説明

画像処理方法及び画像処理装置

【課題】繰り返し耐久性及び消去性が向上し消去時間を短縮化できる画像処理方法及び画像処理装置の提供。
【解決手段】画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかがレーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、(1)レーザ光を同一方向に走査させて更にレーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む、(2)レーザ光を互いに相反する方向に順次走査させて更にレーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む、(3)レーザ光を互いに相反する方向に順次走査させて更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含み、レーザ光の不連続な照射が第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点にレーザ光の照射が導かれるように終了点から第2開始点までレーザ光を照射しない状態で走査する、又は(4)レーザ光を同一方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて更にレーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む画像処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し耐久性及び消去性が向上し、消去時間を短縮化できる画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可逆記録媒体(以下、「可逆性感熱記録媒体」、「記録媒体」、又は「媒体」と称することがある)の表面に凹凸が生じた場合や、離れたところから記録媒体に対して画像の記録及び消去を行う方法として、非接触方式のレーザを用いた方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用し、非接触記録を行うものであり、記録(書き込み)はレーザで実施し、消去は熱風、温水、赤外線ヒータ等が使用されている。
このような熱可逆記録媒体に対する、様々なレーザを用いた記録及び消去方法が提案されている(例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5参照)。
【0003】
前記特許文献2に記載の技術は、熱可逆性記録媒体上に、光熱変換シートを配置した後、該光熱変換シートにレーザ光を照射して、発生する熱により該熱可逆性記録媒体上に画像を記録及び/又は消去することを含む改良された画像記録消去方法であり、その明細書中には、図に示したような装置を用いレーザ光の照射条件を制御することにより、画像の記録と消去の両法を行うことが可能であることが記載されている。即ち、光照射時間、照射光度、焦点、光強度分布のうちの少なくとも一つを制御することにより、前述の熱可逆性記録媒体の第1の特定温度と第2の特定温度に加熱温度を制御したり、加熱後の冷却速度を変化させることにより画像の記録及び消去を全面若しくは部分的に行うことが可能となると記載されている。
前記特許文献3には、2つのレーザ光を使用し、一方を楕円形や長円形レーザとして消去を行い、他方を円形レーザで記録する方法、2つのレーザの複合として記録する方法、2つをそれぞれ変形させてそれぞれの複合として記録する方法が記載されている。2つのレーザを用いることで、1つのレーザで記録するよりも高濃度の画像記録が実現できるようになる。
【0004】
前記特許文献4に記載の技術は、レーザ記録時と消去時において、1つのミラーの表裏を利用し、光路差やミラー形状の違いによってレーザ光の光束形状を変更させるものである。これにより簡単な光学系で光スポットの大きさを変えることや焦点をぼかすことが可能となる。
【0005】
前記特許文献5では、ラベル状の可逆性感熱記録媒体のレーザ吸収率を50%以上、印字時の照射エネルギーが5.0mJ/mm〜15.0mJ/mm、且つレーザ吸収率と印字照射エネルギーの積が3.0mJ/mm〜14.0mJ/mmであり、消去時のレーザ吸収率と印字照射エネルギーの積が1.1倍〜3.0倍とすることで消去後の残像画像を実質的に完全に消去できると記載されている。
【0006】
また、画像記録方法におけるレーザ消去方法が提案されている(特許文献6参照)。この提案では、レーザ光のエネルギー、レーザ光の照射時間、パルス幅、走査速度においてレーザ記録時の25%以上65%以下とすることで消去させることにより明瞭なコントラストの画像で高耐久性な可逆性感熱記録媒体の記録方法になると記載されている。
【0007】
上記の方法によりレーザによる印字と消去を実施することができるが、印字時にレーザ制御を実施していないため、記録時の線が重なり合う時に局所的な熱ダメージが発生する問題やベタ画像を記録する時に発色濃度が低下する問題があった。
【0008】
これらの問題を解決するために、印字エネルギーを制御する方法が開示されている(特許文献7及び特許文献8参照)。
前記特許文献7には、レーザ照射エネルギーを描画点毎に制御し、記録ドットが重なり合うように印字する場合や折り返して印字する場合にそこのエネルギーを低下させる、また、直線印字を行う場合に所定間隔ごとにエネルギーを低下させることを実施することにより、局所的な熱ダメージを軽減して可逆性感熱記録媒体の劣化を防止すると記載されている。
前記特許文献8には、レーザ描画の際に変角点の角度Rに応じて照射エネルギーに|cos0.5R|k(0.3<k<4)を掛け合わすことでエネルギーを減らす工夫を行っている。これによりレーザで記録する際に線画の重なる部分に過剰なエネルギーが掛かることを防ぎ、媒体の劣化を減少させることができる、あるいはエネルギーを下げすぎずにコントラストを維持することが可能となると記載されている。
【0009】
また、上述したようなレーザを用いた画像記録及び画像消去する画像処理方法では、レーザの走査制御方法として、ラスター走査制御方式やベクター走査制御方式などが採用されている。
【0010】
ラスター走査制御方式は、典型的には、TV等のCRT画像に用いられる方式であり、ある開始点からX方向に直線状に終了点まで走査した後、次の走査開始点をY方向にずらして次の走査を同様にして行う動作を繰り返す、レーザ照射の走査制御方式であり、ベクター走査制御方式は、画像の輪郭に沿うように直線状や曲線状に走査するレーザ照射の走査制御方式である(特許文献9参照)。
【0011】
また、ラスター制御方式の一般的に用いられている手法として、X軸方向に1ステップずつ移動させて描画すべき位置でレーザをオンにし、1行目の描画が終わった後にY軸方向に1ステップ移動して、次の行の描画を同様に行う手法が開示されている(特許文献10参照)。
【0012】
また、Y軸方向とX軸方向の移動を入れ替えたラスター走査制御方式も用いられている(特許文献4及び特許文献11参照)。
【0013】
更にまた、ベクター制御方法でも、レーザ光を横方向に移動させてビットマップで描画するラスタースキャン方法や、レーザ光を縦方向に移動させビットマップで描画するカラムスキャン方式が用いられている(特許文献7参照)。
【0014】
しかしながら、このようなレーザの走査において、例えば、印字パターンをなぞって消去を行うベクター操作制御方式の場合、印字パターンごとに消去パターンを作成する必要がある。また、位置ずれが発生すると、部分的に末消去部が残ることになり、特に、移動体に印字・消去を行う場合は位置ずれを起こしやすいので消去不良となりやすい。
【0015】
そのため、位置ずれの影響のない印字領域全体を消去する方法があるが、ラスター制御方式を用いる方法が、最も一般的な手法となっている(特許文献10参照)。
【0016】
しかし、前記特許文献10に記載のような画像の消去方法だと、X軸方向での1行目のレーザ照射に続いて、Y軸方向に1ステップ移動して次行のレーザ照射に向う領域(以下、「折り返し部」と称することもある)において、過度なレーザ照射による蓄熱の悪影響によって、媒体の劣化を引き起こし、媒体の繰り返し耐久性が悪くなってしまう。
【0017】
レーザ光の走査方式には、レーザ光源を搭載した画像記録装置に設けられたガルバノミラー又はステージの移動によって制御されているが、いずれもレーザ光の折り返し部は急に動きを止めることは非常に困難であり、走査速度を徐々に減速することになる。これによって、従来方式の折り返し部では、レーザ光の移動が減速するために走査速度が遅くなり、過剰のエネルギーが加わった高エネルギー状態となってレーザ照射を止めることなく、すぐ隣接部、即ち次行の開始部にレーザ照射するため、折り返し部には相当に過剰のエネルギーが加わり、媒体の劣化が進み、熱可逆記録媒体の繰り返し耐久性が悪くなる(例えば、図1参照)。
【0018】
また、従来方式で、折り返し部でレーザ照射を一旦止めたとしても、レーザ照射を止めない場合に比べたら熱可逆記録媒体に加わるエネルギー量は少ないが、折り返し部は冷却する前にすぐ隣接部、即ち次行の開始部にレーザ照射するため、やはり過剰のエネルギーが加わり、同様に、媒体の劣化が進みやすく、繰り返し耐久性が悪くなる(例えば、図2参照)。
【0019】
また、熱可逆記録媒体に過度のエネルギーが加わった際の高温領域である折り返し部は、発色による地肌カブリが発生する場合があり、地肌カブリの発生なく均一に消去するためには、折り返し部がほぼ冷却してから次行の開始部にレーザ照射する必要があり、画像の面積によっては、消去するためにかなりの時間を要していた。
【0020】
【特許文献1】特開2000−136022号公報
【特許文献2】特開平7−186555号公報(特許第3350836号公報)
【特許文献3】特開平7−186445号公報(特許第3446316号公報)
【特許文献4】特開2002−347272号公報
【特許文献5】特開2004−195751号公報
【特許文献6】特開2003−246144号公報
【特許文献7】特開2003−127446号公報
【特許文献8】特開2004−345273号公報
【特許文献9】特開平8−267797号公報
【特許文献10】特開2001−88333号公報
【特許文献11】特開2002−113889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、レーザ照射により画像消去及び画像記録の少なくともいずれかを行う画像処理方法において、繰り返し耐久性及び消去性が向上し、消去時間を短縮化できる画像処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含むことを特徴とする画像処理方法である。
<2> レーザ光の不連続な照射が、該レーザ光を第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点を前記第1開始点から所定間隔に設定した位置までのレーザの移動間に対応する前記<1>に記載の画像処理方法である。
<3> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に順次走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含み、該レーザ光の不連続な照射が、第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点にレーザ光の照射が導かれるように前記終了点から該第2開始点までレーザ光を照射しない状態で走査することを特徴とする画像処理方法である。
<4> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含むことを特徴とする画像処理方法である。
<5> レーザ光の不連続な照射が、該レーザ光を第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点を前記終了点から任意の間隔に設定した位置までのレーザの移動間に対応する前記<4>に記載の画像処理方法である。
<6> 温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含むことを特徴とする画像処理方法である。
<7> レーザ光の不連続な照射が、該レーザ光を第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点を前記終了点から任意の間隔に設定した位置までのレーザの移動間に対応する前記<6>に記載の画像処理方法である。
<8> レーザ光の不連続な照射が、画像処理装置における走査制御手段によって、第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点でレーザ光の照射が導かれるように前記終了点から該第2開始点まで制御される前記<1>、<4>及び<6>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<9> 熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層が樹脂及び有機低分子物質を含有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<10> 熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<11> 画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である前記<1>から<10>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置である。
<13> 光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク及びミラーの少なくともいずれかである前記<12>に記載の画像処理装置である。
【0023】
本発明の画像処理方法は、第1形態では、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む。
本発明の画像処理方法は、第2形態では、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に順次走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含み、該レーザ光の不連続な照射が、第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点にレーザ光の照射が導かれるように前記終了点から該第2開始点までレーザ光を照射しない状態で走査する。
本発明の画像処理方法は、第3形態では、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む。
本発明の画像処理方法は、第4形態では、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む。
前記第1形態から第4形態のいずれかに係る画像処理方法においては、レーザ光を同一方向に走査、又は、互いに相反する方向に順次若しくは無作為に走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含んで、画像の消去及び形成を行うことができ、レーザ光の走査方向の折り返し部及び線の重なり部の少なくともいずれかで、エネルギーの余分な蓄熱を回避することができる。
【0024】
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有する。
該画像処理装置においては、前記レーザ光出射手段が、レーザ光を出射する。前記光照射強度調整手段が、前記レーザ光出射手段から出射されたレーザ光の光照射強度を変化させる。その結果、前記熱可逆記録媒体に画像を記録すると、画像の繰返し記録及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化が効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、レーザ光を同一方向に走査、又は、互いに相反する方向に順次若しくは無作為に走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含み、画像の消去及び画像の記録を行うことができ、レーザ光の走査方向の折り返し部及び線の重なり部の少なくともいずれかでエネルギーの余分な蓄熱を回避することができ、繰り返し耐久性及び消去性が向上し、消去時間を短縮化することができる画像処理方法及び画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(画像処理方法)
本発明の第1形態から第4形態のいずれかに係る画像処理方法は、画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含んでなる。
本発明の前記画像処理方法においては、画像の記録及び画像の消去の両方を行う態様、画像の記録のみを行う態様、画像の消去のみを行う態様のいずれをも含む。
ここで、本発明において、前記画像とは、複数のレーザ光描画線で形成される文字、記号、及び線図のいずれかを意味し、バーコードやベタ画像も含まれる。したがって、単一のレーザ光描画線により形成される画像(一筆書きの文字など)は含まれない。
また、本発明において、前記線の重なり部とは、前記画像における複数のレーザ光描画線の重なりを意味する。例えば均一なベタ画像を記録する場合、図16に示されるように、レーザ光描画線とそれに隣接するレーザ光描画線が互いに重なる必要がある。そのため、レーザ照射後、冷却する前にすぐ隣接部、即ち、次行にレーザ照射すると、線の重なり部に過剰のエネルギーが加わり、熱可逆記録媒体の劣化が進みやすく、繰り返し耐久性が悪くなったり、エネルギーの余分な蓄熱の影響により、画像濃度が低下したりする。
【0027】
前記第1形態に係る画像処理方法では、前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む。
前記第2形態に係る画像処理方法では、前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に順次走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含み、該レーザ光の不連続な照射が、第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点にレーザ光の照射が導かれるように前記終了点から該第2開始点までレーザ光を照射しない状態で走査する。
前記第3形態に係る画像処理方法では、前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む。
前記第4形態に係る画像処理方法では、前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射し、該レーザ光を同一方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む。
【0028】
<画像記録工程及び画像消去工程>
本発明の前記画像処理方法における前記画像記録工程は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に画像を記録する工程である。
本発明の前記画像処理方法における前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する工程である。
前記熱可逆記録媒体に対し、前記レーザ光を照射して加熱することにより、前記熱可逆記録媒体に非接触の状態で画像の記録及び消去を行うことができる。
なお、本発明の画像処理方法においては、通常、前記熱可逆記録媒体の再使用時に初めて画像の更新(前記画像消去工程)を行い、その後、前記画像記録工程により画像の記録を行うが、画像の記録及び消去の順序はこれに限られるものではなく、前記画像記録工程により画像を記録した後、前記画像消去工程により画像を消去してもよい。
【0029】
本発明においては、熱可逆記録媒体にレーザ光を所定間隔で並列して照射し加熱して画像の消去及び画像の記録を行い、該レーザ光を同一方向に走査、又は、互いに相反する方向に順次若しくは無作為に走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含んで、画像の消去及び画像の記録を行う。つまり、レーザ光の走査方向の折り返し部及び線の重なり部の少なくともいずれかでレーザ光による照射がなく、エネルギーの余分な蓄熱を回避したレーザ光の走査制御を特徴とする熱可逆記録媒体の画像処理方法を提供するものである。
【0030】
前記第1形態から第4形態いずれかでは、レーザ光の不連続な照射が、画像処理装置における走査制御手段によって、第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点でレーザ光の照射が導かれるように前記終了点から該第2開始点まで制御されることが好ましい。
【0031】
本発明においては、例えば、図3乃至図9に示すように、熱可逆記録媒体をレーザ光が走査する一般的な走査制御方法、例えば、ラスター走査制御方法において問題となる、折り返し部及び線の重なり部の少なくともいずれかでのレーザ光による蓄熱が全くないかあるいはごくわずかな状態を維持して、熱可逆記録媒体に対するレーザ光の特異的な光走査制御を特徴とする。これにより、従来のレーザ光の走査方向においてレーザ光による熱が重なってしまう折り返し部及び線の重なり部の少なくともいずれかでの蓄熱の悪影響がなくなり、繰り返し耐久性に優れ、かつ、消去時間が短縮されて、更に消去性にも優れた熱可逆記録媒体の画像処理方法とすることができる。
【0032】
本発明の好ましい態様は、図3に示すレーザ光の光走査制御方式であり、レーザ光を所定間隔で直線状に常に一定方向に左から右に向って照射するものである。この場合、レーザ光の照射が右端までくると、レーザ照射はオフになり、図3及び図4に記載の点線に沿ってレーザがミラーの動きによって、次の照射開始点まで移動して照射を開始し、更に左から右へと向って走査するものである。なお、図3乃至図9の点線は、レーザ光の不連続状態の照射、つまり照射がオフ状態であることを示す。図3から分るように、折り返し部ですぐに隣接部(例えば、図3及び図4の2行目の矢印の先端部)に対してレーザ照射しないので、従来の走査方式で生じた蓄熱の影響が少なく、媒体の劣化を防ぐことができ、媒体の繰り返し耐久性が向上できる。また、折り返し部にはレーザ光の照射が不連続状態なので、過度な蓄熱がなく、適切な消去温度範囲に維持することができ、従来発生した蓄熱による残存画像も良好に抑えられ、消去性をも向上することができる。
【0033】
また、本発明の別の好ましい態様は、図5に示すレーザ光の光走査制御方式であり、レーザ光を所定間隔で、互いに相反する方向に順次、折り返して走査して照射するものであり、基本的には、ラスター走査制御方式の変形である。なお、ラスター走査制御方式とは、レーザ光などの発光点を二次元に走査する場合、ある開始点からX方向(主走査方向)に直線状に終了点まで走査した後、次の走査開始点をY方向(副走査方向)にずらしてから次の走査を同様にして行う動作を繰り返すもので、画面を順次走査する方式であり、例えば、TV等のCRT画像が代表的な例である。
【0034】
本発明の場合、図5に示されるように、左上端部を起点としてレーザ光の走査を開始し、右上端部まで照射してきたところで、レーザ照射が不連続状態、つまり、オフ状態となりレーザがミラーの動きによって点線に沿って下方(つまり、Y軸方向)に折り返し、次の右端部から照射を開始して左端部に向って照射し、左端部まで走査したら、再度レーザ照射が不連続状態(オフ状態)となってレーザがミラーの動きによって点線に沿って折り返し、再度次の左端部から照射を開始して右端部へと向うように、下方(Y軸方向)に順次、光走査制御を繰り返すものである。この場合、図5から分るように、従来方式の光走査制御とは異なり、折り返し部でレーザ照射が不連続状態(オフ状態)で次の照射起点(開始点)に折り返すため、従来の走査方式で生じた折り返し部に対する蓄熱による悪影響が少なく、媒体の繰り返し耐久性が向上する。更に、この場合、折り返し部ではレーザ光の照射が不連続状態(オフ状態)であるが、レーザを導くミラーは次の照射開始点までの移動に合わせて制御されているために、レーザの走査速度が落ちることはない。したがって、従来のレーザ光走査制御における消去に比べて、消去時間を短縮でき、加えて、折り返し部にはレーザ光の照射が不連続状態なので、過度な蓄熱がなく、適切な消去温度範囲に維持することができ、従来発生した蓄熱による残存画像も良好に抑えられ、消去性をも向上することができる。なお、ミラーの予備走査時間は任意に設定してよいが、0.2ms〜5msであることが好ましい。前記時間が0.2ms未満であるとレーザ光の走査速度がかなり遅い状態でレーザ光を照射することになるため記録の開始点や終了点などに過剰のエネルギーが加わり熱可逆記録媒体にダメージを生じることがあり、5msを超えると、記録時間が長くなるために所望の時間内に記録できなくなることがある。
【0035】
本発明の別の好ましい態様は、図6及び図7に示すレーザ光の光走査制御方式であり、レーザ光を所定間隔で、互いに相反する方向に隣接部を続けて走査しないように、折り返して走査して照射するものである。例えば、図6に示されるように、左上端部を起点としてレーザ光の走査を開始し、右上端部まで照射してきたところで、レーザ照射は不連続状態(オフ状態)となり、レーザがミラーの動きによって点線に沿って、隣接しない次の開始点へと無作為に折り返し、右端部から照射を再開し、左端部に向って照射し、左端部まで走査したら、再度レーザ照射が不連続状態(オフ状態)となり、レーザがミラーの動きによって点線に沿って、隣接しない次のさらなる開始点へと無作為に折り返し、左端部から照射を再開し、右端部へと向って照射するように、無作為な折り返し順序で光走査制御を繰り返すものである。この場合、図6及び図7から分るように、図5の方式の光走査制御とは異なり、次の開始点までの折り返し部は、直前のレーザ照射の終了点と離れるように制御されており、更にレーザ照射がこの間で不連続状態(オフ状態)となっているため、図5のように折り返し部が直前の走査の終了点の隣接部となる際に生じ得る蓄熱による悪影響が著しく低減でき、これによって、媒体の繰り返し耐久性が向上し、かつ、図5のレーザ光の光走査制御方式の場合と同様に、レーザを導くミラーは次の照射開始点までの移動に合わせて制御されているために、レーザの走査速度が落ちることはなく、レーザの走査速度は維持したままなので、消去時間を短縮できる。更に、各走査の終了点と次の開始点との間の領域、つまり折り返し部が隣接しないので、より適切な消去温度範囲に維持することができ、従来発生した蓄熱による残存画像も良好に抑えられ、消去性をも向上することができる。なお、ミラーの予備走査時間は任意に設定してよいが、0.2ms〜5msであることが好ましい。
【0036】
本発明の更に別の好ましい態様は、図8及び図9に示すレーザ光の光走査制御方式であり、レーザ光を所定間隔で、同一方向に隣接部を続けて走査しないように、折り返して走査して照射するものである。例えば、図8に示されるように、左上端部を起点としてレーザ光の走査を開始し、右上端部まで照射してきたところで、レーザ照射は不連続状態(オフ状態)となり、レーザがミラーの動きによって点線に沿って、隣接しない次の開始点へと無作為に折り返し、左端部から照射を再開し右端部に向って照射し、右端部まで走査したら、再度レーザ照射が不連続状態(オフ状態)となり、レーザがミラーの動きによって点線に沿って、隣接しない次のさらなる開始点へと無作為に折り返し、左端部から照射を再開し、右端部へと向って照射するように、無作為な折り返し順序で光走査制御を繰り返すものである。この場合、図8及び図9から分るように、図3の方式の光走査制御とは異なり、次の開始点は、直前のレーザ照射の開始点と離れるように制御されており、更にレーザ照射がこの間で不連続状態(オフ状態)となっているため、図3のように開始点が直前の走査の開始点の隣接部となる際に生じ得る蓄熱による悪影響が著しく低減でき、かつ、図3のレーザ光の光走査制御方式の場合と同様に、レーザを導くミラーは次の照射開始点までの移動に合わせて制御されているために、レーザの走査速度が落ちることはなく、レーザの走査速度は維持したままなので、媒体の繰り返し耐久性が向上する。なお、ミラーの予備走査時間は任意に設定してよいが、0.2ms〜5msであることが好ましい。
【0037】
なお、図3〜図9では、左→右方向、あるいは右→左方向にレーザ光を走査している例を用いて説明したが、レーザ光の走査方法に特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば上→下方向、下→上方向、あるいは斜め方向等でも本発明のレーザ光の走査方法は適用可能である。
【0038】
本発明において、レーザ光の走査は画像記録装置に設けられた走査制御手段としてのミラーの動き、熱可逆記録媒体又は画像処理装置の動き、或いはその他の組み合わせによって制御されるが、本発明のレーザ光の走査制御をなすように設定できれば、本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない限り、当業者は自由に制御を設定してよい。
【0039】
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射される前記レーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面(以下、「レーザ光の進行方向直交断面」と称することがある)における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下となるように、前記熱可逆記録媒体に対して前記レーザ光が照射される。
従来、レーザを用いて何らかのパターンを形成する場合には、レーザ光の進行方向直交断面の光分強度布はガウス分布となっており、光照射の中心部は周辺部に比して光照射強度が極端に強いものであった。このガウス分布のレーザ光を前記熱可逆記録媒体に照射すると、前記中心部では温度が上がりすぎて画像の記録と消去とを繰り返すとその部分が劣化し、繰り返し回数が低下することとなり、また中心部の温度を劣化する温度まで上げないようにレーザ照射エネルギーを低下させると、画像のサイズが小さくなり、画像コントラストの低下や画像記録に時間がかかってしまうという問題があった。
そこで、本発明の前記画像処理方法では、前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光の進行方向直交断面の光分強度布において、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となるようにすることにより、画像の記録及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制しながら画像のサイズを小さくすることなく、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性の向上を実現している。更に、前記レーザ光を同一方向に走査、又は互いに相反する方向に順次若しくは無作為に走査させて画像の消去及び画像の記録を行う場合、走査方向における折り返し部及び線の重なり部の少なくともいずれかでの蓄熱が少なくなり、良好な繰り返し耐久性が得られる。
【0040】
〔光強度分布における中心部及び周辺部〕
前記レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面の光強度分布における「中心部」は、該光強度分布を表す曲線を2回微分した微分曲線において、下に凸の2つの最大ピークのピーク頂部に挟まれた領域に対応する部位を意味し、「周辺部」は、前記「中心部」を除く領域に対応する部位を意味する。
「中心部の光照射強度」は、前記中心部における光強度分布が曲線で表される場合には、そのピーク頂部であって、かつ光強度分布曲線の形状が上に凸であるときにはピークトップにおける光照射強度を、前記光強度分布曲線の形状が下に凸であるときにはピークボトムにおける光照射強度を、それぞれ意味する。また、前記光強度分布曲線が、上に凸及び下に凸の両方の形状を有する場合には、中心部内のより中央に近い部位に位置するピーク頂部の光照射強度を意味する。
また、前記中心部における光強度分布が直線で表される場合には、該直線の最高部における光照射強度を意味するが、この場合、前記中心部において、前記光照射強度は一定である(前記中心部における光強度分布が水平線で表される)のが好ましい。
一方、「周辺部の光照射強度」は、前記周辺部における光強度分布が、曲線及び直線のいずれで表される場合にも、その最高部における光照射強度を意味する。
【0041】
以下、前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」、及び「周辺部」の光照射強度の一例を、図10A〜図10Eに示す。なお、図10A〜図10Eにおいて、それぞれ上側から順に、光強度分布を表す曲線、該光強度分布を表す曲線を1回微分した微分曲線(X’)、及び前記光強度分布を表す曲線を2回微分した微分曲線(X’’)を表す。
図10A〜図10Dは、本発明の前記画像処理方法に用いられるレーザ光の光強度分布を示しており、前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下となっている。
一方、図10Eは、通常のレーザ光の光強度分布を示しており、該光強度分布は、ガウス分布しており、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度に比して、極端に強くなっている。
【0042】
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布において、前記中心部と前記周辺部との光照射強度の関係としては、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下であることが必要であり、該同等以下とは、1.05倍以下であることを意味し、1.03倍以下が好ましく、1.0倍以下がより好ましく、前記中心部の光照射強度は、前記周辺部の光照射強度よりも小さい、即ち、1.0倍未満であるのが特に好ましい。
前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度の1.05倍以下であると、前記中心部での温度上昇による前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。
一方、前記中心部の光照射強度の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記周辺部の光照射強度に対して0.1倍以上が好ましく、0.3倍以上がより好ましい。
前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度の0.1倍未満であると、前記レーザ光の照射スポットにおける前記熱可逆記録媒体の温度が充分に上がらず、前記周辺部に比して前記中心部の画像濃度が低下したり、充分に消去できなくなったりすることがある。
【0043】
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布を測定する方法としては、前記レーザ光が、例えば、半導体レーザ、YAGレーザ等から出射され、近赤外領域の波長を有する場合には、CCD等を用いたレーザビームプロファイラを用いて行うことができる。また、例えば、COレーザから出射され、遠赤外領域の波長を有する場合には、前記CCDを使用することができないため、ビームスプリッタとパワーメータとを組合せたもの、高感度焦電式カメラを用いたハイパワー用ビームアナライザなどを用いて行うことができる。
【0044】
前記レーザ光の進行方向直交断面の光強度分布を、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光照射強度調整手段を好適に用いることができる。
前記光照射強度調整手段としては、例えば、レンズ、フィルタ、マスク、ミラーなどが好適に挙げられる。具体的には、カライドスコープ、インテグレータ、ビームホモジナイザー、非球面ビームシェイパー(強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せ)などが好ましい。また、フィルタ、マスクなどを用いる場合、前記レーザ光の中心部を物理的にカットすることにより光照射強度を調整することができる。また、ミラーを用いる場合、コンピュータと連動して機械的に形状が変えられるディフォーマブルミラー、反射率あるいは表面凹凸が部分的に異なるミラーなどを用いることにより光照射強度を調整することができる。
また、前記熱可逆記録媒体と前記レンズとの間の距離を、焦点距離からずらすことにより光照射強度を調整することも可能であり、更に、半導体レーザ、YAGレーザ等をファイバーカップリングすると、光照射強度の調整を容易に行うことができる。
なお、前記光照射強度調整手段による、光照射強度の調整方法については、後述する本発明の画像処理装置の説明において詳述する。
【0045】
ここで、本発明で用いられるレーザ光のスポット径は、レーザの出力や熱可逆記録媒体の特性によって変化するので適宜最適なスポット径にすればよいが、0.01mm〜20mmの範囲が好ましい。
【0046】
また、画像記録のためのレーザ光スポット径と画像消失のためのレーザ光スポット径を変化させてもよく、その場合には画像記録のためのレーザ光スポット径は0.01mm〜10mmが好ましく、0.01mm〜5mmがより好ましい。画像記録のためのレーザスポット径が大きくなりすぎると一定温度まで加熱するためにレーザ出力が大きくなり、装置が大型化するという問題が生じる。また、画像消去のためのレーザ光スポット径は0.1mm〜20mmが好ましく、0.2mm〜15mmがより好ましい。ここで、画像消去のためのレーザ光スポット径が大きくなるほど消去性は向上し、消去時間も短縮化できる。また、画像消去のためのレーザスポット径が大きくなりすぎると一定温度まで加熱するためにレーザ出力が大きくなり、消去性が低下する、あるいは装置が大型化するという問題が生じる。
【0047】
また、図3乃至図9において、レーザ光照射部と隣接する光照射部の間隔はレーザ光スポット径の1/12〜1/3が好ましく、1/10以上がより好ましく、1/8以上が更に好ましい。
【0048】
本発明におけるレーザ光の走査速度は100mm/秒以上が好ましく、300mm/秒以上がより好ましく、500mm/秒以上が更に好ましい。この速度より遅くなると、画像記録あるいは画像消去を行う場合に時間がかかる。また、レーザ光の走査速度は20,000mm/秒以下が好ましく、15,000mm/秒以下がより好ましく、10,000mm/秒以下が更に好ましい。この速度より速くなると均一な画像記録や画像消去が困難になる場合がある。
【0049】
(画像処理装置)
本発明の画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光照射手段と、光照射強度調整手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
【0050】
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光出射手段としては、レーザ光を照射可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、COレーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)などの通常用いられるレーザが挙げられる。
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、可視領域から赤外領域が好ましく、画像コントラストが向上する点で、近赤外領域から遠赤外領域がより好ましい。
前記可視領域では、前記熱可逆記録媒体の画像記録及び画像消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加剤が着色するため、コントラストが低下することがある。
【0051】
前記COレーザから出射されるレーザ光の波長は、遠赤外領域の10.6μmであり、前記熱可逆記録媒体が該レーザ光を吸収するため、前記熱可逆記録媒体に対する画像の記録及び消去のために、レーザ光を吸収して発熱させるための添加物を添加することが不要となる。また、該添加物は、近赤外領域の波長を有するレーザ光を用いても、若干ではあるが、可視光をも吸収することがあるため、該添加物が不要となる前記COレーザは、画像コントラストの低下を防ぐことができるという利点がある。
【0052】
前記YAGレーザ、前記ファイバーレーザ、及び前記LDから出射されるレーザ光の波長は、可視〜近赤外領域(数百μm〜1.2μm)であり、現状の熱可逆記録媒体は、その波長領域のレーザ光を吸収しないため、レーザ光を吸収して熱に変換するための光熱変換材料の添加が必要となるが、波長が短いため高精細画像の記録が可能であるという利点がある。
また、前記YAGレーザ、及び前記ファイバーレーザは高出力であるため、画像の記録及び消去速度の高速化を量ることができるという利点がある。前記LDはレーザ自体が小さいため、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという利点がある。
【0053】
−光照射強度調整手段−
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の光照射強度を変化させる機能を有する。
前記光照射強度調整手段の配置態様としては、前記レーザ光照射手段における前記レーザ光出射面に配置される限り特に制限はなく、前記レーザ光照射手段との距離等については、目的に応じて適宜選択することができる。
【0054】
前記光照射強度調整手段は、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させる機能を有するのが好ましい。画像の記録及び消去の繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制し、画像コントラストを維持したまま繰返し耐久性を向上させることができる。
【0055】
前記光照射強度調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、レンズ、フィルタ、マスク、ミラーなどが好適に挙げられる。具体的には、例えば、カライドスコープ、インテグレータ、ビームホモジナイザー、非球面ビームシェイパー(強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せ)などを好適に使用することができ、また、物理的にフィルタ、マスク等で前記レーザ光の中心部をカットすることにより光照射強度を調整することもできる。また、ミラーを用いる場合、コンピュータと連動して機械的に形状が変えられるディフォーマブルミラー、反射率あるいは表面凹凸が部分的に異なるミラーなどを用いることにより光照射強度を調整することができる。
更に、前記熱可逆記録媒体とfθレンズとの間の距離を調整することにより、前記中心部の光照射強度を、前記周辺部の光照射強度と同等以下となるように変化させることもできる。即ち、前記熱可逆記録媒体と前記fθレンズとの間の距離を、焦点距離からずらしていくと、前記レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布が、前記ガウス分布から、前記中心部の光照射強度が低下した分布に変化させることができる。
更にレーザ光源として、半導体レーザ、YAGレーザ等をファイバーカップリングすると、光照射強度の調整を容易に行うことができる。
【0056】
前記光照射強度調整手段として、非球面ビームシェイパーを用いた、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
例えば、強度変換レンズと位相補正レンズとの組合せを用いる場合には、図11Aに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、2枚の非球面レンズを配設する。そして、1枚目の非球面レンズL1により、目的とする位置(距離l)にて、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下(図11Aでは、フラットトップ形状)となるように、強度変換する。その後、強度変換されたビーム(レーザ光)を平行伝搬させるために、2枚目の非球面レンズL2で位相の補正を行う。その結果、前記ガウス分布した光強度分布を変化させることができる。
また、図11Bに示すように、前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の光路上に、強度変換レンズLのみを配設してもよい。この場合、ガウス分布した入射ビーム(レーザ光)について、強度の強い部分(内部)は、X1に示すように、ビームを拡散させ、逆に強度の弱い部分(外部)は、X2に示すように、ビームを収束させることにより、前記光強度分布における前記中心部の光照射強度が前記周辺部の光照射強度と同等以下(図11Bでは、フラットトップ形状)となるように変換することができる。
更に、前記光照射強度調整手段として、ファイバーカップリングした半導体レーザとレンズとの組合せによる、光照射強度の調整方法の一例について、以下に説明する。
ファイバーカップリングした半導体レーザでは、レーザ光がファイバー中を反射を繰り返しながら伝搬していくため、ファイバー端より出射するレーザ光の光強度分布は、前記ガウス分布とは異なり、前記ガウス分布と前記フラットトップ形状との中間に相当するような光強度分布となる。このような光強度分布を、前記フラットトップ形状となるように、ファイバー端に集光光学系として複数枚の凸レンズ及び/又は凹レンズを組み合わせたものを取り付ける。
【0057】
本発明の前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段及び前記光強度調整手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
【0058】
ここで、図12に、本発明の画像処理装置の一例をレーザ照射ユニットを中心に示す。
図12に示す画像処理装置は、出力40WのCOレーザを有するレーザマーカー(サンクス株式会社製、LP−440)の光路中に、前記光照射強度調整手段として、レーザ光の中心部をカットするマスク(不図示)を組み込み、レーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を、前記周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が変化するように調整可能としている。
なお、レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分の仕様は、可能レーザ出力範囲:0.1〜40W、照射距離可動範囲:特に限定なし、スポット径範囲:0.18〜10mm、スキャンスピード範囲:最大(max)12,000mm/s、照射距離範囲:110mm×110mm、焦点距離:185mmである。
【0059】
前記発振器ユニットは、レーザ発振器10、ビームエキスパンダ2、スキャンニングユニット5、fθレンズ6などで構成されている。
前記レーザ発振器10は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記スキャンニングユニット5は、ガルバノメータ4と、該ガルバノメータ4に取り付けられたミラー4Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器10から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ4に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー4Aで高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体7上に、画像の記録又は消去を行うようになっている。
前記fθレンズ6は、前記ガルバノメータ4に取り付けられたミラー4Aによって等角速度で回転走査されたレーザ光を、前記熱可逆記録媒体の平面上で等速度運動させるレンズである。
【0060】
前記電源制御ユニットは、放電用電源(COレーザの場合)又はレーザ媒質を励起する光源の駆動電源(YAGレーザなど)、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
【0061】
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作成及び編集を行うユニットである。
【0062】
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
【0063】
本発明の前記画像処理方法及び前記画像処理装置は、ダンボール等の容器に貼付したラベル等の熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高いコントラストの画像を高速で繰返し記録及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができる。このため、物流・配送システムに特に好適に使用可能である。この場合、例えば、ベルトコンベアに載せた前記ダンボールを移動させながら、前記ラベルに画像を記録及び消去することができ、ラインの停止が不要な点で、出荷時間の短縮を図ることができる。また、前記ラベルが貼付されたダンボールは、該ラベルを剥がすことなく、そのままの状態で再利用し、再度、画像の消去及び記録を行うことができる。
また、前記画像処理装置は、レーザ光の光照射強度を変化させる前記光照射強度調整手段を有しているので、画像の繰返し記録及び消去による前記熱可逆記録媒体の劣化を効果的に抑制することができる。
【0064】
<画像記録及び画像消去メカニズム>
前記画像記録及び画像消去メカニズムには、温度に依存して透明度が可逆的に変化する態様と、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様とがある。
前記透明度が可逆的に変化する態様では、前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子が、前記樹脂中に粒子状に分散されてなり、前記透明度が、透明状態と白濁状態とに熱により可逆的に変化する。
前記透明度の変化の視認は、下記現象に由来する。即ち、(1)透明状態の場合、樹脂母材中に分散された前記有機低分子物質の粒子と、前記樹脂母材とは隙間なく密着しており、また、前記粒子内部にも空隙が存在しないため、片側から入射した光は散乱することなく反対側に透過し、透明に見える。一方、(2)白濁状態の場合、前記有機低分子物質の粒子は、前記有機低分子物質の微細な結晶で形成されており、該結晶の界面又は前記粒子と前記樹脂母材との界面に隙間(空隙)が生じ、片側から入射した光は前記空隙と前記結晶との界面、あるいは前記空隙と前記樹脂との界面において屈折し散乱するため、白く見える。
【0065】
まず、図13Aに、前記樹脂中に前記有機低分子物質が分散されてなる可逆性感熱記録層(以下、「感熱記録層」、「記録層」と称することがある)を有する熱可逆記録媒体について、その温度−透明度変化曲線の一例を示す。
前記記録層は、例えば、T以下の常温では、白濁不透明状態(A)である。これを加熱していくと、温度Tから徐々に透明になり始め、温度T〜Tに加熱すると透明(B)となり、この状態で再びT以下の常温に戻しても透明(D)のままである。これは、温度T付近から前記樹脂が軟化し始め、軟化が進むにつれて該樹脂が収縮し、該樹脂と前記有機低分子物質粒子との界面、あるいは前記粒子内の空隙を減少させるため、徐々に透明度が上がり、温度T〜Tでは、前記有機低分子物質が半溶融状態となり、残った空隙を、前記有機低分子物質が埋めることにより透明となり、種結晶が残ったまま冷却されると比較的高温で結晶化し、その際、前記樹脂がまだ軟化状態にあるため、結晶化に伴う粒子の堆積変化に前記樹脂が追随し、前記空隙が生じず、透明状態が維持されるためであると考えられる。
更にT以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態(C)になる。次に、この温度を下げていくと、再び透明状態になることなく、最初の白濁不透明状態(A)に戻る。これは、温度T以上で前記有機低分子物質が完全に溶融した後、過冷却状態となり、Tより少し高い温度で結晶化し、その際、前記樹脂が結晶化に伴う体積変化に追随することができず、空隙が発生するためであると考えられる。
ただし、図13Aに示す温度−透明度変化曲線は、前記樹脂、前記有機低分子物質等の種類を変えると、その種類に応じて、各状態の透明度に変化が生じることがある。
【0066】
また、透明状態と白濁状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の透明度変化メカニズムを図13Bに示す。
図13Bでは、1つの長鎖低分子粒子と、その周囲の高分子とを取り出し、加熱及び冷却に伴う空隙の発生及び消失変化を図示している。白濁状態(A)では、高分子と低分子粒子との間(又は粒子内部)に空隙が生じ、光散乱状態となっている。これを加熱し、前記高分子の軟化点(Ts)を超えると、空隙は減少して透明度が増加する。更に加熱し、前記低分子粒子の融点(Tm)近くになると、該低分子粒子の一部が溶融し、溶融した低分子粒子の体積膨張のため、空隙に前記低分子粒子が充満して空隙が消失し、透明状態(B)となる。ここから冷却すると、融点直下で前記低分子粒子は結晶化し、空隙は発生せず、室温でも透明状態(D)が維持される。
次に、前記低分子粒子の融点以上に加熱すると、溶融した低分子粒子と周囲の高分子との屈折率にズレが生じ、半透明状態(C)となる。ここから室温まで冷却すると前記低分子粒子は過冷却現象を生じ高分子の軟化点以下で結晶化し、このとき前記高分子はガラス状態となっているため、前記低分子粒子の結晶化に伴う体積減少に、周囲の高分子が追随できず、空隙が発生して元の白濁状態(A)に戻る。
【0067】
次に、温度に依存して色調が可逆的に変化する態様では、融解前の前記有機低分子物質が、ロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)であり、かつ融解した後であって、結晶化する前の前記有機低分子物質が、前記ロイコ染料及び前記顕色剤であり、前記色調が、透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図14Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる可逆性感熱記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図14Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度Tにて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度Tにて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図14Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもTで凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
以上より、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる可逆性感熱記録層を有する熱可逆記録媒体では、ベタ画像やバーコードなどを記録する際、前記画像記録工程において、折り返し部及び線の重なり部の少なくともいずれかに蓄熱の悪影響がない場合は急冷状態となり、溶融混合した前記ロイコ染料と前記顕色剤との分離が妨げられ、結果として、発色状態を維持すると考えられる。
【0068】
[熱可逆記録媒体]
本発明の前記画像処理方法に用いられる前記熱可逆記録媒体は、支持体と、可逆性感熱記録層とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、保護層、中間層、アンダーコート層、バック層、光熱変換層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0069】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0070】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0071】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
また、前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜2,000μmが好ましく、50〜1,000μmがより好ましい。
【0072】
−可逆性感熱記録層−
前記可逆性感熱記録層(以下、単に「記録層」と称することがある)は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料は、温度変化により、目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。この場合、目に見える変化は、色の状態の変化と形状の変化とに分けられる。該色の状態の変化は、例えば、透過率、反射率、吸収波長、散乱度などの変化に起因し、前記熱可逆記録媒体は、実際には、これらの変化の組合せにより色の状態が変化する。
【0073】
前記温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ポリマーを2種以上混合し、その相溶状態の違いで透明及び白濁に変化するもの(特開昭61−258853号公報参照)、液晶高分子の相変化を利用したもの(特開昭62−66990号公報参照)、常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、該第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となるもの、等が挙げられる。
これらの中でも、温度制御しやすく、高コントラストが得られる点で、前記第一の特定温度と第二の特定温度とで色の状態が変化するものが特に好ましい。
例えば常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、該第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となるもの、更に前記第二の特定温度よりも高い第三の特定温度以上で加熱するもの等が挙げられる。
【0074】
これらの例としては、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの(特開昭55−154198号公報参照)、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するもの(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報等参照)、第一の特定温度で白濁状態となり、第二の特定温度で透明状態となるもの(特開平3−169590号公報参照)、第一の特定温度で黒、赤、青等に発色し、第二の特定温度で消色するもの(特開平2−188293号、特開平2−188294号公報等参照)などが挙げられる。
これらの中でも、樹脂母材と該樹脂母材中に分散させた高級脂肪酸等の有機低分子物質とからなる熱可逆記録媒体は、第二の特定温度及び第一の特定温度が比較的低く、低エネルギーでの消去記録が可能な点で有利である。また、発消色メカニズムが、樹脂の固化と有機低分子物質の結晶化とに依存する物理変化であるため、耐環境性に強い特性がある。
また、後述するロイコ染料と可逆性顕色剤とを用いた、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色する熱可逆記録媒体は、透明状態と発色状態とを可逆的に示し、発色状態では、黒、青、その他の色を示すため、高コントラストな画像を得ることができる。
【0075】
前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質(樹脂母材中に分散され、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの)としては、前記録層中で、熱により多結晶から単結晶に変化するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、一般に、融点が30〜200℃程度のものを使用することができ、融点が50〜150℃のものが好適である。
このような有機低分子物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカノール;アルカンジオール;ハロゲンアルカノール又はハロゲンアルカンジオール;アルキルアミン;アルカン;アルケン;アルキン;ハロゲンアルカン;ハロゲンアルケン;ハロゲンアルキン;シクロアルカン;シクロアルケン;シクロアルキン;飽和又は不飽和モノ若しくはジカルボン酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;飽和又は不飽和ハロゲン脂肪酸及びこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;アリールカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;ハロゲンアリルカルボン酸及びそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;チオアルコール;チオカルボン酸及びそれらのエステル、アミン又はアンモニウム塩;チオアルコールのカルボン酸エステル;などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
これらの化合物の炭素数としては、10〜60が好ましく、10〜38がより好ましく、10〜30が特に好ましい。エステル中のアルコール基部分は、飽和していてもよいし飽和していなくてもよく、ハロゲン置換されていてもよい。
また、前記有機低分子物質は、その分子中に、酸素、窒素、硫黄及びハロゲンから選択される少なくとも1種、例えば、−OH、−COOH、−CONH−、−COOR、−NH−、−NH、−S−、−S−S−、−O−、ハロゲン原子等を含んでいるのが好ましい。
更に具体的には、これらの化合物としては、例えば、ラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ラウリン酸オクタデシル、パルミチン酸テトラデシル、ベヘン酸ドデシル等の高級脂肪酸のエステルなどが挙げられる。これらの中でも、前記画像処理方法の第3の態様で用いられる有機低分子物質としては、高級脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数16以上の高級脂肪酸がより好ましく、炭素数16〜24の高級脂肪酸が更に好ましい。
【0077】
前記熱可逆記録媒体を透明化することができる温度範囲の幅を拡げるためには、上述した各種有機低分子物質を適宜組み合わせて使用してもよいし、該有機低分子物質と融点の異なる他の材料とを組み合わせて使用してもよい。これらは、例えば、特開昭63−39378号公報、特開昭63−130380号公報、特許第2615200号公報などに開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0078】
前記樹脂母材は、前記有機低分子物質を均一に分散保持した層を形成すると共に、最大透明時の透明度に影響を与える。このため、該樹脂母材としては、透明性が高く、機械的安定性を有し、かつ成膜性の良好な樹脂であるのが好ましい。
このような樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリ塩化ビニリデン;塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート又はポリメタクリレート若しくはアクリレート−メタクリレート共重合体;シリコーン樹脂;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記記録層における、前記有機低分子物質と前記樹脂(樹脂母材)との割合は、質量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:8がより好ましい。
前記樹脂の比率が、2:1よりも小さいと、前記有機低分子物質を前記樹脂母材中に保持した膜を形成することが困難となることがあり、1:16よりも大きくなると、前記有機低分子物質の量が少ないため、前記記録層の不透明化が困難になることがある。
【0080】
前記記録層には、前記有機低分子物質及び前記樹脂のほか、透明画像の記録を容易にするために、高沸点溶剤、界面活性剤等のその他の成分を添加することができる。
前記高沸点溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばリン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、オレイン酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。
【0081】
前記界面活性剤及びその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール高級脂肪酸エステル;多価アルコール高級アルキルエーテル;多価アルコール高級脂肪酸エステル、高級アルコール、高級アルキルフェノール、高級脂肪酸高級アルキルアミン、高級脂肪酸アミド、油脂又はポリプロピレングリコールの低級オレフィンオキサイド付加物;アセチレングリコール;高級アルキルベンゼンスルホン酸のNa、Ca、Ba又はMg塩;高級脂肪酸、芳香族カルボン酸、高級脂肪酸スルホン酸、芳香族スルホン酸、硫酸モノエステル又はリン酸モノ−若しくはジ−エステルのCa、Ba又はMg塩;低度硫酸化油;ポリ長鎖アルキルアクリレート;アクリル系オルゴマー;ポリ長鎖アルキルメタクリレート;長鎖アルキルメタクリレート−アミン含有モノマー共重合体;スチレン−無水マレイン酸共重合体;オレフィン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0082】
前記記録層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の2成分を溶解した溶液、又は、前記樹脂母材の溶液(溶剤としては、前記有機低分子物質から選択される少なくとも1種を不溶なもの)に前記有機低分子物質を微粒子状に分散させた分散液を、例えば、前記支持体上に塗布及び乾燥させることにより行うことができる。
前記記録層の作製用溶剤としては、特に制限はなく、前記樹脂母材及び前記有機低分子物質の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。なお、前記分散液を使用した場合はもちろん、前記溶液を使用した場合も、得られる記録層中では前記有機低分子物質は微粒子として析出し、分散状態で存在する。
【0083】
前記熱可逆記録媒体における前記有機低分子物質は、前記ロイコ染料及び前記可逆性顕色剤からなり、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するものであってもよい。前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0084】
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0085】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【0086】
【化1】

【化2】

前記一般式(1)及び(2)中、Rは、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。Rは、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R、前記R、及び前記Rの炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0087】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
【0088】
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(3)〜(9)で表される化合物などが好ましい。
【0089】
【化3】

前記一般式(3)〜(9)において、R、R、及びRは、炭素数7以上22以下の直鎖アルキル基、分枝アルキル基、又は不飽和アルキル基を表す。Rは、炭素数1〜10のメチレン基を表す。Rは、炭素数4〜10の3価の官能基を表す。
【0090】
前記電子供与性呈色化合物(発色剤)と、前記電子受容性化合物(顕色剤)との混合割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化し一概には規定できないが、おおむねモル比で発色剤1に対し顕色剤が0.1〜20の範囲が好ましく、0.2〜10の範囲がより好ましい。この好適範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。
【0091】
また、前記消色促進剤を添加する場合は、その割合は顕色剤100質量部に対し0.1質量部〜300質量部が好ましく、3質量部〜100質量部がより好ましい。なお、前記発色剤と前記顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0092】
前記可逆性感熱記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて記録層の塗布特性や発色消色特性を改善したり、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0093】
前記バインダー樹脂としては、支持体上に記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0094】
前記アクリルポリオール樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、カルボン酸基を有する不飽和単量体、水酸基を有する不飽和単量体、及びその他のエチレン性不飽和単量体とを用い、公知の溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等に従って合成することができる。
【0095】
前記水酸基を有する不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1,4−ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などが用いられるが、第1級水酸基をもつモノマーを使用した方が塗膜のワレ抵抗性や耐久性がよいことから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく用いられる。
【0096】
前記記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0097】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
【0098】
前記イソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、又はこれらのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、又はブロック化イソシアネート類等が挙げられる。
【0099】
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
【0100】
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。該架橋促進剤としては、例えば、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の3級アミン類、有機スズ化合物等の金属化合物などが挙げられる。
【0101】
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0102】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0103】
前記記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
【0104】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0105】
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、二塩基酸エステル、グリコール、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などが挙げられる。
【0106】
前記記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、記録層の塗工方法、乾燥・硬化方法等は前記バック層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0107】
なお、記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0108】
前記記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を溶媒中に溶解乃至分散させた記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を分散させた記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0109】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
【0110】
なお、前記電子受容性化合物は、前記記録層中では粒子状に分散して存在している。
【0111】
前記記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0112】
前記記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
【0113】
前記記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
【0114】
前記記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0115】
前記熱可逆記録媒体は、前記記録層の他に、更に必要に応じて適宜選択した中間層、アンダーコート層、光熱変換層、着色層、空気層、光反射層、接着層、バック層、保護層、接着剤層、粘着層等のその他の層を有していてもよい。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0116】
<保護層>
前記熱可逆記録媒体には、前記記録層を保護する目的で該記録層上に保護層を設けることが好ましい。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
【0117】
前記保護層は、少なくともバインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0118】
前記保護層の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0119】
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
【0120】
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
【0121】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
【0122】
また、前記モノマー又はオリゴマーを紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
【0123】
前記光重合開始剤としては、ラジカル反応型とイオン反応型に大別でき、更に、ラジカル反応型は光開裂型と水素引抜き型とに分けられる。
【0124】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテルベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシシカルボニル)オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
前記光重合促進剤としては、ベンゾフェノン系やチオキサントン系などの水素引抜きタイプの光重合開始剤に対し、硬化速度を向上させる効果を有するものが好ましく、例えば、芳香族系の第3級アミンや脂肪族アミン系、などが挙げられる。具体的には、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0126】
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0127】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
【0128】
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆感熱記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
【0129】
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0130】
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子、ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤、シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、更に針状導電性フィラーを用いることが好ましい。
【0131】
前記無機顔料の粒径としては、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。前記無機顔料の添加量としては、前記耐熱性樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
【0132】
前記有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。
【0133】
また、前記導電性フィラーとしては、アンチモンドープ酸化スズで表面が被覆されている酸化チタンが特に好ましい。
【0134】
更に、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0135】
また、熱硬化性樹脂としては例えば、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
【0136】
更に紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いてもよい。
【0137】
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、耐光性が良好である点でベゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
【0138】
前記紫外線吸収構造を持つポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとスチレンからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとメタクリル酸メチルからなる共重合体、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸t−ブチルからなる共重合体、2,2,4,4−テトラヒドロキシベンゾフェノンとメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルとスチレンとメタクリル酸メチルとメタクリル酸プロピルからなる共重合体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0139】
前記熱硬化性樹脂は架橋されていることが好ましい。従って熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30以上であり、更に好ましくは40以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0140】
前記硬化剤としては例えば、前記記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
【0141】
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
【0142】
前記保護層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが更に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像の印字と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
【0143】
<中間層>
前記中間層は、前記記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層中の添加剤の記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
【0144】
前記中間層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0145】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0146】
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。該紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
【0147】
前記有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系、ケイ皮酸系の紫外線吸収剤が挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系である。これらの中でも、水酸基を隣接する嵩高い官能基で保護したものが特に好ましく、更には2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が好ましい。また、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の共重合した高分子にこのような紫外線吸収能を有する骨格のものをペンダントしてもよい。
【0148】
前記有機系紫外線吸収剤の含有量は、前記中間層の樹脂成分全質量に対し0.5質量%〜10質量%が好ましい。
【0149】
前記無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径100nm以下の金属系化合物が好適であり、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニア、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムのような金属酸化物又はこれらの複合酸化物、硫化亜鉛、硫酸バリウムのような金属硫化物又は硫酸化合物、チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイドのような金属炭化物、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウムのような金属窒化物等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは金属酸化物系超微粒子であり、更に好ましいのはシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムである。これらは、表面をシリコーン、ワックス、有機シラン、又はシリカ等で処理することもできる。
【0150】
前記無機系紫外線吸収剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積分率で1%〜95%の範囲が好ましい。なお、これらの有機系及び無機系紫外線吸収剤は中間層ではなく、記録層に含有させてもよい。
【0151】
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0152】
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0153】
<アンダー層>
前記熱可逆記録媒体においては、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。前記アンダー層は少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0154】
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0155】
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製)、ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも日本ゼオン株式会社製)、SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0156】
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10質量%〜80質量%が好ましい。
【0157】
前記バインダー樹脂としては、前記記録層、又は前記紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
【0158】
また、前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどの無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
【0159】
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
【0160】
前記アンダー層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが更に好ましい。
【0161】
<バック層>
本発明においては、熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために支持体の記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0162】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0163】
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記記録層、前記保護層、前記又は中間層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
【0164】
<接着層又は粘着層>
前記熱可逆記録媒体には、支持体の記録層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては一般的に使われているものが使用可能である。
【0165】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0166】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料はホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着剤層又は粘着剤層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層又は粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0167】
また、少なくとも光熱変換材料を含有する光熱変換層を設ける場合は、通常樹脂と併用して用いられる。光熱変換層に用いられる樹脂は上記の無機系材料、有機系材料を保持できるもの公知のものでよいが、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が好ましい。
前記光熱変換材料はレーザ光を吸収し発熱する役割をもつものであり、それの主な材料としては無機系材料と有機系材料とに大別できる。無機系材料としてはカーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。有機系材料としては吸収すべき光波長により各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には700nm〜1500nm付近に吸収を持つ近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系色素等が挙げられる。繰り返し印字消去を繰り返すため耐熱性に優れた光熱変換材料を選択することが好ましい。
これらの近赤外吸収色素は前記記録層中に混ぜ込んでもよく、2種類以上を混ぜ込んで用いてもよい。この場合、記録層は光熱変換層を兼ねることになる。
【0168】
前記熱可逆記録媒体には、前記支持体と前記記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。前記着色層は、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0169】
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0170】
前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、本発明の熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
【0171】
更に、本発明の熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0172】
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは印字する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0173】
<熱可逆記録部材 RF−IDとの組み合わせ例>
本発明の熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には熱可逆記録部の表示を書き換えることで、熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
【0174】
前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好ましく用いられる。工程管理や物品管理等に使用する場合には特にRF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグはICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0175】
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適なものとしてRF−IDタグが挙げられる。
【0176】
ここで、図15は、RF−IDタグ85の概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85はICチップ81と、該ICチップに接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は記憶部、電源調整部、送信部、受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグとリーダライタのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−IDのアンテナがリーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式の2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグから信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
【0177】
前記RF−IDタグはラベル状又はカード状に加工されており、RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼ることが好ましい。RF−IDタグと熱可逆記録媒体を貼り合わせるためには公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、熱可逆記録媒体とRF−IDをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【0178】
次に、前記熱可逆記録媒体とRF−IDタグを組み合わせた工程管理での使い方の例を示す。
納品された原材料が入っているコンテナが搬送される工程ラインには、搬送されながら表示部に可視画像を非接触で書き込む手段と非接触で消去する手段が備えられ、更に、電磁波の発信によりコンテナに備えられたRF−IDの情報の読み取り、書き換えを非接触で行うためのリーダライタが備えられている。また更に、この工程ラインには、コンテナが搬送されながら非接触にて読み書きされるその個別情報を利用して、物流ライン上で自動的に分岐や計量、管理などを行う制御手段が備えられている。
【0179】
このコンテナに添付されたRF−ID付き熱可逆記録媒体に対して物品名と数量などの情報を熱可逆記録媒体とRF−IDタグに記録し、検品が実施される。次工程では納入された原材料に加工指示が与えられ、熱可逆記録媒体とRF−IDタグに情報が記録され加工指示書となり加工工程へと進む。次いで、加工された商品には発注指示書として発注情報が熱可逆記録媒体とRF−IDタグに記録され、商品出荷後に回収したコンテナから出荷情報を読み取り、再度納品用のコンテナとRF−ID付き熱可逆記録媒体として使われる。レーザを用いた熱可逆記録媒体への非接触記録であるためコンテナ等から熱可逆記録媒体を剥がすことなく情報の消去印字を行うことができ、更にRF−IDも非接触で情報を記録することができるため、工程をリアルタイムで管理することができ、またRF−ID内の情報を熱可逆記録媒体に同時に表示することが可能となる。
【実施例】
【0180】
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0181】
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して色調が可逆的(透明状態−発色状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0182】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0183】
−アンダー層−
スチレン−ブタジエン系共重合体(日本エイアンドエル社製、PA−9159)30質量部、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、ポバールPVA103)12質量部、中空粒子(松本油脂株式会社製、マイクロスフェアーR−300)20質量部、及び水40質量部を添加し、均一状態になるまで約1時間撹拌して、アンダー層塗布液を調製した。
次に、得られたアンダー層塗布液を前記支持体上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃にて2分間加熱及び乾燥して、厚み20μmのアンダー層を形成した。
【0184】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価:200)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0185】
(可逆性顕色剤)
【化4】

【0186】
(消色促進剤)
【化5】

【化6】

【0187】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、下記構造式(4)で表されるフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX565)0.2質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌させて記録層用塗布液を調製した。
【0188】
【化7】

【0189】
次に、得られた記録層用塗布液を、前記アンダー層形成済みの支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み11μmの記録層を形成した。
【0190】
−中間層−
アクリルポリオール樹脂50質量%溶液(三菱レーヨン株式会社製、LR327)3質量部、酸化亜鉛微粒子30質量%分散液(住友セメント株式会社製、ZS303)7質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン7質量部を加え、よく攪拌して中間層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、及び前記記録層が形成された支持体上に、前記中間層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて2時間加熱し、厚み2μmの中間層を形成した。
【0191】
−保護層−
ペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)3質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)3質量部、ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−120)3質量部、シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌して平均粒径が約3μmになるまで分散し、保護層用塗布液を調製した。
次に、前記アンダー層、前記記録層、及び前記中間層が形成された支持体上に、前記保護層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmの保護層を形成した。
【0192】
−バック層−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記記録層、前記中間層、及び前記保護層が形成された支持体における、これらの層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1の熱可逆記録媒体を作製した。
【0193】
(製造例2)
<熱可逆記録媒体の作製>
温度に依存して透明度が可逆的(透明状態−白濁状態)に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0194】
−支持体−
支持体として、厚み175μmの透明PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー175−T12)を用いた。
【0195】
−可逆性感熱記録層(記録層)−
塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン株式会社製、M110)26質量部を、メチルエチルケトン210質量部に溶解させた樹脂溶解液中に、下記構造式(5)で表される有機低分子物質3質量部、及びベヘン酸ドコシル7質量部を加え、ガラス瓶中に直径2mmのセラミックビーズを入れて、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)を用い48時間分散し、均一な分散液を調製した。
【0196】
【化8】

【0197】
次に、得られた分散液に、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン株式会社製、コロネート2298−90T)4質量部を添加し、感熱記録層液を調製した。
次に、前記支持体(磁気記録層を有するPETフィルムの接着層)上に、得られた感熱記録層液を塗布し、加熱及び乾燥した後、更に65℃環境下に24時間保存して樹脂を架橋させて、厚み10μmの感熱記録層を設けた。
【0198】
−保護層−
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の75質量%酢酸ブチル溶液10質量部(大日本インキ化学工業株式会社製、ユニディックC7−157)、及びイソプロピルアルコール10質量部よりなる溶液を、ワイヤーバーで前記感熱記録層上に塗布し、加熱及び乾燥した後、80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させて、厚み3μmの保護層を形成した。以上により、製造例2の熱可逆記録媒体を作製した。
【0199】
(製造例3)
<熱可逆記録媒体の作製>
製造例1において、前記熱可逆記録媒体の作製の際に、前記記録層中に光熱変換材料(株式会社日本触媒製、イーエクスカラーIR−14)0.03質量部を添加した以外は、製造例1と同様にして、製造例3の熱可逆記録媒体を作製した。
【0200】
(実施例1)
レーザマーカーとして40WのCOレーザを使用しているサンクス株式会社製LP−440を用い、製造例1の熱可逆記録媒体にレーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、単一のレーザ光描画線からなる文字画像を記録した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,400mm/sとなるように調整し、図3のように0.6mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は6.3秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0201】
(実施例2)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザ光描画線からなる文字画像を記録した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,400mm/s、予備走査時間(ミラーだけ走査する時間)が1ミリ秒となるように調整し、図4のように0.6mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は6.6秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0202】
(実施例3)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザ光描画線からなる文字画像を記録した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,400mm/s、予備走査時間が3ミリ秒となるように調整し、図5のように0.6mmの間隔で直線状にかつ互いに相反する方向にレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.9秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0203】
(実施例4)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザー光描画線からなる文字画像を記録した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,300mm/sとなるように調整し、図6に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.6mmとなるようにレーザ光を114本走査して110×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0204】
(実施例5)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザ光描画線からなる文字画像を記録した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,400mm/s、予備走査時間(ミラーだけ走査する時間)が2ミリ秒となるように調整し、図7に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.6mmとなるようにレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.7秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0205】
(実施例6)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図3のように0.16mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を記録した。次に、実施例4の消去条件で消去を行ったところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を100回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0206】
(実施例7)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/s、予備走査時間が0.5ミリ秒となるように調整して、図4のように0.16mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を記録した。次に、実施例4の消去条件で消去を行ったところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0207】
(実施例8)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/s、予備走査時間が0.5ミリ秒となるように調整して、図5のように0.16mmの間隔で直線状にかつ逆方向にレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を記録した。次に、実施例4の消去条件で消去を行ったところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒であった。
上記条件で画像記録と画像消去を繰り返したところ、50回まで均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0208】
(実施例9)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図6に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.16mmとなるようにレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を記録した。次に、実施例4の消去条件で消去を行ったところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒であった。
上記条件で画像記録と画像消去を100回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0209】
(実施例10)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/s、予備走査時間が0.5ミリ秒となるように調整して、図7に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.16mmとなるようにレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を記録した。次に、実施例4の消去条件で消去を行ったところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0210】
(実施例11)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザ光描画線からなる文字画像を形成した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,300mm/sとなるように調整し、図8に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.6mmとなるようにレーザ光を114本走査して110×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は6.3秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0211】
(実施例12)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザ光描画線からなる文字画像を形成した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,400mm/s、予備走査時間(ミラーだけ走査する時間)が1ミリ秒となるように調整し、図9に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.6mmとなるようにレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は6.6秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0212】
(実施例13)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図8に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.16mmとなるようにレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を形成した。次に、実施例4の消去条件で消去を行ったところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒であった。
上記条件で画像記録と消去を200回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0213】
(実施例14)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/s、予備走査時間が0.5ミリ秒となるように調整して、図9に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.16mmとなるようにレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を形成した。次に、実施例4の消去条件で消去を行ったところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は5.5秒間であった。
上記条件で画像記録と消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0214】
(実施例15〜34)
次に、実施例1〜14の画像記録条件及び消去条件を表1のように組み合わせて、画像の記録、消去及び繰返し試験を行った。その結果を実施例1〜14の結果と共に表1に示す。
【0215】
(比較例1)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザ光描画線からなる文字画像を記録した。次に、レーザ出力11W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度800mm/sとなるように調整し、図2のように0.6mmの間隔で直線状にかつ逆方向にレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。
上記条件で画像記録と画像消去を繰り返したところ、50回まで均一な画像の記録と消去が可能であったが、そのときの消去時間は15.5秒間であった。
【0216】
(比較例2)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例1と同様に単一のレーザ光描画線からなる文字画像を記録した。次に、レーザ出力11W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度800mm/sとなるように調整し、図1のように0.6mmの間隔で直線状にかつ逆方向に連続でレーザ光を走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であったが、そのときの消去時間は15.7秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を繰り返したところ、20回後には画像の消去跡が目立ち、均一な消去ができなくなった。
【0217】
(比較例3)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図2のように0.16mmの間隔で直線状にかつ逆方向にレーザ光を50本走査して8×8mmのベタ画像を記録した。次に、比較例1の消去条件で比較例1と同様に消去したところ、画像は完全に消去可能であったが、そのときの消去時間は15.5秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を繰り返したところ、10回後には画像の消去跡が目立ち、均一な消去ができなくなった。
【0218】
(比較例4)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図1のように0.16mmの間隔で直線状にかつ逆方向に連続でレーザ光を走査して8mm×8mmのベタ画像を記録した。次に、比較例2の消去条件で比較例2と同様に消去したところ、画像は完全に消去可能であったが、そのときの消去時間は15.7秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を繰り返したところ、10回後には画像の消去跡が目立ち、均一な消去ができなくなった。
【0219】
(比較例5)
実施例1のレーザマーカーと、製造例2の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力5.5W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図1のように0.16mmの間隔で直線状にかつ逆方向に連続でレーザ光を走査して8mm×8mmのベタ画像を形成した。次に、レーザ出力8.5W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度800mm/sとなるように調整し、図1のように0.6mmの間隔で直線状にかつ逆方向に連続でレーザ光を走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であったが、そのときの消去時間は15.5秒間であった。
また、上記条件で画像記録と消去を繰り返したところ、10回後には画像の消去跡が目立ち、均一な消去ができなくなった。
【0220】
次に、比較例1〜5の消去時間及び繰り返し試験の結果を表2に示す。
【0221】
【表1】

【0222】
【表2】

【0223】
表1及び表2における繰り返し試験の評価基準は、以下の通りである。
〔繰返し試験の評価基準〕
◎:画像記録と画像消去を300回繰り返しても均一な画像の記録と消去が可能
〇:画像記録と画像消去を100〜299回の範囲で繰り返しても均一な画像の記録と消去が可能
△:画像記録と画像消去を40〜99回の範囲で繰り返しても均一な画像の記録と消去が可能
×:画像記録と画像消去の繰返しが39回以下で均一な画像の記録又は消去が困難
【0224】
表1及び表2の結果から、実施例1〜34では短時間で画像の消去ができ、かつ繰返し耐久性も比較的良好であった。これらの中でも、実施例7、9、10、22及び34のような画像記録条件と消去条件の組合せにおいて、短時間で消去が可能で、かつ非常に優れた繰返し耐久性が得られた。
【0225】
(実施例35)
実施例1のレーザマーカーと、製造例2の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力5.5W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図3のように0.16mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を50本走査して8×8mmのベタ画像を形成した。次に、レーザ出力19W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,400mm/sとなるように調整し、図3のように0.6mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を114本走査して110×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は6.3秒間であった。
上記条件で画像形成と消去を100回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去が可能であった。
【0226】
(実施例36)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例9と同様にベタ画像を形成した。次に、レーザ出力11W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度800mm/sとなるように調整し、図2のように0.6mmの間隔で直線状にかつ逆方向にレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であったが、そのときの消去時間は15.5秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を繰り返したところ、50回まで均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0227】
(実施例37)
レーザマーカーとして40WのCOレーザを使用しているサンクス株式会社製LP−440を用い、レーザ光の光路中に、該レーザ光の中心部をカットするマスクを組み込んだ。そして、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.5倍となるように調整した。次いで、製造例1の熱可逆記録媒体にレーザ出力6W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度1,000mm/sとなるように調整して、図3のように0.16mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を形成した。次に、レーザ出力12W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度1,000mm/sとなるように調整し、図3のように0.45mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を154本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。
上記条件で画像記録と画像消去を300回繰り返したところ、均一な画像の記録と画像消去が可能であった。
【0228】
(実施例38)
レーザとして、集光光学系f100を装備した140Wのファイバーカップリング式高出力半導体レーザ装置(イエナオプティック社製、NBT−S140mkII、中心波長:808nm、光ファイバコア径:600μm、NA:0.22)を用い、レーザ出力12W、照射距離91.4mm、スポット径約0.6mmとなるように調整し、XYステージの送り速度1,200mm/sで、製造例3の熱可逆記録媒体に対し、図6に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.5mmとなるようにレーザ光を16本走査したところ、8mm×8mmの均一なベタ画像が得られた。
このとき、レーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図17に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図10Bで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が1.05倍となっていることが判った。
続いて、前記レーザ装置を用い、レーザ出力15W、照射距離86mm、スポット径3.0mmとなるように調整し、XYステージの送り速度1,200mm/sで、図6に示すような走査順番でそれぞれの間隔が結果として0.6mmとなるようにレーザ光を114本走査して110×70mmの範囲内に照射して、前記熱可逆記録媒体に記録された画像を消去した。
このとき、同様にしてレーザ光における該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布を、レーザビームプロファイラBeamOn(デューマオプトロニクス社製)を用いて測定したところ、図18に示す光強度分布曲線が得られた。また、該光強度分布曲線を1回微分(X’)及び2回微分(X’’)した微分曲線は、図10Dで表され、これらの図より、周辺部の光照射強度に対し中心部の光照射強度が0.6倍となっていることが判った。
上記条件で画像形成と消去を100回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去が可能であった。
【0229】
(実施例39)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、実施例9と同様にベタ画像を形成した。次に、続いて、熱傾斜試験機(東洋精機株式会社製、TYPE HG−100)を用い、1kgf/cmの圧力下、140℃で1秒間加熱して画像を消去した。
上記条件で画像形成と消去を100回繰り返したところ、均一な画像の形成と消去が可能であった。
【0230】
(実施例40)
実施例1のレーザマーカーと、製造例1の熱可逆記録媒体を用い、レーザ出力7W、照射距離185mm、スポット径約0.2mm、走査速度2,000mm/sとなるように調整して、図19のように0.16mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を50本走査して8mm×8mmのベタ画像を記録した。次に、レーザ出力32W、照射距離224mm、スポット径約3mm、走査速度2,400mm/sとなるように調整し、図19のように0.6mmの間隔で直線状にかつ同方向にレーザ光を114本走査して110mm×70mmの範囲内に照射したところ、画像は完全に消去可能であった。そのときの消去時間は6.3秒間であった。
上記条件で画像記録と画像消去を100回繰り返したところ、均一な画像の記録と消去が可能であった。
【0231】
(実施例41)
<ラベルの例>
前記製造例1の「熱可逆記録媒体の作製」で用いた支持体上に、前記製造例1のアンダー層、及び前記記録層を順次塗布した。
【0232】
次に、以下のようにして調製した紫外線吸収構造を持つポリマー含有層塗布液を前記アンダー層、記録層塗布済み支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、50℃にて24時間加熱して、厚み2μmの紫外線吸収構造を持つポリマー含有層(中間層)を形成した。
−紫外線吸収構造を持つポリマー含有層(中間層)塗布液の調製−
紫外線吸収性ポリマーの40質量%溶液(大塚化学株式会社製、PUVA−60MK−40K、水酸基価=60mgKOH/g)20質量部、キシレンジイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社製、D−110N)3.2質量部、及びメチルエチルケトン(MEK)23質量部からなる組成物をボールミルにて十分に撹拌して紫外線吸収構造を持つポリマー含有層塗布液を調製した。
【0233】
次に、前記製造例1の中間層上に、「熱可逆記録媒体の作製」で用いた保護層用塗布液を塗布し、厚み4μmの保護層を形成した。
【0234】
次に、以下のようにして調製した粘着層塗布液を前記アンダー層、記録層、中間層、及び保護層を塗布済み支持体の塗工されていない側の面上に、前記粘着層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて2分間乾燥して、厚み20μmの粘着層を形成した。以上により、熱可逆記録ラベルを作製した。
−粘着層用塗布液の調製−
アクリル系粘着剤(東洋インキ製造株式会社製、BPS−1109)50質量部とイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社製、D−170N)2質量部からなる組成物を十分に撹拌し、粘着層塗布液を調製した。
【0235】
作製した熱可逆記録ラベルを120mm×80mmのサイズにカットし、プラスチックの箱に貼り付け、実施例1〜14と同様にして、画像記録及び画像消去を行ったところ、均一な画像記録及び均一な画像消去が可能であった。
【0236】
(実施例42)
−タグ、カンバンの例−
前記製造例1の「熱可逆記録媒体の作製」で用いた支持体上に、同じく前記製造例1の記録層、中間層、保護層を塗布した上面用シートと、前記製造例1の「熱可逆記録媒体の作製」で用いた支持体に、前記製造例1のバック層のみを塗布した下面用のシートをそれぞれ作製した。それぞれ210mm×85mmのサイズにカットし、これらのシートの間にRF−IDのインレット(DNP社製)とインレット周囲用スペーサーとしてPETGシート(三菱樹脂株式会社製)を挟みこみ粘着テープ(日東電工株式会社製)で貼り合わせて、厚み500μmのRF−ID入り熱可逆記録タグを作製した。
【0237】
作製したRF−ID入り熱可逆タグをプラスチックの箱に取り付けて、実施例1〜14と同様にして画像記録及び画像消去を行ったところ、均一な画像記録及び均一な画像消去が可能であった。
【0238】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0239】
本発明の画像処理方法及び画像処理装置は、熱可逆記録媒体に対して、非接触式にて、高コントラストの画像を高速で繰返し記録及び消去可能で、しかも繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑制することができるので、例えば入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの大きな画面、多様な表示に幅広く用いることができ、特に、物流・配送システムや工場内での工程管理システムなどの使用に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】図1は、従来のレーザ光の走査方式を示す図である。
【図2】図2は、従来のレーザ光の走査方式を示す図である。
【図3】図3は、本発明のレーザ光の走査方式を示す図である。
【図4】図4は、本発明のレーザ光の別の走査方式を示す図である。
【図5】図5は、本発明のレーザ光の別の走査方式を示す図である。
【図6】図6は、本発明のレーザ光の更にまた別の走査方式を示す図である。
【図7】図7は、本発明のレーザ光の更にまた別の走査方式を示す図である。
【図8】図8は、本発明のレーザ光の更にまた別の走査方式を示す図である。
【図9】図9は、本発明のレーザ光の更にまた別の走査方式を示す図である。
【図10A】図10Aは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図10B】図10Bは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図10C】図10Cは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図10D】図10Dは、本発明の画像処理方法に用いられるレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度の一例を示す概略説明図である。
【図10E】図10Eは、通常のレーザ光の進行方向直交断面の光強度分布(ガウス分布)における「中心部」及び「周辺部」の光照射強度を示す概略説明図である。
【図11A】図11Aは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図11B】図11Bは、本発明の画像処理装置における光照射強度調整手段の一例を示す概略説明図である。
【図12】図12は、本発明の画像処理装置の一例を説明する図である。
【図13A】図13Aは、熱可逆記録媒体の透明−白濁特性を示すグラフである。
【図13B】図13Bは、熱可逆記録媒体の透明−白濁変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図14A】図14Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図14B】図14Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図15】図15は、RF−IDタグの一例を示す概略図である。
【図16】図16は、本発明における画像の重なり部分を示す図である。
【図17】図17は、実施例38の画像記録工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図18】図18は、実施例38の画像消去工程において用いたレーザ光の進行方向直交断面における光強度分布を示す概略説明図である。
【図19】図19は、本発明のレーザ光の更にまた別の走査方式を示す図である。
【符号の説明】
【0241】
2 ビームエキスパンダ
4 ガルバノメータ
4A ミラー
5 スキャニングユニット
6 fθレンズ
7 熱可逆記録媒体
10 レーザ発振器
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
レーザ光の不連続な照射が、該レーザ光を第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点を前記第1開始点から所定間隔に設定した位置までのレーザの移動間に対応する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかにおいて、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に順次走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含み、該レーザ光の不連続な照射が、第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点にレーザ光の照射が導かれるように前記終了点から該第2開始点までレーザ光を照射しない状態で走査することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を互いに相反する方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
レーザ光の不連続な照射が、該レーザ光を第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点を前記終了点から任意の間隔に設定した位置までのレーザの移動間に対応する請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化する熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に複数のレーザ光描画線で形成される画像を記録する画像記録工程、及び、前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する画像消去工程の少なくともいずれかを含み、
前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、レーザ光を所定間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に隣接部を続けて走査しないように走査させて、更に該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
レーザ光の不連続な照射が、該レーザ光を第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点を前記終了点から任意の間隔に設定した位置までのレーザの移動間に対応する請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
レーザ光の不連続な照射が、画像処理装置における走査制御手段によって、第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点でレーザ光の照射が導かれるように前記終了点から該第2開始点まで制御される請求項1、4及び6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項9】
熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層が樹脂及び有機低分子物質を含有する請求項1から8のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項10】
熱可逆記録媒体が、支持体上に少なくとも可逆性感熱記録層を有してなり、該可逆性感熱記録層がロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する請求項1から8のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項11】
画像記録工程及び画像消去工程の少なくともいずれかにおいて照射されるレーザ光における、該レーザ光の進行方向に対して略直交方向の断面における光強度分布において、中心部の光照射強度が周辺部の光照射強度と同等以下である請求項1から10のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、
レーザ光出射手段と、
該レーザ光出射手段におけるレーザ光出射面に配置され、かつレーザ光の光照射強度を変化させる光照射強度調整手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
光照射強度調整手段が、レンズ、フィルタ、マスク及びミラーの少なくともいずれかである請求項12に記載の画像処理装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13A】
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【図16】
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【図19】
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【図1】
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【図2】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−213439(P2008−213439A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59782(P2007−59782)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】