説明

画像データおよび評価方法

【課題】広色域の動画を扱う装置等の評価を行う。
【解決手段】ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる画像データが、評価用チャートデータとして記録媒体111に記録されている。評価対象121は、記録媒体111に記録されている評価用チャートデータを処理し、その評価用チャートデータを処理した結果に基づき、評価対象121が評価される。本発明は、xvYCC規格に準拠した装置等の評価を行う場合に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データおよび評価方法に関し、特に、例えば、広色域の動画を扱う装置等の評価を行うことができるようにする画像データおよび評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動画の画像データの伝送は、画像データとしての、例えば、3原色のRGB(Red,Green,Blue)信号を、輝度信号と色差(クロマ)信号とからなるコンポーネント信号(以下、適宜、YCC信号という)に変換して行われる。
【0003】
RGB信号からYCC信号への変換は、いわゆるハイビジョン等のHDTV(High Definition Television)の動画については、ITU-R(International Telecommunication Union Radiocommunication sector)BT(Broadcasting service(Television)).709/SMPTE(Society of Motion Picture & Television Engineers)274M(以下、BT.709と称する)で規定されている式を用いて行われ、NTSC(National Television System Committee)方式等のSDTV(Standard Definition TV)の動画については、ITU-R BT.601(以下、BT.601と称する)で規定されている式を用いて行われる。
【0004】
図1は、上述のように、RGB信号をYCC信号に変換して、動画の画像データを伝送するAV(Audio Visual)システムの一例の構成を示している。
【0005】
図1においては、AVシステムは、ビデオカメラ1とテレビジョン受像機2とで構成されている。そして、図1のAVシステムでは、ビデオカメラ1が動画を撮影し、その動画の画像データが、記録媒体11もしくはネットワーク12を介してテレビジョン受像機2に伝送される。テレビジョン受像機2は、ビデオカメラ1からの画像データに対応する画像(動画)を表示する。
【0006】
なお、ビデオカメラ1およびテレビジョン受像機2は、例えば、BT.601とBT.709のうちの、例えば、BT.709の規格に準拠した処理を行うこととする。
【0007】
図2は、図1のビデオカメラ1の構成例を示すブロック図である。
【0008】
図2において、ビデオカメラ1は、操作部21、撮影部22、A/D変換部23、原色変換部24、色信号補正部25、光電変換部26、色信号変換部27、エンコーダ28、制御部29、記録部30、および通信部31から構成されている。
【0009】
操作部21は、ユーザがビデオカメラ1に対して各種のコマンドを入力する際に操作され、ユーザによる操作により指示された処理の実行を示す信号を、必要なブロックに供給する。例えば、操作部21は、画像の撮影に関する信号を、撮影部22へ供給する。また、操作部21は、撮影部22による撮影によって得られた動画の画像データの出力先に関する信号を、制御部29へ供給する。
【0010】
撮影部22は、操作部21からの指示に従って、撮影処理を開始し、または停止する。また、撮影部22は撮影によって得られた画像データを、A/D(Analog/Digital)変換部23に供給する。ここで、撮影部22は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージャや、CCD(Charge Coupled Device)などで構成され、画像データとして、R,G,B(Red,Green,Blue)の色信号からなるRGB信号を出力する。
【0011】
A/D変換部23は、撮影部22から供給された色信号をA/D変換し、原色変換部24に供給する。ここで、A/D変換部23が原色変換部24に供給する色信号R,G,Bを、それぞれ、Rorg,Gorg,Borgと表す。
【0012】
原色変換部24は、A/D変換部23から供給された色信号Rorg,Gorg,Borgを、BT.709の原色に基づく色信号R709,G709,B709に原色変換し、色信号補正部25に供給する。即ち、原色変換部24は、例えば、式(1)を計算することにより、A/D変換部23からの色信号Rorg,Gorg,Borgを、BT.709の原色に基づく色信号R709,G709,B709に変換する。
【0013】
【数1】

【0014】
なお、式(1)の行列は、撮影部22の原色点によって異なる。
【0015】
色信号補正部25は、原色変換部24から供給された色信号R709,G709,B709を、BT.709にて定義された0乃至1.0の数値範囲の色信号R709,G709,B709に補正する。即ち、色信号補正部25は、例えば、0より小さい色信号R709,G709,B709を、0に補正し(クリッピングし)、1.0より大きい色信号R709,G709,B709を、1.0に補正して、その補正後の色信号R709,G709,B709を、光電変換部26に供給する。なお、ここでは、0乃至1.0の数値範囲のうちの0と1.0が、それぞれ、BT.709に準拠した色信号R709,G709,B709の最小値と最大値であるとする。
【0016】
光電変換部26は、色信号補正部25から供給された色信号R709,G709,B709を、BT.709に準拠した光電変換特性に従って、BT.709の表示機構のγ(画像信号に対する発光輝度の非線形性)で補正した色信号R'709,G'709,B'709に変換し、色信号変換部27に供給する。
【0017】
即ち、光電変換部26は、色信号補正部25からの色信号R709,G709,B709を、式(2)に従って、色信号R'709,G'709,B'709に変換し、色信号変換部27に供給する。
【0018】
【数2】

【0019】
ここで、色信号R709と色信号R'709との間の光電変換特性は、BT.709に準拠した色信号R709の最小値から最大値、即ち、0から1.0までの範囲で定義されている。色信号G709と色信号G'709との間の光電変換特性、および色信号B709と色信号B'709との間の光電変換特性についても、同様である。また、式(2)は、色信号R709を色信号R'709に変換する式であるが、他の色信号G709とB709も同様にして、色信号G'709と色信号B'709に変換される。
【0020】
色信号変換部27は、光電変換部26から供給された色信号R'709,G'709,B'709を、式(3)に従い、BT.709に準拠した輝度信号Y'709と色差信号Cb'709,Cr'709からなるYCC信号に変換し、さらに、その輝度信号Y'709および色差信号Cb'709,Cr'709を8ビットで表現して、エンコーダ28に供給する。
【0021】
【数3】

【0022】
なお、式(3)の行列は、BT.709において1125/60/2:1シグナルフォーマット(Signal Format)について規定されている行列である。
【0023】
ここで、BT.709によれば、色信号変換部27において式(3)を計算することによって得られる輝度信号Y'709は、0乃至1.0の数値範囲の値である。また、色信号変換部27において式(3)を計算することによって得られる色差信号Cb'709と色差信号Cr'709は、それぞれ、-0.5乃至0.5の数値範囲の値である。
【0024】
さらに、色信号変換部27は、式(3)を計算することによって得られる0乃至1.0の数値範囲の輝度信号Y'709を、8ビットで表現可能な0乃至255の整数範囲より狭い16乃至235の範囲の整数値に割り当て、その整数値である輝度信号Y'709を、BT.709に準拠した輝度信号としてエンコーダ28に供給する。さらに、色信号変換部27は、式(3)を計算することによって得られる-0.5乃至0.5の数値範囲の色差信号Cb'709と色差信号Cr'709を、それぞれ、8ビットで表現可能な0乃至255の整数の範囲より狭い16乃至240の整数範囲の整数値に割り当て、その整数値である色差信号Cb'709,Cr'709を、BT.709に準拠した色差信号として、エンコーダ28に供給する。
【0025】
エンコーダ28は、色信号変換部27から供給された8ビットの輝度信号Y'709と色差信号Cb'709,Cr'709を、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)などの所定のフォーマットに従ってエンコードし、その結果得られるエンコードデータを、制御部29に供給する。
【0026】
制御部29は、操作部21からの指示に従い、エンコーダ28から供給されたエンコードデータを記録部30、または通信部31に供給する。
【0027】
記録部30は、制御部29から供給されたエンコードデータを、図1の記録媒体11に記録する。通信部31は、制御部29から供給されたエンコードデータを、図1のネットワーク12を介して送信する。
【0028】
図3は、図1のテレビジョン受像機2の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図3において、テレビジョン受像機2は、画像信号入力部41、輝度・色差信号変換部42、固有γ特性補正部43、D/A変換部44、および表示機構45から構成されている。
【0030】
画像信号入力部41は、記録媒体11から再生され、或いはネットワーク12から伝送されてくるエンコードデータを受信する。さらに、画像信号入力部41は、そのエンコードデータを、例えば、MPEGなどの所定のフォーマットに従ってデコードし、そのデコードにより得られる、BT.709に準拠した8ビットの輝度信号Y'709と色差信号Cb'709,Cr'709とからなるYCC信号を、輝度・色差信号変換部42に供給する。
【0031】
輝度・色差信号変換部42は、画像信号入力部41から供給された輝度信号Y'709と色差信号Cb'709,Cr'709を、式(4)に従い、BT.709に準拠した色信号R'709,G'709,B'709からなるRGB信号に変換し、固有γ特性補正部43に供給する。
【0032】
【数4】

【0033】
ここで、画像信号入力部41から輝度・色差信号変換部42に供給される、BT.709に準拠した輝度信号Y'709は、上述したように、8ビットで表現可能な16乃至235の整数範囲の整数値である。また、画像信号入力部41から輝度・色差信号変換部42に供給される、BT.709に準拠した色差信号Cb'709,Cr'709は、それぞれ、上述したように、8ビットで表現可能な16乃至240の整数範囲の整数値である。
【0034】
輝度・色差信号変換部42は、輝度・色差信号変換部42に供給される16乃至235の整数範囲の整数値の輝度信号Y'709を、0乃至1.0の数値範囲で表現される値とするとともに、16乃至240の整数範囲の整数値の色差信号Cb'709,Cr'709のそれぞれを、-0.5乃至0.5の数値範囲で表現される値とし、その0乃至1.0の数値範囲で表される輝度信号Y'709と、-0.5乃至0.5の数値範囲で表現される色差信号Cb'709,Cr'709を、式(4)に従って、0乃至1.0の範囲の色信号R'709,G'709 ,B'709に変換する。
【0035】
固有γ特性補正部43は、テレビジョン受像機2のγ特性が、BT.709の式(2)で表される光電変換特性(γ特性)と異なる場合に、輝度・色差信号変換部42から供給された色信号R'709,G'709,B'709を、テレビジョン受像機2の表示機構(CRT(Cathode Ray Tube)など)のもつ固有のγ特性に従って、色信号R'709,G'709 ,B'709に変換し、D/A(Digital/Analog)変換部44に供給する。
【0036】
なお、テレビジョン受像機2の表示機構45のγ特性が、BT.709の光電変換特性と同一である場合は、固有γ特性補正部43は不要である。
【0037】
D/A変換部44は、固有γ特性補正部43から供給された色信号R'709,G'709,B'709をD/A変換し、表示機構45に供給する。
【0038】
表示機構45は、例えば、CRTなどで構成され、D/A変換部44から供給された色信号R'709,G'709,B'709に基づいて、画像(動画)を表示する。
【0039】
ここで、図4に、BT.709における原色と基準白色のCIE(Commission Internationale de I'Eclariage)表色系における色度座標上の位置を示す。
【0040】
また、上記のビデオカメラ1やテレビジョン受像機2において処理されるBT.709に準拠した色信号と輝度信号および色差信号とについては、非特許文献1にて規定されている。
【0041】
ところで、図2のビデオカメラ1では、上述したように、色信号変換部27が、光電変換部26から供給された色信号R'709,G'709,B'709からなるRGB信号を、式(3)に従い、BT.709に準拠した輝度信号Y'709と色差信号Cb'709,Cr'709からなるYCC信号に変換する。また、図3のテレビジョン受像機2では、輝度・色差信号変換部42が、画像信号入力部41から供給された輝度信号Y'709と色差信号Cb'709,Cr'709からなるYCC信号を、式(4)に従い、BT.709に準拠した色信号R'709,G'709,B'709からなるRGB信号に変換する。
【0042】
式(3)の計算に用いられる色信号R'709,G'709,B'709それぞれが、0.0以上1.0以下の数値範囲の値である場合、そのような色信号R'709,G'709,B'709を、式(3)を計算することによって変換すると、0乃至1.0の数値範囲の値の輝度信号Y'709と、-0.5乃至0.5の数値範囲の値の色差信号Cb'709,Cr'709とを得ることができる。
【0043】
一方、0乃至1.0の数値範囲の値の輝度信号Y'709と、-0.5乃至0.5の数値範囲の値の色差信号Cb'709,Cr'709とを、式(4)を計算することによって変換した場合に得られる色信号R'709,G'709,B'709は、0.0未満の値や、1.0を越える値になることがある。
【0044】
これは、式(3)や式(4)による変換の対象となるRGB信号とYCC信号とについては、RGB信号の方が、YCC信号よりも細かい階調で色を表現することができるが、YCC信号の方が、RGB信号よりも表現することができる色の範囲が広いことに起因する。
【0045】
従って、BT.709では、輝度信号Y'709、色差信号Cb'709,Cr'709のそれぞれを軸とする3次元空間を考えた場合、輝度信号Y'709が0.0以上1.0以下の数値範囲で、色差信号Cb'709,Cr'709のそれぞれが-0.5乃至0.5の数値範囲の空間(立方体状の空間)の中に、使用されていない部分が存在し、つまり、式(3)による変換によっては得られないYCC信号に対応する点(Y'709,Cb'709,Cr'709)が存在し、0乃至1.0の数値範囲の値を取り得る輝度信号Y'709と、-0.5乃至0.5の数値範囲の値を取り得る色差信号Cb'709,Cr'709とが有効に利用されているとは言えなかった。
【0046】
そこで、本件出願人は、BT.709などの既存の規格よりも広色域の色を表現することができ、かつ、既存の規格に準拠した装置で扱うことが可能な画像データを提供する技術を先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0047】
また、かかる広色域の色を表現する画像データについてのxvYCC規格が、IEC(International Electrotechnical Commission)で2005年12月にIEC61966-2-4として承認された(例えば、非特許文献2参照)。
【0048】
【特許文献1】特開2006-033575号公報
【非特許文献1】RECOMMENDATION ITU-R BT. 709-4
【非特許文献2】"Multimedia systems and equipment - Colour measurement and management - Part 2-4: Colour management - Extended-gamut YCC colour space for video applications - xvYCC", 2006-01-17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
ところで、テレビジョン受像機2(図3)の表示機構45としては、CRTが主流であったが、近年では、CRTよりも色再現範囲が広いプラズマディスプレイやLCD(Liquid Crystal Display)パネルが主流になっている。
【0050】
さらに、上述したように、xvYCC規格の承認に伴い、画像の広色域化に対する機運が高まっている。
【0051】
このため、プラズマディスプレイやLCDパネルなどの色再現範囲が広い表示機構を有するテレビジョン受像機、その他、xvYCC規格に準拠した、広色域の動画の画像データを扱う装置等の性能を評価する必要を生じている。
【0052】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、広色域の動画を扱う装置等の評価を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本発明の第1の側面は、動画を扱う評価対象の評価に使用される動画の画像データであり、ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる画像データである。
【0054】
かかる第1の側面の画像データは、ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる画像データを扱う評価対象の評価に使用される。
【0055】
また、画像データは記録媒体に記録することができる。
【0056】
本発明の第2の側面は、動画を扱う評価対象を評価する評価方法であり、ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる評価用の画像データを、前記評価対象で処理し、前記評価対象で前記評価用の画像データを処理した結果に基づき、前記評価対象を評価するステップを含む評価方法である。
【0057】
かかる第2の側面の評価方法においては、ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる評価用の画像データが、前記評価対象で処理され、前記評価対象が前記評価用の画像データを処理した結果に基づき、前記評価対象が評価される。
【発明の効果】
【0058】
本発明の第1および第2の側面によれば、広色域の動画を扱う装置等の評価を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0060】
本発明の第2の側面の評価方法は、
動画を扱う評価対象を評価する評価方法において、
ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる評価用の画像データを、前記評価対象で処理し(例えば、図17のステップS11)、
前記評価対象で前記評価用の画像データを処理した結果に基づき、前記評価対象を評価する(例えば、図17のステップS12)
ステップを含む。
【0061】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、その前に、本実施の形態で採用する色空間について説明する。
【0062】
図5は、国際標準となっている規格の信号の信号レベルと、その信号レベルを表現する整数値との関係を示している。
【0063】
まず、IECにて規定される色空間についての規格であるsRGB規格においては、R,G,Bのそれぞれの色信号を表すために8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255の値に、0乃至1.0の色信号R,G,Bの信号レベルが割り当てられているので、0乃至1.0の色信号R,G,Bは、それぞれ256(=255−0+1)階調で表現される。
【0064】
次に、静止画像の輝度信号と色差信号についての規格であるsYCC規格においては、輝度信号Yについては、sRGB規格と同様に、その輝度信号Yを表現するために8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255の値に、0乃至1.0の輝度信号Yの信号レベルが割り当てられているので、0乃至1.0の輝度信号Yは、256(=255−0+1)階調で表現される。
【0065】
色差信号Cb,Crについては、それぞれの信号を表現するために8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255の値に、-0.5乃至0.5の色差信号Cb,Crの信号レベルが割り当てられているので、-0.5乃至0.5の色差信号Cb,Crは、それぞれ256(=255−0+1)階調で表現される。
【0066】
次に、SDTVの規格であるBT.601と、HDTVの規格であるBT.709における色信号と、輝度信号および色差信号とについて説明する。
【0067】
BT.709では、R,G,Bのそれぞれの色信号を表現するために8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255より狭い、16乃至235の整数範囲の整数値に、0乃至1.0の色信号R,G,Bの信号レベルが割り当てられているので、0乃至1.0の色信号R,G,Bは、それぞれ220(=235−16+1)階調で表現される。
【0068】
また、BT.709では、輝度信号Yを表現するために8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255より狭い16乃至235の整数範囲の整数値に、0乃至1.0の輝度信号Yの信号レベルが割り当てられているので、0乃至1.0の輝度信号Yは、220(=235−16+1)階調で表現される。
【0069】
さらに、BT.709では、色差信号Cb,Crそれぞれを表現するために8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255より狭い16乃至240の整数範囲の整数値に、-0.5乃至0.5の色差信号Cb,Crの信号レベルが割り当てられているので、-0.5乃至0.5の色差信号Cb,Crは、それぞれ225(=240−16+1)階調で表現される。
【0070】
なお、BT.601の色信号と、輝度信号および色差信号も、BT.709と同様に規定されている。また、BT.709およびBT.601では、信号を表現する8ビットで表される0乃至255のうちの、0と255は、不使用となっている。
【0071】
次に、xvYCC規格について説明する。
【0072】
xvYCC規格は、各信号レベルの信号を所定の複数ビットで表現可能な整数範囲より狭い整数範囲の整数値に割り当てて表現する所定の規格、即ち、例えば、-0.5乃至0.5の範囲の色差信号Cb,Crを8ビットで表現可能な0乃至255より狭い16乃至240の整数に割り当てて表現するBT.709やBT601の規格を拡張したものとなっている。
【0073】
具体的には、xvYCC規格では、輝度信号Yは、例えば、BT.709と同一に定義される。即ち、xvYCC規格では、輝度信号Yを表現するために、例えば8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255より狭い16乃至235の整数範囲の整数値に、0乃至1.0の輝度信号Yの信号レベルが割り当てられている。従って、xvYCC規格でも、BT.709と同様に、0乃至1.0の信号レベルの範囲の輝度信号が、220(=235−16+1)階調で表現される。
【0074】
また、xvYCC規格では、色差信号Cb,Crそれぞれの表現をするために、例えば、8ビットを使用し、それにより表現することができる0乃至255より狭い16乃至240の整数範囲の整数値に、-0.5乃至0.5の色差信号Cb,Crの信号レベルが割り当てられている。この点においては、BT.709と同様である。
【0075】
しかしながら、xvYCC規格では、色差信号Cb,Crの信号レベルが割り当てられる整数範囲が、BT.709で信号レベルが割り当てられている16乃至240の整数範囲を包含する1乃至254の整数範囲に拡張されている。即ち、xvYCC規格では、BT.709と同様に、-0.5乃至0.5の信号レベルの範囲の色差信号Cb,Crが、それぞれ、16乃至240の225(=240−16+1)階調の整数範囲に割り当てられており、その16乃至240の整数範囲に対する信号レベルの割り当てと同様になるようにして、さらに1乃至15の整数範囲と、241乃至254の整数範囲にも、信号レベルが割り当てられている。
【0076】
その結果、xvYCC規格では、1乃至254の整数範囲に、-0.57乃至0.56の信号レベルが割り当てられる。従って、xvYCC規格では、-0.57乃至0.56の信号レベルの範囲の色差信号Cb,Crが、それぞれ254(=254−1+1)階調に分けて表現される。
【0077】
以上のように、xvYCC規格では、BT.709の色差信号Cb,Crの信号レベルである-0.5乃至0.5を包含する-0.57乃至0.56の範囲の信号レベルの色差信号Cb,Crを扱うことができる。
【0078】
従って、xvYCC規格によれば、BT.709で表現可能な色よりも広色域の色を表現することができる。
【0079】
さらに、xvYCC規格の輝度信号Yは、BT.709の輝度信号Yと同一であり、また、xvYCC規格の色差信号Cb,Crは、16乃至240の整数範囲に割り当てられている-0.5乃至0.5の信号レベルについては、BT.709の色差信号Cb,Crと同一である。従って、xvYCC規格の輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crは、BT.709に準拠した装置であれば扱うことができ、例えば、BT.709で表現可能な色の範囲で、画像の表示を行うことができる。
【0080】
xvYCC規格では、色差信号Cb,Crが、BT.709の色差信号Cb,Crがとり得る-0.5乃至0.5の範囲よりも広い-0.57乃至0.56の範囲の信号レベルをとり得るので、そのようなxvYCC規格の輝度信号Yおよび色信号Cb,Crを、色信号R,G,Bに変換した場合には、その色信号R,G,Bそれぞれの信号レベルは、いずれも、0乃至1.0より広い範囲の値、即ち、0未満の値(負の値)や1を超える値をとり得る。なお、ここでの0とは、BT.709に準拠した色信号R,G,Bの最小値であり、1とは、BT.709に準拠した色信号R,G,Bの最大値である。
【0081】
xvYCC規格では、負の値や1を超える値の色信号R,G,Bを扱うことができ、そのような色信号R,G,Bと、0乃至1.0の範囲の輝度信号Y、および-0.57乃至0.56の範囲の色差信号Cb,Crとの間の相互変換が行われる。
【0082】
ところで、例えば、画像を撮影し、その画像の色信号R,G,Bを、xvYCC規格の輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crに変換して処理する場合、そのxvYCC規格の輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crを、BT.709に準拠した装置で扱うことができるようにするには、xvYCC規格の輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crに変換する色信号R,G,Bを、BT.709の表示機構の光電変換特性に従った色信号R,G,Bに変換(γ(ガンマ)補正)する必要がある。
【0083】
一方、BT.709では、その色信号R,G,Bがとり得る0乃至1.0の範囲については、光電変換特性が定義されているが、負の値と1.0を超える値については、光電変換特性が定義されていない。
【0084】
そして、xvYCC規格の輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crに変換する色信号R,G,Bは、上述したように、負の値と1.0を超える値をとり得るので、そのような負の値や1.0を超える値の色信号R,G,Bを、どのような光電変換特性に従って変換するかが問題となる。
【0085】
そこで、xvYCC規格では、例えば、BT.709で規定されている光電変換特性を、そのまま1.0を超える領域でも適用するとともに、入力が負値の場合は原点に対して点対称に拡張し、その拡張によって得られる光電変換特性が採用されている。
【0086】
即ち、図6は、xvYCC規格で採用する光電変換特性を示している。
【0087】
図6に示すxvYCC規格の光電変換特性は、入力信号(色信号R,G,B)が、0乃至1.0の範囲については、BT.709における光電変換特性と同一である。
【0088】
即ち、図6のxvYCC規格の光電変換特性のうちの、入力信号が0乃至1.0の範囲は、BT.709で定義されているように、式(2)と同様に表される。
【0089】
また、図6のxvYCC規格の光電変換特性のうちの、入力信号が1.0を超えるの範囲は、式(2)の0.018乃至1.0の範囲をそのまま拡張したものとなっている。さらに、図6のxvYCC規格の光電変換特性のうちの、入力信号が負の範囲は、式(2)の光電変換特性を、原点に対して対称に拡張したものとなっている。
【0090】
従って、図6のxvYCC規格の光電変換特性は、式(5)で表される。
【0091】
【数5】

【0092】
なお、式(5)では、光電変換特性に従って変換を行う前の色信号RをRex709と示すとともに、光電変換特性に従って変換を行った後の色信号RをR'ex709と示してある。また、色信号G,Bも、色信号Rと同様に、式(5)に従って変換される。
【0093】
次に、以上のようなxvYCC規格によって表現することができる色について説明する。
【0094】
図7は、BT.709がカバーする色空間と、マンセルカラーカスケード(Munsell Color Cascade)と呼ばれる高彩度色標の768色およびsRGB規格の色空間との関係を表す図である。
【0095】
なお、図7においては(後述する図8および図9においても同様)、色信号R,G,Bを光電変換特性に従って変換し、その変換後の色信号R,G,Bを、輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crに変換した場合の、その輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crを、3つの軸にとって、色空間を表している。図7では、輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crが光電変換特性に従った変換が行われた色信号R,G,Bに対応するものであることを表すために、輝度信号Yおよび色差信号Cb,Crを、それぞれ、輝度信号Y',および色差信号Cb',Cr'と示してある。
【0096】
また、図7において、●印がマンセルカラーカスケードの768色を示しており、格子状に囲まれている平行六面体の範囲が、BT.709規格の色信号で表現される色を示している。さらに、図7において、直方体で囲まれている範囲が、BT.709の輝度信号、色差信号がカバーする範囲を示している。
【0097】
BT.709の輝度信号、色差信号では、sRGB規格の色空間をカバーするが、マンセルカラーカスケードの768色については、カバーすることができない部分が存在する。
【0098】
図8は、xvYCC規格の輝度信号、色差信号による色空間、マンセルカラーカスケードの768色、BT.709規格の色信号による色空間、およびBT.709規格の輝度信号、色差信号による色空間の関係を表す図である。
【0099】
図8において、図7と同様に●印がマンセルカラーカスケードの768色を示しており、平行六面体で囲まれている範囲が、BT.709規格の色信号で表現される色を示している。さらに、2つの直方体のうち、内側の直方体で囲まれている範囲が、BT.709の輝度信号、色差信号がカバーする範囲を示しており、外側の直方体で囲まれている範囲が、xvYCC規格の輝度信号、色差信号がカバーする範囲を示している。
【0100】
図9は、図8のCb'方向への投影図である。
【0101】
図9において、図7と同様に●印がマンセルカラーカスケードの768色を示しており、平行四辺形の範囲が、BT.709規格の色信号で表現される色を示している。さらに、2つの長方形のうち、内側の長方形で囲まれている範囲が、BT.709の輝度信号、色差信号がカバーする範囲を示しており、外側の長方形で囲まれている範囲が、xvYCC規格の輝度信号、色差信号がカバーする範囲を示している。
【0102】
図8および図9に示すように、xvYCC規格は、マンセルカラーカスケードの768色とBT.709規格の色信号の色空間を完全にカバーしている。
【0103】
ここで、マンセルカラーカスケードの768色の表面積に対するカバー率は、BT.709の色信号の色空間では55%であるのに対して、xvYCC規格の輝度信号、色差信号の色空間では100%である。また、均等色空間(L*a*b*)の体積に対するカバー率は、BT.709の色信号の色空間では61%であるのに対して、xvYCC規格の輝度信号、色差信号の色空間では100%である。
【0104】
以上のように、xvYCC規格によれば、広範囲の色空間をカバーし、広色域の色を表現することができる。
【0105】
次に、図10は、上述したxvYCC規格に対応したAVシステムの一実施の形態の構成例を示している。
【0106】
図10のAVシステムは、ビデオカメラ60とテレビジョン受像機70とで構成される。AVシステムにおいては、ビデオカメラ60にて撮影された画像の信号が、記録媒体11もしくはネットワーク12を介してテレビジョン受像機70に供給され、テレビジョン受像機70において、ビデオカメラ60にて撮影された画像が表示される。
【0107】
図11は、図10のビデオカメラ60の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。なお、図11において、図2に示すビデオカメラ1における場合と同様の部分には同一の番号が付してあり、その説明は適宜省略する。
【0108】
ビデオカメラ60は、操作部21、撮影部61、A/D変換部23、原色変換部62、光電変換部63、色信号変換部64、補正部64A、エンコーダ28、制御部29、記録部30、通信部31により構成される。
【0109】
撮影部61は、操作部21からの指示に従って、撮影処理を開始し、または停止する。また、撮影部61は撮影した画像の画像信号をA/D変換部23に供給する。ここで、撮影部61は、例えば、CMOSイメージャや、CCDなどで構成され、画像信号として、R,G,Bの色信号を出力する。なお、撮影部61であるCMOSイメージャまたはCCDの原色点は、広色域の色の情報を伝達するために、BT.709の原色点よりも広色域の位置にあるべきである。
【0110】
A/D変換部23は、撮影部61から供給された色信号R,G,BをA/D変換し、原色変換部62に供給する。ここで、A/D変換部23が原色変換部62に供給する色信号R,G,Bを、それぞれ、Rex,Gex,Bexと表す。
【0111】
原色変換部62は、A/D変換部23から供給された色信号Rex,Gex,Bexを、BT.709の原色に基づく色信号Rex709,Gex709,Bex709に原色変換し、光電変換部63に供給する。即ち、原色変換部62は、例えば、式(6)を計算することにより、A/D変換部23からの色信号Rex,Gex,Bexを、BT.709の原色に基づく色信号Rex709,Gex709,Bex709に変換する。なお、BT.709の原色は、前述の図4に示した通りである。
【0112】
【数6】

【0113】
この、原色変換部62での原色変換にて得られる色信号Rex709,Gex709,Bex709は、撮影部61の原色点がBT.709の原色点と異なる場合(操作部61が広色域の色信号R,G,Bを出力する場合)、負の値や、1を超える値をとり得る。
【0114】
光電変換部63は、原色変換部62から供給された色信号Rex709,Gex709,Bex709を、xvYCC規格の光電変換特性に従って、色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709に変換し、色信号変換部64に供給する。
【0115】
即ち、光電変換部63は、原色変換部62からの色信号Rex709,Gex709,Bex709を、式(5)に従って色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709に変換し、色信号変換部64に供給する。
【0116】
ここで、式(5)は、色信号Rex709を色信号R'ex709に変換する式であるが、色信号Gex709,Bex709も、それぞれ、式(5)の色信号R709と同様に、色信号G'ex709,B'ex709に変換される。
【0117】
なお、光電変換部63において、色信号Rex709,Gex709,Bex709を、xvYCC規格の光電変換特性に従って変換することにより得られる色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709のうちの0乃至1.0の範囲は、BT.709規格と同じである。
【0118】
色信号変換部64は、光電変換部63から供給された色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709を、式(7)に従い、輝度信号Y'ex709および色差信号Cb'ex709,Cr'ex709に変換する。さらに、信号変換部64は、補正部64Aを内蔵しており、補正部64Aは、輝度信号Y'ex709をxvYCC規格にて定義される0乃至1.0の数値範囲の輝度信号に補正し、色差信号Cb'ex709とCr'ex709を、xvYCC規格にて定義される-0.57乃至0.56の数値範囲の色差信号に補正して、エンコーダ28に供給する。
【0119】
【数7】

【0120】
即ち、色信号変換部64は、補正部64Aにて、例えば、0より小さい輝度信号Y'ex709を0に補正し、1.0より大きい輝度信号Y'ex709を1.0に補正する。また、-0.57より小さい色差信号Cb'ex709,Cr'ex709を-0.57に補正し、0.56より大きい色差信号Cb'ex709,Cr'ex709を0.56に補正して、その補正後の輝度信号Y'ex709を、8ビットで表現可能な0乃至255の整数範囲より狭い16乃至235の整数範囲の整数値に割り当て、その整数値である輝度信号Y'ex709を、xvYCC規格に準拠した輝度信号としてエンコーダ28に供給し、さらに、補正後の色差信号Cb'ex709,Cr'ex709を、それぞれ、8ビットで表現可能な0乃至255の整数範囲より狭い1乃至254の整数範囲の整数値に割り当て、その整数値である色差信号Cb'ex709と色差信号Cr'ex709を、xvYCC規格に準拠した色差信号として、エンコーダ28に供給する。
【0121】
以下、制御部29、記録部30、および通信部31では、図2のビデオカメラ1と同様の処理が行われる。
【0122】
次に、図12は、図10のテレビジョン受像機70の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。なお、図12において、図3に示すテレビジョン受像機2における場合と同様の部分には同一の番号が付してあり、その説明は適宜省略する。
【0123】
図12において、テレビジョン受像機70は、画像信号入力部41、輝度・色差信号変換部71、逆光電変換部72、原色変換部73、色信号補正部74、固有γ特性補正部75、D/A変換部44、および表示機構76から構成されている。
【0124】
輝度・色差信号変換部71は、画像信号入力部41から供給された輝度信号Y'ex709と色差信号Cb'ex709,Cr'ex709を、式(8)に従い、xvYCC規格の光電変換特性に従った色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709に変換し、逆光電変換部72に供給する。
【0125】
【数8】

【0126】
即ち、輝度・色差信号変換部71は、8ビットで表現可能な16乃至235の整数範囲の整数値の輝度信号Y'ex709を、0乃至1.0の数値範囲で表現される値とするとともに、8ビットで表現可能な1乃至254の整数範囲の整数値の色差信号Cb'ex709,Cr'ex709のそれぞれを、-0.57乃至0.56の数値範囲で表現される値とし、その0乃至1.0の数値範囲で表される輝度信号Y'ex709と、-0.57乃至0.56の数値範囲で表現される色差信号Cb'ex709,Cr'ex709を、式(8)に従って、色信号R'ex709,G'ex709 ,B'ex709に変換する。
【0127】
逆光電変換部72は、輝度・色差信号変換部71から供給された色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709を、xvYCC規格の光電変換特性に従って変換する。即ち、逆光電変換部72は、輝度・色差信号変換部71から供給された色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709を、式(9)に従い、色信号Rex709,Gex709,Bex709に変換し、原色変換部73に供給する。
【0128】
【数9】

【0129】
逆光電変換部72は、輝度・色差信号変換部71から供給された色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709に対して、ビデオカメラ60(図11)の光電変換部63にて行われる処理の逆の処理を行うことにより、輝度・色差信号変換部71から供給された色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709を、ビデオカメラ60の光電変換部63にて変換される前の色信号Rex709,Gex709,Bex709に戻す。
【0130】
なお、式(9)は、色信号R'ex709を色信号Rex709に変換する式であるが、色信号G'ex709,B'ex709も、それぞれ、式(9)の色信号R'ex709と同様に、色信号Gex709,Bex709に変換される。
【0131】
原色変換部73は、逆光電変換部72から供給された色信号Rex709,Gex709,Bex709を、表示機構76の原色に基づく色信号Rtv,Gtv,Btvに原色変換し、色信号補正部74に供給する。即ち、原色変換部73は、例えば、式(10)を計算することにより、逆光電変換部72からの色信号Rex709,Gex709,Bex709を、表示機構76の原色に基づく色信号Rtv,Gtv,Btvに変換する。
【0132】
【数10】

【0133】
色信号補正部74は、原色変換部73から供給された色信号Rrv,Gtv,Btvのうち、表示機構76にいおいて表示不可能な色信号に対して補正を行い、固有γ特性補正部75に供給する。即ち、色信号補正部74は、例えば、原色変換部73から供給された色信号Rtv,Gtv,Btvの信号レベルが、表示機構76において表示可能な色信号の信号レベルの範囲に含まれない場合、その色信号Rtv,Gtv,Btvを、表示機構76において表示可能な色信号の信号レベルの範囲の色信号に補正する。
【0134】
例えば、色信号補正部74にて行う補正処理では、原色変換部73から供給された色信号Rtv,Gtv,Btvが負の値であった場合、その色信号Rtv,Gtv,Btvを、0に補正する。
【0135】
なお、色信号補正部74にて行う補正処理では、原色変換部73から供給された色信号Rtv,Gtv,Btvが、表示機構76において表示不可能な色信号であった場合、その色信号Rtv,Gtv,Btvを、その色信号Rtv,Gtv,Btvとの色差が最小になる、表示機構76において表示可能な色域内の色信号に補正するようにしても良いし、輝度を維持したまま彩度を低下させた色信号に補正するようにしても良い。
【0136】
固有γ特性補正部75は、色信号補正部74から供給された色信号Rtv,Gtv,Btvを、テレビジョン受像機70の表示機構76の固有のγ特性を補正するため、表示機構76の色信号R'tv,G'tv,B'tv に変換し、D/A変換部44に供給する。
【0137】
D/A変換部44は、固有γ特性補正部75から供給された色信号R'tv,G'tv,B'tvをD/A変換し、表示機構76に供給する。
【0138】
表示機構76は、例えば、CRTやLCDなどで構成され、D/A変換部44から供給された色信号R'tv,G'tv,B'tvに基づいて画像を表示する。表示機構76は、xvYCC規格に対応しており、図3の表示機構45に比べて、広色域の色を表現(表示)することができるものとなっている。
【0139】
次に、図13を参照して、ビデオカメラ60にて撮影された画像が、テレビジョン受像機70に表示されるまでの信号の流れを概略的に説明する。図13の矢印は処理(信号に対する変換処理など)を表している。
【0140】
処理81乃至83は、ビデオカメラ60にて行われる処理であり、処理91乃至94の処理は、テレビジョン受像機70にて行われる処理である。
【0141】
まず、ビデオカメラ60の撮影部61にて撮影された画像は、D/A変換部23を経由し、撮影部61(図11)の原色に基づく色信号Rex,Gex,Bexとして、原色変換部62に供給され、BT.709の原色に基づく色信号Rex709,Gex709,Bex709に変換される(処理81)。
【0142】
その後、色信号Rex709,Gex709,Bex709は、光電変換部63にて、xvYCC規格の光電変換特性に従った色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709に変換され(処理82)、さらに、色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709は、色信号変換部62にて、xvYCC規格に準拠した輝度信号Y'ex709と色差信号Cb'ex709,Cr'ex709に変換され(処理83)、エンコーダ28にてエンコードされた後、エンコードデータとして、記録、もしくは、ネットワーク12を介しての送信が行われる。
【0143】
一方、テレビジョン受像機70は、ビデオカメラ60で得られたエンコードデータをデコードし、その結果得られる、xvYCC規格に準拠した輝度信号Y'ex709と色差信号Cb'ex709,Cr'ex709を、輝度・色差信号変換部71にて、xvYCC規格の光電変換特性に従った色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709に変換する(処理91)。つまり、輝度信号Y'ex709および色差信号Cb'ex709,Cr'ex709を、ビデオカメラ60の光電変換部63が行う処理にて得られる色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709に戻す処理を行う。
【0144】
その後、色信号R'ex709,G'ex709,B'ex709は、逆光電変換部72にて、ビデオカメラ60の原色変換部63が行う処理にて得られる、BT.709の原色に基づく色信号Rex709,Gex709,Bex709に変換される(処理92)。
【0145】
そして、色信号Rex709,Gex709,Bex709は、原色変換部73にて、表示機構76(図12)の原色に基づく色信号Rtv,Gtv,Btvに変換される(処理93)。
【0146】
色信号Rtv,Gtv,Btvは、固有γ特性補正部75にて、テレビジョン受像機70の固有のγ特性に従って、色信号R'tv,G'tv,B'tvに変換され(処理94)、この色信号R'tv,G'tv,B'tvに基づいて画像が表示される。
【0147】
以上のように、ビデオカメラ60とテレビジョン受像機70においては、色差信号Cb,Crの有効数値(信号幅)を、BT.709よりも拡張したxvYCC規格を採用することにより、BT.709では表現できない広色域の色を再現することができる。
【0148】
なお、ビデオカメラ60で撮影された画像の輝度信号Yは、BT.709に準拠しており、さらに、色差信号Cb,Crも、-0.5乃至0.5の範囲では、BT.709に準拠しているので、その輝度信号Yおよび色差信号Cb,CrをBT.709に準拠したテレビジョン受像機にて処理した場合は、BT.709の色域にて、画像を表示することができる。
【0149】
ここで、xvYCC規格では、BT.601に準拠した輝度信号Yと、-0.5乃至0.5の範囲でBT.601に準拠した色差信号Cb,Crとを採用することもできる。この場合、BT.601では表現できない広色域の色を再現することができる。さらに、この場合、輝度信号Yは、BT.601に準拠しており、さらに、色差信号Cb,Crも、-0.5乃至0.5の範囲では、BT.601に準拠しているので、その輝度信号Yおよび色差信号Cb,CrをBT.601に準拠したテレビジョン受像機にて処理した場合は、BT.601の色域にて、画像を表示することができる。
【0150】
但し、BT.601に準拠した輝度信号Yと、-0.5乃至0.5の範囲でBT.601に準拠した色差信号Cb,Crとを採用する場合、色信号R'ex601,G'ex601,B'ex601からなるRGB信号を、輝度信号Y'ex601および色差信号Cb'ex601,Cr'ex601からなるYCC信号に変換する際には、式(7)の代わりに、以下に示す式(11)を用いて変換を行う必要がある。
【0151】
【数11】

【0152】
また、ビデオカメラ60の原色変換部62と色信号変換部64のそれぞれは、3×3のマトリックス演算を行う回路で実現し、光電変換部63は、1次元のLUT(Look Up Table)などで実現することができる。さらに、原色変換部62、光電変換部63、および色信号変換部64の全ては、まとめて1つの3次元のLUTで実現することができる。
【0153】
また、テレビジョン受像機70の輝度・色差信号変換部71と原色変換部73のそれぞれは、3×3のマトリックス演算を行う回路で実現し、逆光電変換部72と固有γ特性補正部75のそれぞれは、1次元のLUTなどで実現することができる。さらに、輝度・色差信号変換部71、逆光電変換部72、原色変換部73、および固有γ特性補正部75の全ては、まとめて1つの3次元のLUTで実現することができる。
【0154】
次に、図10のビデオカメラ60や、図11のテレビジョン受像機70などのように、xvYCC規格の画像データを扱う装置等の性能を評価する手法について説明する。
【0155】
ここで、以下、適宜、アナログ値で表現される色差信号を、Pb,Prと記載し、ディジタル値(整数値)で表現される色差信号を、Cb,Crと記載する。
【0156】
図14は、xvYCC規格の画像データを扱う装置等の評価対象を評価するための評価システムの一実施の形態の構成例を示している。
【0157】
図14の評価システムは、評価用チャートデータ生成側と、評価側とに、大きく分けることができる。
【0158】
図14において、評価用チャートデータ生成側は、チャートデータ生成部101、リサイズ部102、レコーダ103、および出力ユニット104で構成され、xvYCC規格の画像データを扱う評価対象の評価に使用される画像データである評価用チャートデータを生成する。
【0159】
即ち、チャートデータ生成部101は、広色域の、例えば、色刺激データのXYZからなる3刺激値から、xvYCC規格の輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'からなるチャートデータを生成する。
【0160】
具体的には、チャートデータ生成部101は、BT.709により定義されたRGB原色点に基づき、例えば、XYZ信号を、BT.709の原色に基づくRGB信号に変換し、さらに、そのRGB信号を、式(5)で表される光電変換特性にしたがい、R',G',B'信号(色信号R',G',B')に変換する。そして、チャートデータ生成部101は、そのR',G',B'信号を、式(7)にしたがい、アナログ値の輝度信号Y'および色差信号Pb',Pr'に変換し、さらに、そのアナログ値の輝度信号Y'および色差信号Pb',Pr'を、xvYCC規格に準拠した、例えば、8ビットのディジタル値の輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に変換して、HDTVに対応した評価対象の評価に使用するチャートデータとして、リサイズ部102に供給する。
【0161】
あるいは、チャートデータ生成部101は、R',G',B'信号を、式(11)にしたがい、アナログ値の輝度信号Y'および色差信号Pb',Pr'に変換し、さらに、そのアナログ値の輝度信号Y'および色差信号Pb',Pr'を、xvYCC規格に準拠した、例えば、8ビットのディジタル値の輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に変換して、SDTVに対応した評価対象の評価に使用するチャートデータとして、リサイズ部102に供給する。
【0162】
リサイズ部102は、必要に応じて、チャートデータ生成部101からの輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'によって表示される画像のサイズを、HDTV用またはSDTV用のサイズにリサイズ(変更)し、そのHDTV用またはSDTV用のサイズの画像に対応する輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'を、評価用チャートデータとして得る。
【0163】
ここで、以上のようにして得られる評価用チャートデータは、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'とからなる。
【0164】
リサイズ部102は、以上のような評価用チャートデータとしての輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'を、後段のレコーダ103で読み込み可能な形式に変換して、レコーダ103に転送する。
【0165】
レコーダ103は、例えば、(株)計測技術研究所のUDRと呼ばれるシリーズの、コンポーネット信号を記録再生することができるディスクレコーダ等であり、リサイズ部102からの評価用チャートデータである輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'を、その内蔵するHD(Hard Disk)に記録する。さらに、レコーダ103は、内蔵するHDから、評価用チャートデータである輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'を再生し、出力ユニット104に供給する。
【0166】
出力ユニット104は、例えば、HD-SDI(Signal Digital Interface)ユニットやSDIユニット、アナログコンポーネントユニットなどの出力ユニットであり、レコーダ103からの評価用チャートデータである輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'を、様々な信号形式で送出する。
【0167】
出力ユニット104が送出した評価用チャートデータは、例えば、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、出力ユニット104が送出した評価用チャートデータは、記録媒体111に記録して配布することができる。なお、評価用チャートデータがHDTV用のデータであれば、記録媒体111としては、例えば、HDCAM(R)用やHDCAM-SR用のテープ、ディスク状記録媒体、半導体メモリ等を採用することができる。また、評価用チャートデータがSDTV用のデータであれば、記録媒体111としては、例えば、DV(Digital Video)用やベータカム用のテープ、ディスク状記録媒体、半導体メモリ等を採用することができる。
【0168】
図14において、評価側は、評価対象121と評価部122とで構成され、評価用チャートデータ生成側から記録媒体111の提供を受け、その記録媒体111に記録されている評価用チャートデータを使用して、評価対象121の評価を行う。
【0169】
即ち、評価対象121は、xvYCC規格に準拠した画像データを扱う装置その他の物であり、記録媒体111に記録されている評価用チャートデータを処理する。ここで、評価対象121となり得るものとしては、例えば、画像データに対応する画像を表示する表示装置や、画像データの編集を行う編集装置、画像データのエンコードとデコードとを行うコーデック、画像データを保存するストレージ、画像データを伝送する伝送装置または伝送媒体、記録媒体に対する画像データの記録と再生とを行う記録再生装置、記録媒体から画像データを再生する再生装置等がある。
【0170】
評価部122は、評価対象121で評価用チャートデータを処理した結果に基づき、評価対象121を評価し、評価結果を出力する。
【0171】
即ち、評価対象121が、例えば、表示装置である場合には、評価対象121は、評価用チャートデータに必要な処理を施し、対応する画像を表示する。この場合、評価部122は、評価対象121としての表示装置で評価用チャートデータを処理することにより得られるデータに対応する画像に基づき、評価対象121を評価する。
【0172】
具体的には、評価部122は、例えば、色度計を有し、評価対象121としての表示装置が表示した画像の色度を、色度計で測定し、その測定値と、記録媒体111に記録されている評価用チャートデータとを比較することで、測定値の、評価用チャートデータに対する誤差を求め、その誤差を、評価対象121の評価の結果として出力する。
【0173】
その他、評価対象121の評価は、評価対象121としての表示装置が表示した画像を、評価対象121の評価を行おうとする人(評価者)が目視により確認することによって行うことができる。
【0174】
次に、図15は、xvYCC規格の画像データを扱う装置等の評価対象を評価するための評価システムの他の実施の形態の構成例を示している。
【0175】
なお、図中、図14の評価システムと対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0176】
図15の評価システムは、評価側に、評価部122に代えて、波形モニタ131と画像モニタ132とが設けられている点で、図14の評価システムと異なっている。
【0177】
図15の評価システムでは、評価対象121において、記録媒体111に記録されている評価用チャートデータが処理され、その処理の結果得られるデータが、波形モニタ131と画像モニタ132の一方または両方に供給される。
【0178】
波形モニタ131は、評価対象121からのデータの波形を表示し、画像モニタ132は、評価対象121からのデータに対応する画像を表示する。
【0179】
評価者は、波形モニタ131に表示された波形や、画像モニタ132に表示された画像を目視により確認し、評価対象121の評価を行う。
【0180】
次に、図16および図17のフローチャートを参照して、図14と図15の評価システムを用いた評価対象121の評価の方法について説明する。
【0181】
まず、図16のフローチャートを参照して、評価システム(図14、図15)の評価用チャートデータ生成側の処理について説明する。
【0182】
評価用チャートデータ生成側では、ステップS1において、評価用チャートデータが生成されて、記録媒体111に記録され、処理を終了する。
【0183】
即ち、評価用チャートデータ生成側では、チャートデータ生成部101が、上述したように、アナログ値の輝度信号Y'および色差信号Pb',Pr'を生成する。さらに、チャートデータ生成部101は、アナログ値の輝度信号Y'および色差信号Pb',Pr'を、xvYCC規格に準拠したディジタル値の輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に変換し、HDTVまたはSDTVに対応した評価対象121の評価に使用するチャートデータとして、リサイズ部102に供給する。
【0184】
そして、リサイズ部102が、チャートデータ生成部101からのxvYCC規格に準拠したディジタル値の輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'をリサイズし、その結果得られるHDTV用またはSDTV用のサイズの画像に対応する輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'を、評価用チャートデータとして得る。
【0185】
以上のようにしてリサイズ部102で得られた評価用チャートデータは、レコーダ103で、内蔵するHDに記録される。そして、レコーダ103では、必要に応じて、内蔵するHDに記録された評価用チャートデータが再生され、出力ユニット104を介して、例えば、記録媒体111に記録される。評価用チャートデータが記録された記録媒体111は、必要に応じて、有償または無償で配布される。
【0186】
次に、図17のフローチャートを参照して、評価システム(図14、図15)の評価側の処理について説明する。
【0187】
ステップS11において、評価対象121が、記録媒体111に記録された評価用チャートデータを処理する。
【0188】
そして、ステップS12において、評価対象121で評価用チャートデータを処理した結果に基づき、評価部122または評価者が、評価対象121の評価を行う。
【0189】
次に、図18は、図14と図15のチャートデータ生成部101の構成例を示している。
【0190】
チャートデータ生成部101は、取得部161、原色変換部162、光電変換部163、および色信号変換部164から構成される。また、色信号変換部164は、補正部164Aを内蔵している。
【0191】
そして、チャートデータ生成部101は、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる画像データを、チャートデータとして生成する。
【0192】
即ち、取得部161は、後段の原色変換部162での原色変換の対象となるXYZ信号やRGB信号その他の色信号を取得し、原色変換部162に供給する。
【0193】
ここで、チャートデータ生成部101では、例えば、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を含んだカラーチャートを基に、xvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなるチャートデータを生成することができる。
【0194】
この場合、取得部161は、例えば、CCDやCMOSセンサ等の画像を撮影するための光電変換素子を有し、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を含んだカラーチャートを撮影し、これにより、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を取得する。
【0195】
なお、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を含んだカラーチャートとしては、例えば、グレタクマクベス社のマクベスカラーチェッカ(R)と呼ばれるカラーチャートや、さらには、そのカラーチャートに、彩度がより高い色を追加したカラーチャート等を採用することができる。
【0196】
また、取得部161では、カラーチャート以外の物体の物体色を基に、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を取得することが可能である。
【0197】
即ち、取得部161が、例えば、色度を測定する色度計を有する場合には、その色度計において、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の、彩度が高い色材を用いて作成された色票の色度を測定し、その測定結果を用いて、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を生成することができる。
【0198】
また、取得部161が、例えば、色度を測定する色度計を有する場合には、物体色ではなく、光源色を基に、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を取得することができる。
【0199】
即ち、取得部161では、色度計において、例えば、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の透過物体光や光源の色度を測定し、その測定結果を用いて、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を生成することができる。
【0200】
なお、その他、取得部161では、例えば、標準色空間や均等色空間等の所定の色空間の色度図上の1以上の座標に基づき、その座標に対応する色を表現する色信号を生成することにより、所定の色空間の色度図上の所定の座標に対応する色(色度)を含み、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を取得することができる。
【0201】
また、所定の色空間の色度図上の所定の座標に対応する色(色度)を含み、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号は、その他、例えば、所定の色空間の色度図上の所定の座標に対応する色を含み、ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の画像を基に、即ち、例えば、その画像を撮影することにより生成することも可能である。
【0202】
さらに、取得部161では、例えば、オペレータが図示せぬ操作部を操作すること等によって、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号の値として入力した値を受信することにより、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を取得することができる。
【0203】
取得部161は、上述したように、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号を取得し、原色変換部162に供給する。
【0204】
そして、原色変換部162、光電変換部163、色信号変換部164は、それぞれ、図11の原色変換部62、光電変換部63、色信号変換部64と同様の処理を行い、これにより、取得部161で取得された、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の色信号から、BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、xvYCC規格に準拠した、例えば、8ビットのディジタル値の輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'とからなる画像データが、チャートデータとして生成される。
【0205】
以上のようにして生成されたチャートデータとしての輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'は、チャートデータ生成部101からリサイズ部102に供給される。そして、リサイズ部102では、上述したように、チャートデータ生成部101からの輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に対応する画像のサイズが、必要に応じてリサイズされる。
【0206】
なお、リサイズ部102としては、例えば、Adobe社のPhotoShop(R)と呼ばれる画像処理用のソフトウェアを採用することができる。ここで、図19に、PhotoShop(R)(を実行するコンピュータ)によって、xvYCC規格に準拠した8ビットのディジタル値の輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'に対応する画像を表示した表示例を示す。即ち、図19は、PhotoShop(R)のRチャンネルに輝度信号Y'を入力するとともに、GとBチャンネルに、それぞれ色差信号Cb'とCr'を入力して得られる画像を示している。
【0207】
次に、評価用チャートデータの具体例について説明する。
【0208】
なお、ここでは、評価用チャートデータとしての輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'が、いずれも8ビットで表現されることとするが、評価用チャートデータとしての輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'のビット数は8ビットに限定されるものではない。
【0209】
ここで、xvYCC規格に準拠した輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'を、それぞれ8ビット以上のnビットで表現する場合には、そのnビットにより表現することができる整数範囲に対して、以下のように信号レベルが割り当てられる。
【0210】
即ち、輝度信号Y'については、例えば、上述したように、輝度信号Y'を8ビットで表現する場合には、その8ビットで表現することができる0乃至255のうちの、16乃至235の整数範囲の整数値に、0乃至1.0の輝度信号Y'の信号レベルが割り当てられるが、輝度信号Y'が8ビットより大のnビットで表現される場合には、そのnビットで表現することができる整数範囲である0乃至2n-1のうちの、輝度信号Y'が8ビットで表現される場合の16乃至235に対応する整数範囲に、0乃至1.0の数値範囲の輝度信号Y'の信号レベルが割り当てられる。
【0211】
色差信号Cb'についても(色差信号Cr'についても同様)、nビットで表現することができる整数範囲である0乃至2n-1のうちの、色差信号Cb'が8ビットで表現される場合の1乃至254に対応する整数範囲に、-0.57乃至0.56の数値範囲の色差信号Pb'の信号レベルが割り当てられる。
【0212】
ここで、BT.709やBT.601の色差信号Pb',Pr'の信号レベルの最小値と最大値は、それぞれ-0.5と+0.5であり、xvYCC規格の色差信号Pb',Pr'の信号レベルの最小値と最大値は、それぞれ、-0.57乃至0.56である。したがって、xvYCC規格の色差信号Pb',Pr'は、BT.709やBT.601の色差信号Pb',Pr'が取り得ない-0.57乃至-0.5(正確には、-0.57以上-0.5未満)の信号レベルと、0.5乃至0.56(0.5より大で0.56以下)の信号レベルを取り得る。
【0213】
そして、xvYCC規格の色差信号Cb'が8ビット以上のnビットで表現される場合、-0.57乃至-0.5の信号レベルは、2n-8以上15×2n-8以下の整数範囲に割り当てられ、0.5乃至0.56の信号レベルは、241×2n-8以上255×2n-8-1以下の整数範囲に割り当てられる。
【0214】
広色域の動画を扱う評価対象121(図14、図15)の評価に使用する評価用チャートデータとしての色差信号Cb',Cr'は、-0.57乃至-0.5の信号レベルに割り当てられる2n-8以上15×2n-8以下の整数範囲内の整数値と、0.5乃至0.56の信号レベルに割り当てられる241×2n-8以上255×2n-8-1以下の整数範囲内の整数値とのうちの一方または両方を少なくとも含むことが望ましい。
【0215】
図20は、評価用チャートデータの第1の例によって表示されるカラーチャートの画像を示している。
【0216】
図20において、左部分の5×5の小さな正方形では、輝度信号Y'は16(8ビット換算値)になっている。また、図20において、左部分の5×5の小さな正方形では、色差信号Cb'が、左から右方向に、順に、1,16,128,240,254(8ビット換算値)となっており、色差信号Cr'が、上から下方向に、順に1,16,128,240,254(8ビット換算値)となっている。
【0217】
さらに、図20において、右部分の大きな正方形では、輝度信号Y'は16(8ビット換算値)になっている。また、図20において、右部分の大きな正方形では、色差信号Cb'が左から右方向に、色差信号Cr'が上から下方向に、それぞれ、1から254(8ビット換算値)まで連続的に変化している。
【0218】
図21は、図20のカラーチャートの評価用チャートデータを波形モニタに入力することによって表示される波形、即ち、図20のカラーチャートの評価用チャートデータの波形を示す波形図である。
【0219】
ここで、波形モニタとしては、テクトロニクス社のWFM700Mと呼ばれる波形モニタを用いた。
【0220】
また、図21の波形図において(後述する他の波形図でも同様)、左端の目盛の700が、輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'の240の整数値に対応し、左端の目盛の0(100と-100との間の中点)が、輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'の16の整数値に対応する。さらに、波形図においては、波形図を水平方向に略3等分して3つの領域に分けたときに、左から1番目の領域の波形が、輝度信号Y'の波形を示す。また、左から2番目の領域の波形が、色差信号Cb'の波形を示し、左から3番目の領域(右から1番目の領域)の波形が、色差信号Cr'の波形を示す。
【0221】
図20のような評価用チャートデータは、様々な整数値の輝度信号Y'について生成することができる。
【0222】
即ち、図22は、評価用チャートデータの第2の例によって表示されるカラーチャートの画像を示している。
【0223】
図22の評価用チャートデータは、輝度信号Y'が16(8ビット換算値)ではなく、254になっている他は、図20と同様の評価用チャートデータになっている。
【0224】
ここで、図23に、図22のカラーチャートの評価用チャートデータの波形を示す。
【0225】
輝度信号Y'の値として、1以上254以下の範囲の適当な間隔の整数値を採用して、図20や図22のような評価用チャートデータを生成することにより、様々な値の輝度について、評価対象121の評価を行うことが可能となる。
【0226】
図24は、評価用チャートデータの第3の例によって表示されるカラーチャートの画像を示している。
【0227】
図24の左側は、輝度信号Y'、色差信号Cb',Cr'のぞれぞれを軸とする3次元座標系上の、輝度信号Y'、色差信号Cb',Cr'からなる信号立体を、Y'−Cb'平面(輝度信号Y'の軸と、色差信号Cb'の軸とで規定される平面)(Cr'=0の平面)で切断したときに見える断面(Y'−Cb'断面)である。また、図24の右側は、輝度信号Y'、色差信号Cb',Cr'のぞれぞれを軸とする3次元座標系上の、輝度信号Y'、色差信号Cb',Cr'からなる信号立体を、Y'−Cr'平面(輝度信号Y'の軸と、色差信号Cr'の軸とで規定される平面)(Cb'=0の平面)で切断したときに見える断面(Y'−Cr'断面)である。
【0228】
なお、図24のカラーチャートの画像には、左側のY'−Cb'断面と、右側のY'−Cr'断面のそれぞれとともに、sRGBの境界線が表示されている。
【0229】
ここで、図25に、図24のカラーチャートの評価用チャートデータの波形を示す。
【0230】
図20乃至図25に示した評価用チャートデータは、例えば、評価対象121が、xvYCC規格の輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'を正常に通過させるかどうかの通過確認の評価を行うのに使用することができる。
【0231】
図26乃至図30は、各種の色空間の色度図の画像を表示する評価用チャートデータの第4乃至第8の例を、それぞれ示している。
【0232】
即ち、図26は、CIE1931標準色空間のxy色度図の画像を表示する評価用チャートデータを、図27は、CIE1976UCS空間のu'v'色度図の画像を表示する評価用チャートデータを、図28は、CIE1976 L*a*b*色空間のL*a*b*色度図の画像を表示する評価用チャートデータを、それぞれ示している。
【0233】
図26乃至図28の左側は、輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に対応する色信号を、スペクトラルローカス(スペクトル軌跡)の範囲内の値に制限した場合の色度図である。また、図26乃至図28の右側は、輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に対応する色信号が、スペクトラルローカスの範囲外の値であっても、その色信号に対応する輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'がxvYCC規格で許される範囲の値であれば、その色信号を制限しないようにした場合の色度図である。
【0234】
図26乃至図28の評価用チャートデータでは、輝度Y値は一定の値になっているが、輝度Y値として、様々な数値を採用して、図26乃至図28の評価用チャートデータ生成することにより、様々な値の輝度について、評価対象121の評価を行うことが可能になる。輝度Y値としては、例えば、1.5から0.1までは0.1間隔ごとの値を採用し、0.1以下については、例えば、0.05,0.03,0.01,0.005, 0.001を採用することができる。但し、図26乃至図28の評価用チャートデータを生成するにあたって採用する輝度Y値は、これに限定されるものではない。
【0235】
図29と図30は、CIE1931標準色空間上における、スペクトラルローカス内の色度座標について、xvYCC規格で許される最大輝度の色を表示する評価用チャートデータを示している。
【0236】
図29では、中央部分に、スペクトラルローカスの範囲内の色が表示され、そのスペクトラルローカスの範囲の周囲に、スペクトラルローカス上の複数の点(座標)上の色の長方形が表示されており、これにより、評価対象121の評価において、色味の確認を容易に行うことができるようになっている。
【0237】
図30では、左側に、スペクトラルローカスの範囲内の色が表示され、右側に、赤色の複数の長方形が表示されている。
【0238】
即ち、図30において、右側には、等色度で輝度が低くなっていく赤色の長方形が上から下方向に並び、等輝度かつ等色相で彩度が高くなっていく赤色の長方形が左から右方向に並んでいる。
【0239】
図30の評価用チャートデータを使用して、評価対象121の評価を行うことにより、赤色に関して、詳細な評価を行うことができる。
【0240】
なお、図30のような評価用チャートデータとしては、右側に、赤色の長方形を並べたものではなく、緑や、青、シアン、マゼンタ、黄色、その他の色の長方形を並べたものを生成することができる。この場合、各種の色に関して、詳細な評価を行うことが可能となる。
【0241】
また、図30のような、特定の色の長方形を並べた評価用チャートデータは、xy色度図の他、L*a*b*空間内の特定の色について生成することも可能である。
【0242】
図31は、評価用チャートデータの第9の例によって表示されるカラーチャートの画像を示している。
【0243】
図31は、グレタクマクベス社のマクベスカラーチェッカ(R)と呼ばれるカラーチャートの24色(2Aから5Fの部分)に、その24色より彩度が高い色の16色(1行目とG,Hの列)が付け加えられた合計40色のカラーチャートである。
【0244】
図31のような評価用チャートデータは、市販されているカラーチャート(例えば、グレタクマクベス社のマクベスカラーチェッカ(R)など)や、自ら作成したオリジナルの広色域のカラーチャートなどの実在するカラーチャート(実物のカラーチャート)の色度を測定して生成することができる。かかる評価用チャートデータを使用しての、評価対象121の評価は、例えば、評価対象121で、評価用チャートデータを処理して得られるデータに対応する画像(カラーチャートの画像)を表示して、実物のカラーチャートの色と見比べること、あるいは、表示されたカラーチャートの画像と、実物のカラーチャートとの色度を測定して比較すること等によって行うことができる。
【0245】
図32は、評価用チャートデータの第10の例によって表示されるカラーチャートの画像を示している。
【0246】
図32では、赤(R)、青(B)、緑(G)の3原色について、xvYCC規格において色信号がとることがで許される最大値と最小値、その最大値から最小値までの範囲の1以上の値のそれぞれに対応する色が並んでいる。
【0247】
以上のような評価用チャートデータによれば、例えば、xvYCC規格に準拠した画像データを保存するストレージや、画像データを伝送する伝送媒体その他の装置などの評価対象121について、例えば、テクトロニクス社の波形モニタ「WFM700M」などのように、信号(データ)をディジタル的に読み取ることができる装置を使って、信号を解析することにより、信号(xvYCC規格に準拠した画像データ)が評価対象121を、正常に(歪むことなく)通過しているかどうか等を確認することができる。
【0248】
即ち、例えば、図20の評価用チャートデータの波形を、波形モニタで表示すると、図21に示したようになる。
【0249】
従って、評価対象121で評価用チャートデータを処理して得られるデータ(例えば、評価対象121を通過した評価用チャートデータ)の波形を、波形モニタで表示し、その波形を、図21の波形と比較することにより、評価対象121において、xvYCC規格に準拠した画像データが正常に処理される(扱われる)かどうかといった、評価対象121の性能を評価することができる。
【0250】
また、評価対象121が、例えば、ノンリニア編集を行う編集装置である場合には、評価用チャートデータの編集前の波形と、編集後の波形とを比較することにより、編集前から編集後に亘って、xvYCC規格に準拠した画像データが適切に保存されるかどうかを一目で確認することができる。
【0251】
さらに、評価対象121が、例えば、MPEG方式のコーデックである場合には、評価用チャートデータの符号化前の波形と、符号化し、さらに復号した後の波形とを比較することにより、符号化前から、復号後に亘って、xvYCC規格に準拠した画像データが適切に保存されるかどうかを一目で確認することができる。
【0252】
ここで、図33は、コンピュータで実行される、ノンリニア編集を行うソフトウェアを使用して、図20の評価用チャートデータを、QuickTime(R)形式のデータに変換した、そのQuickTime(R)形式のデータの波形を示す波形図である。
【0253】
図21の評価用チャートデータの波形と、図33の波形とを比較することにより、図20の評価用チャートデータを、QuickTime(R)形式のデータに変換することで、波形がどのように変化するかを調査することができる。
【0254】
また、例えば、図24の評価用チャートデータによれば、Y'−Cb'断面およびY'−Cr'断面とともに、sRGBの境界線が表示されるので、評価対象121を、xvYCC規格に準拠した画像データが正常に通過するかどうかの確認の他、評価対象121を通過したxvYCC規格に準拠した画像データに対応する画像の表示時の色が、不自然でないかどうかを、目視で確認することができる。
【0255】
さらに、評価対象121が表示装置である場合には、図24の評価用チャートデータに対応する画像を表示することにより、目視によって、直感的に、xvYCC規格に準拠した画像データに対応する画像が適切に表示されているかの判断を行うことができる。
【0256】
また、評価対象121が表示装置である場合には、xvYCC規格の輝度信号Y'および色差信号Cr',Cb'によって表現することができる色の中に、評価対象121が表示できない色があるときに、そのような色に対応する信号が評価対象121においてどのように処理されているのかを、評価用チャートデータを使用することにより、容易に確認することができる。
【0257】
さらに、評価対象121が表示装置である場合には、輝度が高い色については、評価対象121で表示することができるが、xvYCC規格の輝度信号Y'および色差信号Cr',Cb'によって表現することができないことがある。そのような色に対応する信号が評価対象121においてどのように処理されているのかを、評価用チャートデータを使用することにより、容易に確認することができる。
【0258】
また、図26乃至図28の評価用チャートデータによれば、評価対象121において、xvYCC規格に準拠した画像データが処理されることにより、色相のずれや、輝度の変化が生じるかどうかを確認することができる。
【0259】
さらに、図26乃至図28の評価用チャートデータによれば、上述したように、左側には、輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に対応する色信号を、スペクトラルローカスの範囲内の値に制限した場合の色度図が表示され、右側には、輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'に対応する色信号が、スペクトラルローカスの範囲外の値であっても、その色信号に対応する輝度信号Y'および色差信号Cb',Cr'がxvYCC規格で許される範囲であれば、その色信号を制限しないようにした場合の色度図が表示されるので、評価対象121の評価を、現実に存在する色の範囲内と範囲外とについて場合を分けて行うことができる。
【0260】
また、例えば、L*a*b*色度図やu’v’色度図のような均等色空間の色度図が表示される図27や図28の評価用チャートデータによれば、各色相の彩度を確認することができる。
【0261】
さらに、図29の評価用チャートデータによれば、中央部分の、スペクトラルローカスの範囲内の色によって、スペクトラルローカス内における色の表示を目視で確認することができ、周辺部分の、スペクトラルローカス上の複数の点上の色の長方形によって、スペクトラルローカス上の色の色味を確認することができる。
【0262】
また、図30の評価用チャートデータによれば、赤色などの特定の色に関して詳細な評価、特に、例えば、右側の赤色の長方形の並びによって、明るさや色相のずれのチェックを行うことができる。
【0263】
さらに、図31の評価用チャートデータは、実在の色材から作成されるので、実在の色材(カラーチャート)と見比べたり測色したりすることにより色を比較することが可能である。
【0264】
また、例えば、Rや、G,Bの色信号が0よりも大きい場合には、その色信号の値に対応した明るさの赤や、緑、青の色が表示されるが、色信号が0以下の値である場合には、輝度が0である(ない)ので、本来、黒が表示される。但し、表示装置によっては、輝度信号がなくても、色差信号があると、黒の表示がされるのではなく、明るい表示がされることがある。図32の評価用チャートデータによれば、評価対象121が表示装置である場合に、その表示装置において、上述のような表示を含め、どのような表示が行われるのかを確認することができる。
【0265】
以上のように、評価用チャートデータを使用することにより、様々な信号の評価、再生、通過のチェック、画像表示の評価を行うことが可能になる。
【0266】
次に、上述した一連の処理は、ハードウェアにより行うこともできるし、ソフトウェアにより行うこともできる。一連の処理をソフトウェアによって行う場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、汎用のコンピュータ等にインストールされる。
【0267】
そこで、図34は、上述した一連の処理を実行するプログラムがインストールされるコンピュータの一実施の形態の構成例を示している。
【0268】
プログラムは、コンピュータに内蔵されている記録媒体としてのハードディスク205やROM203に予め記録しておくことができる。
【0269】
あるいはまた、プログラムは、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory),MO(Magneto Optical)ディスク,DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体211に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体211は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0270】
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体211からコンピュータにインストールする他、ダウンロードサイトから、ディジタル衛星放送用の人工衛星を介して、コンピュータに無線で転送したり、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介して、コンピュータに有線で転送し、コンピュータでは、そのようにして転送されてくるプログラムを、通信部208で受信し、内蔵するハードディスク205にインストールすることができる。
【0271】
コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)202を内蔵している。CPU202には、バス201を介して、入出力インタフェース210が接続されており、CPU202は、入出力インタフェース210を介して、ユーザによって、キーボードや、マウス、マイク等で構成される入力部207が操作等されることにより指令が入力されると、それにしたがって、ROM(Read Only Memory)203に格納されているプログラムを実行する。あるいは、また、CPU202は、ハードディスク205に格納されているプログラム、衛星若しくはネットワークから転送され、通信部208で受信されてハードディスク205にインストールされたプログラム、またはドライブ209に装着されたリムーバブル記録媒体211から読み出されてハードディスク205にインストールされたプログラムを、RAM(Random Access Memory)204にロードして実行する。これにより、CPU202は、上述したフローチャートにしたがった処理、あるいは上述したブロック図の構成により行われる処理を行う。そして、CPU202は、その処理結果を、必要に応じて、例えば、入出力インタフェース210を介して、LCD(Liquid Crystal Display)やスピーカ等で構成される出力部206から出力、あるいは、通信部208から送信、さらには、ハードディスク205に記録等させる。
【0272】
ここで、本明細書において、コンピュータに各種の処理を行わせるためのプログラムを記述する処理ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。
【0273】
また、プログラムは、1のコンピュータにより処理されるものであっても良いし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであっても良い。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであっても良い。
【0274】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】従来のAVシステムの一例の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のビデオカメラ1の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1のテレビジョン受像機2の構成例を示すブロック図である。
【図4】ITU-R BT.709 における原色と基準白色を示す図である。
【図5】各規格の信号の信号レベルと、その信号レベルを表現する整数値との関係を示す図である。
【図6】xvYCC規格で採用する光電変換特性を示す図である。
【図7】ITU-R BT.709がカバーする色空間と、マンセルカラーカスケードの768色およびsRGB規格の色空間との関係を表す図である。
【図8】xvYCC規格の輝度信号、色差信号による色空間、マンセルカラーカスケードの768色、BT.709規格の色信号による色空間、およびBT.709規格の輝度信号、色差信号による色空間の関係を表す図である。
【図9】図8のCb'方向への投影図である。
【図10】xvYCC規格に準拠したAVシステムの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図11】図10のビデオカメラ60の構成例を示すブロック図である。
【図12】図10のビテレビジョン受像機70の構成例を示すブロック図である。
【図13】図11のビデオカメラ60と図12のテレビジョン受像機70での処理における信号の流れを示す図である。
【図14】xvYCC規格の画像データを扱う装置等の評価対象を評価する評価システムの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図15】xvYCC規格の画像データを扱う装置等の評価対象を評価する評価システムの他の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図16】評価システムの評価用チャートデータ生成側の処理を説明するフローチャートである。
【図17】評価システムの評価側の処理を説明するフローチャートである。
【図18】チャートデータ生成部101の構成例を示すブロック図である。
【図19】xvYCC規格に準拠した8ビットのディジタル値の輝度信号Y'と色差信号Cb',Cr'に対応する画像の表示例を示す図である。
【図20】評価用チャートデータの第1の例によって表示される画像を示す図である。
【図21】評価用チャートデータの第1の例の波形を示す波形図である。
【図22】評価用チャートデータの第2の例によって表示される画像を示す図である。
【図23】評価用チャートデータの第2の例の波形を示す波形図である。
【図24】評価用チャートデータの第3の例によって表示される画像を示す図である。
【図25】評価用チャートデータの第3の例の波形を示す波形図である。
【図26】評価用チャートデータの第4の例によって表示される画像を示す図である。
【図27】評価用チャートデータの第5の例によって表示される画像を示す図である。
【図28】評価用チャートデータの第6の例によって表示される画像を示す図である。
【図29】評価用チャートデータの第7の例によって表示される画像を示す図である。
【図30】評価用チャートデータの第8の例によって表示される画像を示す図である。
【図31】評価用チャートデータの第9の例によって表示される画像を示す図である。
【図32】評価用チャートデータの第10の例によって表示される画像を示す図である。
【図33】QuickTime(R)形式に変換した評価用チャートデータの波形を示す波形図である。
【図34】コンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0276】
1 ビデオカメラ, 2 テレビジョン受像機, 11 記録媒体, 12 ネットワーク, 21 操作部, 22 撮影部, 23 A/D変換部, 24 原色変換部, 25 色信号補正部, 26 光電変換部, 27 色信号変換部, 28 エンコーダ, 29 制御部, 30 記録部, 31 通信部, 41 画像信号入力部, 42
輝度・色差信号変換部, 43 固有γ特性補正部, 44 D/A変換部, 45 表示機構, 60 ビデオカメラ, 61 撮影部, 62 原色変換部, 63 光電変換部, 64 色信号変換部, 64A 補正部, 70 テレビジョン受像機, 71 輝度・色差信号変換部, 72 逆光電変換部, 73 原色変換部, 74 色信号補正部, 75 固有γ特性補正部, 76 表示機構, 101 チャートデータ生成部, 102 リサイズ部, 103 レコーダ, 104 出力ユニット, 111 記録媒体, 121 評価対象, 122 評価部, 131 波形モニタ, 132 画像モニタ, 161 取得部, 162 原色変換部, 163 光電変換部, 164 色信号変換部, 164A 補正部, 201 バス, 202 CPU, 203 ROM, 204 RAM, 205 ハードディスク, 206 出力部, 207 入力部, 208 通信部, 209 ドライブ, 210 入出力インタフェース, 211 リムーバブル記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画を扱う評価対象の評価に使用される動画の画像データにおいて、
ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる
画像データ。
【請求項2】
所定の色空間の色度図上の所定の座標に対応する色を含み、ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、前記xvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる
請求項1に記載の画像データ。
【請求項3】
ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を含んだカラーチャートを基に生成された、前記xvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる
請求項1に記載の画像データ。
【請求項4】
ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の、彩度が高い色材を用いて作成された色票の色度を測定し、その色度を表現する、前記xvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる
請求項1に記載の画像データ。
【請求項5】
ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度の透過物体光または光源の色度を測定し、その色度を表現する、前記xvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる
請求項1に記載の画像データ。
【請求項6】
前記xvYCC規格に準拠した色差信号を、8ビット以上のnビットで表現する場合に、前記色差信号は、2n-8以上15×2n-8以下の範囲内の値と、241×2n-8以上255×2n-8-1以下の範囲内の値とのうちの一方または両方を少なくとも含む
請求項1に記載の画像データ。
【請求項7】
動画を扱う評価対象を評価する評価方法において、
ITU-R BT.601またはBT.709で規定された輝度信号と色差信号とで表現される色度の範囲を超えた色度を表現する、IEC 61966-2-4において規定されているxvYCC規格に準拠した輝度信号と色差信号とからなる評価用の画像データを、前記評価対象で処理し、
前記評価対象で前記評価用の画像データを処理した結果に基づき、前記評価対象を評価する
ステップを含む評価方法。
【請求項8】
前記評価対象で前記評価用の画像データを処理することにより得られるデータの波形に基づき、前記評価対象を評価する
請求項7に記載の評価方法。
【請求項9】
前記評価対象で前記評価用の画像データを処理することにより得られるデータに対応する画像に基づき、前記評価対象を評価する
請求項7に記載の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−235301(P2007−235301A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51701(P2006−51701)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】