説明

画像処理方法および画像形成装置

【課題】簡単なアルゴリズムで自由度の高い色材量削減を実現できる画像処理方法および画像形成装置を提供する。
【解決手段】CMYKの画像データ51をK成分と3次色成分と2次色成分と1次色成分の画像データ52に変換し、必要な色材削減量に対してK色成分を所定の制限範囲内で増加させ、それに応じて増加させた色材制限量を3次色成分によって可能な範囲で削減し(53)、色材削減量が0にならない場合は2次色成分でさらに削減し、それでも0にならなければ1次色成分で削減する。これらの削減制御によって生じる色味の変化を各種の色成分を増減させて補償し(54)、該補償による色材量の変動分を3次色成分の増減で相殺する(55)。最後に画像データを正規化(56)してCMYKに戻す(57)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に使用される色材量を制限する画像処理方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成に使用する色材量が一定量を超えると、プロセス状況に応じて画像形成に各種の弊害が発生するほか、記録紙の搬送に支障が生じることがある。たとえば、電子写真プロセスでは、画素あたりの色材であるトナーの量が多すぎると定着不良になってトナーが飛散してしまう。またインクジェットプリンタでは紙がインクを保持しきれずに滲みが生じてしまう。
【0003】
色材量を減少させる方法には、たとえば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(ブラック)の色材を用いる場合、C,M,Yを等量ずつ合成すればKの近似色が得られるため、C,M,Yを10ずつ減らしてKを10増やすといったことが行われる。これにより、総量は20減少することになる。
【0004】
また、下記特許文献1には、色材料の総量が制限値に至る前は色材量を一切制限せずに総量制限値で急に色材量を制限すると制限有無の境界で色の変化が生じ易いので、これを防止すべく、総量制限値の前後所定範囲において次第に色材量を制限する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−303006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
等量のC,M,YをKで置き換える手法では、元のC,M,Yがそれぞれ0%を下回らないように、またKが100%を上回らないようにする必要がある。そのため、C,M,Yの色成分のバランスが極端に偏っている場合には調整の自由度が不十分で色材量を十分削減することができなくなる。
【0007】
たとえば、C=100%、M=100%、Y=5%、K=75%の場合、色材量の合計は280%であり、色材量を260%以下に制限したい場合には、C、M、Yを各10%ずつ削減してKを10%増やす必要がある。しかし、元のYが5%しか存在しないのでC、M、Yを5%以上は削減できず、必要な削減量を確保できない。
【0008】
また、等量のC,M,YをKで置き換える手法のみでは、色再現性を調整する手段が限られるため、置換率条件で色再現性を一定に確保することは困難であり、色材量制限条件を優先すれば、厳密な色再現を実現できなくなる。厳密な色再現が求められる場合は複数のプロファイルを用意し、色材量制限条件に応じてプロファイルを切替えることで色再現性を管理しなければならず、その管理が複雑で面倒になる。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、簡単なアルゴリズムで自由度の高い色材量削減を実現できる画像処理方法および画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0011】
[1]N(Nは2以上の整数)個の異なる色成分と、前記N個の各色成分を等量ずつ合成した色で近似されるK色成分とで表される画像データに対して、すべての色成分の成分量の合計が目標値以下となるための必要削減量を決定する工程と、
前記画像データのうちの前記N個の色成分を、
前記N個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が前記N個の色成分の成分量の中の最小量に等しいN次色成分と、
(N−m)次色成分を構成する(N−m)個の色成分のうち成分量が最小の色成分を除く(N−m−1)個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が、前記(N−m−1)個の色成分の成分量の中の最小量から、N次色成分から(N−m)次色成分までの各成分量を減算した値の(N−m−1)次色成分を生成することを、mを0から(N−1)まで1ずつ増やして繰り返し行うことで得られる(N−1)次色成分、(N−2)次色成分・・・1色次成分と、
で表すように変換する工程と、
前記必要削減量に所定の係数を乗じて得た値とK色成分の成分量とからK色成分の増加量を決定し、K色成分の成分量に前記増加量を加算した値をK色成分の成分量にすると共に、前記必要削減量に前記増加量を加算した値を新たな必要削減量として求める工程と、
前記必要削減量を(N−m)で除算して得た値と(N−m)次色成分の成分量とのうちの小さい方の値を(N−m)次色成分の削減量として決定し、(N−m)次色成分の成分量から該削減量を減算した値を(N−m)次色成分の成分量にすると共に前記削減量の(N−m)倍を前記必要削減量から減算した値を新たな必要削減量として求めることを、0からmを1ずつ増加させて、前記新たな必要削減量がゼロになるまで繰り返し行う増減工程と、
前記増減工程後のK色成分、N次色成分、N−1次色成分、・・・、1次色成分を、K色成分と前記N個の色成分に再構成する工程と、
を行うことで、前記画像データの色成分量の合計を前記目標値以下に制限する
ことを特徴とする画像処理方法。
【0012】
上記発明では、N個の色成分と該N個の色成分を等量ずつ合成した色に近似した色のK色成分とで構成される画像データの成分量の合計を目標値以下に削減する場合に、N個の色成分を、N次色成分、N−1次色成分、N−2次色成分、…、1次色成分に変換する。必要削減量に応じた制限範囲内でK色成分の成分量を増加させ、その増加分を加算したものを新たな必要削減量にする。そして、この必要削減量を、N次色成分によって可能な範囲で削減し、残る必要削減量が0にならない場合はN−1次色成分でさらに削減し、それでも0にならなければN−2次色成分で削減するというようにして、必要削減量が0になるまで削減処理を行い、削減完了後のN次色成分、N−1次色成分、…、1次色成分を元のN個の色成分に戻す。これにより、簡単なアルゴリズムで自由度の高い色材量削減が実現される。
【0013】
[2]前記増減工程におけるN次色成分の削減量に対して、
該削減による色味の変化が補償されるように、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−1個の色成分を等量ずつ組み合わせた任意のN−1次色成分、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−2個の色成分を等量ずつ組み合せた任意のN−2次色成分、同様に任意のN−3次色成分、・・・、任意の1次色成分のそれぞれに対して増減制御を行う工程と、
前記工程と同様の増減制御を、前記増減工程におけるN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分の各削減量に対して行う工程と、
前記増減制御による成分量総和の増減を相殺するようにN次色成分を増減調整する工程と、
をさらに有する
ことを特徴とする[1]に記載の画像処理方法。
【0014】
上記発明では、増減工程におけるN次色成分、N−1次色成分等の成分量の削減によって生じる色味の変化を補償する。
【0015】
[3]前記増減制御の結果、複数になったN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分をそれぞれ単一のN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分に再構成する工程をさらに有する
ことを特徴とする[2]に記載の画像処理方法。
【0016】
上記発明では、色味調整により、N−1次色成分、N−2次色成分、…、1次色成分などが複数になった場合は、それぞれを単数とするように再構成(正規化)する。
【0017】
[4]前記所定の係数を、定数項と、K色成分の成分量に応じて定めた第1係数と、N次色成分の成分量に応じて定めた第2係数との合計値とする
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【0018】
上記発明では、必要削減量に所定の係数を乗じた値は、K色成分の上限増加量となっており、該係数を、定数項と、K色成分の成分量に第1係数を乗じた値と、N次色成分の成分量に第2係数を乗じた値の合計として求める。すなわち、元の画像データに含まれるK色成分の成分量が多いほど上限増加量が増え、またN次色成分の成分量が多いほど上限増加量が増えるようになる。
【0019】
[5]前記N個の色成分は、シアン、マゼンタ、イエロである
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【0020】
[6]N(Nは2以上の整数)個の異なる色成分に対応するN色の色材と、前記N個の各色成分を等量ずつ合成した色で近似されるK色成分に対応する色材とを使用して画像形成する画像形成部と、
前記N個の色成分と前記K色成分とで表される画像データに対して、すべての色成分の成分量の合計が目標値以下となるための必要削減量を決定する工程と、
前記画像データのうちの前記N個の色成分を、
前記N個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が前記N個の色成分の成分量の中の最小量に等しいN次色成分と、
残りの(N−m)個の色成分のうち成分量が最小の色成分を除く(N−m−1)個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が、前記(N−m−1)個の色成分の成分量の中の最小量から、N次色成分から(N−m)次色成分の各成分量を減算した値の(N−m−1)次色成分を生成することを、mを0から(N−1)まで1ずつ増やして繰り返し行うことで得られる(N−1)次成分、(N−2)次成分・・・1次成分と、
で表すように変換する工程と、
前記必要削減量に所定の係数を乗じて得た値とK色成分の成分量とからK色成分の増加量を決定し、K色成分の成分量に前記増加量を加算した値をK色成分の成分量にすると共に、前記必要削減量に前記増加量を加算した値を新たな必要削減量として求める工程と、
前記必要削減量を(N−m)で除算して得た値と(N−m)次色成分の成分量とのうちの小さい方の値を(N−m)次色成分の削減量として決定し、(N−m)次色成分の成分量から該削減量を減算した値を(N−m)次色成分の成分量にすると共に前記削減量の(N−m)倍を前記必要削減量から減算した値を新たな必要削減量として求めることを、0からmを1ずつ増加させて、前記新たな必要削減量がゼロになるまで繰り返し行う増減工程と、
前記増減工程後のK色成分、N次色成分、N−1次色成分、・・・、1次色成分を、K色成分と前記N個の色成分に再構成する工程と、
を行うことで、前記画像データの色成分量の合計値を前記目標値以下に制限する色材量制御部と、
を有し、
前記画像形成部は、前記色材量制御部で処理後の画像データに基づいて画像形成する
ことを特徴とする画像形成装置。
【0021】
上記発明では、画像形成部は、N(Nは2以上の整数)個の異なる色成分に対応するN色の色材と、N個の各色成分を等量ずつ合成した色で近似されるK色成分に対応する色材とを使用して画像形成し、色材量制御部は、画像形成部に与える画像データの成分量の合計が目標値以下になるように成分量を削減する。該削減は、N個の色成分をN次色成分、N−1次色成分、N−2次色成分、…、1次色成分に変換し、必要削減量に応じた制限範囲内でK色成分の成分量を増加させ、その増加分を加算したものを新たな必要削減量にする。そして、この必要削減量を、N次色成分によって可能な範囲で削減し、残る必要削減量が0にならない場合はN−1次色成分でさらに削減し、それでも0にならなければN−2次色成分で削減するというようにして、必要削減量が0になるまで削減処理を行い、削減完了後のN次色成分、N−1次色成分、…、1次色成分をN個の色成分に戻す、という工程で行われる。これにより、簡単なアルゴリズムで自由度の高い色材量削減が実現される。
【0022】
[7]前記色材量制御部は、
前記増減工程におけるN次色成分の削減量に対して、
該削減による色味の変化が補償されるように、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−1個の色成分を等量ずつ組み合わせた任意のN−1次色成分、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−2個の色成分を等量ずつ組み合せた任意のN−2次色成分、同様に任意のN−3次色成分、・・・、任意の1次色成分のそれぞれに対して増減制御を行う工程と、
前記工程と同様の増減制御を、前記増減工程におけるN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分の各削減量に対して行う工程と、
前記増減制御による成分量総和の増減を相殺するようにN次色成分を増減調整する工程と、
をさらに実施する
ことを特徴とする[6]に記載の画像形成装置。
【0023】
上記発明では、増減工程におけるN次色成分、N−1次色成分等の成分量の削減によって生じる色味の変化を補償する。
【0024】
[8]前記色材量制御部は、
前記増減制御の結果、複数になったN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分をそれぞれ単一のN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分に再構成する工程をさらに実施する
ことを特徴とする[7]に記載の画像形成装置。
【0025】
上記発明では、色味調整により、N−1次色成分、N−2次色成分、…、1次色成分などが複数になった場合は、それぞれを単数とするように再構成(正規化)する。
【0026】
[9]前記色材量制御部は、
前記所定の係数を、定数項と、K色成分の成分量に応じて定めた第1係数と、N次色成分の成分量に応じて定めた第2係数との合計値とする
ことを特徴とする[6]乃至[8]のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0027】
上記発明では、必要削減量に所定の係数を乗じた値は、K色成分の上限増加量となっており、該係数を、定数項と、K色成分の成分量に第1係数を乗じた値と、N次色成分の成分量に第2係数を乗じた値の合計として求める。すなわち、元の画像データに含まれるK色成分の成分量が多いほど上限増加量が増え、またN次色成分の成分量が多いほど上限増加量が増えるようになる。
【0028】
[10]前記N個の色成分は、シアン、マゼンタ、イエロである
ことを特徴とする[6]乃至[9]のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る画像処理方法および画像形成装置によれば、簡単なアルゴリズムで自由度の高い色材量削減が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理方法で色材量制限処理を行う画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の画像処理方法による色材量の制限手順を示す流れ図である。
【図3】C,M,Yを3次色成分、2次色成分、1次色成分に変換する工程を示す説明図である。
【図4】リミットテーブルの入出力関係の一例を示す特性図である。
【図5】色材量の削減工程を示す説明図である。
【図6】色味調整以後の工程を示す説明図である。
【図7】正規化の手順を示す説明図である。
【図8】適用例1に対する色材量制限処理による画像データの変化を示す説明図である。
【図9】適用例2に対する色材量制限処理による画像データの変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明に係る画像処理方法による色材量制限を行う画像形成装置10の概略構成を示している。画像形成装置10は、原稿を光学的にカラーで読み取ってその複製画像を記録紙にカラー印刷するカラーコピー機能、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり外部端末へネットワークを通じて送信したりするスキャン機能、外部端末からネットワークを通じて受信した印刷データに係る画像を記録紙上に形成して印刷出力するPCプリント機能などを備えた、所謂、カラー複合機である。
【0033】
画像形成装置10は、当該画像形成装置10の動作を統括制御する制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11を備えている。CPU11には、バス12を通じて画像読取部13と、画像形成部14と、ROM(Read Only Memory)15と、RAM(Random Access Memory)16と、不揮発メモリ17と、表示部18と、操作部19と、画像処理部21と、ネットワークI/F部22と、ハードディスク装置23とが接続されている。
【0034】
ROM15には各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU11が処理を実行することにより画像形成装置10としての各機能が実現される。RAM16はCPU11がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。
【0035】
画像読取部13は、原稿を光学的にカラーで読み取って画像データを取得する機能を果たす。画像読取部13は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るカラーのラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0036】
画像形成部14は、画像データに応じたカラー画像を記録紙に印刷する機能を果たす。ここでは、タンデム型のカラーレーザープリンタとして構成されており、C(シアン)色、M(マゼンタ)色、Y(イエロ)色、K(ブラック)色のトナーを画像形成の色材として使用する。
【0037】
画像形成部14は、無端環状の周回駆動される中間転写ベルトを備え、この中間転写ベルトに沿って、C色用の像形成部とM色用の像形成部とY色の像形成部とK色用の像形成部が配置されている。C色用の像形成部はC色用の画像データに応じてC色のトナー像を形成して中間転写ベルト上に転写する。M色用の像形成部はM色用の画像データに応じてM色のトナー像を形成して中間転写ベルト上に転写する。Y色用の像形成部はY色用の画像データに応じてY色のトナー像を形成して中間転写ベルト上に転写する。K色用の像形成部はK色用の画像データに応じてK色のトナー像を形成して中間転写ベルト上に転写する。画像形成部14では、C、M、Y、Kの各色トナーを中間転写ベルト上で重ね合わせてフルカラーの画像を形成する。
【0038】
詳細には、C、M、Y、Kの像形成部はそれぞれ、表面に静電潜像が形成される円筒状の静電潜像担持体としての感光体と、感光体上をレーザ光で走査するレーザーユニットと、感光体の周囲に配置された帯電装置と現像装置とクリーニング装置とを備えて構成される。感光体は、一定方向に一定速度で回転駆動されており、帯電装置はこの感光体を一様に帯電させる。レーザーユニットは、画像データに応じて変調されたレーザ光で感光体上を走査して、感光体の表面に静電潜像を形成する。現像装置は、感光体上の静電潜像をトナーで顕像化する。感光体の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルトと接触する箇所で中間転写ベルトに転写され、クリーニング装置は、転写後の感光体の表面に残留するトナーをブレード等で擦って除去し回収する。
【0039】
C、M、Y、Kの各像形成部によって形成された中間転写ベルト上のカラートナー像は、給紙カセットなどから搬送されてきた記録紙に所定の転写位置で転写される。転写された記録紙上のトナー像は、この記録紙が定着器を通る際に加熱加圧されて記録紙に固着される。定着後の記録紙は、片面印刷の場合は排紙トレイへ排出される。両面印刷の場合は、記録紙の表裏を反転させた後、再び転写位置へ送り出され、中間転写ベルトから記録紙の裏面(2面目)にトナー像転が写され、再び定着器を通って排紙トレイに排出される。
【0040】
不揮発メモリ17には、システム情報、ユーザ情報などが記憶される。システム情報には色材量制限のための各種データも含まれる。
【0041】
表示部18は、液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作画面、設定画面などを表示する機能を果たす。操作部19は、ユーザからジョブの設定・投入操作など各種の操作を受け付ける機能を果たす。操作部19は、表示部18の画面上に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネルのほかテンキーや文字入力キー、スタートキーなどを備えて構成される。
【0042】
画像処理部21は、画像の拡大縮小、回転などの処理のほか、印刷データをイメージデータに変換するラスタライズ処理、画像データの圧縮、伸張処理などを行う。
【0043】
ネットワークI/F部22は、LANなどのネットワークと接続してネットワーク上の端末装置やサーバなどと各種のデータを送受信する機能を果たす。ハードディスク装置23は、大容量不揮発の記憶装置であり、たとえば、印刷データや画像データの保存に使用される。
【0044】
本実施の形態に係る画像形成装置10は、画素単位のC、M、Y、Kのトナーの使用量を制限する機能(色材量制限機能)を備えている。色材量制限機能に関する制御は、ROM15に格納されているプログラムに従ってCPU11が行う。画像処理部21がその一部あるいは全部を実施するように構成されてもよい。
【0045】
図2は、色材量制限処理の流れを示している。画像形成装置10のCPU11は、処理対象の画像データを入力し(ステップS101)、画素毎に以下の処理を行う。画像データは、C、M、Y、Kの色成分で構成されている。なお、具体的な適用例1として、図3に示す画像データ51に対して色材量制限を行う場合を例示しながら図2の説明を行う。図3の画像データ51は、C=100%、M=90%、Y=80%、K=60%であり、色材量の総和は330%になっている。ここでは、色材量を250%に制限するものとする。
【0046】
まず、色成分変換を行う(図2:ステップS102)。色成分変換では、C,M,Yを、3次色成分、2次色成分、1次色成分に変換する。3次色成分は、C,M,Yの各色成分を等量ずつ合成した成分(Pb成分とする)であり、Kに近似した色を表す。3次色成分の成分量は、元の画像データのC,M,Yのうちの最小の成分量となる。たとえば、図3の画像データ51では、C=100%、M=90%、Y=80%なので、3次色成分の成分量は80%になる。なお、等量とは、各色成分の100%に対する割合が等しいという意味である。100%の色材量とは、トナーであれば最大濃度でのトナー付着量(付着可能な最大量)である。
【0047】
2次色成分は、3次色成分を構成する色成分(C,M,Y)のうち成分量が最小の色成分を除く残りの色成分を等量ずつ合成した成分である。成分量は、該2次色成分を構成する色成分のうちの最小の成分量から、3次色成分の成分量を減算した値になる。図3の画像データ51では、Yの成分量が最小なので、2次色成分はCとMを等量ずつ合成したB(ブルー)成分になる。また、2次色成分の成分量は、CとMのうちの少ない方の成分量(90%)から3次色成分の成分量(80%)を減算した値(10%)になる。
【0048】
1次色成分は、2次色成分を構成する色成分(C,M)のうち成分量が最小の色成分を除く残りの色成分である。成分量は、該1次色成分を構成する色成分の成分量から、3次色成分の成分量と2次色成分の成分量とを減算した値になる。図3の画像データ51の例では、CとMの中ではMの成分量が最小になるので、1次色成分はC成分になる。また、成分量は、Cの成分量(100%)から3次色成分の成分量(80%)と2次色成分の成分量(10%)とを減算した値(10%)になる。
【0049】
図3の例では、CMYKで表現された画像データ51が、3次色成分Pb(80%)と、2次色成分B(10%)と、1次色成分C(10%)と、K成分(60%)とからなる画像データ52に変換される。
【0050】
上記の色変換を一般化して記述すると以下になる。画像データは、N個の色成分とこれらN個の色成分を等量ずつ合成したK色とからなるものとする。Nは2以上の整数とする。
【0051】
N次色成分は、N個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量は該N個の色成分の成分量の中の最小量に等しい。
【0052】
N−1次色成分は、N次色成分を構成する色成分のうち成分量が最小の色成分を除くN−1個の色成分を等量ずつ合成した成分である。N−1次色成分の成分量は、N−1次色成分を構成するN−1個の色成分の成分量の中の最小量からN次色成分の成分量を減算した値になる。
【0053】
同様に、N−2次色成分は、N−1次色を構成する色成分のうち成分量が最小の色成分を除くN−2個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量は、N−2次色成分を構成するN−2個の色成分の成分量の中の最小量からN次色成分の成分量とN−1次色成分の成分量とを減算した値になる。
【0054】
同様に、N−3次色成分は、N−2次色を構成する色成分のうち成分量が最小の色成分を除くN−3個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量は、N−3次色成分を構成するN−3個の色成分の成分量の中の最小量からN次色成分の成分量とN−1次色成分の成分量とN−2次色の成分量とを減算した値になる。
【0055】
同様にして、1次色成分まで求める。
【0056】
上記N−1次色成分から1次色成分までを求める処理をさらに、一般化して表現すれば次のようになる。
(N−m)次色成分を構成する色成分のうち成分量が最小の色成分を除く(N−m−1)個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が(N−m−1)個の色成分の成分量の中の最小量から、N次色成分から(N−m)次色成分までの各成分量を減算した値の(N−m−1)次色成分を生成することを、mを0から(N−1)まで1ずつ増やして繰り返す。
【0057】
図2に戻って説明を続ける。次に、各色成分の成分量(色材量)の総和を求める(ステップS103)。図3の例では、変換の前後とも、色材量の総和は330%となっている。
【0058】
次に、制限色材量を決定する(図2:ステップS104)。制限色材量は、使用可能な色材量の上限を示す値である。
【0059】
図4は、色材量と、その色材量に対する制限色材量との関係を示すグラフの一例である。このグラフは画像形成部14の特性に応じて設定される。
【0060】
色材量Tと該色材量Tに対する制限色材量T´との差分が色材削減量ΔTとなる。図5の画像データ52(図3で示した画像データ52と同じ)の場合、色材量Tは330%であり、制限色材量T´は250%であるため、色材削減量ΔTは80%となる。
【0061】
次に、K色成分の増加量を決定する(図2:ステップS105)。ここでは、K色成分の加算条件pを、p=ΔK/ΔT=0.2、とする。K成分の過剰な増加によって明るさが大きく変化することを抑制する。図5の例では、ΔTは80%なので、ΔKの上限は80×0.2=16%になる。K色成分は100%を超えることはできないので、ΔKは、上限の16%と、(100−K)%との小さい方になる。従って、ΔK=min(16,(100−60))=16%に決定される。
【0062】
K色成分をΔKだけ増加させるので、CMYにて削減すべき色材削減量ΔTはその分増加する。よって、改めて、ΔT+ΔKを新たなΔTとする。図5の例の場合、新たなΔT=80+16=96となる。
【0063】
次に、3次色成分の削減量を計算する(図2:ステップS106)。3次色成分の削減量ΔPbは、ΔT/3と、Pbの小さい方とする。3次色成分はC,M,Yを等量ずつ合成した成分なので、Pbを所定量削減すれば、CMYの合計ではその3倍の色材量が削減される。よって、ΔT/3が、3次色成分で削減する場合の必要な削減量である。しかし、3次色成分Pbの成分量を超えて削減することはできないので、ΔPbは、ΔT/3と、Pbの小さい方となる。図5の例では、3次色成分の削減量ΔPb=min(96/3,80)=32%、となる。3次色成分をΔPbだけ削減すると、色材量は全体として3×ΔPbだけ削減される。よって、(ΔT−3×ΔPb)が新たな色材削減量ΔTとなる。
【0064】
図5の例では、新たなΔT=96−3×32=0、となり、加減算処理(増減工程)は終了となる。 この時点で、
3次色成分Pb=80−32=48%、
2次色成分B=10%
1次色成分C=10%
K色成分=60+16=76%
となり(図5の画像データ53参照)、全体の色材量は250%に削減される。
【0065】
図5の例では、この段階で加減算処理終了となるが、ΔTが0にならなければ、さらに、2次色成分による削減を行い、それでもΔTが0にならなければさらに1次色成分による削減を行う。
【0066】
すなわち、図2に示すように、3次色成分による削減処理(ステップS106)により、新たな色材削減量ΔTが0になれば、つまり、削減後の色材量=制限色材量になれば(ステップS107;Yes)、ステップS111の色味調整へ移行する。新たな色材削減量ΔTが0にならなければ(ステップS107;No)、2次色成分の削減量計算を行う(ステップS108)。2次色成分による削減処理(ステップS108)により、新たな色材削減量ΔTが0(削減後の色材量=制限色材量)になれば(ステップS109;Yes)、ステップS111の色味調整へ移行する。新たな色材削減量ΔTが0にならなければ(ステップS109;No)、1次色成分の削減量計算を行って(ステップS110)、ステップS111へ移行する。
【0067】
N次色成分、N−1次色成分、…、1次色成分の色材量の加減算処理(増減工程)を一般化して示すと以下のようになる。
N次色成分の削減量計算では、色材削減量ΔTをNで除算して得た値とN次色成分の成分量とのうちの小さい方の値をN次色成分の削減量に決定し、N次色成分の成分量から該削減量を減算した値をN次色成分の新たな成分量にすると共に、その削減量のN倍を色材削減量ΔTから減算した値を新たな色材削減量ΔTとして求める。ΔTが0になれば終了し、0でなければ、N−1次色成分の削減量計算を行う。
【0068】
N−1次色成分の削減量計算では、N次色成分の削減計算で求めた新たな色材削減量ΔTを、N−1で除算して得た値とN−1次色成分の成分量とのうちの小さい方の値をN−1次色成分の削減量に決定し、N−1次色成分の成分量から該削減量を減算した値をN−1次色成分の成分量にすると共に、その削減量のN−1倍を色材削減量ΔTから減算した値を新たな色材削減量ΔTとして求める。ΔTが0になれば終了し、0でなければ、N−2次色成分の削減量計算を行う。
【0069】
同様にして、ΔTが0になるまで継続する。
【0070】
以上をさらに一般化して示すと次のようになる。
色材削減量ΔTを(N−m)で除算して得た値と(N−m)次色成分の成分量とのうちの小さい方の値を(N−m)次色成分の削減量に決定し、(N−m)次色成分の成分量から該削減量を減算した値を(N−m)次色成分の新たな成分量にすると共に、その削減量の(N−m)倍を色材削減量ΔTから減算した値を新たな色材削減量ΔTとして求めることを、0からmを1ずつ増加させて(最大でもN−1まで)、少なくとも新たな色材削減量ΔTが0になるまで繰り返し行う。
【0071】
図2に戻って説明を続ける。ステップS111では、色味調整を行う。すなわち、増減工程で色材量を削減することによって生じた色味の変化を補償するように各種の色成分を加減する。たとえば、3次色成分はK色に近似した色であるが、3次色成分をKに置き換えることで色味がわずかに変化する。同様に、2次色成分の増減、1次色成分の増減により色味が変化する。そこで、色味調整を行って、色再現性を確保する。
【0072】
色味調整は、N次色成分の削減量に対する補償、N−1次色成分の削減量に対する補償、…、1次色成分の削減量に対する補償をそれぞれ行う。 すなわち、N次色成分の削減量に比例して、K色成分以外のN個の色成分のうちの任意のN−1個の色成分を等量ずつ組み合わせた任意のN−1次色成分、K色成分以外のN個の色成分のうちの任意のN−2個の色成分を等量ずつ組み合せた任意のN−2次色成分、同様に任意のN−3次色成分、・・・、任意の1次色成分に対して増減制御を行う。同様の増減制御をN−1次色成分、…、1次色成分のそれぞれに対して行う。
【0073】
1次色成分がC,M,Yの場合、3次色成分は(C+M+Y)、2次色成分はR=M+Y,G=C+Y,B=C+Mの3通りがある。C色の色味調整量をΔC´、M色の色味調整量をΔM´、Y色の色味調整量をΔY´とすると、色味調整は以下の式により行うことができる。なお、各係数は画像形成部14の特性に応じて設定される。
ΔC´=q10×ΔPb+q11×ΔR+q12×ΔG+q13×ΔB+q14×ΔC+q15×ΔM+q16×ΔY
ΔM´=q20×ΔPb+q21×ΔR+q22×ΔG+q23×ΔB+q24×ΔC+q25×ΔM+q26×ΔY
ΔY´=q30×ΔPb+q31×ΔR+q32×ΔG+q33×ΔB+q34×ΔC+q35×ΔM+q36×ΔY
【0074】
図6は、色味調整の例を示している。たとえば、図5に示した削減例のように3次色成分PbをK色成分に置き換えたことにより、色相がB方向にシフトするものとすると、それを補償するために次式で表される色味調整を行う。
ΔY´=ΔPb×0.2=32×0.2=6%
【0075】
図6の画像データ53は色味調整前の状態を、画像データ54は色味調整後を示している。
【0076】
色味調整を行うことで色材量が変化する(上記の例ではY色成分が6%増加する)。そこで、この変化分を3次色成分Pbで補償する。画像データ55は、補償後の状態を示している。3次色成分Pbで補償することで色味を維持しながら色材量が調整される。上記の例では、ΔPb=−6%/3=−2%、になる。
【0077】
この結果、
3次色成分Pb=48−2=46%
2次色成分B=10%
1次色成分C=10%
1次色成分Y=0+6=6%
となる。
【0078】
図2に戻って説明を続ける。色味調整後、正規化する(ステップS112)。正規化では、複数の2次色成分、複数の1次色成分、マイナス成分などを単一の2次色成分、単一の1次色成分(共に正またはゼロ)にする。正規化は、K色成分、3次色成分、単一の2次色成分、単一の1次色成分というデータ形式のままで別の色材量削減処理をさらに行う場合などに有効となる。
【0079】
図7は、正規化のプロセスの概略を示している。色味調整前のCMYの画像データ61に対して、色味調整により、C色成分がΔC=8%増加し、Y色成分がΔY=2%減少して、画像データ62になったものとする。これを正規化する。
【0080】
まず、C+RはPbに置き換え可能であることを利用し、ΔCの増分をPbに置き換えて、ΔCを吸収する。すなわち、ΔCとこれと同量のRを、Pbに置き換える。また、R−YはMに置き換え可能であることを利用して、Y色成分を吸収する。これにより、画像データ63の状態になる。
【0081】
次に、色材量が色味調整によって増減している場合は、その増減を3次色成分Pbの増減で補償する。本例では、ΔC=8%、−ΔY=−2%なので、色味調整により色材量が6%増加している。そこで、3次色成分Pbを6/3=2%減少させて相殺する。3次色成分は色味に影響をほとんど与えずに色材量を増減することができる。画像データ64は色材量変動分をPbの増減で補償した後の状態、すなわち、正規化が完了した状態を示している。
【0082】
色成分の置き換えパターンは、図7のパターン例66で示すように各種あり、適宜のものを使用して行えばよい。
【0083】
図6の画像データ55の場合、1次色成分が、CとMの2種類存在するので、Y+B=Pbの関係を利用してY成分を吸収して正規化する。正規化により、
3次色成分Pb=46+6=52%
2次色成分B=10−6=4%
1次色成分C=10%
となり、画像データ56の状態になる。
【0084】
図2に戻って説明を続ける。正規化した後、3次色成分、2次色成分、1次色成分をC,M,Yに変換し、C,M,Y,Kを色成分とする画像データに戻す(ステップS113)。すなわち、3次色成分をこれと同量の成分量のC,M,Yの3つの色成分に分解し、2次色成分をこれと同量の成分量であって該2次色成分を構成する2つの色成分(図6の例ではC,M)に分解する。そして、分解後の各成分量と1次色成分とを対象にして、Cの成分量の合計、Mの成分量の合計、Yの成分量の合計をそれぞれ求めることでC,M,Yに変換する。図6の画像データ57は、画像データ56をC,M,Y,Kを色成分とするように色変換した後の画像データである。
【0085】
図2に戻って説明を続ける。ステップS102からステップS113までの処理を1画素単位に繰り返し、全画素について終了すると、画像データを後段の処理部へ出力して(ステップS114)、処理を終了する。本例では、画像データは画像形成部14へ出力され、該画像データに従って画像形成部14は画像形成を行う。
【0086】
図8は、色材量削減処理による画像データの変化を適用例1について纏めて示している。
【0087】
<適用例2>
C=100%、M=92%、Y=8%、K=80%(C+M+Y+K=280%)において、C+M+Y+Kの合計の色材量を240%に制限する場合について説明する。図9は、適用例2における、色材量削減処理に伴う画像データの変化を示している。入力される画像データは、画像データ71である。
【0088】
まず、入力画像データ71に対して色成分変換を行い、
3次色成分Pb=8%、
2次色成分B=84%、
1次色成分C=8%、
となる。すなわち、3次色成分はmin(C,M,Y)=min(100,92,8)=8%となる。2次色成分はmin(C−Pb,M−Pb)=min(92,84)=84%となる。1次色成分はC−Pb−B=100−8−84=8%となる(画像データ72参照)。
【0089】
Kの加算条件pを、ΔK/ΔT=0.2の条件とすると、
色材削減量ΔTはΔT=280−240=40%なので、
ΔK=min(40%×0.2,100―K)=8%(Kが100%を超えないよう上限は100−K=100−80=20%でクリッピング)
K色成分をΔK=8%増加させるので、CMYでの必要な色材削減量ΔTはその分増加して、
ΔT=40+8=48%となり、
ΔPb=min(48/3,8%)=8%(Pbが0%を下回らないよう上限は8%でクリッピング)となる。
【0090】
この時点で
3次色成分Pb=8−8=0%
2次色成分B=84%
1次色成分C=8%
K=80+8=88%
となる(画像データ73参照)。
【0091】
ΔPb削減後のΔTは、ΔT=48−8×3=24%となり、ΔTが0でないため、2次色成分での削減をさらに行う。
ΔB=min(24/2,84)=12%(Bが0%を下回らないよう上限は84%でクリッピング)
ΔB削減後のΔTは、ΔT=24−12×2=0%となり、加減処理(増減工程)終了となる。
【0092】
この時点で、
3次色成分Pb=0%
2次色成分B=84−12=72%
1次色成分C=8%
K=88%
となる(画像データ74参照)。
【0093】
色味調整として、このシステムではPbをKに置き換えると色あいがB方向にシフトし、BをKに置き換えると色あいがC方向にシフトするとして、これを補償するため次式で表される色味調整制御を行う。
ΔY=ΔPb×0.2=8×0.2≒2%
ΔC=ΔB×(−0.2)=12×(−0.2)≒−2%
色味調整による色材量変動分をΔPbで補償して、
ΔPb=(2−2)/3=0% 、(本例ではYが2%増加しCが2%減少するので色材量変動分は0)
【0094】
この結果
3次色成分Pb=0+0=0%
2次色成分B=72%
1次色成分C=8−2=6%
1次色成分Y=0+2=2%
となる(画像データ75参照)。
【0095】
複数の1次色成分が存在するので正規化する。ここでは、Pb=Y+Bの関係を利用し、Yの2%の増加をPbの+2%とBの−2%に置き換える。よって、
3次色成分Pb=2%
2次色成分B=70%
1次色成分C=6%
となる(画像データ76参照)。
【0096】
これをCMYK成分に変換し、
C=78%、M=72%、Y=2%、K=88%(C+M+Y+K=240%)
として出力される(画像データ77参照)。
【0097】
本例のようにグレーバランスから外れた高彩度色では、3次色に加えて2次色成分を削減することで 色材量制限が実現できる。色材量制限で色再現域が狭くなるため、ある程度の彩度低下は免れないが、明度や色相は極力維持できるように調整することができる。
【0098】
<適用例3>
C=10%、M=95%、Y=83%、K=15%(M+Y=178%)において
M+Y=150%に制限する場合について説明する。
【0099】
CMYKの色材の総量が制限値未満であっても、特定の2色の色材量の合計が一定量を超えると画質劣化の生じる場合もある。たとえば、電子写真プロセスの場合、特定の劣悪な条件(低温低湿環境下での両面印刷の2面目の印刷など)で定着熱量が不十分な状態となってしまい、トナー2色で表す色の文字、たとえば赤色(M100%+Y100%)の文字などでもトナー飛散が生じることがある。そこで適用例3では、そのような場合に対応する例として、M+Yが制限される場合を例示する。
【0100】
まず、色成分変換を行い、
3次色成分Pb=10%
2次色成分R=73%
1次色成分M=12%
となる。すなわち、M>Y>Cなので、1次色成分はM、2次色成分はM+Y=Rになる。3次色成分の成分量はC,M,Yの最小値の10%となる。2次色成分の成分量は、M,Yの最小値である83%から3次色成分の10%を減算した73%になる。1次色成分Mの成分量は、元の95%から3次色成分の10%と2次色成分の73%を減算した12%となる。
【0101】
Kの加算条件pをΔK/ΔT=0.2の条件とすると
ΔT=178−150=28%
ΔK=28%×0.2≒6%(Kが100%を超えないよう上限は100−K=100−15=85%でクリッピング)
色材量の制限対象はM+YでありKの増加は寄与しないので、
色材削減量ΔTは変化せず、ΔT=28%となる。また、3次色成分のうち色材削減量ΔTに寄与するのはMとYの2成分のみなので、
ΔPb=min(ΔT/2,Pb)=min(28/2,10%)=10%(Pbが0%を下回らないよう上限は10%でクリッピング)、となる。
【0102】
改めて
ΔT=28−10×2=8%となる。ΔTが0でないため、2次色成分での削減をさらに行う。
ΔR=min(8/2,73%)=4%(Rが0%を下回らないよう上限は73%でクリッピング)
ΔB削減後のΔTは、ΔT=8−4×2=0%となり、加減処理(増減工程)終了となる。
【0103】
この時点で
3次色成分Pb=10−10=0%
2次色成分R=73−4=69%
1次色成分M=12%
K=15+6=21%
となる。
【0104】
色味調整として、このシステムではPbをKに置き換えると色あいがB方向にシフトし、RをKに置き換えると色あいがM方向にシフトするとして、これを補償するため次式で表される色味調整制御を行う。
ΔY=ΔPb×0.2=10×0.2=2%
ΔM=ΔR×(−0.4)=−2%
色味調整による色材量変動分をΔPbで補償して、
ΔPb=(2−2)/3=0%、(本例ではYが2%増加しMが2%減少するので色材量変動分は0)
【0105】
この結果
3次色成分Pb=0+0=0%
2次色成分R=69%
1次色成分M=12−2=10%
1次色成分Y=0+2=2%
となる。
【0106】
複数の1次色成分が存在するので正規化する。ここでは、Y=R−Mの関係を利用し、Yの2%の増加をRの+2%とMの−2%に置き換える。よって、
3次色成分Pb=0%
2次色成分R=71%
1次色成分M=8%
【0107】
これをCMYK成分に変換し、
C=0%、M=79%、Y=71%、K=21%(M+Y=150%)
として出力される。
【0108】
本例のように特定成分範囲での色材量が制限される場合でも、本発明により色材量管理が可能になる。
【0109】
なお、適用例1、2のように色材量の総量の制限と、適用例3のように一部の色成分に対する色材量制限の双方を実施することで、両者の制限条件を満足させた画像形成が可能になる。たとえば、M+Yに関する色材量制限を行った後、総量に対する色材量制限を行う。この場合、最初の色材量制限で正規化した画像データを、次の段階に引き継げば、CMYKに戻すことなく、次の段階の色材量制限処理を行うことができる。
【0110】
以上のように本発明によれば、調整対象の画像データをN次色成分、N−1次色成分、N−2次色成分、…、1次色成分に変換することで、色材量成分毎の個別の条件判断を行うことなくN次色成分が正またはゼロである範囲で自由に制御できる。そして、N次色成分で調整できない場合は、N−1次色成分で、さらにはN−2次色成分で・・・という手順により、確実に目標水準への色材量制限を実現することができる。また、色材削減量に対するKの追加比率をパラメータpで制御することで、明度方向での色再現性の制御が可能となり、色材量の制限による明度の変化を抑制することができる。
【0111】
N次色成分、N−1次色成分、…、などによる色材の削減量に比例した色味調整を追加することで、色材量変化による色相変化を補償することが可能となり、色材量の制限に伴う色相の変化を抑制することができる。
【0112】
特に高彩度色を色材量制限する場合においてはある程度の彩度低下は免れないが、色相により色再現域は一様でないので、より高彩度の色再現が可能な方向に色相を調整することで結果的に好ましい色再現が確保できる場合もある。 上記のような色味調整により色材量の制限による色再現性の変化を最低限に管理できるので、単一のカラープロファイルにて色再現性の管理が可能になる。
【0113】
なお、Kの加算条件pを次式のように、元のKやPbの成分量に比例して変化させてもよい。
p=定数項+α×K+β×Pb、 (α、βは所定の係数)
元の画像データがK色成分を多く含めば含むほど、Kの増減が明るさに与える影響は小さくなる。同様にK色に近似した次色成分Pbが多いほどKの増減が明るさに与える影響は小さい。そこで、上式のようにKやPbの成分量が大きくなるほどpが大きくなるようにすることで、制限対象の画像に応じてより適切にKの増加量を制限することができる。なお、上記の式において、KとPbのうち、いずれか一方のみとしてもよい。
【0114】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0115】
たとえば、実施の形態では、C、M、Y、Kの色材を使用する場合を例に説明したが、色材の色や色数はこれに限定されない。
【0116】
実施の形態では、画像形成装置10を例に説明したが、色材量制限に関する機能を備え、画像形成部を持たない、画像処理装置(たとえば、プリントコントローラ)として構成してもよい。
【0117】
また、実施の形態では、色材量の削減制御を行ってから色味調整を行うようにしたが、色材量の削減制御において色味調整を同時に行うようにしてもよい。すなわち、色材量を削減する際にその削減による色味の変化を考慮して他の色材量の増減も同時に行うようにすればよい。
【符号の説明】
【0118】
10…画像形成装置
11…CPU
12…バス
13…画像読取部
14…画像形成部
15…ROM
16…RAM
17…不揮発メモリ
18…表示部
19…操作部
21…画像処理部
22…ネットワークI/F部
23…ハードディスク装置
51…元の画像データ
52…色変換後の画像データ
53…増減工程後の画像データ
54…色味調整後の画像データ
55…色味調整による色材量変動分を吸収した画像データ
56…正規化した画像データ
57…CMYKに戻した画像データ
61〜64…正規化の工程例を示す画像データ
66…置き換えのパターン例
71…元の画像データ
72…色変換後の画像データ
73…3次色成分による削減後の画像データ
74…2次色成分による削減後の画像データ
75…色味調整後の画像データ
76…正規化した画像データ
77…CMYKに戻した画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N(Nは2以上の整数)個の異なる色成分と、前記N個の各色成分を等量ずつ合成した色で近似されるK色成分とで表される画像データに対して、すべての色成分の成分量の合計が目標値以下となるための必要削減量を決定する工程と、
前記画像データのうちの前記N個の色成分を、
前記N個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が前記N個の色成分の成分量の中の最小量に等しいN次色成分と、
(N−m)次色成分を構成する(N−m)個の色成分のうち成分量が最小の色成分を除く(N−m−1)個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が、前記(N−m−1)個の色成分の成分量の中の最小量から、N次色成分から(N−m)次色成分までの各成分量を減算した値の(N−m−1)次色成分を生成することを、mを0から(N−1)まで1ずつ増やして繰り返し行うことで得られる(N−1)次色成分、(N−2)次色成分・・・1色次成分と、
で表すように変換する工程と、
前記必要削減量に所定の係数を乗じて得た値とK色成分の成分量とからK色成分の増加量を決定し、K色成分の成分量に前記増加量を加算した値をK色成分の成分量にすると共に、前記必要削減量に前記増加量を加算した値を新たな必要削減量として求める工程と、
前記必要削減量を(N−m)で除算して得た値と(N−m)次色成分の成分量とのうちの小さい方の値を(N−m)次色成分の削減量として決定し、(N−m)次色成分の成分量から該削減量を減算した値を(N−m)次色成分の成分量にすると共に前記削減量の(N−m)倍を前記必要削減量から減算した値を新たな必要削減量として求めることを、0からmを1ずつ増加させて、前記新たな必要削減量がゼロになるまで繰り返し行う増減工程と、
前記増減工程後のK色成分、N次色成分、N−1次色成分、・・・、1次色成分を、K色成分と前記N個の色成分に再構成する工程と、
を行うことで、前記画像データの色成分量の合計を前記目標値以下に制限する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記増減工程におけるN次色成分の削減量に対して、
該削減による色味の変化が補償されるように、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−1個の色成分を等量ずつ組み合わせた任意のN−1次色成分、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−2個の色成分を等量ずつ組み合せた任意のN−2次色成分、同様に任意のN−3次色成分、・・・、任意の1次色成分のそれぞれに対して増減制御を行う工程と、
前記工程と同様の増減制御を、前記増減工程におけるN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分の各削減量に対して行う工程と、
前記増減制御による成分量総和の増減を相殺するようにN次色成分を増減調整する工程と、
をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記増減制御の結果、複数になったN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分をそれぞれ単一のN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分に再構成する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記所定の係数を、定数項と、K色成分の成分量に応じて定めた第1係数と、N次色成分の成分量に応じて定めた第2係数との合計値とする
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記N個の色成分は、シアン、マゼンタ、イエロである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項6】
N(Nは2以上の整数)個の異なる色成分に対応するN色の色材と、前記N個の各色成分を等量ずつ合成した色で近似されるK色成分に対応する色材とを使用して画像形成する画像形成部と、
前記N個の色成分と前記K色成分とで表される画像データに対して、すべての色成分の成分量の合計が目標値以下となるための必要削減量を決定する工程と、
前記画像データのうちの前記N個の色成分を、
前記N個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が前記N個の色成分の成分量の中の最小量に等しいN次色成分と、
残りの(N−m)個の色成分のうち成分量が最小の色成分を除く(N−m−1)個の色成分を等量ずつ合成した成分であって、その成分量が、前記(N−m−1)個の色成分の成分量の中の最小量から、N次色成分から(N−m)次色成分の各成分量を減算した値の(N−m−1)次色成分を生成することを、mを0から(N−1)まで1ずつ増やして繰り返し行うことで得られる(N−1)次成分、(N−2)次成分・・・1次成分と、
で表すように変換する工程と、
前記必要削減量に所定の係数を乗じて得た値とK色成分の成分量とからK色成分の増加量を決定し、K色成分の成分量に前記増加量を加算した値をK色成分の成分量にすると共に、前記必要削減量に前記増加量を加算した値を新たな必要削減量として求める工程と、
前記必要削減量を(N−m)で除算して得た値と(N−m)次色成分の成分量とのうちの小さい方の値を(N−m)次色成分の削減量として決定し、(N−m)次色成分の成分量から該削減量を減算した値を(N−m)次色成分の成分量にすると共に前記削減量の(N−m)倍を前記必要削減量から減算した値を新たな必要削減量として求めることを、0からmを1ずつ増加させて、前記新たな必要削減量がゼロになるまで繰り返し行う増減工程と、
前記増減工程後のK色成分、N次色成分、N−1次色成分、・・・、1次色成分を、K色成分と前記N個の色成分に再構成する工程と、
を行うことで、前記画像データの色成分量の合計値を前記目標値以下に制限する色材量制御部と、
を有し、
前記画像形成部は、前記色材量制御部で処理後の画像データに基づいて画像形成する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記色材量制御部は、
前記増減工程におけるN次色成分の削減量に対して、
該削減による色味の変化が補償されるように、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−1個の色成分を等量ずつ組み合わせた任意のN−1次色成分、前記K色成分以外の前記N個の色成分のうちの任意のN−2個の色成分を等量ずつ組み合せた任意のN−2次色成分、同様に任意のN−3次色成分、・・・、任意の1次色成分のそれぞれに対して増減制御を行う工程と、
前記工程と同様の増減制御を、前記増減工程におけるN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分の各削減量に対して行う工程と、
前記増減制御による成分量総和の増減を相殺するようにN次色成分を増減調整する工程と、
をさらに実施する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記色材量制御部は、
前記増減制御の結果、複数になったN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分をそれぞれ単一のN−1次色成分、N−2次色成分、・・・、1次色成分に再構成する工程をさらに実施する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記色材量制御部は、
前記所定の係数を、定数項と、K色成分の成分量に応じて定めた第1係数と、N次色成分の成分量に応じて定めた第2係数との合計値とする
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記N個の色成分は、シアン、マゼンタ、イエロである
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−186613(P2012−186613A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47755(P2011−47755)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】