説明

田植機

【課題】植付クラッチとロータクラッチを任意のタイミングで入切できる田植機を提供する。
【解決手段】植付クラッチ19bは、入切作動させる植付側操作アーム64と連動連結され、ロータクラッチ17cは、入切作動させるロータ側操作アーム65と連動連結され、前記植付側操作アーム64と前記ロータ側操作アーム65は、制御カム63に当接され、該制御カム63は、アクチュエータとなるクラッチモータ66により回転駆動され、該制御カム63の回転により前記植付クラッチ19bと前記ロータクラッチ17cをそれぞれ入切可能に構成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付部への動力を入切する植付クラッチと、整地ロータへの動力を入切するロータクラッチと、を備える田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
植付クラッチの入切は、特許文献1に示す田植機によると、植付クラッチスイッチを「入」に操作して植付クラッチ操作モータを駆動し、ベルクランクを介して植付クラッチが入り作動するように構成される。また、植付クラッチスイッチを「切」に操作して植付クラッチ操作モータを駆動し、ベルクランクを介して植付クラッチが切り作動するように構成されている。
【0003】
そして、整地ロータクラッチの入切は、特許文献2に示す田植機によると、ロータ昇降ハンドルを下方へ回動操作して、クラッチ連動ワイヤを介してロータクラッチが入り作動するように構成されている。また、ロータ昇降ハンドルを上方へ回動操作して、クラッチ連動ワイヤを介してロータクラッチが切り作動するように構成される。
【0004】
特許文献1に示す田植機によると、植付クラッチ操作モータにより植付クラッチを任意のタイミングで入切可能であるが、特許文献2に示す田植機によると、ロータ昇降ハンドルと機械的に連動されて人為的な操作によりロータクラッチを入切する構成であるため、植付作業等に連動させて入切できる構成ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−316835号公報
【特許文献2】特開2010−213617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、植付クラッチとロータクラッチを任意のタイミングで入切できる田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、走行部の後方に植付部が配置されて、該植付部の前部に圃場面を整地する整地ロータが配置された田植機において、前記植付部への動力を入切する植付クラッチと、前記整地ロータへの動力を入切するロータクラッチと、を備え、前記植付クラッチは、入切作動させる植付側操作アームと連動連結され、前記ロータクラッチは、入切作動させるロータ側操作アームと連動連結され、前記植付側操作アームと前記ロータ側操作アームは、制御カムに当接され、該制御カムは、アクチュエータにより回転駆動され、該制御カムの回転により前記植付クラッチと前記ロータクラッチをそれぞれ入切可能に構成されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記アクチュエータにより回転駆動される制御カムは、外周にカムプロフィールが形成され、前記カムプロフィールは、180度の位相差を有するものである。
【0010】
請求項3においては、前記アクチュエータを制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記植付クラッチ及び前記ロータクラッチの入切設定に応じて前記制御カムの回転方向を判定し、最も回転角度が小さい方向に回転するように制御するものである。
【0011】
請求項4においては、前記制御装置は、前記ロータクラッチの入切設定よりも前記植付クラッチの入切設定を優先するように前記アクチュエータを制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、植付クラッチとロータクラッチを任意のタイミングで入切させることができる。また、一つのアクチュエータにより、植付クラッチとロータクラッチの二つのクラッチを入切させることができ、部品点数を削減することができる。
【0014】
請求項2においては、制御カムの位置に応じて植付クラッチとロータクラッチを入切することができる。
【0015】
請求項3においては、制御カムが現在位置から目標位置まで回動する時間を短縮することができる。従って、植付クラッチ及びロータクラッチの作動時間を短縮して、欠株や無駄な植付、無駄な整地を防止することができる。
【0016】
請求項4においては、ロータクラッチの入切設定によらず植付クラッチが先に作動するので、欠株や無駄な植付を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機1の全体側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る田植機1の動力伝達構造図。
【図3】本発明の一実施形態に係る田植機1のクラッチ作動装置60の斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る田植機1のクラッチ作動装置60の後面図。
【図5】制御カム63が位置P1となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図6】制御カム63が位置P2となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図7】制御カム63が位置P3となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図8】制御カム63が位置P4となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図9】制御カム63が位置P5となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図10】制御カム63が位置P6となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図11】制御カム63が位置P7となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図12】制御カム63が位置P8となるクラッチ作動装置60の動作を示す図。
【図13】本発明の一実施形態に係る田植機1の制御の構成を示す図。
【図14】本発明の一実施形態に係る田植機1の制御の態様を示す図。
【図15】本発明の一実施形態に係る田植機1の植付部40の前面図。
【図16】本発明の一実施形態に係る田植機1の施肥装置31の後面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、本実施形態においては、田植機は六条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば八条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0019】
図1に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に、昇降機構30を介して連結される。
【0020】
走行部10においては、フロントアクスルケース16が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース16に取り付けられる。リヤアクスルケース17が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リヤアクスルケース17に取り付けられる。
【0021】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられる。ミッションケース18がエンジン14の後方に配置されて、車体フレーム11の前部に設けられる。ミッションケース18とリヤアクスルケース17とが連結フレーム15で連結される。株間変速ケース19がリヤアクスルケース17の右側前部に設けられる。
【0022】
走行部10においては、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部20が設けられる。運転操作部20の前部には、ダッシュボード21が配置され、ダッシュボード21の左右中央部には、操向ハンドル23が配置され、操向ハンドル23の後方には、運転席22が配置される。運転操作部20においては、主変速レバー24や変速ペダル25を含む複数の操作具が配置され、これらの操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。
【0023】
走行部10において、施肥装置31が運転操作部20の後方に配置されて車体フレーム11の後部で支持される。施肥装置31は、植付条に対応する数の繰出装置やブロア32等を有する。
【0024】
植付部40においては、植付ミッションケース47が植付フレーム49の下部中央付近に支持されて、伝動軸51(図2参照)が当該植付ミッションケース47から左右両側方に延設される。三つの植付伝動ケース46がそれぞれ伝動軸51から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0025】
植付部40においては、ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動可能に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では六つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0026】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置される。苗載台41は、植付フレーム49の後部にガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。複数条(6条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0027】
植付部40においては、複数のフロート42が上下動自在に、圃場面を整地する整地ロータ43が昇降可能に植付フレーム49に支持されている。また、線引きマーカ48が植付フレーム49の左右両側に上下回動可能に支持される。
【0028】
図2に示すように、苗載台41は、横送り機構52により左右往復横送り可能とされる。また、各植付条に対して二つの苗縦送りベルトが苗載台41に設けられる。苗縦送りベルトは、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構53により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように作動可能とされる。
【0029】
ミッションケース18の内部には、油圧−機械式無段変速機(HMT:HydroMechanicalTransmission)18aと、HMT18aからの動力を複数段に変速する主変速機構18bと、HMT18aから主変速機構18bへの動力の伝達の可否を切り換える主クラッチ18cと、主変速機構18bの出力軸の回動を制動する制動装置18d、が設けられる。
【0030】
株間変速ケース19の内部には、走行速度に対する植付速度を変速する株間変速機構19aと、植付部40への動力を入切する植付クラッチ19bと、施肥装置31への動力を入切する施肥クラッチ19cと、が設けられる。植付クラッチ19bの入切に応じて、エンジン14の動力がロータリケース44、横送り機構52及び縦送り機構53に伝達され、または、伝達されないように構成される。施肥クラッチ19cの入切に応じて、エンジン14の動力が施肥装置31に伝達され、または、伝達されないように構成される。
【0031】
リヤアクスルケース17の内部には、左右の後車輪を制動させる左制動装置17a及び右制動装置17bと、整地ロータ43への動力を入切するロータクラッチ17cと、が設けられる。ロータクラッチ17cの入切に応じて、エンジン14の動力が整地ロータ43に伝達され、または、伝達されないように構成される。
【0032】
そして、エンジン14の動力がミッションケース18に伝達され、ミッションケース18の内部にあるHMT18a及び主変速機構18bを介して左右の前車輪12と左右の後車輪13とにそれぞれ伝達されて、前車輪12および後車輪13が回転作動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0033】
また、エンジン14の動力がミッションケース18、株間変速ケース19、植付ミッションケース47などを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転作動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転作動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0034】
さらに、エンジン14の動力が株間変速ケース19から施肥伝動軸54を介して施肥装置31に伝達されて、施肥装置31が作動するように構成される。これにより、植付と同時に圃場に施肥可能とされる。また、エンジン14の動力がリヤアクスルケース17からロータ伝動軸55を介して整地ロータ43に伝達されて、整地ロータ43が回転するように構成される。これにより、植付と同時に圃場が整地可能とされる。
【0035】
以下では、図3から図4を用いて、クラッチ作動装置60について説明する。
【0036】
図3に示すように、クラッチ作動装置60は、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cを入切作動させるものであり、株間変速ケース19の左上方に配置される。クラッチ作動装置60は、台座61と、伝動ギヤ62と、制御カム63と、植付側操作アーム64と、ロータ側操作アーム65と、を備える。
【0037】
図4に示すように、台座61は、後面視略六角形状の板材であり、取付板11bを介して車体フレーム11に取り付けられる。詳細には、車体フレーム11の後部を構成する、長手方向を左右方向として配置された左右フレーム11aの左右中央やや右側に取付板11bが設けられ、該取付板11bに台座61の上部が配置されてボルト67で取り付けられる。台座61の中央部は、円形状に窪んでおり、この窪みに伝動ギヤ62を収納可能としている。すなわち、台座61は、伝動ギヤ62のケースを兼ねている。台座61には、複数の穿設孔が形成されて、該穿設孔にボルトが挿嵌されて不図示のカバーが取付けられる。
【0038】
伝動ギヤ62は、円板状ギヤであり台座61の中央部に配置される。伝動ギヤ62は、台座61とともに回転軸68が挿嵌されて、台座61に対して回動可能に支持される。伝動ギヤ62は、後述する出力ギヤ76と噛合される。回転軸68は、台座61の前面に設けられた不図示のセンサにより、その回転角度が検知可能とされ、後述する制御装置100にその回転角度に対応する信号を送信する。
【0039】
制御カム63は、円形状の板材の外側に点対称となるようにカムが形成され、略楕円状に形成されている。つまり、制御カム63の外周には、半径が異なる二つの大径カム部63a・63cと、二つの小径カム部63b・63dと、が形成され、これら二つの大径カム部63a・63cと二つの小径カム部63b・63dとが制御カム63の中心に対してそれぞれ対称に配置される。
【0040】
言い換えれば、制御カム63の外周にカムプロフィールが形成され、該カムプロフィールは、180度の位相差を有する。本実施形態では、大径カム部63a・63cの円弧はそれぞれπ/4[rad]程度とされ、小径カム部63b・63dの円弧はそれぞれ3π/4[rad]程度とされる。制御カム63は、前記伝動ギヤ62の後方で当該伝動ギヤ62と同軸上に配置されて、前記回転軸68の後端に固設される。なお、制御カム63の大径カム部の数を2つ以上としたり、大径カム部の円弧を長くしたり、カムプロフィールの位相差を変更することも可能である。
【0041】
植付側操作アーム64は、植付クラッチ19bを入切作動させるものである(図3参照)。植付側操作アーム64は、後面視略へ字状(略ベルクランク状)の屈曲形状に形成されており、台座61の後方で制御カム63の右側上部に当該制御カム63と当接可能に配置される。植付側操作アーム64は、その屈曲部で台座61とともに支軸69が挿嵌されて、台座61に対して回動可能に支持される。植付側操作アーム64の一端64aには、植付クラッチ19bの操作部材となるロッド70が連結されて、他端64bには、ローラ71が回動可能に支持される。ローラ71は、制御カム63の外周と当接される。
【0042】
ロータ側操作アーム65は、ロータクラッチ17cを入切作動させるものである(図3参照)。ロータ側操作アーム65は、後面視略へ字状(略ベルクランク状)の屈曲形状に形成されており、台座61の後方で制御カム63の左側上部に当該制御カム63と当接可能に配置される。ロータ側操作アーム65は、その屈曲部で台座61とともに支軸72が挿嵌されて、台座61に対して回動可能に支持される。ロータ側操作アーム65の一端65aには、ロータクラッチ17cの操作部材となるワイヤー73が連結されて、他端65bには、ローラ74が回動可能に支持される。ローラ74は、制御カム63の外周と当接される。
【0043】
また、植付側操作アーム64の支軸69とロータ側操作アーム65の支軸72は、制御カム63の回転軸68を中心に左右対称に配置される。また、植付側操作アーム64の他辺とロータ側操作アーム65の他辺の長さは、略同一とされる。このように、制御カム63、植付側操作アーム64、ロータ側操作アーム65の配置や形状を適宜設定することで、制御カム63の複数の停止位置に応じて、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cの入切が可能とされる。
【0044】
本実施形態では、制御カム63は、図5から図10に示すように、位置P1から位置P8の8つの位置(略45度毎)に停止するように構成される。このうち、位置P1と位置P5は、植付クラッチ19bが「切」、ロータクラッチ17cが「切」となる制御カム63の位置である。位置P2と位置P6は、植付クラッチ19bが「入」、ロータクラッチ17cが「切」となる制御カム63の位置である。位置P3と位置P7は、植付クラッチ19bが「入」、ロータクラッチ17cが「入」となる制御カム63の位置である。位置P4と位置P8は、植付クラッチ19bが「切」、ロータクラッチ17cが「入」となる制御カム63の位置である。つまり、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cはそれぞれ「入」「切」が存在するので、4ポジションを設定し、「入」「入」と「切」「切」の両側に「入」「切」と「切」「入」が位置するように8ポジションの停止位置を形成している。
【0045】
具体的には、図5に示すように、位置P1は、一方の大径カム部63aが右下側に位置し、他方の大径カム部63cが左上側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が一方の小径カム部63bと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で時計回りに回動してロッド70が下方に押し出され、植付クラッチ19bが「切」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端に軸支されたローラ74が他方の大径カム部63cと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で時計回りに回動してワイヤー73が引っ張られ、ロータクラッチ17cが「切」となる。
【0046】
図6に示すように、位置P2は、一方の大径カム部63aが右側に位置し、他方の大径カム部63cが左側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が一方の大径カム部63aと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で反時計回りに回動してロッド70が上方に引っ張られ、植付クラッチ19bが「入」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が他方の大径カム部63cと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で時計回りに回動してワイヤー73が引っ張られ、ロータクラッチ17cが「切」となる。
【0047】
図7に示すように、位置P3は、一方の大径カム部63aが右上側に位置し、他方の大径カム部63cが左下側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が一方の大径カム部63aと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で反時計回りに回動してロッド70が上方に引っ張られ、植付クラッチ19bが「入」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が一方の小径カム部63bと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で反時計回りに回動してワイヤー73が弛緩され、ロータクラッチ17cが「入」となる。
【0048】
図8に示すように、位置P4は、一方の大径カム部63aが上側に位置し、他方の大径カム部63cが下側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が他方の小径カム部63dと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で時計回りに回動してロッド70が下方に押し出され、植付クラッチ19bが「切」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が一方の小径カム部63bと当接して、また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が一方の小径カム部63bと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で反時計回りに回動してワイヤー73が弛緩され、ロータクラッチ17cが「入」となる。
【0049】
図9に示すように、位置P5は、一方の大径カム部63aが左上側に位置し、他方の大径カム部63cが右下側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が一方の小径カム部63bと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で時計回りに回動してロッド70が下方に押し出され、植付クラッチ19bが「切」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が他方の大径カム部63cと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で時計回りに回動してワイヤー73が引っ張られ、ロータクラッチ17cが「切」となる。
【0050】
図10に示すように、位置P6は、一方の大径カム部63aが左側に位置し、他方の大径カム部63cが右側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が他方の大径カム部63cと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で反時計回りに回動してロッド70が上方に引っ張られ、植付クラッチ19bが「入」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が一方の大径カム部63aと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で時計回りに回動してワイヤー73が引っ張られ、ロータクラッチ17cが「切」となる。
【0051】
図11に示すように、位置P7は、一方の大径カム部63aが左下側に位置し、他方の大径カム部63cが右上側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が他方の大径カム部63cと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で反時計回りに回動してロッド70が上方に引っ張られ、植付クラッチ19bが「入」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が他方の小径カム部63dと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で反時計回りに回動してワイヤー73が弛緩され、ロータクラッチ17cが「入」となる。
【0052】
図12に示すように、位置P8は、一方の大径カム部63aが下側に位置し、他方の大径カム部63cが上側に位置する制御カム63の位置である。この場合、植付側操作アーム64の他端64bに軸支されたローラ71が一方の小径カム部63bと当接して、植付側操作アーム64の一端64aが後面視で時計回りに回動してロッド70が下方に押し出され、植付クラッチ19bが「切」となる。また、ロータ側操作アーム65の他端65bに軸支されたローラ74が他方の小径カム部63dと当接して、ロータ側操作アーム65の一端65aが後面視で反時計回りに回動してワイヤー73が弛緩され、ロータクラッチ17cが「入」となる。
【0053】
そして、制御カム63は、図4に示すように、アクチュエータであるクラッチモータ66により回転駆動される。クラッチモータ66は、一方向及び他方向に駆動可能に構成され、つまり、前記制御カム63は、後面視で時計方向及び反時計方向の何れにも回動可能に構成される。クラッチモータ66は、制御カム63の右方に配置されて、ボルト75により台座61の右側に取り付けられる。クラッチモータ66は、その出力軸に前記伝動ギヤ62と噛合する出力ギヤ76が固設される。出力ギヤ76の径は、伝動ギヤ62の径より小さく形成され、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cを作動させるために必要なトルクを低減している。クラッチモータ66は、図13に示す制御装置100と接続され、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動する。
【0054】
このように、クラッチ作動装置60においては、一つのクラッチモータ66により制御カム63を介して植付クラッチ19bとロータクラッチ17cの二つのクラッチを入切させることができるので、クラッチモータや制御カム等の部品点数を削減することができる。
【0055】
以下では、図13及び図14を用いて、クラッチモータ66の制御の構成及び制御の態様について説明する。
【0056】
植付操作手段となるクロスレバー26は、ロータクラッチ17c及び植付クラッチ19bの入切設定等を行うものあり、ダッシュボード21の後方右端部に配置される。クロスレバー26は、前後左右に操作可能であり、その操作方向を検出する手段として操作方向検出スイッチ26aが回動基部に備えられる。操作方向検出スイッチ26aは、制御装置100と接続され、その操作方向に対応する信号を制御装置100に送信する。クロスレバー26は、操作後には中立位置に自動復帰するように構成される。
【0057】
上昇上限スイッチ27は、植付部40が所定の上昇位置に位置するか否かを検出するものである。上昇上限スイッチ27は、マイクロスイッチで構成され、昇降機構30を構成するフレームに設けられる。上昇上限スイッチ27は、制御装置100と接続されて、植付部40が下降位置から所定の上昇位置に到達するとONとなり、その信号を制御装置100に送信する。
【0058】
ロータ収納スイッチ28は、整地ロータ43を昇降操作するロータ昇降操作レバーが「収納位置」に位置するか否かを検出するものである。ロータ収納スイッチ28は、マイクロスイッチで構成され、ロータ昇降操作レバーの近傍に配置される。ロータ収納スイッチ28は、制御装置100と接続されて、ロータ昇降操作レバーが「収納位置」に操作されるとONとなり、その信号を制御装置100に送信する。
【0059】
フロートセンサ29は、圃場面に対する植付部40の高さを検出するものである。フロートセンサ29は、ポテンショメータで構成され、フロート42を上下回動可能に構成するリンク機構に設けられる。フロートセンサ29は、制御装置100と接続されて、フロート42の上下回動量に対応する信号を制御装置100に送信する。フロートセンサ29は、本実施形態では、その検出値に応じて、フロート42が圃場に接地しているか否かを判断している。
【0060】
制御装置100は、走行部10の任意位置に設けられる。制御装置100は、CPUや、ROM、RAM、インターフェイス、バスなどを備える。制御装置100には、各種プログラムが記憶される。制御装置100は、操作方向検出スイッチ26a、上昇上限スイッチ27、ロータ収納スイッチ28及びフロートセンサ29の検出値に応じて植付クラッチ19bの入切設定及びロータクラッチ17cの入切設定を行う。
【0061】
制御装置100は、上昇上限スイッチ27がOFF、かつ、フロートセンサ29が接地、かつ、植付クラッチ「入」操作(本実施形態では、操作方向検出スイッチ26aによりクロスレバー26が後方(植付部下げ方向)に二回傾倒されたこと)を検出すると、植付クラッチ19bを「入」に設定する(「切」から「入」に切り換える)。この状態から、植付クラッチ「切」操作(本実施形態では、操作方向検出スイッチ26aによりクロスレバー26が前方(上昇方向)に傾倒されたこと)を検出すると、植付クラッチ19bを「切」に設定する(「入」から「切」に切り換える)。
【0062】
また、制御装置100は、上昇上限スイッチ27がOFF、かつ、ロータ収納スイッチ28がOFFであることを検出すると、ロータクラッチ17cを「入」に設定する(「切」から「入」に切り換える)。この状態から、上昇上限スイッチ27がON、ロータ収納スイッチ28がON、の少なくとも一つが検出されると、ロータクラッチ17cを「切」に設定する(「入」から「切」に切り換える)。
【0063】
ただし、ロータクラッチ17cを「入」に設定する前記条件に、操作方向検出スイッチ26aによりクロスレバー26が後方に傾倒されたことを検出する条件や、植付部40が下降するように昇降シリンダの電磁弁の駆動信号を出力する条件を追加することも可能である。これにより、植付部40が自重や走行時の揺れ等で下降して上昇上限スイッチ27がOFFとなった場合でも、ロータクラッチ17cが「入」に設定されることを防止することができる。
【0064】
図13及び図14に示すように、制御装置100は、これら植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cの入切設定に基づいてクラッチ作動装置60の制御カム63が位置P1から位置P8の何れかに位置するようにクラッチモータ66を制御する。
【0065】
制御カム63の現在位置が位置P1である場合に、植付クラッチ19bが「入」と設定されると、目標位置をP2として、制御カム63が位置P1から位置P2に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図5及び図6に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P1から位置P2まで所定角度回動させる。
【0066】
制御カム63の現在位置が位置P2である場合に、ロータクラッチ17cが「入」と設定されると、目標位置をP3として、制御カム63が位置P2から位置P3に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図6及び図7に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P2から位置P3まで所定角度回動させる。
【0067】
制御カム63の現在位置が位置P3である場合に、植付クラッチ19bが「切」と設定されると、目標位置をP4として、制御カム63が位置P3から位置P4に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図7及び図8に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P3から位置P4まで所定角度回動させる。
【0068】
制御カム63の現在位置が位置P4である場合に、ロータクラッチ17cが「切」と設定されると、目標位置をP5として、制御カム63が位置P4から位置P5に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図8及び図9に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P4から位置P5まで所定角度回動させる。
【0069】
制御カム63の現在位置が位置P5である場合に、植付クラッチ19bが「入」と設定されると、目標位置をP6として、制御カム63が位置P5から位置P6に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図9及び図10に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P5から位置P6まで所定角度回動させる。
【0070】
制御カム63の現在位置が位置P6である場合に、ロータクラッチ17cが「入」と設定されると、目標位置をP7として、制御カム63が位置P6から位置P7に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図10及び図11に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P6から位置P7まで所定角度回動させる。
【0071】
制御カム63の現在位置が位置P7である場合に、植付クラッチ19bが「切」と設定されると、目標位置をP8として、制御カム63が位置P7から位置P8に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図11及び図12に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P7から位置P8まで所定角度回動させる。
【0072】
制御カム63の現在位置が位置P8である場合に、ロータクラッチ17cが「切」と設定されると、目標位置をP1として、制御カム63が位置P8から位置P1に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図12及び図5に示すように、制御カム63を後面視で反時計回りに位置P8から位置P1まで所定角度回動させる。
【0073】
また、制御カム63の現在位置が位置P1である場合に、ロータクラッチ17cが「入」と設定されると、目標位置をP8として、制御カム63が位置P1から位置P8に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図5及び図12に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P1から位置P8まで所定角度回動させる。
【0074】
制御カム63の現在位置が位置P8である場合に、植付クラッチ19bが「入」と設定されると、目標位置をP7として、制御カム63が位置P8から位置P7に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図12及び図11に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P8から位置P7まで所定角度回動させる。
【0075】
制御カム63の現在位置が位置P7である場合に、ロータクラッチ17cが「切」と設定されると、目標位置をP6として、制御カム63が位置P7から位置P6に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図11及び図10に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P7から位置P6まで所定角度回動させる。
【0076】
制御カム63の現在位置が位置P6である場合に、植付クラッチ19bが「切」と設定されると、目標位置をP5として、制御カム63が位置P6から位置P5に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図10及び図9に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P6から位置P5まで所定角度回動させる。
【0077】
制御カム63の現在位置が位置P5である場合に、ロータクラッチ17cが「入」と設定されると、目標位置をP4として、制御カム63が位置P5から位置P4に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図9及び図8に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P5から位置P4まで所定角度回動させる。
【0078】
制御カム63の現在位置が位置P4である場合に、植付クラッチ19bが「入」と設定されると、目標位置をP3として、制御カム63が位置P4から位置P3に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図8及び図7に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P4から位置P3まで所定角度回動させる。
【0079】
制御カム63の現在位置が位置P3である場合に、ロータクラッチ17cが「切」と設定されると、目標位置をP2として、制御カム63が位置P3から位置P2に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図7及び図6に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P3から位置P2まで所定角度回動させる。
【0080】
制御カム63の現在位置が位置P2である場合に、植付クラッチ19bが「切」と設定されると、目標位置をP1として、制御カム63が位置P2から位置P1に位置するようにクラッチモータ66を制御する。つまり、図6及び図5に示すように、制御カム63を後面視で時計回りに位置P2から位置P1まで所定角度回動させる。
【0081】
そして、制御装置100は、制御カム63が現在位置とクラッチ17c・19bの入切設定に対応する二つの目標位置とから、制御カム63の回転方向を判定し、最も回転角度が小さい方向に回転するように制御している。例えば、制御カム63の現在位置が位置P1である場合に、植付クラッチ19bが「入」と設定されると、目標位置をP6でなくP2としている。これにより、制御カム63が現在位置から目標位置まで回動する時間(作動時間)を短縮することができる。従って、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cの作動時間を短縮して、欠株や無駄な植付を防止することができる。
【0082】
さらに、制御装置100は、ロータクラッチ17cの入切設定よりも植付クラッチ19bの入切設定を優先する。例えば、制御カム63の現在位置が位置P2である場合に、植付クラッチ19bが「切」、ロータクラッチ17cが「入」に設定されると、目標位置は位置P4ではなく位置P8としてクラッチモータ66を制御する。これは、制御カム63が位置P2から位置P3を経由して位置P4に到達すると、植付クラッチ19bが「入」となっている時間が長くなり、また、制御カム63が位置P2から位置P1を経由して位置P8に到達すると、ロータクラッチ17cが「入」となっている時間が長くなるためである。
【0083】
すなわち、植付クラッチ19bが「入」、ロータクラッチ17cが「切」の状態から、植付クラッチ19bが「切」、ロータクラッチ17cが「入」となるように操作した直後に機体を走行させると、目標位値を位置P2から位置P4へ制御カム63が回転する間に、苗が植え付けられる可能性がある。つまり、整地前の植付作業をしたくない圃場に苗が植え付けられることが生じるため、整地作業の停止よりも植付作業の停止を優先しているのである。
【0084】
また、制御カム63の現在位置が位置P2である場合に、ロータクラッチ17cが「入」に設定されると、目標位置を位置P3としてクラッチモータ66を制御するが、この制御カム63が位置P2から位置P3に到達する間に植付クラッチ19bが「切」に設定されると、制御装置100は、制御カム63の目標位値をP3からP8に変更してクラッチモータ66を制御する。制御カム63の現在位置が位置P6である場合も同様である。このように、ロータクラッチ17cの入切設定よりも植付クラッチ19bの入切設定を優先するようにクラッチモータ66を制御するので、ロータクラッチ17cの入切設定によらず植付クラッチ19bが先に作動して、欠株や無駄な植付を防止することができる。
【0085】
なお、電源投入時は、制御装置100は、操作方向検出スイッチ26a、上昇上限スイッチ27、ロータ収納スイッチ28及びフロートセンサ29等によらず、制御カム63が位置P1になるように、すなわち、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cがともに「切」となるようにクラッチモータ66を制御する。ただし、電源投入時の制御カム63を位置P5となるようにクラッチモータ66を制御することも可能であり、この場合は、電源投入時の制御カム63の位置が位置P1または位置P5のうち何れか近い位置を目標位置として制御することが望ましい。
【0086】
さらに、電源停止時は、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cの入切状態は、制御カム63の位置に対応しているが、電源停止時に自己保持回路等により植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cがともに「切」となるように、制御カム63が位置P1又は位置P5の何れかにクラッチモータ66を制御することも可能である。
【0087】
なお、植付クラッチ19bの入切と連動して施肥クラッチ19cを入切するように構成することも可能である。
【0088】
ところで、田植機1は、条止めを行うためのクラッチとして各条に対応する植付ユニットクラッチと、縦送りユニットクラッチと、施肥ユニットクラッチと、を備える。植付ユニットクラッチ及び縦送りユニットクラッチは、植付クラッチよりも動力伝達経路における下流側に位置して、施肥ユニットクラッチは、施肥クラッチよりも動力伝達経路における下流側に位置する。
【0089】
植付ユニットクラッチ及び縦送りユニットクラッチは、図15に示すクラッチ作動装置80により入切作動するように構成される。クラッチ作動装置80は、苗載台41の左右中央上側に取り付けられる。クラッチ作動装置80は、前記クラッチ作動装置60と制御カムの形状を除き略同じ構成であり、これら部品の共通化によりコストを低減している。なお、制御カムは略扇形状とされ、該制御カムの一側又は他側から順次、各条に対応する操作アームと当接して入切作動するように構成される。該制御カムは、クラッチモータ86により回転駆動される。
【0090】
施肥ユニットクラッチは、図16に示すクラッチ作動装置90により入切作動するように構成される。クラッチ作動装置90は、施肥装置31の後部であって左右中央よりやや左側に取り付けられる。クラッチ作動装置90は、前記クラッチ作動装置80と略同じ構成であり、部品の共通化によりコストを低減している。該制御カムは、クラッチモータ96により回転駆動される。
【0091】
クラッチモータ86・96は、前記クラッチモータ66と同様に一方向及び他方向に駆動可能に構成され、つまり、これらに対応する制御カムは、後面視で時計方向及び反時計方向の何れにも回動可能に構成される。図13に示すように、クラッチモータ86・96は、制御装置100と接続されて、該御装置100は、前記植付ユニットクラッチ、縦送りユニットクラッチ、及び施肥クラッチの入切設定に応じて前記制御カムの回転方向を判定し、最も回転角度が小さい方向に回転するように制御する。こうして、制御カムが現在位置から目標位置まで回動する時間を短縮することができる。従って、植付ユニットクラッチ、縦送りユニットクラッチ、施肥クラッチの作動時間を短縮して、欠株や無駄な植付及び施肥を防止することができる。
【0092】
以上のように、本発明の一実施形態に係る田植機1においては、走行部10の後方に植付部40が配置されて、該植付部40の前部に圃場面を整地する整地ロータ43が配置された田植機1において、前記植付部40への動力を入切する植付クラッチ19bと、前記整地ロータ43への動力を入切するロータクラッチ17cと、を備え、前記植付クラッチ19bは、入切作動させる植付側操作アーム64と連動連結され、前記ロータクラッチ17cは、入切作動させるロータ側操作アーム65と連動連結され、前記植付側操作アーム64と前記ロータ側操作アーム65は、制御カム63に当接され、該制御カム63は、アクチュエータとなるクラッチモータ66により回転駆動され、該制御カム63の回転により前記植付クラッチ19bと前記ロータクラッチ17cをそれぞれ入切可能に構成されるものである。これにより、植付クラッチ19bとロータクラッチ17cを任意のタイミングで入切させることができる。また、一つのアクチュエータであるクラッチモータ66により、植付クラッチ19bとロータクラッチ17cの二つのクラッチを入切させることができ、部品点数を削減することができる。
【0093】
また、前記クラッチモータ66により回転駆動される制御カム63は、外周にカムプロフィールが形成され、前記カムプロフィールは、180度の位相差を有するものである。これにより、制御カム63の位置に応じて植付クラッチ19bとロータクラッチ17cを入切することができる。
【0094】
また、前記クラッチモータ66を制御する制御装置100を備え、前記制御装置100は、前記植付クラッチ19b及び前記ロータクラッチ17cの入切設定に応じて前記制御カム63の回転方向を判定し、最も回転角度が小さい方向に回転するように制御するものである。これにより、制御カム63が現在位置から目標位置まで回動する時間を短縮することができる。従って、植付クラッチ19b及びロータクラッチ17cの作動時間を短縮して、欠株や無駄な植付、無駄な整地を防止することができる。
【0095】
また、前記制御装置100は、前記ロータクラッチ17cの入切設定よりも前記植付クラッチ19bの入切設定を優先するように前記クラッチモータ66を制御するものである。これにより、ロータクラッチ17cの入切設定によらず植付クラッチ19bが先に作動するので、欠株や無駄な植付を防止することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 田植機
10 走行部
40 植付部
43 整地ロータ
19b 植付クラッチ
17c ロータクラッチ
64 植付側操作アーム
65 ロータ側操作アーム
63 制御カム
66 クラッチモータ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部の後方に植付部が配置されて、該植付部の前部に圃場面を整地する整地ロータが配置された田植機において、
前記植付部への動力を入切する植付クラッチと、
前記整地ロータへの動力を入切するロータクラッチと、を備え、
前記植付クラッチは、入切作動させる植付側操作アームと連動連結され、
前記ロータクラッチは、入切作動させるロータ側操作アームと連動連結され、
前記植付側操作アームと前記ロータ側操作アームは、制御カムに当接され、該制御カムは、アクチュエータにより回転駆動され、該制御カムの回転により前記植付クラッチと前記ロータクラッチをそれぞれ入切可能に構成される田植機。
【請求項2】
前記アクチュエータにより回転駆動される制御カムは、外周にカムプロフィールが形成され、
前記カムプロフィールは、180度の位相差を有する請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記アクチュエータを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記植付クラッチ及び前記ロータクラッチの入切設定に応じて前記制御カムの回転方向を判定し、最も回転角度が小さい方向に回転するように前記アクチュエータを制御する請求項1又は請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ロータクラッチの入切設定よりも前記植付クラッチの入切設定を優先するように前記アクチュエータを制御する請求項3に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−235704(P2012−235704A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104796(P2011−104796)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】