説明

生芋の貯蔵装置

【課題】生芋の貯蔵性を高め、その品質を保持しながら貯蔵室内で長期保存する生芋の貯蔵装置を提供する。
【解決手段】貯蔵装置1は、貯蔵室2内を加熱冷却する空気調和機4と室内温度を計測する温度センサ6と室内温度を一定の範囲の温度に保持する温度制御部7とから成る室内温度管理手段3と、貯蔵室2内を加湿する加湿器9と室内湿度を計測する湿度センサ10と、室内湿度を一定の範囲の湿度に保持する湿度制御部11とからなる室内湿度管理手段8と、貯蔵室2内を換気する換気装置13と室内の二酸化炭素濃度を計測するCO濃度センサ14と室内のCO濃度を一定値以下に保持する換気装置制御部15とからなる室内CO濃度管理手段12と、空気調和機4から送風された空気流と加湿器9からの加湿された空気流とを貯蔵室2内を循環する空気流とする空気流発生手段20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生芋の貯蔵装置に係り、特に、芋焼酎の原料となる生芋を貯蔵装置内で長期保存する生芋の貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芋焼酎は、生芋を原料としてアルコール発酵させた蒸留酒である。芋焼酎用の生芋には、コガネセンガン(黄金千貫)をはじめ、ジョイホワイト、ベニアズマ等の各種の品種が用いられる。これらの生芋のなかでもコガネセンガンは、でんぷん質が多いため芋焼酎の原料として最も多く使われている。生芋は、それ自体を食べることができるが、食用としては市場に出回っていない。それは、これらの芋焼酎用の生芋は、保存のきく米や麦とは異なり通常の保存が極めて難しいからである。一般に、芋焼酎用の生芋は、収穫の3日後には腐ってしまうといわれる。
【0003】
生芋が腐る原因として、黒班病菌、軟腐病菌、アオカビ病菌などの菌による腐敗がある。黒班病は黒あざ病ともいわれ、初めは緑を帯びた黒褐色であるが時間とともに黒色が強くなる、表面が窪んだ円形の病班が発生し、その中央に黒い短毛のようなカビが発生するものである。軟腐病は、生芋が軟化して表皮が破れそこから液が出てくるもので、腐り方が早く、数日で芋全体が腐敗する。アオカビ病は、黒班病に似た黒褐色で円形の病班が発生し、その内部まで腐敗させる。また、線虫(ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ等)やヨトウムシなどの害虫によっても腐敗する。これらの黒班病菌等の病菌は、例えばコガネセンガンの場合には、温度が略40℃に達すると死滅するといわれている。
【0004】
生芋を保存するには、その保存の際の温度設定及び温度管理が極めて重要となる。例えば、温度が高温になると発芽してしまい生芋の鮮度が低下する。また、温度が低温になると低温障害が発生する可能性がある。この低温障害になると生芋のデンプンが糖に変化するため、芋のほくほく感がなくなり味が低下する。さらには、この低温障害は腐敗の原因ともなる。また、生芋を保存するには、その保存の際の湿度設定及び湿度管理が極めて重要となる。生芋は湿度が低いと萎びてしまうからである。さらに、生芋の細くなった先端部などでは、萎びることにより芋の表面に亀裂が発生し菌が侵入する原因となる。さらには、生芋を保存するには、その保存の際の換気が極めて重要となる。保存中の生芋は呼吸し、空気中の酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す。従って、生芋は空気中の二酸化炭素の濃度が高くなると窒息してしまう。
【0005】
焼酎用の生芋は、8月頃から12月頃までが収穫期である。収穫された生芋は、腐敗が生じる前、すなわち収穫後3日以内に処理(仕込み)される。従って、収穫期以外の期間では、生芋の収穫がなくなる。一方、芋焼酎は、年間を通じて需要があるため、その原材料である生芋は年間を通じて確保されなければならない。ここで、芋焼酎としての保存期間は、長期熟成される特殊な芋焼酎を除き、一般には1ヶ月から3ヶ月といわれている。従って、生芋を仕込んで芋焼酎として保存することは難しい。さらに、収穫期に大量の仕込みをすることは、設備の処理能力に限界がある。また、廃棄物(かす)の処理の問題等が発生するという問題がある。
【0006】
収穫された生芋は、フレキシブル・コンテナに詰めて加工(仕込み)工場へと搬出される。このフレキシブル・コンテナは麻製の袋であり、上部に大きな開口部がある。生芋は、収穫の際や運搬の際にその表面に傷をつけないように養生しなければならない。このフレキシブル・コンテナは、麻製であるため生芋に傷がつきにくく、また生芋の詰め込みや取出しが容易なために採用されている。
【0007】
芋焼酎用の生芋を、年間を通じて確保する手段として、一般には冷凍保存された生芋を用いている。これは、生芋を略マイナス25℃程度で冷凍して長期保存する方法である。
また、従来、生芋の長期保存方法として、畑に溝穴を設け、そのなかに断熱材を敷き詰めて貯蔵する自然貯蔵が行われている。
【0008】
一方、特許文献1には、生鮮品の長中期貯蔵に適した搬送収納コンテナ及び貯蔵方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、ロスナイによる換気方法が開示されている。図8に、そのロスナイの概念図を示す。ロスナイ40の内部は4室に仕切られ、室外側には排気送風機42が、室内側には給気送風機41が設けられている。ロスナイエレメント43は、特殊加工紙からなる全透過式交換器である。外気は給気送風機41の稼動により吸込まれプレフィルタ44によりフィルタにかけられた後に室内に給気される。一方、室内気は排気送風機42の稼動により吸込まれプレフィルタ44によりフィルタにかけられた後に排気として吹出される。この2つの流路はロスナイエレメント43で交差し、そこで外気と室内気は相互に熱交換される。
【0010】
さらに、特許文献3には、放電式の負イオン・オゾン発生装置が開示されている。図9に、その負イオン・オゾン発生装置の概要を示す。負イオン・オゾン発生装置50は、パルス発生回路53から放電線54に負極の高電圧パルス(パルス電圧)を印加しつつ、モータ51により回転駆動されるファン52により放電線54に送風することで、放電線54から負イオンとオゾンを発生させる。
【0011】
【特許文献1】特開2001−54318号公報
【特許文献2】特開平6−272919号公報
【特許文献3】特開2002−284508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、芋焼酎用の生芋は、極めて貯蔵性の低い原料であり、米や麦のように倉庫等の保管場所でそのまま長期保存することは難しい。特に、コガネセンガンは、この貯蔵性において他の生芋の原料よりも劣る。また、上述のように収穫期に大量に仕込み、芋焼酎として長期保存することも難しい。
【0013】
また、生芋を長期間にわたって冷凍保存する方法は、冷凍用の電力費等のランニングコストがかかり経済的ではない。また、畑に溝穴を設けて貯蔵する方法は、生芋の温度及び湿度の調節が難しいか、或いは生芋の換気が難しい等の問題がある。
【0014】
さらに、生芋を長期保存するには、生芋を長期間にわたり一定範囲の温度に保持しなければない。特に、各生芋をむらなく一定範囲の温度に保持しなければならない。また、生芋を長期間にわたり一定範囲の湿度に保持しなければならない。特に、各生芋をむらなく一定範囲の湿度に保持しなければならない。さらに、長期保存中において生芋の鮮度等の品質も確保しなければならない。
【0015】
本願の目的は、かかる課題を解決し、貯蔵室内の温度、湿度及び二酸化炭素濃度を管理して生芋の貯蔵性を高め、さらに貯蔵室内の生芋の品質を保持しながら貯蔵室内で長期保存する生芋の貯蔵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る生芋の貯蔵装置は、芋焼酎の原料となる生芋が保管された貯蔵室内を加熱冷却する空気調和機と、室内温度を計測する温度センサと、空気調和機を制御し、室内温度を一定の範囲の温度に保持する温度制御部と、から成る室内温度管理手段と、貯蔵室内を加湿する加湿器と、室内湿度を計測する湿度センサと、加湿器を制御し、室内湿度を一定の範囲の湿度に保持する湿度制御部と、からなる室内湿度管理手段と、貯蔵室内を換気する換気装置と、室内の二酸化炭素濃度を計測するCO濃度センサと、換気装置を制御し室内の二酸化炭素濃度を一定値以下に保持する換気装置制御部と、からなる室内CO濃度管理手段と、空気調和機から送風された空気流と、加湿器からの加湿された空気流とを貯蔵室内を循環する空気流とする空気流発生手段と、を備え、貯蔵室内で生芋を長期保存することを特徴とする。
【0017】
また、生芋の貯蔵装置は、温度制御部が、貯蔵室内の温度を14℃乃至15℃に制御し、湿度制御部は、貯蔵室内の湿度を90%乃至95%に制御し、換気装置制御部は、貯蔵室内のCO濃度を略3%以下に制御することが好ましい。
【0018】
また、生芋の貯蔵装置は、空気流発生手段が、空気調和機の送風口と加湿器の噴出口とを同一の方向に設置し、空気調和機から送風された空気流を、加湿器からの噴霧による空気流により誘導し、貯蔵室内を循環する空気流とすることが好ましい。
【0019】
また、生芋の貯蔵装置は、空気流発生手段が、保管された生芋の収納箱の上部に設置され貯蔵室内を循環する空気流を誘導する方向に傾斜した板であることが好ましい。
【0020】
また、生芋の貯蔵装置は、さらに、貯蔵室内に負イオン及びオゾンを発生させる負イオン・オゾン発生器と、オゾン濃度センサと、オゾン濃度制御部とから成るオゾン濃度管理手段を備え、オゾン濃度制御部が、負イオン・オゾン発生器を制御し室内のオゾン濃度を一定値以下とすることが好ましい。
【0021】
また、生芋の貯蔵装置は、オゾン濃度制御部が、室内のオゾン濃度を略0.05ppm以下に制御することが好ましい。
【0022】
また、生芋の貯蔵装置は、負イオン・オゾン発生器が、換気装置の給気口に設置され、換気装置により貯蔵室内に給気される空気を殺菌することが好ましい。
【0023】
また、生芋の貯蔵装置は、さらに、貯蔵室内の空気を吸引し、負イオン・オゾン発生器に排気を吹き出すバイパスファンを有し、換気装置制御部が、室内のCO濃度が略3%以下であり換気装置が停止しているときには、バイパスファンを稼動させ、負イオン・オゾン発生器により負イオン・及びオゾンを室内に発生させることが好ましい。
【0024】
また、生芋の貯蔵装置は、CO濃度センサ及びオゾン濃度センサが、空気中の水分を吸湿する吸湿器を通過した貯蔵室内の空気を測定することが好ましい。
【0025】
また、生芋の貯蔵装置は、加湿器が、二流体式の加湿器であり、極微粒子の液体を噴霧することが好ましい。
【0026】
さらに、生芋の貯蔵装置は、換気装置が、排出する室内気と吸入する外気との間で熱交換させることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
上記構成により生芋の貯蔵装置は、生芋が保管された貯蔵室内を一定範囲の温度及び湿度に制御する。これにより、病害の発生を防止し、その貯蔵性を高めることが可能となる。
【0028】
また、生芋の貯蔵装置は、貯蔵室内を換気し、室内の二酸化炭素濃度を一定値以下とし、さらに貯蔵室内を循環する空気流を発生させる。これにより、生芋の長期保存の間にその品質を保持させることが可能となる。
【0029】
以上のように、本発明に係る生芋の貯蔵装置によれば、貯蔵室内の温度、湿度及び二酸化炭素濃度を管理して生芋の貯蔵性を高め、さらに貯蔵室内の生芋の品質を保持しながら貯蔵室内で長期保存することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。
【0031】
図1に、生芋の貯蔵装置の一つの実施形態の概略構成を示す。生芋の貯蔵装置1は、室内温度管理手段3、室内湿度管理手段8、室内CO濃度管理手段12、室内オゾン濃度管理手段16、及び空気流発生手段20から構成される。図2〜図5に、貯蔵室2内に配置される貯蔵装置1の1つの実施形態の概要を示す。図2には貯蔵室2内の貯蔵装置1の立面構成を示す断面を示す。また、図3には、貯蔵室2内の貯蔵装置1の平面構成を示す図2のA−A断面を示す。また、図4には、貯蔵室2の屋根面の貯蔵装置1の平面構成を示す図2のB−B断面を示す。さらに、図5には、貯蔵室2内の貯蔵装置1の立面構成を示す図3のC−C断面を示す。図2に示すように、生芋30は、生芋30を収納する収納箱であるネットかご31に収納されて並置される。本実施形態では、生芋はコガネセンガンの場合とする。
【0032】
室内温度管理手段3は、貯蔵室2内を加熱冷却する空気調和機4と、室内温度を計測する温度センサ6と、空気調和機4を制御し、室内温度を一定範囲の温度に保持する温度制御部7とから構成される。貯蔵室2内の温度は、14℃〜15℃に制御される。これは、上述したように、生芋30は温度が高温になると発芽する可能性があり、発芽すると生芋30の鮮度が低下するからである。なお、この14℃〜15℃の設定温度は、生芋がコガネセンガンである場合の設定温度であり、ジョイホワイト、ベニアズマ等の他の生芋の場合には、異なる設定温度となる場合がある。また、生芋30は温度が低温になると低温障害が発生する可能性がある。この低温障害になると生芋30のデンプンが糖に変化するため、芋30のほくほく感がなくなり味が低下する。従って、室内の温度は14℃〜15℃に厳格に制御される。温度制御部7は、室内に設置された温度センサ6の測定値に基づき、空気調和機4により熱負荷のバランスをとり、室内温度を一定範囲の温度に保持する。
【0033】
室内湿度管理手段8は、貯蔵室2内を加湿する加湿器9と、室内湿度を計測する湿度センサ10と、加湿器9を制御し室内湿度を一定範囲の湿度に保持する湿度制御部11とから構成される。貯蔵室2内の湿度は90%〜95%に制御される。室内湿度が90%〜95%とは、相対湿度が90%〜95%の状態をいう。これは、上述したように、生芋30は、湿度が低いと萎びてしまい、生芋30の細くなった先端部などでは、萎びることにより芋30の表面に亀裂が発生し黒班病菌、軟腐病菌、アオカビ病菌などの菌が侵入する原因となるからである。また、湿度が飽和状態(略100%)に近くなると空気中の水蒸気が天井パネルや壁パネルに結露し、生芋30の表面に水滴が付着してしまい、腐敗の原因となるからである。湿度制御部11は、室内に設置された湿度センサ10の測定値に基づき、加湿器9の制御により室内湿度を一定範囲内に保持する。
【0034】
本実施形態では、加湿器9は二流体式による加湿方法を用いる。二流体式とは、水と圧縮空気を同時に噴霧しドライフォグ(極微粒子噴霧)として加湿する方式である。通常、加湿器は蒸気水(スチーム)を発生させて加湿するのが一般的である。しかし、この蒸気水による加湿方法では、貯蔵室2内の天井面、壁面等に結露による水滴が発生し、それが落下して生芋30に水滴が付着してしまう虞があり腐敗の原因となってしまう。この二流体式の加湿方法は、極微粒子であるドライフォッグにより加湿するため生芋30の表面への水滴の付着を減少させることが可能となる。加湿器9により極微粒子の水と圧縮空気を同時に噴霧すると数メートルに達した辺りでドライフォグとなる。この噴霧された極微粒子の水は、ドライフォッグとなる前に、例えば壁、天井といった障害物に当った場合、結露して水滴となる。また、空気調和機4から送風される空気流と衝突した場合にも結露により水滴となる。
【0035】
室内CO濃度管理手段12は、貯蔵室2内を換気する換気装置13と、室内の二酸化炭素濃度を計測するCO濃度センサ14と、換気装置13を制御し室内の二酸化炭素濃度を一定値以下とする換気装置制御部15とから構成される。換気装置制御部15は、貯蔵室2内のCO濃度を略3%以下に制御する。これは、上述したように、貯蔵装置1に保管中の生芋30は呼吸し、空気中の酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す。従って、生芋30は空気中の二酸化炭素の濃度が高くなると窒息してしまうからである。
【0036】
本実施形態では、この換気方法として図8にその概念を示すロスナイ換気システムを用いる。ロスナイ換気システムとは、排気と吸気との間で熱交換を行いながら室内の温度に近づけて外気を取り入れるシステムであり、換気による室内温度の変化を最小限に抑えるシステムである。
【0037】
図4に示すように、本実施形態では、ロスナイ換気システムによる換気装置13は、貯蔵室2の屋根面に設置される。換気装置13は、貯蔵室2内の一方に設けられた排気吸込口21から貯蔵室2内の排気を吸入し屋外へ排気として吹き出す(図4のEA)。また、屋外から空気を吸入して(図4のOA)、貯蔵室2内の他方に設けられた室内給気口22から新鮮な空気を給気する。そして、換気装置13では、この排気と吸気との間で熱交換を行う。このロスナイ換気システムによる換気装置13は、貯蔵室2内が高湿度であることから耐湿型の換気装置13が用いられる。
【0038】
室内オゾン濃度管理手段16は、貯蔵室2内にオゾン及び負イオンを発生させる負イオン・オゾン発生器17と、オゾン濃度センサ18と、負イオン・オゾン発生器17を制御し室内のオゾン濃度を一定値以下に制御するオゾン濃度制御部19とから構成される。貯蔵室2内にオゾンを発生させることで、その酸化力により生芋30に付着する雑菌を死滅させる。また、貯蔵室2内にイオンを発生させることで、生芋30の鮮度を保持させる。本実施形態では、この貯蔵室2内のオゾン濃度は、略0.05ppm以下に制御される。これは、オゾンは酸化力が強くその濃度が高くなりすぎると人体等に有害だからである。一方、負イオンは、オゾンとは異なりすぐに中和して消滅し、現在のところ人体等への影響は確認されていないため、その濃度に対しては特に制御する必要はない。従って、本実施形態では、負イオン・オゾン発生器17により負イオン及びオゾンを同時に発生させ、人体等に影響のある高オゾン濃度を避けるためにオゾン濃度をオゾン濃度制御部19により制御する。
【0039】
貯蔵室2の空気中には生芋30に有害な雑菌が含まれている。また、貯蔵室2には室内を換気する換気装置13が設置されるため、外部から生芋30に有害な雑菌が侵入する虞がある。そこで貯蔵室2に特にオゾンを発生させその殺菌力により雑菌の侵入や繁殖を防止しなければならない。
【0040】
図9に示すように、負イオン・オゾン発生器17は、パルス発生回路53から放電線54に負極の高電圧パルス(パルス電圧)を印加しつつ、モータ51により回転駆動されるファン52により放電線54に送風することで、放電線54から負イオンとオゾンが発生する。すなわち、負イオン・オゾン発生器17は、その際に放電空間に生じる無数のコロナ放電のエネルギにより空気中の酸素(O)を変化させてオゾン(O)を発生させる。また、その際に酸素分子等が電子と衝突してイオン化し負イオンが発生する。
【0041】
図2に示すように、負イオン・オゾン発生器17は、換気装置13の室内給気口22に取り付けられる。従って、換気装置13により貯蔵室2内の換気が行われている間は負イオン・オゾン発生器17により貯蔵室2内に負イオン及びオゾンが発生される。また、この換気装置13は、貯蔵室2内の二酸化炭素濃度が略3%を超えると換気装置制御部15の指令により作動する。従って、貯蔵室2内の二酸化炭素濃度が略3%以下である場合には換気装置13は作動せず、負イオン・オゾン発生器17による貯蔵室2内への負イオン及びオゾンの発生が停止してしまう。そこで、本実施形態では、図4に示すように、室内の空気を吸引する吸引口25と換気装置13の室内給気口22とを接続したバイパスファン24を設ける。換気装置制御部15は、室内のCO濃度が略3%以下であり換気装置13が停止しているときには、バイパスファン24を稼動させて貯蔵室2内から空気を吸引し、その排気により負イオン及びオゾンを室内に発生させる。従って、負イオン・オゾン発生器17は、貯蔵室2内の二酸化炭素濃度の値の如何にかかわらず、ほぼ常に負イオン及びオゾンを室内に発生させる。
【0042】
本実施形態では、CO濃度センサ14及びオゾン濃度センサ18には、例えばシリカゲルのような活性炭を用いた水分除去器33を取り付けて測定させる。これは、貯蔵室2内は高湿度であることからセンサに水滴が付着してしまい測定値が保証されないからである。図6にCO濃度センサ14及びオゾン濃度センサ18に取り付けた水分除去器33の構成を示す。まず、壁体39を貫通した通気管55を設置して貯蔵室2から水分を含んだ空気を取り入れる。この通気管55は、活性炭38を内蔵した水分除去器33に接続される。そして、CO濃度センサ14又はオゾン濃度センサ18のセンサ部は、この水分除去器33を通過し、空気中の水分がほぼ除去された空気に含まれる二酸化炭素量又はオゾン量を計測する。
【0043】
空気流発生手段20は、貯蔵室2内を循環する空気流を発生させる。図5に、空気流発生手段20の1つの実施形態の概要を示す。天井面には、空気調和機4が設置され、温風又は冷風を送風するモード、或いは単に送風モードにより運転する。また、加湿器9は、二流体式による加湿器9であり、水と圧縮空気を同時に噴霧しドライフォッグを生成する。この空気調和機4を生芋30のネットかご31の側方の出口側35の上方に設置し、温風又は冷風を送風するモード、或いは単に送風モードによる送風の方向を側方に設定する。さらに、加湿器9の位置を空気調和機4と同様に生芋30のネットかご31の側方の出口側35の上方に設置し、その噴霧の方向を、空気調和機4と同じ方向とする。図3に示すように、空気調和機4と加湿器9とは平面的に位置をずらし、加湿器9から噴霧された水がドライフォッグとなる間は、加湿器9から噴霧された水が空気調和機4から送風される空気流と衝突しないようにする。これは、上述したように、噴霧された水が衝突により水滴となり、落下して生芋30に付着するのを防ぐためである。加湿器9から噴霧された水がドライフォッグとなった後、空気調和機4から送風された空気流と一体となる。このドライフォッグは、空気調和機4から送風された空気流を下方に押し出す。
【0044】
このように、空気調和機4から発生した空気流は、加湿器9から噴射されたドライフォッグによりネットかご31の入口側34へと誘導される。同時に、この空気流は、ドライフォッグをネットかご31の入口側34へと運び込む。ネットかご31の内部は、このドライフォッグを含んだ空気流が通過可能な程度に上下方向に間隔が空けてある。従って、ドライフォッグを含んだ空気流は、ネットかご31の出口側35へと向かい、さらに上昇して加湿器9の噴射により、上記風路を循環する。この循環するドライフォッグを含んだ空気流により貯蔵室2内部の温度、湿度及び二酸化炭素濃度が均一化される。
【0045】
他の実施例として、図5に示すように、生芋30のネットかご31の上部に、加湿器9から噴射するドライフォッグ、天井に結露し落下する水滴が生芋30に付着するのを防止する水滴防止板56を取り付ける。この水滴防止板56をネットかご31の出口側35から入口側34へ傾斜して低くなるように取り付ける。この水滴防止板56の傾斜面により、発生した空気流はより確実にネットかご31の入口側34へと誘導され、貯蔵室2内部の温度、湿度及び二酸化炭素濃度の均一化が促進される。さらに、他の実施例として、図2及び図3において破線で示す仕切り板23を生芋30のネットかご31の両脇に設置する。このことで、上述した循環風路は、生芋30のネットかご31の入口部34の開口部分に限り通過する。従って、発生した空気流の循環風路はより明確となり、貯蔵室2内部の温度、湿度及び二酸化炭素濃度の均一化が促進される。
【0046】
図7に、生芋30の保管方法の1つの実施形態を示す。まず、生芋30は、粗い目を有する収納ネット36に詰め込まれる。そして、生芋30が詰め込まれた収納ネット36は、パレット37上に置かれたネットかご31に収納される。このパレット37は、フォークリフト等で搬送する際の架台となる。ネットかご31は、側面にネットが張られた収納箱であり、図7に示すように、相互に間隔を置いてパレット37の上に設置される。このような保管方法により、空気流が通過する隙間が確保される。この隙間を空気流が通過することにより、各生芋30に温湿度及び二酸化炭素濃度等を均等に施すことが可能となる。
【0047】
貯蔵室2内の温度は、生芋30の長期保存のためには、温度制御部7により14℃〜15℃に制御される。一方、貯蔵室2内を高湿度の状態に保持するために加湿器9による加湿を行い、この加湿器9は湿度制御部11により制御される。また二酸化炭素の濃度を一定値以下に押えるために換気装置13による換気をし、この換気装置13は換気装置制御部15により制御される。これらの湿度制御及びCO濃度制御は、それぞれ温度制御とは独立した制御である。従って、温度制御部7は、加湿器9及び換気装置13による室内の熱負荷の増減に対して複雑な室温の制御をしなければならない。さらに、貯蔵室2の内部に保管した生芋30の全てに亘ってほぼ均等に温度制御しなければならない。
【0048】
本実施形態では、加湿器9による熱負荷を低減するために、上述した二流体式の加湿方法を用いる。すなわち、蒸気水による加湿では同時に熱が発生し熱負荷となるからである。これにより、加湿の際の蒸気による熱負荷を低減し、温度制御部7の温度制御を単純化する。また、換気方法として、上述したロスナイ換気を用いる。これにより、換気の際の外気温による室内熱負荷の影響を低減し温度制御部7の温度制御を単純化する。さらには、空気流発生手段20により貯蔵室2内を循環する空気流を発生させる。これにより、貯蔵室2内の温度分布を均一化させ貯蔵室2内に保管した生芋30の全てに亘ってほぼ均等に温度制御する。
【0049】
また、貯蔵室2内の湿度は、生芋30の長期保存のためには湿度制御部11により90%〜95%に制御される。同時に、貯蔵室2内に保管した生芋30の全てにわたってほぼ均等に湿度制御しなければならない。本実施形態では、貯蔵室2内の湿度分布を均一化させるとともに、生芋30の表面が乾燥しないように循環する空気流を直接生芋30に当てないようにする。これにより、生芋30を乾燥させることなく、貯蔵室2内の湿度分布を均一化させ貯蔵室2内に保管した生芋30の全てに亘ってほぼ均等に湿度制御する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る生芋の貯蔵装置の一つの実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】貯蔵室内の貯蔵装置の立面構成を示す断面図である。
【図3】貯蔵室内の貯蔵装置の平面構成を示す図2のA−A断面図である。
【図4】貯蔵室の屋根面の貯蔵装置の平面構成を示す図2のB−B断面図である。
【図5】貯蔵室内の貯蔵装置の立面構成を示す図3のC−C断面図である。
【図6】CO濃度センサ及びオゾン濃度センサに取り付けた水分除去器の構成を示す説明図である。
【図7】パレット及びネットかごに設置された生芋の保管方法の1つの実施形態を示す説明図である。
【図8】ロスナイによる換気方法の原理を示す概念図である。
【図9】負イオン・オゾン発生器の概要を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1 貯蔵装置、2 貯蔵室、3 室内温度管理手段、4 空気調和機、6 温度センサ、7 温度制御部、8 室内湿度管理手段、9 加湿器、10 湿度センサ、11 湿度制御部、12 室内CO濃度管理手段、13 換気装置、14 CO濃度センサ、15 換気装置制御部、16 室内オゾン濃度管理手段、17 負イオン・オゾン発生器、18 オゾン濃度センサ、19 オゾン濃度制御部、20 空気流発生手段、21 排気吸込口、22 室内給気口、23 仕切り板、24 バイパスファン、25 吸引口、30 生芋、31 ネットかご、33 水分除去器、34 入口側、35 出口側、36 収納ネット、37 パレット、38 活性炭、39 壁体、40 ロスナイ、41 給気送風機、42 排気送風機、43 ロスナイエレメント、50 負イオン・オゾン発生装置、51 モータ、52 ファン、53 パルス発生回路、54 放電線、55 通気管、56 水滴防止板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芋焼酎の原料となる生芋が保管された貯蔵室内を加熱冷却する空気調和機と、室内温度を計測する温度センサと、空気調和機を制御し、室内温度を一定の範囲の温度に保持する温度制御部と、から成る室内温度管理手段と、
貯蔵室内を加湿する加湿器と、室内湿度を計測する湿度センサと、加湿器を制御し、室内湿度を一定の範囲の湿度に保持する湿度制御部と、からなる室内湿度管理手段と、
貯蔵室内を換気する換気装置と、室内の二酸化炭素濃度を計測するCO濃度センサと、換気装置を制御し室内の二酸化炭素濃度を一定値以下に保持する換気装置制御部と、からなる室内CO濃度管理手段と、
空気調和機から送風された空気流と、加湿器からの加湿された空気流とを貯蔵室内を循環する空気流とする空気流発生手段と、
を備え、
貯蔵室内で生芋を長期保存することを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生芋の貯蔵装置において、温度制御部は、貯蔵室内の温度を14℃乃至15℃に制御し、湿度制御部は、貯蔵室内の湿度を90%乃至95%に制御し、換気装置制御部は、貯蔵室内のCO濃度を略3%以下に制御することを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生芋の貯蔵装置において、空気流発生手段は、空気調和機の送風口と加湿器の噴出口とを同一の方向に設置し、空気調和機から送風された空気流を、加湿器からの噴霧による空気流により誘導し、貯蔵室内を循環する空気流とすることを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の生芋の貯蔵装置において、空気流発生手段は、保管された生芋の収納箱の上部に設置され貯蔵室内を循環する空気流を誘導する方向に傾斜した板であることを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の生芋の貯蔵装置において、さらに、貯蔵室内に負イオン及びオゾンを発生させる負イオン・オゾン発生器と、オゾン濃度センサと、オゾン濃度制御部とから成るオゾン濃度管理手段を備え、オゾン濃度制御部は、負イオン・オゾン発生器を制御し室内のオゾン濃度を一定値以下とすることを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項6】
請求項5に記載の生芋の貯蔵装置において、オゾン濃度制御部は、室内のオゾン濃度を略0.05ppm以下に制御することを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の生芋の貯蔵装置において、負イオン・オゾン発生器は、換気装置の給気口に設置され、換気装置により貯蔵室内に流入する空気を殺菌することを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1に記載の生芋の貯蔵装置において、さらに、貯蔵室内の空気を吸引し、負イオン・オゾン発生器に排気を吹き出すバイパスファンを有し、換気装置制御部は、室内のCO濃度が略3%以下であり換気装置が停止しているときには、バイパスファンを稼動させ、負イオン・オゾン発生器により負イオン・及びオゾンを室内に発生させることを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1に記載の生芋の貯蔵装置において、CO濃度センサ及びオゾン濃度センサは、空気中の水分を吸湿する吸湿器を通過した貯蔵室内の空気を測定することを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1に記載の生芋の貯蔵装置において、加湿器は、二流体式の加湿器であり、極微粒子の液体を噴霧することを特徴とする生芋の貯蔵装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1に記載の生芋の貯蔵装置において、換気装置は、排出する室内気と吸入する外気との間で熱交換させることを特徴とする生芋の貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−161152(P2008−161152A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356713(P2006−356713)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】