説明

画像処理装置用照明装置及び方法

【課題】この発明は、画像処理装置用照度補正機能付き照明システムに関し、より詳しくは、照度装置の出力分布を変更可能な画像処理装置用照明装置及び方法に関するものである。
【解決手段】検査対象物の画像情報を検出する撮像部を含み上記撮像部画像情報を分析する画像処理装置に用いられる照明装置であって、上記検査対象物に光を投光する照明手段と、上記撮像部により検出される上記画像情報の照度分布を検出する手段と、上記照度分布とあらかじめ定められた所定の目標分布とを比較する比較手段と、上記比較手段の出力結果に従って上記照度分布が前記目標分布になるように上記照明手段の輝度分布を変更させる手段とによって、上記画像情報の照度補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置用照度装置及び方法に関し、より詳しくは、照明手段の出力輝度分布を変更し、検査対象物における照度をあらかじめ定められた所定の目標分布と一致させるような画像処理装置用照度装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置にあっては、検査対象物すなわち検査対象物を、撮像部を通じて認識し、均一な照度において撮影された撮像画像が求められている。そのため、画像処理装置には検査対象物を照射する照明装置が用いられている。
【0003】
図1は、複数の発光体が配置された、ドーナツ状と矩形状の照明部の例を示す平面図である。ドーナツ状あるいは矩形状の基板の上に、丸印で示されたLED等により構成される発光体が幾何学的に配置されている。
【0004】
この種の、照明装置においては、光源の明暗調整のために輝度調整が提供されており、複数の発光体を配置してなるパネル面全体が調光されるようになっている。そして、従来の照明装置においては光源輝度を均一するように構成されていた。
【0005】
従来、このような照明装置においては、光源の輝度均一化を図ったとしても、必ずしも検査対象物の均一照度とはならない。これは、均一輝度の光源を用いても検査対象物の形状により明暗や画像照度にむらすなわち不均一照度が生じてしまうからである。
【0006】
例えば、検査対象物が球面体である場合や湾曲している場合について説明する。
図2Aは、発光体照明パネルから照射される光が球面体の検査対象物に当たっている状態を示した側面図である。また、図2Bは、図2Aに示された矢視Aで示された方向から、光が照射された球面体をみたときの上面図である。
【0007】
ここで、球面体の場合、投光輝度が均一な照明を照射しても同心円状に外側に向かって暗くなることが容易にわかる。また、検査対象物において均一な照度が得られた場合であって、撮像部を介して得られた画像情報にムラが生じることもある。
【0008】
これは、おのおのの発光体の点光源から検査対象物までの距離が異なり、また照度は点光源から検査対象物までの距離の二乗に反比例するということが知られているためでもある。同様の画像情報のムラは、検査対象物の各点と撮像部との距離の差によっても生ずる場合がある。さらに、撮像部に含まれる光学系の収差や光軸ずれなどにより、撮像部を介して検出された画像情報に、こうしたムラが生ずることもある。
【0009】
上記の状況より、検査対象物が限定される場合や段取り変更が可能なアプリケーションでは、光源の照射角度や方向を製品毎に変更して対応している。
【0010】
特許文献1には、画像読み取り装置において、凹凸のある複雑な形状の対象物でも照度を一定に保つことができ、照度ムラの発生を防止する装置が開示されている。
【0011】
この装置においては、原稿形状と照明装置の位置及び照明範囲から照度補正係数を算出し、これを用いて照明装置の光量調整を行うことで、原稿形状と照明位置の関係により発生する陰影を取り除くことができる。これにより、原稿面に対して照度が均一になり、陰影のないより美しい画像データが得られる。
【0012】
しかし、この種の装置においては単一光源の照度を時間軸で変化させているので、画像情報の取り込みに時間がかかり、多数の検査対象物を扱う際には多くの時間的なロスが生じ効率的でなかった。
【0013】
一方、明るさを補正するために画像処理装置においては、各種フィルター処理機能に頼ることが一般的に知られている。代表的なフィルターは、微分によるエッジ抽出やシェーディング補正がある。
【0014】
しかし、この種の画像処理装置における照明装置では、検査対象物の形状に応じた各種フィルターを作成し、フィルター処理時に演算処理ステップが増大する。これは、いわば「品質の悪い画像を如何に補正するか」という解決法である。
【0015】
とくに、検査対象物の各点から撮像素子までの影響を低減するためには、この検査対象物から撮像素子までの距離を大きくするという方法も考えられるが、そうした装置は全体として小型が困難となり製造コストや設置スペースの面で問題が生ずることとなる。
【特許文献1】特開2003−296182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、「画像処理装置においてより適正な画像を取得する」という解決法に対応した画像処理装置用照明装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、画像処理装置におけるフィルター作成と、画像処理時における照度補正用のフィルター処理を不要または軽減可能な画像処理装置用照明装置及び方法を提供するものである。
【0018】
本発明に係る画像処理装置用照明装置の一態様は、検査対象物の画像情報を検出する撮像部を含み上記撮像部画像情報を分析する画像処理装置に用いられる照明装置であって、上記検査対象物に光を投光する照明手段と、上記撮像部により検出される上記画像情報の照度分布を検出する手段と、上記照度分布とあらかじめ定められた所定の目標分布とを比較する比較手段と、上記比較手段の出力結果に従って上記照度分布が前記目標分布になるように上記照明手段の輝度分布を変更する手段とによって、上記画像情報の照度補正を行う。
【0019】
かかる構成によれば、照明手段の輝度分布を変更することにより、画像処理装置が撮像部を介して取得する画像情報が得られた状態で既に輝度に関しては適正な設定状態となっているために、その後画像処理装置が行なっていたフィルター処理を不要または軽減可能となる。また、必要に応じて積極的に照明手段の輝度分布にムラを形成し結果的に、検出された画像情報を均一にすることが可能となる。
【0020】
本発明の他の実施態様は、上記所定の目標分布は、上記画像情報の照度分布がほぼ均一となるように定められている。かかる構成によれば、平面的な検査対象物における特定のパターンの認識は、単純な形状における検査対象物の外形形状の認識をおこなう画像処理において、上記フィルター処理を大幅に削減することが可能となる。
【0021】
本発明の他の実施態様においては、上記照明手段は、基板に複数の発光体を配置した構成とし、上記照度補正はこの発光体の輝度を制御することによって行われる。
【0022】
かかる構成によれば、複数の発光体(たとえばLED)の輝度を個別に調整することによって、得られる画像情報の照度分布をあらかじめ定められた所定の目標分布にするための調整が容易に行なうことができる。
【0023】
本発明の他の実施態様においては、さらに上記撮像部により得られる照射データを取得する手段と、上記撮像部より得られた照射データ全体の平均値に所定の演算処理を行って設定基準値を作成する手段と、上記検査対象物における照射エリアに対応する上記複数の発光体の一つが上記設定基準値になるように輝度調整データを変化させることによって輝度調整する輝度調整手段と、上記輝度調整データをメモリに格納する格納手段と、上記輝度調整手段及び上記格納手段を残りのすべての上記発光体に対して順次行う手段を含む一連の処理を制御する電子制御集積回路とを含む。
【0024】
かかる構成によれば、検査対象物の平均照度を基準として各照射エリアの照度が補正され、検査対象物の撮像部によって得られた照度分布がほぼ一定となる。
【0025】
本発明の他の実施態様においては、照明手段に含まれる各発光体は、上記撮像部の光学的中心線に対して、ドーナツ状に配置されている。かかる構成によれば、検査対象物の照射エリアに対する撮像部に対応する照明手段から発せられる照明の輝度を、撮像部の光学中心から遠ざかるにつれて増すように制御することが容易となり、特に撮像部を介して検出された画像情報の照度分布をほぼ均一とすることが容易になる。
【0026】
本発明の他の実施態様においては、上記照明手段は、矩形基板に複数のLEDを配置した構成であり、上記撮像部の光軸に対して、傾斜した状態で固定されている。かかる構成によれば、簡単な構成により検査対象物の照度分布を矩形基板上のLEDと検査対象物の距離の関数として制御することにより、取り込まれた画像情報における照度分布を均一化することが容易となる。
【0027】
本発明の他の実施態様においては、検査対象物から得た画像情報を表示する表示部と、上記輝度分布を微調整可能な手動調整部とをさらに含む。かかる構成によれば、画像情報の表示部と、手動調整部を用いて複雑な自動調整の代わりにあるいはそれに加えて、照明部の輝度分布を微調整することが可能となる。
【0028】
本発明の他の実施態様においては、上記撮像部により検査対象物から画像情報を得る画像取得ステップと、上記画像情報に含まれる照度分布とあらかじめ定めた所定の目標分布と比較する比較ステップと、上記比較の結果に応じて制御信号を発する制御ステップと、照明手段から出力される照射光の輝度分布を変更する輝度変更ステップとを有し、上記検査対象物から得る上記画像情報があらかじめ定められた所定の目標分布となるように、上記輝度分布を変更することにより上記検査対象物における照度補正をする。
【0029】
かかる構成によれば、照明手段の輝度分布を変更することにより、画像情報が得られた状態で既に輝度に関しては適正な設定状態となっているために、その後画像処理装置が行なっていたフィルター処理を不要または軽減可能となる。
【0030】
本発明の他の実施態様においては、上記所定の目標分布は、上記画像の照度分布がほぼ均一となるように定められている。かかる構成によれば、平面的な検査対象物における特定のパターンの認識は、単純な形状における検査対象物の外形形状の認識をおこなう画像処理において、上記フィルター処理を大幅に削減することが可能となる。
【0031】
本発明の他の実施態様においては、上記照明手段は、基板に複数の発光体を配置した構成とし、上記照度補正は各発光体の輝度を制御するステップによって行われる。かかる構成によれば、複数の発光体(たとえばLED)の輝度を個別に調整することによって、得られる画像情報の照度分布をあらかじめ定められた所定の目標分布にするための調整が容易に行なうことができる。
【0032】
本発明の他の実施態様においては、上記撮像部より得られた照度データ全体の平均値を基準に基づき所定の演算処理をおこない上記所定の目標分布に対応した設定基準値を作成するステップを含んでいる。かかる構成によれば、照度データの平均値を基準にして、照明手段の輝度分布を増減させることが可能となり、画像処理装置に取得された画像情報があらかじめ定められた所定の目標分布となるように制御することが容易となる。
【0033】
本発明の他の実施態様においては、撮像部により得られる照度データを取得するステップと、上記検査対象物における照射エリアの照度変化に対応する上記複数の発光体の一つが所定の設定基準値になるように輝度調整データを変化させることによって輝度調整する輝度調整ステップと、上記輝度調整データをメモリに格納する格納ステップと、上記輝度調整ステップ及び上記格納ステップを残りのすべての上記発光体に対して順次行うステップとを有する。
【0034】
かかる構成によれば、複数の発光体の輝度を逐次所定の設定基準値となるように輝度調整データを変化させるので、すべての発光体の調整が完了した時点で、照明手段の輝度分布を設定されたものにすることが可能となる。
【0035】
本発明の他の実施態様においては、設定基準値を更新しつつ、上記照射データを取得するステップと、上記輝度調整ステップ及び上記格納手段をすべての上記発光体に対して複数回行なう。かかる構成によれば、一旦設定された目標設定基準値にて特定の発光体を調整後に、他の発光体が補正されたことによる照度データの変動を、上記設定基準値を更新することにより、吸収し順次全体として目標とする照度分布に近づけてゆくことが出来る。
【発明の効果】
【0036】
本発明はフィルターによる照度補正のための演算処理を不要としまたは軽減し、画像処理装置における演算処理を簡略化することができ、暗い部分は明るく、明るい部分は暗く光源輝度を部分または個々調整し、輝度分布を変更することにより撮像部を介して取り込んだ画像情報の照度分布を画像処理に適切なあらかじめ定められた目標分布(たとえば均一)とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0038】
図3は本発明に係るに画像処理装置用照明装置及び方法を示す概略図である。
【0039】
この図において、画像処理装置4を中心に撮像部2、表示部5、入力部6、照明部1が結合されて画像処理システムが構成されている。
【0040】
照明部1はLED等からなる複数の発光体1aと照明用電源、輝度調整回路、輝度調整データからなる照明制御部3とによって構成される。機能的には2つの部分に分かれているが、実施形態によっては発光体1aと照明制御部3とを一体とすることも可能である。照明部1と照明制御部3とが本発明にかかる照明装置を構成している。
【0041】
さらに、図4は、画像処理装置4内に照明制御部3が組み込まれた場合のシステム図であるが上記実施例と同様にして同様の機能が実現可能となる。
【0042】
図5は、照明部1の制御装置の構成を示す概略図である。
【0043】
照明部1は図示すように、各種演算処理を実行して各部を集中的に制御するマイクロコンピュータ13が設けられている。
このマイクロコンピュータ13に含まれているCPU7には、固定データを固定的に格納するROM8と、変化データを書き換え自在に格納するRAM9と、電源を遮断しても格納データが消失しない書き換え可能なフラッシュROM10と、複数のLEDドライバ12に対してPWM(Pulse Width Modulation)制御を実行するためのPLD(Program Logic Device)11がシステムバス14を介し接続されている。
【0044】
ROM8には制御プログラムが格納されており、CPU7がROM8から読み出した制御プログラムに従い、RAM9を検査対象物エリアとして利用しつつ各種の処理を実行する。
【0045】
また、照明制御部3は、検査対象物17に照明を当てる複数の発光体1aの輝度発光のために、マイクロコンピュータ13に駆動制御される各部として、LEDドライバ12がPLD11を介して接続されている。PLD11内部ではPWMを構成するカウンタが設置され、輝度データに相当するカウント値がプリセットデータとして、マイクロコンピュータ13よりシステムバス14を介して設定が可能である。
【0046】
ここで、複数の供給電流制御手段としてのLEDドライバ12は、出力を変化させる制御装置としてのPLD11によって、各発光体1aに供給される電流量が変化さするように構成されており、その供給電流量は、フラッシュROM10内に保存された、各発光体1a照度に対応した照度調整データによって決定されるように構成されている。
【0047】
好ましい実施例においては、照明部1として、図1に示されたドーナツ状の基板の上に、丸印で示されたLED等により構成される発光体が幾何学的に配置されたものを用い、上記ドーナツ状基板の中央穴部に撮像部2の光学レンズが挿入されている。また、撮像部の光学的中心腺に対して各発光体1aは点対称には配置されている。
【0048】
図6は、撮像部2と照明部1と検査対象物17との配置関係を示す他の実施例の側面断面図である。撮像部2のレンズの下方に検査対象物17を配置し、その検査対象物17に照明を当てる照明部1を図示の如く撮像部2の光学的中心線に対して対称に設置する。図示された、検査対象物17は、後述する輝度調整データ設定のために置かれた単色のシートであるが、実際の画像処理時には図2−1に示されたような立体的な検査対象物をこの場所に置くことになる。
【0049】
図7は、本発明の他の実施例における、照明部1を示す側面断面図である。
この実施例においては、照明部1は、撮像部2の光学的中心線に対して非対称に配置されている。すなわち、図6においては一対の照明部が撮像部の光学中心に対して対称に配置されていたが、図7においては単一の照明部1のみを用いている点が異なる。
【0050】
次に、画像処理を用いた輝度調整データ設定方法について説明する。
図8は、画像処理を使用した撮像照度自動均一化補正を示すフローチャートである。
【0051】
撮像部2を設置し、その周辺に検査対象物17に照明を当てる複数の発光体1aを含む照明部1を図7のように設置し、マイクロコンピュータ13は、ROM8に格納されたプログラムに従って撮像照度の均一化補正をおこなう。
【0052】
この時、実際の検査対象物とは異なる単色のシートを検査対象物17として置いておく。これは、結果として照度が均一となるように補正するための参照としては、模様や凹凸は、外乱要素となるからである。
【0053】
まず、ステップ81では、CPU7は撮像照度の均一補正を開始する。画像処理装置4よりシリアル通信15を使用して、照明制御部3に対して撮像照度自動均一化補正を開始させる。
【0054】
ステップ82では、CPU7は照明部1における各発光体1aに一定の電流を、LEDドライバ12を介して供給する。そして、そのときの照度データを、撮像部2を介して取得する。
【0055】
ステップ83では、CPU7はこうして取得したデータを積分したあとで、全体の平均値をもとめ、これを基準として所定のゲインを乗算し、各発光体1aが供給すべき設定基準値を求める。
【0056】
ステップ84においては、CPU7は特定照射エリアに該当する発光体1aに対して、画像処理装置4から得られるデータが、上記設定基準値に等しい値となるように、LEDドライバ12からの電流供給量を調節する。
【0057】
この調節は、CPU7を介してLEDドライバ12を制御するPLD11を用いて行われる。特定の発光体1aに対応した画像データの一部が、暗すぎる場合にはその発光体1aに供給する電流量を増やすように調整値を変化させ、逆にその部分が明るすぎる場合には電流量を減らすように調整値を変化させる。
そして、最終的に適正な照度に対応した調整値は輝度調整データとしてフラッシュROM10に格納される。
【0058】
ステップ85においては、上記と同様の処理の繰り返しを第2の発光体1a、第3の発光体1a、第4の発光体1aと順次繰り返し輝度調節を行い、上記と同様に各発光体1aに対応した輝度調整データとしてフラッシュROM10に逐次格納してゆく。
【0059】
この際、個々の発光体1aの輝度変更毎に撮像部2を使用して撮像し、画像データを照明制御部3へシリアル通信15を使用してデータ転送する。
【0060】
ステップ86においては、逐次各照射エリアに対応した発光体1aの輝度調節を行ったが、最後の発光体1aの輝度調節が終了したことを検出し、一連の撮像データの輝度均一化補正が完了することとなる。
【0061】
次に、全体画像の明暗変更したい場合は、エリア毎の輝度調整データに明るく又は暗くしたい変更量をフラッシュ全てのデータに対し加算又は減算することにより均一化された照度の撮像データをそのまま変更することが可能である。
【0062】
このように、発光体1aの輝度調整を逐次行なうと最初に設定された照度が適当なものであっても、後に調整される他の発光体1aの輝度変化が重畳されるために、最初に設定された照度が変わってくる場合もある。そのような場合には、一旦すべての発光体1aの輝度調整を終了した後に、再度ステップ81から86の処理を1又は複数回行なうことにより、目標分布(均一)により近いものになるような微調整が可能となる。
【0063】
さて、実際に異なった形状の検査対象について画像処理をする際には、比較的簡単な形状については、図6あるいは図7における検査対象物17の位置に、実際の検査物を載置した後で、再び図8に示された照度自動均一化補正を行って、照明部1の照度分布を変更することも可能である。
【0064】
しかし、より複雑な形状あるいはより精度の高い補正をしたい場合には、上記自動照度均一化補正の後にあるいは上記自動照度均一化補正に代えて手動で個々の発光体1aの輝度変更を行うことも可能である。
【0065】
これは、図5におけるLEDドライバ12と発光体1aとの間に、可変ポテンショメーターを複数設置することにより実施することも可能であり、あるいは、ROM8に保存される制御プログラムがCPU7を介して実行され、PLD11からLEDドライバ12に指定される輝度調整データを個別に増減することによっても実施可能である。
【0066】
手動にてあるエリアの明るさ変更を実施する場合は、画像処理装置4の出力信号が表示された表示部5を確認し、CPU7を介して入力部6にて特定のエリア指定し、該当エリアの部分毎又は個々に発光体1aのPWM値を変更することにより実現可能である。PWM値は、事前に定められた入出力関係に応じて、PLD11がLEDドライバ12を制御することにより変化されるように構成されている。
【0067】
上記実施例においては、各発光体1aを個別に調整する構成にて説明したが、細かい分解能を必要としないような場合には、たとえば照明部1を8分割や16分割し、各分割区画に含まれる複数の発光体1aを同時に駆動・調整することにより、制御ステップ数及び保存データ数の減少を図ることができる。この場合には、該当エリアの部分ごとの制御が可能となる。
【0068】
LED照明の機能としては、検査対象物17に照明を当てる照明部1は、個々の発光体1aの輝度情報に基づき、PWM設定値に従い点灯またはトリガー16の入力により期間点灯を繰り替えし実行する。
【0069】
尚、PWM制御設定方式は一例であり、発光体1aの輝度調整はアナログを用いたコンパレートや抵抗可変による方式など公知技術を用いた種々の改変が可能である。
【0070】
また、発光体において「発光体素子の個別バラツキ」、「発光体素子の配置」、「発光体素子の劣化による輝度差異」、「検査対象物までの照射距離」、「検査対象から撮像素子までの到達距離」の各変化に対しても同様に光源輝度を調整することにより撮像画像の照度むらの要因を補正することが可能となる。
【0071】
ここで重要なことは、最終的な輝度均一化補正が完了した時点において、照明部1のここの発光体1aの輝度は、必然的に不均一になっているということである。これは、照明部1から検査対象物までの距離が一定でないこと、さらに検査対象物から撮像部2における撮像素子上の各光量検出ポイントまでの距離が一定でないことに起因する。
【0072】
すなわち、平面上の検査対象物について考えると、撮像部2の光軸直下にある検査対象物までの距離は最小となり、その光軸から外れるに従ってこの距離は徐々に増大する。
【0073】
このことは、照度は距離の二乗に反比例するという性質があるために、仮に検査対象物上均一な照度が得られていたとしても、撮像素子上では、必ずしも照度が一定とならないことを意味する。しかし、本発明においては、このような撮像部において検出される照度分布がほぼ均一になるように上記照明部の照度分布を変化させるために、画像処理に用いられる検査対象の情報を、理想的な状態で取得することができる。
【0074】
さらに、多数の発光体を利用することにより、適正照度に基づく撮像部による画像データの取り込みを短期間に行うことが可能となり、時間短縮による効率化を図ることが可能である。
【0075】
さらに、上記実施例においては、検査対象物17における照度分布が一定になるような目標分布を設定し各発光体1aの、各発光体1aの輝度調整を逐次行なったが、必ずしもこれに限る必要は無く、検査対象物17の形状や模様に応じて、目標分布をあらかじめ定めた所定のパターンとしておくことも可能である。
【0076】
この場合には、目標分布として参照する複数の基準値を設定し、各発光体1aに対応する基準値を、順次選択するようなプログラム構成としておくことが可能である。かかる構成によれば、特に立体的な形状やグラデーションのある平面検査対象物における特定パターンの認識において、より効果的な画像処理を可能とすることも可能である。
【0077】
加えて、照明部1の形状は種々の改変が可能であるが、特に図7のように撮像部2の光軸に対して、傾斜した状態で固定されている構成では、部品点数減少による信頼性の向上、制御プログラムの簡略化が可能であり、凹凸が比較的少ない検査対象物を扱う画像処理装置の場合に特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
すべての図面において、同じ参照番号は、同じ要素を示す。
【図1】複数の発光体が配置された、ドーナツ状と矩形状の照明装置の例を示す平面図である。
【図2A】発光体照明パネルから照射される光が球面体の検査対象物に当たっている状態を示した側面図である。
【図2B】図2−1に示された矢視Aで示された方向から、光が照射された球面体をみたときの上面図である。
【図3】本発明にかかる、画像処理装置用装置の概略図である。
【図4】画像処理装置内に照明制御部が組み込まれた場合のシステム図である。
【図5】照明部1の制御構成を示す概略図である。
【図6】一実施例における、撮像部と照明装置と検査対象物との配置関係を示す側面断面図である。
【図7】他の実施例における、撮像部と照明装置と検査対象物との配置関係を示す側面断面図である。
【図8】本発明にかかる、画像処理を使用した撮像照度自動均一化補正を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
1… 照明部
1a… 発光体
2… 撮像部
3… 照明制御部
4… 画像処理装置
5… 表示部
6… 入力部
7… CPU
8… ROM
9… RAM
10… フラッシュROM
11… PLD(プログラマブルロジックデバイス)
12… LEDドライバ
13… マイクロコンピュータ
14… システムバス
15… シリアル通信
16… トリガー
17… 検査対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の画像情報を検出する撮像部を含み前記画像情報を分析する画像処理装置に用いられる照明装置であって、
前記検査対象物に光を投光する照明手段と、前記撮像部により検出される前記画像情報の照度分布を検出する手段と、前記照度分布とあらかじめ定められた所定の目標分布とを比較する比較手段と、前記比較手段の出力結果に従って前記照度分布が前記目標分布になるように前記照明手段の輝度分布を変更する手段とによって、前記画像情報の照度補正を行うことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記所定の目標分布は、前記画像情報の照度分布がほぼ均一となるように定められていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記照明手段は、基板に複数の発光体を配置するように構成し、前記照度補正は前記発光体の輝度を制御することによって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記撮像部より得られる照射データを取得する手段と、前記撮像部より得られた照射データ全体の平均値に所定の演算処理を行なって設定基準値を作成する手段と、前記検査対象物における照射エリアに対応する前記複数の発光体の一つが前記設定基準値になるように輝度調整データを変化させることによって輝度調整する輝度調整手段と、前記輝度調整データをメモリに格納する格納手段と、前記輝度調整手段及び前記格納手段を残りのすべての前記発光体に対して順次行う手段を含む一連の処理を制御する電子制御集積回路とを含むことを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記複数の発光体のそれぞれの配置は、前記撮像部の光学的中心線に対して、ドーナツ状に配置されていることを特徴とする請求項3乃至4のいずれか一つに記載の照明装置。
【請求項6】
前記照明手段は、矩形基板に複数のLEDを配置した構成であり、前記矩形基板は前記撮像部の光軸に対して、傾斜した状態で固定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の照明装置。
【請求項7】
検査対象物から得た画像情報を表示する表示部と、前記輝度分布を微調整可能な手動調整部とをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の照明装置。
【請求項8】
撮像部により検査対象物から画像情報を得る画像取得ステップと、前記画像情報に含まれる照度分布とあらかじめ定めた所定の目標分布と比較する比較ステップと、前記比較の結果に応じて制御信号を発する制御ステップと、照明手段から出力される照射光の輝度分布を変化させる輝度変化ステップとを有し、前記検査対象物から得る前記画像情報があらかじめ定められた所定の目標分布となるように、前記輝度分布を変更して前記検査対象物における照度補正をすることを特徴とする画像処理装置用照明方法。
【請求項9】
前記所定の目標分布は、前記画像情報の照度分布がほぼ均一となるように定められていることを特徴とする請求項8に記載の照明方法。
【請求項10】
前記照明手段は、基板に複数の発光体を配置した構成とし、前記照度補正は各発光体の輝度を制御するステップによって行われることを特徴とする請求項8又は9に記載の照明方法。
【請求項11】
前記撮像部より得られた照度データ全体の平均値を基準に基づき所定の演算処理をおこない前記所定の目標分布に対応した設定基準値を作成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一つに記載の照明方法。
【請求項12】
前記撮像部により得られる照射データを取得するステップと、前記検査対象物における照射エリアの照度変化に対応する前記複数の発光体の一つが所定の設定基準値になるように輝度調整データを変化させることによって輝度調整する輝度調整ステップと、前記輝度調整データをメモリに格納する格納ステップと、前記輝度調整ステップ及び前記格納ステップを残りのすべての前記発光体に対して順次行うステップとを含むことを特徴とする請求項10に記載の照明方法。
【請求項13】
前記設定基準値を更新しつつ、前記輝度調整ステップ及び前記格納ステップをすべての前記発光体に対して複数回行なうことを特徴とする請求項12に記載の照明方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−300871(P2009−300871A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156812(P2008−156812)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(390034223)イーデーエム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】