説明

画像処理装置

【課題】 多値画像の編集処理を自動化し、また、曲線的に領域を追加・削除することが可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】 画像処理装置100は医用画像を多値化処理し、多値化処理された画像に対して後述する修正処理を実行する。修正処理において画像処理装置100のCPU101は、半径及び回転角度を変えながら回転する2つの動径上の各比較点(例えば各動径の先端)の画素値を判定し、その画素値に応じて2つの比較点の間の画素値を変換する処理を、設定された走査範囲だけ繰り返す。2つの動径は、多値画像上に任意に設定された原点の周囲を一定角度隔てて回転する2つの動径、または多値画像上に任意に設定された原点の周囲を同角度で回転し、互いに半径が異なる2つの動径とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT画像、MR画像、US画像等の医用画像から抽出した領域の形状補正処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CT(Computed Tomography)画像、MR(Magnetic Resonance)画像、US(Ultrasound)画像等の医用画像を用いた診断が行われている。また、これらの医用画像から観察像となる部位を抽出したり、不必要な領域を除去したりして診断に好適な画像を作成するための各種画像処理手法が提案されている。また、医用画像から異常陰影を検出するCAD(Computer Aided Diagnosis)と呼ばれるコンピュータ支援診断装置も開発されている。CADでは診断対象とする臓器領域が抽出され病変候補部位があるか否かが判定されるが、抽出領域の形状の編集が必要となる場合がある。例えば、特定の臓器領域を閾値処理によって抽出する場合、閾値の設定の仕方によっては余分な領域も抽出され、目的とする臓器と一体化して抽出されてしまう場合がある。これでは診断に不都合なため、余分な領域を取り除く修正が必要である。また、これとは逆に、臓器の一部が欠けて抽出されてしまう場合があるが、この場合は欠けた部分を追加する修正が必要である。
【0003】
このように、領域の削除・追加等の修正を行う画像処理手法として、例えば、特許文献1の手法が提案されている。特許文献1では、操作者が画像上でマウス等のポインティングデバイスを操作して背景領域と注目領域の両領域に跨るように線を描画すると、描画された線の両端が注目領域内にあるのか注目領域外にあるのか、または注目領域と背景領域にそれぞれ存在するのかが判定され、判定結果に応じて領域を拡張したり削除したりする処理を行うものである。例えば、線の両端がいずれも背景領域にあれば線と注目領域とで囲まれる閉領域が注目領域から削除され、線の両端がいずれも注目領域にあれば線と注目領域とで囲まれる閉領域が注目領域に追加される。
【0004】
また、抽出された病巣候補陰影に血管陰影が重なっている場合に血管部分を取り除いて表示する例が特許文献2に記載されている。特許文献2では、二値化処理により抽出された陰影の重心位置を求め、その重心位置を中心として動径を回転させながら陰影における動径の最小長を求める。更に、動径の最小長に所定の係数を乗じた値を切断長とし、切断長に対応した画素数の判定領域を横方向または縦方向に設定する。そして、抽出陰影の周囲に判定領域を設定し、それらの判定領域において陰影が判定領域より小さい場合(判定領域両端の画素がいずれも「0」の場合)は切断対象として、判定領域上の全画素を「0」に変換し、切断する(特許文献2の明細書段落[0214]〜[0215])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/104041号
【特許文献2】特開2008−289916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1では、修正のために操作者が線を描画するが、その線は修正箇所毎に手動で入力する必要があるため手間がかかっていた。
また、上述の特許文献2では、切断対象となる判定領域が直線で設定されるため、直線的な削除しかできなかった。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、多値画像の編集処理を自動化し、また、曲線的に領域を追加・削除することが可能な画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明は、多値画像上に、原点と、該原点の周囲を回転する2つの動径と、該動径の走査範囲を設定する設定手段と、前記2つの動径の各々に設定される比較点の画素値を判定する判定手段と、前記判定手段による判定の結果、前記比較点の画素値が一致する場合は、前記比較点間の画素を該画素値に変換する変換手段と、前記動径の走査範囲について前記判定手段による判定処理と前記変換手段による変換処理とを繰り返す繰返手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、多値画像の編集処理を自動化し、また、曲線的に領域を追加・削除することが可能な画像処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像処理装置100の全体構成を示す図
【図2】(a)医用画像20の例、(b)医用画像20の関心領域21を二値化した二値画像22の例
【図3】本発明に係る画像処理装置100が実行する修正処理の手順を説明するフローチャート(第1の実施の形態)
【図4】原点の周囲を一定角度隔てて回転する2つの動径31,32の設定例
【図5】(a)2つの動径31,32上の比較点P1,P2間を動径31,32の軌跡に沿った上書き線51で画素値Aに変換する例、(b)2つの動径31,32上の比較点P1,P2間を直線の上書き線52で画素値Aに変換する例、(c)修正された領域24の例
【図6】(a)医用画像40の例、(b)医用画像40の関心領域41を二値化した二値画像42の例、(c)2つの動径31,32上の比較点P1,P2間を動径31,32の軌跡に沿った上書き線53で画素値Bに変換する例
【図7】本発明に係る画像処理装置100が実行する修正処理の手順を説明するフローチャート(第2の実施の形態)
【図8】(a)医用画像40の例、(b)医用画像40の関心領域41を二値化した二値画像44に対して原点の周囲を同角度で回転し、互いに長さが異なる2つの動径33,34を設定する例、(c)2つの動径33,34の先端(比較点)P1,P2間を画素値Bに変換する例
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の画像処理装置100を適用する画像処理システム1の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、画像処理システム1は、表示装置107、入力装置109を有する画像処理装置100と、画像処理装置100にネットワーク110を介して接続される画像データベース111と、医用画像撮影装置112とを備える。
【0013】
画像処理装置100は、画像生成、画像解析等の処理を行うコンピュータである。
画像処理装置100は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、主メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース(通信I/F)104、表示メモリ105、マウス108等の外部機器とのインタフェース(I/F)106を備え、各部はバス113を介して接続されている。
【0014】
CPU101は、主メモリ102または記憶装置103等に格納されるプログラムを主メモリ102のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス113を介して接続された各部を駆動制御し、画像処理装置100が行う各種処理を実現する。
【0015】
また、CPU101は、医用画像を多値化処理し、多値化処理された画像に対して後述する修正処理(図3参照)を実行する。修正処理では、CPU101は半径及び回転角度を変えながら回転する2つの動径上の各比較点(例えば各動径の先端)の画素値を判定し、その画素値に応じて2つの比較点の間の画素値を変換する処理を、所定の走査範囲だけ繰り返す。これにより、所定の面積を持つ曲線的な領域を元の多値画像に追加或いは削除する。上述の2つの動径は、(1)多値画像上に任意に設定された原点の周囲を一定角度隔てて回転する2つの動径、または(2)多値画像上に任意に設定された原点の周囲を同角度で回転し、互いに半径が異なる2つの動径とする。以下、(1)の動径を用いた修正処理について第1の実施の形態にて詳述し、(2)の動径を用いた修正処理について第2の実施の形態にて詳述する。
【0016】
主メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置103等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU101が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0017】
記憶装置103は、HDD(ハードディスクドライブ)や他の記録媒体へのデータの読み書きを行う記憶装置であり、CPU101が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU101により必要に応じて読み出されて主メモリ102のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0018】
通信I/F104は、通信制御装置、通信ポート等を有し、画像処理装置100とネットワーク110との通信を媒介する。また通信I/F104は、ネットワーク110を介して、画像データベース111や、他のコンピュータ、或いは、X線CT装置、MRI装置等の医用画像撮影装置112との通信制御を行う。
I/F106は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器とのデータの送受信を行う。例えば、マウス108やスタイラスペン等のポインティングデバイスをI/F106を介して接続させるようにしてもよい。
【0019】
表示メモリ105は、CPU101から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置107に出力される。
【0020】
表示装置107は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ105を介してCPU101に接続される。表示装置107はCPU101の制御により表示メモリ105に蓄積された表示データを表示する。
【0021】
入力装置109は、例えば、キーボード等の入力装置であり、操作者によって入力される各種の指示や情報をCPU101に出力する。操作者は、表示装置107、入力装置109、及びマウス108等の外部機器を使用して対話的に画像処理装置100を操作する。
なお、表示装置107及び入力装置109は、例えば、タッチパネルディスプレイのように一体となっていてもよい。この場合、入力装置109のキーボード配列がタッチパネルディスプレイに表示される。
【0022】
ネットワーク110は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、インターネット等の各種通信網を含み、画像データベース111やサーバ、他の情報機器等と画像処理装置100との通信接続を媒介する。
【0023】
画像データベース111は、医用画像撮影装置112によって撮影された画像データを蓄積して記憶するものである。図1に示す画像処理システム1では、画像データベース111はネットワーク110を介して画像処理装置100に接続される構成であるが、画像処理装置100内の例えば記憶装置103に画像データベース111を設けるようにしてもよい。
【0024】
次に、図2〜図6を参照して、本発明に係る画像処理装置100の動作について説明する。
以下の実施の形態において、画像処理装置100のCPU101は、主メモリ102から図3に示す修正処理に関するプログラム及びデータを読み出し、このプログラム及びデータに基づいて処理を実行する。
【0025】
なお、以下の処理の実行開始に際して、演算対象とする医用画像のデータは画像データベース111等からネットワーク110及び通信I/F104を介して取り込まれ、画像処理装置100の記憶装置103に記憶されているものとする。
医用画像は、X線CT装置、MRI装置、超音波装置等により撮影された画像(2次元)またはこれらの画像を積み上げた3次元ボリューム画像である。以下の例では、医用画像として2次元のアキシャルCT画像を用いるものとするが、コロナル画像、サジタル画像を利用することも可能である。
【0026】
図2に示すように、まず画像処理装置100のCPU101は、処理対象とする医用画像20を取り込み、多値化処理する。以下の説明では簡単のために医用画像20を二値化処理する例を示す。
例えば、図2(a)の医用画像20の関心領域21について所定の閾値で二値化し、図2(b)に示すように高濃度領域23とその他の領域とに分離された二値画像22を得る。二値画像22において、背骨に相当する高濃度領域23には画素値B(例えば、「1」)が与えられ、高濃度領域23以外の領域には画素値A(例えば、「0」)が与えられる。
【0027】
図2(a)の医用画像20の関心領域21内では、背骨の左上部に高濃度領域が接近して存在しているため、二値化処理の閾値を小さく設定した場合は、これらの高濃度領域が背骨領域と一体的に抽出されてしまう。この場合、余分に抽出された領域を削除する必要が生じる。
【0028】
本発明の第1の実施の形態の画像処理装置100は、操作者による「削除」の指示、或いは、画像処理装置100により予め実行される領域の形状判定処理の結果に従って、図3に示す修正処理(削除処理)を開始する。形状判定処理については、例えば、領域の重心から縁辺部までの距離の分散や、縁辺部の連続性、或いは傾き等に基づいて判定する等、公知の手法を用いればよい。
【0029】
図3の修正処理の開始前の段階で、CPU101は、図4に示すように二値画像22上への2つの動径31,32の設定を受け付ける。
すなわち、二値画像22の任意の点を原点Oとし、原点Oの周囲を角度ψだけ隔てて回転する2つの動径(第1の動径31,第2の動径32)と、各動径31,32の半径範囲(初期半径R、最終半径R2)と、第1の動径31の回転範囲(初期角度θmin,最終角度θmax)の設定を受け付ける。CPU101は、これらの初期設定を行うための操作画面を提供するようにしてもよい。例えば、処理対象とする二値画像22上に原点O、第1及び第2の動径31,32、及び走査範囲(半径範囲及び回転範囲)を設定するためのポインタやハンドル等を表示装置107に表示し、マウス108等によってポインタやハンドル等が所望の位置に移動されるようにすればよい。また、形状判定処理の結果を利用して領域23の形状の修正を行う場合は、求められた形状の情報を用いて、原点O、第1及び第2の動径31,32、及び走査範囲(半径範囲及び回転範囲)を設定するようにしてもよい。
【0030】
図2〜図4の例は、二値画像22の高濃度領域23の一部(高濃度領域23の左上の凸部)を「削除」する修正例であるため、2つの動径31,32の間の角度ψは、少なくとも削除対象とする部分の長さに相当する角度より大きくする必要がある。すなわち、2つの動径31,32が削除対象とする部分を挟むように設定される。また、走査範囲(半径範囲及び回転範囲)は、削除対象とする部分を覆う範囲とする。
【0031】
原点O、第1及び第2の動径31,32、及び走査範囲(半径範囲及び回転範囲)の設定が行われると、まず、CPU101は、第1及び第2の動径31,32の半径Rを初期半径として初期設定する(ステップS1)。次に、CPU101は、第1の動径31の角度θ1を初期角度θminとして初期設定する(ステップS2)。
【0032】
次に、CPU101は、第2の動径32の角度θ2を(θ1+ψ)と設定する(ステップS3)。ψの大きさは削除部分の大きさに応じて変更可能である。
【0033】
上述のように、所定の角度ψを隔てて2つの動径31,32が設定されると、CPU101は、第1の動径31の先端の点P1(R,θ1)の画素値を判定する。点P1の画素値がA(=「0」)である場合(ステップS4;YES)、更に、CPU101は、第2の動径32の先端の点P2(R,θ2)の画素値を判定する。点P2の画素値もA(=「0」)である場合(ステップS5;YES)、すなわち、2つの動径31,32上の各比較点P1及び点P2の間の画素値が一致する場合は、比較点P1及び点P2の間の画素を画素値Aで埋める(変換する;ステップS6)。
【0034】
画素値の変換は、図5(a)に示す上書き線51のように、動径31,32の軌跡に沿って上書きするようにしてもよいし、図5(b)に示す上書き線52のように、点P1と点P2とを結ぶ直線に沿って上書きするようにしてもよい。
【0035】
ステップS6の変換処理が終了するとステップS7へ移行する。或いは、ステップS4、ステップS5において第1の動径31上の比較点P1または第2の動径32上の比較点P2のうち、少なくともいずれか一方の画素値がAでない場合は(ステップS4;No、ステップS5;No)、ステップS6の変換処理を行わず、ステップS7へ移行する。
【0036】
CPU101は第1の動径31の角度θ1を所定の微小角度dθだけ回転させる(θ1←θ1+dθ;ステップS7)。微小角度dθは任意であるが、例えば1度(π/180[rad])とする。
【0037】
θ1が最終角度θmaxより小さければ(ステップS8;NO)、ステップS3へ戻り、第2の動径32の角度θ2をθ1+ψに再設定し、第1の動径31上の比較点P1と第2の動径32上の比較点P2との画素値を比較する(ステップS4,ステップS5)。比較点P1,P2の画素値がいずれもAである場合は(ステップS4;YES、ステップS5;YES)、CPU101は、点P1と点P2の間の画素を上述の上書き線51または上書き線52に沿って画素値Aに変換する。
【0038】
CPU101は、第1の動径31が最終角度θmaxに到達するまで上述の処理を繰り返す。第1の動径31が最終角度θmaxに到達すると(ステップS8;YES)、次に、CPU101は、2つの動径31,32の半径を微小距離dRだけ延伸する(R←R+dR;ステップS9)。微小距離dRの長さは任意であるが、例えば0.5画素〜1.0画素程度が好ましい。
【0039】
延伸後の各動径31,32の半径Rが最終半径R2に達していなければ(ステップS10;NO)、ステップS2へ戻り、第1の動径31の角度をθ1=初期角度θminに初期設定し、第2の動径32の角度をθ2=θ1+ψに再設定し、更新された比較点P1(R,θ1),P2(R,θ2)の画素値を比較する。比較点P1,P2の画素値がいずれもAである場合は、点P1と点P2の間の画素を動径の軌跡に沿って、または直線に沿って、画素値Aに変換する(ステップS2〜ステップS6)。同様の処理を、各動径31,32の角度を順次微小角度dθずつずらしながら最終半径θmaxまで繰り返し、更に、各動径31,32の半径Rを順次微小距離dRずつ延伸しながら最終半径R2まで繰り返す。
【0040】
2つの動径31,32の半径Rが最終半径R2に到達すると(ステップS10;YES)、画素値Aによる変換処理が終了する。
その結果、図5(a)、(b)に示す領域23の左上の凸部が削除され、図5(c)に示すような形状の領域24となる。
【0041】
なお、必要に応じて原点を別の位置に再設定したり、走査範囲(半径範囲、回転範囲)や2つの動径31,32のなす角度ψ等を変更して、上述のステップS1〜ステップS10の処理を行うようにしてもよい。これにより曲率の異なる曲線で画素値の変換処理が行えるようになり、複雑な形状での修正が可能となる。
【0042】
なお、図3のフローチャートにおいてステップS4,ステップS5,ステップS6の画素値Aを、画素値Bと置き換えれば、領域を「追加」する修正も可能である。
【0043】
画像処理装置100のCPU101が処理対象とする医用画像として図6(a)に示すような医用画像40を取り込み、多値化処理して図6(b)の多値画像(二値画像42)を得るものとする。図6(b)の二値画像42において、斜線で示す高濃度領域には画素値B(例えば、「1」)が与えられ、高濃度領域以外の領域には画素値A(例えば、「0」)が与えられる。
【0044】
図6(b)において、左上部にある2つの高濃度領域(画素値Bの領域)を結合するよう修正する場合、2つの高濃度領域の間にある低濃度領域(画素値A=「0」の領域)を画素値Bに変換すればよい。
このように領域を追加する処理を行う場合、本発明の第1の実施の形態の画像処理装置100は、操作者による「追加」の指示、或いは、画像処理装置100により予め実行される領域の形状判定処理の結果に従って、修正処理(追加処理)を開始する。なお、追加処理の手順は図3のフローチャートのステップS4、ステップS5、及びステップS6の値Aを値Bに置き換えて実行される。
【0045】
追加処理において、まず、CPU101は、二値画像22上への2つの動径31,32の設定を受け付ける。すなわち、任意の点を原点Oとし、原点Oの周囲を角度ψだけ隔てて回転する2つの動径(第1の動径31,第2の動径32)と、各動径31,32の半径範囲(初期半径R、最終半径R2)と、第1の動径31の回転範囲(初期角度θmin,最終角度θmax)の設定を受け付ける。設定操作については、上述の削除処理と同様である。
【0046】
図6の例は、二値画像42の2つの高濃度領域の間に高濃度領域を「追加」する修正例であるため、2つの動径31,32の間の角度ψは、少なくとも追加対象とする部分の長さに相当する角度より大きくする必要がある。すなわち、2つの動径31,32が追加対象とする部分を挟むように設定される。また、走査範囲(半径範囲及び回転範囲)は、追加する領域を覆う範囲とする。
【0047】
原点O、第1及び第2の動径31,32、及び走査範囲(半径範囲及び回転範囲)の設定が行われると、まず、CPU101は、第1及び第2の動径31,32の半径Rを初期半径として初期設定する(ステップS1)。次に、CPU101は、第1の動径31の角度θ1を初期角度θminとして初期設定する(ステップS2)。
【0048】
次に、CPU101は、第2の動径32の角度θ2を(θ1+ψ)と設定する(ステップS3)。ψの大きさは追加部分の大きさに応じて変更可能である。
【0049】
上述のように、所定の角度ψを隔てて2つの動径31,32が設定されると、CPU101は、第1の動径31の先端の点P1(R,θ1)の画素値を判定する。点P1の画素値がB(=「1」)である場合(図3の値Aを値Bに置き換えたステップS4;YES)、更に、第2の動径32の先端の点P2(R,θ2)の画素値を判定し、点P2の画素値もB(=「1」)である場合(図3の値Aを値Bに置き換えたステップS5;YES)、すなわち、2つの動径31,32上の各比較点P1及び点P2の間の画素値が一致する場合は、比較点P1及び点P2の間の画素を画素値Bで埋める(変換する;図3の値Aを値Bに置き換えたステップS6)。
【0050】
画素値の変換は、図6(c)に示す上書き線53のように、動径の軌跡に沿って上書きするようにしてもよいし、図5(b)に示す上書き線52のように、点P1と点P2とを結ぶ直線に沿って上書きするようにしてもよい。
【0051】
ステップS6の変換処理が終了するとステップS7へ移行する。或いは、ステップS4、ステップS5において第1の動径31上の比較点P1または第2の動径32上の比較点P2のうち、少なくともいずれか一方の画素値がBでない場合は(図3の値Aを値Bに置き換えたステップS4;No、ステップS5;No)、ステップS6の変換処理を行わず、ステップS7へ移行する。
【0052】
CPU101は第1の動径31の角度θ1を所定の微小角度dθだけ回転させる(θ1←θ1+dθ;ステップS7)。微小角度dθは任意であるが、例えば1度(π/180[rad])とする。
【0053】
θ1が最終角度θmaxより小さければ(ステップS8;NO)、ステップS3へ戻り、第2の動径32の角度θ2をθ1+ψに再設定し、第1の動径31上の比較点P1と第2の動径32上の比較点P2との画素値を比較する(ステップS4,ステップS5)。比較点P1とP2の画素値がいずれもBである場合は(図3の値Aを値Bに置き換えたステップS4;YES、ステップS5;YES)、CPU101は、点P1と点P2の間の画素を上述の上書き線53または上書き線52に沿って画素値Bに変換する。
【0054】
CPU101は、第1の動径31が最終角度θmaxに到達するまで上述の処理を繰り返す。第1の動径31が最終角度θmaxに到達すると(ステップS8;YES)、次に、CPU101は、2つの動径31,32の半径を微小距離dRだけ延伸する(R←R+dR;ステップS9)。微小距離dθの長さは任意であるが、例えば0.5画素〜1.0画素程度が好ましい。
【0055】
延伸後の各動径31,32の半径Rが最終半径R2に達していなければ(ステップS10;NO)、ステップS2へ戻り、第1の動径31の角度をθ1=初期角度θminに初期設定し、第2の動径32の角度をθ2=θ1+ψに再設定し、新たな比較点P1(R,θ1),P2(R,θ2)の画素値を比較する。比較点P1,P2の画素値がいずれもBである場合は、点P1と点P2の間の画素を動径の軌跡に沿って、または直線に沿って、画素値Bに変換する(ステップS2〜ステップS6)。同様の処理を、各動径31,32の角度を順次微小角度dθずつずらしながら最終半径θmaxまで繰り返し、更に、各動径31,32の半径Rを順次微小距離dRずつ延伸しながら最終半径R2まで繰り返す。
【0056】
2つの動径31,32の半径Rが最終半径R2に到達すると(ステップS10;YES)、画素値Bによる変換処理が終了する。
その結果、2つの離間した高濃度領域が結合される。すなわち、領域が追加される。
【0057】
なお、追加処理においても、必要に応じて原点を別の位置に再設定したり、走査範囲(半径範囲、回転範囲)や2つの動径31,32のなす角度ψ等を変更して、上述のステップS1〜ステップS10の処理を繰り返し行うようにしてもよい。これにより曲率の異なる曲線で画素値の変換処理が行えるようになり、複雑な形状での修正が可能となる。
【0058】
また、上述の削除処理、追加処理では、2つの動径31,32の先端が同一の円上にのる例について説明したが、2つの動径31,32の先端が同一の楕円上にのるようにしてもよい。2つの動径31,32が楕円上を回転する場合は、予め楕円の長軸と短軸の比を設定しておき、比較点P1、P2が同一の楕円上の点となるように各比較点P1,P2の座標を算出する。楕円の長短軸比は任意であり、また楕円の原点位置、初期半径、最終半径、2つの動径の回転間隔ψも任意に設定可能である。楕円上を回転する動径とすることにより、更に複雑な形状の修正が可能となる。
【0059】
[第2の実施の形態]
次に、図7〜図8を参照して、本発明に係る画像処理装置100の動作の第2の実施の形態について説明する。
【0060】
第2の実施の形態の画像処理装置100は、多値画像上に任意に設定された原点Oの周囲を同角度で回転し、互いに半径が異なる2つの動径33,34を設定し、各動径33,34上の各比較点P1,P2の画素値に応じて、2つの比較点P1,P2間の画素値を変換する処理を行う。
【0061】
図8に示すように、まず画像処理装置100のCPU101は、処理対象とする医用画像40を取り込み、多値化処理する。以下の説明では簡単のために基の医用画像40を二値化処理する例を示す。
例えば、図8(a)の医用画像40の関心領域41について所定の閾値で二値化し、図8(b)に示すように高濃度領域とその他の領域とに分離された二値画像44を得る。二値画像44において、斜線で示す高濃度領域には画素値B(例えば、「1」)が与えられ、高濃度領域以外の領域には画素値A(例えば、「0」)が与えられる。
【0062】
ある点Oを中心として、径方向に離間した2つの高濃度領域を結合したい場合は、本発明の第2の実施の形態の画像処理装置100は、操作者による「追加」の指示、或いは、画像処理装置100により予め実行される領域の形状判定処理の結果に従って、図8に示す径方向修正処理(径方向追加処理)を開始する。
【0063】
図8の修正処理の開始前の段階で、CPU101は、図8(b)に示すように二値画像44上への2つの動径33,34の設定を受け付ける。
まず、CPU101は、二値画像44上への2つの動径の設定を受け付ける。第2の実施の形態では、二値画像44の任意の点を原点Oとし、原点Oの周囲を同角度で回転し、互いに半径が異なる2つの動径(第3の動径33,第4の動径34)を設定する。また、いずれか一方の動径(例えば、第3の動径33)の半径範囲(初期半径R1、最終半径R2)と、各動径33,34の回転範囲(初期角度θ1,最終角度θ2)の設定を受け付ける。第1の実施の形態における初期設定と同様に、CPU101は、これらの初期設定を行うための操作画面を提供するようにしてもよい。また、領域の形状判定処理の結果を利用して高濃度領域の形状の修正を行う場合は、求められた形状の情報を用いて、原点O、第3及び第4の動径33,34、及び走査範囲(半径範囲及び回転範囲)を設定するようにしてもよい。
【0064】
図7〜図8の例は、二値画像22の高濃度領域を「追加」する修正例であるため、2つの動径33,34の先端点P1,P2間の距離Lは、少なくとも追加対象とする部分の長さ以上とする必要がある。また、走査範囲(半径範囲及び回転範囲)は、追加対象とする部分を覆う範囲とする。
【0065】
原点O、第1及び第2の動径31,32、及び走査範囲(半径範囲及び回転範囲)の設定が行われると、まず、CPU101は、第3及び第4の動径33,34の角度θを初期角度θ1に初期設定する(ステップS21)。次に、CPU101は、第3の動径33の半径Rを初期半径R1に初期設定する(ステップS22)。
【0066】
次に、CPU101は、第3の動径33の先端の点P1の座標を計算する(ステップS23)。そして、CPU101は、第3の動径33の先端の点P1(R,θ)の画素値を判定する。点P1の画素値がB(=「1」)である場合(ステップS24;YES)、更に、CPU101は、第4の動径34の先端の点P2の座標を計算し(ステップS25)、点P2(R+L,θ)の画素値を判定する(ステップS26)。点P2の画素値もB(=「1」)である場合(ステップS26;YES)、点P1及び点P2の間の画素を画素値Bで埋める(変換する;ステップS27)。
【0067】
ステップS27の変換処理が終了するとステップS28へ移行する。或いは、ステップS24、ステップS26において第3の動径33上の比較点P1または第4の動径34上の比較点P2のうち、少なくともいずれか一方の画素値がBでない場合は(ステップS24;No、ステップS26;No)、ステップS27の変換処理を行わず、ステップS28へ移行する。
【0068】
CPU101は第3の動径33の半径Rを微小距離dRだけ延伸する(R←R+dR;ステップS28)。微小距離dRの長さは任意であるが、例えば0.5画素〜1.0画素程度が好ましい。
【0069】
半径Rが最終半径R2より小さい場合は(ステップS29;NO)、ステップS23へ戻り、更新された半径Rにて第3の動径33の先端の座標P1を再計算し(ステップS23)、点P1の画素値を判定する(ステップS24)。また、更新された半径Rにて第4の動径34の先端の座標P2を再計算し(ステップS25)、点P2の画素値を判定する(ステップS26)。比較点P1とP2の画素値がいずれもBである場合は(ステップS24;YES、ステップS26;YES)、CPU101は、点P1と点P2の間の画素を画素値Bに変換する(ステップS27)。
【0070】
CPU101は、第3の動径33が最大半径R2に到達するまで上述の処理を繰り返す。第3の動径33が最大半径R2に到達すると(ステップS29;YES)、次に、CPU101は、2つの動径33,34の角度θを微小角度dθだけ回転させる(θ←θ+dθ;ステップS30)。微小角度dθは、任意であるが、例えば1度(π/180[rad])とする。
【0071】
回転後の角度θが最終角度θ2に達していなければ(ステップS31;NO)、ステップS22へ戻り、第3の動径33の半径Rを初期半径R1に設定し、更新された比較点P1(R,θ),P2(R+L,θ)の画素値をそれぞれ判定する。比較点P1,P2の画素値がいずれもBである場合は、点P1と点P2の間の画素を画素値Bに変換する(ステップS23〜ステップS27)。同様の処理を、各動径33,34の半径Rを順次微小距離dRずつ延伸しながら最終半径R2まで繰り返し、更に、各動径33,34の角度θを順次微小角度dθずつずらしながら最終角度θ2まで繰り返す。
【0072】
2つの動径33,34の角度θが最終角度θ2に到達すると(ステップS31;YES)、画素値Bによる変換処理が終了する。
その結果、図8(c)の動径33,34間の領域が画素値Bに変換され、多値画像45のように右上の二つの高濃度領域が連結されることとなる。
【0073】
なお、必要に応じて原点を別の位置に再設定したり、走査範囲(半径範囲、回転範囲)や2つの動径33,34の先端の間隔L等を変更して、上述のステップS21〜ステップS31の処理を繰り返し行うようにしてもよい。これにより所望の範囲を径方向に自在に描画できるようになり、複雑な形状での修正が可能となる。
【0074】
なお、図7のフローチャートにおいてステップS24,ステップS26、ステップS27の画素値Bを、画素値A(=「0」)と置き換えれば、領域を「削除」する修正も可能である。
【0075】
領域を削除する処理を行う場合、本発明の第2の実施の形態の画像処理装置100は、操作者による「削除」の指示に従って径方向修正処理(径方向削除処理)を開始する。なお、径方向領域削除処理の手順は図7のフローチャートのステップS24、ステップS26、ステップS27の値Bを値Aに置き換えて実行される。
【0076】
径方向削除処理において、まず、CPU101は、二値画像44上への2つの動径33,34の設定を受け付ける。すなわち、任意の点を原点Oとし、原点Oの周囲を同角度で回転し、互いに長さが異なる2つの動径(第3の動径33,第4の動径34)と、各動径33,34の半径範囲(初期半径R1、最終半径R2)と、各動径33,34の回転範囲(初期角度θ1,最終角度θ2)の設定を受け付ける。設定操作については、上述の径方向追加処理と同様である。
【0077】
領域を径方向に「削除」する修正例では、2つの動径33,34の先端の間の長さLは、少なくとも削除対象とする部分より大きくする必要がある。また、走査範囲(半径範囲及び回転範囲)は、削除する領域を覆う範囲とする。
【0078】
原点O、第3及び第4の動径33,34、及び走査範囲(半径範囲及び回転範囲)の設定が行われると、CPU101は、2つの動径33,34の角度θを初期角度θ1に初期設定する(ステップS21)。また、第3の動径33の半径Rを初期半径R1に初期設定する(ステップS22)。
【0079】
次に、CPU101は、第3の動径33の先端の点P1の座標を計算する(ステップS23)。そして、CPU101は、第3の動径33の先端の点P1(R,θ)の画素値を判定する。点P1の画素値がA(=「0」)である場合(図7の値Bを値Aに置き換えたステップS24;YES)、更に、第4の動径34の先端の点P2の座標を計算し(ステップS25)、点P2(R+L,θ)の画素値を判定する(ステップS26)。点P2の画素値もA(=「0」)である場合(図7の値Bを値Aに置き換えたステップS26;YES)、点P1及び点P2の間の画素を画素値Aで埋める(変換する;ステップS27)。
【0080】
ステップS27の変換処理が終了するとステップS28へ移行する。或いは、ステップS24、ステップS26において第3の動径33上の比較点P1または第4の動径34上の比較点P2のうち、少なくともいずれか一方の画素値がAでない場合は(図7の値Bを値Aに置き換えたステップS24;No、ステップS26;No)、ステップS27の変換処理を行わず、ステップS28へ移行する。
【0081】
CPU101は第3の動径33の半径Rを微小距離dRだけ延伸する(R←R+dR;ステップS28)。微小距離dRの長さは任意であるが、例えば0.5画素〜1.0画素程度が好ましい。
【0082】
半径Rが最終半径R2より小さい場合は(ステップS29;NO)、ステップS23へ戻り、更新された半径Rにて第3の動径33の先端の座標P1を再計算し(ステップS23)、点P1の画素値を判定する(ステップS24)。また、更新された半径Rにて第4の動径34の先端の座標P2を再計算し(ステップS25)、点P2の画素値を判定する(ステップS26)。比較点P1とP2の画素値がいずれもAである場合は(図7の値Bを値Aに置き換えたステップS24;YES、ステップS26;YES)、CPU101は、点P1と点P2の間の画素を画素値Aに変換する(図7の値Bを値Aに置き換えたステップS27)。
【0083】
CPU101は、第3の動径33が最大半径R2に到達するまで上述の処理を繰り返す。第3の動径33が最大半径R2に到達すると(ステップS29;YES)、次に、CPU101は、2つの動径33,34の角度θを微小角度dθだけ回転させる(θ←θ+dθ;ステップS30)。微小角度dθは、任意であるが、例えば1度(π/180[rad])とする。
【0084】
回転後の角度θが最終角度θ2に達していなければ(ステップS31;NO)、ステップS22へ戻り、第3の動径33の半径Rを初期半径R1に設定し、更新された比較点P1(R,θ),P2(R+L,θ)の画素値をそれぞれ判定する。比較点P1,P2の画素値がいずれもAである場合は、点P1と点P2の間の画素を画素値Aに変換する(図7の値Bを値Aに置き換えたステップS23〜ステップS27)。同様の処理を、各動径33,34の半径Rを順次微小距離dRずつ延伸しながら最終半径R2まで繰り返し、更に、各動径33,34の角度θを順次dθずつずらしながら最終角度θ2まで繰り返す。
【0085】
2つの動径33,34の角度θが最終角度θ2に到達すると(ステップS31;YES)、画素値Aによる変換処理が終了する。
その結果、図8(c)の動径33,34間の領域が画素値Aに変換され、高濃度領域の一部が削除されることとなる。
【0086】
なお、必要に応じて動径33,34の原点を別の位置に再設定したり、初期半径や2つの動径33,34の先端の間隔Lの長さ等を変更して、上述のステップS21〜ステップS31の処理を繰り返し行うようにしてもよい。これにより所望の範囲を自在に上書きできるようになり、複雑な形状での修正が可能となる。
【0087】
また、上述の径方向追加処理、径方向削除処理では、2つの動径33,34の先端が半径の異なる同心円上にのる例について説明したが、2つの動径33,34の先端が半径の異なる同一の長短軸比の楕円(同心楕円)にのるようにしてもよい。2つの動径33,34が同心楕円を回転する場合は、予め長軸と短軸の比を設定しておき、比較点P1、P2の座標を同心楕円上の点となるように算出する。長短軸比は任意であり、また原点位置、初期半径、最終半径、2つの動径33,34の先端の間隔Lの長さも任意である。楕円上を回転する動径とすることにより、更に複雑な形状での修正が可能となる。
【0088】
以上説明したように、画像処理装置のCPU101は、多値化処理された多値画像上に、原点Oと、該原点Oの周囲を回転する2つの動径31,32(または動径33,34)と、該動径の走査範囲を設定し、2つの動径31,32(または動径33,34)の各々に設定される比較点P1,P2の画素値を判定する。比較点P1,P2の画素値が一致する場合は、比較点P1,P2間の画素をその画素値で上書きする。削除する場合は、比較点P1,P2の画素値がともに「0」である場合は、比較点間の画素を画素値「0」で上書きする。また、追加する場合は、比較点P1,P2の画素値がともに「0」でなく、一致する場合は、画素値「1」または比較点と同じ画素値(多値画像の画素値)で上書きする。この処理を2つの動径の半径と角度を移動させながら、繰り返す。
【0089】
上述の2つの動径を、原点Oの周囲を一定角度ψだけ隔てて回転する第1の動径31と第2の動径32とする場合は、各動径31,32上の各比較点P1及びP2の画素値が同一の場合に、その画素値に比較点P1,P2間の画素が変換される。また、これらの処理は動径の走査範囲だけ繰り返し実行される。
従って、原点と各動径の走査範囲が決定されれば、その範囲内の領域が、元の領域の分布に応じて削除または追加されるため、領域の形状の修正処理が容易となる。回転方向に領域を削除する場合に好適である。例えば、円形や楕円形に近い領域の凸部を削除する場合や、任意の原点から円周方向に離間した2つの領域間を結合する場合等に好適である。
【0090】
また、上述の2つの動径を、原点Oの周囲を同角度で回転し、互いに半径がLだけ異なる第3の動径33と第4の動径34とする場合は、各動径33,34上の各比較点P1及びP2の画素値が同一の場合に、その画素値に比較点P1,P2間の画素が変換される。また、これらの処理は動径の走査範囲だけ繰り返し実行される。この場合は、任意の原点から径方向に離間した領域を結合する場合や、円弧に近い形状の領域を削除する場合に好適である。
【0091】
また、比較点間の画素値は、動径の軌跡に沿って変換されてもよいし、比較点間を結ぶ直線に沿って変換されてもよい。
動径の軌跡に沿って上書きする場合は、曲線的に描画でき、また、直線に沿って上書きする場合は直線的に描画できるため、必要に応じて適切な形状にて修正を行えるようになり、実用性が向上する。
【0092】
更に、2つの動径は、原点を中心とする円上を移動するものとしてもよいし、楕円上を移動するものとしてもよい。これにより、更に複雑な形状での修正が可能となる。
【0093】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像処理装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。
上述の修正処理、径方向修正処理は、二値画像について実施されるものとしたが、多値画像に対して実施されるようにしてもよい。この場合は、図3のステップS4〜ステップS6の処理(比較点P1,P2の画素値の判定と画素値Aによる変換)や、図7のステップS24〜ステップS27(比較点P1,P2の画素値の判定と画素値Bによる変換)を、別の画素値(例えば、画素値B、C、・・・)についても繰り返し、2つの比較点の画素値が一致すれば比較点間の画素を所望の画素値に変換すればよい。
また、走査範囲(初期半径、最終半径、初期角度、最終角度)や動径間の角度ψ、長さL、微小角度dθ、微小距離R等は、コンピュータプログラム内のパラメータとして設定されるものとしてもよい。
【0094】
その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0095】
1・・・・・・・・・・・・画像処理システム
100・・・・・・・・・・画像処理装置
101・・・・・・・・・・CPU
102・・・・・・・・・・主メモリ
103・・・・・・・・・・記憶装置
104・・・・・・・・・・通信I/F
105・・・・・・・・・・表示メモリ
106・・・・・・・・・・I/F
107・・・・・・・・・・表示装置
108・・・・・・・・・・マウス
109・・・・・・・・・・入力装置
20・・・・・・・・・・・医用画像
21・・・・・・・・・・・関心領域
22・・・・・・・・・・・二値画像
23・・・・・・・・・・・高濃度領域
31・・・・・・・・・・・第1の動径
32・・・・・・・・・・・第2の動径
33・・・・・・・・・・・第3の動径
34・・・・・・・・・・・第4の動径
40・・・・・・・・・・・医用画像
41・・・・・・・・・・・関心領域
42・・・・・・・・・・・二値画像
44・・・・・・・・・・・径方向修正用の動径が設定された二値画像
45・・・・・・・・・・・径方向に修正された二値画像
θ・・・・・・・・・・・・動径の角度
ψ・・・・・・・・・・・・角度の異なる2つの動径のなす角度
R・・・・・・・・・・・・動径の半径
L・・・・・・・・・・・・半径の異なる2つの動径の先端の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値画像上に、原点と、該原点の周囲を回転する2つの動径と、該動径の走査範囲を設定する設定手段と、
前記2つの動径の各々に設定される比較点の画素値を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定の結果、前記比較点の画素値が一致する場合は、前記比較点間の画素を該画素値に変換する変換手段と、
前記動径の走査範囲について前記判定手段による判定処理と前記変換手段による変換処理とを繰り返す繰返手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記2つの動径は、前記原点の周囲を一定角度隔てて回転することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記2つの動径は、前記原点の周囲を同角度で回転し、互いに半径が異なることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変換手段は、前記比較点間の画素値を前記動径の軌跡に沿って変換することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変換手段は、前記比較点間の画素値を該比較点間を結ぶ直線に沿って変換することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記2つの動径の先端は、前記原点を中心とする円上にあることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記2つの動径の先端は、前記原点を中心とする楕円上にあることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−110530(P2012−110530A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262832(P2010−262832)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】