説明

画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム

【課題】より高画質の画像を生成する。
【解決手段】帯域判定部121乃至123は、第1の画像データを構成する複数のコンポーネント信号の信号帯域を判定する。クラス分類部13は、それらの信号帯域の判定結果に基づいて、複数のコンポーネント信号間の相関性を求め、複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果と、複数のコンポーネント信号間の相関性との組み合わせに基づいて、複数のコンポーネント信号のそれぞれから、第2の画像データの注目している画素である注目画素を予測する予測演算に用いるためのタップとして、注目画素に対応する、第1の画像データの対応画素を含む、対応画素の周囲に存在する複数の画素を抽出する際のタップ形状を、複数のコンポーネント信号ごとに決定し、そのタップを用いて注目画素のクラス分類を行う。本発明は、例えば、画像処理装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関し、特に、より高画質の画像を生成することができるようにした画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、例えば、低解像度の画像データを、より解像度が高い高解像度の画像データに変換する方法として、クラス分類適応処理を先に提案している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
クラス分類適応処理では、低解像度の画像データの特徴に基づいてクラス分類が行われ、クラスごとに求められた予測係数を用いて高解像度の画像データが取得される。
【0004】
即ち、クラス分類適応処理では、例えば、予測すべき高解像度の画像データの画素(以下、注目画素という)が決定され、注目画素の位置に相当する、低解像度の画像データの位置から最も近くに存在する画素を、注目画素に対応する対応画素として、対応画素を含む、その対応画素の周囲に存在する複数の画素がクラスタップとして抽出され、クラスタップを構成する複数の画素に基づいて、注目画素が複数のクラスのうちのいずれかのクラスに分類される。そして、注目画素の位置に対応する、低解像度の画像データの対応画素を含む、その対応画素の周囲に存在する複数の画素が予測タップとして抽出され、予測タップを構成する複数の画素と、注目画素が分類されたクラスに対応する予測係数とを用いた予測演算によって注目画素が予測(生成)される。
【0005】
このようなクラス分類適応処理により高解像度の画像データを取得する方法は、例えば、直線補完により高解像度の画像データを取得する方法よりも、非常に高精度な変換性能を有している一方で、クラス分類の精度を十分に確保することができなければ、予測精度が低下することがある。
【0006】
そこで、予測精度の低下を回避するために、例えば、低解像度の画像データを構成するコンポーネント信号の3つの成分(例えば、R,G,B)から、高解像度の画像データを構成するコンポーネント信号の1成分を予測する際に、低解像度の画像データのその1成分だけでなく、他の2成分も利用する(例えば、R成分の予測に、R成分だけでなく、G成分およびB成分も利用する)方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0007】
コンポーネント信号の3つの成分には、それぞれ相関性があることより、高解像度の画像データを構成するコンポーネント信号の1成分を予測する際に、低解像度の画像データのその1成分だけでなく、他の2成分も利用することで、クラス分類の精度を向上させることができ、予測精度を向上させることができる。
【0008】
【特許文献1】特開平5−328185号公報
【特許文献2】特許第3748088号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、高解像度の画像データを構成するコンポーネント信号の1成分を予測する際に、低解像度の画像データのその1成分だけでなく、他の2成分も利用する方法において、コンポーネント信号の各成分間の相関性が極めて高い場合において、クラスタップを抽出するタップ構造が同一の形状であると、高解像度の画像データの1成分を予測する際に、低解像度の画像データのその1成分だけを利用する場合からの予測精度の向上が小さかった。
【0010】
図1を参照して、コンポーネント信号の各成分間の相関性について説明する。
【0011】
例えば、図1Aに示すように、コンポーネント信号のR成分、G成分、およびB成分の相関性が極めて高い場合に、高解像度の画像データのR成分を予測する際に、低解像度の画像データのR成分、G成分、およびB成分を利用するとき、クラスタップを抽出するタップ構造が同一の形状であると、低解像度の画像データのR成分から取得される情報(画像データの特徴)と、低解像度の画像データのG成分およびB成分から取得される情報とは、それぞれほぼ同じものとなる。
【0012】
このように、低解像度の画像データのR成分、G成分、およびB成分から情報を取得しているにもかかわらず、低解像度の画像データのR成分から取得される情報と、低解像度の画像データのG成分およびB成分から取得される情報とが、ほぼ同じ情報であるということは、コンポーネント信号Rのみを用いてコンポーネント信号Rを予測する場合と比べて、予測精度は少ししか向上しない。
【0013】
また、例えば、図1Bに示すように、画像がコンポーネント信号のY成分、U成分、およびV成分からなる場合には、コンポーネント信号の各成分で情報量が大きく異なっており、クラスタップを抽出するタップ構造が同一の形状であると、情報量の少ない成分からは、有用な情報をほとんど取得することができない。
【0014】
従って、例えば、高解像度の画像データのY成分を予測する際に、低解像度の画像データのY成分、U成分、およびV成分を利用したとしても、U成分およびV成分からは有用な情報をほとんど取得することができないため、Y成分だけを利用する場合からの予測精度の向上が小さかった。
【0015】
これらのことより、従来より予測精度を大きく向上させ、より高画質の画像を生成することができるようにすることが求められていた。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より高画質の画像を生成することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面の画像処理装置は、第1の画像データを、より高画質の第2の画像データに変換する画像処理を行う画像処理装置であって、前記第1の画像データを構成する複数のコンポーネント信号の信号帯域を判定する帯域判定手段と、前記帯域判定手段により判定された信号帯域の判定結果に基づいて、前記複数のコンポーネント信号間の相関性を求める相関性取得手段と、前記複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果と、前記相関性取得手段により求められた前記複数のコンポーネント信号間の相関性との組み合わせに基づいて、前記複数のコンポーネント信号のそれぞれから、前記第2の画像データの注目している画素である注目画素を予測する予測演算に用いるためのタップとして、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を抽出する際のタップ形状を、前記複数のコンポーネント信号ごとに決定するタップ形状決定手段と、前記タップ決定手段により決定されたタップ形状で、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を、前記第1の画像データから抽出するタップ抽出手段と、前記タップ抽出手段により抽出されたタップに基づいて、前記注目画素をクラス分けするクラス分類手段と、学習用の前記第1の画像データを用いた前記予測演算の結果と、学習用の前記第1の画像データに対応する学習用の前記第2の画像データとの誤差を最小にする学習によりあらかじめ求められて保持されている予測係数の中から、前記クラス分類手段によりクラス分けされた前記注目画素のクラスに対応する予測係数を出力する予測係数出力手段と、前記予測係数出力手段から出力された前記予測係数と、前記タップ抽出手段により抽出されたタップを構成する複数の画素とを用いた前記予測演算により、前記第2の画像データの前記注目画素を予測する予測演算手段とを備える。
【0018】
本発明の一側面の画像処理方法またはプログラムは、第1の画像データを、より高画質の第2の画像データに変換する画像処理を行う画像処理方法、または、第1の画像データを、より高画質の第2の画像データに変換する画像処理を行う画像処理処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記第1の画像データを構成する複数のコンポーネント信号の信号帯域を判定し、前記信号帯域の判定結果に基づいて、前記複数のコンポーネント信号間の相関性を求め、前記複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果と、前記複数のコンポーネント信号間の相関性との組み合わせに基づいて、前記複数のコンポーネント信号のそれぞれから、前記第2の画像データの注目している画素である注目画素を予測する予測演算に用いるためのタップとして、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を抽出する際のタップ形状を、前記複数のコンポーネント信号ごとに決定し、前記タップ形状で、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を、前記第1の画像データから抽出し、前記第1の画像データから抽出されたタップに基づいて、前記注目画素をクラス分けし、学習用の前記第1の画像データを用いた前記予測演算の結果と、学習用の前記第1の画像データに対応する学習用の前記第2の画像データとの誤差を最小にする学習によりあらかじめ求められて保持されている予測係数の中から、前記注目画素のクラスに対応する予測係数を出力し、前記注目画素のクラスに対応する予測係数と、前記タップを構成する複数の画素とを用いた前記予測演算により、前記第2の画像データの前記注目画素を予測するステップを含む。
【0019】
本発明の一側面においては、第1の画像データを構成する複数のコンポーネント信号の信号帯域が判定され、それらの信号帯域の判定結果に基づいて、複数のコンポーネント信号間の相関性が求められる。また、複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果と、複数のコンポーネント信号間の相関性との組み合わせに基づいて、複数のコンポーネント信号のそれぞれから、第2の画像データの注目している画素である注目画素を予測する予測演算に用いるためのタップとして、注目画素に対応する、第1の画像データの対応画素を含む、対応画素の周囲に存在する複数の画素を抽出する際のタップ形状が、複数のコンポーネント信号ごとに決定される。そして、決定されたタップ形状で、注目画素に対応する、第1の画像データの対応画素を含む、対応画素の周囲に存在する複数の画素が、第1の画像データから抽出され、第1の画像データから抽出されたタップに基づいて、注目画素がクラス分けされる。また、学習用の第1の画像データを用いた予測演算の結果と、学習用の第1の画像データに対応する学習用の第2の画像データとの誤差を最小にする学習によりあらかじめ求められて保持されている予測係数の中から、注目画素のクラスに対応する予測係数が出力され、その予測係数と、タップを構成する複数の画素とを用いた予測演算により、第2の画像データの注目画素が予測される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一側面によれば、より高画質の画像を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図2は、本発明を適用した画像処理装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0023】
図2において、画像処理装置11は、3つの帯域判定部121乃至123、クラス分類部13、予測係数ROM(Read Only Memory)14、および予測演算部15から構成される。
【0024】
画像処理装置11には、低解像度の画像データを構成するコンポーネント信号C1乃至C3が供給され、画像処理装置11は、低解像度の画像データに対し、解像度を向上させる画像処理を施し、高解像度の画像データを出力する。画像処理装置11では、例えば、高解像度の画像データを構成するコンポーネント信号C1を予測する際に、低解像度の画像データを構成するコンポーネント信号C1だけでなく、コンポーネント信号C2およびC3も利用される。
【0025】
帯域判定部121乃至123には、コンポーネント信号C1乃至C3がそれぞれ供給される。帯域判定部121は、コンポーネント信号C1の信号帯域を判定し、その判定結果として、例えば、高帯域、中帯域、または低帯域を示す判定結果信号をクラス分類部13に供給する。帯域判定部122および123は、帯域判定部121と同様に、コンポーネント信号C2およびC3の信号帯域を判定した結果を示す判定結果信号をクラス分類部13に供給する。
【0026】
クラス分類部13には、コンポーネント信号C1乃至C3が供給され、クラス分類部13は、帯域判定部121乃至123から供給される判定結果信号に基づいて、コンポーネント信号C1乃至C3のクラス分類を行う。
【0027】
即ち、クラス分類部13は、例えば、予測すべき高解像度の画像データの画素(以下、注目画素という)の位置に相当する、低解像度の画像データの位置から最も近くに存在する画素を、注目画素に対応する対応画素として、対応画素を含む、その対応画素の周囲に存在する複数の画素をクラスタップとして抽出する。このとき、クラス分類部13は、判定結果信号に基づいて、クラスタップの形状をコンポーネント信号ごとに選択し、クラスタップを構成する複数の画素に基づいて、注目画素を、複数のクラスのうちのいずれかのクラスに分類する。
【0028】
そして、クラス分類部13は、注目画素ごとに、それぞれのクラスを示すクラスコード(例えば、後述するADRCコード)を、予測係数ROM14に供給する。
【0029】
予測係数ROM14は、クラスコードと、そのクラスコードに対応する予測係数(後述する学習によって予め求められる予測係数)とのセットを記憶(保持)しており、クラス分類部13からクラスコードが供給されると、そのクラスコードに対応付けられている予測係数を予測演算部15に供給する。
【0030】
予測演算部15は、低解像度の画像データを構成するコンポーネント信号C1乃至C3と、予測係数ROM14から供給される予測係数とを用いて、所定の予測演算(例えば、線形1次演算)を行い、高解像度の画像データを構成するコンポーネント信号C1乃至C3を出力する。
【0031】
即ち、予測演算部15は、注目画素の位置に対応する、低解像度の画像データの対応画素を含む、その対応画素の周囲に存在する複数の画素を予測タップとして抽出し、予測タップを構成する複数の画素と、注目画素が分類されたクラスに対応する予測係数とを用いた予測演算によって注目画素を予測(生成)する。
【0032】
次に、図3は、帯域判定部12の構成例を示すブロック図である。
【0033】
帯域判定部121乃至123は、コンポーネント信号C1乃至C3の信号帯域の判定をそれぞれ行うことにより、コンポーネント信号C1乃至C3が有する情報量を明らかにする。また、帯域判定部121乃至123がコンポーネント信号C1乃至C3の信号帯域の判定を行うことで、後述するコンポーネント間相関判定部51(図12)がコンポーネント信号C1乃至C3の帯域を揃えた上で、より高精度な相関性を評価することができるようになる。なお、帯域判定部121乃至123では、低解像度の画像データの全情報を利用して処理が行われる。なお、帯域判定部121乃至123は、それぞれ同様に構成されており、帯域判定部121乃至123のそれぞれを区別する必要がない場合、以下、適宜、帯域判定部12と称する。
【0034】
図3において、帯域判定部12は、帯域制限部211および212、画像差分取得部221および222、並びに、判定部23から構成される。
【0035】
帯域制限部211および212には、それぞれ異なるフィルタ係数があらかじめ設定されており、入力信号C(例えば、帯域判定部121であれば、コンポーネント信号C1)がそれぞれ供給される。そして、帯域制限部211は、フィルタ係数に基づいて入力信号Cに帯域制限を施し、その結果得られる帯域制限信号CL1を画像差分取得部221に供給する。また、帯域制限部212は、帯域制限部211と同様に、帯域制限信号CL2を画像差分取得部222に供給する。
【0036】
また、例えば、帯域制限部211および212に設定されているフィルタ係数は、帯域制限部211よりも、帯域制限部212の方が、通過帯域が低くなるような特性とされている。具体的には、帯域制限部211には、通過帯域50%程度のフィルタ係数が設定され、帯域制限部212には、通過帯域25%程度のフィルタ係数が設定される。
【0037】
また、帯域制限部211および212は、入力画像の水平ラインにのみ帯域制限を行い、その結果得られる帯域制限画像を出力する。
【0038】
例えば、図4に示すように、帯域制限部211および212は、入力画像の所定の画素を含む水平方向の所定数の画素(図4の入力画像の黒丸の画素を含む5つの画素)の画素値と、帯域制限部211および212にそれぞれ設定されているフィルタ係数(帯域制限フィルタ係数)との積和演算を行う。そして、帯域制限部211および212は、積和演算を行った結果得られる積和値を、入力画像の所定の画素に対応する帯域制限画像の画素(図4の帯域制限画像の黒丸の画素)の画素値として出力する。
【0039】
一般的に、YUV信号などは、水平方向を重点的に帯域制限をしているので、このように入力画像の水平ラインにのみ帯域制限を行うことで、帯域判定部12は、垂直方向に大きなアクティビティがある画素に重きを置いた帯域判定を行うことができる。また、水平方向および垂直方向に帯域制限を行う場合よりも処理を高速に行うことができる。
【0040】
また、帯域制限部211および212において、入力信号に対して帯域制限を施す結果、図5Aに示すように、入力信号Cの帯域が高い場合には、帯域制限信号CLは入力信号Cから大きく変化し、入力信号Cの帯域が低い場合には、帯域制限信号CLは入力信号Cから大きく変化しない。
【0041】
画像差分取得部221は、入力信号Cと、帯域制限部211から供給される帯域制限信号CL1との全画面での差分の総和を算出し、その総和を示す差分情報D1を判定部23に供給する。画像差分取得部222は、画像差分取得部221と同様に、差分情報D2を判定部23に供給する。差分情報の算出については、図7を参照して後述する。
【0042】
判定部23は、画像差分取得部221から供給される差分情報D1と、画像差分取得部222から供給される差分情報D2との比を算出し、あらかじめ設定されている閾値に従って入力信号の信号帯域を判定し、その判定結果を示す判定結果信号Eを1画面ごとに出力する。
【0043】
例えば、図6に示すように、信号帯域を判定する閾値として、0.4と0.6とが判定部23に設定されているとき、判定部23は、差分情報D1と差分情報D2との比(D1/D2)が、0以上0.4未満であれば、低帯域を表す判定結果信号Eを出力する。また、判定部23は、差分情報D1と差分情報D2との比が、0.4以上0.6未満であれば、中帯域を表す判定結果信号Eを出力し、差分情報D1と差分情報D2との比が、0.6以上であれば、高帯域を表す判定結果信号Eを出力する。なお、信号帯域を判定する閾値は、高解像度の画像データの変化に応じて適切な画質となるような値を設定することができ、0.4や0.6で限定されるものではない。
【0044】
なお、図3において、帯域判定部12には、帯域制限部および画像差分取得部が、それぞれ2つ設けられているが、例えば、帯域制限部および画像差分取得部を2つ以上設けて、種々の帯域制限信号を用いて判定部23における判定を行うことで、その判定を高精度化させることができる。
【0045】
次に、図7は、図3の画像差分取得部22の構成例を示すブロック図である。
【0046】
図7において、画像差分取得部22は、DR取得部31、レベル正規化差分絶対値取得部32、積算部33、およびメモリ34から構成される。
【0047】
DR取得部31は、入力画像の水平方向のダイナミックレンジ(水平DR)と、入力画像の垂直方向のダイナミックレンジ(垂直DR)とを算出して、レベル正規化差分絶対値取得部32に供給する。
【0048】
例えば、図8に示すように、DR取得部31は、入力画像の所定の画素について、所定の画素を含む水平方向の所定数の画素(図8の例では、黒丸の画素(所定の画素)を含む水平方向の5つの画素)から水平DRを算出するとともに、所定の画素を含む垂直方向の所定数の画素(図8の例では、黒丸の画素(所定の画素)を含む垂直方向の5つの画素)から垂直DRを算出する。
【0049】
レベル正規化差分絶対値取得部32には、入力画像を表す入力信号C、および、帯域制限部21により帯域制限が施された帯域制限信号CLが供給され、レベル正規化差分絶対値取得部32は、入力画像の所定の画素ごとに、入力画像の水平DRが、入力画像の垂直DRの閾値倍(例えば、2倍)以上であるか否かを判定する。そして、レベル正規化差分絶対値取得部32は、入力画像の水平DRが、入力画像の垂直DRの閾値倍以上である場合、入力画素(入力画像の所定の画素)と、帯域制限部211から供給される帯域制限画素(帯域制限画像を表す帯域制限信号CLにおける、入力画像の所定の画素に対応する画素)との差分絶対値を、水平DRで除して100を乗じた値を、レベル正規化差分絶対値として算出する。
【0050】
積算部33には、レベル正規化差分絶対値取得部32からレベル正規化差分絶対値が画素ごとに供給され、積算部33は、レベル正規化差分絶対値を積算してメモリ34に適宜記憶させ、1画面分のレベル正規化差分絶対値を積算すると、レベル正規化差分絶対値の総和を差分情報Dとして判定部23(図3)に供給する。
【0051】
次に、図9は、図7の画像差分取得部22が差分情報を算出する処理を説明するフローチャートである。
【0052】
画像差分取得部22では、入力画像の1画面ごとに処理が行われ、1画面の先頭の画素を表す入力信号が画像差分取得部22に供給されると処理が開始され、ステップS11において、レベル正規化差分絶対値取得部32は、積算部33を介してメモリ34を初期化させる。
【0053】
ステップS11の処理後、ステップS12に進み、DR取得部31は、1画面の先頭の画素から順に処理の対象とし、現在処理の対象となっている画素に対する水平DRおよび垂直DRを算出してレベル正規化差分絶対値取得部32に供給する。レベル正規化差分絶対値取得部32は、入力画像の水平DRが、入力画像の垂直DRの閾値倍(垂直DR×閾値)以上であるか否かを判定する。
【0054】
ステップS12において、レベル正規化差分絶対値取得部32が、入力画像の水平DRが、入力画像の垂直DRの閾値倍以上でないと判定した場合、DR取得部31は、次の画素を処理の対象として水平DRおよび垂直DRを算出し、入力画像の水平DRが入力画像の垂直DRの閾値倍以上であると判定されるまで処理が繰り返される。
【0055】
一方、ステップS12において、レベル正規化差分絶対値取得部32が、入力画像の水平DRが、入力画像の垂直DRの閾値倍以上であると判定した場合、処理はステップS13に進み、レベル正規化差分絶対値取得部32は、入力画素と帯域制限画素との差分絶対値(即ち、入力信号Cと、帯域制限部211が入力信号Cに帯域制限を施した帯域制限信号CLとの差分絶対値)を、水平DRで除して100を乗じた値(|C−CL|×100/DR)を、レベル正規化差分絶対値として算出し、レベル正規化差分絶対値を積算部33に供給する。
【0056】
ステップS13の処理後、処理はステップS14に進み、積算部33は、レベル正規化差分絶対値取得部32からのレベル正規化差分絶対値を積算し、メモリ34に記憶させる。即ち、現在処理の対象となっている画素より前に、レベル正規化差分絶対値取得部32からレベル正規化差分絶対値が既に積算部33に供給されていた場合には、メモリ34には既に積算値が記憶されており、積算部33は、その積算値に、新たに供給されたレベル正規化差分絶対値を加算して、メモリ34に上書きする。
【0057】
ステップS14の処理後、処理はステップS15に進み、レベル正規化差分絶対値取得部32は、1画面分(1フレーム分)の画像信号に対する処理が終了したか否か、即ち、ステップS11で処理を開始した画面の最後の画素を表す画像信号に対する処理が行われたか否かを判定し、1画面分の画像信号に対する処理が終了していないと判定した場合、処理はステップS12に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0058】
一方、ステップS15において、レベル正規化差分絶対値取得部32が、1画面分の画像信号に対する処理が終了したと判定した場合、処理はステップS16に進み、積算部33は、メモリ34に記憶させている積算値を、差分情報として出力し、処理は終了される。
【0059】
そして、帯域判定部12では、判定部23(図3)において、画像差分取得部22から供給された差分情報に基づいて、入力信号の信号帯域が判定される。
【0060】
即ち、図10を参照して、信号帯域の判定について説明する。
【0061】
例えば、入力信号Cの信号帯域が低い場合、図10の左側に示すように、入力信号Cに対する、入力信号Cが帯域制限部211により帯域制限された帯域制限信号CL1の変化は非常に小さく、入力信号Cが帯域制限部212により帯域制限された帯域制限信号CL2の変化も比較的に小さい。従って、画像差分取得部221が、入力信号Cから算出する差分情報D1は、ほぼ0となり、画像差分取得部222が、入力信号Cから算出する差分情報D2は、小さな値となる。
【0062】
また、入力信号Cの信号帯域が高い場合、図10の右側に示すように、入力信号Cに対する、入力信号Cが帯域制限部211により帯域制限された帯域制限信号CL1の変化は大きく、入力信号Cが帯域制限部212により帯域制限された帯域制限信号CL2の変化はさらに大きい。従って、差分情報D1および差分情報D2は、ある程度大きな値となる。
【0063】
このように、入力信号の信号帯域が異なることにより、入力信号が帯域制限されることによる変化に差が生じ、低帯域の入力信号に対する差分情報D1と差分情報D2との比は小さな値となり、高帯域の入力信号に対する差分情報D1と差分情報D2との比は大きな値となる。従って、差分情報D1と差分情報D2との比に基づいて、入力信号の信号帯域を判定することができる。
【0064】
また、このように帯域判定部12を構成することにより、コンポーネント信号の信号帯域を判定する処理を、より簡易的な構成で行うことができる。なお、各コンポーネント信号の信号帯域を判定することができれば、帯域判定部12の構成に限定されるものではなく、例えば、周波数解析を行うなど、コンポーネント信号の信号帯域を判定する方法には、他の方法を用いることができる。
【0065】
次に、図11は、図2のクラス分類部13の構成例を示すブロック図である。
【0066】
図11に示すように、クラス分類部13は、タップ情報取得部41、およびADRCクラス分類部42から構成される。
【0067】
タップ情報取得部41には、コンポーネント信号C1乃至C3が供給されるとともに、図2の帯域判定部121乃至123から帯域判定結果信号E1乃至E3が供給される。タップ情報取得部41は、帯域判定結果信号E1乃至E3に基づいてコンポーネント信号C1乃至C3間の相関関係を求め、その相関関係に応じて選択したタップ形状で、コンポーネント信号C1乃至C3からタップを抽出し、それらのタップを合成したタップ情報をADRCクラス分類部42に供給する。
【0068】
ADRCクラス分類部42は、タップ情報取得部41から供給されるタップ情報を用いて、ADRC(Adaptive Dynamic Range Coding)クラス分類処理を施し、注目画素をクラスに分け、そのクラスを示すクラスコード(ADRCコード)を出力する。なお、ADRCクラス分類処理は、従来から用いられている方法と同様である。
【0069】
次に、図12は、図11のタップ情報取得部41の構成例を示すブロック図である。
【0070】
図12に示すように、タップ情報取得部41は、コンポーネント間相関判定部51、3つの狭域タップ構築部521乃至523、3つの標準タップ構築部531乃至533、3つの広域タップ構築部541乃至543、3つのタップ選択部551乃至553、および、タップ情報合成部56から構成される。
【0071】
コンポーネント間相関判定部51には、コンポーネント信号C1乃至C3が供給されるとともに、図2の帯域判定部121乃至123から帯域判定結果信号E1乃至E3が供給される。コンポーネント間相関判定部51は、帯域判定結果信号E1乃至E3に基づいて、コンポーネント信号C1乃至C3のそれぞれの間の相関関係を求め、その相関関係に応じて、狭域、標準、または広域のいずれのタップを抽出するかをコンポーネント信号C1乃至C3ごとに決定する。
【0072】
そして、コンポーネント間相関判定部51は、コンポーネント信号C1から抽出するタップを選択するタップ選択信号を、即ち、狭域、標準、または広域のいずれのタップを抽出するかを指示するタップ選択信号をタップ選択部551に供給する。また、コンポーネント間相関判定部51は、コンポーネント信号C2から抽出するタップを選択するタップ選択信号をタップ選択部552に供給し、コンポーネント信号C3から抽出するタップを選択するタップ選択信号をタップ選択部553に供給する。
【0073】
狭域タップ構築部521、標準タップ構築部531、および広域タップ構築部541には、コンポーネント信号C1がそれぞれ供給される。狭域タップ構築部521は、コンポーネント信号C1から狭域タップ(例えば、図13Aに示すような形状のタップ)を抽出し、標準タップ構築部531は、コンポーネント信号C1から標準タップ(例えば、図13Bに示すような形状のタップ)を抽出し、広域タップ構築部541は、コンポーネント信号C3から広域タップ(例えば、図13Cに示すような形状のタップ)を抽出する。狭域タップ構築部521、標準タップ構築部531、広域タップ構築部541は、それぞれコンポーネント信号C1から抽出したタップをタップ選択部551に供給する。
【0074】
また、狭域タップ構築部522は、コンポーネント信号C2から狭域タップを抽出してタップ選択部552に供給し、標準タップ構築部532は、コンポーネント信号C2から標準タップを抽出してタップ選択部552に供給し、広域タップ構築部542は、コンポーネント信号C2から広域タップを抽出してタップ選択部552に供給する。また、狭域タップ構築部523は、コンポーネント信号C3から狭域タップを抽出してタップ選択部553に供給し、標準タップ構築部533は、コンポーネント信号C3から標準タップを抽出してタップ選択部553に供給し、広域タップ構築部543は、コンポーネント信号C3から広域タップを抽出してタップ選択部553に供給する。
【0075】
タップ選択部551は、コンポーネント間相関判定部51から供給されるタップ選択信号に基づいて、狭域タップ構築部521から供給されるコンポーネント信号C1の狭域タップ、標準タップ構築部531から供給されるコンポーネント信号C1の標準タップ、または、広域タップ構築部541から供給されるコンポーネント信号C1の広域タップのうちのいずれか1つを選択して、タップ情報合成部56に供給する。
【0076】
タップ選択部552は、タップ選択部551と同様に、コンポーネント信号C2の狭域タップ、標準タップ、または広域タップのうちのいずれか1つを選択して、タップ情報合成部56に供給する。タップ選択部553は、タップ選択部551と同様に、コンポーネント信号C3の狭域タップ、標準タップ、または広域タップのうちのいずれか1つを選択して、タップ情報合成部56に供給する。
【0077】
タップ情報合成部56は、タップ選択部551乃至553から供給されるタップを合成したタップ情報を、図11のADRCクラス分類部42に供給する。
【0078】
次に、図13は、コンポーネント信号から抽出するタップの形状の例を示す図である。
【0079】
図13A乃至Cには、注目画素を中心として、注目画素の上下および左右の画素からなる5つの画素で構成される形状のタップの例が示されている。図13Aに示されている狭域タップは、注目画素と、注目画素に隣接する4つの画素とからなり、図13Bに示されている標準タップは、注目画素と、注目画素から1画素離れた4つの画素とからなり、図13Cに示されている広域タップは、注目画素と、注目画素から2画素離れた4つの画素とからなる。
【0080】
また、図13Dには、注目画素と、注目画素の上下および左右にそれぞれ3つ連続する画素との13個の画素からなる形状の広域密タップの例が示されている。この広域密タップは、後述する図24の広域密タップ構築部57により抽出される。
【0081】
なお、タップの形状は、図13に示す例に限られるものではなく、任意の形状を指定することができる。
【0082】
次に、図14は、図12のコンポーネント間相関判定部51の構成例を示すブロック図である。
【0083】
図14に示すように、コンポーネント間相関判定部51は、帯域判定結果統合部61、3つのフィルタ係数設定部621乃至623、3つの帯域制限部631乃至633、3つの相関性算出部641乃至643、および閾値判定部65から構成される。
【0084】
帯域判定結果統合部61には、図2の帯域判定部121乃至123から帯域判定結果信号E1乃至E3が供給され、帯域判定結果統合部61は、帯域判定結果信号E1乃至E3のうちの、最も低い信号帯域を示す帯域判定結果信号であるコンポーネント信号の信号帯域に、全てのコンポーネント信号の信号帯域が揃えられるように、帯域制限部631乃至633に設定されるフィルタ係数を決定する。
【0085】
例えば、コンポーネント信号C1の信号帯域を判定した結果である帯域判定結果信号E1が広帯域を表しており、コンポーネント信号C2の信号帯域を判定した結果である帯域判定結果信号E2が広帯域を表しており、コンポーネント信号C3の信号帯域を判定した結果である帯域判定結果信号E3が中帯域を表している場合、帯域判定結果統合部61は、コンポーネント信号C1乃至C3の信号帯域を、中帯域に揃えるように、帯域制限部631乃至633のフィルタ係数を決定する。
【0086】
具体的には、帯域判定結果統合部61に、例えば、広帯域として70%が設定され、中帯域として50%が設定されている場合において、帯域判定結果信号E1およびE2が広帯域を表し、帯域判定結果信号E3が中帯域を表しているとき、帯域判定結果統合部61は、帯域制限部631および632のフィルタ係数を50%に決定するとともに、帯域制限部633のフィルタ係数を100%(即ち、帯域制限無し)に決定する。これにより、コンポーネント信号C1乃至C3の信号帯域は、いずれも50%に揃えられる。
【0087】
フィルタ係数設定部621乃至623は、帯域判定結果統合部61により決定された係数フィルタを、帯域制限部631乃至633にそれぞれ設定する。
【0088】
帯域制限部631は、フィルタ係数設定部621により設定されたフィルタ係数で、コンポーネント信号C1の帯域制限を行い、即ち、フィルタ係数とコンポーネント信号C1との積和演算を行い、コンポーネント信号C1を帯域制限した信号を、相関性算出部641および643に供給する。
【0089】
帯域制限部632は、フィルタ係数設定部622により設定されたフィルタ係数で、コンポーネント信号C2の帯域制限を行い、コンポーネント信号C2を帯域制限した信号を、相関性算出部641および642に供給する。帯域制限部633は、フィルタ係数設定部623により設定されたフィルタ係数で、コンポーネント信号C3の帯域制限を行い、コンポーネント信号C3を帯域制限した信号を、相関性算出部642および643に供給する。
【0090】
相関性算出部641は、帯域制限部631を介して供給されるコンポーネント信号C1と、帯域制限部632を介して供給されるコンポーネント信号C2との相関性を算出する。コンポーネント信号間の相関性を示す指数としては、例えば、相関係数を用いることができる。相関係数は、次の式(1)を演算することにより求めることができる。
【0091】
【数1】

【0092】
但し、式(1)において、xiはコンポーネント信号C1のデータ列を表し、yiはコンポーネント信号C2のデータ列を表し、xaveは、xiの平均値を表し、yaveは、yiの平均値を表す。
【0093】
式(1)を演算することにより得られる相関係数は、その値が1に近いほど、コンポーネント信号C1およびC2間の相関が強いことを表している。相関性算出部641は、算出したコンポーネント信号C1およびC2間の相関係数を閾値判定部65に供給する。
【0094】
相関性算出部641と同様に、相関性算出部642は、コンポーネント信号C2およびC3間の相関係数を算出して閾値判定部65に供給し、相関性算出部643は、コンポーネント信号C1およびC3間の相関係数を算出して閾値判定部65に供給する。
【0095】
閾値判定部65は、図2の帯域判定部121乃至123から供給される帯域判定結果信号E1乃至E3と、相関性算出部641乃至643から供給される相関係数に基づいて、コンポーネント信号C1乃至C3から狭域、標準、または広域のいずれのタップを抽出するかを決定する。
【0096】
例えば、閾値判定部65には、図15に示すように、帯域判定結果信号E1乃至E3の組み合わせ、および、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関係数の組み合わせに従って、選択すべきタップの形状が、コンポーネント信号C1乃至C3ごとにあらかじめ設定されている。
【0097】
図15には、帯域判定結果信号E1乃至E3が全て同一(即ち、全て広帯域、全て中帯域、または全て低帯域)であるときに、コンポーネント信号C1の予測に用いられるタップ形状の例が示されている。
【0098】
図15において、相関性判定結果として、相関性算出部641乃至643からの相関係数が、0.9以上であるものには○は示されており、0.9未満であるものには×が示されている。
【0099】
即ち、図15の上から1番目の行には、帯域判定結果信号E1乃至E3が全て同一、かつ、コンポーネント信号C1およびC2間の相関係数、コンポーネント信号C2およびC3間の相関係数、コンポーネント信号C1およびC3間の相関係数が、全て0.9以上である場合に選択されるタップ形状が示されている。即ち、この場合、コンポーネント信号C1(R成分)は、狭域タップが選択され、コンポーネント信号C2(G成分)は、標準タップが選択され、コンポーネント信号C3(B成分)は、広域タップが選択される。
【0100】
また、例えば、図15の上から3番目の行には、帯域判定結果信号E1乃至E3が全て同一、かつ、コンポーネント信号C1およびC2間の相関係数が0.9以上で、コンポーネント信号C2およびC3間の相関係数が0.9未満で、コンポーネント信号C1およびC3間の相関係数が0.9以上である場合に選択されるタップ形状が示されている。即ち、この場合、コンポーネント信号C1(R成分)は、狭域タップが選択され、コンポーネント信号C2(G成分)は、標準タップが選択され、コンポーネント信号C3(B成分)は、狭域タップが選択される。
【0101】
なお、相関係数を、○または×と判定する際の閾値は、0.9に限定されるものではなく、高解像度の画像データの変化に応じて適切な画質となるような値に設定することができ、例えば、0.99など、さらに相関性が高いものを○としてもよい。
【0102】
また、閾値判定部65に設定されるタップパターン(タップの形状の組み合わせ)は、例えば、低解像度の画像データを高解像度の画像データに変換したときの高解像度の画像データのsnr(Signal to Noise Ratio)に基づいて設定することができる。即ち、帯域判定結果信号E1乃至E3の全ての組み合わせ、および、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関係数の全ての組み合わせにおいて、選択しうるタップパターンの全てにおけるsnrを算出し、所定の帯域判定結果信号E1乃至E3の組み合わせ、かつ、所定のコンポーネント信号C1乃至C3間の相関係数の組み合わせにおいて、snrが最大になるタップパターンが、その組み合わせにおけるタップパターンとして選択される。
【0103】
例えば、図16を参照して、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関性の組み合わせ(8パターン)におけるタップパターンの選択について説明する。
【0104】
例えば、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関性が、全て○である場合(例えば、相関係数が全て0.9以上である場合)、コンポーネント信号C1乃至C3のとりえるタップパターンの組み合わせの中で、図16の一番上の行に示すように、コンポーネント信号C1が狭域タップであり、コンポーネント信号C2が標準タップであり、コンポーネント信号C3が広域タップであるときに、snrが最大の値である29.31である。これより、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関性が全て○である場合には、コンポーネント信号C1が狭域タップであり、コンポーネント信号C2が標準タップであり、コンポーネント信号C3が広域タップであるタップパターンが選択される。
【0105】
同様に、例えば、コンポーネント信号C1およびC2間の相関性、並びにコンポーネント信号C1およびC3間の相関性が○であり、コンポーネント信号C2およびC3間の相関性が×である場合、snrが31.90であるタップパターン、即ち、コンポーネント信号C1が狭域タップであり、コンポーネント信号C2が標準タップであり、コンポーネント信号C3が狭域タップであるタップパターンが選択される。
【0106】
なお、タップパターンは、予測の対象となるコンポーネント信号毎に、例えば、RGB信号やYUV信号ごとに変更することができる。また、タップパターンの選択は、snrに基づいて決定されるだけではなく、定性的な観点も絡めて最終的に決定される。
【0107】
このようにして決定されたタップパターンが、閾値判定部65にあらかじめ設定されており、閾値判定部65は、帯域判定結果信号E1乃至E3の組み合わせ、および、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関係数の組み合わせに従って、タップパターンを選択する。そして、閾値判定部65は、コンポーネント信号C1から抽出するタップを選択するタップ選択信号を、タップ選択部551(図12)に供給し、コンポーネント信号C2から抽出するタップを選択するタップ選択信号を、タップ選択部552に供給し、コンポーネント信号C3から抽出するタップを選択するタップ選択信号を、タップ選択部553に供給する。
【0108】
そして、タップ選択部551乃至553が、コンポーネント信号C1乃至C3からそれぞれ抽出したタップが、タップ情報合成部56を介して図11のADRCクラス分類部42され、ADRCクラス分類部42において、注目画素のクラス分類を行う。
【0109】
このとき、ADRCクラス分類部42は、図17に示すように、タップ選択部551乃至553が抽出したタップを用いて一括でクラス分類を行うことができる。また、ADRCクラス分類部42は、コンポーネント信号ごとに、即ち、タップ選択部551乃至553それぞれが抽出したタップごとにクラス分類を行うことができる。
【0110】
また、ADRCクラス分類部42が出力するクラスコードは、ADRCクラス分類の結果と、相関性判定結果とを組み合わせた結果になる。但し、相関性判定結果の代わりに、各コンポーネント信号のタップ形状(図15に示すタップの選択結果)を用いることで、クラス数を削減することができる。つまり、相関性判定結果は、8パターンであるのに対し、タップの選択結果は、8パターン以下になる。
【0111】
相関性判定結果とタップの選択結果とのいずれを用いるかは、画像処理装置11の性能と規模との兼ね合いで決定することができる。つまり、相関性判定結果をクラスコードに組み込む場合には性能が高くなり、一方、タップの選択結果をクラスコードに組み込む場合にはクラス数の削減を図れる。なお、帯域判定結果は、クラスコードに組み込まれない。
【0112】
次に、図18は、図2の画像処理装置11が行う画像変換処理を説明するフローチャートである。
【0113】
画像処理装置11に、低解像度の画像データを構成するコンポーネント信号C1乃至C3が供給されると処理が開始され、ステップS21において、図2の帯域判定部121乃至123は、コンポーネント信号C1乃至C3の信号帯域を判定し、判定結果信号をクラス分類部13に供給する。
【0114】
ステップS21の処理後、処理はステップS22に進み、クラス分類部13では、タップ情報取得部41のコンポーネント間相関判定部51(図12)において、相関性算出部641乃至643(図14)が、上述の式(1)の演算を行って相関係数を算出し、処理はステップS23に進む。
【0115】
ステップS23において、閾値判定部65が、ステップS22で算出された相関係数に基づいて、あらかじめ設定されているタップパターン(図15)を選択することで、コンポーネント信号C1乃至C3のそれぞれから、狭域、標準、または広域のいずれのタップを抽出するかがコンポーネント信号C1乃至C3ごとに決定される。そして、コンポーネント間相関判定部51からタップ選択部551乃至553に、狭域、標準、または広域のいずれのタップを抽出するかを示すタップ選択信号が供給される。
【0116】
ステップS24において、タップ選択部551は、ステップS23でコンポーネント間相関判定部51から供給されるタップ選択信号に基づいて、狭域タップ構築部521から供給されるコンポーネント信号C1の狭域タップ、標準タップ構築部531から供給されるコンポーネント信号C1の標準タップ、または、広域タップ構築部541から供給されるコンポーネント信号C1の広域タップのうちのいずれか1つを選択して、タップ情報合成部56に供給する。また、タップ選択部552、およびタップ選択部553も、タップ選択部551と同様に、それぞれタップ選択信号に基づいたタップをタップ情報合成部56に供給する。
【0117】
ステップS24の処理後、処理はステップS25に進み、ADRCクラス分類部42(図11)は、タップ情報合成部56を介して供給されるタップを用いて、クラス分類を行い、その結果得られるクラスを、予測係数ROM14に供給し、処理はステップS26に進む。
【0118】
ステップS26において、予測係数ROM14は、ADRCクラス分類部42からのクラスに対応付けられている予測係数を、予測演算部15に供給する。
【0119】
ステップS27において、予測演算部15は、予測係数ROM14からの予測係数と、コンポーネント信号C1乃至C3とを用いて、後述する式(2)の予測演算を行い、高解像度の画像データを構成するコンポーネント信号を出力し、処理は終了する。
【0120】
以上のように、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関性に応じてタップを抽出すること、即ち、コンポーネント信号C1乃至C3から予測に必要な情報を取得することで、最適な情報を取得することができ、これにより、低解像度の画像データから高解像度の画像データへの予測精度を向上させることができる。従って、従来よりも高画質な高解像度の画像を得ることができる。例えば、色にじみを改善して、解像感を向上させた画像を得ることができる。
【0121】
次に、図19を参照して、画像処理装置11による画像変換処理の評価結果を説明する。
【0122】
図19には、画像処理装置11により画像変換処理が施された高解像度の画像データのsnrと、従来の方法により画像変換処理が施された高解像度の画像データのsnrとが、相関性判定結果ごと示されている。また、図19は、コンポーネント信号C1乃至C3に、RGB信号を用いて画像処理を行ったときのR成分における高解像度の画像データの評価結果である。
【0123】
ここで、従来方法1では、図20Aに示す組み合わせのタップパターンを用いて、即ち、コンポーネント信号C1乃至C3のいずれからも(例えば、R成分、G成分、B成分のいずれからも)狭域タップが抽出されて、画像変換処理が行われた。また、従来方法2では、図20Bに示す組み合わせのタップパターンを用いて、即ち、コンポーネント信号C1(例えば、R成分)からは狭域タップが抽出され、コンポーネント信号C2(例えば、G成分)からは標準タップが抽出され、コンポーネント信号C3(例えば、B成分)からは広域タップが抽出されて画像変換処理が行われた。
【0124】
なお、従来方法1および2による画像変換処理では、ADRCクラス分類処理において出力するクラスコードは、25×25×25クラスであり、画像処理装置11による画像変換処理では、ADRCクラス分類処理において出力するクラスコードは、25×25×25×8クラスである。
【0125】
図19に示すように、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関性によらず、全ての相関性判定結果および全サンプルにおいて、画像処理装置11による画像変換処理が施された高解像度の画像データのsnrは、従来の方法により画像変換処理が施された高解像度の画像データのsnrよりも、高い値となっている。即ち、画像処理装置11による画像変換処理が施された高解像度の画像データの方が、ノイズが少なく、高画質である。
【0126】
なお、画像変換処理において、注目画素のクラスを分類する際のクラスタップと、注目画素を予測する際の予測タップとでは、同一の組み合わせのタップの形状を用いてもよいし、異なる組み合わせのタップの形状を用いてもよい。
【0127】
次に、コンポーネント信号C1乃至C3のうちの、1つのみが高帯域である場合についての画像処理について説明する。
【0128】
図21には、コンポーネント信号C2のみが高帯域であるとき(即ち、帯域判定結果信号E2のみが高帯域を示しているとき)に、コンポーネント信号C2の予測に用いられるタップ形状の例が示されている。
【0129】
図21には、図15と同様に、相関性判定結果として、相関性算出部641乃至643からの相関係数が、0.9以上であるものには○は示されており、0.9未満であるものには×が示されており、コンポーネント信号C1乃至C3としては、YUV信号が用いられているときの、タップ形状の例が示されている。図21では、コンポーネント信号C1がV成分とされ、コンポーネント信号C2がY成分とされ、コンポーネント信号C3がU成分とされている。
【0130】
次に、図22には、画像処理装置11により、図21に示されているタップ形状でタップが抽出されて画像が変換される画像変換処理の評価結果が示されている。また、図22は、Y成分における高解像度の画像データの評価結果である。
【0131】
図22における従来方法1では、図23Aに示す組み合わせのタップパターンを用いて、即ち、コンポーネント信号C1乃至C3のいずれからも(例えば、V成分、Y成分、U成分のいずれからも)狭域タップが抽出されて、画像変換処理が行われた。また、従来方法2では、図23Bに示す組み合わせのタップパターンを用いて、即ち、コンポーネント信号C1(例えば、V成分)からは広域タップが抽出され、コンポーネント信号C2(例えば、Y成分)からは狭域タップが抽出され、コンポーネント信号C3(例えば、U成分)からは標準タップが抽出されて画像変換処理が行われた。また、ADRCクラス分類処理において出力するクラスコードは、図19の場合と同様である。
【0132】
図22に示すように、コンポーネント信号C1乃至C3としてYUV信号を用いた場合にも、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関性によらず、全ての相関性判定結果および全サンプルにおいて、画像処理装置11による画像変換処理が施された高解像度の画像データのsnrは、従来の方法により画像変換処理が施された高解像度の画像データのsnrよりも、高い値となっている。
【0133】
ところで、画像処理装置11において選択されるタップの形状は、図13A乃至13Cに示した3つのいずれかであるが、画像処理装置11では、図13Dに示す広域密タップを選択することができる。例えば、所定の条件においては、広域密タップを用いてコンポーネント信号C1乃至C3のうちの1つからタップを抽出し、そのタップだけを用いて予測を行った場合に、予測精度が向上することがある。
【0134】
例えば、コンポーネント信号がYUV信号である場合、コンポーネント信号のY成分だけが高帯域であり、U成分およびV成分は、低帯域または中帯域となる。そして、YUV信号間でいずれも相関が極めて強い場合、図24に示すように、情報量が削減されたU成分およびV成分から情報を取得するよりも、Y成分のみから情報を取得した方が効率がよくなり、予測精度が向上する。即ち、情報量が削減されたU成分およびV成分からは、同じ情報が重複して取得される可能性があるからである。
【0135】
このことより、タップ情報取得部は、広域密タップを抽出することができるように構成することができる。
【0136】
次に、図25は、タップ情報取得部の他の構成例を示すブロック図である。
【0137】
図25において、タップ情報取得部41’は、コンポーネント間相関判定部51、3つの狭域タップ構築部521乃至523、3つの標準タップ構築部531乃至533、3つの広域タップ構築部541乃至543、3つのタップ選択部551乃至553、タップ情報合成部56、および、3つの広域密タップ構築部571乃至573から構成される。
【0138】
なお、図25では、図12のタップ情報取得部41と対応する部分については、同一の符号をそれぞれ付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。即ち、図25のタップ情報取得部41’は、コンポーネント間相関判定部51、3つの狭域タップ構築部521乃至523、3つの標準タップ構築部531乃至533、3つの広域タップ構築部541乃至543、3つのタップ選択部551乃至553、タップ情報合成部56を備える点で、図12のタップ情報取得部41と共通する。但し、タップ情報取得部41’においては、広域密タップ構築部571乃至573が設けられている点で、図12のタップ情報取得部41と異なっている。
【0139】
広域密タップ構築部571乃至573は、コンポーネント信号C1乃至C3から広域密タップ(例えば、図13Dに示すような形状のタップ)を抽出して、タップ選択部551乃至553にそれぞれ供給する。
【0140】
例えば、タップ情報取得部41’のコンポーネント間相関判定部51には、所定の条件(図26を参照して後述する条件)の場合に、予測の対象となっているコンポーネント信号の1つから広域密タップを抽出するように、タップ選択部551乃至553を制御する。
【0141】
例えば、コンポーネント信号C1が予測の対象となっているとき、タップ選択部551に広域密タップ構築部571が抽出したタップをタップ情報合成部56に供給させ、タップ選択部552および553にはタップの供給を行わせない。これにより、コンポーネント信号C1の予測が、コンポーネント信号C1から抽出された広域密タップのみを用いて行われる。
【0142】
これにより、図24を参照して説明したように、効率よく情報を取得することができ、情報量が削減されたコンポーネント信号から重複した情報を取得するなどのロスが少なくなるので、予測精度を向上させることができる。
【0143】
次に、タップ情報取得部41’のコンポーネント間相関判定部51において、予測の対象となっているコンポーネント信号の1つから広域密タップを抽出するようにタップ選択部551乃至553を制御する条件について説明する。
【0144】
図26には、図27に示すような広域密タップのみを用いて画像変換処理を行った場合のsnrと、図12のタップ情報取得部41を備えた画像処理装置11による画像変換処理のsnr(即ち、図19と同一のsnr)とが示されている。
【0145】
図26に示すように、コンポーネント信号C1乃至C3間の相関性の判定結果によって、広域密タップのみを用いて画像変換処理を行った場合のsnrが高い値であるときがあれば、タップ情報取得部41を備えた画像処理装置11による画像変換処理のsnrが高い値であるときときもある。
【0146】
画像処理装置11は、あらかじめ図26に示すような評価を行い、広域密タップのみを用いて画像変換処理を行った場合のsnrが高い値である相関性の判定結果の組み合わせでは、予測の対象となっているコンポーネント信号の1つから広域密タップを抽出するようにタップ選択部551乃至553を制御するように、タップ情報取得部41’のコンポーネント間相関判定部51が設定されている。一方、タップ情報取得部41を備えた画像処理装置11による画像変換処理のsnrが高い値である相関性の判定結果の組み合わせでは、タップ選択部551乃至553のそれぞれからタップを抽出するような制御が行われるように、タップ情報取得部41’のコンポーネント間相関判定部51が設定されている。
【0147】
次に、図28は、タップ情報取得部のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【0148】
図28において、タップ情報取得部41’’は、コンポーネント間相関判定部51、3つの狭域タップ構築部521乃至523、3つの標準タップ構築部531乃至533、3つの広域タップ構築部541乃至543、およびタップ選択部55から構成される。
【0149】
なお、図28では、図12のタップ情報取得部41と対応する部分については、同一の符号をそれぞれ付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0150】
図28のタップ情報取得部41’’では、狭域タップ構築部521乃至523、標準タップ構築部531乃至533、および広域タップ構築部541乃至543により抽出されたタップが全てタップ選択部55に供給され、タップ選択部55は、コンポーネント間相関判定部51からのタップ選択情報に従って、1つのタップを出力する。
【0151】
ここで、タップ選択部55が選択するタップは、予測の対象となっているコンポーネント信号から抽出されるものに限定されない。例えば、コンポーネント信号C2が予測の対象となっているときに、図29に示すように、コンポーネント信号C1のみの信号帯域が高く、コンポーネント信号C2およびC3の信号帯域が低い場合であって、かつ、コンポーネント信号C1およびC2間の相関が強い場合においては、コンポーネント信号C2から広域タップを抽出するよりも、コンポーネント信号C1から狭域タップを抽出したほうが、より多くの情報を取得することができる。
【0152】
従って、コンポーネント信号C1から抽出したタップを用いて、コンポーネント信号C2の予測をした方が、コンポーネント信号C2から抽出したタップを用いて予測をするよりも、高い予測精度を実現することができる。
【0153】
なお、図28のタップ情報取得部41’’を備えた画像処理装置11による画像変換処理では、例えば、図12のタップ情報取得部41を備えた画像処理装置11による画像変換処理よりも予測精度が低くなるが、クラス数を削減することができ、これにより、処理を高速に行うことができる。
【0154】
次に、図2の予測演算部15における予測演算と、予測係数ROM14に記憶された予測係数の学習について説明する。
【0155】
上述したように、画像変換処理においては、低解像度の画像データから予測タップを抽出し、その予測タップと予測係数を用いて、高解像度の画像データの画素(以下、適宜、高解像度画素という)の画素値を、所定の予測演算によって求める(予測する)ことを考える。また、学習処理においては、教師用のデータとしての高解像度の画像データと、生徒用のデータとしての低解像度の画像データとが用いられ、例えば、解像度の異なる撮像装置で同一の被写体を撮像して高解像度の画像データと低解像度の画像データと得ることや、高解像度の画像データをサブサンプルすることで低解像度の画像データを得ることができる。
【0156】
所定の予測演算として、例えば、線形1次演算を採用することとすると、高解像度画素の画素値yは、次式(2)の線形1次式によって求められることになる。
【0157】
【数2】

【0158】
但し、式(2)において、xnは、高解像度画素yについての予測タップを構成する、n番目の低解像度画像データの画素(以下、適宜、低解像度画素という)の画素値を表し、wnは、n番目の低解像度画素(の画素値)と乗算されるn番目の予測係数を表す。なお、式(2)では、予測タップが、N個の低解像度画素x1,x2,・・・,xNで構成されるものとしてある。
【0159】
ここで、高解像度画素の画素値yは、式(2)に示した線形1次式ではなく、2次以上の高次の式によって求めるようにすることも可能である。
【0160】
いま、第kサンプルの高解像度画素の画素値の真値をykと表すとともに、式(2)によって得られるその真値ykの予測値をyk'と表すと、その予測誤差ekは、次式(3)で表される。
【0161】
【数3】

【0162】
いま、式(3)の予測値yk'は、式(2)にしたがって求められるため、式(3)のyk'を、式(2)にしたがって置き換えると、次式(4)が得られる。
【0163】
【数4】

【0164】
但し、式(4)において、xn,kは、第kサンプルの高解像度画素についての予測タップを構成するn番目の低解像度画素を表す。
【0165】
式(4)(又は式(3))の予測誤差ekを0とする予測係数wnが、高解像度画素を予測するのに最適なものとなるが、すべての高解像度画素について、そのような予測係数wnを求めることは、一般には困難である。
【0166】
そこで、予測係数wnが最適なものであることを表す規範として、例えば、最小自乗法を採用することとすると、最適な予測係数wnは、次式(5)で表される自乗誤差の総和Eを最小にすることで求めることができる。
【0167】
【数5】

【0168】
但し、式(5)において、kは、高解像度画素ykと、その高解像度画素ykについての予測タップを構成する低解像度画素x1,k,x2,k,・・・,xN,kとのセットのサンプル数(学習用のサンプルの数)を表す。
【0169】
式(5)の自乗誤差の総和Eの最小値(極小値)は、次式(6)に示すように、総和Eを予測係数wnで偏微分したものを0とするwnによって与えられる。
【0170】
【数6】

【0171】
一方、上述の式(4)を予測係数wnで偏微分すると、次式(7)が得られる。
【0172】
【数7】

【0173】
式(6)と式(7)から、次式(8)が得られる。
【0174】
【数8】

【0175】
式(8)のekに、式(4)を代入することにより、式(8)は、次式(9)に示す正規方程式で表すことができる。
【0176】
【数9】

【0177】
式(9)の正規方程式は、例えば、掃き出し法(Gauss-Jordanの消去法)などを用いることにより、予測係数wnについて解くことができる。
【0178】
式(9)の正規方程式を、クラス(の組合せ)毎にたてて解くことにより、最適な予測係数(ここでは、自乗誤差の総和Eを最小にする予測係数)wnを、クラス毎に求めることができる。
【0179】
図2の画像処理装置11では、以上のようなクラス毎の予測係数が予測係数ROM14に記憶され、その予測係数を用いて、式(2)の演算を行うことにより、低解像度画像データが高解像度画像データに変換される。
【0180】
なお、低解像度の画像データを構成するコンポーネント信号C1乃至C3の画素は、図11のタップ情報取得部41で取得されたタップ情報となる。または、画像変換処理(予測処理)で用いるために、クラスタップとは異なる形状の予測タップを設定してもよい。
【0181】
次に、図30は、予測係数を学習する処理を説明するフローチャートである。なお、予測係数を学習する学習装置は、後述する図31のコンピュータがプログラムを実行することにより実現される。
【0182】
ステップS31において、高解像度画像データに相当する画像である教師画像をサブサンプリングし、その解像度を低下させることにより低解像度画像データに相当する画像である生徒画像を生成する。
【0183】
ステップS32において、教師画像を構成する画素を、例えば、ラスタスキャン順に、順次、注目画素としてクラス分類処理(図2のクラス分類部13と同様の処理)が行われ、注目画素のクラスを求める。
【0184】
ステップS33において、教師画像の注目画素(の画素値)と、注目画素についての予測タップを構成する生徒画像の画素とを対象とした足し込みをクラスごとに行い、教師画像の画素すべてを注目画素として、上述の足し込みを行うことにより、注目画素のクラスについて、式(9)に示した正規方程式を生成する。
【0185】
ステップS34において、教師画像を構成する画素のうちの、まだ注目画素とされていない画素が存在するか否かが判定され、まだ注目画素とされていない画素が存在すると判定された場合、処理はステップS32に戻り、まだ注目画素とされていない画素が存在しないと判定されるまで、処理が繰り返される。
【0186】
ステップS34において、まだ注目画素とされていない画素が存在しないと判定された場合、処理はステップS35に進み、ステップS33で生成された正規方程式を解くことにより、予測係数を算出する。
【0187】
ステップS36において、ステップS35で算出された予測係数が、予測係数ROM14に記憶され、予測係数を学習する処理は終了される。
【0188】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0189】
図31は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0190】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)101,ROM(Read Only Memory)102,RAM(Random Access Memory)103は、バス104により相互に接続されている。
【0191】
バス104には、さらに、入出力インタフェース105が接続されている。入出力インタフェース105には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部106、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部107、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部108、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部109、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111を駆動するドライブ110が接続されている。
【0192】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU101が、例えば、記憶部108に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース105及びバス104を介して、RAM103にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0193】
コンピュータ(CPU101)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア111に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インタネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0194】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア111をドライブ110に装着することにより、入出力インタフェース105を介して、記憶部108にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部109で受信し、記憶部108にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM102や記憶部108に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0195】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0196】
なお、上述のフローチャートを参照して説明した各処理は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むものである。また、プログラムは、1のCPUにより処理されるものであってもよいし、複数のCPUによって分散処理されるものであってもよい。
【0197】
また、プログラムは、1のコンピュータにより処理されるものであってもよいし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであってもよい。
【0198】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】コンポーネント信号の各成分間の相関性について説明する図である。
【図2】本発明を適用した画像処理装置の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図3】帯域判定部12の構成例を示すブロック図である。
【図4】入力画像の水平ラインに帯域制限を施す処理を説明する図である。
【図5】帯域制限を施すことによる入力信号の変化を説明する図である。
【図6】判定部23における入力信号の信号帯域の判定の例を示す図である。
【図7】画像差分取得部22の構成例を示すブロック図である。
【図8】ダイナミックレンジの算出について説明する図である。
【図9】画像差分取得部22が差分情報を算出する処理を説明するフローチャートである。
【図10】信号帯域の判定について説明する図である。
【図11】クラス分類部13の構成例を示すブロック図である。
【図12】タップ情報取得部41の構成例を示すブロック図である。
【図13】タップの形状の例を示す図である。
【図14】コンポーネント間相関判定部51の構成例を示すブロック図である。
【図15】帯域判定結果と相関性判定結果に従って選択される各コンポーネント信号のタップの形状の例を示す図である。
【図16】タップの形状を決定する方法について説明する図である。
【図17】一括して行われるADRC処理と、コンポーネント信号ごとに行われるADRC処理とについて説明する図である。
【図18】画像処理装置11が行う画像変換処理を説明するフローチャートである。
【図19】画像変換処理の評価結果を説明する図である。
【図20】従来方法のタップの形状を示す図である。
【図21】帯域判定結果と相関性判定結果に基づいて選択される各コンポーネント信号のタップの形状を説明する図である。
【図22】評価結果を示す図である。
【図23】従来方法のタップの形状を示す図である。
【図24】信号帯域と情報量について説明する図である。
【図25】タップ情報取得部の他の構成例を示すブロック図である。
【図26】評価結果を示す図である。
【図27】広域密タップの形状を示す図である。
【図28】タップ情報取得部のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【図29】コンポーネント信号の例を示す図である。
【図30】学習処理を説明するフローチャートである。
【図31】本発明を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0200】
11 画像処理装置, 121乃至123 帯域判定部, 13 クラス分類部, 14 予測係数ROM, 15 予測演算部, 211および212 帯域制限部, 221および222 画像差分取得部, 23 判定部, 31 DR取得部, 32 レベル正規化差分絶対値取得部, 33 積算部, 34 メモリ, 41 タップ情報取得部, 42 ADRCクラス分類部, 51 コンポーネント間相関判定部, 521乃至523 狭域タップ構築部, 531乃至533 標準タップ構築部, 541乃至543 広域タップ構築部, 551乃至553 タップ選択部, 56 タップ情報合成部, 61 帯域判定結果統合部, 621乃至623 フィルタ係数設定部, 631乃至633 帯域制限部, 641乃至643 相関性算出部, 65 閾値判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像データを、より高画質の第2の画像データに変換する画像処理を行う画像処理装置において、
前記第1の画像データを構成する複数のコンポーネント信号の信号帯域を判定する帯域判定手段と、
前記帯域判定手段により判定された信号帯域の判定結果に基づいて、前記複数のコンポーネント信号間の相関性を求める相関性取得手段と、
前記複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果と、前記相関性取得手段により求められた前記複数のコンポーネント信号間の相関性との組み合わせに基づいて、前記複数のコンポーネント信号のそれぞれから、前記第2の画像データの注目している画素である注目画素を予測する予測演算に用いるためのタップとして、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を抽出する際のタップ形状を、前記複数のコンポーネント信号ごとに決定するタップ形状決定手段と、
前記タップ決定手段により決定されたタップ形状で、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を、前記第1の画像データから抽出するタップ抽出手段と、
前記タップ抽出手段により抽出されたタップに基づいて、前記注目画素をクラス分けするクラス分類手段と、
学習用の前記第1の画像データを用いた前記予測演算の結果と、学習用の前記第1の画像データに対応する学習用の前記第2の画像データとの誤差を最小にする学習によりあらかじめ求められて保持されている予測係数の中から、前記クラス分類手段によりクラス分けされた前記注目画素のクラスに対応する予測係数を出力する予測係数出力手段と、
前記予測係数出力手段から出力された前記予測係数と、前記タップ抽出手段により抽出されたタップを構成する複数の画素とを用いた前記予測演算により、前記第2の画像データの前記注目画素を予測する予測演算手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記タップ形状決定手段は、前記第1の画像データの対応画素を中心とした所定の範囲の標準タップ、前記所定の範囲より狭い範囲の狭域タップ、または、前記所定の範囲より広い範囲の広域タップのいずれかを、前記複数のコンポーネント信号ごとに決定する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記タップ形状決定手段は、前記複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果が同一の信号帯域であり、前記複数のコンポーネント信号間の相関性の組み合わせがいずれも所定の閾値以上である場合、前記標準タップ、前記狭域タップ、および前記広域タップの全てを含む広域密タップを、予測の対象となっているコンポーネント信号の予測に用いるタップとして決定する
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
第1の画像データを、より高画質の第2の画像データに変換する画像処理を行う画像処理方法において、
前記第1の画像データを構成する複数のコンポーネント信号の信号帯域を判定し、
前記信号帯域の判定結果に基づいて、前記複数のコンポーネント信号間の相関性を求め、
前記複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果と、前記複数のコンポーネント信号間の相関性との組み合わせに基づいて、前記複数のコンポーネント信号のそれぞれから、前記第2の画像データの注目している画素である注目画素を予測する予測演算に用いるためのタップとして、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を抽出する際のタップ形状を、前記複数のコンポーネント信号ごとに決定し、
前記タップ形状で、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を、前記第1の画像データから抽出し、
前記第1の画像データから抽出されたタップに基づいて、前記注目画素をクラス分けし、
学習用の前記第1の画像データを用いた前記予測演算の結果と、学習用の前記第1の画像データに対応する学習用の前記第2の画像データとの誤差を最小にする学習によりあらかじめ求められて保持されている予測係数の中から、前記注目画素のクラスに対応する予測係数を出力し、
前記注目画素のクラスに対応する前記予測係数と、前記タップを構成する複数の画素とを用いた前記予測演算により、前記第2の画像データの前記注目画素を予測する
ステップを含む画像処理方法。
【請求項5】
第1の画像データを、より高画質の第2の画像データに変換する画像処理を行う画像処理処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記第1の画像データを構成する複数のコンポーネント信号の信号帯域を判定し、
前記信号帯域の判定結果に基づいて、前記複数のコンポーネント信号間の相関性を求め、
前記複数のコンポーネント信号の信号帯域の判定結果と、前記複数のコンポーネント信号間の相関性との組み合わせに基づいて、前記複数のコンポーネント信号のそれぞれから、前記第2の画像データの注目している画素である注目画素を予測する予測演算に用いるためのタップとして、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を抽出する際のタップ形状を、前記複数のコンポーネント信号ごとに決定し、
前記タップ形状で、前記注目画素に対応する、前記第1の画像データの対応画素を含む、前記対応画素の周囲に存在する複数の画素を、前記第1の画像データから抽出し、
前記第1の画像データから抽出されたタップに基づいて、前記注目画素をクラス分けし、
学習用の前記第1の画像データを用いた前記予測演算の結果と、学習用の前記第1の画像データに対応する学習用の前記第2の画像データとの誤差を最小にする学習によりあらかじめ求められて保持されている予測係数の中から、前記注目画素のクラスに対応する予測係数を出力し、
前記注目画素のクラスに対応する予測係数と、前記タップを構成する複数の画素とを用いた前記予測演算により、前記第2の画像データの前記注目画素を予測する
ステップを含む画像処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−200914(P2009−200914A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41431(P2008−41431)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】