説明

画像処理装置

【課題】システムコストを安価に抑えるとともに、光学中心と撮像素子の撮像領域中心とが一致していない場合においても画像の歪みを正確に補正して高品質な画像を生成する画像処理装置を提供する。
【解決手段】光学系を介して撮像素子に結像した画像を処理する画像処理装置であって、像高を複数の領域に分割した場合における光学系に応じた各分割点の収差量と補間パラメータとを生成する制御部と、光学中心を原点とする座標系に変換する第1座標変換部61と、第1座標変換部61による座標変換後の各画素座標における収差量を算出する収差量算出部62と、収差量に基づいて各画素座標の位置を補正する座標算出部63と、補正された各画素座標について、光学中心を原点とする座標系から撮像素子の撮像領域における任意の点を原点とする座標系に変換する第2座標変換部64と、第2座標変換部64による座標変換後の各画素座標に対応する画素値を算出する画素値算出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置に用いられ、光学レンズによって生じる収差を補正する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ等の撮像装置においては、光学レンズの収差に起因する課題があり、収差の一つとして歪曲収差がある。この歪曲収差は、画像の中心付近と周辺部での結像倍率が異なるために発生する。光学設計上の工夫により、歪曲収差を低減することは可能であるが、歪みの影響を完全に回避することは困難である。そこで、画像処理装置におけるデジタル画像処理により、光学レンズで生じた歪曲収差を補正する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、低コストで画像の歪みを補正し、高品質な画像をリアルタイムに生成するための画像処理装置、画像処理システム、及び画像処理方法が記載されている。この画像処理装置は、歪みを持った画像について、複数の格子に分割し、各格子単位の歪みを持った画像を、各格子単位の補正ベクトルに応じて補正する画像補正手段と、歪み補正対象の画像の大きさに対応する画像について、各格子単位で予めエンコードされた格子ごとの補正ベクトルをデコードし、該デコードされた各格子単位の補正ベクトルを画像補正手段へ供給するデコード手段とを備えている。
【0004】
この画像処理装置によれば、撮像された光学歪みを伴う画像に対して水平及び垂直方向に1次元補間演算が施され、補正ベクトルが効率的に利用されるため、静止画像だけでなくリアルタイム処理が必要な動画像に対する歪み補正が簡易な構成により実現され、歪みの無い高画質な画像を容易に得ることができる。
【0005】
また、信号処理によりリアルタイムに画像の歪みを補正することができるため、レンズ設計の自由度を高めることができ、レンズの小型化やレンズの低コスト化を容易に実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−80545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の画像処理装置は、全ての格子単位に対応する補正ベクトルをデータとして備えている必要があるので、システムコストを安価に抑えるのが困難であるという問題が生じる。
【0008】
また、従来の画像処理装置は、一般的に光学中心と撮像領域中心とが一致するように設計されており、画像の歪みを補正する際にも両者が一致していることを前提とした補正を行うのが通常である。しかしながら、製造ばらつきが大きい場合に、大量生産された画像処理装置の中には光学中心と撮像領域中心がずれた製品も存在するため、画像の歪みに対する補正が不正確となる可能性もある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、システムコストを安価に抑えるとともに、光学中心と撮像素子の撮像領域中心とが一致していない場合においても画像の歪みを正確に補正して高品質な画像を生成する画像処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、上記課題を解決するために、光学系を介して被写体からの光を撮像して画像データを生成する撮像素子と、前記光学系により被写体が結像する領域の像高を複数の領域に分割し、前記領域毎に分割点を設定して、前記各分割点の収差量と前記分割点間の像高の収差量を求めるために必要な補間パラメータとを生成する制御部と、前記画像データの各画素座標について、前記撮像素子の撮像領域における任意の点を原点とする座標系から前記光学系により被写体が結像する領域の光学中心を原点とする座標系に変換する第1座標変換部と、前記制御部により生成された前記各分割点の収差量と補間パラメータとに基づいて、前記第1座標変換部による座標変換後の画像データの各画素座標における収差量を算出する収差量算出部と、前記収差量算出部により算出された各画素座標における収差量に基づいて、前記第1座標変換部による座標変換後の画像データの各画素座標の位置を補正する座標算出部と、前記座標算出部により算出された座標位置補正後の画像データの各画素座標について、前記光学中心を原点とする座標系から前記撮像素子の撮像領域における任意の点を原点とする座標系に変換する第2座標変換部と、前記撮像素子により生成された画像データにおける複数の画素を使用して、前記第2座標変換部による座標変換後の画像データの各画素座標に対応する画素値を算出する画素値算出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、システムコストを安価に抑えるとともに、光学中心と撮像素子の撮像領域中心とが一致していない場合においても画像の歪みを正確に補正して高品質な画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1の形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態の画像処理装置の収差補正部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1の形態の画像処理装置のリード座標計算部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1の形態の画像処理装置における歪曲収差補正前の座標を計算する方法について説明する図である。
【図5】本発明の実施例1の形態の画像処理装置における光学中心と撮像素子の撮像領域中心が異なる場合について説明する図である。
【図6】本発明の実施例1の形態の画像処理装置において光学中心の水平方向及び垂直方向の座標測定方法について説明する図である。
【図7】本発明の実施例1の形態の画像処理装置において光学中心の水平方向及び垂直方向の座標測定方法の1例について説明する図である。
【図8】本発明の実施例1の形態の画像処理装置の動作を示すフローチャート図である。
【図9】本発明の実施例2の形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施例2の形態の画像処理装置における焦点距離と収差量との関係を示す図である。
【図11】本発明の実施例2の形態の画像処理装置の動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の画像処理装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1の画像処理装置の構成を示すブロック図である。この画像処理装置は、図1に示すように光学系5を介して撮像素子10に結像した画像を処理する装置であり、撮像素子10、信号処理部20、収差補正部30、及び制御部40を備えている。
【0015】
光学系5は、例えば交換可能な複数のレンズにより構成され、被写体からの反射光を集光して撮像素子10に結像させる。撮像素子10は、結像された画像を画像データに変換して出力する。ここで、例えば画像データとは画素毎のRed、Green、Blueといった色データとする。
【0016】
信号処理部20は、撮像素子10により出力された画像データ(色データ)に基づいて、Red、Green、Blueといった色データをY(輝度)、C(色差)データに変換して出力する。
【0017】
なお、信号処理部20は、Y(輝度)、C(色差)データに変換する代わりにRed、Green、Blueといった色データをそのまま出力する構成としてもよい。その場合には、後述する収差補正部30が出力された色データに基づいて収差補正を行う。しかしながら、信号処理部20がY(輝度)、C(色差)データ形式に変換する構成とする場合には、データ量を削減して必要とするメモリを少なくすることができるという利点を有する。
【0018】
制御部40は、像高を複数の分割点に分割した場合に、光学系5に応じた各分割点の収差量と分割点間の像高の収差量を求めるのに必要な補間パラメータとを生成し、後述する収差補正部30内の補間パラメータレジスタ31に書き込む。ここで、収差量とは、歪曲収差補正前の像高を歪曲収差補正後の像高で割ったものである。
【0019】
なお、光学系5に応じた各分割点の収差量及び補間パラメータを生成する方法は、どのようなものでもよい。例えば、制御部40は、光学系の種類に応じた収差量や補間パラメータ等の情報をフラッシュメモリやROM(Read On Memory)等の記憶手段にテーブルとして予め記憶しており、光学系5に搭載されたROMをリードすることによって搭載された光学系5を識別し、テーブルを参照して現在の光学系5に応じた収差量や補間パラメータを生成することができる。また、光学系5にROMが搭載されていない場合や制御部40が光学系5に搭載されたROMをリードする手段を持たない場合において、制御部40は、ユーザの外部操作等に基づいて光学系5の種類を特定する構成でもよい。
【0020】
収差補正部30は、入力された画像データの歪曲収差を補正し、補正後の画像データを出力する。図2は、本実施例の画像処理装置の収差補正部30の詳細な構成を示すブロック図である。収差補正部30は、図2に示すように、補間パラメータレジスタ31、リード座標計算部32、データライト部33、画像メモリ34、データリード部35、及び画素補間部36により構成される。
【0021】
補間パラメータレジスタ31は、制御部40により出力された各分割点の収差量と補間パラメータとを記憶する。
【0022】
リード座標計算部32は、補間パラメータレジスタ31に記憶された収差量と補間パラメータの情報を読み出し、これらの情報に基づいて歪曲収差補正後の画像座標から歪曲収差補正前の画像座標を計算する。図3は、本実施例の画像処理装置のリード座標計算部32の詳細な構成を示すブロック図である。リード座標計算部32は、図3に示すように、第1座標変換部61、収差量算出部62、座標算出部63、及び第2座標変換部64により構成される。
【0023】
第1座標変換部61は、収差補正部30に入力される画像データの各画素座標について、撮像素子10の撮像領域における任意の点を原点とする座標系から光学系5により被写体が結像する領域の光学中心を原点とする座標系に変換する。
【0024】
収差量算出部62は、制御部40により生成された各分割点の収差量と補間パラメータとに基づいて、第1座標変換部61による座標変換後の画像データの各画素座標における収差量を算出する。
【0025】
座標算出部63は、収差量算出部62により算出された画像データの各画素座標における収差量に基づいて、第1座標変換部61による座標変換後の画像データの各画素座標の位置を補正する。
【0026】
第2座標変換部64は、座標算出部63により各画素座標の位置を補正された画像データの各画素座標について、光学中心を原点とする座標系から撮像素子10の撮像領域における任意の点を原点とする座標系に変換する。
【0027】
データライト部33は、信号処理部20により出力された画像データ(Y(輝度)、C(色差)データ)を画像メモリ34に書き込む。画像メモリ34は、データライト部33により書き込まれた画像データを記憶する。
【0028】
データリード部35は、リード座標計算部32により計算された画像座標に基づいて画素補間に必要な複数画素のメモリアドレスを計算し、画素補間に必要な複数画素を画像メモリ34から読み出す。
【0029】
画素補間部36は、本発明の画素値算出部に対応し、撮像素子10により生成された画像データにおける複数画素を使用した画素補間により、第2座標変換部64による座標変換後の画像データの各画素座標に対応する画素値を算出する。具体的には、画素補間部36は、リード座標計算部32内の第2座標変換部64により出力された座標変換後の画像データの各画素座標に基づいて、画素補間に使用する複数画素の重み付けを計算し、データリード部35により読み出された画像データの複数画素に対して重み付け補間を行い、補間された画素を画素座標に対応する画素値として出力する。画素補間部36は、全ての画像データの画素座標に対応する画素値を算出することで、最終的な出力画像を出力することができる。
【0030】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。図4は、本実施例の画像処理装置において、歪曲収差補正後の画像座標から歪曲収差補正前の画像座標を計算する方法について説明する図である。図4において、A’B’C’D’は、光学系5により被写体からの光が結像する有効領域であり、点Pは光学中心を表す。PA’は最大像高である。
【0031】
まず、本実施例の画像処理装置の設計者は、最大像高を図4に示すように複数の領域PQ’,Q’R’,R’S’,S’A’に分割し、歪曲収差補正後の点P,Q’,R’,S’,A’における収差量を予め求める。点P,Q’,R’,S’,A’は、本発明の分割点に対応する。求めた各分割点の収差量は、上述したように制御部40により記憶され、必要に応じて収差補正部30内の補間パラメータレジスタ31に書き込まれる。
【0032】
例えば歪曲収差補正後の点E’における収差量を求める場合に、本実施例の画像処理装置が有する収差補正部30は、点R’と点S’の収差量を補間して点E’における収差量を求める。
【0033】
ここで、収差量の補間方法は、線形補間やスプライン補間等のn次多項式(nは自然数)による補間を用いたものである。また必ずしも分割点の間隔を等間隔にする必要は無く、収差量の変化が大きい領域において分割間隔を狭めたり分割数を増やしたりすることにより、本発明の画像処理装置は、補間精度を上げることができる。
【0034】
歪曲収差補正後の任意の点における収差量をスプライン補間で算出する場合には、スプライン補間の式は以下に示すようになる。
【0035】
x[i]≦x<x[i+1]の場合において、
xx=x−x[i] …(1)
y=y[i]+xx*(q[i]+xx*(r[i]+s[i]*xx)) …(2)
ここで、xは、任意の点における像高の2乗、iは整数の値である。また、yは、任意の点における収差量である。任意の点における像高をxとしてもよいが、xを任意の点における像高の2乗とすることにより演算量を減らすことができる。点Pを原点とし、任意の点の水平方向の座標をcx’、垂直方向の座標をcy’とすると、任意の点における像高の2乗xは、以下の式で示される。
【0036】
x=cx’*cx’+cy’*cy’ …(3)
仮に点E’における像高をxとする場合には、さらに平方根を算出する必要がある。
【0037】
ここで、x[0],y[0],q[0],r[0],s[0]は、点Pにおける補間パラメータである。x[1],y[1],q[1],r[1],s[1]は、点Q’における補間パラメータである。x[2],y[2],q[2],r[2],s[2]は、点R’における補間パラメータである。x[3],y[3],q[3],r[3],s[3]は、点S’における補間パラメータである。x[4],y[4],q[4],r[4],s[4]は、点A’における補間パラメータである。
【0038】
また、x[0]は点P、x[1]は点Q’、x[2]は点R’、x[3]は点S’、x[4]は点A’における像高の2乗である。さらに、y[0]は点P、y[1]は点Q’、y[2]は点R’、y[3]は点S’、y[4]は点A’における収差量を示す。
【0039】
例えば、図4に示す点E’の像高について考える。点E’の像高については、x[2]≦x<x[3]と表すことができるので、(1)式は、xx=x−x[2]となる。また、(2)式は、y=y[2]+xx*(q[2]+xx*(r[2]+s[2]*xx))で表される。
【0040】
図4に示す点E’の座標位置補正後の点Eの水平方向の座標をcxとすると、cx=y*cx’である。また、点Eの垂直方向の座標をcyとすると、cy=y*cy’である。
【0041】
図5は、本実施例の画像処理装置における光学中心と撮像素子10の撮像領域中心が異なる場合について説明する図である。図5において、A’B’C’D’は、光学系5により被写体が結像する有効領域の左上端、左下端、右下端、右上端を示しており、点Pは光学系5の有効領域の光学中心を表す。一方、A”B”C”D”は、撮像素子10の撮像領域であり、点P”は撮像領域中心を表す。
【0042】
また、図5において、xsizeは撮像素子10の水平画素数を表し、ysizeは撮像素子10の垂直画素数を表す。さらに、光学中心Pの水平方向の座標をxp、垂直方向の座標をyp、撮像領域中心P”の水平方向の座標をxp”、垂直方向の座標をyp”とすると、光学中心Pに対する撮像素子10の撮像領域中心P”のオフセットxoff、yoffは、以下の式で表される。
【0043】
xoff=xp”−xp …(4)
yoff=yp”−yp …(5)
これらのオフセット情報は、補間パラメータの一種として制御部40により補間パラメータレジスタ31に書き込まれる。制御部40は、光学中心Pと撮像素子10の撮像領域中心P”とのずれ量を示すオフセット情報について、どのような方法で取得してもよい。以下に一例を示す。図6,7は、本実施例の画像処理装置において光学中心Pの水平方向の座標xp及び垂直方向の座標ypの測定方法を説明する図である。
【0044】
図6に示すように、撮像素子10は、光学系5を介して白地に黒丸が描画されたチャート1を撮影する。黒丸は、撮影するのに十分な大きさを持っている。また、黒丸の中心は光学系5の光軸中心3上の光学中心Pと一致するように配置する。
【0045】
光学系5の空間周波数特性の影響により、撮像素子10に結像した黒丸は、図7(a)のようにボケた像となる。ここで、撮像中心10によって生成される画像の最大輝度を255とする。撮像素子10に結像した像に対して輝度の50%以上を最大輝度255とし、それ以外は最小輝度0とする2値化を行うと、図7(b)に示すような像となる。
【0046】
輝度0の部分の水平方向の最小値をxminとし、最大値をxmaxとし、垂直方向の最小値をyminとし、最大値をymaxとすると、図5に示す光学中心Pの水平方向の座標xp及び垂直方向の座標ypは、以下の式により表される。
【0047】
xp=(xmin+xmax)/2 …(6)
yp=(ymin+ymax)/2 …(7)
このようにして求められたxp,ypの値を(4)(5)式に代入することにより、オフセットxoff、yoffが求まる。制御部40は、例えば製造段階において上述した方法によりオフセット情報xoff、yoffを取得しており、補間パラメータとして使用する。
【0048】
次に、収差補正部30の動作について詳細に説明する。図8は、本実施例の画像処理装置の動作を示すフローチャート図である。なお、収差量の補間方法は、スプライン補間を用いたものとして説明する。
【0049】
最初に、制御部40は、分割点P,Q’,R’,S’,A’の各々の収差量と補間パラメータとを生成する。本実施例において、制御部40は、予め収差量と補間パラメータの情報を有しているので、それらの情報を出力するのみでよい。補間パラメータは、撮像素子10の水平画素数xsize、垂直画素数ysize、光学中心Pに対する撮像素子10の撮像領域中心P”の水平オフセットxoff、及び垂直オフセットyoffを含むものとする。制御部40は、分割点P,Q’,R’,S’,A’の各々の収差量と補間パラメータとを補間パラメータレジスタ31に書き込む(ステップS1)。
【0050】
次に、リード座標計算部32内の第1座標変換部61は、図5に示す点A”を原点とした座標系における撮像領域中心P”の水平方向の座標xp”と、垂直方向の座標yp”とをxsize、ysizeに基づいて算出する(ステップS2)。
【0051】
次に、第1座標変換部61は、図5に示す点A”を原点とした座標系における画像データの水平座標sx”及び垂直座標sy”を原点に設定する(ステップS3)。その後、第1座標変換部61は、後述するように水平座標sx”及び垂直座標sy”を順次変えていくことにより、撮像領域全域をカバーする。
【0052】
次に、第1座標変換部61は、sy”とysize−1とを比較する。sy”≦ysize−1の場合には、後述するステップS5に進み、そうでない場合には処理を終了する(ステップS4)。すなわち、第1座標変換部61は、垂直座標sy”が撮像素子10の撮像領域中であるか否かを判定している。
【0053】
次に、第1座標変換部61は、sx”とxsize−1とを比較する(ステップS5)。sx”≦xsize−1の場合には、後述するステップS7に進み、そうでない場合にはsy”に1を加算するとともにsx”に0を代入し、ステップS4に戻る(ステップS6)。すなわち、第1座標変換部61は、垂直座標sx”が撮像素子10の撮像領域中であるか否かを判定し、sx”が撮像領域を超えた場合にはsx”を0に戻して垂直座標を1段下に下げている。
【0054】
次に、第1座標変換部61は、収差補正部30に入力される画像データの各画素座標について、撮像素子10の撮像領域における点A”を原点とする座標系から光学中心Pを原点とする座標系である座標cx’,cy’に変換する(ステップS7)。座標変換により生成されたcx’は、上述したように、点Pを原点とした水平方向の座標であり、cy’は垂直方向の座標である。
【0055】
次に、収差量算出部62は、ステップS8からステップS16までの間において、制御部40により生成された各分割点の収差量と補間パラメータとに基づいて、第1座標変換部61による座標変換後の画像データの各画素座標における収差量を算出する。
【0056】
具体的に説明すると、まず収差量算出部62は、第1座標変換部61により出力された座標cx’,cy’に基づいて、像高の2乗xを計算する(ステップS8)。
【0057】
次に、収差量算出部62は、xとx[1]とを比較する(ステップS9)。x<x[1]の場合には、収差量算出部62は、iに0を設定し(ステップS10)、後述するステップS16に進む。
【0058】
x≧x[1]の場合には、収差量算出部62は、xとx[2]とを比較する(ステップS11)。x<x[2]の場合には、収差量算出部62は、iに1を設定し(ステップS12)、後述するステップS16に進む。
【0059】
x≧x[2]の場合には、収差量算出部62は、xとx[3]とを比較する(ステップS13)。x<x[3]の場合には、収差量算出部62は、iに2を設定し(ステップS14)、後述するステップS16に進む。
【0060】
x≧x[3]の場合には、収差量算出部62は、iに3を設定する(ステップS15)。
【0061】
すなわち、収差量算出部62は、ステップS8からステップS15までにおいて、第1座標変換部61による座標変換後の各画素座標の像高が制御部40によって分割された複数の領域の中のいずれの領域に属するのかを判別している。
【0062】
その後、収差量算出部62は、補間パラメータを使用して制御部40によって分割された領域の中の属している領域を分割している分割点の収差量から補間することにより画像データにおける各画素座標における収差量yを算出する(ステップS16)。本実施例において、収差量算出部62は、収差量yをスプライン補間により算出する。
【0063】
例えば、x[2]≦x<x[3]が成立する場合には、収差量算出部62は、ステップS14においてiに2を設定し、分割点R’における補間パラメータ(x[2],y[2],q[2],r[2],s[2])を使用して、分割点R’の収差量y[2]から補間することにより、当該画素座標における収差量yを算出する。
【0064】
次に、座標算出部63は、収差量算出部62により算出された画像データの各画素座標における収差量に基づいて、第1座標変換部61による座標変換後の画像データの各画素座標の位置を補正する(ステップS17)。これにより、座標算出部63は、歪曲収差補正前の画像データの水平方向の座標cx及び垂直方向の座標cyを算出する。
【0065】
次に、第2座標変換部64は、座標算出部63により画像データの各画素座標の位置を補正された画像データの各画素座標cx,cyについて、光学中心Pを原点とする座標系から撮像素子10の撮像領域における任意の点(本実施例においては点A”)を原点とする座標系に変換する(ステップS18)。第2座標変換部64は、この座標変換により、水平方向の座標sx、及び垂直方向の座標syを出力する。
【0066】
次に、データリード部35は、第2座標変換部64により出力されたsx,syに基づいて、画素補間に必要な複数画素のメモリアドレスを計算する(ステップS19)。
【0067】
その後、データリード部35は、計算したメモリアドレスに対応した画素の画素値(画素のY(輝度)、C(色差))を画像メモリ34から読み出す(ステップS20)。
【0068】
次に、画素補間部36は、第2座標変換部64により出力された座標変換後の画素座標sx,syに基づいて、画素補間に使用する複数画素の重み付けを計算し(ステップS21)、ステップS20でデータリード部35により読み出された複数画素の画素値に対して重み付けを使用した画素補間を行う(ステップS22)。その後、画素補間部36は、補間された画素を画素座標に対応する画素値として出力する。
【0069】
次に、第1座標変換部61は、sx”に1を加算する(ステップS23)。このようにして第1座標変換部61は、収差補正後の水平方向の画素座標を1つ右にずらした後、ステップS5に戻る。
【0070】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係る画像処理装置によれば、システムコストを安価に抑えるとともに、光学系による光学中心と撮像素子の撮像領域中心とが一致していない場合においても画像の歪みを正確に補正して高品質な画像を生成することができる。
【0071】
すなわち、本実施例の画像処理装置は、第1座標変換部61を備えることで、収差補正部30に入力される画像データ、または収差補正部30により収差補正される後の画像データの画素座標を撮像素子10の撮像領域の任意の点(本実施例においては点A”)を原点とする座標系から、光学中心Pを原点とする座標系に変換し、収差量算出部62及び座標算出部63を備えることで光学中心Pを原点とする座標系で収差補正前の画像データの画素座標を算出し、第2座標変換部64を備えることで収差補正前の画像データの画素座標を光学中心Pを原点とする座標系から撮像素子の撮像領域の任意の点(本実施例においては点A”)を原点とする座標系に変換し、画素補間部36を備えることで画像データの画素座標に対応する画素値を画素補間により求めるので、光学中心Pと撮像素子の撮像領域中心P”は一致していない場合でも正確な補正を行うことができ、高品質な画像の生成に資するという利点を有する。
【0072】
さらに、本実施例の画像処理装置は、特許文献1に記載の画像処理装置のように全ての格子単位に対応する補正ベクトルをデータとして備えている必要が無く、像高を複数の領域に分割した場合における各分割点の収差量と補間パラメータのみを備えることにより、分割点間の像高の収差量を分割点の収差量から補間して求めることができるので、システムコストを安価に抑えることができるという利点も有する。
【実施例2】
【0073】
図9は、本発明の実施例2の画像処理装置の構成を示すブロック図である。この画像処理装置は、図9に示すように光学系5を介して撮像素子10に結像した画像を処理する装置であり、信号処理部20、収差補正部30、制御部40、及びズーム駆動部50を備えている。すなわち、図1で説明した実施例1の画像処理装置の構成と異なる点は、ズーム駆動部50をさらに備えている点である。
【0074】
ズーム駆動部50は、光学系5の焦点距離を調節する。光学系5は、ズーム倍率、すなわち焦点距離調整のためにレンズが動く構造となっている。ズーム駆動部50は、制御部40が設定した値に基づいて、光学系5の対応するレンズを駆動する。
【0075】
撮像素子10、信号処理部20、及び収差補正部30は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0076】
制御部40は、実施例1と同様の機能を備えるほか、光学系5の焦点距離を決定し、焦点距離に応じてズーム駆動部50を駆動するための駆動信号を生成する。さらに、制御部40は、光学系5による焦点距離を複数の領域に分割した場合において、「焦点距離の各分割点」に対応した「像高の各分割点の収差量」から補間して、現在の焦点距離(決定した焦点距離)における「像高の各分割点の収差量」を算出する。
【0077】
なお、「焦点距離の各分割点」に応じた「像高の各分割点」の収差量及び補間パラメータを生成する方法は、どのようなものでもよい。例えば、制御部40は、「焦点距離の各分割点」に応じた「像高の各分割点」における収差量や補間パラメータ等の情報をフラッシュメモリやROM等の記憶手段にテーブルとして予め記憶していてもよい。
【0078】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。図10は、本実施例の画像処理装置において、焦点距離と収差量との関係を示す図である。図10において、横軸が焦点距離であり、縦軸が収差量である。焦点距離がaの場合には、光学系5のレンズはワイド端(最もワイド側(広角側)までズームレンズを動かしたところ)である。また、焦点距離がeの場合には、光学系5のレンズはテレ端(最も望遠側までズームレンズを動かしたところであり、倍率最大)である。
【0079】
図10に示すように、ズーム光学系において、収差量は焦点距離に応じて変化する。そこで、本実施例の画像処理装置の制御部40は、焦点距離を複数の領域ab,bc,cd,deに分割し、焦点距離の各分割点a,b,c,d,eに対応した収差量を予め求めて記憶している。なお、この場合における収差量とは、実施例1と同様に「像高の各分割点の収差量」を予め求めておく必要がある。すなわち、本実施例の画像処理装置の設計者は、焦点距離の分割点a,b,c,d,eの各々に対して、像高の分割点P,Q’,R’,S’,A’の各々における収差量を予め求めておく。
【0080】
求めた収差量は、上述したように制御部40により記憶され、必要に応じて収差補正部30内の補間パラメータレジスタ31に書き込まれる。
【0081】
収差量の補間方法は、線形補間やスプライン補間等のn次多項式(nは自然数)による補間を用いたものである。また必ずしも分割点の間隔を等間隔にする必要は無く、収差量の変化が大きい領域において分割間隔を狭めたり分割数を増やすことにより、本発明の画像処理装置は、補間精度を上げることができる。
【0082】
焦点距離fにおける収差量をスプライン補間で算出する場合には、スプライン補間の式は以下に示すようになる。
【0083】
x_[j]≦f<x_[j+1]の場合において、
xx_=f−x_[j] …(8)
y_=y_[j]+xx_*(q_[j]+xx_*(r_[j]+s_[j]*xx_)) …(9)
ここで、y_は、焦点距離fにおける収差量である。また、x_[0],y_[0],q_[0],r_[0],s_[0]は、焦点距離aにおける補間パラメータである。x_[1],y_[1],q_[1],r_[1],s_[1]は、焦点距離bにおける補間パラメータである。x_[2],y_[2],q_[2],r_[2],s_[2]は、焦点距離cにおける補間パラメータである。x_[3],y_[3],q_[3],r_[3],s_[3]は、焦点距離dにおける補間パラメータである。x_[4],y_[4],q_[4],r_[4],s_[4]は、焦点距離eにおける補間パラメータである。
【0084】
また、x_[0]は焦点距離a、x_[1]は焦点距離b、x_[2]は焦点距離c、x_[3]は焦点距離d、x_[4]は焦点距離eである。さらに、y_[0]は焦点距離a、y_[1]は焦点距離b、y_[2]は焦点距離c、y_[3]は焦点距離d、y_[4]は焦点距離eにおける収差量を示す。
【0085】
したがって、図10に示す焦点距離fに基づき、x_[0]≦f<x_[1]と表すことができるので、(8)式は、xx_=f−x_[0]となる。また、(9)式は、y_=y_[0]+xx_*(q_[0]+xx_*(r_[0]+s_[0]*xx_))で表される。
【0086】
次に、制御部40の動作について詳細に説明する。図11は、本実施例の画像処理装置の動作を示すフローチャート図である。なお、収差量の補間方法は、スプライン補間を用いたものとして説明する。
【0087】
まず、制御部40は、例えばユーザのズーム操作によって光学系5の焦点距離fを決定し、焦点距離fに応じてズーム駆動部50を駆動するための駆動信号を生成する。ズーム駆動部50は、制御部40により生成された駆動信号に基づいて、光学系5の焦点距離をfに調節する。
【0088】
次に、制御部40は、焦点距離fとx_[1]とを比較する(ステップS1)。f<x_[1]の場合には、制御部40は、jに0を設定し(ステップS2)、後述するステップS8に進む。
【0089】
f≧x_[1]の場合には、制御部40は、fとx_[2]とを比較する(ステップS3)。f<x_[2]の場合には、制御部40は、jに1を設定し(ステップS4)、後述するステップS8に進む。
【0090】
f≧x_[2]の場合には、制御部40は、fとx_[3]とを比較する(ステップS5)。f<x_[3]の場合には、制御部40は、jに2を設定し(ステップS6)、後述するステップS8に進む。
【0091】
f≧x_[3]の場合には、制御部40は、jに3を設定する(ステップS7)。
【0092】
すなわち、制御部40は、ステップS1からステップS7までにおいて、焦点距離fが分割された複数の領域の中からいずれの領域に属するのかを判別している。
【0093】
次に、制御部40は、「焦点距離の各分割点」に対応した「像高の各分割点の収差量」から補間して、現在の焦点距離(決定した焦点距離)fにおける「像高の各分割点の収差量」を算出する(ステップS8)。すなわち、制御部40は、スプライン補間を行うことにより、焦点距離fの場合について、点Pにおける収差量y_p、点Q’における収差量y_q’、点R’における収差量y_r’、点S’における収差量y_s’、及び点A’における収差量y_a’を算出する。
【0094】
次に、制御部40は、y_p、y_q’、y_r’、y_s’、及びy_a’に基づいて、点P,Q’,R’,S’,A’における補間パラメータを算出する(ステップS9)。
【0095】
最後に、求めた収差量及び補間パラメータを利用して、本実施例の画像処理装置は、図8に示す処理を行い(ステップS10)、処理を終了する。
【0096】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係る画像処理装置によれば、実施例1の効果に加え、光学系5が焦点距離調整のためにレンズが動く構造を有しているために収差量が焦点距離に応じて変化する場合においても、制御部40が焦点距離fに応じた適切な補間パラメータを算出し、高品質な画像を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係る画像処理装置は、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置に用いられ、光学系によって生じる収差を補正する画像処理装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 チャート
3 光学中心
5 光学系
10 撮像素子
20 信号処理部
30 収差補正部
31 補間パラメータレジスタ
32 リード座標計算部
33 データライト部
34 画像メモリ
35 データリード部
36 画素補間部
40 制御部
50 ズーム駆動部
61 第1座標変換部
62 収差量算出部
63 座標算出部
64 第2座標変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を介して被写体からの光を撮像して画像データを生成する撮像素子と、
前記光学系により被写体が結像する領域の像高を複数の領域に分割し、前記領域毎に分割点を設定して、前記各分割点の収差量と前記分割点間の像高の収差量を求めるために必要な補間パラメータとを生成する制御部と、
前記画像データの各画素座標について、前記撮像素子の撮像領域における任意の点を原点とする座標系から前記光学系により被写体が結像する領域の光学中心を原点とする座標系に変換する第1座標変換部と、
前記制御部により生成された前記各分割点の収差量と補間パラメータとに基づいて、前記第1座標変換部による座標変換後の画像データの各画素座標における収差量を算出する収差量算出部と、
前記収差量算出部により算出された各画素座標における収差量に基づいて、前記第1座標変換部による座標変換後の画像データの各画素座標の位置を補正する座標算出部と、
前記座標算出部により算出された座標位置補正後の画像データの各画素座標について、前記光学中心を原点とする座標系から前記撮像素子の撮像領域における任意の点を原点とする座標系に変換する第2座標変換部と、
前記撮像素子により生成された画像データにおける複数の画素を使用して、前記第2座標変換部による座標変換後の画像データの各画素座標に対応する画素値を算出する画素値算出部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記光学系の焦点距離を調節するズーム駆動部を備え、
前記制御部は、前記光学系の焦点距離を決定し、前記焦点距離に応じて前記ズーム駆動部を駆動するための駆動信号を生成するとともに、前記光学系による焦点距離を複数の領域に分割し、前記領域毎に分割点を設定して、前記領域の各分割点に対応した像高の収差量から、現在の焦点距離における像高の収差量を算出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−114480(P2011−114480A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267719(P2009−267719)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】