説明

画像処理装置及び内視鏡システム

【課題】検査中に画像処理部が故障した場合でも挿入部を容易に引き抜けるようにする。
【解決手段】プロセッサ装置の画像処理部には、画像処理部の異常を検知する自己診断回路68が設けられている。自己診断回路68は、画像処理部の異常を検知すると、CPU60に異常検知信号を送信する。CPU60は、異常検知信号を受信すると、HDD62からエミュレートプログラム64を読み込み、エミュレータ80を起動させる。エミュレータ80は、ROM42から読み出された画面構成情報44cやキーボード36を介して入力される操作指示情報82などに応じて、A/D53から入力された画像データに各種の画像処理を施す。これにより、画像処理部に異常が生じた際にも、画像が正常に表示されるので、挿入部を容易に引き抜くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内に挿入される内視鏡によって得られた画像データに対して画像処理を施す画像処理装置、及び内視鏡と画像処理装置とからなる内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡システムは、体腔内を撮影する内視鏡(スコープ)と、プロセッサ装置とからなる。内視鏡には、体腔内に挿入される挿入部の先端に撮像素子が設けられている。プロセッサ装置は、前記撮像素子が出力する画像データに対して画像処理を施す画像処理部が設けられている。この画像処理部は、例えば、ASICやFPGAなどのIC(半導体)で構成される。
【0003】
上記のような内視鏡システムでは、画像処理部の故障などにともない、内視鏡検査中に画像表示が完全に停止してしまうと、挿入部の向きや屈曲状態の確認ができなくなり、挿入部を容易に体腔内から引き抜くことが困難になる。そこで、特許文献1には、撮像素子が出力する画像信号による画像生成が不能になった場合に、撮像素子の駆動電流に基づいて画像生成を行なう技術が開示されている。これによれば、画像処理部が故障した場合でも、極めて低画質ではあるものの、画像表示を行なうことができる。
【特許文献1】特開2006−346357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術を用いて生成した画像は、画像処理部が故障した場合に挿入部を体腔内から引き抜く際に使用する画像としても極めて低解像でありかつ電源ノイズが画像内に混入しているなどの原因により、あまりにも画質が低く、その効果が疑問視されるものであった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、検査中に画像処理部が故障した場合でも、挿入部を容易に引き抜けるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の画像処理装置は、被検体内に挿入される内視鏡によって得られた画像データに対して画像処理を施す第1画像処理部と、前記画像データによって表される画像を表示する表示装置を制御するための表示制御部と、前記第1画像処理部の異常を検知する第1検知手段と、前記第1検知手段によって前記第1画像処理部の異常が検知された際に、前記第1画像処理部の代わりに前記画像処理を実行する第2画像処理部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
なお、前記第1画像処理部及び前記表示制御部に対して制御信号を出力することにより制御を行なうメイン制御部を設け、前記メイン制御部が前記第2画像処理部を兼用することが好ましい。
【0008】
また、前記第1画像処理部及び前記表示制御部に対して制御信号を出力することにより制御を行なうサブ制御部と、前記メイン制御部による制御と前記サブ制御部による制御とを選択的に切り替える切替手段とを設けると、さらに好適である。
【0009】
さらに、前記メイン制御部の異常を検知する第2検知手段を設け、前記切替手段は、前記第2検知手段によって異常が検知された場合に、前記メイン制御部から前記サブ制御部に切り替えることが好ましい。
【0010】
なお、前記メイン及びサブの各制御部は、前記内視鏡に設けられた撮像素子のアスペクト比及び画素数を少なくとも含む画面構成情報に応じた前記制御信号を出力することが好ましい。
【0011】
また、前記内視鏡は、前記画面構成情報を記憶する記憶手段を有しており、前記メイン及びサブの各制御部は、前記記憶手段から読み出すことによって前記画面構成情報を取得することが好ましい。
【0012】
さらに、前記メイン及びサブの各制御部は、前記画像データから判別することによって前記画面構成情報を取得するものであってもよい。
【0013】
なお、前記第1画像処理部は、前記画像処理を実行する半導体で構成されたハードウェア処理部であり、前記第2画像処理部は、プログラムを実行することによって前記第1画像処理部が実行する前記画像処理をエミュレートするソフトウェア処理部であることが好ましい。
【0014】
また、前記メイン制御部は、プログラムを実行することによって制御を行なうソフトウェア制御部であり、前記サブ制御部は、半導体によって制御を行なうハードウェア制御部であることが好ましい。
【0015】
さらに、前記切替手段は、前記メイン制御部の起動処理が完了するまでの間、前記サブ制御部に制御を行わせることが好ましい。また、前記第2検知手段は、ウォッチドッグタイマであることが好ましい。
【0016】
なお、被検体内に挿入される内視鏡と、この内視鏡によって得られた画像データに対して画像処理を施す第1画像処理部を備えた画像処理装置とからなる本発明の内視鏡システムは、前記画像データによって表される画像を表示する表示装置を制御するための表示制御部と、前記第1画像処理部の異常を検知する第1検知手段と、前記第1検知手段によって前記第1画像処理部の異常が検知された際に、前記第1画像処理部の代わりに前記画像処理を実行する第2画像処理部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、第1画像処理部の異常が検知された際に、第1画像処理部の代わりに第2画像処理部で画像処理を実行するようにした。これにより、検査中に第1画像処理部に異常が生じた際にも、第2画像処理部で第1画像処理部と同様に画像処理を行うことができるので、挿入部を容易に引く抜くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、内視鏡システム2の構成を概略的に示す正面図である。内視鏡システム2は、患者の体腔内を撮影する電子内視鏡10と、内視鏡画像を生成するプロセッサ装置(画像処理装置)12と、体腔内を照明する照明光を発する光源装置14と、内視鏡画像を表示するモニタ(表示装置)16とからなる。電子内視鏡10は、患者の体腔内に挿入される挿入部18と、挿入部18の基端部分に連設された操作部20とを備えている。また、電子内視鏡10は、操作部20から伸びるユニバーサルコード22を介してプロセッサ装置12、光源装置14と接続される。
【0019】
プロセッサ装置12、光源装置14、モニタ16は、移動自在なカート24に組み付けられている。カート24には、内視鏡検査を実施する際に様々な器具や薬剤が載置されるトップトレイ26と、プロセッサ装置12と光源装置14とをそれぞれ載置するための棚板28、30と、電子内視鏡10を吊るすためのハンガー32と、モニタ16を保持する支柱34とが設けられている。トップトレイ26は、薬剤がこぼれて汚れた際などに、洗浄や交換が容易に行えるよう、カート24に対して着脱自在に構成されている。支柱34は、略円柱状に構成されており、モニタ16の画面を任意の方向に向ける回転機構、及び画面の高さを調節する高さ調節機構を有している。
【0020】
また、カート24には、さらにキーボード36が設けられている。キーボード36は、トップトレイ26に覆われるようにカート24内に収納される位置と、各キーを露呈させるようにカート24の前方に突出する位置との間でスライド自在に取り付けられている。キーボード36は、プロセッサ装置12に電気的に接続され、プロセッサ装置12に文字情報や操作指示などを入力する際に用いられる。
【0021】
図2は、電子内視鏡10とプロセッサ装置12との電気的構成を概略的に示すブロック図である。電子内視鏡10には、挿入部18の先端に形成された観察窓を介して入射した像光を撮像するCCD(撮像素子)40と、このCCD40の画面構成情報44aを記憶したROM(記憶手段)42とが設けられている。画面構成情報44aには、例えば、CCD40の画素数やアスペクト比やインタレースCCDかプログレッシブCCDかなどが含まれる。画面構成情報44aは、ユニバーサルコード22を介して電子内視鏡10とプロセッサ装置12とを接続した後、プロセッサ装置12に読み出される。なお、画面構成情報44aに含まれる情報は、上記に限定されるものではない。
【0022】
CCD40は、プロセッサ装置12に設けられた増幅器(以下、AMPと称す)50と、CCDドライバ51とに接続される。AMP50は、CCD40から出力された撮像信号を所定のゲインで増幅し、これを相関二重サンプリング/プログラマブルゲインアンプ(以下、CDS/PGAと称す)52に出力する。CDS/PGA52は、AMP50から出力された撮像信号をCCD40の各セルの蓄積電荷量に正確に対応したR、G、Bの画像データとして出力し、この画像データを増幅してA/D変換器(以下、A/Dと称す)53に出力する。
【0023】
A/D53は、CDS/PGA52から出力されたアナログの画像データをデジタルの画像データに変換し、画像処理部(第1画像処理部)54に出力する。画像処理部54は、A/D53でデジタル化された画像データに対して各種の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示制御部55に出力する。この画像処理部54は、例えば、FPGAやASICなどといったIC(半導体)で構成されるハードウェア処理部である。
【0024】
表示制御部55は、画像処理部54から出力された画像データをモニタ16の形式に対応したビデオ信号(例えば、NTSC、コンポジット、コンポーネント、RGB、プログレッシブなど)に変換し、そのビデオ信号をモニタ16に出力する。これにより、患者の体腔内を撮影した内視鏡画像がモニタ16に表示される。
【0025】
CCD40を駆動するCCDドライバ51は、タイミングジェネレータ(以下、TGと称す)56に接続されている。このTG56は、プロセッサ装置12の各部を統括的に制御するCPU(第2画像処理部、メイン制御部)60に接続されている。TG56は、CPU60の制御の下、タイミング信号(クロックパルス)をCCDドライバ51に入力する。CCDドライバ51は、入力されたタイミング信号を基に、CCD40の蓄積電荷の読み出しタイミングやCCD40の電子シャッタのシャッタ速度などを制御する。
【0026】
CPU60には、HDD62が接続されている。HDD62には、プロセッサ装置12全体の動作を管理するOS(オペレーティングシステム)プログラム63、ハードウェアの処理をソフト的に模倣するエミュレートプログラム64などの各種のプログラムが記憶されている。CPU60は、これらの各プログラムをHDD62から読み出して逐次処理することにより、プロセッサ装置12の各部を統括的に制御する。
【0027】
CPU60は、A/D53、及び表示制御部55と接続されている。A/D53は、デジタル化した画像データを画像処理部54に出力するとともに、CPU60にも出力する。CPU60は、画像処理部54に異常が生じた際などにエミュレートプログラム64を読み出して画像処理部54の動作をエミュレートし、画像処理部54に変わって画像データに各種の画像処理を施す。そして、その画像データを表示制御部55に出力する。
【0028】
プロセッサ装置12には、上記の他に、画像処理部54と表示制御部55との制御信号を生成する制御信号生成部(サブ制御部)65と、画像処理部54と表示制御部55とに接続される信号ラインの配線経路を選択的に切り替える信号経路切替部(切替手段)66と、CPU60の動作異常を検知するウォッチドッグタイマ(第2検知手段)67とが設けられている。
【0029】
制御信号生成部65は、ユニバーサルコード22を介して電子内視鏡10のROM42と接続される。この制御信号生成部65は、例えば、FPGAやASICなどといったICで構成されるハードウェア制御部である。制御信号生成部65は、電源が投入されて起動した後、ROM42から画面構成情報44aを読み出す。そして、制御信号生成部65は、この読み出した画面構成情報44bを基に、画像処理部54の制御信号、及び表示制御部55の制御信号を生成する。ここで、画像処理部54の制御信号とは、例えば、CCD40の画素数やアスペクト比や画素の配置情報やインタレースやプログレッシブなどに応じた画像の縮尺サイズや適用する画像処理の種類などを規定するためのものである。また、表示制御部55の制御信号とは、画面内における画像の表示位置やレイアウトなどを規定するためのものである。
【0030】
ハードウェアによって構成された制御信号生成部65は、通常の内視鏡画像のみをモニタ16に表示させるための基本的な各制御信号を生成する。また、制御信号生成部65は、信号経路切替部66に接続されている。生成された各制御信号は、信号経路切替部66を介して、それぞれ画像処理部54と表示制御部55とに入力される。画像処理部54は、入力された制御信号に応じて各種の画像処理を行う。同様に、表示制御部55は、入力された制御信号に応じてモニタ16への表示制御を行なう。
【0031】
ROM42は、制御信号生成部65と接続されるとともに、CPU60とも接続される。CPU60は、電源が投入され、OSプログラム63を読み出してOSを起動させた後、ROM42から画面構成情報44aを読み出す。そして、CPU60は、読み出した画面構成情報44cと、キーボード36などを介して入力されるユーザからの操作指示とを基に、画像処理部54の制御信号、及び表示制御部55の制御信号を生成する。CPU60も、信号経路切替部66に接続されている。生成された各制御信号は、信号経路切替部66を介して、それぞれ画像処理部54と表示制御部55とに入力される。
【0032】
このように、OSプログラム63に基づく制御の下、画面構成情報44cとユーザからの操作指示とを基に各制御信号の生成を行なうことで、例えば、病巣の微妙な発赤や色素変化を強調する色彩強調処理、血管を見やすくする血管強調処理、ポリープなどの形状を見やすくする構造強調処理などといった様々な画像処理の実施を画像処理部54に指示することができる。また、静止画像と動画像とを並べて表示したり、通常の内視鏡画像と分光画像とを並べて表示したり、内視鏡画像に文字情報を重畳表示したり、などといった様々な表示態様を表示制御部55に指示することができる。
【0033】
信号経路切替部66は、図3(a)に示すように、CPU60を画像処理部54と表示制御部55とに接続する第1経路と、図3(b)に示すように、制御信号生成部65を画像処理部54と表示制御部55とに接続する第2経路とで、信号ラインの配線経路を選択的に切り替える。これにより、CPU60によって生成された各制御信号と、制御信号生成部65によって生成された各制御信号とのいずれか一方のみが、それぞれ画像処理部54と表示制御部55とに入力される。なお、各経路の切り替えは、CPU60などから配線経路の切替信号を信号経路切替部66に入力することによって行なわれる。
【0034】
CPU60によって各制御信号を生成する場合には、前述のように、様々な画像処理の実施や表示態様の設定を指示することができる。この反面、OSの起動に時間を要するため、CPU60によって各制御信号を生成する場合には、電源を投入した後、内視鏡画像が表示されるまでに時間が掛かるという問題がある。これに対し、制御信号生成部65によって各制御信号を生成する場合には、ハードウェア制御であるため、通常の内視鏡画像のみを表示させることしかできないものの、電源投入後の立ち上がりが早いという利点がある。
【0035】
このため、信号経路切替部66は、プロセッサ装置12の電源が投入されて起動した後、信号ラインの配線経路を第2経路に設定する。CPU60は、OSを起動させた後、信号経路切替部66に切替信号を入力し、配線経路を第1経路に切り替えさせる。これにより、OSが起動する前には、制御信号生成部65によって生成された各制御信号が画像処理部54と表示制御部55とに入力されるので、電源投入後の画像表示を迅速に行なうことができる。また、OSが起動した後には、様々な画像処理の実施や表示態様の設定を行なうことができる。
【0036】
ウォッチドッグタイマ67は、CPU60と信号経路切替部66とに接続されている。ウォッチドッグタイマ67は、予め設定された所定時間のカウントを行い、CPU60から定期的に入力されるリセット信号に応じてカウントをリセットする。そして、ウォッチドッグタイマ67は、CPU60からリセット信号が入力されず、前記所定時間のカウントが終了したことに応じて、CPU60が動作異常を起こしていることを検知する。ウォッチドッグタイマ67は、CPU60の動作異常を検知すると、信号経路切替部66に配線経路の切替信号を入力し、信号経路切替部66の配線経路を第2経路に切り替えさせる。これにより、CPU60がハングアップなどの動作異常を起こした際にも、内視鏡画像を正常にモニタ16に表示することができる。
【0037】
画像処理部54には、故障などといった画像処理部54の異常を検知する自己診断回路(第1検知手段)68が設けられている。自己診断回路68は、CPU60に接続されている。自己診断回路68は、画像処理部54の異常を検知したことに応じて、CPU60に異常検知信号を送信する。
【0038】
図4に示すように、CPU60は、画像処理部54内の自己診断回路68からの異常検知信号を受信すると、HDD62からエミュレートプログラム64を読み込み、画像処理部54の動作をエミュレートするエミュレータ80を起動させる。エミュレータ80は、ROM42から読み出された画面構成情報44cやキーボード36を介して入力される操作指示情報82などに応じて、A/D53から入力された画像データ84に各種の画像処理を施す。そして、画像処理後の画像データを表示制御部55に出力する。これにより、画像処理部54に異常が生じた際にも、内視鏡画像を正常にモニタ16に表示することができる。
【0039】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、上記構成による内視鏡システム2の作用について説明する。内視鏡システム2で検査を実施する際、ユーザは、先ず洗浄・消毒などが施された清潔な電子内視鏡10の接続、及び処置具や薬剤など検査に必要な資器材の用意などといった検査準備を行う。検査準備を行なったユーザは、プロセッサ装置12、光源装置14、モニタ16などの電源を投入し、内視鏡システム2を起動させる。
【0040】
プロセッサ装置12の電源を投入すると、CPU60は、HDD62からOSプログラム63を読み込み、OSの起動処理を開始する。一方、制御信号生成部65は、電源の投入と同時に各制御信号の生成を開始する。信号経路切替部66は、電源が投入されると、信号ラインの配線経路を第2経路に設定し、制御信号生成部65によって生成された各制御信号を画像処理部54と表示制御部55とに入力させる。
【0041】
これにより、OSの起動処理が完了するまでの間にも内視鏡画像がモニタ16に表示されるので、ユーザに無駄な待ち時間を与えてしまうことを防止することができる。ユーザは、内視鏡画像がモニタ16に表示された後、電子内視鏡10の挿入部18を患者の体腔内に挿入し、検査を開始する。
【0042】
CPU60は、OSを起動させた後、各制御信号の生成を開始するとともに、信号経路切替部66に切替信号を入力し、配線経路を第1経路に切り替えさせる。これにより、キーボード36などを介して入力される操作指示情報82に応じて、色彩強調や血管強調などの各画像処理の指定や、複数の画像を並べて表示するマルチ表示の指定などが可能になる。
【0043】
モニタ16に内視鏡画像を表示させて検査を行なっている際、ウォッチドッグタイマ67によってCPU60の動作異常が検知されると、ウォッチドッグタイマ67から信号経路切替部66に配線経路の切替信号が入力される。ウォッチドッグタイマ67からの切替信号が入力されると、信号経路切替部66の配線経路が第2経路に切り替えられる。これにより、CPU60がハングアップなどの動作異常を起こした際にも、内視鏡画像が正常にモニタ16に表示される。
【0044】
また、検査を行なっている際、自己診断回路68によって画像処理部54の異常が検知されると、自己診断回路68からCPU60に異常検知信号が送信される(図4参照)。自己診断回路68からの異常検知信号がCPU60に受信されると、エミュレータ80が起動し、画像処理部54の動作がエミュレートされる。これにより、画像処理部54に異常が生じた際にも、内視鏡画像が正常にモニタ16に表示される。
【0045】
このように、本実施形態によれば、CPU60が動作異常を起こした際や画像処理部54に異常が生じた際にも内視鏡画像が正常にモニタ16に表示されるので、挿入部18が患者の体腔内にある状態で内視鏡画像が表示されなくなってしまうという不具合を確実に防止することができる。また、制御信号生成部65によって生成された各制御信号で画像表示を行なう場合や、エミュレータ80で画像処理部54の動作をエミュレートする場合にも、画質が著しく低下することはない。従って、検査中にCPU60や画像処理部54に異常が生じた際にも、挿入部18を容易に引く抜くことができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、電子内視鏡10に設けられたROM42に画面構成情報44aを記憶させ、ROM42から読み出すことによってCPU60や制御信号生成部65が画面構成情報44b、44cを取得するようにしているが、画面構成情報44b、44cの取得方法は、これに限るものではない。例えば、電子内視鏡10の機種を示す情報をROM42に記憶させ、電子内視鏡10の機種と画面構成情報44aとを対応付けたテーブルデータをプロセッサ装置12のHDD62などに記憶し、ROM42から読み出した情報を基にテーブルデータを参照することにより、画面構成情報44b、44cを取得するようにしてもよい。
【0047】
さらには、画面構成情報44aを予め記憶することなく、図6に示すように、A/D53から入力された画像データ84からCCD40の画素数やアスペクト比などを判別することにより、画面構成情報44b、44cを取得するようにしてもよい。また、上記実施形態では、記憶手段としてROM42を示したが、記憶手段は、これに限ることなく、例えば、RFIDタグなど、画面構成情報44aを記憶できるものであれば如何なるものでもよい。
【0048】
なお、上記実施形態では、電子内視鏡10を内視鏡として示したが、内視鏡は、これに限ることなく、例えば、超音波内視鏡や蛍光内視鏡や光学的干渉断層計(OCT)内視鏡などでもよい。また、上記実施形態では、患者を被検体とする医療用の内視鏡を示したが、内視鏡は、これに限ることなく、配管などを被検体とする工業用のものでもよい。さらに、上記実施形態では、CCD40を撮像素子として示したが、撮像素子は、これに限ることなく、例えば、CMOSイメージセンサなどでもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、第1画像処理部をハードウェア処理部、第2画像処理部をソフトウェア処理部として説明したが、これとは反対に、第1画像処理部をソフトウェア処理部、第2画像処理部をハードウェア処理部としてもよい。さらには、第1、第2画像処理部の双方をハードウェア処理部、あるいはソフトウェア処理部としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、メイン制御部をソフトウェア制御部、サブ制御部をハードウェア制御部として説明したが、これとは反対に、メイン制御部をハードウェア制御部、サブ制御部をソフトウェア制御部としてもよい。さらには、メイン、サブ制御部の双方をハードウェア制御部、あるいはソフトウェア制御部としてもよい。
【0051】
さらに、上記実施形態では、切替信号に応じて配線経路の切り替えを行なう信号経路切替部66を切替手段として示したが、切替手段は、これに限ることなく、例えば、ユーザが手動で配線経路を切り替えるものでもよい。また、上記実施形態では、第2検知手段としてウォッチドッグタイマ67を示したが、第2検知手段は、これに限ることなく、CPU60などのメイン制御部の異常を検知できるものであれば如何なるものでもよい。
【0052】
さらに、上記実施形態では、OSプログラム63やエミュレートプログラム64などの各種のプログラムの記憶場所としてHDD62を示したが、各種のプログラムの記憶場所は、これに限ることなく、例えば、電源が遮断されても記憶を保持する半導体メモリで構成された記憶装置でもよい。また、CDやDVDなどの記録メディア類やコンパクトフラッシュ(登録商標)やSDカードなどのメモリカード類でもよい。さらに、LANを介して接続された外部記憶装置やサーバなどであってもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、制御信号生成部65が電子内視鏡10内のROM42にある画面構成情報44aの内容を読み出した画面構成情報44bに基づいて制御することを示したが、画面構成情報44bの代わりにROM42にある画面構成情報44aを用いてもよい。また、CPU60も画面構成情報44cの代わりに画面構成情報44aを用いてもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、AMP50とCDS/PGA52及びA/D53をプロセッサ装置12に含ませたが、電子内視鏡10に含ませてもよい。また、AMP50とCDS/PGA52及びA/D53を別途アダプターとして電子内視鏡10やプロセッサ装置12の外部に持たせてもよい。加えて、AMP50とCDS/PGA52及びA/D53を分離して複数の装置に含ませてもよく、例えば、AMP50とCDS/PGA52は電子内視鏡10に含ませ、A/D53のみをプロセッサ装置12に含ませてもよい。また、AMP50のみを電子内視鏡10に含ませ、CDS/PGA52とA/D53とをプロセッサ装置12に含ませてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】内視鏡システムの構成を概略的に示す正面図である。
【図2】電子内視鏡とプロセッサ装置との構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】信号経路切替部で切り替え可能な各配線経路の状態を示す説明図である。
【図4】画像処理部の動作をCPUでエミュレートする際の手順を概略的に示す説明図である。
【図5】内視鏡システムの検査手順を概略的に示すフローチャートである。
【図6】画像データから画面構成情報を判別する例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
2 内視鏡システム
10 電子内視鏡
12 プロセッサ装置(画像処理装置)
16 モニタ(表示装置)
40 CCD(撮像素子)
42 ROM(記憶手段)
54 画像処理部(第1画像処理部)
55 表示制御部
60 CPU(第2画像処理部、メイン制御部)
65 制御信号生成部(サブ制御部)
66 信号経路切替部(切替手段)
67 ウォッチドッグタイマ(第2検知手段)
68 自己診断回路(第1検知手段)
80 エミュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される内視鏡によって得られた画像データに対して画像処理を施す第1画像処理部と、
前記画像データによって表される画像を表示する表示装置を制御するための表示制御部と、
前記第1画像処理部の異常を検知する第1検知手段と、
前記第1検知手段によって前記第1画像処理部の異常が検知された際に、前記第1画像処理部の代わりに前記画像処理を実行する第2画像処理部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1画像処理部及び前記表示制御部に対して制御信号を出力することにより制御を行なうメイン制御部を備えており、前記メイン制御部が前記第2画像処理部を兼用することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1画像処理部及び前記表示制御部に対して制御信号を出力することにより制御を行なうサブ制御部と、
前記メイン制御部による制御と前記サブ制御部による制御とを選択的に切り替える切替手段とを設けたことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記メイン制御部の異常を検知する第2検知手段を備えており、
前記切替手段は、前記第2検知手段によって異常が検知された場合に、前記メイン制御部から前記サブ制御部に切り替えることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記メイン及びサブの各制御部は、前記内視鏡に設けられた撮像素子のアスペクト比及び画素数を少なくとも含む画面構成情報に応じた前記制御信号を出力することを特徴とする請求項3又は4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記内視鏡は、前記画面構成情報を記憶する記憶手段を有しており、
前記メイン及びサブの各制御部は、前記記憶手段から読み出すことによって前記画面構成情報を取得することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記メイン及びサブの各制御部は、前記画像データから判別することによって前記画面構成情報を取得することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1画像処理部は、前記画像処理を実行する半導体で構成されたハードウェア処理部であり、前記第2画像処理部は、プログラムを実行することによって前記第1画像処理部が実行する前記画像処理をエミュレートするソフトウェア処理部であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記メイン制御部は、プログラムを実行することによって制御を行なうソフトウェア制御部であり、前記サブ制御部は、半導体によって制御を行なうハードウェア制御部であることを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記切替手段は、前記メイン制御部の起動処理が完了するまでの間、前記サブ制御部に制御を行わせることを特徴とする請求項9記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第2検知手段は、ウォッチドッグタイマであることを特徴とする請求項4から10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
被検体内に挿入される内視鏡と、この内視鏡によって得られた画像データに対して画像処理を施す第1画像処理部を備えた画像処理装置とからなる内視鏡システムにおいて、
前記画像データによって表される画像を表示する表示装置を制御するための表示制御部と、
前記第1画像処理部の異常を検知する第1検知手段と、
前記第1検知手段によって前記第1画像処理部の異常が検知された際に、前記第1画像処理部の代わりに前記画像処理を実行する第2画像処理部とを設けたことを特徴とする内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−195621(P2009−195621A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43253(P2008−43253)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】