説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】誤差拡散処理を行うにあたり、高価なハードウェア資源を有効活用する。
【解決手段】入力画像の各画素に対して誤差拡散処理を施す画像処理装置1は、誤差拡散処理を施す対象である注目画素の前後に処理される画素毎にデータを記憶するラインバッファ20と、ラインバッファ20を用いて2種以上の誤差拡散処理を切り替えて注目画素に誤差拡散処理を施す誤差拡散処理部10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中間調を再現する手法として誤差拡散法が知られている(例えば、特許文献1参照)。誤差拡散法は、各画素の信号値を2値化した後の信号値と、2値化前の信号値との差を誤差として、これから2値化する画素の信号値に加算していく方法である。誤差拡散法によれば入力画像と出力画像の誤差が相殺され、階調性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−219291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、誤差拡散処理には、処理によって生じた誤差や出力画像を保持するためのメモリが必要となる。一般的にはラインバッファが用いられるが、ハードウェア構成上、ラインバッファは高価であり、コストがかかる。また、ラインバッファにアクセスするための回路が複雑となり、当該回路に係るコストも必要となるとともに動作速度が制約される。
従来、ハードウェアによる誤差拡散処理は、このような制約の下で成立していた。
【0005】
本発明の課題は、誤差拡散処理を行うにあたり、高価なハードウェア資源を有効活用することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、入力画像の各画素に対して誤差拡散処理を施す画像処理装置であって、前記誤差拡散処理を施す対象となる注目画素の周囲に位置する画素であって、当該注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素及び既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素のそれぞれについてデータを記憶するメモリと、前記メモリを用いて2種以上の誤差拡散処理を切り替えて前記注目画素に誤差拡散処理を施す処理部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、前記2種以上の誤差拡散処理には、誤差拡散型FMスクリーン処理及び画像集中型誤差拡散処理が含まれ、前記処理部は、前記誤差拡散型FMスクリーン処理及び前記画像集中型誤差拡散処理において、前記注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素用のメモリを処理済み画素のデータ保持用メモリとして用い、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像処理装置であって、前記処理部は、前記画像集中型誤差拡散処理において、乱数を用いて画素位置を決定することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、前記2種以上の誤差拡散処理には、通常の誤差拡散処理が含まれ、前記処理部は、前記通常の誤差拡散処理において、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを、誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを決定する判別信号を入力する判別信号入力部を備え、前記処理部は、前記判別信号に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置であって、前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを判定する判定部を備え、前記処理部は、前記判定部の判定結果に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、入力画像の各画素に対して誤差拡散処理を施す画像処理方法であって、前記誤差拡散処理を施す対象となる注目画素の周囲に位置する画素であって、当該注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素及び既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素のそれぞれについてデータをメモリに記憶するステップと、前記メモリを用いて処理部が2種以上の誤差拡散処理を切り替えて前記注目画素に誤差拡散処理を施すステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の画像処理方法であって、前記2種以上の誤差拡散処理には、誤差拡散型FMスクリーン処理及び画像集中型誤差拡散処理が含まれ、
前記誤差拡散型FMスクリーン処理及び前記画像集中型誤差拡散処理において、前記注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素用のメモリを処理済み画素のデータ保持用メモリとして用い、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の画像処理方法であって、前記画像集中型誤差拡散処理において、乱数を用いて画素位置を決定することを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項7から9のいずれか一項に記載の画像処理方法であって、前記2種以上の誤差拡散処理には、通常の誤差拡散処理が含まれ、前記通常の誤差拡散処理において、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを、誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項7から10のいずれか一項に記載の画像処理方法であって、前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを決定する判別信号を入力するステップを有し、前記判別信号に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項7から10のいずれか一項に記載の画像処理方法であって、前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを判定するステップを有し、前記判定の結果に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、プログラムであって、入力画像の各画素に対して誤差拡散処理を施す画像処理装置のコンピュータを、前記誤差拡散処理を施す対象となる注目画素の周囲に位置する画素であって、当該注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素及び既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素のそれぞれについてデータをメモリに記憶する手段、前記メモリを用いて2種以上の誤差拡散処理を切り替えて前記注目画素に誤差拡散処理を施す手段、として機能させることを特徴とする。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のプログラムであって、前記2種以上の誤差拡散処理には、誤差拡散型FMスクリーン処理及び画像集中型誤差拡散処理が含まれ、前記誤差拡散型FMスクリーン処理及び前記画像集中型誤差拡散処理において、前記注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素用のメモリを処理済み画素のデータ保持用メモリとして用い、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする。
【0020】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載のプログラムであって、前記画像集中型誤差拡散処理において、乱数を用いて画素位置を決定することを特徴とする。
【0021】
請求項16に記載の発明は、請求項13から15のいずれか一項に記載のプログラムであって、前記2種以上の誤差拡散処理には、通常の誤差拡散処理が含まれ、前記通常の誤差拡散処理において、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを、誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする。
【0022】
請求項17に記載の発明は、請求項13から16のいずれか一項に記載のプログラムであって、前記コンピュータを、さらに、前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを決定する判別信号を入力する手段、前記判別信号に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定する手段、として機能させることを特徴とする。
【0023】
請求項18に記載の発明は、請求項13から16のいずれか一項に記載のプログラムであって、前記コンピュータを、さらに、前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを判定する手段、前記判定の結果に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定する手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、誤差拡散処理を行うにあたり、高価なハードウェア資源を有効活用することができる。また、出力装置の特性や出力原稿とのマッチングやユーザの好みにより、最適な出力処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第一実施形態における画像処理装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】誤差拡散処理部10の構成を示すブロック図である。
【図3】注目画素、処理済み画素及び未処理画素の位置関係を示す図である。
【図4】ラインバッファ20について説明するためのイメージ図である。
【図5】通常の誤差拡散処理におけるデータの流れを示す説明図である。
【図6】画素集中型誤差拡散処理におけるデータの流れを示す説明図である。
【図7】出力レベルが0である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す説明図である。
【図8】出力レベルが2である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す説明図である。図8(A)は、条件F1を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図8(B)は、条件F2を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図8(C)は、条件F3を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図8(D)は、条件F4を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。
【図9】出力レベルが2である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す説明図である。図9(A)は、条件F5を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図9(B)は、条件F6を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図9(C)は、条件F7を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。
【図10】出力レベルが2である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す説明図である。図10(A)は、条件F8を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図10(B)は、条件F9を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図10(C)は、条件F10を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。
【図11】出力レベルが3である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す説明図である。図11(A)は、条件F11を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図11(B)は、条件F12を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。図11(C)は、条件F13を満たす場合の処理済み画素及び注目画素のパターンを示す説明図である。
【図12】出力レベルが4である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す説明図である。
【図13】誤差拡散型FMスクリーン処理におけるデータの流れを示す説明図である。
【図14】誤差拡散処理部10の処理の流れを示すフローチャートである。
【図15】第二実施形態における画像処理装置2の構成を示すブロック図である。
【図16】第三実施形態における画像処理装置3の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る画像処理装置としては、例えばプリンタ、複写機、ファクシミリ装置又はこれらの複合機等が挙げられるが、画像を構成する各画素における多値データを多値データに変換する処理を行う画像処理装置であればこれに限定されない。
【0027】
(第一実施形態)
図1に、第一実施形態における画像処理装置1の構成を示す。
図1に示すように、第一実施形態の画像処理装置1は、誤差拡散処理部10、ラインバッファ20、誤差拡散パラメータ保持部30、乱数信号発生部40、操作部50及び解像度変換処理部60を有する。画像処理装置1の各部はバス5を介して接続される。画像処理装置1は、入力画像としての多値データに各種処理を施して入力画像の多値データとは異なる多値データを出力画像として出力する装置である。
【0028】
画像処理装置1を構成する各部における処理は、専用のハードウェアにより行われることとしてもよいし、各処理をプログラム化し、このプログラムとCPU(Central Processing Unit)との協働によるソフトウェア処理によって実現されることとしてもよい。プログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することができる。
【0029】
誤差拡散処理部10は、入力された多値データに各種処理を施して入力された多値データとは異なる多値データを出力する。
【0030】
図2に、誤差拡散処理部10の構成を示す。
誤差拡散処理部10は、処理コア11、グリーンノイズ付加部12、加算部13、ホワイトノイズ付加部14、加算部15、減算部16、誤差拡散部17及び加算部18を有する。誤差拡散処理部10の各部はバス19を介して接続される。バス19の矢印はデータの流れを示す。
【0031】
処理コア11は、N値化処理を行う。具体的には、処理コア11は、画像を構成する各画素における多値データと、所定の閾値と、に基づいて、異なる階調数の多値データを出力する。例えば、処理コア11は、入力画像の多値データを二値化して出力する場合、多値データが所定の閾値以上の場合には最大値(256階調の場合は255)に変換して出力し(OFF)、多値データが所定の閾値未満の場合には最小値(0)に変換して出力する(ON)。多値データの出力のための変換処理は、各画素に対して個別に行われる。処理コア11は二値データ以外の多値データを出力することもできる。処理コア11は、出力画像を構成する多値データを出力するほか、グリーンノイズ付加部12及び減算部16に多値データを出力する。
【0032】
グリーンノイズ付加部12は、グリーンノイズを生成する。具体的には、グリーンノイズ付加部12は、注目画素の近傍の一又は複数の処理済み画素について、処理コア11により出力された多値データに当該注目画素との位置関係毎に予め定められた第1の重み付け係数(第1の重み付け係数≧0)を乗算した値(グリーンノイズ値)をそれぞれ算出する。処理済み画素とは、注目画素の処理時に既に処理コア11による処理が終了している画素をいう。また、注目画素の近傍の処理済み画素とは、注目画素に対して予め定められた範囲内にある処理済み画素即ち注目画素の周囲に位置する画素であって当該注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素をいう。
【0033】
図3に、注目画素、処理済み画素及び未処理画素の位置関係を示す。
図3に示すように、画像を構成する各画素の位置をx、yの2方向で表し、x方向については左から右に、y方向については上から下に順次処理が行われるものとする。(i,j)の位置の画素を注目画素130とすると、(i−2,j−2)〜(i+2,j−2)、(i−2,j−1)〜(i+2,j−1)、(i−2,j)、(i−1,j)の位置の各画素が処理済み画素131である。グリーンノイズ付加部12は、各処理済み画素131の多値化処理結果(多値データ)に、注目画素130と各処理済み画素131との位置関係に応じた第1の重み付け係数を乗算する。処理済み画素131の中でも特に、注目画素130に隣接する(i−1,j−1)、(i,j−1)、(i+1,j−1)、(i−1,j)の位置の各画素の処理結果を注目画素130にフィードバックする(第1の重み付け係数の値を大きくする)ことが望ましい。なお、処理済み画素131の範囲は、図3に示すものに限定されない。
【0034】
加算部13は、入力された多値データに対してグリーンノイズ付加部12により算出された一又は複数のグリーンノイズ値を加算し、処理コア11に出力する。
【0035】
ホワイトノイズ付加部14は、ホワイトノイズを生成する。具体的には、ホワイトノイズ付加部14は、入力画像としての多値データ及び所定の乱数(例えば正規乱数等)に基づいてホワイトノイズ値を生成し、加算部15に出力する。ホワイトノイズは、入力画像である多値データの全ての周波数について同じ強度を有するノイズ値となる。
【0036】
加算部15は、入力された多値データに対してホワイトノイズ付加部14により算出されたホワイトノイズ値を加算する。
【0037】
減算部16は、注目画素について処理コア11により出力された多値データから注目画素の加算部15による加算前の多値データを減算し、誤差拡散部17に出力する。
【0038】
誤差拡散部17は、減算部16により出力された値に、注目画素と当該注目画素の近傍の一又は複数の未処理画素との位置関係毎に予め定められた第2の重み付け係数を乗算した値(誤差値)をそれぞれ算出し、加算部18に出力する。未処理画素とは、注目画素の処理時に処理コア11による処理が未だ終了していない画素をいう。ある注目画素の誤差を一又は複数の未処理画素に対して付加(拡散)する対象となる各未処理画素の第2の重み付け係数の和は1である。また、注目画素の近傍の未処理画素とは、注目画素に対して予め定められた範囲内にある未処理画素即ち注目画素の周囲に位置する画素であって注目画素を処理するときに当該注目画素以外で未だ処理が行われていない一又は複数の画素をいう。
【0039】
図3に示すように、(i,j)の位置の画素を注目画素130とすると、(i+1,j)、(i+2,j)、(i−2,j+1)〜(i+2,j+1)、(i−2,j+2)〜(i+2,j+2)の位置の各画素が既に誤差拡散された画素の誤差を保持したデータ(画素)132である。誤差拡散部17は、出力画素値と注目画素値の誤差(差分)に、注目画素130と各画素132との位置関係毎に応じた第2の重み付け係数を乗算する。画素132の中でも特に、注目画素130に隣接する(i+1,j)、(i−1,j+1)、(i,j+1)、(i+1,j+1)の位置の各画素に対して、注目画素130の誤差をフィードバックする(第2の重み付け係数の値を大きくする)ことが望ましい。なお、画素132の範囲は、図3に示すものに限定されない。
【0040】
加算部18は、誤差拡散処理部10に入力された一又は複数の保持された誤差値のそれぞれの多値データに対して誤差拡散部17により算出された一又は複数の誤差値を加算する。
【0041】
ラインバッファ20は、誤差拡散処理部10が出力した処理済み画素の多値データの値や誤差拡散処理部10に入力された多値データのうち未処理の多値データに対して付加される誤差値を保持する。
【0042】
図4に、ラインバッファ20について説明するためのイメージ図を示す。
図4に示すように、ラインバッファ20は、ノイズ付加用バッファ21及び誤差保存用バッファ22を有する。
【0043】
ノイズ付加用バッファ21は、誤差拡散処理部10が出力した処理済み画素の多値データの値を保持する。つまり、ノイズ付加用バッファ21は、注目画素の前に処理された処理済み画素毎にデータを記憶する。グリーンノイズ付加部12は、ノイズ付加用バッファ21に保持された処理済み画素の多値データの値に基づいて算出を行う。
【0044】
誤差保存用バッファ22は、誤差拡散処理部10で発生した出力画素値と注目画素値との一又は複数の誤差(差分)値を保持する。
【0045】
ノイズ付加用バッファ21及び誤差保存用バッファ22は、それぞれ所定のライン数を有するラインバッファであり、当該ラインバッファの各メモリセルはそれぞれ、注目画素の前後に処理される各画素に対応する。ノイズ付加用バッファ21のライン数は、注目画素の近傍の処理済み画素を決定するために予め定められた範囲に基づいて決定される。誤差保存用バッファ22のライン数は、注目画素の近傍の未処理画素を決定するために予め定められた範囲に基づいて決定される。第一実施形態では、ノイズ付加用バッファ21が一ライン分のラインバッファであり、誤差保存用バッファ22が二ラインであるが、本発明の構成はこれに限るものではない。
【0046】
誤差拡散パラメータ保持部30は、誤差拡散処理部10が各種処理において用いる各種の重み付け係数や乱数、その他の種々のパラメータを保持する。
【0047】
乱数信号発生部40は、予め定められたアルゴリズムに基づいて乱数を生成する。
【0048】
操作部50は、画像処理装置1に対してユーザによる入力操作を行うための入力装置である。
【0049】
解像度変換処理部60は、解像度変換処理とは、入力画像の解像度を異なる解像度に変換した画像とする処理である。第一実施形態では解像度を処理前の二倍とする解像度変換処理が入力画像に対して施される。例えば、600[dpi]の解像度を有する入力画像は、解像度変換処理によって1200[dpi]の解像度を有する画像となる。
【0050】
次に、画像処理装置1の動作について説明する。
第一実施形態では、画像処理装置1は、3種の誤差拡散処理を切り替えて施す。具体的には、画像処理装置1は、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれかを入力画像の多値データに対して施す。
【0051】
まず、通常の誤差拡散処理について説明する。通常の誤差拡散処理では、注目画素の近傍の未処理画素に対して誤差拡散部17が算出、出力した値に基づいた補正を行う。つまり、注目画素の近傍の未処理画素の出力結果は、注目画素の出力結果を加味した出力結果となる。
通常の誤差拡散処理を行うことにより、入力画像の階調を保持し、階調性に優れた出力画像を得ることができる。
【0052】
図5に、通常の誤差拡散処理におけるデータの流れを示す。
通常の誤差拡散処理では、最初に、入力画像としての多値データが誤差拡散処理部10に入力される。次に、入力された多値データに対して、加算部18が、誤差拡散部17に算出された一又は複数の誤差値による加算を行う。次に、多値データに対して、加算部15が、ホワイトノイズ付加部14に算出されたホワイトノイズ値を加算して処理コア11に出力する。そして、処理コア11が、N値化処理を行って出力画像の多値データを出力する。その後、減算部16が、処理コア11により出力された多値データから注目画素の加算部15による加算前の多値データを減算し、誤差拡散部17に出力する。そして、誤差拡散部17が、減算部16により出力された値に基づいて一又は複数の誤差値を算出し、加算部18に出力する。加算部18に入力された誤差値は、その後に処理される各画素に対して適用される。
【0053】
通常の誤差拡散処理では、処理コア11は、注目画素の近傍の未処理画素に対して用いられる一又は複数の誤差値を保持するため、誤差保存用バッファ22を誤差保存用のメモリとして用いる。
【0054】
次に、画素集中型誤差拡散処理について説明する。
画素集中型誤差拡散処理では、通常の誤差拡散処理の処理内容に加えて、注目画素の近傍の処理済み画素の出力結果を参照して注目画素の出力を決定する。画素集中型誤差拡散処理を行うことにより、通常の誤差拡散処理の効果に加えて、複数の画素が集中したパターンが形成されるので、高解像度で、かつ、孤立点の発生が少ないので粒状性及び階調性が良好な出力画像を得ることができる。
【0055】
図6に、画素集中型誤差拡散処理におけるデータの流れを示す。
画素集中型誤差拡散処理では、最初に、入力画像としての多値データが解像度変換処理を受ける。解像度変換処理の後、入力された多値データに対して、加算部18が、誤差拡散部17に算出された一又は複数の誤差値による加算を行う。次に、多値データに対して、加算部15が、ホワイトノイズ付加部14に算出されたホワイトノイズ値を加算して処理コア11に出力する。そして、処理コア11が、N値化処理を行って出力画像の多値データを出力する。このとき、処理コア11は多値データの出力に際して画素集中処理を行う。画素集中処理とは、ONとなる画素の位置を互いに近接(集中)させるようにONの画素位置を決定する処理である。ONの画素位置を集中させることで、ノイズ感の低い良好な出力画像を得ることができる。
【0056】
図7及至図12を用いて、画素集中処理について説明する。図7及至図12は、画素集中型誤差拡散処理の前に600[dpi]の解像度を有していた8[bit]のカラー画像に対して、入力画像を5値化する画素集中型誤差拡散処理を施すことにより、1200[dpi]の解像度を有する1[bit]又は2[bit]の二値画像を出力する場合における画素集中処理の一例を示している。
図7及至図12に示す画素ブロックA〜Dは、処理済み画素を示す。図7及至図12に示す画素ブロックEは、注目画素を示す。処理済み画素の画素ブロックAは注目画素の画素ブロックEの左上に位置する。処理済み画素の画素ブロックBは注目画素の画素ブロックEの上に位置する。処理済み画素の画素ブロックCは注目画素の画素ブロックEの右上に位置する。処理済み画素の画素ブロックDは注目画素の画素ブロックEの右に位置する。図7及至図12に示すように、処理済み画素及び注目画素は、解像度変換処理により、画素集中型誤差拡散処理前の各画素がそれぞれ4画素の画素ブロックとなる。
【0057】
図7に、出力レベルが0である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す。
図7に示すように、出力レベルが0である場合、注目画素である画素ブロックに含まれる全ての画素をOFFにする。
【0058】
図8(A)〜(D)に、出力レベルが1である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す。
図8(A)の条件F1に示すように、処理済み画素の画素ブロックBの左下の画素がONの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左上の画素又は右上の画素のいずれかをONとする。
図8(B)の条件F2に示すように、処理済み画素の画素ブロックBの右下の画素がONの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左上の画素又は右上の画素のいずれかをONとする。
図8(C)の条件F3に示すように、処理済み画素の画素ブロックDの右上の画素又は当該画素ブロックDの右下の画素のいずれか一方がONの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの右下の画素又は右上の画素のいずれかをONとする。
図8(D)の条件F4に示すように、条件F1〜F3のいずれにも該当しない場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの右下の画素をONとする。
【0059】
図9(A)〜(C)及び図10(A)〜(C)に、出力レベルが2である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す。
図9(A)の条件F5に示すように、処理済み画素の画素ブロックAの左上の画素及び当該画素ブロックAの右下の画素がいずれもONの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左上の画素及び右上の画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの左上の画素及び左下の画素をONとする。
図9(B)の条件F6に示すように、処理済み画素の画素ブロックCの右上の画素及び当該画素ブロックCの左下の画素がいずれもONの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左上の画素及び右上の画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの右上の画素及び右下の画素をONとする。
図9(C)の条件F7に示すように、処理済み画素の画素ブロックBの左下の画素又は当該画素ブロックBの右下の画素のいずれか一方がONの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左上の画素及び右上の画素をONとするか、注目画素の画素ブロックEの左上の画素及び右下の画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの右上の画素及び左下の画素をONとする。
図10(A)の条件F8に示すように、処理済み画素の画素ブロックDの右上の画素又は当該画素ブロックDの右下の画素のいずれか一方がONの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左下の画素及び右下の画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの左上の画素及び右上の画素をONとする。
図10(B)の条件F9に示すように、処理済み画素の画素ブロックCの左下の画素がONの場合、処理コア11は、当該画素ブロックEの右上の画素及び右下の画素をONとするか、あるいは、注目画素の画素ブロックEの左上の画素及び右上の画素をONとする。
図10(C)の条件F10に示すように、条件F5〜F9のいずれにも該当しない場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左下の画素及び右下の画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの左上の画素及び右下の画素をONとする。
【0060】
図11(A)〜(C)に、出力レベルが3である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す。
図11(A)の条件F11に示すように、処理済み画素の画素ブロックBの左下の画素又は画素ブロックDの右上の画素のいずれか一方がOFFの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左上の画素以外の三画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの右上の画素以外の三画素をONとする。
図11(B)の条件F12に示すように、処理済み画素の画素ブロックBの右下の画素がOFFの場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左上の画素以外の三画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの右上の画素以外の三画素をONとする。
図11(C)の条件F13に示すように、条件F11、F12のいずれにも該当しない場合、処理コア11は、注目画素の画素ブロックEの左下の画素以外の三画素をONとするか、あるいは、当該画素ブロックEの右下の画素以外の三画素をONとする。
【0061】
図12に、出力レベルが4である場合の処理済み画素及び注目画素の取りうるパターンを示す。
図12に示すように、出力レベルが4である場合、注目画素である画素ブロックに含まれる全ての画素をONにする。
【0062】
図7及至図12に例示したように、処理コア11は出力レベル及び処理済み画素のON/OFFに基づいて画素集中処理を行う。
一の条件に対して、ONとする画素位置の候補が複数ある場合、処理コア11は乱数信号を用いてランダムに複数の候補から一の候補を選出して画素位置を決定するようにしてもよい。画素位置を決定するための乱数信号として、例えば乱数信号発生部40が生成した乱数が用いられる。
乱数信号を用いてランダムに複数の候補から一の候補を選出して画素位置を決定することによって、出力された多値データにより構成される画像データのノイズ感やテクスチャの発生を低減させることができる。
【0063】
処理コア11が、画素集中処理及び多値データの出力を行った後、減算部16が、処理コア11により出力された多値データから注目画素の加算部15による加算前の多値データを減算し、誤差拡散部17に出力する。そして、誤差拡散部17が、減算部16により出力された値に基づいて一又は複数の誤差値を算出し、加算部18に出力する。加算部18に入力された誤差値は、その後に処理される各画素に対して適用される。
【0064】
画素集中型誤差拡散処理において、処理コア11は、注目画素の近傍の処理済み画素の出力結果を参照することから、処理済み画素のデータ保持用メモリとして、ノイズ付加用バッファ21を用いる。
また、画素集中型誤差拡散処理において、処理コア11は、通常の誤差拡散処理と同様に、注目画素の近傍の未処理画素に対して用いられる一又は複数の誤差値を保持するため、誤差保存用バッファ22を用いる。
【0065】
次に、誤差拡散型FMスクリーン処理について説明する。
誤差拡散型FMスクリーン処理では、通常の誤差拡散処理の処理内容に加えて、グリーンノイズ付加部12が出力した値を入力画像の多値データに加算する。グリーンノイズ付加部12が出力した値を入力画像の多値データに加算することで、出力画像に対してFMスクリーンを施すことができる。FMスクリーンは、不規則かつ連続した出力パターンを形成するので、FMスクリーンを施された出力画像は、粒状感がよく、かつ、ノイズ感の低い安定した階調を有する画像となる。
【0066】
図13に、誤差拡散型FMスクリーン処理におけるデータの流れを示す。
誤差拡散型FMスクリーン処理では、最初に、入力画像としての多値データが誤差拡散処理部10に入力される。次に、入力された多値データに対して、加算部18が、誤差拡散部17に算出された一又は複数の誤差値による加算を行う。次に、多値データに対して、加算部15が、ホワイトノイズ付加部14に算出されたホワイトノイズ値を加算して処理コア11に出力する。次に、多値データに対して、加算部13が、グリーンノイズ付加部12により算出された一又は複数のグリーンノイズ値を加算し、処理コア11に出力する。そして、処理コア11が、N値化処理を行って出力画像の多値データを出力する。
その後、グリーンノイズ付加部12が、処理コア11により出力された多値データに基づいてグリーンノイズ値を算出し、加算部13に出力する。加算部13に入力されたグリーンノイズ値は、その後に処理される各画素に対して適用される。
また、減算部16が、処理コア11により出力された多値データから注目画素の加算部15による加算前の多値データを減算し、誤差拡散部17に出力する。そして、誤差拡散部17が、減算部16により出力された値に基づいて一又は複数の誤差値を算出し、加算部18に出力する。加算部18に入力された誤差値は、その後に処理される各画素に対して適用される。
【0067】
グリーンノイズ付加部12は、前述のように注目画素の近傍の一又は複数の処理済み画素の多値データに基づいたグリーンノイズ値をそれぞれ算出するので、当該値の算出のために注目画素の近傍の処理済み画素の多値データの値を保持しておく必要がある。このため、誤差拡散型FMスクリーン処理において、処理コア11は、処理済み画素のデータ保持用メモリとして、ノイズ付加用バッファ21を用いる。
また、画素集中型誤差拡散処理において、処理コア11は、通常の誤差拡散処理と同様に、出力画素値と注目画素値との一又は複数の誤差値を保持するため、誤差保存用バッファ22を用いる。
【0068】
誤差拡散処理部10による多値データの出力を行うにあたり、ユーザは操作部50を介した入力操作を行うことができる。操作部を介した入力操作の内容として、例えば、入力画像の多値データの指定入力操作や、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかの指示入力操作が挙げられる。誤差拡散処理部10は、ユーザの入力操作内容に応じた処理を行う。
【0069】
第一実施形態では、処理コア11は、ユーザの入力操作内容のうち通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかの指示入力操作内容を保持するために変数SWを設定する。変数SWの値はそれぞれ、SW=0が通常の誤差拡散処理を示し、SW=1が画素集中型誤差拡散処理を示し、SW=2が誤差拡散型FMスクリーン処理を示す。処理コア11は、変数SWの値に応じて、加算部13による値の加算を行うか否かの決定や解像度変換処理を行うか否かの決定、画素集中処理を行うか否かの決定等を行う。
【0070】
図14のフローチャートを用いて、誤差拡散処理部10の処理の流れを説明する。
まず、入力画像の多値データが入力される(ステップS1)。次に、変数SWの値が1である場合(ステップS2:YES)、処理コア11は解像度変換処理部60に入力画像の解像度変換処理を行わせる(ステップS3)。
【0071】
ステップS3の処理後又はステップS2において変数SWの値が1でない場合(ステップS2:NO)、入力画像の多値データは誤差値の加算及びホワイトノイズ値の加算を受ける(ステップS4)。
【0072】
ステップS4の処理後、変数SWの値が2である場合(ステップS5:YES)、入力画像の多値データに対してさらにグリーンノイズ値が加算される(ステップS6)。ステップS6の処理後又はステップS5において変数SWの値が2でない場合(ステップS5:NO)、入力画像の多値データが処理コア11に入力される。処理コア11は、N値化処理を行う(ステップS7)。
【0073】
ステップS7の処理後、変数SWの値が1である場合(ステップS8:YES)、処理コア11は画素集中処理を行う(ステップS9)。ステップS9の処理後又はステップS8において変数SWの値が1でない場合(ステップS8:NO)、誤差拡散部17が誤差値を算出し、拡散させる(ステップS10)。ステップS10で算出、拡散された誤差値はその後に処理される多値データに対するステップS4の処理において用いられる。
【0074】
ステップS10の処理後、変数SWの値が2である場合(ステップS11:YES)、グリーンノイズ付加部12がグリーンノイズ値を算出する(ステップS12)。算出されたグリーンノイズ値はその後に処理される多値データに対するステップS6の処理において用いられる。ステップS12の処理後又はステップS11において変数SWの値が2でない場合(ステップS11:NO)、出力画像の多値データが出力される(ステップS13)。
【0075】
ホワイトノイズ付加部14による注目画素に対するホワイトノイズ値の算出は、ステップS4の処理前に行われていればよい。図14のフローチャートに示す誤差拡散処理部10の処理は、入力画像に含まれる各画素の多値データに対して行われる。
【0076】
以上、第一実施形態によれば、画像処理装置1の誤差拡散処理部10は、注目画素の前後に処理される画素毎にデータを記憶するラインバッファ20を用い、2種以上の誤差拡散処理を切り替えて注目画素に誤差拡散処理を施すことができる。つまり、2種以上の誤差拡散処理について個別の構成を設けることなく、2種以上の誤差拡散処理を施すことができ、高価なラインバッファ等の各構成を2種以上の誤差拡散処理で共有することができる。よって、誤差拡散処理を行うにあたり、高価なハードウェア資源を有効活用することができる。
【0077】
さらに、2種以上の誤差拡散処理には、誤差拡散型FMスクリーン処理及び画像集中型誤差拡散処理が含まれている。誤差拡散型FMスクリーン処理は、粒状感がよく、かつ、ノイズ感の低い安定した階調を有する画像を得ることができる誤差拡散処理である。画像集中型誤差拡散処理は、高解像度で、かつ、極めて鮮鋭な出力画像を得ることができる誤差拡散処理である。画像処理装置1は、誤差拡散型FMスクリーン処理、画素集中型誤差拡散処理のそれぞれが有する利点を使い分けることができる。
【0078】
さらに、画像処理装置1は、前記画像集中型誤差拡散処理において、乱数を用いて画素位置を決定することができる。乱数信号を用いてランダムに複数の候補から一の候補を選出して画素位置を決定することによって、出力された多値データにより構成される画像データのノイズ感を低減させることができるので、より画質の高い良好な画像を得ることができる。
【0079】
さらに、2種以上の誤差拡散処理には、通常の誤差拡散処理が含まれている。通常の誤差拡散処理は、入力画像の階調を保持して階調性に優れた出力画像を得ることができる中間調の再現方法として用いられる処理である。画像処理装置1は、誤差拡散型FMスクリーン処理、画素集中型誤差拡散処理、通常の誤差拡散処理のそれぞれが有する利点を使い分けることができる。
【0080】
さらに、操作部50への入力操作を介して、ユーザは、入力画像の多値データの指定入力操作や、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかの指示入力操作等の各種入力を行うことができる。これによって、画像処理装置1は、ユーザの入力操作内容に応じた誤差拡散処理を行うことができる。つまり、ユーザは、任意の誤差拡散処理を画像に対して施すことができる。よって、ユーザは、画像の出力に用いる画像形成装置のエンジン特性やユーザの嗜好、出力画像に基づくマッチング結果等を加味した誤差拡散処理の種類を決定することができるようになる。
【0081】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図15を用いて説明する。第一実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図15に、第二実施形態における画像処理装置2の構成を示す。
第二実施形態の画像処理装置2は、第一実施形態の画像処理装置1の構成に加えて判別信号入力部70を有する。
【0082】
判別信号入力部70は、外部から入力される判別信号を受信する。判別信号は、入力画像の各画素の多値データに対して、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかを示す信号である。判定信号には、例えば各画素の多値データに対して個別に変数SWの値を対応付けた信号を用いることができるが、他の方法により通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかを示してもよい。
【0083】
判別信号は、各多値データに対して個別に設定することができ、一の入力画像を構成する複数の多値データのそれぞれに対して通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれかを個別に施すことができる。このため、各多値データに対して最適な画像処理を施すことができる。例えば、入力画像のうち文字列を構成する部分(文字部)に対しては画素集中型誤差拡散処理を施す判別信号を与え、入力画像のうち写真を構成する部分(写真部)やグラフィックスを構成する部分(グラフィックス部)に対しては誤差拡散型FMスクリーンを施す判別信号を与えることにより、文字部が鮮鋭であり、かつ、写真部及びグラフィックス部が低ノイズで粒状性の高い画像となる出力画像を得ることができる。
【0084】
このように、第二実施形態の画像処理装置2は、入力画像の多値データによって構成される各部に対して最適な処理を施すことを可能とし、一の入力画像に対して、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理、誤差拡散型FMスクリーン処理等、誤差拡散処理部10が行うことができる各処理のそれぞれが有する利点を最大限に活用した出力画像を得ることができる。
【0085】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について、図16を用いて説明する。第一実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図16に、第三実施形態における画像処理装置3の構成を示す。
第三実施形態の画像処理装置3は、第一実施形態の画像処理装置1の構成に加えて画像特徴解析部80を有する。
【0086】
画像特徴解析部80は、入力画像を構成する各画素の多値データに対して、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかを判定する。画像特徴解析部80は、各多値データに対して個別に判定を行うことができるので、一の入力画像を構成する複数の多値データのそれぞれに対して通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれかを個別に施すことができる。このため、第二実施形態と同様、各多値データに対して最適な画像処理を施すことができる。判定結果は、例えば各画素の多値データに対して個別に変数SWの値を対応付けるデータとして出力することができるが、他の方法により通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかを示してもよい。
【0087】
画像特徴解析部80の判定は、例えば入力画像の階調に基づいて行われる。一例として、画像特徴解析部80は、均一な入力階調の連続性を調査する。即ち、画像特徴解析部80は、隣接する画素の多値データの差を算出する。そして、当該差が所定の範囲内に収まる画素が所定の数以上連続して存在する場合、画像特徴解析部80は、その連続する画素領域を連続調と判定する。画像特徴解析部80は、連続調と判定された画素領域に対応する多値データに対して、誤差拡散型FMスクリーンを施す判定結果を出力する。一方、階調変化の大きい画素領域に対して、画像特徴解析部80は、画素集中型誤差拡散処理を施す判定結果を出力する。連続調と判定される画素領域は例えば写真部やグラフィックス部であり、階調変化が大きいと判定される画素領域は例えば文字部である。このような判定結果により、文字部が鮮鋭であり、かつ、写真部及びグラフィックス部が低ノイズで粒状性の高い画像となる出力画像を得ることができる。
【0088】
このように、第三実施形態の画像処理装置3は、入力画像の多値データによって構成される各部に対して最適な処理を施すことを可能とし、一の入力画像に対して、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理、誤差拡散型FMスクリーン処理等、誤差拡散処理部10が行うことができる各処理のそれぞれが有する利点を最大限に活用した出力画像を得ることができる。
【0089】
また、第一〜第三実施形態において、一の入力画像を構成する各画素の多値データに対して、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかを操作部50から指示するようにしてもよい。例えば、操作部50に表示装置を設け、入力画像又は入力画像のサムネイルを表示できるようにし、表示された入力画像等の各画素領域に対して通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理又は誤差拡散型FMスクリーン処理のいずれを行うかを個別に選択、入力可能とすることにより、入力画像の各画素領域に対してユーザの任意の処理を施すことを可能とする画像処理装置を提供することができる。例えば、ユーザは、文字部に対しては画素集中型誤差拡散処理を指示し、写真部やグラフィックス部に対しては誤差拡散型FMスクリーンを施す指示を行うことにより、文字部が鮮鋭であり、かつ、写真部及びグラフィックス部が低ノイズで粒状性の高い画像となる出力画像を得ることができる。このように、操作部50によって入力画像の多値データによって構成される各部に対して任意の処理を施すことを可能とすることにより、一の入力画像に対して、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理、誤差拡散型FMスクリーン処理等、誤差拡散処理部10が行うことができる各処理のそれぞれが有する利点を最大限に活用した出力画像を得ることができる。
【0090】
本発明の実施の形態について、今回開示された各実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0091】
例えば、誤差拡散処理の種類は、通常の誤差拡散処理、画素集中型誤差拡散処理、誤差拡散型FMスクリーン処理に限らない。他の種類の誤差拡散処理を本発明に適用することができる。
また、解像度変換処理を処理コアが行ってもよい。
【0092】
また、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0093】
10 誤差拡散処理部
11 処理コア
12 グリーンノイズ付加部
13 加算部
14 ホワイトノイズ付加部
15 加算部
16 減算部
17 誤差拡散部
18 減算部
20 ラインバッファ
21 ノイズ付加用バッファ
22 誤差保存用バッファ
30 誤差拡散パラメータ保持部
40 乱数信号発生部
50 操作部
60 解像度変換処理部
70 判別信号入力部
80 画像特徴解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像の各画素に対して誤差拡散処理を施す画像処理装置であって、
前記誤差拡散処理を施す対象となる注目画素の周囲に位置する画素であって、当該注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素及び既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素のそれぞれについてデータを記憶するメモリと、
前記メモリを用いて2種以上の誤差拡散処理を切り替えて前記注目画素に誤差拡散処理を施す処理部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記2種以上の誤差拡散処理には、誤差拡散型FMスクリーン処理及び画像集中型誤差拡散処理が含まれ、
前記処理部は、前記誤差拡散型FMスクリーン処理及び前記画像集中型誤差拡散処理において、前記注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素用のメモリを処理済み画素のデータ保持用メモリとして用い、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記画像集中型誤差拡散処理において、乱数を用いて画素位置を決定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記2種以上の誤差拡散処理には、通常の誤差拡散処理が含まれ、
前記処理部は、前記通常の誤差拡散処理において、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを、誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを決定する判別信号を入力する判別信号入力部を備え、
前記処理部は、前記判別信号に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを判定する判定部を備え、
前記処理部は、前記判定部の判定結果に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
入力画像の各画素に対して誤差拡散処理を施す画像処理方法であって、
前記誤差拡散処理を施す対象となる注目画素の周囲に位置する画素であって、当該注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素及び既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素のそれぞれについてデータをメモリに記憶するステップと、
前記メモリを用いて処理部が2種以上の誤差拡散処理を切り替えて前記注目画素に誤差拡散処理を施すステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
前記2種以上の誤差拡散処理には、誤差拡散型FMスクリーン処理及び画像集中型誤差拡散処理が含まれ、
前記誤差拡散型FMスクリーン処理及び前記画像集中型誤差拡散処理において、前記注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素用のメモリを処理済み画素のデータ保持用メモリとして用い、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記画像集中型誤差拡散処理において、乱数を用いて画素位置を決定することを特徴とする請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記2種以上の誤差拡散処理には、通常の誤差拡散処理が含まれ、
前記通常の誤差拡散処理において、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを、誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを決定する判別信号を入力するステップを有し、
前記判別信号に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを判定するステップを有し、
前記判定の結果に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定することを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項13】
入力画像の各画素に対して誤差拡散処理を施す画像処理装置のコンピュータを、
前記誤差拡散処理を施す対象となる注目画素の周囲に位置する画素であって、当該注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素及び既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素のそれぞれについてデータをメモリに記憶する手段、
前記メモリを用いて2種以上の誤差拡散処理を切り替えて前記注目画素に誤差拡散処理を施す手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
前記2種以上の誤差拡散処理には、誤差拡散型FMスクリーン処理及び画像集中型誤差拡散処理が含まれ、
前記誤差拡散型FMスクリーン処理及び前記画像集中型誤差拡散処理において、前記注目画素を処理するときに既に処理済みの一又は複数の画素用のメモリを処理済み画素のデータ保持用メモリとして用い、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記画像集中型誤差拡散処理において、乱数を用いて画素位置を決定することを特徴とする請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記2種以上の誤差拡散処理には、通常の誤差拡散処理が含まれ、
前記通常の誤差拡散処理において、前記既に誤差拡散処理した画素の誤差データを保持した一又は複数の画素用のメモリを、誤差保存用のメモリとして用いることを特徴とする請求項13から15のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項17】
前記コンピュータを、さらに、
前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを決定する判別信号を入力する手段、
前記判別信号に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定する手段、
として機能させることを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項18】
前記コンピュータを、さらに、
前記2種以上の誤差拡散処理のうちいずれの種類の誤差拡散処理を用いるかを判定する手段、
前記判定の結果に基づいて、一の画像に含まれる各画素のそれぞれに対して用いる誤差拡散処理の種類を個別に決定する手段、
として機能させることを特徴とする請求項13から16のいずれか一項に記載のプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−188222(P2011−188222A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51216(P2010−51216)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】