説明

画像処理システム

【課題】 ラインセンサカメラから入力した画像を画像処理専用のハードウェアを用いることなく実時間処理して欠陥を検出する。
【解決手段】 複数台のラインセンサカメラ121 〜12N からの画像データの処理が必要な場合に、1台のラインセンサカメラ12に1台のボードコンピュータ11を割り当てて画像処理を行い、画像処理の結果をLANで結合させたホストコンピュータ13に転送し、ホストコンピュータ13が、ボードコンピュータ111 〜11N からの画像処理の結果をディスプレイ14に表示する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ガラス基板等の検査対象物の欠陥を検出する画像処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、パーソナルコンピュータの処理能力が向上してきたのとともに、大容量メモリの搭載が可能になってきたため、検査対象物の欠陥を検出するための画像処理システムには、パーソナルコンピュータが用いられるようになってきている。
【0003】図3は、ガラス基板等の検査対象物の欠陥を検出する従来の画像処理システムを示す構成図である。図3に示す従来の画像処理システムは、パーソナルコンピュータ31と、1台当たり2000〜10000画素の複数のラインセンサカメラ321 〜324 と、ディスプレイ33とにより構成されている。パーソナルコンピュータ31は、CPU34と、画像データを記憶するためのメモリ35と、画像を処理するための専用のハードウェアである複数の画像処理ボード361 〜364 と、表示制御装置37を備え、これらはバス(例:PCIバス)38に接続されている。
【0004】ラインセンサカメラ321 〜324 は、それぞれ画像処理ボード361 〜364 に接続され、ディスプレイ33は、表示制御装置37に接続されている。
【0005】また、ラインセンサカメラ321 〜324 は、ガラス基板26を所定の走査ラインに沿って撮像するために、ガラス基板26の一方の面に対向するように配置され、また、照明装置28が、ガラス基板26の他方の面に対向するようにが配置されている。そして、照明装置28からの光がガラス基板26を透過してラインセンサカメラ321 〜324 の受光部に入射するように構成されている。
【0006】ラインセンサカメラ321 〜324 から入力した画像を処理してガラス基板26の欠陥を検出するシステムでは、通常、下記の手順で処理を行う。
1.ラインセンサカメラ321 〜324 から画像を入力する。
2.グレーデータ(8ビットデータなら256階調)にディジタルフィルタ処理をかけ、欠陥を抽出しやすいデータに変換する。
3.あるスライスレベルで2値化(3〜5値化を行う場合もある)する。
4.2値化処理で抽出された画像にラベリング処理を行い、サイズ・面積・位置などのデータを求める。
5.サイズ・面積を設定値と比較して大小に分類し、ディスプレイ33に欠陥表示を行う。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した手順をコンピュータ上で実時間(リアルタイム)処理するには、画像データがあまりに大量であり、ソフトウェアによる処理だけでは間に合わないため、通常は画像処理専用のハードウェアである画像処理ボードを用意し、そのハードウェアで処理した結果を表示するのが一般である。しかし、この方法では、画像処理専用のハードウェアを用いるため、高価なシステムになってしまう。
【0008】また、一般のパーソナルコンピュータを用いた画像処理システムでは、PCIバスの仕様から、接続できるラインセンサカメラの数に制限があり、約4台が限度である。
【0009】この発明の目的は、ラインセンサカメラから入力した画像を画像処理専用のハードウェアを用いることなく実時間処理して欠陥を検出する画像処理システムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の画像処理システムは、検査対象物の欠陥を検出する画像処理システムにおいて、検査対象物からの画像情報を入力する複数の画像入力手段と、前記画像入力手段に1対1に対応して、画像処理は行わず画像データを入力するためだけの機能を有する画像入力ボードを介して接続され、画像入力手段から入力した画像データを圧縮して画像処理を行って前記検査対象物の欠陥に関する情報データを算出する複数のコンピュータと、前記コンピュータとLANで接続され、前記コンピュータから転送されてきた欠陥に関する情報データを処理して表示するホストコンピュータと、を備えることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】近年のパーソナルコンピュータは、処理能力の向上とともに、大容量メモリの搭載が可能なため、画像用のボードは入力するだけの機能にして、画像データの処理は全てコンピュータソフトで行うことができる。
【0013】しかし、パーソナルコンピュータの処理能力が向上してきているとは言っても、現状のレベルでは1台のコンピュータシステムで実時間(リアルタイム)処理ができるのは、10000画素のカメラ1台が限度である。そこで、この発明は、複数台のラインセンサカメラからの画像データの処理が必要な場合は、1台のラインセンサカメラに1台のコンピュータを割り当てて画像処理を行い、その結果を高速LANで結合させた別のホストコンピュータに転送し、ホストコンピュータが、各コンピュータからの画像処理結果を受けて全体での欠陥処理の結果を表示するものである。
【0014】図1は、この発明の画像処理システムの実施の形態を示す構成図である。
【0015】図1に示す画像処理システムは、複数のボードコンピュータ111 〜11N と、ボードコンピュータ111 〜11N にそれぞれ接続されたラインセンサカメラ121 〜12N と、ホストコンピュータ13と、ホストコンピュータ13に接続されたディスプレイ14とにより構成され、ボードコンピュータ111 〜11Nとホストコンピュータ13とはLAN15により接続されている。
【0016】ボードコンピュータ11は、CPU16と、画像データを記憶するためのメモリ17と、画像処理は行わず、画像データを入力するためだけの機能を有する画像入力ボード18と、LAN15に接続するためのLANボード19を備え、これらはバス20で接続されている。
【0017】ホストコンピュータ13は、CPU21と、画像データを記憶するためのメモリと22と、表示制御装置23と、LANボード24を備え、これらはバス25で接続されている。
【0018】ラインセンサカメラ121 〜12N は、それぞれボードコンピュータ111 〜11N 内の画像入力ボード18に接続され、ディスプレイ14は、表示制御装置23に接続されている。
【0019】また、ラインセンサカメラ121 〜12N は、ガラス基板26を所定の走査ラインに沿ってそれぞれ所定の部分を走査するために、ガラス基板26の一方の面に対向するように配置されている。図2は、5台のラインセンサカメラが走査ラインに沿ってそれぞれ走査するときの状態を示す図である。矢印はガラス基板26の搬送方向である。ラインセンサカメラ121 は、走査ライン27に沿って範囲L1の部分を走査し、ラインセンサカメラ122 は、走査ライン27に沿って範囲L2の部分を走査し、以下同様に、ラインセンサカメラ1235 は、それぞれ走査ライン27に沿って範囲L3〜L5の部分を走査する。
【0020】また、照明装置(蛍光灯)28が、ガラス基板24の他方の面に対向するように配置されている。そして、照明装置28からの光がガラス基板26を透過してラインセンサカメラ121 〜12N の受光部に入射するように構成されている。
【0021】次に、図1に示す実施の形態の動作を説明する。
【0022】ボードコンピュータ11は、1台当たり2000画素〜10000画素のラインセンサカメラ12から画像入力ボード18を介して、ガラス基板26の画像データとしてグレーデータを入力し(8ビットデータなら256階調)、メモリ17に格納し、格納されたグレーデータを圧縮する。
【0023】次に、あるスライスレベルで2値化(3〜5値化を行う場合もある)し、2値化処理で抽出された画像データにラベリング処理を行って欠陥の位置、サイズ(x,y)、面積、最大値、最小値、体積などの欠陥に関する情報データを求める。さらに、欠陥のサイズ、面積を設定値と比較して欠陥を大小に分類し、分類された欠陥に関する情報データをホストコンピュータ13のメモリ22に転送する。
【0024】ホストコンピュータ13は、各ボードコンピュータ11から転送されてきた欠陥に関する情報データをソーティング等の処理をして大きい物から順に並べてディスプレイ14に表示する。そして、所定の大きさ以上の欠陥が所定の個数以上である場合に、ガラス基板24を不良品と判定する。
【0025】なお、ボードコンピュータ11で行っている、欠陥のサイズ・面積を設定値と比較して大小に分類する処理をホストコンピュータ13で行うようにしても良い。また、ボードコンピュータ11からホストコンピュータ13に欠陥位置の周辺の画像データを転送してディスプレイ14に欠陥位置の周辺の画像を表示するようにしても良い。
【0026】また、上述した実施の形態では、画像入力ボード18は、画像処理は行わず、画像データを入力するためだけの機能を有するものとしたが、画像データを入力するとともに、シェーディング補正等の一部の画像処理を行うようにして、コストが高くならない範囲で画像処理ボード18に画像処理の一部を分担させるようにしても良い。
【0027】さらに、現状では1台のボードコンピュータで実時間処理ができるのは10000画素程度のカメラ1台が限度であり、カメラ1台にボードコンピュータ1台の構成であるが、処理速度・搭載メモリがさらに向上してくれば、ボードコンピュータ1台で複数台のカメラの画像を処理することも可能である。
【0028】また、カメラから入力したデータを圧縮した後に2値化処理およびラベリング処理をして欠陥情報データを求めているが、処理速度・搭載メモリがさらに向上してくれば、データを圧縮することなく欠陥情報データを求めることも可能である。
【0029】また、上述した実施の形態では、透射光を用いて検査対象物の欠陥を検出する場合について説明したが、この発明は、反射光を用いて検査対象物の欠陥を検出する場合にも適用できるものである。また、ガラス基板の欠陥を検出する場合について説明したが、この発明は、ガラス基板に限るものではなく、無地の板状の物、例えばプラスチック板、鉄板、紙、フィルムの欠陥を検出する場合にも適用できるものである。
【0030】また、上述した実施の形態では、ボードコンピュータを用いたが、ボードコンピュータに代えて通常のパーソナルコンピュータを用いても良い。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、画像処理専用の高価な画像処理ボードを用いることなく、画像データを入力するためだけの安価な画像入力ボードを用いることにより、安価なシステムが構築できる。
【0032】また、この発明は、複数台のコンピュータの処理を分散させ、それらのコンピュータを高速LANで結合させることにより、安価なシステムでありながら大量の画像データの実時間処理を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の画像処理システムの実施の形態を示す構成図である。
【図2】5台のラインセンサカメラが走査ラインに沿ってそれぞれ走査するときの状態を示す図である。
【図3】従来の画像処理システムを示す構成図である。
【符号の説明】
111 〜11N ボードコンピュータ
121 〜12N ,321 〜324 ラインセンサカメラ
13 ホストコンピュータ
14,33 ディスプレイ
15 LAN
16,21,34 CPU
17,22,35 メモリ
18 画像入力ボード
19,24 LANボード
20,25,38 バス
23,37 表示制御装置
26 ガラス基板
27 走査ライン
28 照明装置
31 パーソナルコンピュータ
361 〜364 画像処理ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】検査対象物の欠陥を検出する画像処理システムにおいて、複数台の画像入力手段からの画像データの処理が必要な場合に、1台の画像入力手段に1台のコンピュータを割り当てて画像処理を行い、画像処理の結果をLANで結合させたホストコンピュータに転送し、ホストコンピュータが、各コンピュータからの画像処理の結果を表示手段に表示することを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】検査対象物の欠陥を検出する画像処理システムにおいて、検査対象物からの画像情報を入力する複数の画像入力手段と、前記画像入力手段に1対1に対応して、画像処理は行わず画像データを入力するためだけの機能を有する画像入力ボードを介して接続され、画像入力手段から入力した画像データを圧縮して画像処理を行って前記検査対象物の欠陥に関する情報データを算出する複数のコンピュータと、前記コンピュータとLANで接続され、前記コンピュータから転送されてきた欠陥に関する情報データを処理して表示するホストコンピュータと、を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】検査対象物の欠陥を検出する画像処理システムにおいて、検査対象物からの画像情報を入力する複数の画像入力手段と、前記画像入力手段に1対1に対応して、画像データを入力するとともに一部の画像処理を行う機能を有する画像入力ボードを介して接続され、画像入力手段から入力した画像データを圧縮して画像処理を行って前記検査対象物の欠陥に関する情報データを算出する複数のコンピュータと、前記コンピュータとLANで接続され、前記コンピュータから転送されてきた欠陥に関する情報データを処理して表示するホストコンピュータと、を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】前記コンピュータは、複数個の前記画像入力ボードを備えて、複数の前記画像入力手段に接続され、複数の画像入力手段から入力した画像データを圧縮して画像処理を行って前記検査対象物の欠陥に関する情報データを求めることを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理システム。
【請求項5】前記画像処理は、あるスライスレベルで2値化し、2値化された後にラベル付けを行う処理であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項6】前記欠陥に関する情報データは、欠陥の位置、サイズ(x,y)、面積、最大値、最小値、体積であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−24802(P2002−24802A)
【公開日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−201906(P2000−201906)
【出願日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】