説明

画像信号出力装置及び画像信号出力方法

【課題】画像信号の色空間情報の切り換わりにおいて、表示上の色の変化を防ぐことができる画像信号出力装置及び画像信号出力方法を提供する。
【解決手段】 画像信号の出力を制御するビデオ・グラフィック・プロセッサ12と、
画像信号の第1の色空間規格と第2の色空間規格とが切り換わる切換時刻を検出するし、画像信号が一方の色空間規格から他方の色空間規格に切り換わる度に、上記画像信号の色空間情報を変更するホストCPU13と、所定のデジタル映像信号伝送規格にて上記画像信号と上記色空間情報とを伝送するHDMI Tx14とを備え、ホストCPU13は、色空間規格の切換時刻が色空間情報の変更時刻よりも後になるようにビデオ・グラフィック・プロセッサ12から画像信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色空間情報が異なる複数の画像データを処理する画像信号出力装置及び画像信号出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディスプレイやHDTV(High Definition TeleVision)の放送では、sRGB(IEC(International Electrotechnical Commission)61966−2−1)やITU−R(International Telecommunication Union-Radiocommunication Sector) BT.709で規格化された色空間が広く使われているが、近年、広色域パネルの出現により、受像機側でsRGBを超える広色域の色表現が可能となっている。
【0003】
このような受像機には、パネルの広色域を活かすために、sRGBの色空間の映像コンテンツに対して信号処理によって色域を伸長する技術(以下、「色域伸長処理」と呼ぶ。)が採用されており、受像機は、sRGB色空間でクリップされてしまうような彩度の高い色を色域伸長処理することで、より鮮やかな色を再現することができる。また、ユーザは、受像機の画質モードを選択することにより、色域伸長処理をオン/オフすることが可能となっている。
【0004】
また、受像機は、例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)を使って、映像信号とともに色空間情報を、ソース機器から受信することも可能となっており、色空間情報に従って、BT.709の場合は、色域伸長処理をオン状態にし、他の広色域の色空間情報の場合は、色域伸長処理をオフ状態にする、といった制御を自動的に行うことができる。
【0005】
一方、撮像素子やカメラ信号処理も広色域化しており、カメラで撮影したRGBを超える色域の広色域信号を、ディスクやテープへ記録し、再生することも可能となっている。また、ディスクやテープに記録された広色域信号を、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394などのデジタルインターフェースを介して光ディスクレコーダにダビングしたり、広色域信号が記録された該ディスクを光ディスクレコーダやプレーヤで再生したりすることも可能となっている。また、カメラやレコーダは、HDMIを使って、これらの広色域信号や色空間情報などを受像機に伝送することもできる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−180477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、受像機で色域伸長処理をオン/オフすると、表示される画像の色味、色の濃さなどが変化する。例えば、ソース機器は、色空間属性の異なる映像信号(例えば、BT.709及びxvYCC709)を連続して伝送する場合、伝送する映像信号の色空間属性の変化にあわせて伝送する色空間情報を切り換えるため、受像機が該色空間情報の変化を検出して色域伸長処理を切り換えても、受像機での色空間情報の変化の検出や色域伸長処理の切り換わりに時間を要する場合には、実際の映像信号の色空間属性の切り換わり時刻と、映像信号に施される色域伸張処理の切り換わり時刻とがずれ、その間、適切な色域伸長処理が施されない映像が表示されることがあった。また、映像信号の切り換わり時刻にずれて色域伸張処理のオン/オフが切り換わるので、映像の色味の変化などが発生して見た目を損なうことがあった。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、画像信号の色空間情報の切り換わりにおいて、表示上の色の変化を防ぐことができる画像信号出力装置及び画像信号出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る画像信号出力装置は、第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを出力する画像信号出力装置であって、上記画像信号の第1の色空間規格と第2の色空間規格とが切り換わる切換時刻を検出する検出手段と、上記画像信号が一方の色空間規格から他方の色空間規格への切り換えに応じて、上記画像信号の色空間情報を変更する制御手段と、所定のデジタル映像信号伝送規格にて上記画像信号と上記色空間情報とを伝送する伝送手段とを備え、上記制御手段は、上記色空間規格の切換時刻よりも前に上記色空間情報を変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る画像信号出力方法は、第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを出力する画像信号出力方法であって、上記画像信号の第1の色空間規格と第2の色空間規格とが切り換わる切換時刻を検出する検出工程と、上記画像信号が一方の色空間規格から他方の色空間規格への切り換えに応じて、上記画像信号の色空間情報を変更する変更工程と、所定のデジタル映像信号伝送規格にて上記画像信号と上記色空間情報とを伝送する伝送工程とを備え、上記変更工程では、上記色空間規格の切換時刻よりも前に上記色空間情報を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受像機側で画像信号の色空間属性の切り換わり時刻と、画像信号に施される色域伸張処理の切り換わり時刻とが一致するように、色空間規格の切換時刻が色空間情報の変更時刻よりも後になるように制御されているため、受像機側で色が表示上変化するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る再生システムを示す図である。この再生システムは、記録再生装置1と、受像機2とが、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブル3を介して接続されており、受像機2は、第1の色空間規格の画像データを、第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像データに擬似的に色域を伸張して表示することが可能となっている。第1の色空間規格の例としては、sRGB(IEC61966−2−1)、ITU−R BT.709等が挙げられる。また、第2の色空間規格の例としては、xvYCC等が挙げられる。
【0014】
xvYCCは、国際電気標準会議(IEC)が国際標準(IEC 61966−2−4)として発行した規格であり、HDTV(High Definition TeleVision)で利用するITU−R BT.709の色域(sRGBと同等)との互換性を確保しながら、色空間を広げたものである。そして、このxvYCCによれば、現行の動画コンテンツの色空間規格「ITU−R BT.709」(静止画ではsRGBに相当)では表現できない色を表現することができる。
【0015】
図2は、xvYCCの色域を平面に投射した場合の模式図である。この図2において、色域aはsRGBの色域であり、色域bはxvYCCで拡張された色域である。図2に示すようにsRGBでは、R,G,Bそれぞれを0〜1で表現する色のみを利用してきたのに対し、xvYCCでは負の値や1を超える色も定義されている。したがって、例えば、受像機2がsRGBの色域aの映像コンテンツを色域bにまで伸長する処理(以下、「色域伸長処理」と呼ぶ。)を行って、物体の素材感・立体感を忠実に再現すれば、ユーザは広色域のカラー画像を楽しむことができる。
【0016】
HDMIケーブル3の規格であるHDMIは、IEEE1394の上位互換とされており、物理層にはTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)、信号の暗号化にはHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)、機器間認証にはEDID(Extended Display Identification Data)、系全体の制御系接続にはCEC(Consumer Electronics Control)が採用されている。また、HDMIバージョン1.3には、メタデータとxvYCC色空間の定義が追加されている。したがって、例えば、受像機2が記録再生装置1から受信したメタデータと自身の色域情報とに基づいて画像データを色域伸張処理すれば、より具体的には画像データに対し機器間の色空間の変換処理(Gamut Mapping Algorithm)をすれば、正しい色を再現することができる。
【0017】
図1に戻って、再生システムの構成について説明する。記録再生装置1は、MPEG(Moving Picture Expert Group)デコーダ11と、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12と、ホストCPU(Central Processing Unit)13と、HDMI Tx(トランスミッタ)14と、HDMIコネクタ15とを備えている。
【0018】
MPEGデコーダ11は、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MPEG4−AVC/H.264などのビデオストリームをデコードし、ベースバンド信号を生成する。
【0019】
ビデオ・グラフィック・プロセッサ12は、MPEGデコーダ11にて生成されたベースバンド信号を所望の画枠サイズへ変換処理したり、複数のベースバンド信号を合成処理したりする。
【0020】
ホストCPU13は、MPEGデコーダ11及びビデオ・グラフィック・プロセッサ12を制御する。例えば、MPEGデコーダ11に所望のビデオストリームのデコードを指示し、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12にデコードされたベースバンド信号を用いた合成画像の生成を指示する。また、合成画像の色空間情報を決定し、その色空間情報をHDMI Tx14に送る。また、ホストCPU13は、HDMIケーブル3のDDC(Display Data Channel)ラインにより受像機2と通信を行う。
【0021】
HDMI Tx14は、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12にて信号処理された映像音声信号とともに、ホストCPU13から送られた色空間情報を示す色域識別フラグ、メタデータなどの属性データをTMDS信号に変換し、HDMIコネクタ15に出力する。この属性データは、HDMI規格で定義されているAVI(Auxiliary Video Information)InfoFrameを使って伝送することができる。なお、色空間情報の変更はフィールド単位で行うことができる。
【0022】
HDMIコネクタ15は、HDMIケーブル3と接続され、HDMI Tx14にて変換されたTMDS信号を受像機2に伝送する。
【0023】
次に、受像機2の構成について説明する。受像機2は、HDMIコネクタ21と、HDMI Rx(レシーバ)22と、ホストCPU23と、EDIDROM(Extended Display Identification Data Read Only Memory)24と、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25と、ディスプレイデバイス26とを備えている。
【0024】
HDMIコネクタ21は、HDMIケーブル3と接続され、TMDS信号を受信する。
【0025】
HDMI Rx22は、TMDS信号から映像音声信号と属性データとを取得し、映像信号をビデオ・グラフィック・プロセッサ25に送る。
【0026】
ホストCPU23は、属性データに基づいてビデオ・グラフィック・プロセッサ25の色域伸長処理のオン/オフを制御する。具体的には、例えば、属性データの色空間情報がITU−R BT.709の場合、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25の色域伸長処理をオン状態にし、属性データの色空間情報がxvYCCの場合、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25の色域伸長処理をオフ状態にする。
【0027】
EDIDROM24には、受像機2のディスプレイ情報が記憶されており、例えば、受像機2の対応解像度情報、色域の種別を示す色空間情報が書き込まれている。EDIDROM24に記憶されたディスプレイ情報は、HDMIケーブル3のDDC(Display Data Channel)ラインを介して記録再生装置1に提供される。
【0028】
図3は、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25の構成を示すブロック図である。ビデオ・グラフィック・プロセッサ25は、メモリ251と、スケーラ252と、カラーエキスパンダ253と、ビデオエンコーダ254とを備えている。HDMI Rx22から入力された映像信号は、メモリ251のビデオ・プレーンに書き込まれる。メモリ251に書き込まれた映像信号は、各プレーンから読み出され、スケーラ252で所望のサイズへのスケーリングが施される。また、ホストCPU23からの命令に応じてカラーエキスパンダ253で色域拡張処理が施される。ビデオエンコーダ254は、所望の出力仕様になるようにタイミング生成、同期信号の付加などを行う。
【0029】
ディスプレイデバイス26は、広色域パネルを有し、ビデオ・グラフィック・プロセッサ25にて信号処理された画面を表示する。
【0030】
このように、受像機2は、映像音声信号とともに受信した属性データに応じて色域伸張処理をオン/オフすることにより、画面内の物体を広色域の色空間で忠実に再現することができる。
【0031】
図4は、記録再生装置1の構成を具体的に示すブロック図である。記録再生装置1は、ライン入力端子41と、アナログチューナ42と、ディスクドライブ43と、ハードディスクドライブ44と、IEEE1394端子45と、デジタルチューナ46と、ライン入力端子41又はアナログチューナ42からの入力信号のいずれか1つを選択するセレクタ47と、セレクタ47からの映像音声信号をデコードするビデオデコーダ48と、ビデオデコーダ48にてデコードされたベースバンド信号又はビデオ・グラフィック・プロセッサ54にて画像合成等の信号処理が施されたベースバンド信号のいずれか1つを選択するセレクタ49と、セレクタ49からのベースバンド信号をエンコードするMPEGエンコーダ50と、HDV(High-Definition Video)プロセッサ51と、ストリームプロセッサ52と、MPEGデコーダ53a,53bと、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54と、HDMI Tx55と、DAC56と、HDMIコネクタ57と、コンポーネント端子58と、コンポジット端子59と、ホストCPU60とを備えている。
【0032】
ここで、MPEGデコーダ53a,53b、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54、HDMI Tx55、HDMIコネクタ57、ホストCPU60は、それぞれ図1に示すMPEGデコーダ11、ビデオ・グラフィック・プロセッサ12、HDMI Tx14、HDMIコネクタ15、ホストCPU13に対応するものである。
【0033】
続いて、記録再生装置1における記録動作について説明する。ライン入力端子41から入力される映像信号と、アナログチューナ42から出力される映像信号は、セレクタ47で所望の入力が選択された後、ビデオデコーダ48に入力される。ビデオデコーダ48は、例えば入力されたNTSC方式のアナログ映像信号をA/D変換した後、輝度信号とクロマ信号とに分離するとともにデコード処理を施す。デコードされたベースバンドビデオ信号は、セレクタ47、及びビデオ・グラフィック・プロセッサ54に入力される。セレクタ49で、ビデオデコーダ48からの出力と、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54からの出力とのいずれかを選択した後、選択されたベースバンド信号がMPEGエンコーダ50に入力される。MPEGエンコーダ50は、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MPEG4−AVC/H.264など所望のエンコードを行う。エンコードされたストリームは、ストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52から、BD(Blu-ray Disc、商標)、DVD(Digital Versatile Disc)などのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44などにストリームが送られ、所望のメディアに記録される。
【0034】
また、IEEE1394入力端子45から入力されたストリームは、HDVプロセッサ51を経てストリームプロセッサ52に入力され、デジタルチューナ46からのストリームもストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52に入力されたストリームは、BD、DVDなどのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44などの所望のメディアに記録される。
【0035】
また、ストリームプロセッサ52に入力されたストリームは、ストリームプロセッサ52で所望のビデオストリームの抜き出しやパーズなどの処理を施し、MPEGデコーダ53でデコードした後、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54、セレクタ49を経由してMPEGエンコーダ50に入力される。MPEGエンコーダ50は、MPEG1、MPEG2、MPEG4、MPEG4−AVC/H.264など所望のエンコードを行い、エンコードされたストリームは、ストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52から、BD、DVDなどのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44などにストリームが送られ、所望のメディアに記録される。
【0036】
次に、記録再生装置1における再生動作について説明する。BD、DVDなどのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44で再生されたストリームは、ストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52は、所望のビデオストリームの抜き出しやパーズを行った後、MPEGデコーダ53a、53bに送る。MPEGデコーダ53a、53bはストリームから画像データの色空間属性に関する情報をパーズする。また、MPEGデコーダ53a、53bは、画像データをデコードする。MPEGデコーダ53a、53bでデコードされたベースバンドビデオ信号は、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54に入力される。ビデオ・グラフィック・プロセッサ54では、所望の画枠サイズへの変換処理や種々のビデオ信号処理を施し、該映像信号にグラフィックス信号などを合成した後、HDMI Tx55に送られる。HDMI Tx55では、入力されたベースバンド信号をTMDS信号に変換して、制御信号とともにHDMIコネクタ57に出力する。また、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54の出力は、DAC56に入力され、D/A変換したアナログコンポーネント信号がコンポーネント端子58に出力されるとともに、D/A変換したアナログコンポジットビデオ信号(あるいは、Y/Cセパレートビデオ信号)もコンポジットビデオ端子(あるいは、S端子)59に出力される。
【0037】
次に、図1〜4を参照して記録再生装置1における伝送動作について説明する。ここで、BD、DVDなどのディスクドライブ43やハードディスクドライブ44で再生されたストリームには、広色域映像信号とともに、色域の種別を識別するための識別フラグ、及び色域の付随情報であるメタデータが含まれているものとする。
【0038】
再生された映像音声信号、及び識別フラグ等のメタデータを含んだストリームは、ストリームプロセッサ52に入力される。ストリームプロセッサ52は、ストリームのパーズを行い、識別フラグ及び、メタデータを抽出し、ホストCPU60は、ストリームの識別フラグ等のメタデータをストリームプロセッサ52から取得する。識別フラグ及びメタデータは、エレメンタリーストリームの付加情報として記録してあるので、ビデオ信号との同期は常に保たれる。広色域信号を含んだストリームは、前述の再生系の説明の通り、MPEGデコーダ53a、53bでデコードされた後、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54を経てHDMI Tx55に送られる。
【0039】
ビデオ・グラフィック・プロセッサ54は、伝送する映像信号を一時的に記憶する記憶するバッファメモリを有し、映像信号の出力を所定期間遅延させることができる。
【0040】
また、ホストCPU60は、HDMIコネクタ57に接続されたHDMIケーブル3のDDC(Display Data Channel)ラインにより受像機2と通信を行い、受像機2に内蔵するHDMI Rx(レシーバ)22、ホストCPU23を介して、EDID(Extended Display Identification Data) ROM24に書かれているディスプレイ情報を取得する。EDID ROM24には、受像機2の対応解像度情報などの他に、色域の種別を示す色空間情報も書かれている。したがって、ホストCPU60は、ディスプレイ情報を取得することにより、接続している受像機2が広色域映像信号に対応しているか否かを判別することができる。そして、HDMIケーブル3によって接続された受像機2が広色域映像信号に対応している場合、ホストCPU60は、広色域映像信号を伝送する際、映像信号の属性としてディスクから取得した色域識別フラグ、及びメタデータをHDMI Tx55にセットすることができる。
【0041】
また、ホストCPU60は、後述するように、映像信号において、例えば、BT.709等の第1の色空間規格と、それよりも広い色域を持つxvYCC等の第2の色空間規格とが切り換わる切換時刻を検出する。また、映像信号が一方の色空間規格から他方の色空間規格に切り換わる度に、HDMI Tx55にセットする映像信号の色空間情報を変更する。また、色空間情報の変更時刻から色空間規格の切換時刻までの期間を制御して、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54のバッファメモリに記憶された映像信号を出力する。これにより、色空間規格の切換時刻が色空間情報の変更時刻よりも遅くなるようにバッファメモリから映像信号を出力することができる。
【0042】
HDMI Tx55は、映像音声信号とともに色域識別フラグ、メタデータなどの属性データをTMDS信号に変換し、HDMIコネクタ57から出力する。色域の種別を示す識別フラグ、メタデータは、HDMI規格で定義されているAVI(Axiliary Video Information) InfoFrameを使って伝送することができる。例えば、色域識別フラグは、AVI InfoFrameパケット内のColorimetryやExtended Colorimetryで定義される。また、オーディオ信号の属性データは、Audio InfoFrameを用いることができる。
【0043】
図5は、ビデオ・グラフィック・プロセッサ54の機能ブロック図である。ビデオ・グラフィック・プロセッサ54は、メモリ541と、合成処理部542a〜542dと、グラフィックエンジン543と、JPEGエンジン544とを備えている。ここで、合成処理部542a〜542dは、出力毎に用意されており、それぞれスケーラ545と、ブレンダ546と、ビデオエンコーダ547とを備えている。
【0044】
ビデオデコーダ48の出力、及びMPEGデコーダ53a、53bの出力は、メモリ541のビデオ・プレーンに書き込まれる。ここで、映像信号を遅延させるために、複数のビデオ・プレーンによるリングバッファを構成することが好ましい。また、グラフィックエンジン543は、メモリ541のグラフィックス・プレーンにグラフィックス・データを書き込む。JPEGエンジン544は、JPEGファイルをデコードして、メモリ541のビデオ・プレーンにJPEGデータを書き込む。メモリ541に書き込まれた画像データは、各プレーンから読み出され、スケーラ545で所望のサイズへのスケーリングなどが行われ、ブレンダ546に送られる。ブレンダ546は、各プレーンから読み出された画像の合成を行う。ビデオエンコーダ547は、所望の出力仕様になるようにタイミング生成、同期信号の付加などを行う。
【0045】
ところで、このような再生システムにおいて、受像機2が該色空間情報の変化を検出して色域伸長処理を切り換えても、受像機での色空間情報の変化の検出や色域伸長処理の切り換わりに時間を要する場合には、実際の映像信号の色空間属性の切り換わり時刻と、映像信号に施される色域伸張処理の切り換わり時刻とがずれ、その間、適切な色域伸長処理が施されない映像が表示されることがある。以下、具体例を挙げて詳細に説明する。なお、具体的な色空間規格として、BT.709を挙げ、それよりも広い色域の色空間規格としてxvYCC(xvYCC709)を挙げて説明する。
【0046】
図6及び図7は、それぞれ従来の伝送動作を示すフローチャート及び模式図である。ステップS11において、ホストCPU60は、MPEGデコーダ53から出力された映像信号の色空間規格の切り換わりを検出する。ステップS12において、ホストCPU60は、検出された切り換わりに応じて色空間情報を映像信号の色空間属性に変更する。具体的には、切り換わる色空間規格の色域識別フラグをHDMI Tx55にセットする。
【0047】
このように映像信号の色空間規格が切り換わる切換時刻と色空間情報が変更される変更時刻とを一致させて受像機2に伝送すると、受像機2において色域伸張処理の切り換え等の遅延により、映像信号の色空間規格の切り換わり時刻と、映像信号に施される色域伸張処理の切り換わり時刻とが一致しない。
【0048】
例えば、図7に示すように、時刻t0に伝送する映像信号の色空間属性がBT.709からxvYCCに切り換わり、それと同時に、伝送する色空間情報もBT.709からxvYCCに切り換わる場合、受像機2は、映像信号に施す色域伸張処理の切り換えを、映像信号の色空間属性の切り換わりと完全に一致させられない。時刻T0に受像機2が表示する映像信号の色空間属性がBT.709からxvYCCに切り換わり、時刻T0’に受像機が表示する映像信号に施す色域伸張処理がオンからオフに切り換わるとすると、時刻T0〜T0’の期間は、xvYCCの映像信号に対してさらに色域伸張処理が施されるという不適切な処理が発生する。また、時刻T0’において色域伸張処理がオンからオフに切り換わるとき、映像の色味の変化などが発生して見た目を損なう、という問題が発生する。
【0049】
そこで、本実施形態では、受像機2において、映像信号の色空間属性が切り換わる時刻T0と、色域伸張処理が切り換わる時刻T0’とが一致するように、記録再生装置1の出力を制御する。
【0050】
図8及び図9は、映像信号と色空間情報との出力タイミングを調整する際の設定画面例を示す図である。図8に示す設定画面aは、GUI(Graphical User Interface)の操作画面bと係数(α値)により合成されたものである。操作画面bには、映像信号及び色空間情報の出力同期設定の手動ボタンcと自動ボタンdとが表示される。
【0051】
図8に示す操作画面bにおける手動ボタンcが選択されると、例えば、図9に示すような設定画面eが表示される。GUIの操作画面fには、現在の設定値が0位置に表示され、カーソルgをプラス方向又はマイナス方向に移動させることにより、映像信号と色空間情報との出力を制御することができる。例えば、カーソルgをプラス方向に移動させることにより、色空間情報の変更時刻に対して映像信号の色空間規格の切換時刻が遅れて出力される。ここで、操作画面fの背景の設定画面eには、色空間規格が所定間隔で切り換わるテスト映像信号の映像が表示されることが好ましい。これにより、操作画面fを操作しながら、設定した値が適切かどうかを判断することができる。
【0052】
また、図8に示す操作画面bにおける自動ボタンdが選択されると、色空間情報の変更時刻から色空間規格の切換時刻までの期間が自動的に設定される。例えば、MPEGデコーダ53から色域識別フラグやメタデータを取得し、映像信号の色空間規格の切り換わり時刻を検出し、映像データの色空間規格の切り換わり時刻よりも前に色域識別フラグをHDMI Tx55にセットする。
【0053】
図10及び図11は、本実施の形態における伝送動作を示すフローチャート及び模式図である。ステップS21において、ホストCPU60は、MPEGデコーダ53から出力された映像信号の色空間規格の切り換わりを検出する。具体的には、MPEGデコーダ53から色域識別フラグやメタデータから映像信号の色空間規格が切り換わる切換時刻を検出する。
【0054】
ステップS22において、ホストCPU60は、色空間情報を変更する時刻を決定する。ここで、色空間情報の変更時間が映像信号の色空間規格が切り換わる切換時刻よりも前の時刻となるように決定される。具体的には、受像機2において映像信号の色空間規格の切り換わり時刻と、映像信号に施される色域伸張処理の切り換わり時刻とが一致するように、色空間情報の変更時刻から映像信号の切り換わり時刻までの期間を設定する。
【0055】
ステップS23において、ホストCPU60は、ステップS22において設定された変更時刻まで、色空間情報の変更を待機する。そして、ステップS24において、ホストCPU60は、ステップS22において設定された変更時刻に色空間情報を変更する。具体的には、変更時刻後に切り換わる映像信号の色空間規格の色域識別フラグをHDMI Tx55にセットする。
【0056】
このように記録再生装置1において色空間情報が変更される変更時刻から映像信号の色空間規格が切り換わる切換時刻までの期間を、受像機2において色域伸張処理の切り換え等の遅延による遅延期間に一致するように制御することにより、受像機2側において、映像信号の色空間規格の切り換わり時刻と、映像信号に施される色域伸張処理の切り換わり時刻とが一致する。
【0057】
例えば、図11に示すように、時刻t0’に伝送する色空間情報がBT.709からxvYCCに切り換わり、時刻t0に伝送する映像信号の色空間属性がBT.709からxvYCCに切り換わる場合では、受像機2は、映像信号に施す色域伸張処理の切り換えを、映像信号の色空間属性の切り換わりと完全に一致させることができる。
【0058】
つまり、記録再生装置1において、色空間情報が変更される時刻t0’から映像信号の色空間属性が切り換わる時刻t0までの期間を設定することにより、受像機2において、映像信号の色空間属性が切り換わる時刻T0と、色域伸張処理が切り換わる時刻T0’とを一致させることができる。したがって、時刻T0’において色域伸張処理がオンからオフに切り換わっても、映像の色味の変化などが発生しないため、見た目を損なうことがない。
【0059】
なお、上記実施の形態では、MPEGデコーダ53から取得した色域識別フラグやメタデータから映像信号の色空間規格が切り換わる切換時刻を検出することとしたが、例えば、記録再生装置1が、受像機の機種情報毎に色空間情報の変更時刻から色空間規格の切換時刻までの期間が記憶されたデータベースを有していれば、受像機2のEDIDROM24から機種情報等を取得し、データベースの情報と照会することにより、自動で設定することができる。また、データベースは記録再生装置1が備えなくてもよく、記録再生装置1が接続可能なインターネット等のネットワーク上にあればよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、HDMIを用いた伝送例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。色域識別フラグ、メタデータなどの属性データを伝送することはできないが、例えば、コンポーネント端子58、コンポジットビデオ端子(あるいは、S端子)59から、広色域のアナログコンポーネント信号、アナログコンポジットビデオ信号(あるいは、Y/Cセパレートビデオ信号)を出力し、ホストCPU60が、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)等により受像機2のホストCPU23と通信するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態に係る再生システムを示す図である。
【図2】xvYCCの色域を平面に投射した場合の模式図である。
【図3】ビデオ・グラフィック・プロセッサの構成を示すブロック図である。
【図4】記録再生装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【図5】ビデオ・グラフィック・プロセッサの機能ブロック図である。
【図6】従来の伝送動作を示すフローチャートである。
【図7】従来の伝送動作を示す模式図である。
【図8】映像信号と色空間情報との出力タイミングを調整する際の設定画面例を示す図である。
【図9】映像信号と色空間情報との出力タイミングを調整する際の設定画面例を示す図である。
【図10】本実施の形態における伝送動作を示すフローチャートである。
【図11】本実施の形態における伝送動作を示す模式図である。
【符号の説明】
【0062】
1 記録再生装置、 2 受像機、 3 HDMIケーブル、 11 MPEGデコーダ、 12 ビデオ・グラフィック・プロセッサ、 13 ホストCPU、 14 HDMI Tx、 15 HDMIコネクタ、 21 HDMIコネクタ、 22 HDMI Rx、 23 ホストCPU、 24 EDIDROM、 25 ビデオ・グラフィック・プロセッサ、 26 ディスプレイデバイス、 41 ライン入力端子、 42 アナログチューナ、 43 ディスクドライブ、 44 ハードディスクドライブ、 45 IEEE1394入力端子、 46 デジタルチューナ、 47 セレクタ、 48 ビデオデコーダ、 49 セレクタ、 50 MPEGエンコーダ、 51 HDVプロセッサ、 52 ストリームプロセッサ、 53 MPEGデコーダ、 54 ビデオ・グラフィック・プロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを出力する画像信号出力装置であって、
上記画像信号の第1の色空間規格と第2の色空間規格とが切り換わる切換時刻を検出する検出手段と、
上記画像信号が一方の色空間規格から他方の色空間規格への切り換えに応じて、上記画像信号の色空間情報を変更する制御手段と、
所定のデジタル映像信号伝送規格にて上記画像信号と上記色空間情報とを伝送する伝送手段とを備え、
上記制御手段は、上記色空間規格の切換時刻よりも前に上記色空間情報を変更することを特徴とする画像信号出力装置。
【請求項2】
上記色空間情報の変更時刻から上記色空間規格の切換時刻までの期間を設定する設定手段を備え、
上記制御手段は、上記設定された期間、上記色空間規格の切換時刻よりも前に上記色空間情報を変更することを特徴とする請求項1記載の画像信号出力装置。
【請求項3】
上記画像信号の伝送先から機種情報を取得する取得手段と、
上記機種情報毎に色空間情報の変更時刻から色空間規格の切換時刻までの期間が記憶された記憶手段とを備え、
上記制御手段は、上記取得手段で取得された機種情報と上記記憶手段とから上記期間を決定し、当該決定された期間、上記色空間規格の切換時刻よりも前に上記色空間情報を変更することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
第1の色空間規格の画像信号と当該第1の色空間規格で規定される色域よりも広い色域の第2の色空間規格の画像信号とを出力する画像信号出力方法であって、
上記画像信号の第1の色空間規格と第2の色空間規格とが切り換わる切換時刻を検出する検出工程と、
上記画像信号が一方の色空間規格から他方の色空間規格への切り換えに応じて、上記画像信号の色空間情報を変更する変更工程と、
所定のデジタル映像信号伝送規格にて上記画像信号と上記色空間情報とを伝送する伝送工程とを備え、
上記変更工程では、上記色空間規格の切換時刻よりも前に上記色空間情報を変更することを特徴とする画像信号出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−38684(P2009−38684A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202381(P2007−202381)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】