画像処理装置、放射線撮影システム、画像処理方法及び記録媒体
【課題】 線量が小さすぎたり大きすぎたりする場合に生じるノイズを画像処理によって強調しないようにする。
【解決手段】 設定部102は、入力された画像についてコントラストを強調する画素値の範囲を設定する。特性取得部103はオリジナル画像を撮像する際に用いられたイメージセンサのダイナミックレンジを示す値を記憶部から取得する。判定部104が設定された画素値の範囲がダイナミックレンジに包含されないと判定した場合には、補正部105は設定部102にて設定された画素値の範囲をダイナミックレンジに包含されるように補正する。階調処理部106は補正されなかった階調変換曲線または補正済みの階調変換曲線により階調処理した画像を出力する。表示制御部107は階調処理後の画像を表示部へと出力する。
【解決手段】 設定部102は、入力された画像についてコントラストを強調する画素値の範囲を設定する。特性取得部103はオリジナル画像を撮像する際に用いられたイメージセンサのダイナミックレンジを示す値を記憶部から取得する。判定部104が設定された画素値の範囲がダイナミックレンジに包含されないと判定した場合には、補正部105は設定部102にて設定された画素値の範囲をダイナミックレンジに包含されるように補正する。階調処理部106は補正されなかった階調変換曲線または補正済みの階調変換曲線により階調処理した画像を出力する。表示制御部107は階調処理後の画像を表示部へと出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサにより撮像された画像に対する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の撮影システムでは、イメージセンサが受ける光の量を調節したり、受光量に対する出力の特性を調整したりすることで、画像の黒つぶれや白とびを低減する。また出力された画像に処理を施すことで画像の画質の水準を保っている。X線撮影システムを例にすると、線量制御機構がX線源を制御することでイメージセンサに到達する線量が調節される。到達した線量に対する出力値をイメージセンサのゲインを変更することにより調整する。調整された出力値に応じて得られるX線画像に階調数の圧縮・拡大処理や、画像の特定範囲を強調するコントラスト強調処理などの画像処理が施される。
線量や入出力の特性に応じて画像処理を行う技術として、動画撮影において線量が頻繁に変更されている場合、線量が安定するまで画像処理の応答を弱め、画素値のふらつきによる影響を抑える技術がある(特許文献1)。また、被写体の輝度範囲に合わせてセンサのゲインを変更してセンサの感度領域内に収まるようにし、ゲイン毎に設定された関数で階調変換する方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−42448号公報
【特許文献2】特開2006−80960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出力特性が良好な範囲から大きく外れた画像が得られた場合に、ノイズを強調した画像が出力されてしまうという問題がある。例えば受光量が不足した画像では光量不足に起因するノイズが多く重畳することとなる。この場合に適切な受光量の画像と同様にコントラスト強調処理をしてしまうと、このノイズを強調した画像が出力されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、イメージセンサで撮像した画像に基づいて該画像において強調される画素値の範囲を設定する設定手段と、前記イメージセンサから得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得する特性取得手段と、前記強調される画素値の範囲が前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に包含されるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により包含されないと判定された場合には前記強調される画素値の範囲を前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に含まれるようにシフトさせる補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
かかる本発明によれば、画像において強調される画素値の範囲がSN比が閾値より大きくなる範囲に含まれることとなるため、ノイズの発生を抑えた画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】画像処理装置100の構成図である。
【図2】画像処理装置100を含む放射線撮影システム200の構成図である。
【図3】画像処理装置100による処理の概要を示す図である。
【図4】処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】イメージセンサ202のダイナミックレンジを説明する図である。
【図6】階調変換曲線の補正例を示す図である。
【図7】階調変換カーブのその他の補正例を示す図である。
【図8】表示部210に表示される調整画面を示す図である。
【図9】GUI調整ステップを説明する図である。
【図10】その他の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】その他の画像処理装置1100の構成図である。
【図12】その他の画像処理装置1200の構成図である。
【図13】画像処理装置1200による処理の概要を示す図である。
【図14】画像処理装置1200により得られる階調変換特性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明を放射線撮影システムで実施する例を図1乃至図5を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本実施例の画像処理装置100の構成を示す。画像処理装置100は画像入力部101、設定部102、特性取得部103、判定部104、補正部105、階調処理部106、表示制御部107を有する。画像入力部101は、イメージセンサで取得された画像に対してセンサ特性が補正された画像を取得する。この画像処理装置100による処理がされる前の画像をオリジナル画像と呼ぶことにする。
【0011】
設定部102は入力された画像についてコントラストを強調する画素値の範囲を設定する。本実施例では設定部102が有する画像解析部108と階調変換作成部109によりこの処理が実現される。画像解析部108は、オリジナル画像について階調処理に必要な情報をオリジナル画像から計算し解析結果を出力する。階調変換作成部109は、解析結果に基づいてオリジナル画像を適切な画像にするための階調変換曲線を作成する。階調変換曲線の傾きによって強調される画素値の範囲が設定される。なお階調変換作成部109では階調変換曲線に限らず入力画素値に対する出力画素値を示すLUTを作成してもよい。さらには画像において強調する領域を設定すればよく、階調変換を作成しなくてもよい。
【0012】
特性取得部103はオリジナル画像を撮像する際に用いられたイメージセンサのダイナミックレンジを示す値を記憶部から取得する。ここでダイナミックレンジとは、イメージセンサの線量に対する出力特性が良好な線量の範囲またはこれに対応する画素値の範囲をいう。
【0013】
判定部104では、このダイナミックレンジに、設定部102にて設定された強調される画素値の範囲が包含されるか否かを判定する。包含されないと判定された場合には、補正部105は階調変換曲線を入力とし、ダイナミックレンジに包含されるように画像において強調される画素値の範囲を補正する。補正済みの階調変換曲線を出力する。一方、判定部104にて包含されると判定された場合には階調変換曲線は補正されない。階調処理部106は補正されなかった階調変換曲線または補正済みの階調変換曲線とオリジナル画像とを入力とし、階調処理した画像を出力する。表示制御部107は階調処理後の画像を表示部へと出力する。
【0014】
上述の画像処理装置100では回路で実装した場合を示したが、画像処理装置100をソフトウェアで実装することもできる。その場合、先述の各部はソフトウェアとハードウェアにより実現される。
【0015】
図2には画像処理装置100をハードウェアとソフトウェアにより実装する場合のハードウェア構成を示している。画像処理装置100であるコントロールPC201はCPU203、RAM204、ROM205、記憶部206を有している。これらはバス209を介して接続されている。さらに外部装置として表示部207、入力部208が接続される。後述する図3に示す処理をコントロールPC201に実行させるプログラムがソフトウェアモジュールとしてROM205または記憶部206に格納されている。このプログラムはRAM204に読み込まれ、CPU203に実行される。CPU203はプログラムされた命令に応じてコントロールPC201の各ハードウェア資源を制御し、全体として図1に示す各機能が実現される。かかるプログラムは撮影モード毎に分かれたソフトウェアモジュールとして格納されている。
【0016】
図2はまた、画像処理装置100を含む放射線撮影システム200のハードウェア構成を示している。画像処理装置100であるコントロールPC201とイメージセンサ202、X線発生装置211が信号線である光ファイバー214でつながっている。信号線は光ファイバーでなくてもCAN(Controller Area Network)やギガビットイーサなどでもよい。光ファイバー214には、表示部210、データベース212、ネットワークインタフェース部213が接続されている。
【0017】
コントロールPC201はイメージセンサ202や放射線源であるX線発生装置211などにコマンドを送る。イメージセンサ202はX線を光に変換する蛍光体と、蛍光体が発する光を電気信号に変換する半導体基板と、電気信号を読み出すための駆動回路と、読み出された電気信号からデジタル画像データを作成する回路とを含む。表示部210はX線発生装置211や撮影に応じて得られる動画像をユーザがリアルタイムで確認するためのGUIの表示に主に用いられる。一方表示部207はユーザが撮影条件の設定を行うためのGUIの表示に主に用いられる。
【0018】
本システムでは動画撮影と静止画撮影が可能となっている。動画撮影の場合、イメージセンサ202が受光して得られる出力値に基づいて、放射線の線量が制御される。これによりイメージセンサ202が出力するX線画像の一定画質を保持することができる。
【0019】
この制御においてはCPU203が出力値を定期的にチェックすることでイメージセンサ202の決められた範囲に到達する線量を監視し、その値が一定になるように入射線量を制御する。CPU203は到達線量が基準より少ないと判定した場合に入射線量を多くするようにX線発生装置211に命令する。到達線量が基準を超えていると判定すれば入射線量を少なくするようにX線発生装置211に対して命令する。X線発生装置211は命令に応じて適切な線量のX線をX線管から射出する。また、表示部210のGUIや不図示の操作ボタン、または入力部208を介して手動での線量の制御が可能である。
【0020】
このように透視撮影やシネ撮影などの動画撮影では線量制御は自動で行われるため、線量の監視に用いる範囲が適切でないと必ずしも最適な線量になるとは限らない。また動画撮影を開始した直後や撮影領域が移動する場合は、フィードバック制御が収束するために時間がかかることから、その間イメージセンサからは適切な線量でない画像が出力される恐れがある。また、線量制御は正しく動作する場合でも、安全性の観点から線量に上限があるため、必要な量だけの線量を曝射することができない場合もある。この場合もノイズだけを強調してしまった画像を出力することになる。
【0021】
画像処理装置100により行われる処理の概要を図3に基づいて説明する。図3は、イメージセンサ202に検出される線量に応じた画素値と、出力特性が良好なダイナミックレンジの範囲と、イメージセンサ202が生成した画像の画素値の範囲との関係を示す図である。
【0022】
図3(a)で、出力特性が良好な範囲を示すダイナミックレンジ300が示されている。これに対して、線量(受光量)に応じた画像が生成されることとなる。範囲301はある画像の画素値の範囲を示している。ここでは、画像の画素値のヒストグラムを取ったときに出現回数が所定の閾値よりも高い値の下限と上限で画される範囲を示している。設定範囲302は、設定部102が画像の関心領域の画素値に基づいて設定した画像において強調される画素値の範囲である。
【0023】
範囲301を画素値の範囲とする画像では、設定範囲302がダイナミックレンジ300に一部包含されない。この場合、補正部105は包含されない範囲分だけ設定範囲302を高画素値側にシフトする。ここでシフトとは、画素値の範囲の大きさを変えずに下限値と上限値を変えることを意味する。範囲303はこのシフト補正された範囲を示している。これにより、画像の本来強調されるべき領域が強調されず潰れたような画像となる。よって作業者に対して、この画像を見て画像の線量が不足していることを直感的に理解させることができる。
【0024】
また別の画像の画素値の範囲が範囲311で示されている。この画像において強調される画素値の範囲が312で示されている。この場合、設定範囲312はダイナミックレンジ300の範囲を超えている部分があるため、補正部105が強調する範囲を範囲313にシフトする。これにより、画像の本来強調されるべき領域よりも低画素値側が強調されるため、白とびしたような画像を得ることができる。よって作業者に対して、この画像を見て画像の線量が不足していることを直感的に理解させることができる。
【0025】
図3(b)では、ある画像の画素値の範囲が範囲331で示されており、その強調されるべき範囲が設定範囲332で示されている。この場合、画像の画素値の範囲も、設定範囲332もダイナミックレンジ300内に包含されているため、補正部105による補正は必要ない。本来強調されるべき設定範囲332が強調された画像を得ることができる。
【0026】
また別の画像における画素値の範囲が範囲341で示され、強調される範囲が設定範囲342で示されている。この場合、画像の画素値の範囲341は一部ダイナミックレンジ300に包含されていないが、設定範囲342は包含されている。この場合にも、ノイズやアーチファクトを強調することがないため、設定範囲342を強調した画像を得ることができる。
【0027】
上述の放射線撮影システム200により実現される処理の流れを図4に従い説明する。図4は放射線撮影システム200が実行する動画撮影処理の流れを示している。
【0028】
まずステップS401の前段階として、X線発生装置211はX線管を制御し断続的にX線を射出させる。ここで射出するX線の線量制御は、イメージセンサ202の所定領域が受光して得られる出力値を所定のタイミングで取得することで監視し、それに応じてX線発生装置211により制御される。
【0029】
X線の射出と同期して、イメージセンサ202はX線を受光しフレーム画像を連続して出力する。この画像に対してイメージセンサ202内の回路でセンサ特性の補正がされる。ここでセンサ特性の補正とは、オフセット補正、Log変換、ゲイン補正、欠陥画素補正などである。この補正された画像の生成と画像処理装置100の処理が並行して行われる。
【0030】
ステップS401では、画像処理に必要な情報を外部から取得する。画像入力部101は、センサ特性を補正したオリジナル画像を取得する。また特性取得部103は、予め計測され記憶部206に格納された、イメージセンサ202のダイナミックレンジを示す値を取得する。
【0031】
以下ステップS402乃至S404で、設定部102が画像に基づいて強調する画素値の範囲を設定する。画像解析部108は、オリジナル画像を解析し、階調変換カーブを作成するためのパラメータを計算する(ステップS402)。本実施例では階調処理方法として、固定の階調変換カーブをシフトさせて使用する方法を行う。シフトさせる量はオリジナル画像上での関心領域に最適な輝度が割り当てられるように決める。そこで画像解析部108は関心領域内の平均値を計算し出力する。
【0032】
関心領域の設定はROI設定部として機能する設定部102により行われる。関心領域は画像の中心から数インチの正方形領域とする。これは、診断上重要と思われる部位を中心に撮影することが多いことに対応したものである。画像の中心付近を関心領域とすることで結果的に診断上注目すべき部位を関心領域とすることができる。関心領域を設定する別の方法としては、画像を解析することで撮影部位毎に適切な領域を設定することができる。例えば胸部の画像であれば肺野を抽出し、肺野の領域を関心領域とする。この技術は、必ずしも注目したい領域が画像の中央に位置しない場合があることに対応するものである。そのような場合としては例えば、撮影部位や目的によっては画像の複数の部位を注目する必要がある場合や、または予め撮影フォーマットが決まっている場合がある。これに対応して、撮影部位の情報に基づいて画像を解析し関心領域を設定することで、注目したい部位を基準に画像の階調を設定することができる。更に別の方法として、関心領域を線量の監視に用いる先述の所定領域に合わせて同じ領域に設定する方法がある。これにより、線量の制御の基準となる領域と画像処理の基準となる領域が揃うこととなるため、画像の品質をより適切に向上させることができる。
【0033】
次に階調変換作成部109は解析により得られた関心領域内の平均値と、階調変換カーブ用の外部パラメータを取得し、階調変換カーブ(第1の階調変換関数)を作成する(ステップS403)。本実施例では階調変換カーブとして式1に示す画素値wのシグモイド関数S(w)を利用する。
【0034】
【数1】
【0035】
式1においてpxSmin、pxSmaxはそれぞれS(w)の最小値、最大値である。sPrmCはS(w)の傾きで、sX0は、S(w)のw方向のシフト量である。
【0036】
次に階調変換作成部109はこの階調変換カーブS(w)のコントラストを示す値として微分値S’(w)を計算する(ステップS404)。この微分値がある入力画素値において所定の値以上である場合、例えば1より大きい場合には、オリジナル画像よりもコントラストが強調される。逆に1より小さい場合には、オリジナル画像よりも画素値の差が小さく扱われることとなるため、コントラストが弱められる。階調変換作成部109はこの微分値が所定の閾値より大きい画素値の範囲を、画像において強調する画素値の範囲として設定する。この閾値は上述のとおり1としてもよいが、1より大きい値としてもよく、画像や撮影部位などの情報に応じて決められる。以上ステップS402乃至S404の処理により設定部102は強調する画素値の範囲を設定する。
【0037】
ステップS405では判定部104が階調変換カーブへの入力値と微分値S’(w)との間に指定の条件が成り立っているかを判定する(ステップS405)。指定の条件とは、ノイズが支配的な画素値の範囲を高コントラストに変換しないという条件である。ノイズが支配的な画素に高コントラストを与えたとしてもノイズだけが強調されて情報がなく、診断上不適切な画像となる。これを防ぐことを目的に、設定部102により設定された強調する画素値の範囲がイメージセンサの出力特性が良好な画素値の範囲を意味するダイナミックレンジに含まれるか否かを判定する。含まれると判定された場合(ステップS406でYes)には、画像の関心領域に基づいて設定された強調範囲がノイズやアーチファクトを強調することがない。よって設定部102で設定された範囲がそのまま強調される(ステップS408)。
【0038】
含まれないと判定された場合には(ステップS406でNo)、ノイズやアーチファクトを強調してしまい、画像として不自然なものとなる。さらには、作業者は画像を見ても適切な線量が照射されているのかいないのかを判断することができなくなってしまう。例えば、本来低線量であれば画像は暗くなるのに対して、低画素値のノイズの多い画素値範囲をコントラスト強調してしまうと、画像全体がざらついた画像となってしまう。これでは作業者は、適切な線量が照射されていないことは分かっても、線量を上げればいいのか下げればいいのかが分からなくなってしまう。そこで、関心領域に応じたコントラストの強調を放棄し、基準を超えた低線量であることを示すような画像となるように階調を変更する。そのために、ステップS407で補正部105により強調する画素値の範囲が補正される。
【0039】
ステップS406での判定部104の判定処理と、ステップS307での補正部105による補正処理を図5及び図6を参照しながら詳述する。まず、図5はイメージセンサの特性を示す図に基づいてイメージセンサ202のダイナミックレンジについて説明する。横軸にイメージセンサへの到達線量(受光量)、縦軸はセンサ出力値とし、実線が信号成分、破線がノイズ成分を表している。イメージセンサの出力値は、この信号値とノイズ値を合わせた値となる。線量(受光量)E1まではノイズ成分の方が支配的であるが、そこからは信号成分が支配的となる。そして線量(受光量)E2に達すると信号成分は飽和する。このような関係の中で、E1からE2までの範囲をセンサのダイナミックレンジと定義する。
【0040】
定性的に言えば、イメージセンサの信号値及びノイズ値の出力特性が良好な画素値または線量(受光量)の範囲である。また別の観点では、ダイナミックレンジの中ではSN比が閾値より大きい範囲である。また別の観点では、信号成分が飽和しない、または信号成分の出力の線型性が良好に保たれている画素値の範囲である。
【0041】
各到達線量に対応するセンサ出力値がOutDRMinとOutDRMaxである。OutDRMin以下の出力値となる場合、ノイズが支配的な値であることがいえる。一方、OutDRMax以上の出力値となる場合、センサ出力値が飽和し、センサ特有のアーチファクトが発生する。したがって、OutDRMin以下、OutDRMax以上となる値は、センサ出力値として有効ではないことがいえる。
【0042】
次に図6に基づいて階調変換カーブの補正処理を説明する。入力画素値は、センサ出力値に修正を施して得られるオリジナル画像の画素値である。図5の線量E1に対応する入力画素値はwE1、線量E2に対応する入力画素値はwE2である。wE1とwE2の範囲をグレーで示している。これがイメージセンサ202のダイナミックレンジに対応する。すなわちセンサ出力値として有効な範囲はグレーゾーン内だけと判断できる。補正部105はこの範囲に階調変換カーブの高コントラストな領域があたるように制御する(ステップ407)。シグモイド関数S(w)の微分値S’(w)について、低コントラストから高コントラストへと変わる閾値をTh1とし、高コントラストから低コントラストへと変わる閾値をTh2とする。また、Th1とTh2に対応する入力画素値wをそれぞれwth1とwth2とする。この範囲が画像において強調される領域である。
【0043】
判定部104は、これら2つの閾値wth1、wth2で定義される範囲がwE1からwE2の範囲内に包含されるか否かを判定する。ここで包含されないと判定された場合には、階調変換カーブを式(2)のように補正する。この処理は、階調変換カーブを低画素値シフトする処理である。
【0044】
【数2】
【0045】
図5に示すようにwth1がwE1以下である場合は、ノイズだけを強調することになるため、階調変換カーブを高線量域側(高画素値側)へとシフトする。一方、wth2がwE2以上である場合は、センサのアーチファクトだけを強調することになるため、階調変換カーブを低線量域側(低画素値側)へとシフトする。
【0046】
補正部105により決められるシフト量は、強調される画素値の範囲がダイナミックレンジの範囲内に含まれるように決められる。強調される画素値の範囲がダイナミックレンジにぎりぎり含まれるようにシフトする。例えば、ダイナミックレンジよりも低画素値側を強調するよう設定されていた場合には、強調する範囲の下限がダイナミックレンジの下限と一致するようにシフト量を決める。このようにすると、シフト量は最小に抑えられることとなる。シフト量を最小に抑えることで画像の見えやすさを極力保つことができる。
【0047】
以上の処理により、階調変換カーブが補正されることに応じて強調する画素値の範囲も補正される。このようにして、強調する範囲がダイナミックレンジに範囲内に含まれない場合には強調する範囲をシフトする処理が行われる。
【0048】
画像のダイナミックレンジの範囲が十分に大きい場合には、画素値の範囲をシフトさせるだけではノイズ等の強調を防ぐことができない場合がある。信号出力の線型性のよい画素値の範囲に収めることよりもSN比が閾値より大きい画素値の範囲に収めることを優先させてシフトさせる。こうすることで強調される画素値の範囲が高画素値側にシフトされ白とびした画像となるため、手動で線量をより高く設定されてしまうのを防ぐことができる。
【0049】
図4のステップS408にて、階調処理部106は、オリジナル画像に階調変換を施す。設定部102により設定された画素値の範囲がダイナミックレンジに包含される場合には、設定された範囲を強調する階調変換カーブS(w)(第1の階調変換関数)を画像に適用する。一方でダイナミックレンジに包含されない範囲がある場合には、包含されるように画素値の範囲がシフトされた階調変換カーブSnew(w)(第2の階調変換関数)を適用する。
【0050】
ここで、オリジナル画像において特定の二次元領域が決められていた場合は、その特定の領域のみをSnew(w)にて変換し、特定の領域外はS(w)にて変換する。これにより特定の領域だけはノイズやアーチファクトを強調しない、線量の過不足が明らかな部分画像として表示される。
【0051】
階調変換した画像は、表示制御部107が表示部210に階調変換された画像を表示させる。その他画像処理はメモリ保存、PACS転送などを行い、ユーザに提供する(ステップS409)。
【0052】
上述の処理により、撮影線量が足りずノイズだけが強調されてしまった画像が、ノイズが強調されることのない画像となり、線量が不足していることが明らかな暗い画像が出力される。撮影線量が多すぎてセンサの特性に起因するアーチファクトが強調されてしまったような画像が、センサの特性が強調されない画像となり、線量が多すぎであることが明らかな明るい画像が出力される。このように、線量が不足または過多で画像処理による画質の改善が望めない場合には、線量が不足または過多であることを示す画像処理を画像に施す。これによりノイズやアーチファクトを強調した不自然な画像が出力されてしまう状況を減らすことができる。また、作業者が画像を見ることで線量が不足しているか過多であるのかが一目瞭然となるため、線量の制御を適切に行うことができる。
【0053】
なお関心領域の画素値などの情報から、線量が不足した画像であることが明らかである場合には、特性取得部103はダイナミックレンジの情報として下限値E1またはwE1の値のみを取得する。この場合ダイナミックレンジの情報としてはSN比が閾値よりも大きい画素値の範囲を示す情報となる。
【0054】
また別の例として、イメージセンサのダイナミックレンジが十分に広い場合や、イメージセンサの信号成分の出力について線型性が保たれる範囲が十分に広い場合も考えられる。この場合にも特性取得部103はダイナミックレンジの情報として下限値E1またはwE1の値のみを取得することとしてもよい。
【実施例2】
【0055】
実施例2では、強調される画素値の範囲が前記ダイナミックレンジに包含されるように補正するため、階調変換曲線をシフトさせる代わりに曲線の傾きを変更する。ハードウェア構成は実施例1とほぼ同様であるが、補正部105による処理が異なっている。実施例2を図7を参照しながら説明する。
【0056】
図1の構成図と図4の全体フローに基づいて実施例2の処理の流れを説明する。ステップS401からステップS405までは実施例1と同様であるため省略する。図7に階調変換カーブでの変換を示した。入力画素値は、センサ出力値に修正を施した値である。図5の線量E1に対応する入力画素値はwE1、線量E2に対応する入力画素値はwE2である。wE1とwE2の範囲をグレーで示している。すなわちセンサ出力値として有効な範囲はグレーゾーン内だけと判断できる。補正部105はこの範囲に階調変換カーブの高コントラストな領域があたるように制御する(ステップ406)。微分値S’(w)上にて、低コントラストと高コントラストとの閾値をそれぞれTh1とTh2とするとする。入力画素値wE1とwE2での傾きがTh1、Th2となるようなS(w)の傾きsPrmCth1、sPrmCth2に設定することで制御ができる。すなわち階調変換カーブを構成するf(w)を式(3)のように補正する。
【0057】
【数3】
【0058】
図7に示すようにwE1におけるコントラストが高い場合は、ノイズだけを強調することになるため、階調変換カーブの傾きを小さくする。一方、wE2におけるコントラストが高い場合は、センサのアーチファクトだけを強調することになるため、階調変換カーブの傾きを小さくする。式(3)では全ての入力画素に対し一律で傾きを変えているが、S(w)の中心を境に傾きの異なる階調変換カーブなどへと変換してもよい。(ステップS407)。ステップS408以降は実施例1と同様であるため省略する。
【0059】
また別の例として、wth1とwth2の範囲に収まらないときは、wth1とwth2の範囲に階調変換カーブを圧縮(もしくは入力画素値を圧縮)する。
【0060】
このように階調変換曲線をシフトさせるだけでなく傾きを変更したり画素値方向に圧縮したりすることでも、ノイズやアーチファクトを強調した不自然な画像を出力させないようにすることができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3では、線量制御に応じたコントラスト強調処理を行うか否かを切り替える機能を有している。ハードウェア構成は実施例1とほぼ同様であるが、階調処理部106は表示部207に表示されたGUIへの入力に応じて処理を行う点が異なっている。以下本実施例を図8乃至図10を参照しながら説明する。
【0062】
ユーザ入力からの入力を得るための調整画面800を図8に基づいて説明する。制御モードの選択GUI802は例えば図8のようにGUIのチェックボックスを含む。選択GUIでの選択に応じて、判定部104が上述の実施例に記載された画像処理を行うか否かを選択する。ユーザがこのチェックボックスをオンにすると、図3のフローチャートに示す画像処理が行われるが、オフにすると図3の処理は行われない。輝度を調整するための調整GUI803はユーザが輝度を調整するための図8のようなGUIを含む。この調整GUI803への入力に応じて補正部105は階調変換カーブをシフトされる。コントラストを調整する調整GUI804はユーザがコントラストを調整するための図9のようなGUIを含む。この調整GUI804への入力に応じて補正部105により階調変換カーブが変更され、コントラストが調整される。
【0063】
調整GUI803の詳細を図9に基づいて説明する。調整GUI803には図9に図示するように輝度調整ステップが中央(Step0)に近い位置からStep0、Step2、Step−2、Step4、・・・、StepTHと表示されている。また、各輝度調整ステップに対応して輝度シフト量が中央に近い位置から0、5、−5、10、−10、・・・・と5刻みで表示されている。例えば、Step2は輝度シフト量10に対応し、StepTHは輝度シフト量−30に対応している。ユーザが輝度調整ステップを選択すると、補正部105は対応した輝度シフト量分だけ階調変換カーブがシフトされ輝度が調整される。
【0064】
調整GUI803では、あるステップを超えると階調変換カーブが指定のコントラスト内に収まらなくなる境界となるステップをStepTHとしている。StepTHよりも(絶対値が)大きく輝度を変更する場合、診断上ふさわしくない画像が作成される。
【0065】
ここで、任意のステップが選択された場合に、輝度シフト量の最小単位を小さくするため、輝度シフト量と輝度調整ステップとの再割当てが実行される。これは、表示制御部107により行われる。図9の下段には、輝度調整ステップStep0が選択された場合の再割当てを示している。図9ではステップが負の方向にいく場合に指定のコントラスト以上になる。したがってStepTHからStep0までの間を3刻みで割り当てる。この結果、StepTHからStep0までの間で詳細に調整することができる。コントラスト調整部904においても同様の調整機構を採用することが可能である。
【0066】
上述の調整機能を利用する際の画像処理装置100が実行する処理の流れを図10のフローチャートに従い説明する。まず、階調変換作成部109がユーザによって輝度・コントラスト調整された量を取得する(ステップS1001)。次に階調変換作成部109は取得した輝度調整量を使って階調変換カーブを更新する。そして判定部104は、センサダイナミックレンジ外の範囲にある画素値が指定のコントラストの範囲内であるかを計算する(ステップS1002)。ここで判定部104が、指定のコントラストの範囲内であるか否かを判定する(ステップS1003)。この処理は上述の実施例と同様である。ここで指定のコントラストの範囲内であると判定された場合には(ステップS1003でYes)、ステップS806へと進む。一方、範囲内ではないと判定すると(ステップS1003でNo)、引き続き判定部104は現在の階調制御モードがONであるかOFFであるかを判定する(ステップS1004)。ここでの判定は、調整画面制御モードの選択GUI802がONの時は、センサダイナミックレンジの範囲外にある入力画素が指定のコントラスト以上である場合に、以下となるように制御する。実施例の1や2と同様に階調変換カーブを修正する(ステップS1005)。OFFの時は制御をしない。つまりステップS1002で作成した階調変換カーブで処理をする(ステップS1006)。そして表示制御部107は階調処理済みの画像を画像表示GUI801に表示させる(ステップS1007)。またステップS1008で表示制御部107は上述の図9に示したとおり、調整GUI803及び804のシフト量と調整ステップとの再割当て処理を行う。
【0067】
以上のとおり本実施例では、イメージセンサのダイナミックレンジに応じたコントラスト強調処理を行うか行わないかを選択可能とし、ユーザが調整可能とする。これにより適切な画像処理を画像に施すことができる。
【実施例4】
【0068】
実施例4では、先述の実施例において、強調される画素値の範囲がダイナミックレンジの範囲内に含まれていないと判定された場合には、表示制御部107で表示部210に警告を表示させる。システムの構成及び処理の流れについて、先述の実施例と重複する部分については説明を省略する。
【0069】
関心領域に基づいて設定された画像において強調される画素値の範囲がダイナミックレンジの範囲内に含まれないと判定部104で判定された場合、適切な階調変換が行われない旨の警告を表示する。
【0070】
または、設定部102で設定された画素値の範囲がダイナミックレンジよりも低画素値側の範囲を包含する場合には、線量が不足している旨の表示をする。この表示は、「線量が不足している」旨を文字情報で知らせる表示でも、線量不足であることを示すアイコンでもその両方でもよい。また表示部210には警告の表示と並べて、実施例1に示す処理により階調処理部106にて処理された画像が表示されることとなる。この画像は設定部102にて設定された範囲がダイナミックレンジを外れている場合には、線量不足であることが明らかな階調変換が施された画像である。そのためX線画像と、文字情報及び/またはアイコンとの両方によって線量不足であることをユーザに分かりやすく提示することができる。
【0071】
同様に設定部102で設定された画素値の範囲がダイナミックレンジよりも高画素値側の範囲を包含する場合には、線量が過多となっている旨の警告表示をする。この場合でも線量過多であることが強調された画像と警告表示が並べて表示されるため、線量が過多であることをユーザに分かりやすく提示することができる。
【0072】
また実施例3のステップS1003の処理で、指定のコントラストの範囲に含まれない場合は、線量不足または線量過多である旨の警告を出してもよい。警告を出し、ユーザに階調変換カーブを修正せずに処理をするか否かを選択させるメッセージを表示してもよい。もしくは警告を出すだけで表示を行ってしまってもよい。
【0073】
また別の例として、手動での線量制御を支援する方法に適用することができる。動画撮影をする際に、最初ダイナミックレンジを外れた低線量で撮影を開始する。この場合、表示部210には線量が不足していることが明らかな画像と警告表示とが表示部210に表示される。そこで作業者は徐々に線量を上昇させ、ダイナミックレンジにぎりぎり含まれるようななるべく少ない線量に調節していく。線量が適切となったところで線量の変更を終了する。特に放射線撮影においては被写体の被曝を抑えるためなるべく低線量で撮影したいという要求がある。本発明は係る手動での線量制御を支援することができる。
【実施例5】
【0074】
上述の実施例では、強調する範囲がイメージセンサのダイナミックレンジを外れてしまった場合にもコントラストを強調する処理を行っていたが、実施例5では当該場合に強調処理を省略する。図11を参照しながら本実施例を説明する。なお図11にて図1と同様の名称を付されたブロックは図1と同等であるため説明を省略する。画像処理装置1100を含むシステムは図2と同様であるため説明を省略する。
【0075】
画像処理装置1100の制御部1110は判定部1104の判定結果を取得する。ここで、制御部1110は階調処理部1106に処理を実行させるか否かを制御する。制御部1110は設定されたコントラストを強調する範囲がイメージセンサのダイナミックレンジに包含されない場合には、階調処理部1106に対して所定の信号を送る。一方、コントラストを強調する範囲がイメージセンサのダイナミックレンジに包含されない場合には、当該所定の信号を送信しないよう制御する。この所定の信号を入力した場合、階調処理部1106は入力された画像に対して階調変換を施さず表示制御部1107に送る。所定の信号が入力されない場合には、先述の実施例と同様に階調処理部1106は設定された範囲のコントラストを強調する処理を実行する。このようにして階調処理部1106に入力された画像はコントラスト強調処理が施されないまま表示制御部1107に入力され、表示部207に表示される。
【0076】
これにより画像の線量が不足している場合や、線量が多すぎる場合にはコントラストを強調する処理が施されないこととなる。これにより、画像から線量不足であるか、線量過多であるかを示す情報をシステムの操作者に直感的に確認させることができる。システムの操作者は線量の調節やイメージセンサのゲイン切り替え、または撮影の中止など必要に応じた対処を行うことができる。
【実施例6】
【0077】
本実施例では、あらかじめ作成した第1の階調変換特性を補正して第2の階調変換特性処理を得ることをせず、画像から直接に階調変換特性を決定する。
【0078】
図12に画像処理装置1200の構成を示す。画像入力部1201、階調処理部1206、表示制御部1207は上述の実施例と同様である。図2に示すハードウェアと、ROM205または記憶部206に記憶されたソフトウェアプログラムとが共同して各部の機能を実現する。以下上述の実施例と異なる点を説明する。
【0079】
本実施例では、画像解析部1208はX線画像を解析して階調変換特性を決めるための基準の画素値を取得する。基準の画素値の一例は被写体領域の平均値または中央値等の統計値を用いる。被写体領域は、画像解析部1208がX線画像から周知のアルゴリズムにより被写体領域を抽出することで得られる。被写体領域を基準に階調変換を行うことが可能となるため、被写体領域を診断しやすい画像を得ることができる。
【0080】
また別の例としては、画像中心を含む部分領域内の統計値を用いても良い。X線撮影においては写損を防ぐ観点から被写体の位置決めを行ってから撮影を行うことが多いため画像の中心付近に診断上重要な部位がくることが多い。本例はこれを利用したものであり、被写体抽出処理が不要となるため、解析処理の負荷を低減することができる。
【0081】
記憶部206には、イメージセンサ202の出荷前等のタイミングで予め取得されたダイナミックレンジの範囲が記憶される。なお、特性の変化などに対応して、ダイナミックレンジを取得する特性取得部1203を設けることとしてもよい。この場合特性取得部1203は、にイメージセンサ202から得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得し、記憶部206に記憶する。また、ダイナミックレンジの情報として、先述の図5に示すようにイメージセンサ202により得られる画像のSN比が閾値より大きい画素値の範囲でありかつ信号成分の出力の線型性が保たれる画素値の範囲を記憶部206に記憶することとしても良い。これには、たとえば所定の規則で線量透過率が空間的に変化するファントムを撮影した画像について、SN比及びセンサに到達した入射線量に対する出力画素値の変化を計測することで得ることができる。
【0082】
判定部1204は、画像解析部1208により得られた階調変換の基準の画素値が、記憶部206に記憶されたダイナミックレンジに含まれるか否かを判定する。基準の画素値がダイナミックレンジに含まれる場合には、決定部として機能する階調変換作成部1209は、画像解析部1208により得られた基準の画素値を基準に階調変換特性が決定する。この場合、階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心が画像解析部1208により得られた基準の画素値をとなる。
【0083】
画像解析部1208により得られた基準の画素値が前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定されなかった場合には、階調変換作成部1209はダイナミックレンジに含まれる特定の画素値を新たな基準の画素値として選ぶ。この新たな基準の画素値が、階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心となるように階調変換の特性が決定される。
【0084】
上述の機能により実現される処理の例を図13、図14に基づき説明する。図13(a)、図13(a)は本実施例の処理を示す図である。範囲1301はX線画像の画素値の範囲を示す。ダイナミックレンジ300よりも範囲1301が大きくなっているのは、X線画像の場合被写体を通過せず直接X線がイメージセンサ202に到達する場合があるからである。画像特徴量の値は、たとえば被写体領域に基づいて得られた階調変換の基準となる画素値の値である。特に低線量の撮影を行う場合、この特徴量の値がダイナミックレンジ300よりも下回る場合があり、その場合には、階調カーブの基準点をダイナミックレンジ300に含まれる特定の画素値とする。この基準の値が、階調カーブにより階調が広げられる画素値の範囲の中心位置となる。図13(a)の例では、特定の画素値はダイナミックレンジ300の下限値となっている。図14(a)が、図13(a)の処理で決定される階調カーブの例である。これに限らず、ダイナミックレンジ300の下限値よりも所定の画素値だけ大きい画素値を基準の値としてもよい。
【0085】
上述の処理により画像特徴量の値を基準に決められる階調カーブを用いるよりも、ノイズの領域を抑圧することができる。
【0086】
図13(b)は画像特徴量の値がダイナミックレンジ300に包含される場合を示したものである。この場合画像特徴量の値がそのまま階調変換の基準の値となる。この場合は、被写体領域の階調を適切に広げ、診断しやすい画像を提供することができる。図14(b)は図13(b)の場合に対応する階調カーブの例である。
【0087】
本実施例の処理により、被写体の領域を反映した階調処理を行うことができる。また、適正な線量を下回る線量で撮影した場合には、ノイズの抑圧を優先し被写体領域の少なくとも一部の階調を狭める。これにより、不自然にノイズが強調された画像が表示されないようにすることができる。
【0088】
(その他の実施例)
本実施例では強調される画素値の範囲を階調変換曲線によって設定したが、LUTによって行っても、また階調変換曲線やLUT等の階調変換によらずともよい。
【0089】
また、予めイメージセンサの出力特性が良好な画素値の範囲を抑圧するコントラスト変更処理を行うこととしてもよい。また、関心領域の画素値の範囲に基づいて設定された強調される画素値の範囲がイメージセンサの出力特性が良好な範囲よりも低線量側の領域を含む場合には、素抜け領域を除いてコントラストを抑圧することで、低線量であることが診断者にとって分かりやすい画像を生成することができる。
【0090】
画像処理装置100または画像処理装置1100で行われている処理を複数の装置で分散させ画像処理システムとして実現してもよい。また図1または図10、図12に示す1つの機能ブロックとしてまとめられている処理を複数の回路または機能ブロックで分散させて実現してもよい。またイメージセンサと、上述の実施例における画像処理装置及び表示装置の機能とを組み込んだFPDまたは撮像装置により本実施例のシステムを実現することとしてもよい。
【0091】
図2で示すように本実施例をコンピュータのハードウェアとソフトウェアの協働により実現する場合、複数のCPUで分散させて本実施例を実現することとしてもよい。ここでコンピュータ上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述の機能が実現してもよい。またソフトウェアであるプログラムまたはプログラムコードを記録した記録媒体もまた本実施例を構成する。ここでいう記録媒体は、non−transitoryなものであり、電波等記録対象が固定されないは様な媒体は含まないが、キャッシュや揮発メモリ等は含む概念である。
【0092】
上述した本実施の形態における記述は、実施例の好適な画像処理装置の一例であり、実施の形態はこれに限定されるものではない。
【0093】
以上、上述した実施例では、被写体に照射されるX線の線量が線量である場合に得られたX線画像について、X線画像における被写体領域の階調を狭めることでノイズを抑圧することができる。このように被写体領域の階調を広げることよりもノイズを抑圧することを優先した階調処理を行うことで、不自然にノイズが強調された画像が表示されないようにすることができる。
【符号の説明】
【0094】
100 画像処理装置
101 画像入力部
102 設定部
103 特性取得部
104 判定部
105 補正部
106 階調処理部
107 表示制御部
200 放射線撮影システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサにより撮像された画像に対する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の撮影システムでは、イメージセンサが受ける光の量を調節したり、受光量に対する出力の特性を調整したりすることで、画像の黒つぶれや白とびを低減する。また出力された画像に処理を施すことで画像の画質の水準を保っている。X線撮影システムを例にすると、線量制御機構がX線源を制御することでイメージセンサに到達する線量が調節される。到達した線量に対する出力値をイメージセンサのゲインを変更することにより調整する。調整された出力値に応じて得られるX線画像に階調数の圧縮・拡大処理や、画像の特定範囲を強調するコントラスト強調処理などの画像処理が施される。
線量や入出力の特性に応じて画像処理を行う技術として、動画撮影において線量が頻繁に変更されている場合、線量が安定するまで画像処理の応答を弱め、画素値のふらつきによる影響を抑える技術がある(特許文献1)。また、被写体の輝度範囲に合わせてセンサのゲインを変更してセンサの感度領域内に収まるようにし、ゲイン毎に設定された関数で階調変換する方法が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−42448号公報
【特許文献2】特開2006−80960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出力特性が良好な範囲から大きく外れた画像が得られた場合に、ノイズを強調した画像が出力されてしまうという問題がある。例えば受光量が不足した画像では光量不足に起因するノイズが多く重畳することとなる。この場合に適切な受光量の画像と同様にコントラスト強調処理をしてしまうと、このノイズを強調した画像が出力されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、イメージセンサで撮像した画像に基づいて該画像において強調される画素値の範囲を設定する設定手段と、前記イメージセンサから得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得する特性取得手段と、前記強調される画素値の範囲が前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に包含されるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により包含されないと判定された場合には前記強調される画素値の範囲を前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に含まれるようにシフトさせる補正手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
かかる本発明によれば、画像において強調される画素値の範囲がSN比が閾値より大きくなる範囲に含まれることとなるため、ノイズの発生を抑えた画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】画像処理装置100の構成図である。
【図2】画像処理装置100を含む放射線撮影システム200の構成図である。
【図3】画像処理装置100による処理の概要を示す図である。
【図4】処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】イメージセンサ202のダイナミックレンジを説明する図である。
【図6】階調変換曲線の補正例を示す図である。
【図7】階調変換カーブのその他の補正例を示す図である。
【図8】表示部210に表示される調整画面を示す図である。
【図9】GUI調整ステップを説明する図である。
【図10】その他の処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】その他の画像処理装置1100の構成図である。
【図12】その他の画像処理装置1200の構成図である。
【図13】画像処理装置1200による処理の概要を示す図である。
【図14】画像処理装置1200により得られる階調変換特性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明を放射線撮影システムで実施する例を図1乃至図5を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本実施例の画像処理装置100の構成を示す。画像処理装置100は画像入力部101、設定部102、特性取得部103、判定部104、補正部105、階調処理部106、表示制御部107を有する。画像入力部101は、イメージセンサで取得された画像に対してセンサ特性が補正された画像を取得する。この画像処理装置100による処理がされる前の画像をオリジナル画像と呼ぶことにする。
【0011】
設定部102は入力された画像についてコントラストを強調する画素値の範囲を設定する。本実施例では設定部102が有する画像解析部108と階調変換作成部109によりこの処理が実現される。画像解析部108は、オリジナル画像について階調処理に必要な情報をオリジナル画像から計算し解析結果を出力する。階調変換作成部109は、解析結果に基づいてオリジナル画像を適切な画像にするための階調変換曲線を作成する。階調変換曲線の傾きによって強調される画素値の範囲が設定される。なお階調変換作成部109では階調変換曲線に限らず入力画素値に対する出力画素値を示すLUTを作成してもよい。さらには画像において強調する領域を設定すればよく、階調変換を作成しなくてもよい。
【0012】
特性取得部103はオリジナル画像を撮像する際に用いられたイメージセンサのダイナミックレンジを示す値を記憶部から取得する。ここでダイナミックレンジとは、イメージセンサの線量に対する出力特性が良好な線量の範囲またはこれに対応する画素値の範囲をいう。
【0013】
判定部104では、このダイナミックレンジに、設定部102にて設定された強調される画素値の範囲が包含されるか否かを判定する。包含されないと判定された場合には、補正部105は階調変換曲線を入力とし、ダイナミックレンジに包含されるように画像において強調される画素値の範囲を補正する。補正済みの階調変換曲線を出力する。一方、判定部104にて包含されると判定された場合には階調変換曲線は補正されない。階調処理部106は補正されなかった階調変換曲線または補正済みの階調変換曲線とオリジナル画像とを入力とし、階調処理した画像を出力する。表示制御部107は階調処理後の画像を表示部へと出力する。
【0014】
上述の画像処理装置100では回路で実装した場合を示したが、画像処理装置100をソフトウェアで実装することもできる。その場合、先述の各部はソフトウェアとハードウェアにより実現される。
【0015】
図2には画像処理装置100をハードウェアとソフトウェアにより実装する場合のハードウェア構成を示している。画像処理装置100であるコントロールPC201はCPU203、RAM204、ROM205、記憶部206を有している。これらはバス209を介して接続されている。さらに外部装置として表示部207、入力部208が接続される。後述する図3に示す処理をコントロールPC201に実行させるプログラムがソフトウェアモジュールとしてROM205または記憶部206に格納されている。このプログラムはRAM204に読み込まれ、CPU203に実行される。CPU203はプログラムされた命令に応じてコントロールPC201の各ハードウェア資源を制御し、全体として図1に示す各機能が実現される。かかるプログラムは撮影モード毎に分かれたソフトウェアモジュールとして格納されている。
【0016】
図2はまた、画像処理装置100を含む放射線撮影システム200のハードウェア構成を示している。画像処理装置100であるコントロールPC201とイメージセンサ202、X線発生装置211が信号線である光ファイバー214でつながっている。信号線は光ファイバーでなくてもCAN(Controller Area Network)やギガビットイーサなどでもよい。光ファイバー214には、表示部210、データベース212、ネットワークインタフェース部213が接続されている。
【0017】
コントロールPC201はイメージセンサ202や放射線源であるX線発生装置211などにコマンドを送る。イメージセンサ202はX線を光に変換する蛍光体と、蛍光体が発する光を電気信号に変換する半導体基板と、電気信号を読み出すための駆動回路と、読み出された電気信号からデジタル画像データを作成する回路とを含む。表示部210はX線発生装置211や撮影に応じて得られる動画像をユーザがリアルタイムで確認するためのGUIの表示に主に用いられる。一方表示部207はユーザが撮影条件の設定を行うためのGUIの表示に主に用いられる。
【0018】
本システムでは動画撮影と静止画撮影が可能となっている。動画撮影の場合、イメージセンサ202が受光して得られる出力値に基づいて、放射線の線量が制御される。これによりイメージセンサ202が出力するX線画像の一定画質を保持することができる。
【0019】
この制御においてはCPU203が出力値を定期的にチェックすることでイメージセンサ202の決められた範囲に到達する線量を監視し、その値が一定になるように入射線量を制御する。CPU203は到達線量が基準より少ないと判定した場合に入射線量を多くするようにX線発生装置211に命令する。到達線量が基準を超えていると判定すれば入射線量を少なくするようにX線発生装置211に対して命令する。X線発生装置211は命令に応じて適切な線量のX線をX線管から射出する。また、表示部210のGUIや不図示の操作ボタン、または入力部208を介して手動での線量の制御が可能である。
【0020】
このように透視撮影やシネ撮影などの動画撮影では線量制御は自動で行われるため、線量の監視に用いる範囲が適切でないと必ずしも最適な線量になるとは限らない。また動画撮影を開始した直後や撮影領域が移動する場合は、フィードバック制御が収束するために時間がかかることから、その間イメージセンサからは適切な線量でない画像が出力される恐れがある。また、線量制御は正しく動作する場合でも、安全性の観点から線量に上限があるため、必要な量だけの線量を曝射することができない場合もある。この場合もノイズだけを強調してしまった画像を出力することになる。
【0021】
画像処理装置100により行われる処理の概要を図3に基づいて説明する。図3は、イメージセンサ202に検出される線量に応じた画素値と、出力特性が良好なダイナミックレンジの範囲と、イメージセンサ202が生成した画像の画素値の範囲との関係を示す図である。
【0022】
図3(a)で、出力特性が良好な範囲を示すダイナミックレンジ300が示されている。これに対して、線量(受光量)に応じた画像が生成されることとなる。範囲301はある画像の画素値の範囲を示している。ここでは、画像の画素値のヒストグラムを取ったときに出現回数が所定の閾値よりも高い値の下限と上限で画される範囲を示している。設定範囲302は、設定部102が画像の関心領域の画素値に基づいて設定した画像において強調される画素値の範囲である。
【0023】
範囲301を画素値の範囲とする画像では、設定範囲302がダイナミックレンジ300に一部包含されない。この場合、補正部105は包含されない範囲分だけ設定範囲302を高画素値側にシフトする。ここでシフトとは、画素値の範囲の大きさを変えずに下限値と上限値を変えることを意味する。範囲303はこのシフト補正された範囲を示している。これにより、画像の本来強調されるべき領域が強調されず潰れたような画像となる。よって作業者に対して、この画像を見て画像の線量が不足していることを直感的に理解させることができる。
【0024】
また別の画像の画素値の範囲が範囲311で示されている。この画像において強調される画素値の範囲が312で示されている。この場合、設定範囲312はダイナミックレンジ300の範囲を超えている部分があるため、補正部105が強調する範囲を範囲313にシフトする。これにより、画像の本来強調されるべき領域よりも低画素値側が強調されるため、白とびしたような画像を得ることができる。よって作業者に対して、この画像を見て画像の線量が不足していることを直感的に理解させることができる。
【0025】
図3(b)では、ある画像の画素値の範囲が範囲331で示されており、その強調されるべき範囲が設定範囲332で示されている。この場合、画像の画素値の範囲も、設定範囲332もダイナミックレンジ300内に包含されているため、補正部105による補正は必要ない。本来強調されるべき設定範囲332が強調された画像を得ることができる。
【0026】
また別の画像における画素値の範囲が範囲341で示され、強調される範囲が設定範囲342で示されている。この場合、画像の画素値の範囲341は一部ダイナミックレンジ300に包含されていないが、設定範囲342は包含されている。この場合にも、ノイズやアーチファクトを強調することがないため、設定範囲342を強調した画像を得ることができる。
【0027】
上述の放射線撮影システム200により実現される処理の流れを図4に従い説明する。図4は放射線撮影システム200が実行する動画撮影処理の流れを示している。
【0028】
まずステップS401の前段階として、X線発生装置211はX線管を制御し断続的にX線を射出させる。ここで射出するX線の線量制御は、イメージセンサ202の所定領域が受光して得られる出力値を所定のタイミングで取得することで監視し、それに応じてX線発生装置211により制御される。
【0029】
X線の射出と同期して、イメージセンサ202はX線を受光しフレーム画像を連続して出力する。この画像に対してイメージセンサ202内の回路でセンサ特性の補正がされる。ここでセンサ特性の補正とは、オフセット補正、Log変換、ゲイン補正、欠陥画素補正などである。この補正された画像の生成と画像処理装置100の処理が並行して行われる。
【0030】
ステップS401では、画像処理に必要な情報を外部から取得する。画像入力部101は、センサ特性を補正したオリジナル画像を取得する。また特性取得部103は、予め計測され記憶部206に格納された、イメージセンサ202のダイナミックレンジを示す値を取得する。
【0031】
以下ステップS402乃至S404で、設定部102が画像に基づいて強調する画素値の範囲を設定する。画像解析部108は、オリジナル画像を解析し、階調変換カーブを作成するためのパラメータを計算する(ステップS402)。本実施例では階調処理方法として、固定の階調変換カーブをシフトさせて使用する方法を行う。シフトさせる量はオリジナル画像上での関心領域に最適な輝度が割り当てられるように決める。そこで画像解析部108は関心領域内の平均値を計算し出力する。
【0032】
関心領域の設定はROI設定部として機能する設定部102により行われる。関心領域は画像の中心から数インチの正方形領域とする。これは、診断上重要と思われる部位を中心に撮影することが多いことに対応したものである。画像の中心付近を関心領域とすることで結果的に診断上注目すべき部位を関心領域とすることができる。関心領域を設定する別の方法としては、画像を解析することで撮影部位毎に適切な領域を設定することができる。例えば胸部の画像であれば肺野を抽出し、肺野の領域を関心領域とする。この技術は、必ずしも注目したい領域が画像の中央に位置しない場合があることに対応するものである。そのような場合としては例えば、撮影部位や目的によっては画像の複数の部位を注目する必要がある場合や、または予め撮影フォーマットが決まっている場合がある。これに対応して、撮影部位の情報に基づいて画像を解析し関心領域を設定することで、注目したい部位を基準に画像の階調を設定することができる。更に別の方法として、関心領域を線量の監視に用いる先述の所定領域に合わせて同じ領域に設定する方法がある。これにより、線量の制御の基準となる領域と画像処理の基準となる領域が揃うこととなるため、画像の品質をより適切に向上させることができる。
【0033】
次に階調変換作成部109は解析により得られた関心領域内の平均値と、階調変換カーブ用の外部パラメータを取得し、階調変換カーブ(第1の階調変換関数)を作成する(ステップS403)。本実施例では階調変換カーブとして式1に示す画素値wのシグモイド関数S(w)を利用する。
【0034】
【数1】
【0035】
式1においてpxSmin、pxSmaxはそれぞれS(w)の最小値、最大値である。sPrmCはS(w)の傾きで、sX0は、S(w)のw方向のシフト量である。
【0036】
次に階調変換作成部109はこの階調変換カーブS(w)のコントラストを示す値として微分値S’(w)を計算する(ステップS404)。この微分値がある入力画素値において所定の値以上である場合、例えば1より大きい場合には、オリジナル画像よりもコントラストが強調される。逆に1より小さい場合には、オリジナル画像よりも画素値の差が小さく扱われることとなるため、コントラストが弱められる。階調変換作成部109はこの微分値が所定の閾値より大きい画素値の範囲を、画像において強調する画素値の範囲として設定する。この閾値は上述のとおり1としてもよいが、1より大きい値としてもよく、画像や撮影部位などの情報に応じて決められる。以上ステップS402乃至S404の処理により設定部102は強調する画素値の範囲を設定する。
【0037】
ステップS405では判定部104が階調変換カーブへの入力値と微分値S’(w)との間に指定の条件が成り立っているかを判定する(ステップS405)。指定の条件とは、ノイズが支配的な画素値の範囲を高コントラストに変換しないという条件である。ノイズが支配的な画素に高コントラストを与えたとしてもノイズだけが強調されて情報がなく、診断上不適切な画像となる。これを防ぐことを目的に、設定部102により設定された強調する画素値の範囲がイメージセンサの出力特性が良好な画素値の範囲を意味するダイナミックレンジに含まれるか否かを判定する。含まれると判定された場合(ステップS406でYes)には、画像の関心領域に基づいて設定された強調範囲がノイズやアーチファクトを強調することがない。よって設定部102で設定された範囲がそのまま強調される(ステップS408)。
【0038】
含まれないと判定された場合には(ステップS406でNo)、ノイズやアーチファクトを強調してしまい、画像として不自然なものとなる。さらには、作業者は画像を見ても適切な線量が照射されているのかいないのかを判断することができなくなってしまう。例えば、本来低線量であれば画像は暗くなるのに対して、低画素値のノイズの多い画素値範囲をコントラスト強調してしまうと、画像全体がざらついた画像となってしまう。これでは作業者は、適切な線量が照射されていないことは分かっても、線量を上げればいいのか下げればいいのかが分からなくなってしまう。そこで、関心領域に応じたコントラストの強調を放棄し、基準を超えた低線量であることを示すような画像となるように階調を変更する。そのために、ステップS407で補正部105により強調する画素値の範囲が補正される。
【0039】
ステップS406での判定部104の判定処理と、ステップS307での補正部105による補正処理を図5及び図6を参照しながら詳述する。まず、図5はイメージセンサの特性を示す図に基づいてイメージセンサ202のダイナミックレンジについて説明する。横軸にイメージセンサへの到達線量(受光量)、縦軸はセンサ出力値とし、実線が信号成分、破線がノイズ成分を表している。イメージセンサの出力値は、この信号値とノイズ値を合わせた値となる。線量(受光量)E1まではノイズ成分の方が支配的であるが、そこからは信号成分が支配的となる。そして線量(受光量)E2に達すると信号成分は飽和する。このような関係の中で、E1からE2までの範囲をセンサのダイナミックレンジと定義する。
【0040】
定性的に言えば、イメージセンサの信号値及びノイズ値の出力特性が良好な画素値または線量(受光量)の範囲である。また別の観点では、ダイナミックレンジの中ではSN比が閾値より大きい範囲である。また別の観点では、信号成分が飽和しない、または信号成分の出力の線型性が良好に保たれている画素値の範囲である。
【0041】
各到達線量に対応するセンサ出力値がOutDRMinとOutDRMaxである。OutDRMin以下の出力値となる場合、ノイズが支配的な値であることがいえる。一方、OutDRMax以上の出力値となる場合、センサ出力値が飽和し、センサ特有のアーチファクトが発生する。したがって、OutDRMin以下、OutDRMax以上となる値は、センサ出力値として有効ではないことがいえる。
【0042】
次に図6に基づいて階調変換カーブの補正処理を説明する。入力画素値は、センサ出力値に修正を施して得られるオリジナル画像の画素値である。図5の線量E1に対応する入力画素値はwE1、線量E2に対応する入力画素値はwE2である。wE1とwE2の範囲をグレーで示している。これがイメージセンサ202のダイナミックレンジに対応する。すなわちセンサ出力値として有効な範囲はグレーゾーン内だけと判断できる。補正部105はこの範囲に階調変換カーブの高コントラストな領域があたるように制御する(ステップ407)。シグモイド関数S(w)の微分値S’(w)について、低コントラストから高コントラストへと変わる閾値をTh1とし、高コントラストから低コントラストへと変わる閾値をTh2とする。また、Th1とTh2に対応する入力画素値wをそれぞれwth1とwth2とする。この範囲が画像において強調される領域である。
【0043】
判定部104は、これら2つの閾値wth1、wth2で定義される範囲がwE1からwE2の範囲内に包含されるか否かを判定する。ここで包含されないと判定された場合には、階調変換カーブを式(2)のように補正する。この処理は、階調変換カーブを低画素値シフトする処理である。
【0044】
【数2】
【0045】
図5に示すようにwth1がwE1以下である場合は、ノイズだけを強調することになるため、階調変換カーブを高線量域側(高画素値側)へとシフトする。一方、wth2がwE2以上である場合は、センサのアーチファクトだけを強調することになるため、階調変換カーブを低線量域側(低画素値側)へとシフトする。
【0046】
補正部105により決められるシフト量は、強調される画素値の範囲がダイナミックレンジの範囲内に含まれるように決められる。強調される画素値の範囲がダイナミックレンジにぎりぎり含まれるようにシフトする。例えば、ダイナミックレンジよりも低画素値側を強調するよう設定されていた場合には、強調する範囲の下限がダイナミックレンジの下限と一致するようにシフト量を決める。このようにすると、シフト量は最小に抑えられることとなる。シフト量を最小に抑えることで画像の見えやすさを極力保つことができる。
【0047】
以上の処理により、階調変換カーブが補正されることに応じて強調する画素値の範囲も補正される。このようにして、強調する範囲がダイナミックレンジに範囲内に含まれない場合には強調する範囲をシフトする処理が行われる。
【0048】
画像のダイナミックレンジの範囲が十分に大きい場合には、画素値の範囲をシフトさせるだけではノイズ等の強調を防ぐことができない場合がある。信号出力の線型性のよい画素値の範囲に収めることよりもSN比が閾値より大きい画素値の範囲に収めることを優先させてシフトさせる。こうすることで強調される画素値の範囲が高画素値側にシフトされ白とびした画像となるため、手動で線量をより高く設定されてしまうのを防ぐことができる。
【0049】
図4のステップS408にて、階調処理部106は、オリジナル画像に階調変換を施す。設定部102により設定された画素値の範囲がダイナミックレンジに包含される場合には、設定された範囲を強調する階調変換カーブS(w)(第1の階調変換関数)を画像に適用する。一方でダイナミックレンジに包含されない範囲がある場合には、包含されるように画素値の範囲がシフトされた階調変換カーブSnew(w)(第2の階調変換関数)を適用する。
【0050】
ここで、オリジナル画像において特定の二次元領域が決められていた場合は、その特定の領域のみをSnew(w)にて変換し、特定の領域外はS(w)にて変換する。これにより特定の領域だけはノイズやアーチファクトを強調しない、線量の過不足が明らかな部分画像として表示される。
【0051】
階調変換した画像は、表示制御部107が表示部210に階調変換された画像を表示させる。その他画像処理はメモリ保存、PACS転送などを行い、ユーザに提供する(ステップS409)。
【0052】
上述の処理により、撮影線量が足りずノイズだけが強調されてしまった画像が、ノイズが強調されることのない画像となり、線量が不足していることが明らかな暗い画像が出力される。撮影線量が多すぎてセンサの特性に起因するアーチファクトが強調されてしまったような画像が、センサの特性が強調されない画像となり、線量が多すぎであることが明らかな明るい画像が出力される。このように、線量が不足または過多で画像処理による画質の改善が望めない場合には、線量が不足または過多であることを示す画像処理を画像に施す。これによりノイズやアーチファクトを強調した不自然な画像が出力されてしまう状況を減らすことができる。また、作業者が画像を見ることで線量が不足しているか過多であるのかが一目瞭然となるため、線量の制御を適切に行うことができる。
【0053】
なお関心領域の画素値などの情報から、線量が不足した画像であることが明らかである場合には、特性取得部103はダイナミックレンジの情報として下限値E1またはwE1の値のみを取得する。この場合ダイナミックレンジの情報としてはSN比が閾値よりも大きい画素値の範囲を示す情報となる。
【0054】
また別の例として、イメージセンサのダイナミックレンジが十分に広い場合や、イメージセンサの信号成分の出力について線型性が保たれる範囲が十分に広い場合も考えられる。この場合にも特性取得部103はダイナミックレンジの情報として下限値E1またはwE1の値のみを取得することとしてもよい。
【実施例2】
【0055】
実施例2では、強調される画素値の範囲が前記ダイナミックレンジに包含されるように補正するため、階調変換曲線をシフトさせる代わりに曲線の傾きを変更する。ハードウェア構成は実施例1とほぼ同様であるが、補正部105による処理が異なっている。実施例2を図7を参照しながら説明する。
【0056】
図1の構成図と図4の全体フローに基づいて実施例2の処理の流れを説明する。ステップS401からステップS405までは実施例1と同様であるため省略する。図7に階調変換カーブでの変換を示した。入力画素値は、センサ出力値に修正を施した値である。図5の線量E1に対応する入力画素値はwE1、線量E2に対応する入力画素値はwE2である。wE1とwE2の範囲をグレーで示している。すなわちセンサ出力値として有効な範囲はグレーゾーン内だけと判断できる。補正部105はこの範囲に階調変換カーブの高コントラストな領域があたるように制御する(ステップ406)。微分値S’(w)上にて、低コントラストと高コントラストとの閾値をそれぞれTh1とTh2とするとする。入力画素値wE1とwE2での傾きがTh1、Th2となるようなS(w)の傾きsPrmCth1、sPrmCth2に設定することで制御ができる。すなわち階調変換カーブを構成するf(w)を式(3)のように補正する。
【0057】
【数3】
【0058】
図7に示すようにwE1におけるコントラストが高い場合は、ノイズだけを強調することになるため、階調変換カーブの傾きを小さくする。一方、wE2におけるコントラストが高い場合は、センサのアーチファクトだけを強調することになるため、階調変換カーブの傾きを小さくする。式(3)では全ての入力画素に対し一律で傾きを変えているが、S(w)の中心を境に傾きの異なる階調変換カーブなどへと変換してもよい。(ステップS407)。ステップS408以降は実施例1と同様であるため省略する。
【0059】
また別の例として、wth1とwth2の範囲に収まらないときは、wth1とwth2の範囲に階調変換カーブを圧縮(もしくは入力画素値を圧縮)する。
【0060】
このように階調変換曲線をシフトさせるだけでなく傾きを変更したり画素値方向に圧縮したりすることでも、ノイズやアーチファクトを強調した不自然な画像を出力させないようにすることができる。
【実施例3】
【0061】
実施例3では、線量制御に応じたコントラスト強調処理を行うか否かを切り替える機能を有している。ハードウェア構成は実施例1とほぼ同様であるが、階調処理部106は表示部207に表示されたGUIへの入力に応じて処理を行う点が異なっている。以下本実施例を図8乃至図10を参照しながら説明する。
【0062】
ユーザ入力からの入力を得るための調整画面800を図8に基づいて説明する。制御モードの選択GUI802は例えば図8のようにGUIのチェックボックスを含む。選択GUIでの選択に応じて、判定部104が上述の実施例に記載された画像処理を行うか否かを選択する。ユーザがこのチェックボックスをオンにすると、図3のフローチャートに示す画像処理が行われるが、オフにすると図3の処理は行われない。輝度を調整するための調整GUI803はユーザが輝度を調整するための図8のようなGUIを含む。この調整GUI803への入力に応じて補正部105は階調変換カーブをシフトされる。コントラストを調整する調整GUI804はユーザがコントラストを調整するための図9のようなGUIを含む。この調整GUI804への入力に応じて補正部105により階調変換カーブが変更され、コントラストが調整される。
【0063】
調整GUI803の詳細を図9に基づいて説明する。調整GUI803には図9に図示するように輝度調整ステップが中央(Step0)に近い位置からStep0、Step2、Step−2、Step4、・・・、StepTHと表示されている。また、各輝度調整ステップに対応して輝度シフト量が中央に近い位置から0、5、−5、10、−10、・・・・と5刻みで表示されている。例えば、Step2は輝度シフト量10に対応し、StepTHは輝度シフト量−30に対応している。ユーザが輝度調整ステップを選択すると、補正部105は対応した輝度シフト量分だけ階調変換カーブがシフトされ輝度が調整される。
【0064】
調整GUI803では、あるステップを超えると階調変換カーブが指定のコントラスト内に収まらなくなる境界となるステップをStepTHとしている。StepTHよりも(絶対値が)大きく輝度を変更する場合、診断上ふさわしくない画像が作成される。
【0065】
ここで、任意のステップが選択された場合に、輝度シフト量の最小単位を小さくするため、輝度シフト量と輝度調整ステップとの再割当てが実行される。これは、表示制御部107により行われる。図9の下段には、輝度調整ステップStep0が選択された場合の再割当てを示している。図9ではステップが負の方向にいく場合に指定のコントラスト以上になる。したがってStepTHからStep0までの間を3刻みで割り当てる。この結果、StepTHからStep0までの間で詳細に調整することができる。コントラスト調整部904においても同様の調整機構を採用することが可能である。
【0066】
上述の調整機能を利用する際の画像処理装置100が実行する処理の流れを図10のフローチャートに従い説明する。まず、階調変換作成部109がユーザによって輝度・コントラスト調整された量を取得する(ステップS1001)。次に階調変換作成部109は取得した輝度調整量を使って階調変換カーブを更新する。そして判定部104は、センサダイナミックレンジ外の範囲にある画素値が指定のコントラストの範囲内であるかを計算する(ステップS1002)。ここで判定部104が、指定のコントラストの範囲内であるか否かを判定する(ステップS1003)。この処理は上述の実施例と同様である。ここで指定のコントラストの範囲内であると判定された場合には(ステップS1003でYes)、ステップS806へと進む。一方、範囲内ではないと判定すると(ステップS1003でNo)、引き続き判定部104は現在の階調制御モードがONであるかOFFであるかを判定する(ステップS1004)。ここでの判定は、調整画面制御モードの選択GUI802がONの時は、センサダイナミックレンジの範囲外にある入力画素が指定のコントラスト以上である場合に、以下となるように制御する。実施例の1や2と同様に階調変換カーブを修正する(ステップS1005)。OFFの時は制御をしない。つまりステップS1002で作成した階調変換カーブで処理をする(ステップS1006)。そして表示制御部107は階調処理済みの画像を画像表示GUI801に表示させる(ステップS1007)。またステップS1008で表示制御部107は上述の図9に示したとおり、調整GUI803及び804のシフト量と調整ステップとの再割当て処理を行う。
【0067】
以上のとおり本実施例では、イメージセンサのダイナミックレンジに応じたコントラスト強調処理を行うか行わないかを選択可能とし、ユーザが調整可能とする。これにより適切な画像処理を画像に施すことができる。
【実施例4】
【0068】
実施例4では、先述の実施例において、強調される画素値の範囲がダイナミックレンジの範囲内に含まれていないと判定された場合には、表示制御部107で表示部210に警告を表示させる。システムの構成及び処理の流れについて、先述の実施例と重複する部分については説明を省略する。
【0069】
関心領域に基づいて設定された画像において強調される画素値の範囲がダイナミックレンジの範囲内に含まれないと判定部104で判定された場合、適切な階調変換が行われない旨の警告を表示する。
【0070】
または、設定部102で設定された画素値の範囲がダイナミックレンジよりも低画素値側の範囲を包含する場合には、線量が不足している旨の表示をする。この表示は、「線量が不足している」旨を文字情報で知らせる表示でも、線量不足であることを示すアイコンでもその両方でもよい。また表示部210には警告の表示と並べて、実施例1に示す処理により階調処理部106にて処理された画像が表示されることとなる。この画像は設定部102にて設定された範囲がダイナミックレンジを外れている場合には、線量不足であることが明らかな階調変換が施された画像である。そのためX線画像と、文字情報及び/またはアイコンとの両方によって線量不足であることをユーザに分かりやすく提示することができる。
【0071】
同様に設定部102で設定された画素値の範囲がダイナミックレンジよりも高画素値側の範囲を包含する場合には、線量が過多となっている旨の警告表示をする。この場合でも線量過多であることが強調された画像と警告表示が並べて表示されるため、線量が過多であることをユーザに分かりやすく提示することができる。
【0072】
また実施例3のステップS1003の処理で、指定のコントラストの範囲に含まれない場合は、線量不足または線量過多である旨の警告を出してもよい。警告を出し、ユーザに階調変換カーブを修正せずに処理をするか否かを選択させるメッセージを表示してもよい。もしくは警告を出すだけで表示を行ってしまってもよい。
【0073】
また別の例として、手動での線量制御を支援する方法に適用することができる。動画撮影をする際に、最初ダイナミックレンジを外れた低線量で撮影を開始する。この場合、表示部210には線量が不足していることが明らかな画像と警告表示とが表示部210に表示される。そこで作業者は徐々に線量を上昇させ、ダイナミックレンジにぎりぎり含まれるようななるべく少ない線量に調節していく。線量が適切となったところで線量の変更を終了する。特に放射線撮影においては被写体の被曝を抑えるためなるべく低線量で撮影したいという要求がある。本発明は係る手動での線量制御を支援することができる。
【実施例5】
【0074】
上述の実施例では、強調する範囲がイメージセンサのダイナミックレンジを外れてしまった場合にもコントラストを強調する処理を行っていたが、実施例5では当該場合に強調処理を省略する。図11を参照しながら本実施例を説明する。なお図11にて図1と同様の名称を付されたブロックは図1と同等であるため説明を省略する。画像処理装置1100を含むシステムは図2と同様であるため説明を省略する。
【0075】
画像処理装置1100の制御部1110は判定部1104の判定結果を取得する。ここで、制御部1110は階調処理部1106に処理を実行させるか否かを制御する。制御部1110は設定されたコントラストを強調する範囲がイメージセンサのダイナミックレンジに包含されない場合には、階調処理部1106に対して所定の信号を送る。一方、コントラストを強調する範囲がイメージセンサのダイナミックレンジに包含されない場合には、当該所定の信号を送信しないよう制御する。この所定の信号を入力した場合、階調処理部1106は入力された画像に対して階調変換を施さず表示制御部1107に送る。所定の信号が入力されない場合には、先述の実施例と同様に階調処理部1106は設定された範囲のコントラストを強調する処理を実行する。このようにして階調処理部1106に入力された画像はコントラスト強調処理が施されないまま表示制御部1107に入力され、表示部207に表示される。
【0076】
これにより画像の線量が不足している場合や、線量が多すぎる場合にはコントラストを強調する処理が施されないこととなる。これにより、画像から線量不足であるか、線量過多であるかを示す情報をシステムの操作者に直感的に確認させることができる。システムの操作者は線量の調節やイメージセンサのゲイン切り替え、または撮影の中止など必要に応じた対処を行うことができる。
【実施例6】
【0077】
本実施例では、あらかじめ作成した第1の階調変換特性を補正して第2の階調変換特性処理を得ることをせず、画像から直接に階調変換特性を決定する。
【0078】
図12に画像処理装置1200の構成を示す。画像入力部1201、階調処理部1206、表示制御部1207は上述の実施例と同様である。図2に示すハードウェアと、ROM205または記憶部206に記憶されたソフトウェアプログラムとが共同して各部の機能を実現する。以下上述の実施例と異なる点を説明する。
【0079】
本実施例では、画像解析部1208はX線画像を解析して階調変換特性を決めるための基準の画素値を取得する。基準の画素値の一例は被写体領域の平均値または中央値等の統計値を用いる。被写体領域は、画像解析部1208がX線画像から周知のアルゴリズムにより被写体領域を抽出することで得られる。被写体領域を基準に階調変換を行うことが可能となるため、被写体領域を診断しやすい画像を得ることができる。
【0080】
また別の例としては、画像中心を含む部分領域内の統計値を用いても良い。X線撮影においては写損を防ぐ観点から被写体の位置決めを行ってから撮影を行うことが多いため画像の中心付近に診断上重要な部位がくることが多い。本例はこれを利用したものであり、被写体抽出処理が不要となるため、解析処理の負荷を低減することができる。
【0081】
記憶部206には、イメージセンサ202の出荷前等のタイミングで予め取得されたダイナミックレンジの範囲が記憶される。なお、特性の変化などに対応して、ダイナミックレンジを取得する特性取得部1203を設けることとしてもよい。この場合特性取得部1203は、にイメージセンサ202から得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得し、記憶部206に記憶する。また、ダイナミックレンジの情報として、先述の図5に示すようにイメージセンサ202により得られる画像のSN比が閾値より大きい画素値の範囲でありかつ信号成分の出力の線型性が保たれる画素値の範囲を記憶部206に記憶することとしても良い。これには、たとえば所定の規則で線量透過率が空間的に変化するファントムを撮影した画像について、SN比及びセンサに到達した入射線量に対する出力画素値の変化を計測することで得ることができる。
【0082】
判定部1204は、画像解析部1208により得られた階調変換の基準の画素値が、記憶部206に記憶されたダイナミックレンジに含まれるか否かを判定する。基準の画素値がダイナミックレンジに含まれる場合には、決定部として機能する階調変換作成部1209は、画像解析部1208により得られた基準の画素値を基準に階調変換特性が決定する。この場合、階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心が画像解析部1208により得られた基準の画素値をとなる。
【0083】
画像解析部1208により得られた基準の画素値が前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定されなかった場合には、階調変換作成部1209はダイナミックレンジに含まれる特定の画素値を新たな基準の画素値として選ぶ。この新たな基準の画素値が、階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心となるように階調変換の特性が決定される。
【0084】
上述の機能により実現される処理の例を図13、図14に基づき説明する。図13(a)、図13(a)は本実施例の処理を示す図である。範囲1301はX線画像の画素値の範囲を示す。ダイナミックレンジ300よりも範囲1301が大きくなっているのは、X線画像の場合被写体を通過せず直接X線がイメージセンサ202に到達する場合があるからである。画像特徴量の値は、たとえば被写体領域に基づいて得られた階調変換の基準となる画素値の値である。特に低線量の撮影を行う場合、この特徴量の値がダイナミックレンジ300よりも下回る場合があり、その場合には、階調カーブの基準点をダイナミックレンジ300に含まれる特定の画素値とする。この基準の値が、階調カーブにより階調が広げられる画素値の範囲の中心位置となる。図13(a)の例では、特定の画素値はダイナミックレンジ300の下限値となっている。図14(a)が、図13(a)の処理で決定される階調カーブの例である。これに限らず、ダイナミックレンジ300の下限値よりも所定の画素値だけ大きい画素値を基準の値としてもよい。
【0085】
上述の処理により画像特徴量の値を基準に決められる階調カーブを用いるよりも、ノイズの領域を抑圧することができる。
【0086】
図13(b)は画像特徴量の値がダイナミックレンジ300に包含される場合を示したものである。この場合画像特徴量の値がそのまま階調変換の基準の値となる。この場合は、被写体領域の階調を適切に広げ、診断しやすい画像を提供することができる。図14(b)は図13(b)の場合に対応する階調カーブの例である。
【0087】
本実施例の処理により、被写体の領域を反映した階調処理を行うことができる。また、適正な線量を下回る線量で撮影した場合には、ノイズの抑圧を優先し被写体領域の少なくとも一部の階調を狭める。これにより、不自然にノイズが強調された画像が表示されないようにすることができる。
【0088】
(その他の実施例)
本実施例では強調される画素値の範囲を階調変換曲線によって設定したが、LUTによって行っても、また階調変換曲線やLUT等の階調変換によらずともよい。
【0089】
また、予めイメージセンサの出力特性が良好な画素値の範囲を抑圧するコントラスト変更処理を行うこととしてもよい。また、関心領域の画素値の範囲に基づいて設定された強調される画素値の範囲がイメージセンサの出力特性が良好な範囲よりも低線量側の領域を含む場合には、素抜け領域を除いてコントラストを抑圧することで、低線量であることが診断者にとって分かりやすい画像を生成することができる。
【0090】
画像処理装置100または画像処理装置1100で行われている処理を複数の装置で分散させ画像処理システムとして実現してもよい。また図1または図10、図12に示す1つの機能ブロックとしてまとめられている処理を複数の回路または機能ブロックで分散させて実現してもよい。またイメージセンサと、上述の実施例における画像処理装置及び表示装置の機能とを組み込んだFPDまたは撮像装置により本実施例のシステムを実現することとしてもよい。
【0091】
図2で示すように本実施例をコンピュータのハードウェアとソフトウェアの協働により実現する場合、複数のCPUで分散させて本実施例を実現することとしてもよい。ここでコンピュータ上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述の機能が実現してもよい。またソフトウェアであるプログラムまたはプログラムコードを記録した記録媒体もまた本実施例を構成する。ここでいう記録媒体は、non−transitoryなものであり、電波等記録対象が固定されないは様な媒体は含まないが、キャッシュや揮発メモリ等は含む概念である。
【0092】
上述した本実施の形態における記述は、実施例の好適な画像処理装置の一例であり、実施の形態はこれに限定されるものではない。
【0093】
以上、上述した実施例では、被写体に照射されるX線の線量が線量である場合に得られたX線画像について、X線画像における被写体領域の階調を狭めることでノイズを抑圧することができる。このように被写体領域の階調を広げることよりもノイズを抑圧することを優先した階調処理を行うことで、不自然にノイズが強調された画像が表示されないようにすることができる。
【符号の説明】
【0094】
100 画像処理装置
101 画像入力部
102 設定部
103 特性取得部
104 判定部
105 補正部
106 階調処理部
107 表示制御部
200 放射線撮影システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線センサで撮像したX線画像に基づいて階調変換の特性を取得する変換取得手段と、
前記X線センサの特性によりSN比が閾値より大きくなる画素値の範囲を記憶する記憶手段と、
前記階調変換の特性により階調が広げられる画素値の範囲が、前記記憶された画素値の範囲に含まれるか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果に応じて前記階調変換の特性を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記階調が広げられる画素値の範囲が前記記憶された画素値の範囲に含まれるように階調変換の特性を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記階調が広げられる画素値の範囲が、前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定された場合には、前記補正前の階調変換で階調が広げられる画素値の範囲を前記記憶された画素値の範囲内となるように、かつ、前記記憶された画素値の範囲より小さい画素値帯域の階調を狭めるように階調変換の特性を取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
イメージセンサで撮像した画像に基づいて該画像において強調される画素値の範囲を設定する設定手段と、
前記イメージセンサから得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得し記憶部に記憶する特性取得手段と、をさらに有し、
前記補正手段は、前記判定手段により前記階調が広げられる画素値の範囲が前記記憶された画素値の範囲に包含されないと判定された場合には、前記階調が広げられる画素値の範囲を前記記憶された画素値の範囲に含まれるようにシフトさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記記憶された画素値の範囲に包含されない一部に対応する画素値の範囲分だけ前記階調が広げられる画素値の範囲をシフトさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記記憶された画素値の範囲が前記階調が広げられる画素値の範囲を包含する場合には該画素値の範囲の階調を広げる処理を前記画像に施し、前記階調が広げられる画素値の範囲を包含しない場合には該画素値の範囲をシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記特性取得手段は、前記イメージセンサにより得られる画像のSN比が閾値より大きい画素値の範囲でありかつ信号成分の出力の線型性が保たれる画素値の範囲を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記強調される画素値の範囲をシフトさせても前記特性取得手段により取得された画素値の範囲内に収めることができない場合には、前記線型性が保たれる画素値の範囲に収めることよりも前記SN比が閾値より大きい画素値の範囲に収めることを優先させて該強調される画素値の範囲をシフトさせる
ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲が前記強調される画素値の範囲の一部を包含しない場合には警告を出力する出力手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
イメージセンサで撮像した画像の関心領域に基づき階調変換関数を作成する作成手段と、
前記設定手段は前記作成された階調変換関数の傾きが閾値より大きい画素値の範囲を該画像のコントラストを強調する画素値の範囲として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記画像における固定の二次元領域、被写体の撮影部位のいずれかに応じて関心領域を設定するROI設定手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記強調される画素値の範囲が前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に包含される場合には該強調される画素値の範囲を強調する処理を前記補正手段に実行させ、前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に前記強調される画素値の範囲を包含しない場合には前記画像にコントラスト強調処理を施さないよう前記補正手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
X線センサで撮像したX線画像に基づいて階調変換の基準の画素値を取得する取得手段と、
前記X線センサの特性によりSN比が閾値より大きくなる画素値の範囲を記憶する記憶手段と、
前記基準となる画素値が、前記記憶された画素値の範囲に含まれるか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果に応じて階調変換特性を決定する決定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
前記取得手段は、X線画像の被写体領域における統計値を前記基準となる画素値として取得し、
前記決定手段は、前記基準の画素値が前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定された場合には、前記階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心が前記基準の画素値となるように階調変換の特性を決定する
前記決定手段は、前記基準の画素値が前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定されなかった場合には、前記記憶された画素値の範囲に含まれる特定の画素値が前記階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心となるように階調変換の特性を決定する
ことを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記決定手段は、被写体に照射されるX線の線量が線量である場合に得られた前記X線画像について、前記X線画像における被写体領域の階調を狭めることでノイズを抑圧する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
放射線源と、
前記放射線源の射出するX線を検出するイメージセンサと、
前記イメージセンサにより得られ前記画像処理装置で処理された画像を表示する表示手段と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項17】
イメージセンサで撮像した画像に基づいて該画像において強調される画素値の範囲を設定する設定ステップと、
前記イメージセンサから得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得する特性取得ステップと、
前記強調される画素値の範囲が、前記イメージセンサの特性が所定の範囲となる画素値の範囲に包含されるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで包含されないと判定された場合には、前記強調される画素値の範囲が前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に包含されるように補正する補正ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
請求項17の画像処理方法をコンピュータに実行させるための指示を記録した記録媒体。
【請求項1】
X線センサで撮像したX線画像に基づいて階調変換の特性を取得する変換取得手段と、
前記X線センサの特性によりSN比が閾値より大きくなる画素値の範囲を記憶する記憶手段と、
前記階調変換の特性により階調が広げられる画素値の範囲が、前記記憶された画素値の範囲に含まれるか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果に応じて前記階調変換の特性を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記階調が広げられる画素値の範囲が前記記憶された画素値の範囲に含まれるように階調変換の特性を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記階調が広げられる画素値の範囲が、前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定された場合には、前記補正前の階調変換で階調が広げられる画素値の範囲を前記記憶された画素値の範囲内となるように、かつ、前記記憶された画素値の範囲より小さい画素値帯域の階調を狭めるように階調変換の特性を取得する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
イメージセンサで撮像した画像に基づいて該画像において強調される画素値の範囲を設定する設定手段と、
前記イメージセンサから得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得し記憶部に記憶する特性取得手段と、をさらに有し、
前記補正手段は、前記判定手段により前記階調が広げられる画素値の範囲が前記記憶された画素値の範囲に包含されないと判定された場合には、前記階調が広げられる画素値の範囲を前記記憶された画素値の範囲に含まれるようにシフトさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記記憶された画素値の範囲に包含されない一部に対応する画素値の範囲分だけ前記階調が広げられる画素値の範囲をシフトさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記記憶された画素値の範囲が前記階調が広げられる画素値の範囲を包含する場合には該画素値の範囲の階調を広げる処理を前記画像に施し、前記階調が広げられる画素値の範囲を包含しない場合には該画素値の範囲をシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記特性取得手段は、前記イメージセンサにより得られる画像のSN比が閾値より大きい画素値の範囲でありかつ信号成分の出力の線型性が保たれる画素値の範囲を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記強調される画素値の範囲をシフトさせても前記特性取得手段により取得された画素値の範囲内に収めることができない場合には、前記線型性が保たれる画素値の範囲に収めることよりも前記SN比が閾値より大きい画素値の範囲に収めることを優先させて該強調される画素値の範囲をシフトさせる
ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲が前記強調される画素値の範囲の一部を包含しない場合には警告を出力する出力手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
イメージセンサで撮像した画像の関心領域に基づき階調変換関数を作成する作成手段と、
前記設定手段は前記作成された階調変換関数の傾きが閾値より大きい画素値の範囲を該画像のコントラストを強調する画素値の範囲として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記画像における固定の二次元領域、被写体の撮影部位のいずれかに応じて関心領域を設定するROI設定手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記強調される画素値の範囲が前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に包含される場合には該強調される画素値の範囲を強調する処理を前記補正手段に実行させ、前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に前記強調される画素値の範囲を包含しない場合には前記画像にコントラスト強調処理を施さないよう前記補正手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
X線センサで撮像したX線画像に基づいて階調変換の基準の画素値を取得する取得手段と、
前記X線センサの特性によりSN比が閾値より大きくなる画素値の範囲を記憶する記憶手段と、
前記基準となる画素値が、前記記憶された画素値の範囲に含まれるか否かを判定する判定手段と、
前記判定の結果に応じて階調変換特性を決定する決定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
前記取得手段は、X線画像の被写体領域における統計値を前記基準となる画素値として取得し、
前記決定手段は、前記基準の画素値が前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定された場合には、前記階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心が前記基準の画素値となるように階調変換の特性を決定する
前記決定手段は、前記基準の画素値が前記記憶された画素値の範囲に含まれると判定されなかった場合には、前記記憶された画素値の範囲に含まれる特定の画素値が前記階調変換により階調が広げられる画素値の範囲の中心となるように階調変換の特性を決定する
ことを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記決定手段は、被写体に照射されるX線の線量が線量である場合に得られた前記X線画像について、前記X線画像における被写体領域の階調を狭めることでノイズを抑圧する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
放射線源と、
前記放射線源の射出するX線を検出するイメージセンサと、
前記イメージセンサにより得られ前記画像処理装置で処理された画像を表示する表示手段と、
を有することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項17】
イメージセンサで撮像した画像に基づいて該画像において強調される画素値の範囲を設定する設定ステップと、
前記イメージセンサから得られる画像についてSN比が閾値より大きくなる線量に対応する画素値の範囲を取得する特性取得ステップと、
前記強調される画素値の範囲が、前記イメージセンサの特性が所定の範囲となる画素値の範囲に包含されるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで包含されないと判定された場合には、前記強調される画素値の範囲が前記特性取得手段にて取得された画素値の範囲に包含されるように補正する補正ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
請求項17の画像処理方法をコンピュータに実行させるための指示を記録した記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−135608(P2012−135608A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237570(P2011−237570)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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