説明

用紙裁断装置

【課題】切除領域が搬送ローラ対にニップされないときでも、適正に用紙を裁断できる用紙裁断装置を提供することである。

【解決手段】裁断機構22と、搬送ローラ対13とを備え、一方の裁断刃22Aの刃先が他方の裁断刃22Bの刃先に、幅方向の一端側から他端側へ順次接触することにより用紙Zを裁断する裁断速度を可変に構成するとともに、前記用紙Zの裁断後に除去することとなる切除領域Kfの搬送方向長さLfが、前記裁断機構22の裁断位置から前記搬送ローラ対13のニップ位置Pまでの距離Y2より短い場合には、前記切除領域Kの搬送方向長さLfが前記裁断位置Pから前記ニップ位置N2までの距離Y2以上である場合における前記裁断速度よりも遅い速度に制御されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙裁断装置として、相対向する一対の裁断刃を備え、一方の裁断刃が他方の裁断刃に対し接触離間し、この裁断刃の前後に設置された搬送ローラ対により搬送される用紙を搬送方向と直交する幅方向に、裁断する装置が知られている。下記特許文献1には、このような裁断装置を一部に備えた用紙加工装置が開示されおり、裁断装置によって印刷済み用紙の所定部分を切除し、印刷部分のみを残す加工処理を施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−232700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の裁断装置は、用紙の所定部分を印刷部分から分離し、切除する際に、この切除部分の搬送方向長さが短い場合には、裁断刃の前後にある搬送ローラ対にこの切除部分がニップされなくなり、用紙が不安定となるため適正な裁断が行えない不具合が生じることがあった。特に、比較的厚手の用紙を高速で裁断処理する場合には、図10に示すように、用紙Zと可動側の一方の裁断刃221との接触による衝撃で、可動側裁断刃221が他方の裁断刃222から離れる方向に移動し、裁断途中で裁断できなくなり、両裁断刃221,222の間に用紙Zが挟まって折れ曲がる等の不具合が生じえる。
【0005】
本発明の目的は、切除領域が搬送ローラ対にニップされないときでも、適正に用紙を裁断できる用紙裁断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、相対向する一対の裁断刃を備え、一方の裁断刃が他方の裁断刃に対し接触離間し、用紙を搬送方向と直交する幅方向に裁断する裁断機構と、前記裁断機構の用紙搬送上流側又は下流側に配置された搬送ローラ対とを備え、前記一方の裁断刃の刃先が前記他方の裁断刃の刃先に、前記幅方向の一端側から他端側へ順次接触することにより用紙を裁断する裁断速度を可変に構成するとともに、前記用紙の裁断後に除去することとなる切除領域の搬送方向長さが、前記裁断機構の裁断位置から前記搬送ローラ対のニップ位置までの距離より短い場合には、前記切除領域の搬送方向長さが前記裁断位置から前記ニップ位置までの距離以上である場合における前記裁断速度よりも遅い速度に制御されるものである。
【0007】
本発明は、上記内容に加え、好ましくは、次の構成を備えている。(a)用紙の裁断位置情報に対応した裁断速度情報を、使用者が設定可能に構成している。
【0008】
(b)用紙の裁断位置情報と裁断速度情報とを含む裁断情報が記録された前記用紙から、裁断情報を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた裁断情報に基づいて裁断処理を行うよう裁断機構の動作を制御する制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、用紙の裁断後に除去することとなる切除領域の搬送方向長さが、裁断機構の裁断位置から搬送ローラ対のニップ位置までの距離より短い場合には、前記切除領域の搬送方向長さが前記裁断位置から前記ニップ位置までの距離以上である場合における前記裁断速度よりも遅い速度に制御されるので、切除領域が搬送ローラ対にニップされないときでも、適正に用紙を裁断できる。
【0010】
また、用紙の裁断位置情報に対応した裁断速度情報を、使用者が設定可能に構成した場合は、用紙の裁断が困難となる位置を使用者が選択し、裁断速度を変更することができる。
【0011】
そして、用紙の裁断位置情報と裁断速度情報とを含む裁断情報が記録された前記用紙から、裁断情報を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた裁断情報に基づいて裁断処理を行うよう裁断機構の動作を制御する制御部とを備えた場合は、適正な裁断処理を行うために使用者が行う設定作業の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る用紙裁断装置を備えた用紙加工装置の模式縦断面図である。
【図2】裁断装置の拡大図である。
【図3】用紙の加工品配列パターンの一例を示す平面図である。
【図4】裁断装置の動作を示す断面図である。
【図5】裁断装置の動作を示す断面図である。
【図6】裁断装置の動作を示す断面図である。
【図7】裁断装置の動作を示す断面図である。
【図8】用紙の加工品配列パターンの他の例を示す平面図である。
【図9】裁断装置の動作を示す断面図である。
【図10】従来の裁断装置の動作を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)[用紙加工装置の全体構成] 図1は本発明に係る用紙裁断装置を備えた用紙加工装置の模式縦断面図である。この図1において、用紙加工装置100は、装置本体1の用紙Zの搬送方向Fの上流端部に給紙部3を備え、搬送方向Fの下流端部に紙受け部2を備え、該給紙部3と紙受け部2との間に、略水平な搬送経路5が構成されている。給紙部3には給紙ローラ対8が配置され、搬送経路5には、複数の搬送ローラ対9、10、11、12、13等が搬送方向Fに間隔をおいて配置されると共に、主たる加工機構として、用紙搬送上流側から用紙搬送下流側に向けて、スリット形成機構20、折り型形成機構21及び裁断機構22が配置されている。裁断機構22及び搬送ローラ対12、13は裁断装置101を構成している。また、装置本体1内の下端部には、スリット、裁断等の加工により発生する屑紙である切除片Jを収容する切除片箱23が配置されている。
【0014】
スリット形成機構20の用紙搬送上流側には、読取手段26及びリジェクト機構25が配置され、スリット形成機構20の用紙搬送下流側には、切除片落とし機構27が配置されている。スリット形成機構20、折り型形成機構21及び裁断機構22は、それぞれ着脱可能なユニットとして構成されており、カセット方式により、装置本体1内の所望の位置に着脱できる構造となっている。したがって、加工の種類に応じて、各機構20,21,22の配置順序を変更したり、あるいは他の機構(面取り機構、ミシン目形成機構等)と取り替えたり、追加したりすることができる。
【0015】
各搬送ローラ対9,10,11,12,13は、動力伝達機構を介して各ローラ駆動部41、42,43,44にそれぞれ連結されており、各ローラ駆動部41,42,43,44は制御部45に電気的に接続されている。制御部45には、CPUや、RAM及びROM等の記憶装置が内蔵されており、制御部45のインターフェースには、各種作業設定情報を入力し、かつ、表示するための操作パネル46並びに読取手段26が電気的に接続されている。
【0016】
搬送経路5には、さらに、用紙Zの前端縁(用紙搬送下流端縁)Zaあるいは用紙後端縁(用紙搬送上流端縁)Zbを検出する複数の光透過式の用紙検出センサー31,32,33,34、35が配置されており、それぞれ制御部45のインターフェースに電気的に接続されている。最も用紙搬送上流側の第1の用紙検出センサー31は、読取手段26の用紙搬送上流側近傍に配置され、次の第2の用紙検出センサー32は、スリット形成機構20の用紙搬送上流側近傍に配置され、次の第3の用紙検出センサー33は,スリット形成機構20の途中に配置され、次の第4の用紙検出センサー34は、折り型形成機構21の用紙搬送上流側近傍に配置され、最も用紙搬送下流側の第5の用紙検出センサー35は、紙受け部2の用紙搬送上流側近傍に配置されている。
【0017】
最も搬送方向上流側の第1の用紙検出センサー31は、給紙部3から用紙Zが供給された後、搬送ローラ対9で把持された用紙Zの前端縁Za又は後端縁Zbを検出し、検出した用紙位置を基準にして、搬送経路5上で搬送されている各用紙Zの位置を一義的に検出する。
【0018】
第2の用紙検出センサー32及び第3の用紙検出センサー33は、用紙Zの詰まりを検出する。第4の用紙検出センサー34は、搬送経路5が長くなって搬送経路5上の用紙Zの搬送方向Fの位置ずれ(搬送誤差)の累積が起こった場合に備えて、第1の用紙検出センサー31で得られた用紙位置情報を修正して、当該用紙位置情報をより正確なものにするために補助的に設置している。第5の用紙検出センサー35は、紙受け部2への加工品Qの搬出を検出したり、詰まり等を検出する。
【0019】
[給紙部3] 給紙部3は、吸引搬送ベルト機構を内蔵しており、給紙トレイ3a上に積載された所定枚数の用紙Zを、吸引搬送ベルト機構8a及び給紙ローラ対8により、上端から順に、一枚ずつ搬送経路5に供給する。給紙ローラ対8のうち下方の給紙ローラ8b及び吸引搬送ベルト機構8aは、給紙用駆動部47に接続され、該給紙用駆動部47は制御部45に電気的に接続されている。
【0020】
[読取手段26] 読取手段26は、前記操作パネル46による各種作業設定情報の手動入力とは別に、自動的に作業設定情報を読み取ることができるように設置されている。具体的には、図3に示すような用紙Zの前端隅部に印刷された位置マークM1の画像を読み取って、用紙Zの搬送方向F及び搬送方向Fと直交する用紙搬送幅方向Wの加工の基準位置を検出するとともに、用紙Zの前端部に印刷されたバーコードM2の画像を読み取って用紙Zに施されるべき各種作業設定情報を取得するCCDセンサー等により構成される。作業設定情報としては、たとえば、用紙Zの搬送方向Fの全長La及び全幅Waに加え、加工されることで得られる加工品Qの寸法、数及び配置に応じた折り線Gの位置情報、用紙Zの裁断位置情報、及び各裁断位置情報に対応した裁断速度情報等が挙げられる。
【0021】
[リジェクト機構25] 図1のリジェクト機構25は、印刷された位置マークM1やバーコードM2が不鮮明であるために読取手段26による読取が不能であった場合、その用紙Zに対して、作動し、読取不能の用紙Zを落下させて廃棄トレイ25aで回収する。
【0022】
[スリット形成機構20] スリット形成機構20は、搬送方向Fに3つのユニット部を並べており、各ユニット部には、上下の回転刃からなる回転刃対36が、それぞれ搬送幅方向Wに間隔を置いて2組ずつ配置されている。下側の回転刃は、動力伝達機構を介してモータ等の回転刃駆動部48に連結されている。すなわち、回転刃駆動部48の駆動力で下側の各回転刃を回転させることにより、用紙Zに対して、搬送方向Fと平行にスリットを形成するようになっている。前記各回転刃対36の搬送幅方向Wの間隔は任意に変更可能である。
【0023】
[切除片落とし機構27] 切除片落とし機構27は、前記スリット形成機構20の裁断によって生じる搬送方向Fに沿った切除片J(図3の切除領域Kl)を、搬送経路5の下方に排除するためのものであり、用紙Zが切除片落とし機構27を通過する際に、前記切除片Jを切除片箱23へ落下させる。
【0024】
[折り型形成機構21] 折り型形成機構21は、上端凹部を有する下型21Bと、前記凹部に嵌合する下端凸部を有する上型21Aとを備えており、前記上型21Aは、モータ等の折り型駆動部49に動力伝達機構を介して連結されている。すなわち、折り型駆動部49の駆動力で上型21Aを下降させることにより、用紙Zに対して、搬送方向Fと直交する用紙搬送幅方向Wに折り目を形成する。
【0025】
[裁断機構22] 裁断機構22は、用紙搬送幅方向Wに延び、相対向する一対の裁断刃220を備える。一方の裁断刃220は上側可動刃22Aにより、他方の裁断刃220は下側固定刃22Bにより構成されており、上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに対し接触離間し、用紙Zを搬送方向Fと直交する搬送幅方向Wに裁断する。上側可動刃22Aは、動力伝達機構を介してモータ等の裁断駆動部50に連結されている。
【0026】
図2は、裁断機構22の具体例であり、下側固定刃22Bは用紙搬送幅方向Wに延びるように略水平に配置され、上側可動刃22Aは、水平に対して、刃先部22Aaから刃元部22Abに行くに従って低くなるように傾斜して
おり、搬送方向Fの上流側に配置された上側ガイド体29にとともに上下方向に移動する。上側ガイド板29は、裁断位置Pより搬送方向F上流側で搬送ローラ対12にニップされていない切除片Jが裁断によって跳ね上がるのを防止する。
【0027】
上側可動刃22Aの刃元部22Abは、クランク機構52及びギヤ伝動機構53を介して、裁断駆動部(駆動モータ)50に連動連結されており、裁断駆動部50の駆動動力により、上側可動刃22Aは、用紙搬送幅方向W両側に一対ずつある平行リンク機構51の揺動中心51aを中心として、傾斜状態を保って上下方向に揺動し、上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに、搬送幅方向Wに刃元部22Ab側から刃先部22Aa側へ順次接触することにより用紙Zを裁断する。上側可動刃22Aの位置は、2個の光学センサ54a及び遮光板54bからなる裁断刃位置センサ54により検出され、制御部45に送信される。上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに順次接触する速度である裁断速度Vは、制御部45が 裁断駆動部50を制御することで変更可能となっている。
【0028】
[用紙の加工品配列パターン]図3に示す加工品Qの配列パターンは、一枚の用紙Zから折り目を有する4枚の加工品Qを製作するようになっている。基本的には、搬送方向Fと平行に延びる4本のスリット線Sと、用紙搬送幅方向Wに延びる4本の折り線G及び8本の裁断線Cが設定されている。裁断線Cは、前裁断線Cf、中間裁断線Cm1、Cm2、後裁断線Crからなる。搬送方向Fにおける位置が等しい折り線Gまたは裁断線Cは、一回のクリース処理または裁断処理によって同時に形成される。これらのスリット線S及び裁断線Cで用紙Zを裁断し、折り線Gで折り目を形成することにより、折り目を有する4枚の加工品Qを製作する。
【0029】
[裁断機構22に関する制御部45による制御内容] 図1の制御部45には、次のようなプログラムが組み込まれている。即ち、用紙Zの裁断後に除去することとなる切除領域Kの搬送方向長さLkが、裁断機構22の裁断位置Pから用紙搬送上流側又は下流側に設置された搬送ローラ対12、13のニップ位置N1、N2までの距離Y1、Y2より短い場合には、切除領域Kの搬送方向長さLkが裁断位置Pからニップ位置N1,N2までの距離Y1、Y2以上である場合における裁断速度Vnよりも遅い速度Vlに制御される。
【0030】
搬送ローラ対12、13のニップ位置N1、N2までの距離Y1、Y2及び裁断速度Vn、Vlは、予め制御部45に記憶される。そして、切除領域Kの搬送方向長さLkが、搬送ローラ対12、13のニップ位置N1、N2までの距離Y1、Y2以上であるかどうかの判断は、図1の操作パネル46により使用者が設定し、または読取手段26によって読み取られた裁断位置情報を基になされる。
【0031】
[用紙加工装置の全体作業の概要](1)図1に示す操作パネル46より、使用者が用紙Zの大きさ及び種類、加工品の配列、数及び寸法、裁断位置情報、裁断速度情報等に関する各種作業設定情報を入力する。なお、この手動入力の代わり、あるいは、手動入力と協働して、読取手段26によるバーコードM2等の読み取りにより、作業設定情報を自動的に入力させることもできる。
【0032】
(2)図1の給紙部3の給紙トレイ3a上に積載された複数の用紙Zを、吸引搬送ベルト機構8a及び給紙ローラ8bにより、上端から一枚ずつ搬送経路5に供給する。
【0033】
(3)読取手段26では、必要により、用紙Zの位置マークM1並びに、必要に応じてバーコードM2を読み取って用紙Zに施されるべき各種作業設定情報を取得する。
【0034】
(4)リジェクト機構25では、仮に、読取手段26による読取が不能であり、加工条件が不明である場合には、その用紙Zに対して、作動し、読取不能の用紙Zを落下させて廃棄トレイ25aで回収する。
【0035】
(5)スリット形成機構20では、搬送方向Fと平行な複数のスリット線Sで用紙Zを裁断する。
【0036】
(6)切除片落とし機構27では、前記スリット形成機構20によって裁断された切除片J(図3の切除領域Kl)を、切除片箱23へ落下させる。
【0037】
(7)折り型形成機構21では、用紙搬送幅方向Wの折り線Gで、折り目を形成する。
【0038】
(8)裁断装置101では、裁断機構22により各裁断線Cf、Cm1、Cm2、Crで順次裁断し、生じた切除片Jは下方の切除片箱23に落下し、加工品Qは紙受け部2に搬送され、積載される。
【0039】
[裁断装置の作業の概要]以上の工程中、裁断工程について詳述する。まず、図3に示す前裁断線Cfで用紙Zを切断する際、図4に示すように、前端切除領域Kfの搬送方向長さLfが、裁断機構22より下流側の搬送ローラ対13のニップ位置N2から裁断位置Pまでの距離Y2より短い場合がある。この場合、前端切除領域Kfの前端部が搬送ローラ対13にニップされず自由に動けるようになっているため、用紙Zの前端部が搬送ローラ対13にニップされているときと同じ通常の裁断速度Vnで、上側可動刃22Aを下降して用紙Zを裁断しようとすると、上側可動刃22Aと用紙Zとの接触によって衝撃が発生し、上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに対して、下流側へ逃げる方向に移動することとなる。よって、正しい位置で適正に裁断することが困難となり、裁断位置がずれたり、上側可動刃22Aと下側固定刃22Bとの間に用紙Zが挟まり、紙詰まりを起こしたり、図10に示すような裁断途中の用紙Zの破れや折れ曲がり等の不具合が生じえる。
【0040】
このような場合制御部45は、通常の速度Vnより遅い速度Vlに裁断速度を変更する制御を行う。これにより、上側可動刃22Aは、通常より遅い速度Vlで下降し、刃元部22Ab側から刃先部22Aa側へと通常速度Vnのときよりゆっくりと用紙Zに接触するので、該用紙Zとの接触による衝撃が緩和され、上側可動刃22Aが逃げることなく下側固定刃22Bとの間で用紙Zを挟持し、適正に裁断することができる。裁断により生じた切除片Jは、裁断機構22と搬送ローラ対13との間から、下方へ落下し、切除片箱23へと排出される。
【0041】
次に、前裁断線Cfでの裁断に続いて、用紙Zを図3に示す加工品Qの搬送方向長さLqだけ搬送ローラ対12によって搬送した後、中間裁断線Cm1において搬送ローラ対12,13を停止し裁断する際には、図5に示すように、加工品Qの搬送方向長さLqが、下流側の搬送ローラ対13のニップ位置N2から裁断位置Pまでの距離Y2以上であり、且つ、中間裁断線Cm1より後方の用紙Zの搬送方向長さLbが、裁断位置Pから上流側の搬送ローラ対12のニップ位置N1までの距離Y1以上となる。この場合には、用紙Zの裁断位置Pの前後で、各々搬送ローラ対13及び搬送ローラ対12に用紙Zがニップされ、固定されているので、上側可動刃22Aが通常の速度Vnで下降し、用紙Zを裁断しても、正しい位置で適正に裁断することができる。よって、この場合の裁断速度は通常の速度Vnとする。
【0042】
そして、中間裁断線Cm1での裁断後、図6に示すように、中間切除領域Kmの搬送方向長さLmだけ搬送ローラ対12により用紙Zを搬送し、中間裁断線Cm2において裁断する際には、中間切除領域Kmの搬送方向長さLmが、下流側の搬送ローラ対13のニップ位置N2から裁断位置Pまでの距離Y2より短い場合がある。このとき、用紙Zの後方の搬送方向長さLbは、裁断位置Pから搬送ローラ対12のニップ位置N1までの距離Y1以上となっており、この場合にも、上記前端切除領域Kfを裁断除去したときと同様に、制御部45は、通常の速度Vnより遅い速度Vlに裁断速度を変更する制御を行う。これにより、中間裁断線Cm2においても適正に裁断することができ、裁断後生じた切除片Jは、裁断機構22と搬送ローラ対13との間から、下方へ落下し、切除片箱23へと排出される。
【0043】
最後に、中間裁断線Cm2での裁断に続いて、用紙Zを搬送ローラ対12によって加工品Qの搬送方向長さLqだけ搬送した後、後裁断線Crにおいて裁断する際には、図7に示すように、後端切除領域Krの搬送方向長さLrが、裁断位置Pから搬送ローラ対12のニップ位置N1までの距離Y1より短い場合があり、このとき、用紙Zの加工品Qとなる前部分が、下流側搬送ローラ対13によってニップされているが、用紙Zの後端部が上流側搬送ローラ対12にニップされていない状態となる。このような場合にも、通常の裁断速度Vnでは、適正に裁断できないことがあるので、上記前端切除領域Kf及び中間切除領域Kmを裁断除去したときと同様に、制御部45は、通常の速度Vnより遅い速度Vlに裁断速度を変更する制御を行うことで適正に裁断を行うことができる。裁断により生じた後端切除領域Krの切除片Jは、裁断機構22と搬送ローラ対12との間を通過して、下方の切除片箱23に排出される。
【0044】
以上より、各切除領域Kの搬送方向長さLkが、裁断機構22の裁断位置Pから搬送ローラ対12、13のニップ位置N1,N2までの距離Y1,Y2より短い場合には、各切除領域Kの搬送方向長さLkが裁断位置Pからニップ位置N1,N2までの距離Y1,Y2以上である場合における裁断速度Vnよりも遅い速度Vlに制御されるので、用紙Zが裁断時に搬送ローラ対12,13にニップされないことにより、適正に裁断できない不具合を防止することが可能である。
【0045】
また、用紙Zの裁断位置情報に対応した裁断速度情報を、操作パネル46より使用者が設定可能であるので、用紙の厚さ、種類、強度、品質、加工処理パターン等の裁断条件により裁断が困難となる位置を使用者が任意に選択し、裁断速度の変更を簡単に行える。
【0046】
そして、必要により、バーコードM2に、用紙Zの裁断位置情報と裁断速度情報とを含む裁断情報が記録された用紙Zから、裁断情報を読取手段26により読み取り、読取手段26に読み取られた裁断情報に基づいて裁断処理を行うよう制御部45が裁断機構22の動作を制御するので、使用者の設定作業の負担を軽減することができる。
【0047】
(第2の実施形態)上記第1の実施形態では、切除領域Kの搬送方向長さLkが距離Y1,Y2より短い場合を示したが、本第2の実施形態では、いずれかの切除領域Kの搬送方向長さLkが、距離Y1,Y2より大きいために、搬送ローラ対12と裁断機構22との間、または搬送ローラ対13と裁断機構22との間から切除領域Kを下方へ落とすのが困難となる場合を示す。この場合には、切除領域Kを落下可能な長さに裁断して下方へ落下させ、紙受け部2に切除領域Kが搬送されないようにする。
【0048】
一例として、図8示すように、後端切除領域Kraの搬送方向長さLraが上記第1の実施形態の搬送方向長さLrより長く、距離Y1以上である場合を以下に説明するが、前端切除領域Kf、中間切除領域Kmについても同様である。制御部45には、裁断工程に関して、次のようなプログラムが組み込まれている。 第1の段階として、操作パネル46あるいは読取手段26からの各種作業設定情報の入力値に基づき、切除領域Kの搬送方向長さLkが、搬送ローラ対13から裁断位置Pまでの距離Y2、または裁断位置Pから搬送ローラ対12までの距離Y1以上か否かを判別し、後端切除領域Kraの搬送方向長さLraが、距離Y1以上の長さであった場合には、図8に示すように、切除領域Kraを、用紙搬送下流端から順に、所定細断単位長さLdに裁断分割するための分割用の裁断線Cdを設定する。
【0049】
前記所定細断単位長さLdは、細断された分割領域Kdの切除片Jdが、裁断機構22と用紙搬送上流側の搬送ローラ対12、13の隙間から速やかに下方に落下できる程度の長さに設定されている。
【0050】
第2の段階として、裁断機構22及び第1搬送ローラ対12の実質的な動作制御で、後裁断線Crの裁断後、後端切除領域Kraを分割用の複数の裁断線Cdで裁断する。上記のように、所定細断単位長さLdを、搬送ローラ対13から裁断位置Pまでの距離Y2より短く設定しているので、図9に示すよ
うに、用紙Zaの後端切除領域Kraは、後端部が上流側の搬送ローラ対12によりニップされているが、前端部は下流側の搬送ローラ13にニップされず、自由に動けるようになり、裁断が困難となりやすい。そこで、後端切除領域Krを分割裁断する場合には、制御部45は、裁断速度を通常の速度Vnより遅い速度Vlとする。
【0051】
このように、後端切除領域Kraを分割裁断するので、後端切除領域Kraの搬送方向長さLraが長い場合であっても、紙受け部2へ切除領域Kが搬送されることなく加工品Qのみを搬送することができる。また、後端切除領域Kraを分割裁断する際に、前端部が搬送ローラ対13にニップされないために用紙Zを裁断できない不具合を防止して、分割裁断線Cdで確実に裁断し、生じた分割切除片Jdを下方へ落下させることができる。
【0052】
尚、上記第1、2の実施形態では、切除領域Kの搬送方向長さLkが、裁断機構22の裁断位置Pから搬送ローラ対12,13のニップ位置N1、N2までの距離Y1、Y2より短い場合には、必ず裁断速度を通常の速度Vnよりも遅い速度Vlに設定したが、本発明に係る用紙裁断装置はこれに限定されず、用紙の厚さ、種類、強度、品質、裁断位置等に応じて通常の速度では裁断が困難となる箇所のみを通常より遅い速度に設定してもよい。これにより、裁断時に用紙の前端部又は後端部が搬送ローラ対にニップされず、自由に動けるようになっている場合でも、通常の裁断速度で裁断可能な箇所を通常速度で裁断できるので、用紙の加工処理速度の低下を抑制することができる。
【0053】
このような用紙の各裁断位置での裁断速度を変更するか否かの判断は、使用者が操作パネルより、用紙の各裁断位置において裁断速度の変更を行うかどうかを入力設定した内容、または、読取手段により読み取られる用紙の各裁断位置で裁断速度を変更するかどうかを記録した情報を基になされる。
【0054】
また、各種作業設定情報は、操作パネル46より使用者が手動設定するかまたは読取手段26によりバーコードM2を読み取ることで自動的に入力したが、パソコンなどの情報処理装置から情報を送信し、設定してもよい。また、予め操作パネルからの手動入力のよって、用紙の裁断位置情報に対応した裁断速度情報を含む用紙の加工パターンを複数記憶手段に記憶しておき、各パターンを番号などによって呼出して、設定することとしてもよい。更に、一度設定した裁断速度情報に基づいて用紙の裁断を行った結果、適正に裁断できない不具合が発生した場合に、設定内容を変更し、裁断速度を通常より遅く設定してもよい。
【0055】
また、用紙裁断装置101を用紙加工装置100の一部として構成し、該用紙加工装置100は、搬送方向Fと直交する用紙搬送幅方向Wに用紙を裁断する裁断機構22と共に、搬送方向Fと平行なスリットを形成するスリット形成機構20及び用紙搬送幅方向Wに折り目を形成する折り型形成機構21を備えたが、裁断装置のみを独立して備えてもよく、裁断機構と他の加工機構(ミシン目形成機構、丸み形成機構等も含む)とを適宜組み合わせた用紙加工装置、更には加工機構、搬送ローラ対の数が前記実施の形態と異なる用紙加工装置にも、本発明を適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0056】
F 搬送方向

K 切除領域

Lk,Lf,Lm,Lk 搬送方向長さ

N1,N2 ニップ位置

P 裁断位置

W 幅方向

Y1,Y2 距離

Z,Za 用紙

12,13 搬送ローラ対

22 裁断機構

26 読取手段

45 制御部

220 裁断刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する一対の裁断刃を備え、一方の裁断刃が他方の裁断刃に対し接触離間し、用紙を搬送方向と直交する幅方向に裁断する裁断機構と、前記裁断機構の用紙搬送上流側又は下流側に配置された搬送ローラ対とを備え、前記一方の裁断刃の刃先が前記他方の裁断刃の刃先に、前記幅方向の一端側から他端側へ順次接触することにより用紙を裁断する裁断速度を可変に構成するとともに、前記用紙の裁断後に除去することとなる切除領域の搬送方向長さが、前記裁断機構の裁断位置から前記搬送ローラ対のニップ位置までの距離より短い場合には、前記切除領域の搬送方向長さが前記裁断位置から前記ニップ位置までの距離以上である場合における前記裁断速度よりも遅い速度に制御されることを特徴とする用紙裁断装置。
【請求項2】
用紙の裁断位置情報に対応した裁断速度情報を、使用者が設定可能に構成した請求項1に記載の用紙裁断装置。
【請求項3】
用紙の裁断位置情報と裁断速度情報とを含む裁断情報が記録された前記用紙から、裁断情報を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた裁断情報に基づいて裁断処理を行うよう裁断機構の動作を制御する制御部とを備えた請求項1又は請求項2に記載の用紙裁断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−49126(P2013−49126A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189391(P2011−189391)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】