される、取り込まれる、又は生理学的に利用可能になるような本発明の形を言う。
【0027】
用語「含む(原語:comprise)」及び「含む(原語:comprising)」は、広い意味で付加的な要素を含めてもよいことを包含して用いられている。
【0028】
用語「疎水性の生理活性物質」とは、ここで用いられる場合、その培地の反応条件下で、水などの極性溶媒中で低い可溶性を有するいずれかの生理活性物質を言う。反応条件の例には、pH、温度、及び濃度がある。従って、疎水性物質には、特定のpH又は温度下では高い可溶性を有するが、用いられるpH又は温度下では低い可溶性を有するような物質が含まれよう。疎水性の生理活性物質の非限定的な例には、ここで用いられる反応条件下ではプラチナ錯体がある。
【0029】
用語「含む」は、ここでは「限定はしないが、含む」を意味するために用いられている。「含む」及び「限定はしないが、含む」は交換可能に用いられている。
【0030】
文言「逆六方晶相形成性の脂質」は、逆六方晶相を形成することのできるいずれかの脂質を意味するためにここで用いられている。一般的には、ホスホリピドが逆六方晶相を形成することができる。いくつかのホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジル酸 (PA)、及びホスファチジルセリン (PS) は高温条件下(>95 ℃)で逆六方晶相を形成することができ、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE) などのホスファチジルエタノールアミン (PE)は、より一般的な室温条件下で逆六方晶相を形成する。ある実施態様では、逆六方晶相形成性の脂質とは、室温で逆六方晶相を形成することのできる脂質を言う。これらの脂質は室温よりも低い相転移温度(即ち、ラメラ相から逆六方晶相への転移が起きる温度)を有するであろう。別の実施態様では、逆六方晶相形成性の脂質は脂肪酸の鎖を含む。
【0031】
「患者」、「対象」又は「ホスト」はヒトでも、又はヒト以外の動物でもよい。
【0032】
用語「薬学的に許容可能な塩」は当業で公知であり、本発明の組成物に含有されるものなどを含む、化合物の比較的に非毒性の無機及び有機酸添加塩を言う。
【0033】
用語「薬学的に許容可能な担体」は当業で公知であり、身体のある器官又は部分から身体の別の器官又は部分へと当該組成物又はその成分を運ぶ又は輸送することに関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、医薬品添加物、溶媒又は封入剤などの薬学的に許容可能な物質、組成物又は賦形剤を言う。各担体は、当該組成物にとって適合性があり、かつ患者にとって有害でないという意味において許容可能でなければならない。薬学的に許容可能な医薬品添加物として役立つであろう物質のいくつかの例には:(1)乳糖、ブドウ糖及びショ糖などの糖類;(2)コーンスターチ及びいもでんぷんなどのでんぷん類;(3)セルロース、及び、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び座薬用ろうなどの医薬品添加物;(9)ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及びダイズ油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)無発熱源水;(17)等張の生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)医薬調合に用いられる他の非毒性適合性物質、がある。
【0034】
用語「予防的」又は「治療的」処置は当業で公知であり、当該組成物のうちの一つ以上をホストに投与することを言う。望ましくない状態(即ち、ホスト動物の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床上の発現前にそれが投与されるのであれば、その処置は予防的であり、即ちそれはその望ましくない状態の発症からホストを防御するものであり、他方、望ましくない状態の発現後に投与されるのであれば、その処置は治療的である(即ち、それは既存の望ましくない状態又はその副作用を弱める、改善する又は維持することを目的とする)。
【0035】
文言「治療的効果」は当業で公知であり、薬理学的に活性な物質により引き起こされる、動物、特に哺乳動物、そしてより具体的にはヒトにおける局所的又は全身の効果を言う。このようにこの用語は、動物又はヒトにおける疾患の診断、治癒、緩和、治療又は防止に、あるいは、望ましい肉体的又は精神的な発達及び/又は状態の促進に用いられることを意図したいずれかの物質を意味する。文言「治療上有効量」とは、いずれかの処置に当てはまる妥当な利益/リスク比で何らかの所望の局所的又は全身的効果を生ずる、このような物質の量を意味する。このような物質の治療上有効量は、治療しようとする対象及び疾患状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重篤度、投与の態様等、当業者が容易に判断することのできる事項に依って様々であろう。
【0036】
用語「治療する」は当業で公知であり、いずれかの状態又は疾患の少なくとも一つの症状を治癒又は緩和することを言う。
【0037】
上記の定義は、本開示の他の箇所を参考に読まれ、また当業者が理解する通りに理解される。これらはいずれかの考えられる均等物を限定することは意図していない。上記の脂質粒子、サブユニット及び他の組成物の考えられる均等物には、その他の点ではそれに相当すると共に、その全体的特性(例えば生体適合性など)を有するような物質であって、このような分子がそれに意図された目的を果たす上での効験に悪影響を与えないような一箇所以上の簡単な置換基変更がなされている物質が含まれる。概略的には、本発明の化合物は、下に解説するものなどの概略的反応スキームに示された方法、又は、その改良法により、容易に入手可能な開始物質、試薬及び従来の合成法を用いて調製できよう。これらの反応においては、それ自体は公知であるがここで言及していないバリアントの利用も可能である。
【0038】
疎水性の生理活性物質
疎水性の生理活性物質は、ここで開示する脂質粒子送達系において固有の役割を果たす。その存在が、脂質粒子の形成に必要である。疎水性の生理活性物質の非存在下におけるプラセボ脂質粒子を作製しようという試みは不成功だった。疎水性の生理活性物質の、逆六方晶相形成性の脂質のうちの疎水性部分と錯体形成して、ここで開示された脂質粒子の形成を両親媒性物質の存在下で可能にする構造ができると考えられる。
【0039】
疎水性の生理活性物質は、用いた反応条件下で水性環境中の可溶性が低ければいずれの生理活性物質であってもよい。本組成物中に存在させ得る疎水性の生理活性物質と、疾患の治療における当該組成物の使用のいくつかの具体的な例には:スルホンアミド、例えばスルホンアミド、スルファメトキサゾール及びスルフアセトアミド;特にスルファメトキサゾールと組み合わせたトリメトプリム;ノルフロキサシン及びシプロフロキサシンなどのキノリン;ペニシリンG、ペニシリンVなどのペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、及びピペラシリン、セファロスポリンCなどのセファロスポリン、セファロチン、セフォキシチン及びセフトアジジムを含むベータ-ラクタム化合物、イミペネム、及びアズトレオナムなどの他のベータ-抗生物質;クラブラン酸などのベータラクタマーゼ阻害剤;ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ネオマイシン、カナマイシン及びネチルミシンなどのアミノグリコシド;クロルテトラサイクリン及びドキシサイクリンなどのテトラサイクリン;クロラムフェニコール;エリスロマイシンなどのマクロライド;又は、抗細菌感染、そして場合によっては抗カビ感染用のクリンダマイシン、ポリミキシン、及びバシトラシンなどのその他の抗生物質;アンフォテリシンB、ナイスタチン、及びハミシンなどのポリエン抗生物質;フルシトシン;イミダゾール又はトリアゾール、例えばケトコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール及びフルコナゾール;アスペルギルス症、カンジダ症又はヒストプラズム症などの抗カビ疾患用のグリセオフルビン;抗ウィルス疾患用のジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスリジン、トリフルリジン、インターフェロン(例えばインターフェロンアルファ-2a又はインターフェロンアルファ-2b)及びリバビリン;アスピリン、フェニルブタゾン、フェナセチン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、スリンダック、ピロキシカム、ジクロフェナック;関節炎などの炎症性疾患用の金及びステロイド系抗炎症剤;
カプトプリル、エナラプリル、及びリシノプリルなどのACE阻害剤;亜硝酸アミル、ニトログリセリン及び二硝酸イソソルビドなどの有機硝酸塩;ジルチアゼム、ニフェジピン及びベラパミルなどのカルシウムチャンネル遮断剤;心臓血管疾患用のプロプラノロールなどのベータアドレナリン作動性アンタゴニスト;チアジドなどの利尿剤;例えばベンゾチアジアジン又はループ利尿剤、例えばフロセミド;メチルドーパ、クロニジン、グナベンズ、グアネチジン及びレゼルピンなどの交感神経遮断薬;ヒダラジン及びミノキシジルなどの血管拡張剤;ベラパミルなどのカルシウムチャンネル遮断剤;高血圧治療用のカプトプリルなどのACE阻害剤;心臓の不整脈治療用のキニジン、プロカインアミド、リドカイン、エンカイニド、プロプラノロール、エズモロール、ブレチリウム、ベラパミル及びジルチアゼム;低脂血症治療用のロボスタチン、リピトール、クロフィルブレート、コレストリアミン、プロブコール、及びニコチン酸;ドキソルビシン、ダウノルビシン及びイダルビシンなどのアントラサイクリン;共有結合DNA結合化合物、共有結合DNA結合化合物とシスプラチン及びカルボプラチンなどの共有結合DNA結合化合物;葉酸アンタゴニスト、例えばメトトレキセート及びトリメトレキセート;抗代謝産物と、フルオロウラシル、5-フルオロウラシル及びフルオロデオキシウリジンなどのピリミジンアンタゴニスト;抗代謝産物と、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン及びチオグアニンなどのプリンアンタゴニスト;抗代謝産物と、シタラビン及びフルダラビンなどの糖修飾類似体;抗代謝産物と、ヒドロキシウレアなどのリボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤;共有結合DNA結合化合物と、シクロホスファミド及びイフォスファミドなどのナイトロジェンマスタード化合物;共有結合DNA結合化合物と、ブスルファンなどのアルカンスルホネート;カルムスチンなどのニトロソウレア;共有結合DNA結合化合物と、プロカルバジンなどのメチル化剤;共有結合DNA結合化合物と、ミトマイシンなどのアジリジン;非共有結合DNA結合化合物;ミトキサントロン及びブレオマイシンなどの非共有結合DNA結合化合物;クロマチン機能の阻害剤と、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン及びトポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤;クロマチン機能の阻害剤と、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンジシン及びパクリタキセルを含むビンカアルカロイドや、タキソテル又は別のタキサンなどの微小管阻害剤;プレドニゾン、プレドニゾロン、タモキシフェン、ロイプロリド、エチニルエストラジオール、ハーセプチンなどの抗体など、内分泌機能に影響する化合物;p-53 遺伝子、p 16 遺伝子、MIT 遺伝子、及び遺伝子E−カドヘリンなどの遺伝子;インターロイキン、特にIL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8及びIL- 12などのサイトカイン、腫瘍壊死因子-アルファ及び腫瘍壊死因子-ベータなどの腫瘍壊死因子、顆粒球コロニ刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニ刺激因子(M-CSF)及び顆粒球マクロファージコロニ刺激因子などのコロニ刺激因子、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ1、インターフェロン-ベータ2、及びインターフェロン-ガンマなどのインターフェロン;癌治療用のすべてのtransレチノイン酸又は別のレチノイド;免疫抑制剤、例えば:シクロスポリン、免疫グロブリン、及びスルファサジン、メトキサレン及びサリドイミド;糖尿病用のインシュリン及びグルコゴン(原語:glucogon);骨粗鬆症、高カルシウム血症及びページェット病治療用のカルシトニン及びナトリウムアレンドロネート;モルヒネ及び関連するオピオイド;メペリジン又は同類;メタドン又は同類;ナロルフィンなどのオピオイド・アンタゴニスト;デキススロメスロファンなどの中枢作用性鎮咳薬;疼痛管理用のテトラヒドロカンナビノール又はマリノール、リドカイン及びブピビカイン;クロロプロマジン、プロクロルペラジン;テトラヒドロカンナビノールなどのカンナビノイド、ドロペリドールなどのブチロフェノン;吐き気及び嘔吐の治療用のメトクロプラミドなどのベンズアミド;抗凝固剤、抗血栓溶解薬又は抗血小板薬としてのヘパリン、クマリン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ因子(t-PA);炎症性長疾患治療用のヘパリン、スルファサラジン、ニコチン及び副腎皮質ステロイド及び腫瘍壊死因子-アルファ;喫煙中毒治療用のニコチン;ホルモン治療用の成長ホルモン、黄体形成ホルモン、コルチコトロピン、及びソマトトロピン;及び全身性アナフィラキシー用のアドレナリン、がある。
【0040】
吸入系の組成物や、疾患の治療において前記系の使用に存在させることのできる更なる疎水性の生理活性物質には:セオフィリンなどのメチルキサンチン;クロモリン;アルブテロール及びテトラブタリンなどのベータアドレナリン作動性アゴニスト;アトロピン及び臭化イパトロピウムなどの抗コリン作動性アルカロイド;喘息及び炎症性疾患用のプレドニゾン、ベクロメタゾン及びデキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド;肺疾患のある患者の抗菌及び抗カビ感染(これらは肺疾患に何が含まれるかについて上記した具体的な疾患である)用の上記の抗菌剤及び抗カビ剤、特にこれらの中には、嚢胞性線維症患者などのグラム陰性抗菌感染治療、肺結核患者のグラム陰性感染治療、慢性気管支炎及び気管支拡張症治療、及び一般的な免疫無防備状態の患者のグラム陰性感染治療のためのアミノグリコシド(例えばアミカシン、トブラマイシン及びゲンタマイシン)、ポリミキシン(例えばポリミキシンE、コリスチン)、カルボキシシリン(チカルシリン)及びモノバクタムの使用;ニューモシスティス-カリニイ(原語:Pneumocytis
carinii)感染患者(例えばHIV/AIDS患者)治療のためのペンタミジンの使用;アンホテリシンB、ナイスタチン(原語:nyststin)、及びハミシンなどのポリエン抗生物質の使用;フルシトシン;ケトコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾール及びフルコナゾールなどのイミダゾール及びトリアゾール;アスペルギルス症、カンジダ症及びヒストプラズマ症などの真菌感染、特に肺に発生した又は肺に播種したものの治療用のグリセオフルビン;肺疾患のある患者の抗炎症状態(これらは肺疾患に何が含まれるかについて上記した具体的な疾患である)の治療用の上記のコルチコステロイド類及び他のステロイド類や、非ステロイド系抗炎症薬の使用;嚢胞性線維症治療用のDNase、アミロリド、CFTRcDNA;肺気腫治療用のアルファ- 1 -アンチトリプシン及びアルファ- 1 −アンチトリプシンcDNA;肺結核又はマイコバクテリウム感染治療用のアミカシン、トブラマイシン又はゲンタマイシンなどのアミノグリコシド、イソニアジド、エタンブトール、リファンピン及びその類似体;呼吸系発疹ウィルス治療用のリバビリン;肺癌に関して上掲した抗癌剤、特にビノレルビン、シスプラチン、カルボプラチン、及びタキサン、例えばパクリタキセル、及び他のタキサン、カンプトテシン、トポテカン、及び他のカンプトテシン、ハーセプチン、p-53遺伝子及びIL-2の使用、がある。加えて、Tarceva 及びIressa などの医薬生理活性物質も用いてよい。
【0041】
疎水性の生理活性物質は二種以上の生理活性物質(例えば相乗効果を狙った二種以上の生理活性物質)を含んでいてもよい。ある実施態様では、疎水性の生理活性物質はプラチナベースの生理活性物質である。更なる実施態様では、当該の生理活性物質はパクリタキセルである。
【0042】
脂質
現在開示されている脂質粒子中に用いられる脂質は、合成でも、半合成でも、又は天然で生じる脂質でもよく、その中には典型的にはホスホリピド及びステロールが含まれる。ホスホリピドという用語の中には、これらには、卵ホスファチジルコリン (EPC)、卵ホスファチジルグリセロール (EPG)、卵ホスファチジルイノシトール (EPI)、卵ホスファチジルセリン (EPS)、 ホスファチジルエタノールアミン (EPE)、及びホスファチジン酸 (EPA)などの脂質;大豆の相当物、大豆ホスファチジル1コリン (SPC);SPG、SPS、SPI、SPE、及びSPA;水素化した卵及び大豆の相当物(例えば HEPC、HSPC)、コリン、グリセロール、イノシトール、セリン、エタノールアミンを含め、12個乃至26個の炭素原子の鎖を含有するグリセロールの2及び3位の脂肪酸のエステル結合と、グリセロールの1位に様々な先頭基を持つ他のホスホリピドや、対応するホスファチジン酸、が含まれよう。これらの脂肪酸上の鎖は飽和していても、又は不飽和でもよく、そして該ホスホリピドは、様々な鎖長及び様々な不飽和の程度の脂肪酸から成っていてもよい。具体的には、本調合物の組成には、天然で生じる肺表面活性物質の主要構成成分であるジパルミトイルホスファチジルコリン
(DPPC)を含めることができる。他の例には、ジミリストイルホスファチジルコリン (DMPC) 、ジミリストイルホスファチジルグリセロール (DMPG) 、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール (DPPG) 、ジステアロイルホスファチジルコリン (DSPC) 、ジステアロイルホスファチジルグリセロール (DSPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE) 、ジオレオイルホスファチジルコリン
(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン (DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン (DPPE)、及び混合型ホスホリピド、例えばパルミトイルステアロイルホスファチジル-コリン (PSPC) 及びパルミトイルステアロールホスファチジルグリセロール (PSPG)、及び単一アシル化ホスホリピド、例えばモノ-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン (MOPE)、がある。
【0043】
ステロールには、コレステロールヘミ-スクシネートを含むコレステロールのエステル、硫酸水素コレステロール及び硫酸コレステロールを含むコレステロールの塩類、エルゴステロール、エルゴステロールヘミ-スクシネートを含むエルゴステロールのエステル、硫酸水素エルゴステロール及び硫酸エルゴステロールを含むエルゴステロールの塩類、ラノステロール、ラノステロールヘミ-スクシネートを含むラノステロールのエステル、硫酸水素ラノステロール及び硫酸ラノステロールを含むラノステロールの塩類、を含めることができる。
【0044】
脂質粒子を調製するのに適した他の脂質にはスフィンゴミエリン、トリグリセリド、ガングリオシド、lysoPC、PEG-脂質、及び界面活性剤、がある。
【0045】
本発明のある実施態様では、当該の脂質組成物は、ホスファチジルエタノールアミン (PE) 、例えばDMPE、DPPE、又はDOPE、及びホスファチジルコリン (PC)、例えばDMPC、DPPC、又はDOPCを含有する。脂質粒子中に存在する脂質量は、重量で約1 乃至約99 % であってよい。別の実施態様では、脂質粒子中に存在する脂質量は、重量で約2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90 乃至約 99 % である。二種以上の脂質が存在する場合、合計した重量パーセントは、脂質粒子のうちの約1乃至約99%であってよい。二種以上の脂質が存在する場合、脂質の比率は重量又はモルで約1乃至約99%であろう。更なる実施態様では、二種以上の脂質が脂質粒子中に存在する場合、重量又はモルによる脂質の比率は約1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、又は約90:1であろう。ある実施態様では、PE 及びPC脂質が脂質粒子中に存在し、この場合、PE対PCの重量にほるモル比は、少なくとも約1である。更なる実施態様では、DOPE及びDMPCが脂質粒子中に存在し、この場合のDOPE 対DMPCのモル比は少なくとも約0.5である。
【0046】
脂質粒子
ここで開示された脂質は従来開示された脂質粒子に比べて数多くの固有の特性を有する。当該の疎水性の生理活性物質は逆六方晶相形成性の脂質と、その逆六方晶形成性脂質の遷移温度(ラメラから逆六方晶相への遷移について)よりも高い温度で錯体形成する。脂質粒子の形成には、疎水性の生理活性物質の存在が必要である。脂質の濃度は一般に、前に観察されたものよりも薄い。脂質濃度は一般に重量で約8%未満であり、そして一般に重量で約4、3、2、又は 1% である。更に、好ましくは、脂質のうちの一つがPEなどの逆六方晶相形成性の脂質であるとよい。逆六方晶相形成性の脂質が本脂質粒子を調製するために用いられるが、最終的な脂質粒子は、逆六方晶相のない固体である。表1は、PE遷移温度が脂質粒子形成に対して有する効果を示すものである。パクリタキセルは疎水性の生理活性物質である。
【0047】
【表1】

【0048】
表2は、疎水性の生理活性物質(パクリタキセル)及び逆六方晶相形成性の脂質(PE)間の錯体形成の脂質粒子形成にとっての重要性を示す。この疎水性の物質の非存在下では、脂質粒子は形成しないことから、逆六方晶相自体はここで開示された脂質粒子のコアとして役立たないことが示唆される。
【0049】
【表2】

【0050】
この結果は、疎水性の生理活性物質が脂質粒子形成の基本的成分であることを示している。この処方は、PE-PC送達賦形剤中へのパクリタキセルの捕獲ではなく、パクリタキセル-PE錯体が、音波破砕又は均質化により両親媒性物質(PC)の存在下で断片化及び安定化したことであると考えられる。
【0051】
表3は、多様な両親媒性物質を脂質粒子の安定化に用いることができることを示している。
【0052】
【表3】

【0053】
本発明の脂質粒子は、重量で脂質粒子全体に対して約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、又は85% 乃至約90% の疎水性の生理活性物質に相当する、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、又は9.0:10という、疎水性の生理活性物質、対、脂質の比を有する。別の実施態様では、疎水性の生理活性物質、対、脂質の比は、重量で約1:0.7乃至約1:2.5、又は、重量で脂質粒子全体に対して約30% 乃至約60% の疎水性の生理活性物質である。別の実施態様では、疎水性の生理活性物質、対、脂質の比は、重量で約1:1.5 乃至約1:2.0 、又は重量で脂質粒子全体に対して約33% 乃至約40% の疎水性の生理活性物質である。別の実施態様では、疎水性の生理活性物質、対、脂質の比は、重量で約1:0.7 、又は重量で脂質粒子全体に対して約60% の疎水性の生理活性物質である。本発明の脂質粒子の平均直径で測定したときの粒子サイズは約200 乃至約1000 nmである。別の実施態様では、該粒子サイズは約400 乃至約700 nmである。別の実施態様では、該粒子は約500 乃至600 nmである。
【0054】
図2は、本発明の脂質粒子を含有する生理活性の構造を示す。図2Aは、脂質の逆六方晶(II)相である。疎水性の炭化水素領域が水性環境に露出しているために、この構造は大変大きく成長する(1、2mmになり得る)。この構造は通常、分解して大きな塊になるため、エントロピー効果が、物理的な刺激による熱力学的に好ましくは疎水性の炭化水素−水の接触を克服することができる。
【0055】
パクリタキセルは油溶性(例えばBMSのTaxol はひまし油を用いてパクリタキセルを溶解する)である。図2Bは、炭化水素領域(脂質の油性部分)で溶解したパクリタキセルを示す。ここで音波破砕(又は他のせん断力)が、この構造を瞬間的に破壊してパクリタキセルを脂質の塊(それでも尚、おおきな塊が残っている)のうちの隠れた疎水性領域と相互作用させるためには必要である。
【0056】
図2Bの構造はまだ尚、水生環境に露出した巨大な疎水性表面を有する。やはりこの熱力学的に好ましくない状況を克服するために、この構造は大きな塊のまま留まる。音波破砕によりこの構造を破壊してより小型の大きさにし、両親媒性物質で被覆した単層により安定化(小さいままにする)させることができる。もちろん、図2Bでは炭化水素が当該構造の表面を覆っており、親水性の先頭基が水に露出しているため、熱力学的に好ましい構造となっている。こうしてより小さな構造でも安定であることが可能である(図2C)。
【0057】
このサイズ処理及び安定化処理には疎水性の生理活性物質の存在が必要であることから、図2Aの構造へ疎水性の生理活性物物質(PE中の逆六方晶相)を導入すると、図2BのPE-疎水性生理活性物質錯体ができることが示唆される。
【0058】
図3は、本発明の脂質粒子のフリーズ−フラクチャー電子顕微鏡(EM)画像を示しており、この場合、脂質はDOPEであり、疎水性の生理活性物質はパクリタキセルであり、そして両親媒性物質はDMPCである。この画像は遠心分離によるサイズ分離前に撮影された。主に大型の粒子が観察されたが、それはなぜなら、フリーズ−フラクチャーEM画像では大きな物体の方がより容易にサンプリングされるからである。矢印は最終生成物から判定される大きさを持つ粒子を示す。白い棒は1ミクロンを表す。
【0059】
脂質粒子の調製法
ある実施態様では、疎水性の生理活性物質(例えばパクリタキセル)及び逆六方晶相形成性の脂質(例えばDOPE)を、例えばホモジナイゼーション、音波破砕、研磨、粉砕、又は微粒化などのせん断力発生法により、水溶液中で混合する。両親媒性物質(例えばDMPC)をこの混合液に加えた後、音波破砕、研磨、粉砕、又は微粒化などのせん断力発生法により、乳白色の懸濁液(脂質粒子)が形成するまで、更に混合する。次に、その結果できた脂質粒子を分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得るか、又は、大型の脂質粒子を取り除いてよい。この分画法には、遠心分離、密度勾配遠心分離、重力沈降、ろ過、又はゲル透過クロマトグラフィ法がある。
【0060】
別の実施態様では、疎水性の生理活性物質(例えばパクリタキセル)及び逆六方晶相形成性の脂質(例えばDOPE)を非水性の溶媒(例えばエタノール)中に同時溶解させ、水溶液に注入した後、蒸発、透析、又はダイアフィルトレーションを用いて非水性溶媒を除去する。また両親媒性物質(例えばDMPC)を非水性溶媒(例えばエタノール)に溶解させ、水溶液に注入した後、蒸発、透析、又はダイアフィルトレーションを用いて非水性溶媒を除去する。別々に調製されたこれら2つの懸濁液を、例えばホモジナイゼーション、音波破砕、研磨、粉砕、又は微粒化などのせん断力発生法により、乳白色の懸濁液(脂質粒子)が形成するまで、混合する。次に、その結果できた脂質粒子を分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得るか、又は、大型の脂質粒子を取り除いてよい。この分画法には、遠心分離、密度勾配遠心分離、重力沈降、ろ過、又はゲル透過クロマトグラフィ法がある。
【0061】
上記の方法は、溶媒除去の前、又は溶液の配合前に、個々の溶液を滅菌ろ過することにより、無菌的に行えよう。
【0062】
別の実施態様では、上記の通りに調製された脂質粒子を、貯蔵寿命を延ばすために乳糖などの凍結保護物質の存在下で凍結乾燥させてもよい。凍結乾燥させた脂質粒子を水溶液中に再懸濁させることにより、脂質粒子を再構築する。
【0063】
吸入装置
生理活性物質を含む脂質粒子は、当業で公知の多種の方法により送達できよう。肺疾患治療に特に適した送達方法の一つは吸入である。吸入用送達器具はネブライザ、計量吸入器(MDI)又は乾燥粉末吸入器(DPI)であってよい。該器具に一回分の用量の脂質組成物を含有させることも、又は一回分の用量の脂質組成物を送達するために用いることもでき、あるいは、該器具に複数回分の用量の脂質組成物を含有させることも、又は複数回分の用量の本発明の脂質組成物を送達するために用いることもできる。別の実施態様では、ネブライザが使い捨てであることが想到される。
【0064】
ネブライザ型の吸入送達器具には、本発明の組成物を、通常は水性の溶液又は懸濁液として含有させることができる。吸入用の組成物の噴霧を発生させる際、ネブライザ型の送達器具を超音波により、圧縮空気により、他の気体により、電子的に又は機械的に(例えば振動する多孔質膜を含む)駆動できよう。超音波ネブライザ器具は通常、電気化学的振動表面を介して調合物の液体フィルム上に高速の振動波形を印加することにより、作動する。所定の振幅で波形が不安定になることにより、それが液体フィルムを崩壊させることで、調合物の小さな液滴を生じさせる。空気又は他の気体により駆動されたネブライザ器具は、高圧の気体流が局所的な圧力降下を生み、毛管作用により液体調合物をその気体流に引き込むという基礎に基づいて作動する。こうしてこの微細な液体流はせん断力により崩壊させられる。ネブライザのデザインは携帯用でも、手持ち型でもよく、自給式電気装置を備えていてもよい。ネブライザ装置は、規定の孔サイズの2つの一致する吐出チャンネルを有するノズルから構成することができ、この吐出チャンネルを通じて液体調合物を加速させることができる。その結果、2つの流れの圧入と、調合物の噴霧化が起きる。ネブライザは、機械的アクチュエータを用いて液体調合物を規定の孔サイズの多オリフィス・ノズルを通過するように強制することで、吸入用の調合物エーロゾルを発生させてもよい。一回分用量用のネブライザのデザインの場合、一回分の用量の調合物を含有するブリスタ・パックを用いてもよい。
【0065】
本発明においては、ネブライザを用いて、薬物−脂質粒子を含有する水性の液滴のサイジングが、肺などの内部の粒子の位置決めが確実に最適になるようにしている。噴霧化後の脂質組成物の典型的な液滴サイズは約1乃至約5ミクロンである。
【0066】
ネブライザで用いる場合、脂質組成物は好ましくは水性成分を含むとよい。典型的には重量で少なくとも約80%、そして好ましくは重量で少なくとも約90%の水性成分が、ネブライザで投与しようとする脂質組成物中にあるとよい。水性成分には生理食塩水などが含まれていてもよい。加えて、水性成分にはエタノールなどの水性適合性溶媒が重量で最高約20%、含まれていてもよい。
【0067】
ネブライザを用いた総投与時間は、流速と、脂質組成物中の生理活性物質の濃度に依存するであろう。総投与時間の差異は当業者の権限の範囲内である。一般的には、ネブライザの流速は少なくとも約 0.15 mL/分であり、例えば約0.2 mL/分の流速が典型的である。例を挙げると、約1 mg/mL の濃度の生理活性物質を有する脂質組成物を用いた約24 mg/m2 の用量の生理活性物質の投与は約4時間(患者の体表面積が約2 m2と想定して)であろう。この投与時間を、例えば、一回の処置サイクルを完了するのに、1又は2日間の経過にわたる2回の投与期間に分けてもよい。
【0068】
代替的な実施態様では、計量吸入器 (MDI) を吸入系の吸入送達器具として用いることができる。この装置は加圧型 (pMDI) であり、その基本的な構造は計量バルブ、アクチュエータ及び容器から成る。推進剤を用いて調合物をこの器具から排出する。当該の組成物を、規定のサイズの粒子を、加圧した推進剤中に懸濁させたものから構成することも、あるいは、当該の組成物は、加圧した液体推進剤の溶液又は懸濁液であってもよい。用いる推進剤は、主に、134a 及び227などの環境に優しいハイドロフルオロカーボン(HFC)である。CFC-1 1、12 及び 114 などの伝統的なクロロフルオロカーボンは、必須な場合のみ、用いられる。デザイン上、吸入系の器具はブリスタ・パックなどを通じて一回分の用量を送達するものでも、複数回分の用量を送達するものでもよい。吸入系の加圧型計量吸入器は、脂質ベースの調合物の精確な用量を送達するために呼吸で作動するものであってもよい。投薬量が確実に精確になるように、当該調合物の送達をマイクロプロセッサでプログラムにして、吸入サイクルのうちの所定点で起きるようにしてもよい。MDI は携帯型でも、手持ちでもよい。
【0069】
別の代替的な実施態様では、乾燥粉末吸入器 (DPI) を、吸入系の吸入送達器具として用いることができる。この器具の基本的なデザインは計量システムと、粉末状組成物と、該組成物を分散させる方法とから成る。回転及び振動などの力を用いて組成物を分散させることができる。計量系及び分散系を機械的に駆動しても、又は電気的に駆動してもよく、またマイクロプロセッサでプログラム可能にしてもよい。この器具は携帯型でも、又は手持ち式でもよい。吸入器のデザインは複数回用量でも、又は一回分用量でもよく、単位用量が精確になるように硬質ゼラチンカプセルやブリスタ・パックなどの選択肢を用いてもよい。組成物を、受動的吸入、即ち患者自身の吸気努力により器具から分散させることもでき、あるいは能動的分散系を利用してもよい。本組成物の乾燥粉末を、ジェット・ミル、スプレー・ダイイング(原語:dying)及び超臨界流体製造などのプロセスを通じてサイズ処理することができる。糖類マンニトール及びマルトースなどの許容可能な医薬品添加物を、粉末状調合物の製剤中に用いてもよい。これらは、凍結乾燥させたリポソーム及び脂質錯体の調製において特に重要である。これらの糖類は、凍結乾燥中のリポソームの物理的特徴を維持したり、吸入によりそれらを投与するときの凝集を抑えたりする上で役立つ。糖の水酸基は、ベシクルがそれらの第三水和状態を維持するのに役立ち、粒子の凝集を防いだりするのに役立つであろう。
【0070】
本発明の方法は、肺癌などの肺疾患の予備処置及び治療に特に向いている。加えて、原発性及び転移性の肺癌の両者が、本発明の方法の優れた候補である。
【0071】
投薬量
本発明の組成物の投与は、当業者が認識する通り、治療効果を達成するために充分な量であろう。
【0072】
本発明のいずれの組成物の投薬量も、患者の症状、年齢及び体重や、治療又は防止しようとする障害の性質及び重篤度、投与経路、並びに当該組成物の形に応じて様々であろう。当該調合物のいずれも、一回分の用量にして投与しても、あるいは分割された用量にして投与してもよい。本発明の組成物の投薬量は、当業者に公知の技術により、あるいはここで教示するように、容易に決定できよう。
【0073】
いくつかの実施態様では、当該化合物の投薬量は、概して、体重1kg当り約0.01 ng 乃至約 10 gの範囲、特に1kg当り 約 1 ng 乃至約 0.1 g、そしてより具体的には1kg当り約 100 ng 乃至約 10 mg の範囲であろう。
【0074】
当該調合物の有効な用量又は量、及び、投与のタイミングに対するいずれかの可能な影響を、本発明のいずれか特定の組成物について特定しておく必要があるであろう。これは、ここで解説する通りの慣例的な実験により、1つ又はそれ以上の動物群(好ましくは1群当り少なくとも5匹の動物)又は適宜ヒトでの治験を用いて、達成できよう。いずれかの組成物や、治療又は防止法の有効性は、当該組成物を投与し、一種以上の該当する指数を測定することによりその投与効果を評価し、これらの指数の処置後の数値を、処置前の同じ指数の数値に比較することにより、評価できよう。
【0075】
ある特定の患者で最も有効な処置になるであろう、いずれか特定の組成物の精確な投与時期及び量は、当該組成物の活性、薬理動態、及び生物学的利用能、患者の生理的状態(年齢、性別、疾患の種類及び段階、全体的身体状態、ある医薬の特定の投薬量及び種類に対する応答性を含む)、投与経路等に応じるであろう。ここで紹介する指針を用いて、最適な時期及び/又は投与量の決定など、処置を至適化できると思われ、それには対象の観察、並びに、投薬量及び/又は時期の調節から成る慣例的な実験しか必要でないであろう。
【0076】
対象を治療中、治療期間中の所定の時点で関係する指数のうちの一つ以上を測定することにより、その患者の健康状態を観察してもよい。組成物、量、投与時期及び調合物を含め、処置をこのような観察の結果に従って至適化してもよい。患者を定期的に再評価して、同じパラメータを測定することにより、向上の程度を判定してもよい。投与される組成物量や、可能性としては投与時期の調節を、これらの再評価に基づいて行ってもよい。
【0077】
当該化合物の最適な量よりも少ない少量の投薬量で処置を開始してもよい。その後、最適な治療効果が得られるまで、少量ずつ、この投薬量を増加させていってもよい。
【0078】
異なる薬剤の効果の開始及び持続期間が補完的である場合もあるため、当該組成物の使用により、この組成物中に含まれたいずれか個別の薬剤(例えばステロイド系抗炎症剤)の必要な投薬量が減る場合がある。
【0079】
当該組成物の毒性及び治療効果は、例えばLD50及びED50を判定するためなど、細胞培養又は実験動物での標準的薬学的手法により判定できよう。
【0080】
細胞培養検定及び動物実験から得られたデータを、ヒトで用いる投薬量範囲を処方する際に用いてもよい。いずれの組成物の投薬量も、好ましくは、毒性が少ないか、又は全く無いようなED50を含む循環中濃度範囲内にあるとよい。投薬量は、用いる剤形や、用いる投与経路に応じてこの範囲内で様々であってよい。本発明の組成物の場合、治療上有効な用量はまず、細胞培養検定から推定されよう。
【0081】
一般的には、活性な薬剤の用量は、年齢、身体状態、体重や医業で公知の他の因子に基づいて担当医が選択することになるであろう。
【0082】
調合物
現在開示されている脂質粒子は、当業で公知のように、それらの意図された用途に応じて多様な手段により投与できよう。例えば本発明の組成物を経口投与する場合、これらを錠剤、カプセル、顆粒、粉末又はシロップとして調合できよう。代替的には、本発明の調合物を注射(静脈内(IV)、筋肉内又は皮下)、点滴輸注製剤又は座薬として非経口投与してもよい。眼粘膜経路による適用の場合、本発明の組成物を点眼剤又は眼用軟膏として調合してもよい。これらの調合物を従来の手段により調製してもよく、そして好ましい場合には本組成物を、例えば医薬品添加物、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯正薬、可溶化剤、懸濁支援剤、乳化剤又は被覆剤など、いずれかの従来の添加剤に混合してもよい。
【0083】
本発明の調合物中、湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど、や、着色剤、剥離剤、被覆剤、甘味料、着香料及び香料、保存剤及び抗酸化剤が、調合後の物質中に存在していてもよい。
【0084】
当該の組成物は、経口、鼻腔、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸、膣、エーロゾル及び/又は非経口投与に適していてよい。調合物を便利なように単位剤形で提供してもよく、そして製薬業で公知のいずれの方法で調製してもよい。一回分の用量を作製するために担体材料と配合してもよい組成物量は、治療する対象、及び特定の投与形態に応じて様々であろう。
【0085】
これらの調合物の調製法には、本発明の組成物を担体と、そして選択に応じて一種以上の付属成分と結合させるステップが含まれる。一般的には、本調合物は、薬剤を液体の担体に、又は微細に分割された固体の担体に、あるいは両者に、均質かつ密に結合させた後、必要に応じて生成物を成型することにより、調製される。
【0086】
経口投与に適した調合物は、それぞれが所定量の当該組成物を活性成分として含有する、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(着香した、通常はショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントである基剤を用いて)、粉末、顆粒の形で、あるいは水性又は非水性の液体に入れた溶液又は懸濁液として、あるいは水中油又は油中水液体乳濁液として、あるいはエリキシル又はシロップとして、あるいは香錠として(不活性の基剤、例えばゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシアゴム)もよい。本発明の組成物を巨丸剤、舐剤、又はペーストとして投与してもよい。
【0087】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒等々)の場合、当該組成物を一種以上の薬学的に許容可能な担体、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム、及び/又は、以下のうちのいずれかと混合する:(1)でんぷん、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール及び/又は珪酸などの充填剤又は増量剤;(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖及び/又はアカシアゴムなどの結合剤;(3)グリセロールなどの湿潤剤;(4)寒天、二炭酸カルシウム、いも又はタピオカでんぷん、アルギン酸、特定の珪酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(7)アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト・クレイなどの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの潤滑剤;及び(10)着色剤、がある。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、当該化合物には更に緩衝剤を含めてもよい。同様の種類の固形組成物も、ラクトース即ち乳糖といった医薬品添加物や、高分子量ポリエチレングリコールなどを用いた軟質及び硬質充填ゼラチン・カプセルの充填剤として用いてもよい。
【0088】
錠剤は圧縮又は成型により、選択的には一種以上の付属成分と一緒に作製してもよい。圧縮錠剤は結合剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性の希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばグリコール酸でんぷんナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロース)、界面活性剤又は分散剤を用いて調製できよう。成型錠剤は、不活性の液体希釈剤で示された当該組成物の混合物を適した機械で成型することにより、作製できよう。状態、及び他の剤形、例えば糖衣錠、カプセル、丸剤及び顆粒など、には、選択に応じて切れ込みを付けてもよく、あるいは、腸溶コーティング及び医薬調合業で公知の他のコーティングなど、コーティング及びシェルと一緒に調製してもよい。
【0089】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容可能な乳濁液、マイクロ乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルがある。当該組成物に加え、液体剤形には、水又は他の溶媒など、当業で通常用いられている不活性の希釈剤、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油類(特に綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及び、ソルビタンの脂肪酸エステル、シクロデキストリン及びこれらの混合物など、を含めてもよい。
【0090】
懸濁液は、当該組成物に加え、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物などの懸濁剤を含むであろう。
【0091】
直腸又は膣内投与用の調合物を座薬として提供してもよく、この座薬は、当該組成物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、座薬用ろう又はサリチル酸塩などを含む一種以上の適した非刺激性医薬品添加物と混合することにより調製してもよく、この座薬は室温では固形であるが体温では液体であるために体腔内で融解して活性な薬剤を放出するであろう。膣内投与に適した調合物には、更に、当業で適切であることが公知の担体などを含有するペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー調合物がある。
【0092】
当該組成物の経皮投与のための剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤がある。活性成分は、薬学的に許容可能な担体と、そして必要に応じていずれかの保存剤、緩衝剤、又は推進薬と、無菌条件下で混合できよう。
【0093】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、当該組成物に加え、動物性及び植物性脂肪、油類、ろう、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物などの医薬品添加物を含むであろう。
【0094】
粉末及びスプレーは、当該組成物に加え、乳糖、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物などの医薬品添加物を含むであろう。スプレーには、更に、クロロフルオロハイドロカーボン並びに及びブタン及びプロパンなどの揮発性非置換ハイドロカーボンなどの従来の推進薬が含まれよう。
【0095】
前に論じたように、本発明の組成物及び化合物を代替的にはエーロゾルにより投与してもよい。非水性(例えばフルオロカーボンの推進薬)の懸濁剤を用いることもできよう。音波ネブライザは、当該組成物中に含まれた化合物を分解させかねないせん断に薬剤が晒されることを抑えるため、これを用いてもよい。
【0096】
通常、水性のエーロゾルは、当該組成物と従来の薬学的に許容可能な担体及び安定化剤の水溶液又は懸濁液を調合することにより、作製される。担体及び安定化剤は特定の当該組成物の要件によって様々であるが、その中には典型的には非イオン性の界面活性剤(Tweens、Pluronics、又はポリエチレングリコール)、血清アルブミンなどの無害のたんぱく質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩類、糖類又は糖アルコールがある。エーロゾルは一般に、等張の溶液から調製される。
【0097】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、当該の組成物を、一種以上の薬学的に許容可能な無菌の等張の水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液又は乳液、あるいは無菌粉末と組み合わせて含み、該粉末は、使用直前に無菌の注射用溶液又は分散液中に再構築でき、これらの注射用溶液又は分散液は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、当該調合物を目的のレシピエントと等張にする溶質、あるいは懸濁もしくは増粘剤を含んでいてもよい。
【0098】
本発明の医薬組成物に用いてもよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチル及びシクロデキストリンなどの注射用有機エステル、がある。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング剤を用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を用いるなどにより、維持できよう。
【0099】
本脂質粒子は、例えば皮下、筋肉内、経気管、腹腔内、腫瘍内、又は静脈内注射などとして非経口投与用に調合することもでき、例えば本脂質粒子を、(以降、まとめて「注射用溶液」とする)無菌の溶液又は懸濁液内に提供することができる。注射用溶液は、200ccの大量注射で提供される(一種又は複数の)疎水性の生理活性物質の量が、少なくとも中間有効用量の用量、あるいはED50の100倍未満、あるいはED50の10又は5倍未満を提供するように、調合される。注射用溶液を、100、50、25、10、5、2.5、又は1ccの注射で提供される(一種又は複数種の)疎水性薬剤の総量がED50用量を患者に、又は、ED50の100倍未満、あるいはED50の10又は5倍未満を提供するように、調合してもよい。他の実施態様では、24時間中に少なくとも2回、注射される100cc、50、25、5、又は2ccの総量中に提供される疎水性の(一種又は複数種の)生理活性物質の量は、平均して少なくともED50濃度、又はED50の100倍未満、又は、ED50の10倍もしくは5倍未満の当該疎水性生理活性物質の平均血漿中レベルを提供するような投薬計画を提供するものである。他の実施態様では、一回分の用量を注射すると、約 0.25 mg 乃至 1250 mg の疎水性生理活性物質が提供される。
【0100】
処置の効果
本組成物による処置の効験は当業で公知の多種の態様で判定できよう。
【0101】
ある例示的な方法では、処置が肺癌に対するものである場合、当該組成物による処置後の腫瘍又は病変サイズの中間減少速度を、当該組成物中に含まれた特定の治療薬による他の形の処置と、又は、他の治療薬による他の形の処置と、比較してもよい。別の方法による処置に比較したときの、本組成物による処置の場合の腫瘍又は病変サイズの減少は、10、25、50、75、100、150、200、300、400% 又はそれ以上あるいは更にそれより大きいかも知れない。いずれかのこのような減少を観察する期間は約 1、3、5、10、15、30、60 又は90時間、あるいはそれ以上の時間であってもよい。比較を、当該組成物中に含まれた特定の治療薬による処置に対して行っても、あるいは、他の治療薬による処置に対して、あるいは異なる方法による同じ又は異なる薬剤の投与に対して、あるいは当該組成物とは異なる薬物送達器具の一部としての投与に対して、行ってもよい。また比較を、同じ又は異なる有効投薬量の多種の薬剤に対して行ってもよい。
【0102】
代替的には、上記の異なる処置計画の比較は、当業者に公知の標準的な指数を用いた、処置に有効性に基づくものであってもよい。処置の方法の一つは、別の方法よりも10%、20%、30%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、より有効な場合があるであろう。
【0103】
代替的には、様々な処置計画を、当該組成物による処置のそれら計画のそれぞれに関する治療指数を、同じ又は異なる治療薬を用いた別の方法による処置の2倍、3倍、5倍又は7倍である、あるいは1桁、2桁、3桁又はそれ以上の桁数大きいような治療指数を有する別の計画と比較することで、分析してもよい。
【0104】
キット
更に本発明は、本発明の方法を便利かつ有効に実施するためのキットも提供するものである。このようなキットは、いずれかの本組成物と、本発明の方法とのコンプライアンスを促す手段とを含む。このようなキットは、治療しようとする対象が、適した活性物質を正しい投薬量、正しい方法で確実に摂取できるようにする便利かつ有効な手段となるものである。このようなキットのコンプライアンス手段は、本発明の方法に従った活性物質の投与を容易にするいずれの手段をも含む。このようなコンプライアンス手段には、指示、包装、及び調剤手段や、これらの組合せがある。キットの構成要素は、前述の方法の手動又は部分的もしくは完全な自動化のいずれかに向けて梱包されよう。キットを含む他の実施態様では、本発明は、本発明の組成物と、選択的にはそれらの使用に関する指示とを含むキットを考察するものである。
【実施例】
【0105】
実施例1
パクリタキセルを含む脂質粒子の形成 (a). パクリタキセルを脱イオン水に懸濁させた。DOPEをこのパクリタキセル懸濁液に加えた。これらDOPE 及びパクリタキセルを簡単な音波破砕で混合して、大型の錯体沈殿物を形成させた。DMPCをこのパクリタキセル-PE錯体に加えた。この混合物を再度、乳白色の懸濁液を形成するまで音波破砕で混合した。
【0106】
その結果の粒子は大半が均質だったが、それでも尚、1、2個の大型の粒子を含んでいた。この大型の粒子を取り除くために試料を遠心分離した(低速)。最上部の懸濁液を最終調合物として採集し、パクリタキセル及び脂質レベルについて分析した。その結果を表4に挙げる。
【0107】
【表4】

【0108】
表5は脂質粒子に対する噴霧化の効果を示す。
【表5】

【0109】
実施例2
パクリタキセルを含む脂質粒子の形成(b). パクリタキセルを脱イオン水に懸濁させた。DOPEをこのパクリタキセル懸濁液に加えた。これらDOPE 及び疎水性パクリタキセルを簡単な音波破砕で混合して、大型の錯体沈殿物を形成させた。DMPCをこのパクリタキセル-PE錯体に加えた。この混合物を再度、乳白色の懸濁液になるまで音波破砕した。
【0110】
このプロセス後、得られた粒子は大半は均質だったが、それでも尚、1、2個の大型の粒子があった。この大型の粒子を取り除くために試料を遠心分離した(低速)。最上部の懸濁液(90%の体積)を採集し、再度、遠心分離(高速)した。その上清を廃棄して潜在的に小さなベシクルを取り除き、そのペレットを蒸留水で再構築した。そのペレットをパクリタキセル及び脂質レベルについて分析した。その結果を表6に挙げる。
【0111】
【表6】

【0112】
重量による薬物/脂質比は4.8
/ 2.3 / 1(パクリタキセル/ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン/ジミリストイルホスファチジルコリン)である。表7は脂質粒子の平均直径を要約したものである。
【0113】
【表7】

【0114】
実施例3
多種の生理活性物質を含む脂質粒子の形成。 各調合物用の最初の組成物は15 mg/mLの生理活性物質、15 mg/mL のDOPE、及び10 mg/mL のDMPCだった。生理活性物質及び脂質混合物の水性混合物を、この混合物が懸濁液になるまで音波破砕した。この懸濁液を遠心分離して大型粒子を沈降させ、この懸濁液の最上部90%を採集し、分析した。その結果を表8に示す。
【0115】
【表8】

【0116】
上記の結果は、脂質粒子は、パクリタキセルだけでなく、他の疎水性生理活性物質、又は、水溶液中で結晶を形成する物質でも形成することができることを示している。これらの調合物の特徴は異なる生理活性物質で様々である。しかしながらこれらは全て、優れた薬物回収率と、高い薬物対脂質比を示す。
【0117】
実施例4
パクリタキセルの細胞毒性に対するパクリタキセル-PE-PC微粒子の効果: 脂質錯体形成によるパクリタキセルの細胞毒性の亢進。 細胞毒性をMTT検定で測定した。用いた細胞系はH460ヒト肺癌(非小細胞肺癌)だった。亢進は、(調合物のID50
)/(遊離パクリタキセルのID50
)で規定される相対的細胞毒性として測定された。ID50 とは、50%の細胞成長阻害を引き起こす薬物用量(濃度)である。パクリタキセル-PE-PC微粒子の調合物は、パクリタキセルの細胞毒性を表9に示すように二倍にした。これは、遊離パクリタキセルよりも脂質錯体調合物の膜透過性が高いために、薬物の細胞質内濃度が高くなることが原因と考えられる。
【0118】
【表9】

【0119】
実施例5
パクリタキセル-PE-PC錯体を作製する無菌的プロセス。 パクリタキセル及びDOPEをエタノールに溶解させ、無菌水に加える前に無菌ろ過した。この混合物を無菌条件下で透析した。別に、エタノールに溶解させたDMPCも無菌ろ過紙、無菌水に加えた。この混合物を無菌条件下で透析した。この透析プロセスをダイアフィルトレーション又は蒸発法に替えて有機溶媒を除去することもできる。次にこの混合物を、乳白色の懸濁液が形成されるまで音波破砕した。この懸濁液を遠心分離し、総体積の最上部90%を採集した。その結果を表10に示す。
【0120】
【表10】

【0121】
実施例6
パクリタキセル-PE-PC粒子に対する凍結乾燥(凍結乾燥)の効果。 パクリタキセル-PE-PC粒子は実施例2の通りに調製された。凍結乾燥前に5 % wt/vol の乳糖を調合物に凍結保護剤として添加した。凍結乾燥後、調合物を再構築し、最初のパクリタキセル-PE-PC粒子を表11に示す通りに未変更のまま回収した。
【表11】

【0122】
実施例7
Sprague/Dawleyラットにおける気管内薬液注入によるパクリタキセル対タキソール(ミセル状調合物、BMS)による脂質粒子のin vivo薬物動態研究。 ラット肺におけるパクリタキセルの主なクリアランスは、両方の調合物ともIT薬液注入から最初の6時間に起きる(図1)。時間ゼロについて薬物レベルを精確に推定することは不可能であろう。なぜなら、肺のクリアランスは、ミセルなどの遊離薬物又は小型の粒子の場合はとくに即座かつ高速だからである。処置後の動物をすぐにと殺(時間ゼロ)しても、タキソールについては実質的に薬物レベルが低かった。パクリタキセルを用いた脂質粒子の場合、時間ゼロの時点でのパクリタキセル・レベルの約 40%が、6時間後乃至48時間後(研究の終了点)でも維持された。他方、大半のパクリタキセルはタキソールの6時間後に除去された。このことは、パクリタキセルを用いた脂質粒子の肺内貯留効果を実証しており、と同時に、タキソール(パクリタキセルのミセル状調合物)についてはこのような効果は示されなかった。更に、これは、パクリタキセルと一緒に新たに調合された脂質粒子は、肺内に、タキソールよりも長時間、留まることを示しており、癌治療にとってより良好な治療戦略であることを示している。
【0123】
実施例8
パクリタキセルを含む脂質粒子は、長期の保存や噴霧化中でも安定である。 パクリタキセルなどの疎水性の薬物を含む調合物について主な安定性の問題は、薬物が水溶液中で結晶化して、凝集物を形成することである。この潜在的な結晶化は、粒子サイズ測定で観察された。4℃で2年間、保存した後でも粒子サイズは同じであり、結晶化の兆しは示していなかった。粒子サイズは、表12に示すように高いせん断力を用いた噴霧化中でも同じのままだった。
【0124】
【表12】

【0125】
実施例9
脂質粒子のPCコーティングは単層である。 リポソームと、本発明の脂質粒子とについて、表面上及び脂質錯体内のプローブ脂質の比率を判定し、比較した。DMPCリポソームを0.5 wt %蛍光プローブ(NBD: N-7-ニトロ-2,1,3-ベンゾキサジアゾール-4-イル)脂質と一緒に調製し、槽式音波破砕器により10分間、音波破砕した。プローブ脂質は二重層の内側及び外側の両方に均等に分散する。膜不透過性の還元剤であるジチオナイトを添加すると、リポソームの表面上のみに位置するプローブ脂質の蛍光が消える。McIntyre, J.G. & Sleight, R.G. (1991) Biochemistry 30, 11819-11827。表面上と、リポソーム内側に位置するプローブ間の比率を推定した:表面上のプローブ脂質の%=(当初の蛍光強度−消光後の蛍光強度)×100/当初の蛍光強度。
【0126】
別に、2 wt % NBD
脂質を用いたDMPCリポソームを DOPE/パクリタキセル混合物に加えて脂質粒子を作製した。プローブを含有する残留リポソームを除くために、試料を音波破砕後に遠心分離した。リポソームの大半を含有する上清を除いた。残っているペレットを蒸留水に再懸濁させた後、低速で遠心分離して大型の粒子を沈降させた。その上清を採集し、パクリタキセルを用いた脂質粒子に用いた。表13は、二種類の脂質錯体について比率を挙げ、比較したものである。
【0127】
【表13】

【0128】
リポソームに関しては、プローブ脂質のほぼ半分がリポソームの外側に位置しており、二重層構造を反映していた。反対に、脂質粒子ではプローブ脂質の大半がそれらの表面上に在り、単層構造を反映していた。
【0129】
参考文献の援用
ここで引用した全ての特許及び公開文献を引用をもってここに援用することとする。
【0130】
均等物
当業者であれば、慣例的な実験を用いるのみで、ここに解説した本発明の具体的な実施態様の均等物を数多く認識され、又は確認できることであろう。このような均等物は以下の請求の範囲の包含するところである。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、パクリタキセル対タキソール(クレモフォル調合物、ミセル状)による脂質粒子の気管内注入後のラット肺内のパクリタキセルのクリアランスを示す。メスのSprague/Dawley ラットに、パクリタキセル(13.7mg/kg)/タキソール(クレモフォル調合物、6mg/kg) を気管内注入により投与した。0、1、2、6、24、48時間後にラットをと殺し、肺内のパクリタキセル・レベルをHPLCで判定した。タキソールのデータはパクリタキセルによる脂質粒子の用量に正規化してある。
【図2】図2は、本発明の脂質粒子を含有する生理活性物質の構造を示す:A)は、PEの通常の逆六方晶(II)相を示す。B)は、PEの逆六方晶(II)相の炭化水素領域に溶解したパクリタキセルを示す。そしてC)は、両親媒性物質で安定化したパクリタキセルを含有する、音波破砕によりサイジングされた脂質粒子を示す。
【図3】図3は、本発明のパクリタキセル含有脂質粒子のフリーズ−フラクチャEM画像を示す。白線は1ミクロンを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性の生理活性物質と逆六方晶相形成性の脂質との両親媒性物質で被覆された錯体を含む、非リポソーム製脂質粒子。
【請求項2】
前記生理活性物質がタキサンである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項3】
前記生理活性物質がプラチナ錯体である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項4】
前記生理活性物質がシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、カンプトテシン、又はトポテシンである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項5】
前記生理活性物質がパクリタキセルである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項6】
前記生理活性物質がカンプトテシンである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項7】
前記生理活性物質がシスプラチンである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項8】
前記生理活性物質がアンホテリシンBである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項9】
前記逆六方晶相形成性の脂質がホスファチジルエタノールアミン (PE)である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項10】
前記逆六方晶相形成性の脂質がジオレオイルホスファチジルエタノールアミン (DOPE) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項11】
前記逆六方晶相形成性の脂質がジミリストイルホスファチジルエタノールアミン (DMPE) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項12】
前記逆六方晶相形成性の脂質がジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン (DPPE) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項13】
前記両親媒性物質がホスファチジルコリン
(PC)、ホスファチジルグリセロール (PG)、ホスファチジルセリン (PS)、ホスファチジルエタノールアミン (PE)、ホスファチジルイノシトール
(PI)、ホスファチジン酸 (PA)、スフィンゴミエリン、ガングリオシド、lysoPC、PEG-脂質、界面活性剤、又はこれらの組合せである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項14】
前記両親媒性物質がジミリストイルホスファチジルコリン (DMPC)である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項15】
前記両親媒性物質がジパルミトイルホスファチジルコリン (DPPC) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項16】
前記両親媒性物質がジオレオイルホスファチジルコリン (DOPC) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項17】
前記両親媒性物質がジデカノイルホスファチジルコリン (DDPC) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項18】
前記両親媒性物質がジミリストイルホスファチジルセリン (DMPS) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項19】
前記両親媒性物質が脳内ガングリオシドである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項20】
前記両親媒性物質が1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール (POPG) である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項21】
前記両親媒性物質がスフィンゴミエリンである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項22】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPEであり、そして前記両親媒性物質がDMPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項23】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、そして両親媒性物質がDPPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項24】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、そして前記両親媒性物質がDOPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項25】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、そして前記両親媒性物質がDDPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項26】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、そして前記両親媒性物質がDMPSである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項27】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、そして前記両親媒性物質が脳内ガングリオシドである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項28】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、そして前記両親媒性物質がPOPGである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項29】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、そして前記両親媒性物質がスフィンゴミエリンである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項30】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がパクリタキセルであり、そして前記両親媒性物質がDMPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項31】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がパクリタキセルであり、そして前記両親媒性物質がDPPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項32】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がパクリタキセルであり、そして前記両親媒性物質がDOPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項33】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記両親媒性物質がDDPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項34】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がパクリタキセルであり、そして前記両親媒性物質がDMPSである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項35】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がパクリタキセルであり、そして前記両親媒性物質が脳内ガングリオシドである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項36】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がパクリタキセルであり、そして前記両親媒性物質がPOPGである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項37】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がパクリタキセルであり、そして前記両親媒性物質がスフィンゴミエリンである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項38】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がアンホテリシンBであり、そして前記両親媒性物質がDMPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項39】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がカンプトテシンであり、そして前記両親媒性物質がDMPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項40】
前記逆六方晶相形成性の脂質がDOPE であり、前記生理活性物質がシスプラチンであり、そして前記両親媒性物質がDMPCである、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項41】
H460ヒト肺癌細胞株を用いたMTT検定で測定したときに前記生理活性物質の細胞毒性が遊離生理活性物質の細胞毒性の少なくとも2倍である、請求項1に記載の脂質粒子。
【請求項42】
前記生理活性物質がプラチナ錯体である、請求項41に記載の脂質粒子。
【請求項43】
前記生理活性物質がパクリタキセルである、請求項41に記載の脂質粒子。
【請求項44】
a)疎水性の生理活性物質と逆六方晶相形成性の脂質とを水溶液中で配合するステップと、
b)ステップa)で得た懸濁液をせん断力発生法で混合するステップと、
c)両親媒性物質をステップb)で得た混合物に加えるステップと、
d)ステップc)で得た懸濁液をせん断力発生法により少なくとも乳白色の懸濁液が形成するまで混合するステップと
を含む、請求項1に記載の脂質粒子を調製する方法。
【請求項45】
ステップd)で得た懸濁液を、更に、遠心分離、密度勾配遠心分離、又は重力沈降法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ステップd)で得た懸濁液を更にろ過して大型の脂質粒子を除去する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
ステップd)で得た懸濁液を、更に、ゲル透過クロマトグラフィ法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
ステップb)の前記せん断力発声法が、音波破砕、ホモジナイゼーション、微粒化、研磨、ジェットミリング及びボールミリングから成る群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
ステップd)の前記せん断力発声法が、音波破砕、ホモジナイゼーション、微粒化、研磨、ジェットミリング又はボールミリングから成る群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
a)疎水性の生理活性物質と、逆六方晶相形成性の脂質と、両親媒性物質とを水溶液中で配合するステップと、
b)ステップa)で得た混合物をせん断力発生法により少なくとも乳白色の懸濁液が形成するまで混合するステップと
を含む、請求項1に記載の脂質粒子を調製する方法。
【請求項51】
ステップb)で得た懸濁液を、更に、遠心分離、密度勾配遠心分離、又は重力沈降法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ステップb)で得た懸濁液を更にろ過して大型の脂質粒子を除去する、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
ステップb)で得た懸濁液を、更に、ゲル透過クロマトグラフィ法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記せん断力発声法が、音波破砕、ホモジナイゼーション、微粒化、研磨、ジェットミリング又はボールミリングから成る群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
a)疎水性の生理活性物質と逆六方晶相形成性の脂質とを有機溶媒中で同時溶解させるステップと、
b)ステップa)で得た溶液を水溶液中に注入して懸濁液を形成するステップと、
c)ステップb)で得た混合物から実質的にすべての有機溶媒を除去して第二懸濁液を形成するステップと、
d)両親媒性物質を有機溶媒に溶解させるステップと、
e)ステップc)で得た溶液を水溶液に注入して第三懸濁液を形成するステップと、
f)ステップd)で得た混合物から実質的にすべての有機溶媒を除去して第四懸濁液を形成するステップと、
g)ステップc)及びf)で得た懸濁液をせん断力発生法により混合するステップと
を含む、請求項1に記載の脂質粒子を調製する方法。
【請求項56】
ステップg)で得た懸濁液を、更に、遠心分離、密度勾配遠心分離、又は重力沈降法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ステップg)で得た懸濁液を更にろ過して大型の脂質粒子を除去する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
ステップg)で得た懸濁液を、更に、ゲル透過クロマトグラフィ法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
ステップg)の前記せん断力発声法が、音波破砕、ホモジナイゼーション、微粒化、研磨、ジェットミリング及びボールミリングから成る群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
a)疎水性の生理活性物質と逆六方晶相形成性の脂質とを非水性溶液中で配合するステップと、
b)両親媒性物質を非水性溶液に溶解させるステップと、
ステップa)で得た溶液を水溶液中に注入して懸濁液を形成するステップと、
c)ステップa)で得た溶液を無菌ろ過するステップと、
d)ステップb)で得た溶液を無菌ろ過するステップと、
e)無菌の水溶液又は無菌水をステップc)で得た無菌ろ過した溶液と配合して懸濁液を形成するステップと、
f)無菌の水溶液又は無菌水をステップd)で得た無菌ろ過した溶液と配合して懸濁液を形成するステップと、
g)ステップe)で得た懸濁液から非水性溶媒を無菌蒸発法、透析、又はダイアフィルトレーションにより除去して水性懸濁液を形成するステップと、
h)ステップf)で得た懸濁液から非水性溶媒を無菌蒸発法、透析、又はダイアフィルトレーションにより除去して水性懸濁液を形成するステップと、
i)ステップg)で得た水性懸濁液及びステップh)で得た水性懸濁液を配合するステップと、
j)ステップi)で得た混合物をせん断力発生法により少なくとも乳白色の懸濁液が形成するまで混合するステップと
を含む、請求項1に記載の脂質粒子を無菌的に調製する方法。
【請求項61】
ステップj)で得た懸濁液を、更に、遠心分離、密度勾配遠心分離、又は重力沈降法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ステップj)で得た懸濁液を更にろ過して大型の脂質粒子を除去する、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
ステップj)で得た懸濁液を、更に、ゲル透過クロマトグラフィ法で分画して特定のサイズ分布を持つ粒子を得る、又は、大型の脂質粒子を除去する、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
ステップj)の前記せん断力発声法が、音波破砕、ホモジナイゼーション、微粒化、研磨、ジェットミリング又はボールミリングから成る群より選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
a)前記脂質粒子を5%
wt/vol の凍結保護物質溶液に加えて懸濁液を形成するステップと、
b)ステップa)で得た懸濁液を0℃未満の温度で真空乾燥させて真空乾燥済みの脂質粒子を形成するステップと
を含む、請求項1に記載の脂質粒子を凍結乾燥させる方法。
【請求項66】
前記凍結保護物質が乳糖である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記真空乾燥済み脂質粒子を更に処置して粉末を形成する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
更なる処理が研磨、ボールミリング又はジェットミリングを含む、請求項65に記載の方法。
請求項4、5、6、7、又は8のいずれかに記載の脂質粒子を治療上有効量、患者に投与するステップを含む、患者の肺疾患を治療する方法。
【請求項69】
請求項1に記載の脂質粒子と、その使用に関する指示とを含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−523151(P2008−523151A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546837(P2007−546837)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/045121
【国際公開番号】WO2006/068890
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(506315099)トランセイブ, インク. (9)
【氏名又は名称原語表記】TRANSAVE, INC.
【住所又は居所原語表記】Princeton Corporate Plaza, 11 Deer Park Drive, Suite 117, MonmouthJunction, NJ 08852−1923 (US).
【Fターム(参考)】