説明

画像変換方法

【課題】 従来の画像変換法では濃淡画像で表現するのが難しいとされた微妙な特徴量の違いを表現する。
【解決手段】 各画素の輝度値は、式(1)に従って算出された当該画素の各偏差の総和DtColorgrayの値に基づいて決定される。
DtColorgray=255−(k+k+k
+kRGRG+kGBGB+kBRBR)
ここに、DRGはR値とG値との差分値に関する偏差であり、DGBはG値とB値との差分値に関する偏差であり、DBRはB値とR値との差分値に関する偏差である。重み付け係数k、k、k、kRG、kGB、kBRの値をユーザが設定することにより所望の特徴量の輝度値を強調した濃淡画像を生成することができる。図4は、重み付け係数kRG、kBRを相対的に大きな値に設定して画像処理した後の濃淡画像である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像を濃淡画像の変換する画像変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像内から対象物を抽出する処理を行う場合、カラー画像内の特定領域を識別することが重要であり、この特定領域を識別するのに、濃度、色などの特徴量が均一な部分画像として識別することが行われており、色を特徴量として領域を識別する方法を具体化したシステムは、例えば、工業製品、食品、薬品などの製品の識別や検査に応用されている。
【0003】
この種の画像処理システムは、カラー撮影画像(原画像)を画素毎のR値(赤)、G値(緑)及びB値(青)を表すアナログ信号に分割した後に画像変換装置に取込まれ、画像変換装置はアナログのR値、G値及びB値をディジタルのR値、G値及びB値に変換して記憶装置に記憶して、この記憶情報に基づいてCRT等の表示装置に原画像を表示すると共に、原画像を表示した画面にポインタを重畳表示するようになっている。
【0004】
ユーザは、(1)ポインタをマウス等の入力手段により操作して、画面上に表示されたカラーパレットの中から抽出対象とする色を選択する、(2)抽出対象の色をR値、G値及びB値の各数値で入力する、又は(3)原画像の画素から抽出対象の色の画素を直接的に選択することにより、R値、G値、B値の各値に関するしきい値を設定し、これにより、原画像中の各画素のR値、G値、B値をしきい値と比較して、各しきい値の範囲を越えない場合には抽出対象の色と同じ色であると判断して輝度値を「1」(又は「0」)に設定し、それ以外の輝度値を「0」(又は「1」)に設定することによりカラー画像を二値化し、二値化画像の輝度値が「0」の領域を抽出してCRT等の表示装置に表示する。
【0005】
しかし、このような色抽出による二値化画像への変換は、例えば丸みを帯びたビンに貼着した色付きラベルのように、表面全体に均一に光を当てるのが難しい対象物の場合には、撮影画像中の照明による明暗により色付きラベルが均一な色領域であると認識されず、この結果、色付きラベル全体を抽出できないという問題を有していた。
【0006】
特許文献1は、この問題を解消することのできる画像変換方法を提案している。すなわち、特許文献1は、同一色と判断するパラメータとして、R値、G値及びB値の他に、これらR値、G値、B値の差分値である例えば(R−B)値が加えられ、上記の従来例と同様にしきい値との対比で抽出したい色を規定する範囲(抽出色範囲)内の画素の輝度値が「0」に設定され、他方、抽出色範囲外の画素については、当該画素のR値、G値、B値、(R−B)値について、抽出色範囲の各値との差分値(偏差)の総和が輝度値として設定される。したがって、この総和の値は、抽出色範囲から逸脱した色の離れ度合い、つまり色差を表し、この色差に対応した輝度値が設定される。
【0007】
この特許文献1に開示された画像変換方法によれば、照明による明暗部分のある撮影領域や照明むらによる不均一な輝度成分のある撮影領域が存在していても色抽出が可能になる。
【特許文献1】特開2001−202508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示の画像変換方法は、色差と輝度の双方を考慮した方法であり、色の識別が可能な画像の変換を主眼とするものであることから、例えば、カラーカメラで撮影した画像が全体的に暗い場合、R値、G値、B値、(R−G)値、(G−B)値及び(B−R)値が全て小さい値となってしまうため、上記偏差の総和が小さくなってしまう。したがって、例えば撮影画像が全体的に暗い場合には、抽出したい色と、その他の色との差異が曖昧となり易く、このため色抽出の精度が落ちるという問題が残る。
【0009】
本発明の目的は、従来の画像変換法では濃淡画像で表現するのが難しいとされた微妙な特徴量の違いを表現することのできる画像変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる技術的課題は、本発明の第1の観点によれば、
カラー画像を濃淡画像に変換する画像変換方法において、
ユーザが選択した抽出色範囲から逸脱した色の特徴量に重み付けして、該特徴量を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法を提供することにより達成される。
【0011】
すなわち、例えば色相に重み付けすることにより、色相の違いを強調した濃淡画像を生成することができる。
【0012】
本発明の他の観点によれば、上述した技術的課題は、
カラー画像から抽出したい色範囲を規定するR値、G値、B値及びR値、G値、B値の少なくとも一つの差分値に対する各画素のR値、G値、B値及びR値、G値、B値の少なくとも一つの差分値の偏差の総和を輝度値に設定することによりカラー画像を濃淡画像に変換する画像変換方法であって、
前記各画素のR値、G値、B値及びR値、G値、B値の少なくとも一つの差分値の所望の偏差に重み付けして、該重み付けした偏差を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法を提供することにより達成される。
【0013】
この第2の観点による本発明によれば、例えば赤色を強調したいのであれば、R値に関するパラメータに重み付けすることにより、赤色を強調した濃淡画像を生成することができる。
【0014】
本発明の第3の観点によれば、上述した技術的課題は、
カラー画像から抽出したい色範囲を規定する色相、彩度、明度に対する各画素の色相、彩度、明度の偏差の総和に基づいて輝度値を設定すると共に、前記色相、彩度、明度の偏差の少なくとも一つに重み付けして、該重み付けした偏差を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法を提供することにより達成される。
【0015】
この第3の観点の本発明によれば、明度を強調した濃淡画像を生成したいのであれば、明度の偏差に対して重み付けすることにより、明度の差を強調した濃淡画像を生成することができる。
【0016】
本発明の第4の観点によれば、上述した技術的課題は、
カラー画像から抽出したい色範囲を選択すると共に、抽出したくない色を選択し、
前記抽出したい色範囲の色相、彩度、明度と、前記抽出したくない色の色相、彩度、明度との偏差に基づいて重み付け係数を設定し、
前記抽出したい色範囲の色相、彩度、明度に対する各画素の色相、彩度、明度の偏差に前記重み付け係数を乗算した総和に基づいて輝度値を設定することにより、前記重み付けした要素を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法を提供することにより達成される。
【0017】
この第4の観点の本発明によれば、ユーザは重み付けを意識することなく、単に抽出したい色範囲と、抽出したくない色を選択することにより、これらの間の特徴量を強調した濃淡画像を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1を参照して、画像処理システム1は、検査対象(ワーク)Wを撮影するためのカラーカメラ2を有し、カラーカメラ2が撮影したカラー画像(原画像)は画像変換装置3で濃淡画像に変換される。画像変換装置3には、CRT、液晶などのディスプレイ4が接続されており、このディスプレイ4によって原画像及び濃淡画像を表示することが可能である。
【0019】
画像変換装置3は、カラーカメラ2で撮影された撮影領域の画像データ(アナログ)を画素毎にR値、G値、B値に分解して、これをデジタル値に変換し、この画素毎のデジタルのR値、G値、B値はメモリ5に格納される。
【0020】
ユーザは、マウス6やキーボードを使って、従来と同様に、(1)ディスプレイ4に表示された原画像中の抽出対象の色をポインタで直接的に選択する、(2)画面上に表示されたカラーパレットの中から抽出する色を選択する、(3)抽出対象の色をR値、G値及びB値の各数値で入力するなどにより、R値、G値、B値の抽出する範囲を規定するしきい値を設定することができる。画像変換装置3は、選択された画素と実質的に同じ色の画素の輝度値を「0」に設定し、その他の色の画素の輝度値を1〜255階調の濃淡画像に変換して、この濃淡画像をディスプレイ4に表示させることが可能である。
【0021】
画像変換装置3によるカラー画像から濃淡画像への画像変換について以下に説明する。
【0022】
先ず、ユーザが選択した抽出色のR値を「R」で示し、抽出色のR値の範囲の最小値(最小しきい値)を「Rmin」で示し、R値の最大値(最大しきい値)を「Rmax」で示す。また、しきい値からの偏差をDで示す。
【0023】
Rmin≦R≦Rmaxのとき、D=0であり;
R<Rminのとき、D=Rmin−Rであり;
Rmax<Rのとき、D=R−Rmaxであると定義される。これを図示したのが図2である。
【0024】
G値、B値についても同様であり、また、R値、G値、B値の夫々の差分値についても同様である。例えば、R値とG値との差分値では、(R値−G値)に基づいて計算が行われる。そして各画素の輝度値は、下記の式(1)に従って算出された当該画素の各偏差の総和DtColorgrayの値に基づいて決定される。
【0025】
式(1)
DtColorgray=255−(k+k+k
+kRGRG+kGBGB+kBRBR)
【0026】
ここに、DRGはR値とG値との差分値に関する偏差であり、DGBはG値とB値との差分値に関する偏差であり、DBRはB値とR値との差分値に関する偏差である。
【0027】
これによりカラー画像を255階調の濃淡画像に変換することができる。ここに、各特徴量の偏差Dに関して重み付け係数kが乗算される。したがって、重み付け係数k、k、k、kRG、kGB、kBRの値をユーザが設定することにより所望の特徴量の輝度値を強調した濃淡画像を生成することができる。
【0028】
すなわち、例えば赤色との色差を強調したいが、他の色差は強調したくない場合では、赤に関連した重み付け係数kRG、kBRを相対的に大きな値に設定すればよい。これにより、検査対象Wが微妙な色差を有していても、特定の特徴量を強調した濃淡画像を生成することができる。ちなみに、図3、図4は、ベース色が茶色のワークに赤色の異物が存在している検査対象の画像に関するものであり、図3は原画像であり、図4は、重み付け係数kRG、kBRを相対的に大きな値に設定して画像処理した後の濃淡画像を示す。図4から、濃淡画像において赤色の異物がはっきりと認識できることが分かるであろう。
【0029】
抽出色の範囲の決定にあたっては、ユーザが所望の色の画素を指示することにより、当該画素のR値、G値、B値、(R−G)値、(G−B)値及び(B−R)値にユーザが設定可能な所定の値をプラス・マイナスした値を、上限値及び下限値として割り付けるようにしてもよい。
【0030】
画像変換装置3によるカラー画像から濃淡画像への画像変換に関し、上述したRGBに基づく方法に限定されない。例えば、以下に説明する色相、彩度、明度のHSVに基づいて濃淡画像に変換するようにしてもよい。
【0031】
先ず、ユーザが選択した抽出色の色相を「H」で示し、抽出色のH値の範囲の最小値(最小しきい値)を「Hmin」で示し、H値の最大値(最大しきい値)を「Hmax」で示す。また、しきい値からの偏差をDで示す。
【0032】
Hmin≦H≦Hmaxのとき、D=0であり;
H<Hminのとき、D=Hmin−Hであり;
Hmax<Hのとき、D=H−Hmaxであると定義される。
【0033】
彩度(S)、明度(V)についても同様である。そして各画素の輝度値は、下記の式(2)に従って算出された当該画素の各偏差の総和DtColorgrayの値に基づいて決定される。
【0034】
式(2)
DtColorgray=255−(k+k+k)
【0035】
各特徴量つまり色相(H)、彩度(S)、明度(V)の夫々の偏差Dに関して係数kが乗算される。したがって、各偏差Dの重み付け係数k、k、kの値をユーザが設定することにより所望の特徴量を強調した濃淡画像を生成することができる。
【0036】
すなわち、例えば色差を強調したいときには係数kを相対的に大きな値に設定すればよく、濃度差を強調したいときには係数kを相対的に大きな値に設定すればよい。明度(V)に関する係数kを大きな値に設定したときには、明暗を強調した濃淡画像を生成することができる。
【0037】
上記(2)式による画像変換の変形例として、各特徴量の偏差の計算の際に、しきい値よりも小さな値と大きな値とを分けて、これらに独立した重み付け係数kを乗算するようにしてもよい。
【0038】
すなわち、明度(V)に関し、
Vmin≦V≦Vmaxのとき、DV(−)=0、DV(+)=0であり;
V<Vminのとき、DV(−)=Vmin−V、DV(+)=0であり;
Vmax<Vのとき、DV(−)=0、DV(+)=V−Vmaxであると定義される。
【0039】
他の特徴量つまり色相(H)、彩度(S)の偏差Dに関しも同様であり、各画素の輝度値は、下記の式(3)に従って算出された当該画素の各偏差の総和DtColorgrayの値に基づいて決定される。
【0040】
式(3)
DtColorgray=255−(kH(−)H(−)+kH(+)H(+)+kS(−)S(−)
+kS(+)S(+)+kV(−)V(−)+kV(+)V(+)
【0041】
上記の式(3)から理解できるように、抽出色の範囲よりも値が小さい方向の偏差D(−)と、値が大きい方向の偏差DV(+)とに個々独立した重み付け係数kを設定することで、より多様な画像変換の設定が可能であり、検出対象Wの原画像の状況に応じた色抽出が可能になる。例えば、Vmin=100、Vmax=200の場合に、単純にkの値を大きくすると、前記式(2)による変換方法によれば、V=50の画素もV=250の画素も同じように輝度値が小さい値として抽出されてしまう。これに対して、式(3)による変換方法によれば、係数kv(+)に対してだけ大きな値を設定すれば、図3、図4に示すようにV=50の画素に対しては輝度値を小さい値のままでV=250の画素の輝度値を相対的に大きな値にして当該画素の色を強調した濃淡画像を生成することができる。
【0042】
上述した式(2)及び式(3)では、抽出したい色を選択して、この抽出したい色に対する各画素の色の偏差に関して重み付けするようにしたが、抽出したい色(抽出色)及び抽出したくない色(非抽出色)の双方をユーザに選択させて、抽出色と非抽出色との違いを特徴付ける要素に関して重み付け係数kを自動的に割り付けるようにしてもよい。
【0043】
このことについて、上記式(3)に関連して説明すると、先ず、ユーザが選択した抽出色の条件が以下の通りであったとする。
【0044】
抽出色条件
Hmin < H < Hmax
Smin < S < Smax
Vmin < V < Vmax
【0045】
非抽出色条件
また、ユーザが非抽出色として、H、S、Vを選択したとする。
【0046】
色相(H)、彩度(S)、明度(V)に関する偏差Dの計算は次の式に従って行われる。
色相(H)の偏差
Hmin≦H≦Hmaxのとき、DH(−)=0、DH(+)=0であり;
<Hminのとき、DH(−)=Hmin−H、DH(+)=0であり;
Hmax<Hのとき、DH(−)=0、DH(+)=H−Hmaxであると定義される。
【0047】
彩度(S)の偏差
Smin≦S≦Smaxのとき、DS(−)=0、DS(+)=0であり;
<Sminのとき、DS(−)=Smin−S、DS(+)=0であり;
Smax<Sのとき、DS(−)=0、DS(+)=S−Smaxであると定義される。
【0048】
明度(V)の偏差
Vmin≦V≦Vmaxのとき、DV(−)=0、DV(+)=0であり;
<Vminのとき、DV(−)=Vmin−V、DV(+)=0であり;
Vmax<Vのとき、DV(−)=0、DV(+)=V−Vmaxであると定義される。
【0049】
偏差Dの計算は次の式(4)に従う。
式(4)
DtColorgray
=255−{(kH(−)0+kH(−))DH(−)+(kH(+)0+kH(+))DH(+)
+(kS(−)0+kS(−))DS(−)+(kS(+)0+kS(+))DS(+)
+(kV(−)0+kV(−))DV(−)+(kV(+)0+kV(+))DV(+)
【0050】
加重の重み付け係数kH(−)、kH(+)、kS(−)、kS(+)、kV(−)、kV(+)は、次の条件式に従う。
H(−)>0のときには所定の値のkH(−)を設定し、DH(−)=0のときにはkH(−)=0を設定する。
H(+)>0のときには所定の値のkH(+)を設定し、DH(+)=0のときにはkH(+)=0を設定する。
S(−)>0のときには所定のkS(−)を設定し、DS(−)=0のときにはkS(−)=0を設定する。
S(+)>0のときには所定のkS(+)を設定し、DS(+)=0のときにはkS(+)=0を設定する。
V(−)>0のときには所定のkV(−)を設定し、DV(−)=0のときにはkV(−)=0を設定する。
V(+)>0のときには所定のkV(+)を設定し、DV(+)=0のときにはkV(+)=0を設定する。
【0051】
これによれば抽出色と非抽出色との違いを特徴付ける要素を強調した濃淡画像を生成することができ、また、ユーザは、重み付け係数kの存在を認識していなくても、単に、抽出色と非抽出色とを選択することで検査対象Wの特徴に合致した重み付け係数kを自動的に設定することができる。
【0052】
例えば、ユーザが選択した抽出色の条件が次の通りであったとする。
100<H<110
210<S<240
50<V<80
【0053】
また、ユーザが非抽出色として、H=180、S=230、V=100を選択したとする。
【0054】
非抽出色のH、S、Vの偏差は、DH(−)=0、DH(+)=70、DS(−)=0、DS(+)=0、DV(−)=0、DV(+)=30となる。したがって、DH(+)=70に関して加重の重み付け係数kH(+)が設定され、DV(+)=30に関して加重の重み付け係数kV(+)が設定され、それ以外の重み付け係数kH(−)、kS(−)、kS(+)などは「0」が設定される。下記の(a)〜(c)は具体例を例示するものである。
【0055】
先ず、ユーザが緑色を抽出色として選定したと仮定し、この選択した緑色のHSV値が、H(色相)=39;S(彩度)=218;V(明度)=119であったとし、抽出色の範囲は、ユーザが選択した抽出色のHSV値の各々に所定値(具体的には例えば「5」)をプラスマイナスすることにより自動設定したとすると、色抽出範囲は、34<H<44;213<S<223;114<V<124となる。
【0056】
上記式(4)の重み付け係数の初期値、つまりkH(−)0、kH(+)0、kS(−)0、kS(+)0、kV(−)0、kV(+)0の全てに「0.5」を与えたとする。
【0057】
(a)青色を非抽出色として選択した場合
非抽出色として選択した青色のHSV値がH=152;S=196;V=87であるとすると、H値は色抽出範囲よりも大であり、S値、V値は色抽出範囲よりも小であるから、DH(+)>0、DH(−)>0、DV(−)>0であるとして、加重の重み付け係数kH(+)、kS(−)、kV(−)が付加される。このkH(+)、kS(−)、kV(−)の値として各々「0.5」が与えられているとすると、これらを式(4)に代入した次の式(5)に基づいて各画素の輝度が算出される。
【0058】
式(5):DtColorgray=255−{0.5DH(−)+(0.5+0.5)DH(+)
+(0.5+0.5)DS(−)+0.5DS(+)
+(0.5+0.5)DV(−)+0.5DV(+)
【0059】
(b)黄色を更なる非抽出色として選択した場合
非抽出色として選択した黄色のHSV値がH=28;S=234;V=219であるとすると、H値は色抽出範囲よりも小であり、S値、V値は色抽出範囲よりも大であるから、DH(−)>0、DS(+)>0、DV(+)>0であるとして、加重の重み付け係数kH(−)、kS(+)、kV(+)が更に付加される。。このkH(−)、kS(+)、kV(+)の値として各々「0.5」が与えられているとすると、これらを式(5)に代入した次の式(6)に基づいて各画素の輝度が算出される。
【0060】
式(6):DtColorgray=255−{(0.5+0.5)DH(−)+(0.5+0.5)DH(+)
+(0.5+0.5)DS(−)+(0.5+0.5)DS(+)
+(0.5+0.5)DV(−)+(0.5+0.5)DV(+)
【0061】
(b)赤色を更なる非抽出色として選択した場合
非抽出色として選択した赤色のHSV値がH=2;S=226;V=197であるとすると、H値は色抽出範囲よりも小であり、S値、V値は色抽出範囲よりも大であるから、DH(−)>0、DS(+)>0、DV(+)>0であるとして、加重の重み付け係数kH(−)、kS(+)、kV(+)が更に付加される。。このkH(−)、kS(+)、kV(+)の値として各々「0.5」が与えられているとすると、これらを式(6)に代入した次の式(7)に基づいて各画素の輝度が算出される。
【0062】
式(7):DtColorgray=255−{(0.5+0.5+0.5)DH(−)+(0.5+0.5)DH(+)
+(0.5+0.5)DS(−)+(0.5+0.5+0.5)DS(+)
+(0.5+0.5)DV(−)+(0.5+0.5+0.5)DV(+)
【0063】
叙上のようにして、ユーザが非抽出色を選択することで、抽出色に対して非抽出色の濃度差を強調することのできる加重の重み付け係数が自動的に付与された計算式に基づいて各画素の輝度値が算出されることになる。つまり、ユーザは重み付け係数を意識することなく、自動的に、非抽出色を抽出色に対して濃度差を付けた濃淡画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理システムの全体構成図である。
【図2】例示的にR値に関する偏差Dに付与した重み付け係数kにより、この偏差Dが強調されることを説明するための図である。
【図3】ベース色が茶色のワークに赤色の異物が存在している検査対象の原画像を示す。
【図4】図3の原画像に対して、赤色に関連した重み付け係数kRG、kBRを相対的に大きな値に設定して画像処理した後の濃淡画像を示す。
【図5】式(3)に関連した重み付け係数の作用説明図である。
【図6】式(3)に関連した重み付け係数の作用説明図である。
【符号の説明】
【0065】
W 検査対象(ワーク)
1 画像処理システム
2 カラーカメラ
3 画像変換装置
4 ディスプレイ
6 マウス
D 偏差
k 重み付け係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像を濃淡画像に変換する画像変換方法において、
ユーザが選択した抽出色範囲から逸脱した色の特徴量に重み付けして、該特徴量を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法。
【請求項2】
カラー画像から抽出したい色範囲を規定するR値、G値、B値及びR値、G値、B値の少なくとも一つの差分値に対する各画素のR値、G値、B値及びR値、G値、B値の少なくとも一つの差分値の偏差の総和を輝度値に設定することによりカラー画像を濃淡画像に変換する画像変換方法であって、
前記各画素のR値、G値、B値及びR値、G値、B値の少なくとも一つの差分値の所望の偏差に重み付けして、該重み付けした偏差を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法。
【請求項3】
カラー画像から抽出したい色範囲を規定する色相、彩度、明度に対する各画素の色相、彩度、明度の偏差の総和に基づいて輝度値を設定すると共に、前記色相、彩度、明度の偏差の少なくとも一つに重み付けして、該重み付けした偏差を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法。
【請求項4】
前記各画素の色相、彩度、明度の偏差が前記抽出したい色範囲を規定する色相、彩度、明度よりも小さい領域と大きい領域とに細分化されている、請求項3に記載の画像変換方法。
【請求項5】
カラー画像から抽出したい色範囲を選択すると共に、抽出したくない色を選択し、
前記抽出したい色範囲の色相、彩度、明度と、前記抽出したくない色の色相、彩度、明度との偏差に基づいて重み付け係数を設定し、
前記抽出したい色範囲の色相、彩度、明度に対する各画素の色相、彩度、明度の偏差に前記重み付け係数を乗算した総和に基づいて輝度値を設定することにより、前記重み付けした要素を強調した濃淡画像を生成することを特徴とする画像変換方法。
【請求項6】
前記各画素の色相、彩度、明度の偏差が前記抽出したい色範囲を規定する色相、彩度、明度よりも小さい領域と大きい領域とに細分化されている、請求項5に記載の画像変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−31340(P2006−31340A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208441(P2004−208441)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】