説明

画像処理装置、画像再構成システム、画像処理方法およびプログラム

【課題】画像再構成処理を効率的に実行し得、計算速度を大幅に向上させ得る画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置3において、反復演算部32は、パラメータ格納部39から読み出された検出確率Cijとj番目のボクセルBxのボクセル値xとの第一積和演算処理と、検出確率Cijとi番目の検出器要素にかかる投影データとの第二積和演算処理と、を含む演算処理を行う。そして、反復演算部32は、投影データが所定値以下であるシンチレーション検出器11に対応するボクセルBxについて、第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物から放出され、または被測定物を透過した光の量に基づいて、被測定物の内部構造の三次元画像を再構成するための画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人体などの被測定物を透過したX線、あるいは被測定物から放出されたγ線といった放射線を検出し、その検出結果に基づいて被測定物の内部構造の二次元画像または三次元画像を再構成するための画像処理技術の研究開発が進められている。このような画像処理技術は、X線CT装置(X線コンピュータ断層撮影装置)や陽電子放射断層撮像装置(PET:Positron Emission Tomography)装置で使用されている。
【0003】
画像再構成のアルゴリズムとしては、ML−EM(最尤推定−期待値最大化:Maximum Likelihood - Expectation Maximization)法やOS−EM(Ordered Subsets - Expectation Maximization)法などの統計的画像再構成法が広く知られており、OS−EM法は、ML−EM法の一種である。ML−EM法は、たとえば、非特許文献1や非特許文献2に開示されており、OS−EM法は、たとえば、非特許文献3に開示されている。
【0004】
統計的画像再構成法は、逐次近似的なアルゴリズムであり、多大な計算時間を要するという問題がある。計算時間を短縮化してスループットを向上させる高速演算アルゴリズムとしては種々のものが提案されている。たとえば、非特許文献4は、検出器系の幾何学的対称性を利用した高速演算アルゴリズムを提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】L. A. Shepp and Y. Vardi, "Maximum likelihood reconstruction for emission tomography," IEEE Trans. Med. Imaging, 1982, Vol. MI-1, No. 2, pp. 113-122.
【非特許文献2】K. Lange and R. Carson, "EM reconstruction algorithms for emission and transmission tomography," J. Comput. Assist. Tomogra., 1984, Vol. 8, No. 2, pp. 306-316.
【非特許文献3】H. M. Hudson and R. S. Larkin, "Accelerated image reconstruction using ordered subsets of projection data," IEEE Trans. Med. Imaging, 1994, Vol. 13, pp. 601-609.
【非特許文献4】A. Motta et al., "Fast 3D-EM reconstruction using Planograms for stationary planar positron emission mammography camera," Computerized Medical Imaging and Graphics, 2005, Vol. 29, pp. 587-596.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえ従来の高速演算アルゴリズムを用いたとしても、計算量が膨大であるので、その計算速度は臨床上実用的であるとは言い難いという問題がある。たとえば、画像を再構成するまでの計算時間が長大であると、診断に要する時間が長くなるので、臨床上実用的であるとは言い難い。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、画像再構成処理を効率的に実行し得、計算速度を大幅に向上させ得る画像処理装置、画像再構成システム、画像処理方法およびプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、被測定物から複数の検出器要素の各々に飛来した光子の光量を示す投影データと、前記被測定物が配置された検出領域の内部に複数のボクセルが立体的に配列された解析モデルと、に基づいて、統計的画像再構成法を用いて前記投影データより前記ボクセルごとのボクセル値を推定する演算処理を反復的に実行して前記被測定物の内部構造の三次元画像を再構成する反復演算部と、
j番目のボクセルを通過した前記光子がi番目の検出器要素で検出される検出確率Cijを示すデータを格納しているパラメータ格納部と、
を備える画像処理装置が提供される。
この画像処理装置は、前記反復演算部が、
(A)前記パラメータ格納部から読み出された検出確率Cijと、前記j番目のボクセルのボクセル値との第一積和演算処理と、
前記検出確率Cijと、前記i番目の検出器要素にかかる前記投影データとの第二積和演算処理と、
を含む前記演算処理を行うとともに、
(B)前記投影データが所定値以下である前記検出器要素に対応する前記ボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像処理装置においては、より具体的な態様として、前記反復演算部が、前記投影データが前記所定値以下である検出器要素に対応する前記ボクセルのボクセル値をゼロに設定してもよい。
【0010】
また、本発明の画像処理装置においては、より具体的な態様として、前記投影データが前記所定値以下である検出器要素に対応するボクセルの集合であるゼロ領域と、前記投影データが前記所定値よりも大きい前記検出器要素に対応するボクセルの集合である非ゼロ領域と、を含む、ボクセル値の二次元画像を生成する二次元画像生成部と、
前記二次元画像を内包する三次元初期画像を生成し、前記三次元初期画像における前記ゼロ領域に対応するボクセルを決定する三次元初期画像生成部と、
をさらに備え、
前記反復演算部が、前記三次元初期画像における前記ゼロ領域に対応するボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップしてもよい。
【0011】
また、本発明の画像処理装置においては、より具体的な態様として、前記ボクセルのサイズを複数段階に微細化して前記演算処理を反復的に実行し、
微細化前に前記三次元初期画像における前記ゼロ領域に対応していたボクセルに内包される微細化後のボクセルについて、前記反復演算部が、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップしてもよい。
【0012】
また、本発明によれば、対向して配置されたシンチレーション検出器の対を前記検出器要素として含む上記記載の画像処理装置を備えるとともに、前記シンチレーション検出器が、前記被測定物から所定方向の両側に放射された光子対を検出する画像再構成システムが提供される。
【0013】
また、本発明によれば、被測定物から複数の検出器要素の各々に飛来した光子の光量を示す投影データに基づいて、統計的画像再構成法を用いて前記被測定物の内部構造の三次元画像を再構成する画像処理方法が提供される。
この画像処理方法は、(a)前記被測定物が配置された検出領域の内部に複数のボクセルを立体的に配列して解析モデルを生成するモデル生成ステップと、
(b)j番目のボクセルを通過した前記光子がi番目の検出器要素で検出される検出確率Cijと、前記j番目のボクセルのボクセル値との第一積和演算処理をおこなう前方投影ステップと、
(c)前記検出確率Cijと、前記i番目の検出器要素にかかる前記投影データとの第二積和演算処理をおこなう後方投影ステップと、
(d)前記前方投影ステップおよび後方投影ステップを反復的に実行して前記ボクセルごとのボクセル値を推定する反復演算ステップと、
を含むとともに、
前記投影データが所定値以下である前記検出器要素に対応する前記ボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。
【0014】
また、本発明によれば、被測定物から複数の検出器要素の各々に飛来した光子の光量を示す投影データに基づいて、統計的画像再構成法を用いて前記被測定物の内部構造の三次元画像を再構成する画像再構成処理を情報処理装置に実行させるプログラムが提供される。
このプログラムでは、前記画像再構成処理が、
(a)前記被測定物が配置された検出領域の内部に複数のボクセルを立体的に配列して解析モデルを生成するモデル生成処理と、
(b)j番目のボクセルを通過した前記光子がi番目の検出器要素で検出される検出確率Cijと、前記j番目のボクセルのボクセル値との第一積和演算処理をおこなう前方投影処理と、
(c)前記検出確率Cijと、前記i番目の検出器要素にかかる前記投影データとの第二積和演算処理をおこなう後方投影処理と、
(d)前記前方投影処理および後方投影処理を反復的に実行して前記ボクセルごとのボクセル値を推定する反復演算処理と、
を含むとともに、
前記投影データが所定値以下である前記検出器要素に対応する前記ボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。
【0015】
上記発明において、被測定物から検出器要素に光子が飛来するとは、光子と検出器要素との相互作用により光子が検出されることを意味する。また、被測定物から光子が飛来するとは、被測定物の後方から照射された光子が被測定物を透過して検出器要素に飛来する場合と、被測定物を光源として光子が放射される場合とを含む。以下、被測定物から光子が放出される表現した場合、上記の両態様を含む意味である。
【0016】
なお、本発明の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、たとえば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与された画像処理装置、コンピュータプログラムにより画像処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。
また、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0017】
また、本発明の画像処理方法は、複数の工程を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の画像処理方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障しない範囲で変更することができる。
さらに、本発明の画像処理方法は、複数の工程が個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある工程の実行中に他の工程が発生すること、ある工程の実行タイミングと他の工程の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【0018】
また、本発明で云う反復的な演算処理は、コンピュータプログラムを読み取って対応するデータ処理を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定のデータ処理を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等を用いて実施することができる。
なお、本発明でプログラムに対応した各種動作を情報処理装置に実行させることは、各種デバイスを情報処理装置に動作制御させることを含む意味である。
【0019】
さらに、本発明において、データを記憶または格納しているとは、本発明の装置が、少なくとも演算処理を実行するときに、当該データを保持している状態となる機能を有することを意味している。したがって、たとえば、光量を示す投影データや検出確率Cijを示すデータに関しては、本発明の装置が出荷されるときに既に登録されていることの他、出荷されるときには登録されていないこれらのデータが、演算処理の時点で、または演算処理の最中に登録されることも許容する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による画像処理技術によれば、飛来した光子の光量を示す投影データが所定値以下である検出器要素に対応するボクセルについて、第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。これは、光子の飛来しない領域に存在するボクセルに関してはボクセル値を一律に所定値(たとえばゼロ)とみなすことが可能であることによる。そして、第一および第二積和演算処理は統計的画像再構成法による反復的な演算処理における計算量の多い処理である。したがって、上記のボクセルに関して、かかる積和演算処理をスキップすることにより、演算処理の総時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る一実施形態の画像再構成システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】実測投影データを説明するための模式図である。
【図3】ML−EM法による処理手順を概略的に示すフローチャートである。
【図4】二次元画像の作成処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【図5】三次元初期画像の作成出力の具体的な手順を示すフローチャートである。
【図6】画像再構成処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【図7】(a)は解析モデルおよび検出領域、(b)は解析モデルおよび被測定物、(c)は二次元画像の一例を示す斜視図である。
【図8】三次元初期画像を示す斜視図である。
【図9】(a)は概略再構成処理に用いる概略モデル、(b)は精細再構成処理に用いる精細モデルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
図1は、本発明に係る一実施形態の画像再構成システム1および画像処理装置3の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0023】
本実施形態の画像再構成システム1は、画像処理装置3と検出部2とを備えている。
画像処理装置3は、反復演算部32とパラメータ格納部39とを備えている。
反復演算部32は、被測定物20から複数の検出器要素(結晶対14:図2を参照)の各々に飛来した光子の光量を示す投影データと、被測定物20が配置された検出領域22の内部に複数のボクセルBx(図7を参照)が立体的に配列された解析モデルと、に基づいて、統計的画像再構成法を用いて投影データよりボクセルBxごとのボクセル値xを推定する演算処理を反復的に実行して被測定物20の内部構造の三次元画像を再構成する。
また、パラメータ格納部39は、j番目のボクセルBxを通過した光子がi番目のシンチレーション検出器11iで検出される検出確率Cijを示すデータを格納している。
【0024】
そして、本実施形態の反復演算部32は、パラメータ格納部39から読み出された検出確率Cijと、j番目のボクセルBxのボクセル値xとの第一積和演算処理と、検出確率Cijと、i番目の検出器要素にかかる投影データとの第二積和演算処理と、を含む演算処理を行う。
また、本実施形態の反復演算部32は、投影データが所定値以下であるシンチレーション検出器11に対応するボクセルBxについて、第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。
【0025】
画像再構成システム1は、互いに対向する一対の検出プレート10(10A,10B)を有する対向型PET装置を構成し、被測定物20から放射された放射線の線量を測定して、被測定物20の外形とともにその内部構造の三次元画像を推定(再構成)する。
【0026】
検出部2は、互いに対向する検出面12(12A、12B)を有する一対の検出プレート10A,10Bと、これら検出プレート10A,10Bを並進移動または回転移動させる駆動機構41と、を有している。人体などの被測定物20は、これら検出プレート10A,10Bによって挟み込まれる。
【0027】
検出プレート10には、多数のシンチレーション検出器11(11A,11B)が二次元平面内に配列されている。
シンチレーション検出器11の配列の態様は特に限定されず、格子状、千鳥状、またはそれ以外でもよい。本実施形態では、シンチレーション検出器11がX−Y平面に沿って格子状(マトリクス状)に配列された検出プレート10を例示する。
各方向のシンチレーション検出器11の配列数は任意であるが、本実施形態では、X,Y軸方向に沿って、それぞれm個ずつのシンチレーション検出器11が配列されて検出プレート10を構成しているものとする。
【0028】
シンチレーション検出器11は、シンチレータ結晶(図示せず)と、シンチレータ結晶の内部で放射線が消失することにより発生する蛍光を受光する受光素子(図示せず)とを有している。
検出プレート10A,10Bの対向する検出面12は、シンチレータ結晶の端面の集合により構成されている。各シンチレータ結晶は面一に配置され、検出面12は平坦に形成されている。
本実施形態のシンチレータ結晶は、検出面12を構成する端面が正方形をなす四角柱をなしている。ただし、シンチレータ結晶の端面の形状および寸法はこれに限られるものではない。
そして、本実施形態は、対向するシンチレーション検出器11Aと11Bとの組み合わせごとに、被測定物20からの放射線の飛来を検出する。
【0029】
すなわち、本実施形態の画像再構成システム1は、対向して配置されたシンチレーション検出器11の対(結晶対14)を、検出器要素として備えている。そして、シンチレーション検出器11では、被測定物20から所定方向の両側に放射された光子対を検出する。
【0030】
駆動機構41は、画像処理装置3に組み込まれた制御部40からの制御信号に従って、一対の検出プレート10A,10Bを駆動する機能を有する。本実施形態では、駆動機構41は、検出プレート10A,10Bの間の間隔を狭めたり、一対の検出プレート10A,10BをX軸の周りに回転させたり、一対の検出プレート10A,10BをX軸方向に移動させたりすることができる。
したがって、本実施形態の画像再構成システム1は、駆動機構41の駆動により、一対の検出面12A、12Bの間隔が可変である。したがって、検出プレート10A,10Bに挟み込まれた被測定物20は検出面12A、12Bに押圧されて拡幅する。画像再構成システム1では、かかる押圧状態の被測定物20から飛来する放射線を受光する。
ユーザは、キーボードやポインティングデバイスなどの入力操作部51を通じて制御部40に指示を出すことにより、駆動機構41に検出プレート10A,10Bを駆動させることができる。
【0031】
被測定物20の内部には、陽電子を発生させる放射性同位元素(RI:Radioactive Isotope)が分布している。たとえば、被測定物20が人体や動物などの被検体であれば、この被検体に放射性同位元素を投与することで放射線同位元素を被測定物20内に分布させることができる。陽電子は、放射性同位元素の崩壊過程で発生する。陽電子が被測定物20内の電子と相互作用して消滅すると、約511keVのエネルギーを持つ2本のガンマ線(光子対)が発生し、これらガンマ線は互いに反対方向に放出される。よって、陽電子が消滅した地点に関して点対称性を有する一対のシンチレーション検出器11A,11Bが、それぞれ、当該2本のガンマ線をほぼ同時に検出することとなる。よって、光子対をそれぞれ検出した一対のシンチレーション検出器11A,11Bを結ぶ線上に、陽電子が消滅した地点が存在する。
【0032】
シンチレーション検出器11A,11Bに用いられるシンチレータ結晶は、X線やガンマ線などの高エネルギー放射線の光子を、よりエネルギーの低い多数の光子(蛍光)に変換する結晶体である。この種の結晶体としては、たとえば、BGOやLSOなどの公知の結晶体を使用すればよい。
検出プレート10A,10Bが備える受光素子は、シンチレーション検出器11A,11Bで生成された蛍光出力を増幅し、電気信号に変換する。その電気信号は、ケーブルなどの転送手段(図示せず)を介して、光子を検出したシンチレーション検出器11A,11Bの番地情報とともに、画像処理装置3の投影データ生成部31に転送される。
【0033】
投影データ生成部31は、検出プレート10A,10Bから転送された電気信号に基づいて、結晶対14ごとに検出した光子を計数し、この計数結果に基づいて、結晶対14(検出器要素)毎の投影データ(実測投影データ)を生成する。この実測投影データは、メモリ37内のデータ記憶部38に格納される。
【0034】
図2は、実測投影データyを説明するための模式図である。被測定物20内の投影線上の陽電子消滅地点(線源)21から所定方向の両側に放射された光子は、検出プレート10A,10Bのシンチレーション検出器11A,11Bでそれぞれほぼ同時に検出される。
線源21は被測定物20のほぼ全体に分布しており、光子は被測定物20のほぼ全体から、さまざまな方向に対して放射される。そして、癌細胞のように活性の高い部位に線源21は高密度で集中しているため、癌細胞を挟む結晶対14では光子が多く検出される。
図2に示すように、特定のシンチレーション検出器11Bに着目した場合、検出プレート10Aを構成する各シンチレーション検出器11Aのうち、線源21を挟むシンチレーション検出器11A1と、線源21を挟まないシンチレーション検出器11A2とが存在する場合がある。
他のシンチレーション検出器11Bに関しても同様である。
【0035】
投影データ生成部31(図1を参照)は、対向するシンチレーション検出器11A,11Bで所定の時間差内に光子を検出したことを検知すると、かかるシンチレーション検出器11A,11Bの組み合わせに相当する結晶対14(iは結晶対の番号)について、当該光子の光量を積算してカウントする。かかる計測を所定時間に亘っておこなうことにより、結晶対の番号ごとの実測投影データy(実測投影データy)を求めることができる。
そして、積算された実測投影データyの分布に基づいて、統計的画像再構成法を用いることにより線源21の分布密度が再構成され、もって癌細胞23の有無およびその位置が推定される。
【0036】
図1に示す反復演算部32は、被測定物20が配置された検出領域22の内部に複数のボクセルBx(立方形状または長方形状などの微小な立体要素、図7を参照)が立体的に配列された解析モデル25を利用して画像再構成処理を実行する。
反復演算部32は、データ記憶部38から実測投影データyを読み出し、統計的画像再構成法に従って、この実測投影データyを用いてボクセルBx毎の放射能濃度に相当するボクセル値xを推定する演算処理を反復的に実行する。
これにより、被測定物20の内部構造の断層画像または三次元画像を再構成する機能を有している。本実施形態では、ボクセル値の三次元画像に基づいて、二次元画像である断層画像を出力することを含めて、三次元画像の再構成という。
【0037】
本実施形態では、統計的画像再構成法として、典型的なML−EM法を使用することができる。ただし、使用可能な統計的画像再構成法はこれに限定されるものではない。
【0038】
反復演算部32は、前方投影算出部33、後方投影算出部34および濃度算出部35という機能ブロックを有する。これらの機能ブロックは、ML−EM法に従って処理を反復的に実行する。ML−EM法では、以下の推定式(1)が使用される。
【0039】
【数1】

【0040】
ただし、推定式(1)中のCは、次式(1A)で与えられる。
【0041】
【数2】

【0042】
上記推定式(1)中、kは反復回数であり、x(k)はk回目の処理におけるj番目のボクセルBxの放射能濃度(ボクセル値x)である。yはi番目の結晶対(結晶対14)による検出結果に基づいて得られた、上述の実測投影データの値(投影値)である。
本実施形態の画像再構成システム1の場合、検出プレート10は、シンチレーション検出器11がX,Y軸方向に沿ってそれぞれm個ずつ配列されて構成されている。したがって、検出プレート10はそれぞれm個のシンチレーション検出器11を有している。そして、シンチレーション検出器11の組み合わせである結晶対14はm組だけ存在し、iの最大値はmとなる。
【0043】
また、x(k+1)は、(k+1)回目の処理におけるj番目のボクセルBxにおける放射能濃度である。よって、k回目のボクセル値x(k)から、(k+1)回目のボクセル値x(k+1)が算出される。
ここで、x(k)の初期値x(0)は、正の実数であるかぎりどのような値に設定されても、反復回数kを十分に大きく設定して演算処理を反復的に行うことで、所定の確度の三次元画像を再構成することができる。
【0044】
推定式(1)において、Cijは、j番目のボクセルBxから飛来した光子対がi番目の結晶対14で検出される確率(検出確率)である。ボクセルBxから飛来した光子対が結晶対14に入射する数は、検出確率Cijに依存することが知られている。検出確率CijとCの値は、予め算出されたうえでパラメータ格納部39に格納されている。
【0045】
検出確率Cijは、行列(「システムマトリクス」と呼ばれる。)のi行j列目の要素とみなすことができる。検出確率Cijの値には、散乱や減衰などの物理的要因を組み込むことが可能であるが、本実施形態では、検出確率Cijの値は、i番目の結晶対14に対するj番目のボクセルBxの幾何学的位置のみにより定めることができる。
検出確率Cijの値には、レイトレース法(Ray-tracing method)や、モンテカルロシミュレーション法(Monte Carlo simulation method)等によって求まる値を設定することができる。
【0046】
次に、画像処理装置3の動作として実現される本実施形態の画像処理方法(以下、本方法という)を説明する。
【0047】
まず、本方法の概要について説明する。
本方法は、被測定物20から複数の検出器要素(結晶対14)の各々に飛来した光子の光量を示す投影データに基づいて、統計的画像再構成法を用いて被測定物20の内部構造の三次元画像を再構成する方法である。
この本方法は、
(a)被測定物20が配置された検出領域22の内部に複数のボクセルBxを立体的に配列して解析モデルを生成するモデル生成ステップと、
(b)j番目のボクセルBxを通過した光子がi番目の結晶対14で検出される検出確率Cijと、j番目のボクセルBxのボクセル値xとの第一積和演算処理をおこなう前方投影ステップと、
(c)検出確率Cijと、i番目の結晶対14にかかる投影データとの第二積和演算処理をおこなう後方投影ステップと、
(d)前方投影ステップおよび後方投影ステップを反復的に実行してボクセルBxごとのボクセル値xを推定する反復演算ステップと、
を含む。
そして、本方法は、投影データが所定値以下である結晶対14に対応するボクセルBxについて、第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。
【0048】
また、本方法は、(e)被測定物20を押圧して拡幅させた状態で光子の光量を測定する実測ステップをさらに含む。
【0049】
つぎに、図面を参照して本方法をより詳細に説明する。
図3は、ML−EM法による処理手順を概略的に示すフローチャートである。
図4は、二次元画像の作成処理(ステップS12)の具体的な手順を示すフローチャートである。
図5は、三次元初期画像の作成出力(ステップS13)の具体的な手順を示すフローチャートである。
図6は、画像再構成処理(ステップS14およびS15)の具体的な手順を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS10では、反復演算部32は、パラメータ格納部39から、検出確率{Cij}と係数{C}とを読み出す。
続けて、反復演算部32は、データ記憶部38から実測投影データ{y}を読み出す(ステップS11)。なお、本実施形態では、検出確率{Cij}、係数{C}および実測投影データ{y}が最初に一括して読み出されるが、これに限定されず、必要なときに読み出されてもよい。
【0051】
続けて、反復演算部32は、放射能濃度に相当するボクセル値{x}の値を初期化するため、実測投影データyに基づいて作成される二次元画像、および二次元画像に基づいて作成される三次元初期画像を作成する(ステップS13、S14)。
反復演算部32は、その後、ボクセルサイズの大きな概略モデルを用いた画像再構成処理(ステップS15)と、ボクセルサイズを微細化した精細モデルを用いた画像再構成処理(ステップS16)とを実行する。
なお、本方法では、ボクセルサイズを二段階に微細化して画像再構成処理をおこなう態様を例示的に説明するが、微細化の段階はこれに限られず三段階以上としてもよい。
また、ボクセルサイズの微細化は、本発明においては任意であり、単一の解析モデルのみを利用して画像再構成処理をおこなってもよい。
【0052】
まず、画像再構成処理(ステップS15、S16)について、その具体的な手段を、図6を参照して説明する。かかる画像再構成処理に好適に用いられる初期画像として本実施形態で作成される三次元初期画像については後述する。
【0053】
図6を参照すると、先ず、反復演算部32は、反復回数の上限を適切な値に設定する(ステップS140)。
概略モデルによる画像再構成処理(以下、「概略再構成処理」という場合がある。)で設定される反復回数k1と、精細モデルによる画像再構成処理(以下、「精細再構成処理」という場合がある。)で設定される反復回数k2とは、互いに同一でも相違してもよい。
また、反復回数k1とk2の値、およびその大小関係も任意であるが、演算処理の総所要時間を短縮して同レベルの精度の画像再構成をおこなう観点からは、k1をk2よりも大きく設定するとよい。
【0054】
図1の前方投影算出部33は、次式(2)に従い、検出確率Cijと、推定濃度に相当するボクセル値x(k)との積和演算(第一積和演算)を実行して前方投影値pを算出する(ステップS141)。
【0055】
【数3】

【0056】
推定式(1)中で演算量の多大な部分が、式(2)により与えられる前方投影データの値(前方投影値)pの計算である。
前方投影算出部33は、上式(2)の第一積和演算を、複数のスレッド(グループ)に分解して並列演算により実行してもよい。
【0057】
上記ステップS141の処理が終了した後、図1の後方投影算出部34は、次式(3)に従い、実測投影データyと前方投影値pの逆数との積qを算出するとともに、検出確率Cijと当該積qとの第2の積和演算(第二積和演算)を実行して後方投影値Dを算出する(ステップS142)。
【0058】
【数4】

【0059】
この後方投影値Dの計算も、前方投影値の算出と同様に非常に演算量の多い部分である。
【0060】
そして、濃度算出部35は、後方投影値Dを用いて、(k+1)回目の推定濃度に相当するボクセル値x(k+1)(=D×x(k))を算出する(ステップS143)。その後、反復回数k(k1、k2)が上限に達したか否かを判定し(ステップS144)、反復回数kが上限に達するまで、上記ステップS141〜S144の手順を繰り返し実行する。最終的に反復回数kが上限に達したとき(ステップS144のYES)は、図3のフローチャートに戻って、概略再構成処理(ステップS14)または精細再構成処理(ステップS15)を終了する。
【0061】
そして、濃度算出部35は、ボクセル値{x}を出力する(ステップS16)。
【0062】
表示制御部36は、濃度算出部35から出力されたボクセル値{x}から三次元画像を生成する。生成画像は、二次元断層画像または三次元画像としてディスプレイ50に表示させることができる。あるいは、濃度算出部35から出力されたボクセル値{x}は、メモリ37に記憶されてもよい。
【0063】
<三次元初期画像作成処理>
ここで、従来の統計的画像再構成法では、ボクセル値の初期値として、すべてのボクセルに対して正の値を設定し、ボクセル値x(k)の反復演算をすべてのボクセルBxに関しておこなっていた。
しかし、上述のように、(k+1)回目の推定濃度に相当するボクセル値x(k+1)は、k回目の推定濃度に相当するボクセル値x(k)に後方投影値Dを乗じて算出される。したがって、ひとたびx(k)がゼロになったボクセルでは、かりに以降の反復演算をおこなったとしてもボクセル値はゼロが繰り返される。
【0064】
このため、本方法においては、反復演算部32は、実測投影データyが所定値以下である結晶対14に対応するボクセルBxのボクセル値xをゼロに設定する。そして、ボクセル値xがゼロに設定されたボクセルBxに関しては、前方投影ステップ(ステップS141)における前方投影算出部33による第一積和演算処理(上式(2))、または後方投影ステップ(ステップS142)における後方投影算出部34による第二積和演算処理(上式(3))の少なくとも一方の実行をスキップする。
これにより、反復演算部32による演算処理の総所要時間の短縮を図っている。
【0065】
図1に示すように、本実施形態の画像処理装置3は、実測投影データyが所定値以下である結晶対14に対応するボクセルBxに対して、ボクセル値xの初期値x(0)としてゼロを与える初期値設定部60を有する。
【0066】
初期値設定部60は、二次元画像生成部61と三次元初期画像生成部62とを備えている。
図7を参照して、初期値設定部60の機能を説明する。
【0067】
初期値設定部60は、上記モデル生成ステップ(a)として、検出プレート10A,10Bに挟まれた検出領域22の内部に複数のボクセルBxが立体的に配列された解析モデル25を作成する。三次元初期画像生成部62を作成するにあたり、本方法では、ボクセルBxのセルサイズとシンチレーション検出器11のサイズとを一致させている。
なお、本方法においては、検出プレート10A,10Bに挟まれた全領域を検出領域22とし、かつ検出領域22の全体をボクセルBxで分割して解析モデル25を構成しているが、本発明はこれに限られない。検出プレート10A,10Bで挟まれた領域の一部を検出領域22としてもよく、解析モデル25を検出領域22の一部領域に対応して生成してもよい。
【0068】
図7(a)は解析モデル25および検出領域22の斜視図である。同図に示すように、本実施形態ではボクセルBxの形状を立方体とする。検出プレート10A,10BをX−Y平面内に設置し、シンチレーション検出器11A,11Bの配列方向をX軸およびY軸方向とする。すなわち、検出プレート10A,10Bは、Z軸方向に対向している。
また、本方法では、検出領域22に対してX,Y,Z軸方向にm個ずつのボクセルBxを配列するものとする。
【0069】
図7(b)は解析モデル25および被測定物20の斜視図である。同図に示すように、被測定物20は検出領域22の内部にセットされる。同図では、検出プレート10A,10Bは図示を省略している。
被測定物20としては、被験者の乳房を例示する。乳房は、ほぼ回転対称形をなすことを特徴とする部位である。具体的には、半球状または回転楕円体(半体)をなしている。
ただし、本実施形態の画像再構成システム1では、被験者のリンパ節を含む領域や、胃や肝臓などの内臓を含む領域などの人体、または他の物体を被測定物20とすることもできる。
被測定物20は、その回転軸AXをX軸またはY軸方向に一致させて、検出プレート10A,10Bにて挟持する。同図では、回転軸AXをX軸方向に一致させている。
【0070】
ここで、図2を参照して上述したように、投影データ生成部31は、被測定物20から放射される光子の光量を結晶対14ごとに積算して実測投影データyを計測する(実測ステップ(e))。かかる計測は、駆動機構41を駆動して検出プレート10A,10Bの対向間隔を調整して、被測定物20を検出プレート10A,10Bで押圧して拡幅させた状態でおこなう。
これにより、自然状態における被測定物20のZ軸方向投影図よりも広い領域において光子が検出されることとなる。一方、癌細胞23は被測定物20の内部に存在する。このため、被測定物20を押圧することにより、被測定物20における癌細胞23の周囲領域を拡大した状態で実測投影データyを測定することとなる。よって、後述する三次元初期画像26の非ゼロ領域26NZは癌細胞23を十分に内包することとなり、被測定物20のうち線源21(図2を参照)が含まれる可能性のある領域に対してボクセル値xの初期値をゼロと誤設定してしまうことがない。
【0071】
二次元画像生成部61は、実測投影データyが所定値以下である結晶対14に対応するボクセルBxの集合であるゼロ領域24ZAと、実測投影データyが所定値よりも大きい結晶対14に対応するボクセルBxの集合である非ゼロ領域24NZと、を含む、ボクセル値xの二次元画像24を作成する。
【0072】
図4を参照して、二次元画像生成部61による二次元画像の作成処理(図3におけるステップS12)を具体的に説明する。
【0073】
二次元画像生成部61は結晶対14を順番に指定する(ステップS120)。本実施形態の検出プレート10はシンチレーション検出器11をそれぞれm個ずつ備えており、結晶対14はm組存在する。
次に、二次元画像生成部61は、指定された結晶対14に関する実測投影データyをデータ記憶部38から読み出す(ステップS121)。
【0074】
二次元画像生成部61は、実測投影データyのゼロ判定をおこない(ステップS122)、ゼロの場合は(ステップS122:No)次の結晶対14に関する処理をおこなう。
実測投影データyのゼロ判定においては、所定の微小な閾値を設定し、実測投影データyが閾値以下の場合には、再構成される画像に与える影響が無視できる程度にゼロに近接する(実質的にゼロである)ものとして、実測投影データyをゼロと判定してもよい。以下、実測投影データyまたはボクセル値xの値がゼロであるとは、当該値がゼロの場合と、実質的にゼロの場合とを含むものとする。
【0075】
そして、実測投影データyが非ゼロの場合(ステップS122:Yes)、当該結晶対14を構成するシンチレーション検出器11A,11Bの間に線源21が存在することが分かる。二次元画像生成部61は、結晶対14に挟まれるボクセルBxのうち、Z軸方向の中間位置に存在するものに対して、当該実測投影データyの値を加算する(ステップS123)。
本実施形態の検出プレート10は、シンチレーション検出器11が平面的に平坦に配置されているため、結晶対14の中間位置は、検出プレート10AのZ高さと,検出プレート10BのZ高さの中間に存在する二次元平面27を描く。
これにより、当該二次元平面27を構成するボクセルBxに対して非ゼロのボクセル値xが設定される。
【0076】
二次元画像生成部61は、iがmに至るまで、上記処理を繰り返す(ステップS124)。
これにより、シンチレーション検出器11A,11Bの中間高さに配置されたボクセルBxのうち、結晶対14での検出確率の高いものに対して、大きなボクセル値xが設定される。
【0077】
そして、二次元画像生成部61は、積算されたボクセル値xを係数{C}で除するなどの適宜演算をおこない、二次元画像24の濃度値を算出する(ステップS125)。
【0078】
図7(c)は、かかる二次元作成処理により生成された二次元画像24の一例を示す斜視図である。
二次元画像24には、濃度値がゼロであるゼロ領域24ZAと、濃度値が非ゼロである非ゼロ領域24NZとが存在する。
そして、二次元画像24の非ゼロ領域24NZにおける複数のボクセル値xは、実測投影データyの値に応じて互いに相違する。すなわち、本方法では、二次元平面27上のボクセルBxに対して、ステップS123において実測投影データyの値を積算していくため、実測投影データyの大小が二次元画像24の画素濃度値として反映される。
そして、二次元画像24の非ゼロ領域24NZのうち、画素濃度値の大きい領域(高濃度領域28)は、線源21が密集した癌細胞23(図2を参照)を二次元平面27に投影した形状に相当する。
【0079】
つぎに、三次元初期画像生成部62は、二次元画像24を内包する三次元初期画像26を作成し、三次元初期画像26におけるゼロ領域26ZAに対応するボクセルを決定する。
【0080】
三次元初期画像26の形状は特に限定されるものではない。本方法では、第一の例として、二次元画像24を軸回転してなる三次元初期画像26を三次元初期画像生成部62が作成する場合を説明する。図8(a)は、本方法により作成された三次元初期画像26を示す斜視図である。
【0081】
三次元初期画像26は、二次元平面27上において非ゼロ領域24NZおよびゼロ領域24ZAにより構成された二次元画像24のボクセルBxを回転軸AXまわりに180度または360度回転させたものである。
検出領域22に立体的に存在するボクセルBxのうち、二次元平面27におけるゼロ領域24ZAを構成するボクセルの回転位置に対応するものについては、いずれもボクセル値xをゼロに設定する。
そして、二次元平面27における非ゼロ領域24NZを構成するボクセルの回転位置に対応するものについては、いずれもボクセル値xを非ゼロの値に設定する。かかる非ゼロの設定値については限定されないが、二次元画像24における画素濃度値の濃淡を三次元初期画像26に対しても反映することにより、統計的画像再構成法に基づく画像再構成演算の収束を早めることができる。
【0082】
図5を参照して、三次元初期画像生成部62による三次元初期画像の作成処理(図3におけるステップS13)を具体的に説明する。
【0083】
三次元初期画像生成部62は、X軸方向およびY軸方向ごとに、二次元画像24の各画素に関し、当該画素の座標値と画素濃度値との積算値の総和を算出する(ステップS130)。
つぎに、三次元初期画像生成部62は、上記総和を、X軸方向またはY軸方向の実測投影データyの総量によって除することにより、各軸方向における画素濃度値の重心座標(Gx,Gy)を求める(ステップS131)。
そして、三次元初期画像生成部62は、二次元画像24の回転軸AXとして、重心座標(Gx,Gy)を通り、X軸に平行な直線を設定する。具体的には、y=Gy、z=m/2の直線が回転軸AXとなる。
【0084】
三次元初期画像生成部62は、ボクセルBxを順番に指定して、当該ボクセルBxと回転軸AXとのY−Z平面内における距離を算出する(ステップS132)。
本方法では、検出領域22に対してX,Y,Z軸方向にm個ずつのボクセルBxが配列されているため、ボクセルBxは全部でm個存在することとなる。したがって、たとえばj=1からmまでの引数によってボクセルBxを順に指定する。
【0085】
そして、三次元初期画像生成部62は、当該ボクセルBxのボクセル値xとして、回転軸AXからの距離がこれと等しい二次元画像24上のボクセルBxのボクセル値xを代入して与える(ステップS133)。これにより、二次元画像24におけるゼロ領域24ZAの回転位置に存在するボクセルBxには初期値x(0)としてゼロが与えられる。そして、二次元画像24における非ゼロ領域24NZの回転位置に存在するボクセルBxには初期値x(0)として非ゼロの値が与えられる。
かかる処理により、二次元画像24における画素濃度値が回転軸AXまわりに与えられて三次元初期画像26が作成される。
なお、解析モデル25内の任意のボクセルBxに関して、回転軸AXからの距離が等しい二次元平面27上のボクセルBxは、回転軸AXから±Y軸方向に2つ存在する場合がある。かかる場合、当該ボクセルBxに対して、二次元平面27上のどちらのボクセルBxのボクセル値xを与えてもよい。
【0086】
ここで、二次元画像24を回転軸AXまわりに回転してなる回転立体は円柱形状となるため、立方体状の解析モデル25のうちY軸およびZ軸成分の絶対値の大きいボクセルBxは当該円柱形状よりも外側に位置することとなる。かかるボクセルBxに関しても、被測定物20の外部領域にあたるとして、本方法では初期値x(0)にゼロを与える。
【0087】
三次元初期画像生成部62は、ボクセル値xの初期値x(0)の設定を、すべてのボクセルBxに対しておこなう(ステップS134)。
【0088】
そして、図3のステップS14に戻り、反復演算部32は、三次元初期画像26におけるゼロ領域26ZAに対応するボクセルについて、前方投影ステップ(ステップS141:図6を参照)または後方投影ステップ(ステップS142)における第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。
【0089】
本方法においては、三次元初期画像26のゼロ領域26ZAと非ゼロ領域26NZとの境界を、被測定物20の外表面と一致させる、または被測定物20の外表面の僅かに外側に設定することが好ましい。これにより、被測定物20の外表面を含むボクセルに関しては積和演算処理の反復演算を行い、被測定物20の外部領域に関する積和演算処理をスキップすることで、画像再構成の品質と演算時間をバランスして改善することができる。
ここで、被測定物20が軸対称形状の場合、三次元初期画像26の各ボクセルBxの初期値x(0)として、被測定物20を内包する最小の領域に対して非ゼロの値を設定することにより、積和演算処理のスキップ回数が最大化されるため好適である。
【0090】
これに対し、被測定物20の形状が軸対称形状ではない場合、または被測定物20の形状が不特定である場合については、三次元初期画像生成部62は、二次元画像24を二次元平面27に直交する方向(Z方向)に掃引してなる三次元初期画像26を作成するとよい。これにより、被測定物20を含むボクセルBxの初期値x(0)として、誤ってゼロを設定してしまうことがない。
図8(b)は、三次元初期画像26の第二の例を示す斜視図である。本例では、矢印にて示すように、二次元平面27の非ゼロ領域24NZをZ軸方向に引き出して、柱状の三次元初期画像26を作成している。これにより、一般的形状の被測定物20を内包する立体形状が特定され、かかる立体形状を一部または全部に有するボクセルBxを非ゼロ領域26NZに設定することができる。
【0091】
また、本方法においては、三次元初期画像生成処理(ステップS13)で作成される三次元初期画像26として、図8(a)に示す軸対称形状と、同図(b)に示す柱状とを選択可能としてもよい。
すなわち、本実施形態の三次元初期画像生成部62は、作成する三次元初期画像26のタイプを指定する入力情報を受け付ける指定入力部(入力操作部51)と、入力操作部51が受け付けた入力情報に基づいて、二次元画像24を軸回転してなる三次元初期画像26、または二次元画像24を当該二次元平面に直交する方向に掃引してなる三次元初期画像26、のいずれかを作成してもよい。
これにより、被測定物20が軸対称形状に近似できるときは三次元初期画像26を軸対称形状とし、被測定物20がその他の形状である場合には三次元初期画像26を柱状とすることができる。
【0092】
本方法の二次元画像作成処理(ステップS12)の場合、二次元画像24を構成するボクセル値xがゼロ領域24ZAに設定されるのは、当該ボクセルBxを間に挟んで対向する結晶対14のすべてについて実測投影データyの計測値がゼロの場合である。すなわち、図2に示すように、シンチレーション検出器11A1と11Bとの間には線源21が存在するため、当該結晶対14に関する実測投影データyは非ゼロとなり、当該結晶対14の中間位置に存在するボクセルBxは二次元画像24において非ゼロ領域24NZに属することとなる。
【0093】
一方、図2に示すシンチレーション検出器11A2と11Bとの間には線源21が存在しないため、当該結晶対14に関する実測投影データyはゼロとなり、当該結晶対14の中間位置に存在するボクセルBxは二次元画像24においてゼロ領域24ZAに属することとなる。
そして、本方法の場合、二次元画像24を構成する任意のボクセルBxの初期値x(0)にゼロが設定されるのは、当該ボクセルBxを挟むすべての結晶対14にかかる実測投影データyがゼロの場合である。
すなわち、ボクセルBxに対応する複数の異なる結晶対14にかかる実測投影データyが、いずれも所定の閾値以下である場合に、ボクセルBxについて第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行がスキップされる。
【0094】
したがって、任意のボクセルBxを挟む結晶対14の一つにおいて、確率的な揺らぎによって光子がたまたま検出されなかったとしても、当該ボクセルBxを挟む他の結晶対14のいずれかにおいて所定の閾値以上の光量が検出された場合は、当該ボクセルBxの初期値x(0)には非ゼロの値が設定される。このため、前方投影ステップ(ステップS141)や後方投影ステップ(ステップS142)をおこなうべきボクセルBxに関する演算処理が誤ってスキップされることはない。
【0095】
<画像再構成処理>
初期値x(0)が設定されたボクセルBxは、検出確率Cij、係数Cおよび実測投影データyを用いた統計的画像再構成法により、ボクセル値xが推定される。
初期値x(0)としてゼロが与えられたボクセルBxでは、上式(2)で算出される前方投影値pは常にゼロとなる。
さらに、初期値x(0)としてゼロが与えられたボクセルBxは、対応する実測投影データyがゼロであったことに起因するため、上式(3)で算出される後方投影値Dもゼロとなる。
したがって、第一積和演算にかかるステップS141の冒頭において、前方投影算出部33はボクセルBxのゼロ判定をおこなう。そして、ボクセルBxがゼロである場合には、図6における第一積和演算(ステップS141)および第二積和演算(ステップS142)をともにスキップする。
【0096】
ここで、高解像度の三次元画像を再構成するためには、ボクセルサイズを微細化することが求められる。
本方法では、画像再構成処理(ステップS14およびS15)において、反復演算部32は、ボクセルBxのサイズを複数段階に微細化して演算処理を反復的に実行する。
そして、微細化前に三次元初期画像26におけるゼロ領域26ZAに対応していたボクセルBxに内包される微細化後のボクセルBxについて、反復演算部32は、第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする。
【0097】
すなわち、本方法では、概略再構成処理(ステップS14)の反復演算と、精細再構成処理(ステップS15)の反復演算とを、異なる解析モデル25を用いて行う。
図9(a)は、概略再構成処理に用いる解析モデル25(概略モデル251)のボクセル配置を示す斜視図である。そして、同図(b)は、精細再構成処理に用いる解析モデル25(精細モデル252)のボクセル配置を示す斜視図である。
精細モデル252におけるボクセルBx(ボクセルBx2)は、概略モデル251におけるボクセルBx(ボクセルBx1)の辺長を各軸方向に二分の一としたものである。
したがって、精細モデル252は、概略モデル251に対して八倍のボクセル数で構成され、各軸方向に関して二倍の解像度にて被測定物20の内部構造の三次元画像を再構成することができる。
精細モデル252を構成するボクセルBx2は、各軸方向に隣接する他のボクセルとあわせた合計8個が、概略モデル251のボクセルBx1の個々に対応する。すなわち、ボクセルBx1とボクセルBx2とは、1:N(Nは2以上の整数)で対応する。
【0098】
また、精細モデル252においては、検出領域22の内部が各軸方向に2m個のボクセルで分割されることになる。そして、個々のシンチレーション検出器11に対して4個のボクセルが対応する。
【0099】
本方法では、概略モデル251により高速で第一および第二積和演算を実行して得られたボクセルBx1のボクセル値xを、精細モデル252による第一および第二積和演算の初期値としてボクセルBx2に与える。
したがって、概略再構成処理の初期値x(0)としてゼロが与えられたボクセルBx1に包含されるボクセルBx2に関しては、精細再構成処理の初期値として引き続きゼロが与えられる。
これにより、実測投影データyがゼロである結晶対14に対応する三次元初期画像26のゼロ領域26ZAに含まれるボクセルBx2に対しては、精細再構成処理における第一および第二積和演算がスキップされるため、精細再構成処理の総所要時間を抑制することができる。
【0100】
なお、精細モデル252においては、一つのシンチレーション検出器11に対して、4個のボクセルが対応する。ここで、上式(3)に示す実測投影データyに関しては、投影データ生成部31により生成されて概略再構成処理に供された投影値をそのまま用いてもよく、またはボクセルBx2に対応して投影値を内挿補間した補間データを用いてもよい。
また、検出確率Cijおよび係数Cに関しては、精細モデル252のボクセルBx2に対応して予め算出された値を用いる。
【0101】
なお、本方法においては、概略モデル251のボクセルBx1と精細モデル252のボクセルBx2とが1:Nで対応する場合を例示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、概略モデル251のボクセルBx1と精細モデル252のボクセルBx2とをM:N(MはNよりも小さな2以上の整数)で対応させてもよい。
この場合、概略再構成処理で求められたボクセルBx1ごとのボクセル値xを、ボクセルBx1およびボクセルBx2の位置関係に基づいて適宜内挿補間して、ボクセルBx2の初期値を求めるとよい。
【0102】
ところで、図1の画像処理装置3の機能ブロック31〜36の全部または一部は、半導体集積回路などのハードウェアで実現されてもよいし、あるいは、不揮発性メモリや光ディスクなどの記録媒体に記録されたプログラムまたはプログラムコードで実現されてもよい。このようなプログラムまたはプログラムコードは、機能ブロック31〜36の全部または一部の処理を、CPUなどのプロセッサを有するコンピュータに実行させるものである。
【0103】
また、データ記憶部38やパラメータ格納部39は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリなどの記録媒体(たとえば、半導体メモリや磁気記録媒体)と、この記録媒体に対してデータの書込と読出を行うための回路やプログラムとで構成することができる。データ記憶部38やパラメータ格納部39は、予め記録媒体の所定の記憶領域上に構成されていてもよいし、あるいは、画像処理装置3の動作時に割り当てられた適当な記憶領域上に構成されてもよい。
【0104】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0105】
たとえば、上記実施形態では、画像再構成処理の初期値x(0)を設定するために三次元初期画像26を作成しているが、これに限られない。たとえば、画像処理装置3が、実測投影データyが閾値以下である結晶対14に挟まれるボクセルBxの番号iをすべて記憶しておき、当該ボクセルBxに関する第一または第二積和演算処理をスキップしてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、ボクセル値xの初期値x(0)としてゼロを設定する態様を例示したが、これに限られない。所定のボクセルBxに対して、予め定めた特定のフラグ値を初期値x(0)として与え、前方投影算出部33または後方投影算出部34にてボクセル値xとフラグ値との一致判定をおこなってもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、一対の検出プレート10A,10Bを使用し、これら検出プレート10A,10Bの検出面は平面であったが、これらに限定されるものではない。図1に示す検出部2に代えて、連続的に分布する単一の検出面12あるいは3個以上の検出面12を有する検出装置を使用してもよい。また、検出面12の形状は平面に限定されるものではなく曲面であってもよい。
【0108】
上記実施形態では、画像処理装置3は対向型PET装置に適用されたが、これに限定されるものではない。画像処理装置3は、X線CT装置などの他の検出装置にも適用することが可能である。
X線CT装置の場合、検出部2は必ずしも対向する一対の検出プレート10を備えてはいない。この場合、光源より照射されて被測定物20を透過するX線の光量を、複数の位置にて検出プレート10で測定する。そして、被測定物20に対する既知の入射強度と、検出プレート10における検出強度が実質的に等しい検出器要素を検出することにより、当該検出プレート10の位置と光源との間に被測定物20が存在しないことが知得される。そして、かかる不存在領域に配置されたボクセルBxの初期値x(0)をゼロに設定することにより、X線CT装置に関しても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
また、上記実施形態では、統計的画像再構成法としてML−EM法が使用されているが、検出確率を用いて前方投影データまたは後方投影データが使用される統計的画像再構成法であればよく、ML−EM法に限定されるものではない。たとえば、OS−EM法やMAP−EM(Maximum A Posteriori - Expectation Maximization)法などのML−EM法の改良版を使用することが可能である。
【0110】
さらに、画像再構成処理に用いる実測投影データyは、上記実施形態のように検出部2で計測して取得してもよく、または記憶媒体から画像処理装置3のデータ記憶部38に取り込んで記憶してもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 画像再構成システム
2 検出部
3 画像処理装置
10 検出プレート
11 シンチレーション検出器
12 検出面
14 結晶対
20 被測定物
21 線源
22 検出領域
23 癌細胞
24 二次元画像
24NZ 非ゼロ領域
24ZA ゼロ領域
25 解析モデル
251 概略モデル
252 精細モデル
26 三次元初期画像
26NZ 非ゼロ領域
26ZA ゼロ領域
27 二次元平面
28 高濃度領域
31 投影データ生成部
32 反復演算部
33 前方投影算出部
34 後方投影算出部
35 濃度算出部
36 表示制御部
37 メモリ
38 データ記憶部
39 パラメータ格納部
40 制御部
41 駆動機構
50 ディスプレイ
51 入力操作部
60 初期値設定部
61 二次元画像生成部
62 三次元初期画像生成部
AX 回転軸
Bx ボクセル
x ボクセル値
y 実測投影データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物から複数の検出器要素の各々に飛来した光子の光量を示す投影データと、前記被測定物が配置された検出領域の内部に複数のボクセルが立体的に配列された解析モデルと、に基づいて、統計的画像再構成法を用いて前記投影データより前記ボクセルごとのボクセル値を推定する演算処理を反復的に実行して前記被測定物の内部構造の三次元画像を再構成する反復演算部と、
j番目のボクセルを通過した前記光子がi番目の検出器要素で検出される検出確率Cijを示すデータを格納しているパラメータ格納部と、
を備える画像処理装置であって、
前記反復演算部が、
(A)前記パラメータ格納部から読み出された検出確率Cijと、前記j番目のボクセルのボクセル値との第一積和演算処理と、
前記検出確率Cijと、前記i番目の検出器要素にかかる前記投影データとの第二積和演算処理と、
を含む前記演算処理を行うとともに、
(B)前記投影データが所定値以下である前記検出器要素に対応する前記ボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記反復演算部が、前記投影データが前記所定値以下である検出器要素に対応する前記ボクセルのボクセル値をゼロに設定する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記投影データが前記所定値以下である検出器要素に対応する前記ボクセルに対して、前記ボクセル値の初期値としてゼロを与える初期値設定部を有する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
ボクセルに対応する複数の異なる検出器要素にかかる前記投影データが、いずれも前記所定値以下である場合に、当該ボクセルについて前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記投影データが前記所定値以下である前記検出器要素に対応するボクセルの集合であるゼロ領域と、前記投影データが前記所定値よりも大きい前記検出器要素に対応するボクセルの集合である非ゼロ領域と、を含む、ボクセル値の二次元画像を生成する二次元画像生成部と、
前記二次元画像を内包する三次元初期画像を生成し、前記三次元初期画像における前記ゼロ領域に対応するボクセルを決定する三次元初期画像生成部と、
をさらに備え、
前記反復演算部が、前記三次元初期画像における前記ゼロ領域に対応するボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップする請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記三次元初期画像生成部が、前記二次元画像を軸回転してなる前記三次元初期画像を生成する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記三次元初期画像生成部が、前記二次元画像を当該二次元平面に直交する方向に掃引してなる前記三次元初期画像を生成する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記三次元初期画像生成部が、
生成する前記三次元初期画像のタイプを指定する入力情報を受け付ける指定入力部と、
前記指定入力部が受け付けた前記入力情報に基づいて、前記二次元画像を軸回転してなる前記三次元初期画像、または前記二次元画像を当該二次元平面に直交する方向に掃引してなる前記三次元初期画像、のいずれかを生成することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記二次元画像の前記非ゼロ領域における複数のボクセル値が、前記投影データの値に応じて互いに相違することを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記ボクセルのサイズを複数段階に微細化して前記演算処理を反復的に実行する請求項5から9のいずれかに記載の画像処理装置であって、
微細化前に前記三次元初期画像における前記ゼロ領域に対応していたボクセルに内包される微細化後のボクセルについて、前記反復演算部が、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
対向して配置されたシンチレーション検出器の対を前記検出器要素として含む請求項1から10のいずれかに記載の画像処理装置を備えるとともに、
前記シンチレーション検出器が、前記被測定物から所定方向の両側に放射された光子対を検出することを特徴とする画像再構成システム。
【請求項12】
複数のシンチレーション検出器がそれぞれ配列された一対の対向する検出面を備えるとともに、前記検出面同士の対向間隔が可変であることを特徴とする請求項11に記載の画像再構成システム。
【請求項13】
被測定物から複数の検出器要素の各々に飛来した光子の光量を示す投影データに基づいて、統計的画像再構成法を用いて前記被測定物の内部構造の三次元画像を再構成する画像処理方法であって、
(a)前記被測定物が配置された検出領域の内部に複数のボクセルを立体的に配列して解析モデルを生成するモデル生成ステップと、
(b)j番目のボクセルを通過した前記光子がi番目の検出器要素で検出される検出確率Cijと、前記j番目のボクセルのボクセル値との第一積和演算処理をおこなう前方投影ステップと、
(c)前記検出確率Cijと、前記i番目の検出器要素にかかる前記投影データとの第二積和演算処理をおこなう後方投影ステップと、
(d)前記前方投影ステップおよび後方投影ステップを反復的に実行して前記ボクセルごとのボクセル値を推定する反復演算ステップと、
を含むとともに、
前記投影データが所定値以下である前記検出器要素に対応する前記ボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップすることを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
前記被測定物を押圧して拡幅させた状態で前記光子の光量を測定する実測ステップをさらに含む請求項13に記載の画像処理方法。
【請求項15】
被測定物から複数の検出器要素の各々に飛来した光子の光量を示す投影データに基づいて、統計的画像再構成法を用いて前記被測定物の内部構造の三次元画像を再構成する画像再構成処理を情報処理装置に実行させるプログラムであって、
前記画像再構成処理が、
(a)前記被測定物が配置された検出領域の内部に複数のボクセルを立体的に配列して解析モデルを生成するモデル生成処理と、
(b)j番目のボクセルを通過した前記光子がi番目の検出器要素で検出される検出確率Cijと、前記j番目のボクセルのボクセル値との第一積和演算処理をおこなう前方投影処理と、
(c)前記検出確率Cijと、前記i番目の検出器要素にかかる前記投影データとの第二積和演算処理をおこなう後方投影処理と、
(d)前記前方投影処理および後方投影処理を反復的に実行して前記ボクセルごとのボクセル値を推定する反復演算処理と、
を含むとともに、
前記投影データが所定値以下である前記検出器要素に対応する前記ボクセルについて、前記第一または第二積和演算処理の少なくとも一方の実行をスキップすることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−204755(P2010−204755A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47179(P2009−47179)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(509023137)医療法人みやぎクリニック (4)
【Fターム(参考)】