説明

画像取得装置及び画像取得装置の駆動方法

【課題】予め定められた範囲内でフォトセンサを移動させ、かつ光学系を介して画像をフォトセンサで取得する場合に、付加的な部材の追加によって画像取得装置の全体の厚みが増大することを抑制すること。
【解決手段】画像取得装置は、所定範囲に亘って形成された複数のレンズ列と、レンズ列に含まれるレンズ91を介して入射する光を受光する画素PXが複数配置された画素列を1列以上有するフォトセンサ92と、を備え、フォトセンサ92は、少なくとも複数のレンズ列の形成範囲内で、画素列に含まれる複数の画素PXの配置方向に交差する方向へ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像取得装置及び画像取得装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機に代表される画像取得装置に関する技術の進展が著しい。画像取得装置ではより良質な画像を取得することが強く望まれる。これによって画像取得装置の性能が決定付けられるためである。また、画像取得装置は、その用途に応じて様々な改良が積み重ねられている。
【0003】
特許文献1には、原稿面に密着させるタイプのイメージセンサが開示されている。この場合、良質な画像を取得するために多数の微小レンズと遮光スペーサ板を設けている。
【0004】
そのほか、特許文献2には、ガイドに沿って移動可能な読取ヘッドを備える光学式文字読取装置が開示されている。特許文献3には、ハンディースキャナ用のテンプレートが開示されている。特許文献4には、光ファイバレンズアレイと照明部で構成される光学系を備えるマイクロスキャナーが開示されている。
【特許文献1】特開平3−157602号公報
【特許文献2】特開昭53−108728号公報
【特許文献3】実開昭54−184029号公報
【特許文献4】特開昭59−201179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話又はノートパソコンといった小型な電子機器に画像取得装置を組み込む場合、画像取得装置には、良質な画像を取得することに加えて、画像取得装置の価格を低くすること、及び画像取得装置自体を薄型化することも強く要求される。
【0006】
画像取得装置の価格上昇を抑制しながら広範囲の画像を取得するためには、フォサセンサを移動させることが有効である。また、より良質な画像を取得するため、撮像対象物に応じた特性のレンズを設けると良い。しかしながら、予め定められた範囲内でフォトセンサを移動させる場合、フォトセンサ上にレンズを直接的に設けると画像取得装置全体の厚みが増大してしまうおそれがある。
【0007】
具体例を挙げると、予め定められた範囲内でフォトセンサを移動させる場合、フォトセンサの上面にレンズを直接的に設けると、レンズ形成用基板に加えてフォトセンサの移動空間を確保するための部材(カバーガラス等)を追加的に積層させることが必要になる場合がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、予め定められた範囲内でフォトセンサを移動させ、かつ光学系を介して画像をフォトセンサで取得する場合に、付加的な部材の追加によって画像取得装置の全体の厚みが増大することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像取得装置は、所定範囲に亘って形成された複数のレンズ列と、前記レンズ列に含まれるレンズを介して入射する光を受光する画素が複数配置された画素列を1列以上有するフォトセンサと、を備え、前記フォトセンサは、少なくとも複数の前記レンズ列の形成範囲内で、前記画素列に含まれる複数の前記画素の配置方向に交差する方向へ移動する。
【0010】
所定範囲に亘って複数のレンズ列を形成させること自体によって、フォトセンサの移動空間を好適に確保することができる。よって、フォトセンサの移動空間を確保するための部材を追加的に積層させる必要がなく、画像取得装置の全体の厚みが増大することを抑制できる。
【0011】
前記フォトセンサ上に設けられると共に、複数の前記画素夫々に対応する複数の開口を有する遮光部材を更に備える、と良い。
【0012】
前記遮光部材は、前記フォトセンサの上面に固定され、前記フォトセンサの移動に応じて移動する、と良い。
【0013】
前記遮光部材は、前記レンズの光軸に沿って延在する遮光壁を有する、と良い。これによって光信号のクロストークを抑制できる。
【0014】
前記遮光部材に形成された複数の前記開口夫々は、前記フォトセンサから離間する方向に第1及び第2開口幅を順次有し、前記第第2開口幅は、前記第1開口幅よりも広い、と良い。これによって光信号のクロストークを抑制しつつ、ノイズ成分の光が画素に入射することをより効果的に抑制することができる。
【0015】
複数の前記レンズ列の配置方向と前記フォトセンサの移動方向は実質的に一致する、と良い。
【0016】
前記フォトセンサが直接的又は間接的に取り付けられ、前記フォトセンサの移動を案内するガイド部材を更に備える、と良い。
【0017】
前記フォトセンサの移動量の検出用に予め形成された規則的なパターンを更に備える、と良い。
【0018】
前記パターンは、前記フォトセンサの移動方向に沿って配置された複数の前記レンズによって形成される、と良い。
【0019】
前記フォトセンサは、前記パターンの規則性に応じた値を当該フォトセンサの移動に応じて出力する画素を更に備える、と良い。
【0020】
前記フォトセンサの初期位置を設定するために予め形成されたホームポジションパターンを更に備える、と良い。
【0021】
前記ホームポジションパターンは、前記レンズ列に含まれる1以上の前記レンズ上に形成された遮光層により形成される、と良い。
【0022】
撮像対象物に対して光を照射する光源を更に備える、と良い。
【0023】
前記光源は、前記フォトセンサの移動に伴って移動する、と良い。
【0024】
前記光源は、前記画素列に含まれる複数の前記画素の配置方向に沿う方向に複数の半導体発光素子が配置されることで形成される、と良い。
【0025】
前記光源の隣にある前記画素列と当該光源間の間隔は、複数の前記レンズの配列間隔よりも広い、と良い。
【0026】
前記フォトセンサを移動させる駆動機構を更に備える、と良い。
【0027】
前記駆動機構は、非撮像期間に前記フォトセンサを移動させる、と良い。
【0028】
本発明に係る画像取得装置の駆動方法は、所定範囲に亘って形成された複数のレンズ列と、前記レンズ列に含まれるレンズを介して入射する光を受光する画素が複数配置された画素列を1列以上有するフォトセンサと、を備える画像取得装置の駆動方法であって、少なくとも複数の前記レンズ列の形成範囲内で、前記画素列に含まれる複数の前記画素の配置方向に交差する方向へ前記フォトセンサを移動させて画像を取得する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、予め定められた範囲内でフォトセンサを移動させ、かつ光学系を介して良質な画像をフォトセンサで取得する場合に、付加的な部材の追加によって画像取得装置の全体の厚みが増大することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視した場合を前提として用いるものとする。
【0031】
〔第1の実施の形態〕
以下、図1、2を参照して、本発明に第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図2は、第1の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。なお、本実施形態では、画像取得装置は、生体情報取得装置として機能し、生体情報としての静脈パターンを取得する。この点は、第2の実施の形態以降の実施形態についても同様である。
【0032】
図1、2に示すように、画像取得装置90は、複数のレンズ(マイクロレンズ)91、フォトセンサ(光検出器)92、レール(ガイド部材)93、取り付け部94、及びカバー板95を有する。画像取得装置90は、静脈像を取得する。
【0033】
カバー板95は、前面95a、背面95b、及び側面を有する透明な板状部材である。カバー板95の前面95aには、指(被検体の生体部位)100が載置される。画像取得装置90で静脈像を取得する場合、少なくとも近赤外又は赤外領域の光に対して実質的に透明な部材がカバー板95として選択される。カバー板95が画像取得装置の容器(外囲器)に固着されることによって、画像取得装置の容器内の機密性が保たれる。すなわち、カバー板95は、密閉カバーとして機能する。
【0034】
カバー板95の背面95bには、y軸に沿って複数のレンズ91が配置された複数のレンズ列が形成される。各レンズ91は、カバー板95の背面95bにマトリクス状に配置される(図1参照)。このように予め所定範囲に亘って複数のレンズ列を形成させること自体によって、フォトセンサの移動空間を好適に確保することができる。尚、レンズ91は、レンズ径が1mm以下のマイクロレンズである。
【0035】
レンズ91の焦点距離は、生体情報の種類に応じて決定される。指(被検体の生体部位)100の静脈像を取得する場合には、指100の表皮から静脈が存在する深度に応じてレンズ91の焦点距離が設定される。
【0036】
カバー板95の背面側には、フォトセンサ92が配置される。フォトセンサ92は、y軸(フォトセンサ92の移動方向に交差する方向)に沿って複数の画素が配置された画素列を2列有する。フォトセンサ92は、フォトダイオードを画素とするフォトダイオードアレイである。フォトセンサ92は、取り付け部94を介してレール93に取り付けられる。なお、フォトセンサ92を、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ、又はTFT(Thin Film Transistor)センサで形成させても良い。また、フォトセンサ92と取り付け部94の間にフォトセンサ92を支持するためのキャリア部材を設けても良い。
【0037】
レール93は、棒状の金属であって、間接的に取り付けられたフォトセンサ92の移動を案内する。
【0038】
本実施形態においては、フォトセンサ92は、レール93で案内されることでx軸に沿って移動する。フォトセンサ92を移動させながらフォトセンサ92の画素列で像を取得することで、フォトセンサ92の移動範囲に応じた範囲で像を取得することができる。従って、より少ない画素列数のフォトセンサで所望の像を取得することができる。結果として、画像取得装置の価格の上昇を抑制しつつ、画像取得装置の全体の厚みが増大することが抑制しつつ、所望の範囲で生体情報を取得可能な画像取得装置を提供することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、撮像品質を向上させるため、カバー板95の背面95bにレンズ91がマトリクス状に配置されている。従って、より高品質な像をフォトセンサ92で取得するためには、レンズ91の光軸AX上にフォトセンサ92の画素が在るときにフォトセンサ92に撮像させると良い。
【0040】
なお、フォトセンサ92を移動させる駆動機構の具体的な構成は任意である。例えば、モータ等で生じる駆動力を取り付け部94に伝達させてフォトセンサ92を移動させても良い。また、静脈像を取得する場合、近赤外線の光(波長:600nm〜1000nm)を指100に照射する光源を配置すると良い。駆動機構の具体例については他の実施形態において更に説明する。
【0041】
〔第2の実施の形態〕
以下、図3、4を参照して、本発明に第2の実施形態について説明する。図3は、第2の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図4は、第2の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【0042】
本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、フォトセンサ92の前面上に、遮光板96が配置されている。遮光板96は、黒色樹脂等により形成された平板状部材である。遮光板96は、生体情報の信号成分を含む光に対して光吸収性を有する。遮光板96をフォトセンサ92に固定しない場合と比較して、遮光板96をフォトセンサ92に固定させることで、遮光板96の小型化が可能であり、さらにフォトセンサ92へのノイズ光の入射を効果的に抑制することができる。
【0043】
遮光板96は、フォトセンサ92の各画素PXに対応して、複数の開口OP96を有する。開口OP96の上面視形状は、画素PXの上面視形状よりも小さい。従って、開口OP96を画素PX上に配置させることによって、画素PXの有効領域を開口OP96の開口形状によって規定することができる。このようにして画素PXに入射する光の光量やレンズ91での撮像領域を適切に設定することが可能になる。なお、開口OP96の開口幅は、レンズの配置間隔の1/10程度であると良い。
【0044】
なお、遮光板96の開口OP96には、何らかの光透過性材料を充填しても良い。開口OP96は、光学的な意味での開口を意味する。
【0045】
〔第3の実施の形態〕
以下、図5、6を参照して、本発明に第3の実施形態について説明する。図5は、第3の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図6は、第3の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【0046】
本実施形態においては、第2の実施形態とは異なり、遮光板96には格子状に形成された遮光壁97が形成される。遮光壁97は、黒色樹脂等により形成された格子状部材である。遮光壁97は、フォトセンサ92の各画素PXに対応して複数の開口OP97を有する。遮光壁97をフォトセンサ92の前方に配置することで、レンズ91と画素PX間の光チャネル間のクロストークを効果的に抑制することができる。また、開口OP97の開口幅は、開口OP96の開口幅よりも広い。これにより、レンズ91と画素PX間の光チャネル間のクロストークを抑制しつつ、ノイズ成分の光が画素に入射することを、より効果的に抑制することができる。
【0047】
なお、遮光壁97は、遮光板96と一体的に形成されていても良い。また、遮光壁97の開口OP97には、何らかの光透過性材料を充填しても良い。開口OP97は、光学的な意味での開口を意味する。
【0048】
〔第4の実施の形態〕
以下、図7、8を参照して、本発明に第4の実施形態について説明する。図7は、第4の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図8は、第4の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【0049】
本実施形態においては、第3の実施形態とは異なり、開口OP97は、16個の画素PXに対応して形成される。このような構成を採用することで、画素の一部に故障が生じても他の有効な画素を用いて撮像を継続することができる。なお、本実施形態においては、遮光板96は省略されている。また、共通の開口OP97内に3つのカラーフィルタを配置させ、カラーの画像を取得しても良い。
【0050】
〔第5の実施の形態〕
以下、図9乃至11を参照して、本発明に第5の実施形態について説明する。図9は、第5の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図10は、第5の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。なお、図10は、図9のx1−x1間の画像取得装置90の概略的な断面構成を示す。図11は、第5の実施形態にかかる画像取得装置の動作を説明するための概略的なタイミングチャートである。
【0051】
本実施形態においては、第3の実施形態とは異なり、カバー板95の背面には、一定の間隔をあけて複数の反射体98が配置されたパターンが形成されている。また、パターンの形成範囲に対応して、フォトセンサ92に実装された光源99、画素30が形成される。光源99と画素30とは、x軸に沿って対向して配置されている。
【0052】
なお、光源99及び画素30は、位置検出手段を構成する。また、反射体98が形成されているカバー板95の背面にはレンズ91は形成されていない。また、画素30は、フォトセンサ92の画素である。
【0053】
フォトセンサ92がx軸に沿って移動するとき、光源99及び画素30は、反射体98が配置されたパターンの下を移動する。画素30は、光源99から出射され、反射体98で反射された光を受光する。従って、画素30からの出力値に基づいてフォトセンサ92の移動量を検出することができる。画素30からの出力値に基づいて、フォトセンサ92に対して撮像を指示したり、フォトセンサ92で撮像した画像を出力させたりすることができる。
【0054】
より高品質な像をフォトセンサ92で取得するためには、レンズ91の光軸AX上にフォトセンサ92の画素が在るときにフォトセンサ92に撮像させると良い。本実施形態では、画素30からの出力に基づいてフォトセンサ92が実際にいる位置を検出することができる。適切なタイミングでフォトセンサ92に撮像させることで、より高品質な像を取得することが可能になる。
【0055】
なお、静脈像を取得する場合には、フォトセンサ92の撮像タイミングにあわせて近赤外線の発光源を点灯させると良い。また、フォトセンサ92がある位置を検出する手段は光学的な手法以外であっても良い。
【0056】
なお、光源99は、半導体発光素子(LED)、又は半導体レーザ素子(LD)といった半導体光素子であると良い。好ましくは、指向性が高い半導体レーザ素子を光源99として採用すると良い。また、画素30に代えて、フォトセンサ92とは別体の受光素子をフォトセンサ92に実装させても良い。
【0057】
図11を参照して、画像取得装置90の動作について説明する。出力1は、フォトセンサ92をx軸に沿って移動させた場合の画素PXのうちの1つからの信号出力である。出力2は、フォトセンサ92をx軸に沿って移動させた場合の画素30からの信号出力である。
【0058】
時刻t2のとき、画素30の出力が閾値THを超える。このとき、画素30に接続された比較器からはタイミング検出信号S20が出力される。タイミング検出信号S20が出力されるとき、フォトセンサ92の画素PXはレンズ91の光軸AX上に位置する。
【0059】
時刻t3のとき、フォトセンサ92の動作を制御する制御回路は、タイミング検出信号S20の入力に基づいてスタート信号S21をフォトセンサ92に出力する。フォトセンサ92はスタート信号S21の入力に基づいて撮像を開始する。
【0060】
時刻t4のとき、制御回路は、ストップ信号S22をフォトセンサ92に出力する。フォトセンサ92は、撮像を停止し、各画素PXの蓄積電荷量に応じた電気信号を各画素から出力させる。
【0061】
画像取得装置90は、時刻t5以降も上述と同様に動作する。なお、スタート信号S21とストップ信号S22間の時間間隔は予め設定されているものとする。また、共通するパルスの立上りをスタート信号S21とし、その立下がりをストップ信号S22としても良い。つまり、パルス幅の設定に基づいてスタート信号S21とストップ信号S22間の時間間隔を設定しても良い。なお、フォトセンサ92から出力された像は外部の記憶部(半導体メモリ(RAM(Random Access Memory)等))に保持される。メモリへの格納順で画像をつなぎ合わせることによって認証用の画像が形成される。
【0062】
〔第6の実施の形態〕
以下、図12、13を参照して、本発明に第6の実施形態について説明する。図12は、第6の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図13は、第6の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。なお、図13は、図12のx2−x2間の画像取得装置90の概略的な断面構成を示す。
【0063】
本実施形態においては、第5の実施形態とは異なり、レンズ91をフォトセンサ92の位置検出用のパターンとして用いている。このような構成を採用することによって、反射体30等をカバー板95の背面形成する付加的な工程を省略することが可能になる。
【0064】
〔第7の実施の形態〕
以下、図14乃至16を参照して、本発明に第7の実施形態について説明する。図14は、第7の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図15は、第7の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。図16は、第7の実施形態にかかる画像取得装置の断面構成を示す模式図である。なお、図15は、図14のx3−x3間の画像取得装置90の概略的な断面構成を示す。なお、図16は、図14のx4−x4間の画像取得装置90の概略的な断面構成を示す。
【0065】
本実施形態においては、第6の実施形態とは異なり、光源99と画素30をy軸に沿って対向配置させる。このような場合であっても第6の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
〔第8の実施の形態〕
以下、図17乃至20を参照して、本発明に第8の実施形態について説明する。図17は、第8の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図18は、第8の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。なお、図18は、図17のx5−x5間の画像取得装置90の概略的な断面構成を示す。図19及び20は、画像取得装置90の動作を説明するためのフローチャートである。
【0067】
本実施形態においては、フォトセンサ92の初期位置を設定するためのパターン31がカバー板95の背面に形成されている。ここでは、パターン31a、31bがレンズ91上を覆うようにカバー板95の背面に部分的に形成されている。パターン31a、31bは、金属又は黒色樹脂等からなる遮光層である。
【0068】
パターン31a、31bの下にフォトセンサ92が移動してきたとき、パターン31a、31bの下方にある画素PXの出力値は低下する。従って、この画素PXの出力値の低下を検出することによって、フォトセンサ92の初期位置を設定することができる。換言すると、パターン31a、31bは、フォトセンサ92のホームポジションを示す。なお、画素PXの出力値の低下を検出する方法は、比較器等の一般的な半導体回路を適用することで容易に実現することができる。
【0069】
図19及び20を参照して画像取得装置の動作について説明する。
【0070】
図19に示すように、画像取得装置が取り付けられる本体機器(ここでは、携帯電話)は非動作状態にある。
【0071】
次に生体情報機能の活性化が実行される(S1)。例えば、携帯電話の保持者があるボタンを押すことによって携帯電話の生体認証機能が活性化される。
【0072】
次に、フォトセンサ92がホームポジションに在るのか判断する(S2)。具体的には、パターン31a、31bの下にフォトセンサ92が在るかどうかを、パターン31a、31bの下方にある画素PXの出力値の低下を検出することによって判断する。
【0073】
フォトセンサ92がホームポジションにない場合には、フォトセンサ92をホームポジションに移動させる(S3)。
【0074】
フォトセンサ92がホームポジションに在る場合、フォトセンサ92の移動先のレンズ列のアドレス値を0にセットする(S4)。なお、ここでいうレンズ列は、y軸に沿って延在する複数のレンズ91からなる。また、アドレス値は、取得した画像を保持するメモリのアドレス空間を指定する値でもある。アドレス値1に対応するメモリのアドレス空間には、1列目のレンズ列を介して取得された像が保持される。
【0075】
なお、上述のアドレス値をレジスタに保持させ、フォトセンサ92からの出力データをメモリに格納する制御回路を設けると良い。この場合、制御回路は、フォトセンサ92からの出力データをレジスタの保持値によって指定されるメモリのアドレス空間に格納する。
【0076】
また、後述のように、本実施形態においては、予めms列目のレンズ列からme列目のレンズ列までの範囲の画像を選択的に取得する。但し、msは1以上の自然数とし、meは1以上の自然数であって、msよりも大きな値とする。このように画像取得する範囲を調整可能にすることによって過不足のない範囲で所望の画像を取得することができる。なお、撮像の開始位置にあるレンズ列を指定するアドレス値及び撮像の終了位置にあるレンズ列を指定するアドレス値をレジスタに格納し、このレジスタに制御回路がアクセスすることによって画像取得範囲を調整可能にすると良い。
【0077】
次に、光源99を点灯させる(S5)。つまり位置検出用の光源を点灯させる。
【0078】
次に、データ用の光源を点灯させる(S6)。つまり、静脈像を取得するために必要な近赤外線光源を点灯させる。
【0079】
次に、フォトセンサ92の移動を開始する(S7)。
【0080】
図20を参照して続けて説明する。フォトセンサ92が移動するに伴って、画素30からの出力は予め設定された閾値を超える。このようにしてタイミング検出信号が検出される(S101)。
【0081】
次に、アドレス値を+1する(S102)。具体的には、制御回路は、レジスタの保持値を加算する。
【0082】
次に、アドレス値mが、撮像の開始位置にあるレンズ列を指定するアドレス値ms以上になったかどうかを判定する(S103)。具体的には、制御回路は、レジスタの保持値mと他のレジスタの保持値msとを比較し、レジスタの保持値mが他のレジスタの保持値ms以上になったかどうかを判定する。保持値mが保持値ms未満の場合は図20のステップS101に戻る。
【0083】
アドレス値mが、撮像の開始位置にあるレンズ列を指定するアドレス値ms以上になった場合、フォトセンサ92に撮像を指示する(S104)。
【0084】
所定時間経過後、フォトセンサ92に撮像の停止を指示する(S105)。なお、撮像の指示から撮像の停止までの期間中にはフォトセンサ92からは画像データが出力されているものとする。なお、撮像の停止後にフォトセンサ92から画像データを出力させても良い。
【0085】
次に、アドレス値mが、撮像の終了位置にあるレンズ列を指定するアドレス値meになったかどうか判断する(S106)。上述のように、本実施形態においては予め撮像する範囲を限定している。これを実現するため、撮像の終了ラインまでフォトセンサ92が移動したかどうかを判定する。
【0086】
なお、フォトセンサ92から出力された画像データは、外部のメモリに順次格納される。フォトセンサ92から出力された画像データは、その出力時のアドレス値により指定されるメモリのアドレス空間に保持される。このようにして画像データの繋ぎ合わせが実現される。
【0087】
アドレス値mが撮像の終了位置にあるレンズ列を指定するアドレス値me未満であれば、フォトセンサ92の移動を継続し、上述した同図のステップS101まで戻る。
【0088】
アドレス値mが撮像の終了位置にあるレンズ列を指定するアドレス値meに一致する場合、フォトセンサ92は所望の範囲で撮像を完了する。従って、終了動作を実行する(S107)。具体的には、光源99の消灯、データ用光源の消灯、画素30の無効化(接合にバイアスをかけない状態にすること)等を実行する。また、フォトセンサ92をホームポジションに移動させる。
【0089】
〔第9の実施の形態〕
以下、図21、22を参照して、本発明に第9の実施形態について説明する。図21は、第9の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図22は、第9の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。なお、図22は、図21のx6−x6間の画像取得装置90の概略的な断面構成を示す。
【0090】
本実施形態においては、フォトセンサ92の上面に、y軸方向に長尺な光源32が配置される。このように光源32を配置することで、指100に対して十分に光を照射することができる。これによって取得するべき静脈像の品質を高めることができる。また、フォトセンサ92とは別の部分に光源を配置する場合と比較して、より装置構成をコンパクトにすることができる。なお、y軸方向に長尺な導光部材を用いて光源32を形成させても良い。
【0091】
また、図22に示すように、レンズ91の配置間隔W1よりも、光源32と画素PX間の配置間隔W2を広くすると良い。このように光源32を配置することによって、図22に模式的に示すように光源32から画素PXの上方に載置される指100に対して好適に光を照射することができる。結果として、より高品質な生体情報(静脈像)を取得することが実現される。
【0092】
なお、光源32は、複数の光源から構成されていても良い。例えば、複数の半導体発光素子をy軸に沿って配置することで光源32を形成しても良い。また、幅W1は、レンズ91の光軸AX間の距離に一致する。幅W2は、画素PXの画素中心と光源32の中心(半導体レーザ素子であれば、その光出射面)間の距離に一致する。
【0093】
〔第10の実施の形態〕
以下、図23、24を参照して、本発明に第10の実施形態について説明する。図23は、第10の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図24は、第10の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。なお、図24は、図23のx7−x7間の画像取得装置90の概略的な断面構成を示す。
【0094】
本実施形態においては、第9の実施形態とは異なり、各レンズ91に対応する位置に複数の光源34を配置する。このように光源34を配置することによって、図24の模式図から明らかなように、各光源34からの出射光が共通するレンズ91に入射し、指100に照射される光のy軸に沿う強度を均一化させることができる。
【0095】
〔第11の実施の形態〕
以下、図25、26を参照して、本発明に第11の実施形態について説明する。図25は、第11の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。図26は、第11の実施形態にかかる画像取得装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0096】
図25に示すように、画像取得装置90は、フォトセンサ92を支持するキャリア部材75、生体情報取得用の光源76、回転体77、ベルト78、及びモータ79を更に有する。なお、領域R44には複数のレンズ91がマトリクス状に配置されているものとする。また、領域R45には位置検出用のパターンが形成されているものとする。回転体77及びベルト78によって動力伝達機構が形成される。
【0097】
フォトセンサ92は、キャリア部材75を介してレール93にx軸に沿って移動可能に取り付けられている。ここでは、一対のレール93は、フォトセンサ92の上端付近及び下端付近に設けられている。キャリア部材75は、樹脂が成形されて製造される部材である。キャリア部材75は、ベルト78に固定されている。
【0098】
光源76は、複数の半導体発光素子がy軸に沿って配置された発光素子アレイである。光源76からは静脈認証に適した波長の光(近赤外線)が出射される。
【0099】
モータ79は、本体79a、回転体79b、及び回転軸79cを有する。回転体79bは、回転軸79cを軸として回転する。回転体79bはベルト78を回転体77bと接触する位置に設けられている。回転体79bの回転に応じて回転体77bも回転する。
【0100】
回転体77a及び77bは、軸Z1を回転軸として回転する部材である。回転体77a及び77bはベルト78を保持する凸部を有する。モータ79から伝達される駆動力に応じて回転体(主回転体)77bが回転すると、ベルト78は左又は右回りに移動し始める。このとき、ベルト78に固定された状態で取り付けられているキャリア部材75は、ベルト78の移動に応じて左又は右に移動する。なお、回転体(従回転体)77aを設けることによってベルト78の移動はスムーズになる。本実施形態では、フォトセンサ92の駆動機構をモータ79(駆動源)、回転体、及びベルトといった汎用の部品で実現することができる。
【0101】
図26を参照して画像取得装置90の動作を説明する。出力1は、フォトセンサ92をx軸に沿って移動させた場合の画素PXのうちの1つからの信号出力である。出力2は、フォトセンサ92をx軸に沿って移動させた場合の画素30からの信号出力である。
【0102】
時刻t1の経過後、画素30の出力が閾値THを超える。このとき、画素30に接続された比較器からはタイミング検出信号S20が出力される。
【0103】
その後、制御回路は、タイミング検出信号S20の入力に伴って駆動停止信号S25をモータ79に出力する。つまりモータ79の回転動作を停止させ、フォトセンサ92の移動を停止させる。なお、駆動停止信号S25が出力されるとき、フォトセンサ92の画素PXはレンズ91の光軸上に位置する。
【0104】
時刻t2のとき、制御回路は、タイミング検出信号S20の入力に伴ってスタート信号S21をフォトセンサ92に出力する。フォトセンサ92はスタート信号S21の入力に基づいて撮像を開始する。
【0105】
時刻t3のとき、制御回路は、ストップ信号S22をフォトセンサ92に出力する。フォトセンサ92は、ストップ信号S22の入力に基づいて撮像を停止し、各画素PXの蓄積電荷量に応じた電気信号を各画素から出力する。
【0106】
時刻t3の経過後、制御回路は駆動開始信号S26を出力する。モータ79は、駆動開始信号S26の入力に基づいて回転を開始する。フォトセンサ92は、モータ79から伝達される駆動力に応じて移動を開始する。
【0107】
フォトセンサ92は、時刻t2〜t3間で撮像する。時刻t2〜t3間の期間にフォトセンサ92から画像データを出力させても良いし、その期間の経過後にフォトセンサ92から画像データを出力させても良い。画像取得装置90のその後の動作は上述の説明と同様である。本実施形態では、フォトセンサ92に撮像を指示する前に予めモータ79を所望の位置に停止させる。これによってより高品質な画像を取得することが実現される。
【0108】
〔第12の実施の形態〕
図27乃至37を参照して、本発明の第12の実施形態について説明する。図27は、画像取得装置の上面構成を示す概略的な模式図である。図28は、移動後の画像取得装置の上面構成を示す概略的な模式図である。図29は、画像取得装置のベース部分の構成を示す概略的な模式図である。図30は、画像取得装置に含まれるキャリア部材及び収納部材の概略的な構成を示す模式図である。図31は、画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。図32は、カバー板に形成されたパターンを説明するための概略的な説明図である。図33は、画素列とパターンとの位置関係を説明するための説明図である。図34は、フォトセンサに接続される信号処理部の概略構成を示すブロック図である。図35は、信号処理部の動作を説明するためのタイミングチャートである。図36は、生体認証装置の概略的な構成を示すブロック図である。図37は、生体認証装置の概略的な動作を説明するためのフローチャートである。
【0109】
図27及び28に、画像取得装置70の上面構成を示す概略的な模式図を示す。なお、図27は、光検出モジュール9に含まれるフォトセンサの移動前の状態を示す。図28は、光検出モジュール9に含まれるフォトセンサの移動後の状態を示す。また、図29に、画像取得装置の部分的な構成を示す。図30に、画像取得装置に含まれるキャリア部材及び収納部材の概略的な上面構成を示す。なお、以下の図面では、必要に応じて、x軸、y軸、及びz軸といった軸線を設定する。
【0110】
図27に示すように、画像取得装置70は、ベース板(ベース部材)1、キャリア部材5、及び収納部材7を有する。なお、ベース板1、キャリア部材5、及び収納部材7は、いずれも樹脂材料からなる。また、画像取得装置70は、レール(ガイド部材)3、緩衝部材4、ばね6、発光素子(光源)8、光検出モジュール9、及びA/D変換回路10を有する。なお、光検出モジュール9には、フォトセンサ9a(図31参照)が含まれる。また、画像取得装置70は、背面に複数のレンズがマトリクス状に配置されたカバー板12も有する。この点は、上述の実施形態と同様である。また、後述の説明から明らかなように、本実施形態にかかる駆動機構は、後述のばね6を含んで構成される。
【0111】
はじめに図29を参照して説明する。図29に示すように、ベース板1は、上面視形状が略U字状の板状部材であって、連結部1a、左平板部1b、及び右平板部1cを有する。ベース板1は、ネジ又は接着剤等の固着手段によって携帯電話60の筐体内の基板に固定される。
【0112】
左平板部1b及び右平板部1cは、x軸に沿って互いに平行に延在する。連結部1aは、x軸に対して直交するy軸に沿って延在する。左平板部1bと右平板部1cとは、連結部1aによって互いの上端部分が連結される。左平板部1bと右平板部1cとの間には開口が形成される。この開口には、コネクタ11(図31参照)が部分的に収納される。
【0113】
ベース板1は、4隅に4つの支持部2(2a〜2d)を有する。支持部2aは、左平板部1bの上端に形成される。支持部2bは、左平板部1bの下端に形成される。支持部2cは、右平板部1cの上端に形成される。支持部2dは、右平板部1cの下端に形成される。なお、支持部2a〜2dは、ベース板1に一体成型されている。なお、支持部2a〜2dをベース板1とは別個の部材とし、支持部2a〜2dをベース板1に固着させても良い。
【0114】
支持部2aは、幅広部2a1及び幅狭部2a2を有する。幅広部2a1は、幅狭部2a2よりも内側に形成され、幅狭部2a2よりもx軸に沿う幅が広い。なお、支持部2aについてした説明は、他の支持部2b乃至2dについても当てはまるため重複する説明は省略する。
【0115】
レール3は、互いに対向する支持部2間で機械的に保持される。レール3は、棒状の金属からなり、キャリア部材5の移動を案内する。キャリア部材5の移動を円滑にさせるため、レール3に潤滑油を付着させても良い。
【0116】
レール3aは、互いに対向する支持部2aと支持部2bとの間に架けられる。レール3aは、その上端が支持部2aに固着され、その下端が支持部2bに固着される。レール3cは、互いに対向する支持部2cと支持部2dとの間に架けられる。レール3cは、その上端が支持部2cに固着され、その下端が支持部2dに固着される。
【0117】
緩衝部材4aは、支持部2aの幅狭部2a2の内側面上に配置される。緩衝部材4aは、ゴム、スポンジ等の弾性を有する材料からなる。緩衝部材4aの内側面をキャリア部材5の側面に接触可能にすることで、移動してくるキャリア部材5が幅広部2a1に与える衝撃を緩和させることができる。このように、緩衝部材4aを衝撃吸収部材として機能させることによって、より機械的又は構造的に安定してキャリア部材5の移動を停止させることができる。この説明は、他の緩衝部材4b〜4d、及び幅広部2b〜2dについても同様に当てはまる。
【0118】
次に図30を参照して説明する。図30(a)に示すように、キャリア部材5は、上面視形状がU字状の部材であり、左部分5i、中央部5j、及び右部分5kを有する。左部分5i及び右部分5kは、共にx軸に沿って実質的に平行に延在する。中央部5jは、y軸に沿って延在し、左部分5i及び右部分5k夫々の上端部分を連結させる。
【0119】
キャリア部材5は、厚板部5a〜5g、及び薄板部5hを有する。厚板部5a〜5gで囲まれた空間に収納部材7(図30(b)参照)が収納される。収納部材7の下面は、薄板部5hの上面に接着剤によって接着される。このようにして、キャリア部材5内には収納部材7が固着される。
【0120】
図30(c)に図30(a)のY2−Y2間のキャリア部材5の断面構成を示す。
【0121】
図30(c)に示すように、キャリア部材5は、厚板部5bにレール3aが挿通される孔を有し、この孔にレール3aが挿入される。なお、厚板部5bの孔にレール3aが挿入されたとき、キャリア部材5がレール3aに沿って移動可能な程度の遊びの空間が保たれるものとする。また、キャリア部材5の厚板部5bの外側面には、ばね6を部分的に収納する孔が設けられている。
【0122】
図30(d)に図30(a)のY3−Y3間のキャリア部材の断面構成を示す。図30(d)に示すように、キャリア部材5は、厚板部5eにレール3cが挿通される孔を有し、この孔にレール3cが挿入される。図30(c)の説明と同様に、この場合も遊びの空間が保たれる。また、キャリア部材5の厚板部5eの外側面にはばね6を部分的に収納する孔が設けられている。
【0123】
なお、厚板部5b、5eには、各ばね6の内端が取り付けられる。従って、厚板部5b、5eは、厚板部5a、5c、5d、5eよりも外側に突出する。厚板部5a、5c、5d、5e夫々も、同様に、レール3が挿通される孔を有する。
【0124】
図27に戻って説明する。
【0125】
図27に示すように、ばね6aの外端(上端)は支持部2aに固着され、その内端(下端)はキャリア部材5の厚板部5bに固着されている。ばね6bの外端(下端)は支持部2bに固着され、その内端(上端)はキャリア部材5の厚板部5bに固着されている。ばね6cの外端(上端)は支持部2cに固着され、その内端(下端)はキャリア部材5の厚板部5eに固着されている。ばね6dの外端(下端)は支持部2dに固着され、その内端(上端)はキャリア部材5の厚板部5eに固着されている。なお、コイルの取り付け方法は任意である。例えば、コイルの先端をフック状にし、これを厚板部又は支持部に引っ掛ける構造を採用しても良い。
【0126】
本実施形態においては、ばね6a、6cは、Ti-Ni系又はTi-Ni-Cu系の線状の合金(形状記憶合金)がコイル状に巻かれたコイル部材である。また、本実施形態では、パルス変調された電流をばね6a、6cに印加する。ばね6a、6cは抵抗として機能し、流れる電流量に応じて発熱する。ばね6a、6cが所定の温度以上になると、ばね6a、6cは収縮する。
【0127】
これによって、図27から図28に示すように、キャリア部材5を下から上へ移動させることができる。キャリア部材5には、収納部材7を介して、フォトセンサ9aが実装されている。キャリア部材5の移動に伴ってフォトセンサ9aが移動する。キャリア部材5の移動期間内に亘ってフォトセンサ9aで順次画像を取得することによって、フォトセンサ9aの移動範囲に対応する範囲内で画像を取得することができる。ここでは、図40に示した所望の領域R100に対応してフォトセンサ9aを移動させる。このようにして、画素列数が少ないフォトセンサを活用して、より高精度な静脈認証を実現するために要求される所望の領域R100で静脈像を取得することができる。
【0128】
ばね6b、6dは、金属線を巻いて形成した通常のつるまきばねである。従って、ばね6a、6cにパルス電流が印加されていない場合、キャリア部材5はばね6b、6dの引っ張り力に従って、図27の位置にある。すなわち、通常時、キャリア部材5は、ばね6b、6dが固着された支持部2b、2d寄りに位置する。生体情報取得時、ばね6a、6cに対するパルス電流の印加に伴って、キャリア部材5は支持部2b、2dから支持部2a、2c寄りへ移動する。
【0129】
なお、パルス電流印加に伴うばね6a、6cの引っ張り力は、ばね6a、6cの引っ張り力に比して十分に大きい。従って、比較的短時間にキャリア部材5を図27から図28の状態にまで移動させることができる。なお、ここでは、形状記憶合金の金線をコイル状に巻くことによって、その引っ張り力を増大させている。
【0130】
このように、ばね6a、6cにパルス電流を流すことのみによってキャリア部材5を移動させることができるため、他の駆動機構(たとえば、モータを活用した駆動機構)に比べて、騒音が発生しない、振動が発生しない、および消費電流を低くすることができるといったメリットがある。
【0131】
なお、ばね6a、6cに流す電流は、直流、単純交流の電流であっても良い。ただし、パルス変調した電流をばね6a、6cに流すことによって、流れる電流量を比較的精度よく調整することができる。
【0132】
また、図28から図27の状態に戻す場合には、ばね6a、6cへのパルス電流の供給を停止すれば良い。キャリア部材5は、ばね6b、6dの引っ張り力に従って、図28から図27の位置へ自然に移動する。ばね6a、6cは加熱されなければ実効的なばね作用を奏さない。
【0133】
図27に示すように、収納部材7内には、発光素子8、光検出モジュール9、A/D変換回路10が収納される。
【0134】
発光素子8は、半導体発光素子(LED(Light Emitting Diode))、又は半導体レーザ素子(LD(Laser Diode))といった半導体のベアチップがモールドパッケージされた半導体光素子である。発光素子8は、電極間に電流を流すことによって近赤外領域の波長(波長:600nm〜1000nm)の光(ここでは、760nm又は870nm)を出射する。
【0135】
光検出モジュールは、フォトセンサ9a上に遮光層9bが積層された光学部品である。光検出モジュール9は、フォトセンサ9a、遮光層9b、及びコネクタ11から構成される。フォトセンサ9aは、フォトダイオードからなる画素が1列に配置されたフォトセンサである。遮光層9bは、各画素列に対応する開口を有する遮光層である。遮光層9bは、レンズと画素間の各光チャネルを分離する遮光壁を更に有する。遮光層9bの構成は、上述の実施形態の説明から明らかであり、重複する説明は省略する。
【0136】
A/D変換回路(半導体集積回路)10は、トランスインピーダンス回路を介してフォトセンサ9aの各画素から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する半導体回路である。なお、A/D変換機能に加えて、他の機能も付加させても良い。
【0137】
ここで、図31を参照して、収納部材7内の構成について説明する。なお、図31(a)は、図27のY1−Y1の画像取得装置70の概略的な断面構成を示す模式図である。図31(b)は、図27のX1−X1の画像取得装置70の概略的な断面構成を示す模式図である。
【0138】
図31(a)に示すように、収納部材7は、キャリア部材5の凹部内に固着される。収納部材7は、光検出モジュール9を収納するための凹部を有する。
【0139】
キャリア部材5らの上方には背面に複数のレンズが形成されたカバー板12(不図示)が配置される。カバー板12は、透明樹脂、ガラスといった透明性の板状部材であって、画像取得装置70を外界から保護する。カバー板12は、発光素子8からの出射光に対して実質的に透明である。なお、カバー板12の設置態様は任意である。カバー板12を支持部2a〜2dの上面に固着させることによって、カバー板12をベース板1に固着させても良い。
【0140】
なお、キャリア部材5がレール3によって支持されることで、キャリア部材5とベース板1との間には、所定の空間が設けられている。
【0141】
図31(b)に示すように、収納部材7は、厚肉部7a、薄肉部7b、厚肉部7c、傾斜部7d、及び肉厚部7eをこの順で有する。傾斜部7dは、厚肉部7cから厚肉部7eに向かって、徐々に厚肉化された部分であって、厚肉部7cと厚肉部7eとの間に傾斜面7d1を有する。厚肉部に薄肉部7bを設けることによって、収納部材7には凹部(収納空間)13aが形成される。厚肉部に薄肉部7dを設けることによって収納部材7には凹部(収納部)13bが形成される。
【0142】
光検出モジュール9は、凹部13aの底面(薄肉部7bの上面)に配置される。また、発光素子8は、凹部13bの底面(傾斜部7dの上面)に配置される。本実施形態では、このようにキャリア部材5の移動に従って、発光素子8及び光検出モジュール9が共に移動する。これによって発光素子8をキャリア部材の外部に固定する場合と比べて、フォトセンサ9aの位置に関わらず、フォトセンサ9aへ入力される光の光量を所望の範囲にすることができる。
【0143】
なお、コネクタ11は、薄肉部7bに設けられた孔に取り付けられる。コネクタ11は、外部の半導体回路に可撓性を有する配線基板を介して接続される。また、発光素子8とフォトセンサ9aとの間に厚肉部7cを設けることによって、発光素子8からの出射光がフォトセンサ9aに直接的に入力することが抑制される。
【0144】
また、本実施形態では、発光素子8を傾斜部7dの上面に配置する。これによって、発光素子8の出射光を斜め方向に設定することができる。従って、より効果的に指100に対して近赤外線を照射することができる。発光素子8が載置される台座の形状を工夫することによって、出射光の方向制御を非常に簡易な構成で実現することができる。なお、可撓性の配線基板(フィルム配線)によって、発光素子8へは電流が供給されるものとする。この点は、フォトセンサ9aについても同様である。
【0145】
次に、図32乃至図35を参照して、カバー板12の背面に形成されたパターン及びこれを活用したフォトセンサ9aからの像信号の読出し動作について説明する。なお、図32(a)は、カバー板12に設けられるパターンの構成を示す概略図である。図32(b)は、パターンの概略的な部分拡大図である。図32(c)は、パターンの積層構造を示す概略図である。
【0146】
図32(a)に示すように、カバー板12の背面には、規則的なパターン14が形成される。
【0147】
図32(b)に示すように、パターン14は、光吸収部14a、および光反射部14bを有する。光吸収部14aは、発光素子8から出射される近赤外線を吸収する。光反射部14bは、発光素子8から出射される近赤外線を反射する。
【0148】
光吸収部14aは、幅W1の部分、及び幅W2の部分を有する(但し、W1<W2である)ライン状の部分である。光反射部14bは、一定の間隔をあけて配置されている。
【0149】
図32(c)に示すように、パターン14は、金属膜14cの上層に黒色樹脂層14dが形成された積層体である。なお、金属膜14cは、カバー板12の背面に形成されるものとする。パターン14は、通常の薄膜形成技術、及びパターニング技術を用いて形成される。
【0150】
図32(b)に示すように、黒色樹脂層14dを規則的にパターニングすることによって、金属膜14cを部分的に露出させ、規則的に光反射部14bを形成する。光吸収部14aは、パターニングされた黒色樹脂層14dの除かれなかった部分である。
【0151】
図33に、フォトセンサ9aの画素列とパターン14との関係を示す。画素列は、パターン14が形成されていない領域R1からパターン14が形成された領域R2に亘る。ここでは、画素列は、光反射部14bの長手方向と平行に配置されている。
【0152】
図33の矢印に示すように画素列が移動するとき、領域R2にある画素PXは、光吸収部14a、光反射部14bを交互に通過する。フォトセンサ9aの移動期間内では、発光素子8は発光している。従って、領域R2にある画素PXが光反射部14bに近接すればするほど、領域R2にある画素PXからの出力値は増大する。光反射部14bは所定の間隔をあけて規則的に配置されている。従って、領域R2にある画素PXからの出力に基づいてフォトセンサ9aの移動量を検出することができる。結果として、後述するように、適切なタイミングでフォトセンサ9aから像を出力させることができる。
【0153】
なお、ここでは光吸収部14aのx軸に沿う幅W4は、光反射部14bのx軸に沿う幅W3の略N倍に設定されている(但し、Nは2以上の自然数である)。
【0154】
ここで図34にフォトセンサ9aに接続される信号処理部の概略的な構成を示す。図34に示すように、信号処理部15は、比較器15a、及び読出処理部15bを有する。なお、ここでは、説明の便宜上、A/D変換回路10は省略されている。
【0155】
信号処理部15の接続関係は次のとおりである。比較器15aの入力aには、領域R2にある画素からの出力が接続される。比較器15aの入力bには、閾値が入力される。比較器の出力cは、読出処理部15bの入力aに接続される。読出処理部の入力bには、領域R1にある画素の出力が接続される。読出処理部の出力cは、フォトセンサに接続される。読出処理部の出力dは、外部の制御回路に接続される。
【0156】
比較器15aは、領域R2にある画素から出力される信号S1と予め設定された閾値THとを比較する。信号S1が閾値THを超えた場合、比較器15aはハイレベルの信号(タイミング検出信号)S2を出力する。
【0157】
読出処理部15bは、比較器15aからハイレベルの信号S2が入力されると、フォトセンサ9aに対してハイレベルの信号(リード指示信号)S3を出力する。
【0158】
フォトセンサ9aは、所定のサイクルで像取得を実行する。フォトセンサ9aは、読出処理部15bからハイレベルの信号S3が入力されると、その時点で蓄積している信号S4を読出処理部15bの入力bへ出力する。読出処理部15bは、フォトセンサ9aから入力された信号S4を外部の制御回路へ出力する。
【0159】
図35を参照してフォトセンサ9aの移動に伴う像取得動作(特に信号処理部15の動作)について説明する。
【0160】
時刻t1では、信号S1は閾値THを超える。そして、比較器15aは、ハイレベルの信号S2を出力する。その後、読出処理部15bは、ハイレベルの信号S3を出力する。その後、フォトセンサ9aは、ハイレベルの信号S3の入力時に取得している像P1を信号S4として出力する。信号処理部15から出力される信号S4は、外部の記憶装置(半導体メモリ)に蓄積画像として保持される。なお、像P1は、図33の領域R10に対応する像であるものとする。
【0161】
時刻t2では、信号S1は閾値THを超える。そして、比較器15aは、ハイレベルの信号S2を出力する。その後、読出処理部15bは、ハイレベルの信号S3を出力する。その後、フォトセンサ9aは、ハイレベルの信号S3の入力時に取得している像P4を信号S4として出力する。信号処理部15から出力される信号S4は、外部の記憶装置(半導体メモリ)に蓄積画像として保持される。外部の半導体メモリには、像P1と像P4が蓄積画像として保持される。なお、像P4は、図33の領域R11に対応する像であるものとする。
【0162】
時刻t3では、信号S1は閾値THを超える。そして、比較器15aは、ハイレベルの信号S2を出力する。その後、読出処理部15bは、ハイレベルの信号S3を出力する。その後、フォトセンサ9aは、ハイレベルの信号S3の入力時に取得している像P7を信号S4として出力する。信号処理部15から出力される信号S4は、外部の記憶装置(半導体メモリ)に蓄積画像として保持される。外部の半導体メモリには、像P1、像P4、像P7が蓄積画像として保持される。なお、像P7は、図33の領域R12に対応する像であるものとする。
【0163】
このような処理に基づいて外部には像P1〜PXが蓄積される。本実施形態においては、上述のようにパターン14は規則性を有する。より具体的には、一定の間隔で光反射部14bが形成されている。規則的なパターン14を活用することによってフォトセンサ9aの移動量を検出し、所望の範囲で指100の静脈像を過不足なく取得することができる。
【0164】
本実施形態においては、形状記憶合金のばね6を活用してキャリア部材5を移動させている。形状記憶合金は、その温度に応じて収縮する。しかしながら、形状記憶合金の温度を精度よく制御することは難しい。形状記憶合金のばねの特性にはばらつきが予想され、その温度は使用される環境も影響するからである。
【0165】
本実施形態では、上述のように、規則的なパターン14を活用してフォトセンサ9aから像を出力させる。従って、たとえ、フォトセンサ9aの移動速度が一定ではないとしても、適切なタイミングで必要な分の像を取得することができる。換言すると、t1〜t2の時間間隔と、t2〜t3の時間間隔とが一致していなくてもリードされる像には何ら影響はない。このようにして、所望の範囲で指100の静脈像を過不足なく取得することが実現される。
【0166】
なお、信号処理部15の具体的な構成は任意である。フォトセンサ9aの画素から出力されるアナログ信号を、A/D変換回路でデジタル信号へ変換した上で、上述の比較器15a、及び読出処理部15bを接続させても良い。比較器15a、読出処理部15bをソフトウェアによって実現させても良い。
【0167】
また、読出処理部15bから伝達される信号S3に基づいてフォトセンサ9aに像取得を実行させ、取得した像を出力させても良い。この場合、フォトセンサ9aは、必要な期間のみ像取得を実行する。従って、フォトセンサ9aの消費電力を低減させることができる。
【0168】
また、パターン14には何らかの規則性(周期性)が設定されていれば良い。また、パターン14に設定された周期性の変位を検出する手段は光学的な方法以外(例えば、磁気的な方法)であっても良い。パターン14の変位を検出する別個のセンサを設けても良い。
【0169】
次に図36、37を参照して、画像取得装置70が組み込まれる生体認証装置80の構成及び動作について概略的に説明する。
【0170】
図36に示すように、生体認証装置80は、処理部81、認証実行部82、画像形成部83、記憶部84、発光部85、及び静脈像取得部86を有する。なお、発光部85は、発光素子8に相当する。静脈像取得部86は、画像取得装置70に相当する。なお、生体認証装置80は、画像取得装置をインターフェイスとする通常のコンピュータから構成されるものとする。また、生体認証装置80は、図36に示す構成に限定されるべきものではない。
【0171】
生体認証装置80は、図37に示すように動作する。なお、生体認証装置80は、図1に示した携帯電話60に組み込まれているものとする。
【0172】
まず生体認証装置80が組み込まれた携帯電話60は非動作状態にある。
【0173】
次に携帯電話60の生体認証機能が活性化される(S201)。なお、生体認証機能を活性化させる具体的な方法は任意である。操作者が携帯電話のあるボタンを押したときに生体認証機能が活性化されるように設定すれば良い。なお、生体認証機能が活性化されるとき、カバー板12の前面上には指100が載置されるものとする。
【0174】
次に、生体認証機能の活性化に基づいて、フォトセンサ9aの移動を開始させる(S202)。より具体的には、ばね6a、6cにパルス電流を流し、ばね6a、6cを加熱し、ばね6a、6cを収縮させる。また、このとき、発光素子8から近赤外線を出力させる。また、フォトセンサ9aを所定のフレームレートで像取得させる。
【0175】
次に、像の読出しを実行する(S203)。フォトセンサ9aから像を読み出す手順は、図35で説明したとおりである。
【0176】
次に、画像形成部83は、認証用の静脈像を形成する(S204)。本実施形態においては、フォトセンサ9a(信号処理部15)から順次出力される画像同士をつなぎ合わせると、所望の静脈像が復元される。つまり、画像形成部83は、取得した画像同士の重複部分を考慮して画像処理する必要はない。規則的なパターンを活用してフォトセンサ9aで過不足なく像を取得することで、画像形成部83の処理負担を低減させることができる。
【0177】
次に、認証実行部82は認証を実行する(S205)。具体的には、認証実行部82は、画像形成部83から出力された認証用画像と記憶部84に予め登録された静脈像画像とに基づいて生体認証を実行する。例えば、認証実行部82は、両画像間で静脈の分岐態様がN(N:2以上の自然数)箇所以上で一致していれば認証成功と判定し、両画像間で静脈の分岐態様が一致する箇所がN箇所未満であれば認証失敗と判定する(S206)。なお、認証の具体的な方法は画像処理方法に依存するため、上述の例に限定されるべきものではない。
【0178】
認証成功の場合、生体認証装置80が組み込まれた携帯電話の機能が活性化される(S207)。そして、携帯電話は、通常の動作状態に復帰する。なお、認証失敗の場合、生体認証装置80が組み込まれた携帯電話は非動作状態を維持する。
【0179】
このようにして、生体認証装置80が携帯電話に組み込まれることによって、携帯電話のセキュリティー性能が飛躍的に向上する。
【0180】
上述の説明から明らかなように、本実施形態においては、フォトセンサの画素列の画素配置方向に直交する方向にフォトセンサを移動させることで、フォトセンサの撮像可能範囲を超える所望の範囲で静脈像を取得することを実現することができる。また、形状記憶合金を活用してフォトセンサを移動させることで、より簡素な駆動機構を実現できる。また、レールといったガイド部材を設けることによって、フォトセンサの移動を安定にすることができる。規則的なパターンを活用してフォトセンサの移動量を検出し、この検出結果に基づいて、フォトセンサから取得像を出力させることで、後続の画像処理負担を低減させることができる。また、コネクタ11をベース板1の開口に部分的に収納させることで、画像取得装置70の薄型化を図ることができる。
【0181】
最後に、画像取得装置70が携帯電話に組み込まれる点について説明する。
【0182】
図38に、携帯電話(移動体通信端末)60を示す。図38に示すように、携帯電話60は、上側本体(第1部材)61、下側本体(第2部材)62、及びヒンジ63を有する。上側本体61と下側本体62とは、共にプラスチック製の平板部材であって、ヒンジ63を介して連結される。上側本体61と下側本体62とはヒンジ63によって開閉自在に構成される。上側本体61と下側本体62とが閉じた状態のとき、携帯電話60は上側本体61と下側本体62とが重ね合わされた平板状の部材になる。
【0183】
上側本体61は、その内面に表示部64を有する。表示部64には、着信相手を特定する情報(名前、電話番号)、携帯電話60の記憶部に格納されたアドレス帳等が表示される。表示部64の下には液晶表示装置が組み込まれている。
【0184】
下側本体62は、その内面に複数のボタン65を有する。携帯電話60の操作者は、ボタン65を操作することによって、アドレス帳を開いたり、電話を掛けたり、マナーモードに設定したりし、携帯電話60を意図したように操作する。携帯電話60の操作者は、このボタン65を操作することに基づいて、携帯電話60内の生体認証装置80の生体認証機能をオンさせたり、オフさせたりする。
【0185】
図39に、携帯電話60の前面(上面)の構成を示す。図39に示すように、上側本体61の前面には、表面領域R80、および表示領域R90が配置される。
【0186】
表面領域R80上には、図39に模式的に示すように、ヒト(被検体)の指100が載せられる。表面領域R80の下には、後述の画像取得装置70(図3参照)が組み込まれる。表示領域R90には、文字(時間、動作状態、着信相手名など)が表示される。表示領域R90の下には、液晶表示装置が組み込まれる。
【0187】
本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されない。画像取得装置は、静脈認証又は指紋認証といった生体情報の取得以外の用途にも応用できる。生体情報を取得する場合には、手のひら、足等の他の部位を対象としても良い。撮像対象物を照射する光は近赤外光に限定されない。撮像対象物を照射する光の波長範囲は撮像対象物の種類によって設定される。センサを移動させる駆動機構は任意である。また、有機高分子系人工筋肉(導電性高分子、高分子ゲル、誘電エラストマーなど)を活用して駆動機構を構成しても良い。キャリア部材、収納部材は、樹脂以外の材料で成型しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図7】本発明の第4の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図8】本発明の第4の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第5の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図10】本発明の第5の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第5の実施形態にかかる画像取得装置の動作を説明するための概略的なタイミングチャートである。
【図12】本発明の第6の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図13】本発明の第6の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図14】本発明の第7の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図15】本発明の第7の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図16】本発明の第7の実施形態にかかる画像取得装置の断面構成を示す模式図である。
【図17】本発明の第8の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図18】本発明の第8の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図19】本発明の第8の実施形態にかかる画像取得装置90の動作を説明するためのフローチャートである。
【図20】本発明の第8の実施形態にかかる画像取得装置90の動作を説明するためのフローチャートである。
【図21】本発明の第9の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図22】本発明の第9の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図23】本発明の第10の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図24】本発明の第10の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図25】本発明の第11の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な上面構成を示す模式図である。
【図26】本発明の第11の実施形態にかかる画像取得装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図27】本発明の第12の実施形態にかかる画像取得装置の上面構成を示す概略的な模式図である。
【図28】本発明の第12の実施形態にかかる移動後の画像取得装置の上面構成を示す概略的な模式図である。
【図29】本発明の第12の実施形態にかかる画像取得装置のベース部分の構成を示す概略的な模式図である。
【図30】本発明の第12の実施形態にかかる画像取得装置に含まれるキャリア部材及び収納部材の概略的な構成を示す模式図である。
【図31】本発明の第12の実施形態にかかる画像取得装置の概略的な断面構成を示す模式図である。
【図32】本発明の第12の実施形態にかかるカバー板に形成されたパターンを説明するための概略的な説明図である。
【図33】本発明の第12の実施形態にかかる画素列とパターンとの位置関係を説明するための説明図である。
【図34】本発明の第12の実施形態にかかるフォトセンサに接続される信号処理部の概略構成を示すブロック図である。
【図35】本発明の第12の実施形態にかかる信号処理部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図36】本発明の第12の実施形態にかかる生体認証装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図37】本発明の第12の実施形態にかかる生体認証装置の概略的な動作を説明するためのフローチャートである。
【図38】本発明の第12の実施形態にかかる携帯電話(移動体通信端末)60の構成を示す模式図である。
【図39】本発明の第12の実施形態にかかる携帯電話60の前面(上面)の構成を示す模式図である。
【図40】静脈認証を実現する際に撮像範囲について説明するための参考図である。
【符号の説明】
【0189】
90 画像取得装置
91 レンズ
92 フォトセンサ
93 レール
95 カバー板
95a 前面
95b 背面
96 遮光板
97 遮光壁
98 反射体
99 光源

70 画像取得装置
75 キャリア部材
76 光源
77 回転体
78 ベルト
79 モータ

1 ベース板
2 支持部
3 レール
4 緩衝部材
5 キャリア部材
7 収納部材
8 発光素子
9 光検出モジュール
82 認証実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲に亘って形成された複数のレンズ列と、
前記レンズ列に含まれるレンズを介して入射する光を受光する画素が複数配置された画素列を1列以上有するフォトセンサと、
を備え、
前記フォトセンサは、少なくとも複数の前記レンズ列の形成範囲内で、前記画素列に含まれる複数の前記画素の配置方向に交差する方向へ移動する、画像取得装置。
【請求項2】
前記フォトセンサ上に設けられると共に、複数の前記画素夫々に対応する複数の開口を有する遮光部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記遮光部材は、前記フォトセンサの上面に固定され、前記フォトセンサの移動に応じて移動することを特徴とする請求項2に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記遮光部材は、前記レンズの光軸に沿って延在する遮光壁を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記遮光部材に形成された複数の前記開口夫々は、前記フォトセンサから離間する方向に第1及び第2開口幅を順次有し、
前記第第2開口幅は、前記第1開口幅よりも広いことを特徴とする請求項2乃至4に記載の画像取得装置。
【請求項6】
複数の前記レンズ列の配置方向と前記フォトセンサの移動方向は実質的に一致することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項7】
前記フォトセンサが直接的又は間接的に取り付けられ、前記フォトセンサの移動を案内するガイド部材を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項8】
前記フォトセンサの移動量の検出用に予め形成された規則的なパターンを更に備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項9】
前記パターンは、前記フォトセンサの移動方向に沿って配置された複数の前記レンズによって形成されることを特徴とする請求項8に記載の画像取得装置。
【請求項10】
前記フォトセンサは、前記パターンの規則性に応じた値を当該フォトセンサの移動に応じて出力する画素を更に備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の画像取得装置。
【請求項11】
前記フォトセンサの初期位置を設定するために予め形成されたホームポジションパターンを更に備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項12】
前記ホームポジションパターンは、前記レンズ列に含まれる1以上の前記レンズ上に形成された遮光層により形成されることを特徴とする請求項11に記載の画像取得装置。
【請求項13】
撮像対象物に対して光を照射する光源を更に備えることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項14】
前記光源は、前記フォトセンサの移動に伴って移動することを特徴とする請求項13に記載の画像取得装置。
【請求項15】
前記光源は、前記画素列に含まれる複数の前記画素の配置方向に沿う方向に複数の半導体発光素子が配置されることで形成されることを特徴とする請求項14に記載の画像取得装置。
【請求項16】
前記光源の隣にある前記画素列と当該光源間の間隔は、複数の前記レンズの配列間隔よりも広いことを特徴とする請求項15に記載の画像取得装置。
【請求項17】
前記フォトセンサを移動させる駆動機構を更に備えることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項18】
前記駆動機構は、非撮像期間に前記フォトセンサを移動させることを特徴とする請求項17に記載の画像取得装置。
【請求項19】
所定範囲に亘って形成された複数のレンズ列と、
前記レンズ列に含まれるレンズを介して入射する光を受光する画素が複数配置された画素列を1列以上有するフォトセンサと、を備える画像取得装置の駆動方法であって、
少なくとも複数の前記レンズ列の形成範囲内で、前記画素列に含まれる複数の前記画素の配置方向に交差する方向へ前記フォトセンサを移動させて画像を取得する、画像取得装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2009−223388(P2009−223388A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64260(P2008−64260)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】