説明

画像処理装置

【課題】複数の撮像手段を有する画像処理装置において、撮像画像や画像処理された画像を、ボタンやスイッチ等を設けることなく任意に切り替えることが可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置1は、視点の異なる複数の撮像手段2と、撮像手段2により撮像された複数の撮像画像Tn中にそれぞれ設けられた統計量算出領域Rn内の画像に関する統計量を算出する統計量算出手段4と、複数の撮像画像Tnの何れかを表示する表示手段3と、複数の撮像画像Tnのうちの1つの撮像画像の統計量算出領域Rn内の画像に関する統計量と他の少なくとも1つの撮像画像の統計量算出領域Rn内の画像に関する統計量とに基づいて、表示手段3に表示される画像を複数の撮像画像Tnの間で切り替える切替手段5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に係り、特に、複数の撮像手段とを備え、表示手段に表示させる撮像画像等を切り替え可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車等の車両や人口知能を備えたロボット等に一対のCCD(Charge Coupled Device)カメラ等の複数の撮像手段を搭載し、自らの周囲等を撮像して得られた撮像画像を解析する技術の開発が進められている。また、複数の撮像手段により撮像して得られた撮像画像の解析技術は、前述した車両やロボット等の分野に限らず種々の産業分野で開発が進んでいる。
【0003】
このような複数の撮像手段による撮像画像の解析技術では、それらの撮像手段の配置や画像処理装置の検査、デモンストレーション等のために、撮像画像や処理した画像を表示モニタ等の表示手段に表示させ、複数の撮像手段により撮像された撮像画像同士や画像処理装置により画像処理された画像をそれぞれ切り替えて表示されることも多い(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2001−95017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1では、車両に搭載された2つのカメラで撮像された各撮像画像等をオペレータのボタン操作により切り替えて表示モニタに表示させるようになっている。しかしながら、このようなボタン等の操作系による表示画像の切り替えは、画像処理装置の通常の使用時には不要な場合も多い。
【0005】
そのため、このような検査やデモンストレーションの場合にしか必要とならないボタン等の操作系やその画像処理装置への取付機構等を設置することは、余計なコストを強いるものとなっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数の撮像手段を有する画像処理装置において、撮像画像や画像処理された画像を、ボタンやスイッチ等を設けることなく任意に切り替えることが可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の問題を解決するために、第1の発明は、画像処理装置において、視点の異なる複数の撮像手段と、前記複数の撮像手段により撮像された複数の撮像画像中にそれぞれ設けられた統計量算出領域内の画像に関する統計量を算出する統計量算出手段と、前記複数の撮像画像の何れかを表示する表示手段と、前記複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量と他の少なくとも1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量とに基づいて、前記表示手段に表示される画像を前記複数の撮像画像の間で切り替える切替手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、画像処理装置において、視点の異なる複数の撮像手段と、前記複数の撮像手段により撮像された複数の撮像画像中にそれぞれ設けられた統計量算出領域内の画像に関する統計量を算出する統計量算出手段と、単数または複数の前記撮像画像を画像処理して処理画像を形成する画像処理手段と、複数の前記処理画像の何れか、または前記撮像画像と前記処理画像の何れかを表示する表示手段と、前記複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量と他の少なくとも1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量とに基づいて、前記表示手段に表示される画像を、前記複数の処理画像の間または前記撮像画像と前記処理画像との間で切り替える切替手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、画像処理装置において、視点の異なる複数の撮像手段と、前記複数の撮像手段により撮像された複数の撮像画像中にそれぞれ設けられた統計量算出領域内の画像に関する統計量を算出する統計量算出手段と、前記複数の撮像画像に基づいて前記撮像手段から撮像画像中に撮像された対象までの距離を算出する距離算出手段と、前記撮像画像または前記距離算出手段により算出された距離の情報が割り当てられた距離画像を表示する表示手段と、前記複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量と他の少なくとも1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量とに基づいて、前記表示手段に表示される画像を、少なくとも前記撮像画像と前記距離画像との間で切り替える切替手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、第1から第3の何れかの発明の画像処理装置において、前記画像に関する統計量は、前記撮像画像中に設けられた前記統計量算出領域内の各画素の輝度の平均値であることを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1から第3の何れかの発明の画像処理装置において、前記画像に関する統計量は、前記撮像画像に基づいて微分画像を形成し、前記統計量算出領域における前記微分画像の各画素の輝度の平均値、または前記統計量算出領域において前記微分画像の輝度が設定された閾値以上である画素の個数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、例えば画像に関する統計量を撮像画像中に設けた統計量算出領域内の各画素の輝度の平均値とすれば、例えばオペレータが1台の撮像手段に一定時間手をかざしてその撮像手段に対する入光を遮るだけで、その撮像手段により撮像された撮像画像の統計量算出領域内の画素の平均輝度を低下させて、他の撮像手段により撮像された撮像画像の統計量算出領域内の画素の輝度値との差を閾値以上にして、表示手段の画面に表示される撮像画像を切り替えることができる。
【0013】
そのため、画像切り替えのためのボタンやスイッチ等を新たに設置することなく任意に表示される撮像画像を切り替えることが可能となる。また、ボタン等を設ける必要が無いため、コスト削減を図ることが可能となる。
【0014】
第2の発明によれば、画像処理装置に、単数または複数の撮像画像を画像処理して処理画像を形成する画像処理手段を設けることで、前記第1の発明のように表示手段の画面に撮像画像を表示するだけでなく、さらに処理画像も表示させることが可能となり、それらを切り替えて表示することが可能となる。そのため、前記第1の発明の効果が撮像画像のみを切り替えて表示する場合から処理画像を含めて切り替えて表示する場合に拡大されて発揮される。
【0015】
第3の発明によれば、画像処理装置で、画像処理手段として複数の撮像画像に基づいて撮像手段から撮像画像中に撮像された対象までの距離を算出する距離算出手段を設けることで、撮像画像と、距離算出手段により算出された距離の情報が割り当てられた距離画像とを切り替えて表示することが可能となり、前記第1の発明や第2の発明の効果が撮像画像と距離画像とを切り替えて表示する場合に拡大されて発揮される。
【0016】
第4の発明によれば、画像に関する統計量を撮像画像中に設けた統計量算出領域内の各画素の輝度の平均値とすることで、例えばオペレータが1台の撮像手段に一定時間手をかざしてその撮像手段に対する入光を遮るだけで、その撮像手段により撮像された撮像画像の統計量算出領域内の画素の平均輝度を低下させて、他の撮像手段により撮像された撮像画像の統計量算出領域内の画素の輝度値との差を閾値以上にして、表示手段の画面に表示される撮像画像を容易に切り替えることが可能となり、前記各発明の効果がより簡便に発揮されるようになる。
【0017】
第5の発明によれば、画像に関する統計量を、各撮像画像に基づいて形成した微分画像の統計量算出領域における各画素の輝度の平均値や統計量算出領域における微分画像の輝度が設定された閾値以上である画素の個数とすることで、例えば撮像画像に撮像された対象物の端部の様に同じようなエッジパターンが共通して撮像される画像領域に統計量算出領域を設定して平均輝度や画素の個数を計測して、例えばオペレータの意図的なカメラへの入光の遮りを把握することが可能となり、前記各発明の効果を的確に発揮させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る画像処理装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
第1の実施形態に係る画像処理装置1は、図1に示すように、主に、本実施形態では撮像手段2と、表示手段である表示モニタ3と、統計量算出手段4や切替手段5を含むコンピュータ6とで構成されている。
【0020】
撮像手段2は、本実施形態では、互いに同期が取られたCCDやCMOSセンサ等のイメージセンサがそれぞれ内蔵され所定の間隔を開けて配置された3台のカメラ2a、2b、2cで構成されている。カメラ2a、2b、2cは、図2に模式的に例示するように、例えば前方の1人の人物を3方向からそれぞれ撮像して、撮像された画像(以下、撮像画像という)T1、T2、T3のデータをコンピュータ6に送信するようになっている。
【0021】
コンピュータ6では、図示を省略するが、入力された各撮像画像T1、T2、T3のデータがそれぞれアナログ画像からそれぞれ画素毎に例えば256階調のグレースケール等の所定の輝度階調の輝度を有するデジタル画像に変換され、ノイズの除去等の画像補正が行われるようになっている。シャッタ時間調整やアンプゲイン切り替え等の露光調整等も適宜行われる。
【0022】
表示モニタ3は、カメラ2a、2b、2cにより撮像された撮像画像T1、T2、T3のうちの何れかの撮像画像を画面に表示するようになっている。
【0023】
コンピュータ6は、図示しないCPUやROM、RAM、入出力インターフェース等がバスに接続されて構成されている。コンピュータ6は、図1に示したように、統計量算出手段4と、切替手段5としての機能を備えている。
【0024】
統計量算出手段4は、カメラ2a、2b、2cにより撮像された撮像画像T1、T2、T3中にそれぞれ統計量算出領域を設け、それらの統計量算出領域内の画像に関する統計量を算出するようになっている。本実施形態では、画像に関する統計量として統計量算出領域内の各画素の輝度の平均値を算出するようになっている。
【0025】
具体的には、統計量算出手段4は、図3に示すように、例えば各撮像画像T1、T2、T3の右上隅部に縦横の画素数が予め設定された矩形状の統計量算出領域R1、R2、R3を設定するようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、衝立等の前に居る人物を撮像する場合を想定して、各撮像画像T1、T2、T3で輝度の違いが少ない衝立等の背景部分に統計量算出領域R1、R2、R3を設定する場合を示したが、これに限定されず、例えば統計量算出領域R1、R2、R3を撮像画像の中央部分に設定することも可能であり、また、撮像画像の全画像領域を統計量算出領域R1、R2、R3とすることも可能である。
【0027】
そして、画像に関する統計量として各統計量算出領域R1、R2、R3内の各画素の輝度の平均値をそれぞれ算出する。つまり、統計量算出手段4は、3つの撮像画像T1、T2、T3のそれぞれについて統計量算出領域R1、R2、R3の各画素の輝度p1、p2、p3を加算していき、その合計を各統計量算出領域Rの画素数で除して輝度の平均値p1ave、p2ave、p3aveをそれぞれ算出するようになっている。
【0028】
切替手段5は、本実施形態では、図4に示すフローチャートに従って、カメラ2a、2b、2cからコンピュータ6に入力された撮像画像T1、T2、T3のうち、表示モニタ3にデータを送信する撮像画像を次の撮像画像に切り替えるようになっている。
【0029】
本実施形態では、カメラ2a、2b、2cのうち例えばカメラ2aを切り替え操作用の基準カメラとして設定されており、切替手段5は、基準カメラ2aにより撮像された基準画像T1の統計量算出領域R1内の平均輝度p1aveと他のカメラ2b、2cにより撮像された撮像画像T2、T3の各統計量算出領域R2、R3内の平均輝度p2ave、p3aveの平均値p23aveとを比較する(ステップS1)。
【0030】
そして、平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が予め設定された閾値未満であれば(ステップS1:NO)、平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上であるサンプリング回数をカウントするカウンタをリセットし(ステップS2)、平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上になるまで待機する。
【0031】
また、平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上であると判断すると(ステップS1:YES)、カウンタをインクリメントする(ステップS3)。
【0032】
そして、切替手段5は、カウンタの値から平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上である時間が予め設定された所定時間(設定時間)以上続いたか否かを判断し(ステップS4)、所定時間に達していなければ(ステップS4:NO)、上記のステップを繰り返す。
【0033】
また、平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上である時間が所定時間以上続いた場合には(ステップS4:YES)、表示モニタ3にデータを送信する撮像画像を次の撮像画像に切り替えるようになっている(ステップS5)。そして、カウンタをリセットして(ステップS6)、再度ステップS1に戻る。
【0034】
表示モニタ3の画面に表示する撮像画像の順番は予め設定されるようになっており、例えばT1→T2→T3→T1→…のように切り替えられる。
【0035】
次に、本実施形態に係る画像処理装置1の作用について説明する。
【0036】
本実施形態の画像処理装置1では、統計量算出手段4で、カメラ2a、2b、2cにより撮像された撮像画像T1、T2、T3中にそれぞれ設けた統計量算出領域R1、R2、R3内の画素の平均輝度p1ave、p2ave、p3aveが常時算出される。また、本実施形態では、さらにこのようにして算出された平均輝度p2ave、p3aveの平均値p23aveも常時算出される。
【0037】
そして、図2に示したように、各撮像画像T1、T2、T3の右上隅部の画素の輝度が同じような輝度であり、平均輝度p1ave、p2ave、p3aveが同様の値を有する場合、すなわち平均輝度p1aveと輝度の平均値p23aveとの差が閾値未満である場合には、例えば表示モニタ3の画面に撮像画像T1が表示されていれば、撮像画像T1が表示され続ける。
【0038】
しかし、オペレータが基準カメラであるカメラ2aのレンズの前に例えば手をかざしてカメラ2aへの入光を遮り、撮像画像T1の統計量算出領域R1内の画素の平均輝度p1aveが低下し、平均輝度p1aveと輝度の平均値p23aveとの差が閾値以上となると、図4のフローチャートのステップS3以降の処理が進み、切替手段5で、平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上である時間が所定時間以上続いたと判断されると、表示モニタ3の画面に表示される画像が、例えば撮像画像T1から撮像画像T2に切り替わる。
【0039】
その段階で、オペレータがカメラ2aのレンズの前から手を離せば、平均輝度p1aveと輝度の平均値p23aveとの差が閾値未満となり、表示モニタ3の画面には撮像画像T2が表示され続ける。
【0040】
また、さらにオペレータがカメラ2aのレンズの前に手をかざし続けて、平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上である時間が所定時間以上続くと、表示モニタ3の画面に表示される画像が、今度は撮像画像T2から撮像画像T3に切り替わる。
【0041】
このようにして、基準カメラであるカメラ2aへの入光を遮り、平均輝度p1aveと輝度の平均値p23aveとの差が閾値以上となる時間を所定時間以上連続させることで、表示モニタ3の画面に表示される画像が切り替わる。
【0042】
なお、例えば基準カメラであるカメラ2aの前を人が横切る等して、一時的に平均輝度p1aveと平均値p23aveとの差が閾値以上となっても、カメラ2aの前を人が横切る程度では閾値以上の時間は所定時間以上続かないから、表示モニタ3の画面に表示される画像は切り替わらない。換言するならば、オペレータが意図的にカメラ2aへの入光を遮ったと見なし得る程度の時間が所定時間(設定時間)として設定される。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る画像処理装置1によれば、例えばオペレータが切り替え操作用の基準カメラの前に一定時間手をかざすだけで、基準カメラにより撮像された撮像画像の統計量算出領域内の画素の平均輝度を低下させて、他の撮像画像の統計量算出領域内の画素の輝度値との差を閾値以上にして、表示モニタ3の画面に表示される画像を切り替えることができる。
【0044】
そのため、画像切り替えのためのボタンやスイッチ等を新たに設置することなく容易に且つ任意に表示される画像を切り替えることが可能となる。また、ボタン等を設ける必要が無いため、コスト削減を図ることが可能となる。
【0045】
[変形例]
なお、本実施形態では、撮像手段2が3台のカメラ2a、2b、2cで構成される場合について述べたが、カメラの台数は3台に限定されず、2台以上の複数のカメラを用いた場合も同様の構成により表示される撮像画像を切り替えることが可能であることは言うまでもない。また、そのように複数のカメラを用いるものであれば本発明の画像処理装置に含まれる。
【0046】
また、本実施形態では、1台のカメラ2aを切り替え操作用の基準カメラとして設定して、カメラ2aに対して入光を遮る等して操作することで表示される撮像画像を切り替える場合について述べた。しかし、切り替え操作用の基準カメラを特定のカメラに固定せず、例えば、切り替えたい撮像画像を撮像するカメラへの入光を遮って表示される撮像画像を切り替えるように構成することも可能である。
【0047】
すなわち、例えば、表示モニタ3の画面に撮像画像T1が表示されている場合に、撮像画像T3を表示させたい場合には、カメラ2cのレンズの前に手をかざすことで切り替えるように構成することができる。
【0048】
この場合、切替手段5で、各撮像画像T1、T2、T3の各統計量算出領域R1、R2、R3の各平均輝度p1ave、p2ave、p3aveをそれぞれ他の2つの平均輝度と比較し、他の2つの平均輝度との差が共に閾値以上となった平均輝度があれば、その平均輝度について図4のフローチャートのステップS3以下の処理を進め、その平均輝度と他の2つの平均輝度との差が閾値以上である時間が所定時間以上続いた場合に、表示される撮像画像をその平均輝度に対応する撮像画像に切り替えるように切り替えるように構成すればよい。
【0049】
また、本実施形態では、表示モニタ3の画面に表示され切り替えられる画像が撮像手段2である複数のカメラにより撮像された撮像画像である場合について述べたが、これには限定されない。
【0050】
例えば、図5に示すように、コンピュータ6に画像処理手段7としての機能を設け、画像処理手段7で、カメラ2a、2b、…で撮像された各撮像画像T1、T2、…を画像処理して、処理画像として例えば各撮像画像T1、T2、…上でそれぞれ左隣の画素との輝度の差分を各画素に割り当てた微分画像dT1、dT2、…を形成するように構成する。
【0051】
そして、上記の切り替え手法により、表示モニタ3の画面に各微分画像dT1、dT2、…を切り替えて表示させたり、各微分画像dT1、dT2、…や各撮像画像T1、T2、…を切り替えて表示させるように構成することができる。なお、微分画像は、左隣のような画像の水平方向に隣接する画素との輝度の差分だけでなく、例えば画像の縦方向に隣接する画素の輝度との差分を算出してもよく、また、Sobelフィルタ等のより広域の差分オペレータを用いて形成することも可能である。
【0052】
さらに、この場合、本実施形態のように撮像画像T1、T2、…中に設けた統計量算出領域R1、R2、…内の画素の平均輝度p1ave、p2ave、…を算出する代わりに、形成された微分画像dT1、dT2、…の所定の位置に統計量算出領域R1、R2、…を設定して、その統計量算出領域R1、R2、…における微分画像dT1、dT2、…の各画素の輝度の平均値や、統計量算出領域R1、R2、…において微分画像dT1、dT2、…の輝度が設定された閾値以上である画素の個数等を算出し、それに基づいて本実施形態と同様に表示される画像を切り替えるように構成することも可能である。
【0053】
このように構成すれば、複数の撮像画像T1、T2、…中で例えば立体物の端部のように同じようなエッジパターンが共通して撮像される画像領域があれば、その画像領域に統計量算出領域R1、R2、…を設定することで、例えば各撮像画像T1、T2、…の全体的な輝度が多少異なっていても、平均輝度や画素の個数を計測することで、オペレータの意図的なカメラへの入光の遮りを把握することが可能となり、上記の本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、上記の変形例では、統計量算出領域R1、R2、…における微分画像dT1、dT2、…の各画素の輝度の平均値や、統計量算出領域R1、R2、…において微分画像dT1、dT2、…の輝度が設定された閾値以上である画素の個数等が、画像に関する統計量に相当する。
【0055】
また、上記の変形例では、1つの撮像画像から1つの処理画像を得る場合について述べたが、複数の撮像画像に対して画像処理を施して単数または複数の処理画像を形成するように構成することも可能である。これについては後述する第2の実施形態においてその例を示す。
【0056】
一方、本実施形態では、図1、図2に示したように、複数のカメラが同一の対象を撮像するように略同一の方向に向けて配置される場合について述べたが、図6に示すように、例えば3台のカメラ2a、2b、2cがそれぞれ別の方向を向くように配置するように構成してもよい。
【0057】
この場合、3台のカメラ2a、2b、2cで撮像される撮像画像Tnには、それぞれ異なる対象が撮像される。そこで、各撮像画像に設定する統計量算出領域Rnを図3に示したように各撮像画像で同一の位置とせず、例えば各撮像画像で経時的に輝度があまり変化しない画像領域にそれぞれ統計量算出領域Rnを設定する。
【0058】
しかし、このように統計量算出領域Rnを設定すると、それぞれの統計量算出領域Rnで画素の平均輝度に差異が生じる。そのため、例えば統計量算出手段4で各統計量算出領域Rnの平均輝度を算出する際、各統計量算出領域Rnの実際の平均輝度にそれぞれ所定値を加算して平均輝度が略同じ値となるように修正する。そして、その修正された平均輝度に対して図4のフローチャートに示した手順で処理を施すことで、別方向に向いた複数のカメラについても本発明を適用することが可能となる。
【0059】
[第2の実施の形態]
第2の実施形態では、車両に搭載され、撮像手段として2台のカメラを用いてステレオ撮像を行う画像処理装置について説明する。
【0060】
本実施形態に係る画像処理装置10は、図7に示すように、主に、撮像手段11と、変換手段12と、画像処理手段15と、統計量算出手段18や切替手段19等を含むコンピュータ20と、表示手段である表示モニタ21とで構成されている。
【0061】
なお、撮像手段11から画像処理手段15までの構成は、本願出願人により先に提出された特開平5−114099号公報、特開平5−265547号公報、特開平6−266828号公報、特開平10−283461号公報、特開平10−283477号公報、特開2006−72495号公報等に詳述されており、詳細な説明はそれらの公報に委ねる。以下、撮像手段11から画像処理手段15までの構成は、簡単に説明する。
【0062】
撮像手段11は、本実施形態では、互いに同期が取られたCCDやCMOSセンサ等のイメージセンサがそれぞれ内蔵され例えばルームミラー近傍に車幅方向に所定の間隔を開けて取り付けられた一対のメインカメラ11aおよびサブカメラ11bからなるステレオカメラであり、所定のサンプリング周期で自車両の周囲を撮像して一対の画像を出力するように構成されている。
【0063】
本実施形態では、撮像手段11の一対のカメラのうち、運転者に近い側のカメラがメインカメラ11aとされ、例えば図8に示すような基準画像Tを撮像するようになっている。また、サブカメラ11bでは基準画像Tと対照される比較画像が撮像される。なお、比較画像は、基準画像Tと似通った画像であり、図示を省略する。
【0064】
メインカメラ11aとサブカメラ11bから出力された画像データは、変換手段12であるA/Dコンバータ12a、12bでアナログ画像からそれぞれ画素毎に例えば256階調のグレースケール等の所定の輝度階調の輝度を有するデジタル画像にそれぞれ変換され、画像補正部13で、ずれやノイズの除去等の画像補正が行われ、画像データメモリ14に格納されると同時に画像処理手段15に送信されるようになっている。
【0065】
画像処理手段15のイメージプロセッサ16では、基準画像Tと比較画像の各画像データにステレオマッチング処理やフィルタリング処理を施して撮像手段11から基準画像T中に撮像された対象までの実空間上の距離に対応する視差dpを算出するようになっている。以下、距離の情報である視差dpが割り当てられた画像を距離画像という。
【0066】
なお、視差dp、距離画像上の点(i,j)と、前記一対のカメラ11a、11bの中央真下の道路面上の点を原点とし、自車両の車幅方向をX軸方向、車高方向をY軸方向、車長方向をZ軸方向とした場合の実空間上の点(X,Y,Z)とは、下記(1)〜(3)式で表される座標変換により一意に対応付けられる。なお、下記各式において、CDは一対のカメラの間隔、PWは1画素当たりの視野角、CHは一対のカメラの取り付け高さ、IVおよびJVは自車両正面の無限遠点の距離画像上のi座標およびj座標、DPは消失点視差を表す。
X=CD/2+Z×PW×(i−IV) …(1)
Y=CH+Z×PW×(j−JV) …(2)
Z=CD/(PW×(dp−DP)) …(3)
【0067】
また、イメージプロセッサ16は、視差dpの信頼性を向上させる目的から、このようにして求めた視差dpに対してフィルタリング処理を施し、有効とされた視差dpのみを出力するようになっている。すなわち、例えば、車道の映像のみからなる特徴に乏しい画像領域では前述したステレオマッチング処理の結果の信頼性が低く、視差dpが算出されてもその視差dpの信頼性は低い。そのため、そのような視差dpは前述したフィルタリング処理で無効とされ、視差dpの値として0を出力するようになっている。
【0068】
したがって、イメージプロセッサ16から出力される視差dpは、通常、基準画像Tの左右方向に隣り合う画素間で輝度の差が大きい、いわゆるエッジ部分についてのみ有効な値を持つデータとなる。そのため、例えば図8に示された基準画像Tおよびそれに対応する比較画像から算出される距離画像Tzは、図9に示すように、撮像された対象のエッジ部分には有効な値を有し、車道等の特徴に乏しい画像領域には0が割り当てられた画像となる。
【0069】
このようにして算出された視差dpすなわち距離画像Tzは、画像処理手段15の距離データメモリ17に格納されると同時にコンピュータ20に送信されるようになっている。本実施形態では、以上の画像処理手段15が、複数の撮像画像すなわち基準画像Tおよび比較画像に基づいて撮像手段11から基準画像T中に撮像された対象までの距離Zを算出する距離算出手段に相当する。
【0070】
コンピュータ20における統計量算出手段18および切替手段19の構成および作用は、前記第1の実施形態のコンピュータ6における統計量算出手段4および切替手段5と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0071】
なお、本実施形態では、統計量算出手段18は、2つの撮像画像である基準画像Tと比較画像に前述した統計量算出領域Rを設定するようになっており、各画像の中央付近に撮像されるように設定される無限遠点に対応する画素を含む各画像の略中央部分に統計量算出領域Rを設定するようになっている。
【0072】
前述したように、メインカメラ11aとサブカメラ11bは車幅方向に所定の間隔を開けて取り付けられるため、基準画像Tと比較画像とは撮像された対象の位置がずれるが、無限遠点に対応する画素を含む各画像の略中央部分では画像のずれが少なくなり、統計量算出領域Rをこの位置に設定すると、それらの統計量算出領域R内の画素の平均輝度が、入光が遮られない状態では略等しくなるからである。
【0073】
また、本実施形態では、切替手段19は、基準画像Tの統計量算出領域R内の平均輝度と比較画像の統計量算出領域R内の平均輝度とを比較して、図4に示したフローチャートに従って画像の切り替えを行うようになっている。また、本実施形態では、画像データメモリ14や距離データメモリ17を介して入力される基準画像Tと距離画像Tzとを切り替えて表示モニタ21の画面に表示するようになっているが、例えば基準画像T→比較画像→距離画像Tz→…の順番に切り替えるように構成してもよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、画像処理装置10が車両に搭載される場合について説明したが、この画像処理装置10を例えばロボットに搭載したりパン・チルト式の監視カメラとして用いるように構成することも可能である。また、それらに搭載せずに、画像処理装置10を検査やデモンストレーション等のために独立に用いることも可能である。
【0075】
また、3台以上のカメラにより撮像された3つ以上の撮像画像に基づいて撮像手段11から基準画像Tに撮像された対象までの距離を算出するように構成することも可能であり、また、距離Zや視差dpを算出する手法はステレオマッチング処理に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】第1の実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】3台のカメラで撮像された撮像画像を説明する模式図である。
【図3】撮像画像中に設定される統計量算出領域を説明する図である。
【図4】切替手段で行われる処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】画像処理装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【図6】画像処理装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図8】基準画像の一例を示す図である。
【図9】図8の基準画像等に基づいて算出された距離画像を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1、10 画像処理装置
2、11 撮像手段
2a、2b、2c、11a、11b カメラ
3、21 表示手段(表示モニタ)
4、18 統計量算出手段
5、19 切替手段
15 画像処理手段(距離算出手段)
dp 視差(距離の情報)
p1、p2、p3 画素の輝度
p1ave、p2ave、p3ave、p23ave 輝度の平均値
R1、R2、R3、Rn 統計量算出領域
T1、T2、T3、Tn 撮像画像
dT1、dT2、… 処理画像(微分画像)
T 撮像画像(基準画像)
Tz 距離画像
Z 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視点の異なる複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段により撮像された複数の撮像画像中にそれぞれ設けられた統計量算出領域内の画像に関する統計量を算出する統計量算出手段と、
前記複数の撮像画像の何れかを表示する表示手段と、
前記複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量と他の少なくとも1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量とに基づいて、前記表示手段に表示される画像を前記複数の撮像画像の間で切り替える切替手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
視点の異なる複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段により撮像された複数の撮像画像中にそれぞれ設けられた統計量算出領域内の画像に関する統計量を算出する統計量算出手段と、
単数または複数の前記撮像画像を画像処理して処理画像を形成する画像処理手段と、
複数の前記処理画像の何れか、または前記撮像画像と前記処理画像の何れかを表示する表示手段と、
前記複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量と他の少なくとも1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量とに基づいて、前記表示手段に表示される画像を、前記複数の処理画像の間または前記撮像画像と前記処理画像との間で切り替える切替手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
視点の異なる複数の撮像手段と、
前記複数の撮像手段により撮像された複数の撮像画像中にそれぞれ設けられた統計量算出領域内の画像に関する統計量を算出する統計量算出手段と、
前記複数の撮像画像に基づいて前記撮像手段から撮像画像中に撮像された対象までの距離を算出する距離算出手段と、
前記撮像画像または前記距離算出手段により算出された距離の情報が割り当てられた距離画像を表示する表示手段と、
前記複数の撮像画像のうちの1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量と他の少なくとも1つの撮像画像の前記統計量算出領域内の前記画像に関する統計量とに基づいて、前記表示手段に表示される画像を、少なくとも前記撮像画像と前記距離画像との間で切り替える切替手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記画像に関する統計量は、前記撮像画像中に設けられた前記統計量算出領域内の各画素の輝度の平均値であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像に関する統計量は、前記撮像画像に基づいて微分画像を形成し、前記統計量算出領域における前記微分画像の各画素の輝度の平均値、または前記統計量算出領域において前記微分画像の輝度が設定された閾値以上である画素の個数であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−219726(P2008−219726A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57062(P2007−57062)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】