説明

画像処理装置、画像処理方法および撮像装置

【課題】画像データに含まれる低周波ノイズを除去することが可能な画像処理装置、画像処理方法およびカメラを提供すること。
【解決手段】画像処理回路2は、センサ6から取り込まれた複数の画素データ(輝度データY、色差データCb、色差データCr)をフィルタリング処理する画像処理装置である。センサ6から取り込まれた画像を格納するSDRAM3が備えられる。フィルタ部11では、SDRAM3の二次元記憶領域3aから読み出される1行毎の複数の画素データの内の注目画素データと注目画素データと異なる複数の周辺画素データの内の一つとをそれぞれ比較し、比較した結果に基づいて注目画素データあるいは周辺画素データの内の一つを出力する。出力されたデータの平均値を演算してフィルタリング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの画像処理に関するものであり、特に、画像データに含まれるノイズを除去する処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図18のフィルタ回路100は、一般的なノイズリダクションのフィルタ処理を行うハード構成例である。フィルタ回路100は、水平方向および垂直方向に3画素づつの画素のデータを必要とする、3×3空間フィルタのハード構成例である。3×3空間フィルタでのフィルタ処理をハード構成で行う場合には、垂直方向の画素データを参照するために、2ライン分の画素データを格納するメモリ101およびフリップフロップ102が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−218482号公報
【特許文献2】特開2006−332732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像素子によって撮影された画像には、ノイズの空間分布周波数が低い、低周波ノイズが含まれる場合がある。低周波ノイズの例としては、5画素以上の広範な範囲に渡る縞模様状のノイズなどが挙げられる。この低周波ノイズは低周波であり広範囲に渡るノイズであるために、従来の3×3画素や5×5画素の空間フィルタでは除去することが困難であるため問題である。一方、広範囲に渡るノイズを除去するために、例えば21×21画素などの巨大な空間フィルタを用いる場合には、垂直方向の画素データを蓄えるメモリやフィルタ演算器などの回路規模が大きくなるため問題である。
【0005】
本発明は前記背景技術の課題の少なくとも1つを解消するためになされたものであり、画像データに含まれる低周波ノイズを除去することが可能な画像処理装置、画像処理方法および撮像装置を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、この画像処理装置は、撮像素子からの複数の画素データを格納するメモリと、メモリの二次元記憶領域に格納された複数の画素データを1行毎に読み出す読出し部と、読出し部から出力される1行毎の複数の画素データの内の注目画素データと、注目画素データと異なる複数の周辺画素データの内の一つとをそれぞれ比較し、比較した結果に基づいて注目画素データあるいは周辺画素データの内の一つを出力する複数の判定選択部と、複数の判定選択部の出力の平均値を演算して出力する演算部とを有することを特徴とする。
【0007】
またこの画像処理方法は、撮像素子からの複数の画素データをメモリへ格納し、メモリの二次元記憶領域に格納された複数の画素データを1行ずつ読み出し、1行ずつの複数の画素データの内の注目画素データと、注目画素データと異なる複数の周辺画素データの内の一つとをそれぞれ比較し、各比較結果に基づいて注目画素データあるいは複数の周辺画素データの内の一つを選択し、選択した各画素データの平均値を演算することを特徴とする。
【0008】
またこの撮像装置は、撮像素子と、撮像素子からの複数の画素データを格納するメモリと、メモリの二次元記憶領域に格納された複数の画素データを1行ずつ読み出す読出し部と、読出し部から出力される1行ずつの複数の画素データの内の注目画素データと、注目画素データと異なる複数の周辺画素データの内の一つとをそれぞれ比較し、比較した結果に基づいて注目画素データあるいは周辺画素データの内の一つを出力する複数の判定選択部と、複数の判定選択部の出力の平均値を演算して出力する演算部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の画像処理装置、画像処理方法および撮像装置によれば、画像データに含まれる低周波ノイズを除去することが可能な画像処理装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係るカメラを示す図
【図2】画像PIの二次元記憶領域3aへの格納方法の説明図
【図3】面順次の方式による格納方法の説明図
【図4】フィルタ部11の内部回路図
【図5】判定選択回路SC0の内部回路図
【図6】フィルタ関数を示す図(その1)
【図7】フィルタ回路の動作説明図
【図8】第1実施形態に係るフィルタ処理の説明図
【図9】第3実施形態に係る補間部41の回路図
【図10】第3実施形態に係る補間部41の動作説明図
【図11】第4実施形態に係る補間部41の動作説明図
【図12】フィルタ関数を示す図(その2)
【図13】判定選択回路SC0aの内部回路図
【図14】判定回路52の内部回路図
【図15】判定選択回路SC0bの内部回路図
【図16】判定選択回路SC0cの内部回路図
【図17】判定選択回路SC0dの内部回路図
【図18】フィルタ回路100の回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の画像処理装置、画像処理方法および撮像装置(カメラ)について具体化した実施形態を図1乃至図17に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。第1実施形態を図1ないし図7を用いて説明する。図1に第1実施形態に係るカメラ1を示す。カメラ1は、画像処理回路2、SDRAM3、外部記録媒体4、LCD5、センサ6を備える。センサ6は、レンズを通して受光した像を、2次元配列のディジタル信号に変換して出力するイメージセンサである。センサ6の例としては、CCDセンサやCMOSセンサなどが挙げられる。SDRAM3は大容量一時記憶外部メモリである。外部記録媒体4は、画像データを保存する媒体であり、例えばフラッシュメモリ、スマートメディア、SDカードなどが挙げられる。LCD5は液晶表示パネルである。
【0012】
画像処理回路2には、ハードで構成された各種マクロが搭載されている。プリプロセス部13には、センサ6からベイヤ配列データBYDが入力される。そしてプリプロセス部13は、ベイヤ配列データBYDに対してデータの並べ替えを行う動作や、入力画像の露光/ホワイトバランス/焦点に関する情報を検出する動作を行う。補間・色処理部16は、色変換、輪郭強調、ガンマ補正などの各種処理を行う。また補間・色処理部16は、ベイヤ配列データBYDを、RGB形式のデータや、YCbCr形式のデータなどに変換する動作を行う。
【0013】
ここでYCbCr形式について説明する。YCbCr形式は、画素の色情報を、輝度(Y)情報と色差(Cb、Cr)情報とに分ける形式である。人間の視覚は明るさの変化(輝度)を認識する解像度に対して、色の違い(色差)を認識する解像度が低い。よって輝度情報に対して色差情報を少なくすることで、画像サイズを節約することが可能となる。第1実施形態では、1つの画素に対して輝度データYおよび色差データCb、Crがそれぞれ1つ対応する、YCbCr444フォーマットが用いられる場合を説明する。
【0014】
調停部12は、各マクロとSDRAM3との間の画像データの読み書きの調停を行う。ここで図2を用いて、YCbCr形式の1フレーム分の画像PIを、SDRAM3の二次元記憶領域3aへ点順次の方式により格納する方法を説明する。調停部12は、1フレーム分の画像PIのうち、まず左上から行方向(水平方向)に向かって最上段の1行の画素データをSDRAM3へ転送する。そして順次1行ずつ下に降りてくる順序で画素データの転送を行う(図2(a))。そして調停部12から転送されてきた画素データが、行方向優先で二次元記憶領域3aに格納される(図2(b))。なおSDRAM3の二次元記憶領域3aから画像PIを読み出して調停部12へ転送する場合においても同様に、画素データが行方向優先で読み出しが行われ、調停部12へ転送される。
【0015】
すなわち画像PIにおいて行方向優先で出力された画素データは、二次元記憶領域3aにおいても行方向優先で格納される。また二次元記憶領域3aからは、行方向優先で画素データ読み出される。
【0016】
なお図3は面順次の方式による格納方法の説明図である。面順次の方式では輝度データY、色差データCb、色差データCrの成分ごとに領域が分けられて、画素データが二次元記憶領域3aへ格納される。なお面順次の方式においても、二次元記憶領域3aにおいては行方向優先で画素データが書込み・読み出しされる。よって画素データの並び順は、前述した点順次の方式と同様である。
【0017】
フィルタ部11には、調停部12から画素データPD0が入力される。画素データPD0は、輝度データY0、色差データCb0およびCr0を備える。そしてフィルタ部11からは処理後画素データPDF0が出力される。処理後画素データPDF0は、処理後色差データCbF0およびCrF0を備える。
【0018】
画像回転部15は、画像の90度回転、180度回転、上下反転、左右反転などを行う。また座標変換部17は、画像の座標変換を行うことにより、任意の多角形の領域を、異なる形状の多角形の領域に変換するような動作を行う。解像度変換部14は、画像の拡大・縮小を行う。JPEG部19は、画像データのJPEGフォーマットへの符号化・復号化を行う。外部I/F部20は、外部記録媒体4へのデータDDの読み書きを行う。表示部18は、LCD5用の信号CSやビデオ信号VSなど、外部表示デバイスへ対応した信号変換・信号出力を行う。
【0019】
図4にフィルタ部11の内部回路を示す。フィルタ部11は、ラインメモリ部21、選択部22、演算回路23を備える。ラインメモリ部21はフリップフロップFF0ないしFF7を備える。フリップフロップFF0ないしFF7は、前段のフリップフロップ出力が次段のフリップフロップに入力されるように、互いに直列接続される。フリップフロップFF0には、調停部12から画素データPD0(輝度データY0、色差データCb0およびCr0)が入力される。フリップフロップFF0からは画素データPD1(輝度データY1、色差データCb1およびCr1)が出力され、フリップフロップFF1に入力される。またフリップフロップFF1からは画素データPD2(輝度データY2、色差データCb2およびCr2)が出力され、フリップフロップFF2に入力される。以下同様にして、フリップフロップFF2からは画素データPD3が出力される。またフリップフロップFF3からは注目画素データPDR(注目画素輝度データYR、注目画素色差データCbRおよびCrR)が出力される。またフリップフロップFF4ないしFF7からは、画素データPD4ないしPD7が各々出力される。
【0020】
選択部22は、判定選択回路SC0ないしSC7を備える。判定選択回路SC0には画素データPD0および注目画素データPDRが入力され、選択色差データSPD0(選択色差データSCb0およびSCr0)が出力される。以下同様にして、判定選択回路SC1ないしSC7の各々には画素データPD1ないしPD7の各々および注目画素データPDRが入力される。そして判定選択回路SC1ないしSC7の各々からは、選択色差データSPD1ないしSPD7の各々が出力される。
【0021】
演算回路23には選択色差データSPD0ないしSPD7が入力される。そして演算回路23からは、処理後画素データPDF0(処理後色差データCbF0およびCrF0)が出力される。
【0022】
図5に判定選択回路SC0の内部回路を示す。判定選択回路SC0は輝度データ判定部28、色差データ判定部29、アンド回路AD1、セレクタSL1およびSL2を備える。輝度データ判定部28の減算回路31には、調停部12から輝度データY0が入力されると共に、フリップフロップFF3から注目画素輝度データYRが入力される。絶対値化回路34には減算回路31の演算結果が入力され、Y差YDが出力される。第1大小判定回路37にはY差YDおよび輝度しきい値Ythが入力され、判定信号JS1が出力される。ここで輝度しきい値Ythは、ユーザが任意に設定することができる値である。
【0023】
色差データ判定部29の減算回路32には色差データCb0および注目画素色差データCbRが入力される。絶対値化回路35には減算回路32の演算結果が入力され、Cb差CbDが出力される。また同様に、減算回路33には色差データCr0および注目画素色差データCrRが入力される。絶対値化回路36には減算回路33の演算結果が入力され、Cr差CrDが出力される。加算回路38にはCb差CbDおよびCr差CrDが入力され、CbCr差CDが出力される。第2大小判定回路39にはCbCr差CDおよび色差しきい値Cthが入力され、判定信号JS2が出力される。ここで色差しきい値Cthは、ユーザが任意に設定することができる値である。
【0024】
アンド回路AD1には判定信号JS1およびJS2が入力され、セレクタ信号SSが出力される。セレクタSL1には色差データCb0、注目画素色差データCbRおよびセレクタ信号SSが入力され、選択色差データSCb0が出力される。同様にセレクタSL2には色差データCr0、注目画素色差データCrRおよびセレクタ信号SSが入力され、選択色差データSCr0が出力される。そして選択色差データSCb0およびSCr0によって、選択色差データSPD0が構成される。なお判定選択回路SC1ないしSC7の構成も、判定選択回路SC0と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0025】
フィルタ部11の動作を説明する。フィルタ部11は、低周波の色ノイズを除去するフィルタである。低周波のノイズとはノイズの空間分布周波数が低いノイズであり、例えば5画素以上の広範な範囲に渡る縞模様状のノイズなどが挙げられる。また色ノイズとは、真の画像は平坦であるのに、青成分と赤成分がまだらに着色してみえるノイズである。
【0026】
フィルタ部11で行われるフィルタ処理としては、イプシロンフィルタ処理、ローパスフィルタ処理、メディアンフィルタ処理などの各種フィルタ処理が可能である。第1実施形態では、イプシロンフィルタ処理が行われる場合を例示する。
【0027】
イプシロンフィルタは、小振幅雑音を除去することを目的とするフィルタである。すなわち、中心となる注目画素の画素値と、±εの範囲の中のデータ点を使用した選択的な平滑化を行うフィルタである。イプシロンフィルタは、1次元の場合には下式(1)のように定義される。
【数1】

…式(1)
ここで、y(n)はフィルタの出力信号値、x(n)は入力信号値である。また係数akは、フィルタのマスクサイズと画素毎の荷重を決める定数であり、下式(2)を満たす定数である。
【数2】

…式(2)
また関数f(x)は、関数の絶対値が、|f(x)|≦εを満たす非線形関数である。そして関数f(x)は、下式(3)で表すことができる。ここでβは定数である。
f(x)=x(x≦ε)、f(x)=β(x>ε) …式(3)
【0028】
ここで式(3)においてβ=0である場合、図6に示すフィルタ関数となる。図6のフィルタ関数では、横軸が注目画素信号と周辺画素信号との差分、縦軸がフィルタ出力値である。そして、注目画素信号と周辺画素信号の差がしきい値ε以上である周辺画素信号について、0に置き換えてフィルタリング処理するものである。すなわち任意の周辺画素において、注目画素信号と周辺画素信号の差がしきい値εを超えた周辺画素のデータについては、注目画素のデータと置き換えて平滑化が行われる。そして第1実施形態では、例として、図6に示すフィルタ関数で表されるイプシロンフィルタを用いる場合を説明する。なお、フィルタ関数は図6に示す関数に限られないことは言うまでもない。
【0029】
画像処理回路2におけるフィルタ処理の動作を説明する。フィルタ処理が開始されると、SDRAM3の二次元記憶領域3aからバースト動作によって画素データが連続読み出しされる。読み出された画素データは調停部12を介して1画素ずつフィルタ部11へ入力される。
【0030】
フィルタ部11の動作を説明する。フィルタ部11は、図6のフィルタ関数を実現するフィルタ回路である。まずラインメモリ部21の動作を、図4および図7を用いて説明する。ラインメモリ部21のフリップフロップFF0には、SDRAM3の二次元記憶領域3aから読み出された1画素分の画素データPD0が入力される。フリップフロップFF0には1サイクル前の画素データPD1が保持される。フリップフロップFF1にはさらに1サイクル前の画素データPD2が保持される。フリップフロップFF2にはさらに1サイクル前の画素データPD3が保持される。フリップフロップFF3にはさらに1サイクル前の注目画素データPDRが保持される。以下同様にして、フリップフロップFF4ないしFF7の各々には、それぞれ1サイクル前の画素データである画素データPD4ないしPD7が保持される。そして図7に示すように、ラインメモリ部21に、1画素分の注目画素データPDRと、8画素分の画素データPD0ないしPD7が連続するデータとして保持される。ここで注目画素データPDRは、同一行に並んだ9画素分の画素データの中央に位置するデータであり、フィルタ処理が行われるデータである。また画素データPD0ないしPD7は、フィルタ処理に用いられる周辺画素のデータである。なおラインメモリ部21の同一行は、SDRAM3の二次元記憶領域3aでの同一行と、画像PIでの同一行とを含む概念であることは言うまでもない。
【0031】
調停部12から入力される画素データPD0と、フリップフロップFF3から出力される注目画素データPDRとが、判定選択回路SC0に入力される(図7、矢印A0)。またフリップフロップFF0から出力される画素データPD1と、フリップフロップFF3から出力される注目画素データPDRとが、判定選択回路SC1に入力される(図7、矢印A1)。以下同様にして、画素データPD2ないしPD7の各々が選択された上で、注目画素データPDRとペアとされ、判定選択回路SC2ないしSC7の各々に入力される(図7、矢印A2ないしA7)。これにより、注目画素データPDRおよび画素データPD0ないしPD7が同一行に存在する場合に、注目画素データPDRと画素データPD0ないしPD7の各々とを比較することが可能となる。なお図4および図7では周辺画素データを画素データPD0ないしPD7の8画素であるとしているが、これに限るものではなく、16画素など各種の値を用いることが出来ることは言うまでもない。
【0032】
次に、選択部22における判定選択回路SC0ないしSC7の動作を説明する。判定選択回路SC0ないしSC7は、注目画素と周辺画素とが同一被写体内の画素であるか否かを判断し、両画素が同一被写体内であれば周辺画素のデータをフィルタ処理用のデータとして選択し、両画素が同一被写体内でなければ注目画素のデータをフィルタ処理用のデータとして選択する回路である。
【0033】
例として、判定選択回路SC0での動作を図5を用いて説明する。輝度データ判定部28の減算回路31では、輝度データY0と注目画素輝度データYRとの差分が算出され、算出結果が絶対値化回路34で絶対値化されることでY差YDが得られる。Y差YDは第1大小判定回路37において、輝度しきい値Ythと比較される。Y差YDが輝度しきい値Yth以下であれば、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータであると判定され、判定信号JS1は”1”とされる。一方、Y差YDが輝度しきい値Ythより大きければ、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータではないと判定され、判定信号JS1は”0”とされる。
【0034】
また色差データ判定部29の減算回路32および絶対値化回路35によって、色差データCb0と注目画素色差データCbRとの差分の絶対値であるCb差CbDが得られる。同様に減算回路33および絶対値化回路36によって、色差データCr0と注目画素色差データCrRとの差分の絶対値であるCr差CrDが得られる。加算回路38によってCb差CbDとCr差CrDとが加算され、CbCr差CDが得られる。CbCr差CDは第2大小判定回路39において、色差しきい値Cthと比較される。CbCr差CDが色差しきい値Cth以下であれば、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータであると判定され、判定信号JS2は”1”とされる。一方、CbCr差CDが色差しきい値Cthより大きければ、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータではないと判定され、判定信号JS2は”0”とされる。
【0035】
アンド回路AD1は、判定信号JS1およびJS2が共に”1”である場合にのみ、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータであると判定し、”1”のセレクタ信号SSを出力する。そしてそれ以外の場合には画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータではないと判定し、”0”のセレクタ信号SSを出力する。セレクタSL1は、セレクタ信号SSが”1”の場合には色差データCb0を選択色差データSCb0として出力し、セレクタ信号SSが”0”の場合には注目画素色差データCbRを選択色差データSCb0として出力する。同様にセレクタSL2は、セレクタ信号SSが”1”の場合には色差データCr0を選択色差データSCr0として出力し、セレクタ信号SSが”0”の場合には注目画素色差データCrRを選択色差データSCr0として出力する。選択色差データSCb0およびSCr0は、選択色差データSPD0として判定選択回路SC0から出力される。
【0036】
また同様の動作が判定選択回路SC1ないしSC7において同時に行われる。そして判定選択回路SC1ないしSC7からは、選択色差データSPD1ないしSPD7が出力される。演算回路23には、選択色差データSPD0ないしSPD7が入力される。演算回路23では選択色差データSCb0ないしSCb7の平均値が演算され、処理後色差データCbF0が得られる。また選択色差データSCr0ないしSCr7の平均値が演算され、処理後色差データCrF0が得られる。処理後色差データCbF0およびCrF0は、処理後画素データPDF0として演算回路23から1画素ずつ連続して出力される。これにより、注目画素データPDRの注目画素色差データCbRおよびCrRに対してフィルタ処理が行われ、色ノイズが除去された処理後画素データPDF0(処理後色差データCbF0およびCrF0)が取得される。
【0037】
処理後画素データPDF0は調停部12を介して1画素ずつSDRAM3の二次元記憶領域3aへ格納される。そして1画像分の処理後画素データPDF0が二次元記憶領域3aへ格納されると、画像処理回路2におけるフィルタ処理が終了する。
【0038】
以上詳細に説明したとおり、第1実施形態に係るカメラ1によれば、フィルタ部11において、ラインメモリ部21の同一行に存在する注目画素データPDRと画素データPD0ないしPD7とを用いてフィルタリング処理が行われる。するとフィルタ部11は、1次元方向に広範な9画素分のフィルタサイズを有することになる。よって例えば5画素以上の広範な範囲に渡る縞模様状のノイズなどの低周波ノイズに対して効果的にフィルタ処理を行うことが可能となる。
【0039】
また低周波ノイズに対して効果的にフィルタ処理を行う場合には、フィルタのサイズを大きくする必要がある。ここで2次元フィルタのサイズを大きくする場合には、複数行のデータを保持する大容量のライン用メモリが必要となる。しかし本開示の画像処理回路2では、フィルタ部11は1次元のフィルタ形状を有する。よってフィルタのサイズを大きくする場合においても、複数行のデータを保持する大容量のライン用メモリを必要としない。よって回路規模を増大させることなく、低周波ノイズを除去することが可能となる。
【0040】
またフィルタサイズを大きくするほど、フィルタ処理時に被写体の境界線で色にじみが発生しやすくなるため、色にじみ発生を防止する必要がある。そして色にじみを防止するには、同一被写体内の注目画素と周辺画素とを用いてフィルタ処理を行う必要がある。ここで色差データのみを参照して注目画素と周辺画素とが同一被写体内の画素であるか否かを判断する場合には、判断基準が一つしか存在しないため誤判断が行われる確率が高くなる。しかし第1実施形態に係る画像処理回路2によれば、色差データのみならず輝度データも用いて注目画素と周辺画素とが同一被写体内の画素であるか否かを判断する。そして2つの判断基準の両方において、両画素が同一被写体内に存在すると判断される場合に、色差データに対してフィルタ処理を行う。これにより複数の判断基準を用いることで、注目画素と周辺画素とが同一被写体内の画素であるか否かの判断において誤判断を減少させることができる。よってフィルタサイズを大きくする場合においても、色にじみ発生を防止することが可能となる。
【0041】
第2実施形態を図8を用いて説明する。第1実施形態では1次元フィルタを用いて行方向(水平方向)のみにフィルタ処理を行う場合を説明した。第2次実施形態では、1次元フィルタを用いて行方向および列方向(垂直方向)のそれぞれにフィルタ処理を行うことで、2次元のフィルタ処理を行う場合を説明する。なおカメラ1やフィルタ部11の構成等は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0042】
図8を用いて動作を説明する。先ず第1実施形態で述べたように、画像PIに対して1回目の行方向のフィルタ処理が行われる。このとき図8(a)に示すように、SDRAM3の二次元記憶領域3aに保持された画像PIが、画像PIの左上から行方向に向かって最上段の行を読出し、1行ずつ下に降りてくる順序で出力される。そして出力された画像PIは、調停部12を介してフィルタ部11に転送される。このとき画像PIにおいて行方向優先で出力された画素データは、二次元記憶領域3aにおいても行方向優先で格納されている。すなわち、連続するデータを読み出すバースト読み出しに適した状態で、画素データが二次元記憶領域3aに保持されている。よって、SDRAM3からの画像PI読み出しを高速に行うことが可能とされる。そして1回目のフィルタ処理がフィルタ部11で終了すると、フィルタ処理後の画像PIは、SDRAM3にフィルタ処理前と同じ格納順序で格納される(図8(a))。
【0043】
次に画像PIに対して2回目の列方向のフィルタ処理が行われる。2回目のフィルタ処理に先立って、画像PIの90度回転処理が行われる。図8(a)に示すように、二次元記憶領域3aに保持された画像PIが、画像PIの左上から行方向に向かって最上段の行を読出し、1行ずつ下に降りてくる順序で出力され、画像回転部15に入力される。画像回転部15では画像PIの左90度回転処理が行われる。そして回転後の画像PIが、まず画像の左上から列方向に向かって最上段の行を二次元記憶領域3aへ格納し、その後1行ずつ下に降りてくる順序で二次元記憶領域3aに格納される(図8(b))。すなわち、列方向のアドレスを順次発生する画像回転部15によって、画像PIの各画素データに対し、列方向に連続するアドレスを有するようにアドレス再割り当てが行われる。そして画像PIにおいて列方向優先で出力された画素データは、二次元記憶領域3aにおいても列方向優先で格納される。
【0044】
そして2回目の列方向のフィルタ処理が行われる。このときSDRAM3の二次元記憶領域3aには、画像PIは列方向に連続する画素データとして保持されている。よって画像PIを、SDRAM3から列方向優先で高速に読み出すことが可能とされる。そして2回目のフィルタ処理がフィルタ部11で終了すると、フィルタ処理後の画像PIは、SDRAM3にフィルタ処理前と同じ格納順序で格納される(図8(b))。
【0045】
そして最後に画像回転部15において画像PIの右90度回転処理が行われる。そして画像PIの各画素データに対し、行方向に連続するアドレスを有するようにアドレス再々割り当てが行われる(図8(c))。これにより2次元のフィルタ処理が行われた画像PIが得られる。
【0046】
以上詳細に説明したとおり、第2実施形態に係るカメラ1によれば、行方向および列方向にそれぞれ1回ずつフィルタ処理が行われる。これにより1次元のフィルタ形状を有するフィルタ部11を用いて、2次元のフィルタ処理を行うことが可能となる。
【0047】
またSDRAM3で用いられるバースト転送方式は、連続したデータの読み書きを高速に行うことができるが、不連続な多数の小さなデータの読み書きにおいては、大幅にアクセス速度が落ちるという特徴がある。よって図8(a)に示すように、画素データが行方向に連続する状態で二次元記憶領域3aに保持されている場合には、行方向へのデータアクセス速度は高いが、列方向へのデータアクセス速度が低くなる。しかし第2実施形態に係る画像処理回路2によれば、列方向へのデータアクセスが必要な場合には、アクセス前の段階において、画像PIの各画素データが列方向に連続するアドレスを有するように画像回転部15よってアドレス再割り当てが行われる。よって列方向へのデータアクセス速度を高めることができるため、フィルタ処理時間の短縮化を図ることができる。また汎用のマクロである画像回転部15を流用することが出来ることから、別途回路を付加する必要がないため、回路規模の増大も抑えることが出来る。
【0048】
なお行方向のフィルタ処理および列方向のフィルタ処理の回数は1回に限られない。行方向のフィルタ処理を2回、列方向のフィルタ処理を2回、など回数を増やすことで、より強力に色むらノイズを除去することも可能であることは言うまでもない。また列方向のアドレスを順次発生するために用いられる回路は画像回転部15に限られない。座標変換部17を用いても、画像PIの各画素データに対し、列方向に連続するアドレスを有するようにアドレス再割り当てを行うことができることは言うまでもない。
【0049】
第3実施形態を図9および図10を用いて説明する。第1実施形態では、ひとつの画素に対して輝度データYおよび色差データCb、Crがそれぞれひとつ対応する、YCbCr444フォーマットの画素データに対してフィルタ処理を行う場合を説明した。第3実施形態では、YCbCr422フォーマットなど、行方向において、輝度データYに対して色差データCb、Crが少ないフォーマットが用いられる場合の画素データに対するフィルタ処理について説明する。なおカメラ1の構成等は第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0050】
図9に第3実施形態に係る補間部41を示す。補間部41は、フィルタ部11の入力段に備えられる。そして色差データCb、Crについて不図示のメモリ部を備えている。なおメモリ部に構成については一般的な周知の構成でよいため、ここでは詳細な説明は省略する。補間部41には調停部12から画素データPD(輝度データY、色差データCbおよびCr)が入力され、補間画素データPDI(補間輝度データYI、補間色差データCbIおよびCrI)が出力される。
【0051】
動作を説明する。図10のように、YCbCr422フォーマットの画素データPD1ないしPD6では、画素データPD1、PD3、PD5の色差データCb、Crが間引かれている。そして補間部41には、画素データPD6から画素データPD1までが1サイクルごとに順次入力される。最初のサイクルにおいて色差データが間引かれていない画素データPD6が入力されると、補間部41は画素データPD6を補間画素データPDI6として出力する(矢印A11)。また補間部41の不図示のメモリ部に、色差データCb6、Cr6が保持される。
【0052】
次サイクルにおいて色差データが間引かれている画素データPD5が入力されると、補間部41は、メモリ部に保持されていた色差データCb6、Cr6を、輝度データY5と共に補間画素データPDI5として出力する(矢印A12、領域R11)。以下同様にして補間部41は、色差データが間引かれていない画素データの色差データCb、Crを保持する動作と、色差データが間引かれた画素データの輝度データYに保持されている色差データCb、Crを合体させる動作とを交互に行う(領域R12、R13)。
【0053】
これにより行方向に間引きされた色差データが補間され、補間された補間画素データPDIはフィルタ部11に入力される。そしてフィルタ部11において、前述した方法によりフィルタ処理が行われる。これにより、YCbCr422フォーマットのような、行方向に色差データが間引きされた画素データに対しても、フィルタ部11を用いてフィルタ処理を行うことが可能となる。
【0054】
なお第3実施形態では、輝度データYが2つに対して、色差データCb、Crがそれぞれ1つ備えられる場合を説明したが、この場合に限られない。例えば輝度データYが4つに対して色差データCb、Crがそれぞれ1つ備えられる場合などにおいても、色差データが間引かれていない画素データの色差データCb、Crを保持する動作と、色差データが間引かれた画素データの輝度データに保持されている色差データCb、Crを合体させる動作とを行えば、フィルタ処理が可能であることは言うまでもない。
【0055】
第4実施形態を図11を用いて説明する。第4実施形態では、YCbCr420フォーマットなど、列方向において、輝度データYに対して色差データCb、Crが少ないフォーマットが用いられる場合の画素データに対するフィルタ処理について説明する。なおカメラ1の構成等は第1実施形態と同様であり、補間部41の構成等は第3実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0056】
動作を説明する。図11のように、YCbCr420フォーマットは、1行目の画素データPD11ないしPD16では色差データCb、Crが間引かれず、2行目の画素データPD21ないしPD26では色差データCb、Crが間引かれる形態を有するフォーマットである。そして補間部41には、1行目の画素データPD16からPD11までが1サイクルごとに順次入力され、次に2行目の画素データPD26からPD21までが1サイクルごとに順次入力される。
【0057】
色差データが間引かれていない1行目の画素データPD11ないしPD16が入力されると、補間部41は画素データPD11ないしPD16を補間画素データPDI11ないしPDI16として出力する(矢印A21)。また補間部41の不図示のメモリ部に、色差データCb11ないしCb16、Cr11ないしCr16が保持される。
【0058】
次に、色差データが間引かれている2行目の画素データPD21ないしPD26が入力されると、補間部41は、メモリ部に保持されていた色差データCb11ないしCb16、Cr11ないしCr16を、輝度データY21ないしY26と共に補間画素データPDI21ないしPDI26として出力する(矢印A22、領域R21)。
【0059】
これにより列方向に間引きされた色差データが補間され、補間された補間画素データPDIはフィルタ部11に入力される。そしてフィルタ部11において、前述した方法によりフィルタ処理が行われる。これにより、YCbCr420フォーマットのような、列方向に色差データが間引きされた画素データに対しても、フィルタ部11を用いてフィルタ処理を行うことが可能となる。
【0060】
なお第4実施形態では、2行分の輝度データYに対して、1行分の色差データCb、Crが備えられる場合を説明したが、この場合に限られない。例えば4行分の輝度データYに対して1行分の色差データCb、Crが備えられる場合などにおいても、フィルタ処理が可能であることは言うまでもない。
【0061】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。第1実施形態で用いられるイプシロンフィルタのフィルタ関数(図6)においては、注目画素と各周辺画素値の間で条件判定を行い、条件を満たしていれば周辺画素のデータをフィルタ処理用のデータとして選択し、条件を満たさなければ注目画素のデータをフィルタ処理用のデータとして選択するとした。しかしイプシロンフィルタのフィルタ関数は、図6の関数に限られない。図12に示すフィルタ関数を用いてもよいことは言うまでもない。図12は、式(3)においてβ=εである場合のフィルタ関数である。図12のフィルタ関数では、注目画素信号と周辺画素信号の差がしきい値εを超えた周辺画素データについては、注目画素データ値±しきい値εのうち周辺画素データ値に近い方のデータと置き換えて平滑化が行われる。そして図12のフィルタ関数を実現するためには、フィルタ部11(図4)において、判定選択回路SC0ないしSC7に代えて、判定選択回路SC0aないしSC7aを備える必要がある。
【0062】
図13に判定選択回路SC0aの内部回路を示す。判定回路51には、輝度データY0、注目画素輝度データYRおよび輝度しきい値Ythが入力される。判定回路51から出力される判定信号JS1aはアンド回路AD1aに入力される。判定回路52には、色差データCb0、注目画素色差データCbRおよび色差しきい値Cthが入力される。判定回路52から出力される判定信号JS2aはアンド回路AD1aに入力され、判定回路52から出力される判定色差データCbJはセレクタSL1aに入力される。また同様に、判定回路53には、色差データCr0、注目画素色差データCrRおよび色差しきい値Cthが入力される。判定回路53から出力される判定信号JS3aはアンド回路AD1aに入力され、判定回路53から出力される判定色差データCbJはセレクタSL2aに入力される。アンド回路AD1aからはセレクタ信号SSaが出力され、セレクタSL1aおよびSL2aに入力される。セレクタSL1aからは選択色差データSCb0が出力され、セレクタSL2aからは選択色差データSCr0が出力される。なお判定選択回路SC1aないしSC7aの構成も判定選択回路SC0aと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0063】
図14に、判定回路52の内部回路を示す。減算回路61には色差データCb0およびCbRが入力され差分CbSが出力される。絶対値化回路64には差分CbSが入力され、Cb差CbDが出力される。減算回路66にはCb差CbDおよび色差しきい値Cthが入力され、差分CbTが出力される。インバータ67には差分CbTが入力され判定信号JS2aが出力される。減算回路62には注目画素色差データCbRおよび色差しきい値Cthが入力され、減算値CbRSが出力される。また加算回路63は注目画素色差データCbRおよび色差しきい値Cthが入力され、加算値CbRAが出力される。セレクタ65には、減算値CbRS、加算値CbRAおよび差分CbSが入力され、修正色差データCbCが出力される。セレクタ68には、注目画素色差データCbR、修正色差データCbCおよび判定信号JS2aが入力され、判定色差データCbJが出力される。なお判定回路51および53の構成も判定回路52と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0064】
判定選択回路SC0aでの動作を説明する。図14において、減算回路61では、色差データCb0から注目画素色差データCbRが減算され、差分CbSが算出される。差分CbSが絶対値化回路64で絶対値化されることでCb差CbDが得られる。減算回路66ではCb差CbDから色差しきい値Cthが減算され、差分CbTが算出される。差分CbTはインバータ67に入力される。そしてCb差CbDが色差しきい値Cthよりも小さい場合には、差分CbTが負となり、インバータ67から出力されるJS2aは”1”となる。一方、Cb差CbDが色差しきい値Cth以上の場合には、差分CbTが0以上となり、インバータ67から出力されるJS2aは”0”となる。
【0065】
減算回路62では、注目画素色差データCbRから色差しきい値Cthが減算され、減算値CbRSが算出される。また加算回路63では、注目画素色差データCbRに色差しきい値Cthが加算され、加算値CbRAが算出される。セレクタ65には、減算値CbRS、加算値CbRAおよび差分CbSが入力される。セレクタ65は、差分CbSが正の符号を有する時には、加算値CbRAの方が減算値CbRSよりも色差データCb0に近いと判断する。よってセレクタ65は加算値CbRAを選択し、修正色差データCbCとして出力する。一方セレクタ65は、差分CbSが負の符号を有する時には、減算値CbRSの方が加算値CbRAよりも色差データCb0に近いと判断する。よってセレクタ65は減算値CbRSを選択し、修正色差データCbCとして出力する。セレクタ68は、判定信号JS2aが”1”である場合(Cb差CbDが色差しきい値Cthよりも小さい場合)には注目画素色差データCbRを判定色差データCbJとして出力し、判定信号JS2aが”0”である場合(Cb差CbDが色差しきい値Cth以上である場合)には修正色差データCbCを判定色差データCbJとして出力する。なお判定回路51および53の動作も判定回路52と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0066】
図13の判定選択回路SC0aにおいて、アンド回路AD1aは、判定信号JS1aないしJS3aが全て”1”である場合にのみ、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータであると判定し、”1”のセレクタ信号SSaを出力する。そしてそれ以外の場合には画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータではないと判定し、”0”のセレクタ信号SSaを出力する。セレクタSL1aは、セレクタ信号SSが”1”の場合には色差データCb0を選択色差データSCb0として出力し、セレクタ信号SSが”0”の場合には判定色差データCbJを選択色差データSCb0として出力する。同様にセレクタSL2aは、セレクタ信号SSが”1”の場合には色差データCr0を選択色差データSCr0として出力し、セレクタ信号SSが”0”の場合には判定色差データCrJを選択色差データSCr0として出力する。選択色差データSCb0およびSCr0は、選択色差データSPD0として判定選択回路SC0から出力される。なお判定選択回路SC1aないしSC7aの動作も判定選択回路SC0aと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。以後、第1実施形態で説明した動作がフィルタ部11で行われることにより、図12に示すフィルタ関数を用いたフィルタ処理を行うことができる。
【0067】
また第1実施形態に係る判定選択回路SC0ないしSC7においては、(1)Y差YDが輝度しきい値Yth以下であり、かつ(2)CbCr差CDが色差しきい値Cth以下であれば、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータであると判定するとしたが、判定条件はこの条件に限られない。例えば図15に示す判定選択回路SC0bのように、第2大小判定回路39に代えて大小判定回路39bおよび39cを備えるとしてもよい。大小判定回路39bには絶対値化回路35から出力されるCb差CbDおよび色差しきい値Cthが入力され、判定信号JS2bが出力される。Cb差CbDが色差しきい値Cth以下であれば判定信号JS2bは”1”とされ、Cb差CbDが色差しきい値Cthより大きければ判定信号JS2bは”0”とされる。大小判定回路39cには絶対値化回路36から出力されるCr差CrDおよび色差しきい値Cthが入力され、判定信号JS2cが出力される。Cr差CrDが色差しきい値Cth以下であれば判定信号JS2cは”1”とされ、Cr差CrDが色差しきい値Cthより大きければ判定信号JS2cは”0”とされる。アンド回路AD1には判定信号JS1、JS2b、JS2cが入力される。この回路では、(1)Y差YDが輝度しきい値Yth以下であり、かつ(2)Cb差CbDが色差しきい値Cth以下であり、かつ(3)Cr差CrDが色差しきい値Cth以下であれば、画素データPD0と注目画素データPDRとが同一被写体内のデータであると判定される。
【0068】
また色差しきい値Cthに代えて、第1色差しきい値Cbthおよび第2色差しきい値Crthを備えるとしてもよい。この場合図15において、大小判定回路39bには第1色差しきい値Cbthが入力され、第1色差しきい値CbthとCb差CbDとの大小が比較される。また大小判定回路39cには第2色差しきい値Crthが入力され、第2色差しきい値CrthとCr差CrDとの大小が比較される。これにより、青色に関連する色差データCbと、赤色に関連する色差データCrとを個別に判断することができるため、より緻密なフィルタ処理を行うことが可能となる。
【0069】
また第1実施形態では、色差しきい値Cthおよび輝度しきい値Ythはユーザーが任意に設定する固定値であるとしたが、この形態に限られない。注目画素の輝度データYの値に応じて、輝度しきい値Ythおよび色差しきい値Cthを設定するとしてもよい。この場合、例えば図16に示す判定選択回路SC0cのように、ルックアップテーブル部LUTをさらに備える形態が挙げられる。ルックアップテーブル部LUTには、注目画素輝度データYRの値と、輝度しきい値Ythおよび色差しきい値Cthとの対応テーブルが保持されている。そしてルックアップテーブル部は、注目画素輝度データYRが入力されると、注目画素輝度データYRの値に応じた輝度しきい値Ythおよび色差しきい値Cthを出力する。これにより、注目画素の輝度レベルに応じた、きめ細やかなしきい値を設定することが可能になり、より的確な判定が可能となる。
【0070】
なお、ルックアップテーブル部には、注目画素輝度データYRの値と、輝度しきい値Ythおよび第1色差しきい値Cbthおよび第2色差しきい値Crthとの対応テーブルが保持されているとしてもよい。この場合にはルックアップテーブル部は、注目画素輝度データYRが入力されると、注目画素輝度データYRの値に応じた輝度しきい値Yth、第1色差しきい値Cbth、第2色差しきい値Crthを出力する。よってさらなる緻密なフィルタ処理を行うことが可能となる。
【0071】
また本実施形態ではYCbCr形式の画像データにおけるフィルタ処理について説明したが、RGB形式の画像データについても同様のフィルタ処理を行うことができることは言うまでもない。この場合、図4に示すフィルタ部11には、画素データR、G、Bが入力され、処理後画素データRF、GF、BFが出力される。そしてフィルタ部11は、判定選択回路SC0ないしSC7に代えて、判定選択回路SC0dないしSC7dを備える必要がある。
【0072】
図17に判定選択回路SC0dの内部回路を示す。減算回路31dでは、データR0と注目画素データRRとの差分が演算される。絶対値化回路34dは、減算回路31dの演算結果の絶対値を、R差RDとして出力する。大小判定回路37dは、R差RDがRしきい値Rth以下であれば”1”の判定信号JS1dを出力し、R差RDがRしきい値Rthより大きければ”0”の判定信号JS1dを出力する。減算回路32dでは、データG0と注目画素データGRとの差分が演算される。絶対値化回路35dは、減算回路32dの演算結果の絶対値を、G差GDとして出力する。大小判定回路39dは、G差GDがGしきい値Gth以下であれば”1”の判定信号JS2dを出力し、G差GDがGしきい値Gthより大きければ”0”の判定信号JS2dを出力する。減算回路33dでは、データB0と注目画素データBRとの差分が演算される。絶対値化回路36dは、減算回路33dの演算結果の絶対値を、B差BDとして出力する。大小判定回路40dは、B差BDがBしきい値Bth以下であれば”1”の判定信号JS3dを出力し、B差BDがBしきい値Bthより大きければ”0”の判定信号JS3dを出力する。
【0073】
アンド回路AD1dは、判定信号JS1dないしJS3dが全て”1”である場合にのみ”1”のセレクタ信号SSdを出力する。セレクタSL1dないしSL3dは、セレクタ信号SSdが”1”の場合には、データR0、G0、B0をそれぞれ選択画素データSR0、SG0、SB0として出力する。またセレクタSL1dないしSL3dは、セレクタ信号SSdが”0”の場合には注目画素データRR、GR、BRをそれぞれ選択画素データSR0、SG0、SB0として出力する。以後、第1実施形態で説明した動作がフィルタ部11で行われることにより、RGB形式の画像データについても本発明のフィルタ処理を行うことができる。
【0074】
なお本実施形態ではイプシロンフィルタ処理について説明した。しかし本発明のポイントは1次元のフィルタ形状を有することにある。よってローパスフィルタ処理、メディアンフィルタ処理などの各種フィルタ処理が可能であることは言うまでもない。
【0075】
ローパスフィルタ処理では、注目画素および周辺画素のそれぞれに係数が割り当てられる。そして画素データ値のそれぞれに対して、対応する係数を乗じて総和値を算出し、該総和値で注目画素のデータ値を置き換える。よってローパスフィルタ処理においても、1次元フィルタの画素のそれぞれに係数を割り当てれば、本発明に係るフィルタ処理を行うことが可能である。
【0076】
メディアンフィルタ処理では、注目画素を中心とした領域の複数の画素データを取り出し、これらの複数の値の大きさを互いに比較して中央値を取得する。そして該中央値で注目画素のデータ値を置き換える。よってメディアンフィルタ処理においても、1次元フィルタの各画素を用いて中央値を取得すれば、本発明に係るフィルタ処理を行うことが可能である。
【0077】
また本実施形態では、フィルタ部11が画像処理回路2に利用できる点や、カメラ1に利用できる点を示したが、これに限られない。画像を扱う回路や機器であれば、何れの回路や機器にも利用できることは言うまでもない。
【0078】
なお、センサ6は撮像素子の一例、SDRAM3はメモリの一例、フィルタ部11はフィルタ回路の一例、画像回転部15および座標変換部17はアドレス発生部のそれぞれ一例である。
【0079】
ここで、以上の実施形態に関し、更に以下の附記を開示する。
(付記1)
撮像素子から取り込まれた複数の画素データをフィルタリング処理する画像処理回路であって、
前記撮像素子から取り込まれた画像を格納するメモリと、
前記メモリの二次元記憶領域の複数行に渡り画像の書き込みが行われる場合に、同一行に存在する画素データ毎にフィルタリング処理を行うフィルタ回路と
を有することを特徴とする画像処理回路。
(付記2)
前記同一行に存在する画素データは、前記二次元記憶領域の同一行に存在する画素データであることを特徴とする付記1記載の画像処理回路。
(付記3)
前記フィルタ回路は、同一列に存在する画素データ毎にフィルタリング処理することを特徴とする付記1記載の画像処理回路。
(付記4)
前記フィルタ回路での同一列の画素データのフィルタリング処理に際し、前記二次元記憶領域からの前記画素データの読み出しを、列方向のアドレスを順次発生するアドレス発生部により行うことを特徴とする付記3記載の画像処理回路。
(付記5)
前記アドレス発生部は、画像処理回路に設けられた画像回転部であることを特徴とする付記4記載の画像処理回路。
(付記6)
前記アドレス発生部は、画像処理回路に設けられた座標変換部であることを特徴とする付記4記載の画像処理回路。
(付記7)
前記フィルタ回路は、前記画素データが色差データであって、一部画素に対応する色差データが間引かれている場合には、該間引かれた画素に隣接する画素の色差データを用いてフィルタリング処理することを特徴とする付記1に記載の画像処理回路。
(付記8)
前記フィルタ回路は、
前記同一行に存在する画素データに含まれる注目画素の画素データと、前記注目画素に隣接する複数の周辺画素の画素データとの各々を比較し、比較後画素データを出力する比較部と、
複数の前記比較後画素データから処理後注目画素データを得る演算回路と
を備えることを特徴とする付記2に記載の画像処理回路。
(付記9)
前記比較部は、
前記注目画素の画素データと前記周辺画素の画素データとの差分値を取得する差分部と、
前記差分値を所定値と比較する判定部と、
前記差分が所定値より小さい場合には前記周辺画素の画素データを選択し、
前記差分が所定値より大きい場合には前記注目画素の画素データを選択する選択部と
を備えることを特徴とする付記8に記載の画像処理回路。
(付記10)
前記画素データは輝度データと色差データとを備え、
前記差分部は注目画素の輝度データと周辺画素の輝度データとの差分値である輝度データ差分値および注目画素の色差データと周辺画素の色差データとの差分値である色差データ差分値を取得し、
前記判定部は、前記輝度データ差分値を輝度データしきい値と比較し、前記色差データ差分値を色差データしきい値と比較し、
前記選択部は、前記輝度データ差分値が前記輝度データしきい値より小さくかつ前記色差データ差分値が前記色差データしきい値より小さい場合には前記周辺画素の色差データを選択し、
前記輝度データ差分値が前記輝度データしきい値より大きい場合には前記注目画素の色差データを選択する
ことを特徴とする付記9に記載の画像処理回路。
(付記11)
撮像素子から取り込まれた複数の画素データをフィルタリング処理する画像処理方法であって、
前記撮像素子から取り込まれた画像をメモリに格納するステップと、
前記メモリの二次元記憶領域の複数行に渡り画像の書き込みが行われる場合に、同一行に存在する画素データ毎にフィルタリング処理を行うステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
(付記12)
カメラであって、撮像素子と、前記撮像素子から取り込まれた複数の画素データをフィルタリング処理する画像処理回路とを有し、
更に前記画像処理回路は、前記撮像素子から取り込まれた画像を格納するメモリと、
前記メモリの二次元記憶領域の複数行に渡り画像の書き込みが行われる場合に、同一行に存在する画素データ毎にフィルタリング処理を行うフィルタ回路と
を有することを特徴とするカメラ。
【符号の説明】
【0080】
1 カメラ
3 SDRAM
3a 二次元記憶領域
6 センサ
11 フィルタ部
12 調停部
15 画像回転部
17 座標変換部
21 ラインメモリ部
22 選択部
23 演算回路
PD0ないしPD7 画素データ
Y0ないしY7 輝度データ
Cb0ないしCb7、Cr0ないしCr7 色差データ
PDR 注目画素データ
YR 注目画素輝度データ
CbRおよびCrR 注目画素色差データ
PDF0 処理後画素データ
SC0ないしSC7 判定選択回路
Yth 輝度しきい値
Cth 色差しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子からの複数の画素データを格納するメモリと、
前記メモリの二次元記憶領域に格納された前記複数の画素データを1行毎に読み出す読出し部と、
前記読出し部から出力される前記1行毎の複数の画素データの内の注目画素データと、 前記注目画素データと異なる複数の周辺画素データの内の一つとをそれぞれ比較し、前記比較した結果に基づいて前記注目画素データあるいは前記周辺画素データの内の一つを出力する複数の判定選択部と、
前記複数の判定選択部の出力の平均値を演算して出力する演算部と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記二次元記憶領域に格納された複数の画素データの座標を変換する座標変換部を有し、
前記演算部の出力を前記二次元記憶領域に格納し、前記二次元領域に格納された前記演算部の出力を前記座標変換部により座標変換して前記二次元領域に格納する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の判定選択部のそれぞれは、前記注目画素データと前記複数の周辺画素データの内の一つとの差分値を求める差分部と、
前記差分が所定値より大きい場合には前記注目画素データを選択し、前記差分が前記所定値以下の場合には前記周辺画素データの内の一つを選択して出力する選択部と
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画素データは輝度データと色差データとを有し、
前記差分部は、前記注目画素の輝度データと前記複数の周辺画素データの内の一つの周辺画素データの輝度データとの差分値である輝度データ差分値、および前記注目画素データの色差データと前記複数の周辺画素データの内の一つの周辺画素データの色差データとの差分値である色差データ差分値を求め、
前記選択部は、前記輝度データ差分値が輝度データしきい値より大きい場合には前記注目画素の色差データを選択して出力し、前記輝度データ差分値が前記輝度データしきい値より小さくかつ前記色差データ差分値が色差データしきい値以下の場合には前記周辺画素データの色差データを選択して出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記撮像素子からの複数の画素データの内の一部の画素データの色差データが間引かれている場合に、前記間引かれている色差データを補間する補間部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
撮像素子からの複数の画素データをメモリへ格納し、
前記メモリの二次元記憶領域に格納された前記複数の画素データを1行ずつ読み出し、
前記1行ずつの複数の画素データの内の注目画素データと、前記注目画素データと異なる複数の周辺画素データの内の一つとをそれぞれ比較し、前記各比較結果に基づいて前記注目画素データあるいは前記複数の周辺画素データの内の一つを選択し、
前記選択した各画素データの平均値を演算する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
撮像素子と、
前記撮像素子からの複数の画素データを格納するメモリと、
前記メモリの二次元記憶領域に格納された前記複数の画素データを1行ずつ読み出す読出し部と、
前記読出し部から出力される前記1行ずつの複数の画素データの内の注目画素データと、前記注目画素データと異なる複数の周辺画素データの内の一つとをそれぞれ比較し、前記比較した結果に基づいて前記注目画素データあるいは前記周辺画素データの内の一つを出力する複数の判定選択部と、
前記複数の判定選択部の出力の平均値を演算して出力する演算部と
を有することを特徴とする撮像装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−198945(P2012−198945A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165283(P2012−165283)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−29812(P2008−29812)の分割
【原出願日】平成20年2月9日(2008.2.9)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】