説明

画像処理装置、方法およびプログラム

【課題】立体プリントの注文で指定されたプリント種類および画像サイズに応じて視差調整する。
【解決手段】プリント製品の種類に応じた想定視距離が、テーブルに基づいて決定され、プリント幅と想定視距離に基づいて視差量が適正視差範囲内の調整された立体プリントが印刷されるから、視距離の測定や入力などの煩雑な手段を設けることなく適切な視差量の立体プリントを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体プリント装置、方法およびプログラムに関し、特に、視距離とプリントサイズに応じた立体画像プリントの視差の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に係る3D画像出力装置は、3Dディスプレイの画面サイズまたは視距離に応じて視差調整パラメータを選択し、各特徴点における視差量を選択した変換テーブルにより変換し、変換後の視差量に対応する視差画像を生成し、生成した視差画像を含む複数の視差画像を表示デバイスに出力する。視距離は、3Dディスプレイまたはその近傍に配設した測距手段により自動的に取得されるか、マニュアル入力される。3D画像出力装置は、種々の画面サイズを有する立体表示デバイス、立体表示プリントを生成するプリンタ等に視差画像を出力する。
【0003】
特許文献2では、視差値分布画像の視差値を線形的あるいは非線形に変換することにより、視差値の調整を行い、立体画像の設計条件、すなわち、「最大飛び出し量と最大沈み込み量がある最大視差範囲内に収めつつ、有効に使う視点を取る。」および「画像内の主被写体位置の視差をできるだけ0にする」を同時に満たし、最大視差値範囲を有効に利用するような多眼立体画像のデプス値構成へと変更を行う。修正された視差値分布画像、および、視点位置、つまり視点位置に対応する入力左右ステレオ画像対の視差に対する各画像の比率r、を用いて各視点位置の仮想視点画像が生成され、全画素有効な新規視点画像が生成される。この処理を視点数分繰り返して、多視点画像シーケンスとする。多視点画像シーケンスから三次元ストライプ画像を合成する。このとき、多視点画像シーケンス中の各画像の同一座標の画素を画像の視点配置に従い、隣接画素として配列するように三次元画像を合成する。合成はそれぞれの視点の画像を垂直方向に1ラインごとに短冊状に分解し、視点位置の逆順に視点数分だけ合成する。ここで、視点位置の配列順を逆順にするのはレンチキュラ板により観察する際、レンチキュラの1ピッチ内で画像が左右逆に観察されるためである。この処理により印刷した画像にレンチキュラ板を重ね合わせると良好な立体画像が観察できる。
【0004】
特許文献3は、被写体の身体形状から、被写体の年齢を推定する技術の一例を開示する。
【0005】
その他、本願に関係する従来技術として、特許文献4〜7が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-206774号公報
【特許文献2】特開2003-209858号公報
【特許文献3】特開2003-250033号公報
【特許文献4】特開2010-258609号公報
【特許文献5】特開2002-218217号公報
【特許文献6】特開平5-11350号公報
【特許文献7】特開平11-133355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
視差を用いた立体画像プリントは、適切な視差量で表示しないと、視聴者の疲労を誘発するおそれがある。適切な視差量は、表示する立体プリントの視距離、画像サイズや視聴者の立体融合限界などによって変わるため、それに合わせた視差調整を行う必要がある。
【0008】
特許文献1では、3Dディスプレイの画面サイズまたは視距離に応じて視差調整パラメータを選択するとし、また視距離は、3Dディスプレイまたはその近傍に配設した測距手段などで入力するとする。しかし、立体プリントの媒体に視距離の測距手段を設けたり、立体プリントの注文者に視距離を手入力させるのは、費用、手間、正確性の面で困難である。
【0009】
また、3Dディスプレイと異なり、立体プリント中の画像のサイズや立体プリントの視距離は、プリント種類によって変化しうる。このため、注文に応じたプリント種類やプリントサイズごとの視差調整が必要である。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、立体プリントの注文で指定されたプリント種類および画像サイズに応じて視差調整する装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様は、所定の視差方向に視差を有する立体画像を入力する画像入力部と、立体画像プリントの種類を入力する立体画像プリント種類入力部と、立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類に基づき、適正視距離を設定する適正視距離設定部と、立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類に基づき、立体画像プリントの所定の視差方向の印刷サイズを決定する印刷サイズ決定部と、適正視距離設定部の設定した適正視距離と印刷サイズ決定部の決定した印刷サイズとに基づき、立体画像プリントの適正視差範囲を設定する適正視差範囲設定部と、適正視差範囲設定部の設定した適正視差範囲に適合するよう画像入力部の入力した立体画像の所定の視差方向の視差を調整する視差調整部と、所定の視差方向に沿って視差調整部が視差を調整した立体画像を生成する立体画像生成部と、を備える画像処理装置を提供する。
【0012】
本発明の第2態様は、適正視差範囲設定部は、立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類が特定の種類である場合、印刷サイズ決定部の決定した印刷サイズに基づいて適正視距離を設定するかまたは設定後の適正視距離を補正する画像処理装置を提供する。
【0013】
本発明の第3態様は、立体画像プリントの種類ごとの適正視距離を規定するテーブルを格納するテーブル格納部を備え、適正視距離設定部は、テーブル格納部に格納されたテーブルに基づき、立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類の適正視距離を設定する画像処理装置を提供する。
【0014】
本発明の第4態様は、立体画像の人物被写体の属性を解析する被写体解析部を備え、適正視差範囲設定部は、被写体解析部の解析した人物被写体の属性に応じて、適正視距離を設定するかまたは設定後の適正視距離を補正する画像処理装置を提供する。
【0015】
本発明の第5態様は、人物被写体の属性は年齢情報を含む画像処理装置を提供する。ここで、年齢情報は、年齢、生年月日、成人・子供の区別など、人物の年齢を推定しうる各種の情報を含む。
【0016】
本発明の第6態様は、印刷サイズ決定部は、立体画像プリントのレイアウトと、画像入力部の入力した立体画像のサイズと、立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類とに基づき、立体画像プリントの所定の視差方向の印刷サイズを決定する画像処理装置を提供する。
【0017】
本発明の第7態様は、所定の視差方向は横方向である画像処理装置を提供する。
【0018】
本発明の第8態様は、立体画像生成部の生成した立体画像を所定の印画媒体に記録する画像記録部を備える画像処理装置を提供する。
【0019】
本発明の第9態様は、立体画像プリントのテンプレートの種類の選択を入力するテンプレート種類入力部を備え、適正視差範囲設定部は、テンプレート種類入力部の入力したテンプレートの種類に応じて、適正視距離を設定するかまたは設定後の適正視距離を補正し、画像記録部は、テンプレート種類入力部の入力したテンプレートの種類に応じて、立体画像とともにテンプレート画像を記録する画像処理装置を提供する。
【0020】
本発明の第10態様は、画像処理装置が、所定の視差方向に視差を有する立体画像を入力するステップと、立体画像プリントの種類を入力するステップと、入力した立体画像プリントの種類に基づき、適正視距離を設定するステップと、入力した立体画像プリントの種類に基づき、立体画像プリントの所定の視差方向の印刷サイズを決定するステップと、設定した適正視距離と決定した印刷サイズとに基づき、立体画像プリントの適正視差範囲を設定するステップと、設定した適正視差範囲に適合するよう立体画像の所定の視差方向の視差を調整するステップと、所定の視差方向に沿って視差の調整された立体画像を生成するステップと、を実行する画像処理方法を提供する。
【0021】
本発明の第11態様は、画像処理装置が、所定の視差方向に視差を有する立体画像を入力するステップと、立体画像プリントの種類を入力するステップと、入力した立体画像プリントの種類に基づき、適正視距離を設定するステップと、入力した立体画像プリントの種類に基づき、立体画像プリントの所定の視差方向の印刷サイズを決定するステップと、設定した適正視距離と決定した印刷サイズとに基づき、立体画像プリントの適正視差範囲を設定するステップと、設定した適正視差範囲に適合するよう立体画像の所定の視差方向の視差を調整するステップと、所定の視差方向に沿って視差の調整された立体画像を生成するステップと、を実行するための画像処理プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、立体画像プリントの種類に応じて想定視距離が設定され、視差方向のプリントサイズと想定視距離に基づいて視差量が適正視差範囲内の調整された立体プリントが記録されるから、視距離の測定や入力などの煩雑な手段を設けることなく適切な視差量の立体プリントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】プリント装置を模式的に現した内部透視図
【図2】プリント装置の要部構成を示すブロック図
【図3】第1実施形態のプリント処理のフローチャート
【図4】成人用の適正視距離テーブルの一例を示す図
【図5】注文商品サイズ情報D、画像の印刷横幅サイズ情報dの一例を示す図
【図6】第2実施形態のプリント処理のフローチャート
【図7】第3実施形態のプリント処理のフローチャート
【図8】第4実施形態のプリント処理のフローチャート
【図9】子供用の適正視距離テーブルの一例を示す図
【図10】第5実施形態のプリント処理のフローチャート
【図11】第6実施形態のプリント処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下、添付図面に従って本発明に係るプリント装置の実施の形態について説明する。
【0025】
[プリント装置の全体構成]
図1はそれぞれ本発明の第1実施形態に係るプリント装置10を模式的に現した内部透視図であり、シート供給カセットから印画媒体を供給する状態に関して示している。
【0026】
このプリント装置10は、半円筒状のレンズ群を有したいわゆるレンチキュラーレンズが表面に形成されたレンズ面とその反対側の面である印画面を備えた透明樹脂製の印画媒体(以下、「レンチキュラーシート」という)12を鉛直方向に搬送して印画する縦置きのプリンタであり、主としてシート収納部100と、印画部200と、空送部300とから構成されている。レンチキュラーシート12の材質は、サーマルヘッド260の印画動作に対応した熱耐性を有する可撓性の部材からなる。この部材は透明樹脂、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PMMA(アクリル樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)である。また、レンチキュラーシート12の厚みは任意であるが、例えば0.3mmである。
【0027】
また、このプリント装置10は、R(受像層)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、W(ホワイト)のインクリボンを使用した昇華型プリンタであり、印画カラーごとに上昇(印画時)と下降(印画開始位置への逆送)とを繰り返し行うものであり、レンチキュラーシート12の搬送路50は、上昇下降とも同一のストレートパスで構成されている。
【0028】
このプリント装置10には、システムコントローラ400が配設され、制御手段によりプリント装置10の各部の動作が制御される。
【0029】
次に、上記構成のプリント装置10の制御系について説明する。図2はプリント装置10の要部構成を示すブロック図である。
【0030】
プリント装置10は、システムコントローラ400、プログラム格納部402、バッファメモリ404、センサ部406、操作部408、通信インターフェース(通信I/F)410、制御部420、機構部430、ヘッドドライバ440、およびサーマルヘッド260から構成されている。
【0031】
システムコントローラ400は、3Dプリント用のプログラムにより各部を統括制御する部分であり、CPU(中央処理装置)などが考えられる。ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体で構成されたプログラム格納部402には、3Dプリント用のプログラムが格納され、システムコントローラ400はプログラム格納部402に格納されているプログラムをRAMなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に適宜読み出して実行する。
【0032】
バッファメモリ404は、図示しない3Dカメラ、パーソナルコンピュータ(PC)、などから通信I/F410を介して受信した立体画像データ、メモリカードなどの記憶媒体から読み出した立体画像データ、あるいはそれらに付帯する各種情報を一時的に格納する部分である。
【0033】
通信I/F410に接続されるPCは、3Dカメラ等により撮影された同一被写体を撮影したカラーの立体画像(典型的には、左右画像からなる2視点画像)を取得し、これらの左右画像から特徴が一致する特徴点のずれ量(画素間のずれ量(視差量))を画素ごとに算出する。算出した視差量を3Dプリント用に調整した後、調整した視差量を補間して多視点画像、例えば6視点画像を生成する。PCは、R、G、Bの6視点画像を、さらにY、M、Cに色変換し、色変換された6視点画像から1枚分のY信号、M信号、およびC信号を生成する。これらのY信号、M信号、およびC信号が印画データとしてPCから通信I/F410を介してバッファメモリ404に格納される。
【0034】
なお、上記PCの画像処理機能をプリント装置10に内蔵させるようにしてもよい。
【0035】
センサ部406は、機構部430での各種部材の位置や回転角等を検出するセンサを含み、それぞれ検出した検出信号をシステムコントローラ400に出力する。
【0036】
操作部408は電源スイッチ、プリント開始スイッチ、プリント枚数、プリント種類等を設定するスイッチ等から構成され、操作部408での操作による信号は、システムコントローラ400に入力される。
【0037】
機構部430は、シート搬送機構431、ヘッド移動機構432、インクリボン駆動機構433、カセット退避機構434、および圧板駆動機構435から構成されている。
【0038】
シート搬送機構431は、図1等に示したフィードローラ190、搬送ローラ212、キャプスタン214、クランパ220、駆動モータ302、クランパ搬送部230(図14)等から構成されている。
【0039】
また、制御部420は、シート搬送制御部421、ヘッド移動制御部422、インクリボン制御部423、およびカセット制御部424から構成されている。
【0040】
システムコントローラ400は、印画シーケンスに応じて制御部420にそれぞれ制御信号を出力し、制御部420を介して機構部430を駆動制御する。
【0041】
これにより、シート搬送制御部421は、シート供給カセット150内からレンチキュラーシート12などの3D画像印刷媒体を排出させるとともに、印画時にレンチキュラーシート12を上昇/下降させる搬送を行う。また、シート搬送制御部421は、フィードローラ190の回転方向の位置を検出する検出手段(図示せず)を有し、検出手段の検出結果に応じてフィードローラ190を回転させてフィードローラ190の回転方向の位置を制御する。
【0042】
ヘッド移動機構432は、アーム部を回動させることにより、アーム部の先端に配設されたサーマルヘッド260を、プラテンローラ262に当接させる印画位置と退避位置との間で移動させる。
【0043】
インクリボン駆動機構433は、リボン交換ガトリング機構250のリボンケージを回転させる機構と、リボンケージに配設された5対の巻取りリール、供給リールを駆動するリール駆動機構とから構成されている。
【0044】
カセット退避機構434は、ソレノイド等を備え、システムコントローラ400からの指令によりシート収納本体110を揺動させる。
【0045】
圧板駆動機構435は、システムコントローラ400からの指令により圧板を移動させ、カセット内のレンチキュラーシート12に一定の押圧力が加わるようにしている。
【0046】
サーマルヘッド260は、レンチキュラーシート12の搬送方向と直交する方向に多数の発熱素子が配列されている。システムコントローラ400は、バッファメモリ404に格納された印画データに基づいて、1ラインごとに印画データに対応する濃度となるようにヘッドドライバ440を介して各発熱素子の温度を制御し、インクリボンのインクを昇華させてレンチキュラーシート12に転写させ、続いてシート搬送機構431によりレンチキュラーシート12を1ライン分送り、以下同様にして次々と各ラインの熱転写を行わせる。
【0047】
図3はプリント装置10の実行する第1実施形態のプリント処理のフローチャートである。この処理は、システムコントローラ400によって制御され、また、この処理の制御指令を規定するプログラムはプログラム格納部402に格納されている。
【0048】
S1では、操作部408から、プリント製品の種類、プリント枚数などの注文情報の入力が受け付けられる。また、3Dカメラなどから、所望の2視点画像の入力が受け付けられる。
【0049】
S2では、入力の確定したプリント製品の種類が判断される。該種類がフォトブックの場合はS3、ポスターの場合はS4、卓上カレンダーの場合はS5に進む。
【0050】
S3〜S5では、プログラム格納部402に格納されている適正視距離テーブルを参照し、S2で判断された種類に対応する適正視距離が決定される。適正視距離テーブルは、プリント製品の種類ごとの適正視距離を規定する。ここでは、図4のような、適正視距離テーブル(成人用の適正視距離テーブル)がプログラム格納部402に格納されているものとする。図4の適正視距離テーブルは、プリント製品の種類ごとの成人の典型的な視距離を適正視距離に規定する。
【0051】
S3では、適正視距離テーブルに従って、適正視距離が30cmに設定される。
【0052】
S4では、適正視距離テーブルに従って、適正視距離が2mに設定される。
【0053】
S5では、適正視距離テーブルに従って、適正視距離が70cmに設定される。
【0054】
S6では、入力の確定したプリント製品の種類に対応する注文商品サイズ情報が、プログラム格納部402から取得される。プログラム格納部402には、各プリント製品の種類に対応する注文商品サイズ情報が、予め格納されているものとする。例えば、注文商品サイズ情報(縦×横)は、大判ポスター=841×1,189mm、フォトブックL=227×227mm、卓上カレンダー127×127mmなどを含む。
【0055】
S7では、プリント製品に配置される画像の横幅サイズ情報(立体画像の横方向ピクセル数、プリント装置10の解像度(単位はdpi;dot per inch))を取得する。
【0056】
S8では、プログラム格納部402から取得された注文商品サイズ情報とS7で取得された画像の横幅サイズ情報に基づき、画像の印刷横幅サイズ情報を取得する。例えば、立体画像の横方向ピクセル数をプリント装置10の解像度で除算しこれをinchからmmに換算した値と、確定したプリント種類に対応する横幅のうち、小さい方の値を、画像の印刷横幅サイズ情報とする。
【0057】
プログラム格納部402には、各プリント製品の種類に対応する注文商品サイズ情報の他、さらに各プリント製品の種類に対応する画像の印刷横幅サイズ情報が、予め格納されていてもよい。例えば、画像の印刷横幅サイズ情報(縦×横)は、大判ポスター=800×600mm、フォトブックL縦×横=200×200、卓上カレンダー110×110mmなどを含む。なお、S3〜S5において、プリント製品種類と画像の印刷横幅サイズ情報から適正視距離が決定されてもよい。
【0058】
図5は、注文商品サイズ情報D、画像の印刷横幅サイズ情報dの一例を示す。
【0059】
図3に戻ると、S9では、適正視差範囲が決定される。適正視差範囲は最大飛び出し視差量・最小飛び出し視差量からなる。例えば、適正視距離と画像の印刷横幅サイズ情報に対応した適正視差範囲のテーブルが予めプログラム格納部402に格納されており、S3〜S5で設定された適正視距離とこのテーブルに基づいて適正視差範囲が決定されてもよい。
【0060】
S10では、画像の印刷横幅サイズ情報に対応した変換式で、入力された立体画像から生成される仮想視点の位置を調整する。この調整は、特許文献1・2と同様である。すなわち、まず、立体画像を構成する視点画像間でマッチングを行い、対応点が抽出され、その抽出された各対応点の視差量(視差分布)が求められる。
【0061】
プログラム格納部402には、各プリント製品の視距離および画像の印刷横幅サイズ情報に対応する視差調整パラメータが予め格納されている。S3ないしS5のいずれか1つで設定された適正視距離およびS8で取得された画像の印刷横幅サイズ情報に対応する視差調整パラメータが、プログラム格納部402から読み出され、該視差調整パラメータを所定の数式に代入することで、各対応点の視差量が調整される。視差調整パラメータは、プリントの視距離および画像の印刷横幅サイズ情報に応じて最適に鑑賞できるよう、経験的に定められている。
【0062】
次に、特許文献2と同様、S3ないしS5のいずれか1つで設定された適正視距離、レンチキュラーシート12の焦点距離、基線長、1仮想視点画像のプリントピッチなどのパラメータを、所定の幾何学的関係式に代入し、像飛ばし数を算出する。そして、算出した像飛ばし数と、S9で算出された適正視差範囲を構成する最大飛び出し視差量・最小飛び出し視差量のパラメータを所定の数式に代入して、最大可能視差値・最小可能視差値が算出される。そして、最大可能視差値・最小可能視差値の間で視差量の調整された画像から、各視点位置の仮想視点画像が生成され、これから短冊状のストライプ画像が合成される。そして、サーマルヘッド260により、合成されたストライプ画像が、レンチキュラーシート12に印刷される。
【0063】
このようにして、製品の種類に応じた想定視距離に基づいて視差量の調整された立体プリントが印刷されるから、視距離の測定や入力などの煩雑な手段を設けることなく適切な視差量の立体プリントを提供できる。
【0064】
<第2実施形態>
図6はプリント装置10の実行する、第2実施形態のプリント処理のフローチャートである。
【0065】
S11〜S18はS1〜S8と同様である。
【0066】
S19では、操作部408からテンプレートの指定を受け付け、入力の確定したプリント製品の種類のテンプレート情報が取得される。
【0067】
S20では、取得されたテンプレート情報が子供向けテンプレートであるか否かを判断し、YesならばS21、NoならばS22に進む。子供向けテンプレートは、各プリント製品種類に対応する1または複数のテンプレートのうち、子供向けテンプレートとしてプログラム格納部402で予め分類されたものを指す。例えば、カレンダーのテンプレートのうち、アニメーションキャラクター入りのテンプレートが指定されると、テンプレート情報が子供向けテンプレートであると判断される。
【0068】
S21では、S13〜S15で設定された適正視距離に、所定の負の補正値α(例えばα=−5cm)を加えるか、所定の1未満の補正値β(例えばβ=0.9)を乗じることで、適正視距離がより観察者に近い値となるよう補正する。補正された適正視距離は新たな適正視距離となる。
【0069】
S22〜S23は、S9〜S10と同様である。なお、S10では、取得されたテンプレート情報に基づいて、テンプレート画像が入力画像とともに印画される。
【0070】
子供は、子供用テンプレートに対する好奇心などから、成人よりも近くで立体プリントを見る可能性が高いが、この処理により、子供の鑑賞者に過大な視差を与えないようにできる。
【0071】
<第3実施形態>
図7はプリント装置10の実行する、第3実施形態のプリント処理のフローチャートである。
【0072】
S31〜S38はS11〜S18と同様である。
【0073】
S39では、入力された立体画像が解析され、子供が被写体として写っているか否かが判断される。YesならばS40、NoならばS41に進む。被写体が子供であるか否かの解析は、各種公知技術を用いて行われる。例えば、特許文献3のような被写体の年齢推定を行い、その推定年齢がある閾値(例えば12歳)を下回るならば、子供が被写体として写っていると判断される。被写体が成人か子供かの解析の他、被写体の生年月日などを解析し、その結果に基づいて子供が被写体として写っているか否かが判断されてもよい。
【0074】
S40〜S42はS21〜S23と同様である。
【0075】
子供は、被写体の子供に対する好奇心などから、成人よりも近くで立体プリントを見る可能性が高いが、この処理により、子供の鑑賞者に過大な視差を与えないようにできる。
【0076】
<第4実施形態>
図8はプリント装置10の実行する、第4実施形態のプリント処理のフローチャートである。
【0077】
S51では、入力された立体画像が解析され、子供が被写体として写っているか否かが判断される。YesならばS52、NoならばS53に進む。
【0078】
S52では、S55〜S57で参照すべき適正視距離テーブルを、成人用の適正視距離テーブルから子供用の適正視距離テーブルに切り替える。子供用の適正視距離テーブルはプログラム格納部402に格納されており、プリント製品の種類ごとの子供の適正視距離を規定する。図9は子供用の適正視距離テーブルの一例を示す。なお、S51でNoならば、S55〜S57で参照すべき適正視距離テーブルは、成人用の適正視距離テーブルであるとする。
【0079】
S53〜S57では、成人用の適正視距離テーブルまたは子供用の適正視距離テーブルのうち参照すべき方を参照し、S54で判断された種類に対応する適正視距離が決定される。
【0080】
S58〜S62はS6〜S10と同様である。
【0081】
第3実施形態では、立体プリントに使用する画像が決まるのは適正視距離を決めた後であり、画像の解析結果に合わせてこの適正視距離を補正していた。一方本実施形態では、立体プリントに使用する画像が決まるのは適正視距離を決める前であり、使用する画像に合わせて適正視距離テーブルを子供用の適正視距離テーブルに切り替え、子供の鑑賞者に過大な視差を与えないようにできる。
【0082】
<第5実施形態>
図10はプリント装置10の実行する、第5実施形態のプリント処理のフローチャートである。
【0083】
S71〜S76はS1〜S6と同様である。
【0084】
S77では、入力の確定したプリント製品の種類に基づき、立体プリントの生成には画像のレイアウトが必要であるか否かが判断される。例えば、プリント製品の種類がポスターや通常の画像プリントの場合は、レイアウトなく印刷媒体全面に画像が印刷されるため、画像のレイアウトは不要と判断され、それら以外の種類のプリント製品の場合は、画像のレイアウトは必要と判断される。画像のレイアウトが必要な場合はS78、不要な場合はS80に進む。
【0085】
S78はS7と同様である。
【0086】
S79では、立体画像の付帯情報、例えば画像ファイルのヘッダから、撮影向きの情報(縦撮りまたは横撮り)を取得する。なお、3Dカメラは、縦撮り、横取りのいずれの場合でも、それに対応した横方向の視差が生じた視点画像を取得する光学系を有しているものとする。
【0087】
撮影向きの情報は、3Dカメラに内蔵の加速度センサの検出情報に基づいて付帯情報に記録されうる。撮影向きの情報が付帯情報として格納されていない場合、被写体顔の向きの解析に応じて推測された撮影向きや、ユーザ入力に基づいて、撮影向きの情報を取得してもよい。
【0088】
S80では、S79で取得された撮影向きの情報に従って、プリント製品に配置される立体画像の横幅サイズ情報(解像度)を取得する。例えば、撮影向きが縦撮りを示すならば、立体画像の短手方向の幅が横幅サイズ情報となり、撮影向きが横撮りを示すならば、立体画像の長手方向の幅が横幅サイズ情報となる。すなわち、実際の立体画像のレイアウトの向きを参照して横幅サイズ情報が取得される。S78からS80に進んだ場合はS8と同様の処理を行う。
【0089】
S81〜S82はS9〜S10と同様である。
【0090】
このようにして、撮影の向きと実際の鑑賞方向に合う印刷横横幅を正確に取得できる。
【0091】
<第6実施形態>
図11はプリント装置10の実行する、第6実施形態のプリント処理のフローチャートである。
【0092】
S91〜S100はS71〜S80と同様である。
【0093】
S101では、入力の確定したプリント製品の種類がポスターであるか否かが判断される。Yesの場合はS102、Noの場合はS105に進む。
【0094】
S102では、プログラム格納部402から取得された注文商品サイズ情報とS100で取得された画像の横幅サイズ情報に基づき、画像の印刷横幅サイズ情報を取得する。そして、印刷横幅サイズが1m未満であればS105、1m以上であればS104に進む。
【0095】
S104では、S94で設定された適正視距離を破棄し、新たに適正視距離を5mに設定する。あるいは、S94で設定された適正視距離に所定の補正値を加減乗除することで新たな適正視距離を設定してもよい。
【0096】
S105〜S106はS81〜S82と同様である。
【0097】
プリント製品の種類とその製品を印刷する大きさによっては、適正視距離が変わることが考えられる。ここでは、ポスターを例にして、印刷サイズの大小に応じて適正視距離を設定している。
【0098】
<その他の実施形態>
本発明はレンチキュラ方式に限られず、パララックスバリア方式やアナグリフ方式などの各種の立体画像プリント技術にも適用されうる。また、上記のプリント処理の全部または一部は、プリント装置10以外の情報処理装置、例えば、通信I/F410に接続されたPCなどで実行されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10:プリント装置、12:レンチキュラーシート、100:シート収納部、110:シート収納本体、190:フィードローラ、212:搬送ローラ、214:キャプスタン、220:クランパ、250:リボン交換ガトリング機構、260:サーマルヘッド、400:システムコントローラ、402:プログラム格納部、404:バッファメモリ、406:センサ部、408:操作部、410:通信インターフェース(通信I/F)、420:制御部、430:機構部、440:ヘッドドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の視差方向に視差を有する立体画像を入力する画像入力部と、
立体画像プリントの種類を入力する立体画像プリント種類入力部と、
前記立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類に基づき、適正視距離を設定する適正視距離設定部と、
前記立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類に基づき、前記立体画像プリントの前記所定の視差方向の印刷サイズを決定する印刷サイズ決定部と、
前記適正視距離設定部の設定した適正視距離と前記印刷サイズ決定部の決定した前記印刷サイズとに基づき、前記立体画像プリントの適正視差範囲を設定する適正視差範囲設定部と、
前記適正視差範囲設定部の設定した適正視差範囲に適合するよう前記画像入力部の入力した立体画像の前記所定の視差方向の視差を調整する視差調整部と、
前記所定の視差方向に沿って前記視差調整部が視差を調整した立体画像を生成する立体画像生成部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記適正視差範囲設定部は、前記立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類が特定の種類である場合、前記印刷サイズ決定部の決定した印刷サイズに基づいて前記適正視距離を設定するかまたは設定後の適正視距離を補正する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
立体画像プリントの種類ごとの適正視距離を規定するテーブルを格納するテーブル格納部を備え、
前記適正視距離設定部は、前記テーブル格納部に格納されたテーブルに基づき、前記立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類の適正視距離を設定する請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記立体画像の人物被写体の属性を解析する被写体解析部を備え、
前記適正視差範囲設定部は、前記被写体解析部の解析した人物被写体の属性に応じて、前記適正視距離を設定するかまたは設定後の適正視距離を補正する請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記人物被写体の属性は年齢情報を含む請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記印刷サイズ決定部は、立体画像プリントのレイアウトと、前記画像入力部の入力した立体画像のサイズと、前記立体画像プリント種類入力部の入力した立体画像プリントの種類とに基づき、前記立体画像プリントの前記所定の視差方向の印刷サイズを決定する請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記所定の視差方向は横方向である請求項1〜6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記立体画像生成部の生成した立体画像を所定の印画媒体に記録する画像記録部を備える請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
立体画像プリントのテンプレートの種類の選択を入力するテンプレート種類入力部を備え、
前記適正視差範囲設定部は、前記テンプレート種類入力部の入力したテンプレートの種類に応じて、前記適正視距離を設定するかまたは設定後の適正視距離を補正し、
前記画像記録部は、前記テンプレート種類入力部の入力したテンプレートの種類に応じて、前記立体画像とともにテンプレート画像を記録する請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像処理装置が、
所定の視差方向に視差を有する立体画像を入力するステップと、
立体画像プリントの種類を入力するステップと、
前記入力した立体画像プリントの種類に基づき、適正視距離を設定するステップと、
前記入力した立体画像プリントの種類に基づき、前記立体画像プリントの前記所定の視差方向の印刷サイズを決定するステップと、
前記設定した適正視距離と前記決定した前記印刷サイズとに基づき、前記立体画像プリントの適正視差範囲を設定するステップと、
前記設定した適正視差範囲に適合するよう前記立体画像の前記所定の視差方向の視差を調整するステップと、
前記所定の視差方向に沿って前記視差の調整された立体画像を生成するステップと、
を実行する画像処理方法。
【請求項11】
画像処理装置が、
所定の視差方向に視差を有する立体画像を入力するステップと、
立体画像プリントの種類を入力するステップと、
前記入力した立体画像プリントの種類に基づき、適正視距離を設定するステップと、
前記入力した立体画像プリントの種類に基づき、前記立体画像プリントの前記所定の視差方向の印刷サイズを決定するステップと、
前記設定した適正視距離と前記決定した前記印刷サイズとに基づき、前記立体画像プリントの適正視差範囲を設定するステップと、
前記設定した適正視差範囲に適合するよう前記立体画像の前記所定の視差方向の視差を調整するステップと、
前記所定の視差方向に沿って前記視差の調整された立体画像を生成するステップと、
を実行するための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−205002(P2012−205002A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66446(P2011−66446)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】