説明

画像処理システム、画像処理装置及びジョブ管理プログラム

【課題】錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制することが可能な画像処理システム、画像処理装置及びジョブ管理プログラムを提供する。
【解決手段】画像処理システム1は、実行要求に基づきジョブを登録する登録部11と、ジョブが錠付ジョブS1である場合に、当該開錠条件が満たされるまで当該錠付ジョブS1の印刷処理を禁止する認証部11と、錠付ジョブS1の登録後に、実行要求をなされるジョブG1の登録を制限する制御部11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理装置及びジョブ管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置と情報処理装置とを通信可能に接続して構成された画像処理システムには、セキュア印刷機能を備えたものがある。このセキュア印刷機能を利用する場合、ユーザが情報処理装置にて開錠条件(例えばパスワード)を指定して印刷要求をする。すると、画像処理装置では、その印刷要求に基づく印刷ジョブを錠付ジョブとして登録し、上記開錠条件が満たされる(例えば上記パスワードと同じパスワードが画像処理装置にて入力される)まで、錠付ジョブの印刷処理を禁止する。開錠条件が満たされれば、錠付ジョブの印刷処理が許可される。これは主に、機密性の高い内容を印刷したいときに実行する機能である。従来の画像処理システムには、セキュアジョブが登録され、セキュアジョブの実行順位が先頭になると、画像処理システムをロックし、セキュア印刷が終了するまで印刷データを受け付けない構成がある。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−196913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来構成に記載された画像処理システムでは、ユーザがセキュアジョブを登録した後から、ロックされるまでの間に、他のユーザのジョブ登録が制限されていないため、セキュアジョブを登録した後でも他のユーザの印刷ジョブを登録し、スプーラ内に印刷ジョブを蓄積してしまう。そのため、セキュアジョブの登録後に印刷ジョブを登録した他のユーザに、自己の印刷物を確認しようと画像処理装置の前に来られ、セキュア印刷ユーザによるセキュア印刷実行中にその印刷物が見られてしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制することが可能な画像処理システム、画像処理装置及びジョブ管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載の画像処理システムは、情報処理装置と画像処理装置とが通信可能に接続されて構成される画像処理システムにおいて、実行要求に基づきジョブを登録する登録部と、前記登録部に登録されたジョブを実行する実行部と、前記ジョブが、開錠条件が付加された印刷ジョブとしての錠付ジョブである場合に、当該開錠条件が満たされるまで前記実行部による当該錠付ジョブの印刷処理を禁止する認証部と、前記錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録を制限する制御部と、を備える。
本発明によれば、錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制できる。
【0007】
また、請求項2記載の画像処理システムでは、前記制御部は、前記開錠条件が満たされた場合には、実行要求をなされるジョブの登録制限状態を解除する。
本発明によれば、開錠条件が満たされたのにジョブの登録制限状態が継続することを低減できる。
【0008】
また、請求項3記載の画像処理システムでは、前記制御部は、所定時間内に前記開錠条件が満たされなかった場合には、実行要求をなされるジョブの登録制限状態を解除する。
本発明によれば、錠付ジョブの登録後、所定時間内に開錠条件が満たされなかった場合には、ジョブの登録制限状態を解除する。したがって、開錠条件が満たされないためにジョブの登録制限状態が継続することを低減できる。
【0009】
また、請求項4記載の画像処理システムでは、前記制御部は、前記画像処理装置が印刷機能以外に画像データを処理する特定の機能を有している場合、その特定の機能を実行するためのジョブの登録を許可する。
本発明によれば、ジョブの登録制限状態であっても、特定の機能を実行するジョブの登録を許可することができ、特定の機能を実行するジョブの登録が制限される不都合を抑制できる。
【0010】
また、請求項5記載の画像処理システムでは、前記特定の機能が、外部のファクシミリ装置から送信されてきた画像データの受信機能である。
本発明によれば、外部のファクシミリ装置から送信されてきた画像データの受信機能を実行するジョブの登録が許可される。ファクシミリの受信者がファクシミリの送信者の送信タイミングを知らない場合、画像処理装置が外部のファクシミリ装置から画像データを受信して印刷する前後で、受信者が印刷物を画像処理装置まで取りに来る可能性は高いとは言えない。したがって、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制しつつ、ファクシミリの受信機能が制限されることによる不都合を抑制できる。
【0011】
また、請求項6記載の画像処理システムでは、前記特定の機能が、前記情報処理装置から送信されてきた画像データを外部のファクシミリ装置に転送する機能である。
本発明によれば、情報処理装置から送信されてきた画像データを外部のファクシミリ装置に転送するので、画像処理装置の前に来て作業をしなくても実行できる。したがって、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制しつつ、情報処理装置から送信されてきた画像データを外部のファクシミリ装置に転送する機能が制限されることによる不都合を抑制できる。
【0012】
また、請求項7記載の画像処理システムでは、前記制御部は、実行しているジョブの有無を判別し、前記実行しているジョブが有ると判別した場合は、前記実行しているジョブの次の順位に、錠付ジョブの実行順位を変更する。
本発明によれば、錠付ジョブを早期に実行する機会を得ることができる。
【0013】
また、請求項8記載の画像処理システムは、前記実行しているジョブの次の順位に錠付ジョブの実行順位を変更した場合には、前記錠付ジョブの登録前に登録され、且つ、未実行のジョブユーザに、錠付ジョブの印刷処理待ちになったことを報知する第1の報知部を備える。
本発明によれば、錠付ジョブの実行順位が変更された場合には、錠付ジョブの登録前に登録され、且つ、未実行のジョブユーザに、錠付ジョブの印刷処理待ちになったことを報知する。したがって、錠付ジョブの印刷処理中に、錠付ジョブの登録前に登録され、且つ、未実行のジョブのユーザが錠付ジョブの印刷処理待ちになったことを知らないことによる不都合を抑制できる。例えば、錠付ジョブの印刷処理中に、印刷処理待ちになったユーザに画像処理装置の前に来られ、錠付ジョブの印刷結果を見られてしまう虞を軽減できる。
【0014】
また、請求項9記載の画像処理システムでは、前記制御部は、前記開錠条件が満たされる前に、前記錠付ジョブのユーザによるジョブ要求があった場合、当該ジョブの登録を許
可する。
本発明によれば、開錠条件が満たされる前であれば、錠付ジョブのユーザによるジョブの登録が許可されるので、追加のジョブが制限されずに登録できる。
【0015】
また、請求項10記載の画像処理システムは、登録制限状態である場合に、その登録制限原因となっている錠付ジョブの印刷処理待ちであることを報知する第2の報知部を備える。
本発明によれば、登録制限原因となっている錠付ジョブの印刷処理待ちであることを報知する報知部を備える。したがって、錠付ジョブの印刷処理待ちが原因で自己のジョブ登録が制限されていることを知ることができる。
【0016】
また、請求項11記載の画像処理システムでは、前記情報処理装置は、表示部を有し、登録制限状態である場合、その登録制限原因となっている錠付ジョブのユーザに対応する情報処理装置の前記表示部に、当該錠付ジョブが前記登録制限原因になっている旨を表示させる表示制御部を備える。
本発明によれば、錠付ジョブのユーザが、自己の錠付ジョブが他のユーザによるジョブの登録制限原因になっていることを、情報処理装置の表示部により知ることができる。
【0017】
また、請求項12記載の画像処理装置は、実行要求に基づきジョブを登録する登録部と、前記登録部に登録されたジョブを実行する実行部と、前記ジョブが、開錠条件が付加された印刷ジョブとしての錠付ジョブである場合に、当該開錠条件が満たされるまで前記実行部による当該錠付ジョブの印刷処理を禁止する認証部と、前記錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録を制限する制御部と、を備える。
本発明によれば、錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制できる。
【0018】
また、請求項13記載のジョブ管理プログラムは、画像処理装置に備えられるコンピュータに、実行要求に基づきジョブを登録する登録処理と、前記登録部に登録されたジョブを実行する実行処理と、前記ジョブが、開錠条件が付加された印刷ジョブとしての錠付ジョブである場合に、当該開錠条件が満たされるまで前記実行部による当該錠付ジョブの印刷処理を禁止する認証処理と、前記錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録を制限する制御処理と、を実行させる。
本発明によれば、錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録による不都合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像処理システム1の電気的構成を示すブロック図
【図2】メイン処理を示すフローチャート
【図3】セキュアジョブ登録によるジョブの登録制限処理を示すフローチャート
【図4】登録制限解除処理を示すフローチャート
【図5】報知メッセージの例を示す説明図
【図6】ジョブの登録制限のタイムチャート
【図7】登録制限におけるPC−FAX送信ジョブ許可のタイムチャート
【図8】登録制限におけるFAX受信ジョブ許可のタイムチャート
【図9】待機ジョブがあるときの順位変更のタイムチャート
【図10】タイムアウトのタイムチャート
【図11】従来構成その1に関するタイムチャート
【図12】従来構成その2に関するタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について図1から図12を参照して説明する。
(画像処理システムの電気的構成)
図1は、画像処理システム1の電気的構成を示すブロック図である。画像処理システム1は、画像処理装置3と、複数台(図1には3台図示)のコンピュータ5(情報処理装置の一例)とが通信回線Lを介して接続された構成になっている。以下、コンピュータ5Aのユーザを「ユーザA」、コンピュータ5Bのユーザを「ユーザB」、コンピュータ5Cのユーザを「ユーザC」...とそれぞれ呼ぶ。また、いずれのコンピュータ5も基本的構成は同じなので、図1ではコンピュータ5Aのみ構成を図示し、他のコンピュータ5B,5C...については省略されている。
【0022】
(1)画像処理装置
画像処理装置3は、CPU11、ROM13、RAM15、NVRAM17(不揮発性メモリ)、操作部19、表示部21、印刷部23、スキャナ部25、ファクシミリ部26、記憶メディアドライブ27、ネットワークインターフェイス29等を備えている。
【0023】
ROM13には、画像処理装置3の基本的な動作を制御するプログラムの他、後述するジョブ管理プログラムなどが記録されており、CPU11は、ROM13から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM15やNVRAM17に記憶させながら、画像処理装置3の動作を制御する。
【0024】
操作部19は、複数のボタンからなり、後述する認証作業など、ユーザによって各種の入力操作が可能である。表示部21は、液晶ディスプレイやランプからなり、各種の設定画面や動作状態等を表示することが可能である。印刷部23は印刷対象とされた印刷データに基づき用紙への印刷を行う。スキャナ部25は所定の読取位置(図示されない)にセットされた用紙から画像の読み取りを行うと共に、この画像の画像データを生成する。
【0025】
このときCPU11は、スキャン機能を実行する場合、前記画像データをPDFファイルなどに変換してRAM15やNVRAM17、記憶メディア24に記憶させる。コピー機能を実行する場合、前記画像データを印刷部23にて印刷処理させる。
【0026】
ファクシミリ部26は、スキャナ部25で生成された画像データを電話回線網28に伝送可能な画像信号に変調して、電話回線網28につながれている外部のファクシミリ装置(図示されない)に送信する送信機能を有している。またファクシミリ部26は、電話回線網28につながれている外部のファクシミリ装置(図示されない)から送信されてきた画像信号を受信するFAXデータ受信処理を行う。ファクシミリ部26は、この画像信号を受信すると、印刷部23で印刷可能な印刷データに変換して、FAXデータ印刷処理を行う。ここでFAXデータ受信処理とFAXデータ印刷処理の2つの処理を行うことを、「FAX受信機能を実行する」という。
【0027】
記憶メディアドライブ27は、記憶メディア24とつながり、記憶メディア24の記憶情報を読み出してダイレクト印刷の要求を受け付ける。ダイレクト印刷とは、コンピュータ5を介さず、前記読み出した記憶情報の中から画像データを印刷処理させる機能のことである。操作部19などからユーザによる印刷画像の指定を受け付けると、指定された画像を印刷するジョブを生成する。また、ネットワークインターフェイス29は、通信回線Lを介してコンピュータ5等に接続されており、相互のデータ通信が可能となっている。
【0028】
(2)コンピュータ
各コンピュータ5は、いずれも同じ構成であり、CPU31、ROM33、RAM35、ハードディスク37、操作部39、表示部41、ネットワークインターフェイス43等を備えている。ハードディスク37には、印刷用のデータを作成するためのアプリケーションソフトやプリンタドライバ、後述するPC−FAX機能などの各種プログラムが記憶されている。操作部39はキーボードやポインティングデバイスを備え、表示部41は例えば液晶ディスプレイ等を備える。また、ネットワークインターフェイス43は通信回線Lに接続される。
【0029】
(セキュア印刷機能について)
本実施形態の画像処理システム1は、セキュア印刷機能を備える。このセキュア印刷機能を利用する場合、ユーザがコンピュータ5にて開錠条件(例えばパスワード、IDなど)を指定して印刷要求する。すると、画像処理装置3側では、その印刷要求に基づく印刷ジョブをセキュアジョブ(本発明の「錠付ジョブ」の一例)としてジョブ管理テーブル(RAM15又はNVRAM17等の記憶媒体)に登録(ジョブの登録については後述する)し、上記開錠条件が満たされる(例えば上記パスワードと同じパスワードが画像処理装置3の操作部19にて入力される)まで、セキュアジョブの印刷処理を禁止する。以下、開錠条件を満たすかどうかの判定を「認証判定」といい、その認証判定のためにパスワード、IDを入力するなど、ユーザが行う作業を「認証作業」といい、この認証作業によって開錠条件が満たされた場合を「認証の成功」という。
【0030】
例えば機密文書データをPC印刷したい場合に、セキュア印刷機能を利用しないで印刷要求すると、その印刷要求をしたユーザが画像処理装置3の配置場所にたどり着く前に当該画像処理装置3にて上記機密文書が印刷されてしまうことがある。これに対して、セキュア印刷機能を利用すると、印刷要求しても、それだけでは画像処理装置3にて機密文書が印刷されることはない。印刷要求したユーザが画像処理装置3の配置場所にたどり着いて、ここで認証作業をし、かつ、認証が成功しない限り上記機密文書が印刷されることはない。このため、機密文書が印刷要求したユーザ以外の者に渡ることを抑制できる。
【0031】
(その他の画像処理システムの各種機能について)
(1)PC印刷機能について
PC印刷機能とは、各ユーザが、自己のコンピュータ5に格納されたデータを画像処理装置3にて印刷させる機能である。まず各ユーザはコンピュータ5の操作部39での入力操作によって印刷要求をする。そうすると、コンピュータ5のCPU31は、通信回線Lを介してその印刷要求とともに印刷データを画像処理装置3に送信する。これに対し、画像処理装置3のCPU11は、受信した印刷要求及び印刷データに基づき印刷ジョブを生成し、この印刷ジョブをジョブ管理テーブルに登録する。そしてジョブ管理テーブルの情報に基づき印刷部23で印刷処理が実行される。
【0032】
(2)ダイレクト印刷機能について
ダイレクト印刷機能とは、印刷したい画像データ等が入っている記憶メディア24を記憶メディアドライブ27につないで画像データ等を読み込ませ、ユーザが操作部19などで指定した画像データ等をコンピュータを介さずに直接画像処理装置3の印刷部23で印刷処理する機能のことである。
【0033】
(3)PC−FAX機能について
PC−FAX機能には、PC−FAX送信機能とPC−FAX受信機能がある。PC−FAX受信機能は、FAX受信機能と基本的に同じであるが、ネットワークを介してデータを受信することも可能である。PC−FAX送信機能とは、コンピュータ5にあるユーザ指定の画像データ等が画像処理装置3に送信され、画像処理装置3が画像データ等を外
部のファクシミリ装置に転送して、相手に画像データを送る機能のことである。なおPC−FAX送信機能の実行時には、送信する回線を電話回線とネットワークから選択することが可能である。
【0034】
通常、コンピュータ5にある画像データをFAX機能を用いて送信するためには、コンピュータ5にある画像データを画像処理装置3に送り、印刷部23で印刷し、印刷物をスキャナ部25で読み取り、読み取った画像データをファクシミリ部26から電話回線網28につながれた外部のファクシミリ装置に送信しなければならない。しかしPC−FAX送信機能であれば、この印刷と読み取りの作業をせずに、直接コンピュータ5から画像処理装置3のファクシミリ部26に画像データを送ることが可能である。そして画像データを外部のファクシミリ装置に転送する。
【0035】
(ジョブの登録について)
画像処理装置3は実行要求又はデータ受信を受け付けると、CPU11はその内容に応じてジョブ生成の指令を出す。そして生成されたジョブはジョブ管理テーブルに登録される。このときCPU11は本発明の「登録部」として機能する。登録されたジョブの実行順位は、ジョブ管理テーブルによって管理され、機能ごとに異なる。例えばFAXデータ送信処理であれば、送信の待ち行列にジョブが並び、先に並んだ順番に実行許可を出す。実行許可が出るとジョブ管理テーブルの情報により、許可が出たジョブを実行する。
【0036】
画像処理装置3が複数の機能を並列に実行することが可能であれば、例えば送信と印刷のジョブを並列に実行することが可能であり、それぞれの実行順位はそれぞれの待ち行列の順番に従って実行される。つまり印刷処理中であってもFAXデータの送信の実行許可が出れば、送信を実行することが可能である。また印刷処理のジョブであれば、印刷の待ち行列に並んだ順番に実行される。蓄積される印刷や送信のジョブは、それぞれ待ち行列があり、先に並んだ順番に実行される実行順位で管理される。
ジョブの登録制限は、実行要求を受け付けた後に制限対象と判断された実行要求又は受信したデータを読み飛ばすか又は破棄することでジョブの登録を拒否し、行われる。
【0037】
(特定の機能の設定について)
操作部19や操作部39等を用いて、ジョブの登録制限対象となる機能(ジョブの登録制限対象外となる機能)をユーザ(管理者)が選択し設定すると、その設定内容がNVRAM17等に記憶される。ここで設定した機能のことを「特定の機能」という。
【0038】
特に、実行の前後でユーザが画像処理装置3の前に来る可能性が高くない機能であるPC−FAX送信機能と、FAX受信機能は、本実施形態ではあらかじめ特定の機能に設定されている。画像処理装置3がセキュア印刷処理中であっても、実行の前後で画像処理装置3の前に来られる可能性の高くない機能の実行であれば、セキュアジョブの印刷物を前記機能のユーザに見られる虞を軽減させることができる。
【0039】
(ジョブ管理処理)
図2は、メイン処理を示すフローチャートである。図3は、セキュアジョブ登録によるジョブの登録制限処理を示すフローチャートである。図4は、登録制限解除処理を示すフローチャートである。図5は、報知メッセージの例を示す説明図である。画像処理装置3の電源を入れると、CPU11は、図2に示すメイン処理の実行を開始する。
【0040】
CPU11は、S300におけるセキュアジョブ登録によるジョブの登録制限処理と、S302における登録制限解除処理とを繰り返し実行する。CPU11は、画像データを処理する機能の実行要求を受けるたびにジョブを生成し、ジョブをジョブ管理テーブルに登録していく。ジョブの実行順位については後述する。
【0041】
ジョブ管理テーブルに登録されるジョブには、セキュアジョブと、通常ジョブとがある。この通常ジョブとは、セキュア印刷機能を利用しない印刷要求に基づき生成された印刷ジョブ、即ち、錠無しジョブである。また印刷ジョブ以外にも通常ジョブには、コピー機能やスキャン機能、ファクシミリ機能、PC−FAX機能、ダイレクト印刷機能などを実行するジョブも含まれる。
【0042】
S300におけるセキュアジョブ登録によるジョブの登録制限処理では、図3に示すように、CPU11は、実行要求があるかどうかを判断する(S100)。実行要求がある場合(S100:YES)、S102でその実行要求の内容を確認し、S104に進む。実行要求がない場合(S100:NO)は、S119に進む。実行要求の内容には、例えば、コピー機能やスキャン機能、ファクシミリ機能などが含まれる。
【0043】
S104では、受け付けた実行要求がセキュア印刷機能の実行要求であるかどうか判断する。セキュア印刷機能の実行要求である場合(S104:YES)はS106に進み、セキュア印刷機能の実行要求でない場合(S104:NO)はS124に進む。
【0044】
S106では、画像処理装置3がジョブの登録を制限しているかどうか判断する。ジョブの登録を制限していれば(S106:YES)S134に進み、ジョブの登録を制限していなければ(S106:NO)S108に進む。
【0045】
S108では、セキュア印刷機能のジョブがジョブ管理テーブルに登録される。この時CPU11(登録部の一例)は、ジョブ管理テーブルに待機ジョブがあればその後ろの順番に前記セキュア印刷機能のジョブを登録する。この待機ジョブとは、ジョブ管理テーブルに登録されたまま自己の実行を待っているジョブをいう。
【0046】
続いてS110で、特定の機能を除くジョブの登録が制限される。
続いてS112で、機能を実行するジョブの登録が制限されていることを報知し、S114に進む。同時に登録制限されていない機能を報知してもよい。例えば画像処理装置3の表示部21(第2の報知部の一例)に、図5の報知メッセージ(1)のようなメッセージを表示する。その他の報知方法については後述する。
【0047】
S114では、画像処理装置3に現在実行しているジョブがあるかどうか判断する。現在実行しているジョブがあれば(S114:YES)S116に進み、現在実行しているジョブがなければ(S114:NO)S119に進む。
【0048】
S116では、セキュア印刷機能を実行するセキュアジョブの実行順位を、現在実行しているジョブの次の順位に変更し、S117に進む。
【0049】
S117では、セキュアジョブの後に待機しているジョブがあるかどうか判断する。待機ジョブがあれば(S117:YES)S118に進み、待機ジョブがなければ(S117:NO)S119に進む。
【0050】
S118では、セキュアジョブ登録による順位の変更に伴って実行順位が下がったジョブのユーザに対して、そのジョブがセキュアジョブの印刷処理待ちになったことを報知し、S119に進む。例えばCPU11が実行順位が下がったジョブのユーザのコンピュータ5に報知指令を送り、報知指令を受けたコンピュータ5が表示部41(第1の報知部の一例)に、図5の報知メッセージ(6)のようなメッセージを表示してセキュア印刷ユーザに報知する。なお報知のタイミングは印刷処理が開始された時点でも、終了した時点でも構わず、ユーザの設定によって変更が可能である。
【0051】
S119では、認証待ちの状態であるかどうか判断する。認証待ちの状態とは、セキュア印刷ユーザによる認証作業を受け付けている状態のことである。認証待ちの状態であれば(S119:YES)S300の処理を終了しS302に進み、認証待ちの状態でなければ(S119:NO)S120に進む。
【0052】
S120では、実行順位が最上位のジョブ(先頭ジョブという)がセキュアジョブであるかどうか判断する。先頭ジョブがセキュアジョブであれば(S120:YES)S121に進み、先頭ジョブがセキュアジョブでなければ(S120:NO)S300の処理を終了しS302に進む。
【0053】
S121では、セキュアジョブが先頭ジョブになった旨をセキュア印刷ユーザに報知し、S122に進む。例えばCPU11がセキュア印刷ユーザのコンピュータ5に報知指令を送り、報知指令を受けたコンピュータ5が表示部41に、図5の報知メッセージ(2)のようなメッセージを表示してセキュア印刷ユーザに報知する。自己のセキュア印刷の実行順位が最上位になったことを報知することで、認証作業を促がす。また本実施形態では、この時点から認証待ちの状態にする。なお認証待ち状態の開始時期はセキュアジョブ登録の時点に設定してもよく、ジョブの処理が全て終わった時点に設定してもよい。
S122では、タイムアウト時間を0として経過時間の計測を開始し、S300の処理を終了しS302に進む。
【0054】
S124では、受け付けた実行要求が、特定の機能に設定されているPC−FAX送信要求であるかどうか判断する。実行要求がPC−FAX送信要求であれば(S124:YES)S126へ進み、実行要求がPC−FAX送信要求でなければ(S124:NO)S128へ進む。
【0055】
S126では、CPU11(登録部の一例)がPC−FAX送信ジョブをジョブ管理テーブルに登録し、送信の待ち行列に並べ、CPU11(実行部の一例)が実行順位に従って実行する。そしてS119へ進む。
【0056】
S128では、受け付けた実行要求が、特定の機能に選択されているFAX受信要求であるかどうか判断する。実行要求がFAX受信要求であれば(S128:YES)S130へ進み、実行要求がFAX受信要求でなければ(S128:NO)S132へ進む。
【0057】
S130では、CPU11(登録部の一例)がFAX受信ジョブなどの通常ジョブをジョブ管理テーブルに登録し、CPU11(実行部の一例)が順次実行する。そしてS119へ進む。受信したFAXデータの印刷処理の実行は、印刷の待ち行列に並んだ印刷ジョブの実行順位に従って順次行われる。
【0058】
S132では、画像処理装置3がジョブの登録を制限しているかどうか判断する。ジョブの登録を制限していれば(S132:YES)S134に進み、ジョブの登録を制限していなければ(S132:NO)S130に進む。
【0059】
S134では、受け付けた実行要求の要求元がセキュアジョブの登録ユーザであるかどうか判断する。セキュアジョブの登録ユーザであれば(S134:YES)S136へ進み、セキュアジョブの登録ユーザでなければ(S134:NO)S138へ進む。
【0060】
S136では、CPU11(登録部の一例)がセキュア印刷ユーザの追加ジョブを登録し、CPU11(実行部の一例)が前セキュアジョブの印刷処理の実行後に続いて実行する。そしてS119に進む。前セキュアジョブが実行されずにタイムアウトとなった場合
、追加ジョブは待機ジョブとなる。追加ジョブがセキュアジョブであれば、削除される。
【0061】
なお、セキュアジョブと追加ジョブの実行順位であるが、例えば認証成功後にセキュア印刷ユーザが操作部19等から実行順位を指定して実行させてもよい。追加ジョブが複数あり、前記実行順位の指定がない場合、セキュアジョブの実行後に、登録された追加ジョブの順番に追加ジョブが実行される。セキュア印刷ユーザのジョブが全て終了した時点で、他のユーザのジョブが実行される。
【0062】
S138では、CPU11(制御部の一例)が受け付けた実行要求を拒否し、S140へ進む。
S140では、実行要求が拒否されたユーザに、画像処理装置3が登録制限されている旨を報知する。コンピュータから行われた要求を受け付けた場合、例えばCPU11が拒否されたユーザのコンピュータ5に報知指令を送り、報知指令を受けたコンピュータ5が表示部41(第2の報知部の一例)に、図5の報知メッセージ(3)のようなメッセージを表示して拒否されたユーザに報知する。コピー機能などの実行要求である場合は、例えば画像処理装置3の表示部21(第2の報知部の一例)に同様のメッセージが表示される。
【0063】
S142では、セキュア印刷ユーザに登録制限したジョブがある旨を報知し、S119へ進む。例えばCPU11(表示制御部の一例)がセキュア印刷ユーザのコンピュータ5に報知指令を送り、報知指令を受けたコンピュータ5が表示部41に図5の(4)のようなメッセージを表示してセキュア印刷ユーザに報知する。登録を待機しているユーザがいることを報知することで、セキュア印刷ユーザにセキュアジョブの認証作業を促がす。
【0064】
続いて図4の登録制限解除処理フローチャートについて説明する。S200では、CPU11(認証部の一例)が認証が成功したかどうか判断する。認証が成功すれば(S200:YES)S204へ進み、認証が成功しなければ(S200:NO)S202へ進む。
S204では、CPU11(実行部の一例)がセキュア印刷処理を実行する。そしてS205へ進む。
【0065】
S202では、タイムアウト時間が所定時間(例えば10分)を経過しているかどうか判断する。タイムアウト時間が所定時間を経過していれば(S202:YES)S203へ進み、タイムアウト時間が所定時間を経過していなければ(S202:NO)登録制限解除処理を終了する。
S203では、登録されたセキュアジョブが削除される。そしてS205へ進む。
S205では、認証待ちの状態を解除する。そしてS206へ進む。
【0066】
S206では、登録制限が解除され、報知される。図5の報知メッセージ(5)のようなメッセージが、例えば画像処理装置3の表示部21やセキュア印刷ユーザとロックされたユーザのコンピュータの表示部41に表示される。続いてS208へ進む。
【0067】
S208では、待機ジョブがあるかどうか判断する。待機ジョブがあれば(S208:YES)S210へ進み、待機ジョブがなければ(S208:NO)登録制限解除処理を終了する。
【0068】
S210では、CPU11(実行部の一例)が待機ジョブを順次実行していく。例えば図10に示すように、セキュアジョブS1の登録により、ユーザAの認証待ちとなったG2は、タイムアウトとなる所定時間Tの経過後に実行される。そして登録制限解除処理を終了する。
【0069】
(ジョブの実行順位について)
ジョブの実行順位について図6から図12を用いて説明する。図6は、ジョブの登録制限のタイムチャートである。図7は、登録制限におけるPC−FAX送信ジョブ許可のタイムチャートである。図8は、登録制限におけるFAX受信ジョブ許可のタイムチャートである。図9は、待機ジョブがあるときの順位変更のタイムチャートである。図10は、タイムアウトのタイムチャートである。図11は、従来構成その1に関するタイムチャートである。図12は、従来構成その2に関するタイムチャートである。
【0070】
(1)ジョブが登録制限される場合
ユーザAのセキュアジョブS1が登録された後、当該セキュアジョブS1が未認証中に、ユーザBのジョブG1が登録された場合(従来構成)と登録制限された場合(本実施形態)について図6と図11を用いて比較する。従来構成の場合、図11に示すように、セキュアジョブS1の認証の成功を待つまでもなく、ジョブG1の機能を実行してしまう。このため、このジョブG1の機能実行中にセキュアジョブS1の認証が成功した場合、このG1の機能実行が終了するまで、セキュアジョブS1の印刷処理を待たなければならない。ユーザAの立場からすれば、実行要求(ジョブ管理テーブルへの登録)が自分よりも遅い他のユーザBのジョブG1の機能実行によって自分のセキュアジョブS1の印刷処理が待たされるのは望ましくない。さらに、セキュアジョブS1の登録の後に、他のユーザBのジョブG1の登録を許可すると、例えばユーザBは自己の印刷物を確認するために画像処理装置3の前にやって来たり、コピー機能を実行して画像処理装置3の前で長時間滞在してしまうことがある。このため、ユーザAはセキュアジョブS1を先に登録したにも関わらず、セキュアジョブS1を認証させる機会を見計らう煩わしさがあった。また、ユーザBにセキュアジョブS1の印刷物が見られてしまう虞があった。
【0071】
一方、ジョブが登録制限される場合を図6を用いて説明する。ユーザAのセキュアジョブS1が登録(S108)されると、認証成功(S200:YES)までジョブの登録制限(S110)が行われる。登録制限中に他のユーザBが実行要求したジョブG1(特定の機能を除く)は登録が制限(S138)される。そして登録が制限されたユーザBに対し、セキュアジョブS1の印刷処理待ちであるために自己の実行要求が拒否(S138)された旨を報知(S140)する。これによりユーザBは自己の実行要求が拒否された理由を知ることができ、エラーや故障であると思って画像処理装置3に近づき、セキュア印刷ユーザの印刷物を見てしまう虞を低減できる。また、ユーザAに対しては、実行要求を制限したユーザがいることを報知(S142)して、早期の認証作業を促がす。
【0072】
ユーザAのセキュアジョブS1の認証成功後であれば、登録制限が解除(S206)され、ユーザBが実行要求したジョブG2は登録(S130)される。そしてセキュアジョブS1の印刷処理終了後に順次ジョブG2の機能が実行される。
【0073】
したがって、ユーザAにとっては、実行要求(ジョブ管理テーブルへの登録)が自分よりも遅い他のユーザBのジョブG1の機能実行によって自分のセキュアジョブS1の印刷処理が待たされるといった不都合やセキュアジョブS1の認証作業を見計らう煩わしさを解消できる。また後から登録したユーザBにセキュアジョブS1の印刷物が見られてしまう虞を防止することができる。
【0074】
(2)PC−FAX送信ジョブの登録が許可される場合
図7を用いてPC−FAX送信ジョブの登録が許可される場合を説明する。登録制限中であっても、ユーザBの特定の機能に設定されているPC−FAX送信ジョブG2は登録(S126)される。そしてユーザAの認証作業やセキュアジョブS1の印刷処理の順番とは関係なくPC−FAX送信ジョブG2が実行(S126)される。またPC−FAX送信ジョブG2の実行は、セキュアジョブS1の印刷処理の処理順位を変更するものでは
ない。これにより画像処理装置3の前に行く必要のない機能は登録を制限されずに実行することができ、ユーザにとって親切である。
【0075】
(3)FAX受信ジョブの登録が許可される場合
図8を用いてFAX受信ジョブが許可される場合を説明する。登録制限中であっても、ユーザBの特定の機能に設定されているFAX受信ジョブG2は登録(S130)される。FAX受信機能が実行(S130)されるとFAXデータ受信処理とFAXデータ印刷処理の2つの処理が行われる。FAXデータ受信処理はFAX受信ジョブG2の登録後すぐに行われるが、FAXデータ印刷処理は印刷の待ち行列に並んだ実行順位に従って行われる(S210)。図8の場合であると、先に登録された印刷ジョブであるユーザAのセキュアジョブS1の印刷処理終了後に待機ジョブとして実行(S210)される。セキュア印刷処理に影響の少ないFAX受信ジョブを制限してしまうと、FAXデータ送信者に制限している間待機させることになったり、送信エラーで煩わしさを感じさせたりする不都合がある。
【0076】
(4)待機ジョブがあるときの順位変更の場合
待機ジョブがあるときのセキュアジョブによる順位変更の場合(図9参照)を従来構成(図12参照)と比較して説明する。まず従来構成の場合、図12に示したように、セキュアジョブS1を最優先させるために、ユーザAのセキュアジョブS1の登録よりも先に登録したユーザBの通常ジョブG1が、セキュアジョブS1の登録により中断されてしまうことがあった。セキュアジョブS1の印刷処理を優先して開始するが、ユーザBの立場からすれば、自己の機能実行が中断されるのは望ましくない。また、セキュアジョブS1の印刷処理終了の時期が変わるため、前記時期が遅い場合、ユーザBが自己の通常ジョブG1が中断されているとは知らずに、自己の印刷物を確認しようと画像処理装置3の前にやって来て、セキュアジョブS1の印刷物を見てしまうことがあった。
【0077】
一方、待機ジョブがあるとき(S117:YES)の順位変更(S116)の場合を図9を用いて説明する。タイムチャートの順に説明すると、ユーザAのセキュアジョブS1が登録(S108)される前に、他のユーザBの通常ジョブG1、G2(書かれていないがユーザCのジョブでも構わない)が登録(S130)されている。この状態で、ユーザBの通常ジョブG1が実行(S130)されている間にユーザAのセキュアジョブS1が登録される。ジョブの登録は制限(S110)されるが、実行は制限されないので、ユーザBの通常ジョブG1はそのまま処理が継続される。
【0078】
実行順位が変更されなければ通常ジョブG1の終了後は通常ジョブG2が実行(S130)されるが、セキュアジョブS1の実行順位が通常ジョブG1の次に変更されるため、通常ジョブG1の終了後にはセキュアジョブS1の認証が可能(S119:YES)となり、認証成功後に印刷処理が実行される。そのため、通常ジョブG2は実行順位が下がり、セキュアジョブS1の印刷処理待ちとなる。このとき、待機ジョブのユーザに対し、自己の通常ジョブがセキュアジョブの印刷処理待ちになったことを報知(S118)する。これにより自己の通常ジョブが完了したと思って画像処理装置3の前に行き、セキュアジョブの印刷物を見てしまう虞を軽減させることができる。順位変更を行うとセキュア印刷ユーザにとって、早期のセキュアジョブの実行が可能になる。
【0079】
またセキュア印刷ユーザは、通常ジョブが多数蓄積された画像処理装置3においても、見計らって認証作業を行う煩わしさなしにセキュアジョブを実行できる。また本実施形態では、セキュアジョブS1が登録されても実行中のジョブG1は終了するまで処理が継続されるのでジョブG1が中断されることがないため、中断されたユーザBにセキュアジョブS1の印刷物が見られてしまう虞を防止することもできる。一方、ユーザBにとっては自己の機能実行が中断されるといった不都合を解消できる。
【0080】
(5)認証の成功がされない場合
図10を用いて認証の成功がされない場合(S200:NO)について説明する。ジョブの登録状況は図9の場合と同じであり、実行順位変更後にセキュアジョブS1の認証が成功されない場合(S200:NO)を説明する。図10において、通常ジョブG1の機能実行終了後に長時間登録制限が解除されないと、通常ジョブG2の実行を長時間待たせることになる。そこで所定時間Tの間に認証が成功しなければ(S202:YES)、セキュアジョブS1を削除して登録制限を解除(S206)し、通常ジョブG2の機能を実行(S210)する。なお所定時間Tの間は登録が制限され、特定の機能を除く機能の実行も待機させられるため、待機ジョブのユーザに自己の通常ジョブがセキュアジョブの印刷処理待ちになったことを報知(S118)する。これにより待機ジョブのユーザにとっては、自己の通常ジョブが完了したかどうか確認する余計な手間を省くことができる。
【0081】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。特に、各実施形態の構成要素のうち、最上位の発明の構成要素以外の構成要素は、付加的な要素なので適宜省略可能である。
【0082】
(1)上記実施形態の画像処理装置3は、電子写真方式、インクジェット方式のいずれであってもよい。
(2)また、上記実施形態では、認証作業として、ユーザが画像処理装置3の操作部19にてパスワード等を入力する構成を説明したが、これに限らず、例えば画像処理装置3に着脱可能なパスワード等を記憶した外部の記憶メディア24(USBメモリなど)をユーザが画像処理装置3に装着することでCPU11が当該パスワード等を読み込む構成であってもよい。また、画像処理装置3にカードリーダ等の情報読取部を備える場合には、ユーザがカード等を情報読取部に近接させることでCPU11が当該パスワード等を読み込む構成であってもよい。
【0083】
(3)また、セキュア機能を利用して印刷要求する場合に、各ユーザのコンピュータ5の操作部39で所定時間を入力させ、その入力された所定時間に基づき図3のS202での所定時間を変更する構成であってもよい。この構成によれば、ユーザがセキュアジョブを登録するための印刷要求時に所定時間を設定できるので、その印刷要求時の画像処理装置3の使用環境等に応じて柔軟に所定時間を設定できる。
【0084】
(4)ジョブのジョブ管理テーブルへの登録された順番を優先してジョブを処理する場合、セキュアジョブによる実行順位の変更は行わず、待機ジョブの後ろの順位にセキュアジョブを登録し、セキュアジョブが先頭ジョブになるのを待つ構成にしてもよい。
【0085】
(5)上記実施形態では、各ユーザが各自所有のコンピュータ5を有する構成であったが、これに限らず、1つのコンピュータを複数のユーザが共有し、各ユーザが当該共有コンピュータにて実行要求を行う構成であってもよい。この構成で、例えば図2のS142における報知をする場合、上記共有コンピュータの表示部にセキュアジョブの「ユーザ識別情報」を含んだメッセージ等を表示させることが好ましい。
【0086】
(6)登録制限解除のタイミングはセキュア印刷処理後に設定してもよい。この場合、より機密性の高い印刷物が他のユーザに見られる虞が低減される。また他のユーザにとって待機時間が長くなる等の不都合があるのであれば、登録制限解除のタイミングを認証成功の直後に設定すると、制限されていたユーザがより早くジョブを登録することができ、待機時間が短縮される。
【0087】
(7)(報知の方法について)
登録制限対象ジョブがジョブの登録制限状態にあることを報知するための処理について、具体的には、次の少なくともいずれか1つの方法により報知する。
(A)画像処理装置3に備えられた表示灯(例えばLED)を所定のパターンで点灯させる。
(B)画像処理装置3の表示部21に先頭ジョブのセキュアジョブのユーザ情報を表示させる。図6の例ではセキュアジョブS1のユーザ名「A」を表示させる。これにより、画像処理装置3の前に来たユーザBは、誰のセキュアジョブによって自己のジョブG1が印刷処理されないのかを知ることができる。
(C)先頭ジョブであるセキュアジョブのユーザのコンピュータ5の表示部41に例えばポップアップメニュー等により、セキュアジョブの認証作業を早期に行うように促すメッセージ等を表示させる。図6の例ではユーザAのコンピュータ5Aの表示部41に上記メッセージ等を表示させる。これにより、登録制限対象ジョブの登録制限状態が早期に解消することが期待できる。なお、報知としては、音声による方法であってもよい。
(D)登録が制限されたユーザのコンピュータ5の表示部41に例えばポップアップメニュー等により、優先ジョブにより実行要求が拒否された旨のメッセージ等を表示させる。これにより、エラーや自己の印刷物を確認しようと画像処理装置3の前に行く手間が省ける。またセキュアジョブの印刷物を見られる虞も軽減される。
(E)待機ジョブユーザのコンピュータ5の表示部41に例えばポップアップメニュー等により、優先ジョブにより実行順位が下がり、待機ジョブとなった旨のメッセージ等を表示させる。これにより、自己のジョブが待機状態であることを確認することができ、画像処理装置3の前に行って待機する時間を減らすことができる。またセキュアジョブの印刷物を見られる虞も軽減される。
【符号の説明】
【0088】
1…画像処理システム
3…画像処理装置
5…コンピュータ(情報処理装置)
11…CPU(登録部、実行部、認証部、制御部)
17…NVRAM
21…表示部(第2の報知部)
23…印刷部
26…ファクシミリ部
31…CPU(表示制御部)
39…操作部
41…表示部(第1の報知部、第2の報知部)
S1…セキュアジョブ
G1、G2…ジョブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と画像処理装置とが通信可能に接続されて構成される画像処理システムにおいて、
実行要求に基づきジョブを登録する登録部と、
前記登録部に登録されたジョブを実行する実行部と、
前記ジョブが、開錠条件が付加された印刷ジョブとしての錠付ジョブである場合に、当該開錠条件が満たされるまで前記実行部による当該錠付ジョブの印刷処理を禁止する認証部と、
前記錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録を制限する制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記開錠条件が満たされた場合には、実行要求をなされるジョブの登録制限状態を解除することを特徴とする請求項1記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記錠付ジョブの登録後、所定時間内に前記開錠条件が満たされなかった場合には、実行要求をなされるジョブの登録制限状態を解除することを特徴とする請求項2記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像処理装置が印刷機能以外に画像データを処理する特定の機能を有している場合、その特定の機能を実行するためのジョブの登録を許可することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記特定の機能が、外部のファクシミリ装置から送信されてきた画像データの受信機能であることを特徴とする請求項4記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記特定の機能が、前記情報処理装置から送信されてきた画像データを外部のファクシミリ装置に転送する機能であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記制御部は、実行しているジョブの有無を判別し、前記実行しているジョブが有ると判別した場合は、前記実行しているジョブの次の順位に、錠付ジョブの実行順位を変更することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記実行しているジョブの次の順位に錠付ジョブの実行順位を変更した場合には、前記錠付ジョブの登録前に登録され、且つ、未実行のジョブユーザに、錠付ジョブの印刷処理待ちになったことを報知する第1の報知部を備えることを特徴とする請求項7記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記開錠条件が満たされる前に、前記錠付ジョブのユーザによるジョブ要求があった場合、当該ジョブの登録を許可することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項10】
登録制限状態である場合に、
その登録制限原因となっている錠付ジョブの印刷処理待ちであることを報知する第2の報知部を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記情報処理装置は、表示部を有し、
登録制限状態である場合、その登録制限原因となっている錠付ジョブのユーザに対応する
情報処理装置の前記表示部に、当該錠付ジョブが前記登録制限原因になっている旨を表示させる表示制御部を備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像処理システム。
【請求項12】
実行要求に基づきジョブを登録する登録部と、
前記登録部に登録されたジョブを実行する実行部と、
前記ジョブが、開錠条件が付加された印刷ジョブとしての錠付ジョブである場合に、当該開錠条件が満たされるまで前記実行部による当該錠付ジョブの印刷処理を禁止する認証部と、
前記錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録を制限する制御部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
画像処理装置に備えられるコンピュータに、
実行要求に基づきジョブを登録する登録処理と、
前記登録部に登録されたジョブを実行する実行処理と、
前記ジョブが、開錠条件が付加された印刷ジョブとしての錠付ジョブである場合に、当該開錠条件が満たされるまで前記実行部による当該錠付ジョブの印刷処理を禁止する認証処理と、
前記錠付ジョブの登録後に、実行要求をなされるジョブの登録を制限する制御処理と、を実行させるジョブ管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−177997(P2010−177997A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17699(P2009−17699)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】