用紙搬送装置、画像形成装置及び用紙搬送装置の制御方法
【課題】様々な用紙に対応した重送検知を安定して行うことを可能とする。
【解決手段】用紙搬送装置は、搬送される用紙Pに対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する発信器102と、照射された超音波に対応して用紙Pから放射される音波を検出する検出センサ103と、少なくとも1方向から照射された超音波に対応して検出された音波の強度をもとに、用紙Pが重送されているか否かを検知するCPU110と、を備える。
【解決手段】用紙搬送装置は、搬送される用紙Pに対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する発信器102と、照射された超音波に対応して用紙Pから放射される音波を検出する検出センサ103と、少なくとも1方向から照射された超音波に対応して検出された音波の強度をもとに、用紙Pが重送されているか否かを検知するCPU110と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置、画像形成装置及び用紙搬送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波の発信器と受信器とを用いて、用紙が2枚重なって搬送される重送を検知する超音波方式の重送検知技術が知られている(特許文献1参照)。この超音波方式の重送検知では、用紙が1枚の時と2枚の時(重送時)とで超音波の透過量が異なることを利用し、受信器の出力値を所定の閾値と比較して重送検知を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、例えば厚さの異なる様々な用紙に対応させようとして受信器の増幅率を上げると搬送時のノイズに弱くなり、逆に受信器の増幅率を下げると様々な用紙への対応ができなくなるため、様々な用紙に対応した重送検知を安定して行うことが困難であった。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、様々な用紙に対応した重送検知を安定して行うことを可能とする用紙搬送装置、画像形成装置及び用紙搬送装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の用紙搬送装置は、搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射手段と、照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出手段と、少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する重送検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、用紙搬送装置の制御方法であって、搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射工程と、照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出工程と、少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する検知工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、様々な用紙に対応した重送検知を安定して行うことを可能とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施形態にかかる画像形成装置の構成を示す断面概略図である。
【図2】図2は、用紙搬送装置の重送検知にかかる構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、発信器から用紙に超音波が照射される様子を示す概念図である。
【図4】図4は、用紙の厚さと検出信号のレベルとの関係を示すグラフである。
【図5−1】図5−1は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図5−2】図5−2は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図5−3】図5−3は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図6−1】図6−1は、2枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図6−2】図6−2は、2枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図6−3】図6−3は、3枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図7】図7は、複数の発信器の配置例を示す概念図である。
【図8】図8は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。
【図9】図9は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。
【図10】図10は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。
【図11】図11は、一つの発信器の向きを変更する場合の回路構成を例示するブロック図である。
【図12】図12は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】図14は、検出信号の増幅率を調整する回路構成を示すブロック図である。
【図15】図15は、増幅率調整処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】図16は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、用紙搬送装置、画像形成装置及び用紙搬送装置の制御方法の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態にかかる画像形成装置1の構成を示す断面概略図である。図1に示すように、画像形成装置1は、用紙搬送装置10、操作・表示部20、作像部21、書き込み部22、トナー補給部23、転写搬送部24、定着部25、デカーラ部26、トナー回収部27、パージトレイ28を有する構成である。用紙搬送装置10は、給紙トレイに載置された用紙を搬送する給紙部11、給紙部11より搬送された用紙にレジスト補正を行うレジスト部12、定着部25により画像形成が行われた用紙の排紙や、両面印字のための反転を行う反転排紙・両面部13を有する構成である。画像形成装置1は、操作・表示部20による操作指示や通信部(図示しない)を介して外部機器から入力される印字データをもとに、用紙搬送装置10により搬送される用紙にカラー画像を形成する。
【0011】
具体的には、印字データが画像形成装置1に送られると、作像部21に対して書き込み部22からレーザ光が照射され、作像部21の感光体上に潜像が作られる。作られた潜像に対しては、トナー補給部23から補給されたYMCK各色のトナーによって現像が行われる。現像されたトナー像は、転写搬送部24の転写ベルトに重ね合わされて転写される。次いで、給紙部11より搬送された用紙にレジスト部12でレジスト補正を行った後、現像されたトナー像が用紙に転写される。次いで、定着部25において熱と圧力によってトナー像が用紙に定着されることで、用紙にカラー画像が形成される。
【0012】
用紙に形成された画像を上側で排紙する場合には、そのまま反転することなく反転排紙・両面部13より機外へ排紙される。用紙に形成された画像を下側にして排紙する場合には、反転排紙・両面部13より反転されて、デカーラ部26にてカールを矯正された後に機外に排紙される。用紙の両面に画像形成を行う場合には、反転排紙・両面部13を経て反転された用紙がレジスト部12に搬送されることで、裏面への画像形成が行われることとなる。なお、転写搬送部24の転写ベルト上や書き込み部22の感光体上などで転写しきれなかったトナーは、トナー回収部27へと回収される。
【0013】
この画像形成の際に、給紙部11から搬送された用紙に重送が発生していると、排紙された用紙の中に意図しない白紙あるいは白いページが混在することとなる。したがって、用紙搬送装置10では、レジスト部12において超音波センサ部101を用いて用紙に超音波を照射し、用紙から副次的に放射される音波を検出することで、重送の発生を検知する。重送を検知した場合は、その場で用紙の搬送を停止して操作・表示部20よりユーザに重送を通知する。そのまま搬送して本来の排紙先とは別のパージトレイ28へ排紙するなどの動作を行う。
【0014】
図2は、用紙搬送装置10の重送検知にかかる構成を示すブロック図である。図2に示すように、用紙搬送装置10の重送検知に構成としては、上述した超音波センサ部101の他、CPU110、駆動回路120、増幅回路130、増幅率調整回路131、波形整形回路140を有する構成である。
【0015】
超音波センサ部101は、搬送される用紙Pに超音波を照射する発信器102と、発信器102とは用紙Pを挟んで反対側に位置する検出センサ103とを有する構成である。超音波センサ部101では、発信器102により照射された超音波が当たっている用紙PのスポットP1において副次的に放射される音波(超音波)を用紙Pの反対側から検出センサ103で検出する。
【0016】
CPU110(Central Processing Unit)は、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して順次実行することで、用紙搬送装置10や前述した画像形成装置1の各部の動作を中央制御する。駆動回路120は、CPU110の制御のもと、発信器102へ駆動信号を出力する回路である。増幅回路130は、検出センサ103で検出された検出信号を、増幅率調整回路131より調整された増幅率で増幅する回路である。増幅率調整回路131は、CPU110の制御のもとで設定された増幅率に増幅回路130の増幅率を調整する回路である。波形整形回路140は、増幅回路130より出力された検出信号の波形を整形する回路である。
【0017】
用紙搬送装置10では、CPU110において、使用する発信器102の共振周波数に等しいパルスを生成して駆動回路120へ出力する。駆動回路120では、CPU110より出力されるパルスをもとに、実駆動電圧の駆動信号を発信器102へ出力する。
【0018】
駆動回路120より出力される駆動信号をもとに発信器102では、超音波を用紙Pへ照射する。図3は、発信器102から用紙Pに超音波が照射される様子を示す概念図である。図3に示すように、重送検知に使用される発信器102は、指向性が鋭いものが一般的である。したがって、用紙Pには、超音波がスポットP1にスポット状に照射される。
【0019】
超音波が照射されたスポットP1の部分は、徐々に振動しだして定常振動状態となる。この定常振動を介して、超音波が用紙Pの反対側へと副次的に放射される。検出センサ103では、この副次的に放射された超音波を検出する。用紙Pは、空気に比べて超音波を伝えやすいとは言えず、超音波を大きく減衰する。用紙Pが2枚重なっているなどの重送時には、超音波はさらに大きく減衰する。検出センサ103は、この減衰した超音波を受けて検出信号を出力する。図4は、用紙Pの厚さと検出センサ103の検出信号のレベルとの関係を示すグラフである。図4に示すように、用紙Pが45K、90K、180Kと厚くなるのに従って、検出センサ103の検出信号のレベルは減衰する。
【0020】
したがって、増幅回路130では、検出センサ103からの検出信号を、1枚時と2枚時とを識別できるレベルまで増幅率調整回路131で調整した増幅率で増幅する。増幅された検出信号は、波形整形回路140で整形された後に、CPU110に入力される。CPU110では、入力された検出信号を所定の閾値と比較することで、搬送される用紙Pの重送を検知する。
【0021】
増幅回路130における検出信号の増幅率は、数千倍から数万倍、厚さの大きな用紙に対応する場合には数十万倍にも達する。したがって、厚みのある用紙Pの重送を検知するために増幅率を上げた場合は、機内のモータやアクチュエータ等で用紙Pの搬送時に生じるノイズの影響を受けることとなる。逆に、ノイズの影響を低くするため増幅率を下げた場合には、厚みにある用紙Pの重送検知が困難になる。
【0022】
このため、本実施形態にかかる用紙搬送装置10では、少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を発信器102より照射してスポットP1の大きさを変えることで、用紙PのスポットP1より副次的に放射される超音波の強さを調整し、様々な用紙Pの重送検知に対応している。
【0023】
図5−1〜図5−3は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。より具体的には、図5−1は用紙Pに対して約60度程度の第1の角度で超音波を照射する場合を、図5−2は用紙Pに対して約35度程度の第2の角度で超音波を照射する場合を、図5−3は用紙Pに対して約10度程度の第3の角度で超音波を照射する場合を例示している。
【0024】
図5−1〜図5−3に示すように、発信器102が照射する超音波と用紙Pとの角度が変わることで、スポットP1の大きさも変わる。具体的には、用紙Pに対して垂直に近づくほどスポットP1の大きさは小さく、用紙Pに対して鋭角になるほどスポットP1の大きさは大きくなる。スポットP1より副次的に放射される超音波の強さは、スポットP1の大きさに依存する。具体的には、スポットP1の大きさが大きくなるほど放射される超音波の強さは強くなり、スポットP1の大きさが小さくなるほど放射される超音波の強さは弱くなる。したがって、同じ送信波形W1で発信器102から超音波を照射する場合は、第1の角度から順に第3の角度のように、用紙Pに対して照射する超音波の角度を鋭角とすることで、増幅回路130での増幅率を変えることなく、検出センサ103の検出波形W2のレベルを大きくすることができる。すなわち、厚みのある用紙Pの重送を検知する場合など、用紙Pより副次的に放射される超音波を強くしたい場合には、用紙Pに対して鋭角な超音波を発信器102より照射する。
【0025】
なお、第3の角度のように用紙Pに対して鋭角に超音波を照射する場合には、用紙Pが2枚重なった状態であっても検出センサ103の検出信号のレベルが大きなものとなる。図6−1、図6−2は、2枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。図6−3は、3枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。より具体的には、図6−1は2枚重なった用紙Pに対して第1の角度で超音波を照射する場合を、図6−2は2枚重なった用紙Pに対して第3の角度で超音波を照射する場合を、図6−3は3枚重なった用紙Pに対して第3の角度で超音波を照射する場合を例示している。
【0026】
図6−1、図6−2に示すように、第1の角度では検出波形W2の形状はほとんど認められないが、第3の角度では検出波形W2の形状が認められる。また、図6−3に示すように、第3の角度で用紙Pに超音波を照射する場合であっても、用紙Pが3枚重なると検出波形W2の形状はほとんど認められなくなる。したがって、第3の角度で超音波を用紙Pに照射することで、用紙Pが2枚重送されている場合と、3枚重送されている場合とを、増幅率を上げることなく検知できる。例えば、用紙Pが封筒などのように予め2枚重なっている場合、第3の角度で超音波を用紙Pに照射することで、2枚までの用紙Pの搬送を正常な搬送と検知し、3枚からの用紙Pの搬送を重送として検知できる。
【0027】
ここで、少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する発信器102の構成について説明する。図7は、複数の発信器の配置例を示す概念図である。図7に示すように、本実施形態では、用紙Pに対して互いに異なる方向を向いて設置された発信器102a、発信器102bにより用紙Pに対して超音波を照射してよい。具体的には、発信器102aと、その発信器102aより鋭角に超音波を用紙Pに照射する発信器102bとを用紙Pの搬送方向(図中の矢印)に対して垂直の方向に並べて設置している。したがって、発信器102aのスポットP1aよりも発信器102bのスポットP1bの方が面積が大きくなることから、スポットP1bから副次的に放射される超音波の方が強くなる。
【0028】
なお、発信器102a、102bの配置位置は任意であり、近接している必要はなく、用紙Pの搬送路において別々の箇所に配置されてもよい。また、配置個数は、超音波を照射する角度が互いに異なる3つ以上の発信器を配置してもよい。また、照射する角度が同一の発信器を、搬送方向(図中の矢印)に対して垂直の方向に分散して配置してもよい。また、用紙搬送装置10は、図3に例示したような一つの発信器102の向きを、CPU110の制御の元で駆動するアクチュエータ122(図11参照)により変更して、少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する構成であってもよい。
【0029】
図8〜図10は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。図8に示すように、用紙搬送装置10では、発信器102a、102bのそれぞれに駆動回路120a、120bを備える構成であってよい。用紙搬送装置10では、CPU110が駆動回路120a又は駆動回路120bへ出力するパルスを切り替えることで、発信器102a又は発信器102bからの超音波の照射が切り替えられることとなる。また、図9に示すように、用紙搬送装置10では、一つの駆動回路120から出力される駆動信号を、CPU110からの制御の元で切り替える切替器121で切り替えて発信器102a又は発信器102bへ出力してもよい。駆動回路120から出力される駆動信号を切替器121で切り替える構成では、図10に示すように、発信器102a〜102cで一つの駆動回路120を流用できる利点がある。
【0030】
図11は、一つの発信器102の向きを変更する場合の回路構成を例示するブロック図である。図11に示すように、アクチュエータ122は、CPU110からの制御信号により駆動し、この駆動力により発信器102の向きを変更する駆動部である。CPU110は、アクチュエータ122の駆動方向、駆動時間を制御することで、発信器102が用紙Pに対して照射する超音波の方向を切り替える。なお、図示しない検出センサ103にもアクチュエータが備えられ、発信器102と正対するように向きを変える。
【0031】
次に、用紙Pの搬送時において、CPU110の制御の元で行われる重送検知処理の詳細について説明する。図12は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下の重送検知処理は、複数の発信器102を用いる場合の処理を例示しているが、いずれかの発信器102への切り替えをアクチュエータ122による角度の切り替えと読み替えることで、一つの発信器102を用いる場合にも流用できる。
【0032】
図12に示すように、用紙Pの搬送時において重送検知処理が開始されると、CPU110は、用紙Pへの照射が垂直に近い第1のセンサ(発信器102a)を駆動させる(S11)。次いで、CPU110は、発信器102aで超音波を発信、検出センサ103で超音波を受信し、検出センサ103の検出信号を増幅回路130で増幅した後のレベルを読み取る(S12)。
【0033】
次いで、CPU110は、印字データにおけるジョブの1枚目の用紙Pにかかる処理であるか否かを判定し(S13)、1枚目の用紙Pである場合(YES)は読み取ったデータ(検出信号のレベル)をRAMなどに一時記憶する(S14)。1枚目の用紙Pに発信器102aから照射した超音波による検出信号で重送の検知を行いない理由は、厚みのある用紙Pである場合に、発信器102aから照射した超音波による検出信号のレベルが低くなることがあるからである。
【0034】
次いで、CPU110は、用紙Pへの照射が発信器102aよりも鋭角な第2のセンサ(発信器102b)を駆動させる(S15)。次いで、CPU110は、発信器102bで超音波を発信、検出センサ103で超音波を受信し、検出センサ103の検出信号を増幅回路130で増幅した後のレベルを読み取る(S16)。発信器102aよりも鋭角な発信器102bから照射した超音波による検出信号は、厚みのある用紙Pでも安定して重送を検知できる程度のレベルがある。
【0035】
したがって、CPU110は、発信器102bから照射した超音波による検出信号のレベル(読み取りデータ)と、ROMなどに予め設定されている閾値とを比較し(S17)、閾値以上であるか否かを判定する(S18)。閾値以上である場合(S18:YES)、CPU110は、用紙Pが重送されていると判断し、用紙Pが重送されていることを操作・表示部20などによりユーザに通知する(S19)。なお、閾値より低い場合(S18:NO)は、予め設定された回数、あるいは予め設定された用紙P上の領域について測定(S11〜S18の処理)を繰り返した後、処理を一旦終了し、次の用紙Pが搬送された際の重送検知処理に備える。
【0036】
なお、S13において1枚目の用紙Pでない場合(NO)、CPU110は、前回の結果としてRAMに一時記憶されているデータ(検出信号のレベル)と今回の検出信号のレベルとを比較し(S20)、その差分が予め設定された範囲を逸脱し、著しく異なっているか否かを判定する(S21)。
【0037】
著しく異なっていない場合(S21:NO)、前回搬送した用紙Pの厚みと今回搬送した用紙Pの厚みとが略同一であることから、CPU110は、用紙の異常と判定することなく、S14へ処理を移行する。著しく異なっている場合(S21:YES)、前回搬送した用紙Pの厚みと今回搬送した用紙Pの厚みとが異なることから、CPU110は、前回又は今回の搬送で用紙Pが密着して重送された用紙の異常と判断し、その用紙の異常を操作・表示部20などによるユーザに通知する(S22)。
【0038】
用紙Pが密着して重送された場合には、間にできる空気層の厚みが十分でないことから、厚みのある一枚の用紙Pが搬送されていると検知されることがある。しかしながら、前回の検出信号のレベルと、今回の検出信号のレベルとを比較することで、密着して重送された用紙の異常を検知できる。なお、用紙Pの厚みの検知には、厚みに応じた適切な検出信号を取得するため(図4参照)、用紙Pに対して垂直に近い発信器102aで照射した超音波による検出信号を用いる。これは、発信器102aよりも鋭角に用紙Pに超音波を照射する発信器102bでは、用紙Pの厚みを検出するのに検出信号のレベルが強すぎる場合があるためである。
【0039】
なお、用紙Pの1枚ごとの平均値を、その用紙Pの検出信号のレベルとして不揮発性メモリに記憶しておくことで、ユーザが用紙Pの設定(厚紙の有無など)を行わなかった際に、用紙Pの厚みを推定するために利用してもよい。例えば、画像形成に用いる用紙Pの設定がなされずに同じような検出信号のレベルの用紙Pが給紙されても、不揮発性メモリに記憶されたデータと照合することで、用紙Pの厚みを推定できる。画像形成装置1によっては、紙種・紙厚ごとに作像条件を変更する場合がある。このような画像形成装置1では、推定された用紙Pの厚みをもとに作像条件を変更できる。
【0040】
S22に次いで、CPU110は、前回の検出信号のレベルに比べて今回の検出信号のレベルが上がっているか否かを判定する(S23)。レベルが上がっている場合(S23:YES)、CPU110は、前回搬送した用紙Pが密着して重送されたと判断し、前の用紙を確認するように操作・表示部20によりユーザに通知し(S24)、処理を終了する。なお、レベルが上がっていない場合(S23:NO)はそのまま処理を終了する。
【0041】
以上のように、用紙搬送装置10では、搬送される用紙Pに対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する発信器102a、102bにより、少なくとも1方向から照射された超音波に対応して検出された音波の強度をもとに、用紙Pが重送されているか否かを検知することで、様々な用紙Pに対応した重送検知を安定して行うことが可能となる。具体的には、発信器102bより用紙Pに対して鋭角に超音波を照射して重送を検知することで、厚みがある用紙Pであっても検出信号の増幅率を上げることなく、重送検知を実施できる。
【0042】
次に、CPU110の制御の元で行われる重送検知処理の変形例1について説明する。図13は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。この変形例1は、用紙Pの種別ごとの動作モードに応じて、用紙Pに照射する超音波の方向を変更する。例えば、上述した第3の角度で用紙Pに超音波を照射する場合は、2枚の用紙Pが重送された場合でもある程度のレベルの検出信号が取得される(図6−3参照)。したがって、変形例においては、3枚以上の重送を検知する動作モード(例えば封筒モード)である場合にのみ、第3の角度で用紙Pに超音波を照射する。
【0043】
図13に示すように、処理が開始されると、CPU110は、動作モードが封筒モードであるか否かを判定する(S10)。封筒モードでない場合(S10:NO)は、用紙Pが2枚搬送されたことを検知する通常の重送検知を行うことから、前述したS11以降の処理を行う。封筒モードである場合(S10:YES)、3枚以上の重送を検知するため、CPU110は、用紙Pへの照射が第3の角度となる発信器102(図5−3参照)を駆動させ(S25)、S16以降の処理を行う。
【0044】
なお、3枚以上の重送検知を行う封筒モード以外に、所定の厚み以上の紙種の用紙Pを搬送する動作モードであるか否かに応じてS15へ処理を進め、用紙Pへの照射が第2の角度となる発信器102bを駆動させてもよい。より具体的には、動作モードが所定の厚み以上の紙種の用紙Pを搬送するモードであり、第1の角度から照射した超音波に対応する検出信号のレベルがS21における判別ができない程度に小さくなる場合、S15へ処理を進める。このように、用紙Pの種別ごとの動作モードに応じて、用紙Pに照射する超音波の方向を変更することで、より適切な重送検知を実施できる。
【0045】
次に、CPU110の制御の元で行われる重送検知処理の変形例2について説明する。この変形例2では、照射する超音波の角度に応じて増幅回路130の増幅率を調整し、用紙Pの搬送時には調整後の増幅率を用いている。
【0046】
図14は、検出信号の増幅率を調整する回路構成を示すブロック図である。図14に示すように、増幅率調整回路131は、検出センサ103より出力された検出信号がコンデンサ132、抵抗133を介して一段目の増幅器134に入力されて増幅される際の増幅率を調整する。具体的には、増幅器134のゲインを調整する回路である。一段目の増幅器134により増幅された信号は、電圧フォロア135、波形整形回路140aを介してCPU110に入力される経路と、二段目の増幅器136で増幅されて波形整形回路140bを介してCPU110に入力される経路とをたどる。検出信号の増幅は、前述したとおり数十万倍にも達することがあることから、多段で行っており、一段目のゲイン調整で増幅率の調整を行っている。
【0047】
次に、CPU110の制御のもとで行う増幅率調整処理について説明する。図15は、増幅率調整処理の一例を示すフローチャートである。なお、この増幅率調整処理は、上述した第1の角度、第2の角度、第3の角度など、用紙Pに照射する超音波の角度ごとに検出センサ103より出力される検出信号のそれぞれに対して行われる処理である。また、増幅率調整処理は、電源投入時、印字データによるジョブの開始時、ジョブ処理中など、システム要求に応じてどのタイミングで実行されてもよい。ただし、発信器102が交換された場合には必ず実行されるものとする。
【0048】
図15に示すように、処理が開始されると、CPU110は、予めROMなどに規定されている増幅率に増幅率調整回路131の増幅率をセットする(S101)。次いで、CPU110は、波形整形回路140a、140bから入力される信号の差分から、一段目で増幅された検出信号のレベルを読み取る(S102)。
【0049】
次いで、CPU110は、一段目で増幅された検出信号のレベルの大きさを、ROMなどに予め設定された所定の値と比較して判定する(S103〜105)。一段目で増幅された検出信号のレベルが所定の値よりも大きい場合(S103:YES)、2枚重送や普通紙程度の厚紙であっても十分な強さの検出信号のレベルを望めることから、CPU110は、封筒/普通紙/紙厚などの全てのモードを選択可能なモードとする(S106)。一段目で増幅された検出信号のレベルが所定の値近傍の中程度である場合(S104:YES)、CPU110は、普通紙/紙厚などのモードを選択可能なモードとする(S107)。一段目で増幅された検出信号のレベルが所定の値よりも小さい場合(S105:YES)、CPU110は、紙厚モードのみを選択可能なモードとする(S108)。なお、一段目で増幅された検出信号のレベルが読み取れていない場合(S105:NO)はS102へ処理を戻す。
【0050】
次いで、CPU110は、選択可能なモードごとにS109〜S115の処理を行う。具体的には、一段目で増幅された検出信号のレベルを読み取り(S109)、読み取ったレベルが現在処理中のモードに対応してROMなどに設定されている目標レベルであるか否かを判定する(S110)。
【0051】
目標レベルでない場合(S110:NO)、CPU110は、読み取ったレベルが目標レベルより高いか否かを判定する(S111)。次いで、CPU110は、目標レベルより高い場合(S111:YES)は増幅率調整回路131の増幅率を下げ(S112)、低い場合(S111:NO)は増幅率調整回路131の増幅率を上げる調整を行い(S113)、S109へ処理を戻す。
【0052】
目標レベルである場合(S110:YES)、CPU110は、調整した増幅率調整回路131の増幅率を不揮発性メモリなどに記憶し(S114)、選択可能な全てのモードに対する処理が終了したか否かを判定する(S115)。全てのモードに対する処理が終了していない場合(S115:NO)、CPU110は、次のモードに対する処理を行うためにS109へ処理を戻し、全てのモードに対する処理が終了した場合(S115:YES)はそのまま処理を終了する。
【0053】
図16は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。図16に示すように、第1のセンサ(例えば発信器102a)を駆動する場合、CPU110は、上述した増幅率調整処理で不揮発性メモリに記憶された第1のセンサ用の増幅率を読み出し、増幅率調整回路131で調整される増幅率を第1のセンサ用に設定する(S11a)。また、第2のセンサ(例えば発信器102b)を駆動する場合、CPU110は、上述した増幅率調整処理で不揮発性メモリに記憶された第2のセンサ用の増幅率を読み出し、増幅率調整回路131で調整される増幅率を第2のセンサ用に設定する(S15a)。また、第3の角度で超音波を照射する第3のセンサを駆動する場合、CPU110は、上述した増幅率調整処理で不揮発性メモリに記憶された第3のセンサ用の増幅率を読み出し、増幅率調整回路131で調整される増幅率を第3のセンサ用に設定する(S25a)。
【0054】
本実施形態の用紙搬送装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0055】
また、本実施形態の用紙搬送装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の用紙搬送装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0056】
なお、上記実施形態にかかる画像形成装置は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機であってよい。また、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…画像形成装置、10…用紙搬送装置、11…給紙部、12…レジスト部、13…反転排紙・両面部、20…操作・表示部、21…作像部、22…書き込み部、23…トナー補給部、24…転写搬送部、25…定着部、26…デカーラ部、27…トナー回収部、28…パージトレイ、101…超音波センサ部、102…発信器、102a…発信器、102b…発信器、102c…発信器、103…検出センサ、110…CPU、120…駆動回路、120a…駆動回路、120b…駆動回路、121…切替器、122…アクチュエータ、130…増幅回路、131…増幅率調整回路、132…コンデンサ、133…抵抗、134…増幅器、135…電圧フォロア、136…増幅器、140…波形整形回路、140a…波形整形回路、140b…波形整形回路、P…用紙、P1…スポット、P1a…スポット、P1b…スポット、W1…送信波形、W2…検出波形
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2006−312527号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置、画像形成装置及び用紙搬送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波の発信器と受信器とを用いて、用紙が2枚重なって搬送される重送を検知する超音波方式の重送検知技術が知られている(特許文献1参照)。この超音波方式の重送検知では、用紙が1枚の時と2枚の時(重送時)とで超音波の透過量が異なることを利用し、受信器の出力値を所定の閾値と比較して重送検知を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、例えば厚さの異なる様々な用紙に対応させようとして受信器の増幅率を上げると搬送時のノイズに弱くなり、逆に受信器の増幅率を下げると様々な用紙への対応ができなくなるため、様々な用紙に対応した重送検知を安定して行うことが困難であった。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、様々な用紙に対応した重送検知を安定して行うことを可能とする用紙搬送装置、画像形成装置及び用紙搬送装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の用紙搬送装置は、搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射手段と、照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出手段と、少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する重送検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、用紙搬送装置の制御方法であって、搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射工程と、照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出工程と、少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する検知工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、様々な用紙に対応した重送検知を安定して行うことを可能とする、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施形態にかかる画像形成装置の構成を示す断面概略図である。
【図2】図2は、用紙搬送装置の重送検知にかかる構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、発信器から用紙に超音波が照射される様子を示す概念図である。
【図4】図4は、用紙の厚さと検出信号のレベルとの関係を示すグラフである。
【図5−1】図5−1は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図5−2】図5−2は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図5−3】図5−3は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図6−1】図6−1は、2枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図6−2】図6−2は、2枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図6−3】図6−3は、3枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。
【図7】図7は、複数の発信器の配置例を示す概念図である。
【図8】図8は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。
【図9】図9は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。
【図10】図10は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。
【図11】図11は、一つの発信器の向きを変更する場合の回路構成を例示するブロック図である。
【図12】図12は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】図13は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】図14は、検出信号の増幅率を調整する回路構成を示すブロック図である。
【図15】図15は、増幅率調整処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】図16は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、用紙搬送装置、画像形成装置及び用紙搬送装置の制御方法の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態にかかる画像形成装置1の構成を示す断面概略図である。図1に示すように、画像形成装置1は、用紙搬送装置10、操作・表示部20、作像部21、書き込み部22、トナー補給部23、転写搬送部24、定着部25、デカーラ部26、トナー回収部27、パージトレイ28を有する構成である。用紙搬送装置10は、給紙トレイに載置された用紙を搬送する給紙部11、給紙部11より搬送された用紙にレジスト補正を行うレジスト部12、定着部25により画像形成が行われた用紙の排紙や、両面印字のための反転を行う反転排紙・両面部13を有する構成である。画像形成装置1は、操作・表示部20による操作指示や通信部(図示しない)を介して外部機器から入力される印字データをもとに、用紙搬送装置10により搬送される用紙にカラー画像を形成する。
【0011】
具体的には、印字データが画像形成装置1に送られると、作像部21に対して書き込み部22からレーザ光が照射され、作像部21の感光体上に潜像が作られる。作られた潜像に対しては、トナー補給部23から補給されたYMCK各色のトナーによって現像が行われる。現像されたトナー像は、転写搬送部24の転写ベルトに重ね合わされて転写される。次いで、給紙部11より搬送された用紙にレジスト部12でレジスト補正を行った後、現像されたトナー像が用紙に転写される。次いで、定着部25において熱と圧力によってトナー像が用紙に定着されることで、用紙にカラー画像が形成される。
【0012】
用紙に形成された画像を上側で排紙する場合には、そのまま反転することなく反転排紙・両面部13より機外へ排紙される。用紙に形成された画像を下側にして排紙する場合には、反転排紙・両面部13より反転されて、デカーラ部26にてカールを矯正された後に機外に排紙される。用紙の両面に画像形成を行う場合には、反転排紙・両面部13を経て反転された用紙がレジスト部12に搬送されることで、裏面への画像形成が行われることとなる。なお、転写搬送部24の転写ベルト上や書き込み部22の感光体上などで転写しきれなかったトナーは、トナー回収部27へと回収される。
【0013】
この画像形成の際に、給紙部11から搬送された用紙に重送が発生していると、排紙された用紙の中に意図しない白紙あるいは白いページが混在することとなる。したがって、用紙搬送装置10では、レジスト部12において超音波センサ部101を用いて用紙に超音波を照射し、用紙から副次的に放射される音波を検出することで、重送の発生を検知する。重送を検知した場合は、その場で用紙の搬送を停止して操作・表示部20よりユーザに重送を通知する。そのまま搬送して本来の排紙先とは別のパージトレイ28へ排紙するなどの動作を行う。
【0014】
図2は、用紙搬送装置10の重送検知にかかる構成を示すブロック図である。図2に示すように、用紙搬送装置10の重送検知に構成としては、上述した超音波センサ部101の他、CPU110、駆動回路120、増幅回路130、増幅率調整回路131、波形整形回路140を有する構成である。
【0015】
超音波センサ部101は、搬送される用紙Pに超音波を照射する発信器102と、発信器102とは用紙Pを挟んで反対側に位置する検出センサ103とを有する構成である。超音波センサ部101では、発信器102により照射された超音波が当たっている用紙PのスポットP1において副次的に放射される音波(超音波)を用紙Pの反対側から検出センサ103で検出する。
【0016】
CPU110(Central Processing Unit)は、ROM(Read Only Memory)に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して順次実行することで、用紙搬送装置10や前述した画像形成装置1の各部の動作を中央制御する。駆動回路120は、CPU110の制御のもと、発信器102へ駆動信号を出力する回路である。増幅回路130は、検出センサ103で検出された検出信号を、増幅率調整回路131より調整された増幅率で増幅する回路である。増幅率調整回路131は、CPU110の制御のもとで設定された増幅率に増幅回路130の増幅率を調整する回路である。波形整形回路140は、増幅回路130より出力された検出信号の波形を整形する回路である。
【0017】
用紙搬送装置10では、CPU110において、使用する発信器102の共振周波数に等しいパルスを生成して駆動回路120へ出力する。駆動回路120では、CPU110より出力されるパルスをもとに、実駆動電圧の駆動信号を発信器102へ出力する。
【0018】
駆動回路120より出力される駆動信号をもとに発信器102では、超音波を用紙Pへ照射する。図3は、発信器102から用紙Pに超音波が照射される様子を示す概念図である。図3に示すように、重送検知に使用される発信器102は、指向性が鋭いものが一般的である。したがって、用紙Pには、超音波がスポットP1にスポット状に照射される。
【0019】
超音波が照射されたスポットP1の部分は、徐々に振動しだして定常振動状態となる。この定常振動を介して、超音波が用紙Pの反対側へと副次的に放射される。検出センサ103では、この副次的に放射された超音波を検出する。用紙Pは、空気に比べて超音波を伝えやすいとは言えず、超音波を大きく減衰する。用紙Pが2枚重なっているなどの重送時には、超音波はさらに大きく減衰する。検出センサ103は、この減衰した超音波を受けて検出信号を出力する。図4は、用紙Pの厚さと検出センサ103の検出信号のレベルとの関係を示すグラフである。図4に示すように、用紙Pが45K、90K、180Kと厚くなるのに従って、検出センサ103の検出信号のレベルは減衰する。
【0020】
したがって、増幅回路130では、検出センサ103からの検出信号を、1枚時と2枚時とを識別できるレベルまで増幅率調整回路131で調整した増幅率で増幅する。増幅された検出信号は、波形整形回路140で整形された後に、CPU110に入力される。CPU110では、入力された検出信号を所定の閾値と比較することで、搬送される用紙Pの重送を検知する。
【0021】
増幅回路130における検出信号の増幅率は、数千倍から数万倍、厚さの大きな用紙に対応する場合には数十万倍にも達する。したがって、厚みのある用紙Pの重送を検知するために増幅率を上げた場合は、機内のモータやアクチュエータ等で用紙Pの搬送時に生じるノイズの影響を受けることとなる。逆に、ノイズの影響を低くするため増幅率を下げた場合には、厚みにある用紙Pの重送検知が困難になる。
【0022】
このため、本実施形態にかかる用紙搬送装置10では、少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を発信器102より照射してスポットP1の大きさを変えることで、用紙PのスポットP1より副次的に放射される超音波の強さを調整し、様々な用紙Pの重送検知に対応している。
【0023】
図5−1〜図5−3は、所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。より具体的には、図5−1は用紙Pに対して約60度程度の第1の角度で超音波を照射する場合を、図5−2は用紙Pに対して約35度程度の第2の角度で超音波を照射する場合を、図5−3は用紙Pに対して約10度程度の第3の角度で超音波を照射する場合を例示している。
【0024】
図5−1〜図5−3に示すように、発信器102が照射する超音波と用紙Pとの角度が変わることで、スポットP1の大きさも変わる。具体的には、用紙Pに対して垂直に近づくほどスポットP1の大きさは小さく、用紙Pに対して鋭角になるほどスポットP1の大きさは大きくなる。スポットP1より副次的に放射される超音波の強さは、スポットP1の大きさに依存する。具体的には、スポットP1の大きさが大きくなるほど放射される超音波の強さは強くなり、スポットP1の大きさが小さくなるほど放射される超音波の強さは弱くなる。したがって、同じ送信波形W1で発信器102から超音波を照射する場合は、第1の角度から順に第3の角度のように、用紙Pに対して照射する超音波の角度を鋭角とすることで、増幅回路130での増幅率を変えることなく、検出センサ103の検出波形W2のレベルを大きくすることができる。すなわち、厚みのある用紙Pの重送を検知する場合など、用紙Pより副次的に放射される超音波を強くしたい場合には、用紙Pに対して鋭角な超音波を発信器102より照射する。
【0025】
なお、第3の角度のように用紙Pに対して鋭角に超音波を照射する場合には、用紙Pが2枚重なった状態であっても検出センサ103の検出信号のレベルが大きなものとなる。図6−1、図6−2は、2枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。図6−3は、3枚の用紙の重送時に所定の角度で超音波を照射した場合の検出波形を示す概念図である。より具体的には、図6−1は2枚重なった用紙Pに対して第1の角度で超音波を照射する場合を、図6−2は2枚重なった用紙Pに対して第3の角度で超音波を照射する場合を、図6−3は3枚重なった用紙Pに対して第3の角度で超音波を照射する場合を例示している。
【0026】
図6−1、図6−2に示すように、第1の角度では検出波形W2の形状はほとんど認められないが、第3の角度では検出波形W2の形状が認められる。また、図6−3に示すように、第3の角度で用紙Pに超音波を照射する場合であっても、用紙Pが3枚重なると検出波形W2の形状はほとんど認められなくなる。したがって、第3の角度で超音波を用紙Pに照射することで、用紙Pが2枚重送されている場合と、3枚重送されている場合とを、増幅率を上げることなく検知できる。例えば、用紙Pが封筒などのように予め2枚重なっている場合、第3の角度で超音波を用紙Pに照射することで、2枚までの用紙Pの搬送を正常な搬送と検知し、3枚からの用紙Pの搬送を重送として検知できる。
【0027】
ここで、少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する発信器102の構成について説明する。図7は、複数の発信器の配置例を示す概念図である。図7に示すように、本実施形態では、用紙Pに対して互いに異なる方向を向いて設置された発信器102a、発信器102bにより用紙Pに対して超音波を照射してよい。具体的には、発信器102aと、その発信器102aより鋭角に超音波を用紙Pに照射する発信器102bとを用紙Pの搬送方向(図中の矢印)に対して垂直の方向に並べて設置している。したがって、発信器102aのスポットP1aよりも発信器102bのスポットP1bの方が面積が大きくなることから、スポットP1bから副次的に放射される超音波の方が強くなる。
【0028】
なお、発信器102a、102bの配置位置は任意であり、近接している必要はなく、用紙Pの搬送路において別々の箇所に配置されてもよい。また、配置個数は、超音波を照射する角度が互いに異なる3つ以上の発信器を配置してもよい。また、照射する角度が同一の発信器を、搬送方向(図中の矢印)に対して垂直の方向に分散して配置してもよい。また、用紙搬送装置10は、図3に例示したような一つの発信器102の向きを、CPU110の制御の元で駆動するアクチュエータ122(図11参照)により変更して、少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する構成であってもよい。
【0029】
図8〜図10は、複数の発信器の回路構成を例示するブロック図である。図8に示すように、用紙搬送装置10では、発信器102a、102bのそれぞれに駆動回路120a、120bを備える構成であってよい。用紙搬送装置10では、CPU110が駆動回路120a又は駆動回路120bへ出力するパルスを切り替えることで、発信器102a又は発信器102bからの超音波の照射が切り替えられることとなる。また、図9に示すように、用紙搬送装置10では、一つの駆動回路120から出力される駆動信号を、CPU110からの制御の元で切り替える切替器121で切り替えて発信器102a又は発信器102bへ出力してもよい。駆動回路120から出力される駆動信号を切替器121で切り替える構成では、図10に示すように、発信器102a〜102cで一つの駆動回路120を流用できる利点がある。
【0030】
図11は、一つの発信器102の向きを変更する場合の回路構成を例示するブロック図である。図11に示すように、アクチュエータ122は、CPU110からの制御信号により駆動し、この駆動力により発信器102の向きを変更する駆動部である。CPU110は、アクチュエータ122の駆動方向、駆動時間を制御することで、発信器102が用紙Pに対して照射する超音波の方向を切り替える。なお、図示しない検出センサ103にもアクチュエータが備えられ、発信器102と正対するように向きを変える。
【0031】
次に、用紙Pの搬送時において、CPU110の制御の元で行われる重送検知処理の詳細について説明する。図12は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下の重送検知処理は、複数の発信器102を用いる場合の処理を例示しているが、いずれかの発信器102への切り替えをアクチュエータ122による角度の切り替えと読み替えることで、一つの発信器102を用いる場合にも流用できる。
【0032】
図12に示すように、用紙Pの搬送時において重送検知処理が開始されると、CPU110は、用紙Pへの照射が垂直に近い第1のセンサ(発信器102a)を駆動させる(S11)。次いで、CPU110は、発信器102aで超音波を発信、検出センサ103で超音波を受信し、検出センサ103の検出信号を増幅回路130で増幅した後のレベルを読み取る(S12)。
【0033】
次いで、CPU110は、印字データにおけるジョブの1枚目の用紙Pにかかる処理であるか否かを判定し(S13)、1枚目の用紙Pである場合(YES)は読み取ったデータ(検出信号のレベル)をRAMなどに一時記憶する(S14)。1枚目の用紙Pに発信器102aから照射した超音波による検出信号で重送の検知を行いない理由は、厚みのある用紙Pである場合に、発信器102aから照射した超音波による検出信号のレベルが低くなることがあるからである。
【0034】
次いで、CPU110は、用紙Pへの照射が発信器102aよりも鋭角な第2のセンサ(発信器102b)を駆動させる(S15)。次いで、CPU110は、発信器102bで超音波を発信、検出センサ103で超音波を受信し、検出センサ103の検出信号を増幅回路130で増幅した後のレベルを読み取る(S16)。発信器102aよりも鋭角な発信器102bから照射した超音波による検出信号は、厚みのある用紙Pでも安定して重送を検知できる程度のレベルがある。
【0035】
したがって、CPU110は、発信器102bから照射した超音波による検出信号のレベル(読み取りデータ)と、ROMなどに予め設定されている閾値とを比較し(S17)、閾値以上であるか否かを判定する(S18)。閾値以上である場合(S18:YES)、CPU110は、用紙Pが重送されていると判断し、用紙Pが重送されていることを操作・表示部20などによりユーザに通知する(S19)。なお、閾値より低い場合(S18:NO)は、予め設定された回数、あるいは予め設定された用紙P上の領域について測定(S11〜S18の処理)を繰り返した後、処理を一旦終了し、次の用紙Pが搬送された際の重送検知処理に備える。
【0036】
なお、S13において1枚目の用紙Pでない場合(NO)、CPU110は、前回の結果としてRAMに一時記憶されているデータ(検出信号のレベル)と今回の検出信号のレベルとを比較し(S20)、その差分が予め設定された範囲を逸脱し、著しく異なっているか否かを判定する(S21)。
【0037】
著しく異なっていない場合(S21:NO)、前回搬送した用紙Pの厚みと今回搬送した用紙Pの厚みとが略同一であることから、CPU110は、用紙の異常と判定することなく、S14へ処理を移行する。著しく異なっている場合(S21:YES)、前回搬送した用紙Pの厚みと今回搬送した用紙Pの厚みとが異なることから、CPU110は、前回又は今回の搬送で用紙Pが密着して重送された用紙の異常と判断し、その用紙の異常を操作・表示部20などによるユーザに通知する(S22)。
【0038】
用紙Pが密着して重送された場合には、間にできる空気層の厚みが十分でないことから、厚みのある一枚の用紙Pが搬送されていると検知されることがある。しかしながら、前回の検出信号のレベルと、今回の検出信号のレベルとを比較することで、密着して重送された用紙の異常を検知できる。なお、用紙Pの厚みの検知には、厚みに応じた適切な検出信号を取得するため(図4参照)、用紙Pに対して垂直に近い発信器102aで照射した超音波による検出信号を用いる。これは、発信器102aよりも鋭角に用紙Pに超音波を照射する発信器102bでは、用紙Pの厚みを検出するのに検出信号のレベルが強すぎる場合があるためである。
【0039】
なお、用紙Pの1枚ごとの平均値を、その用紙Pの検出信号のレベルとして不揮発性メモリに記憶しておくことで、ユーザが用紙Pの設定(厚紙の有無など)を行わなかった際に、用紙Pの厚みを推定するために利用してもよい。例えば、画像形成に用いる用紙Pの設定がなされずに同じような検出信号のレベルの用紙Pが給紙されても、不揮発性メモリに記憶されたデータと照合することで、用紙Pの厚みを推定できる。画像形成装置1によっては、紙種・紙厚ごとに作像条件を変更する場合がある。このような画像形成装置1では、推定された用紙Pの厚みをもとに作像条件を変更できる。
【0040】
S22に次いで、CPU110は、前回の検出信号のレベルに比べて今回の検出信号のレベルが上がっているか否かを判定する(S23)。レベルが上がっている場合(S23:YES)、CPU110は、前回搬送した用紙Pが密着して重送されたと判断し、前の用紙を確認するように操作・表示部20によりユーザに通知し(S24)、処理を終了する。なお、レベルが上がっていない場合(S23:NO)はそのまま処理を終了する。
【0041】
以上のように、用紙搬送装置10では、搬送される用紙Pに対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する発信器102a、102bにより、少なくとも1方向から照射された超音波に対応して検出された音波の強度をもとに、用紙Pが重送されているか否かを検知することで、様々な用紙Pに対応した重送検知を安定して行うことが可能となる。具体的には、発信器102bより用紙Pに対して鋭角に超音波を照射して重送を検知することで、厚みがある用紙Pであっても検出信号の増幅率を上げることなく、重送検知を実施できる。
【0042】
次に、CPU110の制御の元で行われる重送検知処理の変形例1について説明する。図13は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。この変形例1は、用紙Pの種別ごとの動作モードに応じて、用紙Pに照射する超音波の方向を変更する。例えば、上述した第3の角度で用紙Pに超音波を照射する場合は、2枚の用紙Pが重送された場合でもある程度のレベルの検出信号が取得される(図6−3参照)。したがって、変形例においては、3枚以上の重送を検知する動作モード(例えば封筒モード)である場合にのみ、第3の角度で用紙Pに超音波を照射する。
【0043】
図13に示すように、処理が開始されると、CPU110は、動作モードが封筒モードであるか否かを判定する(S10)。封筒モードでない場合(S10:NO)は、用紙Pが2枚搬送されたことを検知する通常の重送検知を行うことから、前述したS11以降の処理を行う。封筒モードである場合(S10:YES)、3枚以上の重送を検知するため、CPU110は、用紙Pへの照射が第3の角度となる発信器102(図5−3参照)を駆動させ(S25)、S16以降の処理を行う。
【0044】
なお、3枚以上の重送検知を行う封筒モード以外に、所定の厚み以上の紙種の用紙Pを搬送する動作モードであるか否かに応じてS15へ処理を進め、用紙Pへの照射が第2の角度となる発信器102bを駆動させてもよい。より具体的には、動作モードが所定の厚み以上の紙種の用紙Pを搬送するモードであり、第1の角度から照射した超音波に対応する検出信号のレベルがS21における判別ができない程度に小さくなる場合、S15へ処理を進める。このように、用紙Pの種別ごとの動作モードに応じて、用紙Pに照射する超音波の方向を変更することで、より適切な重送検知を実施できる。
【0045】
次に、CPU110の制御の元で行われる重送検知処理の変形例2について説明する。この変形例2では、照射する超音波の角度に応じて増幅回路130の増幅率を調整し、用紙Pの搬送時には調整後の増幅率を用いている。
【0046】
図14は、検出信号の増幅率を調整する回路構成を示すブロック図である。図14に示すように、増幅率調整回路131は、検出センサ103より出力された検出信号がコンデンサ132、抵抗133を介して一段目の増幅器134に入力されて増幅される際の増幅率を調整する。具体的には、増幅器134のゲインを調整する回路である。一段目の増幅器134により増幅された信号は、電圧フォロア135、波形整形回路140aを介してCPU110に入力される経路と、二段目の増幅器136で増幅されて波形整形回路140bを介してCPU110に入力される経路とをたどる。検出信号の増幅は、前述したとおり数十万倍にも達することがあることから、多段で行っており、一段目のゲイン調整で増幅率の調整を行っている。
【0047】
次に、CPU110の制御のもとで行う増幅率調整処理について説明する。図15は、増幅率調整処理の一例を示すフローチャートである。なお、この増幅率調整処理は、上述した第1の角度、第2の角度、第3の角度など、用紙Pに照射する超音波の角度ごとに検出センサ103より出力される検出信号のそれぞれに対して行われる処理である。また、増幅率調整処理は、電源投入時、印字データによるジョブの開始時、ジョブ処理中など、システム要求に応じてどのタイミングで実行されてもよい。ただし、発信器102が交換された場合には必ず実行されるものとする。
【0048】
図15に示すように、処理が開始されると、CPU110は、予めROMなどに規定されている増幅率に増幅率調整回路131の増幅率をセットする(S101)。次いで、CPU110は、波形整形回路140a、140bから入力される信号の差分から、一段目で増幅された検出信号のレベルを読み取る(S102)。
【0049】
次いで、CPU110は、一段目で増幅された検出信号のレベルの大きさを、ROMなどに予め設定された所定の値と比較して判定する(S103〜105)。一段目で増幅された検出信号のレベルが所定の値よりも大きい場合(S103:YES)、2枚重送や普通紙程度の厚紙であっても十分な強さの検出信号のレベルを望めることから、CPU110は、封筒/普通紙/紙厚などの全てのモードを選択可能なモードとする(S106)。一段目で増幅された検出信号のレベルが所定の値近傍の中程度である場合(S104:YES)、CPU110は、普通紙/紙厚などのモードを選択可能なモードとする(S107)。一段目で増幅された検出信号のレベルが所定の値よりも小さい場合(S105:YES)、CPU110は、紙厚モードのみを選択可能なモードとする(S108)。なお、一段目で増幅された検出信号のレベルが読み取れていない場合(S105:NO)はS102へ処理を戻す。
【0050】
次いで、CPU110は、選択可能なモードごとにS109〜S115の処理を行う。具体的には、一段目で増幅された検出信号のレベルを読み取り(S109)、読み取ったレベルが現在処理中のモードに対応してROMなどに設定されている目標レベルであるか否かを判定する(S110)。
【0051】
目標レベルでない場合(S110:NO)、CPU110は、読み取ったレベルが目標レベルより高いか否かを判定する(S111)。次いで、CPU110は、目標レベルより高い場合(S111:YES)は増幅率調整回路131の増幅率を下げ(S112)、低い場合(S111:NO)は増幅率調整回路131の増幅率を上げる調整を行い(S113)、S109へ処理を戻す。
【0052】
目標レベルである場合(S110:YES)、CPU110は、調整した増幅率調整回路131の増幅率を不揮発性メモリなどに記憶し(S114)、選択可能な全てのモードに対する処理が終了したか否かを判定する(S115)。全てのモードに対する処理が終了していない場合(S115:NO)、CPU110は、次のモードに対する処理を行うためにS109へ処理を戻し、全てのモードに対する処理が終了した場合(S115:YES)はそのまま処理を終了する。
【0053】
図16は、重送検知処理の一例を示すフローチャートである。図16に示すように、第1のセンサ(例えば発信器102a)を駆動する場合、CPU110は、上述した増幅率調整処理で不揮発性メモリに記憶された第1のセンサ用の増幅率を読み出し、増幅率調整回路131で調整される増幅率を第1のセンサ用に設定する(S11a)。また、第2のセンサ(例えば発信器102b)を駆動する場合、CPU110は、上述した増幅率調整処理で不揮発性メモリに記憶された第2のセンサ用の増幅率を読み出し、増幅率調整回路131で調整される増幅率を第2のセンサ用に設定する(S15a)。また、第3の角度で超音波を照射する第3のセンサを駆動する場合、CPU110は、上述した増幅率調整処理で不揮発性メモリに記憶された第3のセンサ用の増幅率を読み出し、増幅率調整回路131で調整される増幅率を第3のセンサ用に設定する(S25a)。
【0054】
本実施形態の用紙搬送装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0055】
また、本実施形態の用紙搬送装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の用紙搬送装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0056】
なお、上記実施形態にかかる画像形成装置は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機であってよい。また、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…画像形成装置、10…用紙搬送装置、11…給紙部、12…レジスト部、13…反転排紙・両面部、20…操作・表示部、21…作像部、22…書き込み部、23…トナー補給部、24…転写搬送部、25…定着部、26…デカーラ部、27…トナー回収部、28…パージトレイ、101…超音波センサ部、102…発信器、102a…発信器、102b…発信器、102c…発信器、103…検出センサ、110…CPU、120…駆動回路、120a…駆動回路、120b…駆動回路、121…切替器、122…アクチュエータ、130…増幅回路、131…増幅率調整回路、132…コンデンサ、133…抵抗、134…増幅器、135…電圧フォロア、136…増幅器、140…波形整形回路、140a…波形整形回路、140b…波形整形回路、P…用紙、P1…スポット、P1a…スポット、P1b…スポット、W1…送信波形、W2…検出波形
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2006−312527号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射手段と、
照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出手段と、
少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する重送検知手段と、
を備えることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記照射手段は、前記超音波を照射する一つの発信器と、前記発信器の向きを変更する駆動部とを有すること、
を特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記照射手段は、前記超音波を照射する複数の発信器を有し、複数の前記発信器のそれぞれは前記用紙に対して異なる方向を向いて設置されること、
を特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記照射手段は、第1の方向と、当該第1の方向よりも用紙に対して鋭角な第2の方向とを切り替えて前記超音波を照射し、
前記重送検知手段は、前記第1の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度と、前記第2の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度とをもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記重送検知手段は、前記第1の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに搬送される前記用紙の異常を検知し、前記第2の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに前記用紙が重送されているか否かを検知すること、
を特徴とする請求項4に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記照射手段は、前記用紙の種別ごとの動作モードに応じた方向から前記超音波を照射すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の用紙搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
用紙搬送装置の制御方法であって、
搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射工程と、
照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出工程と、
少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する検知工程と、
を含むことを特徴とする用紙搬送装置の制御方法。
【請求項1】
搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射手段と、
照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出手段と、
少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する重送検知手段と、
を備えることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記照射手段は、前記超音波を照射する一つの発信器と、前記発信器の向きを変更する駆動部とを有すること、
を特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記照射手段は、前記超音波を照射する複数の発信器を有し、複数の前記発信器のそれぞれは前記用紙に対して異なる方向を向いて設置されること、
を特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記照射手段は、第1の方向と、当該第1の方向よりも用紙に対して鋭角な第2の方向とを切り替えて前記超音波を照射し、
前記重送検知手段は、前記第1の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度と、前記第2の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度とをもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記重送検知手段は、前記第1の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに搬送される前記用紙の異常を検知し、前記第2の方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに前記用紙が重送されているか否かを検知すること、
を特徴とする請求項4に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記照射手段は、前記用紙の種別ごとの動作モードに応じた方向から前記超音波を照射すること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の用紙搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
用紙搬送装置の制御方法であって、
搬送される用紙に対して少なくとも2方向の中のいずれかの方向から超音波を照射する照射工程と、
照射された前記超音波に対応して前記用紙から放射される音波を検出する検出工程と、
少なくとも1方向から照射された前記超音波に対応して検出された前記音波の強度をもとに、前記用紙が重送されているか否かを検知する検知工程と、
を含むことを特徴とする用紙搬送装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図5−3】
【図6−1】
【図6−2】
【図6−3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図5−3】
【図6−1】
【図6−2】
【図6−3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−184093(P2012−184093A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49613(P2011−49613)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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