説明

画像処理装置

【課題】色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制できるとともに、所望の色補正を容易に実施できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画素抽出部401は、予め指定された色範囲に属する画素を画像データから抽出する。補正量算出部402は、画素抽出部401が抽出した画素の色と、上記色範囲に対応づけられた目標色との色差に基づいて、当該画素に対する色補正量を算出する。選択用画像保持部403は、上記色範囲に属する画素に対して、補正量算出部402が上記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を実施した場合の各画像データの外観を示す選択用画像を保持する。選択受付部404は、各選択用画像を表示するとともに、ユーザによる色補正の選択を受け付ける。色補正実施部405は、選択受付部404が受け付けた色補正を補正対象の画像データに対して実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対して色補正を実施する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機や複合機等の画像形成装置ではカラー印刷可能な機器が一般化している。この種の画像形成装置は、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のトナーやインク等の記録剤の組み合わせによりカラー印刷を実現する。
【0003】
このような画像形成装置の多くは、画像データに対して色補正を行う機能を有している(例えば、特許文献1等参照。)。そもそも、画像形成装置には、元原稿の色彩を忠実に再現することが要求されるが、近年、写真等を含む画像の印刷がされるようになり、色彩を人が好ましいと感じる色に変換させることも求められ始めたからである。人が好ましいと感じる色に色彩を変換させるとは、具体的には、いわゆる記憶色を再現することを意味する。記憶色とは、例えば、人の肌、空の青、草木の緑、夕日の赤等の色であり、元原稿に忠実な色の再現を行うよりも、人間が記憶している色に近い色の再現を好ましく感じる色である。
【0004】
このような記憶色を再現するための色補正では、特定色の強調や明るさ補正等を同時に実施することがある。例えば、水色に近い薄い青色になっている空の青を、記憶色(真っ青)に近づける場合、ユーザは、まず、青色についての色域(色再現ができる領域)の範囲内で、青色の分布状態を変更し、青みを強調する色補正を実施する。青みを強調して記憶色に近づけた結果、画像全体が暗いと感じた場合、ユーザは、さらに画像全体を明るくする補正を行う。このような画像補正では、明るさの補正により色相等のカラーバランスが変化してしまい、青み強調により調整した色が、好ましいと思われる色からずれてしまうことがある。
【0005】
後掲の特許文献1では、色補正、明るさ補正、シャープネス補正、コントラスト補正等の画像補正項目のうち、2種の項目を相互に変動させた補正後の画像と、補正前の画像とを、マトリックス状に表示し、ユーザが好ましいと感じる画像を選択する技術を開示している。この技術によれば、複数のパラメータを相互に変動させた複数の画像中から所望の画像を選択することにより補正値を決定できるため、比較的容易に所望の画像を得ることができる。
【0006】
また、人が好ましいと感じる色には地域差が存在することが知られている。このような地域差に対応するため、日本国内のみならず海外においても販売される画像形成装置では設置される地域に応じた色補正を実現する手法が採用されている(特許文献2、3等参照。)。
【0007】
例えば、後掲の特許文献2は、装置の設置地域やユーザの人種に応じた複数の出力用カラーテーブルを有し、ユーザの要求に応じて使用する出力用カラーテーブルを切り替える画像処理装置を開示している。また、後掲の特許文献3は、複数の地域のそれぞれに対応する出力プロファイルを備え、各出力プロファイルをユーザが指示する合成比率で合成した出力プロファイルを生成して使用する画像処理装置を開示している。
【0008】
一方、画像データ中の一部の領域に色補正を実施する場合、当該領域の境界において疑似輪郭が発生したり、階調性が不自然になったりすることがある。この対策として、後掲の特許文献4は、記憶色ごとに異なる色補正係数を有する画像形成装置を開示している。この構成では、原画像に含まれる記憶色からユーザにより色再現において最も重視したい記憶色が選択された場合、当該選択された記憶色に対応する色補正係数を使用して色補正が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−227402号公報
【特許文献2】特開2001−218075号公報
【特許文献3】特開2003−324617号公報
【特許文献4】特開平6−311353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のような、色域の範囲内で特定色(上述の例では青色)の分布状態を変更する色補正は、画像データを構成する全画素に対して実行されるため、画像全体に反映されることになる。上述の例では、画像データを構成する全画素において青色が強調されるため、青色成分を含んでいた画素はより青っぽくなる。すなわち、この補正手法では、色補正を適用したくない箇所の色も変更されてしまう。
【0011】
このような問題は、例えば、補正対象の画像データにおいて、画像補正を実施する領域を指定する機能を画像形成装置が具備し、上述のような色補正を実施する際に、ユーザが色補正を実施する領域を指定する構成を採用することにより解決できるかもしれない。しかしながら、このような構成では、ユーザによる作業が極めて煩雑になる。また、複雑な領域指定が必要な場合、画像形成装置が1ユーザに長時間占有されることにもなり、オフィス等において共用されている場合には作業効率が低下してしまう。
【0012】
また、特許文献4が開示する技術を採用することも考えられるが、当該技術では、選択された記憶色に対応づけられた専用の色補正係数を用いて色補正が実施される。そのため、当該色補正を単独で実施しなければならず、例えば、画像データ全体に対する他の色補正を同時に実施することはできない。
【0013】
一方、特許文献2、3が開示する技術を採用すると、地域差を色補正に反映することが可能になる。しかしながら、特許文献2が開示する技術では、地域に応じて出力用カラーテーブルのみを切り替える構成であるため、印刷物を出力するまでは選択した出力用カラーテーブルが自分のイメージに合致しているか否かを確認することができない。加えて、画像処理装置に用意された出力用カラーテーブルでは、ユーザの要求を満足できない可能性がある。また、特許文献3が開示する技術では、画像処理装置に用意された出力プロファイルを任意の比率で合成する構成であるため、特許文献2の技術に比べて選択可能な出力プロファイルの数は増大する。しかしながら、予め画像処理装置に用意された特定の地域用の出力プロファイルの合成割合を変更する構成であるため、ユーザの好みの色の地域差を網羅できない可能性がある。
【0014】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制できるとともに、所望の色補正を容易に実施できる画像処理装置を提供することを目的とする。また、必要に応じて、全画素に対する補正を容易に併用できる画像処理装置を提供することを目的とする。さらに、地域差に応じた色補正を容易に実施できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明は、画像データに対して色補正を実施する画像処理装置であって、画素抽出部、補正量算出部、選択用画像保持部、選択受付部および色補正実施部を備える。画素抽出部は、画像データから、予め指定された色範囲に属する画素を抽出する。補正量算出部は、画素抽出部が抽出した画素の色と、上記色範囲に対応づけられた目標色との色差に基づいて、当該画素に対する色補正量を算出する。選択用画像保持部は、上記色範囲に属する画素に対して、補正量算出部が上記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を実施した場合の各画像データの外観を示す選択用画像を保持する。選択受付部は、選択用画像保持部が保持する選択用画像を表示するとともに、ユーザによる色補正の選択を受け付ける。色補正実施部は、選択受付部が受け付けた色補正を補正対象の画像データに対して実施する。
【0016】
この画像処理装置によれば、予め指定された色範囲に属する画素、すなわち、特定色の画素に対してのみ色補正が実施される。そのため、色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制することができる。また、ユーザは、予め指定された複数種の色補正を実施した場合の選択用画像に基づいて所望の色補正を選択できるため、極めて容易に色補正を実施することができる。なお、上記予め設定された色範囲には、例えば、肌色、青色、緑色、赤色等の記憶色に対応する色の範囲をそれぞれ設定することができる。
【0017】
この画像処理装置では、画像生成部をさらに備えることができる。画像生成部は、補正対象の画像データについて、上記色範囲に属する画素に対して、補正量算出部が上記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を実施した場合の各画像データの外観を示すサムネイル画像を生成する。この画像生成部が生成したサムネイル画像が選択用画像として選択用画像保持部に保持される。この構成では、ユーザは、補正対象の画像データに対して、予め指定された複数種の色補正を実施した場合のサムネイル画像に基づいて所望の色補正を選択できるため、所望の色補正を確実に実施することができる。
【0018】
また、選択用画像保持部に保持される選択用画像は、補正対象の画像データとは異なる画像データについて、上記色範囲に属する画素に対して、補正量算出部が上記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を予め実施した各画像データからなるサンプル画像であってもよい。この構成では、同一のアルゴリズムで予め色補正が実施されたサンプル画像に基づいて所望の色補正を選択できるため、比較的簡便な構成により上述の効果を得ることができる。
【0019】
上記画像処理装置は、送信部および受信部をさらに備えることができる。送信部は、選択受付部において選択された目標色、当該目標色に対応づけられた色範囲および自機が設置されている地域のそれぞれを示す情報を外部装置へ送信する。当該外部装置は、当該色範囲および地域ごとに目標色の選択頻度を集計する。また、受信部は、外部装置から、自機が設置されている地域情報に対応する目標色の選択頻度を示す情報を受信する。この画像処理装置は、受信部により取得された目標色の選択頻度を示す情報に基づいて決定した配列により選択受付部が選択用画像を表示する。この構成では、例えば、装置が設置されている地域における選択頻度順に選択用画像が配列できるため、ユーザは、容易に好ましい目標色を選択することができる。
【0020】
また、当該画像処理装置は、目標色情報保持部および目標色追加部をさらに備えてもよい。目標色情報保持部は、選択用画像保持部に保持される選択用画像データの目標色の色情報を保持する。目標色追加部は、目標色保持部に新たな目標色を追加する。この画像処理装置では、受信部は、目標色の選択頻度を示す情報とともに当該情報に含まれる各目標色の色情報および各目標色に対応づけられた抽出対象の色範囲を示す情報を上記外部装置から受信する。そして、受信部が受信した目標色の色情報に目標色情報保持部に格納されていない新たな目標色の色情報が含まれている場合、目標色追加部は抽出対象の色範囲を示す情報と対応づけて当該目標色の色情報を目標色情報保持部に格納する。この構成では、外部装置から受信した目標色中に自機に登録されていない目標色が含まれている場合、当該新たな目標色が自動的に追加され、当該新たな目標色をユーザが選択可能になる。また、外部装置に新たな目標色を追加することにより、画像形成装置に事後的に新たな目標色を追加することも可能になる。
【0021】
さらに、上記画像処理装置は、全体色補正実施部および判定部をさらに備えてもよい。全体色補正実施部は、補正対象の画像データの全画素に対して特定の色補正を実施する。判定部は、色補正実施部による色補正と、全体色補正実施部による色補正とをともに実施した場合に、色補正実施部の補正対象画素範囲の周縁部に疑似輪郭が発生するか否かを判定する。そして、判定部により疑似輪郭が発生しないと判定された場合、画素抽出部により抽出された画素に対する色補正実施部による色補正、および全画素に対する全体色補正実施部による色補正が実施される。この画像処理装置によれば、特定色の画素に対する色補正に加えてユーザが全画素に対する色補正を望む場合でも、良好な色補正を実施することができる。
【0022】
この画像処理装置は、優先順受付部および補正量変更部をさらに備えることもできる。優先順受付部は、判定部により疑似輪郭が発生すると判定された場合、画素抽出部により抽出された画素に対する色補正実施部による色補正と、全画素に対する全体色補正実施部による色補正との優先順を受け付ける。補正量変更部は、優先順受付部が受け付けた優先順にしたがって色補正実施部による色補正における色補正量または全体色補正実施部による色補正における色補正量を変更する。この画像処理装置によれば、疑似輪郭の発生を回避して良好な色補正を実施することができる。
【0023】
なお、上述の補正量変更部は、変更した色補正量にしたがって、画素抽出部により抽出された画素に対する色補正実施部による色補正、および全画素に対する全体色補正実施部による色補正を実施した場合の画像データの外観を示す画像を表示するとともに、ユーザによる色補正量の再変更を受け付ける構成であってもよい。これにより、ユーザは、極めて容易に好ましい色補正を実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制することができる。また、所望の色補正をユーザが容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態における複合機の全体構成を示す概略構成図
【図2】本発明の第1の実施形態における複合機の操作パネルを示す模式図
【図3】本発明の第1の実施形態における複合機のハードウェア構成を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態における複合機を示す機能ブロック図
【図5】本発明の第1の実施形態における複合機が実施する色補正手順の一例を示すフロー図
【図6】本発明の第1の実施形態における複合機が表示する対象色選択画面の一例を示す図
【図7】本発明の第1の実施形態における複合機が色補正を実施する画像の一例を示す模式図
【図8】本発明の第1の実施形態における複合機が表示する色補正種選択画面の一例を示す図
【図9】本発明の第1の実施形態における他の複合機を示す機能ブロック図
【図10】本発明の第1の実施形態における他の複合機が実施する色補正手順の一例を示すフロー図
【図11】本発明の第1の実施形態における他の複合機が表示する対象色選択画面の一例を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態における複合機を示す機能ブロック図
【図13】本発明の第2の実施形態における複合機が保持する集計テーブルの一例を示す図
【図14】本発明の第2の実施形態における他の複合機を示す機能ブロック図
【図15】本発明の第3の実施形態における複合機を示す機能ブロック図
【図16】本発明の第3の実施形態における複合機が実施する色補正手順の一例を示すフロー図
【図17】本発明の第3の実施形態における複合機が表示する全体色補正要否選択画面の一例を示す図
【図18】本発明の第3の実施形態における複合機が表示する優先順選択画面の一例を示す図
【図19】本発明の第3の実施形態における複合機が表示する補正量確認調整画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、デジタル複合機として本発明を具体化する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態におけるデジタル複合機の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、複合機100は、画像読取部120および画像形成部140を含む本体101と、本体101の上方に取り付けられたプラテンカバー102とを備える。本体101の上面には原稿台103が設けられており、原稿台103はプラテンカバー102によって開閉されるようになっている。また、プラテンカバー102は、原稿搬送装置110を備えている。
【0028】
原稿台103の下方には、画像読取部120が設けられている。画像読取部120は、走査光学系121により原稿の画像を読み取りその画像のデジタルデータ(画像データ)を生成する。原稿は、原稿台103や原稿搬送装置110に載置することができる。走査光学系121は、第1キャリッジ122や第2キャリッジ123、集光レンズ124を備える。第1キャリッジ122には線状の光源131およびミラー132が設けられ、第2キャリッジ123にはミラー133および134が設けられている。光源131は原稿を照明する。ミラー132、133、134は、原稿からの反射光を集光レンズ124に導き、集光レンズ124はその光像をラインイメージセンサ125の受光面に結像する。この走査光学系121において、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123は、副走査方向135に往復動可能に設けられている。第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を副走査方向135に移動することによって、原稿台103に載置された原稿の画像をイメージセンサ125で読み取ることができる。原稿搬送装置110にセットされた原稿の画像を読み取る場合、画像読取部120は、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を画像読取位置に合わせて一時的に固定し、画像読取位置を通過する原稿の画像をイメージセンサ125で読み取る。イメージセンサ125は、受光面に入射した光像から、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に対応する原稿の画像データを生成する。生成された画像データは、画像形成部140において用紙に印刷することができる。また、ネットワークアダプタ161によりネットワーク162を通じて他の機器へ送信することもできる。
【0029】
画像形成部140は、画像読取部120で得た画像データや、ネットワーク162に接続された他の機器(図示せず)から受信した画像データを用紙に印刷する。画像形成部140は、感光体ドラム141を備える。感光体ドラム141は一定速度で一方向に回転する。感光体ドラム141の周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器142、露光器143、現像器144、中間転写ベルト145が配置されている。帯電器142は、感光体ドラム141表面を一様に帯電させる。露光器143は、一様に帯電した感光体ドラム141の表面に、画像データに応じて光を照射し、感光体ドラム141上に静電潜像を形成する。現像器144は、その静電潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム141上にトナー像を形成する。中間転写ベルト145は、感光体ドラム141上のトナー像を用紙に転写する。画像データがカラー画像である場合、中間転写ベルト145は、各色のトナー像を同一の用紙に転写する。なお、RGB形式のカラー画像は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)形式の画像データに変換され、各色の画像データが露光器143に入力される。
【0030】
画像形成部140は、手差しトレイ151、給紙カセット152、153、154等から、中間転写ベルト145と転写ローラ146との間の転写部に用紙を給送する。手差しトレイ151や各給紙カセット152、153、154には、様々なサイズの用紙を載置または収容することができる。画像形成部140は、ユーザの指定した用紙や、自動検知した原稿のサイズに応じた用紙を選択し、選択した用紙を給送ローラ155により手差しトレイ151やカセット152、153、154から給紙する。給紙された用紙は搬送ローラ156やレジストローラ157で転写部に搬送する。トナー像を転写した用紙は、搬送ベルト147により定着器148に搬送される。定着器148は、ヒータを内蔵した定着ローラ158および加圧ローラ159を有しており、熱と押圧力によってトナー像を用紙に定着する。画像形成部140は、定着器148を通過した用紙を排紙トレイ149へ排紙する。
【0031】
図2は複合機が備える操作パネルの外観の一例を示す図である。ユーザは、操作パネル200を用いて、複合機100に複写開始やその他の指示を与えたり、複合機100の状態や設定を確認したりすることができる。操作パネル200には、タッチパネル付きディスプレイ201や操作キー203が配置されている。ディスプレイ201は、操作ボタンやメッセージ等を表示する液晶ディスプレイ等からなる表示面と、当該表示面上の押圧位置を検出するセンサとを備える。押圧位置の検知方法は特に限定されない。抵抗膜方式、静電容量方式、表面弾性波方式、電磁波方式等、任意の方式を採用することができる。ユーザは、自身の指やタッチペン202を使用して、ディスプレイ201を通じて入力を行うことができる。
【0032】
ディスプレイ201は、ボタン表示部204、メッセージ表示部205およびステータス表示部206を有する操作画面を表示する。ボタン表示部204には、複数のタブ208が用意されており、各タブにはそのタブのカテゴリーに応じた操作ボタンが配列されている。「簡単設定」タブは、基本的な設定に使用される操作ボタンを有する。図2の例では、用紙サイズ、複写倍率、濃度、印刷面、ページ集約、後処理を設定するための操作ボタンが配列されている。例えば「濃度」ボタン207を押圧する操作をユーザが行うと、濃度を選択するための「薄い」、「ふつう」、「濃い」等の選択ボタンを有するポップアップ画面がその操作ボタン上に重ねて表示され、ユーザの選択(押圧)によりその濃度が設定される。図2の例では、「簡単設定」タブの他、「原稿/用紙/仕上げ」タブ、「カラー/画質」タブ、「レイアウト/編集」タブ、「応用/その他」タブも設けられている。ユーザは、タブボタン208を選択する操作を行うことによって、これらのタブの表示に切り替えることができる。一つのタブが選択されている間、操作画面上で他のタブやその要素は隠れている。なお、この複合機100では、後述する色補正は、「カラー/画質」タブに含まれる「ワンタッチ画質調整」ボタンの押圧により実行可能になる。
【0033】
メッセージ表示部205には、複写が可能か否か、複写部数などの設定をユーザに通知するメッセージが表示される。また、ステータス表示部206には、必要に応じて装置ステータス情報が表示される。この表示には、複合機100が備える各種センサの検知結果が反映される。装置ステータス情報とは、装置は動作可能な状態にあるが、異常への対応を促す警告をユーザに通知するメッセージを意味する。例えば、用紙残量が少ない旨、原稿台103が汚れている旨、ファクシミリのメモリ受信が設定されている場合にファックス文書がメモリに格納された旨等が含まれる。また、用紙切れや搬送ジャム等が装置ステータス情報に含まれてもよい。
【0034】
操作キー203は、主電源キー209、テンキー210やスタートキー211、クリアキー212等を含む。例えば、電源キー209は、複合機100のON、OFFの切り替えに使用される。テンキー210は、複写部数の指定や複写倍率の設定に用いることができる。ユーザがそれらの設定をすると、複合機100は、メッセージ表示部205に、例えば、「コピーできます(設定あり)」のようなメッセージを表示し、ユーザによる設定が行われたことを通知する。スタートキー211は、複写や画像印刷の開始指示に使用される。ユーザは、自身でした設定を解除する場合、クリアキー212を操作する。ユーザによる設定を機械が受け付けているかどうかは上述のメッセージで判断することができるので、その設定が不要になればクリアキー212を操作すればよい。
【0035】
図3は、複合機における制御系のハードウェア構成図である。本実施形態の複合機100は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、ROM(Read Only Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304および原稿搬送装置110、画像読取部120、画像形成部140における各駆動部に対応するドライバ305が内部バス306を介して接続されている。ROM303やHDD304等はプログラムを格納しており、CPU301はその制御プログラムの指令にしたがって複合機100を制御する。例えば、CPU301はRAM302を作業領域として利用し、ドライバ305とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。また、HDD304は、画像読取部120により得られた画像データや、他の機器からネットワークアダプタ161を通じて受信した画像データの蓄積にも用いられる。
【0036】
内部バス306には、操作パネル200や各種のセンサ307も接続されている。操作パネル200は、ユーザの操作を受け付け、その操作に基づく信号をCPU301に供給する。また、ディスプレイ201は、CPU301からの制御信号にしたがって上述の操作画面を表示する。センサ307は、プラテンカバー102の開閉検知センサや原稿台103上の原稿検知センサ、定着器148の温度センサ、搬送される用紙または原稿の検知センサなど各種のセンサを含む。CPU301は、例えばROM303に格納されたプログラムを実行することで、以下の各手段(機能ブロック)を実現するとともに、これらセンサからの信号に応じて各手段の動作を制御する。
【0037】
図4は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。図4に示すように、本実施形態の複合機100は、画素抽出部401、補正量算出部402、選択用画像保持部403、選択受付部404、色補正実施部405、画像保持部406および画像生成部407を備える。
【0038】
画像保持部406は、色補正対象の画像データを一時的に保持する。画像保持部406に保持される画像データは、例えば、画像記憶部412から取得される。画像記憶部412は、上述のHDD304に確保された記憶領域であり、画像読取部120から入力された画像データやネットワーク161等を介して外部装置から入力された画像データが格納される。なお、画像読取部120から入力された画像データやネットワーク161等を介して外部装置から入力された画像データが画像保持部406に直接格納される構成であってもよい。
【0039】
画素抽出部401は、画像保持部406に格納された画像データ、あるいは画像生成部407が生成した補正前画像データ外観を示すサムネイル画像(後述する)から、予め指定された色範囲に属する画素を抽出する。当該色範囲は、例えば、均等色空間である、CIE Lh色空間において一定の領域を占める色として設定することができる。ここでは、画像データは、sRGB(standard RGB)等の絶対色空間を構成する色成分で表現された色情報を有しており、CIE Lh色空間での表現に容易に変換可能である。なお、画像データが、機器依存を有するRGB形式で表現された色情報を有している場合は、複合機100が、当該色情報を、絶対色空間で表現された色情報に変換する。
【0040】
補正量算出部402は、画素抽出部401が抽出した画素の色と、上記色範囲に対応づけられた目標色との色差に基づいて、当該画素に対する色補正量を算出する。仮に、画素抽出部401が抽出した全画素を予め指定された1つの目標色に変換すると、階調飛びが発生し画像品質が著しく低下してしまう。そのため、補正量算出部402は、画素抽出部401が抽出した画素の色と、上記色範囲に対応づけられた目標色との色差、すなわち、均等色空間(あるいは、均等色平面)における2色間の距離に応じた色補正量を算出することにより階調飛びの発生を防止する。この補正手法では、画素抽出部401が抽出した画素の色を目標色に近づける補正が実現できる。
【0041】
具体的には、色差が大きい場合は目標色に向かう方向の補正量(以下、色補正ベクトルという。)を大きくし、色差が小さい場合は色補正ベクトルを小さくする。特に限定されないが、本実施形態では、色差の大きさに応じて、例えば、5段階の補正パラメータa1、a2、a3、a4、a5(a1<a2<a3<a4<a5)の中から1の補正パラメータが選択され、色補正ベクトルの大きさが、色差と選択された補正パラメータとの積により算出される。この場合、補正パラメータは0から1の間の値として設定される。
【0042】
本実施形態では、目標色は、CIE Lh色空間内の一点として設定される。すなわち、CIE Lh色空間内の目標色に向かう色補正ベクトルが色補正量として算出される。
【0043】
選択用画像保持部403は、上記色範囲に属する画素に対して、上記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて補正量算出部402が算出した色補正量にしたがって色補正を実施した場合の各画像データの外観を示す選択用画像を保持する。なお、図4に示す複合機100では、選択用画像は画像生成部407によって生成される。
【0044】
画像生成部407は、上記色範囲に属する画素に対して、上記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて補正量算出部402が算出した色補正量にしたがって色補正を実施した場合の各画像データの外観を示すサムネイル画像を生成する。特に限定されないが、本実施形態では、画像生成部407は、まず、画像保持部406に保持された画像データに基づいて元画像データに対応するサムネイル画像(以下、補正前サムネイル画像という。)を生成する。そして、当該補正前サムネイル画像に対して色補正を適用することで、補正を実施した場合の画像データに対応するサムネイル画像(以下、補正後サムネイル画像という。)を生成する。すなわち、補正前サムネイル画像から、予め指定された色範囲に属する画素として画素抽出部401が抽出した各画素について、補正量算出部402が色補正量を算出し、当該色補正量にしたがって画像生成部407が色補正を実施することにより補正後サムネイル画像を生成する。画像生成部407が生成した補正前サムネイル画像および補正後サムネイル画像は選択用画像保持部403に入力され、選択用画像保持部403において選択用画像として保持される。なお、サムネイル画像の生成方法には公知の手法を採用可能であるため、ここでの説明は省略する。
【0045】
また、補正量算出部402は、画素抽出部401が画素の抽出に使用した色範囲に対応づけられた複数の目標色を保持しており、当該複数の目標色のそれぞれについて色補正量を算出する。例えば、1つの色範囲に3つの目標色が対応づけられている場合、補正量算出部402はそれぞれの目標色に対応する色補正量を算出し、画像生成部407は、3つの目標色のそれぞれに対応する補正後サムネイル画像を生成する。
【0046】
選択受付部404は、選択用画像保持部403に保持された各選択用画像を表示するとともに、ユーザによる色補正の選択を受け付ける。特に限定されないが、本実施形態では、ディスプレイ201に選択用画像として上述した各補正後サムネイル画像とともに補正前サムネイル画像を表示し、ユーザによる色補正の選択を受け付ける。1つの色範囲に3つの目標色が対応づけられている例では、選択受付部404は、補正前サムネイル画像を含む4つのサムネイル画像と、3つの補正後サムネイル画像のいずれかを選択するための選択ボタンをディスプレイ201に表示することになる。
【0047】
なお、ディスプレイ201を含む操作パネル200に対する操作(操作キー203の押下やディスプレイ201の押圧)は、操作認識部411によって認識される。特に限定されないが、本実施形態では、操作認識部411に、ディスプレイ201の押圧位置を検出するセンサにより検出された押圧位置の座標が入力され、操作認識部411が、自身が保持する、操作ボタン等の画面要素の座標と、入力された押圧位置の座標とに基づいてユーザの操作内容を認識する。上述のユーザによる色補正の選択操作も、操作認識部411によって認識され、選択受付部404に入力されるようになっている。
【0048】
色補正実施部405は、選択受付部404が受け付けた色補正を補正対象の画像データに対して実施する。特に限定されないが、本実施形態では、画像保持部406に保持された画像データから、予め指定された色範囲に属する画素として画素抽出部401が抽出した各画素について、選択受付部404が受け付けた色補正(目標色)に対応する色補正量を補正量算出部402が算出し、当該色補正量にしたがって色補正実施部405が色補正を実施する。
【0049】
図5は、複合機100が実施する色補正手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、ユーザにより色補正指示が入力されたことをトリガーとして進行する。なお、色補正指示は、上述したように、操作画面の「カラー/画質」タブに含まれる「ワンタッチ画質調整」ボタンをユーザが押圧することで複合機100に入力される。
【0050】
このとき、複合機100(例えば、画像保持部406)は、画像データ指定を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる画像データの指定が完了するまで待機する(ステップS501No)。ユーザは、色補正対象となる画像データを指定する。指定方法は、特に限定されない。例えば、画像記憶部412に格納されている画像データを色補正対象の画像データに指定する場合は、画像記憶部412に格納されている画像データの一覧をディスプレイ201に表示し、当該一覧から読み出す画像データを選択すればよい。選択された画像データは、画像記憶部412から読み出されて画像保持部406に保持される。また、色補正対象の画像データは画像読取部120で読み取ることもできる。この場合、ユーザは原稿搬送装置110の原稿トレイに色補正対象の原稿をセットし、スタートキー押下等により読取開始を複合機100に指示する。画像読取部120により読み取られた画像データは画像保持部406に保持される。なお、同一の色補正を適用するのであれば、画像保持部406に保持される画像データは複数頁であってもよいが、ここでは1頁である例に基づいて説明する。
【0051】
画像データの指定が完了すると、複合機100(例えば、画素抽出部401)は、補正対象色の選択を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる補正対象色の選択が完了するまで待機する(ステップS501Yes、S502No)。ユーザは、補正対象となる色を選択する。
【0052】
図6は、このときディスプレイ201に表示される、対象色選択画面の一例を示す図である。この例では、対象色選択画面601は、対象色の選択に使用される選択ボタン602〜605、選択を中止して画像データの指定に戻るために使用される「戻る」ボタン606を備える。図6では、選択ボタンとして、記憶色の1つである肌色に対応する「人物写真」ボタン602、記憶色の1つである青色に対応する「風景写真(青)」ボタン603、記憶色の1つである緑色に対応する「風景写真(緑)」ボタン604、記憶色の1つである赤色に対応する「風景写真(赤)」ボタン605を備える例を示している。ユーザが、選択ボタン602〜605から1のボタンを選択すると、画素抽出部401は、選択されたボタン(記憶色)に対応づけられた色範囲を画素抽出に使用する色範囲として設定する。
【0053】
例えば、図6において、ユーザが「風景写真(青)」ボタン603を選択すると、画素抽出部401は、当該ボタンに対応づけられた青色の色範囲(L:20〜80、C:5〜55、Hue:190〜330°)に属する色の画素を抽出する状態に設定される。なお、このような色範囲は、選択ボタン602〜605と対応づけて画素抽出部401に予め登録されている。
【0054】
補正対象色の指定を受けた画素抽出部401は、画像生成部407に補正前サムネイル画像および複数の補正後サムネイル画像の生成を指示する(ステップS502Yes、S503)。当該指示を受けた画像生成部407は、上述のように、まず、画像保持部406に保持されている画像データに基づいて補正前サムネイル画像を生成する。補正前サムネイル画像の生成を完了した画像生成部407は、その旨を画素抽出部401に通知する。当該通知を受けた画素抽出部401は、画像生成部407が生成した補正前サムネイル画像から、対象色選択画面601を通じて指定された色範囲に属する色を有する画素を抽出する。画素抽出部401は、抽出した画素の色を示す情報(以下、色情報という。)および当該画素の補正前サムネイル画像中の位置を示す情報(以下、位置情報という。)を、指定された色範囲を示す情報(以下、色範囲識別子という。)とともに補正量算出部402に入力する。
【0055】
図7は、色補正を実施する画像の一例を示す図である。図7に示す画像701では、下方の1/3程度を占める海703と、上方の2/3程度を占める空が含まれている。空には、複数の雲704が存在する。空のうち、海703との界面(水平線)付近は雲704の存在と相まって白に近い色を有しており、画像701の上方1/2程度を占める領域のうち、雲704以外の部分が薄い青色の領域702になっている。なお、当該薄い青色は、上述の青色の色範囲に含まれる。また、海703には、白波が立っており、全体としてやや緑系の色を有している。当該緑系の色は、上述の青色の色範囲に含まれない。このような画像701について上述の青色の色範囲が設定された画素抽出部401が画素抽出を行うと、領域702に含まれる画素が抽出されることになる。
【0056】
上記入力を受けた補正量算出部402は、入力された色範囲識別子に対応づけられた目標色を特定し、当該目標色と入力された色情報とに基づいて、上述した手法により当該画素についての色補正量を目標色ごとに算出する。特に限定されないが、本実施形態では、画素抽出部401が補正量算出部402に入力する色情報は、sRGB色空間における色成分であり、補正量算出部402が当該色成分をCIE Lh色空間の色成分に変換する構成になっている。
【0057】
目標色は、選択ボタン602〜605に対応する色範囲識別子と対応づけて補正量算出部402に予め登録される。例えば、上述の青色の色範囲を示す色範囲識別子に対しては、CIE Lh色空間内の、(L,a,b)=(56,−18,−44)、(L,a,b)=(57,−1,−47)、(L,a,b)=(54,−28,−30)の3点が目標色として登録されている。なお、(L,a,b)=(56,−18,−44)の目標色を適用すると、鮮やかな青色の方向へ調整される(以下、青1という。)。また、(L,a,b)=(57,−1,−47)の目標色を適用すると、緑みのない真っ青な青色の方向へ調整される(以下、青2という。)。さらに、(L,a,b)=(54,−28,−30)の目標色を適用すると、緑みのある青色(いわゆる、エメラルドグリーン)の方向へ調整される(以下、青3という。)。
【0058】
また、対象色選択画面601における他の選択ボタンについても簡単に説明すると、「人物写真」ボタン602には、赤みのある、血色の良い印象の肌色の方向へ調整される目標色、日焼けしたような印象の肌色の方向へ調整される目標色、色白の肌色の方向へ調整される目標色が対応づけられている。また、「風景写真(緑)」ボタン604には、鮮やかな緑色の方向へ調整される目標色、黄緑色の方向へ調整される目標色、やや青みのある緑色の方向へ調整される目標色が対応づけられている。さらに、「風景写真(赤)」ボタン605には、鮮やかな赤色の方向へ調整される目標色、オレンジ色の方向へ調整される目標色、ピンク色の方向へ調整される目標色が対応づけられている。
【0059】
色補正量を算出した補正量算出部402は、算出した色補正量を、位置情報および目標色を示す情報(例えば、上述の「青1」、「青2」、「青3」等の識別子)とともに画像生成部407に入力する。当該入力を受けた画像生成部407は、入力された位置情報に対応する補正前サムネイル画像の画素の色を入力された補正量にしたがって補正することにより、各目標色に対応する補正後サムネイル画像を生成する。なお、補正量算出部402は、算出した色補正量を入力された色情報に適用し、さらに、sRGB色空間における色成分に変換した色情報を画像生成部407に入力してもよい。この場合、画像生成部407は、入力された位置情報に対応する補正前サムネイル画像の画素の色を、入力された色に置換することにより、各目標色に対応する補正後サムネイル画像を生成することができる。
【0060】
以上のようにして、サムネイル画像の生成を完了した画像生成部407は、生成した補正前サムネイル画像および補正後サムネイル画像を選択用画像保持部403に入力するとともに選択受付部404に生成完了を通知する。当該通知を受けた選択受付部404は、ユーザによる色補正種(目標色)の選択を受け付ける画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる色補正種の選択が完了するまで待機する(ステップS504、S505No)。当該画面には、画像生成部407が生成し、選択用画像保持部403に保持されているサムネイル画像が含まれる。
【0061】
図8は、このときディスプレイ201に表示される、色補正種選択画面の一例を示す図である。この例では、色補正種選択画面801は、元画像の外観を示す補正前サムネイル画像802、各目標色に対応する補正後の外観を示す補正後サムネイル画像803〜805を選択用画像として含む。この図では、補正後サムネイル画像803が上述の「青1」に対応し、補正後サムネイル画像804が上述の「青2」に対応し、補正後サムネイル画像805が上述の「青3」に対応する。また、色補正種選択画面801は、補正後サムネイル画像に対応する色補正の選択に使用される「青1」ボタン806、「青2」ボタン807、「青3」ボタン808、選択を中止して補正対象色の選択に戻るために使用される「戻る」ボタン809を備える。
【0062】
図8に示す色補正種選択画面801において、ユーザが「青1」ボタン806、「青2」ボタン807、「青3」ボタン808のいずれかを選択すると、当該選択が操作認識部411を介して選択受付部404に入力される(ステップS505Yes)。当該入力を受けた選択受付部404は、選択された色補正(目標色)を示す情報を色補正実施部405に入力する。例えば、図8において、ユーザが「青2」ボタン807を選択すると、選択受付部404は識別子「青2」を色補正実施部405に入力する。
【0063】
色補正(目標色)を示す情報が入力された色補正実施部405は、当該情報を補正量算出部402に入力するとともに、色補正の開始を画素抽出部401に通知する。当該通知を受けた画素抽出部401は、画像保持部406に保持されている画像データから、先に指定されている色範囲に属する色を有する画素を抽出する。画素抽出部401は、抽出した画素の色情報および当該画素の画像データ中の位置情報を補正量算出部402に入力する。当該入力を受けた補正量算出部402は、色補正実施部405から入力された色補正(目標色)を示す情報から目標色を特定し、当該目標色と入力された色情報とに基づいて、上述した手法により当該画素についての色補正量を算出する。
【0064】
色補正量を算出した補正量算出部402は、算出した色補正量を、位置情報とともに色補正実施部405に入力する。当該入力を受けた色補正実施部405は、画像保持部406に保持されている画像データを取得し、入力された位置情報に対応する画素の色を入力された補正量にしたがって補正することにより、補正対象画像データに対する色補正を実施する。なお、上述のように、補正量算出部402は、算出した色補正量を入力された色情報に適用し、さらに、sRGB色空間における色成分に変換した色情報を色補正実施部405に入力してもよい。この場合、色補正実施部405は、入力された位置情報に対応する補正対象画像データの画素の色を入力された色に置換することにより、色補正を実行することができる。例えば、図7に示す画像701に対し、図8に示す色補正種選択画面801において、ユーザが「青2」ボタン807を選択すると、色補正実施部405は、画像保持部406に保持されている補正対象画像データの領域702に対し、緑みのない真っ青な青色の方向へ調整する色補正を実施することになる。
【0065】
なお、以上のようにして色補正実施部405が生成した色補正後の画像データは、画像形成部140において印刷されたり、画像記憶部412に格納されたりすることで、色補正実施部405から出力される。
【0066】
以上説明したように、この複合機100では、予め指定された色範囲に属する画素、すなわち、特定色の画素に対してのみ色補正が実施される。そのため、色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制することができる。この構成においても、指定された色範囲に属する画素が色補正を適用したくない箇所に存在するとその画素の色も変更されることになるが、色補正を適用したくない箇所の全ての画素に色補正が適用されるわけではないので、意図しない色の変化は従来法に比べて抑制されることになる。
【0067】
また、ユーザは、補正対象の画像データに対して、予め指定された複数種の色補正を実施した場合のサムネイル画像に基づいて所望の色補正を選択できるため、極めて容易に色補正を実施することができる。
【0068】
ところで、上述の事例は、補正対象の画像データからサムネイル画像を生成し、当該サムネイル画像を、色補正を実施した場合の各画像データの外観を示す選択用画像として色補正種選択画面に表示する構成である。このような構成は、補正対象の画像データに色補正を適用した状態を直接的に視認できるという利点はあるが、色補正の都度サムネイル画像を生成するための処理時間を要してしまう。また、記憶色の再現では、人間が記憶している色に近い色を再現すること、すなわち、記憶の中に存在する色のイメージを再現することが求められるため、少なくとも、色補正前の画像データと色補正後の画像データとの対比が可能な見本(サンプル画像)が存在すれば、ユーザが自身のイメージに合致する色補正であるか否かをある程度判断できるという実情もある。そこで、以下では、上述の複合機100に比べて、短時間かつ簡単な構成で所望の色補正を実現可能な構成について説明する。
【0069】
図9は、本実施形態の他の複合機を示す機能ブロック図である。図9に示すように、この他の複合機900は、画素抽出部401、補正量算出部402、選択用画像保持部903、選択受付部404、色補正実施部405および画像保持部406を備える。すなわち、画像生成部は備えていない。なお、図9では、図4に示す複合機100と同一の作用効果を奏する部位には、同一の符号を付している。以下、複合機100との相違点について詳細に説明する。
【0070】
図9に示す構成において、選択用画像保持部903が選択用画像を保持する点については、図4に示す選択用画像保持部403と同様である。しかしながら、この例では、選択用画像保持部903は、選択用画像として、補正対象の画像データとは異なる、サンプル画像を保持している。サンプル画像は、予め指定された特定の画像データについて、画素抽出部401に指定された色範囲に属する画素に対して、補正量算出部402が当該色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を予め実施した各画像データである。つまり、選択用画像保持部903には、特定の画像と、当該特定の画像に対して、画素抽出部401、補正量算出部402および色補正実施部405により、補正量算出部402に登録されている複数の目標色についてそれぞれ色補正が実施された後の画像が予め格納されている。
【0071】
例えば、上述のように、1つの色範囲に対して3つの目標色が登録されている場合、選択用画像保持部903には、補正前画像および当該補正前画像を3つの目標色ついて補正量算出部402が算出した色補正量にしたがって色補正を実施した3つの補正後画像の4つの選択用画像が格納される。なお、各画像は、色範囲を示す色範囲識別子および目標色を示す情報(例えば、上述の「青1」、「青2」、「青3」等の識別子)と対応づけて格納される。また、図6に示す対象色選択画面601のように複数の対象色が選択可能である場合は、補正前画像および補正後画像は、各対象色を示す色範囲識別子および目標色を示す情報と対応づけて選択用画像保持部903に格納される。
【0072】
なお、補正前画像は対象色に応じた画像であることが好ましい。すなわち、対象色が肌色(「人物写真」)の場合は人物の顔等の肌が画像中の多くの領域を占める画像が好ましく、対象色が青色(「風景写真(青)」)の場合は青空等が画像中の多くの領域を占める画像が好ましい。また、対象色が緑色(「風景写真(緑)」)の場合は草木等が画像中の多くの領域を占める画像が好ましく、対象色が赤色(「風景写真(赤)」)の場合は夕焼け空等が画像中の多くの領域を占める画像が好ましい。
【0073】
図10は、複合機900が実施する色補正手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、ユーザにより色補正指示が入力されたことをトリガーとして進行する。操作画面の「カラー/画質」タブに含まれる「ワンタッチ画質調整」ボタンをユーザが押圧することで色補正指示が複合機900に入力される点は同様である。
【0074】
このとき、複合機900(例えば、画像保持部406)は、画像データ指定を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる画像データの指定が完了するまで待機する(ステップS1001No)。ユーザは、例えば、上述した方法により、色補正対象となる画像データを指定する。
【0075】
画像データの指定が完了すると、複合機900(例えば、選択受付部404)は、補正対象色の選択を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる補正対象色の選択が完了するまで待機する(ステップS1001Yes、S1002No)。ユーザは、補正対象となる色を選択する。ここでは、複合機100と同様、図6に示す対象色選択画面601がディスプレイ201に表示される。
【0076】
補正対象色の指定を受けた選択受付部404は、ユーザによる色補正種(目標色)の選択を受け付ける画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる色補正種の選択が完了するまで待機する(ステップS1002Yes、S1003、S1004No)。当該画面には、選択用画像保持部903に保持されている、選択された対象色に対応する選択用画像(補正前画像および補正後画像)が含まれる。
【0077】
図11は、このときディスプレイ201に表示される、色補正種選択画面の一例を示す図である。この例では、色補正種選択画面1101は、補正前の外観を示す補正前画像1102、各目標色に対応する補正後の外観を示す補正後画像1103〜1105を選択用画像として含む。この図では、補正後画像1103が上述の「青1」に対応し、補正後画像1104が上述の「青2」に対応し、補正後画像1105が上述の「青3」に対応する。また、色補正種選択画面1101は、補正後画像に対応する色補正の選択に使用される「青1」ボタン1106、「青2」ボタン1107、「青3」ボタン1108、選択を中止して補正対象色の選択に戻るために使用される「戻る」ボタン1109を備える。当該色補正種選択画面1101の機能は、上述の色補正種選択画面801の機能と同様である。ただし、同一の対象色が選択された場合には、ステップS1001において指定された画像データに関係なく、同一の選択用画像1102〜1105が表示される点が上述の色補正種選択画面801とは異なる。
【0078】
図11に示す色補正種選択画面1101において、ユーザが「青1」ボタン1106、「青2」ボタン1107、「青3」ボタン1108のいずれかを選択すると、当該選択が操作認識部411を介して選択受付部404に入力される(ステップS1004Yes)。当該入力を受けた選択受付部404は、選択された色補正(目標色)を示す情報を色補正実施部405に入力する。色補正(目標色)を示す情報が入力された色補正実施部405は、上述の複合機100と同様の手法により、画像保持部406に保持されている画像データを取得し、取得した補正対象画像データに対する色補正を実施する。
【0079】
以上説明したように、この複合機900においても、予め指定された色範囲に属する画素、すなわち、特定色の画素に対してのみ色補正が実施される。そのため、色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制することができる。また、ユーザは、予め指定された複数種の色補正を実施した場合の選択用画像(サンプル画像)に基づいて所望の色補正を選択できるため、極めて容易に色補正を実施することができる。この選択用画像は、同一のアルゴリズムで予め色補正が実施されたサンプル画像であるため、複合機100に比べて簡便な構成により実現することができ、処理時間も短縮することができる。
【0080】
なお、複合機100の構成と複合機900の構成とを併用することも可能である。この場合、ユーザが、必要に応じて、補正対象の画像データからサムネイル画像を生成し、当該サムネイル画像を、色補正を実施した場合の各画像データの外観を示す選択用画像として色補正種選択画面に表示することが可能になる。
【0081】
以上のとおり、本発明によれば、色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制することができ、また、所望の色補正をユーザが容易に実施することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
上述のように、人が好ましいと感じる色には地域差が存在することが知られている。そこで、本実施形態では、上述の選択用画像による目標色の選択において当該地域差を反映し、好ましい目標色をユーザが容易に選択できる構成について説明する。
【0083】
図12は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。なお、図12では、第1の実施形態において説明した複合機100における構成要素と同一の作用効果を奏する構成要素には同一の符号を付し、以下での詳細な説明は省略する。
【0084】
図12に示すように、本実施形態の複合機1200は、上述の複合機100の構成に加えて、送信部1201および受信部1202を備える。送信部1201および受信部1202は、上記複合機100の各手段と同様、例えば、プロセッサとRAMやROM等のメモリとを備えたハードウェア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。送信部1201および受信部1202はネットワークアダプタ161を通じてネットワーク162に接続されており、ネットワーク162を介して外部装置1210と通信することができる。外部装置1210の構成については後述する。
【0085】
送信部1201は、選択受付部404において選択された目標色を示す情報、当該目標色に対応づけられた色範囲を示す情報(上記色範囲識別子)、および複合機1200が設置されている地域を示す情報(以下、地域情報という。)を外部装置1210へ送信する。選択受付部404において選択された目標色を示す情報は、例えば、上述の「青1」、「青2」、「青3」等の識別子を使用することができる。また、地域情報は、例えば、各地域を一意に特定する文字列等からなる地域コードを使用することができる。なお、地域情報は、例えば、複合機1200の販売時や設置時に複合機1200に登録される。特に限定されないが、地域情報は選択受付部404に登録される構成とすることができる。
【0086】
受信部1202は、複合機1200に登録されている地域情報に対応する目標色の選択頻度を示す情報(以下、使用頻度情報という。)を外部装置1210から受信する。特に限定されないが、本実施形態では、送信部1201が外部装置1210へ地域情報を送信した際に、外部装置1210から複合機1200に当該地域情報に対応する使用頻度情報が返信される。使用頻度情報を受信した受信部1202は、当該使用頻度情報を選択受付部404に入力する。選択受付部404は、第1の実施形態において説明したユーザによる目標色の選択を受け付ける際に、当該使用頻度情報に基づいて決定した配列により各選択用画像をディスプレイ201に表示する。特に限定されないが、本実施形態では、選択受付部404は、使用頻度情報に基づいて、以降の目標色選択の際に表示される色補正種選択画面801において、選択頻度のより高い目標色の選択用画像を左方に配置する。
【0087】
続いて、外部装置1210について説明する。図12に示すように、外部装置1210は、ネットワークアダプタ1211、送信部1212、受信部1213および集計部1214を備える。送信部1212、受信部1213および集計部1214は、例えば、プロセッサとRAMやROM等のメモリとを備えたハードウェア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。送信部1212および受信部1213はネットワークアダプタ1211を通じてネットワーク162に接続されており、ネットワーク162を介して複合機1200と通信することができる。
【0088】
受信部1213は、複合機1200の送信部1201から送信された、目標色を示す情報、当該目標色に対応づけられた色範囲識別子および地域情報を受信する。受信部1213は受信した各情報を集計部1214に入力する。
【0089】
集計部1214は、受信部1213が受信した目標色を示す情報に基づいて、目標色の選択回数を地域情報および色範囲識別子ごとに集計する。特に限定されないが、本実施形態では、集計部1214は、色範囲識別子ごとに集計テーブルを保持している。当該集計テーブルは、当該色範囲識別子に含まれる各目標色の選択回数と地域情報とを対応づけて記憶する。
【0090】
図13(a)は集計部1214が保持する集計テーブルの一例を示す図である。この例では、青色の色範囲を示す色範囲識別子についての集計テーブル1301を示している。図13(a)に示すように、集計テーブル1301には、青色の色範囲を示す色範囲識別子に含まれる目標色(ここでは、「青1」、「青2」、「青3」)と対応づけて、各地域コード(ここでは、「AS01」、「AS02」、「NA01」、「SA01」、「EP01」、「EP02」)ごとの目標色の選択回数(地域別選択回数)が格納されている。
【0091】
例えば、上記青色の色範囲を示す色範囲識別子、識別子「青1」、極東を示す地域コード「AS01」が複合機1200から入力された場合、入力された色範囲識別子に対応する集計テーブル1301中の「青1」および「AS01」に対応する計数値「188」がカウントアップされて「189」になる。なお、地域情報の区分としては、複数国を含む地域や国ごと等任意の区分を採用することができる。
【0092】
また、集計部1214は、集計テーブル1301においてカウントアップされた計数値が属する地域情報に含まれる各計数値に基づいて、各目標色の使用頻度情報を生成する。特に限定されないが、ここでは、当該使用頻度情報は、各目標色を示す情報とそれぞれの計数値の大小関係を示す情報とを対応づけたデータとして構成される。なお、計数値の大小関係を示す情報は、計数値そのものや、降順の順位、昇順の順位等、大小関係を認識可能な任意の情報を使用することができる。
【0093】
集計部1214は、生成した使用頻度情報を、当該使用頻度情報の生成対象となった地域情報(上述の例では「AS01」)および色範囲識別子(上述の例では青色の色範囲を示す色範囲識別子)と対応づけて送信部1212に入力する。当該入力を受けた送信部1212は、受信部1213から複合機1200の宛先情報を取得し、複合機1200に対して入力された情報を送信する。なお、当該情報を受信した複合機1200の動作は上述のとおりである。
【0094】
以上説明したように、この複合機1200によれば、選択受付部404は、ユーザによる目標色の選択を受け付ける際に、受信部1202により取得された使用頻度情報に基づく配列により選択用画像をディスプレイ201に表示することができる。そのため、例えば、複合機1200が設置されている地域における目標色の選択頻度順、すなわち当該地域において好ましいと考えられている順に選択用画像を配列することができる。その結果、ユーザは、好ましい目標色を容易に選択することができる。本構成は、例えば、選択可能な目標色の数が多く、上述の色補正種選択画面801において選択用画像を複数頁にわたって表示する必要がある場合に特に有用である。
【0095】
なお、上記では、複合機1200の送信部1201による外部装置1210への情報送信をトリガーとして、受信部1202が外部装置1210から使用頻度情報を取得する構成について説明したが、受信部1202が定期的(例えば、1日1回)に外部装置1210から使用頻度情報を受信する構成であってもよい。また、受信部1202が受信する使用頻度情報も1つの色範囲識別子に限られず、同一の地域情報に属する複数の色範囲識別子それぞれの使用頻度情報を一時に取得する構成であってもよい。加えて、上記では、複合機100に新たな構成を追加した事例に基づいて説明をしたが、上述の複合機900に対して本実施形態の構成を適用することも可能である。
【0096】
ところで、上記では、外部装置1210の集計テーブル1301に保持されている目標色と、複合機に保持されている目標色とが一致している事例を説明したが、外部装置1210の集計テーブルには、複合機が保持していない目標色が含まれていてもよい。この場合、複合機が新たな目標色を追加可能な構成を有していれば、外部装置1210の集計テーブルに基づいて複合機に事後的に目標色を追加することができる。以下、当該複合機の構成について説明する。
【0097】
図14は、当該複合機の機能ブロック図である。なお、図14では、上述した複合機1200における構成要素と同一の作用効果を奏する構成要素には同一の符号を付し、以下での詳細な説明は省略する。また、図4ではネットワーク162に接続された外部装置1210の記載を省略している。
【0098】
図14に示すように、この複合機1400は、上述の複合機1200の構成に加えて、目標色情報保持部1401および目標色追加部1402を備える。目標色情報保持部1401は、補正量算出部402において目標色の色情報(ここでは、CIE Lh色空間内における色座標)を格納する領域であり、選択用画像保持部403に保持される各選択用画像データに対応する目標色の色情報を保持している。本実施形態では、目標色情報保持部1401は目標色追加部1402により新たな目標色の色情報を追加可能に構成されている。なお、目標色追加部1402は、上記複合機1200の各手段と同様、例えば、プロセッサとRAMやROM等のメモリとを備えたハードウェア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。
【0099】
複合機1400では、受信部1202は、上述の複合機1200と同様に、目標色の選択頻度を示す情報とともに当該情報に含まれる各目標色を示す情報および各目標色に対応づけられた抽出対象の色範囲を示す情報を外部装置1210から受信する。なお、この事例では、目標色を示す情報に、上記目標色を示す識別子および色情報が含まれる。
【0100】
図13(b)は、この事例において、外部装置1210の集計部1214が保持する集計テーブルの一例を示す図である。ここでは、青色の色範囲を示す色範囲識別子についての集計テーブル1302を示している。図13(b)に示すように、集計テーブル1301には、青色の色範囲を示す色範囲識別子に含まれる目標色「青1」、「青2」、「青3」、「青4」、「青5」が格納されている。ここでは、「青4」および「青5」は複合機1400に登録されていない目標色であるとする。なお、本実施形態では、各目標色を示す識別子に対応するCIE Lh色空間内の色座標(L,a,b)が、各目標色を示す識別子と対応づけて集計部1214内の目標色テーブルに格納される。また、集計部1214は、当該色座標(色情報)および上記目標色を示す識別子を含む目標色を示す情報により上述の使用頻度情報を生成する。送信部1212は、当該使用頻度情報を、地域情報および色範囲識別子と対応づけて複合機1400に送信する。
【0101】
当該情報を受信した複合機1400の受信部1202は、受信した情報を選択受付部404および目標色追加部1402に入力する。
【0102】
目標色追加部1402は、入力された目標色を示す情報に含まれる目標色の色情報と目標色情報保持部1401に既に格納されている目標色の色情報とを比較する。このとき、入力された目標色を示す情報に目標色情報保持部1401に格納されていない新たな目標色の色情報が含まれていなければ目標色追加部1402は何もすることなく入力された情報を破棄する。一方、入力された目標色を示す情報に目標色情報保持部1401に格納されていない新たな目標色の色情報が含まれている場合、目標色追加部1402は当該新たな目標色の色情報を、当該色情報とともに受信部1202が受信した色範囲識別子と対応づけて目標色情報保持部1401に格納する。上述の例では、新たな目標色「青4」および「青5」が含まれているため、目標色追加部1402は、当該新たな目標色「青4」の色情報(色座標)および「青5」の色情報を、青色の色範囲を示す色範囲識別子と対応づけて目標色情報保持部1401に追加する。
【0103】
このようにして目標色情報保持部1401に新たな目標色の色情報が追加されると、以降では、上記第1の実施形態において説明したとおり、当該新たな目標色を含めた補正後サムネイル画像が生成され、選択用画像として色補正種選択画面801に表示されることになる。なお、色補正種選択画面801において、選択受付部404は、当該選択用画像を、使用頻度情報に基づいて、選択頻度のより高い目標色を左方から順に配置する。
【0104】
以上説明したように、この複合機1400によれば、外部装置1210から受信した目標色中に自機に登録されていない目標色の色情報が含まれている場合、当該新たな目標色の色情報が自動的に追加され、ユーザによる選択が可能になる。また、この構成では、外部装置1210に新たな目標色の色情報を追加することにより、外部装置1210に接続された複合機に新たな目標色を事後的に追加することが可能になる。
【0105】
なお、ここでは、上述の複合機100に新たな構成を追加した事例に基づいて説明をしたが、上述の複合機900に対して当該構成を適用することも可能である。この場合、目標色追加部1402が新たな目標色を追加した際に、色補正実施部405が当該新たな目標色に対応する選択用画像を生成する構成とすることができる。新たな目標色に対応する選択用画像は、例えば、当該新たな目標色に対応する色範囲の選択用画像の1つとして選択用画像保持部403に格納されている補正前画像に対し、新たな目標色に基づいて色補正を色補正実施部405が実施することで生成可能である。
【0106】
また、上記では、外部装置1210の集計テーブル1302に新たな目標色を追加することで、複合機1400に新たな目標色が追加される事例について説明したが、新たな目標色の追加は外部装置1210に接続された複合機においてなされる構成であってもよい。この場合、複合機において追加された新たな目標色が外部装置1210の集計テーブルに反映され、その後、外部装置1210に接続された他の複合機に反映される。
【0107】
さらに、上記では、既に登録されている色範囲(色範囲識別子)に属する新たな目標色が追加される構成を説明したが、色範囲自体が新たに追加されてもよい。この場合、新たな色範囲は、例えば、CIE Lh色空間内において、色差が30程度の範囲として設定されることが好ましい。また、同一の色範囲に対応づけられる各目標色は、CIE Lh色空間内において、それぞれ色差が3以上離間していることが好ましい。
【0108】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、補正対象の画像データにおいて特定の色範囲内に属する画素のみに色補正を実施する構成について説明した。しかしながら、補正対象の画像データにおいて、特定の色範囲内に属する画素に対する色補正とともに全画素に対する色補正を実施する状況も発生し得る。例えば、青色について特定の目標色に変更するとともに、全画素について色相角、彩度等を調整する状況である。そこで、本実施形態では、このような状況下においても、好ましい色補正をユーザが容易に実施できる構成について説明する。
【0109】
図15は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。なお、図15では、第1の実施形態において説明した複合機100における構成要素と同一の作用効果を奏する構成要素には同一の符号を付し、以下での詳細な説明は省略する。
【0110】
図15に示すように、本実施形態の複合機1500は、上述の複合機100の構成に加えて、全体色補正実施部1501、判定部1502、優先順受付部1503および補正量変更部1504を備える。全体色補正実施部1501、判定部1502、優先順受付部1503および補正量変更部1504は、上記複合機100の各手段と同様、例えば、プロセッサとRAMやROM等のメモリとを備えたハードウェア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。
【0111】
全体色補正実施部1501は、補正対象の画像データの全画素に対して特定の色補正(以下、全体色補正ともいう。)を実施する。全画素に対する補正の内容は、操作パネル200を通じてユーザにより設定される。当該補正の内容は色に関するものであれば特に限定されない。例えば、色相角、彩度等が含まれる。なお、本実施形態では、色補正実施部405および全体色補正実施部1501は、補正実施部1510を構成しており、選択受付部404、画像保持部406、画像記憶部412、画像形成部140、判定部1502、後述の調整部1520等との情報の授受が同一の経路を通じて実施される。
【0112】
判定部1502は、色補正実施部405による色補正と、全体色補正実施部1501による全体色補正とをともに実施した場合に、色補正実施部405の補正対象画素範囲の周縁部に疑似輪郭が発生するか否かを判定する。なお、周縁部とは、補正対象画素範囲の境界線の近傍を意味する。特に限定されないが、本実施形態では、判定部1502は両色補正に、色域の重なりがあるか否かにより当該判定を実施する。例えば、色補正実施部405による色補正の補正対象色範囲が「肌色」である場合、全体色補正実施部1501の補正対象が青色成分であるときは、色域において重なりが発生しないため判定部1502は両補正を実施しても疑似輪郭が発生しないと判定する。一方、全体色補正実施部1501の補正対象が赤色成分であるときは、色域において重なりが発生するため判定部1502は両補正を実施すると疑似輪郭が発生すると判定する。したがって、本実施形態では、疑似輪郭が現実に発生する場合および疑似輪郭が発生する可能性がある場合に、判定部1502は疑似輪郭が発生すると判定することになる。
【0113】
判定部1502により疑似輪郭が発生しないと判定された場合、色補正実施部405および全体色補正実施部1501による色補正がともにされる。すなわち、画素抽出部401により抽出された画素に対する色補正実施部405による色補正および全体色補正実施部1501による全体色補正が実施される。
【0114】
また、優先順受付部1503は、判定部1502により疑似輪郭が発生すると判定された場合に、画素抽出部401により抽出された画素に対する色補正実施部405による色補正と、全体色補正実施部1501による全体色補正との優先順を受け付ける。本実施形態では、優先順受付部1503は、操作パネル200のディスプレイ201を通じてユーザによる優先順の選択を受け付ける構成になっている。
【0115】
補正量変更部1504は、優先順受付部1503が受け付けた優先順にしたがって色補正実施部405による色補正における色補正量または全体色補正実施部1501による色補正における色補正量を変更する。色補正量の変更方法については以下で詳述する。特に限定されないが、本実施形態では、補正量変更部1504による両補正量の変更は、既定値による変更とユーザによる再調整との双方により実施可能になっている。また、ユーザによる再調整の際には、補正量変更部1504は、変更した色補正量にしたがって、色補正実施部405による色補正および全体色補正実施部1501による全体色補正を実施した場合の画像データの外観を示す画像をディスプレイ201に表示しつつユーザによる色補正量の変更を受け付ける構成になっている。
【0116】
なお、本実施形態では、優先順受付部1503および補正量変更部1504は、調整部1520を構成しており、ディスプレイ201、操作認識部411および補正実施部1510等との情報の授受が同一の経路を通じて実施される。
【0117】
図16は、複合機1500が実施する色補正手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、第1の実施形態で説明した色補正手順と同様に、ユーザにより色補正指示が入力されたことをトリガーとして進行する。
【0118】
まず、複合機1500は、ユーザによる画像データの指定が完了するまで待機する(ステップS1601No)。指定方法は、特に限定されない。例えば、第1の実施形態において説明した手法を使用することができる。
【0119】
画像データの指定が完了すると、ユーザは、色補正実施部405による色補正条件を設定する(ステップS1601Yes、S1602)。当該色補正条件の設定は、例えば、第1の実施形態において説明した手順により実施すればよい。具体的には、ユーザは、まず、図6に示す対象色選択画面601において色補正実施部405の補正対象となる色を選択する。次いで、図8に示す色補正種選択画面801において色補正種(目標色)を選択する。
【0120】
ユーザによる色補正条件の設定が完了すると、色補正実施部405は全体色補正実施部1501にその旨を通知する。当該通知を受けた全体色補正実施部1501は選択受付部404を通じて補正対象画像データの全画素に対する色補正の要否をユーザに問い合わせる(ステップS1603)。
【0121】
図17は、当該問い合わせの際に、全体色補正実施部1501が選択受付部404を通じてディスプレイ201に表示する、全体色補正要否選択画面の一例を示す図である。この例では、全体色補正要否選択画面1701は、全体色補正が不要である場合に選択される「全体色補正を実施しない」ボタン1702、全体色補正が必要である場合に選択される「全体色補正を実施する」ボタン1703、これらの各ボタンに対するユーザの選択を確定する際に選択される「決定」ボタン1704、選択を中止して直前の操作画面(ここでは、色補正種選択画面801)に戻る際に使用される「キャンセル」ボタン1705を備える。この図では、ユーザが、「全体色補正を実施する」ボタン1703を選択した状態を示している。
【0122】
全体色補正要否選択画面1701において「全体色補正を実施しない」ボタン1702が選択されている状態でユーザが「決定」ボタン1704を選択すると、全体色補正実施部1501はその旨を色補正実施部405に通知する。当該通知を受けた色補正実施部405は、第1の実施形態と同様に、画像保持部406が保持している補正対象画像データに対して自身に設定されている色補正内容にしたがって色補正を実施する(ステップS1603No、S1609)。
【0123】
また、「全体色補正を実施する」ボタン1703が選択されている状態でユーザが「決定」ボタン1704を選択すると、全体色補正実施部1501は、自身に設定される色補正の内容を設定するための設定画面をディスプレイ201に表示し、ユーザに色補正の内容の設定を要求する(ステップS1603Yes、S1604)。なお、当該設定画面は、ユーザが全体色補正実施部1501による色補正内容を設定可能であればよく、任意の構成を採用することができる。
【0124】
当該設定画面を通じた、ユーザによる色補正内容の設定が完了すると、全体色補正実施部1501はその旨を判定部1502に通知する。当該通知を受けた判定部1502は上述の手法により、色補正実施部405による色補正と全体色補正実施部1501による全体色補正とを実施した場合に、疑似輪郭が発生するか否かを判定する(ステップS1605)。
【0125】
疑似輪郭が発生しないと判定した場合、判定部1502はその旨を補正実施部1510(色補正実施部405および全体色補正実施部1501)に通知する。当該通知を受けた色補正実施部405および全体色補正実施部1501は、画像保持部406が保持している補正対象画像データに対して自身に設定されている色補正内容にしたがって色補正をそれぞれ実施する(ステップS1605No、S1609)。なお、特に限定されないが、当該色補正は、全体色補正実施部1501による色補正実施後の画像データにおいて、色補正実施部405が色補正を実施する構成とすることが好ましい。すなわち、画像保持部406が保持している補正対象画像データから画素抽出部401が抽出した画素について色補正量が算出されて補正後の色が決まると、補正実施部405が全体色補正実施後の画像データにおける対応画素の色を当該色に置換する。これにより、補正対象画像データの特定色を目標色に近づける色補正と、全画素に対する色補正とを両立することができる。
【0126】
一方、疑似輪郭が発生すると判定した場合、判定部1502はその旨を優先順受付部1503に通知する。当該通知を受けた優先順受付部1503は、補正実施部405による色補正と、全体色補正実施部1501による全体色補正との優先順をユーザに問い合わせる(ステップS1605Yes、S1606)。
【0127】
図18は、当該問い合わせの際に、優先順受付部1503がディスプレイ201に表示する優先順選択画面の一例を示す図である。この例では、優先順選択画面1801は、補正実施部405による色補正を優先する場合に選択される「選択色補正」ボタン1802、全体色補正実施部1501による全体色補正を優先する場合に選択される「全体色補正」ボタン1803、これらの各ボタンに対するユーザの選択を確定する際に選択される「決定」ボタン1804、選択を中止して直前の操作画面(ここでは、全体色補正要否選択画面1701)に戻る際に使用される「キャンセル」ボタン1805を備える。この図では、ユーザが、「選択色補正」ボタン1802を選択した状態を示している。
【0128】
優先順選択画面1801において「選択色補正」ボタン1802または「全体色補正」ボタン1803が選択されている状態でユーザが「決定」ボタン1804を選択すると、操作認識部411を通じて当該選択を認識した優先順受付部1503はその旨を補正量変更部1504に入力する。当該通知を受けた補正量変更部1504は、ユーザの選択に応じて補正係数ks、kaの値を設定する。補正係数ksは、補正実施部405による色補正における各画素に対する補正量に一律に乗算される定数である。同様に、補正係数kaは、全体色補正実施部1501による全体色補正における各画素に対する補正量に一律に乗算される定数である。
【0129】
ユーザが「選択色補正」ボタン1802を選択した場合、補正量変更部1504はks>kaとなるように各補正係数ks、kaの値を設定する。ユーザが「全体色補正」ボタン1803を選択した場合、補正量変更部1504はks<kaとなるように各補正係数ks、kaの値を設定する。特に限定されないが、ここでは、ユーザが「選択色補正」ボタン1802を選択した場合、補正量変更部1504はks=1.3、ka=0.7を設定する。また、ユーザが「全体色補正」ボタン1803を選択した場合、補正量変更部1504はks=0.7、ka=1.3を設定する。そして、補正量変更部1504は設定した補正係数ks、kaを補正実施部1510に入力する。
【0130】
補正係数ks、kaが入力された補正実施部1510(色補正実施部405および全体色補正実施部1501)は、上述の手法により補正対象画像データに対して色補正を実施することにより確認用画像データを生成する(ステップS1607)。当該確認用画像データの生成において、色補正実施部405は補正量算出部402が算出する補正量に補正係数ksを乗算した値により色補正を実施し、全体色補正実施部1501は、設定された補正量に補正係数kaを乗算した値により全体色補正を実施する。なお、当該確認用画像データは、後述のように、ユーザが色補正実施部405による色補正の補正量および全体色補正実施部1501による全体色補正の補正量を調整する補正量確認調整画面にプレビューとして表示される。そのため、確認用画像データは、色補正を適用した場合の外観が認識できる範囲で画素数を減じたサムネイル画像とすることができる。特に限定されないが、本実施形態では、補正実施部1510は画像保持部406が保持している補正対象画像データの画素数を減じて当該サムネイル画像のサイズに変更した後に色補正を実施し、確認用画像データを生成する。
【0131】
確認用画像データを生成した補正実施部1510は、当該確認用画像データを補正量変更部1504に入力する。このとき、補正量変更部1504は、補正量変更の適否をユーザに問い合わせる(ステップS1608)。
【0132】
図19は、当該問い合わせの際に、補正量変更部1504がディスプレイ201に表示する補正量確認調整画面の一例を示す図である。この例では、補正量確認調整画面1901は、上述の確認用画像データを表示するプレビュー表示部1902、補正量をさらに変更する際にその変更量を指定する補正量調整部1903、補正実施部1510による色補正の実施を指示する際に選択される「実行」ボタン1904、選択を中止して直前の操作画面(ここでは、優先順選択画面1801)に戻る際に使用される「キャンセル」ボタン1905を備える。また、補正量調整部1903は、選択色補正量調整部1911および全体色補正量調整部1912を備える。選択色補正量調整部1911は、色補正実施部405による色補正の補正量(補正係数ksの値)を調整する際に使用される。全体色補正量調整部1912は全体色補正実施部1501による全体色補正の補正量(補正係数kaの値)を調整する際に使用される。
【0133】
優先順選択画面1801における選択にしたがって変更された補正量が適切である場合、ユーザはそのまま「実行」ボタン1904を選択すればよい。このとき、補正量変更部1504は、補正実施部1510に色補正の実施を指示する(ステップS1608No、S1609)。当該指示に応じて、補正実施部1510は、その時点で設定されている補正係数ks、kaにしたがって補正対象画像データに対して色補正を実施する。
【0134】
一方、優先順選択画面1801における選択にしたがって変更された補正量が不適切である場合、ユーザは補正量調整部1903を使用して補正量を調整することができる。例えば、色補正実施部405による色補正を強化したい場合には、ユーザは選択色補正量調整部1911の「UP」ボタンを押圧すればよい。このとき、補正量変更部1504は、補正係数ksの値に予め指定された値(例えば、0.1)を加算するとともに、補正係数kaの値から当該予め指定された値を減算する。また、全体色補正実施部1501による色補正を強化したい場合には、ユーザは全体色補正量調整部1912の「UP」ボタンを押圧すればよい。このとき、補正量変更部1504は、補正係数kaの値に予め指定された値(例えば、0.1)を加算するとともに、補正係数ksの値から当該予め指定された値を減算する。
【0135】
選択色補正量調整部1911または全体色補正量調整部1912の操作に応じて補正係数ks、kaの値が変更した補正量変更部1504は、変更後の補正係数ks、kaを補正実施部1510に入力する。このとき、補正実施部1510は確認用画像データを再度生成する。この確認用画像データは補正量変更部1504にされ、補正量確認調整画面1901のプレビュー表示部1902に表示される(ステップS1608Yes、S1607、S1608)。調整後の補正量が適切である場合、ユーザは「実行」ボタン1904を選択すればよい(ステップS1608No、S1609)。
【0136】
以上説明したように、この複合機1500によれば、特定色の画素に対する色補正に加えてユーザが全画素に対する色補正を望む場合でも、良好な色補正を実施することができる。また、複合機1500では、色補正実施部405による色補正と、全体色補正実施部1501による全体色補正との優先順を設定できるため、疑似輪郭の発生を回避して良好な色補正を実施することが可能である。さらに、複合機1500では、色補正実施部405による色補正の補正量と、全体色補正実施部1501による全体色補正の補正量を調整することも可能である。加えて、当該調整の過程で色補正を実施した場合の画像データの外観を示す画像が表示されるため、ユーザは、容易に好ましい色補正を実施することができる。
【0137】
なお、上記では、複合機100に新たな構成を追加した事例に基づいて説明をしたが、上述の複合機900、1200、1400に対して本実施形態の構成を適用することも可能である。また、本実施形態において、色補正実施部405および全体色補正実施部1501による色補正の補正量を調整する過程において、色補正を実施した場合の画像データの外観を示す画像を表示することは必須の構成要素ではない。このような構成であっても、色補正実施部405および全体色補正実施部1501による色補正の補正量を調整できるため疑似輪郭の発生を回避することが可能である。また、本実施形態において、補正量変更部1504も必須の構成要素ではない。このような構成であっても、固定の比率ではあるが、色補正実施部405および全体色補正実施部1501による色補正の補正量を調整できるため疑似輪郭の発生を回避することができる。
【0138】
なお、上述した各実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、複合機の操作パネルを通じた操作に基づいて説明をしたが、当該複合機と通信可能に接続された情報処理端末を介して複合機に対する操作が行われてもよい。この場合、上述の実施形態における操作パネル200のディスプレイ201の機能は、情報処理端末が具備する、ディスプレイ等の表示手段およびキーボード等の入力手段により提供される。また、各実施形態の構成要素は任意に組み合わせることもよい。加えて、上記第2の実施形態および第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した複合機を前提として構成を説明したが、特定色を目標色に変更する機能を有する複合機であれば、選択画面に選択用画像を表示する機能を有しない複合機でも適用可能であることはいうまでもない。
【0139】
また、図5、図10および図16に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において、各ステップの順序を適宜変更可能である。例えば、サムネイル画像生成ステップS503において実施される補正前サムネイル画像の生成は、画像データ指定ステップS501の直後になされてもよい。また、画像データ指定ステップS501(S1001)と補正色指定ステップS502(S1002)は、その順序を入れ替えても同様の効果を奏することができる。また、選択色の補正条件指定ステップS1602よりも前に、全体色補正条件指定ステップS1604を実施することも可能である。
【0140】
さらに、上述の実施形態では、デジタル複合機として本発明を具体化したが、デジタル複合機に限らず、プリンタ、複写機等の任意の画像処理装置に本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、色補正の適用による意図しない色の変化を極力抑制できるともに、所望の色補正をユーザが容易に実施でき、画像処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0142】
100、900、1200、1400、1500 複合機(画像処理装置)
120 画像読取部
140 画像形成部
201 ディスプレイ
401 画素抽出部
402 補正量算出部
403、903 選択用画像保持部
404 選択受付部
405 色補正実施部
406 画像保持部
407 画像生成部
1201 送信部
1202 受信部
1210 外部装置
1401 目標色情報保持部
1402 目標色追加部
1501 全体色補正実施部
1502 判定部
1503 優先順受付部
1504 補正量変更部
1510 補正実施部
1520 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対して色補正を実施する画像処理装置であって、
画像データから、予め指定された色範囲に属する画素を抽出する画素抽出部と、
前記画素抽出部が抽出した画素の色と、前記色範囲に対応づけられた目標色との色差に基づいて、当該画素に対する色補正量を算出する補正量算出部と、
前記色範囲に属する画素に対して、前記補正量算出部が前記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を実施した場合の各画像データの外観を示す選択用画像を保持する選択用画像保持部と、
前記選択用画像保持部が保持する前記選択用画像を表示するとともに、ユーザによる色補正の選択を受け付ける選択受付部と、
前記選択受付部が受け付けた色補正を補正対象の画像データに対して実施する色補正実施部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記補正対象の画像データについて、前記色範囲に属する画素に対して、前記補正量算出部が前記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を実施した場合の各画像データの外観を示すサムネイル画像を生成する画像生成部をさらに備え、
前記画像生成部が生成した前記サムネイル画像が前記選択用画像として前記選択用画像保持部に保持される、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記選択用画像が、前記補正対象の画像データとは異なる画像データについて、前記色範囲に属する画素に対して、前記補正量算出部が前記色範囲に対応づけられた複数の目標色のそれぞれについて算出した色補正量にしたがって色補正を予め実施した各画像データからなるサンプル画像である、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記選択受付部において選択された目標色、当該目標色に対応づけられた色範囲および自機が設置されている地域のそれぞれを示す情報を、当該色範囲および地域ごとに、目標色の選択頻度を集計する外部装置へ送信する送信部と、
前記外部装置から、自機が設置されている地域情報に対応する目標色の選択頻度を示す情報を受信する受信部と、をさらに備え、
前記選択受付部が、前記受信部により取得された目標色の選択頻度を示す情報に基づいて、前記選択用画像を表示する際の配列を決定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記選択用画像保持部に保持される選択用画像データの目標色の色情報を保持する目標色情報保持部と、
前記目標色保持部に新たな目標色を追加する目標色追加部をさらに備え、
前記受信部は、前記外部装置から、目標色の選択頻度を示す情報とともに当該情報に含まれる各目標色の色情報および各目標色に対応づけられた抽出対象の色範囲を示す情報を受信し、
前記受信部が受信した目標色の色情報に、前記目標色情報保持部に格納されていない新たな目標色の色情報が含まれている場合、前記目標色追加部は、当該目標色の色情報を抽出対象の色範囲を示す情報と対応づけて前記目標色情報保持部に格納する、請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正対象の画像データの全画素に対して特定の色補正を実施する全体色補正実施部と、
前記色補正実施部による色補正と、前記全体色補正実施部による色補正とをともに実施した場合に、前記色補正実施部の補正対象画素範囲の周縁部に疑似輪郭が発生するか否かを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記判定部により疑似輪郭が発生しないと判定された場合、前記画素抽出部により抽出された画素に対する前記色補正実施部による色補正、および全画素に対する前記全体色補正実施部による色補正を実施する、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記判定部により疑似輪郭が発生すると判定された場合、前記画素抽出部により抽出された画素に対する前記色補正実施部による色補正と、全画素に対する前記全体色補正実施部による色補正との優先順を受け付ける優先順受付部と、
前記優先順受付部が受け付けた優先順にしたがって前記色補正実施部による色補正における色補正量または前記全体色補正実施部による色補正における色補正量を変更する補正量変更部と、
をさらに備える、請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正量変更部は、変更した色補正量にしたがって、前記画素抽出部により抽出された画素に対する前記色補正実施部による色補正、および全画素に対する前記全体色補正実施部による色補正を実施した場合の画像データの外観を示す画像を表示するとともに、ユーザによる色補正量の再変更を受け付ける、請求項7記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−186786(P2012−186786A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222540(P2011−222540)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】