説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】関心領域の所望の濃度(或いは輝度)とコントラストを維持しながら、被写体領域を最適な濃度範囲(或いは輝度範囲)に変換できるようにする。
【解決手段】入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する入力画素値設定回路1111と、前記2つの異なる入力画素値のそれぞれに対応する出力画素値を設定する出力画素値設定回路1112と、入力画素値設定回路1111で設定された入力画素値が出力画素値設定回路1112で設定された出力画素値となるダイナミックレンジ変換関数を用いて、入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行うダイナミックレンジ変換回路1113を備える。この際、前記ダイナミックレンジ変換関数は、入力画素値設定回路1111で設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像の画像処理を行う画像処理装置及び画像処理方法、当該画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム、並びに、当該プログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用のX線撮影装置においては、デジタルでX線画像データを出力可能なデジタルX線撮影装置が普及してきており、このようなデジタルX線撮影装置では、画像処理は必要不可欠となっている。このデジタルX線撮影装置(画像処理装置)で行われるX線画像データの画像処理としては様々なものが適用されているが、撮影されたX線画像データを観察しやすい濃度(輝度)とコントラストの画像に変換する階調変換処理は重要な画像処理の1つとなっている。
【0003】
なお、上述した階調変換処理に使用される関数の形状としては、例えば、図8に示すような銀塩フィルムの特性曲線と同様のS字形状のものが一般的に使用されている。図8は、一般的な階調変換処理に使用される入力画素値と出力濃度値との特性曲線の一例を示す模式図である。この図8に示すS字の特性曲線(階調変換曲線)の作成方法については、例えば、下記の特許文献1に開示されている。この特許文献1の方法では、以下の(5)式に示される関数を用いる。
【0004】
【数9】

【0005】
(5)式において、ODmaxおよびODminは、それぞれ、出力最大濃度および出力最小濃度を示し、また、aおよびbは、定数である。また、cおよびdは、それぞれ、階調度および平行移動量を示し、この2変数を変更することで所望とする関心領域の濃度とコントラストを最適に調整することができる。
【0006】
図9は、胸部撮影に係る画像データの階調変換方法の一例を説明するための模式図である。例えば、胸部撮影においては、一般的に最も関心のある領域は肺野領域である。そこで、図9に示すように、肺野領域の代表値(肺野領域の平均値など)が所定の濃度(例えば、濃度1.8D)となるコントラストになるようにcおよびdを変更することで、肺野領域の濃度とコントラストを最適に調整することができる。
【0007】
ところで、上述した階調変換処理において、被写体の体格や部位によっては、関心領域のコントラストを維持したまま被写体領域全体を最適な濃度範囲に収めることが困難な場合がある。例えば、胸部撮影においては、X線が透過しやすい肺野領域とX線が透過し難い縦隔領域を含むため、被写体のダイナミックレンジが非常に広い。そのため、図9に示すような階調変換関数(階調変換曲線)を用いて肺野領域のコントラストを最適化すると、縦隔領域の濃度が低くなり過ぎて、当該縦隔領域を同時に観察することができないことがある。
【0008】
そこで、このような問題を解決するための方法として、一般的に、階調変換の前に微細な構造のコントラストを保存したまま、画像のダイナミックレンジを圧縮することが行われている。この方法は、例えば、下記の非特許文献1に開示されている。この非特許文献1の方法は、入力画像をSorg、入力画像をマスクサイズM×M画素で移動平均したときのボケ画像をSusとした場合、以下の(6)式で表されるものである。
【0009】
【数10】

【0010】
(6)式において、f( )は、図10に示すような広義単調減少関数である。ここで、図10は、ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。
【0011】
また、(6)式は、以下の(7)式で表すことも可能である。
【0012】
【数11】

【0013】
(7)式において、f1( )は、図11に示すような広義単調増加関数で表される。ここで、図11は、ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。(7)式に示すSorg−Susは高周波成分に相当するため、低周波成分に限定した階調変換と捉えることができる。なお、最終的に出力される画像の濃度は、(7)式のf1( )と(5)式の階調変換関数を組み合わせた形となるため、縦隔等の低濃度領域の濃度を高くする効果がある。
【0014】
また、(6)式においてf( )を変更することで、皮膚等の高濃度領域の濃度を低くすることも可能であり、この方法については、例えば、下記の特許文献2に開示されている。
【0015】
【非特許文献1】阿南ほか、日本放射線技術学会雑誌、1989年8月、第45巻、第8号、10頁
【特許文献1】特開平11−88688号公報
【特許文献2】特許第2663189号公報
【特許文献3】特許第3631095号公報
【特許文献4】特開2002−245453号公報
【特許文献5】特開2000−276605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述した画像処理技術の背景をもとに、従来の技術では、以下に示す課題があった。
【0017】
まず、特許文献1に記載の技術では、関心領域の濃度とコントラストが最適化される反面、被写体の個体差等によるダイナミックレンジの違いについては全く考慮されていない。このため、被写体全体を最適な濃度範囲に収めることができない場合があった。なお、階調度cによって階調変換曲線の全体の傾きを小さくして、被写体全体を最適な濃度範囲に収めることも可能である。しかしながら、この場合、階調変換曲線の部分毎に傾きを調整することはできないため、関心領域のコントラストを犠牲にしなければならなかった。すなわち、関心領域のコントラストを維持したまま、被写体のダイナミックレンジに応じて階調変換曲線を最適に調整することが困難であるという課題があった。
【0018】
また、非特許文献1および特許文献2に記載の技術では、被写体全体を最適な濃度に収めることは可能である。しかしながら、これらの技術では、被写体全体を最適な濃度に収める処理を階調変換処理と独立した処理ととらえており、当該処理の効果が階調変換後の画像にどのように反映されるかについては全く考慮されていない。このため、被写体のダイナミックレンジが階調変換後に最適な濃度範囲に必ず収まるという保証がなかった。また、例えば、図11に示す場合には、SusがBase以下の範囲では傾きが一定であるため、Baseの設定値によってはダイナミックレンジをあまり圧縮したくない関心領域や関心領域周辺においても一律にダイナミックが圧縮されてしまうという課題がある。
【0019】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、関心領域の所望の濃度(或いは輝度)とコントラストを維持しながら、被写体領域を最適な濃度範囲(或いは輝度範囲)に変換できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の画像処理装置は、入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する入力画素値設定手段と、前記2つの異なる入力画素値のそれぞれに対応する出力画素値を設定する出力画素値設定手段と、前記入力画素値設定手段で設定された入力画素値が前記出力画素値設定手段で設定された出力画素値となる変換関数を用いて、前記入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行うダイナミックレンジ変換手段とを有し、前記変換関数は、前記入力画素値設定手段で設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものである。
【0021】
本発明の画像処理方法は、入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する入力画素値設定ステップと、前記2つの異なる入力画素値のそれぞれに対応する出力画素値を設定する出力画素値設定ステップと、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値が前記出力画素値設定ステップで設定された出力画素値となる変換関数を用いて、前記入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行うダイナミックレンジ変換ステップとを有し、前記変換関数は、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものである。
【0022】
本発明のプログラムは、入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する入力画素値設定ステップと、前記2つの異なる入力画素値のそれぞれに対応する出力画素値を設定する出力画素値設定ステップと、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値が前記出力画素値設定ステップで設定された出力画素値となる変換関数を用いて、前記入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行うダイナミックレンジ変換ステップとをコンピュータに実行させ、前記変換関数は、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものである。
【0023】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、前記プログラムを記憶する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、関心領域の所望の濃度(或いは輝度)とコントラストを維持しながら、被写体領域を最適な濃度範囲(或いは輝度範囲)に変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態においては、本発明に係る画像処理装置として、X線撮影装置を適用した場合について説明を行う。この際、以下に示す本発明の実施形態では、X線を用いた撮影を行うX線撮影装置を適用した例を示すが、X線に限らず、例えば、α線、β線、γ線などの他の放射線を用いた放射線撮影装置を適用することも可能である。
【0026】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の概略構成の一例を示す模式図である。図1に示すX線撮影装置100は、X線を用いて撮影された画像をフィルム上又はモニタ(画像表示器109)上に出力する際の効果的な画像処理を行う機能を有する画像処理装置である。
【0028】
X線撮影装置100は、X線発生回路101、2次元X線センサ102、データ収集回路103、前処理回路104、バス105、CPU106、メインメモリ107、操作パネル108、画像表示器109、画像解析回路110及び画像処理回路111を有する。また、前処理回路104、CPU106、メインメモリ107、操作パネル108、画像表示器109、画像解析回路110及び画像処理回路111の各デバイスは、バス105を介して互いに、データの授受が可能に(すなわち、通信可能に)接続されている。
【0029】
また、データ収集回路103は、前処理回路104と通信可能に接続されており、更に、X線発生回路101及び2次元X線センサ102と通信可能に接続されている。また、画像処理回路111は、入力画素値設定回路1111、出力画素値設定回路1112、ダイナミックレンジ変換回路1113及び階調変換回路1114を含んで構成されており、1111〜1114に示す各回路は、バス105に接続されている。
【0030】
上述した構成を有するX線撮影装置100において、メインメモリ107は、CPU106での処理に必要なプログラムや各種のデータなどを記憶すると共に、CPU106のワーキング・メモリとして機能する。CPU106は、メインメモリ107に記憶されているプログラムや各種のデータ等を用いて、操作パネル108からの操作入力に応じて、当該X線撮影装置100の全体の動作に係る制御等を行う。これによりX線撮影装置100は、以下のように動作する。
【0031】
まず、操作パネル108を介してユーザから撮影指示が入力されると、CPU106は、当該撮影指示を、前処理回路104を介してデータ収集回路103に伝える(送信する)。そして、CPU106は、データ収集回路103を経由してX線発生回路101及び2次元X線センサ102を制御して、X線撮影を実行する。
【0032】
X線撮影では、まず、X線発生回路101が、被写体200に対してX線ビーム101aを放射する。X線発生回路101から放射されたX線ビーム101aは、被写体200を減衰しながら透過して、2次元X線センサ102に到達する。そして、2次元X線センサ102は、被写体200を透過したX線ビーム101aに基づくX線画像信号を生成し出力する。本実施形態では、被写体200を人体とする。すなわち、2次元X線センサ102から出力されるX線画像は、人体画像となる。
【0033】
データ収集回路103は、2次元X線センサ102から出力されたX線画像信号を所定のデジタル信号に変換してX線画像データとして前処理回路104に供給する。
【0034】
前処理回路104は、データ収集回路103からの信号(X線画像データ)に対して、オフセット補正処理やゲイン補正処理等の前処理を行う。この前処理回路104で前処理が行われたX線画像データは原画像データとして、CPU106の制御により、バス105を介して、メインメモリ107に一旦記憶されるとともに、画像解析回路110に供給される。
【0035】
画像解析回路110は、バス105を介して供給された原画像データ(入力画像データ)の照射野領域や被写体領域及び被写体領域内の関心領域を認識する等の画像解析処理を行う。ここで、照射野領域は、例えば、撮影領域において、不要領域からの散乱を防いでコントラストの低下を防止するため等に、必要領域のみ照射する所謂「照射野絞り」が行われた領域である。この画像解析回路110において得られた情報は、CPU106の制御により、バス105を介して、画像処理回路111に供給される。
【0036】
画像処理回路111の入力画素値設定回路1111は、所定の入力画素値を設定するものである。具体的に、入力画素値設定回路1111は、入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する。
【0037】
画像処理回路111の出力画素値設定回路1112は、所定の出力画素値を設定するものである。具体的に、出力画素値設定回路1112は、入力画素値設定回路1111で設定された入力画素値(少なくとも2つの異なる入力画素値)のそれぞれに対応する出力画素値を設定する。
【0038】
画像処理回路111のダイナミックレンジ変換回路1113は、入力画素値設定回路1111で設定された入力画素値と出力画素値設定回路1112で設定された出力画素値とに基づいて、ダイナミックレンジを変換するものである。具体的に、ダイナミックレンジ変換回路1113は、入力画素値設定回路1111で設定された入力画素値が出力画素値設定回路1112で設定された出力画素値となるダイナミックレンジ変換関数を用いて、入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行う。この際、ダイナミックレンジ変換関数は、入力画素値設定回路1111で設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものである。また、ダイナミックレンジ変換関数は、少なくとも2つの異なる画素値の範囲において、その傾きが広義単調増加または広義単調減少する関数を適用することができる。
【0039】
画像処理回路111の階調変換回路1114は、ダイナミックレンジ変換回路1113で変換された画像に対して階調変換を行うものである。具体的に、階調変換回路1114は、ダイナミックレンジ変換回路1113によって変換された画像の画素値を、階調変換関数を用いて濃度または輝度に相当の画素値に変換する処理を行う。
【0040】
以上のような構成を備えた本実施形態のX線撮影装置100における画像処理回路111の処理について、図2に示すフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0041】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の処理手順の一例を示すフローチャートである。具体的に、図2のフローチャートにおける処理は、CPU106がメインメモリ107に記憶されているプログラムを実行して、画像処理回路111を制御することにより行われる。
【0042】
まず、図2に示す処理を開始する前に、CPU106は、前処理回路104によって得られた原画像データを、バス105を介して画像処理回路111の前段に設けられている画像解析回路110に転送する。そして、画像解析回路110は、原画像データにおける原画像(入力画像)の照射野領域や被写体領域及び被写体領域内の関心領域を認識する等の画像解析処理を行う。
【0043】
ここで、画像解析回路110による画像の解析方法については、特に限定するものではないが、例えば、照射野領域を認識する方法としては、本願の出願人により既に提案されている上記の特許文献3に記載の方法を用いることができる。この特許文献3に記載の方法では、注目画素とその周辺画素の画素値のパターンにより照射野端らしさを点数化し、照射野領域を精度良く認識することができる。
【0044】
また、被写体領域を認識する方法としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
具体的には、照射野領域内の最大画素値の90%の値をTh1として算出し、以下に示す(8)式を用いて、入力画像f(x,y)から素抜け領域及び当該素抜け領域と一定間隔内で接する体領域を削除した後の画像f1(x,y)を求める。
【0045】
【数12】

【0046】
(8)式において、d1及びd2は、入力画像f(x,y)から素抜け領域と一定間隔内で接する体領域を削除する際の一定間隔の幅を決定するための定数を示し、これらは、入力画像f(x,y)の大きさ等に基づき設定されるものである。
【0047】
そして、画像解析回路110は、素抜け領域等を除去した画像f1(x,y)から画素値0を除く、画素値の最小値及び最大値を算出し、その範囲を被写体領域として認識する。
【0048】
さらに、被写体領域内の関心領域を認識する方法としては、例えば、入力画像のヒストグラムから認識する方法や入力画像の2次元的な構造から関心領域を認識する方法等、さまざまな方法を用いることができる。なお、関心領域は、撮影部位毎に異なるため、例えば、操作パネル108で設定された撮影部位に基づいて、各種の方法の中から所望の方法を用いて認識するようにしても良い。
【0049】
具体的に、例えば、撮影部位が頚椎の場合では、本願の出願人より既に提案されている上記の特許文献4に記載の方法を用いることができる。この特許文献4に記載の方法では、被写体領域内の首領域の輪郭線を抽出することで、高精度に頚椎内の関心領域を認識することができる。また、例えば、撮影部位が胸部の場合では、本願の出願人より既に提案されている上記の特許文献5に記載の方法を用いることができる。この特許文献5に記載の方法では、画像の空間的な位置関係から領域を限定することで、高精度に肺野内の関心領域を認識することができる。
【0050】
なお、画像解析回路110に転送される原画像データ(入力画像データ)は必ずしもフルサイズの画像の画像データである必要はなく、任意のサイズに縮小した画像の画像データであっても良い。
【0051】
その後、図2に示すフローチャートが開始される。
図2に示すフローチャートが開始されると、まず、ステップS201において、階調変換回路1114は、関心領域の代表値xroiが、操作パネル108を介して設定された所望の濃度とコントラストとなる階調変換関数D( )を算出する。
具体的には、本願の出願人より既に提案されている上記の特許文献1に記載のS字の特性曲線(階調変換曲線)を用いて、図3に示すように、関心領域の代表値xroiが所望の濃度Droiとコントラストとなるような階調変換関数D( )を算出する。ここで、図3は、本発明の実施形態を示し、階調変換関数の算出方法の一例を説明するための模式図である。
【0052】
なお、関心領域の代表値xroiとしては、例えば、画像解析回路110で認識された関心領域の画素値の平均値を用いれば良い。また、例えば、画像表示器109に画像を表示し、操作パネル108を介してユーザが手動にて設定した関心領域の画素値の平均値を用いるようにしても良い。
【0053】
続いて、ステップS202において、入力画素値設定回路1111は、被写体領域の画素値の最小値xmin、最大値xmax及び関心領域の代表値xroiをダイナミックレンジ変換に係る入力画素値として設定する。ここで、被写体領域の画素値の最小値xmin及び最大値xmaxは、画像解析回路110で認識された被写体領域の画素値の最小値及び最大値を用いる。また、関心領域の代表値xroiは、階調変換関数D( )を算出する際に用いた関心領域の代表値xroiと同じ値を用いる。
【0054】
本実施形態では、ステップS202の処理において、入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値が設定する必要がある。
具体的に、少なくとも2つの異なる入力画素値のうちの一方の入力画素値として、被写体領域の内部の所定領域(関心領域)から算出された値である関心領域の代表値xroiを設定する。また、少なくとも2つの異なる入力画素値のうちの他方の入力画素値として、被写体領域の画素値における最大値xmaxまたは最小値xminを設定する。上述したステップS202では、被写体領域の画素値における最大値xmax及び最小値xminの両方を設定した場合を示している。
【0055】
続いて、ステップS203において、出力画素値設定回路1112は、所望とする被写体領域の最小濃度Dmin、最大濃度Dmax及び関心領域の濃度Droiを取得する。
具体的に、本実施形態では、被写体領域の最小濃度Dmin及び最大濃度Dmaxは、ユーザが操作パネル108を介して入力した、被写体領域をどの濃度範囲に収めたいかの情報に応じて任意に設定される。また、関心領域の濃度Droiは、階調変換関数D( )を算出する際に用いた所望の濃度Droiと同じ値を用いる。
【0056】
続いて、ステップS204において、階調変換回路1114は、S201で算出した階調変換関数D( )に基づいて被写体領域の最小濃度Dmin、最大濃度Dmax及び関心領域の濃度Droiに対応する入力画素値fmin、fmax、froiを算出する。
具体的には、図4に示すように、被写体領域の最小濃度Dmin、最大濃度Dmax及び関心領域の濃度Droiに対応する入力画素値fmin、fmax、froiを、階調変換関数D( )の逆関数D-1( )にて算出する。ここで、図4は、本発明の実施形態を示し、出力画素値の設定方法の一例を説明するための模式図である。
なお、上述した逆関数D-1( )が代数的に算出できない場合には、例えば、直接探索法(2分法、線形逆補間法など)や逐次近似法(ニュートン・ラフソン法、ベイリー法など)を用いて、入力画素値fmin、fmax、froiを算出すればよい。ここで、直接探索法や逐次近似法に関しては、これらの方法が公知であるため、ここではその説明を省略する。また、ステップS204の処理は、本実施形態においては、階調変換回路1114が行うようにしているが、例えば、出力画素値設定回路1112が行うようにしても適用可能である。
【0057】
続いて、ステップS205において、出力画素値設定回路1112は、ステップS204で算出された入力画素値fmin、fmax、froiを、ダイナミックレンジ変換の出力画素値として設定する。これにより、ダイナミックレンジ変換の出力画素値fmin、fmax、froiが設定される。
【0058】
続いて、ステップS206において、ダイナミックレンジ変換回路1113は、入力画素値設定回路1111で設定された入力画素値及び出力画素値設定回路1112で設定された出力画素値に基づいて、ダイナミックレンジ変換関数f( )を算出する。
具体的に、ダイナミックレンジ変換回路1113は、入力画素値xmin、xmax、xroi、及び、出力画素値fmin、fmax、froiに基づいて、以下に示す(9)式を用いて、ダイナミックレンジ変換関数f( )を算出する。
【0059】
【数13】

【0060】
なお、(9)式に示すダイナミックレンジ変換関数fl( )は、xmin〜xroiの範囲(すなわち、入力画素値xroi以下の範囲)をfmin〜froiの範囲に変換するための関数であり、以下に示す(10)式で表すことができる。
【0061】
【数14】

【0062】
また、(9)式に示すダイナミックレンジ変換関数fu( )は、xroi〜xmaxの範囲(すなわち、入力画素値xroi以上の範囲)をfroi〜fmaxの範囲に変換するための関数であり、以下に示す(11)式で表すことができる。
【0063】
【数15】

【0064】
この場合のダイナミックレンジ変換関数f( )は、例えば、図5に示す形状となる。図5は、本発明の実施形態を示し、ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。図5に示すダイナミックレンジ変換関数では、入力画素値xroiを所望の出力画素値froiに変換し、かつ、入力画素値のxmin〜xmaxの範囲を所望とする出力画素値のfmin〜fmaxの範囲に変換することができる。また、図5に示す入力画素値xroiでは、当該入力画素値における出力画素値の傾きが1となっており、入力画素値xroiから離れるのに従って徐々にその傾きが大きく変化する関数となっている。すなわち、関心領域である入力画素値xroi周辺では、コントラストの変動を極力抑え、被写体領域のダイナミックレンジを所望のダイナミックレンジに変換することができる。
【0065】
なお、上述したダイナミックレンジ変換関数f( )では、入力画素値がxmin以下及びxmax以上の領域は、一定の値にクリップされる。通常この領域は、不要な領域であるため問題ないが、画像解析回路110で認識される被写体領域の認識精度によっては、当該被写体領域が入力画素値のxmin以下及びxmax以上に含まれる可能性がある。
【0066】
そこで、このような場合を考慮して、傾きの最大限度値amax(amax>1、例えば5.0)及び最小限度値amin(amin<1、例えば0.2)を設定し、以下に示す(12)式を用いてダイナミックレンジ変換関数f( )を算出しても良い。
【0067】
【数16】

【0068】
(12)式において、xalは、amax=f'l(xal)を満たす入力画素値であり、また、xauは、amax=f'u(xau)を満たす入力画素値である。なお、入力画素値xalは、入力画素値xa以下の画素値を示し、入力画素値xauは、入力画素値xa以上の画素値を示す。これらの入力画素値は、例えば、以下に示す(13)式で表すことができる。
【0069】
【数17】

【0070】
この場合のダイナミックレンジ変換関数f( )は、例えば、図6に示す形状となる。図6は、本発明の実施形態を示し、ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。図6に示すダイナミックレンジ変換関数では、入力画素値がxal以下及びxau以上での傾きが最大限度値amax以上または最小限度値amin以下とならないように、ダイナミックレンジ変換される。この場合、厳密には、入力画素値xmin〜xmaxの範囲が所望とする出力画素値fmin〜fmaxの範囲に変換されないが、画像解析回路110での誤認識により被写体領域がクリップされるのを防止することができる。
【0071】
なお、上述した(9)式、(12)式で表されるダイナミックレンジ変換関数f( )では、入力画素値がxroi以下及びxroi以上の両方のダイナミックレンジを変換するものであったが、この形態に限定されるものではない。例えば、入力画素値がxroi以下及びxroi以上のどちらか一方のダイナミックレンジを変換するダイナミックレンジ変換関数であっても本実施形態に適用可能である。具体的に、以下に説明する。
【0072】
具体的に、入力画素値がxroi以下のみのダイナミックレンジを変換するダイナミックレンジ変換関数としては、例えば、以下に示す(14)式を用いることができる。
【0073】
【数18】

【0074】
また、入力画素値がxroi以上のみのダイナミックレンジを変換するダイナミックレンジ変換関数としては、例えば、以下に示す(15)式を用いることができる。
【0075】
【数19】

【0076】
以上のようにして、ステップS206におけるダイナミックレンジ変換関数f( )の算出が行われる。
【0077】
続いて、ステップS207において、例えば、ダイナミックレンジ変換回路1113は、ステップS206で算出したダイナミックレンジ変換関数f( )を用いて、入力画像(原画像)の画素値を変換する処理を行う。
【0078】
続いて、ステップS208において、階調変換回路1114は、ステップS207においてダイナミックレンジ変換回路1113で変換された入力画像の画素値を、ステップS201で算出した階調変換関数D( )を用いて変換する処理を行う。その後、図2に示す処理が終了する。
【0079】
ここで、上述の如くダイナミックレンジ変換関数では、被写体領域のダイナミックレンジが階調変換後に所望の濃度範囲(或いは、輝度範囲)に収まり、かつ、関心領域の代表値が所望の濃度(或いは、輝度)となるように算出されるものである。また、関心領域の周辺では、ダイナミックレンジ変換前後でのコントラスト変動を極力抑えるように構成されたものである。
よって、本実施形態によれば、被写体領域のダイナミックレンジや階調変換曲線によらず、関心領域の所望の濃度(或いは、輝度)とコントラストを維持したまま、被写体領域を最適な濃度範囲(或いは、輝度範囲)に変換することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の概略構成は、図1に示す第2の実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の概略構成と同じである。第2の実施形態のX線撮影装置100における画像処理回路111の処理について、図7に示すフローチャートを用いて具体的に説明する。
【0081】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の処理手順の一例を示すフローチャートである。具体的に、図7のフローチャートにおける処理は、CPU106がメインメモリ107に記憶されているプログラムを実行して、画像処理回路111を制御することにより行われる。なお、図7に示すフローチャートにおいて、図2に示すフローチャートと同様の処理を実行するステップについては同じステップ番号を付しており、以下の説明においては、上述した第1の実施形態と異なる処理についてのみ具体的に説明する。
【0082】
まず、図7に示す処理では、図2に示すステップS201〜S206の処理を実行する。
【0083】
続いて、ステップS301において、ダイナミックレンジ変換回路1113は、入力画像(原画像)を周波数分解する処理を行う。ここでの周波数分解の方法については、特に限定するものではないが、例えば、以下に示す(16)式のように、ローパスフィルタgを用いて、画像Xを低周波成分L及び高周波成分の2つの周波数帯域の画像に分解する処理を適用することができる。
【0084】
【数20】

【0085】
(16)式において、*は、畳み込み積分を表す。なお、(16)式に示すローパスフィルタgとしては、移動平均フィルタ、ガウスフィルタ等を用いればよい。
【0086】
続いて、ステップS302において、例えば、ダイナミックレンジ変換回路1113は、ステップS206で算出したダイナミックレンジ変換関数f( )を用いて、ステップS301で周波数分解した入力画像の画素値を変換する処理を行う。
具体的には、ダイナミックレンジ変換関数f( )に基づいて、ステップS301で周波数分解された周波数成分を以下に示す(17)式により変換する処理を行う。これにより、ダイナミックレンジが変換された画素値Y(i,j)を得る。
【0087】
【数21】

【0088】
なお、(17)式では、低周波成分Lに限定してダイナミックレンジが変換されるため、高周波成分に含まれる微細な構造のコントラストを保存(保持)することができる。
【0089】
続いて、ステップS303において、階調変換回路1114は、ステップS302においてダイナミックレンジ変換回路1113で変換された入力画像の画素値を、ステップS201で算出した階調変換関数D( )を用いて変換する処理を行う。その後、図7に示す処理が終了する。
【0090】
以上、第2の実施形態によれば、第1の実施形態における効果に加えて、高周波成分に含まれる微細な構造のコントラストを保存(保持)することができる効果がある。
【0091】
なお、第2の実施形態では、入力画像の周波数分解を(16)式を用いて行うようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ウェーブレット変換、ラプラシアンピラミッド等を用いてもよい。すなわち、本実施形態の技術的思想は、他の周波数分解を用いた場合にも適用することができる。また、本実施形態では、画像を2つの周波数帯域の画像に分解する例を示したが、例えば、3つ以上の周波数帯域の画像に分解する場合にも適用できることは、当業者にとっては明らかである。
【0092】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0093】
上述した本発明の各実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の画像処理方法を示す図2及び図7の各ステップは、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0094】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記憶媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記憶媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、MO、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROM、DVD−ROM、DVD−R等を用いることができる。
【0095】
前記プログラムの供給方法としては、例えば、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、当該ホームページから前記プログラムそのものをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによって供給できる。さらに、当該ホームページから、圧縮され自動インストール機能を含む前記プログラムに係るファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。また、前記プログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムに係るファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0096】
また、前記プログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対して、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることもできる。この場合、ユーザは、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行して、コンピュータにインストールすることになる。
【0097】
また、コンピュータが、読み出した前記プログラムを実行することによって、前述した本発明の各実施形態の機能が実現される他、次の態様でも適用可能である。例えば、前記プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した本発明の各実施形態の機能を実現する態様も適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1の実施形態(或いは、第2の実施形態)に係るX線撮影装置(画像処理装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態を示し、階調変換関数の算出方法の一例を説明するための模式図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、出力画素値の設定方法の一例を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るX線撮影装置(画像処理装置)の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】一般的な階調変換処理に使用される入力画素値と出力濃度値との特性曲線の一例を示す模式図である。
【図9】胸部撮影に係る画像データの階調変換方法の一例を説明するための模式図である。
【図10】ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。
【図11】ダイナミックレンジ変換関数の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0099】
100 X線撮影装置
101 X線発生回路
101a X線ビーム
102 2次元X線センサ
103 データ収集回路
104 前処理回路
105 バス
106 CPU
107 メインメモリ
108 操作パネル
109 画像表示器
110 画像解析回路
111 画像処理回路
1111 入力画素値設定回路
1112 出力画素値設定回路
1113 ダイナミックレンジ変換回路
1114 階調変換回路
200 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する入力画素値設定手段と、
前記2つの異なる入力画素値のそれぞれに対応する出力画素値を設定する出力画素値設定手段と、
前記入力画素値設定手段で設定された入力画素値が前記出力画素値設定手段で設定された出力画素値となる変換関数を用いて、前記入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行うダイナミックレンジ変換手段とを有し、
前記変換関数は、前記入力画素値設定手段で設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記予め定められた値は、1であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変換関数は、前記2つの異なる画素値の範囲において前記傾きが広義単調増加または広義単調減少する関数であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記一方の入力画素値は、前記被写体領域の内部の所定領域から算出された値であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記入力画素値設定手段で設定された入力画素値のうちの前記一方の入力画素値ではない他方の入力画素値は、前記被写体領域の画素値における最大値または最小値であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記一方の入力画素値をxroiとし、当該一方の入力画素値に対応する出力画素値をfroiとし、また、前記入力画素値設定手段で設定された入力画素値のうちの前記一方の入力画素値ではない他方の入力画素値として前記被写体領域の画素値における最大値xmaxを用い、当該他方の入力画素値に対応する出力画素値をfmaxとし、前記変換関数をfu(x)とすると、
前記ダイナミックレンジ変換手段は、
【数1】

(1)式で表される変換関数fu(x)を用いて、前記入力画像の前記一方の入力画素値xroi以上の領域における一部又は全部の画素値を変換する処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記一方の入力画素値をxroiとし、当該一方の入力画素値に対応する出力画素値をfroiとし、また、前記入力画素値設定手段で設定された入力画素値のうちの前記一方の入力画素値ではない他方の入力画素値として前記被写体領域の画素値における最小値xminを用い、当該他方の入力画素値に対応する出力画素値をfminとし、前記変換関数をfl(x)とすると、
前記ダイナミックレンジ変換手段は、
【数2】

(2)式で表される変換関数fl(x)を用いて、前記入力画像の前記一方の入力画素値xroi以下の領域における一部又は全部の画素値を変換する処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記ダイナミックレンジ変換手段は、前記変換関数fu(x)における前記傾きの最大限度値amax(amax>1)及び最小限度値amin(amin<1)を設定し、amax=f'u(xa)またはamin=f'u(xa)を満たす、前記入力画像の画素値xa以上の領域の画素値については、
【数3】

(3)式に基づき変換することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記ダイナミックレンジ変換手段は、前記変換関数fl(x)における前記傾きの最大限度値amax(amax>1)及び最小限度値amin(amin<1)を設定し、amax=f'l(xa)またはamin=f'l(xa)を満たす、前記入力画像の画素値xa以下の領域の画素値については、
【数4】

(4)式に基づき変換することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記ダイナミックレンジ変換手段によって変換された画像の画素値を、階調変換関数を用いて濃度または輝度に相当の画素値に変換する階調変換手段を更に有し、
前記出力画素値設定手段で設定される出力画素値は、前記階調変換手段で用いる前記階調変換関数に基づき決定されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する入力画素値設定ステップと、
前記2つの異なる入力画素値のそれぞれに対応する出力画素値を設定する出力画素値設定ステップと、
前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値が前記出力画素値設定ステップで設定された出力画素値となる変換関数を用いて、前記入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行うダイナミックレンジ変換ステップとを有し、
前記変換関数は、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
前記予め定められた値は、1であることを特徴とする請求項11に記載の画像処理方法。
【請求項13】
前記変換関数は、前記2つの異なる画素値の範囲において前記傾きが広義単調増加または広義単調減少する関数であることを特徴とする請求項11に記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記一方の入力画素値は、前記被写体領域の内部の所定領域から算出された値であることを特徴とする請求項11に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値のうちの前記一方の入力画素値ではない他方の入力画素値は、前記被写体領域の画素値における最大値または最小値であることを特徴とする請求項11に記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記一方の入力画素値をxroiとし、当該一方の入力画素値に対応する出力画素値をfroiとし、また、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値のうちの前記一方の入力画素値ではない他方の入力画素値として前記被写体領域の画素値における最大値xmaxを用い、当該他方の入力画素値に対応する出力画素値をfmaxとし、前記変換関数をfu(x)とすると、
前記ダイナミックレンジ変換ステップでは、
【数5】

(1)式で表される変換関数fu(x)を用いて、前記入力画像の前記一方の入力画素値xroi以上の領域における一部又は全部の画素値を変換する処理を行うことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記一方の入力画素値をxroiとし、当該一方の入力画素値に対応する出力画素値をfroiとし、また、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値のうちの前記一方の入力画素値ではない他方の入力画素値として前記被写体領域の画素値における最小値xminを用い、当該他方の入力画素値に対応する出力画素値をfminとし、前記変換関数をfl(x)とすると、
前記ダイナミックレンジ変換ステップでは、
【数6】

(2)式で表される変換関数fl(x)を用いて、前記入力画像の前記一方の入力画素値xroi以下の領域における一部又は全部の画素値を変換する処理を行うことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項18】
前記ダイナミックレンジ変換ステップでは、前記変換関数fu(x)における前記傾きの最大限度値amax(amax>1)及び最小限度値amin(amin<1)を設定し、amax=f'u(xa)またはamin=f'u(xa)を満たす、前記入力画像の画素値xa以上の領域の画素値については、
【数7】

(3)式に基づき変換することを特徴とする請求項16に記載の画像処理方法。
【請求項19】
前記ダイナミックレンジ変換ステップでは、前記変換関数fl(x)における前記傾きの最大限度値amax(amax>1)及び最小限度値amin(amin<1)を設定し、amax=f'l(xa)またはamin=f'l(xa)を満たす、前記入力画像の画素値xa以下の領域の画素値については、
【数8】

(4)式に基づき変換することを特徴とする請求項17に記載の画像処理方法。
【請求項20】
前記ダイナミックレンジ変換ステップによって変換された画像の画素値を、階調変換関数を用いて濃度または輝度に相当の画素値に変換する階調変換ステップを更に有し、
前記出力画素値設定ステップで設定される出力画素値は、前記階調変換ステップで用いる前記階調変換関数に基づき決定されることを特徴とする請求項11乃至19のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項21】
入力画像の被写体領域における少なくとも2つの異なる入力画素値を設定する入力画素値設定ステップと、
前記2つの異なる入力画素値のそれぞれに対応する出力画素値を設定する出力画素値設定ステップと、
前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値が前記出力画素値設定ステップで設定された出力画素値となる変換関数を用いて、前記入力画像の一部又は全部の画素値を変換する処理を行うダイナミックレンジ変換ステップとをコンピュータに実行させ、
前記変換関数は、前記入力画素値設定ステップで設定された入力画素値のうちの一方の入力画素値における傾きが、予め定められた値となるように生成されたものであることを特徴とするプログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のプログラムを記憶することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−169592(P2009−169592A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5764(P2008−5764)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】