説明

画像判定方法及び装置

【課題】判別用基準画像データの準備のための撮影回数が少なくて済む画像判定方法及び装置を提供することにある。
【解決手段】表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データ1に基づいて、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データ11,12を作成する。判別用基準画像データを得るために看板について撮影を行う必要がない分、撮影回数を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラで撮影したデジタル撮影画像データから、看板のシート装着部に装着されている表示シートの種別を判別する画像判定方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2004−213567号公報(特許文献1)、特開2005−165662号公報(特許文献2)及び特開2005−242592号公報(特許文献3)等には、携帯電話に搭載されているデジタルカメラ等で撮影したデジタル撮影画像データと、予め用意しておく判別用基準画像データとから、撮影対象を判別する技術が開示されている。これらの公知技術では、撮影画像データから特徴量を抽出して、撮影対象を判別することができるようにしている。
【0003】
そしてこれらの特許文献に記載の技術をベースとして、これら特許文献の出願人が開発して販売している携帯電話撮影画像データ処理用ソフトウエアでは、予め用意しておく判別用基準画像データとして、撮影対象が広告の場合には、1つの広告について、照明水準を「晴天、曇り、夕暮れ、夜間」の4水準とし、撮影角度を「正面、左右各45度」の3水準として、合計12水準(種類)の画像を用意することを必要としている。
【特許文献1】特開2004−213567号公報
【特許文献2】特開2005−165662号公報
【特許文献3】特開2005−242592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら既存の技術では、少なくとも1つの広告について、12種類の判別用基準画像データを用意しなければならず、広告の種類が多くなると、すべての判別用基準画像データを準備するために、かなりの時間を要する問題があった。例えば、広告の種類が20種類あれば、20×12=240回の撮影が必要であった。また対象とする広告の種類を更に増やす場合には、その都度撮影をする必要があった。
【0005】
本発明の目的は、判別用基準画像データの準備のための撮影回数が少なくて済む画像判定方法及び装置を提供することにある。
【0006】
本発明の目的は、判別用基準画像データを実際の撮影データより取得する必要がない画像判定方法及び装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、デジタル撮影画像データを取得したときの状況を考慮して、判別用基準画像データの数を増減することができる画像判定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像判定方法は、表示用シートが装着されるシート装着部を有する看板を撮影して得たデジタル撮影画像データと、予め用意した複数の判別用基準画像データとに基づいて、表示用シートの種別をコンピュータを利用して判別する。そこで本発明では、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データを利用して複数の判別用基準画像データを準備する。なお本願明細書において、「表示用シート」とは、デジタル画像データが印刷される被印刷媒体であれば如何なるものでもよく、材質や、厚みは、特に限定されるものではない。したがって「表示用シート」には、いわゆるフィルムと呼ばれる非常に厚みが薄い被印刷媒体も当然にして含まれるものである。また表示用シートが装着される看板は、一般的な平面的な広告用看板だけでなく、店舗等の看板も含まれる。さらに表示用シートそれ自体は、二次元的な形状を有するものであるが、表示部分が立体的になる看板(例えば文字や絵柄の部分が浮き出ているような看板)に用いられる場合には、看板として成形された状態で表示用シートが三次元的な形状になるものであってもよいのは勿論である。
【0009】
本発明では、コンピュータが、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データを作成する(変更デジタル画像データ作成ステップ)。そしてコンピュータが、複数の変更デジタル画像データを複数の判別用基準画像データに含めて、表示用シートの種別を判別する(判別ステップ)。具体的な種別の判別方法としては、例えば、特許文献1乃至3に示された画像処理方法を使用すればよい。
【0010】
表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データを利用すると、実際に判別対象とする看板を撮影する必要がない。そのため判別用基準画像データを得るために各広告について撮影を行う必要がない分、データの準備に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
具体的には、本発明の画像判定方法では、変更デジタル画像データを作成する際に、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を用意する。ここで指標は、平面の上に描かれた看板の表示用シートのような二次元形状の指標であってもよいが、立方体等の三次元形状の指標であってもよい。なお三次元形状の指標を用いる場合には、表面の明るさに大きな差が生じないシンプルな形状の指標を用いるのが好ましい。次に、この指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影し、複数の指標デジタル撮影画像データを求める。ここで複数の照明条件とは、少なくとも快晴下の自然照明条件、曇天下の自然照明条件及び夜間中における強制照明条件を含んでいる。少なくともこれら3つの照明条件を含んでいれば、判定精度は相当に高くなる。なお、これらの照明条件に加えて朝焼けや夕暮れ時の照明条件を加えてもよく、さらに雨天時の照明条件を加えてもよく、さらに月や季節毎に照明条件を分けてもよい。また撮影地域によっては、日の出及び日の入りの時間が異なるため、撮影地域ごとに照明条件を分けてもよい。
【0012】
なお複数の照明条件の条件数は、後に説明する判別手段の性能に応じて、多くすることもまたは少なくすることもできる。すなわち判別手段の判別性能が高い場合には、相違点をより細かく判別することができるので、照明条件の条件数を増やすことにより、判別結果の精度を高めることは可能である。例えば、快晴下の照明条件や曇天下の自然照明条件を、時間の経過毎に細かく分けて、照明条件を細分化してもよい。例えば、快晴下の照明条件において、午前十時、正午、午後の三時及び午後の五時に撮影を行って、指標デジタル撮影画像データを予め求めておいてもよい。しかしながら判別手段の判別性能があまり高くない場合には、相違点を細かく判別することはできず、大雑把な判別しか行うことができない。このような場合には、照明条件の条件数を増やしても、判別結果の精度を高めることができない。このような場合には、予め設定する照明条件の条件数は、少なくしてもよい。
【0013】
次に、コンピュータが、複数の指標デジタル撮影画像データ中の指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とする。そしてこの変換値に基づいて複数の照明条件における色度と輝度とを計算により求める。デジタルカメラの記録値は、RGB値(例えばsRGB値)である。そこで、標準的な表色系への記録値の変換では、例えば、記録値をCIE系のXYZ値に表色値変換することになる。そしてこの変換値に基づけば、各照明条件における色度を計算することができ、また輝度を抽出することが可能になる。
【0014】
既知の分光反射率を有する無彩色で表示された指標の画像部分の記録値と前述の既知の分光反射率とから、看板に当たっている太陽光や電気照明等の実照明の色みを知ることができる。なお無彩色は、既知の分光反射率を有するものであれば、どのような無彩色でもよいが、好ましくはほぼ一定の分光反射率を有する無彩色がよい。特に、いわゆる灰色で代表される無彩色を用いると、明暗の差により生じる撮影時の情報損失を少なくすることができ、結果として演算精度を高めることができる。例えば、分光反射率が20%〜80%の灰色を指標に施すと、他の無彩色を用いる場合と比べて、更に演算精度を高めることができる。
【0015】
またコンピュータが、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データを作成する。そして計算により求めた複数の照明条件における色度と輝度とに基づいて、複数の指標デジタル撮影画像データを取得したときの複数の照明条件下における見えを与えるように、デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、複数の変更デジタル画像データを得る。
【0016】
表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データは、グラビア印刷用のデータであるから、このデータからは、表示用シートを正面から撮影して得られる判別用基準画像データの基礎となるデータが得られる。また表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに対して、コンピュータ・グラフィック技術で用いられている画像処理技術を加えることによって、撮影時の方位角及び/または仰角を変えた画像データを得ることができる。すなわち表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データを、方位角が0度で、仰角が0度で撮影した画像データとして、例えば方位角±45度及び所定の仰角で撮影したデジタル画像データを演算によって簡単に求めることができる。そしてこの具体的な方法では、コンピュータが、推定した複数の照明条件における色度と輝度とに基づいて、複数の指標デジタル撮影画像データを取得したときの複数の照明条件下における見えを与えるようにデジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度とを補正することにより、実際に看板を撮影することなく、判別用基準画像データを得ることができる。したがって本発明の具体的な方法によれば、コンピュータが、指標を撮影することにより補正に用いる複数の照明条件における色度と輝度とを求めてデジタル画像データ及び変更デジタル画像データを補正することにより、実際に看板を撮影することなく、必要な判別用基準画像データを得ることができるので、従来の技術と比べて必要な判別用基準画像データの取得時間を大幅に短縮することができる。
【0017】
なおデジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報を考慮して、判別基準画像データの数を増減することができれば、判定精度さらに高めることができる。ここでデジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報とは、撮影時間帯、撮影した季節及び/または撮影場所等の撮影環境に関する情報である。デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報を考慮する場合には、次のようにすればよい。まずデジタル撮影画像データと一緒に、デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報を取得しておく。そして指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて、所定の時間間隔をあけて撮影を行い、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データを予め求める。次に、コンピュータが複数の指標デジタル撮影画像データ中の指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とする。そしてこの変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算し且つ輝度を抽出して、色度及び輝度データとして保存する。更に前述の判別ステップにおいて、デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報に基づいて、複数の照明条件下における補正の基準となる一組以上の色度及び輝度を保存した色度及び輝度データから取得する選択条件を定める。選択条件の定め方は任意である。例えば、情報が撮影時間または時間帯に関するものであれば、その撮影時間または時間帯に対応した時間帯における一組以上の色度及び輝度を選択するように、選択条件を定めることができる。なお撮影時間または時間帯は、携帯電話等の携帯端末に通常搭載されている時計機能から簡単に入手することができる。また情報が、月や季節に関するものである場合には、その月や季節に応じて、一組以上の色度及び輝度を選択するように、選択条件を定めることができる。月や季節に関する情報も携帯電話等の携帯端末に通常搭載されているカレンダ機能から簡単に入手することができる。なお時間または時間帯と月または季節とを組み合わせて、これらの組み合わせに応じて、一組以上の色度及び輝度を選択するように、選択条件を定めることができる。さらに最近は、携帯端末に、場所を特定する機能も搭載されている。したがって撮影場所に応じて、選択条件を定めてよい。なお時間または時間帯と、月または季節と、撮影場所とを組み合わせて、これらの組み合わせに応じて、一組以上の色度及び輝度を選択するように、選択条件を定めることもできる。
【0018】
そしてコンピュータは、選択条件に基づいて、色度及び輝度データから取得した複数の照明条件下のそれぞれにおける一組以上の色度及び輝度に基づいて、デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、複数の変更デジタル画像データを得ればよい。このようにすると予め得ておいた色度及び輝度データに基づいて、使用する判別技術で処理可能な数またはレベルの変更デジタル画像データを得ることができる。
【0019】
本発明の方法を実施するための画像判定装置は、表示用シートが装着されるシート装着部を有する看板を、デジタルカメラで撮影して得たデジタル撮影画像データを記憶する第1の記憶手段と、予め定めた複数の判別用基準画像データを記憶する第2の記憶手段と、デジタル撮影画像データと予め定めた複数の判別用基準画像データとに基づいて、前記表示用シートの種別を判別する判別手段とを備えている。そして第2の記憶手段には、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて作成された、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データが、複数の判別用基準画像データの少なくとも一部として記憶されている。
【0020】
またこの装置は、変更デジタル画像データを作成する変更デジタル画像データ作成手段をさらに含んでいてもよい。この変更デジタル画像データ作成手段は、指標デジタル撮影画像データ記憶手段と、色度計算手段と、輝度抽出手段と、撮影角度変更デジタル画像データ作成手段と色補正手段とを備えて構成される。指標デジタル撮影画像データ記憶手段は、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影して得た複数の指標デジタル撮影画像データを記憶する。色度計算手段は、複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて複数の照明条件における色度を計算する。また輝度抽出手段は、前記変換値に基づいて複数の照明条件における輝度を抽出する。
【0021】
そして撮影角度変更デジタル画像データ作成手段は、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データを作成する。さらに色補正手段は、計算した複数の照明条件における色度と輝度とに基づいて、複数の指標デジタル撮影画像データを取得したときの複数の照明条件下における見えを与えるようにデジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度及び輝度を補正する。
【0022】
なお予め複数の照明条件における色度と輝度とを求めておいてもよい。その場合には、
変更デジタル画像データ作成手段に、複数の照明条件における色度と輝度を記憶する色度及び輝度データ記憶手段を設けておけばよい。色度及び輝度データ記憶手段は、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を前記予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影して得た複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて複数の照明条件における色度を計算し、変換値に基づいて複数の照明条件における輝度を抽出して得た、複数の照明条件における前記色度と前記輝度を記憶するものである。
【0023】
本発明の画像判定装置によれば、指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて複数の指標デジタル撮影画像データを求めておくだけでよく、判別用基準画像データを撮影により取得する必要がないので、判別用基準画像データの準備のための撮影回数が少なくて済むという利点が得られる。
【0024】
また前述のようにデジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報に応じて変更デジタル画像データの数を増やす場合には、第1の記憶手段にはデジタル撮影画像データと一緒に該デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報を記憶しておき、さらに変更デジタル画像データ作成手段に、色度及び輝度データ記憶手段等と、選択条件設定手段とを設けておく必要がある。色度及び輝度データ記憶手段には、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて、所定の時間間隔をあけて撮影して得た、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算し、変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の輝度を抽出して取得した複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータを保存しておけばよい。また選択条件設定手段は、判別ステップにおいてデジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報を考慮して、複数の照明条件下における補正の基準となる一組以上の色度及び輝度を色度及び輝度データ記憶手段から読み出す選択条件を設定できるように構成する。その上で、色補正手段を、選択条件に基づいて、色度及び輝度データから取得した複数の照明条件下のそれぞれにおける一組以上の色度及び輝度に基づいて、デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、複数の変更デジタル画像データを得るように構成すればよい。
【0025】
なおこのような色度及び輝度データ記憶手段を用意しておけば、記憶されているデータから例えば複数の時間帯における色度及び輝度の最大値及び最小値を利用して、補正に使用する色度及び輝度として用いたり、複数の時間帯における色度及び輝度の平均値を補正に使用する色度及び輝度として用いたりすることができる。
【0026】
色度及び輝度データ記憶手段には、事前にデータを記録しておいてもよいが、記憶させるデータを作成する手段を別に設けてもよい。その場合には、変更デジタル画像データ作成手段に、次のような、指標デジタル撮影画像データ記憶手段と、色度計算手段と、輝度抽出手段とを設けておくのが好ましい。すなわち指標デジタル撮影画像データ記憶手段は、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて、所定の時間間隔をあけて撮影して得た、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データを記憶するものである。また色度計算手段は、複数の指標デジタル撮影画像データ中の指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算するものである。さらに輝度抽出手段は、変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の輝度を抽出するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明のように、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データを作成すると、実際に判別対象とする看板を撮影する必要がないため、判別用基準画像データを得るために各広告について撮影を行う必要がない分、撮影回数を減らすことができて、しかもデータの準備に要する時間を大幅に短縮することができる利点が得られる。
【0028】
本発明の具体的な方法によれば、指標を撮影することにより補正に用いる複数の照明条件における色度と輝度とを求めてデジタル画像データ及び変更デジタル画像データを補正することにより、実際に看板を撮影することなく、必要な判別用基準画像データを得ることができるので、従来の技術と比べて必要な判別用基準画像データの取得時間を大幅に短縮することができる利点が得られる。
【0029】
さらに予め色度及び輝度データ記憶手段に、複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータを保存しておけば、デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報に基づいて、適切な複数の照明条件下における補正の基準となる一組以上の色度及び輝度を選択することにより、適切に判別基準画像データの数を増減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態の基礎となる判別用基準画像(比較用テンプレート)を作成する場合の考え方を概念的に示す図である。図1において、符号1は看板に装着される表示用シート2を印刷するために作成されたデジタル画像データである。このデジタル画像データ1は、グラビア写真を作成する際にコンピュータを利用して作成されるデータと同じもので、本実施の形態ではこのデジタル画像データを標準照明下で撮影された理想的な画像データに相当する基準となるデータと考えている。本実施の形態では、このデジタル画像データ1に基づいて、快晴時の照明条件、曇天時の照明条件、薄暮時(夕暮れ時)の照明条件、夜間時の強制照明下の照明条件における変更デジタル画像データ11をコンピュータを利用して作成する。また本実施の形態では、更にデジタル画像データ1に基づいて、各照明条件下における異なる撮影角度[方位角:右45度と左45度,仰角:所定の値(例えば30度)]から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データ12をコンピュータにより作成する。そしてこれらの変更デジタル画像データ12を判別用基準画像データ(比較テンプレート)に含めて、実際に撮影したデジタル撮影画像データ13中に含まれる看板画像の種別のコンピュータによる判別にこのデータを利用する。このようにして判別用基準画像データを作成すると、実際に所定の照明条件下において看板を撮影して判別用基準画像データを作成する必要がないので、撮影回数を少なくして、短い時間で判別用基準画像データを作成することができる。
【0031】
図2は、本発明の画像判定方法を実施する画像判定装置の実施の形態を、コンピュータを利用して実現する場合に使用する機能実現手段の主要部を示している。そして図3は、この装置をコンピュータを用いて実現する際に使用するソフトウエア(プログラム)のアルゴリズムのフローを概念として示す図である。図2に示した画像判定装置100は、第1の記憶手段101と、第2の記憶手段102と、判別手段103と、変更デジタル画像データ作成手段104とを備えている。そして変更デジタル画像データ作成手段104は、デジタル画像データ記憶手段105と、指標デジタル撮影画像データ記憶手段106と、色度計算手段107と、輝度抽出手段108と、撮影角度変更デジタル画像データ作成手段109と色補正手段110とを備えている。
【0032】
第1の記憶手段101は、表示用シートが装着されるシート装着部を有する看板を、携帯電話に実装されているような露出及びホワイトバランスを自動調節するデジタルカメラで撮影して得たデジタル撮影画像データを記憶する。また第2の記憶手段102は、予め定めた複数の判別用基準画像データを記憶する。第2の記憶手段102には、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データが、複数の判別用基準画像データの少なくとも一部として記憶されている。変更デジタル画像データ作成手段104は、変更デジタル画像データを作成する。そして判別手段103は、デジタル撮影画像データと予め定めた複数の判別用基準画像データとに基づいて、表示用シートの種別を判別する。デジタル画像データ記憶手段105には、表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データが記憶されている。
【0033】
変更デジタル画像データ作成手段104に含まれる指標デジタル撮影画像データ記憶手段106は、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影して得た複数の指標デジタル撮影画像データを記憶する。
【0034】
図3に示すように、変更デジタル画像データを作成する際には、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標IDを用意する。本実施の形態では、指標IDは分光反射率が10%〜90%の無彩色である灰色一色に着色されている。なお明るさの変化が大きい屋外に設置される看板が撮影対象とするため、分光反射率は20%〜80%の無彩色である灰色一色が好ましい。この範囲の分光反射率であれば、朝・昼・夕または晴天・曇り・雨天もしくは夜間照明下のいずれにおいても、後述する色みの補正精度をある程度のレベルで維持することができる。指標IDは、プレート等の平面の上に描かれた二次元形状の指標であってもよいが、立方体等の三次元形状の指標であってもよい。次に、この指標IDを予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影し、複数の指標デジタル撮影画像データ14を求める。なお図3中の画像データ14は、複数の照明条件下の一つの照明条件下で撮影した指標デジタル撮影画像データである。ここで複数の照明条件とは、少なくとも快晴下の自然照明条件、曇天下の自然照明条件及び夜間中における強制照明条件を含んでいる。少なくともこれら3つの照明条件を含んでいれば、判定精度は相当に高くなる。なお、これらの照明条件に加えて朝焼けや夕暮れ時の照明条件を加えてもよく、さらに雨天時の照明条件を加えてもよい。なお照明条件はこれらに限定されるものではない。
【0035】
そして色度計算手段107は、各指標デジタル撮影画像データ中の指標IDに対応する画像部分の記録値R000をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値X000とし、この変換値X000に基づいて複数の照明条件における色度x00を推定する。記録値のRGB値をCIE系の光源色XYZ値に変換するためのアルゴリズムは、たとえば撮影画像の記録値をsRGB表色系とすれば、IEC61966−2−1「Multimedia systems and equipment-Colour measure and management-Part 2-1:Colour management-Default RGB colour space-sRGB」に相互変換アルゴリズムが記載されているので省略する。また指標IDに対応する画像部分の特定は、例えば指標IDの形状を基準にして画像を特定する公知の画像特定方法を用いて実行すればよい。そして指標に対応する画像部分の記録値の変換値X000に基づいて照明条件下(実照明)の色度x00を計算する場合には、例えば、色度x0=X0/(X0+Y0+Z0)とy0=Y0/(X0+Y0+Z0)の式によって色度を色度計算手段107により計算する。また輝度抽出手段108は、変換値X000中のY0値を輝度として抽出する。
【0036】
次に撮影角度変更デジタル画像データ作成手段108は、デジタル画像データ記憶手段105に記憶された表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データ12´(図3)を作成する。表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データ1は、グラビア印刷用のデータであるから、デジタル画像データに対して、コンピュータ・グラフィック技術で用いられている画像処理技術を加えることによって、撮影時の方位角及び/または仰角を変えた画像データを得ることができる。すなわち表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データ1を、方位角が0度で、仰角が0度で撮影した画像データとして、例えば方位角±45度及び所定の仰角(例えば30°)で撮影したデジタル画像データを演算によって簡単に求めることができる。なおこの種の画像変換技術は、公知であるため、説明は省略する。
【0037】
さらに色補正手段110は、色度計算手段107で計算した複数の照明条件における色度x00と輝度抽出手段108で抽出した輝度(Y0)と、標準シート印刷用デジタル画像データを作成する際に想定している標準照明の色度xnnとに基づいて、複数の指標デジタル撮影画像データを取得したときの複数の照明条件下における見えを与える(判別用基準画像データに基づく再生画像が照明条件で取得した画像と同じようにみえる)ようにデジタル画像データ1及び複数の撮影角度変更デジタル画像データ12´(標準照明下の撮影画像に相当)の色度を補正して、補正したデータ(11,12)を第2の記憶手段102に判別用基準画像データとして記憶させる。この色度の補正には、例えば、フォンクリースの色順応式を使用するか、あるいはCIE(Commission International De Leclairage)109−1994Technical Reportに記載の色順応式を利用すればよい。なお色順応式については、日本色彩学会編の「色彩科学ハンドブック(第2版)」の第510頁の2.3項に「順応による色刺激値のずれおよび均等色空間座標の計算」と題してその詳細が説明されているので説明は省略する。
【0038】
図4は、判別手段103において、判別動作をする場合に用いるプログラムのフローチャートを示している。表示用シート画像特定ステップ(ステップST1及びST2)では、デジタル撮影画像データから表示用シートの画像部分を特定する。この特定には、画像中から特定の領域を抽出する公知の抽出技術を用いればよい。例えば、まず撮影する際に、撮影対象ができるだけ画像の中心に位置するようにして、しかも画面中にできるだけ撮影対象が大きく写るように撮影するようにする。そして公知の抽出技術を適用して表示シート(看板)を検出する。
【0039】
そして変換補正ステップST3では、表示用シート画像特定ステップST2で特定した表示用シートに対応する画像部分の記録値RGBを標準的な表色系に変換して変換値XYZに変更する(図3参照)。そしてステップST4では、公知の判別法を用いて、判別用基準画像データを用いて撮影した表示用シートに対応する部分の適合画像の選択を行う。ステップST4で使用する判別方法として、どのような判別法を用いてもよく、例えば前述の特許文献1乃至3に示されたような各種の判別方法を利用することができる。これらの各ステップでは、プログラムを実行するコンピュータにより実施される。
【0040】
図5は、図2に示した実施の形態をコンピュータを利用して実施する変形例(本発明の第2の実施の形態)である。図5に示した実施の形態において、図2に示した手段と同じ手段には図2に付した符号と同じ符号を付して説明を省略する。図2の実施の形態と図5に示した実施の形態とは、図5に示した実施の形態では、図2に示した実施の形態で用いる指標デジタル撮影画像記憶手段106、色度計算手段107及び輝度抽出手段108に代えて、色度及び輝度データ記憶手段111を用いている点で相違する。すなわち図5の実施の形態では、予め補正に必要な色度及び輝度のデータを色度及び輝度データ記憶手段111に記憶している。そこで色度及び輝度データ記憶手段111には、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影して得た複数の指標デジタル撮影画像データ中の指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、この変換値に基づいて複数の照明条件における色度を計算した結果と変換値に基づいて複数の照明条件における輝度を抽出して得た結果とが、複数の照明条件における色度及び輝度として記憶されている。このような構成でも、特にデータの照明条件の変更がなければ十分に使用が可能である。
【0041】
図6は、本発明の第3の実施の形態の構成のブロック図を示している。図6においては、図2に示した第1の実施の形態で用いる手段と同様の手段には、図2に付した符号に100の数の符号を加えた数の符号を付してある。第1の記憶手段201、第2の記憶手段202、判別手段203、指標デジタル撮影画像記憶手段206、デジタル画像データ記憶手段205、色度計算手段207、輝度抽出手段208及び撮影角度変更デジタルデータ作成手段209の基本的な機能は、図2に示した対応する各手段と同じか、または実質的に同様である。本実施の形態では、特に色度及び輝度データ記憶手段211と選択条件設定手段212とを備えている。本実施の形態では、第1の記憶手段201にデジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報(撮影時間帯、撮影した季節及び/または撮影場所等の撮影環境に関する情報)が記憶されている。これらの情報は、携帯電話に通常搭載されている時計機能、カレンダ機能、位置確認機能を利用して簡単に入手することができる。また本実施の形態では、変更デジタル画像データ作成手段204に、色度及び輝度データ記憶手段等211と、選択条件設定手段212とを設けている。色度及び輝度データ記憶手段211には、複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータを保存している。具体的には、指標デジタル撮影画像データ記憶手段206には、予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて、所定の時間間隔をあけて撮影して得た、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データを記憶してある。本実施の形態において、図2の実施の形態と異なるのは、所定の時間間隔をあけて撮影して得た、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データを取得して指標デジタル撮影画像データ記憶手段206に記憶している点である。具体的には、晴天時、曇天下、雨天下の自然照明条件下のそれぞれにおいて、指標を午前十時、正午、午後の三時及び午後の五時に撮影して、その結果を指標デジタル撮影画像データ記憶手段206に記憶している。また本実施の形態では、月または季節毎に各照明条件で指標を撮影して得たデータや、日の出及び日の入りの時間が大きく異なる複数の地域において各を各照明条件で指標を撮影して得たデータを指標デジタル撮影画像データ記憶手段206に記憶している。なお指標デジタル撮影画像データ記憶手段206に記憶するデータは、上記の例に限定されるものではない。
【0042】
そして色度計算手段207では、複数の指標デジタル撮影画像データ中の指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算する。さらに輝度抽出手段208は、同様に変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の輝度を抽出する。そして色度及び輝度データ記憶手段211には、色度計算手段207及び輝度抽出手段208で得た複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータが保存されている。色度及び輝度データ記憶手段211における複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータの保存形式は任意であり、表形式でも、またマップ形式やグラフ形式で保存することができる。
【0043】
そして選択条件設定手段212は、第1の記憶手段201に記憶されているデジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報に基づいて、複数の照明条件下における補正の基準となる一組以上の色度及び輝度を色度及び輝度データ記憶手段212から読み出す選択条件を設定できるように構成されている。選択条件の定め方は任意である。本実施の形態では、情報が撮影時間または時間帯に関するものであれば、その撮影時間または時間帯に対応した時間帯における一組以上の色度及び輝度を選択するように、選択条件設定手段212は選択条件を定める。また情報が、月や季節に関するものである場合には、その月や季節に応じて、一組以上の色度及び輝度を選択するように、選択条件設定手段212は選択条件を定める。また本実施の形態では、時間または時間帯と月または季節とが組み合わせられた情報が入力される場合には、これらの組み合わせに応じて、一組以上の色度及び輝度を選択するように、選択条件設定手段212は選択条件を定める。なお本実施の形態では、選択条件設定手段212は、撮影場所の情報に応じても、選択条件を定めることができる機能を有している。
【0044】
色補正手段210は、選択条件設定手段212により選択した選択条件に基づいて、色度及び輝度データ記憶手段211から取得した、複数の照明条件下のそれぞれにおける一組以上の色度及び輝度に基づいて、デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正し、複数の変更デジタル画像データを得る。より具体的には、色補正手段210は、選択条件設定手段212により設定した選択条件に基づいて、色度及び輝度データ記憶手段211から取得した複数の照明条件下のそれぞれにおける一組以上の色度及び輝度に基づいて、この一組以上の色度及び輝度に対応する指標デジタル撮影画像データを取得したときの照明条件下における見えを与えるようにデジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正する。本実施の形態では、選択条件設定手段212を経由して、色度及び輝度データ記憶手段211から必要なデータを色補正手段210に提供している。しかしながら色補正手段210が、選択条件に応じて、色度及び輝度データ記憶手段211から必要なデータを取得するようにしてもよいのは勿論である。
【0045】
第1の記憶手段201から情報が入力されない場合において、選択条件設定手段212により定める選択条件の定め方は任意である。例えば、撮影時間及び季節が不明な場合には、春の快晴下の照明条件において、正午における一組の色度及び輝度を選択するというように、選択条件を定めてもよい。また、午前十時、正午、午後の三時及び午後の五時における色度及び輝度の組み合わせの平均値を選択するように、選択条件を定めてもよい。
【0046】
本実施の形態によれば、色度及び輝度データに基づいて、使用する判別手段203で処理可能な数またはレベルの変更デジタル画像データを簡単に得ることができる。また色度及び輝度データ記憶手段211を用意しておけば、撮影時間が判らなければ、記憶されているデータから例えば複数の時間帯における色度及び輝度の最大値及び最小値を利用して、補正に使用する色度及び輝度として用いたり、複数の時間帯における色度及び輝度の平均値を補正に使用する色度及び輝度として用いたりすることもできる。
【0047】
なお図6の実施の形態とは異なって、図5の実施の形態と同様に、色度及び輝度データ記憶手段211には、事前にデータを記録しておいてもよいのは勿論である。
【0048】
図6の実施の形態では、まず指標を予め定めた複数の照明条件下に置いて、季節ごとまたは月ごとに、所定の時間間隔をあけて撮影を行う。そして各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データを予め求めて指標デジタル撮影画像記憶手段206に記憶する。次に、複数の指標デジタル撮影画像データ中の指標に対応する画像部分の記録値を、それぞれ標準的な表色系に変換して変換値とする。この変換は、本実施の形態では、色度計算手段207で行っている。色度計算手段207は、この変換値に基づいて複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算する。また輝度抽出手段208により輝度を抽出する。計算または抽出により求めた複数の色度及び輝度は、色度及び輝度データ記憶手段211に保存する。そして第1の記憶手段201に記憶されている情報を考慮して、複数の照明条件下における補正の基準となる一組以上の色度及び輝度を色度及び輝度データから取得する選択条件を選択手段設定手段212で定める。そして色補正手段210が、選択条件に応じて選択された一組以上の色度及び輝度を用いて補正を行う。なお補正の方法は、第1の実施の形態で採用する方法と同じである。
【0049】
さらに予め色度及び輝度データ記憶手段に、複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータを保存しておけば、撮影画像データ処理技術(判別手段)の能力に応じて必要とされる変更デジタル画像データ(判別用基準画像データ)を実際に撮影により取得することなく任意に準備できるので、各種の撮影画像データ処理技術(ソフトウエア)を利用することが簡単に可能になる。
【0050】
図7は、図6の実施の形態をコンピュータを利用して実現する場合において、特に選択条件設定手段212等をソフトウエアで実現する場合に使用するソフトウエア(プログラム)のアルゴリズムの主要部を示すフローチャートである。最初に、ステップST11で、デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報(取得状況情報)を特定する。次に取得状況情報から選択条件を決定または設定する(ステップST12)。そして選択条件に基づいて一組以上の色度及び輝度を色度及び輝度データ記憶手段211から呼び出して、色補正手段210へと入力する。最後に、色補正手段210は、一組以上の色度及び輝度に基づいてデジタル画像データ及び撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して得た複数の変更デジタル画像データを第2の記憶手段202に記憶させる。
【0051】
本実施の形態によれば、予め色度及び輝度データ記憶手段211に、複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータを保存しているので、撮影画像データ処理技術(判別手段203)の能力に応じて必要とされる変更デジタル画像データ(判別用基準画像データ)を実際に撮影により取得することなく任意に準備でき、各種の撮影画像データ処理技術を利用することが簡単に可能になる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態の基礎となる判別用基準画像(比較用テンプレート)を作成する場合の考え方を概念的に示す図である。
【図2】本発明の画像判定方法を実施する画像判定装置の第1の実施の形態を、コンピュータを利用して実現する場合に使用する機能実現手段の主要部を示すブロック図である。
【図3】本発明の画像判定方法の基本的な実施の形態をコンピュータを用いて実施する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムのフローを概念として示す図である。
【図4】判別手段において、判別動作をする場合のフローチャートを示す図である。
【図5】第2の実施の形態を、コンピュータを利用して実現する場合に使用する機能実現手段の主要部を示すブロック図である。
【図6】第3の実施の形態を、コンピュータを利用して実現する場合に使用する機能実現手段の主要部を示すブロック図である。
【図7】図6の実施の形態をコンピュータを利用して実現する場合において、特に選択条件設定手段等をソフトウエアで実現する場合に使用するソフトウエアのアルゴリズムの主要部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
100,200 画像判定装置
101,201 第1の記憶手段
102,202 第2の記憶手段
103,203 判別手段
104,204 変更デジタル画像データ作成手段
105,205 デジタル画像データ記憶手段
106,206 指標デジタル撮影画像記憶手段
107,207 色度計算手段
108,208 輝度抽出手段
109,209 撮影角度変更デジタル画像データ作成手段
110,210 色補正手段
111,211 色度及び輝度データ記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示用シートが装着されるシート装着部を有する看板をデジタルカメラで撮影して得たデジタル撮影画像データと、予め用意した複数の判別用基準画像データとに基づいて、前記表示用シートの種別をコンピュータを利用して判別する画像判定方法であって、
前記コンピュータが、前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データを作成し、前記複数の変更デジタル画像データを前記複数の判別用基準画像データに含めて前記表示用シートの種別を判別することを特徴とする画像判定方法。
【請求項2】
前記変更デジタル画像データを作成する際には、
予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を用意し、
前記指標を前記予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影して、複数の指標デジタル撮影画像データを求め、
前記コンピュータが、前記複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて前記複数の照明条件における色度を計算し且つ輝度を抽出し、
前記コンピュータが、前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データを作成し
前記コンピュータが、計算した前記複数の照明条件下における前記色度と前記輝度とに基づいて、前記複数の指標デジタル撮影画像データを取得したときの前記複数の照明条件下における見えを与えるように前記デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、前記複数の変更デジタル画像データを得ることを特徴とする請求項1に記載の画像判定方法。
【請求項3】
前記予め定めた複数の照明条件は、少なくとも快晴下の自然照明条件、曇天下の自然照明条件及び夜間中における強制照明条件を含んでいる請求項1または2に記載の画像判定方法。
【請求項4】
前記予め定めた複数の撮影角度は、前記看板を真正面から撮影するときの方位角を方位0度として、複数種類の方位角と仰角の組み合わせとして定められている請求項1に記載の画像判定方法。
【請求項5】
表示用シートが装着されるシート装着部を有する看板をデジタルカメラで撮影して得たデジタル撮影画像データを記憶する第1の記憶手段と、
予め定めた複数の判別用基準画像データを記憶する第2の記憶手段と、
前記デジタル撮影画像データと前記予め定めた複数の判別用基準画像データとに基づいて、前記表示用シートの種別を判別する判別手段とを備えた画像判定装置であって、
前記第2の記憶手段には、前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて作成された、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データが、前記複数の判別用基準画像データの少なくとも一部として記憶されていることを特徴とする画像判定装置。
【請求項6】
前記変更デジタル画像データを作成する変更デジタル画像データ作成手段をさらに含み、
前記変更デジタル画像データ作成手段は、
予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を前記予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影して得た複数の指標デジタル撮影画像データを記憶する指標デジタル撮影画像データ記憶手段と、
前記複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて前記複数の照明条件における色度を計算する色度計算手段と、
前記変換値に基づいて前記複数の照明条件における輝度を抽出する輝度抽出手段と、
前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データを作成する撮影角度変更デジタル画像データ作成手段と、
計算した前記複数の照明条件における前記色度と前記輝度とに基づいて、前記複数の指標デジタル撮影画像データを取得したときの前記複数の照明条件下における見えを与えるように前記デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度とを補正する色補正手段とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の画像判定装置。
【請求項7】
前記変更デジタル画像データを作成する変更デジタル画像データ作成手段をさらに含み、
前記変更デジタル画像データ作成手段は、
予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を前記予め定めた複数の照明条件下に置いて撮影して得た複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて前記複数の照明条件における色度を計算し、前記変換値に基づいて前記複数の照明条件における輝度を抽出して得た、前記複数の照明条件における前記色度と前記輝度を記憶する色度及び輝度データ記憶手段と、
前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データを作成する撮影角度変更デジタル画像データ作成手段と、
前記色度及び輝度データ記憶手段から取得した前記複数の照明条件における前記色度と前記輝度とに基づいて、前記複数の指標デジタル撮影画像データを取得したときの前記複数の照明条件下における見えを与えるように前記デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度とを補正する色補正手段とを備えていることを特徴とする請求項5に記載の画像判定装置。
【請求項8】
表示用シートが装着されるシート装着部を有する看板をデジタルカメラで撮影して得たデジタル撮影画像データと、予め用意した複数の判別用基準画像データとに基づいて、コンピュータを利用して前記表示用シートの種別を判別するために、
前記コンピュータが前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データを作成し、前記複数の変更デジタル画像データを前記複数の判別用基準画像データに含めて前記表示用シートの種別を判別する画像判定方法であって、
前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データを作成する変更デジタル画像データ作成ステップと、
前記複数の変更デジタル画像データを前記複数の判別用基準画像データに含めて前記表示用シートの種別を判別する判別ステップとを前記コンピュータが実行し、
前記デジタル撮影画像データには、取得したときの状況に関する情報が含まれており、
前記変更デジタル画像データ作成ステップでは、
予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を用意し、
前記指標を前記予め定めた複数の照明条件下に置いて、所定の時間間隔をあけて撮影し、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データを予め求め、
前記複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、
該変換値に基づいて前記複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算し且つ輝度を抽出して、色度及び輝度データとして保存し、
前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データを作成し
前記デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報に基づいて、複数の照明条件下における補正の基準となる一組以上の色度及び輝度を前記色度及び輝度データから取得する選択条件を定め、
前記選択条件に基づいて、前記色度及び輝度データから取得した前記複数の照明条件下のそれぞれにおける前記一組以上の色度及び輝度に基づいて、前記デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、前記複数の変更デジタル画像データを得ることを特徴とする画像判定方法。
【請求項9】
前記変更デジタル画像データ作成ステップでは、
前記選択条件に基づいて、前記色度及び輝度データから取得した前記複数の照明条件下のそれぞれにおける前記一組以上の色度及び輝度に基づいて、該一組以上の色度及び輝度に対応する前記指標デジタル撮影画像データを取得したときの前記照明条件下における見えを与えるように前記デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、前記複数の変更デジタル画像データを得ることを特徴とする請求項8に記載の画像判定方法。
【請求項10】
表示用シートが装着されるシート装着部を有する看板をデジタルカメラで撮影して得たデジタル撮影画像データと該デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報とを記憶する第1の記憶手段と、
予め定めた複数の判別用基準画像データを記憶する第2の記憶手段と、
前記デジタル撮影画像データと前記予め定めた複数の判別用基準画像データとに基づいて、前記表示用シートの種別を判別する判別手段とを備え、
前記第2の記憶手段には、前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて作成された、予め定めた複数の照明条件下において予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の変更デジタル画像データが、前記複数の判別用基準画像データの少なくとも一部として記憶されている画像判定装置であって、
前記変更デジタル画像データを作成する変更デジタル画像データ作成手段を更に備え、
前記変更デジタル画像データ作成手段は、
予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を前記予め定めた複数の照明条件下に置いて、所定の時間間隔をあけて撮影して得た、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて前記複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算し、前記変換値に基づいて前記複数の照明条件における時間の経過毎の輝度を抽出して取得した複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータを保存する色度及び輝度データ記憶手段と、
前記表示用シートを印刷する際に用いるデジタル画像データに基づいて、予め定めた複数の撮影角度から前記看板を撮影したときに得られる複数のデジタル撮影画像データに相当する複数の撮影角度変更デジタル画像データを作成する撮影角度変更デジタル画像データ作成手段と、
前記デジタル撮影画像データを取得したときの状況に関する情報に基づいて、前記複数の照明条件下における補正の基準となる一組以上の色度及び輝度を前記色度及び輝度データ記憶手段から読み出す選択条件を設定する選択条件設定手段と、
前記選択条件に基づいて、前記色度及び輝度データから取得した前記複数の照明条件下のそれぞれにおける前記一組以上の色度及び輝度に基づいて、前記デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、前記複数の変更デジタル画像データを得る色補正手段とを備えていることを特徴とする画像判定装置。
【請求項11】
前記色補正手段は、前記選択条件設定手段により設定した前記選択条件に基づいて、前記色度及び輝度データから取得した前記複数の照明条件下のそれぞれにおける前記一組以上の色度及び輝度に基づいて、該一組以上の色度及び輝度に対応する前記指標デジタル撮影画像データを取得したときの前記照明条件下における見えを与えるように前記デジタル画像データ及び複数の撮影角度変更デジタル画像データの色度と輝度を補正して、前記複数の変更デジタル画像データを得ることを特徴とする請求項10に記載の画像判定装置。
【請求項12】
前記変更デジタル画像データ作成手段は、
予め既知の分光反射率を有する無彩色が施された指標を前記予め定めた複数の照明条件下に置いて、所定の時間間隔をあけて撮影して得た、各照明条件下における時間の経過毎の複数の指標デジタル撮影画像データを記憶する指標デジタル撮影画像データ記憶手段と、
前記複数の指標デジタル撮影画像データ中の前記指標に対応する画像部分の記録値をそれぞれ標準的な表色系に変換して変換値とし、該変換値に基づいて前記複数の照明条件における時間の経過毎の色度を計算する色度計算手段と、
前記変換値に基づいて前記複数の照明条件における時間の経過毎の輝度を抽出する輝度抽出手段とを更に含み、
前記色度及び輝度データ記憶手段には、前記色度計算手段及び前記輝度抽出手段に基づいて取得した、複数の照明条件における時間の経過毎の色度及び輝度のデータが保存されている請求項10または11に記載の画像判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−181420(P2008−181420A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15479(P2007−15479)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】