説明

画像処理装置

【課題】所望の色補正を容易に設定できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画素抽出部401は、補正対象の画像データから予め指定された色範囲に属する画素を抽出する。目標色選択受付部403は、目標色保持部402に格納された複数の目標色から、ユーザによる1の目標色の選択を受け付ける。色補正実施部404は、画素抽出部401により抽出された画素の色と目標色選択受付部403を通じて選択された目標色とに基づいて補正対象画像データに対して色補正を実施する。目標色抽出部406は、登録用画像保持部405に保持された、目標色登録用画像データから登録対象の目標色を抽出する。目標色登録部408は、目標色抽出部406により抽出された登録対象の目標色を、色範囲入力部407に入力された新たな色範囲と対応づけて目標色保持部402に登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対して色補正を実施する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機や複合機等の画像形成装置ではカラー印刷可能な機器が一般化している。この種の画像形成装置は、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のトナーやインク等の記録剤の組み合わせによりカラー印刷を実現する。
【0003】
このような画像形成装置の多くは、画像データに対して色補正を行う機能を有している。そもそも、画像形成装置には、元原稿の色彩を忠実に再現することが要求されるが、近年、写真等を含む画像の印刷がされるようになり、色彩を人が好ましいと感じる色に変換させることも求められ始めたからである。人が好ましいと感じる色に色彩を変換させるとは、具体的には、いわゆる記憶色を再現することを意味する。記憶色とは、例えば、人の肌、空の青、草木の緑、夕日の赤等の色であり、元原稿に忠実な色の再現を行うよりも、人間が記憶している色に近い色の再現を好ましく感じる色である。
【0004】
このような記憶色は、好まれる色に個人差がある。そのため、画像形成装置において、好ましいと感じる色を適切に提供するための手法が種々提案されている(例えば、特許文献1−3等参照。)。
【0005】
例えば、後掲の特許文献1は、色合いを少しずつ変化させた複数のサムネイル画像からなる色調整用画像を印刷し、当該印刷された色調整用画像から選択したサムネイル画像を特定する番号を入力させることでユーザに好ましい色補正を選択させ、当該色補正を画像処理に反映させる画像処理装置を開示している。
【0006】
また、特許文献2および特許文献3は、同一画像に対して異なる色補正を実施した複数の画像を同一画面に表示させ、当該画像を選択することにより色補正条件をユーザに選択させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−200741号公報
【特許文献2】特開平11−032227号公報
【特許文献3】特開平11−098374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1−3が開示する技術では、提示された色補正候補に好ましい色補正が含まれていればユーザはその色補正を容易に選択することができる。しかしながら、提示された色補正候補に好ましい色補正が含まれていない場合、その好ましい色補正を得るために複雑な操作等が必要になり、ユーザは所望の色補正を容易に設定することができない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、所望の色補正を容易に設定できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は以下の技術的手段を採用している。すなわち、本発明は、画像データに対して色補正を実施する画像処理装置であって、画素抽出部、目標色保持部、目標色選択受付部、色補正実施部、登録用画像保持部、目標色抽出部、色範囲入力部および目標色登録部を備える。画素抽出部は、補正対象の画像データから、予め指定された色範囲に属する画素を抽出する。目標色保持部は、予め指定された色範囲と対応づけて複数の目標色を格納する。目標色選択受付部は、目標色保持部に格納された複数の目標色から、ユーザによる1の目標色の選択を受け付ける。色補正実施部は、画素抽出部により抽出された画素の色と目標色選択受付部を通じて選択された目標色とに基づいて、補正対象の画像データに対して色補正を実施する。登録用画像保持部は、登録対象の目標色を含む画像データを保持する。目標色抽出部は、登録用画像保持部に保持された画像データから登録対象の目標色を抽出する。目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色と対応づける新たな色範囲は色範囲入力部に入力される。目標色登録部は、目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色を、色範囲入力部に入力された新たな色範囲と対応づけて目標色保持部に登録する。
【0011】
この画像処理装置によれば、画像データを使用して目標色を登録することができる。すなわち、ユーザが視覚を通じて確認した画像中に含まれる色を、目標色として登録することができる。また、登録対象の目標色へ色補正する対象となる色範囲を設定することができる。そのため、画像処理装置に設定されていない記憶色等の色であっても、ユーザの好みの色を目標色として登録することができる。その結果、色補正を実施する際には、ユーザは、好みの色への色補正を容易に実施することができる。
【0012】
この画像処理装置において、目標色抽出部は、予め指定された画像データの領域内の画素を抽出し、当該抽出した画素の色を登録対象目標色の候補として表示するとともにユーザによる登録対象目標色の選択を受け付ける構成であってもよい。この構成では、目標色の登録に使用される画像データに複数の色が含まれている場合、ユーザは、提示された目標色の候補から所望の目標色を選択することができる。すなわち、ユーザの好みの色を極めて容易にかつ確実に目標色として登録することができる。
【0013】
また、上記画像処理装置は、目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色が目標色保持部に既登録の色範囲に属するか否かを判定する判定部をさらに備えてもよい。この場合、判定部により既登録の色範囲に属さないと判定された場合に、目標色登録部が、目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色を、色範囲入力部に入力された新たな色範囲と対応づけて目標色保持部に登録する。あるいは、上記画像処理装置は、目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色が目標色保持部に既登録の目標色に対して予め指定された色差条件を満足するか否かを判定する判定部をさらに備えてもよい。この場合、判定部により色差条件を満足すると判定された場合に、目標色登録部が、目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色を、色範囲入力部に入力された新たな色範囲と対応づけて目標色保持部に登録する。色差条件としては、例えば、目標色保持部に既に格納されている目標色と登録対象目標色とのCIE Lh色空間における色差が所定値以上であること等を使用することができる。
【0014】
これらの構成では、色空間における色差の小さい近似の目標色が異なる色範囲の目標色として登録されることがない。その結果、色補正を実施する際に、近似した多数の色範囲がユーザに提示され、色補正の選択が困難な状況になることを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザは、画像処理装置に所望の色補正を容易に設定することができる。また、所望の色補正を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における複合機の全体構成を示す概略構成図
【図2】本発明の一実施形態における複合機の操作パネルを示す模式図
【図3】本発明の一実施形態における複合機のハードウェア構成を示す図
【図4】本発明の一実施形態における複合機を示す機能ブロック図
【図5】本発明の一実施形態における複合機が実施する色補正手順の一例を示すフロー図
【図6】本発明の一実施形態における複合機が表示する色範囲選択画面の一例を示す図
【図7】本発明の一実施形態における複合機が表示する目標色選択画面の一例を示す図
【図8】本発明の一実施形態における複合機が実施する目標色登録手順の一例を示すフロー図
【図9】本発明の一実施形態における複合機が表示する目標色位置指定画面の一例を示す図
【図10】本発明の一実施形態における複合機が表示する色範囲入力画面の一例を示す図
【図11】本発明の一実施形態における複合機が表示する色範囲選択画面の一例を示す図
【図12】本発明の一実施形態における複合機が表示する目標色選択画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、デジタル複合機として本発明を具体化する。
【0018】
図1は本実施形態におけるデジタル複合機の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、複合機100は、画像読取部120および画像形成部140を含む本体101と、本体101の上方に取り付けられたプラテンカバー102とを備える。本体101の上面には原稿台103が設けられており、原稿台103はプラテンカバー102によって開閉されるようになっている。また、プラテンカバー102は、原稿搬送装置110を備えている。
【0019】
原稿台103の下方には、画像読取部120が設けられている。画像読取部120は、走査光学系121により原稿の画像を読み取りその画像のデジタルデータ(画像データ)を生成する。原稿は、原稿台103や原稿搬送装置110に載置することができる。走査光学系121は、第1キャリッジ122や第2キャリッジ123、集光レンズ124を備える。第1キャリッジ122には線状の光源131およびミラー132が設けられ、第2キャリッジ123にはミラー133および134が設けられている。光源131は原稿を照明する。ミラー132、133、134は、原稿からの反射光を集光レンズ124に導き、集光レンズ124はその光像をラインイメージセンサ125の受光面に結像する。
【0020】
この走査光学系121において、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123は、副走査方向135に往復動可能に設けられている。第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を副走査方向135に移動することによって、原稿台103に載置された原稿の画像をイメージセンサ125で読み取ることができる。原稿搬送装置110にセットされた原稿の画像を読み取る場合、画像読取部120は、第1キャリッジ122および第2キャリッジ123を画像読取位置に合わせて一時的に固定し、画像読取位置を通過する原稿の画像をイメージセンサ125で読み取る。イメージセンサ125は、受光面に入射した光像から、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に対応する原稿の画像データを生成する。生成された画像データは、画像形成部140において用紙に印刷することができる。また、ネットワークアダプタ161によりネットワーク162を通じて他の機器(図示せず)へ送信することもできる。
【0021】
画像形成部140は、画像読取部120で得た画像データや、ネットワーク162に接続された他の機器(図示せず)から受信した画像データを用紙に印刷する。画像形成部140は、感光体ドラム141を備える。感光体ドラム141は一定速度で一方向に回転する。感光体ドラム141の周囲には、回転方向の上流側から順に、帯電器142、露光器143、現像器144、中間転写ベルト145が配置されている。帯電器142は、感光体ドラム141表面を一様に帯電させる。露光器143は、一様に帯電した感光体ドラム141の表面に、画像データに応じて光を照射し、感光体ドラム141上に静電潜像を形成する。現像器144は、その静電潜像にトナーを付着させ、感光体ドラム141上にトナー像を形成する。中間転写ベルト145は、感光体ドラム141上のトナー像を用紙に転写する。画像データがカラー画像である場合、中間転写ベルト145は、各色のトナー像を同一の用紙に転写する。なお、RGB形式のカラー画像は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)形式の画像データに変換され、各色の画像データが露光器143に入力される。
【0022】
画像形成部140は、手差しトレイ151、給紙カセット152、153、154等から、中間転写ベルト145と転写ローラ146との間の転写部に用紙を給送する。手差しトレイ151や各給紙カセット152、153、154には、様々なサイズの用紙を載置または収容することができる。画像形成部140は、ユーザの指定した用紙や、自動検知した原稿のサイズに応じた用紙を選択し、選択した用紙を給送ローラ155により手差しトレイ151やカセット152、153、154から給紙する。給紙された用紙は搬送ローラ156やレジストローラ157で転写部に搬送する。トナー像を転写した用紙は、搬送ベルト147により定着器148に搬送される。定着器148は、ヒータを内蔵した定着ローラ158および加圧ローラ159を有しており、熱と押圧力によってトナー像を用紙に定着する。画像形成部140は、定着器148を通過した用紙を排紙トレイ149へ排紙する。
【0023】
図2は複合機が備える操作パネルの外観の一例を示す図である。ユーザは、操作パネル200を用いて、複合機100に複写開始やその他の指示を与えたり、複合機100の状態や設定を確認したりすることができる。操作パネル200には、タッチパネル付きディスプレイ201や操作キー203が配置されている。ディスプレイ201は、操作ボタンやメッセージ等を表示する液晶ディスプレイ等からなる表示面と、当該表示面上の押圧位置を検出するセンサとを備える。押圧位置の検知方法は特に限定されない。抵抗膜方式、静電容量方式、表面弾性波方式、電磁波方式等、任意の方式を採用することができる。ユーザは、自身の指やタッチペン202を使用して、ディスプレイ201を通じて入力を行うことができる。
【0024】
ディスプレイ201は、ボタン表示部204、メッセージ表示部205およびステータス表示部206を有する操作画面を表示する。ボタン表示部204には、複数のタブ208が用意されており、各タブにはそのタブのカテゴリーに応じた操作ボタンが配列されている。「簡単設定」タブは、基本的な設定に使用される操作ボタンを有する。図2の例では、用紙サイズ、複写倍率、濃度、印刷面、ページ集約、後処理を設定するための操作ボタンが配列されている。例えば「濃度」ボタン207を押圧する操作をユーザが行うと、濃度を選択するための「薄い」、「ふつう」、「濃い」等の選択ボタンを有するポップアップ画面がその操作ボタン上に重ねて表示され、ユーザの選択(押圧)によりその濃度が設定される。図2の例では、「簡単設定」タブの他、「原稿/用紙/仕上げ」タブ、「カラー/画質」タブ、「レイアウト/編集」タブ、「応用/その他」タブも設けられている。ユーザは、タブボタン208を選択する操作を行うことによって、これらのタブの表示に切り替えることができる。一つのタブが選択されている間、操作画面上で他のタブやその要素は隠れている。なお、この複合機100では、後述する色補正は、「カラー/画質」タブに含まれる「ワンタッチ画質調整」ボタンの押圧により実行可能になる。また、後述する目標色登録は、「カラー/画質」タブに含まれる「目標色登録」ボタンの押圧により実行可能になる。
【0025】
メッセージ表示部205には、複写が可能か否か、複写部数などの設定をユーザに通知するメッセージが表示される。また、ステータス表示部206には、必要に応じて装置ステータス情報が表示される。この表示には、複合機100が備える各種センサの検知結果が反映される。装置ステータス情報とは、装置は動作可能な状態にあるが、異常への対応を促す警告をユーザに通知するメッセージを意味する。例えば、用紙残量が少ない旨、原稿台103が汚れている旨、ファクシミリのメモリ受信が設定されている場合にファックス文書がメモリに格納された旨等が含まれる。また、用紙切れや搬送ジャム等が装置ステータス情報に含まれてもよい。
【0026】
操作キー203は、主電源キー209、テンキー210やスタートキー211、クリアキー212等を含む。例えば、電源キー209は、複合機100のON、OFFの切り替えに使用される。テンキー210は、複写部数の指定や複写倍率の設定に用いることができる。ユーザがそれらの設定をすると、複合機100は、メッセージ表示部205に、例えば、「コピーできます(設定あり)」のようなメッセージを表示し、ユーザによる設定が行われたことを通知する。スタートキー211は、複写や画像印刷の開始指示に使用される。ユーザは、自身でした設定を解除する場合、クリアキー212を操作する。ユーザによる設定を機械が受け付けているかどうかは上述のメッセージで判断することができるので、その設定が不要になればクリアキー212を操作すればよい。
【0027】
図3は、複合機における制御系のハードウェア構成図である。本実施形態の複合機100は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、ROM(Read Only Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304および原稿搬送装置110、画像読取部120、画像形成部140における各駆動部に対応するドライバ305が内部バス306を介して接続されている。ROM303やHDD304等はプログラムを格納しており、CPU301はその制御プログラムの指令にしたがって複合機100を制御する。例えば、CPU301はRAM302を作業領域として利用し、ドライバ305とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。また、HDD304は、画像読取部120により得られた画像データや、他の機器からネットワークアダプタ161を通じて受信した画像データの蓄積にも用いられる。
【0028】
内部バス306には、操作パネル200や各種のセンサ307も接続されている。操作パネル200は、ユーザの操作を受け付け、その操作に基づく信号をCPU301に供給する。また、ディスプレイ201は、CPU301からの制御信号にしたがって上述の操作画面を表示する。センサ307は、プラテンカバー102の開閉検知センサや原稿台103上の原稿検知センサ、定着器148の温度センサ、搬送される用紙または原稿の検知センサなど各種のセンサを含む。CPU301は、例えばROM303に格納されたプログラムを実行することで、以下の各手段(機能ブロック)を実現するとともに、これらセンサからの信号に応じて各手段の動作を制御する。
【0029】
図4は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。図4に示すように、本実施形態の複合機100は、画素抽出部401、目標色保持部402、目標色選択受付部403、色補正実施部404、登録用画像保持部405、目標色抽出部406、色範囲入力部407、目標色登録部408、判定部409および補正対象画像保持部410を備える。画素抽出部401、目標色保持部402、目標色選択受付部403、色補正実施部404および補正対象画像保持部410は、複合機100において、所定の色範囲に属する画素の色を目標色に近づける色補正を画像データに実施する機能を実現する。また、登録用画像保持部405、目標色抽出部406、色範囲入力部407、目標色登録部408および判定部409は、複合機100において、目標色保持部402に新たな目標色を登録する機能を実現する。
【0030】
画素抽出部401は、補正対象の画像データから、予め指定された色範囲(以下、指定色範囲ともいう。)に属する画素を抽出する。当該色範囲は、例えば、均等色空間である、CIE Lh色空間において一定の領域を占める色として設定することができる。ここでは、画像データは、sRGB(standard RGB)等の絶対色空間を構成する色成分で表現された色情報を有しており、CIE Lh色空間での表現に容易に変換可能である。なお、画像データが、機器依存を有するRGB形式で表現された色情報を有している場合は、複合機100が、当該色情報を、絶対色空間で表現された色情報に変換する。
【0031】
特に限定されないが、本実施形態では、補正対象画像データは、補正対象画像保持部410に一時的に保持される。ここでは、補正対象画像保持部410は、RAM等の揮発性メモリからなる画像保持部411において補正対象画像データが格納される領域として構成されている。なお、本実施形態では、後述の登録用画像保持部405も画像保持部411に設けられている。登録用画像保持部405は、画像保持部411において登録対象の目標色を含む画像データ(以下、目標色登録用画像データという。)が格納される領域として構成される。複合機100において補正対象画像データと目標色登録用画像データとを同時に保持しない場合は、補正対象画像保持部410と登録用画像保持部405とを、画像保持部411の同一部分として構成することもできる。
【0032】
なお、画像保持部411に保持される画像データ(補正対象画像データまたは目標色登録用画像データ)は、例えば、画像記憶部412から取得される。画像記憶部412は、上述のHDD304に確保された記憶領域であり、画像読取部120から入力された画像データやネットワーク161等を介して外部装置から入力された画像データが格納される。また、画像読取部120から入力された画像データやネットワーク161等を介して外部装置から入力された画像データが画像保持部411に直接格納される構成であってもよい。
【0033】
目標色保持部402は、以下で詳述する色補正実施部404により実施される色補正における目標色の色情報を格納する。ここでは、色情報として、CIE Lh色空間内における色座標が格納されている。目標色保持部402において、目標色は、上述の指定色範囲として選択されうる色範囲と対応づけて格納されている。1つの色範囲には複数の目標色が対応づけられており、ユーザは、当該複数の目標色の中から1の目標色を選択することで、色補正実施部404による色補正における目標色を選択することができる。当該1の目標色は、ユーザにより目標色選択受付部403を通じて選択される。
【0034】
色補正実施部404は、画素抽出部401により抽出された画素の色と目標色選択受付部403を通じて選択された目標色とに基づいて、補正対象画像保持部410が保持する補正対象画像データに対して色補正を実施する。当該色補正において、仮に、画素抽出部401により抽出された全画素を選択された目標色に置換すると、階調飛びが発生し画像品質が著しく低下してしまう。そのため、色補正実施部404は、画素抽出部401により抽出された画素の色と選択された目標色との色差、すなわち、均等色空間(あるいは、均等色平面)における2色間の距離に応じた色補正量を算出することにより階調飛びの発生を防止する。この補正手法では、画素抽出部401が抽出した画素の色を目標色に近づける補正を実現できる。
【0035】
具体的には、色差が大きい場合は目標色に向かう方向の補正量(以下、色補正ベクトルという。)を大きくし、色差が小さい場合は色補正ベクトルを小さくする。特に限定されないが、本実施形態では、色差の大きさに応じて、例えば、5段階の補正パラメータa1、a2、a3、a4、a5(a1<a2<a3<a4<a5)の中から1の補正パラメータが選択され、色補正ベクトルの大きさが、色差と選択された補正パラメータとの積により算出される。この場合、補正パラメータは0から1の間の値として設定される。上述のように、本実施形態では、目標色はCIE Lh色空間内の一点として設定される。したがって、CIE Lh色空間内の目標色に向かう色補正ベクトルが色補正量として算出される。
【0036】
色補正実施部404は、まず、補正対象画像保持部410に保持された画像データから、上記指定色範囲に属する画素として画素抽出部401により抽出された各画素について、選択された目標色に対応する色補正量を上述の手法により算出する。次いで、色補正実施部404は、画素抽出部401により抽出された各画素の色情報に算出した色補正量を適用することにより、抽出された各画素の色情報を変更する。なお、上述のように、色補正量の適用はCIE Lh色空間における色座標に基づいて実施される。色補正実施部404は、当該色補正量の適用後にsRGB等の絶対色空間を構成する色成分で表現された色情報に変更することで、補正後の画像データを得る。
【0037】
次いで、目標色保持部402へ新たな目標色を登録する作用を奏する構成について説明する。上述のように、新たな目標色を登録する機能は、登録用画像保持部405、目標色抽出部406、色範囲入力部407、目標色登録部408および判定部409により実現される。
【0038】
目標色抽出部406は、登録用画像保持部405に保持された目標色登録用画像データから登録対象の目標色を抽出する。目標色登録用画像データとしては、画像記憶部412に格納されている画像データ、画像読取部120から入力された画像データ、ネットワーク161等を介して外部装置から入力された画像データを使用することができる。
【0039】
新たな目標色の抽出は、例えば、ユーザによる目標色登録用画像データ中の位置(点あるいは領域)の指定により実施することができる。すなわち、目標色登録用画像データに対してユーザが指定した位置に単一の色のみが存在する場合、目標色抽出部406は当該色を新たな目標色として抽出する。また、目標色登録用画像データに対してユーザが指定した位置に複数の色が存在する場合、目標色抽出部406は当該複数の色を目標色候補としてユーザに提示し、提示された目標色候補の中からユーザが新たな目標色として抽出すべき色を指定する。あるいは、目標色抽出部406は当該目標色候補についてそれぞれ画素数を計数し、最も画素数が多い色を自動的に新たな目標色として抽出してもよい。なお、抽出した目標色候補をユーザに提示する場合も、その全てを提示する必要はなく、画素数が多い順に一部(例えば、3種程度)を提示する構成とすることもできる。
【0040】
また、上述のように、目標色保持部402では、目標色は色範囲と対応づけて保持されており、新たな目標色も色範囲と対応づけて保持される必要がある。本実施形態では、当該新たな目標色と対応づける色範囲は色範囲入力部407を通じてユーザが入力する。
【0041】
判定部409は、目標色抽出部406により抽出された登録対象の目標色が目標色保持部402に既登録の色範囲に属するか否かを判定する。また、目標色登録部408は、判定部409により目標色抽出部406により抽出された登録対象の目標色が既登録の色範囲に属さないと判定した場合に、当該登録対象の目標色を、色範囲入力部407に入力された新たな色範囲と対応づけて目標色保持部402に登録する。
【0042】
なお、複合機100では、ユーザによる選択等の指示は、ディスプレイ201を含む操作パネル200に対する操作(操作キー203の押下やディスプレイ201の押圧)によって入力される。ディスプレイ201は、ディスプレイ201の押圧位置を検出するセンサにより検出された押圧位置の座標とディスプレイ201に表示する操作ボタン等の画面要素の座標とに基づいてユーザの操作内容を認識する。
【0043】
続いて、複合機100が実施する処理について説明する。以下では、まず、色補正の手順について説明し、その後に、目標色の登録手順について説明する。
【0044】
図5は、複合機100が実施する色補正手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、ユーザにより色補正指示が入力されたことをトリガーとして進行する。なお、色補正指示は、上述したように、操作画面の「カラー/画質」タブに含まれる「ワンタッチ画質調整」ボタンをユーザが押圧することで複合機100に入力される。
【0045】
このとき、画素抽出部401は、画像データ指定を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる画像データの指定が完了するまで待機する(ステップS501No)。ユーザは、色補正対象となる画像データを指定する。指定方法は、特に限定されない。例えば、画像記憶部412に格納されている画像データを色補正対象の画像データに指定する場合は、画像記憶部412に格納されている画像データの一覧をディスプレイ201に表示し、当該一覧から読み出す画像データを選択すればよい。選択された画像データは、画像記憶部412から読み出されて補正対象画像保持部410に保持される。また、補正対象画像データは画像読取部120で読み取ることもできる。この場合、ユーザは原稿搬送装置110の原稿トレイに補正対象の原稿をセットし、スタートキー押下等により読取開始を複合機100に指示する。画像読取部120により読み取られた画像データは補正対象画像保持部410に保持される。なお、同一の色補正を適用するのであれば、補正対象画像保持部410に保持される画像データは複数頁であってもよいが、ここでは1頁である例に基づいて説明する。
【0046】
画像データの指定が完了すると、画素抽出部401は、補正対象画像データにおいて色補正の対象になる色範囲(指定色範囲)の選択を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる色範囲の選択が完了するまで待機する(ステップS501Yes、S502No)。ユーザは、補正対象となる色を選択する。
【0047】
図6は、このときディスプレイ201に表示される、色範囲選択画面の一例を示す図である。この例では、色範囲選択画面601は、色範囲の選択に使用される選択ボタン602〜604、選択を中止して画像データの指定に戻るために使用される「戻る」ボタン605を備える。図6では、選択ボタンとして、記憶色の1つである肌色に対応する「人物写真」ボタン602、記憶色の1つである青色に対応する「風景写真(青)」ボタン603、記憶色の1つである緑色に対応する「風景写真(緑)」ボタン604を備える例を示している。ユーザが、選択ボタン602〜604から1のボタンを選択すると、画素抽出部401は、選択されたボタン(記憶色)に対応づけられた色範囲を画素抽出に使用する指定色範囲として設定する。
【0048】
例えば、図6において、ユーザが「風景写真(青)」ボタン603を選択すると、画素抽出部401は、当該ボタンに対応づけられた青色の色範囲(L:20〜80、C:5〜55、Hue:190〜330°)に属する色の画素を抽出する状態に設定される。なお、このような色範囲は、選択ボタン602〜604と対応づけて画素抽出部401に予め登録されている。
【0049】
色範囲の指定を受けた画素抽出部401は、当該色範囲を示す情報(以下、色範囲識別子という。)を目標色選択受付部403に通知する。当該通知を受けた目標色選択受付部403は、ユーザによる目標色の選択を受け付ける画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる目標色の選択が完了するまで待機する(ステップS502Yes、S503、S504No)。目標色選択受付部403は、当該画面に、通知された色範囲と対応づけて目標色保持部402に登録されている各目標色を表示する。
【0050】
図7は、このときディスプレイ201に表示される、目標色選択画面の一例を示す図である。この例では、目標色選択画面701は、各目標色で着色された矩形画像702〜704を含む。この図では、矩形画像702が第1の目標色(以下、「青1」という。)に対応し、矩形画像703が第2の目標色(以下、「青2」という。)に対応し、矩形画像704が第3の目標色(以下、「青3」という。)に対応する。また、目標色選択画面701は、各矩形画像に対応する目標色の選択に使用される「青1」ボタン705、「青2」ボタン706、「青3」ボタン707、選択を中止して色範囲選択画面601に戻るために使用される「戻る」ボタン708を備える。
【0051】
例えば、第1の目標色は鮮やかな青色とし、第2の目標色は緑みのない真っ青な青色とし、第3の目標色は緑みのある青色(いわゆる、エメラルドグリーン)とすることができる。また、色範囲選択画面601における他の選択ボタンについても簡単に説明すると、「人物写真」ボタン602には、赤みのある、血色の良い印象の肌色の方向へ調整される目標色、日焼けしたような印象の肌色の方向へ調整される目標色、色白の肌色の方向へ調整される目標色を対応づけることができる。また、「風景写真(緑)」ボタン604には、鮮やかな緑色の方向へ調整される目標色、黄緑色の方向へ調整される目標色、やや青みのある緑色の方向へ調整される目標色を対応づけることができる。
【0052】
図7に示す目標色選択画面701において、ユーザが「青1」ボタン705、「青2」ボタン706、「青3」ボタン707のいずれかを選択すると、目標色選択受付部403は選択された目標色の色情報を色補正実施部404に入力する(ステップS504Yes)。例えば、図7において、ユーザが「青2」ボタン706を選択すると、目標色選択受付部403は目標色「青2」の色情報を色補正実施部404に入力する。
【0053】
目標色の色情報が入力された色補正実施部404は、色補正の開始を画素抽出部401に通知する。当該通知を受けた画素抽出部401は、補正対象画像保持部410に保持されている画像データから、指定色範囲に属する色を有する画素を抽出する。画素抽出部401は、抽出した画素の色情報および当該画素の画像データ中の位置情報を色補正実施部404に入力する。当該入力を受けた色補正実施部404は、目標色の色情報と画素抽出部401から入力された色情報に基づいて、上述した手法により抽出された各画素に対する色補正量を算出し、抽出された各画素についての補正後の色情報を求める。色補正実施部404は、補正対象画像保持部410に保持されている画像データを取得し、画素抽出部401から入力された位置情報に対応する画素の色を補正後の色に置換することにより色補正を実行する(ステップS505)。
【0054】
以上のようにして色補正実施部404が生成した色補正後の画像データは、画像形成部140において印刷されたり、画像記憶部412に格納されたりすることで、色補正実施部404から出力される。
【0055】
次に、複合機100が実施する目標色の登録手順について説明する。図8は、複合機100が実施する目標色登録手順の一例を示すフロー図である。ここでは、上述の「人物写真」、「風景写真(青)」、「風景写真(緑)」のいずれの色範囲にも含まれない赤系統の色を目標色として登録する事例について説明する。当該手順は、例えば、ユーザにより目標色登録指示が入力されたことをトリガーとして進行する。なお、目標色登録指示は、上述したように、操作画面の「カラー/画質」タブに含まれる「目標色登録」ボタンをユーザが押圧することで複合機100に入力される。
【0056】
このとき、目標色抽出部406は、画像データ指定を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる画像データの指定が完了するまで待機する(ステップS801No)。ユーザは、画像中に目標色を含む目標色登録用画像データを指定する。指定方法は、特に限定されない。例えば、画像記憶部412に格納されている画像データを目標色登録用画像データに指定する場合は、画像記憶部412に格納されている画像データの一覧をディスプレイ201に表示し、当該一覧から読み出す画像データを選択すればよい。選択された画像データは、画像記憶部412から読み出されて登録用画像保持部405に保持される。この例では、目標色登録用画像データとして、夕刻の海を示す画像の画像データが使用されている。当該画像は、太陽、夕焼け空および海を含んでいる。また、目標色登録用画像データは画像読取部120で読み取ることもできる。この場合、ユーザは原稿搬送装置110の原稿トレイに登録対象の原稿をセットし、スタートキー押下等により読取開始を複合機100に指示する。画像読取部120により読み取られた画像データは登録用画像保持部405に保持される。
【0057】
画像データの指定が完了すると、目標色抽出部406は、目標色登録用画像データ中で登録すべき目標色が存在する位置(点あるいは領域)の指定を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる位置の選択が完了するまで待機する(ステップS801Yes、S802No)。ユーザは、登録すべき目標色が存在する位置を指定する。
【0058】
図9は、このときディスプレイ201に表示される、目標色位置指定画面の一例を示す図である。この例では、目標色位置指定画面901は、上述の目標色登録用画像データを表示するプレビュー表示部902、ユーザによる位置指定に応じて抽出された目標色候補を表示するとともにユーザによる選択を受け付ける目標色選択部903、目標色選択部903に対するユーザの選択を確定する際に選択される「決定」ボタン904、選択を中止して直前の操作画面(ここでは、目標色登録用画像データの指定画面)に戻る際に使用される「キャンセル」ボタン905を備える。なお、特に限定されないが、ここでは、プレビュー表示部902に、上述のようにして指定された目標色登録用画像データを、表示に適当なサイズに画素数を減じたサムネイル画像が表示される。ここでは、当該サムネイル画像は、目標色抽出部406により生成される。
【0059】
目標色位置指定画面901において、ユーザは、自身の指やタッチペン202を使用して、プレビュー表示部902に表示された目標色登録用画像データ上で登録を希望する目標色が存在する位置を指定する(ステップS802Yes)。ここでは、ユーザが、図9に示す点911(画像中の夕焼け空の部分)を指定したとする。当該指定に応じて、目標色抽出部406は、プレビュー表示部902に表示されたサムネイル画像においてユーザにより指定された点911に対応する目標色登録用画像データ上の点(あるいは、当該点を含む領域)に存在する画素の色情報を抽出する(ステップS803)。当該色情報が目標色候補である。なお、上述のように、当該色情報は1色の場合もあれば、複数色の場合もある。ここでは、目標色抽出部406は複数の目標色候補を抽出し、当該複数の目標色候補の中から画素数の多い順に3色の目標色候補を特定したとする。
【0060】
ユーザの指定位置に対応する複数の目標色候補を特定した目標色抽出部406は当該特定した目標色候補を目標色位置指定画面901の目標色選択部903に表示し、ユーザによる選択が完了するまで待機する(ステップS804Yes、S805、S806No)。図9に示すように、目標色選択部903は、各目標色候補で着色された矩形画像912〜914、および各矩形画像に対応する目標色の選択に使用される「登録」ボタン915〜917を備える。この例では、目標色選択部903において左方に表示されている目標色候補912に対応する「登録」ボタン915が選択された状態を示している。
【0061】
当該状態においてユーザが「決定」ボタン904を選択すると、目標色抽出部406は、選択された目標色の色情報を判定部409に入力する。当該入力に応じて、判定部409は、目標色抽出部406から入力された目標色が目標色保持部402に既登録の色範囲に属するか否かを判定する(ステップS806Yes、S807)。上述のように、この例では、入力された目標色は、目標色保持部402に登録されている既存の色範囲(ここでは、「人物写真」、「風景写真(青)」、「風景写真(緑)」)のいずれにも含まれない。したがって、判定部409は、目標色抽出部406により抽出された目標色が既存の色範囲に属さないと判定する(ステップS807No)。このとき、判定部409は、判定結果を、目標色抽出部406に通知する。
【0062】
当該通知を受けた目標色抽出部406は、抽出した目標色の色情報を色範囲入力部407に入力する。当該入力を受けた色範囲入力部407は、ユーザに対し入力された色情報に対応づける色範囲の入力を要求し、入力が完了するまで待機する(ステップS808、S809No)。
【0063】
図10は、このときディスプレイ201に表示される、色範囲入力画面の一例を示す図である。この例では、色範囲入力画面1001は、色範囲の入力に使用される、明度入力欄1002、彩度入力欄1003、色相角入力欄1004、上述の色範囲選択画面601において、色範囲を選択する際のボタンに付される名称の入力に使用される登録名入力欄1005、色範囲選択後に表示される目標色選択画面において、目標色を選択する際のボタンに付される名称の入力に使用されるラベル名入力欄1006、各入力欄に対する入力を確定する際に選択される「決定」ボタン1007、選択を中止して目標色位置指定画面901に戻るために使用される「戻る」ボタン1008を備える。
【0064】
図10の例では、明度入力欄1002において、下限値「20」および上限値「80」が設定され、彩度入力欄1003において、下限値「70」および上限値「120」が設定され、色相角入力欄1004において、下限値「−30(330)」および上限値「40」が設定された例を示している。また、登録名入力欄1005において、「風景写真(赤)」が設定され、ラベル名入力欄1006において、「赤」が設定されている。本実施形態では、これらの設定値の入力は、操作パネル200の操作キー203や、必要に応じてディスプレイ201に表示されるソフトウェアキーボード等を使用してユーザにより入力される。なお、明度入力欄1002、彩度入力欄1003および色相角入力欄1004において、上下限値は、例えば、色範囲入力部407が目標色抽出部406から入力された目標色を中心として一定の色差内の範囲となる上下限値等をデフォルト値として表示し、当該デフォルト値をユーザが微調整する構成にすることができる。
【0065】
ユーザによる「決定」ボタン1007の選択により入力が確定されると、色範囲入力部407は入力された色範囲を、目標色抽出部406から入力された目標色の色情報とともに目標色登録部408に入力する(ステップS809Yes)。当該入力を受けた目標色登録部408は、入力された目標色の色情報を入力された色範囲と対応づけて目標色保持部402に登録する(ステップS810)。また、目標色登録部408は、入力された色範囲を、入力された登録名およびラベル名とともに画素抽出部401に入力する。当該入力を受けた画素抽出部401では、以降の色補正において、入力された色範囲の選択を可能になる。
【0066】
図11は、以上のようにして新たな目標色が目標色保持部402に登録された後、色補正実施の際にユーザが目標色を選択する際に表示される色範囲選択画面601を示す図である。上述の例では、ユーザは、色範囲入力画面1001において、登録名「風景写真(赤)」を入力している。そのため、新目標色登録後の色範囲選択画面601は、図11に示すように、選択ボタンとして、肌色に対応する「人物写真」ボタン602、青色に対応する「風景写真(青)」ボタン603、緑色に対応する「風景写真(緑)」ボタン604に加えて、赤色に対応する「風景写真(赤)」ボタン611を備えている。
【0067】
図12は、図11に示す色範囲選択画面601において、ユーザが「風景写真(赤)」ボタン611を選択した際に表示される目標色選択画面を示す図である。上述の例では、ユーザは、色範囲入力画面1001において、ラベル名「赤」を入力している。そのため、「風景写真(赤)」に対応する目標色選択画面1201は、新たに登録された目標色で着色された矩形画像1202および当該矩形画像1202に対応する目標色の選択に使用される「赤1」ボタン1203、選択を中止して色範囲選択画面601に戻るために使用される「戻る」ボタン1204を備えている。したがって、ユーザは、目標色選択画面1201において「赤1」ボタン1203を選択することで、新たに登録した目標色を選択することができる。
【0068】
一方、上述の判定ステップ(ステップS807)において、判定部409が、目標色抽出部406により抽出された目標色が既存の色範囲に属すると判定した場合(ステップS807Yes)、判定部409は、当該判定結果を、目標色抽出部406に通知する。
【0069】
当該通知を受けた目標色抽出部406は、ユーザに対し、既存の色範囲に属する目標色として登録するか否かをユーザに問い合わせる(ステップS811)。このとき、目標色抽出部406は、例えば、ディスプレイ201に「登録する」または「登録しない」を選択可能なボタンを表示する等によりユーザに問い合わせる。回答が入力されると、目標色抽出部406は、当該回答を判定部409へ通知する。
【0070】
入力された回答が「登録する」であった場合、判定部409は、目標色抽出部406から入力された目標色の色情報を、当該目標色が属する目標色保持部402に既登録の色範囲とともに目標色登録部408に入力する(ステップS811Yes)。当該入力を受けた目標色登録部408は、入力された目標色の色情報を入力された色範囲と対応づけて目標色保持部402に登録する(ステップS810)。また、入力された回答が「登録しない」であった場合、判定部409は、特に何もすることなく手順が終了する(ステップS811No)。なお、入力された回答が「登録しない」であった場合に、ユーザが登録対象目標色を新たな色範囲と対応づけて目標色保持部402に登録する構成であってもよい。この場合、「登録しない」の回答を受けた目標色抽出部406後、色範囲入力部407により色範囲の入力がユーザに要求されることになる(ステップS808)。
【0071】
なお、特に限定されないが、本実施形態では、上述のユーザの位置指定に応じた目標色候補の抽出ステップ(ステップS804)において目標色抽出部406が抽出した目標色候補が一色であった場合、目標色抽出部406は、ユーザに対して目標色候補の選択を要求することなく色範囲の指定を要求する構成になっている(ステップS804No、S807)。
【0072】
以上説明したように、この複合機100では、画像データそのものを使用して目標色を登録するため、ユーザは、視覚を通じて確認した画像中に含まれる色を目標色として登録することができる。また、登録対象の目標色へ色補正する対象となる色範囲を設定することができる。そのため、画像処理装置に設定されていない記憶色等の色であっても、ユーザの好みの色を目標色として登録することができる。その結果、色補正を実施する際には、ユーザは、好みの色への色補正を容易に実施することができる。
【0073】
また、複合機100では、目標色登録用画像データに複数の色が含まれている場合、ユーザは、提示された目標色の候補から所望の目標色を選択することができる。すなわち、ユーザの好みの色を極めて容易にかつ確実に目標色として登録することができる。
【0074】
加えて、複合機100では、判定部409により登録対象の目標色が既存の色範囲に属さないと判定された場合に、登録対象の目標色を目標色保持部402に登録する構成であるため、色空間における色差の小さい近似の目標色が異なる色範囲の目標色として登録されることがない。その結果、色補正を実施する際に、近似した多数の色範囲がユーザに提示され、色補正の選択が困難な状況になることを防止できる。
【0075】
なお、判定部409は、上記判定ステップ(ステップS807)において、上述の判定に代えて、目標色抽出部406から入力された目標色が目標色保持部402に登録されている既存の目標色に対して、予め指定された色差条件を満足するか否かを判定してもよい。ここで色差条件として、例えば、目標色保持部402に既に格納されている目標色と登録対象の目標色とのCIE Lh色空間における色差が所定値(例えば、30〜50程度)以上であること等を使用することができる。この構成では、例えば、色差条件を満足するときに、新たな目標色および新たな色範囲を目標色保持部402に登録することで、上述した効果と同様の効果を得ことができる。なお、目標色抽出部406から入力された目標色が目標色保持部402に登録されている既存の色範囲に属するか否かの判定と、当該目標色が目標色保持部402に登録されている既存の目標色に対して、予め指定された色差条件を満足するか否かの判定は併用することも可能である。
【0076】
また、上述の実施形態では、特に好ましい形態として、判定部409を備える複合機を説明したが、判定部409を備えない場合であっても、ユーザは、少なくとも、視覚を通じて確認した画像中に含まれる色を目標色として登録することができ、登録対象の目標色へ色補正する対象となる色範囲を設定することができる。
【0077】
この構成では、図8に示す目標色選択ステップ(ステップS806)において登録対象の目標色が選択されると、目標色抽出部406は、選択された目標色の色情報を色範囲入力部407に入力する。当該入力を受けた色範囲入力部407は、ユーザに対し入力された色情報に対応づける色範囲の入力を要求し、入力が完了するまで待機する(ステップS808、S809No)。ユーザによる色範囲の入力が完了すると、色範囲入力部407は入力された色範囲を、目標色抽出部406から入力された目標色の色情報とともに目標色登録部408に入力する(ステップS809Yes)。当該入力を受けた目標色登録部408は、入力された目標色の色情報を入力された色範囲と対応づけて目標色保持部402に登録する(ステップS810)。また、目標色登録部408は、入力された色範囲を、入力された登録名およびラベル名とともに画素抽出部401に入力する。
【0078】
なお、上述した各実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、複合機の操作パネルを通じた操作に基づいて説明をしたが、当該複合機と通信可能に接続された情報処理端末を介して複合機に対する操作が行われてもよい。この場合、上述の実施形態における操作パネル200のディスプレイ201の機能は、情報処理端末が具備する、ディスプレイ等の表示手段およびキーボード等の入力手段により提供される。
【0079】
また、図5および図8に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において、各ステップの順序を適宜変更可能である。例えば、図8において、ユーザによる色範囲の入力ステップ(ステップS808、S809)は、画像データの指定前や、目標色登録用画像データ上における位置指定前に実施することもできる。この場合、目標色抽出部406は、目標色候補を抽出する際に、入力された色範囲に属する色情報のみを抽出することが可能になる。このようにすると、入力した色範囲の目標色として登録することが適当でない色情報が目標色候補として抽出されることを防止することができる。また、目標色候補をとして抽出される色情報は入力した色範囲に属するため、近似する複数色の目標色の候補中から所望の目標色を選択して登録することができる。また、このような色範囲が先行して入力される構成では、目標色登録用画像データの全体について、目標色抽出部406が目標色候補を自動的に抽出する構成とすることもできる。
【0080】
さらに、上述の実施形態において、目標色選択画面に表示される目標色を示す矩形画像に代えて、色補正後の画像データの外観を示す画像を使用してもよい。この場合、表示される画像データは、補正対象画像データのサムネイル画像、補正対象データとは異なる画像のいずれを使用してもよい。この場合、目標色選択画面に色補正前の画像データの外観を示す画像を表示することが好ましい。なお、色補正後の画像データは、色補正前のデータに対して、目標色保持部402に格納された色範囲および目標色に応じた色補正を画素抽出部401および色補正実施部404が実施することで生成可能である。
【0081】
加えて、上述の実施形態では、デジタル複合機として本発明を具体化したが、デジタル複合機に限らず、プリンタ、複写機等の任意の画像処理装置に本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、所望の色補正をユーザが容易に設定することができ、画像処理装置として有用である。
【符号の説明】
【0083】
100 複合機(画像処理装置)
120 画像読取部
140 画像形成部
201 ディスプレイ
401 画素抽出部
402 目標色保持部
403 目標色選択受付部
404 色補正実施部
405 登録用画像保持部
406 目標色抽出部
407 色範囲入力部
408 目標色登録部
409 判定部
410 補正対象画像保持部
411 画像保持部
1201 選択用画像保持部
1202 画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対して色補正を実施する画像処理装置であって、
補正対象の画像データから、予め指定された色範囲に属する画素を抽出する画素抽出部と、
前記予め指定された色範囲と対応づけて複数の目標色を格納する目標色保持部と、
前記目標色保持部に格納された複数の目標色から、ユーザによる1の目標色の選択を受け付ける目標色選択受付部と、
前記画素抽出部により抽出された画素の色と前記目標色選択受付部を通じて選択された目標色とに基づいて、前記補正対象の画像データに対して色補正を実施する色補正実施部と、
登録対象の目標色を含む画像データを保持する登録用画像保持部と、
前記登録用画像保持部に保持された画像データから前記登録対象の目標色を抽出する目標色抽出部と、
前記目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色と対応づける新たな色範囲が入力される色範囲入力部と、
前記目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色を、前記色範囲入力部に入力された新たな色範囲と対応づけて前記目標色保持部に登録する目標色登録部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記目標色抽出部は、予め指定された画像データの領域内の画素を抽出し、当該抽出した画素の色を登録対象目標色の候補として表示するとともにユーザによる登録対象目標色の選択を受け付ける、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色が前記目標色保持部に既登録の色範囲に属するか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部により前記既登録の色範囲に属さないと判定された場合に、前記目標色登録部が、前記目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色を、前記色範囲入力部に入力された新たな色範囲と対応づけて前記目標色保持部に登録する、請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色が前記目標色保持部に既登録の目標色に対して予め指定された色差条件を満足するか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部により前記色差条件を満足すると判定された場合に、前記目標色登録部が、前記目標色抽出部により抽出された登録対象の目標色を、前記色範囲入力部に入力された新たな色範囲と対応づけて前記目標色保持部に登録する、請求項1または2に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−98618(P2013−98618A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237079(P2011−237079)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】