説明

用紙搬送装置、これを備えた画像形成装置

【課題】熱伝導部材でできた搬送経路を冷却し、印刷用紙を搬送経路に接触させることで冷却を安定して行う。
【解決手段】
冷却用の搬送経路に対してダクトを効率よく冷却用空気が流れるよう配置する。上部の冷却ファンから吹き付けられ、上部の搬送経路を冷却して温まった空気を、下部の搬送経路の内側の搬送経路で遮断し、下部搬送経路で印刷用紙を冷却する外側の搬送経路には到達せずに中央部の排気ファンで機外へ排出する。下部の冷却ファンから吹き付けられ、下部の搬送経路を冷却して温まった空気は、上部の搬送経路の外側の搬送経路で遮断され、上部の搬送経路には到達せずに上部の排気ファンにより機外に排出される。冷却ファンの位置を装置の中心から画像形成装置側へオフセットさせ、印刷用紙Pの受け入れ口をより一層冷却し、冷却効率を上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱定着にてトナーを印刷用紙に定着させる機構を持つ電子写真印刷装置と排紙装置との間に設置する用紙搬送装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の用紙搬送装置では、特許文献1や特許文献2で開示されているように、冷却ファンによる直接空冷や冷却ロールや自然空冷による熱伝導部材(たとえば板金等)への接触等により印刷用紙の冷却を行っている。または、特許文献3で示されるように、ヒートパイプに直接接触させて印刷用紙の冷却を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、印刷速度が上昇した場合や印刷用紙坪量が265g/m2以上の厚紙においては冷却ロール、ヒートパイプ及び冷却ファンによる直接冷却では十分な冷却時間が得られないため冷却効果が少なくなる。また自然空冷の熱伝導部材への接触による印刷用紙の冷却では印刷速度が上昇した場合、熱伝導部材の放熱より印刷用紙との接触による蓄熱のほうが多くなり、冷却性能が発揮できなくなる。
【0004】
そこで本発明では、印刷速度が上昇した場合や印刷用紙坪量が265g/m2以上の厚紙でも必要な冷却性能を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の用紙搬送装置のうち請求項1に係るものは、熱定着にてトナーを印刷用紙に定着させる機構を持つ電子写真式印刷装置と排紙装置との間に設置される用紙搬送装置において、熱伝導部材で構成された搬送経路と、前記搬送経路を冷却する冷却手段とを備え、前記搬送経路を前記冷却手段で冷却し、前記搬送経路を搬送する印刷用紙を前記搬送経路に接触させることにより冷却することを特徴とする。
【0006】
請求項2に係るものは、請求項1に記載の用紙搬送装置において、前記搬送経路が、前記印刷用紙を搬送するための搬送ローラ及び該搬送ローラと対向する従動ローラを前記印刷用紙の搬送路に露出させる開口部を必要最小限としてなることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係るものは、請求項1または2に記載の用紙搬送装置において、前記搬送経路の冷却用ファンを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係るものは、請求項1から3のいずれかに記載の用紙搬送装置において、前記搬送経路へ印刷用紙を確実に接触させるため、前記搬送ローラと前記従動ローラとを1〜2mmオフセットさせてなることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係るものは、請求項3または4に記載の用紙搬送装置において、前記冷却用ファンへ供給される外気導入口と前記搬送経路を冷却して温まった排気を排出する排気ファンの機外への排出口を分離させてなり、かつ前記外気導入口よりも前記排出口を高い位置に設けて前記温まった空気が前記外気導入口から吸気されないようにしてなることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係るものは、請求項1から5のいずれかに記載の用紙搬送装置において、前記搬送経路の冷却手段で冷却用の空気を効率よく冷却できるようにするためのダクトを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項7に係るものは、請求項1から6のいずれかに記載の用紙搬送装置において、前記冷却手段が、前記熱伝導部材で印刷用紙を挟み込むように配置された前記搬送経路に対応して該搬送経路の両側を冷却する吸気経路と排気経路をそれぞれ有し、各冷却手段の前記吸気経路と排気経路を、他の冷却手段の前記吸気経路と排気経路と前記搬送経路により遮断して互いに影響を与えないようにしてなることを特徴とする。
【0012】
請求項8に係るものは、前記冷却手段が、前記搬送経路の用紙受け入れ部をより冷却する手段を有することを特徴とする。
【0013】
請求項9に係る画像形成装置は、請求項1から8のいずれかに記載の用紙搬送装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱伝導部材で構成された搬送経路を必要十分な搬送経路長とし、この搬送経路を冷却して搬送される印刷用紙を確実に接触させることにより、印刷速度が上昇した場合や印刷用紙坪量が265g/m2以上のような厚紙でも必要な冷却性能を確保することができる。また冷却用空気と温まった排気をきちんと分離することで冷却性をさらに向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の構成を示す概念図
【図2】本発明に係る用紙搬送装置の一実施例の断面図
【図3】同要部拡大図
【図4】同吸気、排気経路を示す平面概念図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、熱伝導部材で構成された搬送経路をファンにより冷却し、印刷用紙を前記搬送経路に印刷用紙を確実に接触させるものである。
【0017】
以下本発明の実施例を図面を参照して説明するが、本発明に係る用紙搬送装置は図示の画像形成装置への実施には限定されず、種々のタイプの画像形成装置に適用可能である。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る用紙後処理装置を備えた画像形成システムの概略構成を示す図である。このシステムは、用紙搬送方向上流側から、電子写真式印刷装置である画像形成装置100、第1の用紙後処理装置である用紙搬送装置200、第2の用紙後処理装置である排紙装置300、この第2の用紙後処理装置300に設けた排紙トレイ400から基本的に構成されている。図中500は操作部である。
【0019】
図2は本発明に係る用紙搬送装置の一実施例の断面図であるが、この図2中の右側に、図示せぬ熱定着によりトナーを印刷用紙に定着させる機構を持つ画像形成装置100が配置され、左側に図示されぬ排紙装置300が配置されている。画像形成装置100から熱定着にてトナーが定着された印刷用紙Pが搬送されてきて用紙搬送装置200に送り込まれる。
【0020】
印刷用紙Pは、トナーを熱定着されるため高温状態で用紙搬送装置200に送り込まれる。送り込まれた印刷用紙Pは、用紙搬送装置200の熱伝導部材(たとえば板金等)で構成された搬送経路10〜13を、図示しない駆動部によって駆動される搬送ローラ対20〜31により、図中右から左へ順次搬送され、排紙装置300に送り込まれる。
【0021】
用紙搬送装置200上部の冷却ファン40は、できるだけ搬送経路10のみを冷却するように、図中左右方向の中心から搬送経路10側、すなわち画像形成装置100側へオフセットさせて配置してある。そのため冷却ファン40からの冷却空気aはダクト50内を矢印a1のように吹き抜け、搬送経路10を効率よく冷却する。冷却ファン40から吹き付けられた冷却空気aは、搬送経路10を冷却することにより温まり、温まった空気は排気ファン43、ダクト54により機外に排出される。
【0022】
また、搬送経路11及び12は下部の冷却ファン41によって冷却する。冷却ファン41の冷却空気bは、ダクト51及び52内を矢印b1及び矢印b2のように吹き抜けることにより搬送経路11及び12を同様に効率よく冷却する。搬送経路11及び12を冷却することにより温まった空気は排気ファン42、ダクト53により機外に排出される。
【0023】
ここで、冷却ファン40から吹き付けられ、搬送経路10を冷却後の温まった空気は搬送経路11及び12の内側の搬送経路で遮断されて、搬送経路11及び12で印刷用紙を冷却する外側の搬送経路には到達せずに排気ファン43、ダクト54により機外に排出され、冷却ファン41から吹き付けられ、搬送経路11及び12を冷却後の温まった空気は搬送経路10及び13の外側の搬送経路で同様に遮断され、搬送経路10で印刷用紙を冷却する内側の搬送経路には到達せずに排気ファン42、ダクト53により機外に排出される。
【0024】
本実施例装置では、以上のように、機内の空気が混じらないため安定した冷却ができる。
【0025】
印刷用紙Pは、搬送経路10〜13の主に屈曲部で、冷却された搬送経路を構成する熱伝導部材に接触することにより冷却される。なお搬送経路をファンにて冷却する代わりにヒートパイプ等により冷却しても同様である。
【0026】
印刷用紙冷却のために印刷用紙Pを搬送経路10〜13で確実に熱伝導部材と接触させるため、図3に一例として示すように、搬送ローラ24及び対向ローラ24aをずらして(オフセット量c)配置している。このオフセット量cは例えば1〜2mmとすればよいが、このオフセット配置は印刷用紙Pを熱伝導部材と接触させるために必要な搬送ローラ対に適用すればよく、すべての搬送ローラ対について実施する必要はない。なお、搬送ローラと対向する従動ローラを1〜2mmオフセットさせるのは、本発明の対象とする用紙搬送装置では一般的にこの程度のオフセット量で冷却用搬送経路に印刷用紙を確実に接触できるからである。
【0027】
なお、搬送経路を構成する熱伝導性部材には開口部を設けて空気が流れやすいように構成することが好ましいが、その開口面積は、冷却ファンによる空冷の効率向上及び印刷用紙Pとの接触面積を向上させるため、搬送ローラ対が搬送経路内に露出できる必要最小限とすることが望ましい。すなわち、搬送ローラ対が搬送経路に露出させる開口部の開口面積を必要最小限とし、冷却用の熱伝導部材で構成された搬送経路での冷却を確実に行い、かつ印刷用紙との接触面積を十分確保する。
【0028】
次に、上部冷却ファン40及び下部冷却ファン41へ冷却用の外気を導入するため、用紙搬送装置200のベースフレーム2及びフロントドア3の底部に開口部を設けてある。これにより用紙搬送装置200の底部から冷却用の外気d及び外気eを取り入れ、搬送経路10〜12を冷却して温まった空気は排気ファン42及び43にて装置のリア側に排気f及び排気gとして排気する。
【0029】
この構造と、排気位置は、冷却用空気の外気導入口より上部に位置させる。そのため、機外からの冷却用の空気取り入れ口と冷却により温まった空気を機外に排気する排気口が明確に分離された位置関係となり、そのため、温められた排気が冷却用の外気導入口に回り込むことはなく、安定した冷却性能を確保できる。
【0030】
すなわち本発明では、熱伝導部材でできた搬送経路を冷却手段により冷却し、印刷用紙を搬送経路に接触させることによって印刷用紙の冷却を安定して行う。
【0031】
また本発明では、上述したように、冷却用の搬送経路に対してダクトを効率よく冷却用空気が流れるよう工夫しており、上部冷却ファンから吹き付けて上部搬送経路を冷却後、温まった空気は下部搬送経路の内側の搬送経路で遮断されるため、下部搬送経路で印刷用紙を冷却する外側の搬送経路には到達せずに中央部排気ファンにより機外に排出され、下部冷却ファンから吹き付けて下部搬送経路を冷却後の温まった空気は、上部搬送経路の外側の搬送経路で遮断されるため、上部搬送経路で印刷用紙を冷却する内側の搬送経路には到達せずに上部排気ファンにより機外に排出される。このように搬送経路の冷却にて暖まった空気が別の冷却部に到達しないよう排気経路を工夫したことより冷却後の暖かい空気が別の冷却部に到達せず、安定した冷却ができる。また、冷却ファンの位置を装置の中心線から画像形成装置側へオフセットさせた配置として、印刷用紙受け入れ口をより一層冷却することにより、冷却効率を上げている。
【符号の説明】
【0032】
2:用紙搬送装置のベースフレーム
3:フロントドア
10〜13:搬送経路
20〜31:搬送ローラ対
24:搬送ローラ
24a:対向ローラ
40、41:冷却ファン
42、43:排気ファン
50、51、52、53、54:ダクト
100:画像形成装置
200:用紙搬送装置
300:排紙装置
400:排紙トレイ
500:操作部
a、a1、b、b1、b2:冷却ファンからの冷却空気
c:オフセット量
d、e:冷却用の外気
f、g:排気
P:印刷用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2007‐127766号公報
【特許文献2】特開2004‐286901号公報
【特許文献3】特開2006−003819号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱定着にてトナーを印刷用紙に定着させる機構を持つ電子写真式印刷装置と排紙装置との間に設置される用紙搬送装置において、
熱伝導部材で構成された搬送経路と、前記搬送経路を冷却する冷却手段とを備え、
前記搬送経路を前記冷却手段で冷却し、前記搬送経路を搬送する印刷用紙を前記搬送経路に接触させることにより冷却する
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙搬送装置において、
前記搬送経路が、前記印刷用紙を搬送するための搬送ローラ及び該搬送ローラと対向する従動ローラを前記印刷用紙の搬送路に露出させる開口部を必要最小限としてなる
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の用紙搬送装置において、
前記搬送経路の冷却用ファンを備える
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の用紙搬送装置において、
前記搬送経路へ印刷用紙を確実に接触させるため、前記搬送ローラと前記従動ローラとを1〜2mmオフセットさせてなる
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の用紙搬送装置において、
前記冷却用ファンへ供給される外気導入口と前記搬送経路を冷却して温まった排気を排出する排気ファンの機外への排出口を分離させてなり、
かつ前記外気導入口よりも前記排出口を高い位置に設けて前記温まった空気が前記外気導入口から吸気されないようにしてなる
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の用紙搬送装置において、
前記搬送経路の冷却手段で冷却用の空気を効率よく冷却できるようにするためのダクトを備えた
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の用紙搬送装置において、
前記冷却手段が、前記熱伝導部材で印刷用紙を挟み込むように配置された前記搬送経路に対応して該搬送経路の両側を冷却する吸気経路と排気経路をそれぞれ有し、各冷却手段の前記吸気経路と排気経路を、他の冷却手段の前記吸気経路と排気経路と前記搬送経路により遮断して互いに影響を与えないようにしてなる
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項8】
前記冷却手段が、前記搬送経路の用紙受け入れ部をより冷却する手段を有する
ことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の用紙搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−271466(P2010−271466A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122004(P2009−122004)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】