説明

画像処理装置

【課題】画像データの記憶部に温度要因によるデータ転送速度の低下が発生しても処理の生産性低下を防止することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像データを格納するハードディスク装置の温度がデータ転送速度の低下する高温温度や低温温度でなければ(S107;N/S108;N)、画像処理装置の制御モードをハードディスク装置を使用するジョブモードに切り替える(S109)。また、ハードディスク装置の温度が上記の高温温度や低温温度であれば(S107;Y/S108;Y)、ユーザにモード選択を促し、モード選択が行われて(S110;Y)、ページモードが選択された場合は(S111;N)、画像処理装置の制御モードをハードディスク装置を使用しないページモードに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置などを画像データの記憶装置として備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のハードディスク装置は、大容量化や高密度化に伴い温度の影響を受けやすくなっていることから、低温時や高温時の信頼性を確保する対策を講じているものがある。しかし、その影響で低温時や高温時にデータ転送速度が低下する傾向があり、そのようなハードディスク装置を画像データの記憶装置として画像処理装置に使用した場合には、低温時や高温時にハードディスク装置による画像データの入出力が印刷出力に間に合わなくなることがある。
【0003】
特に低温環境下や電源投入直後などの要因でハードディスク装置が低温状態にあるときには、ハードディスク装置が一定温度まで温まらないとデータ転送速度の低下が改善されない。そのため、画像処理装置はハードディスク装置による画像データの書き込みおよび読み出しが完了するまで印刷を待たされることになり、生産性の低下を引き起こしやすくなる。
【0004】
このようなハードディスク装置の温度を要因とする不具合に対し、高温側については、ハードディスク装置の温度を基に画像読取と印刷出力とを間欠動作させてシステム内部全体の温度上昇を抑える、あるいはハードディスク装置への電源供給を制御することにより、ハードディスク装置の温度上昇を抑える技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
また低温側については、ハードディスク装置の温度が低い場合に、冷却FANの回転を停止する制御を行ってハードディスク装置の温度上昇を早める、あるいは、低速アクセス状態でのジョブの投入や多重投入を禁止する制御を行うなどして、画像処理装置に搭載されたハードディスク装置の低速動作中の不具合を防止する技術が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−336246号公報
【特許文献2】特開2006−56062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の技術では、ハードディスク装置が高温になると間欠動作によって温度上昇を抑え、また低温になるとジョブ投入を禁止するなどして、低速動作になることを回避するようにしている。しかしそのため、ハードディスク装置の低温時や高温時には印刷の中断や生産性低下が発生してしまい、またジョブ自体が受け付けられなくなる問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、画像データの記憶部に温度要因によるデータ転送速度の低下が発生しても処理の生産性低下を防止することができる画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部の温度を検知する温度検知部と、
前記温度検知部の検知結果に基づいて当該画像処理装置の制御モードを前記記憶部を使用する第1モードまたは前記記憶部を使用しない第2モードに切り替える制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像処理装置。
【0011】
上記発明では、たとえば温度検知部の検知した記憶部の温度が、記憶部のデータ転送速度が通常よりも低下する高温温度や低温温度などでなければ、画像処理装置の制御モードを記憶部を使用する第1モードに切り替える。また、温度検知部の検知した記憶部の温度が上記の高温温度や低温温度などであれば、画像処理装置の制御モードを記憶部を使用しない第2モードに切り替える。すなわち、温度要因で記憶部のデータ転送速度が低下しないときには記憶部を使用する第1モードで画像処理装置を動作させ、温度要因で記憶部のデータ転送速度が低下するときには記憶部を使用しない第2モードで画像処理装置を動作させる。これにより、記憶部に温度要因によるデータ転送速度の低下が発生しても、画像処理装置は記憶部を使用しない第2モードで動作するため、処理の生産性低下が防止される。
【0012】
[2]前記制御部は、前記記憶部の温度が所定温度の場合に前記第1モードまたは前記第2モードの何れを選択するかを問い合わせ、該問い合わせ後に選択された前記第1モードまたは前記第2モードに前記制御モードを切り替える
ことを特徴とする[1]に記載の画像処理装置。
【0013】
上記発明では、記憶部の温度がデータ転送速度の低下する高温温度や低温温度などの所定温度であれば、第1モードまたは第2モードの何れを選択するかを問い合わせ、この問い合わせ後に選択された第1モードまたは第2モードに制御モードを切り替える。これにより、生産性を優先しない場合は第1モードを選択し、生産性を優先する場合は第2モードを選択するなどユーザが任意に制御モードを選択できるようになり、利便性が向上する。
【0014】
[3]前記第1モードは、画像データの供給元から提供される画像データを前記記憶部に記憶してから読み出して処理すると共に、同一の画像データに対する処理を複数回繰り返す場合は、前記記憶部から前記画像データを複数回読み出して使用する動作モードであり、
前記第2モードは、前記供給元から提供される画像データを前記記憶部に記憶せずに順次処理すると共に、同一の画像データに対する処理を複数回繰り返す場合は、前記供給元から前記画像データの提供を複数回受ける動作モードである
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の画像処理装置。
【0015】
上記発明では、画像処理装置は制御モードが第1モードに切り替えられると、画像データの供給元から提供される画像データを記憶部に記憶してから読み出して処理すると共に、同一の画像データに対する処理を複数回繰り返す場合は、記憶部から画像データを複数回読み出して使用するように動作する。また制御モードが第2モードに切り替えられると、供給元から提供される画像データを記憶部に記憶せずに順次処理すると共に、同一の画像データに対する処理を複数回繰り返す場合は、供給元から画像データの提供を複数回受けるように動作する。
【0016】
[4]前記温度検知部は、前記記憶部が備える内部温度検知部である
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0017】
上記発明では、記憶部が備える内部温度検知部を用いて温度を検知することにより、記憶部内の正確な温度を検知し制御モードを切り替えられるようになる。また、簡単な構成での温度検知が可能になる。
【0018】
[5]前記温度検知部は、前記記憶部の外部に設けられた外部温度検知部である
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0019】
上記発明では、記憶部の外部に外部温度検知部を設けて温度を測定することにより、内蔵の温度検知部などを持たない記憶部の温度検知が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る画像処理装置によれば、画像データの記憶部に温度要因によるデータ転送速度の低下が発生しても処理の生産性低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置10の概略構成を示すブロック図である。画像処理装置10は、原稿を光学的に読み取り、該読み取りで得た画像データを用紙上に画像形成して印刷出力するコピー機能や、外部から入力された印刷データを画像データに変換し、該変換した画像データを用紙上に画像形成して印刷出力するプリント機能などを備えたデジタル複写機として構成されている。
【0023】
画像処理装置10は、プリンタコントローラ11とプリンタ本体12とを備えており、プリンタ本体12がプリンタコントローラ11を介してLAN(Local Area Network)2などのネットワークに接続されている。また画像処理装置10は、プリンタコントローラ11およびプリンタ本体12の制御モードとして、プリントジョブの画像データをジョブ単位で扱って処理するジョブモード(第1モード)とページ単位で扱って処理するページモード(第2モード)とを有しており、プリンタコントローラ11がジョブモードとページモードの切替制御を行う機能を備えている。
【0024】
プリンタコントローラ11は、コントローラ制御部20と、ネットワーク制御部21と、画像処理部22と、画像メモリ23と、インターフェース部24とを備えており、画像処理部22に他の各部が接続されている。
【0025】
コントローラ制御部20は、プリンタコントローラ11の動作を制御する機能、プリンタ本体12やLAN2などを通じて図示しない外部端末と通信する機能、プリンタコントローラ11およびプリンタ本体12の制御モードをジョブモードまたはページモードに切り替える機能を備えている。ネットワーク制御部21はNIC(Network Interface Card)などで構成されており、LAN2などと接続され、外部とデータの授受を行う機能を備えている。画像処理部22は、ネットワーク制御部21がLAN2などを通じて外部端末から受信した文字コードなどで構成された印刷データを画像データ(イメージデータ)に展開(ラスタライズ)する機能を備えている。
【0026】
画像メモリ23は、画像処理部22により展開された画像データを一時的に記憶する機能を果たす。なお、この画像メモリ23はハードディスク装置などの他の記憶装置に置き換えてもよい。インターフェース部24は、プリンタ本体12と接続され、プリンタ本体12とデータの授受を行う機能を果たす。
【0027】
プリンタ本体12は、プリンタ本体制御部30と、操作表示部31と、インターフェース部32と、画像処理部33と、画像メモリ34と、ハードディスク装置35(図中、HDD;Hard
Disk Driveと表示)と、温度センサ36と、スキャナ部37と、プリンタ部38とを備えている。画像処理部33には操作表示部31を除く他の各部が接続されており、操作表示部31はプリンタ本体制御部30に接続されている。
【0028】
プリンタ本体制御部30は、プリンタ本体12におけるスキャン、コピー、プリントなどの動作モードを判定する機能、プリンタ本体12の動作を制御する機能、プリンタコントローラ11と通信する機能を備えている。操作表示部31は、画像表示およびタッチ操作が可能なタッチパネル式のオペレーションパネルとして構成されており、プリンタ本体12の動作状態や操作案内、警告、エラーなどに関する各種表示を行うと共に、ユーザからの入力操作を受け付ける機能を備えている。インターフェース部32は、プリンタコントローラ11と接続され、プリンタコントローラ11とデータの授受を行う機能を果たす。
【0029】
画像処理部33は、インターフェース部32がプリンタコントローラ11から受信した画像データやスキャナ部37が原稿を読み取って得た画像データに対して印刷出力のための各種の画像処理を施す機能、プリントジョブに基づいて画像データに各種の加工や編集を施す機能を備えている。画像メモリ34は、画像処理部33から入力された画像データを一時的に記憶する機能を果たす。ハードディスク装置35は、画像処理部33から入力された画像データを保存する機能を果たす。このハードディスク装置35は、画像メモリ34やプリンタコントローラ11の画像メモリ23よりも容量が十分大きくされており、大量の画像データが保存可能となっている。
【0030】
またハードディスク装置35には、温度センサ36が設けられている。温度センサ36は、たとえばハードディスク装置35の表面に取り付けられて装置外部の温度を検知する、あるいは、ハードディスク装置35の周辺に取り付けられて装置周辺の環境温度を検知すると共に、検知した温度情報をプリンタ本体制御部30に入力するように構成されている。また、ハードディスク装置35がSMART(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology)などの自己診断機能を搭載している場合には、温度センサ36に換えてSMARTが有する装置内部の温度検知機能を用いてハードディスク装置35の温度を検知するようにしてもよい。
【0031】
スキャナ部37は、原稿を照射する光源、原稿を幅方向に1ライン分読み取るCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサおよびこのイメージセンサが出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換するA/D変換器を備えている。また、図示省略してあるが、イメージセンサによるライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に移動させる移動機構、原稿からの反射光をイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーからなる光学部品などを備えている。
【0032】
プリンタ部38は、画像処理部33から入力された画像データに対応する画像を電子写真プロセスによって用紙上に形成して出力する。プリンタ部38は、図示しない、用紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、入力される画像データに応じて点灯制御されるLD(Laser Diode)と、LDから射出されたレーザ光を感光体ドラム上で走査させる走査ユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有する、いわゆるレーザープリンタとして構成されている。レーザ光に代えてLED(Light
Emitting Diode)で感光体ドラムを照射するLEDプリンタのほか他の方式のプリンタであってもかまわない。
【0033】
次に、通常のプリント動作とコピー動作における画像データの入力から出力までの流れを説明する。
【0034】
プリント動作の場合は、画像処理装置10のプリンタコントローラ11は、図示しない外部端末からLAN2などを通じて印刷データをネットワーク制御部21により受信すると、その印刷データを画像処理部22で画像データに展開し、画像メモリ23に一旦格納する。さらにプリンタコントローラ11は、画像メモリ23に格納した画像データを所定のタイミングで読み出し、インターフェース部24を通じてプリンタ本体12に送信する。
【0035】
プリンタ本体12は、インターフェース部32を通じてプリンタコントローラ11から画像データを受信すると、その画像データに画像処理部33で各種の画像処理を施し、画像メモリ34またはハードディスク装置35に格納する。そして印刷時に画像メモリ34またはハードディスク装置35から画像データを読み出し、画像処理部33でプリントジョブに基づき各種の加工や編集を施し、プリンタ部38に出力する。プリンタ部38は画像処理部33から入力される画像データに従ってLDの点灯制御を行って画像を用紙上に形成し、印刷出力する。
【0036】
コピー動作の場合は、画像処理装置10のプリンタ本体12は、スキャナ部37で原稿画像の読み取りを行うと、スキャナ部37から画像データが順次出力されて画像処理部33に入力される。以下この画像データは、プリント動作にてインターフェース部32から画像処理部33に入力された画像データと同様の流れで処理される。
【0037】
次に、上記のプリント動作におけるジョブモードとページモードについて説明する。
【0038】
図2はジョブモードでのプリンタコントローラ11からプリンタ本体12への画像データの流れを示し、図3はページモードでのプリンタコントローラ11からプリンタ本体12への画像データの流れを示している。
【0039】
ジョブモードとは、図2に示すようにプリンタ本体12がハードディスク装置35を使用して印刷を行う動作モードであり、詳細には、プリンタ本体12が画像データの供給元であるプリンタコントローラ11から提供される画像データをハードディスク装置35に保存してから読み出して印刷すると共に、同一の画像データに対する印刷を複数回繰り返す場合は、ハードディスク装置35から画像データを複数回読み出して使用する動作モードである。
【0040】
ページモードとは、図3に示すようにプリンタ本体12がハードディスク装置35を使用せずに画像メモリ34を使用して印刷を行う動作モードであり、詳細には、プリンタ本体12が画像データの供給元であるプリンタコントローラ11から提供される画像データをハードディスク装置35に記憶せずに順次処理すると共に、同一の画像データに対する印刷を複数回繰り返す場合は、プリンタコントローラ11から画像データの提供を複数回受ける動作モードである。
【0041】
なお、以下では複数ページの画像データのプリントジョブを複数部印刷する場合について説明するが、図2および図3では共に4ページの画像データのプリントジョブを2部印刷する場合を例示している。
【0042】
ジョブモードの場合は、プリンタコントローラ11は投入された複数ページの画像データのプリントジョブJをプリンタ本体12に1部だけ送信する。プリンタ本体12は、受信したプリントジョブJの画像データをハードディスク装置35に一旦全て格納する。ハードディスク装置35への格納後は、プリンタ本体12はプリンタコントローラ11と通信することなく、ハードディスク装置35からプリントジョブJの画像データを要求部数分だけ読み出して印刷出力する。たとえば、要求部数が2部であればハードディスク装置35からプリントジョブJの画像データを2部(J1、J2)読み出して印刷出力する。
【0043】
このように、ジョブモードではプリンタコントローラ11はプリンタ本体12にプリントジョブを1部送信するだけであり、あとはプリンタ本体12がハードディスク装置35を使用して複数部の印刷処理を継続して行う。また、プリンタ本体12による印刷処理ではハードディスク装置35から画像データが順次読み出されることになり、ハードディスク装置35は常時最高速度で動作する。また、プリンタ本体12はハードディスク装置35にプリントジョブを保存していることで、プリンタコントローラ11に依存することなく単独で、ジョブの結合、印刷する画像の色合い変更、ページ順の変更、複数ページの画像を縮小して1ページに収めるなどの編集や再印刷が可能である。
【0044】
ページモードの場合は、プリンタコントローラ11は投入されたプリントジョブの複数ページの画像データをプリンタ本体12にページ順に1ページ目から最終ページまで1ページずつ送信する(P1、P2、P3、P4)。プリンタ本体12は、ページ順に受信した画像データを画像メモリ34にページ単位で順次格納すると共に(PN)、そのページ単位の画像データを画像メモリ34から順次読み出してページ順(P1〜P4)に印刷出力する。この手順で1部の印刷出力が完了し、複数部の印刷を行う場合には、2部目以降も同様にプリントコントローラがプリンタ本体12にプリントジョブの複数ページの画像データをページ順に1ページずつ送信し(P1、P2、P3、P4)、その画像データをプリンタ本体12が受信してページ順(P1〜P4)に印刷出力する。これを要求部数が印刷されるまで繰り返す。また、印刷処理中はプリンタコントローラ11とプリンタ本体12とが繋がっている状態となる。
【0045】
このように、ページモードではプリンタコントローラ11がプリントジョブの複数ページの画像データをページ単位でプリンタ本体12に送信することを要求部数分だけ繰り返し行い、プリンタ本体12がハードディスク装置35を使用せずに画像メモリ34を使用して画像データをページ単位で保存し要求部数分の印刷処理を行う。また、ページ数が多く全ページの画像データを画像メモリ34に格納できない場合は再印刷が不可となる。さらにジョブモードでは可能である各種の編集も不可であり、プリンタコントローラ11の基で行える編集に制限される。
【0046】
次に、ハードディスク装置35の温度に基づいて画像処理装置10の制御モードを切り替える制御モード切替処理について説明する。
【0047】
背景技術で説明したように、ハードディスク装置は高温または低温になり温度が一定の閾値を超えるまたは下回ると、データ転送速度の低下を招くことがある。また、この温度要因によるデータ転送速度の低下は機種によって異なっていることがあり、中にはデータ書き込み速度が大幅に低下する機種もある。そのため、特に高解像度および高速出力を実現した画像処理装置においては、ハードディスク装置のデータ転送速度の低下による影響で、印刷出力に対してハードディスク装置からの画像データの出力が間に合わずにデータ待ち時間が発生してしまい、100%の生産性を維持できないことがある。
【0048】
そこで、本実施の形態では画像処理装置10のプリンタ本体12に搭載するハードディスク装置35の温度とデータ転送速度の関係(特性)を予め測定し、ジョブモードにおける印刷でデータ転送速度の低下を許容できる上限温度および下限温度を設定しておき、その上限/下限温度を用いて制御モードを切り替えるようにする。また、この上限/下限温度については、画像処理装置10の製造時やメンテナンス時などにオペレータがプリンタ本体12の操作表示部31から入力して設定するようにしてもよい。
【0049】
詳細には、ハードディスク装置35における上記の測定結果に基づいて設定した上限温度および下限温度をプリンタ本体制御部30が備えるメモリなどに予め記憶しておき、温度センサ36の検知したハードディスク装置35の温度が下限温度以上でかつ上限温度以下であれば、ジョブモードにおける印刷でハードディスク装置35に許容できないデータ転送速度の低下は発生しないと判断し、ジョブモードで動作させる(通常動作)。また、ハードディスク装置35の温度が上限温度を超えたときまたは下限温度を下回ったときは、ジョブモードにおける印刷でハードディスク装置35に許容できないデータ転送速度の低下が発生すると判断し、ページモードに切り替える制御を行う。
【0050】
たとえば、ハードディスク装置35が60℃を超えるまたは20℃を下回ると、ジョブモードでの印刷の生産性に影響が及ぶデータ転送速度の低下を発生するような場合には、上限温度を60℃に設定し、下限温度を20℃に設定する。また、データ転送速度の低下発生温度に所定のマージン(たとえば1℃など)を設けて上限/下限温度を設定するようにしてもよい。このようにして設定した上限/下限温度を用いて以下に説明する制御モード切替処理を実施する。
【0051】
図4は、本実施形態の画像処理装置10が実施する制御モード切替処理の流れを示している。
【0052】
プリンタ本体12のプリンタ本体制御部30は、プリンタコントローラ11のコントローラ制御部20からプリントジョブのスタートのリクエストを受けると(ステップS101;Y)、プリンタコントローラ11が対応可能な制御モードをコントローラ制御部20に問い合わせる。
【0053】
プリンタコントローラ11がページモードでしか動作できない場合は(ステップS102;Y)、コントローラ制御部20はプリンタ本体12の制御モードをページモードに設定する。これにより、プリントジョブがスタートするとプリンタコントローラ11およびプリンタ本体12は図3に示したページモードで動作し(ステップS104)、プリンタコントローラ11からページ単位で要求部数分だけ繰り返して送られるプリントジョブの画像データをプリンタ本体12が画像メモリ34による保存および読み出しによって印刷出力する。
【0054】
プリンタコントローラ11がジョブモードでしか動作できない場合は(ステップS103;Y)、コントローラ制御部20はプリンタ本体12の制御モードをジョブモードに設定する。これにより、プリントジョブがスタートするとプリンタコントローラ11およびプリンタ本体12は図2に示したジョブモードで動作し(ステップS105)、プリンタコントローラ11からジョブ単位で一度だけ送られるプリントジョブの画像データをプリンタ本体12がハードディスク装置35による保存および読み出しによって要求部数分だけ印刷出力する。
【0055】
それ以外であれば(ステップS102;N/ステップS103;N)、プリンタコントローラ11は何れの制御モードにも切り替え可能であり、この場合はプリンタ本体12のプリンタ本体制御部30は温度センサ36が検知するハードディスク装置35の温度情報(ハードディスク装置35の外部温度または装置周辺の環境温度)を取得する(ステップS106)。また、ハードディスク装置35が内部にSMARTを搭載している場合には、SMARTがリアルタイムに検知する温度情報(ハードディスク装置35の内部温度)を取得する。
【0056】
プリンタ本体制御部30は、取得した温度情報を基にハードディスク装置35の温度が下限温度を下回るか否か(ステップS107)、上限温度を超えるか否か(ステップS108)を判断する。ハードディスク装置35の温度が下限温度以上(ステップS107;N)、上限温度以下(ステップS108;N)の場合は、プリンタ本体12のプリンタ本体制御部30はプリンタコントローラ11にジョブモード要求を送る(ステップS109)。
【0057】
この要求を受けてコントローラ制御部20はプリンタコントローラ11とプリンタ本体12の制御モードをジョブモードに設定する。そしてプリンタコントローラ11およびプリンタ本体12はジョブモードで動作し(ステップS105)、プリンタ本体12がハードディスク装置35を使用して印刷出力を行う。
【0058】
また、ハードディスク装置35の温度が下限温度を下回る(ステップS107;Y)、あるいは、上限温度を超える(ステップS108;Y)場合は、プリンタ本体12のプリンタ本体制御部30はプリンタコントローラ11のコントローラ制御部20にハードディスク装置35が低速動作になることを通知する。この通知を受けてコントローラ制御部20はプリントジョブを投入した外部端末に搭載されているプリンタドライバに指示を出し、外部端末の表示装置などに、ジョブモードまたはページモードの選択を促すメッセージなどとその選択を行うための選択入力部を表示させる。
【0059】
また、選択を促すメッセージなどに併せて、以下のようなジョブモードとページモードの差異に関する表示を行うようにしてもよい。
(1)ジョブモード:印刷の生産性は低下するが編集や再印刷が可能である。
(2)ページモード:印刷の生産性は低下しないが編集や再印刷が不可である。
これにより、ユーザは自分の要求に適したモードを選択できるようになる。
【0060】
上記の表示後に、たとえば所定時間を経過してもユーザによる選択操作が行われなければ(ステップS110;N)、外部端末に搭載されているプリンタドライバはプリンタコントローラ11にページモード要求を送る(ステップS112)。この要求を受けてコントローラ制御部20はプリンタコントローラ11とプリンタ本体12の制御モードをページモードに設定する。そしてプリンタコントローラ11およびプリンタ本体12はページモードで動作し(ステップS104)、プリンタ本体12が画像メモリ34を使用して印刷出力を行う。
【0061】
また、ユーザによる選択操作が行われた場合は(ステップS110;Y)、外部端末に搭載されているプリンタドライバは選択されたモードがジョブモードであるか否かを判断する。プリンタドライバは、ジョブモードが選択された場合は(ステップS111;Y)、プリンタコントローラ11にジョブモード要求を送り、ページモードが選択された場合は(ステップS111;N)、プリンタコントローラ11にページモード要求を送る(ステップS112)。
【0062】
この要求を受けてコントローラ制御部20はプリンタコントローラ11とプリンタ本体12の制御モードをジョブモードまたはページモードに設定し、プリンタコントローラ11とプリンタ本体12がジョブモード(ステップS105)またはページモード(ステップS104)で動作するようになる。
【0063】
このように、本実施の形態に係る画像処理装置10では、プリンタ本体12のハードディスク装置35に温度要因によるデータ転送速度の低下が発生した場合は、ハードディスク装置35を使用しないページモードでプリント動作できるため、ジョブモードでのプリント動作時に発生する生産性の低下が防止される。
【0064】
また、ハードディスク装置35の温度が上限温度を超えるまたは下限温度を下回ると、プリントジョブを投入したユーザにジョブモードまたはページモードの何れを選択するかを問い合わせ、この問い合わせ後に選択されたジョブモードまたはページモードに制御モードを切り替えるようにしている。これにより、編集性を優先する場合はジョブモードを選択し、生産性を優先する場合はページモードを選択するなどユーザが任意に制御モードを選択できるようになり、利便性が向上する。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0066】
たとえば、実施の形態ではハードディスク装置35が所定温度(データ転送速度の低下する温度)になると、プリントジョブを投入した外部端末を使用するユーザにジョブモードまたはページモードの何れを選択するかを問い合わせて選択操作を促すようにしているが、このような問い合わせを行わずに自動的にページモードに切り替えるようにしてもよい。さらにハードディスク装置35の温度が所定温度の場合は、たとえば複数ページの画像を縮小して1ページに収めたりページ順を変更したりするなどの印刷の編集モードが設定されているか否かを投入されたプリントジョブに基づいてプリンタコントローラ11(コントローラ制御部20)が判断し、編集モードが設定されている場合はジョブモードに切り替え、編集モードが設定されていない場合はページモードに切り替えるようにしてもよい。
【0067】
また、実施の形態では画像データの記憶装置(記憶部)としてハードディスク装置を例に説明したが、温度要因でデータ転送速度の低下が発生するものであればハードディスク装置以外の記憶装置でもかまわない。
【0068】
また、実施の形態における画像処理装置10は、プリンタコントローラ11とプリンタ本体12とを個別に構成して専用のインターフェースにより接続した構成としているが、これらのプリンタコントローラ11とプリンタ本体12とを一体に構成してもよい。
【0069】
また、実施の形態ではプリンタ本体12に対して画像データをジョブモードまたはページモードで提供するプリンタコントローラ11を画像処理装置10の内部に設けた構成としているが、この画像データの供給元(供給装置)は画像処理装置10の外部に設けてもよい。その場合は、たとえば制御モードをジョブモードまたはページモードに切り替える制御部を備えた画像処理装置と外部の供給元とを信号線やネットワークなどで接続し、画像処理装置が自身と外部の供給元との制御モードを切り替えて、外部の供給元からジョブモードまたはページモードで画像データの提供を受けるなどの構成としてもよい。
【0070】
また画像データの供給元は、ページモードによる複数部の印刷で画像データを画像処理装置へ複数回提供する場合に、毎回、ラスタ展開により印刷データから画像データを作成して提供するようにしてもよいし、一度作成した画像データを内部の記憶部(半導体メモリあるいはハードディスク装置など)に記憶し、該記憶部から読み出して複数回の提供を行うように構成されてもよい。
【0071】
また、本発明は実施の形態で説明したスキャナ機能、コピー機能、プリンタ機能などを備えたデジタル複写機に限らず、更にファクシミリ機能やネットワークFAX機能なども備えたデジタル複合機などの他の画像処理装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理装置のジョブモードにおける画像データの流れを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理装置のページモードにおける画像データの流れを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が行う制御モード切替処理を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0073】
2…LAN
10…画像処理装置
11…プリンタコントローラ
12…プリンタ本体
20…コントローラ制御部
21…ネットワーク制御部
22…画像処理部
23…画像メモリ
24…インターフェース部
30…プリンタ本体制御部
31…操作表示部
32…インターフェース部
33…画像処理部
34…画像メモリ
35…ハードディスク装置
36…温度センサ
37…スキャナ部
38…プリンタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを記憶する記憶部と、
前記記憶部の温度を検知する温度検知部と、
前記温度検知部の検知結果に基づいて当該画像処理装置の制御モードを前記記憶部を使用する第1モードまたは前記記憶部を使用しない第2モードに切り替える制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記記憶部の温度が所定温度の場合に前記第1モードまたは前記第2モードの何れを選択するかを問い合わせ、該問い合わせ後に選択された前記第1モードまたは前記第2モードに前記制御モードを切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1モードは、画像データの供給元から提供される画像データを前記記憶部に記憶してから読み出して処理すると共に、同一の画像データに対する処理を複数回繰り返す場合は、前記記憶部から前記画像データを複数回読み出して使用する動作モードであり、
前記第2モードは、前記供給元から提供される画像データを前記記憶部に記憶せずに順次処理すると共に、同一の画像データに対する処理を複数回繰り返す場合は、前記供給元から前記画像データの提供を複数回受ける動作モードである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記温度検知部は、前記記憶部が備える内部温度検知部である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記温度検知部は、前記記憶部の外部に設けられた外部温度検知部である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−113249(P2009−113249A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286637(P2007−286637)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】