説明

画像のつなぎ合わせ

【課題】 複数の画像をつなぎ合わせることによって得られる連続画像の接合部の画質の劣化を防止する。
【解決手段】 第1の画像データDp1と第2の画像データDp2とを重ね合わせる場合に、重複部分についての高周波成分の分布状況を検出して、高周波成分量Hが少ない部分には、第1の長さの重ね合わせ領域の幅長WLを設定し、高周波成分量Hが多い部分には、第1の長さよりも短い第2の長さの重ね合わせ領域の幅長WLを設定する。そして、その幅長Lの重ね合わせ領域でもって、第1の画像データDp1と第2の画像データDp2とを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の一部が重複するように撮影した第1の画像データと第2の画像データとをつなぎ合わせることにより、連続した画像の画像データを生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ(デジタルスチールカメラ)とパーソナルコンピュータの普及に伴い、デジタルカメラで撮影した画像データをパーソナルコンピュータを用いて様々に処理することが可能となっている。様々な処理の一つとして、デジタルカメラで撮影した複数の画像データをつなぎ合わせてパノラマ画像を生成するパノラマ画像生成処理がある。
【0003】
このパノラマ画像生成処理では、デジタルカメラにより、画像の一部が重複するように被写体像を複数に分割して撮影し、得られた複数の画像において、隣接する画像間のつなぎを合わせることにより連続したパノラマ画像を作成する。このようなパノラマ画像生成処理については、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−90232号公報
【0005】
2つの画像をつなぎ合わせる方法として、両画像の境界線部分に所定の幅の合成領域(以下、「重ね合わせ領域」とも呼ぶ)を設けて、この重ね合わせ領域において両画像の合成割合を徐々に変化させる構成が知られている。
【0006】
図16は、重ね合わせ領域を設定して両画像の合成割合を変化させる合成方法を示す説明図である。図示するように、第1の画像は、重ね合わせ領域の幅方向において第2の画像に向かうに従って、合成割合が100%から0%に漸次減少し、一方、第2の画像は、重ね合わせ領域の幅方向において第1の画像に向かうに従って、合成割合が100%から0%に漸次減少しており、両画像の合成割合の和は100%となっている。この構成によれば、重ね合わせ領域の幅の中で両画像を滑らかに混ぜ込んで行くことができる。この結果、両画像の境界線部分は、色の変化が滑らかなものとなる。なお、上述した「重ね合わせ領域の幅」というは、重ね合わせ領域(合成領域)における、つなぎ合わせる2つの画像の並びの方向の長さのことである。この明細書でいう「合成領域の幅(あるいは、合成領域の幅長)」についても、同様である。
【0007】
しかしながら、前記後者の技術では、第1の画像と第2の画像との間で絵柄の位置あわせが十分にできていない場合には、絵柄によっては画質が却って劣悪なものとなる問題があった。例えば、空と森林を写した風景写真に上記後者の技術を用いた場合、空の部分は、例え上記位置合わせが不十分であっても画質の劣化は少ないが、森林のような絵柄の複雑な部分は、上記位置合わせが不十分であると、複雑な絵柄が位置ずれされた状態で平滑化されてしまい、ぼやけた画像となってしまった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、複数の画像をつなぎ合わせることによって得られる連続画像の接合部の画質の劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題の少なくとも一部を解決するための手段として、以下に示す構成をとった。
【0010】
本発明の画像つなぎ合わせ装置は、
画像の一部が重複するように撮影した第1の画像データと第2の画像データとをつなぎ合わせることにより、連続した画像の画像データを生成する画像つなぎ合わせ装置であって、
前記両画像データのうちの少なくとも一方の前記重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを分析する分析手段と、
前記両画像データを前記重複部分でつなぎ合わせる際に両画像データを合成する合成領域の幅長を、前記分析手段による分析結果に基づいて場所毎に定める幅長制御手段と、
前記両画像データの前記重複部分に対して、前記幅長制御手段により定められた幅長の合成領域を設定して、該合成領域でもって前記両画像データを合成する合成手段と
を備えることを要旨としている。
【0011】
上記構成の画像つなぎ合わせ装置によれば、第1の画像データと第2の画像データとの重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さが分析されて、その分析結果に基づいて、第1の画像データと第2の画像データとの合成領域の幅長が場所毎に定められる。この定められた幅長の合成領域でもって、両画像データが合成される。
【0012】
このために、重複部分の場所毎の絵柄の複雑さに基づいて、合成領域の幅長が決定されることになる。一般に、2つの画像データの間の位置あわせは容易ではなく、位置あわせが不十分になることも多い。しかしながら、上記構成によれば、位置あわせが例え不十分であったとしても、絵柄の複雑さが大きい場所に、画像データの合成領域を狭くすること等を行なうことができることから、複雑な絵柄を平滑化させすぎることがない。この結果、森林など複雑な絵柄の部分については、ボケが少なく合成できることから、両画像データの接合部の画質の劣化を防止することができる。
【0013】
上記構成の画像つなぎ合わせ装置において、前記幅長制御手段は、操作者により操作される入力装置から特定の指令を受けて、前記合成領域の幅長を、前記分析結果と無関係に、当該幅長制御手段により定め得る中の最短の長さに固定する幅長固定手段を備える構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、操作者が画像データの合成結果を確認して、画像の多重写り(2重写り)が気になる場合に、操作者によって、合成領域の幅長が分析結果と無関係に最短の長さに固定される。このために、位置あわせが不十分であることによって合成領域に生じた上記多重写りを容易に回避することができる。
【0015】
前記幅長固定手段は、表示装置に表示され、前記入力装置としてのポインティングデバイスによりオンオフされるスイッチを備える構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、操作者は、マウス等のポインティングデバイスを操作するだけでよいから、操作性に優れている。
【0017】
前記分析手段は、前記重複部分についての空間周波数を分析して、前記絵柄の複雑さを示すパラメータとして高周波成分の分布状況を検出する高周波成分分布状況検出手段を備える構成としてもよい。
【0018】
この構成によれば、重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを、高周波成分の分布状況から容易に分析することができる。
【0019】
前記高周波成分分布状況検出手段は、
前記重複部分から、前記合成領域の幅方向に沿った各1ライン分を順に抽出するライン抽出手段と、
前記抽出した1ライン毎に、前記高周波成分の量を検出する高周波成分量検出手段と、
前記高周波成分量検出手段により検出された各ラインの高周波成分の量が、所定の閾値以下であるか否かを判定する高周波成分量判定手段と
を備え、
前記幅長制御手段は、
前記高周波成分量判定手段により、前記高周波成分の量が前記閾値以下であると判定されたラインには、第1の長さを、前記高周波成分の量が前記閾値以下でないと判定されたラインには、前記第1の長さよりも短い第2の長さを前記幅長として設定する設定手段
を備える構成としてもよい。
【0020】
この構成によれば、合成領域の幅方向に沿った各1ライン分のデータから、高周波成分量を検出して、この高周波成分量が所定の閾値以下であるか否かから、合成領域の幅長を、1ライン毎に、第1の長さか第1の長さよりも短い第2の長さかに決めている。この結果、簡単な構成でもって、合成領域の幅長を、画像全般にわたって、高周波成分の分布状況に応じて定めることができる。
【0021】
前記合成手段は、前記両画像データを、前記合成領域の幅方向において他方側の画像に向かうに従って、合成割合が漸次減少するように合成を行なう構成としてもよい。
【0022】
この構成によれば、合成領域の幅の中で第1の画像データと第2の画像データとを滑らかに混ぜ込んで行くことができる。
【0023】
本発明の画像つなぎ合わせ方法は、
画像の一部が重複するように撮影した第1の画像データと第2の画像データとをつなぎ合わせることにより、連続した画像の画像データを生成する画像つなぎ合わせ方法であって、
(a)前記両画像データのうちの少なくとも一方の前記重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを分析する行程と、
(b)前記両画像データを前記重複部分でつなぎ合わせる際に両画像データを合成する合成領域の幅長を、前記分析手段による分析結果に基づいて場所毎に定める行程と、
(c)前記両画像データの前記重複部分に対して、前記行程(b)により定められた幅長の合成領域を設定して、該合成領域でもって前記両画像を合成する行程と
を備えることを要旨としている。
【0024】
本発明のコンピュータプログラムは、
画像の一部が重複するように撮影した第1の画像データと第2の画像データとをつなぎ合わせることにより、連続した画像の画像データを生成するためのコンピュータプログラムであって、
(a)前記両画像データのうちの少なくとも一方の前記重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを分析する機能と、
(b)前記両画像データを前記重複部分でつなぎ合わせる際に両画像データを合成する合成領域の幅長を、前記分析手段による分析結果に基づいて場所毎に定める機能と、
(c)前記両画像データの前記重複部分に対して、前記機能(b)により定められた幅長の合成領域を設定して、該合成領域でもって前記両画像データを合成する機能と
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラムである。
【0025】
本発明の画像つなぎ合わせ方法およびコンピュータプログラムによっても、本発明の画像つなぎ合わせ装置と同様に、二つの画像データをつなぎ合わせることによって得られる連続画像の接合部の画質の劣化を防止するという効果を奏する。
【0026】
本発明の記録媒体は、本発明のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を特徴としている。この記録媒体は、この発明の各コンピュータプログラムと同様な作用・効果を有している。
【0027】
本発明は、以下のような他の態様も含んでいる。その第1の態様は、この発明のコンピュータプログラムを通信経路を介して供給するプログラム供給装置としての態様である。この第1の態様では、コンピュータプログラムをコンピュータネットワーク上のサーバなどに置き、通信経路を介して、必要なプログラムをコンピュータにダウンロードし、これを実行することで、上記の方法や装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき説明する。この実施例を、次の順序に従って説明する。
1.装置の構成:
2.コンピュータ処理:
2−A.処理の全体:
2−B.パノラマ画像生成処理:
3.作用・効果:
4.他の実施形態:
【0029】
1.装置の構成:
図1は、本発明の一実施例を適用するコンピュータシステムの概略構成を示す説明図である。この実施例のコンピュータシステムは、本発明の画像つなぎ合わせ装置を構成するパーソナルコンピュータ10を中心に備え、その周辺装置として、ディスプレイ20とキーボード22とマウス24を備える。さらに、パーソナルコンピュータ10には、デジタルカメラ26とCDドライブ28とプリンタ29が接続されている。マウス24は、トラックボール、トラックパッド、タブレット等の他のポインティングデバイスに換えることができる。
【0030】
パーソナルコンピュータ10は、中央演算処理装置としてのCPU11を中心にバス12により相互に接続されたメモリ13、表示画像メモリ14、ハードディスクドライブ15、入力制御ユニット16、表示制御ユニット17、出力制御ユニット18等を備える。メモリ13は、各種データ等を記憶するもので、CPU11の作業領域となる。表示画像メモリ14は、ディスプレイ20に表示する画像の画像データを一旦記憶するメモリである。
【0031】
ハードディスクドライブ15は、パノラマ画像合成装置のソフトウェアとしてのコンピュータプログラムPrを記憶する。また、ハードディスクドライブ15には、パノラマ画像合成に用いる複数の画像データDpi(i=1〜nで、nは正の整数)が記憶されている。画像データDpiは、デジタルカメラ26によって撮影した撮影画像の画像データであり、ハードディスクドライブ15の所定の領域(例えば、ホルダ)に格納されている。撮影画像は、カラー画像である。
【0032】
図2は、デジタルカメラ26によって撮影された複数の撮影画像の一例を示す説明図である。図示するように、複数の撮影画像は、撮影した画像の一部が重複するように、被写体としての風景を横方向の合計2枚に分割して撮影したものである。すなわち、複数の撮影画像である第1の画像P1と第2の画像P2は、撮影した画像の一部が重複するように(以下、この重複する部分を「重複部分」と呼ぶ)、撮影範囲を右方向に移動させながらそれぞれ撮影したものである。第1および第2の画像P1、P2は、第1および第2の画像データDp1、Dp2として、ハードディスクドライブ15に格納される(図1参照)。なお、上記被写体は、森林(山林)を撮影したもので、森林の背景には空が映っている。
【0033】
図1に戻り、入力制御ユニット16は、キーボード22やマウス24から入力操作を取り込み、デジタルカメラ26から画像データを取り込み、CDドライブ28からデータを取り込む制御ユニットである。表示制御ユニット17は、ディスプレイ20への信号出力を制御する制御ユニットである。出力制御ユニット18は、プリンタ29への印刷を制御する制御ユニットである。
【0034】
コンピュータプログラムPrは、もともとは、記録媒体としてのCD−ROM(図示せず)に記憶されている。そのCD−ROMをCDドライブ28にセットして、所定のインストールプログラムを起動することで、コンピュータプログラムPrをCD−ROMから読み出してハードディスクドライブ15にインストールすることができる。このコンピュータプログラムPrをCPU11が実行することにより、本発明の画像つなぎ合わせ装置の各種構成要件は実現される。
【0035】
図1では、各種構成要件が、CPU11の内部で実現される機能のブロックによって示されている。すなわち、CPU11は、分析部31、幅長制御部32および合成部33を機能として備える。
【0036】
なお、コンピュータプログラムPrは、CD−ROMに替えて、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ICカード等の他の携帯型記録媒体(可搬型記録媒体)に格納された構成として、これらから提供されたものとすることができる。また、このコンピュータプログラムPrは、外部のネットワークに接続される特定のサーバから、ネットワークを介して提供されたものとすることもできる。上記ネットワークとしては、インターネットであってもよく、特定のホームページからダウンロードして得たコンピュータプログラムであってもよい。あるいは、電子メールの添付ファイルの形態で供給されたコンピュータプログラムであってもよい。
【0037】
2.コンピュータ処理:
2−A.処理の全体:
パーソナルコンピュータ10のCPU11でコンピュータプログラムPrを実行することで、上述した分析部31、幅長制御部32および合成部33を実現している。このコンピュータプログラムPrに従う制御処理について、以下詳細に説明する。
【0038】
図3は、この制御処理の全体的な流れを示すフローチャートである。このルーチンは、コンピュータプログラムPrを起動させる旨の指示がなされたときに、実行開始される。図示するように、処理が開始されると、CPU11は、まず、アプリケーションウィンドウWDをCRTディスプレイ12に表示する処理を行なう(ステップS100)。
【0039】
図4は、このアプリケーションウィンドウWDを示す説明図である。図示するように、アプリケーションウィンドウWDの左側の処理メニュー欄MNには、「入力」、「パノラマ」、「印刷」、「出力」の4種類のボタンBT1、BT2、BT3、BT4が、下方に向かって順に並んでおり、操作者は、これらボタンBT1〜BT4を順にマウス24によりクリックしていくことで、CRTディスプレイ12の画面上で、デジタルカメラ26で撮影した画像を1枚のパノラマ画像に合成して出力する作業を進めていくことができる。すなわち、図3に示すように、CPU11は、ステップ100の実行後、ボタンBT1〜BT4がマウス24によりクリックされる操作指令を取り込んで、その操作指令に対応した入力処理、パノラマ画像生成処理、印刷処理、出力処理を順に実行する(ステップS200、S300、S400、S500)。
【0040】
ステップS200で実行される入力処理は、パノラマ画像合成に用いる複数の画像データを取り込むもので、ここでは、デジタルカメラ26によって撮影されてハードディスクドライブ15に格納された前述した画像データDpi(画像データDp1,Dp2)を取り込む。この画像データDpiの取り込み作業は、図4に示されるアプリケーションウィンドウWDのメニューバーBR1に設けられた「ファイル」のボタンBT11が、マウス24によりクリックされる操作指令を受けて、ファイル名を指定されることで1画像データ毎に行なわれる。なお、フォルダ等を指定することで複数の画像データを一括して取り込む構成としてもよい。また、ハードディスクドライブ15を一旦経由することなしに、デジタルカメラ26から直接取り込む構成とすることもできる。
【0041】
上記のようにして取り込まれた複数の画像データDp1,Dp2は、メモリ13の所定のエリアに格納されるが、それとともに、図4に示すように、アプリケーションウィンドウWDの作業フィールドFDWに表示される。
【0042】
ステップS300で実行されるパノラマ画像生成処理は、ステップS200で入力した複数の画像データDp1,Dp2をつなぎ合わせて1枚のパノラマ画像を生成するものであり、詳細については後述する。
【0043】
ステップS400で実行される印刷処理は、ステップS300で作成されたパノラマ画像データを、印刷コマンドとしてプリンタドライバに出力するものである。この印刷の処理は、周知の構成であり、ここでは詳しく説明はしないが、これによって画像データDp1,Dp2をつなぎ合わせたパノラマ画像を表わすパノラマ画像データがプリンタ29から印刷されることになる。
【0044】
ステップS500で実行される出力処理は、ステップS300で作成されたパノラマ画像データを、HDD15等の出力先にファイルとして出力(保存)するものである。これによって上記パノラマ画像データが所望の記憶媒体に保存されることになる。
【0045】
2−B.パノラマ画像生成処理:
ステップS300で実行されるパノラマ画像生成処理について、以下詳細に説明する。図5は、このパノラマ画像生成処理を示すフローチャートである。このルーチンに処理が移行すると、図示するように、CPU11は、まず、ステップS200の入力処理で取り込んだ画像データDpiの数nをカウントする処理を行なう(ステップS310)。例えば、図2に示した例では、数nは2となる。なお、図示はしないが、ここで数nが1である場合には、画像合成は不要であるとして、このパノラマ画像生成処理を終了する。
【0046】
次いで、CPU11は、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBをCRTディスプレイ12に表示する処理を行なう(ステップS320)。
【0047】
図6は、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBを示す説明図である。図示するように、このダイアログボックスDBには、処理指示欄FD1と作業欄FD2が設けられている。作業欄FD2の上段には、ステップS200の入力処理で取り込んだ画像データDpiが一覧表示されている。ここでは、図示するように、第1の画像データDp1と第2の画像データDp2とが表示されている。なお、作業欄FD2の下段には、矩形の領域Rが横一列に複数並べて表示されている。また、処理指示欄FD1には、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1と、[作成]ボタンBT10とが設けられている。
【0048】
図5に戻り、ステップS320の実行後、CPU11は、ステップS200の入力処理で取り込んだ複数の画像データDpiを、どのような配列でつなぎ合わせたいかを指定する処理を行なう(ステップS330)。ここでいう配列とは、パノラマ画像を作成する際の複数の画像データDpiの並びであり、この実施例では、横一列の範囲内において複数の画像データDpiをどのように並べるかが指定可能となっている。
【0049】
具体的には、図6に示したつなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBにおける操作者のマウス24を用いた操作によって上記指定がなされる。操作者は、作業欄FD2の上段に表示された各画像データDpi(Dp1、Dp2)をドラッグして、作業欄FD2の下段に表示された矩形の領域Rにドロップすることにより、第1の画像データDp1と第2の画像データDp2とをどのように並べるかを指定することができる。図示の例では、第1の画像データDp1は、被写体の左側部分であり、第2の画像データDp2は、被写体の右側部分であることから、両画像データDp1,Dp2は、そのままの並びでよいから、図中破線に示すように下段に降ろしてくればよい。
【0050】
例えば、被写体の撮影者が、図2で示した例と逆順に写真撮影を行なったとすると、第1の画像データDp1は、被写体の右側部分であり、第2の画像データDp2は、被写体の左側部分であることから、操作者は、第2の画像データDp2を左から1番目の矩形の領域Rに、第1の画像データDp1を左から2番目の矩形の領域Rにそれぞれドラッグ&ドロップすることになる。
【0051】
図5に戻り、ステップS330で配列の指定を終えると、次いで、CPU11は、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBに備えられた[作成]ボタンBT10が、操作者によるマウス24の操作によりクリックされたか否かを判別する(ステップS340)。ここで、クリックされていないと判別されると、ステップS340の処理を繰り返して、操作者によるクリックがなされるのを待つ。ステップS340で、クリックされたと判別されると、CPU11は、ステップS350に処理を進める。
【0052】
ステップS350では、CPU11は、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBの作業欄FD2の下段に表示された画像データDpiの配列の中から、左から第1番目の画像データDpiを読み出す処理を行なう。図6の例では、第1の画像データDp1が読み出される。次いで、CPU11は、変数iに値2を代入する処理を行なう(ステップS360)。
【0053】
その後、CPU11は、上記作業欄FD2の下段に表示された画像データDpiの配列の中から、左から上記変数iで定まるi番目の画像データDpiを読み出す処理を行なう(ステップS370)。図6の例では、第2の画像データDp2が読み出される。次いで、ステップS370で読み出した画像データDpiと、その前に読み出した隣接する画像データDpiとをつなぎ合わせるつなぎ合わせ処理を行なう(ステップS380)。このつなぎ合わせ処理についての詳細は後述する。
【0054】
ステップS380の実行後、CPU11は、変数iを値1だけインクリメントして(ステップS390)、その変数iが、画像データDpiの数nより大きいか否かを判定する(ステップS392)。
【0055】
ステップS392で、変数iが数n以下であると判定された場合には、ステップS200で入力した全ての画像データDp1〜Dpnについてのつなぎ合わせが未だ終わっていないとして、ステップS370に処理を戻して、ステップS370ないしS392の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS392で、変数iが数nを上回ると判定された場合には、全ての画像データDp1〜Dpnについてのつなぎ合わせが終了したとして、画像データDp1〜Dpnのつなぎ合わせ結果をパノラマ画像としてディスプレイ20に表示する(ステップS394)。この表示は、例えば、結果表示用のダイアログボックス(図示せず)に表示するようにすればよい。あるいは、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBにパノラマ画像表示欄(図示せず)を予め用意しておいて、このパノラマ画像表示欄に上記つなぎ合わせ結果を表示するようにしてもよい。ステップS394の実行後、「リターン」に抜けて、このパノラマ画像生成処理を一旦終了する。
【0056】
なお、図5のフローチャートでは、省略してあるが、操作者が上記ステップS394によるディスプレイ20のつなぎ合わせ結果の表示を見て、つなぎ合わせ結果が好ましくないと判断して、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1のオン/オフが切り換えられた場合には、ステップS340から再度処理が実行開始されるようになされている。
【0057】
図7は、ステップS380で実行されるつなぎ合わせ処理の詳細を示すフローチャートである。図示するように、このつなぎ合わせ処理に処理が移行すると、CPU11は、まず、つなぎ合わせ処理を行なう2つの画像データDpiについての位置関係を求める処理を行なう(ステップS601)。この処理は、パノラマ画像生成のソフトウェアに予め内蔵されている画像位置関係演算プログラムを用いて行なわれる。
【0058】
画像位置関係演算プログラムは、基本的には次の手順で構成されているものである。
(1)入力された2つの画像をグレイスケールにそれぞれ変換する。
(2)上記グレイスケールの画像上でコーナーとなっているポイントを複数(例えば、100〜200)取得する。
(3)一方の画像のポイントについて、他方の画像で対応する可能性のあるポイントを調べる。具体的には、一方の画像の各ポイントと、他方の画像の各ポイントとの全ての組み合わせについて、局所相互相関度を計算して、その計算値が、所定の閾値よりも大きい局所相互相関度となったポイントの組み合わせをマッチングする可能性の組み合わせとする。
【0059】
(4)上記ポイントの組み合わせが1対1になるように処理する。あるポイント同士が正しい組み合わせであるとすれば、その近くにある回りのポイントも正しい組み合わせとなる可能性が高い。この特徴を利用して、あるポイントの組み合わせのマッチング度を周囲のポイントがどれだけ指示しているかから、正しいポイントの組み合わせを求める。
【0060】
ステップS601では、実際には、2つの画像データDpiの接続の方向を左から右への横方向として指定した上で、上記演算を行なう。接続の方向を左から右への横方向としたのは、このつなぎ合わせ処理でつなぎ合わせる2つの画像データDpiが、ステップS370で配列の左から順に読み出した画像データであるからである。この結果、(4)で1対1のポイントの組み合わせが求められるので、この情報を使って、2つの画像データDpiの位置関係を求めている。
【0061】
ステップS601の実行後、CPU11は、つなぎ合わせを行なう2つの画像データDpiのうちの一方についての重複部分を抽出する処理を行なう。この実施例では、配列の左側に位置する画像データDpiから重複部分を抽出している。図6の例では、配列の左側に位置する画像データDpiは、第1の画像データDp1である。重複部分は、ステップS601で求めた両画像データDpiの位置関係から求めている。
【0062】
図8は、第1の画像データDp1を示す説明図である。図中、ハッチング部分が、第2の画像データDp2との重複部分OL1である。ステップS601では、この重複部分OL1に含まれる画像データを抽出する。
【0063】
図9は、第2の画像データDp2を示す説明図である。図中、ハッチング部分が、第1の画像データDp1との重複部分OL2である。ステップS601では、この重複部分OL2に含まれる画像データを抽出する構成とすることもできる。ステップS601では、要は、つなぎ合わせる両画像データのうちのいずれか一方の重複部分を抽出すればよい。
【0064】
図7に戻り、ステップS602の実行後、CPU11は、変数jに値1を代入する(ステップS603)。次いで、ステップS602で抽出した重複部分から、横方向に延びる1ライン分のデータを抽出する処理を行なう(ステップS602)。
【0065】
図10は、つなぎ合わせ処理により合成領域(以下、「重ね合わせ領域」とも呼ぶ)の幅長WLがどのように決定されるかを示す説明図である。図示するように、第1の画像データDp1の重複部分OL1は、横方向にNx個、縦方向にNy個の画素によって構成されるが、ステップS602では、横方向の1ライン分(縦幅が1画素)のデータLDを、縦方向に上から下へ順に読み出している。詳細には、変数jで決まる上からj番目のラインのデータLDjを抽出する。
【0066】
図7に戻り、ステップS604の実行後、CPU11は、ステップS604で抽出したj番目のラインのデータLDjについての空間周波数を分析して、高周波成分量Hを検出する処理を行なう(ステップS605)。「空間周波数」は画像の周期構造の細かさを表わす数値であることから、ラインのデータLDjについての空間周波数を分析して、高周波成分量Hを検出することで、画像の絵柄の複雑さを知ることができる。ステップS605では、具体的には、離散コサイン変換(フーリエ変換の一種)にて、高周波成分と低周波成分を分離することでラインデータLDjの中に、どの程度の高周波成分が含まれているかを求め、この割合を高周波成分量Hと定めている。
【0067】
その後、CPU11は、フラグFが値1であるか否かを判定する(ステップS606)。このフラグFの値は、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBに設けられた[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っているか否かによって定められている。チェックが入っている場合には、F="1"であり、チェックが入っていない場合には、F="0"となっている。すなわち、ステップS606では、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1がチェックされているか否かを判定している。
【0068】
ステップS606で、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1がチェックされていると判定された場合には、ステップS607に処理を進めて、ステップS605で検出された高周波成分量Hが、所定値H0以下であるか否かを判定する。ここで、高周波成分量Hが所定値H0以下であると判定された場合には、2つの画像データをつなぎ合わせる際に重ね合わせる重ね合わせ領域(換言すれば、合成する合成領域)の幅長WLを、次式(1)に従って求める(ステップS608)。
【0069】
WL=Nx・W1 ...(1)
ここで、Nxは、重ね合わせる対象である両画像データDpiの横方向の長さであり、前述した図6の例では、第1の画像データDp1の重複部分OL1の横方向の画素数に相当する。W1は、予め定めた第1の割合であり、例えば100%である。
【0070】
一方、ステップS607で、高周波成分量Hが所定値H0を上回ると判定された場合には、重ね合わせ領域の幅長WLを、次式(2)に従って求める(ステップS609)。
【0071】
WL=Nx・W2 ...(2)
ここで、W2は、上記第1の割合W1よりも小さい第2の割合であり、例えば5%である。
【0072】
図10に戻って、重複部分OL1についての横方向の1ライン分のデータLDが抽出された後について説明する。その後、各1ライン分のデータ毎に、ステップS607により、高周波成分量Hが多いか少ないかが判定され、その判定結果に基づいて、S608,S609により、重ね合わせ領域の幅長WLが、Nx・W1もしくはNx・W2に決定されることになる。
【0073】
図7に戻り、一方、ステップS606で、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1がチェックされていないと判定された場合には、ステップS609に処理を進めて、上記式(2)に従って、重ね合わせ領域の幅長WLを定める。
【0074】
ステップS608またはS609の実行後、CPU11は、ステップS610に処理を進める。ステップS610では、CPU11は、変数jで定まるj番目のラインについて、ステップS608またはS609で求められた幅長WLの重ね合わせ領域でもって、つなぎ合わせる対象としての両画像データDpiを合成する処理を行なう。
【0075】
図11は、ステップS610で実行される合成処理を示す説明図である。図中の2つのグラフは、画像の位置と両画像データの合成割合との関係を示すものであり、(A)は、重ね合わせ領域の幅長WL=Nx・W1に設定された場合のものであり、(B)は、幅長WL=Nx・W2に設定された場合のものである。
【0076】
図中(A)、(B)における2本の破線の間の領域が、2つの画像データをつなぎ合わせる際の重ね合わせ領域であり、(A)の場合の重ね合わせ領域の幅長WLは、第1の割合W1が100%であるとすると、重複部分OL1の横方向の長さNxいっぱいとなる。この重ね合わせ領域の範囲内で、第1の画像データDp1と第2の画像データDp2との合成割合が変化している。図示するように、重ね合わせ領域において、第1の画像データDp1は、第2の画像データDp2に向かうに従って、合成割合が100%から0%に漸次減少し、第2の画像データDp2は、第1の画像データDp1に向かうに従って、合成割合が100%から0%に漸次減少しており、両画像データDp1,Dp2の合成割合の和は100%となっている。
【0077】
一方、(B)の場合の重ね合わせ領域の幅長WLは、第2の割合W2が5%であることから、上記(A)の場合の1/20の大きさとなる。なお、図中では、見やすさの便宜を図って1/20よりも大きく描いている。そして、上記(A)の場合と同様に、この重ね合わせ領域の範囲内で、第1の画像データDp1と第2の画像データDp2との合成割合が変化している。図示するように、重ね合わせ領域において、第1の画像データDp1は、第2の画像データDp2に向かうに従って、合成割合が100%から0%に漸次減少し、第2の画像データDp2は、第1の画像データDp1に向かうに従って、合成割合が100%から0%に漸次減少しており、両画像データDp1,Dp2の合成割合の和は100%となっている。
【0078】
ステップS610では、重ね合わせ領域の幅長WLに基づいて、上記(A)、(B)のいずれかのグラフを選択的に決定して、変数jで定まるj番目のラインについて、そのグラフで示される画像の位置から定まる合成割合でもって第1の画像データDp1と第2の画像データDp2との合成を図っている。なお、上述した合成割合は、各画像データDp1、Dp2を構成するR、G、Bの各色データに乗算されることで用いられる。
【0079】
図7に戻って、ステップS610の実行後、CPU11は、変数jを値1だけインクリメントして(ステップS611)、その変数jが、重複部分の縦方向の画素数Nyより大きいか否かを判定する(ステップS612)。
【0080】
ステップS612で、変数jが数Ny以下であると判定された場合には、重複部分OL1についての合成が未だ終わっていないとして、ステップS604に処理を戻して、ステップS604ないしS612の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS612で、変数jが数Nyを上回ると判定された場合には、重複部分OL1についてのつなぎ合わせが終了したとして、「リターン」に抜けて、このつなぎ合わせ処理を一旦終了する。
【0081】
以上のように構成されたパノラマ画像生成処理によれば、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBに設けられた[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っている場合に次のように作用する。
【0082】
例えば、図10に示すように、第1の画像データDp1の重複部分OL1が、上方が「空」で、下方が「森林」であるとすると、「空」の部分は高周波成分量Hが少なく、「森林」の部分は高周波成分量Hが多い。このために、図示するように、重ね合わせ領域の幅長WLは、上から下に向かって、Nx・W1(W1は100%)といった大きな値が続き、ある点(「森林」の部分となったところ)で、Nx・W2(W2は5%)といった小さな値に変わって、その小さな値が続く。
【0083】
図12は、第1の画像データDp1と第2の画像データDp2の重複部分OLに対して設定される重ね合わせ領域(合成領域)DAを示す説明図である。図中、ハッチングの部分が重ね合わせ領域DAである。重ね合わせ領域DAは、重複部分OLの上から下に向かって当初は、重複部分OLの横方向の長さNxいっぱいの広い幅(第1の長さ)となる。その後、ある点(「森林」の部分となったところ)で、Nxの1/20の狭い幅(第2の長さ)となる。換言するなら、重ね合わせ領域の幅長WLは、縦方向の場所毎に定められている。
【0084】
一方、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBに設けられた[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っていない場合には、重ね合わせ領域は次のようになる。
【0085】
図13は、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っていない場合の重ね合わせ領域DAを示す説明図である。図中、ハッチングの部分が重ね合わせ領域DAである。重ね合わせ領域DAは、重複部分OLの横方向の長さNxの1/20といった狭い幅(第2の長さ)に固定される。
【0086】
上記構成のパノラマ画像生成処理のステップS604,S605,S607が分析部31(図1)に、ステップS608,S609が幅長制御部32(図1)に、ステップS610が合成部33(図1)にそれぞれ対応する。分析部31は、重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを、横方向の1ライン毎の高周波成分量Hが所定値H0以下であるか否かからを判定しており、幅長制御部32は、上記の判定結果から、前述したように重ね合わせ領域の幅長WLを縦方向の場所毎に定めている。合成部33は、その幅長Lの重ね合わせ領域(合成領域)でもって第1の画像データDp1と第2の画像データDp2とを合成する。
【0087】
C.作用・効果:
以上のように構成されたこの実施例のコンピュータシステムによれば、図10ないし図12を用いて説明してきたように、第1の画像データDp1の重複部分OL1についての高周波成分の分布状況を検出して、高周波成分量Hが少ない部分には、第1の長さの重ね合わせ領域の幅長WLが設定され、高周波成分量Hが多い部分には、第1の長さよりも短い第2の長さの重ね合わせ領域の幅長WLが設定される。そして、その幅長Lの重ね合わせ領域でもって、第1の画像データDp1と第2の画像データDp2とが合成される。
【0088】
このために、合成しようとする画像データDpiにおいて、「空」などのように高周波成分量が少ない部分は、滑らかに色が変わるように合成される。一方、「森林」などのように高周波成分量が多い部分については、両画像データの位置あわせが例え不十分であったとしても、重ね合わせ領域の幅長WLが狭いことから、複雑な絵柄を平滑化させすぎることがなくなり、この結果、ボケを少なく合成することができ、違和感の少ない画像となる。したがって、両画像データDpiの接合部の画質の劣化を防止することができる。
【0089】
また、この実施例では、つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBに設けられた[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っていない場合には、高周波成分量と無関係に、重ね合わせ領域の幅長WLが第2の長さに固定される。
【0090】
図14は、2つの画像データの位置合わせが不十分である場合に、高周波成分量が少ない部分に2重写りが生じている合成画像の一例を示す説明図である。[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っている場合のものである。図示するように、合成画像において、白いライン状に写った物体が2重写りとなっている。この部分は高周波成分量が少ない部分であるが、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っている場合、幅長WLの広い重ね合わせ領域での合成によって、上記のように、2重写り等の多重写りが発生する。
【0091】
これに対して、この実施例では、操作者が、合成画像をステップS394による表示で確認して、2重写りが気になる場合に、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1のチェックを外せばよい。図15は、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1をオン状態からオフ状態に切り換えた場合の効果を示す説明図である。図15の(a)に示すように、チェックボックスCB1がオン状態のときには、白いライン状に写った物体LNが2重写りとなっている。これに対して、図15の(b)に示すように、チェックボックスCB1がオフ状態のときには、重ね合わせ領域の幅長WLが狭くなることから、白いライン状に写った物体LNが切れた状態となる。2重写りとなるよりも、物体LNが画像の位置ずれで若干ずれている方が画質的には優れていることから、操作者は、[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1のチェックを外すことで、上述したような多重写りの発生を回避することができる。
【0092】
3.他の実施形態:
なお、この発明は上記の実施例や変形例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様にて実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0093】
(1)前記実施例では、第1の画像データDp1の重複部分から、横方向の各1ライン分を順に抽出する構成としていたが、これは、重ね合わせ領域の幅方向に沿った方向が横方向であるからである。換言するなら、つなぎ合わせる画像の並びが横方向であるためでもある。これに対して、つなぎ合わせる画像の並びが縦方向である場合には、重ね合わせ領域の幅方向は縦方向となるために、画像データDpiの重複部分から、縦方向の各1ライン分を順に抽出する構成とすればよい。
【0094】
(2)前記実施例では、前記重複部分から抽出する1ライン分は、縦幅が1画素であったが、必ずしも1画素である必要はなく、例えば、2画素、3画素、5画素といった複数の画素を縦幅とするものであってもよい。
【0095】
(3)前記実施例では、つなぎ合わせる画像の配列は、横一列の並びであったが、これに換えて、縦一例の並びとしてもよいし、あるいは、縦横複数のタイル状の並びとしてもよい。縦一列の並びである場合には、縦方向で2画像をつなぎ合わせればよく、上記タイル状の並びであれば、横方向と縦方向の双方で隣接する画像とのつなぎを合わせればよい。
【0096】
(4)前期実施例では、つなぎ合わせる画像データのうちのいずれか一方の重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを分析するように構成していたが、これに換えて、両画像データの重複部分についての分析を行なう構成としてもよい。こうすることが有効なのは、つなぎ合わせ部分に動く物体が存在する場合である。理想的なパノラマ写真(風景のみで人物はいない)では、重複部分については、同じ高周波成分を持っているはずであるが、写真をとった瞬間に重なりの部分に人間が入ってしまうと、もう一方の写真をとるまでにその人物が動いてしまうので、高周波成分の状況が変わってくる。したがって、両画像データの重複部分についての平均をとって分析する等、両画像データを用いる構成とすることができる。あるいは、両画像データの重複部分についての分析をそれぞれ行なって、高周波成分の状況に大きな違いがあった場合には、合成領域の幅長を短い方に設定するようにしてもよい。
【0097】
(5)前記実施例では、パノラマ画像を作成するために用いる画像データDpiは、デジタルカメラ26により撮影したものとしたが、これに替えて、カラースキャナ等を用いて獲得した銀塩写真の画像データであってもよい。要は、なんらかの撮影装置(例えば、静止画の撮影機能を持ったビデオカメラ)で撮影して得られた撮影画像を獲得する構成であれば、どのような構成であってもよい。例えば、HDD15等の記憶装置に予め用意したものに換えて、ネットワークを介して外部から取り込んだものであってもよい。また、必ずしもカラーの画像データである必要もなく、白黒の画像データに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施例を適用するコンピュータシステムの概略構成を示す説明図である。
【図2】デジタルカメラ26によって撮影された複数の撮影画像の一例を示す説明図である。
【図3】コンピュータプログラムに従う制御処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
【図4】アプリケーションウィンドウWDを示す説明図である。
【図5】パノラマ画像生成処理を示すフローチャートである。
【図6】つなぎ合わせ処理用のダイアログボックスDBを示す説明図である。
【図7】パノラマ画像生成処理のステップS380で実行されるつなぎ合わせ処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】第1の画像データDp1を示す説明図である。
【図9】第2の画像データDp2を示す説明図である。
【図10】つなぎ合わせ処理により重ね合わせ領域の幅長WLがどのように決定されるかを示す説明図である。
【図11】第1の画像データDp1と第2の画像データDp2との合成処理を示す説明図である。
【図12】[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っている場合の重ね合わせ領域DAを示す説明図である。
【図13】[重なり部分をなめらかにする]チェックボックスCB1にチェックが入っていない場合の重ね合わせ領域DAを示す説明図である。
【図14】2つの画像データの位置合わせが不十分である場合に、高周波成分量が少ない部分に2重写りが生じている合成画像の一例を示す説明図である。
【図15】上記2重写りを解消することができることを示す説明図である。
【図16】従来例としての合成方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0099】
10...パーソナルコンピュータ
11...CPU
12...バス
13...メモリ
14...表示画像メモリ
15...ハードディスクドライブ
16...入力制御ユニット
17...表示制御ユニット
18...出力制御ユニット
20...ディスプレイ
22...キーボード
24...マウス
26...デジタルカメラ
28...CDドライブ
29...プリンタ
31...分析部
32...幅長制御部
33...合成部
BR1...メニューバー
BT1〜BT4...ボタン
Dpi...画像データ
Dp1...第1の画像データ
Dp2...第2の画像データ
FDW...作業フィールド
MN...処理メニュー欄
Pr...コンピュータプログラム
WD...アプリケーションウィンドウ
DB...ダイアログボックス
FD1...処理指示欄
FD2...作業欄
R...領域
FD1...処理表示欄
CB1...[重なり部分をなめらかにする]チェックボックス
BT10...[作成]ボタン
OL1...重複部分
OL2...重複部分
H...高周波成分量
W1...第1の割合
W2...第2の割合
Nx...重複部分OL1の横方向の画素数
Ny...重複部分OL1の縦方向の画素数
DA...重ね合わせ領域(合成領域)
WL...重ね合わせ領域の幅長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の一部が重複するように撮影した第1の画像データと第2の画像データとをつなぎ合わせることにより、連続した画像の画像データを生成する画像つなぎ合わせ装置であって、
前記両画像データのうちの少なくとも一方の前記重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを分析する分析手段と、
前記両画像データを前記重複部分でつなぎ合わせる際に両画像データを合成する合成領域の幅長を、前記分析手段による分析結果に基づいて場所毎に定める幅長制御手段と、
前記両画像データの前記重複部分に対して、前記幅長制御手段により定められた幅長の合成領域を設定して、該合成領域でもって前記両画像データを合成する合成手段と
を備える画像つなぎ合わせ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像つなぎ合わせ装置であって、
前記幅長制御手段は、
操作者により操作される入力装置から特定の指令を受けて、前記合成領域の幅長を、前記分析結果と無関係に、当該幅長制御手段により定め得る中の最短の長さに固定する幅長固定手段
を備える画像つなぎ合わせ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像つなぎ合わせ装置であって、
前記幅長固定手段は、
表示装置に表示され、前記入力装置としてのポインティングデバイスによりオンオフされるスイッチを備える、
画像つなぎ合わせ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像つなぎ合わせ装置であって、
前記分析手段は、
前記重複部分についての空間周波数を分析して、前記絵柄の複雑さを示すパラメータとして高周波成分の分布状況を検出する高周波成分分布状況検出手段
を備える画像つなぎ合わせ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像つなぎ合わせ装置であって、
前記高周波成分分布状況検出手段は、
前記重複部分から、前記合成領域の幅方向に沿った各1ライン分を順に抽出するライン抽出手段と、
前記抽出した1ライン毎に、前記高周波成分の量を検出する高周波成分量検出手段と、
前記高周波成分量検出手段により検出された各ラインの高周波成分の量が、所定の閾値以下であるか否かを判定する高周波成分量判定手段と
を備え、
前記幅長制御手段は、
前記高周波成分量判定手段により、前記高周波成分の量が前記閾値以下であると判定されたラインには、第1の長さを、前記高周波成分の量が前記閾値以下でないと判定されたラインには、前記第1の長さよりも短い第2の長さを前記幅長として設定する設定手段
を備える画像つなぎ合わせ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像つなぎ合わせ装置であって、
前記合成手段は、
前記両画像データを、前記合成領域の幅方向において他方側の画像に向かうに従って、合成割合が漸次減少するように合成を行なう構成である、
画像つなぎ合わせ装置。
【請求項7】
画像の一部が重複するように撮影した第1の画像データと第2の画像データとをつなぎ合わせることにより、連続した画像の画像データを生成する画像つなぎ合わせ方法であって、
(a)前記両画像データのうちの少なくとも一方の前記重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを分析する行程と、
(b)前記両画像データを前記重複部分でつなぎ合わせる際に両画像データを合成する合成領域の幅長を、前記分析手段による分析結果に基づいて場所毎に定める行程と、
(c)前記両画像データの前記重複部分に対して、前記行程(b)により定められた幅長の合成領域を設定して、該合成領域でもって前記両画像を合成する行程と
を備える画像つなぎ合わせ方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像つなぎ合わせ方法であって、
前記行程(b)は、
(b1)操作者により操作される入力装置から特定の指令を受けて、前記合成領域の幅長を、前記分析結果と無関係に、当該行程(b)により定め得る中の最短の長さに固定する行程
を備える画像つなぎ合わせ方法。
【請求項9】
画像の一部が重複するように撮影した第1の画像データと第2の画像データとをつなぎ合わせることにより、連続した画像の画像データを生成するためのコンピュータプログラムであって、
(a)前記両画像データのうちの少なくとも一方の前記重複部分についての場所に応じた絵柄の複雑さを分析する機能と、
(b)前記両画像データを前記重複部分でつなぎ合わせる際に両画像データを合成する合成領域の幅長を、前記分析手段による分析結果に基づいて場所毎に定める機能と、
(c)前記両画像データの前記重複部分に対して、前記機能(b)により定められた幅長の合成領域を設定して、該合成領域でもって前記両画像データを合成する機能と
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムであって、
前記機能(b)は、
(b1)操作者により操作される入力装置から特定の指令を受けて、前記合成領域の幅長を、前記分析結果と無関係に、当該機能(b)により定め得る中の最短の長さに固定する機能
をさらにコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項9または10に記載のコンピュータプログラムであって、
前記機能(a)は、
(a1)前記重複部分についての空間周波数を分析して、前記絵柄の複雑さを示すパラメータとして高周波成分の分布状況を検出する機能
を備えるコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムであって、
前記機能(a1)は、
(a11)前記重複部分から、前記合成領域の幅方向に沿った各1ライン分を順に抽出する機能と、
(a12)前記抽出した1ライン毎に、前記高周波成分の量を検出する機能と、
(a13)前記機能(a12)により検出された各ラインの高周波成分の量が、所定の閾値以下であるか否かを判定する機能と
を備え、
前記機能(b)は、
(b2)前記機能(a13)により、前記高周波成分の量が前記閾値以下であると判定されたラインには、第1の長さを、前記高周波成分の量が前記閾値以下でないと判定されたラインには、前記第1の長さよりも短い第2の長さを前記幅長として設定する機能
を備えるコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−119730(P2006−119730A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304436(P2004−304436)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】