画像処理装置、画像処理システム、画像処理方法、及び画像処理をコンピュータに実行させるためのプログラム
【課題】眼部を撮影した光干渉断層画像において、異なる複数の構造が現れる場合であっても、層境界の種類を特定する際の誤りを減らす。
【解決手段】特徴取得部106は各位置のSobel画像のプロファイルから層境界の位置を示す特徴領域を取得する。テンプレート選択部107は、プロファイルから取得された特徴領域の数に応じてそのプロファイルに対応するテンプレート情報を選択する。層境界特定部108は、テンプレートを各プロファイルに適用して断層画像から層構造を特定する。
【解決手段】特徴取得部106は各位置のSobel画像のプロファイルから層境界の位置を示す特徴領域を取得する。テンプレート選択部107は、プロファイルから取得された特徴領域の数に応じてそのプロファイルに対応するテンプレート情報を選択する。層境界特定部108は、テンプレートを各プロファイルに適用して断層画像から層構造を特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断層画像における層構造を特定する画像処理装置、画像処理システム、画像処理方法、及び画像処理をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病や失明原因の上位を占める疾病の早期診断を目的として、眼部の検査が広く行われている。光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)などの断層像撮像装置は、網膜層内部の状態を三次元的に観察することが可能であるため疾病の診断等に有用である。
【0003】
例えば眼底の網膜は複数の層からなる層構造を有しており、各層の厚み等の層構造に関する情報は疾病の進行度を測る客観的な指標として利用されている。このような指標を利用するため、網膜の断層画像を解析して層境界の種類を特定する技術が重要である。特許文献1に記載の技術は、断層像に階調変換などの前処理を施した後、深さ方向のエッジを検出し、エッジの位置を層境界の位置として特定する。そして、信号強度が弱い血管下の領域に対して、既に特定されている網膜層境界から滑らかに繋がるように補間することで、網膜層境界の位置を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−73099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている層境界の補間処理では、補間対象の層が存在すると考えられる血管下の領域における信号成分を考慮しておらず、補間された層境界の位置の信頼性が低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、撮影対象の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定手段と、前記第一の特定手段により位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて前記第一の特定手段により位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
かかる構成を有する本発明によれば、第一の特定手段により特定されなかった層境界の探索範囲の輝度変化に基づいて特定することができるため、層境界の位置の信頼性を上げることができる。また、深さ方向の位置に基づいて探索範囲を定めるため、特定される層境界の位置の信頼性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】画像処理システム100の構成を示す図である。
【図2】断層画像取得装置102の構成を示す図である。
【図3】断層画像取得装置102が取得する断層画像の例を示す図である。
【図4】画像処理装置101による処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】画像変換部104が作成する変換画像の例を示す図である。
【図6】輝度情報生成部105が生成するプロファイルの例を示す図である。
【図7】テンプレート選択部107及び層境界特定部108が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】テンプレート選択部107による処理の概要を示す図である。
【図9】層境界特定部108による処理の概要を示す図である。
【図10】層境界特定部108による処理の概要を示す図である。
【図11】層境界補間部109による処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】層境界補間部109による処理の概要を示す図である。
【図13】第二の実施例における画像処理装置101による処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】テンプレート選択部107および層境界特定部108が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】テンプレート選択部107による処理の概要を示す図である。
【図16】判定部の処理の概要を示す図である。
【図17】判定部の処理の概要を示す図である。
【図18】第三の実施例における画像処理装置101による処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】テンプレート選択部107によるパターンマッチング処理の概要を示す図である。
【図20】テンプレート選択部107によるパターンマッチング処理の概要を示す図である。
【図21】第四の実施例における層境界補間部109による処理の流れを示すフローチャートである。
【図22】層境界補間部109による設定される探索範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例に係る画像処理システム100では、画像処理装置101が、断層画像取得装置102から受け取った網膜の断層画像から、層構造の位置及び種類を特定する。その際に、断層画像において異なる構造である各部位に対して、層境界を特定するための異なるテンプレート情報を用いる。
【0011】
また、テンプレートを用いて特定された層境界の位置から、テンプレートにより特定されなかった層境界を補間する。その際には、特定された層境界の位置から未だ特定されていない層境界が存在すると考えられる範囲を設定し、その範囲内における輝度値の変化に基づいて層境界を特定する。以下、画像処理システム100の構成および処理を説明する。
【0012】
図1に基づいて画像処理システム100の構成を説明する。画像処理装置101は例えば電子計算機であり、画像取得部103、画像変換部104、輝度情報生成部105、検出部106、構造判定部1071、表示制御部110、記憶部111を備える。これらの各部は回路により実装されていても、画像処理装置101のハードウェアとソフトウェアの協働によりこれら各部の機能ブロックが実現されていてもよい。ソフトウェアを利用する場合には、画像処理装置101の不図示のCPUが、同じく不図示のROM内に保持された図4、図7及び図11に記載の機能を実現するためのプログラムを格納され、これを不図示のRAMに展開し逐次実行する。これにより、電子計算機のハードウェアとソフトウェアが協働して本発明が実現されることとなる。
【0013】
断層画像取得装置102は例えば光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)の原理を利用した光干渉断層撮像装置である。この装置の詳細は後述する。
【0014】
画像処理装置101の画像取得部103は断層画像取得装置102から断層画像を取得する。この断層画像は、網膜の表面における所定の二次元領域を走査して得られた網膜の三次元領域の断層画像であり、網膜内部の層構造を画像化したものである。この画像は、複数の二次元の断層画像(Bスキャン画像)として取得しても、網膜の表面において信号光が照射された複数の位置の一次元画像(Aスキャン画像)として取得しても、Aスキャン画像から生成される三次元ボリュームデータとして取得してもよい。
【0015】
画像変換部104は、取得した断層画像のエッジを強調するSobelフィルタを適用したSobel画像と、平滑化画像を生成するメディアンフィルタを適用したメディアン画像とを、変換画像として得る。
【0016】
輝度情報生成部105は、Sobel画像及びメディアン画像から水平方向の所定位置における深さ方向の位置と輝度値の関係を示す情報を生成する。この情報として、所定の水平方向の位置における深さ方向のプロファイルを生成する。プロファイルは、深さ方向の位置と値の関係を示す情報であり、水平方向に1画素の幅を持つ。このプロファイルは、深さ方向に並ぶ画素列を元データとして生成される。Sobel画像は画像のエッジを強調する画像であるため、Sobel画像における輝度値は原画像における輝度変化の値を示す。
【0017】
なお、一つのプロファイルの生成する際の所定位置として、上記のように一次元の画像領域を用いなくても、水平方向の数画素の幅を持ち、深さ方向に画素が並んだ二次元の画像領域をこの所定位置として用いてもよい。あるいは三次元の画像領域を所定位置として用いてもよい。このプロファイルが作成された水平方向の位置における深さ方向に存在する層境界が特定される。ここで水平方向とは、信号光を照射する方向(Aスキャン方向)と垂直な方向であり、好ましくは画像における水平方向と一致する。黄斑や視神経乳頭部を除いたほとんどの正常眼では、層の広がる方向または層に沿う方向が水平方向である。また深さ方向とは信号光を照射する方向(Aスキャン方向)であり、好ましくは画像における垂直方向と一致する。網膜層は深さ方向に各層が積層された構造を有しているため、黄斑や視神経乳頭部を除いたほとんどの正常眼では、層が積層され重なる方向が深さ方向である。輝度情報生成部105が生成するプロファイルの水平方向の位置は、所定の間隔、例えば5画素間隔とする。このプロファイルが作成される位置以外では本発明による層境界の特定が行われないが、プロファイルに基づき特定された層境界の位置に基づいて周知の方法により補間すればよい。
【0018】
検出部106は各位置のSobel画像のプロファイルから深さ方向に積層された各層の層境界の位置を示す特徴点を取得する。本実施例においては、特徴点はプロファイルにより示される深さ方向へのエッジのうち所定の閾値よりも大きいものとする。なお、ここでエッジとは、画像における輝度値の勾配を指す。所定の閾値は実験的に定められる値であり、本発明における本発明に第一の閾値に相当する。なおここで層境界とは、断層画像において所定の厚さを有する層と層の界面を指すこととする。画像の解像度によっては、1画素よりも小さい厚みを有する層は境界として検出されることもあるが、これについても境界として扱う。第一の閾値は、プロファイルから算出される統計量などに基づいてプロファイル毎に変更して定めてもよい。
【0019】
構造判定部1071は、検出部106により検出された層境界の数に応じて層構造を判定する。ここでいう層構造とは、層または層境界の数、位置及び種類、血管や白斑による偽像の有無並びに視神経乳頭部や黄斑部や黄斑部及び視神経乳頭部以外の領域であるか否かを指す。本実施例においては、構造判定部1071は層境界の位置及び種類を決定する決定手段に相当する。構造判定部1071は、テンプレート選択部107、層境界特定部108、層境界補間部109を有している。
【0020】
テンプレート選択部107は、プロファイルから取得された特徴点の数に応じてプロファイルに対してテンプレート情報を割り当てる。このテンプレート情報は、層境界の種類及び位置、層境界間つまり層領域の輝度値の大小関係を示す情報である。記憶部111には、このテンプレートが網膜層の構造や血管の有無などの状況に対応させて複数保持されており、このテンプレート情報によりプロファイルから層境界の位置及び種類を特定する。テンプレート情報には特徴点の数の情報が対応付けられて格納されており、これにより特徴点に応じてテンプレートを決定することができる。テンプレートは、予め層境界の位置及び種類が特定された同一部位の複数の断層画像から平均値や中央値を取ることにより作成される参照用のプロファイルから、層境界の位置及び種類の情報と、層境界間の輝度値の大小関係の情報とを抽出して作成される。各層の輝度値の情報を有していてもよい。
【0021】
例えば、黄斑部や視神経乳頭部における網膜層の構造はこれら以外の網膜層の構造と異なっており、これら部位に対応したテンプレートが用意されている。また、網膜層の所定の位置に血管がある場合には、信号光が血管により吸収され血管下の領域の信号強度が著しく弱くなるため、血管がない場合と比べてプロファイルが異なる。そのような状況に対応させて、例えば同じ黄斑部であっても血管の有無により異なるテンプレートが用意されている。その他、病変の有無等、想定し得るあらゆるプロファイルの変化に対応させてプロファイルを用意する。テンプレート情報の作成は、複数の被検眼の断層画像から実験的に行われるものである。なお、処理時間を考慮して、そのうち一部のプロファイルのみを選択可能としておいてもよい。テンプレートの具体例については後述する。
【0022】
層境界特定部108は、テンプレートを各プロファイルに適用して断層画像から層構造を特定する特定手段または第一の特定手段を構成する。ここでいう層構造の特定とは、層構造の位置またはその種類を特定することを指す。特定された層境界の情報はプロファイルまたは断層画像と関連付けられて記憶部111またはデータサーバ113に保持される。この特定処理の詳細については後述する。
【0023】
層境界補間部109は、テンプレートの適用により特定されなかった層境界の位置を特定することにより補間する特定手段または第二の特定手段を構成する。ここで補間された層境界位置情報は、層境界補間部109により補間された旨の情報を関連付けられ、更にプロファイルまたは断層画像と関連付けられて記憶部111またはデータサーバ113に保持される。この補間処理の詳細については後述する。
【0024】
表示制御部110は、断層画像と層境界の種類及び位置の情報とを表示部112に表示させる制御を行う。この制御は、表示部112に対して、断層画像を表示させるとともに、断層画像上に層境界の位置が層の種類毎に色分けして表示させる制御を行う。また、テンプレートにより特定された層境界の位置と補間処理により特定された層境界の位置を異なる表示形態で表示することとしてもよい。
【0025】
記憶部111は、画像処理装置101の各部が必要とする情報や、各部により出力された情報を記憶する。例えば、検出部106に利用される第一の閾値またはその算出方法、テンプレート選択部107等が利用するテンプレート情報や、層境界補間部109が利用する探索範囲の設定値や、第二の閾値などが保持される。
【0026】
表示部112は、例えば液晶ディスプレイであり、画像処理装置101により出力される断層画像や層境界の位置及び種類を表示する。データサーバ113は、断層画像取得装置102により取得された断層画像を書誌情報とともに記憶する記憶部である。
【0027】
図2に従い断層画像取得装置102の構成の詳細を説明する。断層画像取得装置102は、いわゆるフーリエドメイン型の光干渉断層撮像装置である。断層画像取得装置102は不図示の操作者による操作に応じて、不図示の被検眼の撮影を行い、得られた画像を画像処理装置101やデータサーバ113へと送信する。
【0028】
光源114は光を射出し、ビームスプリッタ115はその光を測定光124と参照光125とに分割する。測定光124は、観察対象である眼118を経由した戻り光126となって戻される。ここで戻り光126は、眼118における測定光の反射光及び散乱光を含む概念である。
【0029】
ビームスプリッタ115はまた、戻り光126と参照光125を合波し干渉光127を生成する干渉光生成手段として機能する。回折格子120はこの干渉光を分光し、レンズ121により一次元センサ122上に結像される。一次元センサ122の各画素回路は受光した光量に応じた電気信号を出力する。画像形成部123は一次元センサ内の位置つまり干渉光の波数でフーリエ変換し、眼118の断層画像を得る。
【0030】
次に、光源114の周辺について説明する。光源114は代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。波長は830nm、バンド幅50nmである。このバンド幅は、得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメーターである。また、光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が射出できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。また、波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。さらに波長は、得られる断層像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましく、ここでは830nmとする。観察対象の測定部位によっては他の波長を選んでもよい。
【0031】
参照光125の光路について説明する。ビームスプリッタ115によって分割された参照光125は、参照物体であるミラー119により反射され、ビームスプリッタ115に戻る。この光路長は測定光124と同じ長さにすることにより、参照光と測定光を干渉させることができる。
【0032】
次に、測定光124の光路について説明する。ビームスプリッタ115によって分割された測定光124は、XYスキャナ116のミラーに入射する。XYスキャナ116は入射した測定光124を眼118へと向けるとともに、その方向を逐次変更することで眼118の網膜上を光軸に垂直な方向に二次元的にラスタースキャンする走査光学系として機能する。XYスキャナ116は簡単のため一つのミラーとして記したが、実際にはXスキャン用ミラーとYスキャン用ミラーとの2枚のミラーが近接して配置されている。また、測定光124の中心はXYスキャナ116のミラーの回転中心と一致するように調整されている。レンズ117は網膜上に測定光124を集光する。これらの光学系により、測定光124は眼118に入射すると、眼118の網膜からの反射や散乱により戻り光126となる。なお、網膜のある点に測定光を入射させて一次元の画像を生成することをAスキャンと呼び、この一次元の画像をAスキャン画像という。また、このAスキャンを網膜表面における所定の線上に沿って所定の間隔で行い二次元の画像を生成する操作をBスキャンと呼び、この二次元画像をBスキャン画像と呼ぶ。Bスキャンにより、測定光の入射位置が所定の間隔で順次変更される各位置の複数のAスキャン画像が得られ、この複数のAスキャン画像に補間処理等を施して二次元のBスキャン画像が得られることとなる。
【0033】
また、通常OCT装置では撮像位置をモニタするために、不図示の走査型レーザー検眼鏡または、眼底像を二次元で撮像する光学系を持っている。
【0034】
次に分光系について説明する。前記の様に干渉光127は回折格子120により分光されるが、この分光は光源の中心波長、バンド幅と同じ波長条件で分光を行う。また、干渉光を測定する一次元センサは一般的にCCD型やCMOS型があるが、どちらを用いてもよい。
【0035】
以上のような断層画像取得装置102としての光干渉断層撮像装置にて撮像された断層画像を画像処理装置101が解析する。なお、断層画像取得装置102は必ずしも光干渉断層撮像装置自体でなくてもよく、光干渉断層撮像装置により撮影されデータサーバ113から断層画像を取得する装置であってもよい。
【0036】
次に図3に基づいて、上述の断層画像取得装置102により取得され画像処理装置101により層構造が特定される網膜の断層画像の例を説明する。
【0037】
次に、本実施例に係る層構造を同定する処理の適用対象である網膜層の構造について図3を用いて説明する。図3(a)は網膜の黄斑部の断層像を模式図として示したものであり実線で層境界の位置が示されている。黄斑部の二次元断層像(B−Scan画像、以下、断層像と呼ぶ)T1〜Tnの夫々はA−Scanを網膜表面の1ラインで行い二次元画像として構成したものである。A−Scanは連続して行うわけではなく、1ライン上にて所定の間隔で行われるため、隣り合うA−Scanの間は所定の補間方法により補間して二次元画像が構成される。
【0038】
断層像Tnにおいて、内境界膜(ILM:Inner Limiting Membrane)の界面L1、神経線維層(NFL:Nerve Fiber Layer)とその下部層との境界L2、神経線維層L2’が示されている。また内網状層とその下部の層との境界L3、外網状層をその下部の層との境界L4が示される。また、視細胞内節外節接合部(IS/OS:Interface between inner and outer segments of the photoreceptors)の境界L5、網膜色素上皮(RPE)の下側の境界L6が示されている。このように、網膜は深さ方向に複数の層が積層された層構造を有している。
【0039】
なお、OCT撮像装置の性能によっては、IS/OSとRPEの境界が区別不可となる場合があるが、本発明においてはその精度は問題にしないこととする。また、内境界膜(ILM)や視細胞内節/外節接合部(IS/OS)は実際には所定の厚みを持つ層であるが、ごく薄い層であるため画像上では線で表示されている。そのため、画像の解像度がある程度低い状態では、例えば内境界膜の界面と内境界膜自体が画像上区別不可能となる。そのため、内境界膜の界面を特定することは内境界膜自体を特定することと実質的に同義となる。また、層境界と界面とは実質的に同義として用いる。
【0040】
一般に網膜はこのように複数の層が積層された層構造を有しているが、部位や病変によってはこれと異なる構造を取り得る。図3(b)も同じく網膜の黄斑部の断層画像である。ここでは、血管V1が存在しており、血管内の赤血球により信号光が減衰するため、血管V1のある水平方向の領域S2において、血管下の領域が画像化されず、偽像が発生してしまう。そのため、血管の存在しない領域S1と比較して、断層画像により特定される見かけ上の構造が異なっている。なお血管に限らず、白斑によっても白斑下の領域に偽像が発生することがある。
【0041】
これら病変等の異常や構造の変化が大きいのは現れるのは内境界膜L1から網膜色素上皮の境界L6までの間の層であるため、これらの層を特定した後、その内部の層を特定することとなる。
【0042】
図4に示したフローチャートに従い上述の構成を有する画像処理装置101の処理の流れを説明する。本実施例における処理では、内境界膜の界面及び視細胞内節外節接合部の界面を特定する。なお、内境界膜または視細胞内節外節接合部についての界面とは、これら層と他の層との境界を指す。本実施例では下側から上側へのエッジを見ているため、深さ方向から見て上側の界面の位置を特定する処理である。画像の解像度によってはこれら層の幅が画像の1画素よりも狭い場合もありうる。この場合には、層境界として特定される位置が上側の界面、下側の界面、または層そのものの位置とが画像上では区別がつかなくなる場合があり、そのような場合には層の界面を特定することと層自体を特定することは同義である。
【0043】
(ステップS401)
ステップS401において、画像取得部103は断層画像取得装置102で撮像したOCT断層画像を取得する。
【0044】
(ステップS402)
ステップS402において、画像変換部104は画像取得部103で取得したOCT断層像に対して画像変換を行う。
【0045】
本実施形態では断層像に対して、メディアンフィルタ(以後、メディアンフィルタで変換した画像をメディアン画像とする)と、2種類のSobelフィルタを適用した。この2種類のSobelフィルタとは、A−scanラインの深度方向に対して、輝度値の低い画素から高い画素へのエッジを強調するSobelフィルタと、輝度値の高い画素から低い画素へのエッジを強調するSobelフィルタである。以後これらのフィルタで変換した画像を順にSobel画像A、Sobel画像Bとする。
【0046】
図5にOCT断層像に対して2種類のSobelフィルタを適用した例を示す。図5(a)はSobel画像Aの例であり、特に、内境界膜と視細胞内節外節接合部のエッジが強調された画像になる。また、図5(b)はSobel画像Bの例であり、特に、神経線維層境界、内網状層、外網状層、網膜色素上皮が強調された画像になる。本ステップでは画像変換により、メディアン画像、Sobel画像A、Sobel画像Bを作成し、データサーバ113に保存する。
【0047】
但し、画像変換の方法はこれに限定されるものではなく、例えばメディアンフィルタの代わりに平均値フィルタのような平滑化フィルタを用いてもよい。さらに、本実施形態のような、平滑化フィルタやエッジ強調フィルタの他に、ガンマ補正のような階調変換フィルタやモルフォロジーフィルタなどを用いて画像変換を行ってもよい。また、画像変換を行わず、原画像輝度値のまま、次ステップの入力としてもよい。
【0048】
(ステップS403)
ステップS403において、輝度情報生成部105はステップS402で変換した画像から輝度情報を生成する。
【0049】
本実施形態では、所定位置の画像領域で深度方向に、1画素単位で輝度値を調べ、輝度情報としてプロファイルを作成する。所定位置はAスキャンラインすなわち深さ方向に並んだ一次元の画像領域とする。A−Scanラインとは画像における深さ方向の画素の列を指す。プロファイル画像の深さ方向はOCTにおける軸方向のスキャン(Aスキャン)の方向と一致する。必ずしもAスキャンが行われた位置に対応する画素列でなくてもよい。本実施形態では幅256pixel、高さ250pixelの断層像に対して、幅5pixel間隔でA−scanラインを走査するため、一枚のBスキャン画像に対して50本のA−scanラインを網膜層境界の特定対象とする。これらの各A−scanラインでプロファイルが生成される。これを、前ステップから入力された変換画像についてそれぞれ行い、データサーバ113に保存する。記憶部111に保存してもよい。
【0050】
但し、輝度情報の作成方法はこれに限定されるものではなく、例えば1画素単位ではなく、複数の画素からなるブロック領域を用いて作成してもよい。 さらに、A−Scanラインを走査する間隔もこれに限定されるものではない。
【0051】
(ステップS404)
ステップS404において、検出部106はステップS403で作成した輝度情報から特徴領域を取得する。
【0052】
本実施例では、Sobel画像Aから作成されたプロファイルを調べ、そのうち所定の閾値以上である領域を特徴領域として取得する。Sobel画像は画像のエッジを強調する画像であり、深さ方向の輝度変化が所定の閾値以上となっている領域を意味する。以下、この領域をピーク領域またはピークと称する。
【0053】
ある断層像からピークを検出する例を、図6を用いて説明する。図6のOCT断層画像で、A6は断層画像中の一つのA−scanライン(画素列)を表す。
【0054】
PSA6はA−scanラインA6のSobel画像Aのプロファイル、PSB6はA−scanラインA6のSobel画像Bのプロファイルを表す。ステップS302で説明したとおり、Sobel画像A、Bのプロファイルは特定の網膜層境界が強調され、輝度変化のグラフにおいてピークとして現れる。本実施形態では、閾値Thを設定し、この閾値以上の領域の領域だけをピークとみなす。この閾値が本発明における所定の閾値または第一の閾値に相当する。このようにピークをA−Scanライン毎に検出し、それぞれのピークの位置、大きさをデータサーバ113に保存する。ここでピークの位置及び大きさとは、ピーク領域における極大点の位置及び大きさとする。このピークの極大となる点を特徴点とする。本実施例では、検出部106がこのピークの位置を層境界の位置として取得する。この段階では、位置が特定された層境界がどの種類であるかは特定されていない。
【0055】
なお、特徴領域の検出方法はこれに限定されるものではない。また、特徴点も極大値のみでなく、例えばプロファイルの最大点や最小点など、特徴領域内の点を採用してよい。
【0056】
以下、ステップS405及びS406において、検出部106の検出した層境界またはエッジに基づいて構造判定部1071が構造を判定する処理を行う。本実施例では、各Aスキャンラインにおいて存在する層境界の種類を決定する。
【0057】
(ステップS405)
ステップS405において、テンプレート選択部107では、ステップS404で検出した特徴点からおおよその網膜層構造を把握する。そして、その層構造に応じてテンプレートを選択する。これにより、検出部106が取得した位置の層境界のいずれかが対応する層境界の種類が決定することとなる。そして、層境界特定部108はステップS404にて取得した位置とテンプレート情報とを用いて、層境界の種類との対応関係を特定する。
【0058】
本ステップの詳しい処理は図7のフローチャートを用いて説明する。図7のフローチャートではA−scanライン単位で処理する。全てのA−scanラインで、図7のフローチャートの処理を終えたら、ステップS406へ進む。
【0059】
(ステップS406)
ステップS406において、層境界補間部109では、網膜層境界が特定されていないA−scanラインにおいて、網膜層境界を補間する。
【0060】
本ステップの詳しい処理は図8のフローチャートを用いて説明する。図8のフローチャートではA−scanライン単位で分岐しながら処理されていく。全てのA−scanラインで、図8のフローチャートの処理を終えたら、ステップS407へ進む。
【0061】
(ステップS407)
ステップS407において、所定間隔のA−scanライン毎に特定した内境界膜または視細胞内節外節接合部の境界点をつなぎ合わせ、表示制御部110が表示部112に表示させる。
【0062】
このように、画像上の特徴から特定すべき層境界の種類を決定することにより、層境界の種類を特定する誤りを減らすことができる。また、テンプレートを選択して適用し、層境界を特定することにより、画像上の特徴に合わせて層境界の位置を特定することができるため、層境界の位置の精度または信頼性を向上させることができる。
【0063】
次に図8に従い、上述のステップS405においてテンプレート選択部107及び層境界特定部108が実行する処理の流れを説明する。
【0064】
(ステップS701)
ステップS701において、テンプレート選択部107は解析の対象とする画素列(Aスキャンライン)を選択する。この画素列は、水平方向に対して5画素間隔で深さ方向に並ぶ画素列を順に選択していく。なおこれに限らず間隔は任意に設定してよい。
【0065】
(ステップS702)
ステップS702において、テンプレート選択部107では、A−scanライン毎に特徴点を数え、特定対象とする層境界の種類を決定する。特徴点の数が二つである場合には、内境界膜の界面と視細胞内接外節接合部の界面を特定すべき層境界として決定し、ステップS703に進む。特徴点の数が二つでない場合にはステップS705へと進む。
【0066】
具体的な処理は図8を用いて説明する。図8は網膜の断層画像であり、A81とA82は断層像中のA−scanラインを表す。PSA81とPSA82はSobel画像Aから求めたプロファイルを表す。網膜層を把握するために、プロファイル中のピークを数える。図8に示された断層画像では、血管V1による偽像が発生し視細胞内節外節接合部が画像中に現れないA−scanラインが存在している。そのため、A−scan ライン毎にSobel画像Aのプロファイル中のピークを数え、ピークが二つ存在するとき、そのA−scanラインには内境界膜及び視細胞内節外節接合部が画像中に存在する可能性が高いと判定する。特定対象の層境界の種類は内境界膜及び視細胞内節外節接合部と決定する。その後、ステップS702へ進む。ピークが一つ存在するとき、そのA−scanラインには内境界膜だけが画像中に存在する可能性が高いと判定し、特定対象の層境界の種類は内境界膜と決定する。ステップS303へ進む。ピークが二つでも一つでもないとき、ノイズが存在する可能性が高い判定し、特定対象の層境界の種類はなしと決定する。そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0067】
(ステップS703)
ステップS703において、テンプレート選択部107は特徴点すなわちエッジとして検出される層境界の数に応じたテンプレートを記憶部111から選択する。
【0068】
(ステップS704)
層境界特定部108では、ステップS702において、内境界膜・視細胞内節外節接合部が存在する可能性が高いと判定されたA−scanラインに対して各層境界の特定を行う。ここで、テンプレート情報を用いて二つの特徴点の位置を浅い方から順に内境界膜の界面、視細胞内節外節接合部の界面として特定する。
【0069】
なお以下のような処理をすることも可能である。具体的な処理は図9を用いて説明する。図9は網膜の断層像であり、A9は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSA9はSobel画像Aから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSA9とする)、PMD9はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD9)である。また、本ステップでは内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE9(以後、プロファイルPRE9)を用意する。プロファイルPRE9は内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。ここで典型例とは、ノイズが存在せず、且つ、内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層が存在するA−scanラインにおける、各層の輝度の傾向を示したものである。例えば、内境界膜と視細胞内節外節接合部の間の輝度値を見たとき、神経線維層や内網状層が存在するために、内境界膜寄りの方が輝度値が高い傾向にある。そのような輝度の特徴を示すプロファイルPRE9を作成しておく。なお、このプロファイルPRE9は各網膜層の輝度の傾向と位置関係が参照できればよく、部位によって変化する各網膜層の厚さには対応させないため、内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層が存在するA−scanラインであればどこでも使用することができる。これを用いて、二つのピークが内境界膜・視細胞内節外節接合部に当てはまるか否かを判定する。
【0070】
まず、プロファイルPSA9における各ピーク間の平均輝度値を算出する。輝度値はプロファイルPSA9の位置に対応したプロファイルPMD9の値を用いる。プロファイルPSA10における2つのピークを、浅い位置から第一ピーク、第二ピークとする。平均輝度値を算出する範囲は、第一ピークと第二ピーク間(以後、ピーク間A1とする)、第一ピークと第二ピークの間を二等分し、第一ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A11とする)と第二ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A12とする)である。また、背景(画像中の網膜層以外の領域)の平均輝度値も算出する。本実施形態ではメディアン画像に対して経験的に決定した閾値を用いて二値化し、閾値以下の領域だけを対象にして平均輝度値を算出する。但し、背景の平均輝度値の算出方法はこれに限定されるものではなく、二値化における閾値の決定を判別分析法やP−tile法などを用いて決定してもよい。また、網膜層の存在しない画像の上端や下端の輝度値を用いて平均輝度値を算出してもよい。
【0071】
次にプロファイルPRE9に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。プロファイルPRE9から、平均輝度値において、ピーク間A1>背景の平均輝度値、ピーク間A11>ピーク間A12という条件が導かれる。これらに算出した平均輝度値を当てはめて、内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層の妥当性を確かめる。条件を全て満たしたとき、第一ピーク、第二ピークはそれぞれ内境界膜・視細胞内節外節接合部の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を一つでも満たさないものがあったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0072】
(ステップS705)
ステップS705において、テンプレート選択部107は、Aスキャンライン上のエッジの数が一つであるか否かを判定する。一つと判定された場合には、内境界膜の界面を特定すべき層境界として特定する。ステップS706に進む。0または3以上と判定された場合には、適切なテンプレートが存在しないとして、ステップS708に進む。このように、層境界が存在するとしても、適切なテンプレートが存在しないと判定される場合には、層境界の検出の誤りがある可能性が高いとして特定を行わない。これにより、Aスキャンライン全体の情報を用いて、当該Aスキャンラインにおける層構造の判定を行うため、ノイズや構造の変化に強い層構造の判定が実現されることとなる。
【0073】
(ステップS706)
ステップS706において、テンプレート選択部107は、特徴点が一つの場合のテンプレートを選択して、記憶部111から取得する。
【0074】
(ステップS707)
層境界特定部108は内境界膜だけが画像中に存在する可能性が高いと判定されたA−scanラインに対して各層境界の特定を行う。
【0075】
ここで、テンプレート情報を用いて一つの特徴点の位置を内境界膜の界面として特定する。
【0076】
なお以下のような処理をすることも可能である。具体的な処理は図10を用いて説明する。図10は網膜の断層像であり、A10は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSA10はSobel画像Aから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSA10とする)、PMD10はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD10)である。また、本ステップでは内境界膜の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE10(以後、プロファイルPRE10)を用意する。この参照用プロファイルは内境界膜と、その下に偽像が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。これを用いて、ピークが内境界膜に当てはまるか否かを判定する。
【0077】
本ステップでは、プロファイルPSA10とプロファイルPMD10を用いて、ピーク前後の所定の範囲内における平均輝度値を算出する。具体的には、A−scanライン上で、ピークの前後10画素(以後、ピーク上B1、ピーク下B2とする)をそれぞれ算出範囲とする。
【0078】
次にプロファイルの典型例に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。PRE10から、平均輝度値において、ピーク上B1<ピーク下B2という条件が導かれる。これらを算出した平均輝度値を当てはめて、内境界膜の妥当性を確かめる。条件を満たしたとき、ピークは内境界膜の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を満たさなかったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0079】
(ステップS708)
ステップS708にて、層境界特定部108が特定対象とする全てのAスキャンラインが選択されたか否かを判定する。テンプレートが存在するとしないとに関わらずステップS701にて選択されたか否かが判定の基準とする。網膜層境界の特定対象となっている全てのA−scanラインが図7のフローチャートの処理を終了したらステップS406へ進む。ステップS708にて未だ選択されていないAスキャンラインがあると判定された場合には、ステップS701の処理に進む。
【0080】
このように、水平方向に対する所定の間隔でAスキャンラインに対して特徴点であるエッジの数に応じて特定すべき層境界の種類を決定するため、画像における構造や特徴の変化に対応して層境界の種類を特定することができる。また、特徴点の数に応じたテンプレート情報に基づいて層境界の位置及び種類を特定するため、画像における構造や特徴の変化に対応して層境界の種類及び位置を特定することができる。
【0081】
次に層境界補間部109がステップS406にて行う処理の詳細について図11のフローチャートに従い説明する。この補間処理は層境界の種類毎に行われるものであり、例えば内境界膜の界面の補間処理として行われる。
【0082】
(ステップS1101)
ステップS1101において、層境界補間部109では、層境界の位置の特定対象とするAスキャンラインを選択する。ここでは、先述のステップS405の処理において層境界の位置が特定されていないAスキャンラインが選択される。ここで、層境界の位置が特定されていないAスキャンラインとは、テンプレートが存在しなかったAスキャンラインである。
【0083】
(ステップS1102)
層境界補間部109は、層境界を特定できていないA−scanラインを中心とした局所領域(以後、近傍領域とする)を考え、その領域内の特定されている網膜層境界の座標を基に補間する。具体的な説明は図12を用いて行う。図中のA12は網膜層境界が特定されていないA−scanラインであり、RはそのA−scanラインを中心とした近傍領域であり、近傍領域内に所定の本数のA−scanラインが含まれるように範囲を設定する。この近傍領域は、網膜層境界の特定対象となっているA−scanラインを中心に、周囲9×9本のA−scanラインが存在する範囲とする。ここで層境界補間部109が、特定対象とするAスキャンラインの近傍領域内に網膜層境界が特定されているA−scanラインが所定の数より下回ると判定した場合、補間処理を行ったとしてもその信頼性は低い。この場合ステップS1107へ進み、補間処理は行わない。所定の数を上回るA−scanラインが近傍領域内に存在する場合にのみ、ステップS1103へと進み、補間処理を行う。所定の数を下回ったA−Scanラインについては、ステップS1101乃至S1107を繰り返すことで、徐々に近傍領域内の網膜層境界が特定されてゆき、所定の数を上回った時点で補間処理が行われることとなる。本実施形態では、所定の数を近傍領域内に存在する、網膜層境界の特定対象となっているA−scanラインの半数、つまり40とする。
【0084】
(ステップS1103)
ステップS1103において、層境界補間部109では、本ステップまでに網膜層境界を特定できていないA−scanラインについて、網膜層境界を特定するための特徴量を算出する。特徴量は本ステップまでに網膜層境界が特定されているA−scanラインの情報から算出される。
【0085】
本実施例では、網膜層境界を特定できていないA−scanラインを中心とした局所領域(以後、近傍領域とする)を考え、その領域内の特定されている網膜層境界を基に基準位置を算出する。図12のような網膜層境界が特定されていないA−scanラインを中心とした近傍領域を考える。近傍領域内で特定されている各網膜層境界のz座標平均値を求めて基準位置とする。基準位置を算出するか否かの判定条件もステップS402と同様に、近傍領域内に網膜層境界が特定されているA−scanラインが所定の数より大きいか小さいかで行う。基準位置を算出したら、層境界補間部109では、で算出した各層の基準位置を用いて層境界が存在すると考えられる画像領域を探索範囲として決定する。この探索範囲内においてA−scanラインの網膜層境界を特定する。基準位置として算出した各網膜層のz座標平均値を用いて、その座標値の前後、所定の深さ方向の範囲内を網膜層境界の探索範囲とする。本実施形態では、所定の範囲はz座標平均値の上下5画素とする。
【0086】
なお、これに限らず探索範囲の設定は種々の形態を取ることができる。例えば、画像のノイズが少ない場合には探索範囲を大きく取ることでより正確に層境界の特定を行うことができる。また、層構造が比較的単調で平坦な場合には、探索範囲をそれほど大きく取る必要がないため、周囲の層構造の情報を用いて探索範囲を変えてもよい。
【0087】
更には、ノイズの等方性などを利用して画像全体または処理対象のAスキャンラインからノイズ成分を抽出し、局所的にノイズと信号成分を分離してもよい。
【0088】
(ステップS1104)
S1104にて、層境界補間部109は探索範囲内でSobel画像Aのプロファイルにおけるピーク領域を探索する。ピーク領域とは、Sobel画像Aのプロファイルにおける所定以上大きい極大値の付近の領域である。これは断層画像において輝度変化が所定の閾値を超える領域に対応する。この所定の閾値が本発明における第二の閾値に相当する。
【0089】
探索範囲を限り、その中でピークを探すこととなるため、ステップS404にて検出部106が設定した第一の閾値よりも小さな閾値で小さなピーク領域を見つけることができる。また、近傍領域において特定済みの層境界の深さ方向の位置の平均値に基づいて探索範囲を設定するため、層境界が存在する確率の高い領域を設定することができる。
【0090】
(ステップS1105)
層境界補間部109は、ピーク領域が存在するか否かを判定する。存在すると判定した場合には、補間対象となる層境界の存在位置が特定できると考えられるためステップS1106に進み補間処理を続行する。存在しないと判定した場合には、補間処理の信頼性が低くなると考えられるため、補間処理を行わずステップS1107へと進む。
【0091】
なお、ステップS1105においてピーク領域が存在しないとき、その探索範囲内のSobel画像Aのエッジ成分が一番大きな位置を網膜層境界と特定してもよい。
【0092】
(ステップS1106)
層境界補間部109は、ピーク領域のうち、最も輝度変化が大きい位置を境界の位置として特定する。
【0093】
(ステップS1107)
層境界補間部109は、特定対象となる全Aスキャンラインにおいて層境界が特定されたか否かを判定し、未特定のAスキャンラインがある場合にはステップS1101に進み、補間処理が行われる。全Aスキャンラインにおいて層境界が特定された場合には、処理を終了する。なお、処理時間やループの回数によって処理を打ち切ってもよい。また、S1101からS1107のループを所定回数繰り返しても特定済みのAスキャンラインの数が変わらない場合には処理を打ち切るとしてもよい。
【0094】
このように、特定済みの層境界の深さ方向の位置に基づいて探索範囲を定め、この探索範囲内の輝度変化に基づいて層境界の位置を特定する。これによりAスキャンライン全体における輝度変化に基づいて層境界を特定する場合に比べて精度を向上させることができる。また、探索範囲内を限ることにより、ピークを探索する際の閾値をより小さくすることができるため、より小さな輝度変化から層境界の位置を特定することができる。
【0095】
以上、本実施例では、被検眼の断層像中の網膜層境界を特定する処理において、近傍領域における各網膜層の輝度値や境界の位置を算出し、その情報に基づいた網膜層境界の特定条件を設定する。これにより、網膜層の輝度値や層構造が変化しても間違えることなく網膜層境界を特定することができる。例えば、OCTでは同一の網膜層であっても、部位によってプロファイルが大きく変化する。そのような輝度値の変化が起きても、近傍領域から各網膜層の情報を使うことで、特定対象となっている部位に適した網膜層境界の特定条件を設定することができ、精度よく網膜層境界を特定することができる。また、個人差や機種による輝度値の傾向の違いについても、手作業による閾値の調整を行わずに、入力された画像から、適切な網膜層境界の特定条件を設定することができる。よって、眼部を撮影した光干渉断層画像において、異なる複数の構造が現れる場合であっても、層境界の種類を特定する際の誤りを減らすことができる。
【実施例2】
【0096】
実施例2では、本発明を神経線維層の界面、内網状層の界面、外網状層の界面の特定に適用した例である。また、本実施例ではテンプレート情報の選択後に、画像のプロファイルとテンプレート情報とが適合するか否かを判定する。この判定部はテンプレート選択部が兼ねるが、判定部として機能する回路を別途設けてもよい。
【0097】
ここで、内境界膜の界面と視細胞内節外節接合部の界面は予め特定されているものとする。神経線維層・内網状層・外網状層の構造に応じた参照用プロファイルをそれぞれ用意し、Sobel画像Bのプロファイルから求めた特徴点の数によって、参照用プロファイルを切り換えることで各網膜層境界を特定する。
【0098】
本実施例では、選択されたテンプレートが適切か否かを判定する際に、輝度変化のピーク位置の上下の領域の輝度値を用いる。網膜の各層毎の反射率が違うため、この層領域の輝度値を用いることにより、より層境界及び層の種類の特定を正確に行うことが可能である。
【0099】
画像処理システムの構成については実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0100】
図13に記載のフローチャートに従い、画像処理装置101が実行する処理の流れを説明する。なお、実施例1における処理と同様の部分については説明を省略する。
【0101】
(ステップS1304)
ステップS1304では、内境界膜の界面と、視細胞内節外節接合部の界面とを特定する。この処理は、実施例1のように特定しても、その他の方法で特定してもよい。例えば、これら層境界の位置が予め特定されている断層画像を取得して、その特定された位置データを用いてもよい。この内境界膜の界面と視細胞内節外節接合部の界面の位置を利用して、神経線維層の界面、内網状層の界面、及び外網状層の界面を特定する。
【0102】
(ステップS1306)
ステップS1306では、テンプレート選択部107がテンプレート情報を選択し、層境界特定部108が層境界を特定する処理を行う。詳細は後述するが、テンプレートの選択処理の後に、選択されたテンプレート情報と断層画像のプロファイルとが適合するか否かを判定する処理を行う点が実施例1と異なっている。
【0103】
(ステップS1307)
ステップS1307では、ステップS1306で特定できなかった層境界の位置を補間する処理を行う。詳細は後述するが、探索範囲内で発見されたピーク領域のうち、算出された平均Z座標に最も近いピーク領域のピーク位置を層境界の位置として特定する点が実施例1と異なっている。
【0104】
上述のステップS1306にてテンプレート選択部107及び層境界特定部108が行う処理の流れを図14のフローチャートに従い説明する。なお、実施例1の処理と共通する部分については説明を省略する。
【0105】
(ステップS1402)
ステップS1402の処理は、実施例1のステップS702、S703、S705、S706の処理をまとめて表現したものである。具体的な処理は図15を用いて説明する。図15は網膜の断層像であり、A151とA152は断層像中のA−scanラインを表す。PSB151とPSB152はSobel画像Bから求めたプロファイルを表す。なお、層構造判定処理に用いるプロファイルの深度方向の範囲は、予め特定された内境界膜の界面及び視細胞内節外節接合部の界面を上端・下端としているため、図15のPSB151、PSB152において、実線で描かれている範囲だけが処理に用いられる。
【0106】
網膜層を把握するために、テンプレート選択部107は内境界膜から視細胞内節外節接合部までの範囲で、プロファイル中のピークを数える。図15にて示されるように、神経線維層が画像中に現れないA−scanラインも存在する。このような状況にも対応するため,A−scan ライン毎にSobel画像Bのプロファイル中のピークを数え、ピークが三つ存在するとき、そのA−scanラインには神経線維層・内網状層・外網状層が存在する可能性が高いと判定する。これら各層が処理対象となっているA−scanラインにおいて存在する層境界または層の候補であり、ピークの位置がこれら各層の位置の候補となる。そして、ピークの数が三つの場合に対応する参照プロファイルを選択する。ピークが二つ存在するとき、そのA−scanラインには内網状層・外網状層が存在する可能性が高いと判定する。これら各層が、処理対象となっているA−scanにおいて存在する層の候補であり、ピークの位置がこれら各層の位置の候補とある。そしてこの場合、テンプレート選択部107は、ピークの数が二つの場合に対応する参照プロファイルを選択する。
【0107】
なお、本実施例において各層境界を特定する際にはSobel画像Bを用いている。このSobel画像Bは深さ方向に対して輝度値が大きい側から小さい側へと変わるいわゆる下側へのエッジを抽出した画像である。
【0108】
(ステップS1403)
ステップS1403において、テンプレート選択部107は処理対象のAスキャンラインに対して参照プロファイルが選択されたか否かを判定する。選択されている場合には層境界の特定処理に入ることができるためステップS1404に進む。選択されていないと判定された場合には、ノイズが多く層境界の特定ができないとして次のAスキャンラインに対してテンプレートの選択をする処理に移るためにステップS1408へと進む。
【0109】
(ステップS1404)
ステップS1404において、判定部では、ステップS1403において選択されたテンプレートが処理対象のAスキャンラインに適合するか否かを判定するために、各特徴点間の輝度の平均値を算出する。
【0110】
(ステップS1405)
ステップS1405において、判定部では、算出した各特徴点間の輝度値の大小関係と、テンプレート情報である参照プロファイルの輝度情報と比較する。
【0111】
(ステップS1406)
ステップS1406にて、判定部は比較の結果からテンプレート情報が処理対象のAスキャンラインに適合するか否かを判定する。適合すると判定した場合は層境界の特定処理が可能としてステップS1407に進み、適合しないと判定した場合にはテンプレートが決まらないため、特定を行わず、ステップS1408に進む。
【0112】
ステップS1407及びステップS1408の処理については実施例1と動揺であるため説明を省略する。
【0113】
ステップS1404からS1406までの具体的な処理を説明する。
【0114】
特徴点が3つである場合の具体的な処理を図16を用いて説明する。図16は網膜の断層像であり、A16は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSB16はSobel画像Bから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSB16とする)、PMD16はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD16)である。また、本ステップでは神経線維層・内網状層・外網状層の三層の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE16(以後、プロファイルPRE16)を用意する。プロファイルPRE16は神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。ここで典型例とは、ノイズが存在せず、且つ、神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインにおける、各層の輝度の傾向を示したものである。例えば、神経線維層の輝度値は内網状層・外網状層の輝度値よりも高い傾向が経験的にわかっており、そのような輝度の特徴を示すプロファイルPRE16を作成しておく。なお、このプロファイルPRE16は各網膜層の輝度の傾向と位置関係が参照できればよく、部位によって変化する各網膜層の厚さには対応させないため、神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインであればどこでも使用することができる。これを用いて、三つのピークが神経線維層・内網状層・外網状層に当てはまるか否かを判定する。
【0115】
まず、プロファイルPSB16における各ピーク間の平均輝度値を算出する。輝度値はプロファイルPSB16の位置に対応したプロファイルPMD16の値を用いる。プロファイルPSB17における三つのピークを、浅い位置から第一ピーク、第二ピーク、第三ピークとする。平均値を算出する範囲は、内境界膜と第一ピーク間、第一ピークと第二ピーク間、第二ピークと第三ピーク間、第三ピークと視細胞内節外節接合部間とする。これらを順にピーク間A1、ピーク間A2、ピーク間A3,ピーク間A4とする。さらに第二ピークと第三ピークの間を二等分し、第二ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A31とする)と第三ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A32とする)についても、プロファイルPMD16から平均輝度値を算出する。
【0116】
次にプロファイルPRE16に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。プロファイルPRE16から、平均輝度値において、ピーク間A1>ピーク間A2、ピーク間A1>ピーク間A3、ピーク間A3>ピーク間A4、ピーク間A31<ピーク間A32という条件が導かれる。これらに算出した平均輝度値を当てはめて、神経線維層・内網状層・外網状層の三層の妥当性を確かめる。条件を全て満たしたとき、第一ピーク、第二ピーク、第三ピークはそれぞれ神経線維層・内網状層・外網状層の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を一つでも満たさないものがあったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0117】
特徴点が3つである場合の具体的な処理を図17を用いて説明する。図17は網膜の断層像であり、A17は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSB17はSobel画像Bから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSB17とする)、PMD17はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD17)である。また、本ステップでは内網状層・外網状層の二層の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE17(以後、プロファイルPRE17)を用意する。この参照用プロファイルは内網状層・外網状層の二層が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。典型例はステップS1402の考え方と同様に、ノイズが存在せず、且つ、内網状層・外網状層の二層が存在するA−scanラインにおける、各層の輝度の傾向を示したものであり、対象の二層が存在するA−scanラインであればどこでも使用することができる。これを用いて、二つのピークが内網状層・外網状層に当てはまるか否かを判定する。
【0118】
本ステップでも、まず、プロファイルPSB17とプロファイルPMD17を用いて、各ピーク間の平均輝度値を算出する。プロファイルPSB17における2つのピークを、浅い位置から第一ピーク、第二ピークとする。平均輝度値を算出する範囲は、内境界膜と第一ピーク間、第一ピークと第二ピーク間、第二ピークと視細胞内節外節接合部間とする。これらピーク間を順にピーク間B1、ピーク間B2、ピーク間B3とする。さらに第一ピークと第二ピークの間を二等分し、第一ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間B21とする)と第二ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間B22とする)についても、プロファイルPMD17から平均輝度値を算出する。
【0119】
次にプロファイルの典型例に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。PRE17から、平均輝度値において、ピーク間B1>ピーク間B2、ピーク間B2>ピーク間B3、ピーク間B21<ピーク間B22という条件が導かれる。これらを算出した平均輝度値を当てはめて、内網状層・外網状層の二層の妥当性を確かめる。条件を全て満たしたとき、第一ピーク、第二ピークはそれぞれ内網状層・外網状層の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を一つでも満たさないものがあったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0120】
このように、特徴点の数に応じて選択されたテンプレートが処理対象となるAスキャンラインに適合するか否かを判定することにより、テンプレート選択の誤りに起因する層境界の特定の誤りを軽減することができる。また、テンプレート情報の適合を判断する際に、境界間の領域の輝度値を用いることで、層境界の同定の誤りを減らすことができる。
【実施例3】
【0121】
本実施例は、アルゴリズム切り換え部において、Sobel画像のプロファイルにおけるピークの数ではなく、プロファイル同士のパターンマッチングによってアルゴリズムを切り換える実施例である。具体的には、処理対象となるメディアン画像のプロファイルと各参照用プロファイルを位置合わせし、対応する信号間の距離を算出する。そして、その距離の累積値が最も小さい参照プロファイルの層構造に従って、網膜層境界特定のアルゴリズムを切り換える。本実施形態では、神経線維層・内網状層・外網状層を特定する際のアルゴリズム切り換えを例に説明する。
【0122】
本実施例におけるテンプレート選択部107及び層境界特定部108が実行する処理の流れを示すフローチャートを図18に示す。なお、実施例2において図14のフローチャートに示される処理と同様の処理については説明を省略する。
【0123】
(ステップS1802)
ステップS1802において、テンプレート選択部107では、A−scanライン毎に全ての参照用プロファイルとの類似度を算出し、その類似度を基にアルゴリズムを切り換える。ここで、類似度とは、パターンマッチング手法によるプロファイル同士の比較によって算出されるものであり、その算出方法は下記に示す。
【0124】
具体的な処理は図19を用いて説明する。図19のA19は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PMD190はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD190)である。PRE191は神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在する場合の参照用プロファイル(以後、プロファイルPRE191)であり、RPE192は内網状層・外網状層の二層が存在する場合の参照用プロファイル(以後、プロファイルPRE192)である。
【0125】
まず、処理対象となるA−scanラインのメディアン画像プロファイルと各参照用プロファイルの位置合わせを行う。位置合わせはステップS1406までに特定した内境界膜・視細胞内節外節接合部の位置を基に行う。プロファイルPMD190の内境界膜・視細胞内節外節接合部の位置を端として合わせて、プロファイルPRE191、プロファイルPRE192を伸縮させる。そして、図20にて示されるPMT201・PMT202のように、プロファイルPMD190に、プロファイルPRE191・プロファイルPRE192をそれぞれ重ね合わせて、対応する点同士の距離を算出していく。ここでの距離は位置合わせ後のプロファイルにおいて、同じz座標でのx座標の差とする。この距離の累積値を各参照用プロファイルについて算出する。
【0126】
(ステップS1803)
ステップS1803では、テンプレート選択部107は算出した類似度に応じて最も適するテンプレートを選択する。ここではテンプレート選択部107累積値の最も低い(つまり、類似度が最も高い)参照用プロファイルの構造に沿ったテンプレートを選択する。選択されたテンプレート情報には、層境界の位置及び種類の情報が対応付けられているため、テンプレート選択部107により処理対象となるAスキャンラインにおいて特定されるべき層境界の種類が決定されることとなる。本実施形態では、プロファイルPRE191との類似度が高い場合、そのA−scanラインには神経線維層・内網状層・外網状層が存在する可能性が高いと判定し、ステップS1804へ進む。
【0127】
このように、パターンマッチング処理を行ってテンプレートを選択し、テンプレート情報に基づいて層境界の位置及び種類を特定するため、画像における構造や特徴の変化に対応して層境界の種類及び位置を特定することができる。
【0128】
なお、本実施例のようにパターンマッチングによるテンプレート選択を行う場合には、算出された類似度が高い場合には実施例2のような適合性の判定処理を行わなくてもよい。類似度が高ければ、適合していると考えられるからである。この場合、特徴点の数に応じた選択処理とその後の判定処理とを行う場合に比べて処理を簡略化することができる。また逆に、実施例2において、判定部が行う適合性の判定処理として本実施例に特徴的なパターンマッチング処理を行い、算出された類似度が所定の閾値を超えるか否かに応じて判定を行ってもよい。
【0129】
また、本実施例におけるテンプレートは、予め層境界が特定された断層画像のプロファイルの平均またはメディアンを取って作成される参照用のプロファイルそのものであってもよい。
【実施例4】
【0130】
本実施例は、層境界補間部109が実行する補間処理において、探索範囲内における輝度変化のピークのうち、特定済みの層境界の深さの平均値に最も近い位置を層境界の位置として特定する。本実施例では、神経線維層の界面、内網状層の界面、外網状層の界面についての補間処理を説明する。
【0131】
本実施形態における網膜層境界補間処理のフローチャートを図21に示す。なお、実施例1の図11に示される処理と重複する部分については説明を一部省略する。
【0132】
(ステップS2103)
ステップS2103において、層境界補間部109では、本ステップまでに網膜層境界を特定できていないA−scanラインについて、網膜層境界を特定するための特徴量を算出する。特徴量は本ステップまでに網膜層境界が特定されているA−scanラインの情報から算出される。本実施形態では、網膜層境界を特定できていないA−scanラインを中心とした局所領域(以後、近傍領域とする)を考え、その領域内の特定されている網膜層境界を基に特徴量を算出する。特徴量の算出はステップS1103と同様に、図12のような網膜層境界が特定されていないA−scanラインを中心とした近傍領域を考える。近傍領域内で特定されている各網膜層境界のz座標平均値を求めて特徴量とする。特徴量を算出するか否かの判定条件もステップS1102と同様に、近傍領域内に網膜層境界が特定されているA−scanラインが所定の数より大きいか小さいかで行う。この特徴量として算出した各網膜層のz座標平均値を用いて、層境界補間部109はその座標値の前後、所定の範囲内を網膜層境界の探索範囲として設定する。本実施形態では、所定の範囲はz座標平均値の前後5画素とする。
【0133】
(ステップS2106)
探索範囲内でSobel画像Bのプロファイルにおけるピークが探索され、ピークが存在したとき、層境界補間部109はその中で所定の閾値以上一番大きなピークを網膜層境界として特定する。そのようなピークが二つ以上ある場合には、算出されたZ座標の平均値に最も近い位置のピークを層境界の位置として特定する。これは、複数の層境界が近接して存在する場合に、一つの層境界を特定するための探索範囲内に2以上の層境界が含まれる場合に対応して、近傍領域において特定済みの層境界の深さの平均値に最も近いピークを選択することとしたものである。これにより、層境界を精度よく特定することができる。
【0134】
図22は神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインにおけるSobel画像Bのプロファイルの例である。図22のプロファイルPSB220はノイズ等の影響によりによって4つのピークが存在し、且つ、大きさからもどこが各網膜層境界であるか、判断が難しい。しかし、近傍領域から算出したz座標平均値を基に本ステップS2104により設定される神経線維層境界の探索範囲CN、内網状層の境界の探索範囲CI、外網状層の境界の探索範囲COを用いることで、各網膜層境界を精度よく特定することができる。
【0135】
このように、ピークの位置が複数発見されても、既に特定済みのZ座標平均値に最も近いピークの位置を層境界の位置として特定することにより、網膜層境界を精度よく特定することができる。
【0136】
(その他の実施例)
なお、上述した本実施形態における記述は本発明に係る好ましい画像処理装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、前記実施例1乃至4の画像処理装置101を、ソフトウェアを用いて実現することも可能である。その場合には、先述の各実施例における画像処理装置101の処理を実行するためのプログラムを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給する。そしてそのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されるものである。 この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例記載の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0137】
上述の実施例では、取得する複数の断層像群からなる三次元画像データに対して解析処理を行う場合について説明する。 しかし、三次元画像データから注目すべき二次元の断層像を選択して、選択した断層像に対して処理を行う構成であってもよい。例えば、予め定めた眼底の特定部位(例えば中心窩)を含む断層像に対して処理を行ってもよい。この場合、検出される層の境界等は、いずれも当該断面上における二次元のデータとなる。
【0138】
上述の実施例においては層境界を特定していたが、これに限らず、テンプレート情報を用いて層の種類及び位置を特定してもよい。この際には、層境界の位置に対応するエッジの輝度変化の大きさまたは輝度値、層領域の輝度値またはその大小関係等の情報がテンプレート情報として必要となる。テンプレート情報としては、黄斑部、視神経乳頭部、血管が存在する網膜の領域、または血管が存在しない網膜の領域などが考えられる。
【0139】
さらには、層境界の数や層領域の輝度値に基づいて黄斑部であるか否か、視神経乳頭部であるか否かなどの構造を判定することもできる。例えば、黄斑部であるか否か、視神経乳頭部であるか否か、その他の領域であるか否か、血管が存在する領域であるか否か、白斑が存在する領域であるか否か網膜はく離が存在する領域であるか否か、その他の網膜層の構造を判定することができる。または、断層画像に現れる特徴として、血管や白斑による偽像があるか否かを構造として判定することも可能である。
【0140】
上述の実施例における層境界の補間処理は、上述のテンプレートにより層境界を特定する処理とともに用いずともよい。例えば、その他の方法により層境界の一部分が特定されている場合に適用してもよい。
【0141】
なお、網膜に限らず、前眼部の断層画像であってもよい。前眼部も角膜、水晶体、硝子体等からなる層構造が形成されており、信号光の入射する方向つまり深さ方向に対して積層された層構造を有している。そのため前眼部の断層画像に対しても本発明を適用可能である。その場合には、前眼部の断層画像のプロファイルにおける複数の構造に対応した複数のテンプレートを記憶部111に保持しておく。
【0142】
上述の実施例では画像処理システム100により本発明を実施する例を示したが、これに限らず、画像処理装置101の機能を光干渉断層撮像装置内に実装してもよい。
【0143】
また上述の実施例では光干渉断層撮像装置により得られる断層画像を例に説明したが、これに限らず、超音波断層撮像装置その他の撮影対象の内部構造を画像化する装置により得られた断層画像に対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0144】
100 画像処理システム
101 画像処理装置
102 断層像取得装置
105 輝度情報生成部
106 検出部
108 層境界特定部
109 層境界補間部
【技術分野】
【0001】
本発明は断層画像における層構造を特定する画像処理装置、画像処理システム、画像処理方法、及び画像処理をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病や失明原因の上位を占める疾病の早期診断を目的として、眼部の検査が広く行われている。光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)などの断層像撮像装置は、網膜層内部の状態を三次元的に観察することが可能であるため疾病の診断等に有用である。
【0003】
例えば眼底の網膜は複数の層からなる層構造を有しており、各層の厚み等の層構造に関する情報は疾病の進行度を測る客観的な指標として利用されている。このような指標を利用するため、網膜の断層画像を解析して層境界の種類を特定する技術が重要である。特許文献1に記載の技術は、断層像に階調変換などの前処理を施した後、深さ方向のエッジを検出し、エッジの位置を層境界の位置として特定する。そして、信号強度が弱い血管下の領域に対して、既に特定されている網膜層境界から滑らかに繋がるように補間することで、網膜層境界の位置を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−73099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている層境界の補間処理では、補間対象の層が存在すると考えられる血管下の領域における信号成分を考慮しておらず、補間された層境界の位置の信頼性が低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、撮影対象の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定手段と、前記第一の特定手段により位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて前記第一の特定手段により位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
かかる構成を有する本発明によれば、第一の特定手段により特定されなかった層境界の探索範囲の輝度変化に基づいて特定することができるため、層境界の位置の信頼性を上げることができる。また、深さ方向の位置に基づいて探索範囲を定めるため、特定される層境界の位置の信頼性を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】画像処理システム100の構成を示す図である。
【図2】断層画像取得装置102の構成を示す図である。
【図3】断層画像取得装置102が取得する断層画像の例を示す図である。
【図4】画像処理装置101による処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】画像変換部104が作成する変換画像の例を示す図である。
【図6】輝度情報生成部105が生成するプロファイルの例を示す図である。
【図7】テンプレート選択部107及び層境界特定部108が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】テンプレート選択部107による処理の概要を示す図である。
【図9】層境界特定部108による処理の概要を示す図である。
【図10】層境界特定部108による処理の概要を示す図である。
【図11】層境界補間部109による処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】層境界補間部109による処理の概要を示す図である。
【図13】第二の実施例における画像処理装置101による処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】テンプレート選択部107および層境界特定部108が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】テンプレート選択部107による処理の概要を示す図である。
【図16】判定部の処理の概要を示す図である。
【図17】判定部の処理の概要を示す図である。
【図18】第三の実施例における画像処理装置101による処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】テンプレート選択部107によるパターンマッチング処理の概要を示す図である。
【図20】テンプレート選択部107によるパターンマッチング処理の概要を示す図である。
【図21】第四の実施例における層境界補間部109による処理の流れを示すフローチャートである。
【図22】層境界補間部109による設定される探索範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例に係る画像処理システム100では、画像処理装置101が、断層画像取得装置102から受け取った網膜の断層画像から、層構造の位置及び種類を特定する。その際に、断層画像において異なる構造である各部位に対して、層境界を特定するための異なるテンプレート情報を用いる。
【0011】
また、テンプレートを用いて特定された層境界の位置から、テンプレートにより特定されなかった層境界を補間する。その際には、特定された層境界の位置から未だ特定されていない層境界が存在すると考えられる範囲を設定し、その範囲内における輝度値の変化に基づいて層境界を特定する。以下、画像処理システム100の構成および処理を説明する。
【0012】
図1に基づいて画像処理システム100の構成を説明する。画像処理装置101は例えば電子計算機であり、画像取得部103、画像変換部104、輝度情報生成部105、検出部106、構造判定部1071、表示制御部110、記憶部111を備える。これらの各部は回路により実装されていても、画像処理装置101のハードウェアとソフトウェアの協働によりこれら各部の機能ブロックが実現されていてもよい。ソフトウェアを利用する場合には、画像処理装置101の不図示のCPUが、同じく不図示のROM内に保持された図4、図7及び図11に記載の機能を実現するためのプログラムを格納され、これを不図示のRAMに展開し逐次実行する。これにより、電子計算機のハードウェアとソフトウェアが協働して本発明が実現されることとなる。
【0013】
断層画像取得装置102は例えば光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)の原理を利用した光干渉断層撮像装置である。この装置の詳細は後述する。
【0014】
画像処理装置101の画像取得部103は断層画像取得装置102から断層画像を取得する。この断層画像は、網膜の表面における所定の二次元領域を走査して得られた網膜の三次元領域の断層画像であり、網膜内部の層構造を画像化したものである。この画像は、複数の二次元の断層画像(Bスキャン画像)として取得しても、網膜の表面において信号光が照射された複数の位置の一次元画像(Aスキャン画像)として取得しても、Aスキャン画像から生成される三次元ボリュームデータとして取得してもよい。
【0015】
画像変換部104は、取得した断層画像のエッジを強調するSobelフィルタを適用したSobel画像と、平滑化画像を生成するメディアンフィルタを適用したメディアン画像とを、変換画像として得る。
【0016】
輝度情報生成部105は、Sobel画像及びメディアン画像から水平方向の所定位置における深さ方向の位置と輝度値の関係を示す情報を生成する。この情報として、所定の水平方向の位置における深さ方向のプロファイルを生成する。プロファイルは、深さ方向の位置と値の関係を示す情報であり、水平方向に1画素の幅を持つ。このプロファイルは、深さ方向に並ぶ画素列を元データとして生成される。Sobel画像は画像のエッジを強調する画像であるため、Sobel画像における輝度値は原画像における輝度変化の値を示す。
【0017】
なお、一つのプロファイルの生成する際の所定位置として、上記のように一次元の画像領域を用いなくても、水平方向の数画素の幅を持ち、深さ方向に画素が並んだ二次元の画像領域をこの所定位置として用いてもよい。あるいは三次元の画像領域を所定位置として用いてもよい。このプロファイルが作成された水平方向の位置における深さ方向に存在する層境界が特定される。ここで水平方向とは、信号光を照射する方向(Aスキャン方向)と垂直な方向であり、好ましくは画像における水平方向と一致する。黄斑や視神経乳頭部を除いたほとんどの正常眼では、層の広がる方向または層に沿う方向が水平方向である。また深さ方向とは信号光を照射する方向(Aスキャン方向)であり、好ましくは画像における垂直方向と一致する。網膜層は深さ方向に各層が積層された構造を有しているため、黄斑や視神経乳頭部を除いたほとんどの正常眼では、層が積層され重なる方向が深さ方向である。輝度情報生成部105が生成するプロファイルの水平方向の位置は、所定の間隔、例えば5画素間隔とする。このプロファイルが作成される位置以外では本発明による層境界の特定が行われないが、プロファイルに基づき特定された層境界の位置に基づいて周知の方法により補間すればよい。
【0018】
検出部106は各位置のSobel画像のプロファイルから深さ方向に積層された各層の層境界の位置を示す特徴点を取得する。本実施例においては、特徴点はプロファイルにより示される深さ方向へのエッジのうち所定の閾値よりも大きいものとする。なお、ここでエッジとは、画像における輝度値の勾配を指す。所定の閾値は実験的に定められる値であり、本発明における本発明に第一の閾値に相当する。なおここで層境界とは、断層画像において所定の厚さを有する層と層の界面を指すこととする。画像の解像度によっては、1画素よりも小さい厚みを有する層は境界として検出されることもあるが、これについても境界として扱う。第一の閾値は、プロファイルから算出される統計量などに基づいてプロファイル毎に変更して定めてもよい。
【0019】
構造判定部1071は、検出部106により検出された層境界の数に応じて層構造を判定する。ここでいう層構造とは、層または層境界の数、位置及び種類、血管や白斑による偽像の有無並びに視神経乳頭部や黄斑部や黄斑部及び視神経乳頭部以外の領域であるか否かを指す。本実施例においては、構造判定部1071は層境界の位置及び種類を決定する決定手段に相当する。構造判定部1071は、テンプレート選択部107、層境界特定部108、層境界補間部109を有している。
【0020】
テンプレート選択部107は、プロファイルから取得された特徴点の数に応じてプロファイルに対してテンプレート情報を割り当てる。このテンプレート情報は、層境界の種類及び位置、層境界間つまり層領域の輝度値の大小関係を示す情報である。記憶部111には、このテンプレートが網膜層の構造や血管の有無などの状況に対応させて複数保持されており、このテンプレート情報によりプロファイルから層境界の位置及び種類を特定する。テンプレート情報には特徴点の数の情報が対応付けられて格納されており、これにより特徴点に応じてテンプレートを決定することができる。テンプレートは、予め層境界の位置及び種類が特定された同一部位の複数の断層画像から平均値や中央値を取ることにより作成される参照用のプロファイルから、層境界の位置及び種類の情報と、層境界間の輝度値の大小関係の情報とを抽出して作成される。各層の輝度値の情報を有していてもよい。
【0021】
例えば、黄斑部や視神経乳頭部における網膜層の構造はこれら以外の網膜層の構造と異なっており、これら部位に対応したテンプレートが用意されている。また、網膜層の所定の位置に血管がある場合には、信号光が血管により吸収され血管下の領域の信号強度が著しく弱くなるため、血管がない場合と比べてプロファイルが異なる。そのような状況に対応させて、例えば同じ黄斑部であっても血管の有無により異なるテンプレートが用意されている。その他、病変の有無等、想定し得るあらゆるプロファイルの変化に対応させてプロファイルを用意する。テンプレート情報の作成は、複数の被検眼の断層画像から実験的に行われるものである。なお、処理時間を考慮して、そのうち一部のプロファイルのみを選択可能としておいてもよい。テンプレートの具体例については後述する。
【0022】
層境界特定部108は、テンプレートを各プロファイルに適用して断層画像から層構造を特定する特定手段または第一の特定手段を構成する。ここでいう層構造の特定とは、層構造の位置またはその種類を特定することを指す。特定された層境界の情報はプロファイルまたは断層画像と関連付けられて記憶部111またはデータサーバ113に保持される。この特定処理の詳細については後述する。
【0023】
層境界補間部109は、テンプレートの適用により特定されなかった層境界の位置を特定することにより補間する特定手段または第二の特定手段を構成する。ここで補間された層境界位置情報は、層境界補間部109により補間された旨の情報を関連付けられ、更にプロファイルまたは断層画像と関連付けられて記憶部111またはデータサーバ113に保持される。この補間処理の詳細については後述する。
【0024】
表示制御部110は、断層画像と層境界の種類及び位置の情報とを表示部112に表示させる制御を行う。この制御は、表示部112に対して、断層画像を表示させるとともに、断層画像上に層境界の位置が層の種類毎に色分けして表示させる制御を行う。また、テンプレートにより特定された層境界の位置と補間処理により特定された層境界の位置を異なる表示形態で表示することとしてもよい。
【0025】
記憶部111は、画像処理装置101の各部が必要とする情報や、各部により出力された情報を記憶する。例えば、検出部106に利用される第一の閾値またはその算出方法、テンプレート選択部107等が利用するテンプレート情報や、層境界補間部109が利用する探索範囲の設定値や、第二の閾値などが保持される。
【0026】
表示部112は、例えば液晶ディスプレイであり、画像処理装置101により出力される断層画像や層境界の位置及び種類を表示する。データサーバ113は、断層画像取得装置102により取得された断層画像を書誌情報とともに記憶する記憶部である。
【0027】
図2に従い断層画像取得装置102の構成の詳細を説明する。断層画像取得装置102は、いわゆるフーリエドメイン型の光干渉断層撮像装置である。断層画像取得装置102は不図示の操作者による操作に応じて、不図示の被検眼の撮影を行い、得られた画像を画像処理装置101やデータサーバ113へと送信する。
【0028】
光源114は光を射出し、ビームスプリッタ115はその光を測定光124と参照光125とに分割する。測定光124は、観察対象である眼118を経由した戻り光126となって戻される。ここで戻り光126は、眼118における測定光の反射光及び散乱光を含む概念である。
【0029】
ビームスプリッタ115はまた、戻り光126と参照光125を合波し干渉光127を生成する干渉光生成手段として機能する。回折格子120はこの干渉光を分光し、レンズ121により一次元センサ122上に結像される。一次元センサ122の各画素回路は受光した光量に応じた電気信号を出力する。画像形成部123は一次元センサ内の位置つまり干渉光の波数でフーリエ変換し、眼118の断層画像を得る。
【0030】
次に、光源114の周辺について説明する。光源114は代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。波長は830nm、バンド幅50nmである。このバンド幅は、得られる断層画像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメーターである。また、光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が射出できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。また、波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。さらに波長は、得られる断層像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましく、ここでは830nmとする。観察対象の測定部位によっては他の波長を選んでもよい。
【0031】
参照光125の光路について説明する。ビームスプリッタ115によって分割された参照光125は、参照物体であるミラー119により反射され、ビームスプリッタ115に戻る。この光路長は測定光124と同じ長さにすることにより、参照光と測定光を干渉させることができる。
【0032】
次に、測定光124の光路について説明する。ビームスプリッタ115によって分割された測定光124は、XYスキャナ116のミラーに入射する。XYスキャナ116は入射した測定光124を眼118へと向けるとともに、その方向を逐次変更することで眼118の網膜上を光軸に垂直な方向に二次元的にラスタースキャンする走査光学系として機能する。XYスキャナ116は簡単のため一つのミラーとして記したが、実際にはXスキャン用ミラーとYスキャン用ミラーとの2枚のミラーが近接して配置されている。また、測定光124の中心はXYスキャナ116のミラーの回転中心と一致するように調整されている。レンズ117は網膜上に測定光124を集光する。これらの光学系により、測定光124は眼118に入射すると、眼118の網膜からの反射や散乱により戻り光126となる。なお、網膜のある点に測定光を入射させて一次元の画像を生成することをAスキャンと呼び、この一次元の画像をAスキャン画像という。また、このAスキャンを網膜表面における所定の線上に沿って所定の間隔で行い二次元の画像を生成する操作をBスキャンと呼び、この二次元画像をBスキャン画像と呼ぶ。Bスキャンにより、測定光の入射位置が所定の間隔で順次変更される各位置の複数のAスキャン画像が得られ、この複数のAスキャン画像に補間処理等を施して二次元のBスキャン画像が得られることとなる。
【0033】
また、通常OCT装置では撮像位置をモニタするために、不図示の走査型レーザー検眼鏡または、眼底像を二次元で撮像する光学系を持っている。
【0034】
次に分光系について説明する。前記の様に干渉光127は回折格子120により分光されるが、この分光は光源の中心波長、バンド幅と同じ波長条件で分光を行う。また、干渉光を測定する一次元センサは一般的にCCD型やCMOS型があるが、どちらを用いてもよい。
【0035】
以上のような断層画像取得装置102としての光干渉断層撮像装置にて撮像された断層画像を画像処理装置101が解析する。なお、断層画像取得装置102は必ずしも光干渉断層撮像装置自体でなくてもよく、光干渉断層撮像装置により撮影されデータサーバ113から断層画像を取得する装置であってもよい。
【0036】
次に図3に基づいて、上述の断層画像取得装置102により取得され画像処理装置101により層構造が特定される網膜の断層画像の例を説明する。
【0037】
次に、本実施例に係る層構造を同定する処理の適用対象である網膜層の構造について図3を用いて説明する。図3(a)は網膜の黄斑部の断層像を模式図として示したものであり実線で層境界の位置が示されている。黄斑部の二次元断層像(B−Scan画像、以下、断層像と呼ぶ)T1〜Tnの夫々はA−Scanを網膜表面の1ラインで行い二次元画像として構成したものである。A−Scanは連続して行うわけではなく、1ライン上にて所定の間隔で行われるため、隣り合うA−Scanの間は所定の補間方法により補間して二次元画像が構成される。
【0038】
断層像Tnにおいて、内境界膜(ILM:Inner Limiting Membrane)の界面L1、神経線維層(NFL:Nerve Fiber Layer)とその下部層との境界L2、神経線維層L2’が示されている。また内網状層とその下部の層との境界L3、外網状層をその下部の層との境界L4が示される。また、視細胞内節外節接合部(IS/OS:Interface between inner and outer segments of the photoreceptors)の境界L5、網膜色素上皮(RPE)の下側の境界L6が示されている。このように、網膜は深さ方向に複数の層が積層された層構造を有している。
【0039】
なお、OCT撮像装置の性能によっては、IS/OSとRPEの境界が区別不可となる場合があるが、本発明においてはその精度は問題にしないこととする。また、内境界膜(ILM)や視細胞内節/外節接合部(IS/OS)は実際には所定の厚みを持つ層であるが、ごく薄い層であるため画像上では線で表示されている。そのため、画像の解像度がある程度低い状態では、例えば内境界膜の界面と内境界膜自体が画像上区別不可能となる。そのため、内境界膜の界面を特定することは内境界膜自体を特定することと実質的に同義となる。また、層境界と界面とは実質的に同義として用いる。
【0040】
一般に網膜はこのように複数の層が積層された層構造を有しているが、部位や病変によってはこれと異なる構造を取り得る。図3(b)も同じく網膜の黄斑部の断層画像である。ここでは、血管V1が存在しており、血管内の赤血球により信号光が減衰するため、血管V1のある水平方向の領域S2において、血管下の領域が画像化されず、偽像が発生してしまう。そのため、血管の存在しない領域S1と比較して、断層画像により特定される見かけ上の構造が異なっている。なお血管に限らず、白斑によっても白斑下の領域に偽像が発生することがある。
【0041】
これら病変等の異常や構造の変化が大きいのは現れるのは内境界膜L1から網膜色素上皮の境界L6までの間の層であるため、これらの層を特定した後、その内部の層を特定することとなる。
【0042】
図4に示したフローチャートに従い上述の構成を有する画像処理装置101の処理の流れを説明する。本実施例における処理では、内境界膜の界面及び視細胞内節外節接合部の界面を特定する。なお、内境界膜または視細胞内節外節接合部についての界面とは、これら層と他の層との境界を指す。本実施例では下側から上側へのエッジを見ているため、深さ方向から見て上側の界面の位置を特定する処理である。画像の解像度によってはこれら層の幅が画像の1画素よりも狭い場合もありうる。この場合には、層境界として特定される位置が上側の界面、下側の界面、または層そのものの位置とが画像上では区別がつかなくなる場合があり、そのような場合には層の界面を特定することと層自体を特定することは同義である。
【0043】
(ステップS401)
ステップS401において、画像取得部103は断層画像取得装置102で撮像したOCT断層画像を取得する。
【0044】
(ステップS402)
ステップS402において、画像変換部104は画像取得部103で取得したOCT断層像に対して画像変換を行う。
【0045】
本実施形態では断層像に対して、メディアンフィルタ(以後、メディアンフィルタで変換した画像をメディアン画像とする)と、2種類のSobelフィルタを適用した。この2種類のSobelフィルタとは、A−scanラインの深度方向に対して、輝度値の低い画素から高い画素へのエッジを強調するSobelフィルタと、輝度値の高い画素から低い画素へのエッジを強調するSobelフィルタである。以後これらのフィルタで変換した画像を順にSobel画像A、Sobel画像Bとする。
【0046】
図5にOCT断層像に対して2種類のSobelフィルタを適用した例を示す。図5(a)はSobel画像Aの例であり、特に、内境界膜と視細胞内節外節接合部のエッジが強調された画像になる。また、図5(b)はSobel画像Bの例であり、特に、神経線維層境界、内網状層、外網状層、網膜色素上皮が強調された画像になる。本ステップでは画像変換により、メディアン画像、Sobel画像A、Sobel画像Bを作成し、データサーバ113に保存する。
【0047】
但し、画像変換の方法はこれに限定されるものではなく、例えばメディアンフィルタの代わりに平均値フィルタのような平滑化フィルタを用いてもよい。さらに、本実施形態のような、平滑化フィルタやエッジ強調フィルタの他に、ガンマ補正のような階調変換フィルタやモルフォロジーフィルタなどを用いて画像変換を行ってもよい。また、画像変換を行わず、原画像輝度値のまま、次ステップの入力としてもよい。
【0048】
(ステップS403)
ステップS403において、輝度情報生成部105はステップS402で変換した画像から輝度情報を生成する。
【0049】
本実施形態では、所定位置の画像領域で深度方向に、1画素単位で輝度値を調べ、輝度情報としてプロファイルを作成する。所定位置はAスキャンラインすなわち深さ方向に並んだ一次元の画像領域とする。A−Scanラインとは画像における深さ方向の画素の列を指す。プロファイル画像の深さ方向はOCTにおける軸方向のスキャン(Aスキャン)の方向と一致する。必ずしもAスキャンが行われた位置に対応する画素列でなくてもよい。本実施形態では幅256pixel、高さ250pixelの断層像に対して、幅5pixel間隔でA−scanラインを走査するため、一枚のBスキャン画像に対して50本のA−scanラインを網膜層境界の特定対象とする。これらの各A−scanラインでプロファイルが生成される。これを、前ステップから入力された変換画像についてそれぞれ行い、データサーバ113に保存する。記憶部111に保存してもよい。
【0050】
但し、輝度情報の作成方法はこれに限定されるものではなく、例えば1画素単位ではなく、複数の画素からなるブロック領域を用いて作成してもよい。 さらに、A−Scanラインを走査する間隔もこれに限定されるものではない。
【0051】
(ステップS404)
ステップS404において、検出部106はステップS403で作成した輝度情報から特徴領域を取得する。
【0052】
本実施例では、Sobel画像Aから作成されたプロファイルを調べ、そのうち所定の閾値以上である領域を特徴領域として取得する。Sobel画像は画像のエッジを強調する画像であり、深さ方向の輝度変化が所定の閾値以上となっている領域を意味する。以下、この領域をピーク領域またはピークと称する。
【0053】
ある断層像からピークを検出する例を、図6を用いて説明する。図6のOCT断層画像で、A6は断層画像中の一つのA−scanライン(画素列)を表す。
【0054】
PSA6はA−scanラインA6のSobel画像Aのプロファイル、PSB6はA−scanラインA6のSobel画像Bのプロファイルを表す。ステップS302で説明したとおり、Sobel画像A、Bのプロファイルは特定の網膜層境界が強調され、輝度変化のグラフにおいてピークとして現れる。本実施形態では、閾値Thを設定し、この閾値以上の領域の領域だけをピークとみなす。この閾値が本発明における所定の閾値または第一の閾値に相当する。このようにピークをA−Scanライン毎に検出し、それぞれのピークの位置、大きさをデータサーバ113に保存する。ここでピークの位置及び大きさとは、ピーク領域における極大点の位置及び大きさとする。このピークの極大となる点を特徴点とする。本実施例では、検出部106がこのピークの位置を層境界の位置として取得する。この段階では、位置が特定された層境界がどの種類であるかは特定されていない。
【0055】
なお、特徴領域の検出方法はこれに限定されるものではない。また、特徴点も極大値のみでなく、例えばプロファイルの最大点や最小点など、特徴領域内の点を採用してよい。
【0056】
以下、ステップS405及びS406において、検出部106の検出した層境界またはエッジに基づいて構造判定部1071が構造を判定する処理を行う。本実施例では、各Aスキャンラインにおいて存在する層境界の種類を決定する。
【0057】
(ステップS405)
ステップS405において、テンプレート選択部107では、ステップS404で検出した特徴点からおおよその網膜層構造を把握する。そして、その層構造に応じてテンプレートを選択する。これにより、検出部106が取得した位置の層境界のいずれかが対応する層境界の種類が決定することとなる。そして、層境界特定部108はステップS404にて取得した位置とテンプレート情報とを用いて、層境界の種類との対応関係を特定する。
【0058】
本ステップの詳しい処理は図7のフローチャートを用いて説明する。図7のフローチャートではA−scanライン単位で処理する。全てのA−scanラインで、図7のフローチャートの処理を終えたら、ステップS406へ進む。
【0059】
(ステップS406)
ステップS406において、層境界補間部109では、網膜層境界が特定されていないA−scanラインにおいて、網膜層境界を補間する。
【0060】
本ステップの詳しい処理は図8のフローチャートを用いて説明する。図8のフローチャートではA−scanライン単位で分岐しながら処理されていく。全てのA−scanラインで、図8のフローチャートの処理を終えたら、ステップS407へ進む。
【0061】
(ステップS407)
ステップS407において、所定間隔のA−scanライン毎に特定した内境界膜または視細胞内節外節接合部の境界点をつなぎ合わせ、表示制御部110が表示部112に表示させる。
【0062】
このように、画像上の特徴から特定すべき層境界の種類を決定することにより、層境界の種類を特定する誤りを減らすことができる。また、テンプレートを選択して適用し、層境界を特定することにより、画像上の特徴に合わせて層境界の位置を特定することができるため、層境界の位置の精度または信頼性を向上させることができる。
【0063】
次に図8に従い、上述のステップS405においてテンプレート選択部107及び層境界特定部108が実行する処理の流れを説明する。
【0064】
(ステップS701)
ステップS701において、テンプレート選択部107は解析の対象とする画素列(Aスキャンライン)を選択する。この画素列は、水平方向に対して5画素間隔で深さ方向に並ぶ画素列を順に選択していく。なおこれに限らず間隔は任意に設定してよい。
【0065】
(ステップS702)
ステップS702において、テンプレート選択部107では、A−scanライン毎に特徴点を数え、特定対象とする層境界の種類を決定する。特徴点の数が二つである場合には、内境界膜の界面と視細胞内接外節接合部の界面を特定すべき層境界として決定し、ステップS703に進む。特徴点の数が二つでない場合にはステップS705へと進む。
【0066】
具体的な処理は図8を用いて説明する。図8は網膜の断層画像であり、A81とA82は断層像中のA−scanラインを表す。PSA81とPSA82はSobel画像Aから求めたプロファイルを表す。網膜層を把握するために、プロファイル中のピークを数える。図8に示された断層画像では、血管V1による偽像が発生し視細胞内節外節接合部が画像中に現れないA−scanラインが存在している。そのため、A−scan ライン毎にSobel画像Aのプロファイル中のピークを数え、ピークが二つ存在するとき、そのA−scanラインには内境界膜及び視細胞内節外節接合部が画像中に存在する可能性が高いと判定する。特定対象の層境界の種類は内境界膜及び視細胞内節外節接合部と決定する。その後、ステップS702へ進む。ピークが一つ存在するとき、そのA−scanラインには内境界膜だけが画像中に存在する可能性が高いと判定し、特定対象の層境界の種類は内境界膜と決定する。ステップS303へ進む。ピークが二つでも一つでもないとき、ノイズが存在する可能性が高い判定し、特定対象の層境界の種類はなしと決定する。そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0067】
(ステップS703)
ステップS703において、テンプレート選択部107は特徴点すなわちエッジとして検出される層境界の数に応じたテンプレートを記憶部111から選択する。
【0068】
(ステップS704)
層境界特定部108では、ステップS702において、内境界膜・視細胞内節外節接合部が存在する可能性が高いと判定されたA−scanラインに対して各層境界の特定を行う。ここで、テンプレート情報を用いて二つの特徴点の位置を浅い方から順に内境界膜の界面、視細胞内節外節接合部の界面として特定する。
【0069】
なお以下のような処理をすることも可能である。具体的な処理は図9を用いて説明する。図9は網膜の断層像であり、A9は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSA9はSobel画像Aから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSA9とする)、PMD9はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD9)である。また、本ステップでは内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE9(以後、プロファイルPRE9)を用意する。プロファイルPRE9は内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。ここで典型例とは、ノイズが存在せず、且つ、内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層が存在するA−scanラインにおける、各層の輝度の傾向を示したものである。例えば、内境界膜と視細胞内節外節接合部の間の輝度値を見たとき、神経線維層や内網状層が存在するために、内境界膜寄りの方が輝度値が高い傾向にある。そのような輝度の特徴を示すプロファイルPRE9を作成しておく。なお、このプロファイルPRE9は各網膜層の輝度の傾向と位置関係が参照できればよく、部位によって変化する各網膜層の厚さには対応させないため、内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層が存在するA−scanラインであればどこでも使用することができる。これを用いて、二つのピークが内境界膜・視細胞内節外節接合部に当てはまるか否かを判定する。
【0070】
まず、プロファイルPSA9における各ピーク間の平均輝度値を算出する。輝度値はプロファイルPSA9の位置に対応したプロファイルPMD9の値を用いる。プロファイルPSA10における2つのピークを、浅い位置から第一ピーク、第二ピークとする。平均輝度値を算出する範囲は、第一ピークと第二ピーク間(以後、ピーク間A1とする)、第一ピークと第二ピークの間を二等分し、第一ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A11とする)と第二ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A12とする)である。また、背景(画像中の網膜層以外の領域)の平均輝度値も算出する。本実施形態ではメディアン画像に対して経験的に決定した閾値を用いて二値化し、閾値以下の領域だけを対象にして平均輝度値を算出する。但し、背景の平均輝度値の算出方法はこれに限定されるものではなく、二値化における閾値の決定を判別分析法やP−tile法などを用いて決定してもよい。また、網膜層の存在しない画像の上端や下端の輝度値を用いて平均輝度値を算出してもよい。
【0071】
次にプロファイルPRE9に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。プロファイルPRE9から、平均輝度値において、ピーク間A1>背景の平均輝度値、ピーク間A11>ピーク間A12という条件が導かれる。これらに算出した平均輝度値を当てはめて、内境界膜・視細胞内節外節接合部の二層の妥当性を確かめる。条件を全て満たしたとき、第一ピーク、第二ピークはそれぞれ内境界膜・視細胞内節外節接合部の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を一つでも満たさないものがあったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0072】
(ステップS705)
ステップS705において、テンプレート選択部107は、Aスキャンライン上のエッジの数が一つであるか否かを判定する。一つと判定された場合には、内境界膜の界面を特定すべき層境界として特定する。ステップS706に進む。0または3以上と判定された場合には、適切なテンプレートが存在しないとして、ステップS708に進む。このように、層境界が存在するとしても、適切なテンプレートが存在しないと判定される場合には、層境界の検出の誤りがある可能性が高いとして特定を行わない。これにより、Aスキャンライン全体の情報を用いて、当該Aスキャンラインにおける層構造の判定を行うため、ノイズや構造の変化に強い層構造の判定が実現されることとなる。
【0073】
(ステップS706)
ステップS706において、テンプレート選択部107は、特徴点が一つの場合のテンプレートを選択して、記憶部111から取得する。
【0074】
(ステップS707)
層境界特定部108は内境界膜だけが画像中に存在する可能性が高いと判定されたA−scanラインに対して各層境界の特定を行う。
【0075】
ここで、テンプレート情報を用いて一つの特徴点の位置を内境界膜の界面として特定する。
【0076】
なお以下のような処理をすることも可能である。具体的な処理は図10を用いて説明する。図10は網膜の断層像であり、A10は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSA10はSobel画像Aから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSA10とする)、PMD10はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD10)である。また、本ステップでは内境界膜の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE10(以後、プロファイルPRE10)を用意する。この参照用プロファイルは内境界膜と、その下に偽像が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。これを用いて、ピークが内境界膜に当てはまるか否かを判定する。
【0077】
本ステップでは、プロファイルPSA10とプロファイルPMD10を用いて、ピーク前後の所定の範囲内における平均輝度値を算出する。具体的には、A−scanライン上で、ピークの前後10画素(以後、ピーク上B1、ピーク下B2とする)をそれぞれ算出範囲とする。
【0078】
次にプロファイルの典型例に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。PRE10から、平均輝度値において、ピーク上B1<ピーク下B2という条件が導かれる。これらを算出した平均輝度値を当てはめて、内境界膜の妥当性を確かめる。条件を満たしたとき、ピークは内境界膜の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を満たさなかったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0079】
(ステップS708)
ステップS708にて、層境界特定部108が特定対象とする全てのAスキャンラインが選択されたか否かを判定する。テンプレートが存在するとしないとに関わらずステップS701にて選択されたか否かが判定の基準とする。網膜層境界の特定対象となっている全てのA−scanラインが図7のフローチャートの処理を終了したらステップS406へ進む。ステップS708にて未だ選択されていないAスキャンラインがあると判定された場合には、ステップS701の処理に進む。
【0080】
このように、水平方向に対する所定の間隔でAスキャンラインに対して特徴点であるエッジの数に応じて特定すべき層境界の種類を決定するため、画像における構造や特徴の変化に対応して層境界の種類を特定することができる。また、特徴点の数に応じたテンプレート情報に基づいて層境界の位置及び種類を特定するため、画像における構造や特徴の変化に対応して層境界の種類及び位置を特定することができる。
【0081】
次に層境界補間部109がステップS406にて行う処理の詳細について図11のフローチャートに従い説明する。この補間処理は層境界の種類毎に行われるものであり、例えば内境界膜の界面の補間処理として行われる。
【0082】
(ステップS1101)
ステップS1101において、層境界補間部109では、層境界の位置の特定対象とするAスキャンラインを選択する。ここでは、先述のステップS405の処理において層境界の位置が特定されていないAスキャンラインが選択される。ここで、層境界の位置が特定されていないAスキャンラインとは、テンプレートが存在しなかったAスキャンラインである。
【0083】
(ステップS1102)
層境界補間部109は、層境界を特定できていないA−scanラインを中心とした局所領域(以後、近傍領域とする)を考え、その領域内の特定されている網膜層境界の座標を基に補間する。具体的な説明は図12を用いて行う。図中のA12は網膜層境界が特定されていないA−scanラインであり、RはそのA−scanラインを中心とした近傍領域であり、近傍領域内に所定の本数のA−scanラインが含まれるように範囲を設定する。この近傍領域は、網膜層境界の特定対象となっているA−scanラインを中心に、周囲9×9本のA−scanラインが存在する範囲とする。ここで層境界補間部109が、特定対象とするAスキャンラインの近傍領域内に網膜層境界が特定されているA−scanラインが所定の数より下回ると判定した場合、補間処理を行ったとしてもその信頼性は低い。この場合ステップS1107へ進み、補間処理は行わない。所定の数を上回るA−scanラインが近傍領域内に存在する場合にのみ、ステップS1103へと進み、補間処理を行う。所定の数を下回ったA−Scanラインについては、ステップS1101乃至S1107を繰り返すことで、徐々に近傍領域内の網膜層境界が特定されてゆき、所定の数を上回った時点で補間処理が行われることとなる。本実施形態では、所定の数を近傍領域内に存在する、網膜層境界の特定対象となっているA−scanラインの半数、つまり40とする。
【0084】
(ステップS1103)
ステップS1103において、層境界補間部109では、本ステップまでに網膜層境界を特定できていないA−scanラインについて、網膜層境界を特定するための特徴量を算出する。特徴量は本ステップまでに網膜層境界が特定されているA−scanラインの情報から算出される。
【0085】
本実施例では、網膜層境界を特定できていないA−scanラインを中心とした局所領域(以後、近傍領域とする)を考え、その領域内の特定されている網膜層境界を基に基準位置を算出する。図12のような網膜層境界が特定されていないA−scanラインを中心とした近傍領域を考える。近傍領域内で特定されている各網膜層境界のz座標平均値を求めて基準位置とする。基準位置を算出するか否かの判定条件もステップS402と同様に、近傍領域内に網膜層境界が特定されているA−scanラインが所定の数より大きいか小さいかで行う。基準位置を算出したら、層境界補間部109では、で算出した各層の基準位置を用いて層境界が存在すると考えられる画像領域を探索範囲として決定する。この探索範囲内においてA−scanラインの網膜層境界を特定する。基準位置として算出した各網膜層のz座標平均値を用いて、その座標値の前後、所定の深さ方向の範囲内を網膜層境界の探索範囲とする。本実施形態では、所定の範囲はz座標平均値の上下5画素とする。
【0086】
なお、これに限らず探索範囲の設定は種々の形態を取ることができる。例えば、画像のノイズが少ない場合には探索範囲を大きく取ることでより正確に層境界の特定を行うことができる。また、層構造が比較的単調で平坦な場合には、探索範囲をそれほど大きく取る必要がないため、周囲の層構造の情報を用いて探索範囲を変えてもよい。
【0087】
更には、ノイズの等方性などを利用して画像全体または処理対象のAスキャンラインからノイズ成分を抽出し、局所的にノイズと信号成分を分離してもよい。
【0088】
(ステップS1104)
S1104にて、層境界補間部109は探索範囲内でSobel画像Aのプロファイルにおけるピーク領域を探索する。ピーク領域とは、Sobel画像Aのプロファイルにおける所定以上大きい極大値の付近の領域である。これは断層画像において輝度変化が所定の閾値を超える領域に対応する。この所定の閾値が本発明における第二の閾値に相当する。
【0089】
探索範囲を限り、その中でピークを探すこととなるため、ステップS404にて検出部106が設定した第一の閾値よりも小さな閾値で小さなピーク領域を見つけることができる。また、近傍領域において特定済みの層境界の深さ方向の位置の平均値に基づいて探索範囲を設定するため、層境界が存在する確率の高い領域を設定することができる。
【0090】
(ステップS1105)
層境界補間部109は、ピーク領域が存在するか否かを判定する。存在すると判定した場合には、補間対象となる層境界の存在位置が特定できると考えられるためステップS1106に進み補間処理を続行する。存在しないと判定した場合には、補間処理の信頼性が低くなると考えられるため、補間処理を行わずステップS1107へと進む。
【0091】
なお、ステップS1105においてピーク領域が存在しないとき、その探索範囲内のSobel画像Aのエッジ成分が一番大きな位置を網膜層境界と特定してもよい。
【0092】
(ステップS1106)
層境界補間部109は、ピーク領域のうち、最も輝度変化が大きい位置を境界の位置として特定する。
【0093】
(ステップS1107)
層境界補間部109は、特定対象となる全Aスキャンラインにおいて層境界が特定されたか否かを判定し、未特定のAスキャンラインがある場合にはステップS1101に進み、補間処理が行われる。全Aスキャンラインにおいて層境界が特定された場合には、処理を終了する。なお、処理時間やループの回数によって処理を打ち切ってもよい。また、S1101からS1107のループを所定回数繰り返しても特定済みのAスキャンラインの数が変わらない場合には処理を打ち切るとしてもよい。
【0094】
このように、特定済みの層境界の深さ方向の位置に基づいて探索範囲を定め、この探索範囲内の輝度変化に基づいて層境界の位置を特定する。これによりAスキャンライン全体における輝度変化に基づいて層境界を特定する場合に比べて精度を向上させることができる。また、探索範囲内を限ることにより、ピークを探索する際の閾値をより小さくすることができるため、より小さな輝度変化から層境界の位置を特定することができる。
【0095】
以上、本実施例では、被検眼の断層像中の網膜層境界を特定する処理において、近傍領域における各網膜層の輝度値や境界の位置を算出し、その情報に基づいた網膜層境界の特定条件を設定する。これにより、網膜層の輝度値や層構造が変化しても間違えることなく網膜層境界を特定することができる。例えば、OCTでは同一の網膜層であっても、部位によってプロファイルが大きく変化する。そのような輝度値の変化が起きても、近傍領域から各網膜層の情報を使うことで、特定対象となっている部位に適した網膜層境界の特定条件を設定することができ、精度よく網膜層境界を特定することができる。また、個人差や機種による輝度値の傾向の違いについても、手作業による閾値の調整を行わずに、入力された画像から、適切な網膜層境界の特定条件を設定することができる。よって、眼部を撮影した光干渉断層画像において、異なる複数の構造が現れる場合であっても、層境界の種類を特定する際の誤りを減らすことができる。
【実施例2】
【0096】
実施例2では、本発明を神経線維層の界面、内網状層の界面、外網状層の界面の特定に適用した例である。また、本実施例ではテンプレート情報の選択後に、画像のプロファイルとテンプレート情報とが適合するか否かを判定する。この判定部はテンプレート選択部が兼ねるが、判定部として機能する回路を別途設けてもよい。
【0097】
ここで、内境界膜の界面と視細胞内節外節接合部の界面は予め特定されているものとする。神経線維層・内網状層・外網状層の構造に応じた参照用プロファイルをそれぞれ用意し、Sobel画像Bのプロファイルから求めた特徴点の数によって、参照用プロファイルを切り換えることで各網膜層境界を特定する。
【0098】
本実施例では、選択されたテンプレートが適切か否かを判定する際に、輝度変化のピーク位置の上下の領域の輝度値を用いる。網膜の各層毎の反射率が違うため、この層領域の輝度値を用いることにより、より層境界及び層の種類の特定を正確に行うことが可能である。
【0099】
画像処理システムの構成については実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0100】
図13に記載のフローチャートに従い、画像処理装置101が実行する処理の流れを説明する。なお、実施例1における処理と同様の部分については説明を省略する。
【0101】
(ステップS1304)
ステップS1304では、内境界膜の界面と、視細胞内節外節接合部の界面とを特定する。この処理は、実施例1のように特定しても、その他の方法で特定してもよい。例えば、これら層境界の位置が予め特定されている断層画像を取得して、その特定された位置データを用いてもよい。この内境界膜の界面と視細胞内節外節接合部の界面の位置を利用して、神経線維層の界面、内網状層の界面、及び外網状層の界面を特定する。
【0102】
(ステップS1306)
ステップS1306では、テンプレート選択部107がテンプレート情報を選択し、層境界特定部108が層境界を特定する処理を行う。詳細は後述するが、テンプレートの選択処理の後に、選択されたテンプレート情報と断層画像のプロファイルとが適合するか否かを判定する処理を行う点が実施例1と異なっている。
【0103】
(ステップS1307)
ステップS1307では、ステップS1306で特定できなかった層境界の位置を補間する処理を行う。詳細は後述するが、探索範囲内で発見されたピーク領域のうち、算出された平均Z座標に最も近いピーク領域のピーク位置を層境界の位置として特定する点が実施例1と異なっている。
【0104】
上述のステップS1306にてテンプレート選択部107及び層境界特定部108が行う処理の流れを図14のフローチャートに従い説明する。なお、実施例1の処理と共通する部分については説明を省略する。
【0105】
(ステップS1402)
ステップS1402の処理は、実施例1のステップS702、S703、S705、S706の処理をまとめて表現したものである。具体的な処理は図15を用いて説明する。図15は網膜の断層像であり、A151とA152は断層像中のA−scanラインを表す。PSB151とPSB152はSobel画像Bから求めたプロファイルを表す。なお、層構造判定処理に用いるプロファイルの深度方向の範囲は、予め特定された内境界膜の界面及び視細胞内節外節接合部の界面を上端・下端としているため、図15のPSB151、PSB152において、実線で描かれている範囲だけが処理に用いられる。
【0106】
網膜層を把握するために、テンプレート選択部107は内境界膜から視細胞内節外節接合部までの範囲で、プロファイル中のピークを数える。図15にて示されるように、神経線維層が画像中に現れないA−scanラインも存在する。このような状況にも対応するため,A−scan ライン毎にSobel画像Bのプロファイル中のピークを数え、ピークが三つ存在するとき、そのA−scanラインには神経線維層・内網状層・外網状層が存在する可能性が高いと判定する。これら各層が処理対象となっているA−scanラインにおいて存在する層境界または層の候補であり、ピークの位置がこれら各層の位置の候補となる。そして、ピークの数が三つの場合に対応する参照プロファイルを選択する。ピークが二つ存在するとき、そのA−scanラインには内網状層・外網状層が存在する可能性が高いと判定する。これら各層が、処理対象となっているA−scanにおいて存在する層の候補であり、ピークの位置がこれら各層の位置の候補とある。そしてこの場合、テンプレート選択部107は、ピークの数が二つの場合に対応する参照プロファイルを選択する。
【0107】
なお、本実施例において各層境界を特定する際にはSobel画像Bを用いている。このSobel画像Bは深さ方向に対して輝度値が大きい側から小さい側へと変わるいわゆる下側へのエッジを抽出した画像である。
【0108】
(ステップS1403)
ステップS1403において、テンプレート選択部107は処理対象のAスキャンラインに対して参照プロファイルが選択されたか否かを判定する。選択されている場合には層境界の特定処理に入ることができるためステップS1404に進む。選択されていないと判定された場合には、ノイズが多く層境界の特定ができないとして次のAスキャンラインに対してテンプレートの選択をする処理に移るためにステップS1408へと進む。
【0109】
(ステップS1404)
ステップS1404において、判定部では、ステップS1403において選択されたテンプレートが処理対象のAスキャンラインに適合するか否かを判定するために、各特徴点間の輝度の平均値を算出する。
【0110】
(ステップS1405)
ステップS1405において、判定部では、算出した各特徴点間の輝度値の大小関係と、テンプレート情報である参照プロファイルの輝度情報と比較する。
【0111】
(ステップS1406)
ステップS1406にて、判定部は比較の結果からテンプレート情報が処理対象のAスキャンラインに適合するか否かを判定する。適合すると判定した場合は層境界の特定処理が可能としてステップS1407に進み、適合しないと判定した場合にはテンプレートが決まらないため、特定を行わず、ステップS1408に進む。
【0112】
ステップS1407及びステップS1408の処理については実施例1と動揺であるため説明を省略する。
【0113】
ステップS1404からS1406までの具体的な処理を説明する。
【0114】
特徴点が3つである場合の具体的な処理を図16を用いて説明する。図16は網膜の断層像であり、A16は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSB16はSobel画像Bから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSB16とする)、PMD16はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD16)である。また、本ステップでは神経線維層・内網状層・外網状層の三層の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE16(以後、プロファイルPRE16)を用意する。プロファイルPRE16は神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。ここで典型例とは、ノイズが存在せず、且つ、神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインにおける、各層の輝度の傾向を示したものである。例えば、神経線維層の輝度値は内網状層・外網状層の輝度値よりも高い傾向が経験的にわかっており、そのような輝度の特徴を示すプロファイルPRE16を作成しておく。なお、このプロファイルPRE16は各網膜層の輝度の傾向と位置関係が参照できればよく、部位によって変化する各網膜層の厚さには対応させないため、神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインであればどこでも使用することができる。これを用いて、三つのピークが神経線維層・内網状層・外網状層に当てはまるか否かを判定する。
【0115】
まず、プロファイルPSB16における各ピーク間の平均輝度値を算出する。輝度値はプロファイルPSB16の位置に対応したプロファイルPMD16の値を用いる。プロファイルPSB17における三つのピークを、浅い位置から第一ピーク、第二ピーク、第三ピークとする。平均値を算出する範囲は、内境界膜と第一ピーク間、第一ピークと第二ピーク間、第二ピークと第三ピーク間、第三ピークと視細胞内節外節接合部間とする。これらを順にピーク間A1、ピーク間A2、ピーク間A3,ピーク間A4とする。さらに第二ピークと第三ピークの間を二等分し、第二ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A31とする)と第三ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間A32とする)についても、プロファイルPMD16から平均輝度値を算出する。
【0116】
次にプロファイルPRE16に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。プロファイルPRE16から、平均輝度値において、ピーク間A1>ピーク間A2、ピーク間A1>ピーク間A3、ピーク間A3>ピーク間A4、ピーク間A31<ピーク間A32という条件が導かれる。これらに算出した平均輝度値を当てはめて、神経線維層・内網状層・外網状層の三層の妥当性を確かめる。条件を全て満たしたとき、第一ピーク、第二ピーク、第三ピークはそれぞれ神経線維層・内網状層・外網状層の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を一つでも満たさないものがあったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0117】
特徴点が3つである場合の具体的な処理を図17を用いて説明する。図17は網膜の断層像であり、A17は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PSB17はSobel画像Bから求めたプロファイル(以後、プロファイルPSB17とする)、PMD17はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD17)である。また、本ステップでは内網状層・外網状層の二層の境界を特定するため、メディアン画像から求めたプロファイルの参照用プロファイルPRE17(以後、プロファイルPRE17)を用意する。この参照用プロファイルは内網状層・外網状層の二層が存在するA−scanラインのプロファイルの典型例である。典型例はステップS1402の考え方と同様に、ノイズが存在せず、且つ、内網状層・外網状層の二層が存在するA−scanラインにおける、各層の輝度の傾向を示したものであり、対象の二層が存在するA−scanラインであればどこでも使用することができる。これを用いて、二つのピークが内網状層・外網状層に当てはまるか否かを判定する。
【0118】
本ステップでも、まず、プロファイルPSB17とプロファイルPMD17を用いて、各ピーク間の平均輝度値を算出する。プロファイルPSB17における2つのピークを、浅い位置から第一ピーク、第二ピークとする。平均輝度値を算出する範囲は、内境界膜と第一ピーク間、第一ピークと第二ピーク間、第二ピークと視細胞内節外節接合部間とする。これらピーク間を順にピーク間B1、ピーク間B2、ピーク間B3とする。さらに第一ピークと第二ピークの間を二等分し、第一ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間B21とする)と第二ピークに近い方の範囲(以後、ピーク間B22とする)についても、プロファイルPMD17から平均輝度値を算出する。
【0119】
次にプロファイルの典型例に習って、算出した平均輝度値の大小関係を比較する。PRE17から、平均輝度値において、ピーク間B1>ピーク間B2、ピーク間B2>ピーク間B3、ピーク間B21<ピーク間B22という条件が導かれる。これらを算出した平均輝度値を当てはめて、内網状層・外網状層の二層の妥当性を確かめる。条件を全て満たしたとき、第一ピーク、第二ピークはそれぞれ内網状層・外網状層の境界として特定され、データサーバ113に保存される。条件を一つでも満たさないものがあったとき、そのA−scanラインでは網膜層境界を特定しない。
【0120】
このように、特徴点の数に応じて選択されたテンプレートが処理対象となるAスキャンラインに適合するか否かを判定することにより、テンプレート選択の誤りに起因する層境界の特定の誤りを軽減することができる。また、テンプレート情報の適合を判断する際に、境界間の領域の輝度値を用いることで、層境界の同定の誤りを減らすことができる。
【実施例3】
【0121】
本実施例は、アルゴリズム切り換え部において、Sobel画像のプロファイルにおけるピークの数ではなく、プロファイル同士のパターンマッチングによってアルゴリズムを切り換える実施例である。具体的には、処理対象となるメディアン画像のプロファイルと各参照用プロファイルを位置合わせし、対応する信号間の距離を算出する。そして、その距離の累積値が最も小さい参照プロファイルの層構造に従って、網膜層境界特定のアルゴリズムを切り換える。本実施形態では、神経線維層・内網状層・外網状層を特定する際のアルゴリズム切り換えを例に説明する。
【0122】
本実施例におけるテンプレート選択部107及び層境界特定部108が実行する処理の流れを示すフローチャートを図18に示す。なお、実施例2において図14のフローチャートに示される処理と同様の処理については説明を省略する。
【0123】
(ステップS1802)
ステップS1802において、テンプレート選択部107では、A−scanライン毎に全ての参照用プロファイルとの類似度を算出し、その類似度を基にアルゴリズムを切り換える。ここで、類似度とは、パターンマッチング手法によるプロファイル同士の比較によって算出されるものであり、その算出方法は下記に示す。
【0124】
具体的な処理は図19を用いて説明する。図19のA19は断層像中の一つのA−scanラインを表す。PMD190はメディアン画像から求めたプロファイル(以後、プロファイルPMD190)である。PRE191は神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在する場合の参照用プロファイル(以後、プロファイルPRE191)であり、RPE192は内網状層・外網状層の二層が存在する場合の参照用プロファイル(以後、プロファイルPRE192)である。
【0125】
まず、処理対象となるA−scanラインのメディアン画像プロファイルと各参照用プロファイルの位置合わせを行う。位置合わせはステップS1406までに特定した内境界膜・視細胞内節外節接合部の位置を基に行う。プロファイルPMD190の内境界膜・視細胞内節外節接合部の位置を端として合わせて、プロファイルPRE191、プロファイルPRE192を伸縮させる。そして、図20にて示されるPMT201・PMT202のように、プロファイルPMD190に、プロファイルPRE191・プロファイルPRE192をそれぞれ重ね合わせて、対応する点同士の距離を算出していく。ここでの距離は位置合わせ後のプロファイルにおいて、同じz座標でのx座標の差とする。この距離の累積値を各参照用プロファイルについて算出する。
【0126】
(ステップS1803)
ステップS1803では、テンプレート選択部107は算出した類似度に応じて最も適するテンプレートを選択する。ここではテンプレート選択部107累積値の最も低い(つまり、類似度が最も高い)参照用プロファイルの構造に沿ったテンプレートを選択する。選択されたテンプレート情報には、層境界の位置及び種類の情報が対応付けられているため、テンプレート選択部107により処理対象となるAスキャンラインにおいて特定されるべき層境界の種類が決定されることとなる。本実施形態では、プロファイルPRE191との類似度が高い場合、そのA−scanラインには神経線維層・内網状層・外網状層が存在する可能性が高いと判定し、ステップS1804へ進む。
【0127】
このように、パターンマッチング処理を行ってテンプレートを選択し、テンプレート情報に基づいて層境界の位置及び種類を特定するため、画像における構造や特徴の変化に対応して層境界の種類及び位置を特定することができる。
【0128】
なお、本実施例のようにパターンマッチングによるテンプレート選択を行う場合には、算出された類似度が高い場合には実施例2のような適合性の判定処理を行わなくてもよい。類似度が高ければ、適合していると考えられるからである。この場合、特徴点の数に応じた選択処理とその後の判定処理とを行う場合に比べて処理を簡略化することができる。また逆に、実施例2において、判定部が行う適合性の判定処理として本実施例に特徴的なパターンマッチング処理を行い、算出された類似度が所定の閾値を超えるか否かに応じて判定を行ってもよい。
【0129】
また、本実施例におけるテンプレートは、予め層境界が特定された断層画像のプロファイルの平均またはメディアンを取って作成される参照用のプロファイルそのものであってもよい。
【実施例4】
【0130】
本実施例は、層境界補間部109が実行する補間処理において、探索範囲内における輝度変化のピークのうち、特定済みの層境界の深さの平均値に最も近い位置を層境界の位置として特定する。本実施例では、神経線維層の界面、内網状層の界面、外網状層の界面についての補間処理を説明する。
【0131】
本実施形態における網膜層境界補間処理のフローチャートを図21に示す。なお、実施例1の図11に示される処理と重複する部分については説明を一部省略する。
【0132】
(ステップS2103)
ステップS2103において、層境界補間部109では、本ステップまでに網膜層境界を特定できていないA−scanラインについて、網膜層境界を特定するための特徴量を算出する。特徴量は本ステップまでに網膜層境界が特定されているA−scanラインの情報から算出される。本実施形態では、網膜層境界を特定できていないA−scanラインを中心とした局所領域(以後、近傍領域とする)を考え、その領域内の特定されている網膜層境界を基に特徴量を算出する。特徴量の算出はステップS1103と同様に、図12のような網膜層境界が特定されていないA−scanラインを中心とした近傍領域を考える。近傍領域内で特定されている各網膜層境界のz座標平均値を求めて特徴量とする。特徴量を算出するか否かの判定条件もステップS1102と同様に、近傍領域内に網膜層境界が特定されているA−scanラインが所定の数より大きいか小さいかで行う。この特徴量として算出した各網膜層のz座標平均値を用いて、層境界補間部109はその座標値の前後、所定の範囲内を網膜層境界の探索範囲として設定する。本実施形態では、所定の範囲はz座標平均値の前後5画素とする。
【0133】
(ステップS2106)
探索範囲内でSobel画像Bのプロファイルにおけるピークが探索され、ピークが存在したとき、層境界補間部109はその中で所定の閾値以上一番大きなピークを網膜層境界として特定する。そのようなピークが二つ以上ある場合には、算出されたZ座標の平均値に最も近い位置のピークを層境界の位置として特定する。これは、複数の層境界が近接して存在する場合に、一つの層境界を特定するための探索範囲内に2以上の層境界が含まれる場合に対応して、近傍領域において特定済みの層境界の深さの平均値に最も近いピークを選択することとしたものである。これにより、層境界を精度よく特定することができる。
【0134】
図22は神経線維層・内網状層・外網状層の三層が存在するA−scanラインにおけるSobel画像Bのプロファイルの例である。図22のプロファイルPSB220はノイズ等の影響によりによって4つのピークが存在し、且つ、大きさからもどこが各網膜層境界であるか、判断が難しい。しかし、近傍領域から算出したz座標平均値を基に本ステップS2104により設定される神経線維層境界の探索範囲CN、内網状層の境界の探索範囲CI、外網状層の境界の探索範囲COを用いることで、各網膜層境界を精度よく特定することができる。
【0135】
このように、ピークの位置が複数発見されても、既に特定済みのZ座標平均値に最も近いピークの位置を層境界の位置として特定することにより、網膜層境界を精度よく特定することができる。
【0136】
(その他の実施例)
なお、上述した本実施形態における記述は本発明に係る好ましい画像処理装置の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、前記実施例1乃至4の画像処理装置101を、ソフトウェアを用いて実現することも可能である。その場合には、先述の各実施例における画像処理装置101の処理を実行するためのプログラムを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給する。そしてそのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されるものである。 この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例記載の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0137】
上述の実施例では、取得する複数の断層像群からなる三次元画像データに対して解析処理を行う場合について説明する。 しかし、三次元画像データから注目すべき二次元の断層像を選択して、選択した断層像に対して処理を行う構成であってもよい。例えば、予め定めた眼底の特定部位(例えば中心窩)を含む断層像に対して処理を行ってもよい。この場合、検出される層の境界等は、いずれも当該断面上における二次元のデータとなる。
【0138】
上述の実施例においては層境界を特定していたが、これに限らず、テンプレート情報を用いて層の種類及び位置を特定してもよい。この際には、層境界の位置に対応するエッジの輝度変化の大きさまたは輝度値、層領域の輝度値またはその大小関係等の情報がテンプレート情報として必要となる。テンプレート情報としては、黄斑部、視神経乳頭部、血管が存在する網膜の領域、または血管が存在しない網膜の領域などが考えられる。
【0139】
さらには、層境界の数や層領域の輝度値に基づいて黄斑部であるか否か、視神経乳頭部であるか否かなどの構造を判定することもできる。例えば、黄斑部であるか否か、視神経乳頭部であるか否か、その他の領域であるか否か、血管が存在する領域であるか否か、白斑が存在する領域であるか否か網膜はく離が存在する領域であるか否か、その他の網膜層の構造を判定することができる。または、断層画像に現れる特徴として、血管や白斑による偽像があるか否かを構造として判定することも可能である。
【0140】
上述の実施例における層境界の補間処理は、上述のテンプレートにより層境界を特定する処理とともに用いずともよい。例えば、その他の方法により層境界の一部分が特定されている場合に適用してもよい。
【0141】
なお、網膜に限らず、前眼部の断層画像であってもよい。前眼部も角膜、水晶体、硝子体等からなる層構造が形成されており、信号光の入射する方向つまり深さ方向に対して積層された層構造を有している。そのため前眼部の断層画像に対しても本発明を適用可能である。その場合には、前眼部の断層画像のプロファイルにおける複数の構造に対応した複数のテンプレートを記憶部111に保持しておく。
【0142】
上述の実施例では画像処理システム100により本発明を実施する例を示したが、これに限らず、画像処理装置101の機能を光干渉断層撮像装置内に実装してもよい。
【0143】
また上述の実施例では光干渉断層撮像装置により得られる断層画像を例に説明したが、これに限らず、超音波断層撮像装置その他の撮影対象の内部構造を画像化する装置により得られた断層画像に対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0144】
100 画像処理システム
101 画像処理装置
102 断層像取得装置
105 輝度情報生成部
106 検出部
108 層境界特定部
109 層境界補間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定手段と、
前記第一の特定手段により位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記第一の特定手段により位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置により定められる基準位置を含む範囲を探索範囲として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記基準位置を前記位置が特定された層境界の深さ方向の平均の位置とする
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記基準位置を前記位置が特定された層境界のうち前記位置が特定されなかった部分から所定の範囲に含まれる層境界の深さ方向の平均の位置とする
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第二の特定手段は、前記深さ方向の輝度変化に基づいて定められる前記部分の層境界の位置の候補が複数ある場合には、前記基準位置に最も近い前記候補の位置を前記部分の層境界の位置として特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第二の特定手段は、前記深さ方向の輝度変化が所定の閾値より大きい位置または前記深さ方向の輝度が極大となる位置のいずれかに基づいて前記部分の層境界の位置を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記第一の特定手段または前記第二の特定手段により位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を新たに設定し、
前記第二の特定手段は、前記新たに設定された探索範囲で深さ方向の輝度変化に基づいて前記位置が特定されなかった部分の層境界の位置を更に特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前記位置が特定された層境界と同一の層境界であって前記特定手段により特定されなかった部分の探索範囲を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
眼部の断層画像の深さ方向への輝度変化が第一の閾値以上となる位置に基づいて前記眼部の所定の層境界の位置を特定する第一の特定手段と、
前記位置が特定された前記層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記特定された前記層境界と同一の層境界であって前記第一の特定手段により位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲において断層画像の深さ方向への輝度変化が前記第一の閾値よりも小さい第二の閾値以上となる位置に基づいて前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記第一の特定手段は、前記撮影対象の異なる複数の位置に対応する断層画像に対して行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記撮影対象とは網膜であり、前記層境界は内境界膜の界面、神経線維層の界面、内網状層の界面、外網状層の界面、視細胞内節外節接合部の界面または網膜色素上皮の界面の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記断層画像は、光干渉断層撮像装置により形成された前記撮影対象の断層画像であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
光干渉断層撮像装置と、
前記光干渉断層撮像装置により撮像された眼部の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定手段と、
前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、
前記断層画像と、前記第一の特定手段及び第二の特定手段により特定された層境界の位置とを表示する表示手段と、
を有することを特徴とする画像処理システム。
【請求項14】
光干渉断層撮像装置により撮像された眼部の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定処理と、
前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する処理と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
光干渉断層撮像装置により撮像された眼部の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定部が特定する第一の特定ステップと、
前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定ステップと、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定部が特定する第二の特定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
撮影対象の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定手段と、
前記第一の特定手段により位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記第一の特定手段により位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置により定められる基準位置を含む範囲を探索範囲として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記基準位置を前記位置が特定された層境界の深さ方向の平均の位置とする
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記基準位置を前記位置が特定された層境界のうち前記位置が特定されなかった部分から所定の範囲に含まれる層境界の深さ方向の平均の位置とする
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第二の特定手段は、前記深さ方向の輝度変化に基づいて定められる前記部分の層境界の位置の候補が複数ある場合には、前記基準位置に最も近い前記候補の位置を前記部分の層境界の位置として特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第二の特定手段は、前記深さ方向の輝度変化が所定の閾値より大きい位置または前記深さ方向の輝度が極大となる位置のいずれかに基づいて前記部分の層境界の位置を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記第一の特定手段または前記第二の特定手段により位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を新たに設定し、
前記第二の特定手段は、前記新たに設定された探索範囲で深さ方向の輝度変化に基づいて前記位置が特定されなかった部分の層境界の位置を更に特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記設定手段は、前記位置が特定された層境界と同一の層境界であって前記特定手段により特定されなかった部分の探索範囲を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
眼部の断層画像の深さ方向への輝度変化が第一の閾値以上となる位置に基づいて前記眼部の所定の層境界の位置を特定する第一の特定手段と、
前記位置が特定された前記層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記特定された前記層境界と同一の層境界であって前記第一の特定手段により位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲において断層画像の深さ方向への輝度変化が前記第一の閾値よりも小さい第二の閾値以上となる位置に基づいて前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記第一の特定手段は、前記撮影対象の異なる複数の位置に対応する断層画像に対して行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記撮影対象とは網膜であり、前記層境界は内境界膜の界面、神経線維層の界面、内網状層の界面、外網状層の界面、視細胞内節外節接合部の界面または網膜色素上皮の界面の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記断層画像は、光干渉断層撮像装置により形成された前記撮影対象の断層画像であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
光干渉断層撮像装置と、
前記光干渉断層撮像装置により撮像された眼部の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定手段と、
前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定手段と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定手段と、
前記断層画像と、前記第一の特定手段及び第二の特定手段により特定された層境界の位置とを表示する表示手段と、
を有することを特徴とする画像処理システム。
【請求項14】
光干渉断層撮像装置により撮像された眼部の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定する第一の特定処理と、
前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する処理と、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定する第二の特定処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
光干渉断層撮像装置により撮像された眼部の断層画像から層境界の少なくとも一部の位置を特定部が特定する第一の特定ステップと、
前記位置が特定された層境界の深さ方向の位置に基づいて、前記位置が特定されなかった部分の探索範囲を設定する設定ステップと、
前記設定された探索範囲における輝度に基づいて前記探索範囲の中で前記部分の層境界の位置を特定部が特定する第二の特定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−194060(P2011−194060A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64754(P2010−64754)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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