説明

画像伝送装置

【課題】漏洩同軸ケーブルからの画像信号の漏洩を抑制して伝送することができる画像伝送装置を提供する。
【解決手段】漏洩同軸ケーブル2の漏洩信号の周波数帯域と比較して漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に画像信号を変換する周波数変換装置6と、漏洩同軸ケーブル2を介して受信された画像信号を元の周波数に変換する受信側の周波数変換装置9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、漏洩同軸ケーブルでセンサ信号を伝送する監視システムに使用される画像伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の遠隔監視システムでは、監視対象を撮影した映像信号や画像信号を、専用の伝送ケーブルを介して伝送していた。このため、システム設置の際、伝送ケーブルの敷設作業を行わなければならず、コスト的に不利となっていた。このような不具合を解決する従来の技術として、例えば特許文献1に開示される監視システムがある。このシステムでは、センサ信号を伝送するための既設のケーブル等の伝送媒体を介して映像信号や画像信号を伝送する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−25000号公報(第6頁、図2及び図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の監視システムに使用される画像伝送装置では、既設の信号ケーブルを介したセンサ信号の伝送を阻害しないように、センサ信号の伝送に使用されていない空き周波数帯の周波数に画像信号の伝送周波数を変換して伝送している。例えば、漏洩同軸ケーブルからセンサ信号の電波を漏洩させて監視対象を検知する電波検知式の監視システムに上記画像伝送装置を適用する場合、該監視システムでセンサ信号の伝送に使用する周波数帯域とは異なる周波数に画像信号の伝送周波数を変換して伝送することになる。
【0005】
しかしながら、上記電波検知式の監視システムでは、漏洩同軸ケーブルからセンサ信号の電波を漏洩させて監視対象を検知することから、伝送媒体として漏洩同軸ケーブルを用い、画像信号の伝送周波数を空き周波数帯域に変換しても、センサ信号と同様に画像信号も漏洩するという課題があった。
【0006】
また、このような画像信号の漏洩に伴う信号減衰のために、信号の受信側で画像信号の強度が落ち、画像の品質が著しく低下するか或いは全く画像を受信できない場合がある。さらに、漏洩した画像信号が第三者に傍受されると、個人情報の侵害や監視場所が特定される等のセキュリティ上の問題も発生する。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、漏洩同軸ケーブルからの画像信号の漏洩を抑制して画像信号を安定して伝送することができる画像伝送装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る画像伝送装置は、漏洩同軸ケーブルの漏洩信号の周波数帯域と比較して漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に画像信号を変換する送信側の周波数変換部と、漏洩同軸ケーブルを介して受信された画像信号を元の周波数に変換する受信側の周波数変換部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、漏洩同軸ケーブルの漏洩信号の周波数帯域と比較して漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に画像信号を変換してから漏洩同軸ケーブルを介して画像信号を伝送するので、画像信号の伝送に既設の漏洩同軸ケーブルを利用することができ、画像信号の伝送専用のケーブルを別途敷設する必要がなく、敷設作業に要するコスト削減を図ることができる。また、漏洩同軸ケーブルにおける画像信号の減衰と漏洩による情報漏れとの双方を抑制することができ、安定かつ安全な画像伝送が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。図1において、侵入者監視システムを構成する侵入者検知装置1が、送信側の漏洩同軸ケーブル2に侵入者検知信号11を送信し、漏洩同軸ケーブル2から漏洩した侵入者検知信号を受信側の漏洩同軸ケーブル4で受信して侵入者検知装置1に戻す。なお、漏洩同軸ケーブル2から漏洩しなかった余剰な信号は終端器3に吸収される。侵入者検知装置1では、漏洩同軸ケーブル2に送信した信号と漏洩同軸ケーブル4を介して受信した信号とを比較し、その比較結果に応じて漏洩同軸ケーブル2,4間に侵入者が存在するか否かを検知する。
【0011】
実施の形態1による画像伝送装置は、このような侵入者監視システムにおける既設の漏洩同軸ケーブルを利用して画像信号を伝送するものであり、例えば監視カメラ5によって撮影された監視領域の画像信号を漏洩同軸ケーブル2を介して伝送し、監視室の表示装置10に表示する。該画像伝送装置は、漏洩同軸ケーブル2を介して画像信号を送受信する画像送信側の構成と画像受信側の構成に分けられる。画像送信側の構成としては、監視カメラ5、周波数変換装置6及び信号混合装置7があり、画像受信側の構成には、信号分配装置8、周波数変換装置9及び表示装置10がある。
【0012】
監視カメラ5は、監視領域を撮影してその撮像画像の画像信号を周波数変換装置6に出力する。周波数変換装置(送信側の周波数変換部)6は、監視カメラ5から入力した画像信号の周波数を、侵入者検知信号11の伝送に用いられない空き周波数帯域であって、かつ侵入者検知信号11の伝送に用いられる周波数帯域の信号と比較して漏洩同軸ケーブルから漏洩しにくい特定の周波数に変換する。信号混合装置7は、侵入者検知装置1からの侵入者検知信号11と周波数変換装置6からの周波数変換後の画像信号12とを混合して漏洩同軸ケーブル2へ伝送する。
【0013】
信号分配装置8は、漏洩同軸ケーブル2を介して伝送された信号を受信して、該受信信号を侵入者検知信号11と周波数変換後の画像信号12とに分離する。周波数変換装置(受信側の周波数変換部)9は、信号分配装置8により分離された周波数変換後の画像信号12を受信し、該画像信号12を元の画像信号の周波数に再変換する。表示装置10は、周波数変換装置9による周波数変換後の画像信号を入力して表示画面に表示する。
【0014】
図2は、図1中の周波数変換装置の構成を示す図である。図2に示すように、周波数変換装置6は、基準信号発生装置6a、ミクサ6b及びフィルタ6cを備える。監視カメラ5により撮影された画像信号等の入力信号は、ミクサ6bによって基準信号発生装置6aで生成された基準信号と合成される。この合成された信号の周波数は、入力信号の周波数と基準信号の周波数の和の周波数を持つ信号及び差の周波数を持つ信号となる。
【0015】
フィルタ6cは、ミクサ6bにより合成された信号のうちの一方を通過させて出力信号として信号混合装置7へ出力する。このように、周波数変換装置6では、基準信号発生装置6aで発生する信号の周波数を適切に選択することにより、入力信号を所望の周波数の出力信号に変換できる。ここでは、侵入者検知信号11の伝送に用いられない空き周波数帯域であって、かつ漏洩同軸ケーブル2から漏洩しにくい特定の周波数に変換される。
【0016】
なお、画像受信側の周波数変換装置9も、図2に示した周波数変換装置6と同様の構成を有しており、フィルタ6cからの出力信号が表示装置10に出力される。このとき、周波数変換装置9のフィルタ6cで通過させる信号は、送信側の周波数変換装置6に合わせておく。
【0017】
次に動作について説明する。
監視カメラ5により撮影された画像の画像信号周波数は、漏洩同軸ケーブル2を介して画像受信側の構成に送信される際、周波数変換装置6によって、上述したような、侵入者検知信号11の伝送に用いない空き周波数帯域であって、かつ漏洩同軸ケーブルから漏洩しにくい特定の周波数に変換される。
【0018】
ここで、周波数変換装置6による周波数変換処理について説明する。
図3は、電磁波の周波数と漏洩同軸ケーブルからの漏洩率との関係を示すグラフであり、マイクロ波信号発生器と広帯域アンテナを有するスペクトラムアナライザを用いた実測により求めることができる。なお、図3中の横軸が周波数で縦軸が漏洩同軸ケーブルからの漏洩率を示している。図3中に実線で示す曲線は、周波数の変化に伴って信号が漏洩同軸ケーブルからどの程度漏洩するかを放射電界強度で示している。
【0019】
漏洩同軸ケーブルからの電磁波の漏洩率は、ケーブルの特性の一つとして製造段階で確定される要素である。例えば、ケーブルの構造や電磁波を漏洩させるためのシールド導体スリットの開口率などのパラメータにより決定され、これらのパラメータに応じて変化する。図3の関係を得た漏洩同軸ケーブルでは、漏洩率の小さい周波数帯域が2カ所(周波数帯域B,F)ある。なお、上述のパラメータが異なる別の漏洩同軸ケーブルでは、漏洩率が小さい周波数帯域が1カ所であったり、周波数帯域の場所や幅が異なったりする。
【0020】
侵入者検知装置1では、漏洩同軸ケーブル2から侵入者検知信号11を漏洩させて漏洩同軸ケーブル4で受信した信号と比較することから、図3の関係を得た漏洩同軸ケーブルを用いる場合、例えば漏洩率の高い周波数帯域Dを侵入者検知信号11の伝送周波数として使用する。
【0021】
従来では、漏洩同軸ケーブルに画像信号を周波数変換して伝送させるにあたり、周波数帯域による漏洩同軸ケーブルの漏洩率の変化は考慮されていなかった(例えば、特許文献1参照)。このため、画像信号を周波数変換する際、従来では、侵入者検知信号11の伝送に用いる周波数帯域Dと異なる周波数に画像信号の周波数を変換することしか考慮されず、画像信号の伝送周波数として周波数帯域Cや周波数帯域Eが採用される場合がある。
【0022】
その結果、画像信号が漏洩同軸ケーブルから漏洩するにつれて減衰し、最終的に表示装置10の表示画面に表示した画像が不鮮明になったり、漏洩した信号を第三者に傍受されて監視場所が特定されるなど、セキュリティリスクが増大する懸念があった。そこで、本発明では、電磁波の周波数に対する漏洩同軸ケーブルからの漏洩率の変化を考慮して、漏洩同軸ケーブルから漏洩しにくい周波数帯域を選択する。
【0023】
例えば、図3の関係を得た漏洩同軸ケーブルを用いる場合、侵入者検知信号11の伝送に用いる周波数帯域Dと異なる周波数帯域にあって、かつ周波数帯域Dよりも漏洩率が小さい周波数帯域B又は周波数帯域Fを選択する。また、周波数帯域A,C,E,G,H等は選択しない。
【0024】
ここで、画像伝送に用いる周波数帯域を漏洩同軸ケーブルからの漏洩率の低さから規定する場合、侵入者検知信号11等による漏洩通信に用いる波長帯の信号の漏洩率(一定出力の元での放射電界強度)に比して放射電界強度(漏洩率)が−10dB〜−30dBとなる波長帯を画像伝送に採用する。
【0025】
なお、放射電界強度が−30dBを下回る場合は、該漏洩率の波長帯の存在箇所が少ないか全く存在しない場合があり、放射電界強度が−10dBを上回る場合は、侵入者検知信号11の波長帯と異なっていてもスプリアス波による相互干渉の排除が困難になる。これらの関係は、本発明の発明者による研究解析の結果として見出されたものであり、画像信号を漏洩同軸ケーブルからほとんど漏洩させずに受信側の構成まで好適に伝送し得る。
【0026】
本発明では、侵入者検知装置1で利用されている既設の漏洩同軸ケーブルについて放射電界強度(漏洩率)を実測し、電磁波の周波数との関係を予め調査した上で周波数変換装置6が変換すべき周波数帯域として漏洩しにくい周波数帯域を設定しておく。
【0027】
上述のようにして周波数変換装置6により周波数変換された画像信号12は、信号混合装置7により侵入者検知信号11と混合されて漏洩同軸ケーブル2に送信される。漏洩同軸ケーブル2を介して伝送された混合信号は、受信側の信号分配装置8に入力され、該信号分配装置8によって侵入者検知信号11と周波数変換後の画像信号12に分離される。ここで、侵入者検知信号11は、終端器3に入力されて吸収されるが、画像信号12は周波数変換装置9に入力される。
【0028】
周波数変換装置9では、受信した画像信号12の周波数を再変換して元の画像信号の周波数に戻し表示装置10に出力する。表示装置10は、入力した画像信号を表示画面に表示する。
【0029】
以上のように、この実施の形態1によれば、漏洩同軸ケーブル2の漏洩信号の周波数帯域と比較して漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に画像信号を変換する周波数変換装置6と、漏洩同軸ケーブル2を介して受信された画像信号を元の周波数に変換する受信側の周波数変換装置9とを備えるので、侵入者検知信号11に悪影響を与えることなく、画像信号12を伝送でき、かつ漏洩同軸ケーブル2からほとんど漏洩せず、減衰しにくい状態で伝送できる。この結果、表示装置10の表示画面に鮮明な画像を表示することができ、なおかつ情報漏れのリスクを最小限にして伝送することができる。
【0030】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、1つの監視カメラからの画像信号を伝送する場合について説明したが、この実施の形態2は、複数の監視カメラからの画像信号を画像受信側に伝送する構成について説明する。
【0031】
図4は、この発明の実施の形態2による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。漏洩率の低い周波数帯域が複数存在する漏洩同軸ケーブルが既設されている場合、複数の漏洩率の低い周波数帯域のうちから選択した周波数帯域を監視カメラ5,13により撮影された画像の各画像信号の伝送に適用する。つまり、監視カメラ5,13からの各画像信号を漏洩率の低い周波数帯域毎に周波数変換して伝送する。これにより、複数の画像を同時に伝送することができる。
【0032】
例えば、上記実施の形態1で示した図3の特性を有する漏洩同軸ケーブルを使用する場合、監視カメラ5からの画像信号については、周波数変換装置6により周波数帯域Bの周波数に変換して画像信号12とする。また、監視カメラ13からの画像信号については、周波数変換装置14により周波数帯域Fの周波数に変換して画像信号15とする。これにより、図4に示すように画像信号12,15が漏洩同軸ケーブル2に同時に伝送される。なお、周波数変換装置14及び周波数変換装置16の構成は、上記実施の形態1の図2で示したものと同様である。
【0033】
周波数変換装置6,14によりそれぞれ周波数変換された画像信号12,15及び侵入者検知装置1からの侵入者検知信号11は信号混合装置7に入力されて混合され、漏洩同軸ケーブル2に伝送される。受信側の信号分配装置8では、漏洩同軸ケーブル2から受信した混合信号から画像信号12,15及び侵入者検知信号11を分離し、周波数帯域Bの画像信号12は周波数変換装置9に出力し、周波数帯域Fの画像信号15は周波数変換装置16に出力する。
【0034】
周波数変換装置9では、受信した画像信号12の周波数を再変換して元の画像信号の周波数に戻し表示装置10に出力する。表示装置10は、入力した画像信号を表示画面に表示する。また、周波数変換装置16では、受信した画像信号15の周波数を再変換して元の画像信号の周波数に戻し表示装置17に出力する。表示装置17では、入力した画像信号を表示画面に表示する。このようにして、表示装置10では監視カメラ5の映像を、表示装置17では監視カメラ13の映像を同時に受信して表示することができる。
【0035】
以上のように、この実施の形態2によれば、周波数変換装置6,14が、複数の画像信号を漏洩率が低い周波数帯域の異なる伝送周波数にそれぞれ変換し、受信側の周波数変換装置9,16が、漏洩同軸ケーブル2を介して受信された複数の画像信号を元の周波数の信号に変換するので、上記実施の形態1と同様な効果が得られる他、複数の画像を同時に一本の漏洩同軸ケーブルを使用して伝送でき、効率のよい広域な監視システムを構築することができる。なお、既設の漏洩同軸ケーブルに漏洩率の低い周波数帯域が一つしかない場合であっても、その帯域幅が十分大きい場合であれば、該帯域内で変換すべき周波数を選択することで同様に適用可能である。
【0036】
実施の形態3.
この実施の形態3は、漏洩率の低い周波数帯域が複数存在する漏洩同軸ケーブルを使用し、画像信号を伝送周波数に変換するにあたり、複数の漏洩率の低い周波数帯域に分散させるものである。これにより、画像伝送が可能な情報量を増やすことができる。
【0037】
図5は、この発明の実施の形態3による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。この実施の形態3による漏洩同軸ケーブル2は、例えば図3で示すような複数の漏洩率の低い周波数帯域が存在する特性を有する。周波数変換装置(送信側の周波数変換部)6Aは、監視カメラ5から入力した画像信号を分割した各信号の周波数を、侵入者検知信号11の伝送に用いられない空き周波数帯域であって、かつ漏洩同軸ケーブルの漏洩率の低い各周波数帯域の周波数にそれぞれ変換する。
【0038】
周波数変換装置(受信側の周波数変換部)9Aは、信号分配装置8により分離された周波数変換後の画像信号12,15を受信し、該画像信号12,15を元の分割信号の周波数にそれぞれ再変換して、これらを合成して元の画像信号を復元する。なお、図1と同一な構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図6は、図5中の周波数変換装置の構成を示す図である。図6に示すように、周波数変換装置6Aは、基準信号発生装置6a、ミクサ6b及びフィルタ6cを有するアナログ周波数変換装置6−1,6−2及び周波数分割装置18を備える。アナログ周波数変換装置6−1,6−2は、上記実施の形態1で示した周波数変換装置6と同様に、監視カメラ5により撮影された画像信号等の入力信号をミクサ6bによって基準信号発生装置6aで生成された基準信号と合成し、フィルタ6cによりミクサ6bにより合成された信号のうちの一方を通過させて出力信号として信号混合装置7へ出力する。
【0040】
周波数分割装置18は、A/D変換器18a、ダウンサンプラ18b−1,18b−2及びD/A変換器18c−1,18−2を備える。A/D変換器18aによって入力信号をデジタル信号に変換し、このデジタル信号をダウンサンプラ18b−1,18b−2がダウンサンプル処理する。ダウンサンプラ18b−1,18b−2の互いの位相をシフトさせることで、各出力信号は異なる内容の周波数帯域の小さい信号となる。ダウンサンプラ18b−1,18b−2の各出力信号は、D/A変換器18c−1,18−2によってそれぞれアナログ信号に戻され、アナログ周波数変換装置6−1,6−2に出力される。
【0041】
このように、周波数変換装置6Aでは、周波数分割装置18によって入力信号を2つの異なる内容のアナログ信号に分割し、これら信号の周波数をアナログ周波数変換装置6−1,6−2でそれぞれ所望の周波数帯域の周波数に変換する。ここでは、侵入者検知信号11の伝送に用いられない空き周波数帯域であって、かつ漏洩同軸ケーブル2から漏洩しにくい異なる2つの周波数の信号(出力信号1,2)にそれぞれ変換される。
【0042】
なお、画像受信側の周波数変換装置9Aは、周波数変換装置6Aとは逆の処理を行って元の画像信号を復元する。画像信号12,15(出力信号1,2)をアナログ周波数変換装置でそれぞれ受信して、分割後の元の周波数の画像信号に再変換する。続いて、再変換した画像信号をA/D変換器でそれぞれデジタル信号に変換し、アップサンプラで周波数帯域を復元してデジタル合成する。デジタル合成された画像信号は、元の信号と同じ帯域を持っているので、これをD/A変換器でアナログ信号に変換することで元のアナログ画像信号が復元される。
【0043】
次に動作について説明する。
監視カメラ5により撮影された画像の画像信号周波数は、漏洩同軸ケーブル2を介して画像受信側の構成に送信される際、周波数変換装置6Aによって、侵入者検知信号11の伝送に用いない空き周波数帯域であって、かつ漏洩同軸ケーブルから漏洩しにくい2つの特定の周波数の信号12,15に変換される。例えば、漏洩同軸ケーブル2が図3の関係を有するケーブルである場合、周波数変換装置6Aは、監視カメラ5からの画像信号を分割した一方の信号を周波数帯域Bの周波数に変換して画像信号12とし、他方の信号を周波数帯域Fの周波数に変換して画像信号15として出力する。
【0044】
周波数変換装置6Aにより周波数変換された画像信号12,15は、信号混合装置7により侵入者検知信号11と混合されて漏洩同軸ケーブル2に送信される。漏洩同軸ケーブル2を介して伝送された混合信号は、受信側の信号分配装置8に入力され、該信号分配装置8によって侵入者検知信号11と周波数変換後の画像信号12,15に分離される。
【0045】
ここで、侵入者検知信号11は終端器3に入力されて吸収されるが、画像信号12,15は周波数変換装置9Aに入力される。周波数変換装置9Aでは、受信した画像信号12,15の周波数を再変換して元の画像信号の周波数に戻し、これらを合成して表示装置10に出力する。表示装置10は、入力した画像信号を表示画面に表示する。
【0046】
以上のように、この実施の形態3によれば、周波数変換装置6Aが、画像信号を分割した複数の信号を漏洩率が低い周波数帯域の異なる伝送周波数にそれぞれ変換し、受信側の周波数変換装置9Aが、漏洩同軸ケーブル2を介して受信された分割信号を元の周波数の信号にそれぞれ変換し、これらの信号を合成して元の画像信号を復元するので、上記実施の形態1と同様の効果が得られる他、1つの画像信号の伝送に対して漏洩率の低い複数の周波数帯域の周波数が使用されることから、漏洩率の低い周波数帯域を単独で使用した場合と比較して多くの情報を伝送することができる。このため、情報量の多い高解像度の画像信号も伝送可能であることから、画質が鮮明になり、また高解像度での効果的な監視が可能である。
【0047】
実施の形態4.
この実施の形態4では、画像信号以外の信号を受信側に伝送するため、画像信号を含む伝送信号をデジタル信号に変換して伝送するようにしたものである。
図7は、この発明の実施の形態4による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。なお、図1と同一な構成要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。図7において、侵入者検知装置1は、上記実施の形態1と同様に侵入者検知信号11を漏洩同軸ケーブル2側に送信すると共に、検知した侵入者の情報等をデジタル信号であるイーサネット(登録商標)信号25に変換して無線LANブリッジ装置21に出力する。
【0048】
デジタルエンコーダ19は、監視カメラ5からの画像信号をデジタル信号であるイーサネット(登録商標)信号20に変換する。送信側の無線LANブリッジ装置(送信側の無線処理部)21は、入力信号20,25を無線LAN電波信号に変換する。受信側の無線LANブリッジ装置(受信側の無線処理部)22は、周波数変換装置9により元の周波数に再変換された無線LAN信号をイーサネット(登録商標)信号23,26に変換する。受信側のデジタルデコーダ24は、イーサネット(登録商標)信号23をアナログ信号の画像信号に変換する。情報分析装置27は、イーサネット(登録商標)信号26を入力して侵入者検知装置1による侵入者の情報を分析する。
【0049】
次に動作について説明する。
監視カメラ5により撮影された画像の画像信号は、先ずデジタルエンコーダ19に入力される。デジタルエンコーダ19では、入力した画像信号をデジタル信号であるイーサネット(登録商標)信号20に変換して無線LANブリッジ装置21に出力する。一方、侵入者検知装置1では、上記実施の形態1で説明した検知動作に加え、該検知動作によって検知された侵入者の情報(例えば、検知時刻などの分析対象となり得る情報)をイーサネット(登録商標)信号25として無線LANブリッジ装置21に出力する。
【0050】
デジタル信号であるイーサネット(登録商標)信号は複数の情報を同時に伝送できるので、無線LANブリッジ装置21は、入力したイーサネット(登録商標)信号20,25を同時に無線LAN電波信号に変換して周波数変換装置6に出力する。周波数変換装置6では、入力した無線LAN電波信号を、上記実施の形態1と同様に漏洩同軸ケーブル2からの漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に変換して信号混合装置7に出力する。信号混合装置7は、侵入者検知装置1からの侵入者検知信号11と周波数変換装置6からの周波数変換後の無線LAN電波信号とを混合して漏洩同軸ケーブル2へ伝送する。
【0051】
なお、無線LAN電波信号は、2〜5GHzの周波数をもっているので、周波数変換装置6内の基準信号発生装置も、これに近い周波数の基準信号を発生する。また、上記実施の形態1による周波数変換装置6では、画像信号(ビデオ信号)をそのまま周波数変換するため、変換時に信号の周波数が揺らいだり、ずれたりすると、そのまま画像信号の品質劣化として現れる。このため、上記実施の形態1による周波数変換装置6を構成する基準信号発生装置やミクサは、処理精度が良い高品質なものを選択する必要がある。
【0052】
これに対して、この実施の形態4による周波数変換装置6は、画像信号をそのまま周波数変換することなく、無線LAN電波信号を周波数変換する。また、一般的な無線LANブリッジ装置は、周波数のずれや揺らぎに対する補正機能が付加されており、さらに雑音により劣化した信号を回復する機能も有している。これにより、無線LANブリッジ装置で信号の補正や回復を実行すればよいことから、周波数変換装置を高品質なものにする必要はない。従って、この実施の形態4による画像伝送装置を安価に作成することが可能である。
【0053】
また、無線LANブリッジ装置21が、周波数変換装置6に出力する無線LAN電波信号を暗号化するようにしてもよい。このようにすることで、漏洩同軸ケーブル2から極わずかに漏洩した信号を万が一第三者に傍受されたとしても、情報漏洩につながるおそれはほとんどない。
【0054】
信号分配装置8は、漏洩同軸ケーブル2を介して伝送された信号を受信すると、該受信信号を侵入者検知信号11と周波数変換後の無線LAN電波信号とに分離する。ここで、侵入者検知信号11は、終端器3によって吸収される。周波数変換装置9では、信号分配装置8により分離された無線LAN電波信号を受信し、該無線LAN電波信号を元の無線LAN電波信号の周波数に再変換して無線LANブリッジ装置22に出力する。
【0055】
無線LANブリッジ装置22では、周波数変換装置9により元の周波数に再変換された無線LAN電波信号を、画像情報を含むイーサネット(登録商標)信号23と侵入者検知情報を含むイーサネット(登録商標)信号26に分離して、イーサネット(登録商標)信号23をデジタルデコーダ24に出力し、イーサネット(登録商標)信号26を情報分析装置27に出力する。デジタルデコーダ24は、入力したイーサネット(登録商標)信号23を元の画像信号に変換して表示装置10に出力する。表示装置10では、デジタルデコーダ24から入力した画像信号を表示画面に表示する。また、情報分析装置27は、入力したイーサネット(登録商標)信号26を用いて、侵入者の検知情報を分析する。
【0056】
以上のように、この実施の形態4によれば、双方向通信が可能なデジタル通信信号であるイーサネット(登録商標)信号20に画像信号を変換するデジタルエンコーダ19と、イーサネット(登録商標)信号20を双方向通信が可能な無線電波信号である無線LAN電波信号に変換する送信側の無線LANブリッジ装置21と、漏洩同軸ケーブル2を介して受信された無線LAN電波信号からイーサネット(登録商標)信号24を復元する受信側の無線LANブリッジ装置22と、受信側の無線LANブリッジ装置22により復元されたイーサネット(登録商標)信号24から画像信号を復元するデジタルデコーダ24とを備え、送信側の周波数変換装置6が、送信側の無線LANブリッジ装置21からの無線LAN電波信号を漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に変換し、受信側の周波数変換装置9が、漏洩同軸ケーブル2を介して受信された無線LAN電波信号を元の周波数の無線電波信号に変換するので、上記実施の形態1と同様な効果が得られる他、画像信号のみならず、侵入者検知情報等も、侵入者検知用の漏洩同軸ケーブルを用いて伝送できることから、画像伝送専用のケーブルのみならず、侵入者検知情報の伝送用のケーブルも敷設の必要がない。
【0057】
また、この実施の形態4によれば、デジタル情報として汎用性の高いイーサネット(登録商標)信号を使用するので、様々な機器からのデジタル情報を難なく伝送できる。しかも、イーサネット(登録商標)や無線LAN電波信号は双方向の通信が可能であるので、情報を逆向きに伝送し双方向の通信を行うことも可能である。
【0058】
さらに、デジタルエンコーダ19やデジタルデコーダ24、無線LANブリッジ装置21,22は市販品を用いても良く、画像伝送装置を安価に抑えることができる。なお、これらの機器が技術革新により高性能化すれば、その成果を容易に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施の形態1による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1中の周波数変換装置の構成を示す図である。
【図3】電磁波の周波数と漏洩同軸ケーブルからの漏洩率との関係を示すグラフである。
【図4】この発明の実施の形態2による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図6】図5中の周波数変換装置の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態4による画像伝送装置を含む侵入者監視システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
1 侵入者検知装置、2,4 漏洩同軸ケーブル、3 終端器、5,13 監視カメラ、6,6A,9,9A,14,16 周波数変換装置(周波数変換部)、6a 基準信号発生装置、6b ミクサ、6c フィルタ、6−1,6−2 アナログ周波数変換装置、7 信号混合装置、8 信号分配装置、10,17 表示装置、11 侵入者検知信号、12,15 画像信号、18 周波数分割装置、18a A/D変換器、18b−1,18b−2 ダウンサンプラ、18c−1,18−2 D/A変換器、19 デジタルエンコーダ、20,23,25,26 イーサネット(登録商標)信号、21,22 無線LANブリッジ装置(無線処理部)、24 デジタルデコーダ、27 情報分析装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏洩同軸ケーブルを介して画像信号を伝送する画像伝送装置において、
前記漏洩同軸ケーブルの漏洩信号の周波数帯域と比較して漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に画像信号を変換する送信側の周波数変換部と、
前記漏洩同軸ケーブルを介して受信された画像信号を元の周波数に変換する受信側の周波数変換部とを備えたことを特徴とする画像伝送装置。
【請求項2】
送信側の周波数変換部は、漏洩信号の放射電界強度と比較して放射電界強度が−10dBから−30dBまでの範囲となる伝送周波数に画像信号を変換することを特徴とする請求項1記載の画像伝送装置。
【請求項3】
送信側の周波数変換部は、複数の画像信号を漏洩率が低い周波数帯域の異なる伝送周波数にそれぞれ変換し、
受信側の周波数変換部は、漏洩同軸ケーブルを介して受信された複数の画像信号を元の周波数の信号に変換することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像伝送装置。
【請求項4】
送信側の周波数変換部は、画像信号を分割した複数の信号を漏洩率が低い周波数帯域の異なる伝送周波数にそれぞれ変換し、
受信側の周波数変換部は、漏洩同軸ケーブルを介して受信された前記分割した信号を元の周波数の信号にそれぞれ変換し、これらの信号を合成して元の画像信号を復元することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像伝送装置。
【請求項5】
双方向通信が可能なデジタル通信信号に画像信号を変換するデジタルエンコーダと、
前記デジタル通信信号を双方向通信が可能な無線電波信号に変換する送信側の無線処理部と、
漏洩同軸ケーブルを介して受信された前記無線電波信号から前記デジタル通信信号を復元する受信側の無線処理部と、
前記受信側の無線処理部により復元されたデジタル通信信号から前記画像信号を復元するデジタルデコーダとを備え、
送信側の周波数変換部は、前記送信側の無線処理部からの無線電波信号を漏洩率が低い周波数帯域の伝送周波数に変換し、
受信側の周波数変換部は、前記漏洩同軸ケーブルを介して受信された前記無線電波信号を元の周波数の無線電波信号に変換することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−193492(P2008−193492A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26913(P2007−26913)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】