説明

画像処理装置

【課題】反射原稿と透過原稿とを、高効率かつ高精度で自動判別することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】透過原稿用のシェーディングデータを取得する場所で、透過原稿用の光源を点灯させる。原稿読取手段は、その光源からの出力を解析し、特定の閾値以上であれば、反射原稿がセットされていないと判断する。そして、透過原稿用光源を消灯させ、再度原稿読取手段は、透過原稿用光源からの出力を解析する。その結果、出力レベルが透過原稿用光源の変化に追従していれば、透過原稿用光源による読取処理が正常にできる状態と認識する。つまりユーザにより透過原稿を読取るための準備が正常に行われたと判断し、透過原稿の読取処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙原稿のような反射原稿と、フィルムのような透過原稿とを読み取る手段を有する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MFPや、Scannerをはじめとするフラットベット型の原稿読取手段を持つ画像処理装置において、紙原稿のような反射原稿を読み取る手段と、フィルムのような透過原稿を読み取る手段とを内包するものが存在する。なお、MFPは、Multi Function Printerである。
【0003】
このような画像処理装置では、通常、ユーザは、対象となる読取原稿が反射原稿であるか透過原稿であるかを指定し、読取処理の実行命令を出す必要がある。
【0004】
しかし、一部の装置では、原稿台にセットした原稿が、反射原稿であるか透過原稿であるかを自動的に判別し、その判別結果に基づいて、読み取りモードを切替え、実行する(以下、「原稿自動判別」という)機能を保持するものが存在している。これによって、ユーザのオペレーションの手間を省くことができる。
【0005】
この原稿自動判別機能を実現する装置が知られている(たとえば、特許文献1、2、3参照)。
【0006】
特許文献1記載の発明は、原稿の1つの面を照射する第一の光源を持ち、原稿を挟んで光電変換素子の反対側に、原稿のもう一方の面を照射する第二の光源を持つ原稿読み取り装置であり、原稿を透過する第二の光源からの光量を光電変換素子が検出する。そして、その白レベル値に基づいて、原稿の種別を判断する。
【0007】
特許文献2記載の発明は、原稿台の下部に設けられている光源から、積載された原稿に光を当てる。そして、反射原稿を読み取るために設けられている反射原稿用光電変換部が受光したか、それとも透過原稿を読み取るために設けられている透過原稿用光電変換部が受光したかによって、読み取り対象が反射原稿であるか透過原稿であるかを判断する。この判断に応じた読み取りモードで読取処理を実行する。
【0008】
特許文献3記載の発明は、透過原稿読取処理時に使用される透過原稿読取ガイドが、原稿台上に載置されているか否かを判断することによって、ユーザがどちらの原稿を読み込もうとしているかを判断する。そして、この判断に応じた読み取りモードで読取処理を実行する。
【特許文献1】特公平6−5868号公報
【特許文献2】特許第3187184号公報
【特許文献3】特開2004−64332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来例では、誤認識による読取ミスが発生する場合がある。また、自動判別処理に時間がかかり、読取処理の全てが完了するまでに、通常よりも長い時間がかかり、結局、ユーザが自身で選択した方が効率よく作業できる場合が多い。
【0010】
特許文献1、2記載の方法では、各光源からの照射光を原稿に当て、それに対する原稿からの反応がどうなるかで判断する。このために、透過原稿を読み取る際に、透過原稿に光を直接当てることができる位置に必ず移動し、判断処理を行わなければならない。この透過原稿に、照射光が直接当る場所まで移動すると、判別処理のためだけの動作のために、メカ動作が入るので、時間が多くかかり、それを短縮する方法も無い。
【0011】
加えて、特許文献1記載の発明においては、原稿を挟んで照射される光量を用いて判断するので、原稿の内容、状態や光源の照射光の状態によって、取得できる白レベル値が変動するので、誤認識し易いという問題がある。
【0012】
また、特許文献3記載の発明では、フィルムガイドの形状を識別することによって、原稿台に置かれている原稿の種別を判断する。フィルムガイドを読み取ったときのパターンを認識するので、周辺環境に依存することなく、認識でき、上記の2つの特許文献記載の方法よりも、安定して判別することができる。しかし、特許文献3記載の発明では、パターン認識に必要な領域の画像データを取得するという特別の処理を実行する必要があるという問題がある。
【0013】
さらに、フィルムガイドと類似の文字、図、模様が記載されている反射原稿が、原稿台に設置されると、その原稿を反射原稿として認識することは不可能である。このために、より特徴的な形状にし、また、認識用のマークを設けることによって、認識率を上げるようにしている。これは、装置のコストアップにつながるという問題がある。
【0014】
本発明は、反射原稿と透過原稿とを、高効率かつ高精度で自動判別することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、原稿読取指示があると、透過原稿読取時の透過原稿の配置範囲外で、透過光源の照射範囲内の判断位置に、読取手段を走査し、透過光源の光量を変化させる。そして、光量の変化に対応する読取手段の出力の変化に応じて、原稿が透過原稿であるか反射原稿であるかを判別する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像処理装置において、反射原稿と透過原稿とを、高効率かつ高精度で判別することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明を実施するための最良の形態は、次の実施例である。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1である画像処理装置100を示すブロック図である。
【0019】
画像処理装置100は、ネットワーク、またはUSB等、ローカルな環境で接続されている外部計算機(PC)200と通信し、データをやりとりするためのインタフェースを持ち、MFP等によって構成されている。また、画像処理装置100は、反射原稿と透過原稿とを選択的に読み取る装置である。
【0020】
さらに、画像処理装置100は、制御部(CPU)1と、ROM2と、RAM3と、バッファメモリ4と、操作部5と、読取処理部6と、記録処理部8と、記録部9と、表示部10と、符号復号化処理部11と、ネットワーク制御部12と、読取部20とを有する。
【0021】
制御部(CPU)1は、ROM2に記憶されているプログラムに従って画像処理装置100の全体を制御する制御部である。
【0022】
ROM2は、制御部1の制御プログラムやオペレーティングシステム(OS)プログラム等が格納されている。制御部1は、ROM2に格納されている制御プログラムに従って、画像処理装置100の動作を制御する。実施例1の制御用設定値、パラメータも、ROM2に保存されている。
【0023】
RAM3は、演算処理や、ユーザが登録した設定値や画像処理装置100の管理データ等を保存等する。実施例1の各プロセスにおいて保持すべき出力値、パラメータ等をもRAM3が保存する。バッファメモリ4は、ネットワークを通じて受信した画像データやデータパケットを蓄積する。操作部5は、各種入力キーで構成され、ユーザが各種入力操作を行う。
【0024】
読取処理部6は、読取部20が原稿を光学的に読み取り、電気的な画像データに変換した画像信号を、2値化処理、中間調処理等の各種画像処理を施し、高精細な画像データを出力する。読取処理部6は、ROM2に格納されている制御プログラムのスキャン制御タスクプログラムによって制御される。
【0025】
読取部20は、CCD、CISのような光電変換素子と、LED等の光源(以下、「反射原稿用光源」という)と、ミラー、レンズ等によって構成されている読取ユニット(以下、「CCD22」という)を有する。さらに、ネガ写真フィルム、ポジ写真フィルム等の透過原稿を読込むことが可能な構成を有し、専用の光源(以下、「透過原稿用光源」という)27を含む特殊なユニットを保持する。このユニットにおいて、複数のフィルムを特定の位置に固定するためのフィルムガイドユニットや、フィルムガイドユニットによって特定位置に固定されたフィルム全てに、十分な光量を供給できる場所に透過原稿用光源27が設置されている。透過原稿用光源27からの照射光は、読取対象となるフィルム30を透過し、CCD22に照射される。そして、これらの光源は、制御部1が、それぞれを自由に点灯、消灯することができる。
【0026】
記録処理部8は、記録部9が画像データを記録するために、記録画像データに、解像度変換処理やスムージング処理を行う。記録処理部8は、ROM2に格納されている制御プログラムのプリンタ制御タスクプログラムによって制御されている。記録部9は、レーザビームプリンタやインクジェットプリンタ等で構成されている。
【0027】
表示部10は、LED、LCD等で構成され、画像処理装置100が保持する各機能を設定するための表示や、各種設定のための表示、画像処理装置100の動作状況の表示等を行う。処理に何らかの不都合が発生すると、表示部10を用い、画像処理装置100の状態を、ユーザに通知する。
【0028】
符号復号化処理部11は、読取処理部6と読取部20とが作成した画像データを、JPEG等の圧縮伸張する符号復号化処理を行う。
【0029】
ネットワーク制御部12は、IEEE802.3等によって規定されているネットワーク等を経由し、外部計算機200との間で通信制御を行う。また、ネットワーク制御部12は、TCP/IP等の規格に沿ってプロトコル制御を行い、画像処理装置100が取得したアドレスを宛先にして、データパケットの受信と、画像処理装置100から外部計算機200へのデータパケットの送信とを行う。そして、データパケットを、外部計算機200から受信すると、制御部1に通知する。
【0030】
図2は、読取部20を、より詳細に示す図である。
【0031】
読取部20は、フラットベット型の構成を持ち、紙原稿等の反射原稿、フィルム30等の透過原稿を読み取る手段を保持している。
【0032】
読取部20は、プラテンガラス21と、CCD22と、反射原稿用光源23と、フィルムガイド24と、原稿台25と、圧板26と、透過原稿用光源27と、圧板シート29とを有する。
【0033】
プラテンガラス21は、読み取り対象を載置する。CCD22は、光学的に入力された信号を、電気的なデータ(以下、「入力データ」という)に変換し、画像処理装置100に取り込む。
【0034】
反射原稿用光源23には、LED光源や蛍光灯等が使用されることが多く、その光源の種類によっては、気温等の周辺環境によって出力が安定しないことが度々ある。
【0035】
フィルムガイド24は、プラテンガラス21上の一定の場所に、透過原稿(フィルム30)を固定するために使用される。スリーブフィルム、マウントフィルム、ブローニーフィルム等、フィルム30の種類に合わせて形状が異なり、種類によってユーザが使い分ける必要がある。原稿台25は、プラテンガラス21、CCD22を移動させるためのモータ等によって構成されている。加えて、外光が入らないプラテンガラス21上ではない部分に、反射原稿用のシェーディングデータを取得するために、白シートが設置されている。この白シートの設置位置に、CCD22が移動することによって、透過原稿用光源27からの照射光も、CCD22には入らない。また、反射原稿読み取り時にも、透過原稿の読み取り時にも、黒シェーディングデータは、この位置で取得される。
【0036】
圧板26は、原稿台25に置かれている原稿を抑え付け、開閉することができる原稿カバーである。また、読み取り時に外光からの影響を受けないように、上記外光を遮り、原稿の種別に関わらず、正確な処理を行い正確な画像データを取得するためには、読取処理実行時に、圧板26が閉じられている必要がある。
【0037】
透過原稿用光源27は、圧板26に付随されている。透過原稿用光源27は、圧板26が閉じられている状態で、フィルムガイド24に固定されている透過原稿(フィルム30)を透過し、CCD22に、垂直に光が照射されるような位置に設置されている。透過原稿用光源27にも、反射原稿用光源23と同じように、LED光源や蛍光灯等が使用されることが多く、透過原稿用光源27の種類によっては、気温等の周辺環境によって出力が安定しないことが度々ある。
【0038】
シェーディングデータ取得用窓28は、透過原稿読取時に、白シェーディングデータを取得するためにフィルムガイド24に設けられている。シェーディングデータ取得用窓28には、プラテンガラス21以外の遮蔽物が置かれることがなく、透過原稿用光源27から直接、CCD22に光が照射され、入力データとなる。
【0039】
圧板シート29は、圧板26に着脱可能であり、反射原稿読取時に装着され、上記反射原稿を上記透明原稿台に押圧する押圧板の例である。透過原稿読取時に取り外される。
【0040】
プラテンガラス21は、反射原稿または透過原稿を載置する透明原稿台の例である。
【0041】
CCD22は、透明原稿台を透して、上記反射原稿または上記透過原稿の画像を読み取る読取手段の例である。
【0042】
上記透明原稿台に沿って上記読取手段を走査する走査手段(図示せず)が設けられている。
【0043】
透過原稿用光源27は、上記原稿カバーに設けられ、上記透過原稿を照明し、上記反射原稿を読み取る場合、上記押圧板で覆われる透過光源の例である。
【0044】
制御部1は、原稿読取指示があると、上記透過原稿読取時に、上記透過原稿の配置範囲外で、上記透過光源の照射範囲内の判断位置に、上記走査手段が上記読取手段を走査する。そして、上記透過光源の光量を変化させ、上記光量の変化に対応する上記読取手段の出力の変化に応じて、原稿が透過原稿であるか反射原稿であるかを判断する判断手段の例である。
【0045】
なお、上記判断位置は、上記透過原稿読取のシェーディング補正データ取得位置である。また、透過原稿ガイド板を有し、上記判断位置は、上記透過原稿ガイド板に形成されている窓領域に対応する位置である。
【0046】
さらに、点灯時閾値と消灯時閾値とを記憶する。また、上記判断位置において、上記透過光源の点灯時における上記読取手段の出力が、上記点灯時閾値よりも大きく、かつ、上記透過光源の消灯時における上記読取手段の出力が、上記消灯時閾値よりも小さい場合に、透過原稿読取を開始する。
【0047】
しかも、上記透過原稿読取を開始する場合、上記判断位置でのシェーディング補正データを取得する。
【0048】
図3は、フィルムガイド24を示す図であり、そのシェーディングデータ取得用窓28周辺の概略を示す図である。以下の原稿判断の説明で、CCDの出力の最大値と称する値は、図3の読み込み範囲で示す矩形領域をCCDで読み取ったときの、最大値を示す。圧板シート等で覆われていなければ、シェーディングデータ取得用窓28の領域では、透過原稿用光源27からの出射光が、そのままCCDに入射する。フィルムガイドで覆われている部分には入射しない。このときに、CCDの出力値の最大値は、シェーディングデータ取得用窓28の領域の読取信号の最大値が相当する。なお、画素毎のばらつきを考慮して、最大値を取っている。また、図3の読み込み範囲全体をCCD22で走査読み取りしているが、シェーディングデータ取得用窓28の中央付近のみを読み取った信号の最大値を用いて判断することもできる。
【0049】
従来の原稿自動検知では、CCDが持っている反射原稿用光源を用い、読み取り範囲の画像データを取得する。そして、その画像データを解析し、特定パターンと一致していれば、フィルムガイドがプラテンガラス上に設定されていると判断し、透過原稿の読取処理を行う。判別用白マーク31は、フィルムガイドの種類の判別に用いられる。
【0050】
図4は、実施例1における原稿自動判別処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
以下では、反射原稿用光源23と透過原稿用光源27とに、出力の応答性に優れているLED光源を使う。
【0052】
画像処理装置100は、外部計算機(PC)200、または操作部5を用いたユーザからの指示に従い、原稿の読取処理を実行する。その際に、反射原稿の読取処理を実行するか、透過原稿の読取処理を実行するかについて、明確な指定がされていなければ、画像処理装置100は、自動的に原稿自動判別処理を実行し、その判別結果に基づいた原稿読取処理を開始する。
【0053】
画像処理装置100の制御部1は、読取処理部6に、反射原稿用光源23の消灯、透過原稿用光源27の消灯を指示する(S1)。消灯後に、CCD22は、原稿台25に設置されている反射原稿用白シェーディングデータ取得位置である白シート設置位置まで移動し、黒シェーディングデータを取得する(S2)。
【0054】
この黒シェーディングデータは、反射原稿、透過原稿のどちらを読み取るときであっても、同一の物を使用することができる。黒シェーディングデータの取得後に、透過原稿用光源27を点灯し(S3)、透過原稿用シェーディングデータ取得位置であるフィルムガイド24の読み込み範囲まで、CCD22を移動する(S4)。続いて、図3の読み込み範囲を読み取りながら、CCDの出力をチェックし、最大値を得る(S5)。この読み込み範囲の移動が終了した後に(S6)、制御部1は、読み込み範囲での入力データの最大値を算出し最大値Aとする。
【0055】
そして、上記最大値Aが、ROM2に保存されている閾値イ(図5参照)よりも大きいかどうかを比較する(S7)。上記最大値Aが、閾値イよりも大きければ、透過原稿用光源27からの照射光が、CCD22に入力されている状態であると認識する。つまり、透過原稿を読み取るために、ユーザが、フィルムガイド24とフィルム30とを、プラテンガラス21に設置したか、または、圧板26が開けられ、強い外光が、プラテンガラス21を透してCCD22に照射されている状態であると判断する。
【0056】
この場合、透過原稿用光源27の消灯処理へ移行する(S8)。また、S7において小さいと判断されると、透過原稿用光源27からの照射光を妨げる物があると認識する。つまり、圧板シート29または反射原稿が存在するか、または、圧板26が開けられている状態であると判断する。この場合、反射原稿読取処理のために、透過原稿用光源27の消灯処理(S15)へ移行する。
【0057】
また、S7の判断が終了した後に、透過原稿用光源27の消灯処理を実行し(S8)、図3の読み込み範囲を読み取って、シェーディングデータ取得用窓28からCCD22への入力データを、再度取得する。制御部1は、この入力データの最大値を算出し、最大値Bとする。その最大値Bが、ROM2に保存されている閾値ロよりも小さいかどうかを比較する(S9)。小さければ、透過原稿用光源27の状態変化に追従して、入力が変化していると認識する。
【0058】
つまり、圧板シート29が外された圧板26が閉じられ、正常な透過原稿読取処理を実行できる状態であると判断する。この判断後に、透過原稿用光源27の点灯処理(S10)へ移行する。また、S9で大きいと判断されると、透過原稿用光源27の状態変化に追従して入力が変化していないと認識する。つまり、圧板26が開かれ、強めの外光が入っている状態であると判断する。そして処理を中断し、表示部10に、ユーザに対する警告を表示する(S14)。
【0059】
S9の判断をした後に、透過原稿用光源27の点灯処理を、S10において実行した場合、シェーディングデータ取得用窓28の位置で、CCDの出力の最大値を得、最大値Cとする。最大値Cが、閾値イより大きく、透過原稿の読取処理に必要十分な出力が、透過原稿用光源27から照射されていることを確認する(S11)。CCD22における入力データが、S8で消灯処理前と同レベルになったことを確認した後に、透過原稿用の白シェーディングデータを取得し(S12)、透過原稿読取処理を実行する(S13)。
【0060】
一方、S7の判断をした後に、S15で透過原稿用光源27の消灯処理を実行すると、これと同時に、反射原稿用光源23の点灯処理を行い(S15)、図3の読み込み範囲を読み取って、CCD22への入力データを取得する。制御部1は、入力データの最大値を算出し、最大値Dとする。この最大値DがROM2に保存されている閾値イよりも大きいかどうかを比較する(S16)。
【0061】
大きければ、圧板シート29が装着されていると見なすことができる。よって、プラテンガラス21上に反射原稿が設置されていると判断し、反射原稿用白シェーディングデータの取得位置、つまり原稿台25に設置されている白シート設置位置まで移動する(S17)。この移動後に、反射原稿用白シェーディングデータの取得処理を実行し(S18)、反射原稿読取処理を実行する(S19)。
【0062】
また、S16での判断で、小さいと判断されれば、反射原稿用光源23の状態変化に追従して、入力が変化していない、つまり圧板26が開けられている状態であると判断する。そして、処理を中断し、ユーザへ警告する表示を、表示部10に出す(S14)。
【実施例2】
【0063】
実施例2では、反射原稿用光源23と、透過原稿用光源27とに、LED光源ほど応答性に優れない蛍光灯のような光源を使う。
【0064】
実施例1では、S9、S11、S16の分岐の判断で、CCD22の出力の最大値を閾値イ、閾値ロと比べるが、実施例2では、最大値の変化量を変化量閾値と比べる。変化量閾値も、閾値イ、ロと同様に、ROM2に保存されている。
【0065】
実施例1の図4のフローチャートと異なる部分を以下、1)、2)、3)に示す。
【0066】
1)S9で、最大値Aと最大値Bとを比較し、最大値Aに対して最大値Bが、変化量閾値ハよりも大きく下回っていれば、S10へ進み、差分が変化量閾値ハよりも小さければ、S14へ進む。
【0067】
2)S11で最大値Bと最大値Cとを比較し、最大値Bに対して、変化量閾値ハ以上大きくなるのを待ってから、S12に進む。
【0068】
3)S16で、最大値Aと最大値Dを比較し、最大値Aに対して最大値Dが変化量閾値ハ以上大きい場合は、S17へ、差分が変化量閾値ハより小さい場合はS14へ進む。
【0069】
他の部分は、実施例1と同じである。
【0070】
図5は、透過原稿読取処理を実行することができると判断できる場合(S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13)に、制御部1がCCD22から取得できる出力例を示す図である。
【0071】
S7で、最大値Aを取得するが、この最大値が、閾値イを超えていれば、S8で、透過原稿用光源27が消灯される。この際に、正常な設定であれば、応答の遅い光源が、透過原稿用光源27に用いられていても、CCD22への照射光は、変動する。
【0072】
この時の正常な設定は、圧板シート29が外された圧板26が閉じられ、フィルムガイド24が、原稿台に設置されている状態を指す。消灯し、透過原稿用光源27の出力が0にならないうちに、S9の最大値Bを取得しても、最大値Aと最大値Bとの差分(図5に示す変動値AB)が得られる。変化量閾値ハと比較することによって、透過原稿用光源27からの出力光を、CCD22が受光しているかどうかを識別することができる。
【0073】
その後に、実際の読取処理を実行する場合、CCD22から、十分な出力がなければ、適切な出力画像を取得することができないので、S8における消灯処理を実行する前の出力レベルに到達するまで、読取処理を開始しないようにすることが必要である。
【0074】
実施例2では、S16で、変化量閾値ハを超える差分があるかどうかを判断しているが、閾値イを超えたかどうかを判断するようにしてもよい。このようにしても、上記と同様の効果が得られる。
【0075】
図6は、図4のフローチャートにおける出力チェック(S5)を詳細に示すフローチャートである。
【0076】
図3の読み込み範囲を読み取るときに、フィルムガイド24のシェーディングデータ取得用窓28へ到達する前のCCD22を移動する際に、図3に示す形状を持つフィルムガイド24であれば、それを識別することができる。この場合、CCD22が移動中、フィルムガイド24によって透過原稿用光源27からの照射光が遮られているかどうかに基づいて判断する。
【0077】
移動中のCCD22への入力のライン毎の最大値を算出し、この最大値と、ROM2に保存されている閾値イとを比較する(S51)。上記最大値が閾値イよりも小さければ、フィルムガイド24がプラテンガラス21上に設置されている可能性があるので、移動を継続する(S6)。
【0078】
上記最大値が閾値イよりも大きければ、フィルムガイド24がプラテンガラス21上に設置されていないと判断できるので、CCD22が移動を中断し、透過原稿用光源27の消灯と、反射原稿用光源23の点灯処理(S15)とに移行することができる。
【0079】
上記のように、反射原稿と透過原稿とを読み取る手段を持つ画像処理装置において、反射原稿用光源を消灯し、透過原稿用光源27を点灯し、透過原稿用のシェーディングデータを取得する位置に、CCD22を移動する。そして、CCD22が、透過原稿用光源27からの入力データを取得する。このデータが一定以上のレベルであれば、反射原稿を読み取る準備がされていない状態であると判断し、読取処理が終了するまで、反射原稿の読取処理を実行しない。次に、反射原稿用光源の出力の状態を変化させ、これに従い、CCD22の入力データが追従していることを確認する。
【0080】
CCD22の入力データが追従していれば、透過原稿用光源27からの入力が、適切な状態でユーザから読取実行が指示されたと判断し、透過原稿の読取処理を実行する。CCD22の入力データが追従していなければ、透過原稿を読み取る準備がされていないと判断する。
【0081】
パターンマッチングによる方法では、透過原稿であると誤判定するような反射原稿が原稿台にセットされていても、原稿が透過原稿であるか反射原稿であるかを正確に判別することができる。また、シェーディングデータ取得位置において、原稿が透過原稿であるか反射原稿であるかを自動判別するので、原稿の状態、記載内容に依存することなく、正確に判断することができる。
【0082】
さらに、透過原稿用光源27の出力の変動によって、装置の状態を確認するので、外光による誤認識を防ぐことができる。しかも、応答が遅い透過原稿用光源27であるために出力が安定しない状況でも、原稿が透過原稿であるのか反射原稿であるのかを正確に判別することができる。
【0083】
そして、判断後に、透過原稿読取処理を実行する場合、CCD22を余計に移動させずに、シェーディングデータの取得処理、読取処理へ移行し、処理を高速化することができる。
【0084】
上記のように、反射原稿と透過原稿を読み取る手段を持つ画像処理装置において、原稿が反射原稿であるか透過原稿であるかを自動で判別する際に、まず、反射原稿用の光源を消灯する。次に、透過原稿用光源27を点灯させ、透過原稿用のシェーディングデータ取得場所まで移動する。読取手段は、その場所で透過原稿用光源27への照射光から得た入力データを解析し、入力データの最大値を取得する。この最大値が、予め規定していた値よりも大きければ、読み取るべき原稿が反射原稿ではないと判断する。次に、透過原稿用光源27を消灯し、入力データを再度取得し、入力データの最大値を算出する。この最大値が、予め規定していた値よりも小さければ、ユーザによる透過原稿を読み取る準備が正常に行われていると判断し、透過原稿の読取処理を実行する。
【0085】
上記のようにすることによって、原稿台に、反射原稿がセットされていれば、透過原稿用光源27からの光が、反射原稿に妨げられているので、画像処理装置が取得した入力値が、特定の値よりも小さくなり、反射原稿を識別することができる。一方、原稿台に、透過原稿がセットされていれば、シェーディングデータ取得位置において、遮蔽物が無い状態で、透過原稿用光源27からの入力が得られる。これによって、画像処理装置が取得した入力値は、特定の値よりも大きくなるので、原稿が透過原稿であることを識別できる。
【0086】
さらに、原稿を識別した後に、透過原稿用光電を一度消灯し、再点灯し、その際の入力値の変化を監視し、透過原稿用光源27の変化に入力値が追従していることを認識することによって、透過原稿を正常に読み取ることができるかどうかを判断することができる。
【0087】
したがって、従来例のように判断処理のために余計な読取処理が不要であり、CCDを透過原稿まで移動する等の無駄な処理が無くなる。そして、透過原稿が原稿台にセットされていることを認識し、透過原稿の読取処理を実行する際、読み取り手段は、待機位置に戻る等、余計な処理をせずに、シェーディングデータの取得処理に入るので、読取処理を高速化することができる。
【0088】
さらに、透過原稿を認識するためのパターンマッチングの比較対象と類似の反射原稿が原稿台にセットされた場合でも、原稿を正確に識別することができる。そして、透過原稿用のシェーディングデータ取得位置を利用すると、判断時に、原稿のような不特定多数の遮蔽物の無い状態で認識できる。これによって、原稿の種類、その記載内容、装置の周辺環境やセンサのレベルによる入力値の変動に依存せずに、原稿を自動的に判別することができる。
【0089】
また、透過原稿用光源27に供給する電圧を自由に制御できる手段を画像処理装置が持っていれば、上記処理において、透過原稿用光源27を全て消灯させる必要はない。電圧を切替え、その際の光量変化による画像処理装置への入力値の変化が、それに追従しているかどうかを識別することによって、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例1である画像処理装置100を示すブロック図である。
【図2】読取部20を、より詳細に示す図である。
【図3】フィルムガイド24を示す図であり、そのシェーディングデータ取得用窓28周辺の概略を示す図である。
【図4】実施例1における原稿自動判別処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】実施例2の判断処理で、透過原稿読取処理を実行ことができると判断できる場合に、制御部1がCCD22から取得できる出力例を示す図である。
【図6】図4のフローチャートにおける出力チェック(S5)を詳細に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
101…画像処理装置(MFP)、
1…制御部(CPU)、
2…ROM、
3…RAM、
6…読取処理部、
20…読取部、
200…外部計算機(PC)、
21…プラテンガラス、
22…CCD、
23…反射原稿用光源、
24…フィルムガイド、
25…原稿台、
26…圧板、
27…透過原稿用光源、
28…シェーディングデータ取得用窓、
29…圧板シート、
30…フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射原稿と透過原稿とを選択的に読み取る画像処理装置において、
上記反射原稿または上記透過原稿を載置する透明原稿台と;
上記透明原稿台を透して、上記反射原稿または上記透過原稿の画像を読み取る読取手段と;
上記透明原稿台に沿って上記読取手段を走査する走査手段と;
上記画像処理装置を開閉し、上記透明原稿台を覆う原稿カバーと;
上記原稿カバーに着脱可能であり、上記反射原稿を上記透明原稿台に押圧する押圧板と;
上記原稿カバーに設けられ、上記透過原稿を照明し、上記反射原稿を読み取る場合、上記押圧板で覆われる透過光源と;
原稿読取指示があると、上記透過原稿の読取時における上記透過原稿の配置範囲外で上記透過光源の照射範囲内の判断位置に、上記走査手段が上記読取手段を移動し、上記透過光源の光量を変化させ、上記光量の変化に対応する上記読取手段の出力の変化に応じて、原稿が透過原稿であるか反射原稿であるかを判断する判断手段と;
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記判断位置は、上記透過原稿の読取のシェーディング補正データ取得位置であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
透過原稿ガイド板を有し、
上記判断位置は、上記透過原稿ガイド板に形成されている窓領域に対応する位置であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1において、
点灯時閾値と消灯時閾値とを記憶し、
上記判断位置において、上記透過光源の点灯時における上記読取手段の出力が、上記点灯時閾値よりも大きく、かつ、上記透過光源の消灯時における上記読取手段の出力が、上記消灯時閾値よりも小さい場合に、透過原稿読取を開始することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1において、
変化量閾値を記憶し、
上記判断位置において、上記透過光源の点灯時における上記読取手段の出力と、上記透過光源の消灯時における上記読取手段の出力との差が、上記変化量閾値よりも大きい場合に、透過原稿読取を開始することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1において、
上記透過原稿の読取を開始する場合、上記判断位置でのシェーディング補正データを取得することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
反射原稿または透過原稿を載置する透明原稿台と、上記透明原稿台を透して、上記反射原稿または上記透過原稿の画像を読み取る読取手段と、上記透明原稿台に沿って、上記読取手段を走査する走査手段と、画像処理装置を開閉し、上記透明原稿台を覆う原稿カバーと、上記原稿カバーに着脱可能であり、上記反射原稿を上記透明原稿台に押圧する押圧板と、上記原稿カバーに設けられ、上記透過原稿を照明し、上記反射原稿を読み取る場合、上記押圧板で覆われる透過光源とを有する画像処理装置の制御方法において、
原稿読取指示があると、上記透過原稿の読取時における上記透過原稿の配置範囲外で、上記透過光源の照射範囲内の判断位置に、上記走査手段が上記読取手段を移動する走査工程と、
原稿読取指示があると、上記透過光源の光量を変化させる光量変化工程と、
上記光量の変化に対応する上記読取手段の出力の変化に応じて、原稿が透過原稿であるか反射原稿であるかを判断し、記憶装置に記憶する判断工程と、
を有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−16888(P2009−16888A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172841(P2007−172841)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】