説明

画像処理装置及び画像処理装置の制御方法

【課題】 色空間を切り替えながら色調整が可能であり、かつ、色空間の切り替え時に、切り替え後の色空間における色調整の内容をユーザが把握しやすい画像処理装置を提供する。
【解決手段】 第1の色空間における色調整の内容を指定する第1の色調整データを表示している際に、第1の色空間から第1の色空間と異なる第2の色空間への変更指示を受け付けると、第1の色調整データを、第2の色空間における第2の色調整データに変換する。そして、第1の色調整データに代えて第2の色調整データを表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置及び画像処理装置の制御方法に関し、特には色調整処理を行なう画像処理装置及び画像処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像の色調をより鮮やかにするといった色調整又は色補正は一般的に行われるようになってきている。このような色調整は通常、色変換テーブルをカラー画像に適用することで実現される。
【0003】
また、色変換テーブルのうち、特定の色の変換特性の編集(色変換テーブルの部分的な編集)も可能になってきている。これにより、画像中の特定の色だけを変換する色調整が実現できる。また、色変換テーブルの部分的な編集作業を行なった色空間以外の色空間においても同様の結果を得るようにすることも提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−125221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような色調整の機能を提供する従来の画像処理装置において、色を表すパラメータである色相、彩度、明度を個別に調整するためのユーザインタフェースは、HSL座標系での値を調整するものが一般的であった。
【0006】
色を表すパラメータ及びその値は色空間に依存するが、色空間に依存した値の調整には専門的な知識が必要となる場合がある。そのため、HSL/RGB(HSL座標系で表されるRGB色空間)の調整量を相対的な量で指定するユーザインタフェースが用いられる場合が多かった。或いは、HSL/RGBの値を絶対的な量で指定するユーザインタフェースが用いられる場合もあるが、その場合、そのユーザインタフェースを他の色空間に適用することはできなかった。そのため、色空間を切り替えながら色調整作業をすることができなかった。
【0007】
このように、従来の色調整装置では、例えば、ある色空間上で色相角を変化させる調整が、別の色空間ではどのような調整になるのかをユーザが明確に把握することができなかった。そのため、例えばある色空間上で彩度の全域に対して色調整をしたとしても、より広い色空間上では彩度の全域に対しては調整されないといった関係をユーザが明確に把握することができなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みなされたものである。本発明は、色空間を切り替えながら色調整が可能であり、かつ、色空間の切り替え時に、切り替え後の色空間における色調整の内容をユーザが把握しやすい画像処理装置及び画像処理装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、1の色空間における色調整の内容を指定する第1の色調整データを取得する取得手段と、第1の色調整データを表示する表示手段と、第1の色空間から第1の色空間と異なる第2の色空間への変更指示を受け付ける受け付け手段と、第1の色調整データを、第2の色空間における第2の色調整データに変換する変換手段と、表示手段により、第1の色調整データに代えて第2の色調整データを表示させる制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置によって達成される。
【0010】
また、上述の目的は、1の色空間における色調整の内容を指定する第1の色調整データを取得する取得工程と、第1の色調整データを表示装置に表示する表示工程と、第1の色空間から第1の色空間と異なる第2の色空間への変更指示を受け付ける受け付け工程と、第1の色調整データを、第2の色空間における第2の色調整データに変換する変換工程と、表示工程により、第1の色調整データに代えて第2の色調整データを表示させる制御工程とを有することを特徴とする画像処理装置の制御方法によっても達成される。
【発明の効果】
【0011】
このような構成により、本発明によれば、色空間を切り替えながら色調整が可能であり、かつ、色空間の切り替え時に、切り替え後の色空間における色調整の内容をユーザが把握しやすい画像処理装置及び画像処理装置の制御方法が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の一例としての色調整装置100の主要構成の例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の色調整装置100における色調整処理を説明するフローチャートである。
【図3】本実施形態の色調整装置100における色調整データの色空間変換処理を説明するフローチャートである。
【図4】本実施形態における色調整装置100の調整色データ指定部102の例を示す図である。
【図5】本実施形態の色調整装置100の調整色データ指定部102及び調整色データ表示部106の表示例を示す図である。
【図6】本実施形態の色調整装置100の調整結果表示部107における表示例を示す図である。
【図7】本実施形態の色調整装置100の調整色データ指定部102及び調整色データ表示部106の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適かつ例示的な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の一例としての色調整装置100の主要構成の例を示すブロック図である。色調整装置は、例えばGUIベースのOS(Operating System)が稼働する汎用コンピュータ装置において、色編集アプリケーションを実行することにより実現可能である。
【0014】
図1において、調整色データ指定部102は、ユーザが調整色データを指定するためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)である。ユーザは、キーボードやマウスなど、色調整装置が有する入力デバイス(図示せず)を用いて調整色データ指定部102を操作することができる。そして、ユーザは、調整色データ指定部102を通じ、調整基準色、調整範囲、及び調整量から構成される、色調整の内容を指定するパラメータを、HSL値(HSL座標系でのパラメータ値)で色調整装置100に複数指定することができる。以後、色調整の内容を指定するパラメータを色調整データと呼ぶ。
【0015】
調整色データ指定部102で指定された色調整データは、システム制御部101に入力され、メモリ103に保持される。システム制御部101は例えばCPUと、色編集アプリケーションやOS等を記憶する記憶装置と、CPUがOSやアプリケーションを実行する際に用いるRAM等を備える。システム制御部101は、色調整装置100全体の動作を制御する。
【0016】
調整色データ指定部102で指定された色調整データは、システム制御部101を通じて調整色データ処理部104にも供給される。調整色データ処理部104は、例えば基準となる色変換テーブルを色調整データに従って編集することにより、色調整データに対応した色変換テーブルを生成する。
【0017】
システム制御部101は、調整色データ処理部104が生成した色変換テーブルを、ユーザが指定した調整基準色や、画像入力部109を通じて入力された画像データ(サンプル画像データ)に適用する。そして、適用結果の色パッチや画像データを、調整結果表示部107に表示させる。調整結果表示部107は、例えば色調整装置100に接続される表示装置(図示せず)の画面中に表示されるウィンドウの1つであってよい。
【0018】
画像入力部109は、生成された色変換テーブルの効果を確認するためのサンプル画像を読み込むための入力デバイスである。画像入力部109は例えばイメージスキャナ、メモリカードリーダ、光学ディスクドライブ、ハードディスクドライブ等であって良い。
【0019】
メモリ103は、色調整データ、色調整データが生成された際の色空間情報、さらには色空間変換が行われている場合は、変換後の値を表示用の調整色データとして保持する。
【0020】
色空間変更指示部108は、ユーザが調整色データを編集する際に任意に色空間を指定するためのGUIである。ユーザは、色調整装置が有する入力デバイス(図示せず)を用いて色空間変更指示部108を操作し、第1の色空間から第1の色空間と異なる第2の色空間への切替えを色調整装置100へ指示することができる。
【0021】
システム制御部101は、色空間変更指示部108からの色空間切替指示を受け付けると、色空間変換処理部105に対し、色空間変換処理の実行を指示する。
【0022】
色空間変換処理部105は、この指示に応答して、メモリ103に保持されている全ての色調整データ(第1の色調整データ)に対して色空間変換処理を行なう。変換後の色調整データ(第2の色調整データ)は表示用の調整色データとして、第1の色調整データとは別に、システム制御部101を通じてメモリ103に保存される。
【0023】
また、色変換処理後の表示用の調整色データは、システム制御部101により調整色データ表示部106に表示される。調整色データ表示部106は、例えば色調整装置100に接続される表示装置の画面中に表示されるウィンドウの1つであってよい。
【0024】
システム制御部101は、表示用の色調整データをさらに調整色データ処理部104へ供給する。調整色データ処理部104は、表示用の色調整データに基づいて色変換テーブルを生成する。
【0025】
システム制御部101は、調整色データ処理部104が生成した色変換テーブルを、ユーザが指定した調整基準色や、画像入力部109を通じて入力された画像データ(サンプル画像データ)に適用する。そして、適用結果の色パッチや画像データを、調整結果表示部107に表示させる。
【0026】
その後、ユーザから色調整処理の終了が指示されると、システム制御部101は、メモリ103に記憶していた各種データを調整結果保存部110に保存する。ここで保存されるデータには、表示用の調整色データ、調整色データ指定部102を通じて指定された調整色データ、色空間変更指示部108を通じて指定された色空間情報などが含まれ、それぞれが対応づけられている。
【0027】
(調整色データ指定部)
図4は、本実施形態における色調整装置100の調整色データ指定部102の例を示す図である。
HSL座標系は、色相(Hue)、彩度(Saturation)、輝度(Luminance)の3つの成分を有する座標系である。調整色データ指定部102は、HSL座標系の値で指定される色調整データを、予め定められた表示領域内の、値に対応する位置に表示するインタフェースとして、カラーホイール203及び輝度バー204を有する。また、調整色データ指定部102は、調整基準色の色相、彩度、輝度を調整するためのインタフェースとしてスライダーバー205〜207を有している。
【0028】
カラーホイール203は、HSL空間において編集可能な彩度の領域が最も広い純色(輝度50%)におけるHS平面を表示領域として有する。表示領域内の、調整基準色の色相値及び彩度値に応じた位置に点400aを表示することで、ユーザに調整基準色の色相値及び彩度値に関する情報を提供する。
【0029】
また、輝度バー204は画素が取りうる輝度Lの範囲を示す表示領域を有する。輝度バー204は、調整基準色の輝度成分の値に対応する位置を、点400bによって表示する。ユーザは、カラーホイール203に表示される点400aの位置と、輝度バー204に表示される点400bの位置により、調整基準色のHSL色空間中の3次元座標を容易にイメージできる。
【0030】
また、図4において、401a,401b,402a,402b,404a,及び404bは、調整基準色に対する色調整が影響を与える領域(調整範囲)を表すと共に、ユーザが調整範囲を制御するためのコントロールポイントである。
【0031】
本実施形態において、彩度及び色相の調整範囲(HS調整範囲A)は調整色に対して予め定められた彩度及び色相の範囲を有し、輝度の調整範囲(L調整範囲)は輝度の全範囲であるとする。即ち、彩度及び色相については、コントロールポイント401a、401b、402a及び402bで示される扇形がHS調整範囲Aを示す。また、輝度に関しては、コントロールポイント404a及び404bで挟まれる区間がL調整範囲を示す。
【0032】
図4に示すように、HS調整範囲Aについては、コントロールポイント401a−401b−402b−402a−401aを線で結んで表示することにより、カラーホイール203上で調整範囲を把握しやすくしている。
【0033】
コントロールポイント401a,401b,402a,402b,404a,及び404bはいずれもその位置をユーザが変更可能である。ユーザはカラーホイール203や輝度バー204を見ながらコントロールポイントの位置を変更させることにより、調整範囲を変更もしくは指定することができる。
【0034】
スライダーバー205〜207は、それぞれ、ユーザから、調整基準色の色相、彩度、輝度の調整量を受け付けるために設けられている。スライダーバー205〜207の位置によって指定される数値はそれぞれの絶対値としても良いが、本実施形態では、微妙な調整を行いやすいように、調整基準色のからのオフセット値とする。
【0035】
そのため、スライダーバー205〜207の中心位置を0(変更無し)として、中心位置から左方向をマイナス、右方向をプラスのオフセット値にしている。また、スライダーバー205〜207の右にそれぞれ配置されたテキストボックス208〜210は、スライダーバー205〜207の操作に連動して、各スライダーバー205〜207で指定されているオフセット値を数値として表示する。また、テキストボックス208〜210には、直接オフセット値を入力することも可能であり、テキストボックス208〜210の値が変更されると、スライダーバー205〜207の位置にも反映される。
【0036】
なお、本実施形態において、スライダーバー205〜207又はテキストボックス208〜210で指定される調整量は、調整基準色に対して適用され、調整範囲内の他の色については、調整基準色から離れた色ほど調整量の効果が少なくなるものとする。
【0037】
なお、本明細書においては、GUIを構成するスライダーバー等の操作手順を逐一説明しないが、マウスやキーボード等の入力デバイスにより、コンピュータ分野において一般に行われているような手順で操作されるものとする。
例えば、スライダの移動はスライダのツマミをドラッグする操作や、キーボードの所定キーの操作によって実現されうる。
【0038】
(色調整処理)
図2は、本実施形態の色調整装置における色調整処理を説明するフローチャートである。
上述したように、本実施形態の色調整装置における色調整処理は、システム制御部101が色調整アプリケーションを実行することによって実現される。また、ここではユーザの指示などにより、既に色編集アプリケーションが起動された状態にあるものとする。
また、ユーザが指定したサンプル画像が画像入力部109から読みこまれ、調整結果表示部107に表示されているものとする。
【0039】
S200において、システム制御部101は、調整色データ指定部102、より具体的にはスライダーバー205〜207又はテキストボックス208〜210、を通じて指定された調整色(調整基準色)を取得する。
【0040】
具体的には、調整色データ指定部102の例えば図示しない決定ボタンや、キーボード等の入力装置の決定キーの押下時におけるスライダーバー205〜207(又はテキストボックス208〜210)の値を調整基準色とすることができる。なお、調整基準色の指定時は、スライダーバー205〜207の示す値はオフセット量ではなく、HSL座標系の値の絶対値である。
【0041】
なお、調整基準色は、他の任意の方法で取得しても良い。例えば、画像処理アプリケーションにおいて一般的に行われているように、表示中の画素のうちユーザが指定された画素の色を調整基準色として抽出してもよい。
【0042】
次に、システム制御部101は、調整範囲を取得する(S201)。具体的には、まずシステム制御部101は、指定された調整基準色に対する初期調整範囲を算出する。そして、調整色データ指定部102のカラーホイール203及び輝度バー204にHS調整範囲A及びL調整範囲を示すコントロールポイント401a,401b,402a,402b,404a,及び404bを表示する。
【0043】
ユーザは必要に応じてコントロールポイント401a,401b,402a,402b,404a,及び404bの位置をドラッグ等の操作により変更することで、調整範囲の変更を行うことができる。
【0044】
システム制御部101は、調整基準色と同様、調整色データ指定部102の例えば図示しない決定ボタンや、キーボード等の入力装置の決定キーの押下時における各コントロールポイントの位置を、調整範囲として取得することができる。
【0045】
S202において、システム制御部101は、調整色データ指定部102、より具体的にはスライダーバー205〜207又はテキストボックス208〜210、を通じて指定された調整基準色に対する調整量を取得する。この時点においては、スライダーバー205〜207の示す値は調整基準色のHSL値に対するオフセット値である。
【0046】
システム制御部101は、他の指定値と同様、調整色データ指定部102の例えば図示しない決定ボタンの押下時や、キーボード等の入力装置の決定キーの押下時におけるスライダーバー205〜207(又はテキストボックス208〜210)の値を取得する。そして、取得した値を調整量とすることができる。
【0047】
次に、S203において、システム制御部101は、ユーザから、調整色データ指定部102を通じて指定された色調整データ(調整基準色、調整範囲、及び調整量)を、メモリ103に保持するとともに、調整色データ処理部104に供給する。調整色データ処理部104は、例えば基準となる色変換テーブルを色調整データに従って編集することにより、色調整データに対応した色変換テーブルを生成する。
【0048】
色変換テーブルは例えば調整基準色のR,G,Bの値を入力とし、調整後の色のR,G,Bの値を返す3次元ルックアップテーブルであってよい。このような3次元ルックアップテーブル及びその編集については、例えば特開2004−129226号公報に開示されるような公知技術を用いて行うことができるため、その詳細についての説明は省略する。例えば、特開2004−129226号公報におけるソースを本明細書の調整基準色、デスティネーションを調整後の色とすればよい。なお、HSL色空間とRGB色空間の変換についても適宜行えばよい。
【0049】
システム制御部101は、調整色データ処理部104が生成した色変換テーブルを、ユーザが指定した調整基準色や、画像入力部109を通じて入力されたサンプル画像データに適用する。そして、適用結果の色パッチや画像データを、調整結果表示部107に表示させる(S204)。
【0050】
その後、システム制御部101は、S205でユーザから色調整処理の終了指示が検出されるまで、S200〜S204の処理を繰り返し行う。
【0051】
S205でユーザから色調整処理の終了指示が検出されると、システム制御部101は、メモリ103に記憶していた各種データを調整結果保存部110に保存する(S206)。ここで保存されるデータには、表示用の調整色データ、調整色データ指定部102を通じて指定された調整色データ、色空間変更指示部108を通じて指定された色空間情報などが含まれる。
【0052】
(色空間変換処理)
図3は、本実施形態の色調整装置における色調整データの色空間変換処理を説明するフローチャートである。
上述したように、この処理は色空間変更指示部108を通じた指示に応じて実行される。色空間変更指示部108は、例えば調整色データ指定部102を形成するGUIの一部に設けられた色空間変換ボタンや、アプリケーションメニュー項目であってよい。色空間変換の具体例としては、例えばHSL座標系上でのsRGB色空間とAdobe(登録商標)RGB色空間の変換などを挙げることができる。なお、プリンタやディスプレイといった色調整の対象となるデバイスに応じて、Lab、CMYK、YUV(NTSC)など他の色空間についても、下記の変換処理は同様に適用できるものである。
【0053】
色空間変換処理部105は、最初にメモリ103に保持されている全ての調整色データをシステム制御部101を通じて取得し、次の手順を全ての調整色データに対して繰り返し実行する。
【0054】
まず、S300において、色空間変換処理部105は、調整基準色について、HSL(色空間A)⇒HSL(色空間B)の色空間変換処理を実行する。
なお、この色空間変換処理は、実際には、
HSL(色空間A)⇒RGB(色空間A)
RGB(色空間A)⇒XYZ(色空間A)
XYZ(色空間A)⇒L*a*b*(色空間非依存)
L*a*b*(色空間非依存)⇒XYZ(色空間B)
XYZ(色空間B)⇒RGB(色空間B)
RGB(色空間B)⇒HSL(色空間B)
という変換工程を経て実現される。これらの変換工程は一般的なものであるため、ここでは個々の工程に関する説明は行わない。
【0055】
次に、色空間変換処理部105は、調整範囲について、以下の変換式を用いて色空間変換処理を行なう(S301)。
(1)色空間A上にて、HSL=(Sの下限値,Hの下限値,調整基準色のL値)を色1(色空間A)と定義し、これを色空間Bに変換した色1’(色空間B)を計算
(2)色空間A上にて、HSL=(Sの下限値,Hの上限値,調整基準色のL値)を色2(色空間A)と定義し、これを色空間Bに変換した色2’(色空間B)を計算
(3)色空間A上にて、HSL=(Sの上限値,Hの下限値,調整基準色のL値)を色3(色空間A)と定義し、これを色空間Bに変換した色3’(色空間B)を計算
(4)色空間A上にて、HSL=(Sの上限値,Hの上限値,調整基準色のL値)を色4(色空間A)と定義し、これを色空間Bに変換した色4’(色空間B)を計算
(5)以上、計算した色1’〜色4’を用いて、色空間B上におけるSの上限・下限値、Hの上限・下限値を求める。なお、Lの上下限(色空間B)=Lの上下限(色空間A)とする。
・Sの下限値(色空間B)=(色1’のS+色2’のS)÷2
・Sの上限値(色空間B)=(色3’のS+色4’のS)÷2
・Hの下限値(色空間B)=(色1’のH+色2’のH)÷2
・Hの上限値(色空間B)=(色3’のH+色4’のH)÷2
【0056】
次に、色空間変換処理部105は、調整量について、以下の変換式を用いて色空間変換処理を行なう(S302)。
(1)調整基準色(色空間A)を色空間Bに変換した調整基準色’(色空間B)を計算
(2)調整基準色(色空間A)の各HSLの要素に調整量(色空間A)の各HSL毎の調整量を加算した色を目標色(色空間A)と定義し、これを色空間Bに変換した目標色’(色空間B)を計算
(3)以上、計算した調整基準色’(色空間B)と目標色’(色空間B)を用いて、色空間B上におけるHSLの調整量を求める。
・調整量のH(色空間B)=目標色’(色空間B)のH−調整基準色’(色空間B)のH
・調整量のS(色空間B)=目標色’(色空間B)のS−調整基準色’(色空間B)のS
・調整量のL(色空間B)=目標色’(色空間B)のL−調整基準色’(色空間B)のL
【0057】
以上の変換により計算された変換後の調整色データを、調整色データ表示部106に表示(S303)する。
調整色データ表示部106は、例えば調整色データ指定部102と同様のGUIであってよい。そして、色空間変換後の調整色データ(調整基準色、調整範囲、及び調整量)を、調整色データ指定部102と同様にして表示することができる。
【0058】
図5(a)は、調整色データ指定部102における、HSL(色空間A)における色調整データの表示例を示す図である。この調整色データについて、HSL(色空間B)への色空間変換指示がなされた場合、調整色データ表示部106での表示結果は例えば図5(b)の様になる。
【0059】
即ち、色空間Aにおいて、調整基準色のHS座標は点500a、L座標は500bで表され、HS調整範囲Aはコントロールポイント501a,502a,502b,501bで囲まれる扇型で表され、調整量はテキストボックス208〜210で表されていた。
【0060】
これに対し、色空間Bでは、調整基準色のHS座標は点500a’L座標は500b’で表される。また、HS調整範囲A’はコントロールポイント501a’,502a’,502b’,501b’で囲まれる扇型で表され、調整量はテキストボックス208’〜210’で表される。
【0061】
図5の例では、色空間Aにおいて指定された色調整データをより広域な別の色空間Bに変換したため、調整範囲が狭くなり、彩度の調整量が小さくなっていることが明確に把握できる。
【0062】
変換後の調整色データは、表示用として、変換前の調整色データとは別にメモリ103に保存(S304)する。このように、変換後の調整色データを変換前の調整色データと別に保存することで色空間変換処理に伴う誤差が調整色データに蓄積することを抑制することができる。つまり、同じ調整色データに対して色空間A→色空間B→色空間Aという色空間変換処理を繰り替え適用すると、徐々に変換誤差が蓄積し、元の調整色データから変化してしまう。しかし、変換後の色調整データを表示用として別途保存し、その後の色空間変換処理は表示用データに適用することで、当初の色調整データに色空間変換処理の変換誤差の影響を与えないという効果がある。
【0063】
さらに、変換後の調整色データを用いて調整色データ処理部104にて色変換テーブルを生成(S305)する。そして、生成された色変換テーブルを調整基準色に適用した結果を調整色とした調整結果色および色変換テーブルをサンプル画像に適用した結果を調整結果表示部107に表示する(S306)。
【0064】
色空間変換指示があった際にメモリ103に保存されていた全ての色調整データについてS300〜S306の処理を繰り返した後、調整を終了(S307)し、変換後の表示用色調整データをメモリ103に保存する(S308)。これにより、色調整データの色空間変換処理を完了する。
【0065】
(調整結果表示部)
図6は、本実施形態の色調整装置100における調整結果表示部107の表示例を示す図である。
図6(a)は、調整色データ処理部104にて生成された色変換テーブルの効果が確認できるよう、色変換テーブルを適用した前後の調整基準色を左右に並べて表示した例を示している。
【0066】
また、図6(b)は、調整基準色のHSL値と、調整後のHSL値をそれぞれ数字で表示した例を示している。
【0067】
さらに、図6(c)は、元のサンプル画像データと、色調整データに基づいて生成した色変換テーブルを適用した後のサンプル画像データとを並べて表示した例を示している。なお、これらの表示方法はいずれか1つに限られるものではなく、複数の表示方法を組み合わせることが可能であることはいうまでもない。
【0068】
(変形例1)
なお、本実施形態では、理解を容易にするため、色調整処理と色空間変換処理とを別個に説明した。しかし、図2を用いて説明した色調整処理の過程において、色空間変換処理を実行することも可能である。これにより、ユーザは、指定した調整範囲や調整量が他の色空間でどのようになるかを確認しながら調整範囲や調整量を指定することができる。
この場合、S202において調整量の取得が終わってメモリ103に保存された色調整データに対し、色空間変換処理を実行することができる。
【0069】
また、上述の実施形態では、カラーホイール203及び輝度バー204に、調整基準色の座標を示す点400a,400b,500a,500bを表示したが、調整後の色についても同様の点を表示しても良い。
【0070】
(変形例2)
調整後の色について、調整基準色と同様に、HS座標とL座標をカラーホイール203及び輝度バー204に示すようにすることもできる。
図7(a)は、指定された調整量に応じた調整後の色のHS座標とL座標を点505a、505bにより調整色データ指定部102のカラーホイール203及び輝度バー204に表示した例を示す図である。
【0071】
また、調整基準色の座標を表す点500a,500bから調整後の色の座標を表す点505a,505bへ延びる矢印504a,504bを併せて表示している。矢印504a,504bにより、調整量の方向や大きさを直感的に把握することができる。
【0072】
カラーホイール203や輝度バー204への調整後の色の座標表示や調整量の表示は、図7(b)に示すように、調整色データ表示部106においても行うことができる。従って、色空間変換処理により調整後の色座標や調整量がどのように変化するかについて直感的に把握することが可能となる。
【0073】
(変形例3)
本実施形態では、調整色データ指定部102と調整色データ表示部106とを別個のGUIとして説明した。しかし、これらをまとめて1つのGUIで実現しても良い。この場合、色空間の変更指示に応答して、色空間変更前の調整色データに代えて色空間変更後の調整色データを調整色データ指定部102に表示させるようにすればよい。
【0074】
以上説明したように、本実施形態の色調整装置は、色空間に依存した座標系の値を用いて指定された色調整のパラメータ(色調整データ)を表示するユーザインタフェースを有する。また、色空間の変更が指示された場合には、色調整データを変更後の色空間における値に変換し、ユーザインタフェースにおける表示に、変換後の色調整データの値を反映させる。そのため、色空間に依存した座標系を用いて色調整の内容を指定する容易さを備えながら、同一のユーザインタフェースを用いて、ある色空間において指定した色調整が、別の色空間においてどのような色調整となるのかを容易に把握することが可能になる。
【0075】
(他の実施形態)
上述の実施形態は、システム或は装置のコンピュータ(或いはCPU、MPU等)によりソフトウェア的に実現することも可能である。
【0076】
従って、上述の実施形態をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給されるコンピュータプログラム自体も本発明を実現するものである。つまり、上述の実施形態の機能を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明の一つである。
【0077】
なお、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能であれば、どのような形態であってもよい。例えば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等で構成することができるが、これらに限るものではない。
【0078】
上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、記憶媒体又は有線/無線通信によりコンピュータに供給される。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記憶媒体、MO、CD、DVD等の光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリなどがある。
【0079】
有線/無線通信を用いたコンピュータプログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバを利用する方法がある。この場合、本発明を形成するコンピュータプログラムとなりうるデータファイル(プログラムファイル)をサーバに記憶しておく。プログラムファイルとしては、実行形式のものであっても、ソースコードであっても良い。
【0080】
そして、このサーバにアクセスしたクライアントコンピュータに、プログラムファイルをダウンロードすることによって供給する。この場合、プログラムファイルを複数のセグメントファイルに分割し、セグメントファイルを異なるサーバに分散して配置することも可能である。
【0081】
つまり、上述の実施形態を実現するためのプログラムファイルをクライアントコンピュータに提供するサーバ装置も本発明の一つである。
【0082】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを暗号化して格納した記憶媒体を配布し、所定の条件を満たしたユーザに、暗号化を解く鍵情報を供給し、ユーザの有するコンピュータへのインストールを許可してもよい。鍵情報は、例えばインターネットを介してホームページからダウンロードさせることによって供給することができる。
【0083】
また、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、すでにコンピュータ上で稼働するOSの機能を利用するものであってもよい。
【0084】
さらに、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、その一部をコンピュータに装着される拡張ボード等のファームウェアで構成してもよいし、拡張ボード等が備えるCPUで実行するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の色空間における色調整の内容を指定する第1の色調整データを取得する取得手段と、
前記第1の色調整データを表示する表示手段と、
前記第1の色空間から前記第1の色空間と異なる第2の色空間への変更指示を受け付ける受け付け手段と、
前記第1の色調整データを、前記第2の色空間における第2の色調整データに変換する変換手段と、
前記表示手段により、前記第1の色調整データに代えて前記第2の色調整データを表示させる制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の色調整データが、色空間に依存する座標系における値によって指定されることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記表示手段が、前記第1及び第2の色調整データを、予め定められた表示領域内の前記第1及び第2の色調整データの値に対応する位置に表示することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の色調整データが、調整基準色、調整範囲、調整量から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1又は第2の色調整データに基づいて、前記第1又は第2の色調整データによって指定される色調整を行うための色変換テーブルを生成する生成手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変換手段が、前記第2の色調整データを、前記第1の色調整データとは別に保存することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
1の色空間における色調整の内容を指定する第1の色調整データを取得する取得工程と、
記第1の色調整データを表示装置に表示する表示工程と、
前記第1の色空間から前記第1の色空間と異なる第2の色空間への変更指示を受け付ける受け付け工程と、
前記第1の色調整データを、前記第2の色空間における第2の色調整データに変換する変換工程と、
前記表示工程により、前記第1の色調整データに代えて前記第2の色調整データを表示させる制御工程とを有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−178866(P2012−178866A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110902(P2012−110902)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【分割の表示】特願2007−210300(P2007−210300)の分割
【原出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】