説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】べた濃度が変動して目標濃度より低くなった場合でも、グレーバランス崩れおよび二次色における色相曲がりを起こさずに、かつ、色域が極力狭くならないように階調値を補正する。
【解決手段】キャリブレーション用のパッチで構成された画像データに対して、ガンマ補正部1は、設定された補正テーブルに従った補正を行い、プリンタ出力部2はガンマ補正された画像データにハーフトーン処理を施し色材量に変換して紙面にパッチ画像3として出力する。測色部4は、紙面上に出力された各パッチを、測色器を用いて測色して濃度値を取得する。目標濃度低減部5では、記憶装置7に記憶された目標濃度を、取得した濃度値を反映した修正目標濃度へ変換する。補正テーブル設定部6は、単色の濃度が修正目標濃度に合うように補正テーブルを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーションを高精度に実行する画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の成分色を重ねて画像形成するカラー画像形成装置において、いずれかの成分色のべた濃度(形成濃度上限値)がキャリブレーションの目標濃度よりも低い場合、キャリブレーションで階調補正テーブルによる補正を行ってもべた濃度が低下した該当成分色を目標濃度に補正することは原理的に不可能である。そこで、該当成分色の目標濃度を実際のべた濃度に応じて修正して階調補正テーブルを作成する技術や、グレーバランスが崩れないように該当成分色だけでなく該当成分色以外の目標濃度も修正して階調補正テーブルを作成する技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1では、画像形成装置が形成し得る最大濃度が低下した場合でも、階調がつぶれることなく好適な階調を実現するために、ユーザーがカラーバランス重視の階調調整処理を選択指示した場合、CMYK比を保持して新たな基本階調特性を生成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、該当成分色のみ目標濃度を修正する方法では、グレーバランスが崩れたり二次色の色相が曲がってしまう問題があり、また、該当成分色以外の目標濃度も修正する方法では、該当成分色を使用しない色相まで含めて全体的に色域が狭くなってしまう問題がある。
【0005】
本発明は上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、べた濃度が変動して目標濃度より低くなった場合でも、グレーバランス崩れおよび二次色における色相曲がりを起こさずに、かつ、色域が極力狭くならないように階調値を補正する画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の成分色からなる画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段による形成像の各成分色の濃度上限値を形成濃度上限値として取得する濃度上限値取得手段と、色相毎に異なるパラメータを適用して階調値を補正するガンマ補正手段と、各成分色の最大階調値が修正目標濃度で形成されるように、前記パラメータを制御する低減制御手段とを有し、前記修正目標濃度は、前記各成分色の最大階調値における目標濃度を、色相色の形成に関わる成分色の前記形成濃度上限値を反映して低減した値であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、色相毎にべた濃度(形成濃度上限値)を反映して目標濃度を低減した修正目標濃度を設定し、単色(成分色)の濃度が修正目標濃度に合うように補正テーブルを設定してガンマ補正に適用しているので、べた濃度が変動して目標濃度より低くなった場合でも、グレーバランス崩れおよび二次色における色相曲がりを発生させずに、また色域が極力狭くならないように階調値を補正することができる。
【0008】
さらに、二次色が色相方向に変動することで本来の色相線に対して両側にぶれる従来例に対して、本発明では、彩度方向の一方向にしか変動しないため、変動幅が比較的小さく、安定した色で出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1の構成を示す。
【図2】パッチ画像を示す。
【図3】目標濃度低減部を説明する図である。
【図4】補正テーブル設定部を説明する図である。
【図5】ガンマ補正部を説明する図である。
【図6】本発明による効果を説明する図である。
【図7】従来の処理方法を説明する図である。
【図8】本発明による効果を説明する図である。
【図9】本発明による効果を説明する図である。
【図10】本発明の実施例2の構成を示す。
【図11】色相別ガンマ前処理部と色相別ガンマ前処理パラメータ設定部を説明する図である。
【図12】ガンマ前処理パラメータ算出の関数を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。本発明は、キャリブレーションにおいて測色で取得したべた濃度を反映して修正目標濃度を設定するに際して、三次色、二次色の各色相毎に、その時点での、べた濃度で目標濃度通りに出力可能な階調範囲の最大値を求めて修正目標濃度を設定する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る画像処理装置の構成を示す。図1において、1はガンマ補正部、2はプリンタ出力部、3はパッチ画像、4は測色部、5は目標濃度低減部、6は補正テーブル設定部、7は記憶装置である。
【0012】
キャリブレーション用のパッチで構成された画像データに対して、ガンマ補正部1は、設定された補正テーブルに従った補正を行い、プリンタ出力部2はガンマ補正された画像データにハーフトーン処理を施し色材量に変換して紙面にパッチ画像3として出力する。測色部4は、紙面上に出力された各パッチを、測色器を用いて測色して濃度値を取得する。あるいは、スキャナ読取により濃度値を取得する。目標濃度低減部5では、記憶装置7に記憶された目標濃度を、取得した濃度値を反映して修正し、修正目標濃度へと変換する。補正テーブル設定部6は、単色(成分色)の濃度が修正目標濃度に合うように補正テーブルを設定する。キャリブレーション用のパッチ出力の際に、ガンマ補正部1に適用される補正テーブルは、直近に実施されたキャリブレーション時に設定された補正テーブルである。
【0013】
ガンマ補正部1は、キャリブレーション用パッチ画像を出力する時だけでなく、一般文書等の画像を通常出力する際にも常に実施し、キャリブレーションで作成した補正テーブルを適用してガンマ補正を行った後の画像データをプリント出力する。
【0014】
なお、単色の濃度および目標濃度は、1パラメータで色を特定できるパラメータで代用しても良い。例えば紙白のLab値と単色のLab値のΔE、即ち、Lab空間における紙白からの距離で規定しても良い。単色の場合、色相方向への変動は微小で無視できるとみなせばΔEで色を概ね特定できる。
【0015】
図2は、パッチ画像3を示し、プリンタ出力部2はC、M、Y単色の階調パッチを含むパッチ画像3を出力する。各単色の最大階調値のパッチは必須であり、本実施例では最大階調値を255として説明する。
【0016】
図3は、目標濃度低減部5を説明する図である。記憶装置7に記憶されたCの目標濃度をTc(n),Mの目標濃度をTm(n),Yの目標濃度をTy(n)と表す。nは0から255の階調値である。修正目標濃度をTRc(n),TRm(n),TRy(n)とする。0≦n≦thの範囲では、TRc(n)=Tc(n),TRm(n)=Tm(n),TRy(n)=Ty(n)、即ち濃度値の修正を行わない。thは濃度値の修正を行う境界値であり、最もべた濃度が低下した場合でも高濃度部で階調が完全に潰れてしまうことがないように、変動幅を考慮して予め設定しておく。
【0017】
th<n≦255の範囲での修正目標濃度の求め方について説明する。C、M、Yの測色値をDc(n),Dm(n),Dy(n)とすると、べた濃度はDc(255),Dm(255),Dy(255)になる。べた濃度および最大階調値の目標濃度Tc(255),Tm(255),Ty(255)から、Cmax,Mmax,Ymaxを式1により求め、修正目標濃度とする。
Cmax=Min(Dc(255),Tc(255))
Mmax=Min(Dm(255),Tm(255))
Ymax=Min(Dy(255),Ty(255)) 式(1)
【0018】
次に、式2を満たす階調値nc,nm,nyを求める。
Tc(nc)=Cmax
Tm(nm)=Mmax
Ty(ny)=Ymax 式(2)
【0019】
グレー色相、R色相、G色相、B色相においてカラーバランスが保てる最大の階調値nk,nr,ng,nbを式3により求める。
nk=Min(nc,nm,ny)
nr=Min(nm,ny)
ng=Min(nc,ny)
nb=Min(nc,nm) 式(3)
【0020】
例えば、nm>nyの場合、n≦nyの範囲であれば原理的に目標濃度Tm(n),Ty(n)どおりに出力することが可能であり、R色相のカラーバランスが保証され、色相曲がりが発生しない。式3は、三次色、二次色の各色相毎に、その時点での、べた濃度で目標濃度どおりに出力可能な階調範囲の最大値を求めている。
【0021】
図3には、設定した修正目標濃度(Cmax,Mmax,Ymax)を、C、M、Yの階調値を軸とした立方体の対応する座標位置に示し、また、3つの立方体(a)、(b)、(c)にそれぞれ、Cの修正目標濃度(Cmax、Tc(nb)、Tc(ng)、Tc(nk))、Mの修正目標濃度(Mmax、Tm(nr)、Tm(nb)、Tm(nk))、Yの修正目標濃度(Ymax、Ty(nr)、Ty(ng)、Ty(nk))を示す。
【0022】
単色べた((C,M,Y)=(255,0,0),(0,255,0),(0,0,255))、二次色べた((C,M,Y)=(0,255,255),(255,0,255),(255,255,0))、三次色べた((C,M,Y)=(255,255,255))は立方体の頂点の座標位置に当たり、二次色べた、三次色べたの修正目標濃度(Tc(nb)、Tc(ng)、Tc(nk)、Tm(nr)、Tm(nb)、Tm(nk)、Ty(nr)、Ty(ng)、Ty(nk))は、式3で求めたnk,nr,ng,nbに従って目標濃度から低減された値になっている。
【0023】
図4は、補正テーブル設定部6を説明する図である。Cの補正テーブル設定を例に説明する。図3のCの修正目標濃度で、実線で表したC軸方向が短い直方体内部(8頂点、Tc(nb)、Tc(ng)、Tc(nk)、Cmax、Tc(th)からなる直方体)は、目標濃度が低減される階調範囲に該当し、C軸に沿った4つの短辺の座標位置に対応する補正テーブルをγ1〜γ4として設定する。但し、γ1〜γ4の4つの中の少なくとも1組は実質同じ補正テーブルになる。
【0024】
例えば、nm<ny<ncの場合、式3よりnk=nb=nmになるので、Tc(nk)=Tc(nb)になり、図3の三次色べたを含む短辺(Tc(th)の値を持つ頂点からTc(nk)の値を持つ頂点への線分)に対応する補正テーブルγ3と、二次色(Blue)べたを含む短辺(Tc(th)の値を持つ頂点からTc(nb)の値を持つ頂点への線分)に対応する補正テーブルγ4は、実質同じ補正テーブルになる。
【0025】
図4(a)は、nm<ny<ncのケースを例に、図3の実線で示す直方体短辺の階調値C1に対応する修正目標濃度TR(C1)を表したグラフであり、th<C1≦255の範囲では各短辺に対応した修正目標濃度が設定されるので線グラフが枝分かれしたようになっている。
【0026】
図4(b)は、階調値C2と測色部4で取得された濃度Dc(C2)の関係を表したグラフである。これら2つのグラフを使って、図4(c)の階調値C1を階調値C2に変換するCの補正テーブルが設定される。補正テーブルはTR(C1)=Dc(C2)となるC1,C2の組み合わせを表し、図示したようにTR(C1)=Dc(C2)=aとなるC1,C2の組み合わせがC1a,C2aであるとすると、入力C1aに対してC2aを出力するように設定する。この補正テーブルは、図4(a)の修正目標濃度テーブルを反映して、高濃度部で枝分かれした複数の補正テーブルになる。
【0027】
Mの補正テーブル、Yの補正テーブルも、Cの補正テーブルと同様の手順で設定する。thより大きい高濃度部では、図3の該当色の修正目標濃度における実線の直方体の各短辺に対応した複数の補正テーブルが設定される。
【0028】
図5は、ガンマ補正部1を説明する図である。図4(c)のγ1〜γ4は、それぞれ図5(a)のように実線の直方体の各短辺に対応している。γ1は単色Cyanべた((C,M,Y)=(255,0,0))を含む短辺(Tc(th)の値を持つ頂点からCmaxの値を持つ頂点への線分)に対応する補正テーブルであり、γ2は二次色Greenべた((C,M,Y)=(255,0,255))を含む短辺(Tc(th)の値を持つ頂点からTc(ng)の値を持つ頂点への線分)に対応する補正テーブルであり、γ3は三次色Grayべた((C,M,Y)=(255,255,255))を含む短辺(Tc(th)の値を持つ頂点からTc(nk)の値を持つ頂点への線分)に対応する補正テーブルであり、γ4は二次色Blueべた((C,M,Y)=(255,255,0))を含む短辺(Tc(th)の値を持つ頂点からTc(nb)の値を持つ頂点への線分)に対応する補正テーブルである。
【0029】
ガンマ補正部1では、0≦C1≦thの階調値が入力された場合は、図4(c)の補正テーブルに従って、一般的なガンマ補正を行いC2へ変換する。th<C1≦255の階調値が入力された場合は、C軸に直交するC=C1の平面内で二次元の線形補間を行い、変換値を求める。
【0030】
図5(b)は、C=C1の平面を表したものであり、γ1における入力値C1に対する出力値をγ1(C1)、γ2における入力値C1に対する出力値をγ2(C1)、γ3における入力値C1に対する出力値をγ3(C1)、γ4における入力値C1に対する出力値をγ4(C1)としている。平面内に存在する(C,M,Y)=(C1,M1,Y1)の座標位置におけるガンマ補正後の値C2’は、式4の線形補間演算で求まる。
C2’={γ1(C1)・(255−M1)・(255−Y1)
+γ2(C1)・(255−M1)・Y1
+γ3(C1)・M1・Y1
+γ4・M1・(255−Y1)}/255 式(4)
【0031】
図6は、C、M、YのうちYのみ、べた濃度が低下した場合の、第1の従来例(a)と本発明(b)における色域と単色、二次色の色相について説明する図である。
【0032】
L*a*b*の3次元色空間での色域を、a*b*の2軸からなる2次元平面に投影して表し、点線は、C、M、Y全ての単色で実際に出力可能なべた濃度(最大階調値で出力したときの出力濃度)が各色毎に設定された目標濃度以上である場合の色域と代表色(R,G,B,C,M,Y)の色相を表す。
【0033】
実線は、Yのべた濃度が目標濃度に達しない場合を表し、従来例(a)は、Yの高濃度部の目標濃度をYのべた濃度に合わせて低減するように修正した場合の色域と代表色色相である。本発明(b)は、色相に応じて目標濃度を低減制御し、Y色相に関しては、(a)と同様にYの高濃度部の目標濃度をYのべた濃度に合わせて低減し、G色相に関しては、YとCの高濃度部の目標濃度をYのべた濃度に合わせて低減し、R色相に関しては、YとMの高濃度部の目標濃度を、Yのべた濃度に合わせて低減した場合であり、二次色のG、R色相において、Yのべた濃度低下に合わせてCとMの目標濃度も修正することで色相曲がりを防止している。
【0034】
図7は、C、M、Yのうち、Yのみべた濃度が低下した場合の、第2の従来例における色域と単色、二次色の色相について説明する図である。
【0035】
前掲した特許文献1に記載の技術のように、カラーバランス(主にグレーバランス)を考慮して、Yのべた濃度が目標濃度に達しない場合に、C、M、Yの高濃度部の目標濃度をYのべた濃度に合わせてどの色相でも一様に低減すると、グレーバランスの崩れや二次色の色相曲がりが防げるが、全体的に色域が狭くなる。Y以外のCやMのべた濃度が低下した場合も同じく、図7のように色域が狭くなる。
【0036】
図8は、C、M、YのうちMのみ、べた濃度が低下した場合の、第1の従来例(a)と本発明(b)における色域と単色、二次色の色相について説明する図である。
【0037】
図6では、Yのべた濃度が低下した場合について示したが、もう一例として、他の色(M)のべた濃度が低下した場合について、次の図9(本発明の効果)を説明するために示す。
【0038】
図8(a)の実線は、Mの高濃度部の目標濃度をMのべた濃度に合わせて低減するように修正した場合の色域と代表色の色相である。本発明(b)の実線は、色相に応じて目標濃度を低減制御し、M色相に関しては、(a)と同様にMの高濃度部の目標濃度をMのべた濃度に合わせて低減し、R色相に関しては、MとYの高濃度部の目標濃度をMのべた濃度に合わせて低減し、B色相に関しては、MとCの高濃度部の目標濃度をMのべた濃度に合わせて低減した場合であり、二次色のR、B色相においてMのべた濃度低下に合わせてYとCの目標濃度も修正することで色相曲がりを防止している。
【0039】
図9は、R色相での第1の従来例(a)と本発明(b)における変動方向と変動幅について説明する図である。図6と図8を重ねて、R色相の高濃度部(べた付近)に該当する部分を拡大表示している。
【0040】
図9(a)における矢印の方向は、べた濃度が低下した色の目標濃度のみを修正する従来例における変動方向を表し、矢印の長さは変動幅を表している。高濃度部が色相方向に変動し、Yのべた濃度が低下した場合は右下方向、Mのべた濃度が変動した場合は左上方向に色相が曲がる。
【0041】
図9(b)における矢印は、本発明における変動方向と変動幅を表し、Yのべた濃度が低下した場合でも、Mのべた濃度が変動した場合でも彩度方向にしか変動しない。本来のR色相線に対して両側にぶれる従来例に比べ、一方向にしか変動しないため、比較的変動幅が小さく安定した色で出力できる効果がある。
【0042】
図10は、本発明の実施例2の構成を示す。実施例1では、色相毎に目標濃度を低減した修正目標濃度を求めて、γ1〜γ4の補正テーブルを設定する例を示したが、実施例2では、補正テーブルはγ1のみとし、その代わり、ガンマ補正の前処理として色相に応じて階調値を低減する処理を加えることで、色相毎に目標濃度を低減するのと実質、同一の処理を行う実施例を示す。
【0043】
実施例1(図1)と異なる点についてのみ説明する。目標濃度低減部5αは、式1に従ってCmax,Mmax,Ymaxを求めて修正目標濃度とし、補正テーブル設定部6は、最大階調値255をCmax,Mmax,Ymaxで出力するためのC,M,Yの補正テーブルを求める(図4の、γ1の補正テーブルを求める)。ガンマ補正部1αは、色相別ガンマ前処理部11と色相共通ガンマ補正部12から成る。色相別ガンマ前処理部11は、色相別ガンマ前処理パラメータ設定部8で設定されたパラメータを適用して、色相に応じて階調値を低減処理する。色相共通ガンマ補正部12は、補正テーブル設定部6で設定した補正テーブルに従った補正を行う。
【0044】
図11は、色相別ガンマ前処理部11および色相別ガンマ前処理パラメータ設定部8を説明する図である。
【0045】
色相別ガンマ前処理部11では、図3の目標濃度の低減と同様に、入力の階調値nが0≦n≦thの範囲では階調の低減は行わず、th<n≦255の範囲で階調の低減を行う。但し、C,M,Yの単色に関しては、th<n≦255であっても階調の低減を行わず入力の階調値をそのまま出力する。th<C1≦255の階調値が入力された場合は、実線で示した直方体の頂点のパラメータから三次元の線形補間を行い出力の階調値を求める。
【0046】
色相別ガンマ前処理パラメータ設定部8では、Cのガンマ前処理パラメータfc(Tc(ng)),fc(Tc(nk)),fc(Tc(nb))、および、Mのガンマ前処理パラメータfc(Tc(ng)),fc(Tc(nk)),fc(Tc(nb))、および、Yのガンマ前処理パラメータfc(Tc(ng)),fc(Tc(nk)),fc(Tc(nb))を求める。fc(),fm(),fy()はガンマ前処理パラメータ算出の関数である。
【0047】
図12は、ガンマ前処理パラメータ算出の関数fc()を説明する図である。目標濃度低減部5αで設定されるCの修正目標濃度TR(C1)は、0≦C1≦thの範囲でTR(C1)=C1であり、th<C1≦255の範囲でTR(255)=CmaxになるようにC1=thとC1=255の点を直線で結んだテーブルになっている。式で表すと式(5)になる。
【0048】
色相共通ガンマ補正部12では、これに従って補正テーブル設定部6で設定された補正テーブルを適用するので、ガンマ補正部1αへの入力の階調値255を最終的に濃度C’でプリント出力するには、色相別ガンマ前処理部11で、255をfc(C’)に変換しておけば良い。th<C’≦Cmaxのときのfc(C’)を求める関数は、式(6)で表せる。関数fm(),fy()も同様に式7、式8で表せる。
【0049】
【数1】

【0050】
ガンマ前処理パラメータは、最終的に図3に示した修正目標濃度どおりに出力するためのパラメータであるので、図3と照らし合わせて、例えばCの修正目標濃度がTc(ng)である二次色Greenべたのガンマ前処理パラメータを、図11ではfc(Tc(ng))としている。
【0051】
実施例2によれば、階調毎に変換値が設定された非線形なγ2〜γ4を保持する代わりに、二次色、三次元べたに対応したガンマ前処理パラメータを保持しておき、色相別ガンマ前処理部11においてth<n≦255の範囲で線形補間演算を行うことで、保持するパラメータを削減した上で実施例1と同様の効果を得ることが出来る。
【0052】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0053】
1 ガンマ補正部
2 プリンタ出力部
3 パッチ画像
4 測色部
5 目標濃度低減部
6 補正テーブル設定部
7 記憶装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2005−109975号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分色からなる画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段による形成像の各成分色の濃度上限値を形成濃度上限値として取得する濃度上限値取得手段と、色相毎に異なるパラメータを適用して階調値を補正するガンマ補正手段と、各成分色の最大階調値が修正目標濃度で形成されるように、前記パラメータを制御する低減制御手段とを有し、前記修正目標濃度は、前記各成分色の最大階調値における目標濃度を、色相色の形成に関わる成分色の前記形成濃度上限値を反映して低減した値であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ガンマ補正手段は、色相別ガンマ前処理手段および色相共通ガンマ補正手段で構成され、前記色相別ガンマ前処理手段は、前記パラメータを適用して階調値を低減する手段であり、前記色相共通ガンマ補正手段は、色相に関わらず各成分色に対して一つの補正テーブルを適用して階調値を補正する手段であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記パラメータは、複数の成分色のうち一色を使用して形成する色相色の階調値を低減せず、複数の成分色のうち二色以上を使用して形成する色相色の階調値を低減するパラメータであり、前記補正テーブルは、前記成分色の最大階調値が前記形成濃度上限値で形成されるように階調値を補正する補正テーブルであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
複数の成分色のうち二色以上を使用して形成する色相色において、使用する成分色毎に前記形成濃度上限値を目標濃度とする階調値を求め、求めた成分色毎の前記階調値のうち最小の階調値における目標濃度を、前記色相色の最大階調値における修正目標濃度とすることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
複数の成分色からなる画像を形成する画像形成工程と、前記画像形成工程による形成像の各成分色の濃度上限値を形成濃度上限値として取得する濃度上限値取得工程と、色相毎に異なるパラメータを適用して階調値を補正するガンマ補正工程と、各成分色の最大階調値が修正目標濃度で形成されるように、前記パラメータを制御する低減制御工程とを有し、前記修正目標濃度は、前記各成分色の最大階調値における目標濃度を、色相色の形成に関わる成分色の前記形成濃度上限値を反映して低減した値であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項5記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−254123(P2011−254123A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124456(P2010−124456)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】