説明

画像回復装置、画像回復方法及びプログラム

【課題】オートフォーカス機構から被写体距離が得られない場合における画像回復の精度を向上させる。
【解決手段】被写体距離推定部115は、被写体距離を推定する。回復フィルタ演算部116は、推定された被写体距離に基づいて、画像データを回復するための回復フィルタを算出する。画像回復部107は、算出された回復フィルタを用いて画像データの回復を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを回復するための回復フィルタを算出するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像のぼけ成分の劣化を補正する方法として、撮像レンズの光学伝達関数(OTF)を用いて補正する技術が知られている。この方法は画像回復や画像復元と呼ばれている。以下、撮像レンズのOTFを用いて画像の劣化を補正する回復フィルタを生成し、これを用いてぼけ成分の劣化を補正する処理を画像回復と称す。
【0003】
この画像回復において、撮像レンズのOTFは合焦距離によって変化するため、上記のように生成される回復フィルタは被写体距離によって異なる。被写体距離にマッチしない回復フィルタを用いて画像回復を行うと、画像に弊害が生じる。従って、画像回復においては、被写体距離は必須情報である。特許文献1及び2では、必須情報である被写体距離を用いて画像回復を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−534342号公報
【特許文献2】特開2008−245265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、画像回復を行う場合、回復フィルタは被写体距離によって異なる。一方で、オートフォーカス機構によるピント合わせでは、被写体距離を必ずしも得ることができない場合がある。画像回復の際に、被写体距離にマッチした回復フィルタを用いることができない場合、原理的にリンギングや偽色の発生等の弊害を生じる。例えば、軸上色収差、つまり波長毎の焦点位置が光軸方向にずれるという特性の収差を回復する場合がある。この収差により、画像回復前の画像データにおいて、軸上色収差特性に応じた色のにじみが生じ、さらに、被写体距離によってこのにじみ量が変化する。このとき、異なる被写体距離に対する回復フィルタで回復すると、色成分毎の回復度合が想定外の状態となり、上述した色にじみが拡大し、偽色が発生する場合がある。
【0006】
この種の弊害発生を防止するために、画像回復において被写体距離は必須情報である。被写体距離は通常、カメラのオートフォーカス機構によって駆動されるピント合わせ機構の位置、典型的にはフォーカスレンズ群の位置情報から得ることができる。ところが、カメラにおけるオートフォーカス機構によるピント合わせの目的には、フォーカスレンズ群の絶対的な位置情報は必須ではない。例えば、位相差検出方式のピント検出機構を持つカメラでは、カメラは像面上のピントのずれ量を検出し、このずれ量をフォーカスレンズ群の移動量に変換してフォーカスレンズ群を制御する。このとき、像面上のピントのずれ量とフォーカスレンズ群の移動量との関係は被写体距離に依存しないか、または、大まかな被写体距離の区間に依存する。このため、この間の連動には、フォーカスレンズ群の精密な絶対的な位置情報を必要としない。
【0007】
また、画像データのぼけ量を最小化することでフォーカスレンズ群を制御するオートフォーカス機構の場合も、フォーカスレンズ群の絶対的な位置情報は必要としない。以上の理由により、画像回復に必要な被写体距離が得られない場合がある。被写体距離なしに上記した弊害を防止するには、あらゆる被写体距離において弊害を発生しない回復フィルタを用いなければならない。この種の回復フィルタは、回復効果を極めて小さくすることで得られるため、逆に回復効果も極めて小さいものとなる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、オートフォーカス機構から被写体距離が得られない場合における画像回復の精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像回復装置は、被写体距離を推定する被写体距離推定手段と、前記被写体距離推定手段により推定された被写体距離に基づいて、画像データを回復するための回復フィルタを算出する算出手段と、前記算出手段により算出された前記回復フィルタを用いて画像データの回復を行う画像回復手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オートフォーカス機構から被写体距離が得られない場合における画像回復の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
【図2】画像回復部とその関連部分との構成を示す図である。
【図3】被写体距離推定部の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における画像回復の処理を示すフローチャートである。
【図5】顔認識の有無と撮影モードとの組み合わせに対応する撮影倍率の推定値とファクタαとの関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。図1において、101は撮像部であり、被写体の光量を検知する。撮像部101は、撮像レンズ102、絞り103、シャッタ104、CMOSやCCD等の撮像センサ105を備える。撮像センサ105には、RGB各色の画素が一般的なベイヤー配列で設けられている。なお、図1に示す撮像装置は、本発明の画像回復装置の適用例となる構成である。
【0014】
106はA/D変換部であり、撮像センサ105が各画素に入射した光量に応じて発生したアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換部106はさらに、RGB各画素の配置がベイヤー配列のままの状態の画像データ(RAW画像データ)を生成する。この画像データは、そのままメディアインタフェース109を通じてメディアに送信することができる。107は、撮像レンズ102の撮像時の光学特性によって生じる画像データのぼけを回復する画像回復部である。108は信号処理部であり、画像回復部107によって画像回復が施された画像データに対してデモザイク処理、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を行う。109はメディアインタフェースであり、PCその他メディア(例えば、ハードディスク、メモリカード、CFカード、SDカード、USBメモリ)に接続し、信号処理部108から出力される画像データをメディアに送出する。
【0015】
110はCPUであり、撮像装置の各構成における処理の全てに関わり、ROM111に格納された命令を順に読み込み、解釈し、その結果に従って処理を実行する。ROM111はその処理に必要なプログラム、データをCPU110に提供する。RAM112はCPU110の作業領域である。113は撮像系制御部であり、CPU110の指示に基づき撮像レンズ102、シャッタ104、絞り103等の撮像系の制御を行う。114は操作部であり、ボタンやモードダイヤル等が該当し、これらを介して入力されたユーザからの指示を受け取る。
【0016】
図2は、画像回復部107とその関連部分との構成を示す図である。なお、図2において、図1で説明した構成と同じ構成には同じ符号を付与し、説明を省略する。
【0017】
ここで、画像回復の概要について説明する。劣化した画像データをg(x,y)、元の画像データをf(x,y)、OTFのフーリエペアである点像分布関数(PSF)をh(x,y)としたとき、次の式1が成り立つ。但し、*はコンボリューション(畳み込み積分、積和)を示し、(x,y)は画像データ上の座標を示す。
g(x,y)=h(x,y)*f(x,y)・・・式1
【0018】
また、式1をフーリエ変換して周波数領域での表示形式に変換すると、次の式2のように周波数毎の積の形式になる。HはPSFであるhをフーリエ変換したものであるのでOTFであり、G,Fはそれぞれg,fをフーリエ変換したものである。(u,v)は2次元周波数領域での座標、即ち周波数を示す。
G(u,v)=H(u,v)・F(u,v)・・・式2
【0019】
劣化した画像データから元の画像データを得るためには、次の式3のように式2の両辺をHで除算すればよい。
G(u,v)/H(u,v)=F(u,v)・・・式3
【0020】
このF(u,v)、即ちG(u,v)/H(u,v)を逆フーリエ変換して空間領域に戻すことで元の画像データf(x,y)が回復像として得られる。ここで、1/H(u,v)を逆フーリエ変換したものをrとすると、次の式4のように空間領域での画像データに対するコンボリューション処理を行うことで、同様に元の画像データを得ることができる。
g(x,y)*r(x,y)=f(x,y)・・・式4
以下、このr(x,y)を回復フィルタと称す。
【0021】
操作部114の一部であるメインスイッチにより撮像装置が動作状態になると、シャッタ104は開放され、撮像センサ105からは連続的に画像データが出力される。撮像系制御部113は不図示のオートフォーカス機構により、出力画像の鮮鋭性に基づき撮像レンズ102を駆動し、焦点調整を行う。115は、被写体距離推定部であり、撮像系制御部113に含まれる機能構成である。被写体距離推定部115は、A/D変換部106から出力される画像データや、操作部114によって設定される撮影モード等によって被写体距離を推定し、合焦距離を出力する。116は回復フィルタ演算部である。回復フィルタ演算部116には、合焦距離、絞り値、像高等のパラメータに従って変化するOTF、又はOTFに基づく回復フィルタ群がパラメータの間隔毎に記憶されている。画像回復に最適な回復フィルタは、それら記憶された情報から例えば補間演算により算出される。
【0022】
画像回復に最適な回復フィルタの算出に必要なパラメータとして、例えば合焦距離、絞り値、像高が挙げられる。回復フィルタ演算部116は、合焦距離を合焦距離推定部115から取得し、絞り値を撮像系制御部113から取得し、像高を画像回復部107から取得する。回復フィルタ演算部116は、合焦距離、絞り値及び像高にマッチした回復フィルタを算出する。回復フィルタの変化に関するパラメータは、撮像レンズ102の特性によって決まる。上記のように複数のパラメータに従って回復フィルタが変化する場合も、例えば合焦距離のパラメータのみによって回復フィルタが変化する場合も何れもあり得る。よって、複数のパラメータに従って単一の回復フィルタを算出する場合も、合焦距離のパラメータのみに従って回復フィルタを算出する場合もあるということになる。
【0023】
次に、操作部114のシャッタボタンが押されると、シャッタ104は一度閉じてから所定時間だけ開放される。このシャッタの所定時間の開放中にキャプチャされた画像信号が撮像センサ105から出力される。出力された画像信号は、A/D変換部106によってデジタル信号の画像データに変換され、画像回復部107に出力される。画像回復部107は、画像データに対して、回復フィルタ演算部116により決定された回復フィルタを適用して画像回復を実行した後、画像回復後の画像データを信号処理部108に出力する。
【0024】
図3は、被写体距離推定部115の構成を示す図である。なお、図3において、図2と同じ構成には同じ符号を付与し、説明を省略する。図3に示すように、被写体距離推定部115は、撮影モード設定部117、顔認識部118及び距離推定部119を備える。撮影モード設定部117は、ユーザによる操作部114からの撮影モードの操作入力又は撮像装置の自動設定により撮影モードを設定する。
【0025】
操作部114において撮影モードを選択する場合、本実施形態では、選択可能な撮影モードとして、「ポートレートモード」、「スポーツモード」、「風景モード」が用意されている。それぞれの撮影モードに対して、予測される被写体の撮影倍率や輝度等のパラメータが対応付けられている。「ポートレートモード」が撮影モードとして選択された場合、予測されるパラメータは次の通りとなる。即ち、撮影倍率が「1/50〜1/60」であり、輝度が「普通」であり、光源が「昼光又は室内光」であり、被写体が「静止物体」である。「スポーツモード」では次の通りとなる。即ち、撮影倍率が「1/80以下」であり、輝度が「普通」であり、光源が「昼光又は室内光」であり、被写体が「動的物体」である。「風景モード」では次の通りとなる。即ち、撮影倍率が「1/100以下」であり、輝度が「普通」であり、光源が「昼光」であり、被写体が「静止物体」である。撮像装置が自動で撮影モードを設定する場合は、撮影時のパラメータの組み合わせにより設定すればよい。
【0026】
顔認識部118は、所定の画像処理により、画像データから人物の顔を検出する。例えば、顔認識部118は、瞳の色が黒色や茶色等の一定の色であり、且つ、一定の大きさであることを利用して、目が2つあるか否かを判断する。そして、顔認識部118は、検出された2つの目の間隔が一般的な顔における2つの目の間隔に近いか否かを判断する。顔認識部118は、このように顔を認識した後、顔の色が一定の色であることを利用して、顔の撮像センサ105上の面積を求め、これと一般的な顔の面積を比較することで撮影倍率を算出する。
【0027】
以上のように、撮影モード設定部117及び顔認識部118はともに撮影倍率を出力することができるが、その精度は異なっている。即ち、顔認識部118が出力する撮影倍率の精度は高く、撮影モード設定部117が出力する撮影倍率の精度は低い。その一方、撮影モード設定部117では、人間を被写体としない場合も撮影倍率を推定することができる。
【0028】
距離推定部119は、撮影モード設定部117又は顔認識部118から出力される撮影倍率と撮像レンズ102の焦点距離とに基づいて被写体距離を算出する。被写体距離をL、撮影倍率をβ、レンズの焦点距離をfとすると、L=f/βである。このとき、距離推定部119は被写体距離Lの推定精度を表すファクタαを同時に出力する。これらの被写体距離Lとファクタαとが回復フィルタ演算部116に与えられる。先ず回復フィルタ演算部116は被写体距離Lに従って回復フィルタrを算出する。次に回復フィルタ演算部116は推定精度を示すファクタαによって回復強度を調整する。なお、被写体距離推定部115は、本発明における被写体距離推定手段の適用例であり、回復フィルタ演算部116は、本発明における回復フィルタ演算部116の適用例であり、画像回復部107は、本発明における画像回復手段の適用例である。また、顔認識部118は、本発明における第1の撮影倍率推定手段の適用例であり、撮影モード設定部117は、本発明における第2の撮影倍率推定手段の適用例である。
【0029】
ここで、ファクタαによる回復強度の調整について説明する。先ず画像回復は次の式5のように表される。但し、g(x,y)は劣化した画像データ、r(x,y)は回復フィルタ、f(x,y)は元の画像データである。
g(x,y)*r(x,y)=f(x,y)・・・式5
【0030】
式5に対してフーリエ変換を施すことにより、次の式6が得られる。なお、G(u,v)、F(u,v)はそれぞれ、g(x,y)、f(x,y)をフーリエ変換したものである。また、1/H(u,v)はr(x,y)をフーリエ変換したものである。
G(u,v)/H(u,v)=F(u,v)・・・式6
【0031】
次に、式6に対してファクタαを追加して式7のようにする。
G(u,v)/[H(u,v)/α]=F(u,v)・・・式7
【0032】
次に、式7のαをH(u,v)(但し、H(u,v)は1未満)から1の範囲で変化させる。すると、α=H(u,v)のときは、画像回復が行われない。一方、α=1のときは、所期の画像回復が行われることになり、αの値によって回復強度を変化させることができる。即ち、被写体距離の推定精度が低い場合には、αにHに近い値を与えて画像弊害を防止し、被写体距離の推定精度が高い場合にはαに1に近い値を与えて高精度のぼけ回復を行う。本実施形態では、顔認識が行われた場合にはα=1とし、「スポーツモード」、「ポートレートモード」、「風景モード」それぞれに与えるファクタをα1、α2、α3とする。これらの間の関係は次の式8のようになる。
H<α1<α2<α3<1・・・式8
【0033】
図4は、本実施形態における画像回復の処理を示すフローチャートである。ステップS301において、画像回復部107は、A/D変換部106から画像データを取得する。ステップS302において、顔認識部118は、画像データから顔の認識を行う。S303において、顔認識部118は、顔の認識が成功したか否かを判定する。顔の認識が成功しなかった場合、処理はS304に移行する。一方、顔の認識が成功した場合、処理はS306に移行する。ステップS304において、撮影モード設定部117は、設定された撮影モードを確認してモード番号nを設定し、撮影モードに対応する撮影倍率を取得する。ステップS305において、距離推定部119は、撮影モード設定部117により取得された撮影倍率と焦点距離とから被写体距離を算出し、ファクタαをモード番号nに従ってαnに設定する。そして処理はS308に進む。
【0034】
ステップS306において、顔認識部118は、認識した顔の面積に基づき撮影倍率を推定する。ステップS307において、距離推定部119は、顔認識部118によって推定された撮影倍率と焦点距離とから被写体距離を算出し、ファクタαをα=1に設定する。そして処理はステップS308に進む。
【0035】
ステップS308において、回復フィルタ演算部116は、距離推定部119によって算出された被写体距離とファクタαとに基づいて回復フィルタを算出する。ステップS309において、画像回復部107は、回復フィルタ演算部116により算出された回復フィルタを画像データに適用して画像回復を行う。
【0036】
図5は、顔認識の有無と撮影モードとに対応する撮影倍率の推定値とファクタαとの関係を示す図である。図5に示すように、顔認識がなされず、且つ撮影モードとして「スポーツモード」が設定されている場合、撮影倍率は「1/100」と推定され、これは撮影モードのうちで推定精度が最も低い値であるため、ファクタαとして「α1」が設定される。また、顔認識がなされず、且つ撮影モードとして「ポートレートモード」が設定されている場合、撮影倍率は「1/55」と推定され、これは撮影モードのうちで「スポーツモード」の次に推定精度が低い値であるため、ファクタαとして「α2」が設定される。また、顔認識がなされず、且つ撮影モードとして「風景モード」が設定されている場合、撮影倍率は「0(無限遠)」が設定され、これは撮影モードのうちで最も推定精度が高い値であるため、ファクタαとして「α3」が設定される。また、顔認識があった場合、撮影倍率は「撮影可能範囲全域」と推定され、ファクタαとして「1」が設定される。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、被写体距離の推定精度に対応して、周波数空間で回復強度調整を行っている。これに対して本実施形態では、撮影モードから被写体距離が推定される場合のように、推定された被写体距離がある区間を持つとき、この区間全体に対して最適化された回復フィルタを与えることで回復結果を最適化する。例えば、区間におけるOTF標準偏差をOTFstdと書き、複素数Iの絶対値をABS|I|と書くと、1/H・{(ABS|H|)^2/((ABS|H|)^2+(ABS|Hstd|)^2)}で表される回復フィルタは、ウィーナーフィルタの形式である。よって、本フィルタは区間内のOTFのばらつき(標準偏差)に対して平均的な回復フィルタを形成し、単一の回復フィルタとしては、区間内の全被写体距離に対して平均して最適の回復結果を与えるフィルタとなる。
【0038】
従って、本実施形態によれば、区間の大小によらず、統一した方法でその区間に対応した回復フィルタを算出することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態で説明した構成をレンズ交換式カメラに適用したものである。図6は、本実施形態に係る撮像装置の構成を示す図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付与し、説明は省略する。
【0040】
図6において、201は交換レンズ部であり、不図示のレンズマウントでカメラ本体101に結合されている。202は撮像レンズである。203は絞りである。205はCPUであり、交換レンズ201部の処理、及び、カメラ本体101との通信等の全ての制御を実行するものであって、ROM206に格納された命令を順に読み込み、解釈し、その結果に従って処理を実行する。また、ROM206は、それらの処理に必要なプログラム、データをCPU205に提供する。RAM207はCPU205の作業領域である。208はレンズ制御部であり、CPU205からの指示に基づき、カメラ本体101との通信、フォーカス、絞り等のレンズ系の制御を行う。
【0041】
209は、カメラ本体101と交換レンズ部201との情報通信を行うための信号接点部である。画像データの回復処理に関する構成や処理は第1の実施形態と同様であるが、レンズ交換式カメラの構成上、異なる部分について説明する。第1の実施形態では、合焦距離、絞り値、像高等のパラメータに従って変化するOTF(光学伝達関数)、又はOTFに基づく回復フィルタ群は、ROM111に記憶されている。これに対し、本実施形態では、交換レンズ部201毎にOTF又は回復フィルタ群を記憶しなくてはならないため、これらは交換レンズ部201内のROM206に記憶される。カメラ本体101内の回復フィルタ演算部116は、回復フィルタ群を含むフィルタ演算に必要な情報を、通信接点209を介して交換レンズ部201から受信して演算を行う。
【0042】
回復フィルタ演算部116は、回復フィルタ演算の際に被写体距離を必要とするが、フォーカス制御を行う際にはこの情報は必須ではない。このため、交換レンズ部201の設計目的や設計世代が画像回復を前提としない場合、交換レンズ部201が被写体距離を発生しない。このとき、第1の実施形態での説明と同様、画像回復部107による被写体距離の推定が行われる。従って、本実施形態によれば、交換レンズ部201が画像回復のための被写体距離を発生しない場合においても、精度よく画像回復を行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。上述した実施形態では、画像回復は全てカメラ本体101内で行われている。本実施形態では、これをカメラ外のPC上にインストールしたソフトウェアによって行うものである。
【0044】
メディアインタフェース109を通じて、画像回復前の画像データとともに、回復に必要なパラメータをメディアに記録し、又は、直結のインタフェースを通じてPC上の回復処理ソフトウェアに渡す。PC上の回復ソフトウェアは、図2から図4で説明したカメラの画像回復部107で実行される処理と同様の処理を行う。このとき、被写体距離が不明な場合、PCはカメラの被写体距離推定部115と同様に被写体距離の推定を行ってもよいし、使用者がPCのGUIから被写体距離を入力して与えてもよい。
【0045】
上述した実施形態においては、オートフォーカス機構から被写体距離が得られない場合であっても、顔認識によって被写体距離を推定したり、撮影モードに対応する被写体距離を推定し、当該被写体距離に基づいて回復フィルタを算出するようにしている。従って、オートフォーカス機構から被写体距離が得られない場合における画像回復の精度を向上させることが可能となる。
【0046】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0047】
107:画像回復部、113:撮像系制御部、115:被写体距離推定部、116:回復フィルタ演算部、117:撮影モード設定部、118:顔認識部、119:距離推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体距離を推定する被写体距離推定手段と、
前記被写体距離推定手段により推定された被写体距離に基づいて、画像データを回復するための回復フィルタを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記回復フィルタを用いて画像データの回復を行う画像回復手段とを有することを特徴とする画像回復装置。
【請求項2】
前記被写体距離推定手段は、
被写体を認識することにより撮影倍率を推定する第1の撮影倍率推定手段を有し、
前記第1の撮影倍率推定手段により推定された撮影倍率と焦点距離とに基づいて被写体距離を推定することを特徴とする請求項1に記載の画像回復装置。
【請求項3】
前記第1の撮影倍率推定手段は、前記被写体の面積を算出し、前記被写体の面積と所定の被写体の面積とを比較することにより撮影倍率を推定することを特徴とする請求項2に記載の画像回復装置。
【請求項4】
前記第1の撮影倍率推定手段は、前記被写体として顔を認識することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像回復装置。
【請求項5】
前記被写体距離推定手段は、
設定される撮像装置の撮影モードに対応する撮影倍率を推定する第2の撮影倍率推定手段を有し、
前記第2の撮影倍率推定手段により推定された撮影倍率と焦点距離とに基づいて被写体距離を推定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像回復装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記撮像装置の撮影モードに応じて、前記回復フィルタによる画像データの回復強度を調整することを特徴とする請求項5に記載の画像回復装置。
【請求項7】
前記撮像装置の撮影モードは、前記撮像装置により自動的に設定されることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像回復装置。
【請求項8】
前記撮像装置の撮影モードは、ユーザの操作に応じて設定されることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像回復装置。
【請求項9】
画像回復装置により実行される画像回復方法であって、
被写体距離を推定する被写体距離推定ステップと、
前記被写体距離推定ステップにより推定された被写体距離に基づいて、画像データを回復するための回復フィルタを算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出された前記回復フィルタを用いて画像データの回復を行う画像回復ステップとを含むことを特徴とする画像回復方法。
【請求項10】
被写体距離を推定する被写体距離推定ステップと、
前記被写体距離推定ステップにより推定された被写体距離に基づいて、画像データを回復するための回復フィルタを算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出された前記回復フィルタを用いて画像データの回復を行う画像回復ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−217274(P2011−217274A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85389(P2010−85389)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】