説明

画像再構成処理装置

【課題】 コーンビームにおけるファン−パラ変換法の適用を確立し、コーンビームを使用して撮影された画像の正確な再構成を実現する。
【解決手段】 画像再構成制御部21は、X線源と2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、X線源から2次元X線検出器へのビームがX線源及び2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを透過角度毎に収集して処理する。変則パラレルビーム逆投影処理部22は、上記のように収集処理された変則パラレルビームの検出データに基づいて対象物の断層画像を再構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線を複数個のX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、X線源と2次元X線検出器とを対象物の回りを回転させて得られた検出データに基づいて、対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のX線CT(computed tomography )装置では、図25に示すように、X線源101からX線ビームがファン状( 扇形状 )に放射されるファンビームを使用するものが知られている。
【0003】
このようなX線CT装置は、X線源101から放射されたX線ビームを被写体に照射し、この被写体を透過したX線( 透過X線強度 )を、複数個のX線検出素子を扇状に1列に約1000チャンネル配列したX線検出器102で検出してデータ収集を行い、X線源101及びX線検出器102を被写体の周囲を回転させながら、1回転する間に1000回程度データ収集し( 1回のデータ収集を1ビューと称する )、その収集されたデータに基づいて被写体のX線の透過画像( 断層画像 )を再構成する。なお、FOV103は、有効視野を示すものである。
【0004】
このファンビームを使用したときの画像再構成式は、( 式1 )により算出される。
【0005】
【数1】

【0006】
この( 式1 )から判るように、ファンビームの再構成では、X線検出器から得られたデータに、再構成すべきピクセルの位置に依存した重み付けを乗算して逆投影する必要があるので複雑な処理になる。
【0007】
すなわち、図26に示すように、有効視野FOV103に対して再構成すべき画像を構成するピクセルが設定されており、X線検出器102の各チャンネルで得られたデータを、重み付けとして焦点( X線源101のX線ビームの放射点 )−ピクセル間距離 FpixelD(X) の2乗の逆数を乗算して、該当するピクセルに逆投影する。なお、FpixelD は、Focus-Pixel-Distanceである。
【0008】
また、直接逆投影する方法もあるが、この場合には極座標変換が必要となり複雑な計算になる。
【0009】
そこで、ファンビームを使用したX線CT装置では、現在のところ2種類の画像再構成法が考案されている。
【0010】
1つの方法は、ファン−パラ変換法と呼ばれるものであり、これは、図27(a )及び図27( b )に示すように、ファンビームによるX線検出器から得られた投影データを並び替えかつ補間してパラレルビーム投影データを作成( 変換を含む )し、これにより得られたデータを、従来のパラレルビームを使用したX線CT装置で行われるように逆投影する方法である。
【0011】
データ変換の計算と補間処理などが必要になる反面、逆投影時には、ファンビームのときの再構成ピクセル毎に異なった重み付け処理などが不要で、1つのデータ( パラレルビーム投影データ )をビーム路( パラレルビームとなるときの放射点とX線検出器のチャンネルとを結ぶ直線 )の全てのピクセルに逆投影すれば良いので処理が単純になる。
【0012】
すなわち、ファンビームの処理は、図28( a )及び図29に示すように任意の座標系xyについて、投影データ[Rf]( ψ,φ )と定義する。この[Rf]( ψ,φ )は、被写体f( x,y )を( ψ,φ )方向に線積分したもの( 仮定)ということを示す。
【0013】
まず、この投影データ[Rf]( ψ,φ )に cosψを乗算する。
【0014】
次に、その結果とフィルタ[1/(sinψの2乗 )]とのコンボリューションを行う。
【0015】
次に、その結果を[d/( Rの2乗 )]で重み付けして、X線のパス通りに逆投影する。なお、Rは逆投影する位置によって変動する数値を持つ。
【0016】
以上によって得られた画像再構成式( 式2 )は、
【0017】
【数2】

【0018】
となる。
【0019】
パラレルビームの処理は、図28( b )に示すように、任意の座標系xyについて、投影データ[Rf]( s,θ )と定義する。この[Rf]( s,θ )は、被写体( x,y )を( s,θ )方向に線積分したもの( 仮定 )ということを示す。
【0020】
まず、この投影データ[Rf]( s,θ ) とフィルタ[1/( sの2乗 )]とのコンボリューションを180°あるいは360°にわたって繰り返して行う。次に、その結果をX線のパス通りに逆投影する。
【0021】
以上によって得られた画像再構成式は、
【0022】
【数3】

【0023】
となる。
【0024】
他の1つの方法は、センタリング軸を使用したファンビーム再構成法であり、その詳細は特許文献1に開示されている。
【0025】
さらに一方、図30に示すように、X線源201からX線ビームが円錐状に放射されるコーンビームと、ファンビーム用検出器列をZ軸方向にN列積み重ねたような、円筒面上に検出器の素子(Mチャンネル×N列)を配列した2次元X線検出器202とを使用して、X線透視画像を撮影するX線CT装置が考案されている。
【0026】
このようなコーンビームを使用したX線CT装置における代表的なコーンビーム再構成(Feldkamp再構成)は、非特許文献1に開示されている。
【0027】
これは、数学的に厳密な再構成法であるファンビーム(2次元平面内) 再構成アルゴリズム[ Filtered-Backprojection(フィルタ補正逆投影法) ] を、Z軸方向に拡張することによって得られた近似的な3次元再構成アルゴリズムである。
【0028】
このコーンビーム再構成法では、コーンビームによるコンベンショナルスキャンを対象としており,以下のステップからなる。なお、このコーンビームでは、2次元的な画素としてのピクセルの代わりに、図3131に示すように、3次元的な画素としてのボクセルが使用される。
【0029】
1.投影データの重み付け投影データに、Z座標に依存した項とcos 項を乗算する。
【0030】
2.コンボリューション演算1の処理により得たデータと、ファンビームと同じ再構成関数とのコンボリューション演算を行う。
【0031】
3.BackProjection(逆投影)
2の処理により得たデータを、X線が通過した( 焦点から検出器のチャンネルまでの) パス上に逆投影する。すなわち、焦点から逆投影するボクセルを通る直線が検出器面と交差する点を計算し、その点の周囲の2の処理のデータから逆投影するデータを補間などで作成し、それをFvoxelD(X)の2乗の逆数で重み付けして逆投影する。この逆投影は360°( 1回転 )にわたって行なう。
【0032】
ファンビーム再構成式と類似な式で表現すると、下記となる。なお、 FvoxelD(X)=Focus-Voxel-Distanceは、焦点−ボクセル間の線分をコーンビームのMidplane面( に平行な面 )に射影した線分の長さである。
【0033】
【数4】

【0034】
この3次元再構成式( コーンビーム再構成式 )( 式4 )について、式上ではファンビーム再構成と非常に似ているが、Data-Back の逆投影方法が大きく異なることを説明する。
【0035】
2次元的なファンビーム再構成においては、図32に示すように、再構成面内の全画素(ピクセル)に対して1 次元に配列された検出器のデータから逆投影するのに対し、コーンビーム(Feldkamp)再構成においては、図33に示すように、焦点と再構成するボクセル(voxel) を結んだ直線が2次元のX線検出器面と交差する点を求め、その交差点に関与する検出器素子から得られるデータをその直線上に位置する全てのボクセルに逆投影する。
【0036】
従って、コーンビーム再構成で、ファンビーム再構成のようにある面を再構成する場合には、特定の検出器列かつチャンネルのデータが再構成面の一部のボクセルにのみ逆投影されるため、各ボクセルに対して逆投影するデータ(検出器列と検出器チャンネル)を選択する必要があるので、再構成ボクセルと焦点を結んだ直線とX線検出器面の3次元的な位置関係が重要になる。
【0037】
しかも、Z座標が同じ検出器列を考え、その検出器素子と焦点を結んだ直線を考えた場合、ある面( 再構成面 )においてそれらの直線が通過するボクセルは、焦点を中心とした検出器面の相似図形(円筒検出器の場合、同心円)上に並ぶため、この位置関係の計算は非常に複雑になる。
【特許文献1】特開昭55−99240号公報
【非特許文献1】"Practical cone-beam algorithm" L.A.Feldkamp, L.C.Davis, and J.W.Kress J. Opt. Soc. Am. A/Vol.1, No.6, pp.612-619/June 1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
上述したように、従来のX線CT装置において、コーンビーム及び2次元的なX線検出器を使用した場合、画像の再構成ではその計算が複雑で膨大な量になり、一般的に普及しているコンピュータ等では処理時間が長くかかり過ぎて実現できないという問題があった。
【0039】
そこでこの発明は、コーンビームにおけるファン−パラ変換法の適用を確立し、コーンビームを使用して撮影された画像の正確な再構成を実現することができる画像再構成処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明の第1の態様による画像再構成処理装置は、X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転軸方向に移動させずに回転させるコンベンショナルスキャンにより得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置であって、前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、この変則パラレルデータ変換手段により収集処理された変則パラレルビームの検出データに基づいて前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを備えた。
【0041】
本発明の第2の態様による画像再構成処理装置は、X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転軸方向に移動させずに回転させるコンベンショナルスキャンにより得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置であって、前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、この変則パラレルデータ変換手段により収集処理した変則パラレルビームの検出データに対して前記回転軸方向の歪みを補正する変則パラレルデータ補正手段と、この変則パラレルデータ補正手段により補正された変則パラレルビームの検出データに基づいて前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを備えた。
【0042】
本発明の第3の態様による画像再構成処理装置は、X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転して得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置であって、前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、この変則パラレルデータ変換手段により収集処理された変則パラレルビームの検出データに基づいて、中央断面に対する焦点位置の距離の変化により生じる前記回転軸方向の歪みを補正して前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを備えた。
【0043】
本発明の第4の態様による画像再構成処理装置は、X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転して得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置であって、前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、この変則パラレルデータ変換手段により収集処理した変則パラレルビームの検出データに対して前記回転軸方向の歪みを補正する変則パラレルデータ補正手段と、この変則パラレルデータ補正手段により補正された変則パラレルビームの検出データに基づいて、中央断面に対する焦点位置の距離の変化により生じる前記回転軸方向の歪みを補正して前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを備えた。
【発明の効果】
【0044】
この発明によれば、コーンビームにおけるファン−パラ変換法の適用を確立し、コーンビームを使用して撮影された画像の正確な再構成を実現することができる画像再構成処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、この発明の第1の実施の形態( コンベンショナルスキャンの場合 )を図1乃至図15R>5を参照して説明する。
【0046】
この発明の実施の形態で使用されるコーンビーム再構成式は、
【0047】
【数5】

【0048】
( 式5 )であり、( 式3 )のパラレルビームの再構成式を見かけ上のコーン角について拡張した近似式である。( 式3 )にコーンビーム再構成式としての( 式6)と同じ補正項を加え、逆投影処理を3次元変則パラレルビーム逆投影処理としたものである。
【0049】
図1は、この発明を適用した画像再構成処理装置を搭載したX線CT装置の概略の構成を示すブロック図である。
【0050】
投影データ測定系としてのガントリ( 架台 )1は、扇形状のファンビームのX線束を発生するX線源3と、2次元アレイ型の2次元X線検出器5とを収容する。前記X線源3と前記2次元X線検出器5とは、寝台6のスライド天板に載置された被検体を挟んで対向した状態で回転リング2に装備される。
【0051】
前記2次元X線検出器5としては、複数個( 1000チャンネル )の検出素子を1次元的に1列に配列して構成したものを6列( 6セグメント )に積層したもので、前記回転リング2に実装される。ここで、1つの検出素子は1チャンネルに相当するものと定義する。
【0052】
前記X線源3からのX線はX線フィルタ4を介して被検体に曝射される。被検体を通過したX線は前記2次元X線検出器5で電気信号として検出される。
【0053】
X線制御器8は高圧発生器7にトリガ信号を供給する。この高圧発生器7はトリガ信号を受けたタイミングで前記X線源3に高電圧を印加する。これによりX線源3からはX線が曝射される。
【0054】
架台寝台制御器9は、前記ガントリ1の前記回転リング2の回転と、前記寝台6のスライド天板のスライドとを同期して制御する。システム全体の制御部本体としてのシステム制御器10は、必要に応じて被検体から見て前記X線源3が螺旋軌道を移動するいわゆる連続回転( 例えばヘリカルスキャン )を実行できるように、前記X線制御器8と前記架台寝台制御器9を制御する。
【0055】
具体的には、前記回転リング2が一定の角速度で連続回転し、前記寝台6のスライド天板が一定の速度で移動し、前記X線源3から連続的又は一定角度毎に間欠的にX線が曝射される。
【0056】
前記2次元X線検出器5からの出力信号は、チャンネル毎にデータ収集部11で増幅され、ディジタル信号に変換される。このデータ収集部11から出力される投影データは、再構成処理部12に取り込まれる。
【0057】
この再構成処理部12は、投影データに基づいてボクセル毎にX線吸収率を反映した逆投影データを求める。
【0058】
ファンビームを使用した連続回転方式のX線CT装置において、有効視野( FOV、撮影領域 )は、連続回転の回転中心軸を中心として円筒形状となり、再構成処理部12は、この有効視野に複数個のボクセル( 3次元的に配置された画素)を規定し、2次元X線検出器5からの投影データから各ボクセルの逆投影データを求める。この逆投影データに基づいて作成された3次元画像データ又は断層像データは表示装置13に送られ3次元画像又は断層像としてビジュアルに表示される。
【0059】
図2に示すように、このX線CT装置のジオメトリは、
検出器列数 M列
( X線検出素子列 )
チャンネル数 Nチャンネル
各列のZ軸方向の高さ Dmm、
( 回転中心でのスライス厚 )
焦点−回転中心間距離 FCD(Focus-center-Distance )
焦点−検出器間距離 FDD(Focus-Detector-Distance )
有効視野直径 FOV(Field of View )
ファン角 α
コーン角 β
となっている。
【0060】
以下、前記再構成処理部12が行う処理について説明する。
【0061】
なお、この第1の実施の形態では、コンベンショナルスキャンの場合について説明し、後述する第2の実施の形態ではヘリカルスキャンの場合について説明する。
【0062】
( 1 ) 変則コーンビーム・パラレルビーム変換を行い、歪み補正を行い、変則パラレルビーム逆投影する。
【0063】
( 2 ) リサンプリング面をボクセル列と平行にする。
【0064】
( 3 ) ボクセル列をある軸に平行にする( 変形例記載のセンタリング類似法 )。
【0065】
( 1 )について説明する。
【0066】
第1処理工程として、ファン・パラ変換法と同様な方法を適用した場合、図3( a )に示すように、Z軸方向から円筒形のFOVを観察すると、コーンビームでもファンビームでも同じように見えるので、チャンネル方向のパラレルビームへの変換はファン・パラ変換法で実施できる。
【0067】
ファン角をαとすると、焦点位置Fsのチャンネル角度ψs=( α/2 )、焦点位置Feのチャンネル角度ψe=−ψs=−( α/2 )である。このときの焦点位置Fsの焦点角度φs=θ+( α/2 )、焦点位置Feの焦点角度φe=θ−( α/2 )である。
【0068】
焦点位置Fs、つまり、図3( b )に示すように、焦点位置Fsの焦点角度φs=θ+( α/2 )でのチャンネル角度ψs=( α/2 )のビームから、焦点位置Fiの焦点角度φi=θ+ψiでのチャンネル角度ψiのビームを順に、焦点位置Fe、つまり、焦点位置Feの焦点角度φe=θ−( α/2 )でのチャンネル角度ψe=−( α/2 )のビームまでを集めて、位相θのパラレルビームとする。
【0069】
しかし、Z軸方向には見かけのコーン角の変化に伴い歪みが生じる。位相θのパラレルビームに垂直な面P( 図3( b )では直線により表現されている。以下この垂直な面を位相θの中央断面と称する )を考えると、焦点位置Fsを通る位相θの中央断面( 直線に沿った断面 )は図4( a )のようになる。同様に焦点位置Fiでは図4( b )、焦点位置Fcでは図4( c )、焦点位置Feでは図4(d )のようになる。なお、図4では、X線のミッドプレーン(Midplane)の上の部分についてのみ図示しているが、ミッドプレーンの下の部分についても同様である。
【0070】
ここで、図4( a )〜図4( d )で、焦点と検出器間の距離はFDDで一定であり、照射するX線ビームのコーン角もβで一定であるのに対し、焦点位置Fxと位相θの中央断面間の距離Lxは焦点位置に応じてチャンネル角度ψxの関数 cosψxでLs、Li、Lc、Leと変化する。
【0071】
すなわち、焦点位置FxからFOVの中心までの距離をFCDとすると、図3を参照して、距離Ls=FCD・ cosψs=FCD・ cos( α/2 )=距離Leである。距離Li=FCD・ cosψi、距離Lc=FCD・ cosψcである。ここで、ψc=0であるから、距離Lc=FCDである。
【0072】
従って、同じ高さHに対する見かけ上のコーン角度βが異なる。
【0073】
すなわち、焦点位置Fsでの見かけ上のコーン角度βsについて、すなわち、焦点位置Feでの見かけ上のコーン角度βeについて、
tanβs=( H/Ls )=( H/[FCD・ cos( α/2 )] )= tanβe
が成立する。
【0074】
また、焦点位置Fiでの見かけ上のコーン角度βiについて、
tanβi=( H/Li )=[H/( FCD・ cosψi )]、
焦点位置Fcでの見かけ上のコーン角度βcについて、
tanβc=( H/Lc )=( H/FCD )が成立する。
【0075】
なお、このときの2次元X線検出器での高さは、焦点位置Fsでの検出面高さZs=FDD・ tanβs=( FDD/FCD )・[H/ cos( α/2 )]=Zeであり、焦点位置Fiでの検出面高さZiは、
Zi=FDD・ tanβi=( FDD/FCD )・( H/ cosψi )、
焦点位置Fcでの検出面高さZc=FDD・ tanβc=( FDD/FCD )・Hである。
【0076】
その結果、各中央断面に高さHの格子状の物体が存在する場合を想定すると、円筒形2次元X線検出器では、位相θにおけるZ軸方向に広がりを持った投影データは、図5に示すように非線形な歪みを生じてしまう。
【0077】
なお、平面形2次元X線検出器を使用した場合には、図6に示すように、さらに大きな歪みが生じることになる。すなわち、焦点位置と平面形2次元X線検出器との間の距離の最小値をFDDoとする。焦点位置から角度ψiのX線が到達する検出器までの距離FDD( ψi )は、
FDD( ψi )=( FDDo/ cosψi )
であり、焦点位置での 検出面高さZ( ψi )は、
Z( ψi )=FDD( ψi )・ tanβi
=( FDDo/ cosψi )・[H/( FCD・ cosψi )]
=( FDDo/FCD )・[H/(cosψi・ cosψi )]
となる。
【0078】
このコーンビームでのパラレルビームの投影データにおけるチャンネル方向のサンプリングピッチを均等にするためには、以下の3つの方法がある。
【0079】
1.サンプリングピッチが均等になるように、もともとのコーンビームでの投影データ収集のピッチ( ビューのピッチ及びチャンネル方向のピッチ )を変則にする。
【0080】
2.コーンビームの投影データからパラレルビームの投影データを生成する際に、コーンビームの投影データ間( 2ビュー×1チャンネル、又は1ビュー×2チャンネル、又は2ビュー×2チャンネル )で補間して均等ピッチの投影データを計算する。
【0081】
3.抜き出した位相θのパラレルビームをチャンネル方向に補間して均等ピッチの投影データを計算する。
【0082】
第2処理工程としては、第1処理工程で得られた均等なパラレルビームに対して歪み補正処理( リサンプリング処理 )を行う。
【0083】
パラレルビームの歪みはスライス方向( Z軸方向 )のみに生じるので、投影データをスライス方向に等間隔なデータになるようにリサンプリングを行う。図7、図8、図9及び図10には、再構成画像Z0の再構成に必要なデータの領域を、6列にリサンプリングする例を示した。リサンプリングピッチ及びリサンプリング数は任意であるが、リサンプリングピッチは小さくリサンプリング数は大きい方がより効果的に非線形な歪みを補正することができる。これによって、位相θに垂直な直線n上( 図11参照 )を焦点が移動したときに得られる三角形状のビーム( 歪み補正付き変則パラレルビーム )による投影データが得られる。
【0084】
第3処理工程としては、第2処理工程で得られたリサンプリングデータに補正項を乗算する。
【0085】
第4処理工程としては、チャンネル方向のコンボリュ−ション処理を行う。これは従来の2次元再構成と同じ処理である。
【0086】
最終工程としては、変則パラレルビーム逆投影処理を行う。変則パラレルビーム逆投影処理は図11に示すように、X線焦点Fcから逆投影するボクセル列までの距離をLiとすると、Zi=( FDD/Li )・Z0によってボクセル列ごとにどのリサンプリングデータを逆投影するかを決定し、そのまま逆投影する。これによって3次元逆投影ができる。
【0087】
図12は、前記再構成処理部12の要部構成を示すブロック図である。
【0088】
再構成処理部12は、画像再構成制御部21、変則パラレルビーム逆投影処理部22及びメモリ23等を備えている。
【0089】
前記画像再構成制御部21は、前記メモリ23からデータ( 収集データ )を読出して変則パラレルビームを作成し、リサンプリング処理による歪み補正後、補正項との乗算、コンボリューションなどの所定の処理を行い、その処理したデータを前記変則パラレルビーム逆投影処理部22へ出力する。
【0090】
さらに、前記画像再構成制御部21は各ボクセル列に逆投影するリサンプリング列を決定し、処理したデータを前記変則パラレルビーム逆投影処理部へ出力する。
【0091】
この変則パラレルビーム逆投影処理部22は、前記画像再構成制御部21から入力されたデータと逆投影するリサンプリング列にしたがって、所定の領域に逆投影処理を行い、その結果を前記メモリ23のデータ記憶部23-1に記憶する。逆投影時に複数のリサンプリング列のデータを重み付け加算しても良い。
【0092】
なお、この第1の実施の形態では、チャンネル方向のファン・パラ変換とスライス方向の歪み補正とを別々に行う方法で説明したが、この発明はこれに限定されるものではなく、これを2ビュー×2チャンネルの4点補間などで1回の処理で行い、コーンビーム投影データから歪み補正付き変則パラレルビーム投影データを得ても良い。こうすることにより、画像再構成処理の処理速度をより高速にすることができる。
【0093】
この第1の実施の形態の変形例として、センタリング類似法について説明する。図11に示したような変則パラレルビームの逆投影処理では、リサンプリングデータ列とボクセル列とを平行に設定したので、ボクセル列に逆投影するリサンプリングデータは、ボクセル列毎に固定のリサンプリング列から抜き出せるので、リサンプリング列の選択は容易であるが、ボクセル列は位相θにしたがって回転してしまうので、逆投影するボクセルを決定するのは困難になる。
【0094】
そこで、図13に示すように、位相が変化してもボクセル列をX軸あるはY軸などのある軸( 固定軸 )に平行なもの( ボクセルはFOVを含んでいるが、位相の変化に対応して傾き、正立方体となるのは90°間隔の4位相のみ )とし、そのボクセル列に平行な直線n´( 仮想的なパラレルビームのX線源( 焦点 )の軌道 )に平行なリサンプリング面を想定して、コーンビーム投影データを変則コーンビーム・パラレルビーム変換処理して、そのリサンプリング面上に第2の変則パラレルビーム投影データを得る( 類似センタリング処理 )。これは、直線n´上を焦点Fが移動したときに得られる第2の変則パラレルビームによる投影データである。これを図13に示すように逆投影する。この方法によれば、逆投影するボクセルの選択とリサンプリングデータの選択との両方が容易になり、さらに逆投影処理速度を高速化することができる。
【0095】
例えば、図14に示すように、傾きs方向の再構成画像Aに対して位相φのときの想定されるパラレルビームの焦点( φ )は軌道B上を移動する。再構成画像Aの焦点側辺VE( φ )及び2次元X線検出器側辺VS( φ )の投影データは、2次元X線検出器5の検出器面CにおいてVce( φ,s )及びVcs( φ,s )ととして検出される。これは類似センタリング処理( ボクセル列に平行な直線n´に平行なリサンプリング面を想定する処理 )を行わなければ、図15( a )に示すように、投影データVce( φ,s )及びVcs( φ,s )は検出器列と平行とはならず、再構成画像Aの投影データは歪んだ四角形として検出されるため、逆投影処理が複雑になり逆投影処理速度を低下させる原因になる。一方、類似センタリング処理を行った場合には、図15( b )に示すように、投影データVce( φ,s )及びVcs( φ,s )は共にセンタリング列に対して平行となり、このセンタリング面Dにおける再構成画像の投影データは正確に平行四辺形となるので、逆投影処理速度の高速化を図ることができる。
【0096】
ボクセル列とリサンプリングデータをある軸に平行にする方法は、特願平8−1015号「画像再構成処理装置」に記載されている方法を応用すれば良い。
【0097】
また、この第1の実施の形態では、コーンビームをパラレルビームに変換したときに投影データに生じる非線形の歪みを補正処理として別途時間をかけて補正するようになっていたが、画像再構成制御部21が歪みを考慮して逆投影するデータをチャンネル毎に決定し、その結果を変則パラレルビーム逆投影処理部22に与えてやれば、逆投影処理で同時に歪み補正処理を行うことができる。これによれば、逆投影処理にかかる時間は長くなると推測されるが、歪み補正処理だけを行う時間を省略することができるので、逆投影処理で同時に歪み補正処理を効率的に行うことができれば、画像再構成処理全体の処理速度を高速化することができる。
【0098】
なお、この第1の実施の形態では、図4乃至図6、図8乃至図1111、図13においてコーンビームのMidplane( Z=0 )の上半分の画像再構成処理について説明したが、コーンビームのMidplaneの下半分の画像再構成処理についても対照的に処理すれば同様にして画像を再構成することができる。
【0099】
この発明の第2の実施の形態を図16乃至図24を参照して説明する。
【0100】
前述の第1の実施の形態ではコンベンショナルスキャンの場合について説明したが、この第2の実施の形態ではヘリカルスキャンの場合について説明する。この第2の実施の形態のヘリカルスキャンの場合も、前述の第1の実施の形態のコンベンショナルスキャンの場合と基本的に同じであるが、異なる点は、変則コーンビーム・パラレルビーム変換処理と歪み補正処理だけであり、その後の補正項の乗算処理、チャンネル方向のコンボリューション処理、変則パラレルビーム逆投影処理は同じである。
【0101】
ヘリカルスキャンでもZ軸方向から見た状態は図3( a )及び図3( b )に示す状態と同じであるので、チャンネル方向のコーンビーム・パラレルビーム変換は、第1の実施の形態と同じ2次元のファン・パラ変換処理と同じ処理である。しかし、焦点Fは、コンベンショナルスキャンの場合では同一円周軌道上を移動するのに対して、ヘリカルスキャンの場合では螺旋軌道上を移動するので、位相θの変則パラレルビームを得るのに必要な焦点角度Fs〜( Fi )〜Fc〜Feにおいて、焦点Fが、
( I ) その全域にわたって再構成画像面( Z軸座標=ZI )より下側の場合。
【0102】
( II ) その全域にわたって再構成画像面( Z軸座標=ZI )より上側の場合。
【0103】
( III) 再構成画像面( Z軸座標=ZI )の下側から上側へ遷移する場合。
【0104】
( IV ) 再構成画像面( Z軸座標=ZI )の上側から下側へ遷移する場合。
【0105】
の4通りに分類される。
【0106】
ところで、焦点角度φiにおける焦点位置FiのZ座標Z( φi )は、
Z( φi )=Z0+[( φi/360 )・HP]
で与えられる。なお、HPはヘリカルピッチである。
【0107】
まず、( I )の場合について説明する。この場合には2次元X線検出器5の上半面側で、再構成画像が検出される( 投影データが収集される )ことになる。
【0108】
再構成画像のZ軸座標をZ=ZI( 一定 )とすると、図16及び図17に示すように、最初のビームになる焦点位置Fsでは、そのZ軸座標Zs=Z( φs )から見た再構成画像の相対的Z軸座標は、dZ=ZI−Z( φs )であり、最後のビームになる焦点位置Fe( Z軸座標Ze=Z( φe ) )では、dZ=ZI−Z( φe )である。さらに途中のビームの焦点位置FI( Z軸座標Zi=Z( φi ) )では、dZ=ZI−Z( φi )である。
【0109】
このヘリカルスキャンの場合は、前述の第1の実施の形態のコンベンショナルスキャンの場合に比べて、投影データの非線形の歪みがより大きく、焦点角度φに応じて必要な投影データが存在する位置及び範囲の領域が変化していることが判る。なお、As付近の投影データは実際には得られないので、外挿補間処理によって投影データを計算から得ている。
【0110】
ここで、図17で示した非線形の歪みが大きい投影データに対して、図18に示すように、前述の第1の実施の形態で説明したようなリサンプリング処理を行って、歪みの補正処理を行う。
【0111】
以降の補正項の乗算処理、チャンネル方向のコンボリューション処理及び変則パラレルビーム逆投影処理は、前述の第1の実施の形態と同様なのでここではその説明は省略する。
【0112】
次に、( II )の場合について説明する。この場合には2次元X線検出器5の下半面側で再構成画像が検出される( 投影データが収集される )ことになる。
【0113】
この( II )の場合では、前述の( I )の場合のZ軸方向について鏡像的に反転した領域の投影データとなる。すなわち、A( As、Ai、Ac、Ae )とB(Bs、Bi、Bc、Be )とが反転した領域の投影データとなる。
【0114】
従って、( I )の場合と同様に歪み補正処理を行う。
【0115】
次に、( III)の場合について説明する。この場合には2次元X線検出器の上半面側から下半面側へ検出領域が移動することになる。
【0116】
変則コーンビーム・パラレルビーム変換は、図19、図20、図21に示すように、焦点Fが再構成画像を横切る焦点角度をφi、( Fi )とすると、焦点位置Fsから焦点位置Fiまでは、画像の焦点側のボクセルに相当するAs〜Aiが上側で、画像の2次元X線検出器側のボクセルに相当するBs〜Biが下側となり、焦点位置Fiでは全ての画像のボクセルが1つの投影データとなってAiとBiとは同じとなる。さらに、焦点位置Fiから焦点位置Feまでは、Ai〜Aeが下側で、Bi〜Beが上側となって反転している。従って、この( III)の場合における歪み補正処理では、リサンプリング処理と上下反転処理を行って図22に示すような歪み補正付き変則パラレルビーム投影データを得る。
【0117】
以降の補正項の乗算処理、チャンネル方向のコンボリューション処理及び変則パラレルビーム逆投影処理は、前述の第1の実施の形態と同様なのでここではその説明は省略する。
【0118】
( IV )の場合も、( I )の場合に対する( II )の場合と同じように、( III)の場合のZ軸方向について鏡像的に反転した領域の投影データとなる。
【0119】
すなわち、2次元X線検出器の下半面側から上半面側へ検出領域が移動することになる。そして焦点位置Fsから焦点位置Fiまでは、As〜Aiが下側で、Bs〜Biが上側となり、焦点位置Fiでは、AiとBiとは同じになる。さらに、焦点位置Fiから焦点位置Feまでは、Ai〜Aeが上側で、Bi〜Beが下側となって反転している。従って、処理の方法も( III)と同じである。
【0120】
以上の( I )〜( IV )の組合わせによって、ヘリカルスキャンにおいても変則コーンビーム・パラレルビーム変換による変則パラレルビーム逆投影を行うことによって、3次元画像再構成を行うことができる。再構成制御装置は位相θに応じて( I )〜( IV )のうちの該当する場合を判断し、この該当する場合にしたがって変則コーンビーム・パラレルビーム変換を行い、リサンプリング処理( 必要ならば上下反転処理を併用する )、歪み補正処理、補正項の乗算、チャンネル方向のコンボリューション処理、変則パラレルビーム逆投影処理を行って、3次元画像再構成を行う。
【0121】
この発明の第3の実施の形態を図23及び図24を参照して説明する。
【0122】
変則コーンビーム・パラレルビーム変換から変則パラレルビーム逆投影処理の後、中央断面定理を使用してアーチファクト( 線質硬化を含む )に対する補正を行う。
【0123】
中央断面定理は、「ある画像の位相θへのパラレルビームの投影データの1次フーリエ変換は、元の画像の2次元フーリエ変換像を対応する角度θで切断した中心断面の分布に等しい。」というものである。
【0124】
すなわち、図23に示すように、実空間における画像31の位相θ方向へのパラレルビームを考え、そのパラレルビームにより得られる投影データ32について、その1次元フーリエ変換したデータは、図24に示すように、画像31の周波数空間における2次元フーリエ変換像33を対応する角度θで切断した中心断面の分布34と等しい。従って、この中心断面の分布34を1次元逆フーリエ変換すれば、投影データ32が得られることになる。
【0125】
そこで、画像を一旦再構成後、画像を2次元フーリエ変換し、ある角度θで切断した中心断面の分布を求め、この中心断面の分布を1次元逆フーリエ変換すれば、画像の位相θ方向へのパラレルビームの投影データが得られる。
【0126】
この投影データを元にして線質硬化などの補正係数を求めて、2度目の画像再構成をパラレルビーム逆投影で行い、線質硬化などによるアーチファクトを補正する方法が、2パスBHCなどとして知られている。
【0127】
しかし、第1の画像再構成はファンビーム逆投影で行い、第2の画像再構成をパラレルビーム逆投影で行うので、ファンビームの広がりに起因するアーチファクトは逆投影時にファン状に拡散するので、パラレルビーム逆投影による補正では除去できない場合があった。コーンビームにおいても同様にコーンビームの広がりに起因するアーチファクトは除去できない場合がある。
【0128】
上述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態においても、逆投影処理はZ軸方向から見ると、2パス目のパラレルビームの逆投影と同様に行われるので、2パス目の補正効果が大きい。
【0129】
そこで、まず、1回目に第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態に記載された方法で3次元画像再構成を行い、次にこのZ軸方向のコーンビームの広がりを無視して、3次元画像の一断面としての2次元画像ではなく、従来のような2次元画像と考えて、2次元中央断面定理を適用して2パス目の補正を2次元画像で行う。一般にアーチファクトは3次元的に広がるが、ファン角度と比較するとコーン角度は小さいため、2次元中央断面定理による上述の補正で充分な補正効果が得られる。
【0130】
変形例として、3次元中央断面定理を使用して完全なパラレルビームによる投影データを求め、それを使用して補正を行っても良い。変則パラレルビームによる投影データと完全なパラレルビームによる投影データとは比較的に似ているので、ある程度の補正効果は期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】この発明の第1の実施の形態( コンベンショナルスキャンの場合 )のX線CT装置の概略の構成を示すブロック図。
【図2】同実施の形態のX線CT装置のジオメトリを示す図。
【図3】同実施の形態のX線CT装置のX線源及び2次元X線検出器の回転軸方向から見たコーンビームの変則パラレルビームへの変換を説明するための図。
【図4】同実施の形態のX線CT装置のコーンビームを変則パラレルビームへ変換した時の変則パラレルビームに垂直な面の投影状態を示す図。
【図5】同実施の形態のX線CT装置の変則パラレルビームによる円筒形2次元X線検出器の検出面における投影状態を示す図。
【図6】同実施の形態のX線CT装置の変則パラレルビームによる平面形2次元X線検出器の検出面における投影状態を示す図。
【図7】同実施の形態のX線CT装置における変則パラレルビームと再構成画像面との関係を示す図。
【図8】同実施の形態のX線CT装置の変則パラレルビームに対する再構成画像面の投影状態を示す図。
【図9】同実施の形態のX線CT装置の変則パラレルビームによる2次元X線検出器の検出面における再構成画像面の投影状態を示す図。
【図10】同実施の形態のX線CT装置の変則パラレルビームによる投影データをリサンプリング処理したデータを示す図。
【図11】同実施の形態のX線CT装置のリサンプリング処理したデータの再構成画像面への逆投影処理を説明するための図。
【図12】同実施の形態のX線CT装置の再構成処理部12の要部構成を示すブロック図。
【図13】同実施の形態のX線CT装置の固定軸に平行なボクセル列への類似センタリング処理を使用したリサンプリング面からの逆投影処理を説明するための図。
【図14】同実施の形態のX線CT装置の位相φにおける再構成画像Aの投影データを示す図。
【図15】同実施の形態のX線CT装置の再構成画像Aの類似センタリング処理を行わない時の逆投影データ及び類似センタリング処理を行った時の逆投影データを示す図。
【図16】この発明の第2の実施の形態( ヘリカルスキャンの場合 )のX線CT装置の焦点がその全域にわたって再構成画像面より下側の場合( ( I )の場合 )の変則パラレルビームに対する再構成画像面の投影状態を示す図。
【図17】同実施の形態のX線CT装置の( I )の場合の変則パラレルビームによる2次元X線検出器の検出面における再構成画像面の投影状態を示す図。
【図18】同実施の形態のX線CT装置の( I )の場合の変則パラレルビームによる投影データをリサンプリング処理したデータを示す図。
【図19】同実施の形態のX線CT装置の焦点が再構成画像面の下側から上側へ遷移する場合( ( III)の場合 )の変則パラレルビームの前半に対する再構成画像面の投影状態を示す図。
【図20】同実施の形態のX線CT装置の( III)の場合の変則パラレルビームの後半に対する再構成画像面の投影状態を示す図。
【図21】同実施の形態のX線CT装置の( III)の場合の変則パラレルビームによる2次元X線検出器の検出面における再構成画像面の投影状態を示す図。
【図22】同実施の形態のX線CT装置の( III)の場合の変則パラレルビームによる投影データをリサンプリング処理したデータを示す図。
【図23】同実施の形態のX線CT装置で使用される中央断面定理のある画像の位相θへのパラレルビームの投影データを示す図。
【図24】同実施の形態のX線CT装置で使用される中央断面定理の元の画像の2次元フーリエ変換像を対応する角度θで切断した中央断面の分布を示す図。
【図25】従来例のX線CT装置におけるファンビームを示す図。
【図26】従来例のX線CT装置のX線源、X線検出器、FOV及びピクセルの関係を示す図。
【図27】従来例のX線CT装置のファン−パラ変換法を説明するための図。
【図28】従来例のX線CT装置のファン−パラ変換法の画像再構成式を説明するための第1の図。
【図29】従来例のX線CT装置のファン−パラ変換法の画像再構成式を説明するための第2の図。
【図30】従来例のX線CT装置におけるコーンビームを示す図。
【図31】従来例のX線CT装置のX線源、2次元X線検出器、FOV及びボクセルの関係を示す図。
【図32】従来例のファンビームを使用したX線CT装置における検出器データのピクセルへの逆投影を説明するための図。
【図33】従来例のコーンビームを使用したX線CT装置における検出器データのボクセルへの逆投影を説明するための図。
【符号の説明】
【0132】
3…X線源、5…2次元X線検出器、11…データ収集部、12…再構成処理部、21…画像再構成制御部、22…変則パラレルビーム逆投影処理部、23…メモリ、23-1…データ記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転軸方向に移動させずに回転させるコンベンショナルスキャンにより得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置において、
前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、
この変則パラレルデータ変換手段により収集処理された変則パラレルビームの検出データに基づいて前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを具備したことを特徴とする画像再構成処理装置。
【請求項2】
X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転軸方向に移動させずに回転させるコンベンショナルスキャンにより得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置において、
前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、
この変則パラレルデータ変換手段により収集処理した変則パラレルビームの検出データに対して前記回転軸方向の歪みを補正する変則パラレルデータ補正手段と、
この変則パラレルデータ補正手段により補正された変則パラレルビームの検出データに基づいて前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを具備したことを特徴とする画像再構成処理装置。
【請求項3】
X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転して得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置において、
前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、
この変則パラレルデータ変換手段により収集処理された変則パラレルビームの検出データに基づいて、中央断面に対する焦点位置の距離の変化により生じる前記回転軸方向の歪みを補正して前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを具備したことを特徴とする画像再構成処理装置。
【請求項4】
X線源から放射された円錐状のX線コーンビームを対象物に照射し、この対象物を透過したX線をX線検出素子を1列に配列した1次元X線検出器を複数列に配列した2次元X線検出器により検出し、前記X線源と前記2次元X線検出器とを前記対象物の回りを回転して得られた検出データに基づいて、前記対象物の断層画像を再構成する画像再構成処理装置において、
前記X線源と前記2次元X線検出器の所定の角度分の回転により得られた検出データから、前記X線源から前記2次元X線検出器へのビームが前記X線源及び前記2次元X線検出器の回転軸方向成分を無視して前記対象物への透過角度が平行であった変則パラレルビームの検出データを前記透過角度毎に収集して処理する変則パラレルデータ変換手段と、
この変則パラレルデータ変換手段により収集処理した変則パラレルビームの検出データに対して前記回転軸方向の歪みを補正する変則パラレルデータ補正手段と、
この変則パラレルデータ補正手段により補正された変則パラレルビームの検出データに基づいて、中央断面に対する焦点位置の距離の変化により生じる前記回転軸方向の歪みを補正して前記対象物の断層画像を再構成するパラレル再構成手段とを具備したことを特徴とする画像再構成処理装置。
【請求項5】
前記変則パラレルデータ補正手段は、前記変則パラレルデータ変換手段により収集処理された検出データの検出位置を、前記パラレルビームの透過角度に応じて前記回転軸方向の位置について再配置するリサンプリング処理を行うことを特徴とする請求項2または請求項4に記載の画像再構成処理装置。
【請求項6】
前記変則パラレルデータ補正手段は、逆投影する空間画素としてのボクセルの列を所定の固定軸に平行に設定し、このボクセル列に対して平行な前記変則パラレルビームの焦点の軌道を想定し、この軌道に対して平行な面に前記変則パラレルデータ変換手段により収集処理した変則パラレルビームの検出データを予め設定されたセンタリング面へ前記回転軸方向の歪みを補正する前処理としての投影を行う類似センタリング処理を行うことを特徴とする請求項2、請求項4および請求項5のいずれか1項に記載の画像再構成処理装置。
【請求項7】
前記パラレル再構成手段により再構成された断層画像に対するアーチファクト及び線質硬化の補正を中央断面定理を使用して補正する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1頁に記載の画像再構成処理装置。
【請求項8】
前記パラレル再構成手段により再構成された断層画像に対するアーチファクト及び線質硬化の補正を2次元中央断面定理を使用して2次元画像として補正する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1頁に記載の画像再構成処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2007−38022(P2007−38022A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300689(P2006−300689)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【分割の表示】特願平9−50230の分割
【原出願日】平成9年3月5日(1997.3.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】