生産管理システムおよび生産管理方法
【課題】製造設備における処理時間を高精度に予測することができ、高精度なロット進行計画を作成することができる生産管理システムおよび生産管理方法を提供する。
【解決手段】ロット処理データ抽出部5は、各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する。パラメータ算出部6は、抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に対応する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する。そして、処理時間予測部8は、上記算出したモデルパラメータおよびモデル式定義部7に登録された対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する。
【解決手段】ロット処理データ抽出部5は、各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する。パラメータ算出部6は、抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に対応する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する。そして、処理時間予測部8は、上記算出したモデルパラメータおよびモデル式定義部7に登録された対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の製造装置を備えた半導体装置等の生産ラインの生産管理を行う生産管理システムおよび生産管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの製造工程では、製造プロセスがより複雑になり、製造リードタイムの短縮および納期遵守が求められている。そのため、高精度なロット進行計画に基づいて、半導体デバイスを製造することが必要になっている。ロット進行計画の作成には、生産シミュレーターが使用されている。生産シミュレーターは、生産ラインでのロット処理状況および設備稼働状況に応じて、一定期間ごとに、生産ラインに属する各製造装置にロットを最適に割り当てる。高精度なロット進行計画の作成のため、生産シミュレーターがロットを割り当てる演算に使用する、各製造装置に投入されたロットの予測処理時間を高精度化することが今後益々重要になる。
【0003】
従来、予測処理時間は、ロットに属する基板枚数(ロットサイズ)を変数とする一次関数で表現されたモデル式(設備モデル式)により算出されている(例えば、特許文献1等参照。)。図11は、従来の生産管理システムを示す概略構成図である。図11に示すように、複数の製造装置(設備1〜設備n)からなる生産ライン101には、各製造装置における予測処理時間を算出する設備処理時間算出装置110と、予測処理時間に基づいてロット進行計画を立案する生産シミュレーター120とが接続されている。
【0004】
設備処理時間算出装置110は、ロット処理履歴管理部103、ロット処理データ抽出部104、データ表示部105、処理時間算出部106、および予測処理時間データベース107から構成されている。ここで、ロット処理履歴管理部103は、製造装置ごとに、1つのロットを1つの処理条件で処理するのに要した実際の処理時間データを管理する。例えば、その製造装置が、1つのロットを処理するのに要した時間をロットサイズおよび処理条件と関連づけて格納している。それらのデータは、生産ライン101を構成する各製造装置と接続されたデータ収集部102が、製造装置にロットが投入された時刻、当該ロットが製造装置から搬出された時刻、およびロットサイズ等の情報を収集し、ロット処理履歴管理部103に記録する。
【0005】
また、ロット処理データ抽出部104は、予測処理時間を算出する対象の製造装置において、同一の処理条件で処理が既に実施されたロットに関するデータを、ロット処理履歴管理部103から抽出する。データ表示部105は、ロット処理データ抽出部104により、抽出されたデータを、例えば、モニタ上にプロット表示する。その表示されたデータに基づいて、上述の設備モデル式が求められる。
【0006】
処理時間算出部106は、設備モデル式により、対応する製造装置において、現在生産ライン101に投入されているロットおよび以降で投入されるロットの予測処理時間を算出する。算出された予測処理時間は、予測処理時間を算出したロットを特定する情報および製造装置を特定する情報と関連づけて予測処理時間データベース107に格納される。
【0007】
生産シミュレーター120は、生産ライン101に投入された各ロットのプロセスフローおよびロット割付を行うための種々のディスパッチルールにしたがって複数のロット進行計画を立案し、算出された各製造装置における予測処理時間、および設備のトラブルやメンテナンスによる設備停止率等の各種統計データを用いて各ロット進行計画による生産を模擬再現する。そして、例えば、最も生産効率の高いロット進行計画を最適なロット進行計画として出力する。生産シミュレーター120から出力されたロット進行計画は、ロットディスパッチシステム111および通信部112を経由して、生産ライン101を構成する各製造装置に伝えられる。ここでは、ロットディスパッチシステム111が、生産シミュレーター120で作成されたロット進行計画(各製造装置でのロット処理順を示すデータ)に基づき、各製造装置での現在の仕掛りロットに対し、生産シミュレーター120が指定したロット処理順で処理する指示を各製造装置へ送信する。
【0008】
図12は、従来の設備処理時間算出装置110において使用される設備モデル式により算出される予測処理時間と、その製造装置での実際の処理時間とを示す図である。図12において、横軸はロットサイズに対応し、縦軸は処理時間に対応する。また、図12では、予測処理時間の算出に使用された設備モデル式を破線で示し、現実の処理時間を実線で示している。
【0009】
上述のように、予測処理時間は、設備モデル式である一次関数により算出される。例えば、予測処理時間Y(sec)は、2枚目以降の基板に対する1枚あたりの処理時間a(sec)、ロット内の1枚目の基板に対する処理時間b(sec)、ロットサイズがX(枚)である場合、以下の式(1)により表現される。
【0010】
Y=a*(X-1)+b ・・・(1)
【0011】
上述したように、1枚あたりの処理時間aおよびロット内の1枚目の基板に対する処理時間bは、図12に示すデータ、すなわち、既取得のデータに基づいて算出される。具体的には、作業者が、図12に示す実測データのばらつき等を考慮し、経験と勘に基づいて一次関数で直線近似を行い、1枚あたりの処理時間a、ロット内の1枚目の基板に対する処理時間bを決定している。なお、図12の例では、a=154.2(sec/枚)、b=913.5(sec)である。
【特許文献1】特開2004−334643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の処理時間予測法では、以下のような複数の課題が存在する。
【0013】
上述のように、ロット処理履歴管理部103では、現実の処理時間をロットサイズと関連づけて格納している。そのため、取得された現実の処理時間のサンプル数が著しく少ない場合(例えば、図12において、ロットサイズが小さい領域D1)、設備モデル式のモデルパラメータ(式1のa、b)を精度よく求めることができない。その結果、算出した予測処理時間の精度も悪いという課題がある。
【0014】
また、製造装置が、複数の処理室(以下、チャンバーという。)を有するマルチチャンバー構造である場合、一部のチャンバーがトラブル等で使用不可能になると、処理できるチャンバー数が少なくなる。この場合、その製造装置がロットの処理に要する時間は、全てのチャンバーを使用できる場合に比べて長くなる。その結果、ロット処理履歴管理部103に格納されたデータの中に、他のロットの処理時間とは大きく異なる特異点のようなデータが存在する(例えば、図12において、同一のロットサイズの他のデータ群から離れたデータD2)。しかしながら、上述の従来法では、製造装置のチャンバー稼動状況を把握できないため、特異点のようなデータが、一部のチャンバーが使用不可状態であったのか、他の要因で処理時間が大きくなったのかを判別することができない。したがって、一部のチャンバーが使用不可になった場合、予測処理時間を精度よく算出することが困難であるという課題もある。
【0015】
さらに、ロット処理データ抽出部104では、現実の処理時間をロットサイズごとに格納している。そのため、現実の処理時間には、製造装置に固有の、処理時間の変動要素を含む動作(ガスクリーニング、ウエハ入れ替え動作、ロットの連続処理等)に起因するばらつきが含まれている。このような変動要素が含まれた状態で取得された処理時間が、ロット処理データ抽出部104に格納されると、処理時間データのばらつきが大きくなる(例えば、図12において、処理時間ばらつきが大きいデータ群D3)。すなわち、設備モデル式のモデルパラメータを精度よく求めることができず、その結果、算出した予測処理時間の精度も悪いという課題がある。加えて、処理時間データのばらつきについて、作業者が判断する作業が必要となり、モデルパラメータの算出を自動化することができないという課題もある。
【0016】
またさらに、従来法では、設備モデル式が、単一の一次関数で表現されている。そのため、製造装置内での基板処理時に処理待ちが発生する設備(例えばマルチチャンバー設備)においては、現実の処理時間と設備モデル式との間の誤差が大きくなる(図12の実線と破線を参照。)。そのため、予測処理時間を精度よく算出できないという課題がある。
【0017】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、製造設備における処理時間を高精度に予測することができ、高精度なロット進行計画を作成することができる生産管理システムおよび生産管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理を行う生産管理システムを前提としている。そして、本発明に係る生産管理システムは、ロット処理データ抽出部、モデル式定義部、パラメータ算出部、および処理時間予測部を備える。ロット処理データ抽出部は、各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する。モデル式定義部は、製造装置における予測処理時間の算出に使用する、各製造装置の処理動作に基づいた複数の設備モデル式を格納する。パラメータ算出部は、上記抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に対応する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する。そして、処理時間予測部は、上記算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する。
【0019】
上記構成により、ロット処理時の設備稼働状況を把握することができ、例えば、マルチチャンバー型の製造装置において、チャンバーの稼動状況等の設備稼働状況に応じたモデルパラメータを抽出することができる。したがって、製造装置における予測処理時間を高精度に算出することができる。加えて、製造装置の処理動作に応じた設備モデル式を使用するため、製造装置における予測処理時間を高精度に算出することができる。
【0020】
上記生産管理システムは、各製造装置から、上記ロットの処理状況を示すデータおよび上記製造装置の稼働状況を示すデータを収集するデータ収集部と、各製造装置について算出された上記予測処理時間に基づいて、各製造装置へのロット進行計画を立案する生産シミュレーターとをさらに備えてもよい。これにより、高精度なロット進行計画を作成することができる。
【0021】
また、ロットの処理状況を示すデータがロットに属する基板ごとに収集され、上記ロット処理データは、処理時間と設備稼働状況とがロットに属する基板ごとに対応づけられる構成であることが好ましい。このような対応づけは、例えば、ロット処理データを、ロットの処理状況を示すデータと、製造装置の稼働状況を示すデータとを、時間軸により関連づけることにより抽出する構成により実現可能である。
【0022】
本構成によれば、ロットに属するウエハ枚数内の、各ウエハ枚数について、処理時間データを得ることができる。したがって、1ロット分のロット処理データであっても、モデルパラメータを算出することができる。
【0023】
さらに、上記モデルパラメータは、ロット処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定パラメータと、製造装置へのロットの投入タイミングにより変動する変動パラメータとを含み、固定パラメータと変動パラメータとが別々に算出されることが好ましい。これにより、ロット処理データのばらつきを除外した状態でモデルパラメータを一義的に算出することができる。
【0024】
加えて、上記生産管理システムは、前記パラメータ算出部が算出したモデルパラメータを監視し、当該モデルパラメータが、先に算出された対応するモデルパラメータに対して、予め設定された許容量を超える変動が発生した場合、モデルパラメータを更新する変動監視部をさらに備える構成であってもよい。これにより、製造装置の処理状況の変動に追随して、製造装置の予測処理時間の見直しを自動ですることができる。また、変動発生原因の調査により、設備の異常処理等も早期に発見することもできる。
【0025】
一方、他の観点では、本発明は、複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理方法を提供することもできる。すなわち、本発明に係る生産管理方法は、まず、各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータを、各製造装置から収集する。次いで、ロットの処理状況を示すデータおよび製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する。当該抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に処理動作に応じてそれぞれ定義された、製造装置における予測処理時間の算出に使用する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する。続いて、算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する。そして、各製造装置について算出された予測処理時間に基づいて、各製造装置へのロット進行計画を立案する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、生産ラインの各製造設備の予測処理時間を高精度に算出することが可能となる。この結果、高精度なロット進行計画を作成することができ、生産ラインを効率的に稼動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、半導体装置生産ラインの生産管理システムおよび生産管理方法として本発明を具体化している。
【0028】
図1は本発明の実施形態に係る生産管理システムを示す概略構成図である。図1に示すように、生産管理システム30は、設備処理時間算出装置10および生産シミュレーター20を備える。生産管理システム30は、従来と同様に、複数の製造装置(設備1〜設備n)からなる生産ライン1と接続されている。
【0029】
設備処理時間算出部10は、ロット処理履歴管理部3、設備稼働履歴管理部4、ロット処理データ抽出部5、パラメータ算出部6、モデル式定義部7、および処理時間予測部8を備える。
【0030】
ロット処理履歴管理部3は、各製造装置において処理されたロットの処理状況を示すデータを管理する。ここでロット処理状況を示すデータとは、各製造装置において、ロットを処理する際の動作(以下、ロット処理イベントという。)に関する全てのデータ(ロット単位の処理データ、ウエハ(基板)単位の処理データ、および設備の機構部動作データ等)を指す。例えば、複数のチャンバーを備える製造装置では、当該製造装置にロットがセットされた時刻、当該ロットに属するウエハが各チャンバーへ搬入された時刻、当該ウエハの搬入先チャンバー、当該ウエハがチャンバーから搬出された時刻、当該ロットの処理が完了した時刻等が、ロット処理イベントに関するデータに含まれる。ロット処理イベントに関するデータは、ロット処理イベントを特定するための情報であるロット処理イベントID、およびロットを特定するための情報であるロットIDと関連づけて、ロット処理履歴管理部3に格納される。
【0031】
また、設備稼働履歴管理部4は、各製造装置の稼働状況を示すデータを管理する。ここで製造設備の処理状況を示すデータとは、各製造装置の稼動状態(以下、設備稼働イベントという。)に関する全てのデータ(設備チャンバー稼働データ、設備本体稼働データ、設備の機構部稼働データ等)を指す。例えば、複数のチャンバーを備える製造装置では、各チャンバーの稼動状態(正常稼動中、停止中等)、当該状態であった時刻等が、設備イベントに関するデータに含まれる。設備稼働イベントに関するデータは、設備稼働イベントを特定するための情報である設備稼働イベントIDと関連づけて、設備稼働履歴管理部4に格納される。
【0032】
なお、ロット処理イベントに関するデータおよび設備稼働イベントに関するデータは、データ収集部2によって生産ライン1を構成する製造装置ごとに収集される。収集されたデータは、製造装置を特定するための情報である設備IDと関連づけて、ロット処理履歴管理部3、設備稼働履歴管理部4に格納される。また、データ収集部2は、ロットIDに基づいて、ロットサイズおよび各製造装置において当該ロットに適用された処理条件を特定するための情報であるレシピIDを取得し、ロット処理履歴管理部3に格納する。ロットサイズおよびレシピIDは、例えば、生産ライン1の進捗状況を管理するMES(Manufacturing Execution System)等から取得される。
【0033】
一方、ロット処理データ抽出部5は、ロット処理履歴管理部3が管理するロット処理イベントに関するデータ、および設備稼働履歴管理部4が管理する設備稼働イベントに関するデータから、既処理ロットについて、ロットごとに、各ウエハの処理時間と各ウエハ処理時の設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを、後に詳述する手法により抽出する。
【0034】
ロット処理データ抽出部5により抽出されたロット処理データは、パラメータ算出部6に入力される。パラメータ算出部6は、入力されたロット処理データに基づいて、後で詳述する手法により、モデル式定義部7に登録されている設備モデル式に含まれるモデルパラメータを算出する。処理時間予測部8は、算出されたモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、各製造装置の予測処理時間を算出する。
【0035】
図2は、ロット処理データ抽出部5の構成をより詳細に示す機能ブロック図である。図2に示すように、ロット処理データ抽出部5は、ウエハ単位データ作成部51、設備稼働データ作成部52、およびロット処理データ作成部53から構成されている。
【0036】
ウエハ単位データ作成部51は、ロット処理履歴管理部3に保持されているデータから、製造装置ごとに、ロットに属する各ウエハの処理時間データを作成するために必要なデータを抽出する。すなわち、ウエハ単位データ作成部51は、予め設定されているロット処理イベントIDおよびロットIDをキーとして、当該ロット処理イベントIDに対応するウエハ単位のデータを、ロット処理履歴管理部3からロットごとに抽出する。そして、製造設備、処理条件、ロット、およびウエハ単位の処理時間データを関連づけたウエハ処理時間データ表を作成する。
【0037】
図3は、ウエハ単位データ作成部51が保持するウエハ処理時間データ表の一例を示す図である。ウエハ処理時間データ表は、ロット処理履歴管理部3から抽出した、装置ID、レシピID、処理順、ロットID、ロットに属する各ウエハの処理開始時刻と処理終了時刻、各ウエハの処理に使用されたチャンバーIDを関連づけて記録するテーブルである。ここで、チャンバーIDは、複数のチャンバーを備える製造装置において、ウエハ処理に使用したチャンバーを特定するための情報である。例えば、図3の例では、設備IDが「設備1」である製造装置において、レシピIDが「R100」である処理条件で処理された「ロットa」に属する2枚目のウエハに対する処理が、「チャンバー2」において、「2006/12/25 10:28:20」から「2006/12/25 10:33:20」の間に実施されたことを示している。また、本実施形態では、ロット処理履歴管理部3から抽出した各ウエハの処理開始時刻および処理終了時刻から各ウエハの処理が完了した時点での、当該ロットの累積処理時間を算出し、ウエハ処理時間データ表に記録している。なお、図3は、12枚のウエハからなるロットに対して作成されたウエハ処理時間データ表である。
【0038】
ウエハ単位データ作成部51による処理時間データ表の作成と並行して、設備稼働データ作成部52は、設備稼働履歴管理部4が保持する各製造装置の設備稼働イベントに関するデータから、製造装置ごとに、各チャンバーの稼動データを作成するために必要なデータを抽出する。すなわち、設備稼働データ作成部52は、予め設定されている設備イベントIDをキーとして、当該設備稼働イベントに対応する稼働状況に関するデータを設備稼働履歴管理部4から抽出する。そして、製造装置、その製造装置が備えるチャンバー、および当該製造設備の稼働状況に関するデータを関連づけた設備稼働状況表を作成する。
【0039】
図4は、設備稼働データ作成部52が保持する設備稼働状況表の一例を示す図である。設備稼働状況表は、設備稼働履歴管理部4から抽出した、設備ID、チャンバーID、チャンバー状態、およびチャンバーがそのチャンバー状態であった開始時刻と終了時刻を、関連づけて記録するテーブルである。例えば、図4の例では、設備IDが「設備1」である製造装置の「チャンバー1」が、「2006/12/25 11:23:20」から「2006/12/25 11:33:45」の間、処理ができない状況(「ダウン」)にあったことを示している。なお、図4では、2つのチャンバーを備えた製造装置に対して作成された設備稼働状況表を例示している。
【0040】
以上のようにして、ウエハ処理時間データ表と設備稼働状況表とが作成されると、ロット処理データ作成部53は、ウエハ処理時間データ表および設備稼働状況表に基づいて、、各ウエハの処理時間と各ウエハ処理時の設備稼働状況とを対応づけたロット処理データ表を作成する。ここでは、ロット処理データ作成部53は、ウエハ処理時間データ表に記録されたデータと、設備稼働状況表に記録されたデータとを、時間軸により関連づけることによりロット処理データを抽出する。すなわち、ウエハ処理時間データ表に記録された各ウエハの処理開始時刻と処理終了時刻との間の時間に対応する、各チャンバーのチャンバー状態を設備稼働状況表から読み出し、ウエハ処理時間データ表に記録されたデータと読み出したデータとを関連づける。
【0041】
図5は、ロット処理データ作成部53が保持するロット処理データ表の一例を示す図である。ロット処理データ表は、設備ID、レシピID、処理順、ロット処理開始時刻、ロット処理終了時刻、チャンバーID、当該製造装置の全チャンバーの稼動状態、および累積処理時間を関連づけて記録するテーブルである。図5の例では、当該ロットは、設備IDが「設備1」である製造装置において、レシピ「R100」の処理条件により、「2006/12/25 10:15:20」から「2006/12/25 11:18:20」の間に処理され、当該ロットの2枚目のウエハ処理時に、当該製造装置のチャンバー2が「ダウン」していたことが記録されている。ロット処理データ表は、各製造装置ごとに、既処理済のロット別に作成されている。また、本実施形態では、各製造装置においてロット処理が完了する都度、ロット処理データ抽出部5がロット処理データ表を作成する構成になっている。抽出された各ロット処理データ表は、ロット処理データ抽出部5に保持される。
【0042】
以上のようにして作成されたロット処理データ表に基づいて、パラメータ算出部6はモデルパラメータを算出する。図6は、パラメータ算出部6のより詳細な構成を示す機能ブロック図である。図6に示すように、パラメータ算出部6は、パラメータ演算部61およびパラメータ定義部62から構成されている。
【0043】
パラメータ演算部61は、ロット処理データ抽出部5で作成されたロット処理データ表およびパラメータ定義部62が保持するモデルパラメータ対応表に基づいて、各製造装置の設備モデル式のモデルパラメータを算出する。
【0044】
図7は、パラメータ定義部62が保持するモデルパラメータ対応表を示す図である。図7に示すように、モデルパラメータ対応表は、設備ID、設備モデルID、および算出すべきモデルパラメータを関連づけて記録するテーブルである。ここで、設備モデルIDは、後述の設備モデル定義部7に登録されている各種設備モデル式を特定するための情報である。図7では、算出すべきモデルパラメータを「○」で示し、算出を要しないモデルパラメータを「−」で示している。なお、モデルパラメータaは、ロットの2枚目以降のウエハ1枚あたりの処理時間である。モデルパラメータbは、ロットの先頭ウエハの処理時間である。モデルパラメータb2は、ロット処理前待ち時間である。モデルパラメータcは、バッチサイズ(ウエハ処理単位)である。モデルパラメータdは、バッチ交換時のウエハ入れ替え時間である。
【0045】
ここで、設備モデル式について説明する。図8は、モデル式定義部7に登録されている設備モデル式定義表を示す図である。図8に示すように、設備モデル式定義表は、設備モデルIDと設備モデル式とを関連づけて記録するテーブルである。なお、図8では、説明のため、設備モデル名、モデルパラメータ、および各設備モデルのグラフを図示しているが、これらは、設備モデル式定義表に必須の要素ではない。図8では、設備モデル式として、4つの設備モデル式、「枚葉型」、「枚葉段差型」、「バッチ注入型」、および「バッチ洗浄型」を例示している。例えば、1つのチャンバーで1枚ずつウエハを処理する製造装置には、「枚葉型」の設備モデル式が使用される。複数のチャンバーでそれぞれ1枚ずつウエハを処理する製造装置には、「枚葉段差型」の設備モデル式が使用される。ロットサイズ以下の複数枚のウエハを同時に処理する製造装置には、「バッチ注入型」の設備モデル式が使用される。ロットサイズを越える複数枚のウエハを同時に処理可能な製造装置には、「バッチ洗浄型」の設備モデル式が使用される。
【0046】
以上に例示した各設備モデル式は、処理枚数Xと処理時間Yとが以下に示す式で表現される。
【0047】
枚葉型 Y=a*(X-1)+b ・・・(2)
枚葉段差型 Y=a*(X-1)+b+floor((X-1)/c)*d ・・・(3)
バッチ注入型 Y=floor((X-1)/c)*d ・・・(4)
バッチ洗浄型 Y=b ・・・(5)
【0048】
なお、式3および式4において、関数floor(X)は、引数Xの小数点以下を切り捨てる端数処理を行う関数である。
【0049】
パラメータ演算部61は、所定の時間間隔で、各製造装置のレシピごとにモデルパラメータを算出する。パラメータ演算部61は、まず、モデルパラメータ算出対象の製造装置について、モデルパラメータ対応表から算出すべきモデルパラメータを特定する。例えば、図7の事例において、設備IDが「設備2」である製造装置のモデルパラメータを算出する場合、算出すべきモデルパラメータは、a、b、b2、dと特定される。
【0050】
パラメータ演算部61は、算出すべきモデルパラメータを特定すると、ロット処理データ抽出部5から、対応する装置ID、算出対象のレシピID、および算出対象のチャンバーIDが記録されているロット処理データ表から、処理順と累積処理時間とを順に読み出し、モデルパラメータを算出する。ここでは、モデルパラメータa、b2、dは、全データの平均値として求められる。モデルパラメータbは、全データの最小値として求められる。そして、モデルパラメータcは、製造装置ごとに定義されている。
【0051】
図9は、設備IDが「装置2」である製造装置について、ロット処理データ抽出部5から読み出したロット処理データと、各モデルパラメータa、b、b2、c、dとの関係を示す図である。図9に示すように、ロット処理データ抽出部5から読み出した複数ロットの処理枚数に対する処理時間の依存性は、ばらつきを有している。当該ばらつきは、上述のように、製造装置に固有の、処理時間の変動要素を含む動作(ガスクリーニング、ウエハ入れ替え動作、ロットの連続処理等)に起因する。また、本製造装置は、6枚のウエハを1バッチとして、各ウエハを1枚ずつ処理する2つのチャンバーを備えており、抽出したデータでは、各チャンバーが正常に稼動している。
【0052】
この事例では、パラメータ演算部61は、まず、各ロットの1枚目から5枚目のウエハについて、次ウエハの累積処理時間と当該ウエハの累積処理時間の差を算出するとともに、各ロットの6枚目から11枚目のウエハについて、次ウエハの累積処理時間と当該ウエハの累積処理時間の差を算出する。そして、これらの差の平均値をモデルパラメータaとして算出する。また、パラメータ演算部61は、各ロットの先頭ウエハの処理時間中での最小の累積処理時間を、モデルパラメータbとして算出する。各ロットの1枚目から12枚目のそれぞれウエハについて、累積処理時間の最大値と最小値との差を算出し、その平均値をモデルパラメータb2として算出する。さらに、各ロットの7枚目のウエハと6枚目のウエハの累積処理時間の差の平均値をモデルパラメータdとして算出する。モデルパラメータcは、「6」と定義されている。図9では、このようにして算出された各モデルパラメータを適用した、設備モデル式による処理時間(予測処理時間)を、太線Yとして示している。
【0053】
このようなモデルパラメータの算出は、生産ライン1を構成する全ての製造装置について、レシピIDごと、かつ、チャンバーの稼動状態(動作中、停止中)ごとに行われる。
【0054】
以上のように、本実施形態では、ロット処理データが、製造装置の稼働状況に関するデータと、製造設備のロット処理に関するデータとを時間軸で関連づけることにより作成される。そのため、ロット処理データにより、そのロットが処理されていたときの、チャンバーの稼動状況を把握することができる。したがって、ロット処理データを参照することにより、処理時間が長い処理時間データに対し、その原因が一部のチャンバーがトラブル等で使用不可能であったためであるか、正常稼動中にも関わらず、何らかの他の不具合により突発的に発生したためであるかを判別することができる。また、当該ロット処理データを使用することにより、チャンバーの稼働状況が、例えば、一部のチャンバーがトラブル等で使用不可能となっている等の特定の状況下でのモデルパラメータを算出するも可能となる。
【0055】
例えば、図9の太線Y2は、「チャンバー1」が停止した状態のロット処理データを抽出し、上述の手法により算出したモデルパラメータを適用した、設備モデル式による処理時間(予測処理時間)である。
【0056】
また、本実施形態では、ロット処理データは、ウエハごとにデータが記録されている。そのため、少なくとも1ロット分のロット処理データがあれば、当該ロットに属するウエハ枚数内の、各ウエハ枚数について、処理時間データを得ることができる。例えば、ロットサイズが12枚であれば、1〜12枚のそれぞれの枚数について、処理時間データが得られる。したがって、従来とは異なり、少なくとも1ロット分のロット処理データがあれば、モデルパラメータを算出することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、モデルパラメータを算出する際に、モデルパラメータを、ロットの処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定時間パラメータ(a、b、c、d)と、ロットの投入間隔等ロットの流れによって変動する変動パラメータb2として、それぞれ別々に算出している。そのため、処理時間データのばらつき要因となっている製造装置固有の変動要素を含む動作を切り分けてモデルパラメータを算出することができる。その結果、モデルパラメータを、作業者の判断を要することなく、一義的かつ自動的に決定することができる。
【0058】
また、本実施形態において固定時間パラメ−タ(a、b、c、d)と切り分けて算出された変動パラメータb2は、製造装置のロットの最大処理間隔を示している。つまり、変動パラメータb2以内の時間間隔で製造装置にロットを投入すれば、製造装置が稼動ロス無く連続的に処理が可能であることを意味する。本実施形態では、変動パラメータb2は製造装置へロットを配送する自動搬送システムの最大ロット搬送時間の許容目標値として使用されている。
【0059】
パラメータ算出部6は、モデルパラメータを算出する都度、算出したモデルパラメータを、設備ID、設備モデルIDとともに、処理時間予測部8に格納する。図10は、処理時間予測部8が保持するモデルデータ一覧表の一例を示す図である。モデルデータ一覧表は、設備ID、設備モデル式、レシピID、稼動チャンバー、およびモデルパラメータを対応づけて記録するテーブルである。ここで、設備モデル式は、設備モデル式定義部7から取得される。また、図10において、「稼動チャンバー」の「CH1,CH2」は、チャンバー1とチャンバー2がともに正常に稼動している場合を示している。同様に、「CH1」は、チャンバー1のみが正常に稼動している場合を示し、「CH2」は、チャンバー2のみが正常に稼動している場合を示している。パラメータ算出部6において、生産ライン1の全ての製造装置について、レシピIDごとかつチャンバーの稼動状態ごとのモデルパラメータ算出が完了すると、モデルパラメータ一覧表には、全てのモデルパラメータが記録されることになる。
【0060】
処理時間予測部8は、モデルパラメータ一覧表に記録された設備モデル式とモデルパラメータを用いて、その製造装置に以降で投入されるロットの処理時間を予測する。ここでは、処理時間予測部8は、生産シミュレーター20から入力される条件(設備ID、レシピID、チャンバー稼動状態、およびロットサイズ)にしたがって予測処理時間を算出し、算出結果を生産シミュレーター20に入力する構成になっている。
【0061】
生産シミュレーター20は、生産ライン1に投入された各ロットのプロセスフローおよびロット割付を行うための種々のディスパッチルールにしたがって複数のロット進行計画を立案し、算出された各製造装置における予測処理時間、および設備のトラブルやメンテナンスによる設備停止率等の各種統計データを用いて各ロット進行計画による生産を模擬再現する。そして、例えば、最も生産効率の高いロット進行計画を最適なロット進行計画として出力する。生産シミュレーター20から出力されたロット進行計画は、ロットディスパッチシステム11および通信部12を経由して、生産ライン1を構成する各製造装置に伝えられる。ここでは、ロットディスパッチシステム11が、生産シミュレーター20で作成されたロット進行計画に基づき、各製造装置での現在の仕掛りロットに対し、生産シミュレーター20が指定したロット処理順で処理する指示を各製造装置へ送信する。
【0062】
以上の構成によれば、高精度に算出された各製造設備の予測処理時間により、高精度なロット進行計画を作成することができ、生産ラインを極めて効率よく稼動させることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、処理時間予測部8のモデルパラメータ一覧表は、上述のように所定の時間間隔で更新されている。しかしながら、パラメータ算出部6が算出し、処理時間予測部8に入力したモデルパラメータを、変動監視部9が監視する構成を採用してもよい。この場合、モデルパラメータ一覧表に記録されたモデルパラメータとの比較により、予め設定された許容量(割合や大きさ等)を超える変動を確認した場合に、変動監視部9がモデルパラメータ一覧表を更新する。
【0064】
また、上述の構成において、ロット処理履歴管理部3、設備稼働履歴管理部4、モデル式定義部7は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段により構成することができ、ロット処理データ抽出部5、パラメータ算出部6、処理時間予測部8、変動監視部9、および生産シミュレーター10は、例えば、専用の演算回路や、プロセッサとRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを備えたハードウエア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することもできる。
【0065】
以上説明したように、本発明では、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出ロット処理データを抽出し、製造装置の処理動作に応じた複数の設備モデル式を使用してモデルパラメータを算出する。このため、ロット処理時の設備稼働状況を把握することができ、例えば、マルチチャンバー型の製造装置において、チャンバーの稼動状況等の設備稼働状況に応じたモデルパラメータを高精度に抽出することができる。したがって、製造装置における予測処理時間を高精度に算出することができる。また、このようにして算出された高精度な予測処理時間を使用することにより、高精度なロット進行計画を作成することができる。その結果、生産ラインを効率よく稼動させることができる。
【0066】
また、本発明では、モデルパラメータが、ロット処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定パラメータと、製造装置へのロットの投入タイミング等により変動する変動パラメータとを含み、固定パラメータと変動パラメータとが別々に算出されている。このため、ロット処理データのばらつきを除外した状態でモデルパラメータを一義的に算出することができる。
【0067】
なお、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変形および応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、処理時間と設備稼働状況とがロットに属するウエハごとに対応づけられたロット処理データを使用する構成としたが、ウエハ単位に限らず、ロット単位であってもよい。この場合は、設備稼働時間中における正味の処理時間と処理待ちロス時間の定量化を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、高精度なロット進行計画を作成することができるとともに、生産ラインを効率よく稼動させることができるという効果を有し、生産管理システムおよび生産管理方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態における生産管理システムを示す概略構成図
【図2】本発明の一実施形態におけるロット処理データ抽出部を示す機能ブロック図
【図3】本発明の一実施形態におけるウエハ処理時間データ表を示す図
【図4】本発明の一実施形態における設備稼働状況表を示す図
【図5】本発明の一実施形態におけるロット処理データ表を示す図
【図6】本発明の一実施形態におけるパラメータ算出部を示す機能ブロック図
【図7】本発明の一実施形態におけるモデルパラメータ対応表を示す図
【図8】本発明の一実施形態における設備モデル式定義表を示す図
【図9】本発明の一実施形態における予測処理時間と実際の処理時間とを示す図
【図10】本発明の一実施形態におけるモデルデータ一覧表を示す図
【図11】従来の生産管理システムを示す概略構成図
【図12】従来の予測処理時間と実際の処理時間とを示す図
【符号の説明】
【0070】
1 生産ライン
2 データ収集部
3 ロット処理履歴管理部
4 設備稼働履歴管理部
5 ロット処理データ抽出部
6 パラメータ算出部
7 設備モデル定義部
8 処理時間予測部
9 変動監視部
10 設備処理時間算出装置
20 生産シミュレーター
30 生産管理システム
51 ウエハ単位データ作成部
52 設備稼働データ作成部
53 ロット処理データ作成部
61 パラメータ演算部
62 パラメータ定義部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の製造装置を備えた半導体装置等の生産ラインの生産管理を行う生産管理システムおよび生産管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの製造工程では、製造プロセスがより複雑になり、製造リードタイムの短縮および納期遵守が求められている。そのため、高精度なロット進行計画に基づいて、半導体デバイスを製造することが必要になっている。ロット進行計画の作成には、生産シミュレーターが使用されている。生産シミュレーターは、生産ラインでのロット処理状況および設備稼働状況に応じて、一定期間ごとに、生産ラインに属する各製造装置にロットを最適に割り当てる。高精度なロット進行計画の作成のため、生産シミュレーターがロットを割り当てる演算に使用する、各製造装置に投入されたロットの予測処理時間を高精度化することが今後益々重要になる。
【0003】
従来、予測処理時間は、ロットに属する基板枚数(ロットサイズ)を変数とする一次関数で表現されたモデル式(設備モデル式)により算出されている(例えば、特許文献1等参照。)。図11は、従来の生産管理システムを示す概略構成図である。図11に示すように、複数の製造装置(設備1〜設備n)からなる生産ライン101には、各製造装置における予測処理時間を算出する設備処理時間算出装置110と、予測処理時間に基づいてロット進行計画を立案する生産シミュレーター120とが接続されている。
【0004】
設備処理時間算出装置110は、ロット処理履歴管理部103、ロット処理データ抽出部104、データ表示部105、処理時間算出部106、および予測処理時間データベース107から構成されている。ここで、ロット処理履歴管理部103は、製造装置ごとに、1つのロットを1つの処理条件で処理するのに要した実際の処理時間データを管理する。例えば、その製造装置が、1つのロットを処理するのに要した時間をロットサイズおよび処理条件と関連づけて格納している。それらのデータは、生産ライン101を構成する各製造装置と接続されたデータ収集部102が、製造装置にロットが投入された時刻、当該ロットが製造装置から搬出された時刻、およびロットサイズ等の情報を収集し、ロット処理履歴管理部103に記録する。
【0005】
また、ロット処理データ抽出部104は、予測処理時間を算出する対象の製造装置において、同一の処理条件で処理が既に実施されたロットに関するデータを、ロット処理履歴管理部103から抽出する。データ表示部105は、ロット処理データ抽出部104により、抽出されたデータを、例えば、モニタ上にプロット表示する。その表示されたデータに基づいて、上述の設備モデル式が求められる。
【0006】
処理時間算出部106は、設備モデル式により、対応する製造装置において、現在生産ライン101に投入されているロットおよび以降で投入されるロットの予測処理時間を算出する。算出された予測処理時間は、予測処理時間を算出したロットを特定する情報および製造装置を特定する情報と関連づけて予測処理時間データベース107に格納される。
【0007】
生産シミュレーター120は、生産ライン101に投入された各ロットのプロセスフローおよびロット割付を行うための種々のディスパッチルールにしたがって複数のロット進行計画を立案し、算出された各製造装置における予測処理時間、および設備のトラブルやメンテナンスによる設備停止率等の各種統計データを用いて各ロット進行計画による生産を模擬再現する。そして、例えば、最も生産効率の高いロット進行計画を最適なロット進行計画として出力する。生産シミュレーター120から出力されたロット進行計画は、ロットディスパッチシステム111および通信部112を経由して、生産ライン101を構成する各製造装置に伝えられる。ここでは、ロットディスパッチシステム111が、生産シミュレーター120で作成されたロット進行計画(各製造装置でのロット処理順を示すデータ)に基づき、各製造装置での現在の仕掛りロットに対し、生産シミュレーター120が指定したロット処理順で処理する指示を各製造装置へ送信する。
【0008】
図12は、従来の設備処理時間算出装置110において使用される設備モデル式により算出される予測処理時間と、その製造装置での実際の処理時間とを示す図である。図12において、横軸はロットサイズに対応し、縦軸は処理時間に対応する。また、図12では、予測処理時間の算出に使用された設備モデル式を破線で示し、現実の処理時間を実線で示している。
【0009】
上述のように、予測処理時間は、設備モデル式である一次関数により算出される。例えば、予測処理時間Y(sec)は、2枚目以降の基板に対する1枚あたりの処理時間a(sec)、ロット内の1枚目の基板に対する処理時間b(sec)、ロットサイズがX(枚)である場合、以下の式(1)により表現される。
【0010】
Y=a*(X-1)+b ・・・(1)
【0011】
上述したように、1枚あたりの処理時間aおよびロット内の1枚目の基板に対する処理時間bは、図12に示すデータ、すなわち、既取得のデータに基づいて算出される。具体的には、作業者が、図12に示す実測データのばらつき等を考慮し、経験と勘に基づいて一次関数で直線近似を行い、1枚あたりの処理時間a、ロット内の1枚目の基板に対する処理時間bを決定している。なお、図12の例では、a=154.2(sec/枚)、b=913.5(sec)である。
【特許文献1】特開2004−334643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の処理時間予測法では、以下のような複数の課題が存在する。
【0013】
上述のように、ロット処理履歴管理部103では、現実の処理時間をロットサイズと関連づけて格納している。そのため、取得された現実の処理時間のサンプル数が著しく少ない場合(例えば、図12において、ロットサイズが小さい領域D1)、設備モデル式のモデルパラメータ(式1のa、b)を精度よく求めることができない。その結果、算出した予測処理時間の精度も悪いという課題がある。
【0014】
また、製造装置が、複数の処理室(以下、チャンバーという。)を有するマルチチャンバー構造である場合、一部のチャンバーがトラブル等で使用不可能になると、処理できるチャンバー数が少なくなる。この場合、その製造装置がロットの処理に要する時間は、全てのチャンバーを使用できる場合に比べて長くなる。その結果、ロット処理履歴管理部103に格納されたデータの中に、他のロットの処理時間とは大きく異なる特異点のようなデータが存在する(例えば、図12において、同一のロットサイズの他のデータ群から離れたデータD2)。しかしながら、上述の従来法では、製造装置のチャンバー稼動状況を把握できないため、特異点のようなデータが、一部のチャンバーが使用不可状態であったのか、他の要因で処理時間が大きくなったのかを判別することができない。したがって、一部のチャンバーが使用不可になった場合、予測処理時間を精度よく算出することが困難であるという課題もある。
【0015】
さらに、ロット処理データ抽出部104では、現実の処理時間をロットサイズごとに格納している。そのため、現実の処理時間には、製造装置に固有の、処理時間の変動要素を含む動作(ガスクリーニング、ウエハ入れ替え動作、ロットの連続処理等)に起因するばらつきが含まれている。このような変動要素が含まれた状態で取得された処理時間が、ロット処理データ抽出部104に格納されると、処理時間データのばらつきが大きくなる(例えば、図12において、処理時間ばらつきが大きいデータ群D3)。すなわち、設備モデル式のモデルパラメータを精度よく求めることができず、その結果、算出した予測処理時間の精度も悪いという課題がある。加えて、処理時間データのばらつきについて、作業者が判断する作業が必要となり、モデルパラメータの算出を自動化することができないという課題もある。
【0016】
またさらに、従来法では、設備モデル式が、単一の一次関数で表現されている。そのため、製造装置内での基板処理時に処理待ちが発生する設備(例えばマルチチャンバー設備)においては、現実の処理時間と設備モデル式との間の誤差が大きくなる(図12の実線と破線を参照。)。そのため、予測処理時間を精度よく算出できないという課題がある。
【0017】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、製造設備における処理時間を高精度に予測することができ、高精度なロット進行計画を作成することができる生産管理システムおよび生産管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理を行う生産管理システムを前提としている。そして、本発明に係る生産管理システムは、ロット処理データ抽出部、モデル式定義部、パラメータ算出部、および処理時間予測部を備える。ロット処理データ抽出部は、各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する。モデル式定義部は、製造装置における予測処理時間の算出に使用する、各製造装置の処理動作に基づいた複数の設備モデル式を格納する。パラメータ算出部は、上記抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に対応する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する。そして、処理時間予測部は、上記算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する。
【0019】
上記構成により、ロット処理時の設備稼働状況を把握することができ、例えば、マルチチャンバー型の製造装置において、チャンバーの稼動状況等の設備稼働状況に応じたモデルパラメータを抽出することができる。したがって、製造装置における予測処理時間を高精度に算出することができる。加えて、製造装置の処理動作に応じた設備モデル式を使用するため、製造装置における予測処理時間を高精度に算出することができる。
【0020】
上記生産管理システムは、各製造装置から、上記ロットの処理状況を示すデータおよび上記製造装置の稼働状況を示すデータを収集するデータ収集部と、各製造装置について算出された上記予測処理時間に基づいて、各製造装置へのロット進行計画を立案する生産シミュレーターとをさらに備えてもよい。これにより、高精度なロット進行計画を作成することができる。
【0021】
また、ロットの処理状況を示すデータがロットに属する基板ごとに収集され、上記ロット処理データは、処理時間と設備稼働状況とがロットに属する基板ごとに対応づけられる構成であることが好ましい。このような対応づけは、例えば、ロット処理データを、ロットの処理状況を示すデータと、製造装置の稼働状況を示すデータとを、時間軸により関連づけることにより抽出する構成により実現可能である。
【0022】
本構成によれば、ロットに属するウエハ枚数内の、各ウエハ枚数について、処理時間データを得ることができる。したがって、1ロット分のロット処理データであっても、モデルパラメータを算出することができる。
【0023】
さらに、上記モデルパラメータは、ロット処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定パラメータと、製造装置へのロットの投入タイミングにより変動する変動パラメータとを含み、固定パラメータと変動パラメータとが別々に算出されることが好ましい。これにより、ロット処理データのばらつきを除外した状態でモデルパラメータを一義的に算出することができる。
【0024】
加えて、上記生産管理システムは、前記パラメータ算出部が算出したモデルパラメータを監視し、当該モデルパラメータが、先に算出された対応するモデルパラメータに対して、予め設定された許容量を超える変動が発生した場合、モデルパラメータを更新する変動監視部をさらに備える構成であってもよい。これにより、製造装置の処理状況の変動に追随して、製造装置の予測処理時間の見直しを自動ですることができる。また、変動発生原因の調査により、設備の異常処理等も早期に発見することもできる。
【0025】
一方、他の観点では、本発明は、複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理方法を提供することもできる。すなわち、本発明に係る生産管理方法は、まず、各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータを、各製造装置から収集する。次いで、ロットの処理状況を示すデータおよび製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する。当該抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に処理動作に応じてそれぞれ定義された、製造装置における予測処理時間の算出に使用する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する。続いて、算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する。そして、各製造装置について算出された予測処理時間に基づいて、各製造装置へのロット進行計画を立案する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、生産ラインの各製造設備の予測処理時間を高精度に算出することが可能となる。この結果、高精度なロット進行計画を作成することができ、生産ラインを効率的に稼動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、半導体装置生産ラインの生産管理システムおよび生産管理方法として本発明を具体化している。
【0028】
図1は本発明の実施形態に係る生産管理システムを示す概略構成図である。図1に示すように、生産管理システム30は、設備処理時間算出装置10および生産シミュレーター20を備える。生産管理システム30は、従来と同様に、複数の製造装置(設備1〜設備n)からなる生産ライン1と接続されている。
【0029】
設備処理時間算出部10は、ロット処理履歴管理部3、設備稼働履歴管理部4、ロット処理データ抽出部5、パラメータ算出部6、モデル式定義部7、および処理時間予測部8を備える。
【0030】
ロット処理履歴管理部3は、各製造装置において処理されたロットの処理状況を示すデータを管理する。ここでロット処理状況を示すデータとは、各製造装置において、ロットを処理する際の動作(以下、ロット処理イベントという。)に関する全てのデータ(ロット単位の処理データ、ウエハ(基板)単位の処理データ、および設備の機構部動作データ等)を指す。例えば、複数のチャンバーを備える製造装置では、当該製造装置にロットがセットされた時刻、当該ロットに属するウエハが各チャンバーへ搬入された時刻、当該ウエハの搬入先チャンバー、当該ウエハがチャンバーから搬出された時刻、当該ロットの処理が完了した時刻等が、ロット処理イベントに関するデータに含まれる。ロット処理イベントに関するデータは、ロット処理イベントを特定するための情報であるロット処理イベントID、およびロットを特定するための情報であるロットIDと関連づけて、ロット処理履歴管理部3に格納される。
【0031】
また、設備稼働履歴管理部4は、各製造装置の稼働状況を示すデータを管理する。ここで製造設備の処理状況を示すデータとは、各製造装置の稼動状態(以下、設備稼働イベントという。)に関する全てのデータ(設備チャンバー稼働データ、設備本体稼働データ、設備の機構部稼働データ等)を指す。例えば、複数のチャンバーを備える製造装置では、各チャンバーの稼動状態(正常稼動中、停止中等)、当該状態であった時刻等が、設備イベントに関するデータに含まれる。設備稼働イベントに関するデータは、設備稼働イベントを特定するための情報である設備稼働イベントIDと関連づけて、設備稼働履歴管理部4に格納される。
【0032】
なお、ロット処理イベントに関するデータおよび設備稼働イベントに関するデータは、データ収集部2によって生産ライン1を構成する製造装置ごとに収集される。収集されたデータは、製造装置を特定するための情報である設備IDと関連づけて、ロット処理履歴管理部3、設備稼働履歴管理部4に格納される。また、データ収集部2は、ロットIDに基づいて、ロットサイズおよび各製造装置において当該ロットに適用された処理条件を特定するための情報であるレシピIDを取得し、ロット処理履歴管理部3に格納する。ロットサイズおよびレシピIDは、例えば、生産ライン1の進捗状況を管理するMES(Manufacturing Execution System)等から取得される。
【0033】
一方、ロット処理データ抽出部5は、ロット処理履歴管理部3が管理するロット処理イベントに関するデータ、および設備稼働履歴管理部4が管理する設備稼働イベントに関するデータから、既処理ロットについて、ロットごとに、各ウエハの処理時間と各ウエハ処理時の設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを、後に詳述する手法により抽出する。
【0034】
ロット処理データ抽出部5により抽出されたロット処理データは、パラメータ算出部6に入力される。パラメータ算出部6は、入力されたロット処理データに基づいて、後で詳述する手法により、モデル式定義部7に登録されている設備モデル式に含まれるモデルパラメータを算出する。処理時間予測部8は、算出されたモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、各製造装置の予測処理時間を算出する。
【0035】
図2は、ロット処理データ抽出部5の構成をより詳細に示す機能ブロック図である。図2に示すように、ロット処理データ抽出部5は、ウエハ単位データ作成部51、設備稼働データ作成部52、およびロット処理データ作成部53から構成されている。
【0036】
ウエハ単位データ作成部51は、ロット処理履歴管理部3に保持されているデータから、製造装置ごとに、ロットに属する各ウエハの処理時間データを作成するために必要なデータを抽出する。すなわち、ウエハ単位データ作成部51は、予め設定されているロット処理イベントIDおよびロットIDをキーとして、当該ロット処理イベントIDに対応するウエハ単位のデータを、ロット処理履歴管理部3からロットごとに抽出する。そして、製造設備、処理条件、ロット、およびウエハ単位の処理時間データを関連づけたウエハ処理時間データ表を作成する。
【0037】
図3は、ウエハ単位データ作成部51が保持するウエハ処理時間データ表の一例を示す図である。ウエハ処理時間データ表は、ロット処理履歴管理部3から抽出した、装置ID、レシピID、処理順、ロットID、ロットに属する各ウエハの処理開始時刻と処理終了時刻、各ウエハの処理に使用されたチャンバーIDを関連づけて記録するテーブルである。ここで、チャンバーIDは、複数のチャンバーを備える製造装置において、ウエハ処理に使用したチャンバーを特定するための情報である。例えば、図3の例では、設備IDが「設備1」である製造装置において、レシピIDが「R100」である処理条件で処理された「ロットa」に属する2枚目のウエハに対する処理が、「チャンバー2」において、「2006/12/25 10:28:20」から「2006/12/25 10:33:20」の間に実施されたことを示している。また、本実施形態では、ロット処理履歴管理部3から抽出した各ウエハの処理開始時刻および処理終了時刻から各ウエハの処理が完了した時点での、当該ロットの累積処理時間を算出し、ウエハ処理時間データ表に記録している。なお、図3は、12枚のウエハからなるロットに対して作成されたウエハ処理時間データ表である。
【0038】
ウエハ単位データ作成部51による処理時間データ表の作成と並行して、設備稼働データ作成部52は、設備稼働履歴管理部4が保持する各製造装置の設備稼働イベントに関するデータから、製造装置ごとに、各チャンバーの稼動データを作成するために必要なデータを抽出する。すなわち、設備稼働データ作成部52は、予め設定されている設備イベントIDをキーとして、当該設備稼働イベントに対応する稼働状況に関するデータを設備稼働履歴管理部4から抽出する。そして、製造装置、その製造装置が備えるチャンバー、および当該製造設備の稼働状況に関するデータを関連づけた設備稼働状況表を作成する。
【0039】
図4は、設備稼働データ作成部52が保持する設備稼働状況表の一例を示す図である。設備稼働状況表は、設備稼働履歴管理部4から抽出した、設備ID、チャンバーID、チャンバー状態、およびチャンバーがそのチャンバー状態であった開始時刻と終了時刻を、関連づけて記録するテーブルである。例えば、図4の例では、設備IDが「設備1」である製造装置の「チャンバー1」が、「2006/12/25 11:23:20」から「2006/12/25 11:33:45」の間、処理ができない状況(「ダウン」)にあったことを示している。なお、図4では、2つのチャンバーを備えた製造装置に対して作成された設備稼働状況表を例示している。
【0040】
以上のようにして、ウエハ処理時間データ表と設備稼働状況表とが作成されると、ロット処理データ作成部53は、ウエハ処理時間データ表および設備稼働状況表に基づいて、、各ウエハの処理時間と各ウエハ処理時の設備稼働状況とを対応づけたロット処理データ表を作成する。ここでは、ロット処理データ作成部53は、ウエハ処理時間データ表に記録されたデータと、設備稼働状況表に記録されたデータとを、時間軸により関連づけることによりロット処理データを抽出する。すなわち、ウエハ処理時間データ表に記録された各ウエハの処理開始時刻と処理終了時刻との間の時間に対応する、各チャンバーのチャンバー状態を設備稼働状況表から読み出し、ウエハ処理時間データ表に記録されたデータと読み出したデータとを関連づける。
【0041】
図5は、ロット処理データ作成部53が保持するロット処理データ表の一例を示す図である。ロット処理データ表は、設備ID、レシピID、処理順、ロット処理開始時刻、ロット処理終了時刻、チャンバーID、当該製造装置の全チャンバーの稼動状態、および累積処理時間を関連づけて記録するテーブルである。図5の例では、当該ロットは、設備IDが「設備1」である製造装置において、レシピ「R100」の処理条件により、「2006/12/25 10:15:20」から「2006/12/25 11:18:20」の間に処理され、当該ロットの2枚目のウエハ処理時に、当該製造装置のチャンバー2が「ダウン」していたことが記録されている。ロット処理データ表は、各製造装置ごとに、既処理済のロット別に作成されている。また、本実施形態では、各製造装置においてロット処理が完了する都度、ロット処理データ抽出部5がロット処理データ表を作成する構成になっている。抽出された各ロット処理データ表は、ロット処理データ抽出部5に保持される。
【0042】
以上のようにして作成されたロット処理データ表に基づいて、パラメータ算出部6はモデルパラメータを算出する。図6は、パラメータ算出部6のより詳細な構成を示す機能ブロック図である。図6に示すように、パラメータ算出部6は、パラメータ演算部61およびパラメータ定義部62から構成されている。
【0043】
パラメータ演算部61は、ロット処理データ抽出部5で作成されたロット処理データ表およびパラメータ定義部62が保持するモデルパラメータ対応表に基づいて、各製造装置の設備モデル式のモデルパラメータを算出する。
【0044】
図7は、パラメータ定義部62が保持するモデルパラメータ対応表を示す図である。図7に示すように、モデルパラメータ対応表は、設備ID、設備モデルID、および算出すべきモデルパラメータを関連づけて記録するテーブルである。ここで、設備モデルIDは、後述の設備モデル定義部7に登録されている各種設備モデル式を特定するための情報である。図7では、算出すべきモデルパラメータを「○」で示し、算出を要しないモデルパラメータを「−」で示している。なお、モデルパラメータaは、ロットの2枚目以降のウエハ1枚あたりの処理時間である。モデルパラメータbは、ロットの先頭ウエハの処理時間である。モデルパラメータb2は、ロット処理前待ち時間である。モデルパラメータcは、バッチサイズ(ウエハ処理単位)である。モデルパラメータdは、バッチ交換時のウエハ入れ替え時間である。
【0045】
ここで、設備モデル式について説明する。図8は、モデル式定義部7に登録されている設備モデル式定義表を示す図である。図8に示すように、設備モデル式定義表は、設備モデルIDと設備モデル式とを関連づけて記録するテーブルである。なお、図8では、説明のため、設備モデル名、モデルパラメータ、および各設備モデルのグラフを図示しているが、これらは、設備モデル式定義表に必須の要素ではない。図8では、設備モデル式として、4つの設備モデル式、「枚葉型」、「枚葉段差型」、「バッチ注入型」、および「バッチ洗浄型」を例示している。例えば、1つのチャンバーで1枚ずつウエハを処理する製造装置には、「枚葉型」の設備モデル式が使用される。複数のチャンバーでそれぞれ1枚ずつウエハを処理する製造装置には、「枚葉段差型」の設備モデル式が使用される。ロットサイズ以下の複数枚のウエハを同時に処理する製造装置には、「バッチ注入型」の設備モデル式が使用される。ロットサイズを越える複数枚のウエハを同時に処理可能な製造装置には、「バッチ洗浄型」の設備モデル式が使用される。
【0046】
以上に例示した各設備モデル式は、処理枚数Xと処理時間Yとが以下に示す式で表現される。
【0047】
枚葉型 Y=a*(X-1)+b ・・・(2)
枚葉段差型 Y=a*(X-1)+b+floor((X-1)/c)*d ・・・(3)
バッチ注入型 Y=floor((X-1)/c)*d ・・・(4)
バッチ洗浄型 Y=b ・・・(5)
【0048】
なお、式3および式4において、関数floor(X)は、引数Xの小数点以下を切り捨てる端数処理を行う関数である。
【0049】
パラメータ演算部61は、所定の時間間隔で、各製造装置のレシピごとにモデルパラメータを算出する。パラメータ演算部61は、まず、モデルパラメータ算出対象の製造装置について、モデルパラメータ対応表から算出すべきモデルパラメータを特定する。例えば、図7の事例において、設備IDが「設備2」である製造装置のモデルパラメータを算出する場合、算出すべきモデルパラメータは、a、b、b2、dと特定される。
【0050】
パラメータ演算部61は、算出すべきモデルパラメータを特定すると、ロット処理データ抽出部5から、対応する装置ID、算出対象のレシピID、および算出対象のチャンバーIDが記録されているロット処理データ表から、処理順と累積処理時間とを順に読み出し、モデルパラメータを算出する。ここでは、モデルパラメータa、b2、dは、全データの平均値として求められる。モデルパラメータbは、全データの最小値として求められる。そして、モデルパラメータcは、製造装置ごとに定義されている。
【0051】
図9は、設備IDが「装置2」である製造装置について、ロット処理データ抽出部5から読み出したロット処理データと、各モデルパラメータa、b、b2、c、dとの関係を示す図である。図9に示すように、ロット処理データ抽出部5から読み出した複数ロットの処理枚数に対する処理時間の依存性は、ばらつきを有している。当該ばらつきは、上述のように、製造装置に固有の、処理時間の変動要素を含む動作(ガスクリーニング、ウエハ入れ替え動作、ロットの連続処理等)に起因する。また、本製造装置は、6枚のウエハを1バッチとして、各ウエハを1枚ずつ処理する2つのチャンバーを備えており、抽出したデータでは、各チャンバーが正常に稼動している。
【0052】
この事例では、パラメータ演算部61は、まず、各ロットの1枚目から5枚目のウエハについて、次ウエハの累積処理時間と当該ウエハの累積処理時間の差を算出するとともに、各ロットの6枚目から11枚目のウエハについて、次ウエハの累積処理時間と当該ウエハの累積処理時間の差を算出する。そして、これらの差の平均値をモデルパラメータaとして算出する。また、パラメータ演算部61は、各ロットの先頭ウエハの処理時間中での最小の累積処理時間を、モデルパラメータbとして算出する。各ロットの1枚目から12枚目のそれぞれウエハについて、累積処理時間の最大値と最小値との差を算出し、その平均値をモデルパラメータb2として算出する。さらに、各ロットの7枚目のウエハと6枚目のウエハの累積処理時間の差の平均値をモデルパラメータdとして算出する。モデルパラメータcは、「6」と定義されている。図9では、このようにして算出された各モデルパラメータを適用した、設備モデル式による処理時間(予測処理時間)を、太線Yとして示している。
【0053】
このようなモデルパラメータの算出は、生産ライン1を構成する全ての製造装置について、レシピIDごと、かつ、チャンバーの稼動状態(動作中、停止中)ごとに行われる。
【0054】
以上のように、本実施形態では、ロット処理データが、製造装置の稼働状況に関するデータと、製造設備のロット処理に関するデータとを時間軸で関連づけることにより作成される。そのため、ロット処理データにより、そのロットが処理されていたときの、チャンバーの稼動状況を把握することができる。したがって、ロット処理データを参照することにより、処理時間が長い処理時間データに対し、その原因が一部のチャンバーがトラブル等で使用不可能であったためであるか、正常稼動中にも関わらず、何らかの他の不具合により突発的に発生したためであるかを判別することができる。また、当該ロット処理データを使用することにより、チャンバーの稼働状況が、例えば、一部のチャンバーがトラブル等で使用不可能となっている等の特定の状況下でのモデルパラメータを算出するも可能となる。
【0055】
例えば、図9の太線Y2は、「チャンバー1」が停止した状態のロット処理データを抽出し、上述の手法により算出したモデルパラメータを適用した、設備モデル式による処理時間(予測処理時間)である。
【0056】
また、本実施形態では、ロット処理データは、ウエハごとにデータが記録されている。そのため、少なくとも1ロット分のロット処理データがあれば、当該ロットに属するウエハ枚数内の、各ウエハ枚数について、処理時間データを得ることができる。例えば、ロットサイズが12枚であれば、1〜12枚のそれぞれの枚数について、処理時間データが得られる。したがって、従来とは異なり、少なくとも1ロット分のロット処理データがあれば、モデルパラメータを算出することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、モデルパラメータを算出する際に、モデルパラメータを、ロットの処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定時間パラメータ(a、b、c、d)と、ロットの投入間隔等ロットの流れによって変動する変動パラメータb2として、それぞれ別々に算出している。そのため、処理時間データのばらつき要因となっている製造装置固有の変動要素を含む動作を切り分けてモデルパラメータを算出することができる。その結果、モデルパラメータを、作業者の判断を要することなく、一義的かつ自動的に決定することができる。
【0058】
また、本実施形態において固定時間パラメ−タ(a、b、c、d)と切り分けて算出された変動パラメータb2は、製造装置のロットの最大処理間隔を示している。つまり、変動パラメータb2以内の時間間隔で製造装置にロットを投入すれば、製造装置が稼動ロス無く連続的に処理が可能であることを意味する。本実施形態では、変動パラメータb2は製造装置へロットを配送する自動搬送システムの最大ロット搬送時間の許容目標値として使用されている。
【0059】
パラメータ算出部6は、モデルパラメータを算出する都度、算出したモデルパラメータを、設備ID、設備モデルIDとともに、処理時間予測部8に格納する。図10は、処理時間予測部8が保持するモデルデータ一覧表の一例を示す図である。モデルデータ一覧表は、設備ID、設備モデル式、レシピID、稼動チャンバー、およびモデルパラメータを対応づけて記録するテーブルである。ここで、設備モデル式は、設備モデル式定義部7から取得される。また、図10において、「稼動チャンバー」の「CH1,CH2」は、チャンバー1とチャンバー2がともに正常に稼動している場合を示している。同様に、「CH1」は、チャンバー1のみが正常に稼動している場合を示し、「CH2」は、チャンバー2のみが正常に稼動している場合を示している。パラメータ算出部6において、生産ライン1の全ての製造装置について、レシピIDごとかつチャンバーの稼動状態ごとのモデルパラメータ算出が完了すると、モデルパラメータ一覧表には、全てのモデルパラメータが記録されることになる。
【0060】
処理時間予測部8は、モデルパラメータ一覧表に記録された設備モデル式とモデルパラメータを用いて、その製造装置に以降で投入されるロットの処理時間を予測する。ここでは、処理時間予測部8は、生産シミュレーター20から入力される条件(設備ID、レシピID、チャンバー稼動状態、およびロットサイズ)にしたがって予測処理時間を算出し、算出結果を生産シミュレーター20に入力する構成になっている。
【0061】
生産シミュレーター20は、生産ライン1に投入された各ロットのプロセスフローおよびロット割付を行うための種々のディスパッチルールにしたがって複数のロット進行計画を立案し、算出された各製造装置における予測処理時間、および設備のトラブルやメンテナンスによる設備停止率等の各種統計データを用いて各ロット進行計画による生産を模擬再現する。そして、例えば、最も生産効率の高いロット進行計画を最適なロット進行計画として出力する。生産シミュレーター20から出力されたロット進行計画は、ロットディスパッチシステム11および通信部12を経由して、生産ライン1を構成する各製造装置に伝えられる。ここでは、ロットディスパッチシステム11が、生産シミュレーター20で作成されたロット進行計画に基づき、各製造装置での現在の仕掛りロットに対し、生産シミュレーター20が指定したロット処理順で処理する指示を各製造装置へ送信する。
【0062】
以上の構成によれば、高精度に算出された各製造設備の予測処理時間により、高精度なロット進行計画を作成することができ、生産ラインを極めて効率よく稼動させることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、処理時間予測部8のモデルパラメータ一覧表は、上述のように所定の時間間隔で更新されている。しかしながら、パラメータ算出部6が算出し、処理時間予測部8に入力したモデルパラメータを、変動監視部9が監視する構成を採用してもよい。この場合、モデルパラメータ一覧表に記録されたモデルパラメータとの比較により、予め設定された許容量(割合や大きさ等)を超える変動を確認した場合に、変動監視部9がモデルパラメータ一覧表を更新する。
【0064】
また、上述の構成において、ロット処理履歴管理部3、設備稼働履歴管理部4、モデル式定義部7は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段により構成することができ、ロット処理データ抽出部5、パラメータ算出部6、処理時間予測部8、変動監視部9、および生産シミュレーター10は、例えば、専用の演算回路や、プロセッサとRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを備えたハードウエア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することもできる。
【0065】
以上説明したように、本発明では、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出ロット処理データを抽出し、製造装置の処理動作に応じた複数の設備モデル式を使用してモデルパラメータを算出する。このため、ロット処理時の設備稼働状況を把握することができ、例えば、マルチチャンバー型の製造装置において、チャンバーの稼動状況等の設備稼働状況に応じたモデルパラメータを高精度に抽出することができる。したがって、製造装置における予測処理時間を高精度に算出することができる。また、このようにして算出された高精度な予測処理時間を使用することにより、高精度なロット進行計画を作成することができる。その結果、生産ラインを効率よく稼動させることができる。
【0066】
また、本発明では、モデルパラメータが、ロット処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定パラメータと、製造装置へのロットの投入タイミング等により変動する変動パラメータとを含み、固定パラメータと変動パラメータとが別々に算出されている。このため、ロット処理データのばらつきを除外した状態でモデルパラメータを一義的に算出することができる。
【0067】
なお、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変形および応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、処理時間と設備稼働状況とがロットに属するウエハごとに対応づけられたロット処理データを使用する構成としたが、ウエハ単位に限らず、ロット単位であってもよい。この場合は、設備稼働時間中における正味の処理時間と処理待ちロス時間の定量化を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、高精度なロット進行計画を作成することができるとともに、生産ラインを効率よく稼動させることができるという効果を有し、生産管理システムおよび生産管理方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態における生産管理システムを示す概略構成図
【図2】本発明の一実施形態におけるロット処理データ抽出部を示す機能ブロック図
【図3】本発明の一実施形態におけるウエハ処理時間データ表を示す図
【図4】本発明の一実施形態における設備稼働状況表を示す図
【図5】本発明の一実施形態におけるロット処理データ表を示す図
【図6】本発明の一実施形態におけるパラメータ算出部を示す機能ブロック図
【図7】本発明の一実施形態におけるモデルパラメータ対応表を示す図
【図8】本発明の一実施形態における設備モデル式定義表を示す図
【図9】本発明の一実施形態における予測処理時間と実際の処理時間とを示す図
【図10】本発明の一実施形態におけるモデルデータ一覧表を示す図
【図11】従来の生産管理システムを示す概略構成図
【図12】従来の予測処理時間と実際の処理時間とを示す図
【符号の説明】
【0070】
1 生産ライン
2 データ収集部
3 ロット処理履歴管理部
4 設備稼働履歴管理部
5 ロット処理データ抽出部
6 パラメータ算出部
7 設備モデル定義部
8 処理時間予測部
9 変動監視部
10 設備処理時間算出装置
20 生産シミュレーター
30 生産管理システム
51 ウエハ単位データ作成部
52 設備稼働データ作成部
53 ロット処理データ作成部
61 パラメータ演算部
62 パラメータ定義部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理を行う生産管理システムであって、
各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出するロット処理データ抽出部と、
製造装置における予測処理時間の算出に使用する、各製造装置の処理動作に基づいた複数の設備モデル式を格納したモデル式定義部と、
前記抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に対応する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する処理時間予測部と、
を有することを特徴とする生産管理システム。
【請求項2】
各製造装置から、前記ロットの処理状況を示すデータおよび前記製造装置の稼働状況を示すデータを収集するデータ収集部と、
各製造装置について算出された前記予測処理時間に基づいて、前記各製造装置へのロット進行計画を立案する生産シミュレーターと、
をさらに有する請求項1記載の生産管理システム。
【請求項3】
前記ロットの処理状況を示すデータがロットに属する基板ごとに収集され、前記ロット処理データは、処理時間と設備稼働状況とがロットに属する基板ごとに対応づけられた請求項2記載の生産管理システム。
【請求項4】
前記モデルパラメータが、ロット処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定パラメータと、製造装置へのロットの投入タイミングにより変動する変動パラメータとを含み、固定パラメータと変動パラメータとが別々に算出される請求項1から3のいずれかに記載の生産管理システム。
【請求項5】
前記パラメータ算出部が算出したモデルパラメータを監視し、当該モデルパラメータが、先に算出された対応するモデルパラメータに対して、予め設定された許容量を超える変動が発生した場合、モデルパラメータを更新する変動監視部をさらに備えた請求項1から4のいずれかに記載の生産管理システム。
【請求項6】
前記ロット処理データが、前記ロットの処理状況を示すデータと、前記製造装置の稼働状況を示すデータとを、時間軸により関連づけることにより抽出される請求項3記載の生産管理システム。
【請求項7】
複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理方法であって、
各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータを、各製造装置から収集する工程と、
前記ロットの処理状況を示すデータおよび前記製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する工程と、
前記抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に処理動作に応じてそれぞれ定義された、製造装置における予測処理時間の算出に使用する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する工程と、
前記算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する工程と、
各製造装置について算出された前記予測処理時間に基づいて、前記各製造装置へのロット進行計画を立案する工程と、
を有することを特徴とする生産管理方法。
【請求項1】
複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理を行う生産管理システムであって、
各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出するロット処理データ抽出部と、
製造装置における予測処理時間の算出に使用する、各製造装置の処理動作に基づいた複数の設備モデル式を格納したモデル式定義部と、
前記抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に対応する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する処理時間予測部と、
を有することを特徴とする生産管理システム。
【請求項2】
各製造装置から、前記ロットの処理状況を示すデータおよび前記製造装置の稼働状況を示すデータを収集するデータ収集部と、
各製造装置について算出された前記予測処理時間に基づいて、前記各製造装置へのロット進行計画を立案する生産シミュレーターと、
をさらに有する請求項1記載の生産管理システム。
【請求項3】
前記ロットの処理状況を示すデータがロットに属する基板ごとに収集され、前記ロット処理データは、処理時間と設備稼働状況とがロットに属する基板ごとに対応づけられた請求項2記載の生産管理システム。
【請求項4】
前記モデルパラメータが、ロット処理時に最低限必要な処理時間を算出する固定パラメータと、製造装置へのロットの投入タイミングにより変動する変動パラメータとを含み、固定パラメータと変動パラメータとが別々に算出される請求項1から3のいずれかに記載の生産管理システム。
【請求項5】
前記パラメータ算出部が算出したモデルパラメータを監視し、当該モデルパラメータが、先に算出された対応するモデルパラメータに対して、予め設定された許容量を超える変動が発生した場合、モデルパラメータを更新する変動監視部をさらに備えた請求項1から4のいずれかに記載の生産管理システム。
【請求項6】
前記ロット処理データが、前記ロットの処理状況を示すデータと、前記製造装置の稼働状況を示すデータとを、時間軸により関連づけることにより抽出される請求項3記載の生産管理システム。
【請求項7】
複数の製造装置を備えた半導体装置生産ラインの生産管理方法であって、
各製造装置におけるロットの処理状況を示すデータおよび当該ロット処理時の製造装置の稼働状況を示すデータを、各製造装置から収集する工程と、
前記ロットの処理状況を示すデータおよび前記製造装置の稼働状況を示すデータから、処理時間と設備稼働状況とを対応づけたロット処理データを抽出する工程と、
前記抽出したロット処理データに基づいて、各製造装置に処理動作に応じてそれぞれ定義された、製造装置における予測処理時間の算出に使用する設備モデル式が含むモデルパラメータを算出する工程と、
前記算出したモデルパラメータおよび対応する設備モデル式に基づいて、以降で各製造装置に投入されるロットの処理時間を予測する工程と、
各製造装置について算出された前記予測処理時間に基づいて、前記各製造装置へのロット進行計画を立案する工程と、
を有することを特徴とする生産管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−287442(P2008−287442A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130984(P2007−130984)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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